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特開2023-63234Ru-Al合金ターゲット及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063234
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】Ru-Al合金ターゲット及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 32/00 20060101AFI20230427BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20230427BHJP
【FI】
C22C32/00 Z
C22C1/05 E
C22C32/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146747
(22)【出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】110139373
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】502294194
【氏名又は名称】光洋應用材料科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 又菱
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 天傑
(72)【発明者】
【氏名】鄭 惠文
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA15
4K018AA40
4K018AB01
4K018AC01
4K018BA08
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC08
4K018BC12
4K018CA02
4K018EA01
4K018EA11
4K018EA21
4K018KA29
4K018KA58
4K018KA63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より高い相対密度及び曲げ強さを有し、改善された耐酸化性も有するRu、Al及び酸化物を含むRu-Al合金ターゲットを提供する。
【解決手段】Ru-Al合金ターゲットの全原子数を基準として、Alの含有量は5at%~50at%であり、酸化物の含有量は5at%~40at%であり、一方、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は50ppm未満であり、Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2超である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム、アルミニウム及び酸化物を含むRu-Al合金ターゲットであって、前記Ru-Al合金ターゲットの全原子数に基づいて、アルミニウムの含有量は5at%以上及び50at%以下であり、前記酸化物の含有量は5at%以上及び40at%以下であり、前記Ru-Al合金ターゲットの塩素含有量は50ppm未満であり、前記Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2より大きい、Ru-Al合金ターゲット。
【請求項2】
前記Ru-Al合金ターゲットの縦断面の前記XRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比が、2よりも大きく、且つ、25未満である、請求項1に記載のRu-Al合金ターゲット。
【請求項3】
前記酸化物が、MgO、TiO、SiO、Cr、CoO、Co、B、Fe、AgO、CuO、NiO、SnO、MgTiO、P、Mn、V、ZrO、Ta、SrO、HfO、Nb、WO、又はそれらの任意の組合わせを含む、請求項1に記載のRu-Al合金ターゲット。
【請求項4】
前記Ru-Al合金ターゲットの相対密度が97%を超える、請求項1に記載のRu-Al合金ターゲット。
【請求項5】
前記Ru-Al合金ターゲットの曲げ強さが300MPaを超える、請求項1に記載のRu-Al合金ターゲット。
【請求項6】
Ru-Al合金ターゲットの調製方法であって、
以下の工程、
工程(a):ルテニウム原料及びアルミニウム原料を有するRu-Alプレアロイ原料であって、前記アルミニウム原料の塩素含有量は50ppm未満である、Ru-Alプレアロイ原料を調製する工程と、
工程(b):前記Ru-Alプレアロイ原料及び酸化物原料を混合して混合物を得る工程と、
工程(c):900℃~1500℃で前記混合物を焼結してRu-Al合金ターゲットを得る工程と、
を含み、
前記混合物の全原子数を基準として、前記アルミニウム原料の含有量は5at%以上及び50at%以下であり、前記酸化物原料の含有量は5at%以上及び40at%以下であり、前記Ru-Al合金ターゲットの塩素含有量は50ppm未満であり、前記Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2よりも大きい、Ru-Al合金ターゲットの調製方法。
【請求項7】
前記工程(a)において、前記ルテニウム原料及び前記アルミニウム原料を用いて真空誘導溶解により前記Ru-Alプレアロイ原料を調製する、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記工程(a)において、前記Ru-Alプレアロイ原料を500℃~700℃で熱処理する、請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記酸化物が、MgO、TiO、SiO、Cr、CoO、Co、B、Fe、AgO、CuO、NiO、SnO、MgTiO、P、Mn、V、ZrO、Ta、SrO、HfO、Nb、WO、又はそれらの任意の組合わせを含む、請求項6に記載の調製方法。
【請求項10】
前記工程(c)において、焼結の圧力が350バール以上及び1800バール以下である、請求項6に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ru-Al合金ターゲット及びその調製方法に関し、特に熱アシスト磁気記録媒体の下層を製造するためのRu-Al合金ターゲット及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より高いデータ記憶容量に対する要求が高まるにつれて、近年ハードディスクドライブ(HDD)の記憶容量を増加させるために、より高い磁気記録密度を有する垂直磁気記録(Perpendicular Magnetic Recording:PMR)媒体が採用されている。しかし、磁気記録密度を更に高めるためには、本PMR媒体の熱安定性、書込み性及び信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)を改善する必要があり、その結果、記憶容量を増加させるという目的を達成するために熱アシスト磁気記録(Heat-Assisted Magnetic Recording:HAMR)の技術が開発されている。
【0003】
一般に、HAMR媒体の積層構造は、下から上に、基板、接着層、軟質下層、ヒートシンク、下層、拡散バリア、磁気記録層及びキャップ層等を含む。手短に言えば、HAMRシステムでは、記録中、加熱のためにレーザビームを使用して磁気記録層に正確に焦点を合わせ、記録ビットの磁性粒子をキュリー温度を超える温度まで加熱して、磁性粒子の磁気保磁力を一時的に低下させ、それによってデータ記憶を達成する。
【0004】
現在、HAMR媒体の磁気記録層は、通常、鉄-白金系(Fe-Pt系)の材料を主成分として採用している。記録層の磁性粒子の結晶粒配向性、結晶粒径及び結晶粒分布を確保するためには、下層には結晶粒相溶性を調整できる微細な結晶粒径材料が必要であるため、したがって下層には通常ルテニウム-アルミニウム合金(Ru-Al合金)が用いられる。しかしながら、ルテニウム(Ru)の融点は2334℃であるのに対して、アルミニウム(Al)の融点はわずか660℃である。RuとAlとの融点の差が大きいと、焼結によって高密度のターゲットを得ることが困難になる。更に、Ru-Al合金ターゲットを調製するために使用されるAl原料は、通常、塩素(Cl)の含有量が高く、塩化アルミニウム(AlCl)を容易に形成するが、塩化アルミニウムは高い吸湿性の特性を有する。そのため、Ru-Al合金ターゲットを不適切な条件で保存すると、Ru-Al合金ターゲットの表面が酸化変色しやすい。
【0005】
また、Ru-Al合金の下層に酸化物を更に含有させれば、それに応じて磁気記録層の磁性粒子の結晶粒径を更に調整できることが知られている。それにもかかわらず、ターゲット調製のためのRu、Al及び酸化物の混合物の焼結プロセスにおいて、Alは酸化物と容易に反応して正孔を生成する酸化アルミニウム(Al)を形成し、それによって酸化物を含むRu-Al合金ターゲットは低密度で曲げ強さが不十分となる。
【0006】
したがって、Ru-Al合金ターゲット又は酸化物を含むRu-Al合金ターゲットは、一般に、密度が低く、曲げ強さが不十分であり、耐酸化性が不十分であるという問題を有し、これらの問題はすべて、その後のスパッタリングプロセスに影響を及ぼし、Ru-Al合金ターゲットのHAMR媒体への適用を制限し、業界の将来の傾向を満たすために新しい解決策を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-116682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の欠点を克服するために、本発明の目的は、より高い相対密度及び曲げ強さを有し、改善された耐酸化性も有するRu-Al合金ターゲットを提供することにある。したがって、本発明のRu-Al合金ターゲットは、保存が容易であり、Ru-Al合金ターゲットをスパッタリングすることによって形成される膜の品質及び収率を改善することができ、それによって下層の材料として、及びHAMR媒体への適用に適している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)及び酸化物を含むRu-Al合金ターゲットを提供し、Ru-Al合金ターゲットの全原子数に基づいて、Alの含有量は、5原子パーセント(at%)以上及び50at%以下であり、酸化物の含有量は5at%以上及び40at%以下であり、Ru-Al合金ターゲットの塩素(Cl)含有量は、1,000,000当たり50部(parts per million:ppm)未満であり、Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)ルテニウム-アルミニウム相(RuAl相)の結晶面の強度の比は2よりも大きい。
【0010】
本発明のRu-Al合金ターゲットは、以下の技術的特徴を同時に有する。(I)Alの含有量は5at%以上及び50at%以下であり、(II)酸化物の含有量は5at%以上及び40at%以下であり、(III)Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は50ppm未満であり、(IV)(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2超である。上述の技術的特徴により、本発明のRu-Al合金ターゲットは、97%を超える相対密度及び300MPaを超える曲げ強さを有するだけでなく、耐酸化性も改善されている。
【0011】
本発明によれば、異なる結晶相の異なる結晶面のピーク強度の比を算出する際に、複数のピークが存在する場合、最も強度が高いピークを算出に採用する。例えば、本発明のRu-Al合金ターゲットのXRDパターンでは、(110)RuAl相の結晶面は、2θが約29.73゜、約42.54゜、及び約77.85゜のそれぞれに3つの明確なピークを有する。したがって、ピーク強度の比率の算出には、2θが約42.54゜である最も強度が高いピークを採用する。
【0012】
好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は、2よりも大きく且つ25未満である。より好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は、2よりも大きく且つ24未満である。
【0013】
好ましくは、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は45ppm未満である。より好ましくは、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は43ppm以下である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は、0.1ppm以上及び50ppm未満であり、本発明の別の実施形態では、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は、0.1ppm以上及び45ppm未満であり、本発明の別の実施形態では、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は、0.1ppm以上及び43ppm以下である。
【0015】
好ましくは、酸化物は、酸化マグネシウム(II)(MgO)、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化ケイ素(IV)(SiO)、酸化クロム(III)(Cr)、酸化コバルト(II)(CoO)、酸化コバルト(II、III)(Co)、酸化ホウ素(III)(B)、酸化鉄(III)(Fe)、酸化銀(I)(AgO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(II)(NiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化マグネシウム(II)チタン(IV)(MgTiO)、酸化リン(V)(P)、酸化マンガン(III)(Mn)、酸化バナジウム(V)(V)、酸化ジルコニウム(IV)(ZrO)、酸化タンタル(V)(Ta)、酸化ストロンチウム(II)(SrO)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)、酸化ニオブ(V)(Nb)、酸化タングステン(VI)(WO)又はそれらの任意の組合わせを含み得る。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、酸化物は、MgO、TiO、SiO、Cr、CoO、B、Fe、MgTiO、Mn、V、ZrO、Ta、SrO、Nb、WO、又はそれらの任意の組合わせを含み得る。
【0017】
本発明によれば、Ruの含有量は、Ru-Al合金ターゲットの全原子数に基づいて、10at%以上及び90at%以下である。好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの全原子数に基づいて、Ruの含有量は15at%以上及び90at%以下である。
【0018】
好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの相対密度は97%超である。より好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの相対密度は97.1%以上及び99.8%以下である。
【0019】
好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの曲げ強さは300MPa超である。より好ましくは、Ru-Al合金ターゲットの曲げ強さは320MPa以上及び680MPa以下である。
【0020】
更に、本発明は、Ru-Al合金ターゲットの調製方法であって、工程(a):Ru原料及びAl原料を有するRu-Alプレアロイ原料を調製する工程であって、Al原料のClの含有量は50ppm未満である、工程と、工程(b):Ru-Alプレアロイ原料及び酸化物原料を混合して混合物を得る、工程と、工程(c):900℃~1500℃で混合物を焼結してRu-Al合金ターゲットを得る、工程と、を含むRu-Al合金ターゲットの調製方法を更に提供し、混合物の全原子数に基づいて、Al原料の含有量は5at%以上及び50at%以下であり、酸化物原料の含有量は5at%以上及び40at%以下であり、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は50ppm未満であり、Ru-Al合金ターゲットの縦断面のXRDパターンにおいて、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2よりも大きい。
【0021】
したがって、Ru-Al合金ターゲットの調製方法は、以下の技術的手段、(1)Al原料及び酸化物原料の含有量を制御することと、(2)Al原料のClの含有量を制御することと、(3)Ru-Alプレアロイ原料を調製することと、(4)焼結温度を制御することと、を採用する。したがって、方法によって調製されたRu-Al合金ターゲットは、より高い相対密度及び曲げ強さを有し、また、Ru-Al合金ターゲットの表面の酸化によって容易に変色することに起因する保存問題に効果的に対処するための改善された耐酸化性を有する。
【0022】
本発明によれば、Ru原料又は酸化物原料のClの含有量は一般に50ppm未満であるが、Al原料のClの含有量は一般により多い。したがって、Al原料のClの含有量を上述の特定の範囲である50ppm未満に制御することにより、Ru-Al合金ターゲットのClの含有量を上述の特定の範囲である50ppm未満に効果的に制御することができる。
【0023】
本発明によれば、工程(a)において、Ru原料及びAl原料を用いて、真空誘導溶解(Vacuum Induction Melting:VIM)又はアトマイズによりRu-Alプレアロイ原料を調製してもよいが、これに限定されるものではない。好ましくは、工程(a)において、Ru原料及びAl原料を用いて、真空誘導溶解及びアトマイズによりRu-Alプレアロイ原料を調製してもよい。
【0024】
本発明によれば、工程(a)において、Ru-Alプレアロイ原料を500℃~700℃で熱処理する。熱処理は、Al原料に含まれる酸化材料を還元するために行われる。具体的には、工程(a)では、Ru-Alプレアロイ原料を水素雰囲気下に置き、500℃~700℃で1時間~4時間熱処理する。
【0025】
本発明によれば、原料を均一に混合することができる任意の方法を工程(b)に採用することができる。例えば、原料を均一に混合する目的でボールミルにより混合してもよいが、これに限定されない。
【0026】
本発明によれば、工程(c)において、混合物を焼結する前に仮圧締工程を行うことができる。仮圧締工程は、混合物を固定形状に圧締することができる任意の方法であってもよい。例えば、混合物は、室温で約1000ポンド/平方インチ(psi)~2000psiの圧力下で仮圧締するために油圧プレスに入れられてもよいが、これに限定されない。
【0027】
本発明によれば、混合物の全原子数に基づいて、Ru原料の含有量は、10at%以上及び90at%以下である。好ましくは、混合物の全原子数に基づいて、Ru原料の含有量は、15at%以上及び90at%以下である。
【0028】
好ましくは、酸化物原料は、MgO原料、TiO原料、SiO原料、Cr原料、CoO原料、Co原料、B原料、Fe原料、AgO原料、CuO原料、NiO原料、SnO原料、MgTiO原料、P原料、Mn原料、V原料、ZrO原料、Ta原料、SrO原料、HfO原料、Nb原料、WO原料、又はこれらの任意の組合わせを含み得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、酸化物は、MgO原料、TiO原料、SiO原料、Cr原料、CoO原料、B原料、Fe原料、MgTiO原料、Mn原料、V原料、ZrO原料、Ta原料、SrO原料、Nb原料、WO原料、又はそれらの任意の組合わせを含み得る。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、Ru原料の平均粒径は100マイクロメートル(μm)未満であり、Al原料の平均粒径は150μm未満であり、酸化物原料の平均粒径は35μm未満である。本発明の別の実施形態では、Ru原料の平均粒径は5μm以上及び100μm未満であり、Al原料の平均粒径は1μm以上及び150μm未満であり、酸化物原料の平均粒径は0.1μm以上及び35μm未満である。
【0031】
好ましくは、工程(c)において、焼結の圧力は350バール以上及び1800バール以下である。
【0032】
本発明によれば、当該焼結は、ホットプレス(Hot Pressing:HP)、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)又は熱間静水圧プレス(Hot Isostatic Pressing:HIP)であってもよい。例えば、当該焼結がHPによって行われる場合、焼結の温度は、1000℃~1400℃の範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の圧力は、350バール~400バールの範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の時間は、2時間~4時間の範囲であってもよいが、これらに限定されず、当該焼結がSPSによって行われる場合、焼結の温度は、900℃~1400℃の範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の圧力は、450バール~550バールの範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の時間は、5分~1時間の範囲であってもよいが、これらに限定されず、当該焼結がHIPによって行われる場合、焼結の温度は、900℃~1400℃の範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の圧力は、1200バール~1800バールの範囲であってもよいが、これらに限定されず、焼結の時間は、1時間~4時間の範囲であってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
本発明のRu-Al合金ターゲットをスパッタリングして形成したRu-Al合金膜は、微細な結晶粒径の性質を有するため、結晶粒径の微細化効果を発揮するHAMRメディアの下層に特に適している。
【0034】
本明細書において、ターゲットの前述の「相対密度」は、ターゲットの理論密度に対するターゲットの測定密度の百分率を示し、ターゲットの測定密度はアルキメデスの原理によって得られる。
【0035】
本明細書において、前述の「1,000,000当たりの部(ppm)」は、比較基準の材料の重量を取得することによって得られる。例えば、「Ru-Al合金ターゲットのClの含有量が50ppm未満である」は、Ru-Al合金ターゲットの総重量に基づいて、Clの含有量がRu-Al合金ターゲットの1,000,000重量当たり50部未満であることを示す。
【0036】
本明細書において、「下端点の値~上端点の値」で表される範囲は、特に限定しない限り、下端点の値以上、及び上端点の値以下であることを示す。例えば、500℃~700℃の範囲の温度は、その温度が「500℃以上~700℃以下」であることを示す。
【0037】
本発明の他の目的、利点、及び新規な特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例1のRu-Al合金ターゲットのXRDパターンである。
図2】比較実施例2のRu-Al合金ターゲットのXRDパターンである。
図3】耐酸化性実験を61時間行った後の、実施例1のRu-Al合金ターゲットの光学顕微鏡(OM)による倍率50倍の画像である。
図4】耐酸化性実験を5時間行った後の、比較実施例5のRu-Al合金ターゲットのOMによる倍率50倍の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
組成物、Clの含有量、及びRu-Al合金ターゲットの(110)RuAl相の結晶面の強度と(111)Al相の結晶面の強度との関係の影響を検証するために、以下の例としていくつかのRu-Al合金ターゲットを提供して、本発明の実施を説明する。当業者であれば、本明細書の内容に従って本発明の利点及び効果を容易に実現することができる。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を実施又は適用するために、様々な修正及び変形を行うことができる。
【0040】
・実施例1~11(E1~E11):Ru-Al合金ターゲット
表1に列挙した組成に従って、平均粒径が100μm未満のRu粉末及び平均粒径が150μm未満のAl粉末の適切な量を採用して、Ru-Alプレアロイ粉を形成し、ここで、Al粉末のClの含有量を誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法により測定し、E1~E11中のClの含有量は、それぞれ42ppm、48ppm、15ppm、42ppm、23ppm、26ppm、37ppm、37ppm、11ppm、42ppm、11ppmであった。更に、E1~E11のRu-Alプレアロイ粉を真空誘導溶融によって調製し、真空誘導溶融の圧力は約10-7バールであり、真空誘導溶融の温度は約1400℃~1900℃であった。
【0041】
次に、Ru-Alプレアロイ粉を水素雰囲気下に置き、約600℃で約2時間熱処理した。次いで、熱処理されたRu-Alプレアロイ粉及び35μm未満の平均粒径を有する適切な量の酸化物粉末をボールミル機に入れ、次いで、1~2.5の材料に対する粉砕媒体の比で約1時間~4時間粉砕して、粉末混合物を得た。
【0042】
次に、油圧プレスで約1500psiの圧力で仮圧締した後、表1に記載の方法及び温度で焼結して、E1~E11のRu-Al合金ターゲットを得、ここで、当該焼結がHPによって行われた場合、焼結の圧力は約362バールであり、焼結の時間は約3時間であり、当該焼結がSPSによって行われた場合、焼結の圧力は約500バールであり、焼結の時間は約10分であり、当該焼結がHIPによって行われた場合、焼結の圧力は約1750バールであり、焼結の時間は約1時間であった。
【0043】
表1において、E1~E11のRu-Al合金ターゲット(以下、「ターゲット」と呼ぶ)の組成物は、一般式「aRu-bAl-c1MgO-c2TiO-c3SiO-c4Cr-c5Mn-c6B-c7Ta-c8CoO-c9Fe-c10V-c11ZrO-c12WO-c13MgTiO-c14Nb-c15SrO」によって表すことができ、式中、「a」は、ターゲットの全原子数に対する原子の百分率でのRuの含有量を表し、「b」は、ターゲットの全原子数に対する原子の百分率でのAlの含有量を表し、「c1」、「c2」、「c3」、「c4」、「c5」、「c6」、「c7」、「c8」、「c9」、「c10」、「c11」、「c12」、「c13」、「c14」及び「c15」は、それぞれ、ターゲットの全原子数に対する原子の百分率で、MgO、TiO、SiO、Cr、Mn、B、Ta、CoO、Fe、V、ZrO、WO、MgTiO、Nb及びSrOの含有量を表した。
【0044】
・比較実施例1~9(CE1~CE9):Ru-Al合金ターゲット
表1に記載の組成に従って、平均粒径が100μm未満のRu粉末及び平均粒径が200μm未満のAl粉末及び平均粒径が35μm未満の酸化物粉末の適量を採用し、ボールミル機に投入し、次いで粉砕媒体の材料に対する比が1~2.5となるように約1時間~4時間粉砕して、粉末混合物を得、CE1~CE9で採用したAl粉末のClの含有量もICP法により測定し、Clの含有量はそれぞれ462ppm、462ppm、221ppm、417ppm、583ppm、455ppm、349ppm、266ppm及び374ppmであった。その後、実施例に記載したものと同様の仮圧締及び焼結の調製プロセスを実施して、CE1~CE9のRu-Al合金ターゲットを得た。CE1~CE9と実施例との主な違いは、CE1~CE9が、Al粉末に含まれるClの含有量を制御し、Ru-Alプレアロイ粉を調製し、Ru-Alプレアロイ粉を熱処理する技術的手段を同時に採用しなかったことである。
【0045】
CE1~CE9のRu-Al合金ターゲットの組成及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットの各成分の原子百分率での含有量を表1に列挙した。CE1~CE9のRu-Al合金ターゲットも実施例に示す一般式で表すことができ、一般式における各成分の含有量の表現は実施例の定義と同じであった。
【0046】
本明細書中、当該「酸化物の含有量」は、「c1」~「c15」の和を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
・分析1:(110)RuAl相の結晶面及び(111)Al相の結晶面のピーク強度関係
この分析には、サンプルとしてE1~E11、CE1~CE9のRu-Al合金ターゲットを採用し、X線回折装置を用いて各サンプルの結晶形態を求めて、(110)RuAl相の結晶面と(111)Al相の結晶面とのピーク強度関係を分析した。
【0049】
具体的には、試験するサンプルを、番号#60、#120、#240、#320、#600、#1000、#1500、#2000及び#4000のサンドペーパで順次研磨した。次いで、サンプルを、0.04゜の工程サイズ及び20゜~80゜である2θのスキャン範囲で分析のためにXRDに入れた。
【0050】
E1及びCE2の結果を、以下に記載される説明のための例として選択し、それらの群のXRDパターンの結果をそれぞれ図1及び図2に示した。各群のXRDパターンの結果を比較し、「jade」という名称のXRD分析ソフトウェアによって特定し、次いで異なる結晶相のピークもマークした。
【0051】
図1において、E1のRu-Al合金ターゲットは、RuAl相及びAl相を有しており、(110)RuAl相の結晶面に対応する3つの明確なピーク及び(111)Al相の結晶面に対応する1つのみの明確なピークが存在していた。したがって、E1のRu-Al合金ターゲットは、RuAl相及びAl相を同時に有する。
【0052】
図2において、CE2のRu-Al合金ターゲットは、RuAl相、Al相及びRu相を有しており、(110)RuAl相の結晶面に対応する明確なピークは1つしかなく、(111)Al相の結晶面に対応する明確なピークは4つあった。したがって、CE2のRu-Al合金ターゲットは、RuAl相及びAl相及びRu相を同時に有する。また、E1及びCE2の結果を比較すると、E1のXRDパターンでは、(110)RuAl相の結晶面のピーク強度が(111)Al相の結晶面のピーク強度よりも明らかに高く、CE2のXRDパターンでは、(111)Al相の結晶面及び(110)RuAl相の結晶面のピーク強度の関係がほぼ逆であった。
【0053】
(111)Al相の結晶面と(110)RuAl相の結晶面とのピーク強度関係を定量化するために、本分析では、更にXRDパターンのRuAl相に対応し得る最高強度のピークを分子、XRDパターンのAl相に対応し得る最高強度のピークを分母として、(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比を求め、これを用いて両者の関係を具体的に評価した。E1~E11及びCE1~CE9の上述の比を以下の表2に列挙し、以下では「RuAl/Al比」と略した。E1及びCE2の結果を例に説明すると、E1のXRDパターンにおいて、RuAl相(2θが約42.54゜)に相当し得る最大強度のピークの強度は552であり、Al相(2θが約38.47゜)に相当し得る最大強度のピークの強度は16であり、表2に示すように、したがって、E1のRuAl/Al比は12であった。CE2のXRDパターンにおいて、RuAl相(2θが約42.54゜)に対応し得る最高強度のピークの強度は48であり、Al相(2θが約38.47゜)に対応し得る最高強度のピークの強度は992であり、したがって表2に示すようにCE2のRuAl/Al比は0.05であった。
【0054】
・分析2:ターゲットのClの含有量
E1~E11及びCE1~CE9の各Ru-Al合金ターゲットをワイヤーカットで加工して、2センチメートル(cm)×2cmのサイズのサンプルを得た。その後、粉砕を行い、番号#240のサンドペーパを用いて、ワイヤーカットによる各サンプル表面の炭化領域を除去して、Clの含有量を測定可能な表面を得た。次いで、グロー放電質量分析法(Glow Discharge Mass Spectrometry:GD-MS)により、E1~E11及びCE1~CE9のサンプルのClの含有量を測定し、測定したE1~E11及びCE1~CE9のClの含有量を下記表2に示した。
【0055】
・分析3:ターゲットの相対密度
E1~E11及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットを更にワイヤーカット及び粉砕によって処理して、外径165ミリメートル(mm)及び厚さ6mmの円板形状のRu-Al合金ターゲットを得た。次に、E1~E11及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットの相対密度をアルキメデスの原理に従って求め、結果を以下の表2に列挙した。
【0056】
・分析4:ターゲットの曲げ強さ
E1~E11及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットを更にワイヤーカット及び粉砕によって処理して、ターゲットの約半半径(r/2)のスポットから厚さ3mm、幅4mm、及び長さ25mmのサンプルを得た。次に、サンプルを3点曲げ試験用のユニバーサル試験機に置いた。具体的には、3点曲げ試験の治具にサンプルを載置し、サンプルが破断する直前の治具スパン20mm、加圧速度0.008mm/秒の条件で最大荷重を測定した。次いで、曲げ強さ=(3×最大荷重×治具スパン)/(2×サンプルの幅×サンプルの厚さ×サンプルの厚さ)の式により、E1~E11及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットの曲げ強さを求め、その結果を下記表2に示した。
【0057】
・分析5:ターゲットの耐酸化性
E1~E11及びCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットを更にワイヤーカット及び粉砕によって処理して、10mm×10mmのサイズのサンプルを得た。その後、粉砕を行い、番号#400のサンドペーパを用いて、ワイヤーカットによる各サンプル表面の炭化領域を除去し、E1~E11及びCE1~CE9の試験準備が整ったサンプルを得た。
【0058】
次に、E1~E11及びCE1~CE9のサンプルを、温度45℃、相対湿度90%の高温高湿環境の炉に入れた。耐酸化性を評価するため、サンプル表面の外観を光学顕微鏡で1時間毎に繰り返し観察した。サンプルの表面に顕著な変色が現れ、観察できるようになったら、最初から変色が観察されるまでの期間を「変色出現時間」として記録した。ここでは、図3及び図4にそれぞれ示すE1及びCE5の結果を例に挙げて説明した。図3では、E1のRu-Al合金ターゲットを高温高湿環境の炉内に61時間入れた後、酸化に起因するわずかに濃い色の変色が光学顕微鏡で観察することができたが、図4では、CE5のRu-Al合金ターゲットを高温高湿環境の炉内にわずか5時間入れた後、酸化に起因する複数の濃い色の変色を光学顕微鏡で容易に観察することができた。従って、変色出現時間が長いほど、Ru-Al合金ターゲットが耐酸化性に優れており、変色出現時間が短いほど、Ru-Al合金ターゲットの耐酸化性がより劣ると理解することができた。高温高湿環境下の炉内でのE1~E11及びCE1~CE9の変色出現時間を下記表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
・実験結果の考察
実施例の調製方法及び表2に列挙した結果によれば、以下の技術的手段、(1)Al原料及び酸化物原料の含有量を制御することと、(2)Al原料のClの含有量を制御することと、(3)Ru-Alプレアロイ原料を調製することと、(4)焼結温度を制御することと、を同時に採用することによって、調製されたRu-Al合金ターゲットは、以下の技術的特徴、(I)Alの含有量は5at%以上及び50at%以下であることと、(II)酸化物の含有量は5at%以上及び40at%以下であることと、(III)Ru-Al合金ターゲットのClの含有量は50ppm未満であることと、(IV)(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比は2超であることと、を同時に有することができる。したがって、E1~E11のRu-Al合金ターゲットは、曲げ強さが300MPaを超え、相対密度が97%を超える特性を有するだけでなく、変色出現時間が51時間以上である。
【0061】
これに対して、CE1~CE9は、技術的手段(1)~(4)を同時に採用していないため、調製されたCE1~CE9のRu-Al合金ターゲットは、技術的特徴(I)~(IV)も同時に有さない。したがって、CE1~CE9のRu-Al合金ターゲットでは、曲げ強さは300MPa未満であり、最高相対密度はわずか95.14%であり、変色出現時間はすべて63時間未満であり、これは後続のスパッタリングプロセス及びHAMR媒体への適用に影響を及ぼす。
【0062】
したがって、本発明によって提供される技術的手段は、より高い曲げ強さ、より高い相対密度、及び改善された耐酸化性の有益な効果を同時に満たすことができ、それによってHAMR媒体の下層として適しており、業界の要件を満たすことができる。
【0063】
CE1、CE2及びCE4の結果を更に参照すると、CE1、CE2及びCE4のRu-Al合金ターゲットの組成は、本発明によって特許請求される特定の範囲を満たし、CE1及びE1の組成は同じであり、CE2及びE2の組成は同じであり、CE4及びE4の組成は同じである。しかし、CE1、CE2及びCE4は調製プロセス中に上述の(2)及び(3)の技術的手段を同時に採用しないため、CE1、CE2及びCE4のターゲットのClの含有量はすべて100ppmを超え、CE1、CE2及びCE4のRuAl/Al比はすべて0.12未満である。ターゲットのClの含有量及びCE1、CE2及びCE4のRuAl/Al比は、本発明によって特許請求される範囲内ではない。したがって、CE1、CE2及びCE4では、曲げ強さはそれぞれわずか216MPa、265MPa及び273MPaであり、相対密度はそれぞれわずか95.14%、93.67%及び94.43%であり、変色出現時間はそれぞれ11時間、8時間及び20時間である。したがって、ターゲットのClの含有量及びRuAl/Al比が本発明の特許請求の範囲にないため、曲げ強さ及び相対密度を高めることができず、耐酸化性を向上させることもできない。
【0064】
更にCE3の結果を参照すると、CE3のRu-Al合金ターゲットの組成は、本発明によって特許請求される特定の範囲を満たし、CE3及びE3の組成は同じである。しかしながら、CE3は調製プロセス中に上述の(3)の技術的手段を採用していないため、CE3のRuAl/Al比はわずか0.89であり、本発明によって特許請求される2を超える範囲にはない。したがって、CE3の曲げ強さはわずか154MPaであり、CE3の相対密度はわずか90.18%である。したがって、ターゲットのRuAl/Al比のみが本発明の特許請求の範囲にない場合であっても、Ru-Al合金ターゲットは、依然として曲げ強さ及び相対密度を向上させ、耐酸化性を向上させる効果を同時に得ることはできない。
【0065】
CE8の結果を更に参照すると、CE8は調製プロセス中に上述の(1)及び(3)の技術的手段を同時に採用しないため、CE8のターゲットのAlの含有量は4at%であり、CE8のRuAl/Al比はわずか0.91である。ターゲットのAlの含有量及びCE8のRuAl/Al比は、本発明によって特許請求される範囲内ではない。したがって、CE8の曲げ強さはわずか249MPaであり、CE8の相対密度はわずか92.66%である。したがって、ターゲットの組成及びRuAl/Al比が特許請求の範囲内にないので、Ru-Al合金ターゲットは、依然として曲げ強さ及び相対密度を向上させ、耐酸化性を向上させる効果を同時に有することができない。
【0066】
更に、E1及びE11の結果を更に参照すると、Ru-Al合金ターゲットの酸化物の含有量を5at%以上及び40at%以下の特定の範囲で適切に制御することにより、異なる種類の酸化物又はそれらの組合わせをRu-Al合金ターゲットの酸化物として採用することができ、それらの群のRu-Al合金ターゲットは依然として曲げ強さ及び相対密度を向上させ、耐酸化性も向上させる効果を有する。
【0067】
結論として、Ru-Al合金ターゲットのAl、酸化物及びClの含有量、並びにRu-Al合金ターゲットの(111)Al相の結晶面の強度に対する(110)RuAl相の結晶面の強度の比も制御することによって、Ru-Al合金ターゲットの曲げ強さ及び相対密度を高めることができ、同時にRu-Alターゲットの耐酸化性を改善することができる。したがって、本発明によって提供されるRu-Al合金ターゲットは、HAMR媒体の下層として適しており、不適切な条件下で保存された酸化によって容易に変色するという問題も防止し、それによって業界における価値を高める。
【0068】
本発明の多くの特徴及び利点が、本発明の構造及び特徴の詳細と共に前述の説明に記載されているが、本開示は例示にすぎない。添付の特許請求の範囲が表現される用語の広い一般的な意味によって示される最大限まで、本発明の原理内の詳細、特にサイズの事項において変更を加えることができる。
図1
図2
図3
図4