(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063196
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】スライド管固定金具
(51)【国際特許分類】
E04G 5/14 20060101AFI20230427BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
F16B5/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021187417
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】309022730
【氏名又は名称】有限会社 北野仮設
(71)【出願人】
【識別番号】592215620
【氏名又は名称】牧野 功
(72)【発明者】
【氏名】天野 幸一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 功
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA15
3J001GA02
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA04
3J001JB02
3J001KA14
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】インパクトレンチ作業に適した、パラペット手摺に用いる角管から成るスライド管部のスライド軌道部への固定手段を提供する。
【解決手段】角管で成るスライド軌道部21を内側に挿通して軸方向にスライドする角管で成るスライド管部31に設けた、該スライド管部31を該スライド軌道部21に固定する手段であって、該スライド管部の上部で垂直軸方向に、溶接ナット42、押止ボルト43、押止円板45とガイドスペース46で構成され、溶接ナット42は溶接ナット支持板44を介して該スライド管部31に固定され、ガイドスペース46は、該スライド管部31を円形に切り欠いて設けられ、ガイドスペース46内に保持された円形の押止円板45は、その厚さtがスライド管部にスライド軌道部を内挿してできる上下方向の間隙Hより大きく設けられ、溶接ナット42に螺合した押止ボルト43が押止円板45をスライド軌道部21上面に押し付けて、スライド軌道部との摩擦によって固定するスライド管固定金具40とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺支柱10と固定フレーム20と調整フレーム30で構成されるパラペット手摺支柱1において、
角管で成るスライド軌道部21を内側に挿通して軸方向にスライドする角管で成るスライド管部41に設けた、該スライド管部41を該スライド軌道部21に固定する手段であって、
該スライド管部の上部で垂直軸方向に、溶接ナット42、押止ボルト43、押止円板45とガイドスペース46で構成され、
溶接ナット42は溶接ナット支持板44を介して該スライド管部41に固定され、ガイドスペース46は、該スライド管部41を円形に切り欠いて設けられ、ガイドスペース46内に保持された円形の押止円板45は、その厚さtがスライド管部にスライド軌道部を内挿してできる上下方向の間隙Hより大きく設けられ、溶接ナット42に螺合した押止ボルト43が押止円板45をスライド軌道部21上面に押し付けて、スライド軌道部との摩擦によって固定するスライド管固定金具40。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場の建物屋上のパレペットと呼ばれる突出部に、作業者の安全のために設置される仮設手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場の建物屋上のパラペットに取り付ける仮設手摺支柱として、パラペットの外側と内側から当接板で挟持する取付金具と、手摺パイプを取り付けるクランプを備えた手摺支柱とが一体で設けられたものが開示されている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手摺取付金具は、パラペットを挟持する当接板2c、4bを備えた外方挟持金具2と内方挟持金具3が略コの字形に構成され、外方挟持金具2の金属フレーム2aの基部には角度変更板8bを備えて、手摺パイプ10を取り付けるクランプ9を備えた手摺柱8は、金属フレーム2aとの角度を変更可能に設置できるとしている。本金具の種々の厚さのパラペットへの対応は、スライド管3aに挿通された金属フレーム2aとのスライドによって調節自在としていて、その固定は、スライド管3aに設けられた押しボルト5によって行い、その後に、内方挟持金具3に設けたネジ棒の締め込みによって当接板2c、4bをパラペットに圧着させて挟持する。
【0005】
ここで、前記押しボルト5の操作に関して説明する。従来、ボルト等の締め込み作業、緩め作業は、レンチやスパナを使用して人力で行っていたので、前記押しボルトの締め付けも人の感覚により適度の締め付けトルクで行われてきた。ところが、近年になって、人力に代わって電動工具のインパクトレンチの使用が普及していて、前記押しボルトを締め付ける際に、インパクトレンチを使用して過大な締め付けトルクを与え、押しボルトの先端が当接する、角管からなる前記金属フレーム2aの上面を凹み損傷させる事態が生じている。
そこで本発明は、前記課題を解決し有効な製品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手摺支柱10と固定フレーム20と調整フレーム30で構成されるパラペット手摺支柱1において、角管で成るスライド軌道部21を内側に挿通して軸方向にスライドする角管で成るスライド管部31に設けた、該スライド管部31を該スライド軌道部21に固定する手段であって、該スライド管部の上部で垂直軸方向に、溶接ナット42、押止ボルト43、押止円板45とガイドスペース46で構成され、溶接ナット42は溶接ナット支持板44を介して該スライド管部31に固定され、ガイドスペース46は、該スライド管部31の上部を円形に切り欠いて設けられ、ガイドスペース46内に保持された円形の押止円板45は、その厚さtがスライド管部にスライド軌道部を内挿してできる上下方向の間隙Hより大きく設けられ、溶接ナット42に螺合した押止ボルト43が押止円板45をスライド軌道部上面に押し付けて、スライド軌道部との摩擦によって固定することを特徴とするスライド管固定金具40とする。
【発明の効果】
【0007】
押止円板を設けることによって、押止ボルトが押止円板を介して押し付けるので、接触する面積を大きくして負荷を分散でき、スライド軌道部21上面の凹み変形を防ぐことができる。
また、押止円板は押止ボルト43に押されていない時もガイドスペース46に保持されるので逸脱することを防ぐことができる。
また万一、押止円板が装着されていない不備があっても、押止ボルト43先端がスライド軌道部に届かない構造としたので、スライド管部はスライド可能となり、作業者は装着不備に気づくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】スライド管固定金具の正面図を拡大断面で示す説明図である。
【
図4】スライド管固定金具の側面図を拡大断面で示す説明図である。
【
図5】スライド管固定金具の側面図を拡大断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を図を参照して、詳細に説明する。
図1にパラペット手摺1の正面図、
図2に平面図を示す。
図1の正面視において、パラペット手摺1は、手摺支柱10、固定フレーム20、調整フレーム30で構成される。固定フレーム20は、上部に略水平な角管で成るスライド軌道部21と、その左端から下方に垂直な中間部24、その下端から右方に略水平な下部25を設け、略逆コの字状に構成され、下部25の右端にパラペットAに外側から挟持するパッド26を備える。
【0010】
調整フレーム30は、上部にスライド軌道部21を、その内側に挿通させる角管で成るスライド管部31と、スライド管部の適宜中間から下方に垂直な中間部34で略T字状に構成され、その下部に固定されたナットに螺合されたねじ棒35をスライド軌道部21に平行に設け、ねじ棒35の左端にパラペットAに内側から挟持するパッド36を設ける。
スライド軌道部21の右端に角度変更板11が設けられ、鋼管を支持する鋼管クランプ12を備えた手摺支柱10が、角度変更板によって鉛直に固定されて設けられる。手摺支柱10は保管や搬送時などのために角度変更板によりスライド軌道部21に平行に折り畳むことができる。
【0011】
つぎに、本発明である、スライド軌道部21と、スライド軌道部21を管内に挿通して軸方向にスライドするスライド管部との固定手段である、スライド管固定金具40について説明する。
本発明のスライド管固定金具を、
図3に正面視の一部断面で示す。
図4に側面視の断面図で示す。本例では、スライド管固定金具40を正面視で左右に2組使用した例で示している。
【0012】
図3、
図4に示すように、スライド管部31の上部で上面に対して垂直軸方向に、溶接ナット42、押止ボルト43、押止円板45とガイドスペース46で構成される。
溶接ナット42は溶接ナット支持板44を介して該スライド管部31に固定される。ガイドスペース46は、該スライド管部31の上部を円形に切り欠いて設けられ、ガイドスペース46内に円形で板状の押止円板45が保持されて設けられる。その厚さtがスライド管部にスライド軌道部を内挿してできる上下方向の間隙Hより大きく設けられる。溶接ナット42に螺合した押止ボルト43が押止円板45をスライド軌道部21上面に押し付けて、スライド軌道部との摩擦によって固定される。
【実施例0013】
スライド軌道部21が外径40mm×40mmの正方形で厚さが3.2mmの角鋼管、スライド管部が外径50mm×50mmの正方形で厚さが3.2mmの角鋼管とした実施例を、
図3,
図4の断面図で示す。
スライド管部31の上部に、その上面に対する垂直軸に、押止ボルト43、溶接ナット42、溶接ナット保持板44、ガイドスペース46、押止円板45を設ける。溶接ナットはM12で3.2厚さの矩形の溶接ナット保持板44に固定され、溶接ナット保持板44はスライド管部に固定される。溶接ナット42に螺合する押止ボルト43はM12長さ20mmとする。ガイドスペース46はスライド管部の上側厚さ3.2mmを直径Dが略30mmの円形に切り欠いて設け、押止円板はガイドスペース46に収納できるように直径Dより少し小さな直径dとする。厚さはスライド管部の内径とスライド軌道部の外径との寸法差である間隙Hより適宜大きい厚さtとして、押止円板が間隙Hから逸脱しないようにしている。押止円板は直径が大きいほど、かつ厚さは強度的に厚い方が望ましい。ガイドスペースの上下方向の上限の間隔Jは、スライド軌道部上面からスライド管部上面(溶接ナット支持板下面)までの距離である。したがって、押止円板はこの空間に収まる必要があり、めっき厚さや製品寸法誤差などを考慮すると、この実施例では押止円板の厚さtは4.5~6mmである。
【0014】
押止円板のガイドスペースへの装着は、調整フレーム30と固定フレームを天地逆にしておいて、スライド管部のガイドスペースに押止円板を装着してからスライド軌道部を挿通し、双方の天地を正常に戻してから角度変更板11を取り付ける。押止円板は、スライド管部とスライド軌道部との間隙より大きい厚さなので、逸脱することはない。
【0015】
なお、押止円板の厚さtをより厚く、
図5に示すように厚さt’とした押止円板45’の場合は、スライド管部31上面と溶接ナット保持板44の下面の間に、スライド管部を切り欠いたと同等の直径の円形に切り欠いたスペース拡張板47を設けて、ガイドスペース46’とする。ガイドスペースの上下方向を、スペース拡張板47の厚さ分だけ広げて、上限を間隔J’とすることができる。
【0016】
押止ボルト43の首下面と溶接ナット上面との間隔Gは押止円板45の厚さtより小さくしていて、押止円板45が未整備の場合は、押止ボルト43の先端がスライド軌道部上面に届かないので、スライド可能となり、押止円板45が未整備であることに気づくように安全対策をしている。
【0017】
ここで使用方法について説明する。ねじ棒35を適宜に締め付けの逆方向に戻しておいて、スライド軌道部に沿ってスライド管部をスライドさせて、パッド26,36の間隔を広げたのちパラペットAを挟みこみ、この状態で押止ボルトを締めつけスライド管部をスライド軌道部に固定する。この後ねじ棒35を締め付けてパッドをパラペットに圧着させて挟持する。その後、手摺支柱10を垂直に固定して、鋼管を支持する支柱とする。
【0018】
押止ボルト43の締め付の作業は、従来はレンチやスパナ等の工具を使用して人の力と感覚によって破損に至らない適度な作業が行われてきた。しかし近年電動工具の発達によりインパクトレンチが使われるようになり、常識では考えられない作業が行われることがある。
本発明の手摺は軽量化のため、角鋼管を多用しており、スライド軌道部は角鋼管を使用しているので、本発明の押止円板がない場合には、押止ボルト43をインパクトレンチで締め付けると、押止ボルトの先端がスライド軌道部に直接当接し、際限なく凹み変形する恐れがある。
本発明では、押止ボルト43の締め付によって、押止ボルト43が押止円板45を介してスライド軌道部上面を押し付けることになるので、スライド軌道部に当接する接触面積が大きくなり負荷が分散され面積当たりの力が小さく抑えられる。これによってスライド軌道部の凹み変形を防ぐことができる。