(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000633
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車両用前照灯のモード選択装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20221222BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20221222BHJP
B60Q 1/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B60Q1/14 G
B60Q1/04 Z
B60Q1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101571
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高濱 健一
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA34
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA26
3K339CA01
3K339CA25
3K339EA08
3K339GB01
3K339GB21
3K339HA27
3K339KA02
3K339KA06
3K339KA37
3K339LA06
3K339LA33
3K339LA34
3K339MA05
3K339MC17
3K339MC36
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】複数の環境適合モードを選択可能なスイッチ部の操作感覚を基に選択中の環境適合モードを把握することができる車両用前照灯のモード選択装置を提供する。
【解決手段】モード選択装置は、車両1に用いられる前照灯5の照射モードを選択する。照射モードは、車両1の周辺環境に応じて前照灯5の照射状態を変化させる複数の環境適合モードを含む。モード選択装置は、複数の環境適合モードの中から同時に1つの環境適合モードのみを選択することが可能なコラムレバー10を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる前照灯の照射モードを選択するためのモード選択装置において、
前記照射モードは、前記車両の周辺環境に応じて前記前照灯の照射状態を変化させる複数の環境適合モードを含み、
前記複数の環境適合モードの中から同時に1つの環境適合モードのみを選択するように構成されたスイッチ部を備えていることを特徴とする車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項2】
前記スイッチ部は、前記複数の環境適合モードのそれぞれに対応した複数の環境適合識別子が一方向に配置されており、前記複数の環境適合識別子の中から1つを選択するスイッチ操作が前記一方向またはその逆方向に沿って行われるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項3】
前記照射モードは、前記車両の周辺環境に応じて前記前照灯の照射状態を変化させない非環境適合モードを含み、
前記スイッチ部は、前記非環境適合モードに対応した非環境適合識別子が前記複数の環境適合識別子と伴に前記一方向に配置され、かつ、前記複数の環境適合識別子が連続して並ぶように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項4】
前記照射モードは、2つの前記非環境適合モードを含み、
前記スイッチ部は、前記2つの非環境適合モードのそれぞれに対応した2つの非環境適合識別子の間に、前記複数の環境適合識別子が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項5】
前記複数の環境適合モードは、
前記車両の周辺環境に応じて前記前照灯の照射範囲を変更する自動照射範囲変更モードと、
前記車両の周辺環境に応じて前記前照灯を点灯状態または消灯状態にする自動点消灯モードと、を含み、
前記非環境適合モードは、
前記前照灯の一部または全部を点灯状態にするとともに、前記スイッチ操作とは異なる操作によって当該前照灯の照射範囲を変更可能な手動操作モードと、
前記前照灯の一部または全部を消灯状態にする消灯モードと、を含み、
前記スイッチ部は、前記手動操作モードに対応した前記非環境適合識別子、前記自動照射範囲変更モードに対応した前記環境適合識別子、前記自動点消灯モードに対応した前記環境適合識別子、および前記消灯モードに対応した前記非環境適合識別子が、これらの順番で前記一方向に配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項6】
前記自動照射範囲変更モードは、前記前照灯の照射範囲を初期状態に設定し、前記車両の周辺環境が所定の照射範囲変更条件を満たした場合に、前記前照灯の照射範囲を前記初期状態よりも広い範囲に変更し、
前記自動点消灯モードにおける前記前照灯の照射範囲は、前記初期状態に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項7】
前記複数の環境適合モードは、前記前照灯に設定される照射範囲の初期状態が互いに異なる2つ以上の環境適合モードを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項8】
前記スイッチ部は、前記複数の環境適合モードのそれぞれにおける前記前照灯に設定される照射範囲の初期状態での前記前照灯の照度、および、前記非環境適合モードにおける前記前照灯の照度が、順に大きくなるか、または、順に小さくなるように、前記複数の環境適合識別子および前記非環境適合識別子の配置順序が決められていることを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項9】
前記スイッチ部は、前記複数の環境適合識別子のうちの1つの環境適合識別子から他の環境適合識別子に選択を変更するためのスイッチ操作に対応した第1物理量と、前記非環境適合識別子から前記1つの環境適合識別子に選択を変更するためのスイッチ操作に対応した第2物理量とが異なるように構成されていることを特徴とする請求項3~8のいずれか1つに記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【請求項10】
前記スイッチ部は、前記複数の環境適合識別子のうちの1つの環境適合識別子から他の環境適合識別子に選択を変更するためのスイッチ操作に対応した第1物理量と、前記1つの環境適合識別子から前記非環境適合識別子に選択を変更するためのスイッチ操作に対応した第3物理量とが異なるように構成されていることを特徴とする請求項3~9のいずれか1つに記載の車両用前照灯のモード選択装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯のモード選択装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、レバースイッチの先端側に設けられたランプスイッチを回動してAUTOマークを選択すると、照度センサで検出された照度に応じて、前照灯及び車幅灯を自動で点灯/消灯させ、また、レバースイッチの先端部に設けられたALHスイッチを押すと、ALHモードのON/OFFが制御される、車両用前照灯のスイッチ装置が開示されている。ALHモードでは、フォワードセンシングカメラの検出結果に基づいて、前照灯の照射領域が自動的に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1における自動点消灯(AUTO)モードおよびALHモードのように、車両の周辺環境に応じて前照灯の照射状態を変化させる照射モード(以下、「環境適合モード」とする)が複数設けられ、かつ、複数のスイッチ(ランプスイッチおよびALHスイッチ)の操作によって各環境適合モードの選択が行われる場合、現在どの環境適合モードが選択されているかを運転者が把握し難いという課題があった。
【0005】
例えば、特許文献1のスイッチ装置において、ランプスイッチの操作によって自動点消灯(AUTO)モードを選択した状態で、ALHスイッチの操作によってALHモードを選択した場合、ALHスイッチの操作時における車両の周辺環境がAUTOモードによる点灯条件を満たしていれば、前照灯は点灯状態となる。この前照灯の照射領域は、ALHスイッチの操作時における車両の周辺環境とALHモードの適合条件との関係に依存して決まる。このため、ALHスイッチの操作前後において、点灯状態にある前照灯の照射領域が変化しない可能性がある。このような状況では、当該車両の運転者は、ALHスイッチの操作感覚を基にALHモードが選択されているかを把握することが難しく、ALHスイッチを注視するなどして対処していた。
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、複数の環境適合モードを選択可能なスイッチ部の操作感覚を基に選択中の環境適合モードを把握することができる車両用前照灯のモード選択装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、車両に用いられる前照灯の照射モードを選択するためのモード選択装置を提供する。このモード選択装置において、前記照射モードは、前記車両の周辺環境に応じて前記前照灯の照射状態を変化させる複数の環境適合モードを含む。前記モード選択装置は、前記複数の環境適合モードの中から同時に1つの環境適合モードのみを選択するように構成されたスイッチ部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用前照灯のモード選択装置によれば、複数の環境適合モードを選択可能なスイッチ部の操作感覚を基に選択中の環境適合モードを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による車両用前照灯のモード選択装置が適用された車両におけるステアリングホイール周辺の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態におけるコラムレバーの先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
【
図3】上記実施形態におけるライト制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】上記実施形態におけるコラムレバーの車両前後方向の搖動を模式的に示す図である。
【
図5】上記実施形態に関連した第1変形例におけるコラムレバーの先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
【
図6】上記実施形態に関連した第2変形例におけるコラムレバーの先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
【
図7】上記実施形態に関連した第3変形例におけるコラムレバーの先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
【
図8】上記実施形態に関連した第4変形例におけるコラムレバーの先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
【
図9】上記実施形態に関連した第5変形例におけるタッチディスプレイの表示画面を示す図である。
【
図10】上記実施形態に関連した第6変形例におけるタッチディスプレイの表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による車両用前照灯のモード選択装置が適用された車両におけるステアリングホイール周辺の概略構成を示す斜視図である。なお、以下で説明する各図において、矢印F方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印O方向は車両幅方向で車両外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示している。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による車両用前照灯のモード選択装置が適用された車両1は、車室内に配置されるステアリングホイール2の車両前方側にコラムレバー10を備えている。コラムレバー10は、ステアリングコラム3の車幅方向の側部3Aに設けられている。ステアリングコラム3の内部には、ステアリングホイール2が連結されている図示しないステアリングシャフト等が配置されている。コラムレバー10は、ステアリングコラム3の側部3Aからステアリングホイール2の径方向外側に向かって延びている。
【0012】
コラムレバー10の長手方向の一端(基端)側には、ステアリングコラム3の側部3Aに支持された支持部11が設けられている。この支持部11を中心として、コラムレバー10は、車両1の前後方向および上下方向にそれぞれ搖動可能に支持されている。コラムレバー10が前後方向に搖動操作されることにより、車両1の後述する
図3に示す前照灯5の照射範囲が手動で切換え可能となる。また、コラムレバー10が上下方向に搖動操作されることにより、車両1の図示しない方向指示器のON/OFFが切換え可能となる。コラムレバー10の長手方向の他端(先端)側には、車両1の前照灯5の照射モードを選択するためのランプスイッチ部12が設けられている。
【0013】
図2は、コラムレバー10の先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
図2に示すように、ランプスイッチ部12は、コラムレバー10の本体部13に対して、コラムレバー10の長手方向に沿った軸Xを中心に回動可能に構成されている。ランプスイッチ部12の外周面には、ステアリングホイール2を把持する運転者が目視可能な位置に、図中の三角印で示す選択識別子Isが設けられている。選択識別子Isは、ランプスイッチ部12による選択位置を表している。
【0014】
コラムレバー10の本体部13は、コラムレバー10の長手方向で、支持部11およびランプスイッチ部12の間に配置されている。本体部13の外周面には、上記運転者が目視可能かつランプスイッチ部12に隣接する位置に、複数のモード識別子Imが設けられている。複数のモード識別子Imは、前照灯5に設定される複数の照射モードのそれぞれに対応している。複数の照射モードは、環境適合モードと非環境適合モードとに大別される。環境適合モードは、車両1の周辺環境に応じて前照灯5の照射状態を変化させる照射モードである。非環境適合モードは、車両1の周辺環境に応じて前照灯5の照射状態を変化させない環境モードである。
【0015】
本実施形態では、例えば、4個のモード識別子Im1,Im2,Im3,Im4がランプスイッチ部12の回動方向に沿って一列に並べられている。つまり、4個のモード識別子Im1~Im4は、一方向(ランプスイッチ部12の回動方向のうちの正方向または逆方向)に配置されている。具体的に、
図2において一番上に配置されている第1のモード識別子Im1(ヘッドライトを表す図形)は、非環境適合モードの1つである「手動操作モード」に対応している。上から2番目に配置されている第2のモード識別子Im2(A-Hi)は、環境適合モードの1つである「自動照射範囲変更モード」に対応している。上から3番目に配置されている第3のモード識別子Im3(AUTO)は、環境適合モードの1つである「自動点消灯モード」に対応している。上から4番目に配置されている第4のモード識別子Im4(OFF)は、非環境適合モードの1つである「消灯モード」に対応している。
【0016】
コラムレバー10は、運転者がランプスイッチ部12を回動操作して選択識別子Isの位置を複数のモード識別子Imのいずれかの位置に合わせることにより、当該モード識別子Imに対応した照射モードを選択するように構成されている。このように本実施形態では、コラムレバー10が本発明の「スイッチ部」としての機能を兼ね備えている。また、第2および第3のモード識別子Im2,Im3が本発明の「環境適合識別子」に相当し、第1および第4のモード識別子Im1,Im4が本発明の「非環境適合識別子」に相当している。4つのモード識別子Imの一方向の配列において、第2および第3のモード識別子Im2,Im3(環境適合識別子)は、連続して並ぶように配置され、かつ、第1および第4のモード識別子Im1,Im4(非環境適合識別子)の間に配置されている。
【0017】
また、コラムレバー10は、第2および第3のモード識別子Im2,Im3の間でのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第1物理量と、第1のモード識別子Im1(または第4のモード識別子Im4)から第2のモード識別子Im2(または第3のモード識別子Im3)へのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第2物理量とが異なるように構成されている。さらに、コラムレバー10は、上記第1物理量と、第2のモード識別子Im2(または第3のモード識別子Im3)から第1のモード識別子Im1(または第4のモード識別子Im4)へのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第3物理量とが異なるように構成されている。第1~第3物理量は、例えば、ランプスイッチ部12の回動操作に必要な力(重さ)、操作音の音量や周波数、操作距離などを含む。つまり、コラムレバー10では、2つの環境適合識別子の間での回動操作のための第1物理量に対して、非環境適合識別子から環境適合識別子への回動操作のための第2物理量と、環境適合識別子から非環境適合識別子への回動操作のための第3物理量とがそれぞれ異なるように設定されている。
【0018】
上記のようなコラムレバー10を用いて、運転者が、ランプスイッチ部12の回動操作、並びに、コラムレバー10(本体部13)の前後方向および上下方向の搖動操作を行うと、各々の操作状態を示す信号が、コラムレバー10から車両1に搭載されているライト制御システムに伝達される。
【0019】
図3は、上記ライト制御システムの構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、ライト制御システム20は、コラムレバー10の操作状態を示す信号が入力されるコントローラ21を有している。コントローラ21には、コラムレバー10の他に、環境センサ4、前照灯5および尾灯6などが電気的に接続されている。
【0020】
環境センサ4は、車両1の周辺環境に関する情報(以下、「環境情報」とする)を取得し、該取得した環境情報をコントローラ21に伝える。環境センサ4で取得される環境情報としては、例えば、車両1の周辺環境の明るさや、車両1の前方に位置する他車両(先行車、対向車)および歩行者の有無などが挙げられる。ただし、環境情報はこれらに限定されない。コントローラ21は、コラムレバー10の操作状態および環境情報に基づき前照灯5および尾灯6を制御するための制御信号を生成する。
【0021】
前照灯5は、車両1の前部の左右に配置されている。前照灯5は、照射範囲をハイビームまたはロービームに変更可能に構成されている。ハイビームおよびロービームそれぞれの照射範囲は、保安基準等に従って設定されている。例えば、ハイビームでは前方100mを照らすことができ、ロービームでは前方40mを照らすことができるように、前照灯5の照射範囲が調整されている。前照灯5は、コントローラ21からの制御信号に従って、点灯および消灯の切換え、並びに、照射範囲(ハイビーム/ロービーム)の変更が制御される。なお、上記前照灯5に付随して、図示を省略した車幅灯(スモールランプ)が設けられている。この車幅灯の点灯および消灯の切換えもコントローラ21により制御される。尾灯6は、車両1の後部の左右に配置されている。尾灯6の点灯および消灯の切換えは、コントローラ21により前照灯5に連動して制御される。
【0022】
ここで、前照灯5の4つの照射モードについて詳しく説明する。
前述したように本実施形態では、前照灯5の4つの照射モードとして、「自動照射範囲変更モード」および「自動点消灯モード」の2つの環境適合モードと、「手動操作モード」および「消灯モード」の2つの非環境適合モードとが設定されている。
【0023】
自動照射範囲変更モードは、車両1の周辺環境に応じて前照灯5の照射範囲を自動的に変更する照射モードである。本実施形態における自動照射範囲変更モードでは、例えば、車両1の前方の状況に基づき前照灯5がハイビームまたはロービームに自動的に変更される。このような前照灯5のハイビーム/ロービームの自動切換え機能は、ハイビームアシスト機能、オートハイビーム機能、或いはオートマチックハイビーム機能などと呼ばれる場合がある。以下の説明では、上記のような自動照射範囲変更モードのことを「A-Hiモード」と表記する。
【0024】
具体的に、コラムレバー10によりA-Hiモードが選択されると、コントローラ21は、先ず前照灯5を点灯状態にするとともに、前照灯5の照射範囲を初期状態に設定する。照射範囲の初期状態は、A-Hiモードで前照灯5を点灯状態にしたときのデフォルトの照射範囲のことであり、ハイビーム(H)およびロービーム(L)のいずれかを適宜に設定可能である。本実施形態では、A-Hiモードの選択時における前照灯5の照射範囲の初期状態として、例えば、ロービーム(L)が設定されている。以下の説明では、このような設定のことを「A-Hiモード(初期L)」と表記する場合がある。なお、前照灯5が点灯状態にされるのに連動して尾灯6も点灯状態にされる。
【0025】
そして、前照灯5が初期状態の照射範囲で点灯されると、コントローラ21は、環境センサ4で取得される環境情報を基に車両1の前方の状況を逐次判断する。コントローラ21は、前照灯5がロービームの状態で、例えば、車両1の前方に他車両(先行車、対向車)および歩行者が存在していない場合に、前照灯5をハイビームに切り換える。また、コントローラ21は、前照灯5がハイビームの状態で、車両1の前方に他車両または歩行者が存在する場合に、前照灯5をロービームに切り換える。つまり、本実施形態におけるA-Hiモードでは、車両1の前方に他車両(先行車、対向車)および/または歩行者が存在しているかどうかが照射範囲変更条件となる。ただし、A-Hiモードの照射範囲変更条件は、上記の一例に限定されない。
【0026】
自動点消灯モードは、車両1の周辺環境に応じて前照灯5を自動的に点灯状態または消灯状態にする照射モードである。本実施形態における自動点消灯モードでは、例えば、車両1の周辺環境の明るさに基づき、前照灯5、車幅灯および尾灯6それぞれの点灯状態および消灯状態が自動的に切り換えられる。このような自動点消灯モードによって実現される機能は、一般的にオートライト機能と呼ばれている。
【0027】
具体的に、コラムレバー10により自動点消灯モードが選択されると、コントローラ21は、環境センサ4で取得される環境情報を基に車両1の周辺環境の明るさを逐次判断する。そして、コントローラ21は、車両1の周辺環境の明るさが第1閾値T1を割り込んだときに車幅灯および尾灯6を点灯状態にする。さらに、コントローラ21は、車両1の周辺環境の明るさが第1閾値T1よりも小さい第2閾値T2(T1>T2)を割り込んだときに前照灯5を点灯状態にする。
【0028】
前照灯5が点灯状態にされた後、コントローラ21は、車両1の周辺環境の明るさが第2閾値T2よりも大きい第3閾値T3(T2<T3)に回復したときに前照灯5を消灯状態にする。さらに、コントローラ21は、車両1の周辺環境の明るさが第1閾値T1および第3閾値T3よりも大きい第4閾値T4(T1,T3<T4)に回復したときに車幅灯および尾灯6を消灯状態にする。
【0029】
自動点消灯モードの選択時における前照灯5の照射範囲は、コラムレバー10の車両前後方向の操作状態に対応して設定される。
図4は、コラムレバー10の車両前後方向の搖動操作を模式的に示した図である。
図4に示すように、コラムレバー10は、支持部11を中心として車両前後方向に搖動可能に支持されており、運転者の操作によって、中立位置P0と、中立位置P0よりも前方に位置する前方位置P1と、中立位置P0よりも後方に位置する後方位置P2との間を移動する。本実施形態では、中立位置P0がロービームに対応し、前方位置P1がハイビームに対応し、後方位置P2がパッシング(前照灯5を短時間ハイビームで点灯する)に対応している。
【0030】
したがって、自動点消灯モードの選択時における前照灯5の照射範囲は、コラムレバー10が中立位置P0にある状態でロービームとなり、コラムレバー10が前方位置P1にある状態でハイビームとなる。つまり、自動点消灯モードの選択中に、コラムレバー10の前後方向の搖動操作が行われなければ、前照灯5はロービームまたはハイビームで常時固定となる。前照灯5の照射範囲の変更が必要であれば、コラムレバー10を手動で搖動操作する。本実施形態では、コラムレバー10のデフォルトの位置として中立位置P0が設定されている。このため、自動点消灯モードの選択時における前照灯5の照射範囲の初期状態はロービーム(L)となる。以下の説明では、このような設定のことを「自動点消灯モード(初期L)」と表記する場合がある。
【0031】
手動操作モードは、前照灯5、車幅灯および尾灯6の一部または全部を点灯状態にするとともに、ランプスイッチ部12の回動操作とは異なる操作、具体的には、コラムレバー10の前後方向への搖動操作によって、前照灯5の照射範囲を手動で変更可能な照射モードである。本実施形態において、手動操作モードの選択時における前照灯5の照射範囲は、コラムレバー10が中立位置P0にある場合にロービームとなり、コラムレバー10が前方位置P1にある場合にハイビームとなる。前述したようにコラムレバー10のデフォルトの位置として中立位置P0が設定されているため、手動操作モードの選択時における前照灯5の照射範囲の初期状態はロービーム(L)となる。以下の説明では、このような設定のことを「手動操作モード(初期L)」と表記する場合がある。
【0032】
消灯モードは、前照灯5、車幅灯および尾灯6の一部または全部を消灯状態にする照射モードである。なお、消灯モードの選択時、運転者がコラムレバー10を後方に搖動操作して後方位置P2とすれば、前照灯5を短時間ハイビームで点灯させることが可能である。
【0033】
次に、本実施形態による車両用前照灯のモード選択装置の作用について説明する。
本実施形態では、前述したようにコラムレバー10がモード選択装置のスイッチ部としての機能を兼ね備えており、コラムレバー10のランプスイッチ部12が軸Xを中心に回動操作されることよって、前照灯5に設定されている複数の環境適合モード(A-Hiモードおよび自動点消灯モード)の中から同時に1つの環境適合モードのみが選択されるようになる。これにより、当該車両の運転者(コラムレバー10の操作者)は、コラムレバー10におけるランプスイッチ部12の操作感覚を基に選択中の環境適合モードを把握しやすくなる。
【0034】
また、本実施形態では、A-Hiモードおよび自動点消灯モードに対応した第2および第3のモード識別子Im2,Im3(環境適合識別子)、並びに、手動操作モードおよび消灯モードに対応した第1および第4モード識別子Im1,Im4(非環境適合識別子)が、ランプスイッチ部12の回動方向に沿う一方向に配置されている。このように前照灯5の4つの照射モードにそれぞれ対応したモード識別子Im1~Im4が、ランプスイッチ部12の回動操作の方向に一列に並べられていることで、運転者は、ランプスイッチ部12の操作感覚を基に選択中の照射モードを確実に把握することができる。
【0035】
特に、上記のようなモード識別子Im1~Im4の一方向の配置において、第2および第3のモード識別子Im2,Im3(環境適合識別子)が連続して並ぶように配置されていることによって、非環境適合モードを選択せずに、1つの環境適合モードから他の環境適合モードを選択できるようになる。これにより、運転者は、1つの環境適合モードから他の環境適合モードへの変化を感覚的に把握しやすくなる。仮に、1つの環境適合モードから他の環境適合モードを選択する際に非環境適合モードが選択可能な構成である場合、運転者は、現在選択中の照射モードが環境適合モードから非環境適合モードに変化したのか、それとも環境適合モードから他の環境適合モードに変化したのかを感覚的に把握することが難しくなる。
【0036】
また、上記のようなモード識別子Im1~Im4の一方向の配置において、第1および第4モード識別子Im1,Im4(非環境適合識別子)の間に、第2および第3のモード識別子Im2,Im3(環境適合識別子)が配置されている。このような配置では、ランプスイッチ部12の一方向(正方向または逆方向)の操作における始めと終わりに非環境適合モードが選択されるようになる。これにより、運転者は、ランプスイッチ部12の操作感覚を基に選択中の非環境適合モードも把握しやすくなる。
【0037】
さらに、一方向の配置における第1のモード識別子Im1が手動操作モードに対応し、第2のモード識別子Im2がA-Hiモードに対応し、第3のモード識別子Im3が自動点消灯モードに対応し、第4のモード識別子Im4が消灯モードに対応していることで、ランプスイッチ部12の一方向(正方向または逆方向)の操作において、前照灯5が点灯状態から消灯状態に切り換わる方向、または消灯状態から点灯状態に切り換わる方向に照射モードの選択が行われるようになる。これにより、照射モードの切換え操作中における前照灯5のちらつきを抑えることができるとともに、運転者の意図(前照灯5を点灯したい、或いは消灯したい)に近い形で照射モードの切換え操作を行うことが可能になる。
【0038】
また、本実施形態において、A-Hiモードは、前照灯5の照射範囲を初期状態(ロービーム)に設定し、車両1の周辺環境が所定の照射範囲変更条件を満たした場合に、前照灯5の照射範囲を初期状態(ロービーム)よりも広い範囲(ハイビーム)に変更し、自動点消灯モードにおける前照灯5の照射範囲は、初期状態(ロービーム)に設定されている。このようにA-Hiモード(初期L)および自動点消灯モード(初期L)の設定がなされている場合、前照灯5の照射モードをA-Hiモードから自動点消灯モードを経由して消灯モードに変化させる際に、自動点消灯モードが一時的に選択されても、前照灯5の照射範囲を段階的に狭くすることができる。つまり、前照灯5を消灯したいという運転者の意図に合わせて、点灯状態にある前照灯5の照射範囲を狭めながら消灯状態に切り換えることが可能になる。仮に、A-Hiモード(初期L)および自動点消灯モード(初期H)の設定がなされている場合、自動点消灯モードが一時的に選択されることで、前照灯5の照射範囲がローからハイに切り換わった後に消灯状態となる。このような状況では、前照灯5を消灯、つまり照射範囲を狭くしたいという運転者の意図に反して、前照灯5の照射範囲が一時的に広くなるため、運転者に違和感を与えてしまう。
【0039】
さらに、本実施形態では、2つの環境適合識別子(Im2およびIm3)の間でのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第1物理量と、非環境適合識別子(Im1またはIm4)から環境適合識別子(Im2またはIm3)へのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第2物理量とが異なるように構成されている。加えて、上記第1物理量と、環境適合識別子(Im2またはIm3)から非環境適合識別子(Im1またはIm4)へのランプスイッチ部12の回動操作に対応した第3物理量とが異なるように構成されている。これにより、運転者は、環境適合モード同士を切り換えたのか、非環境適合モードから環境適合モードに切り換えたのか、或いは、環境適合モードから非環境適合モードに切り換えたのかを、ランプスイッチ部12の操作感覚の違いによって容易に把握することが可能になる。
【0040】
加えて、本実施形態では、コラムレバー10が中立位置P0にある状態でランプスイッチ部12を回動操作するだけで、照射モードを環境適合モードから他の環境適合モードに切り換えることができる。つまり、照射モードを環境適合モードから他の環境適合モードに切り換えても、コラムレバー10の前後方向の位置が中立位置P0に維持される。このため、コラムレバー10を上下方向に搖動操作して方向指示器のON/OFFを切り換える際に、コラムレバー10が前方位置P1や後方位置P2に位置することにより生じる運転者の違和感を抑制しやすくすることもできる。
【0041】
次に、本実施形態による車両用前照灯のモード選択装置の各種変形例について説明する。
図5は、第1変形例におけるコラムレバー10の先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。ただし、上述した実施形態の構成と同様の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、以下同様とする。
【0042】
図5において、第1変形例におけるコラムレバー10の構成が上述した実施形態の構成と異なる点は、コラムレバー10の本体部13の外周面に一方向に配置されている4個のモード識別子Im11~Im14のうち、一番上に配置されている第1のモード識別子Im11が「A-Hiモード」に対応し、上から2番目に配置されている第2のモード識別子Im12が「自動点消灯モード」に対応し、上から3番目に配置されている第3のモード識別子Im13が「消灯モード」に対応し、上から4番目に配置されている第4のモード識別子Im14が「手動操作モード」に対応している点である。上記以外の第1変形例の構成は、上述した実施形態の構成と同様である。
【0043】
上記第1変形例のコラムレバー10では、環境適合モードに対応したモード識別子Im11,Im12が一方向の一端側にまとめられているとともに、非環境適合モードに対応したモード識別子Im13,Im14が一方向の他端側にまとめられている。このようなモード識別子Im11~Im14の配置とすることにより、運転者は、コラムレバー10におけるランプスイッチ部12の操作感覚を基に、環境適合モード同士の切換え、非環境適合モード同士の切換え、並びに、環境適合モードおよび非環境適合モードの間の切換えを把握しやすくなる。
【0044】
また、上記第1変形例のコラムレバー10では、2つの非環境適合モードのうちの消灯モードが環境適合モード側に配置されているので、ランプスイッチ部12を回動操作して環境適合モードから非環境適合モードに切り換えたときに、前照灯5が一旦オフになる。このため、ランプスイッチ部12の操作感覚だけでなく、前照灯5の消灯状態の視覚的な変化によっても、環境適合モードから非環境適合モードへの切換えを把握することができる。
【0045】
図6は、第2変形例におけるコラムレバー10の先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
図6において、第2変形例におけるコラムレバー10の構成が上述した実施形態の構成と異なる点は、コラムレバー10の本体部13の外周面に一方向に配置されている4個のモード識別子Im21~Im24のうち、上から2番目に配置されている第2のモード識別子Im22が「A-Hiモード(初期H)」に対応し、上から3番目に配置されている第3のモード識別子Im23が「A-Hiモード(初期L)」に対応している点である。上記以外の第2変形例の構成は、上述した実施形態の構成と同様である。
【0046】
上記第2変形例のコラムレバー10では、前照灯5の照射範囲の初期状態がハイビーム(H)に設定されたA-Hiモード(初期H)が追加されるとともに、自動点消灯モードがA-Hiモード(初期L)に置換されている。このような第2変形例においては、前照灯5に設定される照射範囲の初期状態が互いに異なる2つの環境適合モードが設定されていることになる。初期状態が互いに異なる2つの環境適合モードの組合せは、A-Hiモード(初期H)およびA-Hiモード(初期L)以外にも、A-Hiモード(初期L)および自動点消灯モード(初期H)、A-Hiモード(初期H)および自動点消灯モード(初期L)、自動点消灯モード(初期L)および自動点消灯モード(初期H)がある。
【0047】
A-Hiモード(初期H)およびA-Hiモード(初期L)のそれぞれには、前述した自動点消灯モードに相当する自動点消灯機能が兼ね備えられていてもよい。A-Hiモード(初期H)の選択時において、車両1の前方に他車両(先行車、対向車)または歩行者が検知されると、前照灯5の照射範囲が初期状態のハイビームからロービームに切り換えられる。そして、車両1の前方に他車両(先行車、対向車)および歩行者が検知されなくなるとハイビームに戻される。
【0048】
上記のような第2変形例のコラムレバー10によれば、運転者の好みに応じて、A-Hiモード(初期H)とA-Hiモード(初期L)を選択することが可能になる。また、4つの照射モードの配列において、前照灯5の照射範囲の初期状態が、上から順に、初期L、初期H、初期L、消灯となっているので、手動操作モード(初期L)およびA-Hiモード(初期H)の間での切換え、並びに、A-Hiモード(初期H)およびA-Hiモード(初期L)の間での切換えの際に、前照灯5の照射範囲が変化しやすくなる。よって、ランプスイッチ部12の操作感覚だけでなく、前照灯5の点灯状態の視覚的な変化によっても、照射モードの切換えを把握することができる。
【0049】
図7は、第3変形例におけるコラムレバー10の先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
図7において、第3変形例におけるコラムレバー10の構成が上述した実施形態の構成と異なる点は、コラムレバー10の本体部13の外周面に一方向に配置されている4個のモード識別子Im31~Im34のうち、一番上に配置されている第1のモード識別子Im31が「A-Hiモード(初期H)」に対応し、上から2番目に配置されている第2のモード識別子Im32が「自動点消灯モード(初期L)」に対応し、上から3番目に配置されている第3のモード識別子Im33が「手動操作モード(初期L)」に対応している点である。上記以外の第3変形例の構成は、上述した実施形態の構成と同様である。
【0050】
上記第3変形例のコラムレバー10では、前述した第1変形例の場合と同様に、環境適合モード同士、非環境適合モード同士がそれぞれまとめられているので、運転者は、コラムレバー10におけるランプスイッチ部12の操作感覚を基に、環境適合モード同士の切換え、非環境適合モード同士の切換え、並びに、環境適合モードおよび非環境適合モードの間の切換えを把握しやすくなる。
【0051】
また、4つの照射モードの配列において、前照灯5の照射範囲の初期状態が、上から順に、初期H、初期L、初期L、消灯となっているため、A-Hiモードから消灯モードに切り換える際に、前照灯5の照射範囲が段階的に減少しやすくなる。つまり、第3変形例は、環境適合モードにおける照射範囲の初期状態での前照灯5の照度、および、非環境適合モードにおける前照灯5の照度が、順に小さくなるような照射モードの配列となっている。これにより、前照灯5を消灯したいという運転者の意図に合わせて、点灯状態にある前照灯5の照射範囲を狭めながら消灯状態に切り換えることが可能になる。
【0052】
図8は、第4変形例におけるコラムレバー10の先端側部分を拡大して車室内側から見た正面図である。
図8において、第4変形例におけるコラムレバー10の構成が上述した実施形態の構成と異なる点は、コラムレバー10の本体部13の外周面に一方向に配置されている4個のモード識別子Im41~Im44のうち、一番上に配置されている第1のモード識別子Im41が「A-Hiモード」に対応し、上から2番目に配置されている第2のモード識別子Im42が「手動操作モード」に対応し、上から3番目に配置されている第3のモード識別子Im43が「消灯モード」に対応し、上から4番目に配置されている第4のモード識別子Im44が「自動点消灯モード」に対応している点である。上記以外の第4変形例の構成は、上述した実施形態の構成と同様である。
【0053】
上記第4変形例のコラムレバー10では、環境適合モードに対応したモード識別子Im41,Im44が一方向の両端に配置されている。これにより、ランプスイッチ部12を最も上側または最も下側に回動させることで環境適合モードが選択されるようになるので、ランプスイッチ部12の操作感覚を基に環境適合モードを容易に選択することができる。
【0054】
図9は、第5変形例におけるタッチディスプレイの表示画面を示す図である。
第5変形例は、上述した実施形態においてランプスイッチ部12の回動操作によって行っていた照射モードの選択を、車両1に搭載されたモニタ装置の画面上でも操作可能となるようにした一例である。
図9に示すように、モニタ装置のタッチディスプレイ30上には、照射モードの選択操作を行うためのモード選択部31(破線)が形成されている。モード選択部31には、4つの照射モードのそれぞれに対応した4つのモード識別子Imが、モード選択部31の上下方向に1列に並べて表示されている。ここでは、一番上に表示されている第1のモード識別子Im51が「A-Hiモード」に対応し、上から2番目に表示されている第2のモード識別子Im52が「自動点消灯モード」に対応し、上から3番目に表示されている第3のモード識別子Im53が「消灯モード」に対応し、上から4番目に表示されている第4のモード識別子Im54が「手動操作モード」に対応している。これらの照射モードの配列は、前述の
図5に示した第1変形例の場合と同様である。
【0055】
モード選択部31内における第1~第4のモード識別子Im51~Im54の側方には、カーソルCが表示されている。このカーソルCは、車両1の乗員によるタッチ操作によって、モード選択部31の上下方向に移動させることが可能である。モード選択部31では、カーソルCの位置が第1~第4のモード識別子Im51~Im54のいずれかの位置に合わせられることにより、当該モード識別子に対応した照射モードが選択可能となる。モード選択部31は、カーソルCの移動操作によって、4つの照射モードの中から同時に1つの照射モードのみを選択するように構成されている。なお、カーソルCの移動は、タッチ操作以外にも、モニタ装置上やステアリングホイール上に設けられている図示しない移動キーや音声認識などを利用して操作してもよい。また、モード選択部31は、乗員が所持するスマートフォン等のタッチディスプレイに表示させることも可能である。
【0056】
上記第5変形例では、カーソルCを移動させて選択中の照射モードを切り換えたときに、それを乗員に知らせるための操作音が車載スピーカ等から出力される。この操作音は、環境適合モードおよび非環境適合モードの間で切換えを行ったときの音量または周波数が、環境適合モード同士もしくは非環境適合モード同士の間で切換えを行ったときの音量または周波数と異なるように設定されている。これにより、乗員は、モード選択部31を凝視しなくても、操作音を含めたタッチ操作の感覚を基に照射モードの切換えを把握することができる。
【0057】
図10は、第6変形例におけるタッチディスプレイの表示画面を示す図である。
第6変形例では、タッチディスプレイ30に形成されるモード選択部32内に、第1~第4のモード識別子Im61~Im64がタッチボタン化され、上下方向および左右方向に並べて表示されている。ここでは、左上に表示されている第1のモード識別子Im61が「A-Hiモード」に対応し、右上に表示されている第2のモード識別子Im62が「自動点消灯モード」に対応し、左下に表示されている第3のモード識別子Im63が「手動操作モード」に対応し、右下に表示されている第4のモード識別子Im64が「消灯モード」に対応している。第1~第4のモード識別子Im61~Im64(タッチボタン)は、同時に1つのモード識別子のみが選択されるように構成されている。これにより、乗員は、モード選択部32の操作感覚を基に選択中の照射モードを把握しやすくなる。
【0058】
なお、上記第5および第6変形例では、タッチディスプレイ30上のモード選択画面に複数のモード識別子を表示し、それらを択一的に選択する構成について説明したが、モード選択画面に1つのモード識別子を表示し、モード選択の操作として当該画面でスワイプ操作を行って、画面遷移により他のモード識別子を表示および選択することで、複数の照射モードの選択を行うようにすることも可能である。
【0059】
以上、本発明の実施形態およびそれに関連した変形例について述べたが、本発明は既述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、前照灯5の照射モードとして、2つの環境適合モードと2つの非環境適合モードとが設定される一例を示したが、3つ以上の環境適合モードが設定されていてもよい。非環境適合モードについては省略することも可能であり、1つ若しくは3つ以上の非環境適合モードが設定されていてもよい。
【0060】
また、既述の実施形態では、自動照射範囲変更モードが選択されると前照灯5が点灯状態にされる場合を説明したが、自動点消灯モードに相当する自動点消灯機能が自動照射範囲変更モードに兼ね備えられていてもよい。さらに、自動照射範囲変更モードにおいて、車両1の周囲環境に応じて前照灯5のハイビームまたはロービームが自動的に切り換えられて照射距離が変更される一例を示したが、上記以外にも、例えば、前方の先行車や対向車を検知し、眩しさを与えないようハイビームの照射範囲のうち当該車両のエリアのみを部分的に減光したり、車幅方向の照射範囲を変更したりするような自動照射範囲変更モードとすることも可能である。
【0061】
加えて、既述の実施形態では、モード識別子Im1~Im4がランプスイッチ部12の回動方向に沿う一方向に配置され、また、第5の変形例では、モード識別子Im51~Im54がモード選択部31の上下方向に配置される場合について説明したが、複数のモード識別子の配置方向はこれらに限定されず、任意の一方向とすることが可能である。例えば、複数のモード識別子の配置方向を周方向(時計回り、反時計回り)としてもよい。この場合、複数のモード識別子が円または楕円の弧に沿って一方向に並べられるとともに、モード選択の操作が時計回りまたは反時計回りに沿って行われる。
【符号の説明】
【0062】
1…車両
2…ステアリングホイール
3…ステアリングコラム
4…環境センサ
5…前照灯
6…尾灯
10…コラムレバー(スイッチ部)
11…支持部
12…ランプスイッチ部
13…本体部
20…ライト制御システム
21…コントローラ
30…タッチディスプレイ
31,32…モード選択部
C…カーソル
Im…モード識別子(環境適合識別子、非環境適合識別子)
Is…選択識別子