(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063205
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20230427BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230427BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/38 A
B23K26/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003661
(22)【出願日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2021173121
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩松 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶吾
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB03
4E168EA17
4E168FB01
4E168FC01
4E168HA01
4E168HA05
4E168HA06
(57)【要約】
【課題】安価な構成でワークのばたつきを抑制する。
【解決手段】レーザ加工機10は、ワークWを載置するためのパレット50と、レーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッド30と、パレット50の下方の空間を囲むように設けられ、レーザ加工に伴う粉塵を集める集塵室60と、集塵室60内の空気を吸引する集塵ダクト61と、パレット50よりも小さなサイズに形成されて、パレット50内の所定区画に配置される加工用テーブル80と、加工用テーブル80の下方の空間を囲むように設けられる吸引テーブル81と、吸引テーブル81内の空気を吸引する吸引ダクト85と、集塵装置が引き込む空気の流れを集塵ダクト61と吸引ダクト85とで切り替える切替装置70と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するためのパレットと、
前記パレットの上方に配置され、前記ワークに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッドと、
前記パレットの下方の空間を囲むように設けられ、前記レーザ加工に伴う粉塵を集める集塵室と、
前記集塵室と接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れによって前記集塵室内の空気を吸引する集塵ダクトと、
前記パレットよりも小さなサイズに形成されて、前記パレット内の所定区画に配置されており、前記ワークが載置される加工用テーブルと、
前記加工用テーブルの下方の空間を囲むように設けられる吸引テーブルと、
前記吸引テーブルと接続されており、前記集塵装置が引き込む空気の流れによって前記吸引テーブル内の空気を吸引する吸引ダクトと、
前記集塵ダクトと前記吸引ダクトとがそれぞれ接続されており、前記集塵装置が引き込む空気の流れを前記集塵ダクトと前記吸引ダクトとで切り替える切替装置と、
を備えているレーザ加工機。
【請求項2】
前記パレットは、
前記ワークを支持するために、互いに間隔を空けて配列された複数の板状部材を含んでおり、
前記パレットから前記複数の板状部材の一部を取り外すことで、前記加工用テーブルを配置するための前記所定区画が形成される
請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記加工用テーブルは、前記複数の板状部材の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造からなり、前記吸引テーブルに対して着脱可能に構成される
請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記パレットを移動自在に支持する本体部をさらに有し、
前記パレットは、
前記パレットが前記本体部に収容された正規位置と、前記パレットの一部が前記本体部から引き出された引出位置との間を移動し、
前記吸引テーブルは、
前記パレットを引出位置へと引き出した状態で、前記パレットに対して着脱される
請求項2又は3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記吸引ダクトは、
前記パレットに装着された前記吸引テーブルと、前記パレットの内外を連通する連通部との間を接続する第1ダクト部と、
前記連通部と前記切替装置との間を接続する第2ダクト部と、を備え、
前記第2ダクト部は、
前記パレットを前記正規位置へと移動させると、前記連通部に対して接続され、
前記パレットを前記正規位置から前記引出位置へ向けて引き出すと、前記連通部から分割される
請求項4記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記切替装置は、
前記吸引ダクトを開閉する開閉扉と、
前記集塵ダクトを流れる空気の流量を調整する流量調整弁と、を備える
請求項1から5いずれか一項記載のレーザ加工機。
【請求項7】
前記切替装置は、
前記吸引ダクトから空気が流入する位置に、前記吸引ダクト内の空気の流れと交差するように配置された衝突板を備える
請求項1から6いずれか一項記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
板金などの板状のワークに対して切断加工を行う加工機として、レーザビームを用いて加工を行うレーザ加工機が知られている。レーザ加工機は、ワークにレーザビームを照射することで、熱エネルギーによってワークを切断する。レーザ加工機は、レーザビームを照射する加工ヘッドをワークの面内方向に沿って移動させることで、ワークからパーツを切り出す。
【0003】
薄板のワークを用いて微細なパーツを切り出す微細加工を行うような場合には、切り出された微細なパーツが落下してしまうことがある。そこで、微細加工を行う際には、レーザ加工機のパレットに小さな隙間のメッシュ構造を備えた加工用テーブルを設置し、この加工用テーブル上にワークを載置してレーザ加工が行われる。
【0004】
レーザ加工を行う際、加工中に噴射されるアシストガスのガス圧によってワークがばたついてしまうと、加工不良が発生することがある。ワークのばたつきを防止する方法として、加工用テーブルの下方から空気を吸引する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加工用テーブル上のワークを吸引するためには、吸引手段を別途設ける必要があり、その制御機能なども含めるとコストアップに繋がってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のレーザ加工機は、ワークを載置するためのパレットと、パレットの上方に配置され、ワークに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッドと、パレットの下方の空間を囲むように設けられ、レーザ加工に伴う粉塵を集める集塵室と、集塵室と接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れによって集塵室内の空気を吸引する集塵ダクトと、パレットよりも小さなサイズに形成されて、パレット内の所定区画に配置されており、ワークが載置される加工用テーブルと、加工用テーブルの下方の空間を囲むように設けられる吸引テーブルと、吸引テーブルと接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れによって吸引テーブル内の空気を吸引する吸引ダクトと、集塵ダクトと吸引ダクトとがそれぞれ接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れを集塵ダクトと吸引ダクトとで切り替える切替装置と、を備えている。
【0008】
本発明の一態様のレーザ加工機によれば、集塵装置が引き込む空気の流れによって、集塵室内の空気が集塵ダクトから吸引されている。集塵装置が引き込む空気の流れは、切替装置によって、集塵ダクトから吸引ダクトへと切り替えることができる。空気の流れを吸引ダクト側へと切り替えることで、パレット内に配置される吸引テーブル内の空気を吸引することができる。これにより、パレット内の所定区画に配置された加工用テーブルの範囲を限定的に吸引することができるので、加工用テーブルにワークを吸着固定することができる。また、集塵室内の空気を吸引する集塵装置が空気を引き込む流れを流用しているので、吸引テーブルを吸引するための専用の吸引手段を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、安価な構成でワークのばたつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、加工用テーブル及び吸引テーブルが設置されたレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、レーザ加工機の基本構造を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレーザ加工機に搭載されるパレットを説明する図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すレーザ加工機に搭載されるパレットを説明する図である。
【
図5】
図5は、パレットに設置される吸引テーブルを説明する図である。
【
図7】
図7は、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する図である。
【
図8】
図8は、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
図1は、加工用テーブル及び吸引テーブルが設置されたレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。
【0012】
まず、
図1を参照し、レーザ加工機10の概要を説明する。レーザ加工機10は、ワークWを載置するためのパレット50と、パレット50の上方に配置され、ワークWに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッド30と、パレット50の下方の空間を囲むように設けられ、レーザ加工に伴う粉塵を集める集塵室60と、集塵室60と接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れによって集塵室60内の空気を吸引する集塵ダクト61と、パレット50よりも小さなサイズに形成されて、パレット50内の所定区画に配置されており、ワークWが載置される加工用テーブル80と、加工用テーブル80の下方の空間を囲むように設けられる吸引テーブル81と、吸引テーブル81と接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れによって吸引テーブル81内の空気を吸引する吸引ダクト85と、集塵ダクト61と吸引ダクト85とがそれぞれ接続されており、集塵装置が引き込む空気の流れを集塵ダクト61と吸引ダクト85とで切り替える切替装置70と、を備えている。
【0013】
図2は、レーザ加工機の基本構造を模式的に示す斜視図である。つぎに、本実施形態に係るレーザ加工機10の基本構造を説明する。本明細書では、水平方向において直交する左右方向及び前後方向と、左右方向及び前後方向それぞれに直交する上下方向とを方向の定義として用いる。左右方向及び前後方向は、パレット50に載置されるワークWの面内方向と平行であり、上下方向は、パレット50に載置されるワークWの面直方向と対応する。
【0014】
図2に示すように、レーザ加工機10は、本体部11と、ヘッド駆動機構15と、加工ヘッド30と、パレット50と、制御装置100と、レーザ発振器110とを備えている。
【0015】
本体部11は、概ね直方体状に形成されており、床面などの設置面に設置されている。本体部11の前縁部及び後縁部には、サイドフレーム12がそれぞれ配置されている。前縁部及び後縁部のサイドフレーム12は、互いに平行に配置されている。
【0016】
ヘッド駆動機構15は、前後方向及び左右方向及に沿って加工ヘッド30を移動させる。ヘッド駆動機構15は、X軸キャリッジ16と、Y軸キャリッジ17とを備えている。
【0017】
X軸キャリッジ16は、門型形状を有している。X軸キャリッジ16は、一対のサイドフレーム12によって支持されており、サイドフレーム12に沿って移動可能に構成されている。X軸キャリッジ16は、サイドフレーム12に設けられたX軸駆動部(図示せず)によって駆動され、左右方向に移動する。
【0018】
Y軸キャリッジ17は、X軸キャリッジ16によって支持されており、X軸キャリッジ16に沿って移動可能に構成されている。Y軸キャリッジ17は、X軸キャリッジ16に設けられたY軸駆動部(図示せず)によって駆動され、前後方向に移動する。
【0019】
加工ヘッド30は、ワークWの上方からレーザビームを照射して、ワークWに対してレーザ加工を行う。加工ヘッド30には、プロセスファイバ(図示せず)を介して、レーザ発振器110から射出されたレーザビームが伝送されている。レーザビームは、加工ヘッド30の先端に設けられた開口からワークWに照射される。
【0020】
加工ヘッド30は、Y軸キャリッジ17に配置されている。X軸駆動部及びY軸駆動部を駆動して、X軸キャリッジ16及びY軸キャリッジ17を移動させることにより、加工ヘッド30を左右方向及び前後方向にそれぞれ移動させることができる。また、ヘッド駆動機構15は図示しないZ軸駆動部を備えており、加工ヘッド30は、Z軸駆動部によって駆動され、上下方向に移動することができる。
【0021】
加工ヘッド30は、ヘッド駆動機構15による左右方向の移動及び前後方向の移動を通じて、予め定められた加工範囲の中で、レーザ加工を行うことができる。本実施形態のレーザ加工機10は、小さいサイズのワークWを想定した装置であり、加工範囲は、最大で4'×4'(1219mm×1219mm)サイズのワークWを加工することができる範囲に設定されている。
【0022】
パレット50は、一対のサイドフレーム12によって水平に支持されている。パレット50には、ワークWが載置される。パレット50は、正方形状を有しており、加工範囲と同じサイズ及びこれよりも小さなサイズのワークWを載置することができる。なお、パレット50及びこれに関連するレーザ加工機10の構造については後述する。
【0023】
パレット50は、サイドフレーム12に固定されたガイド部材(図示せず)を介して、左右方向へ移動自在に支持されている。ガイド部材は、パレット50に設けられたレールを摺動自在に支持することで、パレット50の直線運動をガイドする。
【0024】
パレット50の左端には、作業者がパレット50を移動させるために把持する把手部(図示せず)が設けられている。作業者は、把手部を把持してパレット50を左右方向に動かすことで、正規位置と引出位置との間でパレット50を移動させることができる。
【0025】
パレット50が正規位置にある場合、パレット50は、本体部11に収容された状態となる(
図2に示す状態)。このとき、パレット50のほぼ全域が加工ヘッド30の加工範囲に含まれる。正規位置にあるパレット50を左方向へと引き出すと、パレット50は引出位置まで移動する。パレット50が引出位置にある場合、パレット50の一部は本体部11から引き出された状態となる。
【0026】
制御装置100は、箱形の筐体と、この筐体の内部に収容される回路基板などで構成されている。制御装置100は、本体部11の右端下方に配置され、本体部11に固定されている。制御装置100は、ヘッド駆動機構15及びレーザ発振器110といった、レーザ加工機10の各部の動作を制御する。
【0027】
レーザ発振器110は、レーザビームを生成し、加工ヘッド30に対してレーザビームを供給する。レーザ発振器110は、箱形の筐体と、この筐体の内部に収容される電子部品及び電機部品などで構成されている。レーザ発振器110は、本体部11の右端上方に配置され、本体部11に固定されている。
【0028】
図3は、
図2に示すレーザ加工機に搭載されるパレットを説明する図である。
図4は、
図1に示すレーザ加工機に搭載されるパレットを説明する図である。
図5は、パレットに設置される吸引テーブルを説明する図である。
図6は、切替装置を説明する図である。以下、
図1及び
図2に加え、
図3乃至
図6を参照し、パレット50の構造及びパレット50に関係するレーザ加工機10の構造を詳細に説明する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、パレット50は、枠体51と、複数のスキッド52とを備えている。
【0030】
枠体51は、パレット50の上方からみたときに、正方形状を有するフレーム部材である。前後方向における枠体51の中央には、左右方向に延在する仕切板51aが設けられている。
【0031】
複数のスキッド52は、ワークWにレーザ加工が行われるときにワークWを支持するワーク支持部材である。複数のスキッド52は、前後方向に延在する板状部材であり、左右方向にかけて間隔を空けて配置されている。複数のスキッド52は、仕切板51aよりも前側に位置するパレット50の前側領域、及び仕切板51aよりも後側に位置するパレット50の後側領域にそれぞれ配置されている。スキッド52の両端は、枠体51を構成するフレーム部材と仕切板51aとによって支持されており、スキッド52は、必要に応じて着脱を行うことができる。スキッド52は、鋼などの金属材料、例えば軟鋼から構成されている。
【0032】
スキッド52は、上下方向と平行となるように起立している。スキッド52の上縁部には、それぞれが上方に向かって突出する複数の突出部が設けられている。複数の突出部は、前後方向にかけて間隔を空けて設けられている。個々の突出部は、上下方向に沿って縦長に形成されており、上方に向かう程に幅が狭くなるような山形状を有している。ワークWは、スキッド52の上縁部、すなわち個々の突出部の頂点において支持される。
【0033】
複数のスキッド52は、左右方向にかけて大きな間隔で配置されているので、主として、切り出すパーツのサイズが大きい大型のワークWを載置する際に利用される。
【0034】
図1及び
図4に示すように、パレット50には、薄板などの小型のワークWを載置して微細加工を行うための加工用テーブル80を設置することができる。加工用テーブル80は、パレット50よりも小さなサイズに形成されており、パレット50内の所定区画に配置される。例えばパレット50の前側領域に装着されたスキッド52を取り外すことで、加工用テーブル80を設置する所定区画を確保することができる。加工用テーブル80は、後述する吸引テーブル81上に着脱可能に設置される。
【0035】
加工用テーブル80は、上下方向に一定の高さを備えており、その上面にワークWを載置することができる。加工用テーブル80は、パレット50に配列されたスキッド52の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造を有しており、それぞれ上下方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。メッシュ構造としては、水平方向の断面形状が六角形となるハニカム形状、水平方向の断面形状が四角形となる格子形状を用いることができる。
【0036】
図1に示すように、レーザ加工機10は、集塵室60と、集塵ダクト61と、吸引テーブル81と、吸引ダクト85と、切替装置70とさらに備えている。
【0037】
集塵室60は、正規位置にあるパレット50の下方の空間を囲むように設けられており、レーザ加工に伴いパレット50の周囲に発生する粉塵を集めるための空間である。この粉塵には、ヒュームやスパッタ(溶融金属)も含まれる。レーザ加工に伴う粉塵は、加工ヘッド30から噴射されるアシストガス、及び集塵ダクト61へと引き込まれる空気の流れを受けて、集塵室60へと導かれる。
【0038】
集塵ダクト61は、集塵室60内の空気を吸引する。集塵ダクト61の一端は、集塵室60に接続され、集塵ダクト61の他端は、切替装置70に接続されている。集塵ダクト61は、後述する集塵装置が引き込む空気の流れによって集塵室60内の空気を吸引する。集塵室60内の空気を吸引することで、レーザ加工に伴う粉塵を回収することができる。
【0039】
図1、
図4及び
図5に示すように、吸引テーブル81は、パレット50に加工用テーブル80を設置する際に利用されるテーブルであり、パレット50に対して着脱可能に構成されている。吸引テーブル81は、上面が開放された直方体状の箱体であり、加工用テーブル80と同一サイズに形成されている。
図5に示すように、吸引テーブル81の内部には、加工用テーブル80を支持するための複数のスキッド82が設けられており、吸引テーブル81の上方に加工用テーブル80を着脱可能に設置することができる。これにより、吸引テーブル81は、加工用テーブル80の下方の空間を囲むように、加工用テーブル80に対して設けられる。
【0040】
吸引ダクト85は、吸引テーブル81内の空気を吸引する。吸引ダクト85の一端は、吸引テーブル81の接続継手83に接続され、吸引ダクト85の他端は、切替装置70に接続されている。吸引ダクト85は、集塵装置が引き込む空気の流れによって吸引テーブル81内の空気を吸引する。吸引テーブル81内の空気を吸引することで、加工用テーブル80の下面側が負圧となる。この負圧の作用により、加工用テーブル80の上面に載置されるワークWが吸着され、ワークWを加工用テーブル80に固定することができる。
【0041】
吸引ダクト85は、第1ダクト部85aと、第2ダクト部85bとから構成されており、2つの要素に分割することができる。パレット50の枠体51には、枠体51の内外を連通する連通部53が設けられている。第1ダクト部85aは、パレット50に設置された吸引テーブル81(接続継手83)と連通部53との間を接続する。また、第2ダクト部85bは、連通部53と切替装置70との間を接続する。第1ダクト部85aと第2ダクト部85bとは、パレット50の連通部53を介して相互に接続される。
【0042】
なお、吸引テーブル81の上面の周縁部は、加工用テーブル80の下面の周縁部と接触する接触面となるため、吸引テーブル81と加工用テーブル80との隙間を埋めるためのシール部材を配設してもよい。シール部材としては、例えばスポンジなどが挙げられる。また、加工用テーブル80を設置する際の位置決めを行うために、吸引テーブル81の上面の周縁部に突起又は切欠きなどを形成してもよい。
【0043】
図1、
図2及び
図6に示すように、切替装置70は、集塵ダクト61と、吸引ダクト85とがそれぞれ接続されている。また、
図6に示すように、切替装置70は、集塵装置へと至る集合ダクト75が接続されている。集塵装置は、モータなどの動力機構により回転する排気ファンを備えている。排気ファンが回転すると、集塵装置内が負圧となり、集合ダクト75内の空気が集塵装置に引き込まれる。
【0044】
切替装置70は、直方体状の箱体であり、集塵ダクト61によって吸引された空気、及び吸引ダクト85によって吸引された空気は、切替装置70を経由して、集合ダクト75へと流れる。切替装置70は、集塵装置が引き込む空気の流れを集塵ダクト61と吸引ダクト85とで切り替えることができる。
【0045】
図6に示すように、切替装置70は、開閉扉71と、衝突板72と、トレイ73と、流量調整弁74とを備えている。
【0046】
開閉扉71は、吸引ダクト85を開閉する扉である。衝突板72は、吸引ダクト85から空気が流入する位置に、吸引ダクト85内の空気の流れと交差するように配置されている。衝突板72は、吸引ダクト85から流入した空気に含まれるスパッタを衝突させることで、スパッタを除去する機能を担っている。トレイ73は、切替装置70の底部に配置された引き出し式のトレイである。このトレイ73により、衝突板72に衝突して落下したスパッタなどを回収することができる。流量調整弁74は、集塵ダクト61を流れる空気の流量を調整する弁体である。
【0047】
開閉扉71を閉じて、流量調整弁74を開いた場合、集塵装置が引き込む空気の流れは、集塵ダクト61及び集合ダクト75を流れる。これにより、集塵室60内の空気は、集塵ダクト61及び集合ダクト75を介して集塵装置へと取り込まれる。
【0048】
一方、開閉扉71を開いて、流量調整弁74を閉じた場合、集塵装置が引き込む空気の流れは、吸引ダクト85及び集合ダクト75を流れる。これにより、吸引テーブル81内の空気は、吸引ダクト85及び集合ダクト75を介して集塵装置へと取り込まれる。
【0049】
図7乃至
図10は、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する図である。以下、
図7乃至
図10を参照し、吸引テーブル及び加工用テーブルの設置動作を説明する。まず、初期状態では、
図2に示すように、パレット50の全域にスキッド52が装着されているものとする。
【0050】
図7に示すように、作業者は、パレット50を正規位置から引き出して、パレット50を引出位置まで移動させる。作業者は、例えば仕切板51aよりも前側に装着されているスキッド52を取り外し、パレット50の前側領域を開放する。
【0051】
図8に示すように、作業者は、パレット50の前側領域に吸引テーブル81を装着する。また、作業者は、吸引テーブル81の接続継手83とパレット50の連通部53との間を第1ダクト部85aで接続する。
図9に示すように、作業者は、吸引テーブル81の上方に、加工用テーブル80を設置する。これにより、パレット50に対する加工用テーブル80及び吸引テーブル81のセットが完了する。
【0052】
図10に示すように、作業者は、引出位置にあるパレット50を右方向に向かって押し込み、パレット50を正規位置まで移動させる。パレット50が正規位置まで到達すると、不動状態に保持されている第2ダクト部85bに対してパレット50の連通部53が接続する。これにより、吸引テーブル81と切替装置70とが吸引ダクト85を介して接続される。そして、
図1に示すように、加工用テーブル80にワークWを載置することで、ワークWに対してレーザ加工を行うことができる。
【0053】
加工用テーブル80に載置したワークWに対してレーザ加工を行う場合、
図6に示すように、作業者は、開閉扉71を開いて、流量調整弁74を閉じた状態で、集塵装置を動作させる。集塵装置が空気を吸引することで、吸引テーブル81内の空気は、吸引ダクト85及び集合ダクト75を介して集塵装置へと取り込まれる。これにより、加工用テーブル80上のワークWは、加工用テーブル80の上面に吸着固定される。したがって、レーザ加工中にアシストガスが噴射されても、ワークWのばたつきを抑制することができる。
【0054】
また、流量調整弁74の開度を閉状態から開き方向に調整することで、集塵装置が生成する空気の流れは、集塵ダクト61及び集合ダクト75にも流れる。吸引ダクト85及び集合ダクト75を流れる空気の流量が減少するので、その流量を制御することができる。これにより、ワークWの板厚といったように、加工対象となるワークWに応じて、ワークWを吸引する力を調整することができる。
【0055】
このように本実施形態のレーザ加工機10によれば、集塵室60内の空気が、集塵装置が引き込む空気の流れによって集塵ダクト61から吸引されている。集塵装置が引き込む空気の流れは、切替装置70によって、集塵ダクト61から吸引ダクト85へと切り替えることができる。これにより、空気の流れを吸引ダクト85側へと切り替えることで、パレット50内に配置される吸引テーブル81内の空気を吸引することができる。その結果、パレット50内の所定区画に配置された加工用テーブル80を限定的に吸引することができる。これにより、ワークWを吸引するために必要な吸引力を得ることができるので、ワークWを加工用テーブル80に確実に固定することができる。また、集塵室60内の空気を吸引する流れを流用しているので、吸引テーブル81を吸引するための専用の吸引手段を設ける必要がない。その結果、安価な構成でワークWのばたつきを抑制することができる。
【0056】
加工用テーブル80に対する吸引は、ワークWを固定する以外にも、加工によって生じるカス(滓)を吸引する機能も発揮する。微細加工では、加工した小穴のカス等がワーク上に残り易く、このカスが加工の妨げになることがある。カスを吸引する機能により、カスのサイズが小さい場合には加工用テーブル80の隙間(メッシュ状の貫通孔)からカスが吸い込まれ、カスのサイズが大きい場合には加工用テーブル80に対してカスが吸着される。これにより、カス上がりと呼ばれるカスの立ち上がりが抑制され、安定した加工を行うことができる。
【0057】
さらに、加工用テーブル80に対する吸引は、加工ヘッド30をワークWの面に沿って上下動させる倣い動作についての誤動作を抑制する機能も発揮する。レーザ切断によって立ち上がったカスに加工ヘッド30が倣ってしまうことで、切断不良だけでなく、加工ヘッド30の上下方向への急激な変化の発生、加工ヘッド30の加工用テーブル80への激突などが引き起こされる可能性がある。しかしながら、カスの吸引機能によってカスの立ち上がりを抑制することができるので、加工ヘッド30、加工ヘッド30内のセンサー、及びワークWへの損傷の発生、並びに金銭的、時間的損害の発生を抑制することができる。
【0058】
また、加工用テーブル80上でワークWの加工を行う場合には、もっぱら薄板のワークWを加工することとなる。そこで、このような場合には、アシストガスのガス圧を低くすることができる。高いガス圧をかけてしまうと冷却過多のドロスが発生してしまう可能性があるが、ガス圧を低くすることで良好な切断を行うことができる。また、アシストガスのガス代を軽減することができる。例えば、レーザ加工機10は、同一の材質のワークWを加工する場合でも、加工用テーブル80上でワークWの加工を行う場合には、スキッド52上でワークWの加工を行う場合と比較してアシストガスのガス圧を相対的に低く設定するといった運転を行ってもよい。
【0059】
上述した実施形態では、ワークWを載置する加工用テーブル80と、吸引ダクト85によって内部の空気が吸引される吸引テーブル81とが別体で構成されている。しかしながら、加工用テーブル80と吸引テーブル81とは一体に形成された構造体であってもよい。ただし、加工用テーブル80と吸引テーブル81とが別体で構成されている場合、吸引テーブル81は、加工用テーブル80を着脱するためのテーブルとしても機能する。そのため、高さ、素材、形状が相違する様々な種類の加工用テーブル80へと簡単に交換を行うことができる。
【0060】
本実施形態において、パレット50は、ワークWを支持するために、互いに間隔を空けて配列された複数のスキッド52を含んでいる。そして、パレット50から複数のスキッド52の一部を取り外すことで、加工用テーブル80を配置するための所定区画が形成される。
【0061】
この構成によれば、パレット50の全面にスキッド52を配置する形態と、パレット50の一部に加工用テーブル80を配置する形態とを切り替えることができる。これにより、パレット50の全面を利用してワークWを加工したり、加工用テーブル80を利用してワークWを加工したりといったように、様々な加工態様を選択することができる。その結果、ユーザにとって使い勝手のよいレーザ加工機10を提供することができる。
【0062】
また、スキッド52の一部を取り外すことで加工用テーブル80の設置が可能となるので、パレット50に対して加工用テーブル80を簡単に後付けすることができる。これにより、微細加工のニーズが事後的に生じるような場合でも、レーザ加工機10の仕様を大幅に変更することなく、簡単な組み替えのみで対応することができる。
【0063】
さらに、加工用テーブル80は、パレット50内の一部の区画に配置される。そのため、パレット50内には、加工用テーブル80が設置された領域と、スキッド52が配列された領域とが並存する。このため、スキッド52が配置された領域で厚板の加工を行い、この加工に続いてそのまま加工用テーブル80で薄板の加工を行う、といった連続運転を行うこともできる。これにより、段取りを変えることなく加工を継続的に行うことができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【0064】
なお、加工用テーブル80をパレット50に設置するにあたり、
図4に示す例では、加工用テーブル80が、パレット50の前側領域における左隅に設置されている。しかしながら、加工用テーブル80は、パレット50内の任意の区画に配置されていればよく、パレット50の前側領域における中央や右隅に設置してもよい。また、吸引ダクト85との接続が可能である限り、加工用テーブル80は、パレット50の後側領域に配置されてもよい。このように加工用テーブル80の配置には高い自由度が許容されるので、作業者の使用環境などに応じて使い勝手のよい配置を選択することができる。
【0065】
本実施形態において、加工用テーブル80は、複数のスキッド52の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造からなり、吸引テーブル81に対して着脱可能に構成されている。
【0066】
この構成によれば、吸引テーブル81に対して加工用テーブル80の着脱が可能である。そのため、板厚が大きいワークWのように、加工用テーブル80の消耗が激しいワークWに対しては、通常のスキッド52へと交換することができる。これにより、加工用テーブル80の消耗を抑制することができるので、加工用テーブル80を長期に亘って使用することができる。
【0067】
本実施形態において、レーザ加工機10は、パレット50を移動自在に支持する本体部11をさらに有している。パレット50は、パレット50が本体部11に収容された正規位置と、パレット50の一部が本体部11から引き出された引出位置との間を移動する。吸引テーブル81は、パレット50を引出位置へと引き出した状態で、パレット50に対して着脱される。
【0068】
この構成によれば、パレット50を引出位置まで引き出すことで、パレット50の一部が本体部11から引き出された状態となるので、パレット50に対する吸引テーブル81の着脱を簡単に行うことができる。これにより、ユーザにとって使い勝手のよいレーザ加工機10を提供することができる。
【0069】
本実施形態において、吸引ダクト85は、パレット50に設置された吸引テーブル81とパレット50の内外を連通する連通部53との間を接続する第1ダクト部85aと、連通部53と切替装置70との間を接続する第2ダクト部85bと、を備えている。第2ダクト部85bは、パレット50を正規位置へと移動させると、連通部53に対して接続され、パレット50を正規位置から引出位置へ向けて引き出すと、連通部53から分割される。
【0070】
この構成によれば、吸引テーブル81の着脱に際して合わせてパレット50を移動させることで、第2ダクト部85bと、パレット50の連通部53との分割及び接続を行うことができる。このため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0071】
切替装置70は、吸引ダクト85を開閉する開閉扉71と、集塵ダクト61を流れる空気の流量を調整する流量調整弁74と、を備えている。
【0072】
この構成によれば、空気の流れを、吸引ダクト85と集塵ダクト61とで切り替えることができる。また、集塵ダクト61側は、空気の流量を調整する流量調整弁74が設けられている。開閉扉71を開けた状態で、流量調整弁74により流量を制御することで、吸引ダクト85を流れる空気の流量を相対的に変化させることができる。これにより、吸引ダクト85による吸引力を調整することができる。
【0073】
切替装置70は、吸引ダクト85から空気が流入する位置に、吸引ダクト85内の空気の流れと交差するように配置された衝突板72を備えている。
【0074】
この構成によれば、吸引ダクト85を流れる空気に含まれるスパッタを衝突板72に衝突させることができる。これにより、スパッタが、集塵装置がある下流側へと流れることを抑制することができる。
【0075】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0076】
10 レーザ加工機
11 本体部
12 サイドフレーム
15 ヘッド駆動機構
16 X軸キャリッジ
17 Y軸キャリッジ
30 加工ヘッド
50 パレット
51 枠体
51a 仕切板
52 スキッド
53 連通部
60 集塵室
61 集塵ダクト
70 切替装置
71 開閉扉
72 衝突板
73 トレイ
74 流量調整弁
75 集合ダクト
80 加工用テーブル
81 吸引テーブル
82 スキッド
83 接続継手
85 吸引ダクト
85a 第1ダクト部
85b 第2ダクト部
100 制御装置
110 レーザ発振器
W ワーク