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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063156
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20230427BHJP
   G05D 16/10 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
F16K1/42 B
G05D16/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173500
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【テーマコード(参考)】
3H052
5H316
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA26
3H052CA11
3H052CB01
3H052EA16
5H316AA20
5H316BB01
5H316DD12
5H316DD17
5H316EE02
5H316EE12
5H316EE17
5H316FF13
5H316GG01
5H316JJ01
5H316JJ13
5H316KK02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなく弁座の変形を防止することが可能なレギュレータを提供する。
【解決手段】高圧の流体を減圧して所望の圧力に調整した流体を得るレギュレータ1であって、通路20を貫通形成したボディ10Aと、通路20を区画して形成された減圧室23,大気圧室24,調圧室25と、入口カバー30と、環状の弁座100と、嵌合凹部26と嵌合凸部33からなる弁座保持部と、ピストン50と、調圧ばね60と、を備え、弁座100は、内周面または外周面に環状溝107が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の流体を減圧して所望の圧力に調整した流体を得るレギュレータであって、
ボディと、
前記ボディに貫通形成され、一方端を流体の入力側、他方端を流体の出力側とした通路と、
前記通路を前記入力側から前記出力側へと順に区画して形成された減圧室,大気圧室,調圧室と、
前記通路における前記減圧室よりも前記入力側の位置に備えられて中心に中心孔が形成された環状の弁座と、
前記弁座を軸線方向に押圧しつつ保持する弁座保持部と、
前記弁座に接触または離間する弁体を含み、前記通路内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室,前記大気圧室,前記調圧室を区画するピストンと、
前記ピストンを前記出力側に付勢する調圧ばねと、を備え、
前記弁座は、内周面または外周面に環状溝が形成されていることを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
流体の導入口と、前記導入口の反対側に突出形成された筒状の嵌合凸部とを有する入口カバーが、前記導入口を前記通路の入力側と連通するように装着されているとともに、前記環状溝は前記弁座の外周面に形成されており、
前記弁座保持部は、
前記嵌合凸部と、
前記通路の前記入力側に形成され、前記弁座の外径と略一致する内径を有するとともに前記出力側方向の開口端部において内方に突出形成された環状保持片を有する嵌合凹部と、からなり、
前記嵌合凸部の長さが、前記嵌合凹部の長さから前記弁座の厚みを引いた長さよりも長く形成されており、
前記弁座が前記嵌合凹部と前記嵌合凸部の間に嵌め込まれて押圧しつつ保持されることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項3】
前記環状溝の深さが、前記環状保持片の突出幅以上であることを特徴とする請求項2記載のレギュレータ。
【請求項4】
前記ピストンは、
前記弁座に接触または離間する前記弁体と、
前記通路内を前記減圧室と前記大気圧室に区画する入口側ピストン部と、
前記通路内を前記大気圧室と前記調圧室に区画する出口側ピストン部と、
前記減圧室と前記調圧室を連通する流体通路と、からなることを特徴とする請求項2または3記載のレギュレータ。
【請求項5】
流体の導入口を有する入口カバーが、前記導入口を前記通路の入力側と連通するように装着されているとともに、前記環状溝は前記弁座の内周面に形成されており、
前記弁座保持部は、
前記弁座の外径と略一致する内径を有する弁座保持穴と、
前記弁座保持穴と連続して同軸に形成されたねじ穴と、
前記弁座の中心孔の径よりも大径の頭部が形成され、前記ねじ穴に螺着される固定ねじと、
前記弁座保持穴の周囲に形成されて流体が通過する通孔と、を備え、前記入口カバーと前記ボディとの間に装着される円盤状の弁座保持部材であって、
前記弁座が前記弁座保持穴に嵌め込まれて前記固定ねじにより押圧しつつ保持されることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項6】
前記環状溝の深さが、前記固定ねじにおける頭部の突出幅以上であることを特徴とする請求項5記載のレギュレータ。
【請求項7】
前記ピストンは、
前記弁座に接触または離間するとともに前記通路内を前記減圧室と前記大気圧室に区画する弁体と、
前記通路内を前記大気圧室と前記調圧室に区画するピストン部と
前記弁体に貫通形成されており前記減圧室と前記調圧室を連通する流体通路と、からなることを特徴とする請求項5または6記載のレギュレータ。
【請求項8】
前記環状溝が、前記弁体と接触するシート面に対して平行に形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いられるピストン式のレギュレータに関し、より詳細には弁座の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧の流体を減圧し、所望の圧力に調整する装置であるレギュレータは広く知られており、例えば燃料タンクに貯留したCNGなどの高圧燃料をエンジンに供給する際の調圧装置として利用されているが、その方式はダイヤフラム式と、ピストン式の2種類に大別される。
【0003】
ピストン式のレギュレータは例えば特開2007-146875号公報(特許文献1)、特開2013-41375号公報(特許文献2)、および特開2019-67216号公報(特許文献3)などに提示されており、ピストンに加わる1次圧と、これに抗する2次圧のバランスを調整し、所望の2次圧に設定するものである。
【0004】
図9乃至図11はピストン式のレギュレータの一例を示すものであり、このレギュレータ3は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Aに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21および出力側22には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30および流体を気密に取り出すための取出口41を有する出口カバー40がそれぞれ止めねじなどの固着具32,42により固着されている。
【0005】
前記通路20は、減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室25において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。
【0006】
前記通路20の入力側21には環状保持片27を有する嵌合凹部26が形成されているとともに、前記入口カバー30における前記導入口31と反対側には筒状の嵌合凸部33が突出形成されており、前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33とから弁座保持部が構成され、前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33の間には樹脂やゴムなどの弾性材料により形成された環状の弁座100が嵌め込まれて軸線方向に押圧されつつ保持されている。
【0007】
前記通路20の出力側22には、前記弁座100に接触または離間する弁体51を含み、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン50と、前記ピストン50を前記出力側22に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0008】
前記レギュレータ3においては、製造時の公差などを原因とする前記弁座100の浮きやズレ、および流体のリークを防止するために、前記嵌合凸部33の長さは前記嵌合凹部26の長さから前記弁座100の厚みを引いた長さよりも長く形成されており、前記嵌合凸部33に押されることによって前記弁座100は一定の圧力が負荷された状態で保持される。
【0009】
しかしながら、弾性材料により形成された環状の弁座100は、前記弁体51に接触するシート面102のうち、前記環状保持片27に接している外側部分104は前記環状保持片27によって変形不能に支えられているが、前記環状保持片27に接していない内側部分105は変形可能であるため、前記嵌合凸部33の押圧力によって前記弁座100が前記弁体51方向に変形してしまう場合があった。
【0010】
図11は前記嵌合凸部33の押圧力によって前記弁座100が前記弁体51方向に変形した状態を示す図であり、このようにシート面102の変形が生じると、前記弁座100と前記弁体51との接触が不均一となり、リーク不良等による機能損失に発展するおそれがあった。
【0011】
一方、図12乃至図14は前記図9乃至図11に示した例と同様のピストン式のレギュレータの一例を示すものであり、弁座を保持する弁座保持部およびピストンの構成が異なるものである。
【0012】
すなわち、このレギュレータ4において、弁座110は、前記入口カバー30とボディ10Bとの間に装着される円盤状の弁座保持部材70に保持されており、ピストン80は、前記弁座110に接触することで流体通路83の開閉を行う筒状の弁体81を含む構成である。
【0013】
前記弁座110の前記弁座保持部材70への取り付けについては、弁座保持穴71に前記弁座110を挿入し、前記弁座100の中心孔111の径よりも大径の頭部74を有する固定ねじ73をねじ穴72に螺着することで、前記頭部74に押されることによって前記弁座110は一定の圧力が負荷された状態で保持される。
【0014】
しかしながら、弾性材料により形成された環状の弁座110は、前記固定ねじ73の締結力によって、前記弁体81に接触するシート面112のうち、前記頭部74に接していない外側部分114が前記弁体81方向に変形してしまう場合があった。
【0015】
図14は前記固定ねじ74の締結力によって前記弁座110が前記弁体81方向に変形した状態を示す図であり、このようにシート面112の変形が生じると、前記弁座110と前記弁体81との接触が不均一となり、リーク不良等による機能損失に発展するおそれがあった。
【0016】
前記レギュレータ3および前記レギュレータ4において、部品構成を変更せずに弁座が変形する問題を回避しようとすると、各部品の寸法精度を厳しく管理するとともに、時間と手間をかけて組み立てなければならず、コスト増となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007-146875号公報
【特許文献2】特開2013-41375号公報
【特許文献3】特開2019-67216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は前記従来のレギュレータが有する問題点を解決するためになされたものであり、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなく弁座の変形を防止することが可能なレギュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するためになされた本発明は、高圧の流体を減圧して所望の圧力に調整した流体を得るレギュレータであって、
ボディと、
前記ボディに貫通形成され、一方端を流体の入力側、他方端を流体の出力側とした通路と、
前記通路を前記入力側から前記出力側へと順に区画して形成された減圧室,大気圧室,調圧室と、
前記通路における前記減圧室よりも前記入力側の位置に備えられて中心に中心孔が形成された環状の弁座と、
前記弁座を軸線方向に押圧しつつ保持する弁座保持部と、
前記弁座に接触または離間する弁体を含み、前記通路内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室,前記大気圧室,前記調圧室を区画するピストンと、
前記ピストンを前記出力側に付勢する調圧ばねと、を備え、
前記弁座は、内周面または外周面に環状溝が形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、弁座に形成された環状溝によって押圧力を吸収することで、弁体と接触するシート面の変形を生じることがないため、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなく弁座の変形を防止することが可能となる。
【0021】
また、流体の導入口と、前記導入口の反対側に突出形成された筒状の嵌合凸部とを有する入口カバーが、前記導入口を前記通路の入力側と連通するように装着されているとともに、前記環状溝は前記弁座の外周面に形成されており、
前記弁座保持部は、
前記嵌合凸部と、
前記通路の前記入力側に形成され、前記弁座の外径と略一致する内径を有するとともに前記出力側方向の開口端部において内方に突出形成された環状保持片を有する嵌合凹部と、からなり、
前記嵌合凸部の長さが、前記嵌合凹部の長さから前記弁座の厚みを引いた長さよりも長く形成されており、
前記弁座が前記嵌合凹部と前記嵌合凸部の間に嵌め込まれて押圧しつつ保持される場合、比較的簡易な構成で確実に弁座の保持が可能であるため特に望ましい。
【0022】
更に、前記環状溝の深さが、前記環状保持片の突出幅以上である場合、より確実に前記環状溝によって押圧力を吸収することができ、弁体と接触するシート面の変形を生じることがない。
【0023】
加えて、本発明における前記ピストンは、
前記弁座に接触または離間する前記弁体と、
前記通路内を前記減圧室と前記大気圧室に区画する入口側ピストン部と、
前記通路内を前記大気圧室と前記調圧室に区画する出口側ピストン部と、
前記減圧室と前記調圧室を連通する流体通路と、からなることが望ましい。
【0024】
また、流体の導入口を有する入口カバーが、前記導入口を前記通路の入力側と連通するように装着されているとともに、前記環状溝は前記弁座の内周面に形成されており、
前記弁座保持部は、
前記弁座の外径と略一致する内径を有する弁座保持穴と、
前記弁座保持穴と連続して同軸に形成されたねじ穴と、
前記弁座の中心孔の径よりも大径の頭部が形成され、前記ねじ穴に螺着される固定ねじと、
前記弁座保持穴の周囲に形成されて流体が通過する通孔と、を備え、前記入口カバーと前記ボディとの間に装着される円盤状の弁座保持部材であって、
前記弁座が前記弁座保持穴に嵌め込まれて前記固定ねじにより押圧しつつ保持される場合、比較的簡易な構成で確実に弁座の保持が可能であるため特に望ましい。
【0025】
更に、前記環状溝の深さが、前記固定ねじにおける頭部の突出幅以上である場合、より確実に前記環状溝によって押圧力を吸収することができ、弁体と接触するシート面の変形を生じることがない。
【0026】
加えて、本発明における前記ピストンは、
前記弁座に接触または離間するとともに前記通路内を前記減圧室と前記大気圧室に区画する弁体と、
前記通路内を前記大気圧室と前記調圧室に区画するピストン部と
前記弁体に貫通形成されており前記減圧室と前記調圧室を連通する流体通路と、からなることが望ましい。
【0027】
また、前記環状溝が、前記弁体と接触するシート面に対して平行に形成されている場合、成形がしやすいとともに適度に潰れやすく押圧力の吸収もしやすいため望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、弁座に形成された環状溝によって押圧力を吸収することで、弁体と接触するシート面の変形を生じることがないため、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなく弁座の変形を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明における好ましい実施の形態を示す断面図。
図2図1に示した実施の形態における組み立て過程を示す拡大部分断面図。
図3図1に示した実施の形態における弁座を示す(a)斜視図および(b)一部を切り欠いた斜視図。
図4図1に示した実施の形態における弁座の変形過程を示す拡大部分断面図。
図5図1に示した実施の形態において異なるピストンを用いた断面図。
図6】本発明の異なる実施の形態を示す断面図。
図7図6に示した実施の形態における弁座と弁座保持部材を示す分解断面図。
図8図6に示した実施の形態における弁座の変形過程を示す説明図。
図9】従来のピストン式のレギュレータの一例を示す断面図。
図10図9に示した従来例における組み立て過程を示す拡大部分断面図。
図11図9に示した従来例における弁座の変形状態を示す拡大部分断面図。
図12】従来のピストン式のレギュレータの異なる一例を示す断面図。
図13図12に示した従来例における弁座と弁座保持部材を示す分解断面図。
図14図12に示した従来例における弁座の変形状態を示す拡大部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0031】
図1乃至図4は、本発明における好ましい実施の形態を示す図である。なお、前記図9乃至図11に示した従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0032】
レギュレータ1は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Aに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21および出力側22には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30および流体を気密に取り出すための取出口41を有する出口カバー40がそれぞれ止めねじなどの固着具32,42により固着されている。
【0033】
前記通路20は、前記入力側21から前記出力側22へと順に減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室25において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。なお、符号11は前記大気圧室24と前記ボディ10Aの外部空間とを連通して前記大気圧室24内の圧力を大気圧と等しくするための連通孔である。
【0034】
前記通路2の入力側21には、前記出力側22方向の開口端部において内方に突出形成された環状保持片27を有する嵌合凹部26が形成されている。
【0035】
前記入口カバー30における前記導入口31と反対側には、筒状の嵌合凸部33が突出形成されている。
【0036】
前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33とから弁座保持部が構成され、前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33の間には、樹脂やゴムなどの弾性材料により形成されて前記嵌合凹部26の内径と略一致かつ前記嵌合凹部26に挿入可能な外径を有する環状の弁座100が嵌め込み保持されている。
【0037】
前記弁座100は、中心孔101が形成された環状を呈し、ピストン50の弁体51と接触するシート面102と、その反対側の裏面103を有し、前記中心孔101周縁の前記シート面102はR面取り形状である(図3参照)。
【0038】
前記嵌合凸部33の外径は、前記嵌合凹部26の内径と略一致かつ前記嵌合凹部26に挿入可能な径に形成されており、前記嵌合凸部33の長さL1は、前記嵌合凹部26の長さL2から前記弁座100の厚みT1を引いた長さL3よりも長く形成されている。
【0039】
このように、製造時の公差などを原因とする前記弁座100の浮きやズレ、および流体のリークを防止するために、前記嵌合凸部33の長さL1が前記長さL3よりも長く形成されることで、前記嵌合凸部33に押されて前記弁座100は一定の圧力が負荷された状態で保持される。
【0040】
前記通路2の出力側22には、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン50と、前記ピストン50を前記出力22側に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0041】
前記ピストン50は、前記弁座100に接触または離間する弁体51と、前記通路20内を前記減圧室23と前記大気圧室24に区画する入口側ピストン部52と、前記通路20内を前記大気圧室24と前記調圧室25に区画する出口側ピストン部53と、前記減圧室23と前記調圧室25を連通する流体通路54と、からなる。なお、符号55は前記入口側ピストン部52に外嵌されたシール部材、符号56は前記出口側ピストン部53に外嵌されたシール部材である。
【0042】
前記調圧ばね60は前記ピストン50が受ける圧力荷重と釣り合うような強さに設定されており、前記大気圧室24内に装着されて前記ピストン50の前記出口側ピストン部53と接触し、前記ボディ10Aと前記ピストン50を互いに離間させる方向に付勢する。
【0043】
上記構成を有するレギュレータの動作を以下に説明する。
まず、前記導入口31から高圧の流体が導入されると、前記流体は前記弁座100に形成された中心孔101を通過して前記減圧室23に流入する。
【0044】
このとき、初期段階としては前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座100と前記弁体51が離間した開弁状態となっており、前記流体は前記流体通路54を介して前記調圧室25に流入する。
【0045】
その後、前記調圧室25側に流入した前記流体により前記調圧室25内の圧力が高まるにつれ、前記ピストン50が前記入口側21に向けて押されることとなり、前記調圧室25内の圧力が所定の圧力に達した時点で前記弁座100と前記弁体51が接触する閉弁状態となり、前記流体の流入が遮断される。
【0046】
そして、前記調圧室25内の前記流体が前記取出口41から排出されて前記調圧室25内の圧力が低下すると、前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座100と前記弁体51が離間した開弁状態に復帰する。
【0047】
以上の動作を繰り返し、前記弁座100と前記弁体51の隙間面積を変化させることで排出される流体の圧力を一定に保つものである。
【0048】
ここで、前記図9乃至図11に示したレギュレータ3と異なる点は、樹脂やゴムなどの弾性材料で作られた弁座100の外周面106に、中心に向けて所定の深さと幅を有する環状溝107が形成されている点である。
【0049】
前記環状溝107が形成されていることによって、前記嵌合凸部33によって前記弁座100が軸線方向に押圧された際に、その押圧力を前記環状溝107が吸収して変形することによって前記シート面102の変形を抑制できる。
【0050】
このとき、前記環状溝107の深さD1が、前記環状保持片27の突出幅W1以上であることによって、より確実に前記環状溝107によって押圧力を吸収することができ、前記弁体51と接触する前記シート面102の変形を生じることがない。
【0051】
以下、弁座の変形過程について図4に基づいて説明する。
まず、図4(a)は前記入口カバー30を前記ボディ10Aに装着し、前記嵌合凸部33が前記弁座100の裏面103に接触するまで押し込んだ状態を示す図であり、ここから前記固着具32を締め付けることで前記入口カバー30全体が前記ボディ10A方向へ移動し、前記嵌合凸部33によって前記弁座100に押圧力が加えられる。
【0052】
図4(b)は前記固着具32を締め付けて前記入口カバー30の装着が完了した状態を示す図であり、この図に示すように、前記環状溝107における前記シート面102側の壁面が屈曲し、前記裏面103側に近づくように変形を生じることによって前記嵌合凸部33の押圧力を吸収することができる。
【0053】
図4(c)は仮に嵌合凸部33の長さが前記図4(b)よりも更に長い場合において、前記固着具32を締め付けて前記入口カバー30の装着が完了した状態を示す図であり、この図に示すように、前記環状溝107における前記シート面102側の壁面が屈曲し、前記裏面103側に更に近づくように変形を生じることによって前記嵌合凸部33の押圧力を吸収することができる。
【0054】
また、図5は前記図1乃至図4に示した実施の形態を元に異なるピストンを用いた実施の形態を示すものであり、全体の構成および作用は前記図1乃至図4に示した実施の形態とほぼ同様であるが、ピストンおよび出口カバーの構造が異なる。
【0055】
本実施の形態は、弁体51の中心軸に内径がシート径と同径の導通孔57を設けるとともに出口カバー40に突出形成したロッド43を前記導通孔57に気密に挿入することで、ピストン50に付加される燃料入口圧力による荷重を相殺することを可能とし、燃料入口圧力によって燃料出口の圧力を安定させた構造となっている。
【0056】
図6及び図8は、本発明の異なる実施の形態を示す断面図であり、前記図12乃至図14に示した従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0057】
レギュレータ2は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Bに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21および出力側22には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30および流体を気密に取り出すための取出口41を有する出口カバー40がそれぞれ止めねじなどの固着具32,42により固着されている。
【0058】
前記通路20は、減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室24において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。なお、符号11は前記大気圧室24と前記ボディ10Bの外部空間とを連通して前記大気圧室24内の圧力を大気圧と等しくするための連通孔である。
【0059】
前記通路2の入力側21には、前記入口カバー30と前記ボディ10Bとの間に円盤状の弁座保持部材70が装着されており、弁座110は弁座保持部である前記弁座保持部材70に保持されている。
【0060】
前記弁座保持部70は、前記弁座110の外径と略一致する内径を有する弁座保持穴71と、前記弁座保持穴71と連続して形成されたねじ穴72と、前記弁座110の中心孔111の径よりも大径の頭部74が形成されており前記ねじ穴72に螺着される固定ねじ73と、流体が通過する通孔75と、を備える。
【0061】
前記弁座110の前記弁座保持部材70への取り付けについては、弁座保持穴71に前記弁座110を挿入し、前記弁座110の中心孔111の径よりも大径の頭部74を有する固定ねじ73をねじ穴72に螺着することで、前記頭部74に押されることによって前記弁座110は一定の圧力が付加された状態で保持される。
【0062】
前記弁座110は、中心孔111が形成された環状を呈し、弁体81と接触するシート面112と、その反対側の裏面113を有する。
【0063】
前記通路2の出力側22には、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン80と、前記ピストン80を前記出力側に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0064】
前記ピストン80は、前記弁座110に接触または離間するとともに前記通路20内を前記減圧室23と前記大気圧室24に区画する弁体81と、前記通路20内を前記大気圧室24と前記調圧室25に区画するピストン部82と、前記弁体81に貫通形成されており前記減圧室23と前記調圧室25を連通する流体通路83と、からなる。なお、符号84は前記弁体81に外嵌されたシール部材、符号85は前記ピストン部82に外嵌されたシール部材である。
【0065】
前記調圧ばね60は前記ピストン80が受ける圧力荷重と釣り合うような強さに設定されており、前記大気圧室24内に装着されて前記ピストン80の前記ピストン部82と接触し、前記ボディ10Bと前記ピストン80を互いに離間させる方向に付勢する。
【0066】
ここで、前記図12乃至図14に示したレギュレータ4と異なる点は、樹脂やゴムなどの弾性材料で作られた弁座110の内周面116に、中心に向けて所定の深さと幅を有する環状溝117が形成されている点である。
【0067】
前記環状溝117が形成されていることによって、前記固定ねじ73の前記頭部74によって前記弁座110が軸線方向に押圧された際に、その押圧力を前記環状溝117が吸収して変形することによって前記シート面112の変形を抑制できる。
【0068】
このとき、前記環状溝117の深さD2が、前記頭部74の突出幅W2以上であることによって、より確実に前記環状溝117によって押圧力を吸収することができ、前記弁体81と接触する前記シート面112の変形を生じることがない。
【0069】
以下、弁座110の変形過程について図8に基づいて説明する。
まず、図8(a)は前記固定ねじ73の前記頭部74が前記弁座110のシート面112に接触するまでねじ込んだ状態を示す図であり、ここから前記固定ねじ73を締め付けることで前記固定ねじ73が奥方向へ移動し、前記頭部74によって前記弁座110に押圧力が加えられる。
【0070】
図8(b)は前記固定ねじ73を締め付けて前記弁座110の固定が完了した状態を示す図であり、この図に示すように、前記環状溝117における前記シート面112側の壁面が屈曲し、前記裏面113側に近づくように変形を生じることによって前記頭部74の押圧力を吸収することができる。
【0071】
本発明の各実施の形態において、弁座に形成された環状溝が、弁体と接触するシート面に対して平行に形成されている場合、成形がしやすいとともに適度に潰れやすく押圧力の吸収もしやすいため望ましい。
【0072】
以上の通り、本発明によれば、弁座に形成された環状溝によって押圧力を吸収することで、弁体と接触するシート面の変形を生じることがないため、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなく弁座の変形を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3,4 レギュレータ、10A,10B ボディ、11 連通孔、20 通路、21 入力側、22 出力側、23 減圧室、24 大気圧室、25 調圧室、26 嵌合凹部、27 環状保持片、30 入口カバー、31 導入口、32 固着具、33 嵌合凸部、40 出口カバー、41 取出口、42 固着具、43 ロッド、50 ピストン、51 弁体、52 入口側ピストン部、53 出口側ピストン部、54 流体通路、55 シール部材、56 シール部材、57 導通孔、60 調圧ばね、70 弁座保持部材、71 弁座保持穴、72 ねじ穴、73 固定ねじ、74 頭部、75 通孔、80 ピストン、81 弁体、82 ピストン部、83 流体通路、84 シール部材、85 シール部材、100 弁座、101 中心孔、102 シート面、103 裏面、104 外側部分、105 内側部分、106 外周面、107 環状溝、110 弁座、111 中心孔、112 シート面、113 裏面、114 外側部分、115 内側部分、116 内周面、117 環状溝、D1 環状溝の深さ、D2 環状溝の深さ、L1 嵌合凸部の長さ、L2 嵌合凹部の長さ、L3 嵌合凹部の長さから弁座の厚みを引いた長さ、T1 弁座の厚み、W1 環状保持片の突出幅、W2 頭部の突出幅
図1
図2
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図4
図5
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図14