(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006320
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】プロジェクタ装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20230111BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20230111BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20230111BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G09G5/00 510B
G09G5/36 520C
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108861
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 務
(72)【発明者】
【氏名】水田 真樹
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2K203FA62
2K203GB42
2K203MA01
5C058BA35
5C058EA02
5C182AA04
5C182AA13
5C182AB25
5C182AC43
5C182BC23
5C182BC26
5C182CA02
5C182CB03
5C182CB44
5C182DA13
5C182DA14
(57)【要約】
【課題】投射した映像のぼけを低減し、画質を向上させることができるプロジェクタ装置を提供すること。
【解決手段】プロジェクタ装置1は、1画面分の映像をスクリーン300に投射しており、映像をスクリーン300に所定の結像距離で投射するプロジェクタ200と、スクリーン300の一部領域についてプロジェクタ200からの距離が結像距離に一致し、他の領域についてプロジェクタ200からの距離が結像距離に一致しない場合に、他の領域に対応する部分映像について鮮明化する処理を行う鮮明化処理部140を含む表示処理部120とを備える。鮮明化処理部140によって鮮明化された部分映像が含まれる映像をプロジェクタ200からスクリーン300に向けて投射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1画面分の映像をスクリーンに投射するプロジェクタ装置であって、
映像を前記スクリーンに所定の結像距離で投射する投射手段と、
前記スクリーンの一部領域について前記投射手段からの距離が前記結像距離に一致し、他の領域について前記投射手段からの距離が前記結像距離に一致しない場合に、前記他の領域に対応する部分映像について鮮明化する処理を行う鮮明化手段と、
を備え、前記鮮明化手段によって鮮明化された前記部分映像が含まれる映像を前記投射手段から前記スクリーンに向けて投射することを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項2】
前記スクリーンは、前記投射手段による映像の投射方向に対して斜め方向に投射面が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記鮮明化手段は、前記部分映像について高域を強調する処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクタ装置。
【請求項4】
前記鮮明化手段は、前記部分映像についてコントラストを増幅する処理を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項5】
前記鮮明化手段は、前記部分映像について輪郭を強調する処理を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項6】
前記鮮明化手段は、前記部分映像について行う鮮明化の程度を、前記一部領域から遠ざかるほど大きくすることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項7】
前記スクリーンは、車室内の天井を利用して形成されており、
前記投射手段から斜め方向に前記スクリーンに向けて映像を投射することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像をスクリーンに投射するプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、焦点調整手段を有する投射レンズと、投射レンズの焦点調整を行う焦点調整機構と、ダイクロイックミラーもしくはダイクロイックプリズムと投射レンズの間に設置された半透明反射膜手段と、スクリーンよりの反射光を半透明反射膜手段経由で受光し電気信号に変換するとともに、投射レンズとLCDの光軸距離と等価の位置に配置された受光素子と、受光素子からの出力信号によりスクリーンへの投射画像の焦点位置を検出演算し焦点調整機構の駆動制御を行う焦点調整制御部と、焦点調整機構の調整位置を検出する位置検出器とを備え、投射レンズの焦点調整手段の自動化を図るようにした液晶プロジェクタ用自動焦点装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミニバンなどの車室内の天井をスクリーンに見立てて画像を投射する場合には、プロジェクタからスクリーンまでの距離が一定にならないため、例え上述した特許文献1に開示された手法でその中の1点に焦点を合わせたとしても、それ以外の領域において映像がぼけてしまい、画像全体を観ている利用者に対しては画質が低下したような印象を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、投射した映像のぼけを低減し、画質を向上させることができるプロジェクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のプロジェクタ装置は、1画面分の映像をスクリーンに投射するプロジェクタ装置であって、映像をスクリーンに所定の結像距離で投射する投射手段と、スクリーンの一部領域について投射手段からの距離が結像距離に一致し、他の領域について投射手段からの距離が結像距離に一致しない場合に、他の領域に対応する部分映像について鮮明化する処理を行う鮮明化手段とを備え、鮮明化手段によって鮮明化された部分映像が含まれる映像を投射手段からスクリーンに向けて投射する。
【0007】
スクリーンの配置等の都合により、スクリーンの一部領域についてフォーカスが合っており、他の領域についてフォーカスが合っていない場合に、この他の領域に対応する映像を鮮明化することにより、この他の領域において映像がぼけている印象を和らげることができ、画質を向上させることができる。
【0008】
また、上述したスクリーンは、投射手段による映像の投射方向に対して斜め方向に投射面が配置されていることが望ましい。このようにスクリーンを配置した場合には、投射手段のF値を大きくしても投射面の全体についてフォーカスをあわせることが難しく、このようなスクリーンを用いた場合に特に映像のぼけ低減、画質向上の効果が大きい。
【0009】
また、上述した鮮明化手段は、部分映像について高域を強調する処理を行うことが望ましい。また、上述した鮮明化手段は、部分映像についてコントラストを増幅する処理を行うことが望ましい。また、上述した鮮明化手段は、部分映像について輪郭を強調する処理を行うことが望ましい。これらの処理を行うことにより、ぼけた映像の鮮明化を行うことが可能となる。
【0010】
また、上述した鮮明化手段は、部分映像について行う鮮明化の程度を、一部領域から遠ざかるほど大きくすることが望ましい。このように、ぼけの程度が大きい部分について鮮明化の程度を大きくすることにより、映像全体について鮮明度を向上させることができる。
【0011】
また、上述したスクリーンは、車室内の天井を利用して形成されており、投射手段から斜め方向にスクリーンに向けて映像を投射することが望ましい。特に、車室内の天井をスクリーンとして用いる場合には、スクリーンの投射面に対して垂直な向きに映像を投射することは難しいが、このような場合であっても画面全体について鮮明化した映像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態のプロジェクタ装置の構成を示す図である。
【
図4】ラプラシアンフィルタの算出式を示す図である。
【
図5】ハードウエアで実現した高域強調回路の構成を示す図である。
【
図6】ハードウエアで実現したコントラスト調整回路の構成を示す図である。
【
図7】画面の垂直位置と高域強調処理の係数およびコントラスト調整処理の係数の関係を示す図である。
【
図8】1画面内でフォーカスが合っている垂直方向の位置を示す図である。
【
図9】ハードウエアで実現した輪郭強調回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態のプロジェクタ装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態のプロジェクタ装置の構成を示す図である。
図1に示すプロジェクタ装置1は、例えば、車両の後部座席の搭乗者が視聴する映像を、車室内の天井をスクリーン300として(あるいは天井の表面に沿ってスクリーン300を設置するようにしてもよい)表示するためのものであり、運転席と助手席の間に配置される場合などが考えられる。このプロジェクタ装置1は、車両用表示制御装置100とプロジェクタ200を備えている。
【0015】
車室内の天井をスクリーン300として利用する場合には、スクリーン300をプロジェクタ200の投射方向に対して垂直な向きに配置することができず、スクリーン300に対して斜め方向に映像を投射することになる。この場合には、プロジェクタ200に大きなF値のレンズを用いたとしても、スクリーン300の全体についてフォーカスを合わせることは難しい。このため、本実施形態では、スクリーン300の一部領域についてプロジェクタ200のフォーカスを合わせるとともに、フォーカスから外れる他の領域の映像については、ぼけた映像を見た利用者による画質低下の印象を低減するために場所ごとに効き具合の変化する鮮明化の処理を行っている。
【0016】
車両用表示制御装置100は、映像信号受信部110と表示処理部120を備えている。映像信号受信部110は、映像入力端子を介してヘッドユニット本体あるいはその他の外部機器から入力される所定形式(例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)形式)の映像信号を受信してシリアル/パラレル変換を行ってRGB形式の映像信号を出力する。この映像信号の内容は、本実施形態では特に限定されない。例えば、ディスク再生装置から出力される映画などの映像信号であってもよいし、インターネットを介して配信される動画の映像信号であってもよい。あるいは、動画に限らず静止画であってもよい。
【0017】
表示処理部120は、映像信号受信部110から出力される映像信号に対応する表示画像に対して、具体的には、スクリーン300上でフォーカスが合っている一部領域を除く他の領域について映像を鮮明化する処理を行う。
【0018】
図2は、表示処理部120の内部構成を示す図である。表示処理部120は、処理範囲特定部130と鮮明化処理部140を含んでいる。処理範囲特定部130は、映像信号受信部から出力される映像信号の中から、鮮明化処理の対象となる範囲(他の領域)に該当する信号(映像データ)を特定する。鮮明化処理部140は、処理範囲特定部130で特定した範囲に対応する映像データについて、映像のぼけを低減する鮮明化処理を行う。鮮明化処理の具体例としては、(1)映像の高域成分を増幅する高域強調処理、(2)コントラストを増幅するコントラスト調整処理、(3)映像の輪郭を強調する輪郭強調処理、などが考えられる。これらの鮮明化処理の程度は、他の領域全体について一律に行うようにしてもよいが、スクリーン300上でフォーカスが合っている一部領域から遠ざかるにつれて大きくすることが望ましい。
【0019】
このようにして一部の範囲(フォーカスが合っている一部領域を除く他の領域)について鮮明化処理が行われた後の映像信号が車両用表示制御装置100からプロジェクタ200に入力されると、プロジェクタ200は、この映像信号に対応する1画面分の映像をスクリーン300に投射する。
【0020】
このように、本実施形態のプロジェクタ装置1では、スクリーン300の配置等の都合により、スクリーン300の一部領域についてフォーカスが合っており、他の領域についてフォーカスが合っていない場合に、この他の領域に対応する映像を鮮明化することにより、この他の領域において映像がぼけている印象を和らげることができ、画質を向上させることができる。
【0021】
図3は、表示処理部120の具体例を示す図である。
図3に示す表示処理部120は、Hカウンタ130A、高域強調回路140A、コントラスト調整回路140B、LUT(ルックアップテーブル)140C、140Dを備えている。Hカウンタ130Aが
図2に示した処理範囲特定部130に対応している。また、高域強調回路140A、コントラスト調整回路140B、LUT140C、140Dが
図2に示した鮮明化処理部140に対応している。
【0022】
Hカウンタ130Aは、水平同期信号(H-Sync)に応じたカウント動作を行っており、スクリーン300に表示される1画面分の映像の垂直方向の位置を算出する。例えば、1画面の上辺から順番に映像信号が走査されるものとすると、Hカウンタ130Aのカウント値は、入力される映像信号が上から何ライン目に対応するものであるかを示すことになる。
【0023】
LUT140Cは、Hカウンタ130Aから出力されるカウント値(1画面内の垂直方向の位置)に対応するラプラシアンフィルタの係数cを出力する。
【0024】
図4は、ラプラシアンフィルタの算出式を示す図であり、その内容が3行3列の行列で示されている。高域強調回路130Aは、着目画素とその上下左右の4画素について、それぞれの画素値に(1+4c)、-c、-c、-c、-cを乗算して加算した結果を着目画素の新たな画素値とする処理を各画素について繰り返すことにより、1画面分の高域強調処理を行う。
【0025】
ところで、このような高域強調処理は、1画面分のフレームメモリに各画素の画素値を格納しておくことにより、ソフトウエアによる積和演算で実現することができるが、簡単なハードウエアで実現するようにしてもよい。
【0026】
図5は、ハードウエアで実現した高域強調回路130Aの構成を示す図である。
図5に示す高域強調回路130Aは、2つのラインメモリ10、12と、2つのフリップフロップ14、16と、5つの乗算器18、20、22、24、26と、1つの加算器28とを含んでいる。ラインメモリ10、12は、1ラインの画素数よりも1画素分少ない画素数の画素値を、先入れ先出し方式で、走査順に入力される画素値を保持する。フリップフロップ14、16は、1画素分の画素値を保持する。乗算器18、20、24、26は、入力値に係数(-c)を乗算して出力する。乗算器22は、入力値に係数(4c)を乗算して出力する。加算器28は、複数の入力値(乗算器18、20、22、24、26、フリップフロップ14の各出力値)を加算する。これらの構成により、
図4に示したラプラシアンフィルタを用いた高域強調処理の演算を行うことができる。
【0027】
LUT140Dは、Hカウンタ130Aから出力されるカウント値(1画面内の垂直方向の位置)に対応するコントラスト調整の係数Mを出力する。コントラスト調整回路140Bは、着目画素の画素値に係数Mを乗算することにより、コントラストを増幅(強調)する処理を行う。
図6は、ハードウエアで実現したコントラスト調整回路140Bの構成を示す図である。
図6に示すコントラスト調整回路140Bは、1つの乗算器30を含んでいる。この乗算器30は、入力値に対して係数Mを乗算して出力する。このような簡単な構成により、コントラスト調整(増幅、強調)を行うことができる。
【0028】
このように、
図3に示した表示処理部120では、入力される映像データに対して、1画面内の垂直位置に応じた高域強調処理とコントラスト調整処理による鮮明化処理を行っている。
【0029】
図7は、画面の垂直位置yと高域強調処理の係数cおよびコントラスト調整処理の係数Mの関係を示す図である。
図7に示す例では、スクリーン300に表示される1画面分の映像では、垂直位置y1においてフォーカスが合っている。
図8は、1画面内でフォーカスが合っている垂直方向の位置を示す図であり、フォーカスが合っている垂直位置y1に対応する一部領域にハッチングが付されている。鮮明化処理を行わない場合には、このハッチングが付された一部領域から垂直位置が遠ざかるほどフォーカスがずれて映像のボケの程度が大きくなる。本実施形態では、
図7に示すように、垂直位置y1からのずれが大きくなるほど係数cと係数Mの値が大きくなるように、すなわち、高域強調とコントラストの増幅の程度が大きくなるようになっている。
【0030】
ところで、
図3に示した表示処理部120では、高域強調回路140Aによる高域強調処理と、コントラスト調整回路140Bによるコントラストの増幅処理を行うようにしたが、これらの処理はいずれか一方のみを行うようにしてもよい。あるいは、これらに加えて輪郭強調回路を追加したり、これらの少なくとも一方を輪郭強調回路に置き換えるようにしてもよい。
【0031】
図9は、ハードウエアで実現した輪郭強調回路の構成を示す図である。
図9に示す輪郭強調回路は、2つのフリップフロップ40、42と、加算器44と、右シフト回路46と、減算器48とを含んでいる。フリップフロップ40、42は、1画素分の画素値を順番に保持する。初段のフリップフロップ40の入力(画素値)をd3、出力をd2、次段のフリップフロップ42の出力をd1としたときに、加算器44は、d1にd3を加算(d1+d3)する。右シフト回路46は、加算器44の出力に対して1ビット右シフトすることにより、加算器44の出力(d1+d3)を1/2にする。減算器48は、d2から右シフト回路46の出力((d1+d3)/2)を減算する。このようにして、2次微分を用いた輪郭強調処理が行われる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、車室内のスクリーン300に映像を投影する場合について説明したが、車室内以外の室内あるいは屋外に設けられた平面形状あるいは曲面形状のスクリーンに映像を投影する場合にも本発明を適用することができる。
【0033】
また、
図8に示した例では、1画面の垂直方向の一部領域においてフォーカスが合うものとしたが、水平方向の一部領域においてフォーカスが合う場合や、1画面内のごく狭い領域においてフォーカスが合う場合についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述したように、本発明によれば、スクリーンの配置等の都合により、スクリーンの一部領域についてフォーカスが合っており、他の領域についてフォーカスが合っていない場合に、この他の領域に対応する映像を鮮明化することにより、この他の領域において映像がぼけている印象を和らげることができ、画質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 プロジェクタ装置
100 車両用表示制御装置
110 映像信号受信部
120 表示処理部
130 処理範囲特定部
130A Hカウンタ
140 鮮明化処理部
140A 高域強調回路
140B コントラスト調整回路
140C、140D LUT(ルックアップテーブル)
200 プロジェクタ
300 スクリーン