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特開2023-63272改変T細胞、医薬組成物、その製造方法、及びそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063272
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】改変T細胞、医薬組成物、その製造方法、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20230427BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230427BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20230427BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230427BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61P35/00
A61K35/17 Z
A61K35/51
A61K35/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169387
(22)【出願日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】17/508,446
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516199061
【氏名又は名称】フルホープ バイオメディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-モウ・リー
(72)【発明者】
【氏名】チュン-ウェイ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】チー-ハオ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤ-ファン・チェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA24
4B065BB19
4B065BB23
4B065BB25
4B065BB40
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB59
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞死滅機能及び抗原提示細胞機能の両方を持つ改変T細胞、並びにそれを培養する方法を提供すること。
【解決手段】改変T細胞を培養する方法であって、単核細胞を含む体液を得る工程;単核細胞を、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触させて、第1の培養細胞集団を得る工程;第1の培養細胞集団を、IL-2を含む第1の培養培地と接触させて、第2の培養細胞集団を得る工程;並びに第2の培養細胞集団を、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触させて、第3の培養細胞集団を得る工程を含む、方法の提供。得られたCD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの表現型を含む改変T細胞の投与によって、対象におけるがん細胞は、細胞媒介免疫により有効に阻害されうる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの表現型を含む改変T細胞。
【請求項2】
CD69DimCD11cHiCXCR3Dimの表現型を更に含む、請求項1に記載の改変T細胞。
【請求項3】
IFN-γHiの表現型を更に含む、請求項1に記載の改変T細胞。
【請求項4】
(a)請求項1に記載の改変T細胞;及び
(b)薬学的に許容される担体又は賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項5】
がん細胞を処置する方法であって、
有効量の請求項1に記載の改変T細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する工程
を含む、方法。
【請求項6】
有効量が、用量あたり約l×103~約l×109個細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
改変T細胞が、自己又は同種異系である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
改変T細胞が、末梢血、臍帯血又は骨髄に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
改変T細胞をインビトロで増殖させる工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
改変T細胞を培養する方法であって、
単核細胞を含む体液を得る工程;
単核細胞を、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触させて、第1の培養細胞集団を得る工程;
第1の培養細胞集団を、IL-2を含む第1の培養培地と接触させて、第2の培養細胞集団を得る工程;並びに
第2の培養細胞集団を、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触させて、第3の培養細胞集団を得る工程
を含む、方法。
【請求項11】
単核細胞が、末梢血、臍帯血又は骨髄に由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
誘導性培養培地、第1の培養培地及び第2の培養培地が、造血細胞培地を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
造血細胞培地が、AIM-V培地を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
誘導性培養培地、第1の培養培地及び第2の培養培地が、血清タンパク質を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
血清タンパク質が、ヒト血小板溶解物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
単核細胞が、誘導性培養培地と約1~3日間接触する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
第1の培養細胞集団が、第1の培養培地と約1~6日間接触する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
第2の培養細胞集団が、第2の培養培地と約1~3日間接触する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
第2の培養培地と接触させた後、第3の培養細胞集団を、IL-2、IL-12及びIL-18を含む第3の培養培地と接触させて、第4の培養細胞集団を得る工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
第3の培養培地が、造血細胞培地を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
造血細胞培地が、AIM-V培地を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第3の培養培地が、血清タンパク質を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
血清タンパク質が、ヒト血小板溶解物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第3の培養細胞集団が、第3の培養培地と約1~3日間接触する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの表現型を有する改変T細胞を単離する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改変T細胞、特にγδT細胞、及びそれを含む医薬組成物に関する。改変T細胞を同定するための方法及び改変T細胞を培養するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
免疫監視は、がんに対して重要な役割を果たし、特に、がんの管理における従来の外科手術、放射線及び化学療法の多くの欠点を考慮すると、非常に魅力的な治療手法となる。
【0003】
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、「非定型」T細胞の表現型であり、末梢血におけるT細胞の比較的小さいサブセットを表す。γδT細胞は、γ及びδ鎖から構成されるヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)の発現によって定義される。このことは、γδT細胞を、古典的かつ非常によく知られたαβTCRを発現するCD4+ヘルパーT細胞及びCD8+細胞傷害性T細胞とは別に定める。
【0004】
Vγ9Vδ2(Vγ2Vδ2とも称される)T細胞は、TCR依存性の様式で、微生物の(E)-4-ヒドロキシ-3-メチルブタ-2-エニルジホスフェート及び内因性のイソペンテニルジホスフェートを認識するヒト末梢血γδT細胞のサブセットである。その認識は、特異的なアクセサリー細胞、抗原取り込み、抗原プロセシング、又はMHCクラスI、クラスII若しくはクラスIb発現を必要としない。
【0005】
γδT細胞は、自然免疫及び適応免疫の間の関連を表すと考えられる。γδT細胞は、Vγ9Vδ2T細胞の腫瘍反応性に対して重要な貢献を行うNKG2D等のナチュラルキラー受容体を発現する。加えて、γδT細胞は、γδT細胞受容体も発現する。活性化されたγδT細胞は、高レベルの抗原提示細胞関連分子を発現し、破壊された細胞に由来するペプチド抗原をαβT細胞に提示することができる。γδT細胞のこれらの抗菌性及び抗腫瘍性を利用して、前臨床試験及び臨床試験が、感染症及び悪性腫瘍のための新規免疫療法を開発するために実施されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Remington's Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company社、Easton、Paの第21版
【非特許文献2】Sonderstrup、Springer、Sem. Immunopathol. 25巻:35~45頁、2003年
【非特許文献3】Nikulaら、Inhal. Toxicol. 4(12j:123~53頁、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
がんのための有効な処置及び/又は予防に対する満たされていない必要性が依然として存在するので、これらの知見は、がん細胞に対するT細胞に基づく療法、及び臨床適用のための多量の治療的に適格なT細胞を作成する培養方法の開発のための論拠を支持する。本開示は、これらの及び他の必要性を満足する固有の表現型を有する改変T細胞を提供する。細胞は、自己療法又は非自己療法において使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当技術分野の緊急の必要性を考慮して、安全でがんの処置において有効な改変T細胞及びそれを含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0009】
1つの実施形態において、本開示は、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの表現型を含む改変T細胞を提供する。好ましい実施形態において、改変T細胞は、CD69DimCD11cHiCXCR3Dimの表現型を更に含むことができ、即ち、改変T細胞は、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCD69DimCD11cHiCXCR4HiCXCR3Dimの表現型を含むことができる。別の好ましい実施形態において、改変T細胞は、IFN-γHiの表現型を更に含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載される改変γδT細胞、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態は、がん細胞を処置する方法であって、有効量の本明細書に記載される改変T細胞又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0012】
好ましい実施形態において、有効量は、用量あたり約l×103~約l×109個細胞でありうる。
【0013】
好ましい実施形態において、改変T細胞は、自己又は同種異系でありうる。
【0014】
好ましい実施形態において、改変T細胞は、末梢血、臍帯血又は骨髄に由来することができる。
【0015】
好ましい実施形態において、方法は、改変T細胞をインビトロで増殖させる工程を更に含むことができる。
【0016】
他の実施形態は、NK細胞機能及び抗原提示細胞機能の両方を持つ改変T細胞を培養する方法であって、
単核細胞を含む体液を得る工程;
単核細胞を、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触させて、第1の培養細胞集団を得る工程;
第1の培養細胞集団を、IL-2を含む第1の培養培地と接触させて、第2の培養細胞集団を得る工程;並びに
第2の培養細胞集団を、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触させて、第3の培養細胞集団を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、単核細胞は、末梢血、臍帯血又は骨髄に由来することができる。
【0018】
好ましい実施形態において、誘導性培地、第1の培養培地及び第2の培養培地は、造血細胞培地、好ましくはAIM-V培地を更に含むことができる。
【0019】
好ましい実施形態において、誘導性培地、第1の培養培地及び第2の培養培地は、血清タンパク質、好ましくはヒト血小板溶解物を更に含むことができる。
【0020】
好ましい実施形態において、単核細胞は、誘導性培養培地と約1~3日間接触することができる。
【0021】
好ましい実施形態において、第1の培養細胞集団は、第1の培養培地と約1~6日間接触することができる。
【0022】
好ましい実施形態において、第2の培養細胞集団は、第2の培養培地と約1~3日間接触することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、方法は、第2の培養培地と接触させた後、第3の培養細胞集団を、IL-2、IL-12及びIL-18を含む第3の培養培地と接触させて、第4の培養細胞集団を得る工程を更に含むことができる。
【0024】
好ましい実施形態において、第3の培養培地は、造血細胞培地、好ましくはAIM-V培地を更に含むことができる。
【0025】
好ましい実施形態において、第3の培養培地は、血清タンパク質、好ましくはヒト血小板溶解物を更に含むことができる。
【0026】
好ましい実施形態において、第3の培養細胞集団は、第3の培養培地と約1~3日間接触することができる。
【0027】
好ましい実施形態において、方法は、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの表現型を有する改変T細胞を単離する工程を更に含むことができる。
【0028】
本明細書に記載される培養する方法は、固定量の試料、例えば10mLの血液からの多数の改変T細胞の単離を可能にする。
【0029】
本出願の実施形態の実例を、以下の図面を参照して下記で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、どのサイトカインカクテルが表現型及び機能発達において主要な役割を果たすのかを決定するための実験設計を図示する。
図2-1】図2は、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、IL-2を単独で有する培養培地において培養されたT細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。具体的には、単離されたPBMCは、最初に、ゾレドロン酸及びIL-2とともにインビトロで培養された。追加のIL-2を、12日目まで、3日ごとに培養培地に添加し、細胞を15日目に回収した。総細胞集団中のT細胞は、90%よりも多い。加えて、IL-2のみとともに培養されたT細胞は、CD69及びCD11cを低く、CXCR4を弱く、並びにCXCR3を高く発現した。
図2-2】図2-1の続きである。
図3-1】図3は、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、9日目にIL-12が添加されたIL-2を有する培養培地において培養された改変T細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。具体的には、サイトカインIL-12を、9日目~12日目にIL-2を有する培養培地に添加し、細胞を15日目に回収した。総細胞集団中の改変T細胞も、90%より多い。加えて、9日目に添加されたIL-12を有する培養培地において培養された改変T細胞は、IL-2のみとともに培養されたものよりも、より多くのCD69、CD11c、CXCR4、及びより少ないCXCR3を発現した。
図3-2】図3-1の続きである。
図4-1】図4は、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、45ng/mLのIL-18とともにIL-2が添加されて培養されたT細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。具体的には、45ng/mLのサイトカインIL-18を、9日目~12日目にIL-2を有する培養培地に添加し、細胞を15日目に回収した。総細胞集団中のT細胞も、90%よりも多い。9日目におけるIL-18とともに培養されたT細胞上の細胞表面マーカーの発現は、IL-2単独と比較して、差を示さなかった。
図4-2】図4-1の続きである。
図5図5は、IL-2のみ若しくはIL-2+IL-18を含む培養培地で培養されたT細胞、又はIL-2+IL-12を含む培養培地で培養された改変T細胞によって媒介された細胞傷害性を図示する。9日目に添加されたIL-2+IL-12を含む培養培地は、9日目に添加されたIL-2単独(カスパーゼ陽性K562:16.92%)及びIL-2+IL-18(カスパーゼ陽性K562:14.13%)と比較して、最良の標的細胞(K562)死滅活性(カスパーゼ陽性K562:25.02%)を提供した。
図6図6は、改変T細胞の表現型及び機能発達のための適正なサイトカイン濃度を決定するための実験設計を図示する。
図7A-1】図7Aは、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、それぞれ、9日目及び12日目に、IL-12及びIL-12+15ng/mLのIL-18とともにIL-2が添加されて培養された改変T細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。
図7A-2】図7A-1の続きである。
図7B-1】図7Bは、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、それぞれ、9日目及び12日目に、IL-12及びIL-12+45ng/mLのIL-18とともにIL-2が添加されて培養された改変T細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。
図7B-2】図7B-1の続きである。
図7C-1】図7Cは、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3の発現について、それぞれ、9日目及び12日目に、IL-12及びIL-12+135ng/mLのIL-18とともにIL-2が添加されて培養された改変T細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。具体的には、サイトカインIL-12を、9日目にIL-2を有する培養培地に添加した。異なる濃度のサイトカインIL-18を、12日目にIL-2及びIL-12を有する培養培地に添加した。総細胞集団中の改変T細胞も、95%より多かった。CD69、CXCR4及びCXCR3の細胞表面発現強度は、9日目にIL-2+IL-12が添加された培養条件よりも高かった。しかしながら、CXCR3発現強度は、IL-2単独よりも更に低かった。
図7C-2】図7C-1の続きである。
図8図8は、12日目に添加されたIL-2+IL-12+様々な濃度のIL-18を含む培養培地で培養された改変T細胞によって媒介された細胞傷害性を図示する。12日目にIL-2+IL-12を含む培養培地に添加された異なる濃度のサイトカインIL-18における標的細胞(K562)死滅活性は、9日目にIL-2+IL-12が添加された培養条件よりも悪くなかった。
図9-1】図9は、IFN-γの発現について、IL-2単独、IL-2+IL-12及びIL-2+IL-12+様々な用量のIL-18とともに培養された改変T細胞のフローサイトメトリー画像の集合を図示する。12日目に添加されたIL-2+IL-12+様々な用量のIL-18におけるIFN-γの産生は、IL-2+IL-12及びIL-2単独よりも著しく高かった。
図9-2】図9-1の続きである。
図9-3】図9-2の続きである。
図10-1】図10は、IL-2単独、IL-2+IL-12及びIL-2+IL-12+様々な用量のIL-18とともに培養された改変T細胞によって媒介された抗原提示活性を図示する。具体的には、同種異系混合リンパ球反応によるCD8 T細胞試験の増殖は、IL-2+IL-12及びIL-2+IL-12+様々な用量のIL-18を含む培養培地において培養された全ての改変T細胞が、抗原提示活性において、IL-2単独よりも有効であることを示した。しかしながら、抗原提示活性は、IL-2+IL-12+様々な用量のIL-18及びIL-2+IL-12の間に差がないことを示す。
図10-2】図10-1の続きである。
図10-3】図10-2の続きである。
図11図11は、改変T細胞を培養する方法の実施形態に従うフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の前述及び他の態様を、ここに、本明細書に記載される他の実施形態に関してより詳細に説明する。本発明が、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施態様に限定して解釈されるべきではないことが理解されるべきである。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分伝えるように提供される。
【0032】
本明細書の本発明の説明において使用される専門用語は、具体的な実施例を説明する目的のためだけのものであって、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他を指示しない限り、同様に複数の形態を含むことが意図される。
【0033】
本明細書において使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含に及び、明示的に指示される任意の限定の支配下にあることが意図される。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス又は方法は、これらの要素のみに必ずしも限定されないが、明白にリストされていない、又はそのような組成物、混合物、プロセス若しくは方法に固有の他の要素を含むことができる。
【0034】
「からなる」という移行句は、明記されていない任意の要素、工程又は成分を除外する。特許請求の範囲では、そのような移行句は、それらに元々関連する不純物を除き、列挙されたもの以外の材料の包含に対して請求項をクローズにするであろう。「からなる」という句が、プレアンブルの直後よりもむしろ請求項のボディの節に現れる場合、これは、その節に記載された要素のみを限定し、他の要素は、全体として請求項から除外されない。
【0035】
出願人が、「含む(comprising)」等のオープンエンドの用語で本発明又はその一部を定義している場合、(他に規定されない限り)その説明が「からなる」という用語を使用してそのような発明も記載すると解釈されるものとすることが理解されるべきである。
【0036】
本明細書の全ての数は、「約」によって修飾されているものとして理解されうる。本明細書において使用される場合、「約」という用語は、値が、例えば、値を決定するために用いられる測定デバイス、方法についての固有の誤差の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、この用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%、又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%未満の変動性を包含することを意味する。
【0037】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すか又は選択肢が互いに排他的であることが明示的に指示されない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみ、及び「及び/又は」を指すという定義を支持する。
【0038】
「対象」は、本明細書において使用される場合、例えば、がんを有している若しくはがんが発生していると診断されたか、又はその疑いがある哺乳動物対象を含む、動物を指す。実施形態において、「対象」という用語は、がんを有する脊椎動物、又はがん処置を必要とすると見なされた脊椎動物を指すことができる。対象としては、温血動物、例えば、哺乳動物、例えば霊長類、より好ましくはヒトが挙げられる。非ヒト霊長類も同様に対象である。対象という用語は、家畜動物、例えば、ネコ、イヌ、類人猿等、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモット等)が挙げられる。そのため、獣医学的使用及び医学製剤が本明細書で企図される。
【0039】
「投与する」又は「投与」は、本明細書において、本出願の改変T細胞又は医薬組成物を対象に提供することを言う。例として、限定されないが、投与は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、嚢内、軟骨内、空洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、及び経皮により行うことができる。例えば、注射は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、又は筋肉内(i.m.)注射によって行うことができる。1つ又は複数のそのような経路を用いることができる。非経口投与は、例えば、ボーラス注射によって、又は経時的なゆっくりとした灌流によってでありうる。代替的に、又は同時に、投与は、経口経路によってであってもよい。
【0040】
「処置する」又は「処置」という用語の使用は、本明細書において、障害、障害の症状、障害に続発する疾患状態若しくは障害になりやすい傾向を治癒、軽減、緩和、是正、予防又は回復する目的で、T細胞又は医薬組成物の対象への投与を言う。「阻害する」、「低減する」若しくは「予防」という用語、又はこれらの用語の任意の変形は、特許請求の範囲及び/又は明細書で使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少又は完全な阻害を含む。
【0041】
本出願のT細胞又は医薬組成物によって処置することができる「がん」としては、口腔及び咽頭(唇、舌、唾液腺、口腔底部、歯肉及び他の口、鼻咽頭、扁桃腺、中咽頭、下咽頭、他の口/咽頭)のがん;消化器系(食道;胃;小腸;結腸及び直腸;肛門、肛門管及び肛門直腸;肝臓;肝内胆管;胆嚢;他の胆管;膵臓;後腹膜;腹膜、網及び腸間膜;他の消化器)のがん;呼吸器系(鼻腔、中耳及び洞;喉頭;肺及び気管支;胸膜;気管、縦隔及び他の呼吸器)のがん;中皮腫;骨及び関節;並びに心臓を含む軟組織のがん;黒色腫及び他の非上皮性皮膚がんを含む皮膚がん;カポジ肉腫及び乳がん;女性生殖器系(子宮頸;子宮体;子宮、卵巣;腟;外陰部;及び他の女性生殖器)のがん;男性生殖器系(前立腺;精巣;陰茎;及び他の男性生殖器)のがん;泌尿系(膀胱;腎臓及び腎盂;尿管;並びに他の泌尿器)のがん;眼及び眼窩のがん;脳及び神経系(脳;及び他の神経系)のがん;内分泌系(甲状腺、及び胸腺を含む他の内分泌腺)のがん;リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、並びに白血病(リンパ球性白血病;骨髄性白血病;単球性白血病;及び他の白血病)を含む部位によって分類されたものが挙げられる。
【0042】
本出願による治療用組成物のための好適な標的でありうる組織型によって分類される他のがんとしては、限定されるものではないが、悪性の新生物;癌腫、他に特定されない(NOS);未分化型の癌腫、NOS;巨細胞及び紡錘細胞癌;小細胞癌、NOS;乳頭癌、NOS;扁平上皮癌、NOS;リンパ上皮癌;基底細胞癌、NOS;ピロマトリックス癌;移行上皮癌、NOS;乳頭移行上皮癌;腺癌、NOS;悪性のガストリノーマ;胆管細胞癌;肝細胞癌、NOS;混合型肝細胞癌及び胆管細胞癌;小柱状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;家族性大腸ポリポーシスの腺癌;固形癌腫、NOS;悪性のカルチノイド腫瘍;細気管支肺胞上皮腺癌;乳頭腺癌、NOS;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌、NOS;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌、NOS;乳頭及び濾胞状腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌(Endometroid carcinoma);皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌、NOS;乳頭状嚢胞腺癌、NOS;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌、NOS;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性腺管癌;髄様癌、NOS;小葉癌;炎症性乳癌;乳房のパジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性の胸腺腫;悪性の卵巣間質性腫瘍;悪性の莢膜細胞腫;悪性の顆粒膜細胞腫;悪性のセルトリ間質細胞腫瘍;セルトリ細胞癌;悪性のライディッヒ細胞腫;悪性の脂質細胞腫瘍;悪性の傍神経節腫;悪性の乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫、NOS;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性の青色母斑;肉腫、NOS;線維肉腫、NOS;悪性の線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫、NOS;平滑筋肉腫、NOS;横紋筋肉腫、NOS;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫、NOS;悪性の混合腫瘍、NOS;ミュラー混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫、NOS;悪性の間葉腫;悪性のブレンナー腫瘍;悪性の葉状腫瘍;滑膜肉腫、NOS;悪性の中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫、NOS;悪性の奇形腫、NOS;悪性の卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性の中腎腫;血管肉腫;悪性の血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性の血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫、NOS;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫、NOS;悪性の軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性の歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性のエナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性の松果体腫;脊索腫;悪性の神経膠腫;上衣腫、NOS;星状細胞腫、NOS;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫、NOS;乏突起神経膠腫、NOS;乏突起膠腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫、NOS;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫、NOS;網膜芽細胞腫、NOS;嗅神経原性腫瘍;悪性の髄膜腫;神経線維肉腫;悪性の神経鞘腫;悪性の顆粒細胞腫;悪性リンパ腫、NOS;ホジキン病、NOS;ホジキン;側肉芽腫、NOS;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性の大細胞悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫、NOS;菌状息肉腫;他の特異的非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病、NOS;リンパ性白血病、NOS;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病、NOS;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病、NOS;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;並びにヘアリー細胞白血病が挙げられる。
【0043】
「有効量」は、本明細書において使用される場合、限定されるものではないが、体重減少、痛み、又は触診可能な塊として臨床的に又は様々な画像手段により放射線学的に検出可能な腫瘍量を含む、がんの症状及び徴候を低減するために十分な改変T細胞又は医薬組成物の用量を指す。
【0044】
ある特定の実施形態において、腫瘍若しくはがん病変のサイズを限定、低減又は回復することが望ましい。投与の経路は、当然ながら標的にされる病変又は部位の場所及び性質により変わり、例えば、局部、非経口、静脈内、筋肉内及び/又は全身の投与並びに製剤を含む。直接注射、又は器官若しくは組織への及びそこからの並びにその内部の脈管構造若しくは血管への注射は、標的領域について具体的に企図される。局所、局部又は全身投与も適切でありうる。
【0045】
本明細書の開示において、FACS/フローサイトメトリー分析を使用する細胞表面抗原の発現レベル又は表面密度をTable 1(表1)に定義する。Table 1(表1)における様々な発現レベルについての解釈は、細胞表面抗原の発現レベルを定義する例である。フローサイトメトリーのシグナルレベルの強度が、以下の因子:フローサイトメトリー、ソフトウェア及び使用される抗体の異なるバッチにより変わることに留意すべきである。
【0046】
【表1】
【0047】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参考文献が提示される文章及び/又は段落に関する教示についてそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0048】
改変T細胞
天然に存在するT細胞又は従来のT細胞は、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2Hi表現型を有する。1つの実施形態において、天然に存在するT細胞又は従来のT細胞は、Table 2(表2)において説明されるように、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4DimCXCR3Hi表現型を有する。
【0049】
1つの実施形態において、本出願は、Table 2(表2)において説明されるように、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCXCR4Hiの細胞表現型を含む改変T細胞を提供する。好ましくは、改変T細胞は、CD69DimCD11cHiCXCR3Dimの表現型を更に含むことができる。好ましくは、改変T細胞は、IFN-γHiの表現型を更に含むことができる。本出願の改変T細胞は、天然に存在しない。改変T細胞は、細胞死滅機能及び抗原提示機能の両方、並びに増強された抗がん活性を持つ。
【0050】
【表2】
【0051】
ケモカイン受容体は、細胞の移動を刺激するそれらの能力について最も良く知られている。免疫細胞は、ケモカイン間受容体相互作用によって腫瘍に動員された。ケモカイン受容体の中で、CXCR4は、骨髄における形質細胞の正常な蓄積のために必要であり、マウスにおいてBMへの全てのCD8 T細胞サブセットのホーミングのために非常に重要である。以前の研究によれば、Vδ2 T細胞は、CXCR3HiCXCR4Dimであるが、Vδ1は、大部分がCXCR4+である。
【0052】
1つの実施形態において、細胞表面抗原の発現レベル又は表面密度は、改変T細胞を蛍光色素がタグ化された特異的抗ヒトモノクローナル抗体(例えば、CD86-PE(Beckman Coulter社;カタログ番号IM2729U))に曝露し、それに続いてフローサイトメーター(例えば、Navios、Beckman Coulter, Inc.社、米国から商業的に入手可能)を使用して改変T細胞を分類することによって定量化される。
【0053】
改変T細胞は、単一の個体から、例えば、自己又は同種異系で作成することができる。
【0054】
医薬組成物
1つの実施形態において、本出願は、本明細書に記載される改変T細胞、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0055】
本出願は、がん細胞を阻害するのに有効な量で、本改変T細胞又は本医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することによるがん細胞を阻害する方法も提供する。任意の特定の理論によって拘束されないが、改変T細胞は、細胞傷害性を増強し、がん特異的Tリンパ球増殖を刺激するT細胞/抗原提示細胞機能の1つ又は複数によってがん細胞を阻害すると考えられる。
【0056】
本医薬組成物又は改変T細胞の投与の経路としては、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮下、経口、局所的、皮内、経皮、皮下、非経口、直腸、脊髄、又は表皮投与が挙げられる。1つの実施形態において、改変T細胞は、静脈内注射又は注入によって投与される。
【0057】
本出願の医薬組成物は、液状の溶液若しくは懸濁液のいずれかで注射可能として、又は注射の前に液状媒体中の溶液若しくは懸濁液に好適な固形形態として調製することができる。
【0058】
本改変T細胞は、哺乳動物対象への送達のために医薬組成物に製剤化される。医薬組成物は、単独で、及び/又は薬学的に許容される媒体、賦形剤若しくは担体と混合して投与される。好適な媒体は、例えば、食塩水(例えば、生理食塩水)、デキストロース、グリセロール、多血小板血漿(PRP)等、及びそれらの組合せである。加えて、媒体は、小量の補助物質、例えば、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤又はアジュバントを含有することができる。薬学的に許容される担体は、本出願の医薬組成物の吸収若しくはクリアランス速度を、例えば、安定化、又は増加若しくは減少するように作用する生理学的に許容される化合物を含有することができる。生理学的に許容される化合物としては、例えば、グルコース、スクロース若しくはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオン等の抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、界面活性剤、リポソーム担体、又は賦形剤、或いは他の安定剤及び/若しくは緩衝剤を挙げることができる。他の生理学的に許容される化合物としては、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は保存剤が挙げられる。例えば、Remington's Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company社、Easton、Paの第21版(「Remington's」)を参照されたい。本出願の医薬組成物は、付属物質、例えば、薬理学的作用物質、サイトカイン、又は他の生体応答修飾物質を含むこともできる。
【0059】
そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であり、又は当業者に明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company社、Easton、Pennsylvania、第21版を参照されたい。
【0060】
改変T細胞又は本医薬組成物が予防的目的又は治癒的目的等のために使用されるかにかかわらず、改変T細胞又は本医薬組成物は、対象の年齢、体重及び状態、使用される特定の組成物、並びに投与の経路に対して適切なスケジュール及び所定期間にわたって、単一用量処置又は複数用量処置で投与することができる。例えば、1つの実施形態において、本出願による改変T細胞又は医薬組成物は、1か月に1回、1か月に2回、1か月に3回、1週間おき(qow)、1週間に1回(qw)、1週間に2回(biw)、1週間に3回(tiw)、1週間に4回(qiw)、1週間に5回、1週間に6回、1日おき(qod)、毎日(qd)、1日に2回(bid)、1日に3回(tid)、又は1日に4回(qid)投与される。
【0061】
本出願による改変T細胞又は医薬組成物の処置の期間、例えば、改変T細胞又は医薬組成物が投与される期間は、各種の因子、例えば、対象の応答等のいずれかに応じて変わりうる。例えば、改変T細胞又は医薬組成物は、約1秒若しくはそれよりも長く~1分若しくはそれよりも長く、1時間若しくはそれよりも長く~1日~約1週間、約2週間~約4週間、約1か月~約2か月、約2か月~約4か月、約4か月~約6か月、約6か月~約8か月、約8か月~約1年、約1年~約2年、又は約2年~約4年の範囲の期間、或いはそれよりも長くにわたって投与することができる。
【0062】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態の非経口医薬組成物又は改変T細胞に製剤化することが有利である。投薬単位形態は、本明細書において使用される場合、処置される対象に対する単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された改変T細胞の所定量を含有する。
【0063】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を処方するのに使用することができる。1つの実施形態において、そのようなT細胞の投薬量は、毒性がほとんどないか又はないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与の経路に応じて、この範囲内で変わりうる。別の実施形態において、治療有効用量は、細胞培養アッセイから、最初に推定することができる。用量は、細胞培養において決定されるように、IC50(即ち、症状の最大阻害の半分を達成する改変T細胞の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方することができる。Sonderstrup、Springer、Sem. Immunopathol. 25巻:35~45頁、2003年。Nikulaら、Inhal. Toxicol. 4(12j:123~53頁、2000年。
【0064】
医薬組成物は、有効量の本改変T細胞を含有するように製剤化され、ここで、量は、処置される動物及び処置される状態に依存する。任意の特定の対象のための具体的な用量レベルは、具体的な改変T細胞の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の回数、投与の経路、及び排出の速度、薬物の組合せ、並びに治療を受けている特定の疾患の重症度を含む各種の因子に依存する。本出願の改変T細胞の治療的又は予防的に有効な量の例示的な非限定的な範囲は、少なくとも用量あたり約l×103個細胞~用量あたり約l×109個細胞である。限定されるものではないが、用量あたり1×104、1×105、1×106、1×107、1×108又は1×109個細胞を含む他の投薬量も可能である。
【0065】
改変T細胞又は医薬組成物は、単独で、或いは別の治療剤、例えば、化学療法、放射線療法若しくは標的化療法、又はがんワクチンと組み合わせて投与することができる。
【0066】
改変T細胞を同定及び培養する方法
1つの実施形態において、始原T細胞を同定し、改変T細胞を培養する方法は、図11において図示される。簡潔には、方法は、少なくとも、(a)単核細胞を含む体液を得る工程;(b)単核細胞を、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触させて、第1の培養細胞集団を得る工程;(c)第1の培養細胞集団を、IL-2を含む第1の培養培地と接触させて、第2の培養細胞集団を得る工程;並びに(d)第2の培養細胞集団を、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触させて、第3の培養細胞集団を得る工程を含む。
【0067】
IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地の培養時間は、改変T細胞の機能のために重要でありうる。実施形態において、細胞を、1~12日間、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12日間、IL-2及びIL-12、例えば、ヒトIL-2及びヒトIL-12とともに培養して、改変T細胞を作成することができる。実施形態において、3、6、9又は12日間、IL-2及びIL-12とともに培養された細胞は、類似の細胞収率及び表現型パターンを有する改変T細胞を生じる。別の実施形態において、例えば6日のIL-12の曝露は、IL-12に曝露されていない細胞と比較して、培養細胞における細胞傷害性及び抗原提示細胞活性を増大させた。
【0068】
1つの実施形態において、細胞を培養するための組成物は、IL-18を更に含む。1つの実施形態において、IL-18の有効濃度は、約1~300ng/mL、例えば、50、100、150、200、250、300ng/mL等である。別の実施形態において、IL-18の有効濃度は、約1.5~約135ng/mL、例えば、1.5、3、6、15、45若しくは135ng/mL、又は10ng/mLの増分でそれらの間の任意の値若しくは値の範囲(例えば、約30ng/mL、約220ng/mL等)である。
【0069】
別の実施形態において、IL-18を含む第3の培養培地は、改変T細胞の表現型パターン及び機能活性に対する効果を減らす。長期間のIL-18曝露は、細胞サイズ、表現型及び機能活性に対する逆の効果を有する場合がある。実施形態において、単核細胞を、1~12日間、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12日間、IL-18、例えば、ヒトIL-18とともに培養して、改変T細胞を作成することができる。実施形態において、3、6、9又は12日間、IL-18とともに培養された単核細胞は、様々な表現型を有する改変T細胞を生じる。別の実施形態において、例えば3日のIL-18の適正な曝露は、IL-18曝露なしの細胞と比較して、改変T細胞の細胞サイズ、表現型及び機能に対する効果を有する場合がある。
【0070】
1つの実施形態において、CD3+単核細胞の高度に精製された画分は、例えばIL-2及び/又はIL-12を含む培養組成物と接触する、本開示の方法において使用することができる。別の実施形態において、CD3+単核細胞は、工程(a)の後に単離し、造血細胞培地(例えば、AIM-V)、IL-2、IL-12及び血清タンパク質(例えば、ヒト血小板溶解物)から実質的になる組成物と混合することができる。更に別の実施形態において、CD3+単核細胞は、工程(a)の後に単離し、AIM-V、IL-2、IL-12及びヒト血小板溶解物から実質的になる組成物と混合することができる。
【0071】
1つの実施形態において、細胞は、IL-2、IL-12及び/又はIL-18を含む培養組成物と接触する。別の実施形態において、第3の培養細胞集団は、造血細胞培地(例えば、AIM-V)、IL-2、IL-12、IL-18及び血清タンパク質(例えば、ヒト血小板溶解物)から実質的になる組成物と混合することができる。更に別の実施形態において、第3の培養細胞集団は、AIM-V、IL-2、IL-12、IL-18及びヒト血小板溶解物から実質的になる組成物と混合することができる。
【0072】
別の実施形態において、組成物は、造血細胞培地を更に含む。造血細胞培地の非限定的な例としては、X-vivo 10、X-vivo 15、X-vivo 20(Lonza社、スイスから商業的に入手可能)、及びAIM-V(ThermoFisher Scientific社、米国から商業的に入手可能)が挙げられる。
【0073】
更に別の実施形態において、組成物は、血清タンパク質、例えば、ヒト血小板溶解物を更に含む。本出願において、「血清タンパク質」は、輸送及び細胞活性の調節を含む多くの異なる機能を果たす血液又は血漿中に存在するタンパク質である。血清タンパク質の非限定的な例としては、酵素、補体成分、プロテアーゼ阻害剤、キニン前駆体、血清アルブミン、グロブリン、及びフィブリノーゲン等が挙げられる。
【0074】
細胞を培養するための組成物の非限定的な例としては、(a)造血細胞培地+IL-2+IL-18;(b)造血細胞培地+IL-2+IL-12;(c)造血細胞培地+IL-2+IL-12+IL-18;(d)X-vivo 20+IL-2+IL-18;(e)X-vivo 20+IL-2+IL-12;(f)X-vivo 20+IL-2+IL-12+IL-18;(g)AIM-V+IL-2+IL-18;(h)AIM-V+IL-2+IL-12;(i)AIM-V+IL-2+IL-12+IL-18;(j)造血細胞培地+IL-2+IL-18+血清タンパク質;(k)造血細胞培地+IL-2+IL-12+血清タンパク質;(l)造血細胞培地+IL-2+IL-12+IL-18+血清タンパク質;(m)X-vivo 20+IL-2+IL-18+血清タンパク質;(n)X-vivo 20+IL-2+IL-12+血清タンパク質;(o)X-vivo 20+IL-2+IL-12+IL-18+血清タンパク質;(p)AIM-V+IL-2+IL-18+血清タンパク質;(q)AIM-V+IL-2+IL-12+血清タンパク質;及び(r)AIM-V+IL-2+IL-12+IL-18+血清タンパク質が挙げられる。
【0075】
1つの実施形態において、組成物は、5%のCO2の存在下で37℃での改変T細胞の培養のために使用される。
【0076】
本出願のいくつかの実施形態による培養培地は、改変T細胞の増殖を増強する。1つの実施形態において、培養培地は、CXCR4細胞表面抗原の発現を実質的に増強する。1つの実施形態において、培養培地は、改変T細胞において、CD11c及びCXCR4細胞表面抗原の発現を実質的に増強し、CXCR3細胞表面抗原の発現を低減する。別の実施形態において、培養培地は、改変T細胞において、CD69、CD11c、CXCR4細胞表面抗原の発現を増強し、CXCR3細胞表面抗原の発現を低減する。改変T細胞の増殖速度は、FACSによるCD3+細胞の純度及び生存含有量によって決定された。細胞増殖についての他のアッセイ、例えば、クローン原性アッセイ、代謝アッセイ、及び直接増殖アッセイは、当技術分野において周知である。
【0077】
CD3+単核細胞及び誘導性培養培地の接触時間についての例示的な非限定的な範囲は、約1分~約1時間、約1時間~約24時間、約1日~約3日、約1日~約6日、約1日~約9日、約1日~約12日、約3日~約6日、約3日~約9日、約3日~約12日、約6日~約9日、約6日~約12日、又は少なくとも1日である。1つの実施形態において、接触時間は、約3日である。別の実施形態において、接触時間は、約6日である。
【0078】
第1の培養細胞集団及び第1の培養培地の接触時間についての例示的な非限定的な範囲は、約1分~約1時間、約1時間~約24時間、約1日~約3日、約1日~約6日、約1日~約9日、約1日~約12日、約3日~約6日、約3日~約9日、約3日~約12日、約6日~約9日、約6日~約12日、又は少なくとも1日である。1つの実施形態において、接触時間は、約3日である。別の実施形態において、接触時間は、約6日である。
【0079】
第2の培養細胞集団及び第2の培養培地の接触時間についての例示的な非限定的な範囲は、約1分~約1時間、約1時間~約24時間、約1日~約3日、約1日~約6日、約1日~約9日、約1日~約12日、約3日~約6日、約3日~約9日、約3日~約12日、約6日~約9日、約6日~約12日、又は少なくとも1日である。1つの実施形態において、接触時間は、約3日である。別の実施形態において、接触時間は、約6日である。
【0080】
第3の培養細胞集団及び第3の培養培地の接触時間についての例示的な非限定的な範囲は、約1分~約1時間、約1時間~約24時間、約1日~約3日、約1日~約6日、約1日~約9日、約1日~約12日、約3日~約6日、約3日~約9日、約3日~約12日、約6日~約9日、約6日~約12日、又は少なくとも1日である。1つの実施形態において、接触時間は、約3日である。別の実施形態において、接触時間は、約6日である。
【0081】
1つの実施形態において、単核細胞は、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触し、続いてIL-2を含む第1の培養培地と接触する。1つの実施形態において、単核細胞は、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触し、IL-2を含む第1の培養培地と接触し、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触する。1つの実施形態において、単核細胞は、IL-2及びゾレドロン酸を含む誘導性培養培地と接触し、IL-2を含む第1の培養培地と接触し、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と接触し、IL-2、IL-12及びIL-18を含む第3の培養培地と接触する。別の実施形態において、誘導性培養培地、第1の培養培地及び第2の培養培地は、造血細胞培地、例えば、AIM-V若しくはX-vivo、及び/又は血清タンパク質、例えば、ヒト血小板溶解物を更に含む。
【0082】
本発明を行うための具体的な態様の以下の実施例は、実例の目的のみのために提供されており、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例0083】
(実施例1)
IL-12の添加は、改変T細胞の表現型及び機能発達において主要な役割を果たす
単核細胞を3つの群において培養した(図1)。群Nにおいて、単核細胞を、60ng/mLのヒト組換えIL-2(hIL-2)、2%(v/v)のヒト血小板溶解物(HPL)及び5μMのゾレドロン酸の存在下、AIM-V培地中で3日間培養した。その後、細胞を、3日ごとに、120ng/mLのhIL-2及び4%(v/v)のHPLの存在下、AIM-V培地中で継代し、15日目に回収した。群Aにおいて、単核細胞を、60ng/mLのhIL-2、2%(v/v)のHPL及び5μMのゾレドロン酸の存在下、AIM-V培地中で3日間培養した。その後、細胞を、3日目及び6日目に120ng/mLのhIL-2及び4%(v/v)のHPLの存在下、AIM-V培地中で継代し、9日目及び12日目に120ng/mLのhIL-2、4%(v/v)のHPL及び8ng/mLのヒト組換えIL-12(hIL-12)の存在下、AIM-V培地中で継代し、15日目に回収した。群Bにおいて、単核細胞を、60ng/mLのhIL-2、2%(v/v)のHPL及び5μMのゾレドロン酸の存在下、AIM-V培地中で3日間培養した。その後、細胞を、3日目及び6日目に120ng/mLのhIL-2及び4%(v/v)のHPLの存在下、AIM-V培地中で継代し、9日目及び12日目に120ng/mLのhIL-2、4%(v/v)のHPL及び45ng/mLのヒト組換えIL-18(hIL-18)の存在下、AIM-V培地中で継代し、15日目に回収した。
【0084】
それぞれの群における細胞数を、トリパンブルー色素排除を使用することによって計数した。更には、その後、細胞を、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3のモノクローナル抗体(mAb)で染色した。試料を、取得し、Naviosフローサイトメーターにより分析した一方で、データ分析は、Kaluzaソフトウェア(Beckman Coulter社)により行った。
【0085】
細胞計数データによれば、群A及び群Bの細胞数は、群Nより少なく、培養培地へのIL-12又はIL-18の添加が細胞収率の喪失を引き起こすことを示す(データは示さない)。加えて、γδT細胞を導くIL-2+IL-12又はIL-2+IL-18の使用は、IL-2単独と比較して、細胞純度に対して影響を及ぼさなかった(図3図4)。γδT細胞を導くIL-2+IL-12の使用は、IL-2単独と比較して、より高い、CD11c及びCXCR4等の表面マーカー、強度及びCXCR3の下方調節を表し得る(図2図3)。しかしながら、サイトカインIL-2+IL-18の使用は、IL-2単独と比較して、有意差がなかった(図2及び図4)。言い換えれば、IL-2+IL-12群の使用は、IL-2単独よりも、CD69、CD11c及びCXCR4における表面マーカー発現、並びにCXCR3における下方調節においてより良好な性能を有する(図2及び図4)。
【0086】
他方で、機能性アッセイを行って、細胞傷害性及び抗原提示活性も評価した。改変T細胞の細胞傷害性の評価を、PanToxiluxキット(OncoImmunin, Inc.社)によって行った。ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株のK562は、標的細胞としての役割を果たし、最適な濃度下のTFL4で50分間染色した。TFL4標識化標的細胞及び培養細胞とカスパーゼ基質との共培養は、37℃で20分である。細胞を、回収し、フローサイトメトリーによりTFL-4+基質+のシグナルを分析した。培養細胞の抗原提示の活性の評価を混合リンパ球反応(MLR)によって行った。レスポンダー細胞(CD25- PBMC)を富化し、CellTrace(商標)Violetcell増殖キット(Invitrogen社)で染色した。CellTrace Violet標識化CD25- PBMC及び改変T細胞の共培養は、37℃で5日間である。細胞を、回収し、フローサイトメトリーによりCellTrace Violet希釈パターンを分析した。図5に示される結果によれば、IL-2+IL-12の使用は、IL-2単独及びIL-2+IL-18と比較して、改変T細胞の死滅活性を促進するであろう。加えて、IL-2+IL-12は、IL-2単独と比較して、改変T細胞のIFN-γの発現(図9)及び抗原提示活性(図10)も促進するであろう。
【0087】
要約すれば、9日目のIL-12の添加は、細胞収率及び死滅活性の間のバランスを達成することができる。しかしながら、群Bは、IL-2単独と比較して、細胞マーカー発現、及び更に死滅活性の喪失において差がない。そのため、群A、即ち、IL-2+IL-12を、γδTを新しい細胞型に促進するのに選択した。
【0088】
(実施例2)
後段階におけるIL-18の添加は、改変T細胞の表現型及び機能発達において主要な役割を果たす
単核細胞を2つの群において培養した。群Aにおいて(図1)、単核細胞を、60ng/mLのhIL-2、2%(v/v)のHPL及び5μMのゾレドロン酸の存在下、AIM-V培地中で3日間培養した。その後、細胞を、3日目及び6日目に120ng/mLのhIL-2及び4%(v/v)のHPLの存在下、AIM-V培地中で継代し、9日目及び12日目に120ng/mLのhIL-2、4%(v/v)のHPL及び2ng/mLのhIL-12の存在下、AIM-V培地中で継代し、15日目に回収した。群Cにおいて(図6)、0日目、3日目、6日目及び9日目における単核細胞の処理は、群Aにおける処理と同じであった。しかしながら、群Cにおける細胞は、12日目に120ng/mLのhIL-2、4%(v/v)のHPL、2ng/mLのhIL-12及び135、45又は15ng/mLのヒト組換えIL-18(hIL-18)の存在下、AIM-V培地中で継代し、15日目に回収した。培養細胞を、トリパンブルー色素排除を使用することによって計数し、CD69、CD11c、CXCR4及びCXCR3のmAbで染色した。試料を、取得し、Naviosフローサイトメーターにより分析した一方で、データ分析は、Kaluzaソフトウェア(Beckman Coulter社)により行った。
【0089】
細胞計数データによれば(Table 3(表3))、群Cの細胞数における倍数変化は、群Aより少なく、12日目における培養培地へのIL-18の更なる添加が細胞収率の喪失を引き起こすことを示す。しかしながら、IL-2+IL-12+IL-18を含む培地は、IL-2+IL-12を含む培地と比較して、細胞純度に対する著しい効果がなかった(データは示さない)。12日目におけるγδT細胞を導くIL-2+IL-12+IL-18の使用は、一般に、IL-2+IL-12と比較して、CD69、CXCR4及びCXCR3等の表面マーカーのより高い正味の平均蛍光強度(MFI)を表し得る(図7A図7C及びTable 4(表4))。また、IFN-γ産生も、IL-2単独及びIL-2+IL-12と比較して、増強された(図9)。しかしながら、IL-2+IL-12+IL-18群における死滅活性及び抗原提示細胞(APC)活性は、IL-2+IL-12と比較して、有意差がなかった(図5図8図10)。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
結果として、細胞収率の結果を考慮して、12日目におけるIL-18の添加は、IFN-γ産生及び細胞マーカー発現に対する追加の効果を提供する。しかしながら、IL-2+IL-12群よりも、IL-2+IL-12+IL-18群における死滅活性及びAPC活性の差はないか、それよりも更に良好であるように見える。
【0093】
(実施例3)
始原細胞の調製
40mLの末梢血を、健康なボランティアから、K2EDTAを含有する真空管に収集した。血液試料を、等体積の事前に温めたリン酸緩衝食塩水(PBS)(Biological Industries社、イスラエル)と混合した。40mLの希釈された末梢血アリコートを、50mLの遠心分離管に入れ、10mLの事前に温めたFicoll-Paque(商標)PREMIUMを加えた。遠心分離管を、930×g、室温で30分間遠心分離した。界面層の単核細胞を収集し、PBSで1回洗浄した。単核細胞を、ヒト血小板溶解物及びサイトカインカクテルの存在下、AIM-Vとともに培養した。
【0094】
(実施例4)
改変T細胞の培養
実施例3からの単核細胞を、以下の通り培養した。
(a)l×l06/mLの単核細胞を、0日目に、AIM-V培地、HPL(濃度:2%v/v)、IL-2(濃度:60ng/mL)及びゾレドロン酸(濃度:5μM)を含む誘導性培養培地と接触させる。
(b)誘導性培養培地を、3日目に、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)及びIL-2(濃度:120ng/mL)を含む第1の培養培地と交換し、6日目に、回収し、細胞の半分を遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL及びIL-2を含む第1の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(c)9日目及び12日目に、工程(b)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)、IL-2(濃度:120ng/mL)及びIL-12(濃度:2ng/mL)を含む第2の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(d)15日目に、工程(c)の培養細胞の全てを収集する。
【0095】
任意選択で、細胞を培養するための培養培地を、3日目及び12日目に、同じ構成成分を有する新鮮な培地と交換することができる。例えば、始原細胞は、以下の通り培養することができる。
(a)l×l06/mLの単核細胞を、0日目に、AIM-V培地、HPL(濃度:2%v/v)、IL-2(濃度:60ng/mL)及びゾレドロン酸(濃度:5μM)を含む誘導性培養培地と接触させる。
(b)3日目に、工程(a)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)及びIL-2(濃度:120ng/mL)を含む第1の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(c)培地を、6日目に、AIM-V培地、HPL及びIL-2を含む第1の培養培地と交換する。
(d)9日目に、工程(c)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)、IL-2(濃度:120ng/mL)及びIL-12(濃度:2ng/mL)を含む第2の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(e)培地を、12日目に、AIM-V培地、HPL、IL-2及びIL-12を含む第2の培養培地と交換する。
(f)15日目に、工程(e)の培養細胞の全てを収集する。
【0096】
或いは、第2の培養培地を、12日目において、第3の培養培地に変更してもよい。例えば、始原細胞は、以下の通り培養することができる。
(a)l×l06/mLの単核細胞を、0日目に、AIM-V培地、HPL(濃度:2%v/v)、IL-2(濃度:60ng/mL)及びゾレドロン酸(濃度:5μM)を含む誘導性培養培地と接触させる。
(b)3日目及び6日目に、工程(a)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)及びIL-2(濃度:120ng/mL)を含む第1の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(c)9日目に、工程(b)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)、IL-2(濃度:120ng/mL)及びIL-12(濃度:2ng/mL)を含む第2の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(d)12日目に、工程(c)の細胞の半分を回収及び遠沈し、続いて細胞ペレットを、AIM-V培地、HPL(濃度:4%v/v)、IL-2(濃度:120ng/mL)、IL-12(濃度:2ng/mL)及びIL-18(濃度:45ng/mL)を含む第3の培養培地で2×l06/mL細胞に再懸濁させる。
(e)15日目に、工程(d)の培養細胞の全てを収集する。
【0097】
前の段落の工程(e)の培養細胞を、それらの表現型について、Naviosフローサイトメーター(10 COLORS/3 LASERS、シリアル番号:AW40325、Beckman Coulter, Inc.社、米国)、Kazulaソフトウェアバージョン2.1(Beckman Coulter, Inc.社、米国)及びTable 5(表5)にリストされた抗体を使用してアッセイした。
【0098】
実施形態において、3日目、6日目、9日目又は12日目に、細胞を新しい培地で継代することができる。別の実施形態において、3日目、6日目、9日目又は12日目に、細胞は継代されない。代わりに、培地を、示されるように、新鮮な培地と交換する。
【0099】
【表5A】
【0100】
【表5B】
【0101】
【表5C】
【0102】
結果:図3及び図7に示されるように、得られた改変T細胞は、CD3HiTCRγ9HiTCRδ2HiCD69DimCD11cHiCXCR4HiCXCR3Dimの表現型に関するT及びDCを有する。
【0103】
(実施例5)
T細胞の機能性の決定
「死滅」アッセイ
実施例4からの改変T細胞の細胞傷害性の評価を、PanToxiluxキット(OncoImmunin, Inc.社)によって行った。ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株のK562は、標的細胞としての役割を果たし、最適な濃度下のTFL4で50分間染色した。TFL4標識化標的細胞及び改変T細胞とカスパーゼ基質との共培養は、37℃で20分である。細胞を、回収し、フローサイトメトリーによりTFL4+基質+のシグナルを分析した。カスパーゼに対する陽性細胞は、死滅を示す。
【0104】
結果:図5及び図8に示されるように、カスパーゼ陽性標的細胞(改変T細胞なし)のパーセンテージは、0.60%であったが、カスパーゼ陽性標的細胞(改変T細胞あり)のパーセンテージは、IL-2+IL-12及びIL-2+IL-12+様々な用量のIL-18の群において25%より高かった。この結果は、本開示の改変T細胞が、白血病標的細胞K562に対する細胞傷害効果を有し、その効果が、IL-2のみの群と比較して増強されたことを示す。
【0105】
抗原提示活性のアッセイ
実施例4からの改変T細胞の抗原提示の活性の評価を混合リンパ球反応(MLR)によって行った。レスポンダー細胞(CD25- PBMC)を富化し、CellTrace(商標)Violet cell増殖キット(Invitrogen社)で染色した。CellTrace Violet標識化CD25- PBMC及び改変T細胞の共培養は、37℃で5日間である。hIL-2及びhIL-15を、1日目及び3日目に添加して、TCR会合の閾値を低減させた。次いで、細胞を、回収し、フローサイトメトリーによりCellTrace Violet希釈パターンを分析した。
【0106】
結果:図10に示されるように、IL-2のみの群においてレスポンダー細胞の14.44%が、フローサイトメトリーにより同定されるように、分裂していた。しかしながら、細胞の28.56%より多くが、実施例4からの改変T細胞の存在下で分裂していた。この結果は、改変T細胞が、CD25- PBMCレスポンダー細胞に対する抗原提示活性を有することを示す。
【0107】
本発明の具体的な態様を、記載及び説明したが、そのような態様は、単に本発明の実例であって、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるように本発明を限定するものではないと見なされるべきである。本明細書に引用された全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、全ての目的で参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたかのように、全ての目的でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。前述の発明は、理解の明確さの目的で実例及び実施例により幾らか詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明の教示を考慮してある特定の変更及び改変をそれらに行うことができることは、当業者に容易に明らかであろう。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7A-1】
図7A-2】
図7B-1】
図7B-2】
図7C-1】
図7C-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
【外国語明細書】