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特開2023-63244半導体チップの動作状態を推定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063244
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】半導体チップの動作状態を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/80 20160101AFI20230427BHJP
【FI】
F03D80/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161308
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21382954.2
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ホンガン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】リージュン・へ
(72)【発明者】
【氏名】アビナヴ・サクセナ
(72)【発明者】
【氏名】リュック・テンプリエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ペロン
(57)【要約】
【課題】電力コンバータを提供する。
【解決手段】本開示は、受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することに基づいて、パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定するための方法及びシステムの例を提供する。本開示は、半導体チップの残存耐用年数を予測するための方法及びシステムの例をさらに提供する。
【選択図】図3A


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定する方法であって、
連続する時間間隔にわたって半導体チップに関連する動作データを受信するステップと、
受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定するステップと、
アラート基準が満たされた場合にアラートを発生させるステップと、
を含み、
アラート基準は、半導体チップの動作状態を示すパラメータと不確実性の指標とに基づいている、方法。
【請求項2】
半導体チップの動作状態を示すパラメータは、ピーク接合温度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アラート基準は、ピーク接合温度の上限及びその不確実性の指標が所定の温度閾値を超える所定の回数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
半導体チップの動作状態を示すパラメータは、チップの寿命使用量であり、任意選択的に、チップの寿命使用率又は累積寿命使用量である、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
アラート基準は、期間終了時の累積寿命使用量の上限と、期間開始時の累積寿命使用量の下限との差が所定の寿命使用量閾値を超えることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
半導体チップの動作状態を示すパラメータは、トランジスタ、ダイオード、ヒートシンク又はコンデンサの1つ以上の寿命使用又はピーク温度に基づく、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
パワー半導体装置が、電力グリッドに接続された風力タービンの電力コンバータ内のパワー半導体装置である、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
半導体チップに関連する動作データは、風力タービン及び/又は電力コンバータからの動作日を含み、任意選択的に、時間間隔中の発電機の最大有効電力、時間間隔中の発電機の平均有効電力、発電機の有効電力の標準偏差、コンバータの冷却剤温度、風力タービンにおける平均電圧、及びグリッドに供給される平均無効電力のうちの1つ以上を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
動作状態の不確実性の指標は、動作状態を示すパラメータに関して、平均値、標準偏差、分散、信頼区間を伴う下限および上限、最小値、最大値、中央値、分位値および四分位範囲のうちの2つ以上の指標を含む、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定するステップは、半導体チップの動作状態を推定するモデルの集合体を用いて半導体チップの動作状態を決定するステップを含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
受信された動作データに基づいて、動作状態の不確実性の指標を含む、半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することは、ベイジアン推論モデルを用いて半導体チップの動作状態を決定することを含み、任意選択的に、ベイジアン推論モデルは、ベイジアン推論を用いて訓練された確率的人工ニューラルネットワークであり、ここで、ニューラルネットワークにおける活性化関数及び/又は重みは、関連する確率分布を伴って確率的である、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
パワー半導体装置に収容された半導体チップの残存耐用年数を予測する方法であって、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の方法で半導体チップの現在の動作状態の推定するステップと、
半導体チップの動作条件の関数として、時間の経過に伴う半導体チップの潜在的劣化を決定するステップと、
半導体チップの推定された現在の状態及び潜在的な劣化に基づいて半導体チップの残存耐用年数の推定するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを含むコンピューティングシステム。
【請求項14】
コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるとき、コンピュータに請求項1乃至13のいずれかに記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能なデータ担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力コンバータ(電力変換器)に関し、より詳細には、電力コンバータにおけるパワー半導体装置の動作状態を決定するための方法及びシステムに関する。本開示はさらに、電力装置内の半導体チップ、特に風力タービンの発電機に結合された電力電子コンバータ内の電力装置の累積寿命使用率(累積ライフ使用率)又は寿命使用率(ライフ使用率)及びピーク接合温度を推定するための方法及びシステムに関する。本開示はさらに、半導体チップ、特に風力タービンに接続された電力コンバータに使用される半導体チップの残存耐用年数を予測するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている風力タービンはグリッドに電力を供給するために使われている。風力タービンは一般に、タワーの頂部に支持されたナセルを有するタワーを含む。ハブ及び複数の風力タービンブレードを含む風力タービンロータは、ナセルに回転可能に取り付けることができる。
【0003】
風力タービンブレードは、風によって動かすことができる。風力タービンのハブは、発電機の回転子と動作可能に結合され得る。ハブとブレードが回転すると、風の運動エネルギーが風力タービンロータの運動力学エネルギーに変換され、最終的に発電機の電気エネルギー又は電力に変換される。発電機は、典型的には、ナセル内に配置することができる。
【0004】
風力タービンロータは、いわゆる直接駆動風力タービンにおいて発電機の回転子に直接結合され得る。或いは、風力タービンロータは、ギアボックスに通じるメインロータシャフト(いわゆる「低速シャフト」)を含むことができる。その後、ギアボックスの高速シャフトが発電機を駆動することができる。風力タービンの形態にかかわらず、発電機の電力出力は、電力グリッド(電力送電網)に供給され得る。発電機の電力グリッドへの接続は、例えば、コンバータ(変換器)、変圧器(トランス)、中電圧線及びその他を含むことができる。
【0005】
風力タービンはさらに典型的には、発電機によって発電された電力を所定の周波数及び電圧の変換されたAC(「交流」)電力に変換するための電力電子コンバータを含む。変換された交流電力は次に、低電圧側と高電圧側を有する主風力タービン変圧器に供給され、変換された交流電力をより高い電圧に変換し、電力を電力グリッドに供給する。
【0006】
風力タービン発電機と電力電子コンバータのための異なるトポロジー(topologies)が知られている。そのようなトポロジーの1つは、DFIG(「Doubly Fed Induction Generator:二重フィード誘導発電機」)である。DFIG構成では、発電機の固定子(ステータ)が電力グリッドに直接接続される。発電機の回転子(ロータ)は、複数のコイルを含む。これらのコイルは、回転子側コンバータ、DCリンク、及び電力グリッド側コンバータを含む電力電子コンバータを介して電力グリッドに電気的に接続される。
【0007】
別の既知のトポロジーでは、発電機の回転子は、複数の永久磁石を担持・搭載する。発電機の固定子は、いわゆる「フルコンバータ」を介してグリッドに接続される。フルコンバータは、機械側コンバータ、DCリンク、及びグリッド側コンバータを含む。
【0008】
電力コンバータは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及びサイリスタなどのダイオード及び半導体装置を含む、様々な異なるスイッチ及び整流器を含むことができる。
【0009】
パワー半導体装置は、ここでは、パワーエレクトロニクスにおいてスイッチ又は整流器として使用される半導体装置とみなすことができる。このような装置は、「パワーデバイス」とも呼ばれる。
【0010】
風力タービンはさらに典型的には風力タービン制御装置(風力タービンコントローラ)を含む。風力タービン制御装置は、一般的な状況に基づいて、風力タービンのための適切なアクチュエータ設定点を決定するように構成されてもよい。最近において可変速風力タービンのアクチュエータ設定点は、例えば、発電機トルク及びブレードのピッチ角を含む。ブレードのピッチ角及び発電機トルクの制御を通じて、ロータの速度、並びに電力出力、空気力学的スラスト及びさらなる機械的負荷を制御することができる。制御システムの目的は、一般に、電力出力を最大にすると同時に、風力タービンの負荷を許容レベルに維持することである。
【0011】
風力タービンの通常又は標準運転は、一般に、一般的な風速の関数として風力タービンの運転を規定する所定の出力曲線に沿って行われる。通常動作には、異なる動作範囲が含まれる。風速が低い範囲では、一般に電力出力を最大にすることが目的となる。風速が高い場合、特に公称風速以上の風速の場合、風力タービンの運転は、電力出力を所定のレベルに維持しながら、負荷を制御することに重点を置く。
【0012】
前述したように、トルク及びピッチのアクチュエータ設定点(ただし、ヨーなどの他のアクチュエータも同様である)は、状況に応じて変更することができる。このような状況には、例えば、平均風速、乱流、ウインドシアー、空気密度及び他の気象条件だけでなく、振動、機械的負荷又は構成要素温度等の内部条件も含まれ得る。また、騒音を低減するための特定の外部要求、保守のための運転の中断、例えば有効電力の低減の要求のグリッドベースの状況、又は低電圧事象、ゼロ電圧事象、グリッド周波数の増加等のグリッド事象も含まれ得る。
【0013】
風力タービンの運転状況、風力タービン制御装置からの設定点、及び発電機の電力出力に応じて、電力コンバータ及びその構成要素内の電流は変動し得る。
【0014】
電源装置に電流が流れると、チップ内部の損失によってチップが発熱する。半導体は、熱膨張係数(シリコンチップ、銅放熱板、プラスチックケース、シリコンゲル等)の異なる材料で形成されているため、熱膨張と収縮の繰り返しにより、これらの材料に熱応力が発生し、アルミニウムボンディングワイヤの断線やはんだのクラックが発生し、パワー半導体の破壊につながる可能性がある。この現象をパワーサイクルと呼ぶ。これは、チップの劣化、ボンディングワイヤのリフトオフ、又はパワーデバイスのその他の劣化又は消耗につながる可能性がある。
【0015】
チップの温度とその変化は,チップの性能、信頼性に重要である。また、温度や温度変化は、チップの劣化やパワーデバイスに収容されたチップの寿命の終了にも重要な影響を与える。そのため、温度を直接測定するなどして監視することが有益である。しかし、特に電気駆動システムが現場で使用されている場合、温度を直接観察することは困難であり、不可能であったりする。
【0016】
電力コンバータにおけるパワーデバイスの寿命は,本来的に変動する風速や外気温度などの環境条件によって変化するため、累積寿命使用量を正確に予測することは容易でない。パワーデバイスの寿命使用量を正確に予測できない場合、オペレータはパワーデバイスの交換タイミングを逃し、運転効率の低下や重大な事故につながる可能性がある。また、不要なパワーデバイスの交換につながる可能性もある。
【0017】
電力コンバータの老朽化を把握し、予知保全機能を導入することで、タービンの最高の稼働率を確保することができる。特に洋上タービンの場合、一般的に特殊な船舶が必要とされるため、メンテナンスは十分に前もって計画されることが望ましい。コンバータの問題を予測することで、船舶の運用をより良く、早期に計画することができ、その結果、コスト削減に大きな影響を与えることができる。
【0018】
当該技術分野では、高周波サンプリングデータ、特に位相電流及び電圧降下を用いて接合温度を推定することが知られている。これらに基づいて接合温度を計算又は推定したが、このような推定や計算は、必ずしも十分な情報に基づく意思決定プロセスにはつながらないことがわかっている。従来技術では、この高周波データを降雨サイクル計数に基づく寿命予測に用いることができる。しかし、これらの寿命予測器を持たない他のベンダーの風力タービン又は他の風力タービン群(風力フリート)の場合、サービス及びメンテナンスチームは、インベントリ(構成部品の調査)を実行し、サービスを計画するための重大な課題に直面する。
【0019】
このため、低周波サンプリングデータを用いて、パワー半導体の接合温度及び寿命の推定値を提供する必要が存在する。電力コンバータの保守又は修理、及びその構成部品の交換に関する意思決定プロセスをさらに改善する必要がある。
【0020】
また、低周波サンプリングデータを用いて残存寿命を予測する必要が存在する。
【0021】
既存の信頼性モデルのほとんどは決定論的である。ただし、コンバータが30日以内に故障することを示すポイント推定値では、交換/修理のスケジュールを立てるのに十分でない場合がある。修理のタイミングは、時間間隔を使用してより容易にスケジュールできる余地がある。
【0022】
本開示の例は、上述の問題のうちの1つ以上を少なくとも部分的に解決するシステム及び方法を提供する。
【0023】
本開示は、風力タービンの電力コンバータに使用されるパワー半導体装置に焦点を当てているが、同様の問題は、他の用途のパワー半導体装置にも見られる。従って、本開示は、風力タービンにおける用途に限定されない。
【発明の概要】
【0024】
第1の態様では、パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定する方法を提供する。この方法は、連続する時間間隔にわたって半導体チップに関連する動作データ(運転データ)を受信し、受信した動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することを含む。本方法は、アラート基準(警告基準)が満たされた場合にアラートを生成するステップをさらに含み、アラート基準は、半導体チップの動作状態を示すパラメータ及び不確実性の指標に基づく。
【0025】
この態様によれば、動作状態に関する不確実性を考慮して、動作状態を決定し、アラートを生成する。従って、例えばピーク接合温度又は寿命使用の特定の値だけでなく、むしろその可能な分布を考慮する。アラートは、特定の閾値に到達した場合ではなく、例えば信頼区間(confidence interval)又は確率分布(probability distribution)に基づいて生成することができる。この方法は、低いサンプリングレートから得られるデータで使用することができる。
【0026】
ここでの動作データは、半導体チップに間接的に関連するデータであってもよい。ここで、間接的な動作データは、半導体チップが使用される、又は半導体チップが接続される機械又は装置の動作データであって、半導体チップ自体の動作データ(例えば、電流又は温度)ではないものとみなすことができる。
【0027】
不確実性の指標は、本明細書では、半導体チップの実際の正確な状態が知られておらず、むしろ異なる状態が可能であり、これらの異なる状態が実際の正確な状態である異なる確率を有することを示す尺度、変数又はパラメータとみなすことができる。
【0028】
第2の態様では、パワー半導体装置に収容された半導体チップの残存耐用年数を予測する方法が提供される。この方法は、半導体チップの現在の状態を推定し、半導体チップの動作条件の関数として、半導体チップの経時的な潜在的劣化を決定することを含む。本方法は、半導体チップの推定された電流状態及び潜在的劣化に基づいて、半導体チップの残存耐用年数を推定することをさらに含む。この方法において、潜在的劣化を決定することは、寿命初期劣化モデル又は寿命末期劣化モデルを選択することを含み、寿命初期劣化モデルは寿命末期劣化モデルよりも遅いサンプリング速度に基づいている。
【0029】
この態様によれば、パワー半導体装置の寿命の予測性を向上させることができる。従って、計画的な廃棄、代替又は維持を可能にする改良された方法が提供される。この方法は、パワー半導体装置の劣化の速度及び方法が寿命の初期と末期とで異なる可能性があることを認識し、この異なる劣化挙動を考慮するように構成される。
【0030】
これらの態様のいずれにおいても、残存耐用年数の予測に基づいて、又は半導体チップの動作状態の推定に基づいて、風力タービン及び/又は電力コンバータ及び/又は半導体チップの動作を調整することができる。
【0031】
さらなる態様において、本開示はまた、そのような方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム及びコンピュータシステムに関する。
【0032】
本開示の非限定的な例を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施例による風力タービンの斜視図を示す。
図2】一実施例による風力タービンのナセルの詳細な内部図を示す。
図3A】電力装置の寿命にわたる劣化の例を概略的に示す。
図3B】パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定するための方法の第1の例を概略的に示す。
図3C】不確実性に関する表示を有する半導体チップのピーク接合温度の例を概略的に示す。
図3D図3Bに従った方法がどのように実施され得るかの例を図式的に示す。
図3E図3Bに従った方法がどのように実施され得るかの例を図式的に示す。
図3F】パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を決定するためのモデルの集合体の使用を概略的に示す。
図4A】風力タービン発電機に結合された電力コンバータにおけるパワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定するための方法の例を概略的に示す。
図4B】風力タービン発電機に結合された電力コンバータにおけるパワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定するための方法の例を概略的に示す。
図4C】半導体チップの動作状態を決定するための方法の例において使用され得るユーザインターフェースの例を概略的に示す。
図5A】半導体チップの残存耐用年数の推定例を概略的に示す図である。
図5B図5Aの方法の例を、図3及び4の方法の例と組み合わせることができる方法を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の例を図面に示す。各例は説明のためにのみ提供され、限定として提供されるものではない。実際、本開示において、範囲又は精神から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示又は説明される特徴を別の実施形態とともに使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にあるような修正及び変形を包含することが意図される。
【0035】
図1は、風力タービン10の一例の斜視図である。この例では、風力タービン10は水平軸風車である。或いは、風力タービン10は、垂直軸風力タービンであってもよい。実施例では、風力タービン10は、地面12上の支持システム14から延びるタワー100と、タワー100上に取り付けられたナセル16と、ナセル16に結合されたロータ18とを含む。ロータ18は、回転可能なハブ20と、ハブに結合され、ハブ20から外側に延びる少なくとも1つのロータブレード22とを含む。この例では、ロータ18は3つのロータブレード22を有する。別の実施形態では、ロータ18は、3つ以上又は3つ未満のロータブレード22を含む。タワー100は、支持システム14とナセル16との間の空洞(図1には示されていない)を画定するために、管状鋼から製造されてもよい。代替実施形態では、タワー100は、任意の適切な高さを有する任意の適切なタイプのタワーである。別の方法によれば、タワーは、コンクリート製部分と管状鋼部分とを含むハイブリッドタワーであり得る。また、タワーは、部分的又は完全な格子タワー(partial or full lattice tower)にすることもできる。
【0036】
ロータブレード22は、ハブ20の周りに間隔を置いて配置され、ロータ18の回転を容易にして、運動エネルギーを風から使用可能な機械エネルギー、その後に電気エネルギーに伝達することを可能にする。ローターブレード22は、ブレード根元部分24を、複数の負荷伝達領域(荷重伝達領域)26でハブ20に結合することによって、ハブ20に嵌合される。負荷伝達領域26は、ハブ負荷伝達領域及びブレード負荷伝達領域(両方とも図1には示されていない)を有することができる。ロータブレード22に誘起された荷重は、負荷伝達領域26を介してハブ20に伝達される。
【0037】
実施例では、ロータブレード22は、約15メートル(m)から約90メートル以上の範囲の長さを有することができる。ロータブレード22は、風力タービン10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な長さを有することができる。例えば、ブレード長の非限定的な例としては、20m以下、37m、48.7m、50.2m、52.2m、又は91mを超える長さが挙げられる。風向28から風がロータブレード22に当たると、ロータ18はロータ軸30を中心に回転する。ロータブレード22が回転して遠心力を受けると、ロータブレード22もまた種々の力及びモーメントを受ける。このように、ロータブレード22は、中立位置又は非偏向位置から偏向位置まで偏向及び/又は回転することができる。
【0038】
さらに、風力ベクトルに対する少なくとも1つのロータブレード22の角度位置を調整することによって風力タービン10によって生成される負荷及び電力を制御するために、ロータブレード22のピッチ角、すなわち、風向に対するロータブレード22の向きを決定する角度をピッチシステム32によって変更することができる。ロータブレード22のピッチ軸34が示されている。風力タービン10の運転中、ピッチシステム32は、ロータブレード22のピッチ角を、ロータブレード(の一部)の迎え角(angle of attack)が減少し、回転速度の減少を容易にし、かつ/又はロータ18の失速を容易にするように、特に変更することができる。
【0039】
この例では、各ロータブレード22のブレードピッチは、風力タービン制御装置36又はピッチ制御システム80によって個別に制御される。或いは、すべてのロータブレード22のブレードピッチを、この制御システムによって同時に制御してもよい。
【0040】
さらに、本実施例では、風向28が変化するにつれて、ナセル16のヨー方向がヨー軸38を中心に回転して、風向28に対してロータブレード22を位置決めしてもよい。
【0041】
実施例では、風力タービン制御装置36は、ナセル16内に集中しているように示されているが、風力タービン制御装置36は、風力タービン10全体、支持システム14上、風力発電所内、及び/又は遠隔制御センターにおける分散システムであってもよい。風力タービン制御装置36は、本明細書に記載の方法及び/又はステップを実行するように構成されたプロセッサ40を含む。さらに、本明細書に記載される他の構成要素の多くは、プロセッサを含む。
【0042】
本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、コンピュータとして当該技術分野で参照される集積回路に限定されるものではなく、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路、及び他のプログラマブル回路を広く意味し、これらの用語は本明細書では互換的に使用される。プロセッサ及び/又は制御システムは、メモリ、入力チャネル及び/又は出力チャネルも含むことができることを理解されたい。
【0043】
図2は、風力タービン10の一部の拡大断面図である。実施例では、風力タービン10は、ナセル16と、ナセル16に回転可能に結合されたロータ18とを含む。具体的には、ロータ18のハブ20は、メインシャフト44、ギアボックス46、高速シャフト48及びカップリング50により、ナセル16内に位置する発電機42に回転自在に連結されている。この例では、主軸44は、ナセル16の長手方向軸線(図示せず)と少なくとも部分的に同軸に配置されている。メインシャフト44の回転によりギアボックスが駆動され、ギアボックス46は、ロータ18及びメインシャフト44の比較的遅い回転運動を、高速シャフト48の比較的速い回転運動に変換することにより、その後高速シャフト48を駆動する。後者は、カップリング50の助けを借りて電気エネルギーを生成するために発電機42に接続される。さらに、変圧器(トランス)90及び/又は適切な電子機器、スイッチ及び/又はインバータをナセル16内に配置して、400Vから1000Vの間の電圧を有する発電機42によって生成された電気エネルギーを、中電圧(10-35KV)又はより高い電圧、例えば66kVを有する電気エネルギーに変換することができる。この電気エネルギーは、ナセル16からタワー100へ電力ケーブル160を介して伝導される。
【0044】
変圧器90内のギアボックス46、発電機42は、必要に応じてメインフレーム52として具体化されたナセル16のメイン支持構造フレームによって支持され得る。ギアボックス46は、1つ以上のトルクアーム103によってメインフレーム52に接続されるギアボックスハウジングを含むことができる。実施例では、ナセル16はまた、主前方支持ベアリング60及び主後方支持ベアリング62を含む。さらに、特に、発電機42の振動がメインフレーム52に導入されて騒音放出物質源が発生するのを防止するために、デカップリング支持手段54によって発電機42をメインフレーム52に取り付けることができる。
【0045】
任意に、メインフレーム52は、ロータ18の重量及びナセル16の構成要素、並びに風及び回転負荷によって生じる全負荷を搬送し、さらにこれらの負荷を風力タービン10のタワー100に導入するように構成される。ロータシャフト44、発電機42、ギアボックス46、高速シャフト48、カップリング50、及び、これらに限定されるものではないが、支持体52、前方支持ベアリング60及び後方支持ベアリング62を含む関連する締結、支持、及び/又は固定装置は、駆動列64と称されることがある。
【0046】
また、ナセル16は、ナセル16、ひいてはロータ18をヨー軸38を中心に回転させて、風向28に対するロータブレード22の遠近を制御するために使用できるヨー駆動機構56を含んでもよい。
【0047】
ナセル16を風向28に対して適切に位置決めするために、ナセル16は、風向計及び風速計を含むことができる少なくとも1つの気象測定システムを含むこともできる。気象測定システム58は、風向28及び/又は風速を含む情報を風力タービン制御装置36に提供することができる。この例では、ピッチシステム32は、少なくとも部分的に、ハブ20内にピッチアセンブリ66として配置される。ピッチアセンブリ66は、1つ以上のピッチ駆動システム68及び少なくとも1つのセンサ70を含む。各ピッチ駆動システム68は、ピッチ軸34に沿ってロータブレード22のピッチ角を変調するために、各ロータブレード22(図1に示す)に結合されている。図2には、3つのピッチ駆動システム68のうちの1つのみが示されている。
【0048】
この例では、ピッチアセンブリ66は、ハブ20と、それぞれのロータブレード22をピッチ軸34の周りに回転させるためのそれぞれのロータブレード22(図1に示す)とに結合された少なくとも1つのピッチベアリング72を含む。ピッチ駆動システム68は、ピッチ駆動モータ74と、ピッチ駆動ギアボックス76と、ピッチ駆動ピニオン78とを含む。ピッチ駆動モータ74は、ピッチ駆動モータ74がピッチ駆動ギアボックス76に機械力を付与するようにピッチ駆動ギアボックス76に結合されている。ピッチ駆動ギアボックス76は、ピッチ駆動ピニオン78がピッチ駆動ギアボックス76によって回転するように、ピッチ駆動ピニオン78に結合されている。ピッチベアリング(ピッチ軸受)72は、ピッチ駆動ピニオン78の回転によってピッチベアリング72が回転するように、ピッチ駆動ピニオン78に結合されている。
【0049】
ピッチ駆動システム68は、風力タービン制限装置36から1つ以上の信号を受け取ると、ロータブレード22のピッチ角を調整するために、風力タービン制限装置36に結合される。実施例では、ピッチ駆動モータ74は、電力及び/又は油圧システムによって駆動される任意の適切なモータであり、ピッチアセンブリ66が本明細書に記載されるように機能することを可能にする。或いは、ピッチアセンブリ66は、限定されるものではないが、油圧シリンダ、スプリング、及び/又はサーボ機構などの任意の適切な構造、構成、配置、及び/又は構成要素を含むことができる。特定の実施形態では、ピッチ駆動モータ74は、ハブ20の回転慣性及び/又は風力タービン10の構成要素にエネルギーを供給する蓄積エネルギー源(図示せず)から抽出されたエネルギーによって駆動される。
【0050】
ピッチアセンブリ66はまた、特定の優先順位付けされた状況の場合及び/又はロータ18の過速度の間に、風力タービン制限装置36からの制御信号に従ってピッチ駆動システム68を制御するための1つ以上のピッチ制御システム80を含むことができる。この例では、ピッチアセンブリ66は、風力タービン制限装置36から独立してピッチ駆動システム68を制御するために、それぞれのピッチ駆動システム68に通信可能に結合された少なくとも1つのピッチ制御システム80を含む。この例では、ピッチ制御システム80は、ピッチ駆動システム68及びセンサ70に結合されている。風力タービン10の通常動作中に、風力タービン制限装置36は、回転翼22のピッチ角を調整するためにピッチ駆動システム68を制御することができる。
【0051】
一実施形態によれば、例えば、バッテリ、電気キャパシタ(コンデンサ)、又はハブ20の回転によって駆動される発電機を含む電源84は、ハブに、又はハブ20内に配置され、センサ70、ピッチ制御システム80、及びピッチ駆動システム68に結合され、これらの構成要素に電源を提供する。この例では、風力タービン10の運転中に、電源84はピッチアセンブリ66に電力の継続的な供給源を提供する。別の実施形態では、電源84は、風力タービン10の電力損失事象中にのみピッチアセンブリ66に電力を供給する。電力損失事象は、電力グリッドの損失又はディップ、風力タービン10の電気システムの誤動作、及び/又は風力タービン制限装置36の故障を含むことができる。電力損失事象の間、電源84は、電力損失事象の間、ピッチアセンブリ66が動作できるように、ピッチアセンブリ66に電力を提供するように動作する。
【0052】
この例では、ピッチ駆動システム68、センサ70、ピッチ制御システム80、ケーブル、及び電源84は、それぞれ、ハブ20の内面88によって画定されるキャビティ86内に配置される。別の実施形態では、この構成要素は、ハブ20の外面に対して配置され、外面に直接又は間接的に結合され得る。
【0053】
図3Aは、電力装置の寿命にわたって起こり得る劣化の一例を概略的に示す。電力装置は、風力タービン発電機に接続された電力コンバータ内の電力装置であってもよい。
【0054】
電源装置には、予想される最大耐用年数がある。しかしながら、電力装置が劣化する速度は、電力装置の動作に依存し、特に電流のレベル及び関連する熱サイクルに依存し得る。電力装置が使用される装置(例えば、電力コンバータ)の故障を回避するために、寿命終了(EOL:寿命の終わり)又は電力装置が廃棄又は代替されるべき時点が推定又は計算されてもよい。ここでEOLとは、パワーデバイスがその仕様に従って機能しなくなる瞬間を示す。障害が回避されることを確実にするために、閾値をEOLの下に定義することができる。
【0055】
図3Aでは、時刻t=0において、電源装置の寿命が始まる。しばらくすると、電力装置の性能の最初の劣化が検出され得る。「現在」は、現在の時刻を示す。異なる測定値及び運転パラメータの検出値に基づいて、残存耐用期間(RUL)を計算してもよい。しかし、運転パラメータ(測定されているか、又は測定することができる操作パラメータ、サンプリングレート、及び/又は測定における固有の不正確さ)の測定、及び動力装置によって示される劣化の速度及び方法の両方に不確実性があるため、実際の又は実際の残存耐用年数が計算値よりも短いか長い可能性がある。
【0056】
本開示の方法及びシステムの例は、かかる不確実性を考慮することにより、電力装置又はかかる電力装置を組み込んだ装置の廃棄、修理又は代替に関して意思決定を改善することを目的とする。
【0057】
第1の態様では、パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定する方法200を提供する。方法200は、ブロック210において、連続する時間間隔にわたって半導体チップに関連する動作データを受信するステップを含む。動作データは、半導体チップに間接的に関連する動作データ、例えば、パワー半導体装置から直接得られない測定又は導出されるパラメータ又は変数であってもよい。
【0058】
次いで、この方法は、ブロック220において、受信された間接動作データに基づいて、動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定するステップを含む。本方法はさらに、ブロック240において、アラート基準(ブロック230で評価される)が満たされた場合にアラートを生成するステップを含み、アラート基準は、半導体チップの動作状態及び不確実性の指標を示すパラメータに基づく。
【0059】
例において、連続時間間隔は、1分から20分の間、具体的には5分から15分の間であり得る。
【0060】
図3Bの例に見られるように、本明細書に示される方法は、連続的に実行され得る。すなわち。ブロック230のアラート基準が満たされない場合、方法はブロック210に戻る。また、ブロック230でアラート基準が満たされ、ブロック240でアラートが生成される場合、方法はブロック210に戻ることができる。方法は連続的に実行されるだけでなく、方法のいくつかのループが並列に実行されてもよい。すなわち。1つのループが終了する前に、別のループが開始されてもよい。
【0061】
いくつかの例では、半導体チップの動作状態を示すパラメータは、ピーク接合温度(peak junction temperature:ピークジャンクション温度)である。ここで、ピーク接合温度は、電子装置における実際の半導体の最高動作温度とみなすことができる。接合温度が高いと、半導体が損傷したり劣化したりすることがある。温度はパワーデバイスに収容されたチップの性能、信頼性、寿命の終わりに重要である。ここでは、最高温度と温度変化の両方が重要である。
【0062】
温度の直接観察又は測定は、非常に困難又は不可能な場合がある。従来技術は、ピーク接合温度を導出又は推定するために、例えば位相電流(phase current:相電流)及び電圧降下などの高周波サンプリングデータを使用している。このような高周波データは必ずしも利用可能ではない。さらに、このような方法によるピーク接合温度の決定は、100%正確であることは決してなく、すなわち、そのような高周波数データが利用可能であっても、不確実性のレベルが残る。
【0063】
したがって、図3Bの例では、アラート基準に温度の値だけでなく、温度の不確実性の指標も組み込んでいる。いくつかの例では、動作状態の不確実性の値及び指標は、動作状態(この場合、ピーク接合部温度)を示すパラメータに関して、平均値、標準偏差、分散、信頼区間を伴う下限および上限、最小値、最大値、中央値、分位値および四分位範囲のうちの2つ以上を含むことができる。
【0064】
図3Cは、各期間(例:10分)について、平均又は平均ピーク接合温度だけでなく、ピーク接合温度の不確実性(例えば、信頼区間、標準偏差、標準偏差の倍数、又はその他)の指標を決定する方法を図式的に示す。線290及び線295は、2つの独立したモデルからのピーク接合温度の点推定値を表し、線297は、95%信頼区間を有する平均ピーク接合温度を表す。行297及びその値は、図2Aのブロック220の出力に対応することに留意されたい。ピーク接合温度の2つの独立した点推定値は、この例の線297からの信頼区間出力内でカバーされることに注意されたい。
【0065】
一例では、アラート基準は、特定の閾値に達するピーク接合部温度の95%信頼区間のより高い限界であってもよい。アラート基準が満たされると、アラートが生成される場合がある。いくつかの例では、アラート基準は、ピーク接合温度のより高い限界が所定の温度閾値を超える所定の回数(例えば、three、five、10又は任意の適切な数)であってもよい。
【0066】
アラートは、さまざまな適切な形式をとることができる。例えば、ユーザインターフェースにおける警告メッセージ又は警報信号であってもよい。このようなユーザインターフェースは、例えば遠隔操作センターに配置することができる。そのような遠隔操作センターから、複数の風力タービン、さらには複数の風力発電所を監視することができる。オペレータは、このようなアラートに留意することができる。また、必要に応じて、アラートに基づいて風力タービン又は電力コンバータの運転を調整することができる。
【0067】
ユーザインターフェースは、グラフィカルユーザインターフェースであってもよい。アラートは、グラフ、図(ダイアグラム)、テキストメッセージ、表(テーブル)又は任意の他の適切な形式の形式であってもよい。アラートは、追加的に又は代替的に聞こえることができる。
【0068】
いくつかの例では、半導体チップの動作状態を示すパラメータは、チップの寿命使用量であってもよく、任意に、チップの累積寿命使用量、又はチップの寿命使用率であってもよい。ピーク接合温度の代わりに、又はピーク接合温度に加えて、チップの寿命使用もアラートを生成するために使用することができる。特に、閾値は、累積寿命使用量又は寿命使用率に関連して定義することができる。
【0069】
ここで、寿命消費量とは、半導体チップの寿命であって、所定の期間内に消費されたもの又は所定の時点までに使用されたもの(累積寿命消費量又は累積寿命使用量)の量(例えばパーセンテージ)をいう。
【0070】
一部の例では、寿命使用量のアラート基準として、一定期間の累積寿命使用量の上限と累積寿命使用量の下限の差が事前定義された寿命使用量しきい値を超えることがある。期間終了時の上限と期間開始時の下限との差は、劣化率の指標となる。
【0071】
アラートは、機械レベル、例えば電力コンバータレベル又は風力タービンレベルで生成され得る。アラートは、個々の位相モジュールのレベルで生成することもできる。例えば個々の位相モジュールの半導体チップのピーク接合温度又は累積寿命使用のいずれかがアラート基準に適合する場合、特定の個々の位相モジュールをユーザインターフェースで識別することができる。したがって、オペレータは、コンバータレベルでの全体的な劣化又は寿命の使用だけでなく、個々の位相モジュールレベルでも知ることができる。
【0072】
例において、半導体チップの動作状態を示すパラメータは、トランジスタ、ダイオード、ヒートシンク又はコンデンサ(キャパシタ)の1つ以上の寿命使用又はピーク温度に基づいてもよい。
【0073】
図3D及び3Eは、図3Bによる方法がどのように実施され得るかの例を図式的に示す。図3Dは、ピーク接合温度を決定する方法を概略的に示す。ブロック206で、ユーザ入力を得ることができる。ユーザ入力は、例えば、検索時間持続時間、関心対象の位相モジュール、温度閾値、及び温度閾値に到達し得る最大回数(例えば所定の期間内に)を含み得る。
【0074】
位相モジュールは、ここでは、風力タービン発電機の所与の電気的位相又は位相のグループのコンバータモジュールと見なされる。
【0075】
ブロック208では、すべての関連する位相モジュールがループインされているか(対象になっているか)どうかを判定することができる。ブロック210では、平均ピーク接合温度及び標準偏差を位相モジュールについて得ることができる。平均ピーク接合温度及び標準偏差に基づいて、ピーク接合温度(Tjpk)の信頼区間(例えば、90又は95%信頼区間)を決定することができる。信頼区間の上限は、ブロック230において、温度閾値と比較され得る。信頼区間の上限が温度閾値を超える場合、特定の位相モジュールをアラートテーブル245に追加することができる。
【0076】
この例のアラート表245は、事象(イベント)のタイムスタンプ(日付、時刻)、問題の風力タービンのID又は識別子、及び事象の説明を含む。
【0077】
この方法は、次の位相モジュールに進むことができる。
【0078】
図3Eは、半導体チップの寿命使用を決定する方法の類似の例を示す。ブロック207で、ユーザ入力を得ることができる。ユーザ入力は、例えば、検索時間、関心のある位相モジュール、及び最大許容寿命使用率を含むことができる。ブロック209では、すべての関連する位相モジュールがループされているかどうかがチェックされる。
【0079】
ブロック211では、推定平均累積寿命使用量が、位相モジュール内の電力装置について、累積寿命使用量の標準偏差とともに決定され得る。ブロック221及び223において、期間(period)の終わりにおける累積寿命使用の上限及び期間の初めにおける累積寿命使用の下限を決定することができる。この2つから寿命使用率を求めることができる。寿命使用率が寿命使用率の閾値を超える場合には、当該位相モジュールをアラートテーブル247に追加することができる。
【0080】
前述の例と同様に、この例のアラートテーブル247は、タイムスタンプ、問題の風力タービンの識別、及び対応する事象の説明を含む。テーブル245及び247の両方の例では、風力タービンレベルでの識別の代わりに、識別は個別位相モジュールのレベルでもよい。
【0081】
この方法は、次の位相モジュールに進むことができる。
【0082】
例えば、受信した動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することは、半導体チップの動作状態を推定するモデルの集合体を用いて半導体チップの動作状態を決定することを含む。
【0083】
アンサンブルモデリング(Ensemble modeling)は、さまざまなモデリングアルゴリズムを使用するか、さまざまなトレーニングデータセットを使用して、結果を予測するために複数の多様なモデルを作成するプロセスである。アンサンブルモデルは、各基本モデルの予測を集計し、最終的な予測を生成する。このような最終予測は、特定の値及び不確実性の指標を含み得る。
【0084】
モデルの集合体(アンサンブル)は、暗黙的アンサンブルであってもよいし、明示的アンサンブルであってもよい。明示的アンサンブルは、状態分布の複数の値を有していてもよく、複数の値の集約は、後処理ステップとして実施されてもよい。暗黙的アンサンブルは、1つのモデルの中に複数のアンサンブルモデルを持ち、集計ステップは同じモデルの中で自己完結していてもよい。
【0085】
他の例では、受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指示を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することは、ベイジアン推論モデル(Bayesian inference model)を用いて半導体チップの動作状態を決定することを含む。
【0086】
これらの例では、ベイジアン推論モデルは、ベイジアン推論を使用して訓練された確率的人工ニューラルネットワークであってもよく、人工ニューラルネットワークにおける活性化関数(activation function)及び/又は重みは、関連する確率分布を有する確率的であってもよい。
【0087】
図3Fは、パワー半導体デバイスの半導体チップの動作状態を決定するためのモデルの集合体の使用を概略的に示す。
【0088】
ブロック210では、風力タービン発電機及び/又はコンバータの動作パラメータが、例えば10分のサンプリングレートで得られる。この例における動作パラメータは、最大電力出力(Pmax)、平均電力出力(Pmean)、電力出力の標準偏差(Pstd)、電力コンバータの冷却剤の温度、ライン側コンバータ(ULSC)における電圧、ライン側コンバータ(QLSC)における無効電力を含むことができる。さらに、冷却媒体(冷媒)に含まれるグリコールの割合(Rgly)を入力することもできる。
【0089】
これらのパラメータに基づいて、平均ピーク接合温度及びピーク接合温度の標準偏差を、第1のモデル250を用いて計算することができる。同様に、異なるモデル255(及び他のモデル)を用いて、ピーク接合温度の平均値及び標準偏差を計算することができる。モデルアンサンブルの異なるモデルの結果に基づいて、ブロック260で、ピーク接合温度の平均及び標準偏差を、モデルアンサンブルモジュール275から得ることができる。
【0090】
同様に、モデル271,272、...27nの集合を使用して、寿命使用量の平均値及び標準偏差を決定することができる。
【0091】
図4Aは、パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定するための方法の一例を示しており、パワー半導体装置は、電力グリッドに接続された風力タービンの電力コンバータにおけるパワー半導体装置である。
【0092】
図3Bと同様に、本方法は、ブロック310において、連続する時間間隔にわたって半導体チップに間接的に関連する動作データを受信することを含むことができる。この特定の場合、動作データは、電力コンバータ又は風力タービンの動作データであってもよい。
【0093】
いくつかの例では、動作データは、時間間隔中の発電機の最大有効電力、時間間隔中の発電機の平均有効電力、発電機の有効電力の標準偏差、コンバータの冷却剤温度、風力タービンの平均電圧、及びグリッドに供給される平均無効電力のうちの1つ以上を含むことができる。他の又は更なる動作データも使用され得る。
【0094】
一般に、パワー半導体装置内の電流レベルを示すことができる間接的な動作データを使用することができる。上記のデータは、いずれにせよ、典型的には風力タービンから既に利用可能である。すなわち、これらの動作データは、風力タービンの制御又は風力発電所の制御を含む他の目的のために測定又は登録される。例えば、これらの動作データ(サンプリングレート)を取得するための連続時間間隔は、1分から20分の間、具体的には5分から15分の間であってもよい。前述の動作データの大部分は、例えば10分間隔で測定されてもよい。
【0095】
図4Aの例では、このような動作データに基づいて、ピーク接合部温度及び寿命使用、並びに付随する不確実性の両方をブロック320及び330で決定することができる。不確実性はここでも、信頼区間、主張と証拠との齟齬、標準偏差など(confidence intervals, variance, standard deviations etc.)を含む、潜在的分布(potential distribution)の任意の指標とすることができる。
【0096】
図4Aの例では、独立したアラート基準は、340での寿命使用及び350でのピーク接合部温度の両方について定義することができる。これらのアラート基準のうちの1つ又は両方のアラート基準が満たされる場合、アラートは、それぞれ360及び370で生成され得る。
【0097】
図4Bは、図4Aの方法がどのように実装され得るかの一例を示す図である。図4Bでは、10分間隔で、風力タービン、特に風力タービン発電機、および発電機と電力グリッドの間に接続されて いる電力コンバータから、図3Fと同じまたは類似の運転パラメータを取得することができる。例えば、最大電力出力(Pmax)、平均電力出力(Pmean)、電力出力の標準偏差(Pstd)、電力コンバータの冷却水(冷却媒体)の温度、ライン側コンバータの電圧(ULSC)、ライン側コンバータの無効電力(QLSC)などである。さらに、冷却水に含まれるグリコールの割合(Rgly)を入力することもできる。
【0098】
これらの動作データに基づいて、ブロック330の出力である不確実性の指標(又はピーク接合温度の可能な分布)を含むピーク接合温度を、ブロック370に示すように導出することができる。一方、ブロック325の出力である不確実性の指標を含む寿命使用も導出することができる。
【0099】
寿命使用に関する不確実性は、累積寿命使用を決定するために伝播され得る。すなわち、寿命の不確実性分布を含む寿命または(寿命使用率)の個々の決定が、(それ自身の不確実性分布を持つ)累積寿命の決定に考慮に入れることができる。
【0100】
累積寿命使用量の不確実性は、寿命使用量及び/又は接合部温度推定の不確実性から伝播され得、ここで、不確実性伝播は、一次導関数アプローチ(first order derivative approach)またはモンテカルロシミュレーションアプローチ(Monte-Carlo simulation approach)が使用されてもよい。
【0101】
例えば、累積寿命推定は、パワー半導体装置の交換時に寿命使用値を0にリセットする寿命リセットモジュールを含むことができる。個々のパワー半導体装置を新しいものに置き換えると、その累積寿命使用量は再び0になる。このようなリセットは、個々のパワー半導体装置のレベルで発生し得る。
【0102】
図4Bに示されるように、ブロック328での累積寿命使用は、累積寿命使用量は、異なるタイプの事象を区別し、考慮することができる。一方、「通常」または標準的な動作が、ブロック325における特定の使用量をもたらす。一方、非標準的な状況は、寿命使用量に大きな影響を与える可能性がある。非標準的な状況は、例えば、電圧ディップ(voltage dip)、電圧サグ(voltage sags)などを含むグリッド事象などの過渡現象を含むことができる。ブロック327では、特定の寿命利用モデル(又はモデルの集合体:アンサンブル)が、過渡現象の発生に基づいて寿命使用率を決定するために使用されてもよい。過渡的な寿命使用モデルの入力は、ブロック330におけるピーク接合部温度の決定から得られてもよい。
【0103】
同様に、ブロック329において、特定のモデル(又は特定のモデル)を使用して、電力シフト事象の寿命使用(又は寿命使用率)を決定することができる。電力シフト事象は、ここでは、電力コンバータの制御下で、電力出力が風速の変化に応答して変化する過渡現象とみなすことができる。これらの電力シフト事象のモデルに対する入力は、ブロック330におけるピーク接合温度も含むことができる。
【0104】
ブロック350では、半導体チップのピーク接合温度に関連してアラートを生成することができ、ブロック340では、寿命使用に関連してアラートを生成することができる。このアラートは、例えば、寿命の使用に関連するアラートテーブル360、及び/又は特定の半導体チップ(又は位相モジュール)についての経時的なピーク接合温度変動を示すダイアグラムを含み得る。
【0105】
累積耐用年数の決定に基づいて、残存耐用年数(RUL:remaining useful life)の推定が行うことができる。RULは、平均値及び不確実性の指標を含むことができる。信頼性指標(故障率)の予測精度を定量化することは、予測そのものと同様に重要である。前述したように、コンバーターが30日以内に故障するという点の見積もりは、交換/修理の予定を立てるには十分ではない場合がある。しかし、99%の確率で45~60日の予測間隔を指定すると、修理のタイミングはより容易に決められる。
【0106】
図4Cは、本明細書に開示された方法に関連して使用することができるグラフィカルユーザインタフェースの一例を概略的に示す。グラフィカルユーザインタフェースは、階層的であってもよく、例えば、風力タービンの全フリートのレベル、又は風力タービンのグループ、例えば、風力ファーム内の全ての風力タービンのレベルの情報を含む。フリートの観点では、フリートのすべての風力タービンが示されてもよく、風力タービンについては、例えば、ピーク接合部温度(アラート)及び累積寿命使用量が示されてもよい。フリートレベルのインターフェイスの一部が図4Cの上部に表示される場合がある。
【0107】
一例では、ユーザは関心のある風力タービンを選択することができる。個々の風力タービンレベルでは、風力タービンの各コンバータ(例:2つ又は3つ)についての情報が示されてもよい。次いで、ユーザは、例えば、特定のコンバータを選択し、例えば、寿命期間中のピーク接合部温度又は累積寿命使用量及びその可能なソースに関する情報を検索することができる。
【0108】
本開示のさらなる態様において、パワー半導体装置に収容された半導体チップの残存耐用年数を予測する方法400が提供される。このような方法は、図5Aに例示されている。
【0109】
図3及び図4の例に関して述べたように、パワー半導体装置は、風力タービンの電力コンバータに配置されたパワー半導体装置であってもよい。しかしながら、残存耐用年数を予測する方法は、他の装置においても使用することができる。
【0110】
この方法は、ブロック410において、半導体チップの現在の状態を推定し、ブロック430において、半導体チップの動作条件の関数として、半導体チップの経時的な潜在的劣化を決定するステップを含む。
【0111】
本方法はさらに、ブロック440において、半導体チップの推定された電流状態及び潜在的劣化に基づいて、半導体チップの残存耐用年数を推定するステップを含む。
【0112】
ここで、図5Aに示されているように、潜在的劣化を判定することは、ブロック420で、寿命初期劣化モデル又は寿命末期劣化モデルを選択することを含み、寿命初期劣化モデルは寿命末期劣化モデルよりも遅いサンプリング速度に基づいている。
【0113】
ここで、半導体チップの現在の状態は、特に累積寿命使用量を示してもよい。
【0114】
半導体チップの経時的な潜在的劣化の予測は、半導体チップの動作条件の関数として行うことができる。例えば、風力タービン発電機に結合された電力コンバータにおいて実施する場合、半導体チップの動作条件は、例えば、周囲温度、例えば、周囲温度、風速などの風力タービンの動作条件(これらは発電機の出力に影響し、それによって電力コンバータの半導体チップの負荷に影響するので)に依存する場合がある。推定された将来の負荷と環境ばく露に基づいて、IGBTが規定の仕様の範囲内で動作しなくなる時期を推定することができる。
【0115】
このような推定は、いくつかの例において、個々の位相モジュールのレベルで行うことができる。
【0116】
残存耐用年数には、不確実性が含まれる場合がある。先に例示した実施例におけるように、不確実性の表示は、例えば、残りの耐用年数の平均値、標準偏差、分散、信頼区間を伴う下限および上限、最小値、最大値、中央値、分位値および四分位範囲(mean value, standard deviation, variance, a lower and higher bound with a confidence interval, a minimum, a maximum, a median, a quantile and an interquartile range)を含み得る。
【0117】
例えば、残存耐用年数(RUL)の5%分位数が1週間未満であれば、即時交換のアラートを発することができる。RULの5%数量が1週間を超え、3か月未満の場合、交換計画のアラートが生成される可能性がある。これらは単なる例であり、異なる基準に基づく異なるアラートは特定のニーズに基づいて構成できる。
【0118】
例えば、予測は、異なるシナリオ、例えば「良好な場合(希望的な場合)」又は軽い負荷シナリオ、及び重い負荷シナリオの「最悪の場合」に基づいて行われ得る。このようなシナリオは、個別に残存耐用年数の見積りを生成することができる。
【0119】
実施例では、本方法は、ブロック450において、ユーザインターフェースにおいて半導体チップの残りの耐用期間を示すことをさらに含むことができる。前述したように、ユーザインターフェースは、例えば、風力タービンから離れた場所、特に、風力タービン又は複数の風力ファームを監視する遠隔操作センターに設けられてもよい。ユーザーインターフェースにおけるそのような表示に基づいて、オペレーターは、例えば、フリート全体又はフリートの少なくとも大部分の老朽化を考慮に入れた計画メンテナンスを含む様々な処置を行うことができる。
【0120】
例として、使用済み劣化モデルは、各サンプルについて5分から2日間、より具体的には10分から1日間のサンプリングレートを有することができる。例において、寿命初期劣化モデルは、例えば1週間又は1週間以上のサンプリングレートを有することができる。したがって、寿命の段階に基づいて、寿命の終わりに向かって劣化をより詳細に監視する必要性に従って、異なるサンプリング速度を選択することができる。
【0121】
実施例では、半導体チップの累積寿命使用量の推定は、図3及び図4を参照して図示された方法のいずれかを含むことができる。特に、半導体チップの累積寿命使用量は、例えば、個々の瞬間における寿命使用量の不確実性に基づく推定に基づいていてもよく、不確実性は、累積寿命使用量の推定及び不確実性の指標を決定するために伝搬されてもよい。
【0122】
このような推定は、検査に基づくデータで補完することができる。
【0123】
例えば、寿命初期劣化モデル又は寿命末期劣化モデルの選択は、半導体チップの寿命使用の傾向の変化に基づいてもよい。劣化の突然の変化が認められ、かつ持続することが認められた場合には、これを耐用期間終了時の劣化モデルに切り替えることの示唆とすることができる。
【0124】
事象が異なると、寿命使用量(率)が異なる場合がある。例えば風力タービン電力コンバータでは、過渡現象や系統事故により、半導体チップの寿命が比較的大きく消費されることが知られている。このような事象で大きな寿命消費が発生しても、必ずしも半導体チップの老朽化を意味するものではない。しかし、通常の状況で高い寿命使用率が発生する場合、トレンドが崩れる兆候であり、寿命末期劣化モデルへの切り替えの指標となる可能性がある。
【0125】
減衰モデル(decay model)は、劣化プロセス中の例えば位相モジュール健全性インジケータの動的な時間発展を適合させるために使用されてもよい。減衰モデルは、線形フィッティングに基づくことができる。寿命を通じて、過渡現象、グリッド事象など、より高い負荷のインスタンスが存在する可能性がある。このような場合、寿命は標準的な動作条件よりも高くなることが予想される。
【0126】
しかし、減衰モデルを使用することで、寿命の使用傾向が変化する場合がある。このような傾向の変化に基づいて、半導体チップが寿命初期のように動作しなくなり、寿命末期のように動作しなくなったと判断してもよい。この判断に基づいて、残りの耐用年数の推定値を決定するためのサンプリングレートおよび劣化モデル(degradation model)を適合させることができる。
【0127】
実施例では、半導体チップの累積寿命使用量の推定は、少なくとも部分的に電力コンバータの検査によるデータに基づいてもよい。かかる検査には、例えば、手動検査が含まれ得る。検査は、半導体チップの状態が、測定された動作パラメータ及びそれらの状態を推定するために使用されるモデルに基づいて仮定されるよりも良好又は不良であることを明らかにすることができる。
【0128】
例えば、寿命初期劣化モデル及び/又は寿命末期劣化モデルは、劣化及び潜在的劣化の不確実性の指標を決定する。
【0129】
例では、寿命末期劣化モデル及び/又は寿命初期劣化モデルは、類似の環境条件および/または実使用データの再来性を考慮した実使用データに基づいて更新されてもよい。実データに基づき、残存耐用年数の推定に使用する劣化モデルに修正を加えてもよい。また、電力コンバータや半導体チップを監視する環境条件と最も類似した環境条件に基づくデータとして、最も信頼性の高いデータを選択することができる。また、過去のデータよりも最近のデータの方が信頼性が高いと判断される場合もある。より信頼性の高いデータに基づいて、劣化モデルを更新し、より良い結果を得ることができる。
【0130】
図5Bは、RULを決定するための方法が、先の実施例の半導体チップの動作状態を決定するための方法とどのように組み合わされ得るかを図式的に示す。
【0131】
本明細書に開示される様々な方法の例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア及びそれらの組み合わせを用いて実施することができる。
【0132】
当業者であれば、本明細書の開示に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、又はその両方の組み合わせとして実施することができることをさらに理解するであろう。ハードウェア及びソフトウェアのこの相互交換可能性を明確に説明するために、様々な例示的構成要素、ブロック、モジュール、回路、及びステップが、それらの機能性の観点から一般的に上述されている。このような機能がハードウェア又はソフトウェアとして実装されるかどうかは、システム全体に課される特定のアプリケーション及び設計上の制約に依存する。当業者は、特定のアプリケーションごとに様々な方法で記載された機能を実装することができる。
【0133】
本明細書の開示に関連して記載される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、1つ以上の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、クラウドコンピューティングアーキテクチャ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブルロジックデバイス、離散ゲート又はトランジスタロジック、離散ハードウェアコンポーネント、又は本明細書に記載される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせを用いて実施又は実行することができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、代替的には、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンであってもよい。プロセッサはまた、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、又は他の任意のそのような構成などのコンピューティング装置の組み合わせとして実施されてもよい。
【0134】
本開示はまた、本明細書に開示された方法のいずれかを実行するように適合されたコンピューティングシステム(例えば、データ処理装置、装置又はシステム)に関する。これらの方法を実行するように構成されたコンピューティングシステムは、例えば、不確実性インジケータを含む寿命使用を決定するための「寿命使用モジュール」、不確実性インジケータを含むピーク接合温度を決定するための「ピーク接合温度モジュール」、「アラート基準」モジュール、「アラート生成」モジュールなど、本明細書に記載された方法ステップの各々に対する専用モジュールを含むことができる。
【0135】
本開示はまた、命令(コード)を含むコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品であって、実行されると、本明細書に開示される方法のいずれかを実行するものに関する。本開示はまた、そのようなコンピュータプログラムをその上に格納したコンピュータ可読データ担体(キャリア)に関する。
【0136】
コンピュータ・プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形態などのソースコードとオブジェクトコードの中間コード、またはプロセスの実施に使用するのに適した他の任意の形態の形態であってもよい。キャリアは、コンピュータ・プログラムを運ぶことができる任意の実体または装置であってよい。
【0137】
ソフトウェア/ファームウェアに実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ又は複数の命令又はコードとして記憶又は転送され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体と、ある場所から別の場所へのコンピュータ・プログラムの移動を容易にする任意の媒体を含む通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、汎用又は特殊目的のコンピュータによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であってよい。限定ではなく一例として、このようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD/DVD又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、又は命令又はデータ構造の形で所望のプログラムコード手段を搬送又は記憶するために使用することができ、汎用又は特殊目的のコンピュータ又は汎用又は特殊目的のプロセッサによってアクセスすることができる他の媒体を含むことができる。また、あらゆる接続は、コンピュータ可読媒体と適切に呼ばれる。例えば、ソフトウェア/ファームウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、又は赤外線、無線、マイクロ波などのワイヤレス技術を使用して、Webサイト、サーバー、又はその他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、又は赤外線、無線、マイクロ波などのワイヤレス技術がメディアの定義に含まれる。本明細書で使用されるディスク及びディスクには、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(登録商標)、光ディスク、デジタル汎用ディスク(DVD)、フロッピーディスク(商標)及びブルーレイディスクが含まれ、ディスクは通常、データを磁気的に再生し、ディスクはレーザーを用いてデータを光学的に再生する。上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲に含めるべきである。
【0138】
完全性のために、本開示の多くの局面は、以下の番号付きの条項に記載されている。
[実施形態1]
パワー半導体装置の半導体チップの動作状態を推定する方法であって、
連続する時間間隔にわたって半導体チップに関連する動作データを受信すること、
受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定すること、
アラート基準が満たされた場合にアラートを発生させること、
を含み、
アラート基準は、半導体チップの動作状態を示すパラメータと不確実性の指標とに基づいている。
[実施形態2]
半導体チップの動作状態を示すパラメータは、ピーク接合温度である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
アラート基準は、ピーク接合温度の上限及びその不確実性の指標が所定の温度閾値を超える所定の回数を含む、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]
半導体チップの動作状態を示すパラメータが、チップの寿命使用量であり、オプションとして、チップの寿命使用率又は累積寿命使用量である、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]
アラート基準が、ある期間の終わりにおける累積寿命使用量の上限とある期間の初めにおける累積寿命使用量の下限との差が、所定の寿命使用量閾値を超えることを含む、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]
半導体チップの動作状態を示すパラメータは、トランジスタ、ダイオード、ヒートシンク又はコンデンサの1つ以上の寿命使用又はピーク温度に基づく、実施形態4又は5に記載の方法。
[実施形態7]
パワー半導体装置が、電力グリッドに接続された風力タービンの電力コンバータ内のパワー半導体装置である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]
半導体チップに関連する動作データが、風力タービン及び/又は電力コンバータからの動作日を含み、任意選択的に、時間間隔中の発電機の最大有効電力、時間間隔中の発電機の平均有効電力、発電機の有効電力の標準偏差、コンバータの冷却剤温度、風力タービンにおける平均電圧、及びグリッドに供給される平均無効電力のうちの1つ以上を含む、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
動作状態の不確実性の指標が、動作状態を示すパラメータに関する以下の指標:平均値、標準偏差、分散、信頼区間を伴う下限および上限、最小値、最大値、中央値、分位値および四分位範囲のうちの2つ以上を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]
受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することは、半導体チップの動作状態を推定するモデルの集合体を用いて半導体チップの動作状態を決定することを含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]
受信された動作データに基づいて動作状態の不確実性の指標を含む半導体チップの動作状態を示すパラメータを決定することが、ベイジアン推論モデルを用いて半導体チップの動作状態を決定することを含み、オプションとして、ベイジアン推論モデルが、ベイジアン推論を用いて訓練された確率的人工ニューラルネットワークであり、ニューラルネットワークにおける活性化関数及び/又は重みが、関連する確率分布を伴って確率的である、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]
パワー半導体装置に収容された半導体チップの残存耐用年数を予測する方法であって、
任意選択的に実施形態1~11のいずれかの方法に従って、半導体チップの現在の状態を推定することと、
半導体チップの動作条件の関数としての、時間の経過に伴う半導体チップの潜在的劣化を決定することと、
半導体チップの推定された現在の状態と劣化の可能性とに基づいて半導体チップの残存耐用年数を推定することと、
潜在的劣化の決定は、寿命初期劣化モデル又は寿命末期劣化モデルを選択することとを含み、寿命初期劣化モデルは寿命末期劣化モデルよりも遅いサンプリングレートに基づく方法。
[実施形態13]
寿命初期劣化モデル又は寿命末期劣化モデルの選択が、半導体チップの寿命使用の傾向の変化に基づく、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]
半導体チップの残りの耐用年数をユーザインターフェースで示すことをさらに含む、実施形態12又は13に記載の方法。
[実施形態15]
半導体チップの現在の状態を推定することは、半導体チップの累積寿命使用を推定することを含み、任意選択的に実施形態4に記載の方法を含む、実施形態12~14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]
半導体チップの現在の状態を推定することが、少なくとも部分的に電力コンバータの手動検査からのデータに基づいている、実施形態12~15のいずれかに記載の方法。
[実施形態17]
早期寿命劣化モデル及び/又は寿命末期劣化モデルが、劣化及び潜在的劣化の不確実性の指標を決定する、実施形態12~16のいずれかに記載の方法。
[実施形態18]
寿命末期劣化モデルが各サンプルについて5分から2日間、より具体的には10分から1日間のサンプリング速度を有する、実施形態12~17のいずれかに記載の方法。
[実施形態19]
寿命末期の劣化モデル及び/又は寿命初期の劣化モデルが、同様の周囲条件及び/又は寿命データの最新性を考慮した寿命データに基づいて更新される、実施形態12~19のいずれかに記載の方法。
[実施形態20]
パワー半導体装置が、風力タービンの電力コンバータ内に配置されたパワー半導体装置である、実施形態12~19のいずれかに記載の方法。
【0139】
この記述された説明は、好ましい実施形態を含む教示を開示するために、また、任意の装置又はシステムを製造及び使用すること、及び任意の組み込まれた方法を実行することを含む教示を当業者が実施することを可能にするために、実施例を使用する。特許可能範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に生じる他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字どおりの言語と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文字どおりの言語と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。記載された様々な実施形態からの局面、並びにそのような各局面に対する他の既知の等価物は、当業者の1人によって混合及び整合され、本出願の原理に従って追加の実施形態及び技術を構築することができる。図面に関連する参照符号が特許請求の範囲中に括弧書きされている場合は、それらは特許請求の範囲の理解度を増加させることのみを意図したものであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0140】
10:風力タービン 12:地面 14:支持システム 16:ナセル 18:ロータ 20:ハブ 22:ロータブレード 24:ブレード根元部分 26:負荷伝達領域 28:風向 30:ロータ軸 32:ピッチシステム 34:ピッチ軸 36:風力タービン制御装置 38:ヨー軸 40: プロセッサ 42:発電機 44:メインシャフト 46:ギアボックス 48:高速シャフト 50:カップリング 52:メインフレーム 54:デカップリング支持手段 56:ヨー駆動機構 58:気象測定システム 60:主前方支持ベアリング 62:主後方支持ベアリング 64:駆動列 66:ピッチアセンブリ 68:ピッチ駆動システム 70:センサ 72:ピッチベアリング 74:ピッチ駆動モータ 76:ピッチ駆動ギアボックス 78:ピッチ駆動ピニオン 80:ピッチ制御システム 84:発電機 86:キャビティ 88:内面 90:変圧器 100:タワー 103:トルクアーム 160:電力ケーブル 250:第1のモデル 255:他のモデル 275:モデルアンサンブルモジュール 360:アラートテーブル
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
【外国語明細書】