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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063294
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】外傷の方法および治療
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20230427BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20230427BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A01N1/02
A61K35/14
A61P9/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P11/00
A61P17/02
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023015530
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2019563864の分割
【原出願日】2018-05-18
(31)【優先権主張番号】62/508,783
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507318956
【氏名又は名称】ヘマネクスト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ダナム アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達郎
(57)【要約】
【課題】出血性ショックまたは出血性外傷を元に戻すための方法の提供。
【解決手段】出血性ショックまたは出血性外傷を元に戻すための方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低平均動脈圧の治療を必要とする対象における低平均動脈圧を治療するための方法であって、出血性外傷に起因する低平均動脈圧を有する対象に、酸素低減保存血液を供給することを含み、
前記酸素低減血液が、20%以下の初期酸素飽和度を有し、保存期間の間20%以下の酸素飽和度にて維持される、前記方法。
【請求項2】
前記治療を必要とする前記対象における前記平均動脈圧が、前記供給後、従来型の保存血液を受けた患者との対比で増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出血性外傷が、手術、穿通性創傷、鈍器外傷、転倒からの傷害、及び自動車事故による傷害からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療を必要とする前記対象における前記平均動脈圧の増加の速度が、前記酸素低減保存血液を受けていない対象における平均動脈圧増加の速度よりも速い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療を必要とする前記対象における前記平均動脈圧が、前記供給後、従来型の保存血液を輸血した患者の平均動脈圧との対比で少なくとも20%増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象における前記平均動脈圧が、前記供給後少なくとも1時間の間、少なくとも20%の前記増加が保たれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
輸血を必要とする外傷患者における輸血に必要な血液量を低減するための方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項8】
出血性ショックの低減を必要とする外傷患者における出血性ショックを低減するための方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含み、前記外傷患者が前記供給前に0.5~2.5mmol/Lの間の乳酸レベルを備え、前記出血性ショックが元に戻る、前記方法。
【請求項9】
輸血療法を必要とする外傷患者における肝臓傷害を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記外傷患者が、前記供給後、ASTレベル、ALTレベル、またはこれらの組合せの改善を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
輸血療法を必要とする外傷患者における腎不全を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記外傷患者が、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、血清クレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、またはこれらの組合せから選択されるレベルの改善を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
輸血療法を必要とする外傷患者における肺傷害を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項14】
乳酸の低減を必要とする外傷患者における乳酸を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項15】
ASTの低減を必要とする外傷患者におけるASTを低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項16】
ALTの低減を必要とする外傷患者におけるALTを低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項17】
BUNの低減を必要とする外傷患者におけるBUNを低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項18】
好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)の低減を必要とする外傷患者における好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを低減する法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項19】
血清クレアチニンの低減を必要とする外傷患者における血清クレアチニンを低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、前記方法。
【請求項20】
低平均動脈圧の治療用途のために保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を製造するための、ドナー血液の使用。
【請求項21】
出血性外傷患者における有害事象を低減する治療用途のために保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を製造するための、ドナー血液の使用であって、前記有害事象が、肝臓傷害、肺不全、腎不全、及び心不全からなる群より選択される、ドナー血液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月19日出願の米国仮出願第62/508,783号の優先権を主張し、当該出願の全体は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
政府の権利
本発明は、国立心肺血液研究所により認可されたR44HL132172の下、米国政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本開示は、外傷及び出血性ショックの治療に関する。
【背景技術】
【0004】
傷害による死亡は2010年において510万件あり、これはHIV、結核、及びマラリアによる死亡を合わせた数(380万件)を上回る。Norton,et al.,“Global Health Injuries”(The NEJM,368:1723-30(2013))(「Norton 2013」)を参照(この全体が参照により本明細書に援用される)。傷害としては、意図的でない傷害(例えば、交通事故、転倒、及び熱傷)、ならびに意図的な傷害(例えば、自傷、対人暴力、戦争、及び紛争)が挙げられる。Norton 2013を参照。傷害による死亡件数は、全世界では1990~2010年の間に24%増加し、米国では2000年~2010年の間に23%増加した。Norton 2013を参照。加えて、全ての外傷死のうちの少なくとも20%は生存可能な傷害の結果であり、そのためこのような外傷死は最適なケアによって予防可能である。Fox et al.,“Earlier Endpoints are Required for Hemorrhagic Shock Trials Among Severely Injured Patients.”Shock,47:567-73(2017)(この全体が参照により本明細書に援用される)。予防可能な死亡のパーセンテージからすれば、死につながる回避可能な合併症に対する療法の開発が急務である。
【0005】
穿通性創傷(例えば、銃創または刺創)及び鈍的外傷(例えば、転倒または自動車事故の外傷)は、出血性外傷の主原因である。もたらされるショックは、大量の出血から組織への酸素補給が不十分な状態であり、これは酸素負債、嫌気的代謝、及び血漿乳酸レベルの増大を引き起こす。循環及び酸素送達の回復によってショックを元に戻すことができないと、恒久的な組織損傷、多臓器不全、及び死がもたらされ得る。
【0006】
出血性外傷及びショックの臨床的続発症としては、外傷から数時間以内の失血による死、ならびに外傷及び大量輸血による病的状態から24時間後の死が挙げられる。このような病的状態としては、多臓器不全(急性外傷性凝固障害または炎症からの肺、腎臓、肝臓の不全を含む)、及び輸血関連免疫修飾からの感染/敗血症が挙げられる。いずれの病的状態も、輸血する血液製剤の品質が低いほど、そして輸血するpRBCの量が多いほど増強される。
【0007】
出血性ショックを治療するための1つのアプローチは、蘇生のためのクリスタロイドの使用である。しかし、クリスタロイドの使用は、外傷誘導性凝固障害を引き起こすことによって、病的状態及び死の増加をもたらす。少なくともこの理由により、出血性外傷により引き起こされたショックを元に戻すための血液構成成分の早期投与が主張されている。濃縮赤血球(pRBC)は、喪失した血液量の回復、患者における酸素運搬能の回復、及び嫌気的代謝からの組織における酸化的代謝の回復のために、出血性外傷患者に輸血する。しかし、pRBCの使用は、抗原ミスマッチ、病原体伝播、循環過負荷、及びex vivo保存中のpRBCの分解を含めた合併症のリスクを伴わないわけではない。
【0008】
保存血液は、従来的に保存した場合、様々な保存変質(storage lesion)(特に、溶血、ヘモグロビン分解、及びATP及び2,3-DPG濃度の低減を含む)に結びつく着実な劣化を経る。保存中におけるこの着実な劣化の影響は、患者に輸血すると、例えば、24時間in vivo回収率の低減として現れる。24時間回収率の低減に起因するヘマトクリットの急速な低下は、重症の場合、遅発性溶血性輸血反応(DHTR)をもたらし得る。その他の合併症、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS)、輸血関連急性肺傷害(TRALI)、及び輸血関連免疫修飾(TRIM)は、保存血液の輸血に結びついているが、根底にある原因特定は依然明らかではない。
【0009】
保存RBCは、現状の6週間の限度内に輸血する場合であっても、より低い品質(例えば、除去されるRBC画分の増加、酸素交換能の減退、変形能の低減)や、しばしば輸血療法の臨床的続発症として現れる毒性増加を示す。この見解を支持する文献中の論文は多数あり、かつ増加の一途にある。以下を参照:Zimring,“Established and theoretical factors to consider in assessing the red cell storage lesion,”Blood,125:2185-90(2015);Zhu et al.,“Impaired adenosine-5’-triphosphate release from red blood cells promotes their adhesion to endothelial cells:a mechanism of hypoxemia after transfusion,”Critical care medicine,39:2478-86(2011);Weinberg et al.,“Red blood cell age and potentiation of transfusion-related pathology in trauma patients,”Transfusion,51:867-73(2011); Spinella et al.,“Does the storage duration of blood products affect outcomes in critically ill patients?”Transfusion 51:1644-50(2011);Roback et al.,“Insufficient nitric oxide bioavailability:a hypothesis to explain adverse effects of red blood cell transfusion,”Transfusion,51:859-66(2011);Reynolds et al.,“The transfusion problem:role of aberrant S-nitrosylation,”Transfusion,51:852-8(2011);Kim-Shapiro et al.,“Storage lesion:role of red blood cell breakdown,”Transfusion,51:844-51(2011);Jy et al.,“Microparticles in stored red blood cells as potential mediators of transfusion complications,”Transfusion,51:886-93(2011);Hod et al.,“Transfusion of human volunteers with older,stored red blood cells produces extravascular hemolysis and circulating non-transferrin-bound iron,”Blood,118:6675-82(2011); Flegel et al.,“Does prolonged storage of red blood cells cause harm?”British journal of haematology 165:3-16(2014);Redlin et al.,“Red blood cell storage duration is associated with various clinical outcomes in pediatric cardiac surgery,”Transfusion medicine and hemotherapy:offizielles Organ der Deutschen Gesellschaft fur Transfusionsmedizin und Immunhamatologie 41:146-51(2014);Rogers et al.,“Storage duration of red blood cell transfusion and Clostridium difficile infection:a within person comparison,”PLoS One 9:e89332(2014); Spinella et al.,“Properties of stored red blood cells:understanding immune and vascular reactivity,”Transfusion 51:894-900(2011);Brown et al.,“Length of red cell unit storage and risk for delirium after cardiac surgery,”Anesth Analg,119:242-50(2014);Wang et al.,“Transfusion of older stored blood worsens outcomes in canines depending on the presence and severity of pneumonia,”Transfusion,54:1712-24(2014);Liu et al.,“Mechanism of faster NO scavenging by older stored red blood cells,”Redox biology,2:211-9(2014);Prestia et al.,“Transfusion of stored blood impairs host defenses against Gram-negative pathogens in mice,”Transfusion 54:2842-51(2014);D’Alessandro et al.,“An update on red blood cell storage lesions,as gleaned through biochemistry and omics technologies,”Transfusion,55:205-19(2015)(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。広範なin vitro研究からは、従来的な保存中のRBCの分解(保存変質)が明白に示されている。台頭しつつある一連のメタボローム研究からは、分子レベルでの保存変質の発生が示されている。以下を参照:Roback et al.,“Metabolomics of AS-1 RBCs Storage,”Transfusion medicine reviews(2014);D’Alessandro et al.,“Metabolomics of AS-5 RBCs supernatants following routine storage,”Vox sanguinis(2014);D’Alessandro et al.,“Routine storage of red blood cell(RBC) units in additive solution-3:a comprehensive investigation of the RBC metabolome,”Transfusion 55:1155-68(2015);D’Alessandro et al.,“Red blood cell storage in additive solution-7 preserves energy and redox metabolism: a metabolomics approach,”Transfusion(2015);Wither et al.,“Hemoglobin oxidation at functional amino acid residues during routine storage of red blood cells,”Transfusion(2015);D’Alessandro et al.,“Citrate metabolism in red blood cells stored in additive solution-3,”Transfusion(2016);D’Alessandro et al.,“Omics markers of the red cell storage lesion and metabolic linkage,”Blood Transfus,15:137-44(2017)(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。この分解を低減または予防して、輸血の効果を増大させ(輸血直後より多くのO2を末梢組織に送達する)、かつ出血性外傷による死を低減する必要性が存在する。
【0010】
酸化的損傷は、従来型の保存血液において多くのRBC保存変質やその下流事象を引き起こすことから、酸化的ストレスの程度を低減してRBC保存変質を低減する方法が必要とされる。保存変質の最小化及び輸血転帰の改善を目的とする複数のアプローチが開発されている。アプローチとしては、添加溶液(例えば、Hamasaki et al.に対する米国特許第4,769,318号、及びSasakawa et al.に対する米国特許第4,880,786号、Hess et al.に対する米国特許第6,447,987号)、冷凍保存(Serebrennikovに対する米国特許第6,413,713号、Chaplin et al.,“Blood Cells for Transfusion,”Blood,59:1118-20(1982)、及びValeri et al.,“The survival,function,and hemolysis of human RBCs stored at 4 degrees C in additive solution(AS-1,AS-3,or AS-5) for 42 days and then biochemically modified,frozen,thawed,washed,and stored at 4 degrees C in sodium chloride and glucose solution for 24 hours,”Transfusion,40:1341-5(2000)を参照)が挙げられる(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。
【0011】
首尾よく血液品質を改善しその実用性を広げることが判明している1つのアプローチは、酸素の枯渇化及び嫌気的条件下における保管を通じたものである。酸素枯渇条件下で血液を保存する利点に含まれるものとして、ATP及び2,3-DPGのレベルの改善、ならびに溶血の低減がある。Bitensky et al.に対する米国特許第5,624,794号、Bitensky et al.に対する米国特許第6,162,396号、及びBitenskyに対する米国特許第5,476,764号(これらの全体が参照により本明細書に援用される)は、酸素枯渇条件下における赤血球の保存を対象とする。Bitensky et al.に対する米国特許第5,789,151号は、血液保存添加溶液を対象とする(この全体が参照により本明細書に援用される)。Bitensky et al.に対する米国特許第6,162,396号(’396特許)(この全体が参照により本明細書に援用される)は、酸素不透過性の外層と、酸素に対し透過性である赤血球(RBC)適合性の内層とを備え、内層と外層との間に配置された酸素スクラバーを有する、血液保存用の嫌気的保存バッグを開示している。
【0012】
また、酸素枯渇条件下での血液の保存は、従来の条件下で保存された血液と比べた場合における微粒子レベルの低減、変形性喪失の低減、脂質及びタンパク質の酸化の低減、ならびに輸血後生存率の上昇ももたらし得る。Yoshida et al.,“The effects of additive solution pH and metabolic rejuvenation on anaerobic storage of red cells,”Transfusion 48:2096-2105(2008)及びYoshida,T.,et al.“Reduction of microparticle generation during anaerobic storage of red blood cells.Transfusion”,52,83A(2012)を参照(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。嫌気的保存RBCは、さらに、自家輸血後の24時間in vivo回収率の上昇、2,3-DPG及びATPレベルの上昇、溶血の低下、ならびに代謝経路における有益な再形成をもたらす。Reisz et al.“Oxidative modifications of glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase regulate metabolic reprogramming of stored red blood cells,”Blood,128:e32-42(2016);及びYoshida et al.,“Extended storage of red blood cells under anaerobic conditions,”Vox sanguinis 92:22-31(2007)を参照(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。
【0013】
本開示において、発明者らは、過去にヒト血液を用いて実証されたように、ラットからの酸素低減(OR)または酸素及び二酸化炭素低減(OCR)血液が、従来型の保存血液に比べて、保存中におけるATP及び2,3-DPGの改善をもたらすことを実証する。したがって、ORまたはOCRラットRBCは、同様に微粒子を低減し、変形性を改善し、脂質及びタンパク質の酸化を低減し、輸血後の生存率を上昇させると予測される。
【0014】
本明細書において、発明者らは初めて、ラットにおいて、OR及びOCR血液が、出血性外傷を治療するために輸血した場合に、驚くべき臨床転帰の改善を提供することを実証する。発明者らは、ラット出血性ショック蘇生モデルを使用して、ORまたはOCR RBCが、従来型の保存血液との対比で臓器損傷の低減を提供することを示す。加えて、ORまたはOCR RBCは、より少ないpRBC量を用いてショック状態を元に戻すことを提供する。最終的に、ORまたはOCR RBCは、出血性ショックを治療するために輸血した場合に、同じ保存期間の従来型の保存pRBCに比べて、より迅速に血行動態を安定化させた。
【0015】
OR及びOCR RBCは、失血をもたらす外傷の治療のための改善された方法を提供して、従来型の保存血液よりも死亡率及び病的状態を低減する。OR及びOCR RBCは、肺損傷及び肝損傷のマーカーレベルの低減を含めた臓器不全の低減を提供する。OR及びOCR RBCは、さらに、血行動態機能の回復及び安定化に必要な血液の量の低減を提供する。したがって、OR及びOCR RBCは、出血性外傷を治療する場合の輸血療法に必要なRBCの量の低減を提供し得る。OR及びOCRの品質改善は、過去に実証された保存RBCにおける酸素送達能力に対する改善に加えて、外傷に関連する臓器損傷、病的状態、死亡率における予想外の低減も提供する。
【発明の概要】
【0016】
本開示は、低平均動脈圧の治療を必要とする対象における低平均動脈圧を治療するための方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含み、当該治療を必要とする対象に当該酸素低減血液を供給した後に、当該治療を必要とする対象における平均動脈圧が増加し、当該低平均動脈圧が出血性外傷によるものである、方法を提供し、これを含む。
【0017】
本開示は、輸血を必要とする外傷患者における輸血に必要な血液量を低減するための方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、方法を提供し、これを含む。
【0018】
本開示は、出血性ショックの低減を必要とする外傷患者における出血性ショックを低減するための方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含み、当該外傷患者が当該供給前に1リットル当たり0.5~2.5ミリモル(mmol/L)の間の乳酸レベルを備え、当該出血性ショックが元に戻る、方法を提供し、これを含む。
【0019】
本開示は、輸血療法を必要とする外傷患者における肝傷害を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、方法を提供し、これを含む。
【0020】
本開示は、輸血療法を必要とする出血性外傷患者における腎不全を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、方法を提供し、これを含む。
【0021】
本開示は、輸血療法を必要とする出血性外傷患者における肺傷害を低減する方法であって、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減血液を供給することを含む、方法を提供し、これを含む。
【0022】
本開示は、添付の図面を参照しながら提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、従来型の保存RBC(未処理;対照)、シャム対照(SC)、酸素低減RBC(N2;OR)、ならびに酸素及び二酸化炭素低減RBC(CO2;OCR)におけるATPレベルを比較している。
図2】本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、従来型の保存RBC(未処理;対照)、シャム対照(SC)、酸素低減RBC(N2;OR)、ならびに酸素及び二酸化炭素低減RBC(CO2;OCR)における2,3-DPGレベルを比較している。
図3】本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、動物に輸血した対照、シャム、OR RBC、及びOCR RBCの回収率パーセントの比較を示している。
図4A図4Aおよび図4Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図4A)または3週間(図4B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるヘマトクリットパーセントの比較を示している。BL(ベースライン)は、ショック状態下にない動物を特定する。ショックは、出血性ショック下にある動物を特定する。早期Rは、10分の蘇生期間を特定する。後期Rは、60分の蘇生期間を特定する。
図4B】同上。
図5A図5Aおよび図5Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図5A)または3週間(図5B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における平均動脈圧(MAP)の比較を示している。BL(ベースライン)は、ショック状態下にない動物を特定する。ショックは、出血性ショック下にある動物を特定する。早期Rは、10分の蘇生期間を特定する。後期Rは、60分の蘇生期間を特定する。
図5B】同上。
図6A図6Aおよび図6Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、10、20、30、45、及び60分後の蘇生中の動物に供給した血液量パーセントの比較を示している。1週間(図6A)または3週間(図6B)保管した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCが比較されている。
図6B】同上。
図7A図7Aおよび図7Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図7A)または3週間(図7B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における乳酸の量の比較を示している。BL(ベースライン)は、ショック状態下にない動物を特定する。ショックは、出血性ショック下にある動物を特定する。早期Rは、10分の蘇生期間を特定する。後期Rは、60分の蘇生期間を特定する。
図7B】同上。
図8A図8Aおよび図8Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図8A)または3週間(図8B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるグルコースの量の比較を示している。BL(ベースライン)は、ショック状態下にない動物を特定する。ショックは、出血性ショック下にある動物を特定する。早期Rは、10分の蘇生期間を特定する。後期Rは、60分の蘇生期間を特定する。
図8B】同上。
図9A図9Aおよび図9Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図9A)または3週間(図9B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるASTの量の比較を示している。
図9B】同上。
図10A図10Aおよび図10Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図10A)または3週間(図10B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるALTの量の比較を示している。
図10B】同上。
図11A図11Aおよび図11Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図11A)または3週間(図11B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における血清クレアチニンの量の比較を示している。
図11B】同上。
図12A図12Aおよび図12Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図12A)または3週間(図12B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における血中尿素窒素(BUN)の量の比較を示している。
図12B】同上。
図13A図13Aおよび図13Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図13A)または3週間(図13B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物の肝臓におけるCXCL1の量の比較を示している。
図13B】同上。
図14A図14Aおよび図14Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図14A)または3週間(図14B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物の脾臓におけるCXCL1の量の比較を示している。
図14B】同上。
図15A図15Aおよび図15Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図15A)または3週間(図15B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物の肺におけるCXCL1の量の比較を示している。
図15B】同上。
図16A図16Aおよび図16Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図16A)または3週間(図16B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)の量の比較を示している。
図16B】同上。
図17A図17Aおよび図17Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図17A)または3週間(図17B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるCD45+好中球のパーセンテージの比較を示している。
図17B】同上。
図18A図18Aおよび図18Bは、本開示による例示的な実施形態の結果を提示するグラフであり、1週間(図18A)または3週間(図18B)保存した対照、OR-RBC、及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物におけるIL-6の量の比較を示している。
図18B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で示されている実施例は、本開示におけるいくつかの実施形態を例示しているが、いかなる方式においても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本開示の方法は、出血性外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを提供し、これを含む。また、方法は、出血性外傷患者に、保存前及び保存中に15~20%の間の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。また、方法は、出血性外傷患者に、保存前及び保存中に10~15%の間の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。また、方法は、出血性外傷患者に、保存前及び保存中に5~10%の間の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。また、方法は、出血性外傷患者に、保存前及び保存中に3~5%の間の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。
【0026】
また、方法は、出血性ショックを有する者に対する輸血のための保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。また、方法は、出血性外傷を有する者に対する輸血のための保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することも提供する。また、手術によって外傷のリスクが増加している患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を輸血することを含む方法も含まれる。20%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給する方法は、10%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む。20%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給する方法は、さらに、5%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む。20%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給する方法は、さらに、3%以下の初期酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む。
【0027】
本開示の方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間における保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する、供給することを提供し、これを含む。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に15%以下の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に10%以下の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。方法は、さらに、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に5%以下の酸素飽和度を有する、供給することを提供する。方法は、さらに、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に3%以下の酸素飽和度を有する、供給することを提供する。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に3~5%の間の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に5~10%の間の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に10~15%の間の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。また、方法は、外傷の治療のための酸素低減保存血液を供給することであって、当該酸素低減保存血液が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間の保存期間後に15~20%の間の酸素飽和度を有する、供給することも提供する。
【0028】
本開示の方法は、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを提供し、これを含む。一態様において、外傷患者は、頭部外傷、穿通性創傷、鈍器外傷、転倒による傷害、または自動車事故による傷害を患っている。別の態様において、外傷患者は、出血性外傷患者である。また別の態様において、外傷患者は、手術、穿通性創傷、鈍器外傷、転倒による傷害、または自動車事故による傷害によって出血している。
【0029】
本開示の一態様において、外傷患者または出血性外傷患者は、OR及びOCR保存血液を必要とする対象である。本開示の態様において、外傷患者は、輸血療法としての1単位以上の血液を必要とする出血性外傷患者である。本開示の態様において、外傷患者は、輸血療法としての2単位以上の血液を必要とする出血性外傷患者である。本開示の態様において、外傷患者は、輸血療法としての3単位以上の血液を必要とする出血性外傷患者である。
【0030】
本開示の一態様において、外傷患者は、出血性ショック状態にある患者である。一態様において、外傷患者は、頭部外傷、穿通性創傷、鈍器外傷、転倒からの傷害、または自動車事故からの傷害による出血性ショック状態にある。本開示の態様において、出血性外傷患者は、クラスI出血の患者である。別の態様において、出血性外傷患者は、クラスII出血の患者である。別の態様において、出血性外傷患者は、クラスIII出血の患者である。別の態様において、出血性外傷患者は、クラスIV出血の患者である。本開示の一態様において、出血性外傷患者は、最大15%の血液量を喪失する。別の態様において、出血性外傷患者は、15~30%の間の血液量を喪失する。別の態様において、出血性外傷患者は、30~40%の間の血液量を喪失する。別の態様において、出血性外傷患者は、血液量の40%超を喪失する。
【0031】
本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、平均動脈圧の低下、ヘマトクリットの低下、乳酸の増加、グルコースの増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)の増加、血清クレアチニンの増加、及び血中尿素窒素の増加からなる群より選択される1つ以上の徴候を示すことを提供し、これを含む。本開示の一態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、平均動脈圧が低下した出血性外傷患者である。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、平均動脈圧の低下及び乳酸の増加を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加、及び血中尿素窒素の増加を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加、血清クレアチニンの増加、及び血中尿素窒素の増加を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、乳酸の増加及びグルコースの増加を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)の増加、血清クレアチニンの増加、及び血中尿素窒素の増加を示すことを提供し、これを含む。
【0032】
別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、ヘマトクリットが低下した出血性外傷患者である。別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、乳酸が増加した出血性外傷患者である。また別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、グルコースが増加した出血性外傷患者である。さらなる態様において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が増加した出血性外傷患者。別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が増加した出血性外傷患者である。別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)が増加した出血性外傷患者である。別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、血清クレアチニンが増加した出血性外傷患者である。別の態様において、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者は、血中尿素窒素が増加した出血性外傷患者である。
【0033】
本開示の一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者の輸血療法で使用するためのOR及びOCR保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有する。別の態様において、OR及びOCR保存血液は、10%以下の初期酸素飽和度を有する。別の態様において、OR及びOCR保存血液は、5%以下の初期酸素飽和度を有する。別の態様において、OR及びOCR保存血液は、3%以下の初期酸素飽和度を有する。
【0034】
本開示の一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者の輸血療法で使用するためのOCR保存血液は、10~40mmHgの間の初期pCO2(37℃時)を有する。別の態様において、OCR保存血液は、10~30mmHgの間の初期pCO2を有する。別の態様において、OCR保存血液は、10~20mmHgの間の初期pCO2を有する。別の態様において、OCR保存血液は、10~15mmHgの間の初期pCO2を有する。また別の態様において、OCR保存血液は、10mmHg未満の初期pCO2を有する。
【0035】
本開示の一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者の輸血療法で使用するためのOR及びOCR保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、2日未満の間保存される。一態様において、OR及びOCR保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、7日未満の間保存される。別の態様において、OR及びOCR保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、14日未満の間保存される。別の態様において、酸素低減保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、21日未満の間保存される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者の輸血で使用するための酸素低減保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、28日未満の間保存される。別の態様において、酸素低減保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、35日未満の間保存される。別の態様において、酸素低減保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、42日未満の間保存される。別の態様において、酸素低減保存血液は、20%以下の初期酸素飽和度を有し、45日未満の間保存される。本開示の一態様において、OR及びOCR保存血液は、保存中に20%以下の酸素飽和度を有する。
【0036】
本開示における輸血療法を必要とする外傷患者の輸血療法で使用するための方法で使用するための好適な血液は、抗凝血剤を有する酸素低減保存血液を含む。本開示の一態様において、酸素低減赤血球は、酸素低減保存血液を生成するために最大3週間の間保存される。別の態様において、酸素低減保存血液は、通常、添加溶液をさらに含む。本開示における好適な添加溶液としては、AS-1、AS-3 (Nutricel(登録商標))、AS-5、SAGM、PAGG-SM、PAGG-GM、MAP、AS-7、ESOL-5、EAS61、OFAS1、OFAS3、及びこれらの組合せが挙げられる。一態様において、添加溶液は、構成成分の分離時に添加される。一態様において、添加溶液は、AS-1である。別の態様において、添加溶液は、AS-3である。他の態様において、添加溶液は、SAGMである。
【0037】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における平均動脈圧(MAP)を増加させることであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、増加させることを提供し、これを含む。一態様において、平均動脈圧は、20~60%の間で増加する。別の態様において、平均動脈圧は、30~60%の間で増加する。別の態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、30~50%の間で増加する。また別の態様において、平均動脈圧は、30~60%の間で増加する。さらなる態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、30~40%の間で増加する。一態様において、平均動脈圧は、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の平均動脈圧よりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または90%増加する。
【0038】
本開示の一態様において、平均動脈圧は、少なくとも1.5倍増加する。別の態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、少なくとも2倍増加する。さらなる態様において、平均動脈圧は、1~2倍の間で増加する。本開示の一態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、少なくとも10mmHg、少なくとも20mmHg、少なくとも30mmHg、少なくとも40mmHg、少なくとも50mmHg、または少なくとも60mmHg増加する。別の態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、20~50mmHgの間で増加する。さらなる態様において、平均動脈圧は、30~50mmHgの間で増加する。
【0039】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における平均動脈圧を70~110mmHgの間に増加させることであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、増加させることを提供し、これを含む。別の態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、少なくとも70mmHgに増加する。別の態様において、ORまたはOCR血液の輸血療法を受ける外傷患者の平均動脈圧は、少なくとも80mmHgに増加する。また別の態様において、平均動脈圧は、少なくとも90mmHgに増加する。さらなる態様において、平均動脈圧は、少なくとも100mmHgに増加する。本開示の一態様において、それを必要とする対象における平均動脈圧は、輸血後少なくとも1時間の間、70~110mmHgの間に保たれる。別の態様において、平均動脈圧は、輸血後少なくとも2時間の間、70~110mmHgの間に保たれる。また別の態様において、平均動脈圧は、輸血後少なくとも3時間の間、70~105mmHgの間に保たれる。別の態様において、平均動脈圧は、輸血後少なくとも4時間の間、70~110mmHgの間に保たれる。別の態様において、平均動脈圧は、輸血後少なくとも5時間の間、70~110mmHgの間に保たれる。
【0040】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における平均動脈圧を、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の平均動脈圧よりも速い速度で増加させることであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、増加させることを提供し、これを含む。一態様において、ORまたはOCR血液を用いて輸血した患者の平均動脈圧は、従来型の保存血液と比べた場合の半分の時間で正常な生理的パラメーター内に回復する。
【0041】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における輸血に必要とされる保存血液の量を低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも10~90%の間少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも10~30%の間少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも20~50%の間少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも20~80%の間少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも30~80%の間少ない。また別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも40~85%の間少ない。さらなる態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも50~90%の間少ない。
【0042】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における輸血に必要とされる保存血液の量を少なくとも10%低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも20%少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも30%少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも40%少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも50%少ない。また別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも60%少ない。別の態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも少なくとも70%少ない。さらなる態様において、輸血に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも約10~20%、約20~30%、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80%~90%、または約90~95%の間少ない。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における輸血療法に必要とされるOR保存血液の量は、必要とされる従来型の保存血液の量よりも10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80%~90%、または90~95%の間少ない。
【0043】
乳酸クリアランスは、出血性ショックからの蘇生のためのバイオマーカーである。以下を参照:Hashmi et al.,“Predictors of mortality in geriatric trauma patients:a systematic review and meta-analysis,”The journal of trauma and acute care surgery,76:894-901(2014);Regnier et al.,“Prognostic significance of blood lactate and lactate clearance in trauma patients,”Anesthesiology,117:1276-88(2012);及びZhang et al.,“Lactate clearance is a useful biomarker for the prediction of all-cause mortality in critically ill patients:a systematic review and meta-analysis,”Critical care medicine,42:2118-25(2014)(「Zhang 2014」)(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。乳酸クリアランスの臨床値は、敗血症性ショックの患者や明らかな循環性ショックを伴わない重篤状態の患者の転帰を予測するのに有用である。乳酸の上昇は有害な臨床転帰の指標であり、乳酸の迅速なクリアランスは雑多なICUまたはED患者集団における転帰改善に広く結びついている。Zhang 2014を参照。OR-RBCを用いて蘇生された動物における、従来型のRBCと比べての乳酸レベルの低下は、OR RBCを用いた蘇生が患者の臨床転帰を著しく改善し得るという考えを支持するものである。図7A及び7Bを参照。
【0044】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減(OR)保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、乳酸レベルは、10~90%の間で低減される。一態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを10~50%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを20~40%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを50~90%の間で低減する。また別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを60~90%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、または80~90%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを少なくとも10%低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを少なくとも20%低減する。さらなる態様において、OR保存血液を用いた輸血は、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルを少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90%低減する。
【0045】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における上昇した乳酸レベルを約0.5~約2.5mmol/Lの間に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約0.9~約2mmol/Lの間に低減される。一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約0.9~約1.7mmol/Lの間に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする患者における乳酸レベルは、約1.4~約2.4mmol/Lの間に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約1.7~約2.5mmol/Lの間に低減される。また別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約2.5mmol/L未満に低減される。さらなる態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約2.0mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約1.5mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約1.0mmol/L未満に低減される。また別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、約0.5~約1.0mmol/Lの間に低減される。
【0046】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における上昇した乳酸レベルを0.5~2.5mmol/Lの間に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、輸血療法を必要とする患者における乳酸レベルは、0.9~2mmol/Lの間に低減される。一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、0.9~1.7mmol/Lの間に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、1.4~2.4mmol/Lの間に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、1.7~2.5mmol/Lの間に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、0.5~1mmol/Lの間に低減される。
【0047】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする出血性外傷患者における上昇した乳酸レベルを4mmol/L未満に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、3mmol/L未満に低減される。また別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、2.5mmol/L未満に低減される。別の態様において、患者における乳酸レベルは、2.3mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、2mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、2mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、1.5mmol/L未満に低減される。別の態様において、輸血療法を必要とする外傷患者における乳酸レベルは、1mmol/L未満に低減される。
【0048】
血中グルコースレベルは、いくつかの疾患パターン、特に外傷患者における転帰に対する予測因子であることも知られている。外傷患者は、高血糖が原因で、他の重篤状態の患者よりも転帰不良に陥りやすい。Kreutziger et al.,“Admission blood glucose predicted hemorrhagic shock in multiple trauma patients,”Injury,46:15-20(2015)を参照(この全体が参照により本明細書に援用される)。早期高血糖と外傷患者との関係を評価する研究では、考えられる3つのカットオフ:グルコース>110mg/dL、グルコース>150mg/dL、及びグルコース>200mg/dLにおいて早期高血糖が検証された。Laird et al.,“Relationship of early hyperglycemia to mortality in trauma patients,”J Trauma,56:1058-62(2004)を参照(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。グルコースレベル>200mg/dLは、傷害特性にかかわらず、外傷患者における著しく高い感染率及び死亡率に結びついている。これは、110mg/dLまたは150mg/dLのカットオフにおいては該当しなかった。OR及びOR-RBCを用いて蘇生された動物における、従来型のRBCを用いた場合と比べてのグルコースレベルの低下は、OR -RBCを用いた蘇生が患者の臨床転帰を著しく改善し得るという考えを支持するものである。図8A及び8Bを参照。
【0049】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるグルコースを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減(OR)保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、グルコースは、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて10~90%の間で低減される。一態様において、OR保存血液を用いた輸血は、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて、グルコースを10~50%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて、グルコースを20~40%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて、グルコースを50~90%の間で低減する。また別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、グルコースを60~90%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて、グルコースを10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、または80~90%の間で低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、従来型の条件下で保存された血液の輸血に比べて、グルコースを少なくとも10%低減する。別の態様において、OR保存血液を用いた輸血は、グルコースを少なくとも20%低減する。さらなる態様において、OR保存血液を用いた輸血は、グルコースを少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90%低減する。
【0050】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるグルコースレベルを約70~約120mg/dLの間に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、約70~約110mg/dLの間である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、約70~約100mg/dLの間である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の外傷患者におけるグルコースは、約90~約120mg/dLの間である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の外傷患者におけるグルコースは、約90~約100mg/dLの間である。
【0051】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるグルコースレベルを70~120mg/dLの間に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、70~110mg/dLの間である。別の態様において、患者におけるグルコースは、70~100mg/dLの間である。別の態様において、患者におけるグルコースは、90~120mg/dLの間である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、90~100mg/dLの間である。
【0052】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるグルコースレベルを120mg/dL未満に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。さらなる態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、110mmol/L未満である。また別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、100mg/dL未満である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、200mg/dL未満である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、90mg/dL未満である。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の患者におけるグルコースは、80mg/dL未満である。
【0053】
本開示の一態様において、外傷患者は、既存状態または基礎状態に基づいた輸血療法からの合併症のリスクが増加している。一態様において、外傷患者は、糖尿病、虚血性心疾患、外傷または感染によってもたらされる全身性炎症症候群、外傷または感染によってもたらされる多臓器不全、煙吸引、慢性閉塞性肺疾患、例えば、感染による全身性炎症、凝固障害、及び自己免疫疾患からなる群より選択される既存または基礎状態を有する。別の態様において、外傷患者は、糖尿病、虚血性心疾患、外傷または感染によってもたらされる全身性炎症症候群、外傷または感染によってもたらされる多臓器不全、煙吸引、及び慢性閉塞性肺疾患、例えば、感染による全身性炎症、凝固障害、及び自己免疫疾患からなる群より選択される1つ以上の既存または基礎状態を有する。別の態様において、外傷患者は、糖尿病、虚血性心疾患、外傷または感染によってもたらされる全身性炎症症候群、外傷または感染によってもたらされる多臓器不全、煙吸引、慢性閉塞性肺疾患、例えば、感染による全身性炎症、凝固障害、及び自己免疫疾患からなる群より選択される2つ以上の既存または基礎状態を有する。別の態様において、外傷患者は、糖尿病、虚血性心疾患、外傷または感染によってもたらされる全身性炎症症候群、外傷または感染によってもたらされる多臓器不全、煙吸引、慢性閉塞性肺疾患、例えば、感染による全身性炎症、凝固障害、及び自己免疫疾患からなる群より選択される3つ以上の既存または基礎状態を有する。
【0054】
患者は、出血性ショック中に、肝損傷もしくは肝不全、腎損傷もしくは腎不全、肺損傷もしくは肺不全、またはこれらの組合せを含めた有害事象を経験する。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、肝損傷もしくは肝不全、腎損傷もしくは腎不全、または肺損傷もしくは肺不全からなる群より選択される1つ以上の有害事象を示すことを提供し、これを含む。本開示は、ORまたはOCR RBCを用いた輸血療法を必要とする患者が、肝損傷もしくは肝不全、腎損傷もしくは腎不全、または肺損傷もしくは肺不全からなる群より選択される2つ以上の有害事象を示すことを提供し、これを含む。
【0055】
本開示の方法は、外傷患者における有害事象を低減することであって、輸血療法を必要とする外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも5%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも10%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも20%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも30%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも40%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも50%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも60%低減される。別の態様において、有害事象は、少なくとも70%低減される。別の態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、少なくとも80%低減される。別の態様において、有害事象は、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血療法後の有害事象は、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。一態様において、ORまたはOCR血液を用いた輸血後の有害事象は、肝傷害または肝損傷である。別の態様において、有害事象は、肺傷害または肺損傷である。また別の態様において、有害事象は、腎傷害または腎損傷である。さらなる態様において、有害事象は、肝傷害、肺傷害、腎傷害、またはこれらの組合せである。
【0056】
肝臓酵素(以下に限定されないが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を含む)のレベル上昇は、何らかの形態の肝臓の損傷、ショック、または傷害を意味する。本開示の方法は、外傷患者における肝臓酵素の上昇したレベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。
【0057】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるASTレベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、ASTレベルは、少なくとも40%低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、ASTレベルは、少なくとも60%低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、ASTレベルは、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0058】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるASTレベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、ASTレベルは、3~4倍の間で低減される。別の態様において、ASTレベルは、4~10倍の間で低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、ASTレベルは、2~5倍の間で低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、10~50倍の間で低減される。
【0059】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるASTレベルを少なくとも1.5倍低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、ASTレベルは、少なくとも6倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、少なくとも8倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。さらなる態様において、ASTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも50倍低減される。
【0060】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるALTレベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のAS ALT Tレベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、ALTレベルは、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0061】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるALTレベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、4~10倍の間で低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、ALTレベルは、2~5倍の間で低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、10~50倍の間で低減される。
【0062】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるALTレベルを少なくとも1.5倍低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。さらなる態様において、ALTレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のALTレベルとの対比で、少なくとも50倍低減される。
【0063】
出血性外傷の最中及び後における腎機能のマーカーとしては、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)、血清クレアチニン、及び血中尿素窒素(BUN)が挙げられる。Treeprasertsuk et al.,“Urine neutrophil gelatinase-associated lipocalin:a diagnostic and prognostic marker for acute kidney injury(AKI) in hospitalized cirrhotic patients with AKI-prone conditions,”BMC Gastroenterol 15:140(2015)を参照(この全体が参照により本明細書に援用される)。げっ歯類からヒトに至るまでのいくつかの種からのAKIモデルで実施された150超の異なる研究で報告された遺伝子発現解析からは、NGAL遺伝子が、虚血性または腎毒性の発作直後に腎臓中で最も劇的に上方制御されている遺伝子の1つであることが一貫的に明らかになっている。Ciccia et al.,“Pediatric acute kidney injury:prevalence,impact and management challenges,”Int J Nephrol Renovasc Dis,10:77-84(2017)を参照(この全体が参照により本明細書に援用される)。同様に、血清クレアチニンレベルは、年齢、人種、及び身体サイズに応じて変動し得るが、上昇するクレアチニンレベルは腎損傷を示す。女性で1.2超、男性で1.4超のクレアチニンレベルは、腎損傷の早期徴候である可能性がある。血中尿素窒素(BUN)の増加は、腎疾患または腎不全、さらにうっ血性心不全、ショック、及び消化管内の出血を伴って見られる。BUNレベルが100mg/dLより高い場合、重篤な腎損傷を指す。BUNレベル低下も関心事であり、BUNレベル低下は、体液過剰、外傷、手術、オピオイド、栄養不良、及びタンパク同化ステロイド使用を示す可能性がある。Pagana,“Mosby’s Manual of Diagnostic and Laboratory Tests,”St.Louis Mosby,Inc.,(1998);及びGowda,et al.,“Markers of renal function tests,”NAm JMed Sci.2(4):170-173(2010)を参照(これらの全体が参照により本明細書に援用される)。本開示が提供する、OR-及びOCR-RBCを用いて蘇生した動物における、従来型のRBCと比べてのu-NGAL低下(図16A及び16B)、血清クレアチニン(図11A及び11B)、ならびにBUN(図12A及び12B)レベルは、OR-RBCを用いた蘇生が患者の臨床転帰を著しく改善し得ることを示している。
【0064】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)レベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、少なくとも30%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0065】
本開示の方法は、輸血療法を必要をとする外傷患者における尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)レベルを低減することであって、外傷患者に1.5~10倍の間で、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、4~10倍の間で低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、10~50倍の間で低減される。
【0066】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)レベルを低減することであって、外傷患者に少なくとも1.5倍、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のu-NGALレベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、少なくとも9倍低減される。別の態様において、u-NGALレベルは、少なくとも10倍低減される。さらなる態様において、u-NGALレベルは、少なくとも50倍低減される。
【0067】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における血清クレアチニンレベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0068】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における血清クレアチニンレベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、4~10倍の間で低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、10~50倍の間で低減される。
【0069】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における血清クレアチニンレベルを少なくとも1.5倍低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のASTレベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。
【0070】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における血清クレアチニンレベルを0.5~1.5mg/dLの間に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、0.5~1mg/dLに低減される。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、0.8~1mg/dLに低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、0.7~1.5mg/dLの間に低減される。
【0071】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者における血清クレアチニンレベルを1.5mg/dL未満に低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、1.4mg/dL未満に低減される。一態様において、血清クレアチニンレベルは、1mg/dL未満に低減される。別の態様において、血清クレアチニンレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者の血清クレアチニンレベルとの対比で、0.8mg/dL未満に低減される。
【0072】
本開示の方法は、外傷患者におけるBUNレベルを低減することであって、輸血療法を必要とする外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0073】
本開示の方法は、外傷患者におけるBUNレベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、BUNレベルは、3~4倍の間で低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、4~10倍の間で低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、10~100倍の間で低減される。
【0074】
本開示の方法は、外傷患者におけるBUNレベルを少なくとも1.5倍低減することであって、輸血療法を必要とする外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、BUNレベルは、少なくとも6倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、BUNレベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のBUNレベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。
【0075】
本開示の方法は、外傷患者におけるCD45+好中球のパーセンテージを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0076】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるCD45+好中球のパーセンテージを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、4~10倍の間で低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、10~50倍の間で低減される。
【0077】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるCD45+好中球のパーセンテージを少なくとも1.5倍低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、CD45+好中球のパーセンテージは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCD45+好中球レベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。
【0078】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるCXCL1レベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも20%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0079】
本開示の方法は、外傷患者におけるCXCL1レベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、4~10倍の間で低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、10~100倍の間で低減される。
【0080】
本開示の方法は、外傷患者におけるCXCL1レベルを少なくとも1.5倍低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、CXCL1レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のCXCL1レベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。
【0081】
本開示の方法は、輸血療法を必要とする外傷患者におけるIL-6レベルを低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも5%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも10%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、少なくとも20%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも30%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも40%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも50%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも60%低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも70%低減される。また別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも80%低減される。さらなる態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも90%低減される。さらなる態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の間で低減される。
【0082】
本開示の方法は、外傷患者におけるIL-6レベルを1.5~10倍の間で低減することであって、外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、2~3倍の間で低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、3~4倍の間で低減される。別の態様において、IL-6レベルは、4~10倍の間で低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、6~9倍の間で低減される。さらなる態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、2~5倍の間で低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、10~100倍の間で低減される。
【0083】
本開示の方法は、外傷患者におけるIL-6レベルを少なくとも1.5倍低減することであって、輸血療法を必要とする外傷患者に、保存前及び保存中に20%以下の酸素飽和度を有する酸素低減保存血液を供給することを含む、低減することを提供し、これを含む。一態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも2倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも3倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも4倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、少なくとも5倍低減される。さらなる態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも6倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも7倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも8倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも9倍低減される。別の態様において、IL-6レベルは、従来型の保存血液を用いて輸血した患者のIL-6レベルとの対比で、少なくとも10倍低減される。
【0084】
本明細書で使用する場合、「より高い」、「より大きい」、または「増加した」という用語は、酸素低減及び嫌気的保存がなされた血液の測定値が、別の方法で同等に処理された従来型の保存血液の測定値と比べた場合に、比較される各測定条件につき2つ以上のサンプルサイズを伴って、少なくとも1標準偏差大きいことを意味する。
【0085】
本明細書で使用する場合、「低減する」、「低減された」、「より低い」、「低下した」、または「より少ない」という用語は、酸素低減及び嫌気的保存がなされた血液の測定値が、別の方法で同等に処理された正常酸素または高酸素の従来型の保存血液RBCの測定値と比べた場合に、比較される各測定条件につき5つ以上のサンプルサイズを伴って、少なくとも1標準偏差低いことを意味する。
【0086】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は±10%を指す。
【0087】
本明細書で使用する場合、「~より少ない」とは、より小さな量かつ0を超える量を指す。
【0088】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びこれらの活用形は、後に続くものを含むがそれに限定されないことを意味する。
【0089】
「~からなる(consisting of)」という用語は、「後に続くものを含み、それを限定する」ことを意味する。
【0090】
「~から本質的になる」という用語は、組成物、方法、または構造が、追加の成分、ステップ、及び/または部分を含んでもよいが、ただし、その追加の成分、ステップ、及び/または部分が、特許請求される組成物、方法、または構造の基本的及び新規の特性を実質的に改変しない場合に限ることを意味する。
【0091】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その、当該(the)」は、文脈による明確な別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物及びその混合物を含み得る。
【0092】
本明細書で使用する場合、「血液」という用語は、全血、白血球低減RBC、血小板低減RBC、ならびに白血球及び血小板低減RBCを指す。血液という用語は、さらに、濃縮赤血球、血小板低減濃縮赤血球、白血球低減濃縮赤血球、ならびに白血球及び血小板低減濃縮赤血球を含む。血液の温度は、採取プロセスの段階に応じて変動し得、収集時点における正常体温の37℃で開始するが、患者の体外に出ると約30℃まで急速に低下し、さらにその後、処理を行わない場合は約6時間で室温まで低下し、最終的には約4℃~6℃の間にて冷蔵される。in vivoのヒト赤血球は動的状態にある。赤血球は、全身に酸素を運搬し赤い血液に色を付与する鉄含有タンパク質であるヘモグロビンを含有する。赤血球から構成される血液量のパーセンテージは、ヘマトクリットと呼ばれる。本明細書で使用する場合、別途限定されない限り、RBCは濃縮赤血球(pRBC)も含む。濃縮赤血球は、当技術分野で一般的に知られている遠心分離技法を用いて全血から調製される。本明細書で使用する場合、別途指示されない限り、pRBCのヘマトクリットは約70%である。本明細書で使用する場合、酸素低減保存RBCは、酸素及び二酸化炭素低減保存RBCを含み得る。本明細書で使用する場合、酸素低減(OR)血液は、酸素及び二酸化炭素低減(OCR)血液を含み得る。
【0093】
本明細書で使用する場合、「患者」及び「対象」という用語は互換的に使用され、輸血を必要とするヒトまたは動物を意味する。
【0094】
本明細書で使用する場合、「外傷」という用語は、失血、出血性外傷を含む。
【0095】
本明細書で使用する場合、「出血性ショック」という用語は、循環血液量及び/または酸素運搬能の喪失によってもたらされるショックである。出血性ショックは、血液喪失、内出血(例えば、胃腸出血)または外出血、そして中でも外傷(例えば、穿通性外傷もしくは鈍的外傷)に関連する任意の状態に起因する。
【0096】
本明細書で使用する場合、「有害事象」という用語は、出血性外傷患者における出血性ショック起因の事象を含む。
【0097】
本明細書で使用する場合、「傷害」、「損傷」、及び「不全」という用語は、疾患も傷害も伴わないヒトまたは動物における適正に機能していないまたは期待されるように機能していない臓器を指す。
【0098】
本明細書で使用する場合、血液の「単位」は、抗凝固剤を含めて約450~500mlである。好適な凝固剤としては、CPD、CPDA1、ACD、及びACD-Aが挙げられる。
【0099】
本出願の全体において、本開示の様々な態様が範囲の形式で提示され得る。範囲形式での記述は、単に便宜及び簡潔性のためのものであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、考えられ得る全てのサブ範囲に加えて、その範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、「1から6まで」のような範囲の記述は、「1から3まで」、「1から4まで」、「1から5まで」、「2から4まで」、「2から6まで」、「3から6まで」のようなサブ範囲に加えて、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず該当する。
【0100】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、示された範囲内の挙げられる任意の数字(分数も整数も)を含むことを意味する。第1の指示数字~第2の指示数字「の間を範囲とする」及び第1の指示数字「から」第2の指示数字「までを範囲とする」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示数字ならびにこれらの間にある全ての分数及び整数を含むように意図されている。
【0101】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、以下に限定されないが、輸血を必要とするヒト患者に、20%以下の初期酸素飽和度を有し、少なくとも2日間保存された酸素低減保存血液を供給することを含めた、所与の課題を遂行するための方式、手段、技法、及び手順を指す。
【0102】
特定の実施形態を参照しながら本開示を説明してきたが、本開示の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ得、本開示の要素の代わりに等価物が用いられ得ることが、当業者によって理解されるであろう。加えて、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、本開示の範囲を逸脱することなく多くの変更を行うことができる。
【0103】
そのため、本開示が、本開示の実施のために企図される最良の態様として開示されている特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示が、付属する請求項の趣旨及び範囲の中に入る全ての実施形態を含むことが意図されている。
【実施例0104】
実施例1:血液の採取及び試料の調製
各プールの赤血球を、合計12~14匹のラットからCP2D抗凝固剤中に採取する。プールした血液は、新生仔白血球低減フィルターを用いて白血球低減し、構成成分を分離し、RBCをAS-3添加溶液中で保存する。合計で2つのプールのRBCを採取する。各プールを、未処理対照(C)、シャム対照(SC)、酸素低減(OR)、及び酸素及び二酸化炭素低減(OCR)の4通りに分ける。C、SC、OR、及びOCR単位については、RBCサブユニットを80mLのPVC輸血バッグに移行することによって処理し、ガス交換処理によって最終RBC生成物を作製する。C以外のRBCバッグに、無菌フィルターを通じて100%のN2(OR向け)、または95%のN2/5%のCO2(OCR向け)、または空気(SC)を満たし、その長辺上で2~3RPMにて穏やかに回転させる(C以外)。OR及びOCR単位については、10分後にフィルターを通じてガスを除去し、後続のガス交換処理のために新鮮なガスを導入する。ABL-90 COオキシメーター(Radiometer Copenhagen)による測定で5~10%の目標SO2%が達成されるまで、この処理を5~8回繰り返す。SC単位は、60分間いかなるガス交換も伴わずに回転させる。OR及びOCR単位は、N2を満たしたキャニスター内で嫌気的に保存し、一方C及びSC単位は、周囲空気中で保存する。全てのユニットを4℃にて3週間保存し、0または1、7、14、21、及び28日目に試料採取する。2つのプールを調製し保存した。
【0105】
0、1、7、14、21、及び28日目に、ATP、2,3-DPG、及び溶血の解析を実施する。図1に示されているように、ATPレベルは、21日目のOR血液、ならびに7、14、21、及び28日目のOCR血液において、従来型の保存血液(対照)より高い。また、OR血液は、2、7、及び14日目において、対照に比べてより高いレベルの2,3-DPGも有する。また、OCR血液は、2、7、及び14日目において、対照に比べて高いレベルの2,3-DPGも示している。図2を参照。
【0106】
実施例2:酸素低減血液の回収率
3週間保存した少量(200μL未満)の対照、OR、及びOCR血液をテクネチウム99mで標識する。動物に標識RBC(200μL)を輸血し、輸血から24時間後に生存している輸血RBCの割合を推定するため、循環放射活性を定期的に24時間まで測定する。図3に示されているように、RBCを3週間保存した場合に、OR-及びOCR-RBCは、対照RBCに比べて有意に多く回収されている。
【0107】
実施例3:出血性ショック蘇生のラットモデル
血液の採取及び試料の調製:各プールの赤血球を、合計12~14匹のラットからCP2D抗凝固剤中に採取する。プールした血液は、新生仔白血球低減フィルターを用いて白血球低減し、構成成分を分離し、RBCをAS-3添加溶液中で保存する。合計で6つのプールのRBCを採取する。2つのプールは、従来的保存(対照)向けに調製する。2つのプールは酸素を枯渇させ(酸素低減;OR)、残りの2つの血液プールは酸素及び二酸化炭素を枯渇させる(酸素及び二酸化炭素低減;OCR)。低減を行う4つのプールの各々は、RBCを600mLのPVC輸血バッグに移行することによって処理し、ガス交換処理によって最終RBC生成物を作製する。RBCバッグに、無菌フィルターを通じて100%のN2(OR向け)または95%のN2/5%のCO2(OCR向け)を満たし、その長辺上で60~90RPMにて穏やかに回転させる。10分後にフィルターを通じてガスを除去し、後続のガス交換処理のために新鮮なガスを導入する。ABL-90 COオキシメーター(Radiometer Copenhagen)による測定で5~10%の目標SO2%が達成されるまで、この処理を5~8回繰り返す。OR及びOCR血液は、N2を満たしたキャニスター内で嫌気的に保存する。
【0108】
体重150~200グラム(g)のSprague-Dawleyラット(Charles River Laboratories,Boston,MA)で実験を実施する。簡潔に述べると、動物に40mg/kgのペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与することにより、麻酔をかける。動物を、ヒーティングパッド上に仰臥位で配置して、深部体温を37℃に維持する。動物に対し、(i)左頸静脈及び左大腿動脈のカテーテル挿入、(ii)気管切開(ポリエチレン-90チューブ)、ならびに(iii)右頸動脈を介しての左心室(LV)コンダクタンスカテーテルの導入を準備する。動物に対し、室内気を用いた機械的人工呼吸(TOPO人工呼吸器(Kent Scientific,Torrington,CT))を、1分当たり50~70回の呼吸速度及び10~15cmH2Oで行う。計測後、人工呼吸器に接続した気化器を用いて揮発性麻酔(1.5%/volのイソフルラン(Dragerwerk AG,Laubeck,Germany))を投与する。足趾ピンチによって麻酔深度を継続的に検証し、必要に応じ、動物の不快感を予防するためにイソフルランを0.1%/volずつ増加した。
【0109】
麻酔をかけた動物に対し、大腿動脈カテーテルを介して10分以内に動物の血液量の50%を取り出すことによって出血させ、動物を血液量減少ショック状態に置く。血液量減少ショック状態を30分間維持する。事前に保存したRBCを、大腿動脈を介して1分当たり300マイクロリットル(μL/分)にて点滴することにより蘇生を実行し、60分の蘇生期間中に平均動脈圧(MAP)がベースラインの90%で安定化するまで行う。この期間中の10、20、30、45、及び60分時に、大腿動脈カテーテルからMAP及び心拍数(HR)を取得する(PowerLab(AD Instruments,Colorado Springs,CO))。60分後、ヘパリン処置した毛細管の遠心分離を介してヘマトクリット(Hct)を測定する。ヘモグロビン(Hb)、乳酸、グルコース、K+、Na+、pH、動脈血ガスを、ABL90 COオキシメーター(Radiometer,Copenhagen)によって定量する。心機能指数及び全身の値(MAP、HR、Hct、Hb、及び血液ガス)を、ベースライン(BL)、ショック中、及び蘇生後10分(早期R)、20分、30分、45分、60分(後期R)においてモニターする。動物は、実験終了時に安楽死させる。
【0110】
実施例4:出血性ショックのラットモデルにおけるヘマトクリット解析
ヘマトクリット(Hct)は、血液量減少ショックが誘導された後、およそ30~40%低減される。1週間保存した従来型、OR、またはOCR血液を供給することで、ヘマトクリットを正常レベルに回復可能である。図4Aを参照。しかし、図4Bに示されているように、1週間保存したOR血液は、蘇生の10分後(早期R)に、対照及びOCR血液に比べてのヘマトクリットパーセントの増加を示している。OR血液のヘマトクリットパーセントは、蘇生の60分後(後期R)、対照に比べて改善が保たれている。
【0111】
実施例5:酸素低減血液による平均動脈圧の変化
大腿動脈カテーテルから平均動脈圧(MAP)を取得する(PowerLab(AD Instruments,Colorado Springs,CO))。図5Aに示されているように、ベースラインMAPは80~110mmHgの間である。MAPは、出血性ショック中に20~60mmHgの間に低減される。1週間保存したOR及びOCR血液を用いた動物の蘇生により、MAPはそれぞれ、およそ80及び90mmHgに増加する。図5Bに示されているように、OR血液を用いた蘇生は、10分後、対照に比べてMAPを正常範囲に回復することができる。対照及びOCR保存血液は、蘇生の60分後にMAPを正常範囲に回復することができる。従来型の保存RBC(対照)を用いた蘇生及び血行動態の保持に必要な血液の量は、必要なOR及びOCR RBCよりも多かった。図6A及び図6Bを参照。
【0112】
実施例6:出血性ショックに対する代謝反応
動物における出血性ショックは、乳酸レベルを約2mmol/Lから約8~14mmol/Lに増加させる。1週間保存したOR及びOCR RBCを用いた蘇生は、蘇生のちょうど10分後、乳酸を正常レベル付近に低減する。図7Aを参照。対照血液を用いて蘇生した動物の乳酸レベルは、出血性ショック下の動物の乳酸レベルと同様である。対照、OR、及びOCR RBCを用いて60分間処置した動物は、同様の乳酸レベルを示している。図7Bに示されているように、3週間保存したOR RBCも、蘇生の10分後、対照に比べて乳酸レベルを低減することができる。ただし、蘇生の80分後、OCR RBCは乳酸レベルを正常範囲に回復した。対照及びOR RBCは、乳酸レベルを低減することができたが、1から3mmol/Lの正常範囲に低減することはできなかった。グルコースレベルの解析からは、出血性ショック下の動物において、約160mg/dLから約240mg/dLの正常範囲のグルコースが約320から約510mg/dLの範囲に増加することが示されている。図8A及び図8Bを参照。1週間保存したOR及びOCR RBCはいずれも、蘇生の10分後、対照に比べてグルコースレベルを低下させる。3つ全ての試料は、蘇生の60分後にグルコースレベルを正常範囲に回復した。図8Bに示されているように、3週間保存したOR及びOR RBCも、蘇生の10分後、対照に比べてグルコースレベルを低下させることができる。1週間保存したRBCとは異なり、OR及びOCR RBCのみがグルコースを正常範囲内に回復することができた。したがって、乳酸及びグルコースレベルの両方が、OR及びOCR RBCにおいて、対照RBCに比べてより迅速に低減される。
【0113】
実施例7:重要臓器の傷害及び炎症
動物に対し、出血性ショック及び蘇生を経験した後の臓器の傷害及び炎症を解析する。肝臓酵素のレベル上昇は、何らかの形態の肝損傷または肝傷害を示す。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを解析して肝損傷を定量した。事前に1週間保存したOR及びOCR RBC(図9A及び図10A)ならびに3週間保存したOR及びOCR RBC(図9B及び図10B)を用いた蘇生は、同じ時間期間の間保存した対照RBCに比べて、AST及びALTレベルを低減した。血清クレアチニン及び血中尿素窒素(BUN)レベルを解析して腎機能を定量した。1週間保存したOR及びOCR RBCは、対照RBCに比べて30%超血清クレアチニンレベルを低減した(図11A)。3週間の保存後、対照、OR、及びOCR RBCを用いて処置した動物の血清クレアチニンレベルは重なっている(図11B)。BUNレベルは、1週間保存したOCR RBCを用いて処置した動物において、対照に比べて30%超低下している(図12A)。また、BUNレベルは、3週間保存したOR RBCを用いて処置した動物においても、対照に比べて30%超低下している(図12B)。全体的に見て、重要臓器の機能は、対照RBCに比べてOR及びOCR RBCの場合に保持されていた。
【0114】
in vivo試験の完了時に動物から肝臓、脾臓、及び肺を摘出し、CXCL1、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)、IL-6、及び好中球を含めた様々な炎症因子について解析した。CXCL1は、1週間または3週間保存したOR及びOCR RBCを用いて処置した動物において、同じ時間期間の間保存した対照に比べて低減されている(図13A、B、図14A、B、及び図15A、B)。図16A及びBに示されているように、u-NGALは、1週間または3週間保存したOR及びOCR RBCを用いて処置した動物の腎臓において、同等の時間量の間保存した対照RBCに比べて低減されている(図16)。図17及び18に示されているように、動物から摘出した肺におけるCD45+好中球及びIL-6のレベルに関するパーセンテージは、OR及びOCR RBCにおいて、同じ時間期間の間保存した対照RBCに比べて著しく低下している。これらの結果は、臓器の障害及び炎症は、OR及びOCR RBCを用いて処置した動物において、対照RBCを用いて処置した動物に比べて低下していることを示すものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸血を必要とする出血性外傷対象の輸血に必要な保存血液の量を減少させるのに使用するための酸素低減保存血液であって、
前記酸素低減保存血液が、20%以下の初期酸素飽和度(SO2)レベルを有し、保存期間中、20%以下のSO2レベルを維持し、
前記輸血を必要とする出血性外傷対象が、前記酸素低減保存血液の投与前に、乳酸値が上昇しており、かつ出血性ショックを有しており、投与後、上昇していた乳酸値が下がり、出血性ショックが回復し、かつ、輸血を必要とする出血性外傷対象者への輸血に必要な酸素低減保存血液の量が、出血性外傷対象者への輸血に必要な酸素を低減していない従来型の保存血液の量より少なくとも10%少ない、前記酸素低減保存血液。
【請求項2】
輸血を必要とする出血性外傷対象への輸血に必要な酸素低減保存血液の量が、出血性外傷対象者への輸血に必要な酸素を低減していない従来型の保存血液の量より10%~90%少ない、請求項1に記載の酸素低減保存血液。
【請求項3】
輸血を必要とする出血性外傷対象者への輸血に必要な酸素低減保存血液の量が、出血性外傷対象者への輸血に必要な酸素を低減していない従来型の保存血液の量より20%~50%少ない、請求項2記載の酸素低減保存血液。
【請求項4】
輸血を必要とする出血性外傷対象の血行動態機能が、投与後、回復又は安定化する、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項5】
投与前の上昇していた乳酸値が、8~14ミリモル/リットル(mmol/L)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項6】
上昇していた乳酸値が、輸血を必要とする出血性外傷対象者が同量の酸素を低減していない従来の保存血液を受けた場合と比較して、投与後に10~90%低下する、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項7】
上昇していた乳酸値が、投与後に10~50%低下する、請求項6に記載の酸素低減保存血液。
【請求項8】
上昇していた乳酸値が、投与後、0.5~2.5ミリモル/リットル(mmol/L)に低下している、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項9】
上昇していた乳酸値が、投与後、0.9~1.7ミリモル/リットル(mmol/L)に低下している、請求項8に記載の酸素低減保存血液。
【請求項10】
輸血を必要とする出血性外傷対象が、投与前に上昇していた血糖値を有し、上昇していた血糖値が、投与後に、70~120ミリグラム/デシリットル(mg/dL)に低下する、請求項1~9のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項11】
投与前の上昇していた血糖値が150ミリグラム/デシリットル(mg/dL)を超える、請求項10に記載の酸素低減保存血液。
【請求項12】
輸血を必要とする出血性外傷対象の肝臓の損傷又は傷害を示す肝臓酵素のレベルが、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与された出血性外傷対象に対して、投与後に、1.5倍から10倍減少し、前記肝臓酵素がアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)である請求項1~11のいずれか1項記載の酸素低減保存血液。
【請求項13】
肝臓酵素のレベルが、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与された出血性外傷対象に対して、投与後に、少なくとも2倍~5倍低下している、請求項12に記載の酸素低減保存血液。
【請求項14】
輸血を必要とする出血性外傷対象の腎機能マーカーのレベルが、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与した出血性外傷対象に比べて、投与後に、1.5倍~10倍低下し、前記腎機能マーカーが、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(u-NGAL)、血清クレアチニン、及び血中尿素窒素(BUN)からなる群から選択される、請求項1~13のいずれかに記載の酸素低減保存血液。
【請求項15】
腎機能マーカーの値が、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与した出血性外傷対象に比して、投与後に、2倍~5倍低下している、請求項14に記載の酸素低減保存血液。
【請求項16】
輸血を必要とする出血性外傷対象における炎症因子のレベルが、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与した出血性外傷対象に対して、投与後に、1.5倍~10倍低下し、前記炎症因子がCXCモチーフケモカインリガンド1(CXCL1)、インターロイキン6(IL-6)及びCD45+好中球からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項17】
炎症性因子のレベルが、酸素を低減していない従来型の保存血液を投与した出血性外傷対象に対して、投与後に、少なくとも2倍~5倍低下している、請求項16に記載の保存酸素低減型保存血液。
【請求項18】
輸血を必要とする出血性外傷対象が、糖尿病、虚血性心疾患、外傷又は感染によってもたらされる全身性炎症症候群、外傷又は感染によってもたらされる多臓器不全、煙吸入、慢性肺閉塞性疾患、凝固障害及び自己免疫疾患からなる群より選ばれる、既存状態又は基礎状態を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の貯蔵酸素低減血液。
【請求項19】
輸血を必要とする出血性外傷対象が、鈍器外傷患者である、請求項1~18のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項20】
輸血を必要とする出血性外傷対象者が、投与前に、ヘマトクリットが低下している、請求項1~19のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項21】
輸血を必要とする出血性外傷対象が、投与前に、低い平均動脈圧を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項22】
酸素低減保存血液が、酸素低減保存全血、酸素低減白血球低減保存赤血球(RBC)、酸素低減血小板低減保存RBC、又は酸素低減白血球及び血小板低減保存RBCである、請求項1~21のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項23】
酸素低減保存血液の初期酸素飽和度が10%以下である、請求項1~22のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【請求項24】
保存期間が42日までである、請求項1~23のいずれか1項に記載の酸素低減保存血液。
【外国語明細書】