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特開2023-631ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法
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  • 特開-ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法 図1
  • 特開-ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法 図2
  • 特開-ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法 図3
  • 特開-ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法 図4
  • 特開-ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000631
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/06 20060101AFI20221222BHJP
   B24B 33/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B24B33/06
B24B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101568
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】391050662
【氏名又は名称】富士ホーニング工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕之
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AA11
3C158BB02
3C158BC02
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】被加工穴の内面の加工精度を向上できるホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法を提供する。
【解決手段】ホーニング加工制御装置9は、外側部に砥石4aを有するホーニングヘッド4の回転及び軸方向の往復動によりワーク2の被加工穴3の内面3aをホーニング加工させる。ホーニング加工制御装置9は、ホーニングヘッド4を往復動させる際にホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を被加工穴3の所定の切削範囲において変化させる可変速度切削を実施させるよう制御可能な制御手段10を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部に砥石を有するホーニングヘッドの回転及び軸方向の往復動によりワークの被加工穴の内面をホーニング加工させるホーニング加工制御装置であって、
前記ホーニングヘッドを往復動させる際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を前記被加工穴の所定の切削範囲において変化させる可変速度切削を実施させるよう制御可能な制御手段を備える
ことを特徴とするホーニング加工制御装置。
【請求項2】
制御手段は、ホーニングヘッドを往復動させる際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度とをそれぞれ一定とする一定速度切削を実施させるよう制御可能であり、一つの被加工穴に対する前記一定速度切削と可変速度切削との実施回数バランスを設定可能である
ことを特徴とする請求項1記載のホーニング加工制御装置。
【請求項3】
外側面に砥石を有し、回転及び軸方向の往復動が可能なホーニングヘッドと、
請求項1または2記載のホーニング加工制御装置と、
を備えることを特徴とするホーニング加工装置。
【請求項4】
外側部に砥石を有するホーニングヘッドの回転及び軸方向の往復動によりワークの被加工穴の内面をホーニング加工するホーニング加工方法であって、
前記ホーニングヘッドの往復動の際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を前記被加工穴の所定の切削範囲において変化させる可変速度切削を実施する
ことを特徴とするホーニング加工方法。
【請求項5】
一つの被加工穴に対し、ホーニングヘッドの往復速度と回転速度とをそれぞれ一定として前記ホーニングヘッドを往復動する一定速度切削と可変速度切削とを設定された実施回数で実施する
ことを特徴とする請求項4記載のホーニング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側部に砥石を有するホーニングヘッドの回転及び軸方向の往復動によりワークの被加工穴の内面をホーニング加工させるホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークの被加工穴の内面をホーニング加工する動作においては、砥石が取り付けられているホーンヘッドを回転させつつ上下に往復動させることで、ワーク内面を研削加工する。
【0003】
被加工穴が貫通しているワークの場合、被加工穴の深さを超えるように設定した往復距離でホーンヘッドを一定速度で往復させることにより、綺麗な円筒形状の内径を加工することが可能である。
【0004】
それに対し、被加工穴が底面を有する止り穴であるワークの場合、止り穴底面に接触しない範囲でホーンヘッドを一定速度で往復させると、底面側が加工されない加工形状となってしまう。そのため、従来、ドゥエル切削と呼ばれる、底面側で一定時間、ホーンヘッドの往復動作を止める加工、あるいは、部分切削と呼ばれる、底面側の設定範囲をホーンヘッドが小刻みに往復する動作の加工を行うことで、加工されづらい被加工穴底面側の内面と砥石との接触時間を多くし、円筒形状の内形になるよう加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-12163号公報 (第9頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホーンヘッドの往復動作を止めたり、部分的に動作させたりする場合、被加工穴の内面において本来削りたくない箇所に対しても加工をすることとなるため、綺麗な円筒形状に加工しづらい。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被加工穴の内面の加工精度を向上できるホーニング加工制御装置、これを備えるホーニング加工装置、及び、ホーニング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のホーニング加工制御装置は、外側部に砥石を有するホーニングヘッドの回転及び軸方向の往復動によりワークの被加工穴の内面をホーニング加工させるホーニング加工制御装置であって、前記ホーニングヘッドを往復動させる際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を前記被加工穴の所定の切削範囲において変化させる可変速度切削を実施させるよう制御可能な制御手段を備えるものである。
【0009】
請求項2記載のホーニング加工制御装置は、請求項1記載のホーニング加工制御装置において、制御手段は、ホーニングヘッドを往復動させる際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度とをそれぞれ一定とする一定速度切削を実施させるよう制御可能であり、一つの被加工穴に対する前記一定速度切削と可変速度切削との実施回数バランスを設定可能であるものである。
【0010】
請求項3記載のホーニング加工装置は、外側面に砥石を有し、回転及び軸方向の往復動が可能なホーニングヘッドと、請求項1または2記載のホーニング加工制御装置と、を備えるのである。
【0011】
請求項4記載のホーニング加工方法は、外側部に砥石を有するホーニングヘッドの回転及び軸方向の往復動によりワークの被加工穴の内面をホーニング加工するホーニング加工方法であって、前記ホーニングヘッドの往復動の際に前記ホーニングヘッドの往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を前記被加工穴の所定の切削範囲において変化させる可変速度切削を実施するものである。
【0012】
請求項5記載のホーニング加工方法は、請求項4記載のホーニング加工方法において、一つの被加工穴に対し、ホーニングヘッドの往復速度と回転速度とをそれぞれ一定として前記ホーニングヘッドを往復動する一定速度切削と可変速度切削とを設定された実施回数で実施するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被加工穴の内面の加工精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態に係るホーニング加工装置のシステム構成図である。
図2】(a)はワークの被加工穴が底面を有する場合を示す模式図、(b)は(a)に対し可変往復速度切削を実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(c)は(a)に対し可変回転速度切削を実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフである。
図3】(a)はワークの被加工穴の一部の材質が異なる場合を示す模式図、(b)は(a)に対し可変往復速度切削を実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(c)は(a)に対し可変回転速度切削を実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフである。
図4】(a)は可変往復速度切削のみを実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(b)は可変往復速度切削と一定速度切削とを交互に実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(c)は可変往復速度切削と一定速度切削とを所定回数ずつ実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフである。
図5】(a)は可変回転速度切削のみを実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(b)は可変回転速度切削と一定速度切削とを交互に実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフ、(c)は可変回転速度切削と一定速度切削とを所定回数ずつ実施する際のホーニングヘッドの往復位置と回転速度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1において、1はホーニング加工装置を示す。ホーニング加工装置1は、被削材であるワーク2に形成された被加工穴3の被加工面である内面3aを研削するものである。ホーニング加工装置1は、被加工穴3に挿入されるホーニングヘッド4を備える。ホーニングヘッド4には、外側部に砥石4aが取り付けられている。砥石4aが被加工穴3の内面3aに押圧されて内面3aを研削する。ホーニングヘッド4は、軸5に取り付けられている。ホーニングヘッド4は、往復動駆動手段である往復動モータ6により往復動する。本実施の形態において、ホーニングヘッド4は、往復動モータ6により上下動する。ホーニングヘッド4の往復動の位置は、センサ等の位置検出手段7によって検出される。すなわち、本実施の形態では、位置検出手段7により、ホーニングヘッド4の上下の位置が検出される。また、ホーニングヘッド4は、回転駆動手段である回転モータ8により軸5とともに回転される。
【0017】
往復動モータ6、位置検出手段7、及び、回転モータ8は、ホーニング加工制御装置9に電気的に接続されている。ホーニング加工制御装置9は、制御手段10を備える。制御手段10は、位置検出手段7によるホーニングヘッド4の位置の検出情報を受け取るとともに、往復動モータ6及び回転モータ8のそれぞれを制御する信号を出力する。
【0018】
制御手段10は、位置検出手段7により検出したホーニングヘッド4の往復動の位置に応じて、往復動モータ6及び回転モータ8を制御する。そして、制御手段10は、ホーニングヘッド4の回転及び軸方向の往復動によってワーク2の被加工穴3の内面3aをホーニング加工させる。
【0019】
本実施の形態において、制御手段10は、ホーニングヘッド4を往復動させる際に、ホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を被加工穴3の所定の切削範囲Rにおいて変化させる可変速度切削を実施させるよう制御可能である。つまり、制御手段10は、被加工穴3の切削上限Tと切削下限Bとの間の所定の切削範囲Rにて、被加工穴3の内面3aと砥石4aとの接触時間を被加工穴3の他の切削範囲と異ならせるようにホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を可変制御することが可能である。
【0020】
切削範囲Rは、ワーク2(被加工穴3)の形状、種類または特性、例えば剛性、材質、あるいは性質等に応じて設定される。換言すれば、切削範囲Rは、被加工穴3における内面3aの切削効率に応じて設定される。すなわち、被加工穴3がワーク2において異なる剛性の部位に亘り形成されている場合には、制御手段10は、その異なる剛性毎に異なる切削効率に応じてホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との少なくともいずれかを可変させることが可能である。
【0021】
例えば、制御手段10は、ホーニングヘッド4の往復速度を、所定の切削範囲Rにおいて他の切削範囲よりも速くまたは遅くなるように制御することで接触時間を短くまたは長くする(可変往復速度切削)。特に、本実施の形態では、制御手段10は、ホーニングヘッド4の往復速度を、所定の切削範囲Rにおいても徐々に変化させる。
【0022】
可変往復速度切削の一例として、制御手段10は、図2(a)に示すように底面3bを有する被加工穴3に対し、ホーニングヘッド4の往復速度が、底面3b側すなわち切削下限Bに近い側の所定の切削範囲Rにて底面3bに近い位置ほど遅くなるように制御する。
【0023】
あるいは、可変往復速度切削の他の例として、制御手段10は、図3(a)に示すように上側部に材質(性質)が異なる部位3cを有する被加工穴3に対し、ホーニングヘッド4の往復速度が、被加工穴3の部位3cに応じた所定の切削範囲Rにて切削上限Tに近いほど遅くなるように制御する。
【0024】
図2(b)及び図3(b)に、可変往復速度切削時のホーニングヘッド4の往復位置と回転速度とを示すグラフ(動作線図)を示す。図2(b)は、例えば図2(a)の被加工穴3をホーニング加工する際のグラフであり、図3(b)は、例えば図3(a)の被加工穴3をホーニング加工する際のグラフである。これらの例では、ホーニングヘッド4の回転速度は一定としている。
【0025】
また、例えば、制御手段10は、ホーニングヘッド4の回転速度を、所定の切削範囲Rにおいて他の切削範囲よりも速くまたは遅くなるように制御することで接触時間を長くまたは短くする(可変回転速度切削)。特に、本実施の形態では、制御手段10は、ホーニングヘッド4の回転速度を、所定の切削範囲Rにおいても徐々に変化させる。
【0026】
可変回転速度切削の一例として、制御手段10は、図2(a)に示すように底面3bを有する被加工穴3に対し、ホーニングヘッド4の回転速度が、底面3b側の所定の切削範囲Rにて底面3bに近い位置ほど速くなるように制御する。
【0027】
あるいは、可変往回転度切削の他の例として、制御手段10は、図3(a)に示すように上側部に材質(性質)が異なる部位3cを有する被加工穴3に対し、ホーニングヘッド4の回転速度が、被加工穴3の部位3cに応じた所定の切削範囲Rにて上側に近いほど速くなるように制御する。
【0028】
図2(c)及び図3(c)に、可変回転速度切削時のホーニングヘッド4の往復位置と回転速度とを示すグラフ(動作線図)を示す。図2(c)は、例えば図2(a)の被加工穴3をホーニング加工する際のグラフであり、図3(c)は、例えば図3(a)の被加工穴3をホーニング加工する際のグラフである。これらの例では、ホーニングヘッド4の往復速度は一定としている。
【0029】
なお、制御手段10は、ホーニングヘッド4の往復速度、回転速度を所定の切削範囲Rにおいて可変させる際、段階的に(徐々に)変化させてもよいし、無段階(連続的)に変化させてもよい。往復速度、回転速度を可変させる際、制御手段10は、例えば所定の移動距離毎に往復速度、回転速度を可変させる。
【0030】
所定の切削範囲Rは、被加工穴3の下側部あるいは上側部のいずれかに限らず、下側部と上側部との双方に設定されていてもよいし、被加工穴3の切削上限Tと切削下限Bとの間の任意の箇所に複数設定されていてもよい。この場合、それぞれの切削範囲Rに対して、制御手段10は、個別にホーニングヘッド4の往復速度、あるいは回転速度を設定してよい。
【0031】
また、可変往復速度切削と可変回転速度切削とは、いずれか一方のみを実施しもよいし、ワーク2の種類または特性、例えば被加工穴3の形状、被加工穴3におけるワーク2の剛性、材質、性質等に応じて、任意に組み合わせてよい。すなわち、制御手段10は、ホーニングヘッド4の往復速度の制御と回転速度の制御とを同時に実施してもよい。この場合、好ましくはホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との制御タイミングを同期する。
【0032】
好ましくは、制御手段10は、ホーニングヘッド4を往復動させる際にホーニングヘッド4の往復速度と回転速度とをそれぞれ一定とする一定速度切削を実施させるよう制御可能である。
【0033】
そして、制御手段10は、一つの被加工穴3の内面3aに対するホーニング加工時に、一定速度切削と可変速度切削とを設定された実施回数で実施する制御モードを有する。この制御モードにおいて、制御手段10は、一定速度切削と可変速度切削とを任意の順序で実施してよい。また、この制御モードにおいて、制御手段10は、ホーニング加工装置1に、少なくとも1回の可変速度切削と任意回数の一定速度切削とを実施させるよう制御可能とする。これらの実施回数や順序は、所定の切削範囲Rとともに、ユーザによりタッチパネル等の入力画面や入力手段を介して手動で入力設定されてもよいし、プログラムにより予め設定されていてもよい。
【0034】
なお、制御手段10は、可変速度切削のみを実施する制御モード、あるいは、一定速度切削のみを実施する制御モードを別個に備えていてもよい。
【0035】
次に、一実施の形態の動作を説明する。
【0036】
まず、ユーザは、例えばワーク2の形状、被加工穴3の要求精度等に応じて、制御手段10に対し、制御モードにおける切削範囲R、ホーニングヘッド4の往復動及び/または回転の減速可変率または高速可変率、一定速度切削と可変速度切削とのそれぞれの実施回数すなわち一定速度切削と可変速度切削との実施回数バランス、及び、これらの順序等を入力することで、ホーニング加工装置1の動作の詳細を設定する。
【0037】
制御手段10は、設定された動作の詳細に従い、ホーニングヘッド4の動作を制御する。すなわち、制御手段10は、位置検出手段7により検出されるホーニングヘッド4の位置に応じた信号を受け取り、その信号に応じて、往復動モータ6、及び/または、回転モータ8を動作させる信号を出力することで、ホーニングヘッド4を設定された動作に制御する。
【0038】
制御手段10は、ホーニングヘッド4を往復動させる際にホーニングヘッド4の往復速度と回転速度との少なくともいずれか一方を被加工穴3の所定の切削範囲Rにて変化させる可変速度切削を実施させるよう制御する。そのため、ワーク2の被加工穴3の内面3aとホーニングヘッド4の砥石4aとの接触時間を所定の切削範囲Rと被加工穴3のその他の範囲とで変化させることができ、特にワーク2(被加工穴3)の形状、種類または特性、例えば剛性、材質、あるいは性質等に応じて被加工穴3の内面3aの加工精度を向上でき、綺麗な円筒形状を加工できる。
【0039】
また、制御手段10は、ホーニングヘッド4の往復速度と回転速度とをそれぞれ一定としてホーニングヘッド4を往復動させる一定速度切削を実施させるよう制御可能であり、一つの被加工穴3に対し、一定速度切削と可変速度切削との実施回数バランスを設定可能とし、設定された実施回数で一定速度切削と可変速度切削とを実施することで、ワーク2の形状や被加工穴3の要求精度に応じて、加工時間と加工精度とのバランスを最適化することが可能になる。
【0040】
図2(a)に示すような底面3bを有する被加工穴3を加工する際の例を挙げると、図4(a)、あるいは図5(a)に示すように、可変速度切削のみを実施する場合には、所定の切削範囲Rでのホーニングヘッド4の砥石4aと被加工穴3の内面3aとの接触時間が長くなり、加工精度を確保しつつ、一定速度切削のみを繰り返し実施する場合と比較して所望の切削状態となるまでの加工時間をより短縮できる。
【0041】
また、図4(b)、あるいは図5(b)に示すように、可変速度切削と一定速度切削とを1回ずつ交互に実施する際には、所定の切削範囲Rでの被加工穴3の内面3aとの接触時間を適切に抑制し、接触時間が長くなり過ぎてホーニングヘッド4の砥石4aが偏摩耗することに起因する加工精度の低下を抑制できる。
【0042】
さらに、図4(c)、あるいは図5(c)に示すように、可変速度切削と一定速度切削とを所定回数ずつ、図示される例では一定速度切削を3回、可変速度切削を1回等実施する際には、所定の切削範囲Rでの被加工穴3の内面3aとの接触時間をより抑制してホーニングヘッド4の砥石4aの摩耗を抑制しつつ、加工精度を確保でき、例えば被加工面3の底面3bから所定の範囲Rまでの距離が長い場合等に好適である。
【0043】
このように、ワーク2の被加工穴3において切削効率や剛性等が異なる部分があることで一定速度切削のみでは精度(円筒度)が得られないワーク2に対して、適切な範囲及び回数で可変速度切削を実施することにより、被加工穴3の内面3aの良好な加工精度を得ることができる。
【0044】
そして、ホーニング加工制御装置9をホーニング加工装置1に適用することで、一般的なホーニング加工装置1に対し、可変速度切削を実施可能な機能を容易に付与できる。
【0045】
なお、上記一実施の形態においては、可変速度切削を複数回実施する場合、同一制御の可変往復速度切削のみを複数回、あるいは、同一制御の可変回転速度切削のみを複数回実施するものを例に挙げたが、これに限らず、例えば可変往復速度切削を1回、可変回転速度切削を1回等、可変往復速度切削と可変回転速度切削とを混在させて実施してもよいし、ホーニングヘッド4の往復速度と回転速度とを同時に可変させてもよい。さらに、複数回の可変速度切削のそれぞれにおいて、制御手段10によるホーニングヘッド4の往復速度や回転速度の制御が毎回同一である必要もない。
【符号の説明】
【0046】
1 ホーニング加工装置
2 ワーク
3 被加工穴
3a 内面
4 ホーニングヘッド
4a 砥石
9 ホーニング加工制御装置
10 制御手段
R 切削範囲
図1
図2
図3
図4
図5