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特開2023-63225芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063225
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20230427BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20230427BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20230427BHJP
   A01N 43/80 20060101ALI20230427BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20230427BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20230427BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C09D11/16
C09K23/00
A01N31/08
A01N43/80 102
A01N37/10
A01N47/12 Z
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126484
(22)【出願日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2021173335
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久人
【テーマコード(参考)】
4H011
4J039
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC10
4H011BC13
4J039AD09
4J039BC20
4J039BC29
4J039BC31
4J039BC50
4J039BC54
4J039BE19
4J039BE21
4J039CA06
4J039EA44
4J039EA48
4J039GA34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、分散安定性に優れる芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、A群(例えば、ボルネオール、オイゲノール、d-リモネン、シトラールR等)から選ばれる少なくとも1種の香料成分と、B群(例えば、ヨードプロパギル化合物、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール等)から選ばれる少なくとも1種の防腐剤成分とで構成される芳香性粒子が水に分散されていることを特徴とする芳香性粒子分散体。

〔式中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表す。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、少なくとも1種の香料成分と、少なくとも1種の防腐剤成分とで構成される芳香性粒子が水に分散されていることを特徴とする芳香性粒子分散体。
【化1】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
【請求項2】
前記香料成分が下記A群から選ばれる少なくとも1種であり、前記防腐剤成分が下記B群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の芳香性粒子分散体。
A群: ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、d-リモネン、シトラール、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、ラズベリーケトン、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、D-ジヒドロカルベオール、L-ジヒドロカルベオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、L-カルベオール、カリオフィレンオキサイド、1,4-シネオール、p-サイメン、D-ジヒドロカルボン、L-ジヒドロカルボン、D-ジヒドロカルビルアセテート、L-ジヒドロカルビルアセテート、エレメン、イソボルニルアセテート、D-リモネン、D-リモネンオキサイド、L-リモネンオキサイド、リナロールオキサイド、p―メンタン、L-メントール、メントン-90、ミルテナール、ミルテノール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、D-プレゴン、α-テルピネン、ターピネオールC、α-ターピネオール、L-α―ターピネオール、ターピネオール-4、ターピノーレン、α-ターピニルアセテート、ベルベノール、ベルベノン、3-カレン、カレンオキサイド、ヘキシルアセテート、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェン
B群: ヨードプロパギル化合物、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール
【請求項3】
前記香料成分は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、1質量%以上、前記防腐剤成分は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香性粒子分散体。
【請求項4】
前記芳香性粒子の平均粒子径が10~800nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香性粒子分散体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の芳香性粒子分散体を含むことを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れる芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香性粒子としては、多種多様のものが知られており、手洗い用洗剤、洗濯用洗剤、化粧品、芳香剤、インクなどの用途毎に各種のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)成分:カプセル化香料0.01~1質量%と、(B)成分:リン酸塩およびカルボン酸系高分子化合物から選ばれる少なくとも1種のビルダー2.5~13.035質量%と、(C)成分:親有機性スメクタイトクレーを除く粘土鉱物0.1質量%以上と、を含有し、前記(A)成分は、ポリアクリル酸エステル、メラミン系高分子及びウレタン系高分子から選ばれる一種以上でカプセル壁が形成され、前記(A)成分の平均粒子径は、0.1~100μmであり、(C)成分/(A)成分で表される質量比が、2以上50未満であり、(B)成分/(A)成分で表される質量比が、1.5~251であることを特徴とする手洗い洗濯用の衣料用粉末洗浄剤が開示されており、
また、段落〔0031〕には、「必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤などの添加剤を配合することができる。」ことなどが開示されている。
特許文献2には、ポリアクリル酸エステル系高分子、メラミン系高分子及びウレタン系高分子からなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物で香料を内包したカプセル化香料及び中性無機塩を含む造粒物が、脂肪酸塩で被覆され、前記脂肪酸塩は、その炭素鎖の炭素数が10~18であることを特徴とする香料粒子が開示され、段落〔0042〕には、「必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤などの添加剤を配合することができる。」ことなどが開示されている。
【0004】
更に、特許文献3には、シリカを構成成分として含むシェルと、該シェルの内部にジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステルの重合体を含むポリマー微粒子及び香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤及び溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の油溶性液体を含むコアとを有し、該ポリマー微粒子が、油溶性でかつ不飽和二重結合をもつ単官能性モノマー及び多官能性モノマーから構成され、かつ該多官能性モノマーを用いて架橋されてなる、マイクロカプセルが開示され、段落〔0041〕には、「油溶性液体は抗菌剤、防腐剤、抗酸化剤、殺虫成分及び防虫成分であってもよい。」ことなどが開示されている。
特許文献4には、粉体コーティングとして使用するための球状微粒子を含む組成物であって、前記微粒子が、ポリマー材料と、前記微粒子の約0.01重量%~約20重量%の量で、その中に組み込まれた1種以上の精油化合物と、を含み、前記微粒子が、約0.01マイクロメートル~約100マイクロメートルの平均粒子径、及び約0.93~約0.999の円形度を有し、前記精油化合物が、室温で液体であり、有機溶媒に可溶性であり、水に不溶性であり、水蒸気蒸留、乾燥蒸留、又は加熱なしの機械的加工によって植物から抽出され得る有機化合物であり、その異性体、及びエステル化、水素添加、又は水和によって作製される誘導体を含む、組成物が開示され、前記1種以上の精油化合物が、シントロネラール、シトロネロール、リモネンなどであることが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~4のポリアクリル酸エステル系高分子などで香料成分などをカプセル化したカプセル香料、香料粒子などは、芳香性能を有するものであるが、その持続性に難点があったり、また、防腐性能を付加しようとすると芳香性能や他の配合成分に悪影響を与えたり、分散安定性が不安定化したりする課題が少なからず存在しているのが現状である。また、インク等の液体などの用途に用いる場合においても、上記芳香性能の持続性、芳香性能と防腐性能との両立、分散安定性等に課題があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6789344号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特許第5593306号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特許第6659019号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2020-142231号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れる芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、特定式で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、特定の香料成分と、特定の防腐剤成分とで構成される芳香性粒子が水に分散されている分散体とすることなどにより、上記目的の芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の芳香性粒子分散体は、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、少なくとも1種の香料成分と、少なくとも1種の防腐剤成分とで構成される芳香性粒子が水に分散されていることを特徴とする。
【化1】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
前記香料成分は下記A群から選ばれる少なくとも1種であり、前記防腐成分は下記B群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
A群: ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、d-リモネン、シトラールR、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、ラズベリーケトン、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、D-ジヒドロカルベオール、L-ジヒドロカルベオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、L-カルベオール、カリオフィレンオキサイド、1,4-シネオール、p-サイメン、D-ジヒドロカルボン、L-ジヒドロカルボン、D-ジヒドロカルビルアセテート、L-ジヒドロカルビルアセテート、エレメン、イソボルニルアセテート、L-リモネン、D-リモネンオキサイド、L-リモネンオキサイド、リナロールオキサイド、p―メンタン、L-メントール、メントン-90、ミルテナール、ミルテノール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、D-プレゴン、α-テルピネン、ターピネオールC、α-ターピネオール、L-α―ターピネオール、ターピネオール-4、ターピノーレン、α-ターピニルアセテート、ベルベノール、ベルベノン、3-カレン、カレンオキサイド、ヘキシルアセテート、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェン
B群: ヨードプロパギル化合物、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール
前記香料成分は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、1質量%以上、前記防腐剤成分は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。
前記芳香性粒子の平均粒子径が10~800nmであることが好ましい。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、上記構成の芳香性粒子分散体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れる芳香性粒子分散体及びこれを含有した筆記具用水性インク組成物が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
本発明の芳香性粒子分散体は、本発明の芳香性粒子分散体は、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、少なくとも1種の香料成分と、少なくとも1種の防腐剤成分とで構成される芳香性粒子が水に分散されていることを特徴とするものである。
【化2】
〔上記式(I)中、Aは、水素原子(H)又はメチル基(CH)であり、Rは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよい。〕
【0012】
本発明に用いる上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、内包可能な香料成分、防腐剤成分の強さとこれらの成分の持続的で安定な粒子を作製できる点、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがない点、効果の持続性が高い点などから用いるものである。
上記一般式(I)中のRは、水素原子(H)、炭素数1~22のアルキル基、又はアルキレン鎖の炭素数が2~18であるポリアルキレングリコール鎖を有する置換基を表し、該アルキル基又はポリアルキレングリコール鎖を有する置換基は、置換基としてフェニル基、ベンジル基、エポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基、又はトリアルコキシシリル基を有していてもよいものであり、例えば、炭素数1~20の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~18の、置換基としてエポキシ基、水酸基、ジアルキルアミノ基、炭素数1~4のアルコキシ基を有していてもよいアルキル基が挙げられ、とりわけ炭素数1~6の、置換基としてエポキシ基、水酸基、炭素数1~2のアルコキシ基を有していてもよいアルキル基、炭素数1~6の、置換基としてエポキシ基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
好ましくは、上記一般式(I)中のRは、炭素数1~20の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ヒドロキシル基、トリフルオロエチル基、ジメチルアミノエチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アリル基、テトラヒドロフルフリル基、フェニル基、ベンジル基、ブトキシジエチレングリコール基、メトキシポリエチレングリコール基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、グリシジル基、リン酸エチル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオールなどが望ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。
【0013】
用いる上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)ブチル、(メタ)アクリル酸2-イソシアノエチル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、炭素数1~18のパーフルオロアルキルを有するパーフルオロエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸2-(リン酸)エチル〔2-(Methacryloyloxy)ethyl phosphate〕、(メタ)アクリル酸トリアルコキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジアルコキシメチルシリルプロピル等の少なくとも1種(各単独又は2種以上、以下同様)が挙げられる。
これらのうち、工業的に入手が容易であり、製造時に取り扱いが容易で安全である点、本発明の効果を更に向上させる点などから、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが望ましい。
【0014】
本発明においては、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの他に、更に、持続的な芳香、および防腐効果を得る点等から、好ましくは、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の疎水性ビニルモノマー、水性モノマーを用いることができる。
疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類などの少なくとも1種のモノマーを用いることができる。
用いることができる疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、炭素数1~12までのアルキル基を有するアルキルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、フェニルスチレン、ビニルナフタレン等の少なくとも1種が挙げられる。
用いることができる水性モノマーとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート等の少なくとも1種が挙げられる。
【0015】
本発明に用いる香料成分としては、例えば、テルペン系香料化合物、アルコール類系香料化合物、炭化水素系香料化合物、フェノール類系香料化合物、エステル系香料化合物、カーボネート系香料化合物、アルデヒド系香料化合物、ケトン系香料化合物、アセタール系香料化合物、エーテル系香料化合物、カルボン酸系香料化合物、ラクトン系香料化合物、ニトリル系香料化合物、シッフ塩基系香料化合物、天然精油や天然抽出物等の香料成分の少なくとも1種が挙げられる。
本明細書中において、各香料の「香料化合物」には単一の化合物、あるいは2つ以上の化合物の混合物を意味する。
【0016】
用いることができるテルペン系香料化合物としては、炭素数10のモノテルペンおよびその誘導体(炭素数10以上の化合物を含む。)などが挙げられ、さらには、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン系エステルのいずれか1種以上であることが好ましい。ここでモノテルペンとは、2つのイソプレン単位からなる炭素数10からなる香料化合物であり、鎖状(非環式)のものと環を含む環状のものがある。さらに、本発明におけるテルペン系香料は、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン系エステル、テルペン系アルデヒドも含むものである。
用いるテルペン系香料は、イソプレンを構成単位とする香料化合物やその誘導体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オシメン、ミルセン、コスメン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール等の鎖状モノテルペン、リモネン、メンタン、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、シメン等の単環式モノテルペン、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、カレン、サビネン、ツジェン等の二環式モノテルペンが挙げられる。
これらのテルペン系香料の中で、リモネン、ピネン、ミルセン、カレン、テルピネン、カンフェン等のテルペン系炭化水素、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、ネロール、ターピネオール等のテルペン系アルコール、酢酸リナリル、酢酸テルピニル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸シトロネリル、酢酸イソボロニル等のテルペン系エステル、シトロネラール、シトラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のテルペン系アルデヒドが好ましい。
【0017】
アルコール系香料化合物としては、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、芳香族アルコール、その他のアルコール等が挙げられる。これらの中でも脂肪族アルコールが好ましい。
芳香族アルコール系香料化合物としては、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール等が挙げられる。
脂肪族アルコール系香料化合物としては、シス-3-ヘキセノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、エチルノルボニルシクロヘキサノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、イソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。
その他のアルコール系香料化合物としては、ジプロピレングリコール等のグリコール類、4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-4-ピラノール等が挙げられる。
フェノール系香料化合物としては、グアヤコール、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、チモール、パラクレゾール、バニリン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0018】
エステル系香料化合物としては、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、その他のカルボン酸エステルが挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルを形成する脂肪族カルボン酸としては、炭素数1~18の直鎖及び分岐鎖カルボン酸が挙げられるが、中でもギ酸、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~6のカルボン酸、特に酢酸が好ましい。芳香族カルボン酸エステルを形成する芳香族カルボン酸としては、安息香酸、アニス酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、アントラニル酸等が挙げられる。脂肪族及び芳香族エステルを形成するアルコールとしては、炭素数1~5の直鎖及び分岐鎖脂肪族アルコール及び上記の香料成分アルコール類が挙げられる。
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等が挙げられる。
酢酸エステルとしては、エチルアセテート、イソアミルアセテート(酢酸イソペンチル)、ベンジルアセテート、ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、パラクレジルフェニルアセテート等が挙げられる。
プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート等が挙げられる。
酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。吉草酸エステルとしては、メチルバレレート、エチルバレレート、ブチルバレレート、アミルバレレート、ベンジルバレレート、フェニルエチルバレレート等;ヘキサン酸エステルとしては、メチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、リナリルヘキサノエート、シトロネリルヘキサノエート等が挙げられる。ヘプタン酸エステルとしては、メチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。ノネン酸エステルとしては、メチル2-ノネノエート、エチル2-ノネノエート、エチル3-ノネノエート等が挙げられる。
【0019】
安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、3,6-ジメチルベンゾエート等が挙げられる。桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート等が挙げられる。サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。さらに、ブラシル酸エステルとしては、エチレンブラシレート等が挙げられる。チグリン酸エステルとしては、ゲラニルチグレート、1-ヘキシルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート等が挙げられる。ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。グリシド酸エステルとしては、メチル2,4-ジヒドロキシ-エチルメチルフェニルグリシデート、4-メチルフェニルエチルグリシデート等が挙げられる。アンスラニル酸エステルとしては、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート等が挙げられる。グリコール酸エステルとしては、アリルシクロヘキシルグリコレート等が挙げられる。さらにその他のエステルとしては、ジヒドロシクロゲラン酸エチル、エチル-2-シクロヘキシルプロピオネート、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン-2-カルボキシレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル(2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート等が挙げられる。
【0020】
カーボネート系香料化合物としては、シスー3-ヘキセニルメチルカーボネート、メチル-シクロオクチルカーボネート、エチル-2-t-ブチルシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。
アルデヒド系香料化合物としては、n-オクタナール、n-ノナナール、n-デカナ-ル、n-ドデカナ-ル、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、ジメチル-3-シクロヘキセニル-1-カルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、ヒドロキシマイラックアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、3-(o-(およびp-)エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、アルファ-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-5-プロパナール、2-メチル-3-(パラメトキシフェニル)プロパナール等が挙げられる。
【0021】
ケトン系香料化合物としては、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、3-オクタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-(2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル)シクロペンタノン、イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、メチルイオノン-G、γ-メチルイオノン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキシル)-trans-2-ブタノン、ダマセノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、イロン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、1-(1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-エタン-1-オン、7-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピン-3-オン、カルボン、メントン、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、ラズベリーケトン、ベンゾフェノン、6-アセチル-1,1,2,4,4,7-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン、β-メチルナフチルケトン、エチルマルトール、カンファー、ムスコン、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、シベトン、8-シクロヘキサデセノン、メチルノニルケトン、cis-ジャスモン、パラアミルシクロヘキサノン(4-ペンチルシクロヘキサノン)等が挙げられる。
【0022】
アセタール類としては、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールアセタール等が挙げられる。
エーテル類としては、エチルリナロール、セドリルメチルエーテル、エストラゴール、アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、1,8-シネオール、ローズフラン、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸系香料化合物としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2-ヘキセン酸等が挙げられる。
ラクトン系香料化合物としては、アンブレットリド、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、11-オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
ニトリル系香料化合物としては、トリデセン-2-ニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル等が挙げられる。
シッフ塩基系香料化合物としては、オーランチオール、リガントラール等が挙げられる。
天然精油や天然抽出物としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、バニラ、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、グレープフルーツ、エレミオイル等が挙げられる。
【0024】
これらの香料成分の中で、更に好ましくは、残香強度が強く、内包する防腐剤成分に悪影響を及ぼすことがないもの、また、製造のしやすさなどから、下記A群から選ばれる少なくとも1種が望ましい。
A群: ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、d-リモネン、シトラールR、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、ラズベリーケトン、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、D-ジヒドロカルベオール、L-ジヒドロカルベオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、L-カルベオール、カリオフィレンオキサイド、1,4-シネオール、p-サイメン、D-ジヒドロカルボン、L-ジヒドロカルボン、D-ジヒドロカルビルアセテート、L-ジヒドロカルビルアセテート、エレメン、イソボルニルアセテート、L-リモネン、D-リモネンオキサイド、L-リモネンオキサイド、リナロールオキサイド、p―メンタン、L-メントール、メントン-90、ミルテナール、ミルテノール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、D-プレゴン、α-テルピネン、ターピネオールC、α-ターピネオール、L-α―ターピネオール、ターピネオール-4、ターピノーレン、α-ターピニルアセテート、ベルベノール、ベルベノン、3-カレン、カレンオキサイド、ヘキシルアセテート、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェン
上記A群の香料成分には、香料的に許容される溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、フレグランス産業において、嗅覚的に強力な成分を希釈し、固体成分を溶解し、液体として取り扱うことによって固体成分の取り扱いを容易にするために、または単に単位質量あたりの全体のフレグランスの費用を低減するために希釈剤として慣習的に使用される。典型的には、適切な溶媒はプロピレングリコールジプロピレングリコール、及びブチレングリコールを始めとするグリコール類などの水溶性溶媒や、水と混和しない溶媒、例えば水溶性が10g/L未満の溶媒である。香料的に許容される溶媒の例は、水不溶性炭水化物溶媒(例えば、ExxonMobilから得られるIsopar(登録商標)ファミリー)、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、サリチル酸ベンジル、アジピン酸ジアルキル、クエン酸エステル(例えば、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチル)及びフタル酸ジエチル、水添ロジンメチルエステルである。存在する場合、水混和性溶媒(例えば、10g/100mLより大きい水溶性の溶媒)、例えば、プロピレングリコールジプロピレングリコール、及びブチレングリコールは、可能な限り低い濃度で添加すべきである。
【0025】
上記A群の中で、特に好ましい香料成分としては、経時安定性の点、製造上の操作性の点、安全性の点から、ボルネオール、オイゲノール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、D-リモネン、シトラール、ゲラニオール、バニリン、2-フェニルエタノール、γ-デカラクトン、リナロール、L-ペリラアルデヒド、DL-カンフル、L-カルビルアセテート、アリオフィレン、L-シトロネロール、リナロールオキサイド、ミルテニルアセテート、アリルイソチオシアネート、1,4-シネオール、イソボルニルアセテート、D-リモネン、リナロールオキサイド、L-メントール、3-オクチルアセテート、L-ペリリルアルコール、L-ペリリルアセテート、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネン、ターピネオール-4、ネロール、サフラン酸エチル、酢酸オイゲニル、チャビコール、エストラゴール、アネトール、マンザネート、γ-テルピネン、シメン、ミルセン、フェランドレン、ファルネセン、ツジェンが望ましく、芳香性粒子への内包のしやすさから、水への溶解度が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であることが望ましい。
【0026】
上記A群の香料成分は、天然香料又は合成香料のいずれであってもよく、これらが混合されたものでもよい。さらに上記A群のほか、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含むこともできる。
【0027】
本発明に用いる防腐剤成分は、例えば、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物の少なくとも1種が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
これらの防腐剤成分の中で、内包する芳香剤成分に悪影響を及ぼすことがないもの、また、長期にわたる防腐成分が優れているものを用いるものであり、好ましくは、下記B群から選ばれる少なくとも1種が望ましい。
B群:ヨードプロパギル化合物、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、モルホリン、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、チモール、ジイソチオシアネート、ユーカリオイル、ロンギフォーレン、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、d-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール
【0028】
上記B群の中で、更に好ましい防腐剤成分としては、経時安定性の点、比較的入手しやすくコストも安価に抑えられる点、安全性の点から、ヨードプロパギル化合物、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クレゾール、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、ピリチオンナトリウム、2-(4-チオゾリル)ベンズイミダゾール、4-ターピネノール、1,8-シネオール、ジイソチオシアネート、イソプロピルメチルフェノール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、シトラール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート、D-リモネン、タンニン酸、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、グリセリン脂肪酸エステル、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルパラベン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールが望ましい。
【0029】
本発明の芳香性粒子分散体は、少なくとも、上記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、上記香料成分から選ばれる少なくとも1種と上記防腐剤成分から選ばれる少なくとも1種とで構成されるものであり、その製造法としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(各単独又は2種以上、以下同様)に、または、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマー及び/又は水性モノマーを含む混合モノマーに、上記香料成分、好ましくはA群の香料成分、並びに、上記防腐剤成分、好ましくは上記B群の防腐剤成分を溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更にトリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20)、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができ、芳香性粒子分散体の分散液として製造された後、乾燥などにより、芳香性粒子とすることができる。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、芳香性粒子分散体の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が向上できるので好ましい。
【0030】
本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた芳香性粒子分散体の分散液、芳香性粒子分散体が得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0031】
本発明において、前記芳香性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルルモノマーの含有量は、芳香性粒子分散体を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが必要であり、好ましくは、30~95質量%、更に好ましくは、30~70質量%であることが望ましい。
なお、本発明において、「全ポリマー成分」とは、芳香性粒子分散体を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量を全ポリマー成分に対して、30質量%以上とすることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、一方、この含有量が30質量%未満であると、経時安定性が劣ることとなり、好ましくない。
【0032】
また、前記芳香性粒子分散体を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して、0.5~70質量%とすることが望ましい。
【0033】
本発明において、上記香料成分の(固形分)含有量は、十分な芳香性能を得る点、持続的な残香効果が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、10~
50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この香料成分の含有量を1質量%以上とすることにより、十分な芳香性能、持続的な残香効果を発揮せしめることができ、一方、芳香成分の含有量が1質量%未満であると、芳香性能が十分でなく、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0034】
また、上記防腐剤成分の(固形分)含有量は、十分な防腐性能を得る点、持続的な防腐効果が得られる点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、1~40質量%、特に好ましくは、3~30質量%とすることが望ましい。
この防腐剤成分の含有量を0.1質量%以上とすることにより、十分な防腐性能、持続的な防腐効果を発揮せしめることができ、一方、防腐剤成分の含有量が0.1質量%未満であると、防腐性能が十分でなく、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0035】
上記必要に応じて用いることができる重合性界面活性剤としては、上記乳化重合に通常用いられる重合性界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、重合性界面活性剤としては、アニオン系またはノニオン系などの重合性界面活性剤であり、アデカ(株)製のアデカリアソープNE-10、同NE-20、同NE-30、同NE-40、同SE-10N、花王(株)製のラテムルS-180、同S-180A、同S-120A、三洋化成工業(株)製のエレミノールJS-20、第一工業製薬社製のアクアロンKH-10などの少なくとも1種が挙げられる。これらの重合性界面活性剤の使用量は、上記モノマー全量に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~50質量%が望ましい。
また、上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記モノマー全量に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~25質量%が望ましい。
【0036】
本発明において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、上述の上記A群から選ばれる少なくとも1種の香料成分と上記B群から選ばれる少なくとも1種の防腐剤成分を溶解し、乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーの重合後に上記香料成分と上記防腐剤成分とを溶解して乳化重合することにより、芳香性粒子が水に分散されている芳香性粒子分散体(分散液)が得られる。これらの製造条件で得られる芳香性粒子分散体中の芳香性粒子は、用いる上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、香料成分と防腐剤成分などの配合量、重合条件などにより、その製造量は変動するものであり、製造性、作業性、効率性など点から、固形分量で1~50質量%となるように製造することが好ましい。更に好ましくは、固形分量で10~40質量%となるように製造することが好ましい。
【0037】
また、本発明において、得られる芳香性粒子分散体の平均粒子径は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、用いる他のモノマー種、含有量、重合の際の重合条件等により変動するものであるが、好ましくは、10~800nm、更に好ましくは、20~300nm、更に好ましくは、30~200nmであることが望ましい。
上記好ましい平均粒子径の範囲とすることにより、保存安定性などに優れたものとなり、また、筆記具用水性インクに用いる場合には、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
なお、本発明で規定する「平均粒子径」は、散乱光強度分布によるヒストグラム平均粒子径であり、本発明(後述する実施例を含む)では、粒度分布測定装置〔FPAR1000(大塚電子社製)〕にて、測定した値D50の値である。
【0038】
本発明の芳香性粒子分散体において、分散体中に含まれる芳香性粒子の含有量は、上記各用途等に応じて、固形分量で0.1~50質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1~30質量%であることが望ましい。
この芳香性粒子の含有量が固形分量で0.1質量%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、50質量%超過では、長期の保存安定性が低下しやすくなるものである。
【0039】
このように構成される本発明の芳香性粒子分散体(分散液)は、上述の如く、単独で上記香料成分や防腐剤成分を用いるものよりも、芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れるものとなる(この点については更に後述する製造例、実施例などで詳述する)。
本発明の芳香性粒子分散体(分散液)は、上述の如く、優れた作用効果を発揮するので、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品 、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に芳香性および防腐性を付与するために利用することができる。本発明の芳香性粒子分散体(分散液)は特にプラスチック製容器に充填し使用する際には、単独で上記芳香成分や防腐剤成分を用いるものよりも、容器内壁に経時的に上記芳香成分や防腐剤成分が吸着することを抑制できるので、長期にわたり効果を発揮することが可能となる。
さらに、本発明の芳香性粒子分散体(分散液)は木材、紙材、プラスチック樹脂材、ゴム材、顔料などの色材などに混錬または含浸、塗布して使用してもよく、
具体的な用途としては、上記などの他に、例えば、洗濯洗浄剤、柔軟剤、住居用洗剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め、ファンデーション、アイメイク製品などのフェイスケア製品、ヘアケア製品、制汗剤などのボディケア製品、歯磨き粉等のオーラルケア製品、入浴剤等のインバスケア製品などのパーソナルケア用途、布類・布製品への手入れ用途、衛生用品、ペット用品、空間芳香用品、便箋や消しゴム、鉛筆や固形筆記具、絵の具などの文具用品、加湿機などの空調家電(生活家電)用途、塗料、接着剤、建材、樹脂エマルジョン、木材防腐剤、セメント混和剤、ボイラ、冷却設備、排水処理設備、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用水処理用途;医療器具、食品添加物、水カビ抑制として水槽及び薬浴用途にも好適に用いることができる。
【0040】
更に、本発明の芳香性粒子分散体(分散液)をサインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具用水性インク組成物に利用した場合の形態等を以下に詳述する。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、上記構成の芳香性粒子分散体を含有することを特徴とするものであり、この芳香性粒子分散体の他、着色剤、水溶性有機溶剤を含有することができる。
インク組成物中の芳香性粒子の含有量は、筆記性能を損なうことなく、本発明の効果を発揮せしめる点、保存安定性点から、インク組成物全量に対して、固形分量で0.1~30.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、1.0~15.0質量%であることが望ましい。
【0041】
用いることができる着色剤としては、水溶性染料、顔料、例えば、無機顔料、有機顔料、プラスチックピグメント、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)等も使用できる。
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも本発明の効果を損なわない範囲で適宜量用いることができる。
これらの着色剤の含有量は、筆記具種などにより変動するものであるが、インク組成物全量に対して、1~30質量%である。
【0042】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジ オール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン -2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5トリオール、1,2,3-ヘキサントリオールなどのアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどのグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
その他にも、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、アセトンなどのケトン類などの水溶性溶剤を混合することもできる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具種により変動するものであり、インク組成物全量に対して、1~40質量%、描線乾燥性を更に向上させる点から、10質量%以下としたインク組成に対して特に有効であり、より好ましくは、3~8質量%とすることが望ましい。
【0044】
本発明の筆記具用水性インク組成物には、上記特性の粒子、着色剤、水溶性溶剤の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、増粘剤、蒸発抑制剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0045】
用いることができる分散剤としては、ノニオン、アニオン界面活性剤や水溶性樹脂が用いられる。好ましくは水溶性高分子が用いられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0046】
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノーアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンや、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなとの炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、発酵セルロース、結晶セルロース、多糖類などが挙げられる。用いることができる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの市販品があればそれを使用することができる。
蒸発抑制剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、p-キシレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、デキストリンなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系、シリコーン系、アセチレングリコール系などが挙げられる。
【0047】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、上記特性の粒子、水溶性溶剤、その他の各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって筆記具用水性インク組成物を調製することができる。
【0048】
また、本発明の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0049】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。
ボールペンとしては、上記組成の筆記具用水性インク組成物を直径が0.18~2.0
mmのボールを備えたボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインク追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
【0050】
このように構成される本発明の筆記具用水性インク組成物にあっては、用いる上記特性の芳香性粒子分散体が筆記具用水性インク組成物中に配合されているため、インク組成物中で芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他のインク配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れるので、芳香性能と防腐性能との持続効果を長期間に亘り、しかも、これらの粒子は保存安定性、筆記性能を損なわないため、インク設計の自由度を更に高めることができ、ボールペン、マーキングペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
【実施例0051】
次に、製造例、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
〔製造例1~13:芳香性粒子分散体(粒子1~13)の製造〕
下記製造例1~11により、各芳香性粒子分散体を製造した。なお、以下の「部」は質量部を表す。芳香成分及び防腐剤成分は固形分量である。
【0052】
(製造例1)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水329.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、重合性界面活性剤〔ADEKA社製、アデカリアソープSE-10N、エーテルサルフィート〕20部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
【0053】
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー50部と、メタクリル酸n-ブチル20部とからなる混合モノマーに、芳香成分(d-リモネン、日本テルペン化学社製)17部、防腐剤成分(フェノキシエタノール、四日市合成社製)3部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、タイク(TAIC)〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子1)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、60質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、25質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、91nmであった。
【0054】
(製造例2)
上記製造例1において、蒸溜水を310部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を53部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を17部とし、また、芳香成分として、2―フェニルエタノール(2-フェニルエチルアルコール)、井上香料製造所社製、20部、防腐剤成分としてベンズイソチアゾリノン(BIT)、大和化学工業社製、2部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子2)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、55質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、30質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、15質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、80nmであった。
【0055】
(製造例3)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を55部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を15部とし、また、芳香成分として、CITRAL、クラレ社製20部、防腐剤成分としてメチルイソチアゾリン(MIT)、大和化学工業社製2部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子3)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、55質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、40質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、98nmであった。
【0056】
(製造例4)
上記製造例1において、蒸溜水を310部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を50部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を20部とし、また、芳香成分として、リナロール(リナロール オキシド)、井上香料製造所社製30部、防腐剤成分としてクロロメチルイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリン(CMIT/MIT)大和化学工業社製、12部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子4)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、60質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、28質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、12質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、78nmであった。
【0057】
(製造例5)
上記製造例1において、蒸溜水を295部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を25部とし、また、芳香成分として、オイゲノール、日本テルペン化学社製26部、防腐剤成分としてパラベン、上野製薬社製、14部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子5)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、36質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、14質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、101nmであった。
【0058】
(製造例6)
上記製造例1において、蒸溜水を310部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を50部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、γ-デカラクトン、井上香料製造所社製35部、防腐剤成分としてヨードプロパルギル化合物:3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、ロンザ社製(omacide IPBC 100)、10部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子6)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、52質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、43質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、5質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、94nmであった。
【0059】
(製造例7)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、1,8-シネオール、日本テルペン化学社製、25部、防腐剤成分としてを用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子7)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、40質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、10質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、76nmであった。
【0060】
(製造例8)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、γ-テルピネンを25部、防腐剤成分としてメチルイソチアゾリン(MIT):大和化学工業社製を5部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子8)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、42質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、8質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、88nmであった。
【0061】
(製造例9)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を30部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を45部とし、また、芳香成分として、シメンを25部、防腐剤成分としてメチルイソチアゾリン(MIT):大和化学工業社製を5部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子9)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、45質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、45質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、10質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、101nmであった。
【0062】
(製造例10)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を35部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を40部とし、また、芳香成分として、ミルセンを25部、防腐剤成分としてヨードプロパルギル化合物:3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、ロンザ社製(omacide IPBC 100)、10部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子10)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、56質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、38質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、6質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、95nmであった。
【0063】
(製造例11)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を35部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を40部とし、また、芳香成分として、フェランドレンを25部、防腐剤成分としてヨードプロパルギル化合物:3-ヨード-2-プロピニルカルバメート、ロンザ社製(omacide IPBC 100)、10部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子11)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、56質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、35質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、9質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、100nmであった。
【0064】
(製造例12)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、ファルネセンを25部、防腐剤成分としてパラベン、上野製薬社製、10部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子12)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、59質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、35質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、6質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、95nmであった。
【0065】
(製造例13)
上記製造例1において、蒸溜水を300部とし、メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの量を45部とし、メタクリル酸n-ブチルの量を30部とし、また、芳香成分として、ツジェンを25部、防腐剤成分としてパラベン、上野製薬社製、10部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、芳香性粒子分散体(分散液)(粒子13)を得た。
前記メタクリル酸エステルモノマーの含有量は、芳香性粒子を構成する全ポリマー成分に対して、57質量%、前記芳香成分の含有量は全ポリマー成分に対して、35質量%、前記防腐剤成分の含有量は全ポリマー成分に対して、8質量%であった。また、芳香性粒子の平均粒子径は、98nmであった。
【0066】
上記製造例1~13で得た各芳香性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例1~13で得た各芳香性粒子分散体中の芳香性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
上記で得られた製造例1~13の芳香性粒子分散体(分散液)を用いて、下記評価方法により、残香強度、分散安定性、防腐性能について評価した。
参考例として、比較用として製造例1と同程度の固形分となる芳香成分および防腐成分を混合した分散液を用いた。
これらの結果を下記表1に示す。
【0067】
(残香強度の評価方法)
上記で得られた製造例1~13の芳香性粒子分散体(分散液)を、固形分40質量%となるようビーカー内で希釈し、そこに綿布(綿100%、大きさ50×100mm)を浸漬させ、30回手で撹拌したのち、15分間放置した。
次いで、綿布の水気を手で搾り、25℃、35%RHの恒温恒湿条件下で3週間乾燥させ、評価用処理布とした。
このようにして得られた各綿布から感じられる香気について下記評価基準で残香強度の官能評価を行った。
<残香強度>
上記の方法により処理した評価用処理布について、残香強度を5名の評価者で以下の基準で評価した。5人の評価結果を下記表1に示す。
(残香強度の評価基準)
A:残香性が強く感じられる
B:残香性が弱く感じられる
C:残香性が感じられない
【0068】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた製造例1~13の芳香性粒子分散体(分散液)を用いて、得られた各芳香性粒子水分散体50mlを、100mlの透明度の高いPP製の蓋付きプラスチック瓶に充填し、密封した後に、キャップを上向きにして40℃の条件下1ヶ月保存した後、分散安定性を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
A:分散液の分離が見られず、下部に沈降物もなく良好である。
B:分散液に若干の分離が見られ、下部にわずかな沈降物が確認できる。
C:分散液に顕著な分離が見られ、下部に多くの沈降物が確認できる。
【0069】
(防腐性能(防菌性・防かび性)の試験方法)
上記で得られた製造例1~13の芳香性粒子分散体(分散液)を用いて、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
下記細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテストを実施した。
細菌群: Stapylococcus aureus NBRC13276、 Escherichia coli NBRC3972
酵母: Candida albicans NBRC1594
糸状菌: Aspergillus brasiliensis
〈接種菌液の調製〉
接種菌液の調製:ISO 11930:2012に従って菌液を調製した。
細菌群:各菌種毎にISO 11930:2012に従って菌液を調製した。菌種毎に1×10~1×10cfu/mlに調整した菌液を三種等量混合し接種菌液とした。
酵母:ISO 11930:2012に従い、1×10~1×10cfu/mlになるように菌液を調製した。
糸状菌:ISO 11930:2012に従い、1×10~ 1×10cfu/mlになるように菌液を調製した。
〈接種〉
芳香性粒子分散体に対し、1質量%の量の菌液を接種した。〈保管〉接種した芳香性粒子分散体は、温度22.5±2.5℃に保管し指定された期間ごとに検出培養を行った。
〈検出培養〉
細菌群はSCD寒天培地で、酵母はSD寒天培地で、糸状菌はPD寒天培地でそれぞれ10枚に合計1g塗抹し、細菌群と酵母は32.5℃、2日間、糸状菌は22.5℃、5日間培養した。
〈評価基準〉
A:7日目の時点でコロニーが出現しない。
B:21日目の時点でコロニーが出現しない。
C:28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D:28日の時点で明らかに増えている。
【0070】
【表1】
【0071】
上記表1の結果から明らかなように、上記で得られた製造例1~13の芳香性粒子分散体(分散液)は、参考例に較べ、残香強度、分散安定性、防腐性能に優れていることが判明した。また、表1に示さないが、比較用として製造例2~13においても、参考例と同様に同程度の固形分となる芳香成分および防腐成分を混合した各分散液を用いたものを調製して、参考例と同様に各分散液について残香強度、分散安定性、防腐性を評価したが、それぞれ参考例と同様の各結果が得られ、劣ることが確認された。
【0072】
〔実施例1~13及び比較例1~3:筆記具用水性インク組成物の調製〕
実施例1~13用として、上記製造例1~13で得た各芳香性粒子分散体(分散液)を得た。この製造例1~11で得た各芳香性粒子分散体中の芳香性粒子の固形分量は、35~40質量%であった。
一方、比較例1~3用として、下記3種の既知の香料および防腐剤を用いた。
比較例1は芳香成分(d-リモネン、日本テルペン化学株式会社社製)および防腐剤成分(フェノキシエタノール、四日市合成社製)、比較例2は芳香成分:2―フェニルエタノール(2-フェニルエチル アルコール)、井上香料製造所社製および防腐剤成分:ベンズイソチアゾリノン(BIT)、大和化学工業社製、比較例3は芳香成分CITRAL、クラレ社製および防腐成分:メチルイソチアゾリン(MIT)、大和化学工業社製を用いた。芳香成分および防腐剤成分が実施例1~13と同等の固形分になるよう筆記具用インク組成物の調整を行った。
【0073】
上記製造例1~13により製造した各芳香性粒子分散体(粒子1~13)、上記比較例1~3を用いて、下記に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
インク組成:(全量100質量%)
各芳香性粒子分散体(粒子1~13)又は比較例1~3 15.0質量%
着色剤(カーボンブラックMA100、三菱化学社製 ) 5.4質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1.4質量%
水溶性有機溶剤(プロピレングリコール) 15.0質量%
イオン交換水 63.2質量%
【0074】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記評価方法により、残香強度、分散安定性、防腐性能について評価した。これらの評価結果を下記表2に示す。
【0075】
(筆記具インクでの残香強度の評価方法)
上記で得られた筆記具用水性インク組成物を、水性サインペン〔PM-120T:三菱鉛筆社製、インク吸蔵体内蔵、ペン芯:(細)PET繊維、(極細)POM樹脂、以下同様の構成〕に収容してペン体を作製した。さらにそのペン体軸を横向きで温度40℃、期間1か月保存した後、紙面(上質紙)にペン芯(細)で筆記して、残香強度を5名の評価者で以下の基準で評価した。
評価基準:
A:筆記時の香りがあり、6時間後も筆跡の残香性が感じられる。
B:筆記時の香りがあり、6時間後の筆跡の残香性がわずかに感じられる。
C:筆記時の香りがあり、6時間後の筆跡の残香性が感じられない。
【0076】
(分散安定性の評価方法)
上記で得られた筆記具水性インク組成物を、PM-120T(三菱鉛筆社製)を使用し、40℃で、2週間、細字側を下向きに保存した後、筆記用紙に細字側で丸書きし、下記基準で評価した。
評価基準:
A:初期筆記と同レベル
B:速書きでカスレ
C:ややカスレあり
D:筆記不良(書けない)
【0077】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、ISO 11930:2012(保存効力試験または微生物学的リスク評価、またはその両方によって生成されたデータの解釈のための手順)に準拠した下記の微生物試験方法で行った。
微生物試験方法は、防腐の効果をさらに厳しく確認するため、各筆記具用水性インク組成物を、ポスカPC-5M(三菱鉛筆社製、軸材質PP樹脂、撹拌ボール:ステンレス製(φ:6.4mm))にインクを入れ、温度40℃、期間1か月保存した後、ペン体から抜き取ったインクについて下記の評価方法で試験を行った。
下記細菌群、酵母、糸状菌の三群でチャレンジテストを実施した。
細菌群: Stapylococcus aureus NBRC13276、 Escherichia coli NBRC3972
酵母: Candida albicans NBRC1594
糸状菌: Aspergillus brasiliensis
〈接種菌液の調製〉
接種菌液の調製:ISO 11930:2012に従って菌液を調製した。
細菌群:各菌種毎にISO 11930:2012に従って菌液を調製した。菌種毎に1×10~1×10cfu/mlに調整した菌液を三種等量混合し接種菌液とした。
酵母:ISO 11930:2012に従い、1×10~1×10cfu/mlになるように菌液を調製した。
糸状菌:ISO 11930:2012に従い、1×10~1×10cfu/mlになるように菌液を調製した。
〈接種〉
筆記具用インク組成物に対し、1質量%の量の菌液を接種した。
〈保管〉
接種した筆記具用インク組成物は、温度22.5±2.5℃に保管し指定された期間ごとに検出培養を行った。〈検出培養〉細菌群はSCD寒天培地で、酵母はSD寒天培地で、糸状菌はPD寒天培地でそれぞれ10枚に合計1g塗抹し、細菌群と酵母は32.5℃、2日間、糸状菌は22.5℃、5日間培養した。
〈評価基準〉
A:7日目の時点でコロニーが出現しない。
B:21日目の時点でコロニーが出現しない。
C:28日目の時点で数個から数十個のコロニーが出現している。
D:28日の時点で明らかに増えている。
【0078】
【表2】
【0079】
上記表2を考察すると、本発明範囲となる実施例1~13は、本発明の範囲外となる比較例3に較べ、他のインク配合成分に影響を与えることなく、残香強度、分散安定性、防腐性能に優れていることが確認できた。また、実施例1~13の筆記性についても紙面に筆記して評価したところ、掠れることなく、良好な筆記描線であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の芳香性粒子分散体は、芳香性能と防腐性能を高度に両立しながら、これらの持続性(徐放性)を備え、他の配合成分等に悪影響を及ぼすことがなく、しかも、分散安定性に優れるので、例えば、医療用具、ベビー用品、介護用品、浴場用品、台所用品、食器、飲料水配管部品、生活衛生用品、家電製品、衣料品、建築資材、農業用資材、自動車用内装部品、文房具、筆記具やインクジェットプリンターなどのインク組成物など、様々な製品に芳香性および防腐性を付与するために利用することができる。