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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063160
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20230427BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20230427BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A01D41/12 B
F02D29/00 B
F02D29/02 K
F02D29/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173504
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 達也
(72)【発明者】
【氏名】大田 彰
【テーマコード(参考)】
2B074
3G093
【Fターム(参考)】
2B074AA01
2B074BA05
2B074EA03
2B074EC01
2B074ED01
2B074EE04
2B074FB01
2B074GE05
3G093AA09
3G093BA04
3G093CA08
(57)【要約】
【課題】運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けて、刈取装置の可動部における巻き込まれ事故の防止を図る場合に、運転者の在席を偶々検出することができなかった際の立毛穀稈の踏み倒しの虞を無くすことができるコンバインを提供する。
【解決手段】安全装置は、操縦部における運転者の在席を偶々検出することができなかった際の対策として、刈取装置と共に走行装置がエンジン動力によって駆動されて刈取走行中であると判断される場合には、刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けるコンバインにあって、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を偶々検出することができなかった際の対策として、刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、刈取装置と共に走行装置がエンジン動力によって駆動されて刈取走行中であると判断される場合には、前記暫定借置をとって刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、前記暫定借置をとると共に、この暫定措置が所定時間に亘って継続すると、暫定措置を解除して刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記安全装置は、前記暫定措置をとった際に運転者に着席を促す警告を行うことを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記安全装置は、操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する自らの作動制御を人為的に禁止して、操縦部における運転者の離席にも拘わらず刈取装置を駆動可能になす規制手段を設けることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物を収穫するコンバインに係り、詳しくは、運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
稲や麦等を刈取って穀物(穀粒)を収穫するコンバインは、その刈取装置によって圃場の立毛穀稈を例えば、自脱型のコンバインであれば、引起爪を備える引起装置によって引起して刈刃装置により刈取ると共に、刈取った穀稈を掻込搬送装置、株元搬送装置、穂先搬送装置等によって構成する穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送する。
【0003】
また、汎用型のコンバインであれば、圃場の立毛穀稈をタインを備える掻込リールによって掻き込んで刈刃装置により刈取ると共に、刈取った穀稈を横送りオーガと縦送りフィーダ等の穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送する。さらに、刈取装置によって刈取って搬送した穀稈は、何れのタイプのコンバインであっても、脱穀装置によって穀粒の脱粒処理と選別処理を行って一連の収穫作業を行う。
【0004】
そして、このような穀物を収穫するコンバインにおける人身事故について若干考察すると、その死亡事故の多くは圃場への移動走行に伴う機体の転倒や転落事故であるといわれている。しかし、本来の収穫作業に伴う刈取装置や脱穀装置等における可動部での巻き込まれ事故も少なからず報告されており、また、この巻き込まれ事故は死亡に至らなくとも重傷化し易く、これを軽視することができない。
【0005】
そこで、近年では手刈りした穀稈の手扱ぎ作業を行う際の巻き込まれ事故の対策として、例えば、脱穀装置に緊急停止スイッチを設け、このスイッチを押すだけで、エンジンと脱穀フイードチェーンが瞬時に停止する緊急停止装置を設けることで、より安全に手扱ぎ作業が行えるようにしている。また、作業部を駆動したまま降車して、その作業部に巻き込まれるといった事故を防ぐために、操縦部からの離席時に走行部や作業部への動力伝達を自動的に遮断することが提案されている(特許文献1の段落0069及び0070の記載を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-61616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、立毛穀稈を刈取って搬送する刈刃装置や穀稈搬送装置等を設けるコンバインの刈取装置は、左右往復動するバリカン式の刈刃や駆動スプロケット等に巻き掛けて回転する搬送チェーン等の危険な可動部品を多く使用する。また、これらの可動部には切れ藁や泥土等が降り掛かり易く、これが堆積すると穀稈搬送の妨げになると共に、刈取った穀稈が可動部に一度詰まるとこれを取り除かなければ刈取作業を継続して行うことができない。
【0008】
そこで、これらの可動部は切れ藁や泥土が堆積し難く、また、穀稈の詰りを生じないように空き空間を多くする開放構造になして、危険と見做される箇所のみを必要最低限のカバーによって覆う。そのため、これらの可動部の大半は機体の外部に露出して、しかも、作業者は切れ藁や泥土、或いは可動部に詰まった穀稈等を取り除くために可動部に近づいて、これらに手指等を延ばして触ることができる。
【0009】
そして、刈取作業を行っている際に刈取装置の可動部に、前述の藁屑や泥土等の堆積が見られたり穀稈の詰りが発生すると、運転者は刈取作業を中断して操縦部から降車し、これ等の除去作業を行う。なお、刈取装置の駆動回転数は一般的に走行変速装置による車速の増減によって変化する連動方式を採用しているから、この場合に刈取クラッチや脱穀クラッチを切らずに降車すると、刈取作業の中断による走行停止に伴って通常、刈取装置の可動部は回転を停止する。
【0010】
しかし、刈取クラッチが入りとなっていてエンジンからの動力伝達が刈取装置に対して完全に遮断されている訳ではないので、何らかのはずみでこの可動部が不測に回転する可能性を否定することができない。また、操縦部に設ける走行の副変速レバーを作業又は路上走行速から中立に切換えて主変速レバーを中立位置から前進位置に変速操作すると、機体を停止させた状態で刈取装置を回転駆動することができる。
【0011】
そのため、運転者が刈取作業を中断して脱穀クラッチや刈取クラッチを切らずに操縦部から降車して、前述の藁屑や泥土等の堆積を取り除いたり、或いは穀稈の詰まりを取り除くために、これらに手指を近付けると、運転者の着衣の袖口等が回転する可動部に触れて手指がこれに巻き込まれたり、手指が直接に可動部に当接して怪我をする虞がある。
【0012】
そこで、このような巻き込まれ事故等を防止するためにコンバインの点検整備や清掃を行う際には、一般的に機体に駐車ブレーキをかけて、また、下降防止装置によって刈取装置の下降を防止し、さらに、エンジンを必ず停止して十分な安全を確保して作業を行うことが推奨される。しかし、このような推奨を知らなかったり、作業を急ぐあまり推奨を守らない場合もあり、このような推奨内容の徹底だけでは事故防止の対策としては不十分である。
【0013】
また、脱穀装置に採用されているような緊急停止スイッチを刈取装置にも設けて、このスイッチを押すだけで、エンジンと穀稈搬送装置の搬送チェーン等が瞬時に停止する緊急停止装置を設けることが考えられる。しかし、このような対策は飽くまでも巻き込まれた後の事後対策であると共に、刈取装置の可動部は相当広い領域に分散しているので、これに対応させて多数の緊急停止スイッチを設けることは、スイッチの配置スペースの確保とともに大幅なコストアップに繋がり好ましくない。
【0014】
一方、特許文献1に記載されているように、運転者の操縦部からの離席時に作業部としての刈取装置への動力伝達を自動的に遮断する安全装置を設けると、巻き込まれ事故の事前対策として現実的な有利性を備える対策と考えられる。しかし、このような安全装置をそのまま設けると、刈取装置の先端に設ける分草体等を見ながら立毛穀稈の並びに合わせて機体の進行方向を修正したり、搬送中の刈取穀稈に含まれる雑草等を除去するために運転者が操縦部のステップ板上に立ち上がると、操縦座席に設けるシートスイッチ等が離席を検出する。
【0015】
また、運転者が操縦部のステップ板上に立ち上がった際に、ステップ板の下面に設ける左右一対のステップスイッチのうち少なくとも1つが入り作動して操縦部内に運転者が居ることを検出するかは定かではなく、仮に何れのステップスイッチも入り作動しなければ、安全装置が作動して刈取装置への動力伝達が遮断し刈取作業を行えなくする。さらに、この場合、エンジンを停止させるか、機体の走行を停止させなければ刈取装置や走行装置が立毛穀稈を押し倒したり踏み倒してしまうという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けて、刈取装置の可動部における巻き込まれ事故の防止を図る場合に、運転者の在席を偶々検出することができなかった際の立毛穀稈の踏み倒しの虞を無くすことができるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第1に、運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けるコンバインにあって、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を偶々検出することができなかった際の対策として、刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のコンバインは第2に、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、刈取装置と共に走行装置がエンジン動力によって駆動されて刈取走行中であると判断される場合には、前記暫定借置をとって刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明のコンバインは第3に、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、前記暫定借置をとると共に、この暫定措置が所定時間に亘って継続すると、暫定措置を解除して刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断することを特徴とする。そして、本発明のコンバインは第4に、前記安全装置は、前記暫定措置をとった際に運転者に着席を促す警告を行うことを特徴とする。
【0020】
そのうえ、本発明のコンバインは第5に、前記安全装置は、操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する自らの作動制御を人為的に禁止して、操縦部における運転者の離席にも拘わらず刈取装置を駆動可能になす規制手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンバインによれば、運転席を備える操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を設けるコンバインにあって、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を偶々検出することができなかった際の対策として、刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとる。
【0022】
そのため、運転者が刈取作業を中断して脱穀クラッチや刈取クラッチを切らずに操縦部から降車(離席)して、刈取装置の可動部等に堆積する藁屑や泥土等を取り除いたり、或いは穀稈の詰まりを取り除くために、これらに手指を近付けても、刈取装置へのエンジン動力の伝達が遮断しているので可動部が不測に回転する虞は全くないから巻き込まれ事故を防止することができる。
【0023】
そして、操縦部における運転者の在席を検出する例えば、シートスイッチやステップスイッチ等のセンサが運転席から立ち上がることによって運転者の在席を検出することができなかったり、センサが上手く在席を検出することができなかった際の対策として、刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとるから、在席の不検出(離席)によって直ちに刈取装置へのエンジン動力の伝達が遮断して立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0024】
また、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、刈取装置と共に走行装置がエンジン動力によって駆動されて刈取走行中であると判断される場合には、前記暫定借置をとって刈取装置へのエンジン動力の伝達を継続する。そのため、上述のように在席の不検出によって直ちに刈取装置へのエンジン動力の伝達が遮断して、それにより立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0025】
一方、走行副変速レバーが中立、且つ主変速レバーが前進位置に操作されて、走行停止状態で刈取装置が回転駆動されている場合には、走行装置が駆動されていないので暫定借置がとられることはなく、在席の不検出によって直ちに刈取装置へのエンジン動力の伝達が遮断される。しかし、この場合は、刈取装置が回転駆動されなくなっても、格別重大な支障が発生する訳ではないから、安全対策上の致し方ない事項として許容される。
【0026】
さらに、前記安全装置は、操縦部における運転者の在席を検出することができなかった際に、前記暫定借置をとると共に、この暫定措置が所定時間に亘って継続すると、暫定措置を解除して刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する。また、前記安全装置は、前記暫定措置をとった際に運転者に着席を促す警告を行う。
【0027】
そのため、刈取装置の先端に設ける分草体等を見ながら立毛穀稈の並びに合わせて機体の進行方向を修正したり、搬送中の刈取穀稈に含まれる雑草等を除去するために運転者が暫らく運転席から立ち上がっても、その時間が暫定措置の所定時間内であれば、刈取装置へのエンジン動力の伝達は継続するので、立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0028】
また、暫定措置に伴って運転者に着席を促す警告が行われるので、運転者は暫定措置の所定時間内に運転席に着席すれば、中断することなく刈取作業を能率的行うことができる。しかも、所定時間内に運転席に着席することが出来なかった際にも、刈取装置が安全のために駆動停止したことが明確となるから、その場合は直ちに走行装置を停止させて、立毛穀稈の踏み倒しを無くすことができる。
【0029】
そして、前記安全装置は、操縦部における運転者の離席によって刈取装置へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する自らの作動制御を人為的に禁止して、操縦部における運転者の離席にも拘わらず刈取装置を駆動可能になす規制手段を設けると、刈取装置の点検整備上において刈取装置を回転駆動させる必要がある場合に、操縦部に在席しなくとも規制手段によって刈取装置を回転駆動させることができ、点検整備が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】コンバインの左斜め前方から見た斜視図である。
図2】コンバインの右斜め後方から見た斜視図である。
図3】操縦部の平面図である。
図4】コンバインの動力伝達図である。
図5】安全装置の制御ブロック図である。
図6】第1実施形態のパワークラッチ制御のフローチャートである。
図7】第2実施形態のパワークラッチ制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4に示すように稲や麦を刈取って穀粒(穀物)を収穫する3条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から延出する駆動軸に取付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に回転自在に設けるアイドルホイール7及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
【0032】
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略直方体状に枠組みする運転フレーム10を一体的に連結し、この運転フレーム10及びその後方のエンジンルームの前部寄り上方にかけて操縦部11を設ける。なお、操縦部11はフロア(ステップ)12の後方に運転席13を設け、また、フロア12の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)14を、フロア12と運転席13の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)15を設ける。
【0033】
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部11の前方にかけて刈取装置16を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取装置16は、その前端下部に設ける分草体17とナローガイド18によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体17の間に入った刈取穀稈を各条毎に設ける引起爪19aを備える引起装置19によって引起し、その後、突起付き掻込ベルト20とスターホイール21で構成する掻込装置で寄せ集めながら穀稈の株元をレシプロ方式の刈刃装置22によって切断する。
【0034】
さらに、刈刃装置22によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置のスターホイール21で後方に送り、また、後方に送った穀稈は左右の株元搬送装置23と左右各2段の掻込搬送装置24、25並びに扱深さ穂先・株元搬送装置26、27によって更に後方に揚上搬送して、脱穀フイードチェーン28に引き継がせる。さらに、脱穀フイードチェーン28を備える脱穀装置29は、刈取装置16の後方の機体フレーム2の左側に設ける。
【0035】
そして、この脱穀装置29はその上方を覆うシリンダーカバー30の下方に扱室と処理室を設ける。この内、扱室には刈取装置16から搬送してきた穀稈を扱口に沿って搬送する前述の脱穀フイードチェーン28とその挟持レール31、扱歯を備える2つの扱胴32、33とその受網等を設ける。また、処理室は扱胴32、33の後端穂先側より機体の後方に向かうように扱室に併設し、扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理胴34とその処理網を設ける。
【0036】
一方、扱室と処理室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板35、1番ラセン36及び2番ラセン37、唐箕ファン38、ターボファン39、及び排塵ファン40を設け、扱室や処理室の受網等より漏下した穀粒等を揺動流板35上において選別し、選別した穀粒は1番ラセン36から揚穀装置41を介してグレンタンク(穀粒タンク)42に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番ラセン37から2番還元装置43を介して揺動流板35上に戻す。
【0037】
また、揺動流板35の終端に至った藁屑、排塵ファン40に捕捉された藁屑、或いは処理胴34の終端から排出された藁屑は、脱穀装置29後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出する排稈は、排藁搬送装置44によってディスク型カッター45に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター45は、排藁搬送装置44で搬送してきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0038】
そして、前述のグレンタンク42は、脱穀装置29の揚穀装置41によって移送してきた穀粒が満杯になると、排出オーガ46により機外のコンテナ等に放出する。なお、排出オーガ46は、グレンタンク42の底部に設ける横ラセン47、グレンタンク42の後部に立設する縦ラセン48を備え、その縦ラセン筒48aを電動モータによって旋回可能になすと共に、先端側の縦ラセン筒48bを油圧シリンダによって上下揺動自在になして、機体上の収納姿勢から機体後方の排出姿勢に変更することができる。
【0039】
さらに、グレンタンク42の前方で操縦部11の下方から後方に設ける原動部49は、機体フレーム2の右側から中央寄りにかけて枠組して立設するカバーフレームを備え、このカバーフレームに周囲を覆う複数のカバー50を取り付け、その内部をエンジンルームに構成する。また、このエンジンルームには、ディーゼルエンジン51とDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)等から構成する排気ガス後処理装置、ラジエータやエアクリーナ等のエンジン補機類を収容する。
【0040】
そして、このエンジン51は刈取装置16や脱穀装置29等の機体の各部の装置を駆動し、図4に示すようにエンジン51は先ず、ベルトテンションクラッチで構成する脱穀クラッチ52を介して脱穀フィードチェーン28を除く脱穀装置29と排藁搬送装置44の各装置を駆動する。また、脱穀フィードチェーン28は脱穀クラッチ52から搬送HST(静油圧式無段変速装置)53と歯車減速装置54を介して駆動し、さらに、搬送HST53と歯車減速装置54からベルトテンションクラッチで構成する刈取クラッチ55を介して刈取装置16の各装置を駆動する。
【0041】
また、エンジン51はクローラ走行装置4を駆動し、この場合にエンジン51は走行クラッチ56を介して走行HST(静油圧式無段変速装置)57を駆動する。そして、走行HST57によって変速された動力は、トランスミッションケース5に設ける作業速と走行速に変速する歯車式の副変速装置58と、左右のサイドクラッチとブレーキで構成する操向装置59を介してクローラ走行装置4の左右の駆動スプロケット6を駆動する。さらに、エンジン51は排出オーガ46の横ラセン47と縦ラセン48をベルトテンションクラッチで構成する排出クラッチ60を介して駆動する。
【0042】
そして、図3に示すように操縦部11のフロントコンソール14には、刈取装置16の昇降と機体の操向を行うマルチステアリングレバー61、液晶表示するモニタパネル62、コンビネーションスイッチ63、或いは図示しないキースイッチ等を設ける。また、他方のサイドコンソール15には、走行HST57を変速操作する主変速レバー64、副変速装置58を変速操作する副変速レバー65、エンジンコントロールレバー66、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55を入り切りするパワークラッチスイッチ67とそのインジケータ68、或いはその他各種の自動スイッチや設定器等を設ける。
【0043】
以上、コンバイン1の概略について説明したが、次に本発明の特徴とする操縦部11における運転者の離席によって刈取装置16へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置について説明すると、先ずこの安全装置は、操縦部11に設ける運転席13の下方に運転者が運転席13に着座すると、その運転席13の沈み込みによって入りとなるシートスイッチ69を設ける。また、サイドコンソール15に運転者の離席を警告するインジケータ70を設ける。
【0044】
なお、この刈取装置16へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置は、エンジン51から刈取装置16への動力伝達経路に設ける、前述の刈取クラッチ55を入り切り制御してエンジン動力の伝達を自動的に遮断するように構成するものであるから、刈取装置16への動力伝達経路に設ける脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55を入り切りするパワークラッチスイッチ67によるクラッチ制御に含めて実装する。
【0045】
そのため、ここでパワークラッチ制御について説明すると、このパワークラッチ制御は図5のブロック図に纏めて示すように、マイクロコンピュータ等から構成する電子制御ユニット(ECU)71によって脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55の制御を行い、このECU71の出力側にはパワークラッチのインジケータ68であるLEDによって構成する刈取・脱穀・切りを表示する各ランプ72~74と、運転者の離席を警告するインジケータ70の離席ランプ75、及び警報を発するホーン76を接続する。
【0046】
また、ベルトテンションクラッチで構成する脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55は、ロッドやスプリング等から構成する脱穀側連繋機構と刈取側連繋機構を電動モータ77によって作動させてこれ等のクラッチ52、55の入り切りを行わせるので、ECU71の出力側にはこの電動モータ77を、その正逆回転に切換えるリレー回路78を介して接続する。
【0047】
一方、ECU71の入力側には、モーメンタリ型のロッカースイッチで構成するパワークラッチスイッチ67、電動モータ77の作動量を検出するポテンショメータ79、トランスミッションケース5内の伝動軸の回転数を検出するトランスミッション回転センサ80、主変速レバー64の操作位置を検出する主変速レバーポテンショメータ81、副変速レバー65に設ける副変速レバー中立検出スイッチ82、及び前述のシートスイッチ69を接続する。なお、シートスイッチ69と並列にギボシ端子のオスメス接続による緊急在席回路83を設ける。
【0048】
そして、ECU71はエンジン51が始動されてエンジン51から機体各部への動力伝達が可能になると、図6に示すパワークラッチ制御のプログラムを実行する。なお、ECU71はキースイッチが入りとなってECU71が起動すると、その初期制御において脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に切りとなっていないことをそのポテンショメータ79の値によって検出した際には、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に切りとなるように電動モータ77を逆回転させるので、エンジン51の始動とともに脱穀装置29や刈取装置16が駆動されることはない。
【0049】
そして、元に戻ってパワークラッチの制御内容について説明すると、先ずECU71はパワークラッチスイッチ67が運転者によって操作されたか否かを判断し(ステップS1)、ここで操作されていれば(有)、そのクラッチ操作が入操作であるか切操作であるかを同じくパワークラッチスイッチ67の操作状況に基づいて判断する(ステップS2)。また、この場合に入操作であれば、次にその入操作時間の長短を判断する(ステップS3)。
【0050】
さらに、その操作時間が長く長押しと判断した場合は、現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS4)。そして、ここで既に刈取クラッチ55が脱穀クラッチ52と共に入りとなっている場合は、クラッチの切換が不要なのでそのまま復帰するが、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に切りであったり、脱穀クラッチ52のみが入りとなっていれば、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に入りとなる「クラッチ(刈取)」のサブルーチンを実行する(ステップS5)。
【0051】
また、前述のステップS3で短時間の押し操作と判断した場合は、ステップ4と同様に現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS6)。そして、ここで既に刈取クラッチ55が脱穀クラッチ52と共に入りとなっている場合は、クラッチの切換が不要なのでそのまま復帰するが、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に切りであれば、脱穀クラッチ52のみが入りとなる「クラッチ(脱穀)」のサブルーチンを実行し(ステップS7)、脱穀クラッチ52のみが入りであれば、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に入りとなる「クラッチ(刈取)」のサブルーチンを実行する(ステップS5)。
【0052】
なお、前述のステップS2で切操作であれば、前述のステップS3と同様にその切操作時間の長短を判断する(ステップS8)。また、以下同様に操作時間が長く長押しと判断した場合は、現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS9)。そして、ここで既に刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に切りとなっている場合は、クラッチの切換が不要なのでそのまま復帰するが、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に入りであったり、脱穀クラッチ52のみが入りとなっていれば、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に切りとなる「クラッチ(切)」のサブルーチンを実行する(ステップS10)。
【0053】
また、前述のステップS8で短時間の押し操作と判断した場合は、ステップ6と同様に現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS11)。そして、ここで既に刈取クラッチ55が脱穀クラッチ52と共に切りとなっている場合は、クラッチの切換が不要なのでそのまま復帰するが、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に入りであれば、脱穀クラッチ52のみが入りとなる「クラッチ(脱穀)」のサブルーチンを実行し(ステップS7)、脱穀クラッチ52のみが入りであれば、脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55が共に切りとなる「クラッチ(切)」のサブルーチンを実行する(ステップS10)。
【0054】
以上、パワークラッチスイッチ67が運転者によって操作された場合の脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55の通常の制御内容について説明したが、要するにこの制御ではパワークラッチスイッチ67を入り又は切り方向に長押しすれば、電動モータ77を正回転させて脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55を入りとなした刈取作業状態の形態と、電動モータ77を逆回転させて脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55を切りとなした非刈取作業状態の形態にクラッチ52、55を素早く切換えることができる。
【0055】
一方、パワークラッチスイッチ67を入り方向に短時間だけ押せば、電動モータ77を正回転させて両クラッチ52、55が切りであれば脱穀クラッチ52のみを入りとなした手扱ぎ作業状態の形態に、また、再度、同方向に短時間だけ押せば、電動モータ77を正回転させて両クラッチ52、55を共に入りとした刈取作業状態の形態にクラッチ52、55を切換えることができる。
【0056】
また逆に、パワークラッチスイッチ67を切り方向に短時間だけ押せば、電動モータ77を逆回転させて両クラッチ52、55が入りであれば脱穀クラッチ52のみを入りとなした形態に、また、再度、同方向に短時間だけ押せば、電動モータ77を逆回転させて両クラッチ52、55を共に切りとした非刈取作業状態の形態にクラッチ52、55を切換えることができる。そして、この脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55を電動モータ77のフィードバック制御によって行うことによって運転者のクラッチ切換操作に伴う労力を格段に少なくすることができる。
【0057】
なお、このようにパワークラッチスイッチ67が操作されて、クラッチ52、55が非刈取作業状態に切換えられると切りランプ74が点灯し、また、手扱ぎ作業状態に切換えられると脱穀ランプ73が点灯し、さらに、刈取作業状態に切換えられると脱穀ランプ73と刈取ランプ72が共に点灯し、運転者に各クラッチ52、55の入り切り状態を視覚的に報知する。
【0058】
一方、本発明の特徴とする前述の安全装置に係る制御は、パワークラッチスイッチ67が操作されていない場合の次に説明するステップによって実際に実行され、前述のステップS1でパワークラッチスイッチ67が運転者によって操作されていなければ(無)、ECU71はシートスイッチ69の状態を判断する(ステップS12)。そして、この場合、運転者が運転席13に着座してシートスイッチ69がONとなっていれば、離席警告停止のサブルーチン(S13)を実行して復帰する。
【0059】
しかし、運転者が運転席13から立ち上がったり、操縦部11から離席してシートスイッチ69がOFFとなると、現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS14)。そして、ここで刈取クラッチ55が入りとなっておらず脱穀クラッチ52が入りであるか、又は脱穀クラッチ52も切りであれば、離席警告停止のサブルーチン(S13)を実行して復帰する。
【0060】
また、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に入りであれば、主変速レバー64が前進位置に操作されているか、又は中立位置や後進位置に操作されていることを主変速レバーポテンショメータ81の値によって判断するステップS15と、副変速レバー65が作業位置又は路上位置に操作されているか、又は中立位置に操作されていることを副変速レバー中立検出スイッチ82のON、OFFによって判断するステップS16と、トランスミッションケース5内の伝動軸が回転しているか、又は停止していることをトランスミッション回転センサ80が検出する回転数によって判断するステップS17を次々に実行する。
【0061】
そのため、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に入りになっていても、ステップS15では主変速レバー64が前進位置に操作されていなければ(中立位置か後進位置であれば)コンバイン1の走行を停止していたり、後進させている。また、ステップS16では副変速レバー65が作業位置又は路上位置に操作されていなければ(中立位置であれば)コンバイン1の走行が停止している。さらに、ステップS17ではトランスミッションケース5内の伝動軸が回転していなければ(停止していれば)コンバイン1は走行を停止している。
【0062】
従って、以上の3つのケースではコンバイン1が実際に刈取走行を行っていないことが明らかとなるから、この場合はステップ7の脱穀クラッチ52のみが入りとなる「クラッチ(脱穀)」のサブルーチンを実行して復帰する。しかし、主変速レバー64が前進位置に操作され、副変速レバー65が作業又は路上位置に操作され、トランスミッションケース5内の伝動軸が回転していれば、コンバイン1が前進走行を行って刈取走行を行っていることが想定されるから、この場合はステップ18の離席警告のサブルーチンを実行して例えば、ステップ7の脱穀クラッチ52のみが入りとなるサブルーチンを実行することなく復帰する。
【0063】
なお、ステップ18の離席警告のサブルーチンは、インジケータ70の離席ランプ75を点滅させると共に、ホーン76を断続的に吹鳴させて運転者に運転席13への着座を促す警告とする。また、ステップ13の離席警告の停止は、上記離席ランプ75の点滅とホーン76の断続的な吹鳴の停止を行うものである。また、ステップ18の離席警告が出されていない場合、離席ランプ75はシートスイッチ69のON/OFFに連動して点灯又は消灯させる。
【0064】
以上、本発明の特徴とする安全装置の制御に係る第1の実施形態についてフローチャートに基づいて説明したが、要するにこの第1の実施形態においては、運転席13を備える操縦部11における運転者の離席(ステップS12)によって刈取装置16へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する安全装置を、ECU71による刈取クラッチ55の切り制御によって実現すると共に、この安全装置は、操縦部11における運転者の在席を偶々検出することができなかった際の対策として、刈取装置16へのエンジン動力の伝達を刈取クラッチ55の切り制御を行わず継続するという暫定借置をとって、離席の警告(ステップS18)に止める。
【0065】
そのため、運転者が刈取作業を中断して脱穀クラッチ52や刈取クラッチ55を切らずに操縦部11から降車(離席)して、刈取装置16の可動部等に堆積する藁屑や泥土等を取り除いたり、或いは穀稈の詰まりを取り除くために、これらに手指を近付けても、刈取装置16へのエンジン動力の伝達が遮断しているので可動部が不測に回転する虞は全くないから巻き込まれ事故を防止することができる。
【0066】
そして、操縦部11における運転者の在席を検出するシートスイッチ69が運転席13から立ち上がることによって運転者の在席を検出することができなかったり、シートスイッチ69が上手く在席を検出することができなかった際の対策として、刈取装置16へのエンジン動力の伝達を継続する暫定借置をとるから、在席の不検出(離席)によって直ちに刈取装置16へのエンジン動力の伝達が遮断して立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0067】
また、この第1の実施形態における安全装置は、操縦部11における運転者の在席を検出することができなかった際に、刈取装置16と共に走行装置4がエンジン動力によって駆動されて刈取走行中であると判断される場合には(ステップS15~S17)、前述の暫定借置をとって刈取装置16へのエンジン動力の伝達を継続する。そのため、上述のように在席の不検出によって直ちに刈取装置16へのエンジン動力の伝達が遮断して、それにより立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0068】
一方、刈取作業開始前に行う刈取装置16や脱穀装置29等の可動部に対する集中注油作業のために、走行副変速レバー65が中立位置、且つ主変速レバー64が前進位置に操作されて、走行停止状態で刈取装置16や脱穀装置29等が回転駆動されている場合には、走行装置4が駆動されていないので暫定借置がとられることはなく、在席の不検出によって直ちに刈取装置16へのエンジン動力の伝達が遮断される(ステップS15、S16、S7)。しかし、この場合は、刈取装置16が回転駆動されなくなっても、改めて着座して集中注油作業をやり直せばよいだけであるので格別重大な支障が発生する訳ではないから、安全対策上の致し方ない事項として許容される。
【0069】
次に、本発明の特徴とする安全装置の制御に係る第2の実施形態について図7のパワ-クラッチ制御のフローチャートに基づいて説明すると、この実施形態におけるパワークラッチスイッチ67の操作に基づく脱穀クラッチ52と刈取クラッチ55の制御内容は第1の実施形態と変わらないのでステップS1からステップS11までの説明は省略し、安全装置に関わるステップS12から説明する。
【0070】
即ち、パワークラッチスイッチ67が操作されていない場合に、ECU71はステップS12でシートスイッチ69の状態を判断する。そして、この場合、運転者が運転席13に着座してシートスイッチ69がONとなっていれば、タイマーを所定のT秒にセットし(ステップS19)、次に第1の実施形態と同様な離席警告停止のサブルーチンを実行して(ステップS13)、復帰する。
【0071】
しかし、運転者が運転席13から立ち上がったり、操縦部11から離席してステップS12でシートスイッチ69がOFFとなると、現在のクラッチ状態をポテンショメータ79の値に基づいて判断する(ステップS14)。そして、ここで刈取クラッチ55が入りとなっておらず脱穀クラッチ52が入りであるか、又は脱穀クラッチ52も切りであれば、同様にステップS19とステップS13のサブルーチンを実行して復帰する。
【0072】
また、刈取クラッチ55と脱穀クラッチ52が共に入りであれば、T秒から0秒までカウントダウンするタイマーの値に基づいて(ステップS20)、そのタイマー値が0秒より大きければ第1の実施形態と同様な離席警告のサブルーチンを実行して(ステップS18)、復帰する。しかし、タイマーがT秒を経過して0秒となるとタイマーはカウントダウンを停止して、ステップS7の脱穀クラッチ52のみが入りとなる「クラッチ(脱穀)」のサブルーチンを実行して復帰する。
【0073】
従って、係る第2の実施形態において安全装置は、操縦部11における運転者の在席を検出することができなかった際に暫定借置をとると共に、この暫定措置が所定のT秒間に亘って継続すると、暫定措置を解除して刈取装置16へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断する(ステップS7)。また、安全装置は、暫定措置をとった際に運転者に着席を促す警告を行う(ステップS18)。
【0074】
そのため、刈取装置16の先端に設ける分草体17等を見ながら立毛穀稈の並びに合わせて機体の進行方向を修正したり、搬送中の刈取穀稈に含まれる雑草等を除去するために運転者が暫らく運転席13から立ち上がっても、その時間が暫定措置の所定のT秒間内であれば、刈取装置16へのエンジン動力の伝達は継続するので、立毛穀稈を踏み倒して穀物の収穫を行えなくするといった虞を無くすことができる。
【0075】
また、暫定措置に伴って運転者に着席を促す警告が行われるので(ステップS18)、運転者は暫定措置の所定のT秒間内に運転席13に着席すれば、中断することなく刈取作業を能率的に行うことができる。しかも、所定のT秒間内に運転席13に着席することが出来なかった際にも、刈取装置16が安全のために駆動停止したことが明確となるから、その場合は直ちに走行停止を停止させて、立毛穀稈の踏み倒しを無くすことができる。
【0076】
なお、前述のようにECU71の入力側には、シートスイッチ69と並列にギボシ端子のオスメス接続による緊急在席回路83を設ける。そして、このギボシ端子は操縦部11のフロントコンソール14のカバーで覆われた目につかない場所に隠して設けておき、そのギボシ端子のオスメスは通常、外しておく。
【0077】
しかし、刈取装置16の点検整備上において例えば、搬送チェーン上に付着した油混じりの塵埃をブラシで掻取りながら1周させて掃除する場合のように、刈取装置16を回転駆動させる必要がある場合に、ギボシ端子のオスメスを接続しておく。そして、このようにしておけば、シートスイッチ69が着座を検出した場合と同様な信号を緊急在席回路83からECU71に疑似的に与えることができるから、操縦部11に在席しなくとも係る規制手段(緊急在席回路83)によって刈取装置16を回転駆動させることができて点検整備が容易となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、操縦部11における運転者の在席を検出するシートスイッチ69に替えて、特許文献1に記載されたステップスイッチ、或いは人体が発する赤外線をキャッチすることで人の有無を判断する人体赤外線センサ、可視光線、赤外線などの光を、投光部から発射し、人体によって反射する光や、しゃ光される光量の変化を受光部で検出する光電センサ等を操縦部11に設けたり、主変速レバー64やマルチステアリングレバー61のグリップに抵抗膜方式や静電容量方式等のタッチセンサを組み込んで手指を検出してもよく、また、これらのスイッチやセンサを併用することで運転者の在席検出の精度を向上させることができる。
【0079】
また、第2の実施形態において安全装置は、操縦部11における運転者の在席を検出することができなかった際に着席を促す警告を行い、所定時間が経過すると刈取装置16へのエンジン動力の伝達を自動的に遮断するが、この際に合わせてエンジン51を停止させたり、走行クラッチ56をアクチュエータによって自動的に切断するように構成すれば、刈取走行を行っている場合の立毛穀稈の踏み倒しを無くすことができる。なお、運転者に対する着席を促す警告はモニタパネル62に文字を用いて分かり易く警告してもよい。
【0080】
さらに、第1の実施形態において安全装置は、走行装置4が駆動されていない場合に在席の不検出によって刈取装置16へのエンジン動力の伝達を遮断し、この際に脱穀クラッチ52は入りとなっているが、搬送HST53が走行装置4の停止に伴って刈取装置16と脱穀フィードチェーン28の駆動回転を停止している場合、脱穀装置29が駆動されていても脱穀フィードチェーン28は停止しているので、運転者が手扱ぎ作業を行うことができない。
【0081】
そこで、脱穀装置29に設けるスイッチを押すだけで、エンジン51と脱穀フイードチェーン28が瞬時に停止する緊急停止スイッチA(図1参照)の近傍に手扱ぎスイッチを設け、この手扱ぎスイッチを押すことによって、ECU71が脱穀フイードチェーン28の搬送速度が適正な手扱ぎ時の速度になるように制御させるようにしてもよく、或いは、この場合に刈取装置16と共に脱穀装置29へのエンジン動力の伝達を遮断すべくクラッチ(切)のサブルーチン(ステップS10)を実行するように変更してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 コンバイン
4 走行装置
11 操縦部
13 運転席
16 刈取装置
29 脱穀装置
51 エンジン
52 脱穀クラッチ
55 刈取クラッチ
69 シートスイッチ
71 電子制御ユニット(ECU)
75 離席ランプ
76 ホーン
83 緊急在席回路(規制手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7