(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063386
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】シロドシンの苦味をマスキングした経口投与製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/404 20060101AFI20230427BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230427BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230427BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230427BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61K31/404
A61K9/14
A61P13/02
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/26
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036885
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2021171187の分割
【原出願日】2014-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2013065262
(32)【優先日】2013-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013180442
(32)【優先日】2013-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100209440
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 皓
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】一色 信行
(72)【発明者】
【氏名】木村 晋一郎
(57)【要約】
【課題】
極めて苦味の強い薬剤であるシロドシンを、異物感なく、水なしでも服用でき、かつ前立腺肥大症に伴う排尿障害等の治療に有効な血中濃度を再現できる溶出性を備えた、新規な経口投与製剤を提供する。
【解決手段】
本発明は、シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子及び該マスキング粒子を含有する新規な経口投与製剤に等に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子。
【請求項2】
該マスキング粒子を含有する経口投与製剤のpH6.8における15分後の溶出率が、85%以上である、請求項1記載のマスキング粒子。
【請求項3】
該マスキング粒子を含有する経口投与製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、30秒以上である、請求項1又は2記載のマスキング粒子。
【請求項4】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、シロドシンと添加剤との混合物である、請求項1~3のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項5】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、シロドシンと添加剤との造粒物である、請求項4記載のマスキング粒子。
【請求項6】
添加剤が、糖又は糖アルコール及びデンプン類から選択される少なくとも1つの添加剤である、請求項4又は5記載のマスキング粒子。
【請求項7】
非腸溶性高分子が、胃溶性高分子である、請求項1~6のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項8】
非腸溶性高分子が、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート又はアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEである、請求項1~6のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項9】
非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して100質量部~200質量部である、請求項1~8のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項10】
該マスキング粒子中のシロドシン含量が、5~25質量%である、請求項1~9のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項11】
該マスキング粒子中の非腸溶性高分子含量が、15~30質量%である、請求項1~10のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項12】
非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して20質量部~40質量部である、請求項1~10のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤。
【請求項14】
剤形が錠剤である、請求項13記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤。
【請求項15】
(a)シロドシンの微粉末と添加剤を混合又は造粒して薬物粒子を調製する工程、及び
(b)工程(a)で得られた薬物粒子に非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子を調製する工程を包含することを特徴とする、マスキング粒子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて苦味の強い薬剤であるシロドシンを、異物感なく水なしでも服用でき、かつ前立腺肥大症に伴う排尿障害等の治療に有効な血中濃度を再現できる溶出性を備えた、新規な経口投与製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シロドシンは、選択的な尿道平滑筋収縮抑制作用を有し、強力な血圧低下作用を惹起することのない排尿障害治療薬であり(例えば、特許文献1参照)、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療剤として、広く用いられている。シロドシンを含有する医薬品製剤としては、カプセル剤及び錠剤(例えば、特許文献2及び3参照)が使用されているが、これらの製剤は、水と共に服用することが必要である。近年、高齢者などの嚥下困難な患者等でも服用し易い製剤として、水なしでも簡便に服用できる製剤の開発が求められている。
薬物が苦味を有する場合、その苦味を抑制する方法としては、薬物自体の化学修飾や包接化といった化学的マスキング手法(例えば、特許文献4参照)、甘味剤、香料などを添加することによる官能的マスキング手法(例えば、特許文献5及び非特許文献1参照)、胃溶性高分子又は腸溶性高分子等のコーティング剤により薬物をコーティングする物理的マスキング手法(例えば、特許文献6~9参照)等が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
しかしながら、苦味の強い薬物の場合、官能的マスキング手法では苦味を十分抑制できない場合があり、物理的マスキング手法ではコーティング剤の被覆量を多くしなければならず、それにより、消化管内での薬物の溶出性が低下するという問題が生じるなど、苦味の抑制と種々の液性における溶出性との両立が困難であった。
【0003】
特開2008-231029(特許文献6)には、部分アルファー化デンプンにレバミピド及びメチルセルロースを噴霧して造粒物とし、胃溶性高分子であるポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートでコーティングしたレバミピドの苦味マスキング顆粒が開示されている。
特表2005-513008(特許文献7)には、フェキソフェナジン及び沈降シリカの混合物を、オイドラギット(登録商標)E100を用いて顆粒化した後、更に沈降シリカを含有するオイドラギット(登録商標)E100のポリマー分散物で被覆して得られる、フェキソフェナジンの被覆された顆粒が開示されている。
WO2008/018371(特許文献8)には、ミチグリニド及び結晶セルロースの混合物にアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを噴霧して得られる造粒物が開示されている。
特開2007-63263(特許文献9)には、ベシル酸アムロジピンと軽質無水ケイ酸の混合物に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含有するコーティング液を噴霧して得られるアムロジピン含有粒子が開示されている。
しかしながら、いずれの文献にも、シロドシンの苦味抑制と、種々の液性における溶出性を両立した水なしでも服用できる製剤は記載されておらず、新たな製剤開発が望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】PHARM TECH JAPAN Vol.23, p1413-1417, 2007年
【非特許文献2】PHARM TECH JAPAN Vol.28, No.2, 2012年臨時増刊号「すべてがわかる口腔内崩壊錠ハンドブック」 PLCM(耕薬)研究会 編集
【特許文献1】特開平6-220015号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/054574号パンフレット
【特許文献3】特開2008-44960号公報
【特許文献4】特開2008-44870号公報
【特許文献5】特開2008-94837号公報
【特許文献6】特開2008-231029号公報
【特許文献7】特表2005-513008号公報
【特許文献8】国際公開WO2008/018371号パンフレット
【特許文献9】特開2007-63263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、極めて苦味の強い薬剤であるシロドシンを、異物感なく水なしでも服用でき、かつ前立腺肥大症に伴う排尿障害等の治療に有効な血中濃度を再現できる溶出性を備えた、新規な経口投与製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の経口投与製剤を作製する上においては、シロドシンの特性上、様々な克服すべき点があった。まず、シロドシンは、医薬品添加物として汎用される賦形剤等により分解しやすい化学的性質を有している。また、極めて強い苦味を有する上、針状結晶性の物質であるため、苦味を抑制するために多くのコーティング剤を必要とし、溶出性が低下したり、水なしで服用した際に異物感が残るなどの問題がある。更に、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療剤として、既に使用されているシロドシン製剤が有効性を発揮する血中濃度を、適切に再現できる製剤でなければならない。
本発明者らは、これらの点を克服しつつ上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。例えば、ココアパウダーや乳酸カルシウムなどによる官能的マスキング手法、カラギーナンなどによる化学的マスキング手法では、シロドシンの強烈な苦味をマスキングすることができなかった。また、一般に物理的マスキング手法に用いられる腸溶性基剤(腸溶性高分子)は、シロドシンと配合変化を起こし、使用できないことが判明した。更に種々検討を行った結果、本発明のマスキング粒子を用いることにより、驚くべきことに、強い苦味を感じることなく水なしでも服用でき、所望の溶出特性によりヒトでの有効な血中濃度を実現し得ること等、極めて望ましい性能を発揮する経口投与製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
[1]シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子;
[2]該マスキング粒子を含有する経口投与製剤のpH6.8における15分後の溶出率が、85%以上である、前記[1]記載のマスキング粒子;
[3]該マスキング粒子を含有する経口投与製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、30秒以上である、前記[1]又は[2]記載のマスキング粒子;
[4]シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、シロドシンと添加剤との混合物である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[5]シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、シロドシンと添加剤との造粒物である、前記[4]記載のマスキング粒子;
[6]添加剤が、糖又は糖アルコール及びデンプン類から選択される少なくとも1つの添加剤である、前記[4]又は[5]記載のマスキング粒子;
[7]非腸溶性高分子が、胃溶性高分子である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[8]非腸溶性高分子が、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEである、前記[1]~[6]のいずれかに記載のマスキング粒子;
【0008】
[9]非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して100質量部~200質量部である、前記[1]~[8]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[10]該マスキング粒子中のシロドシン含量が、5~25質量%である、前記[1]~[9]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[11]該マスキング粒子中の非腸溶性高分子含量が、15~30質量%である、前記[1]~[10]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[12]非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して20質量部~40質量部である、前記[1]~[10]のいずれかに記載のマスキング粒子;
[13]前記[1]~[12]のいずれかに記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤;
[14]剤形が錠剤である、前記[13]記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤;及び
[15](a)シロドシンの微粉末と添加剤を混合又は造粒して薬物粒子を調製する工程、及び(b)工程(a)で得られた薬物粒子に非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子を調製する工程を包含することを特徴とする、マスキング粒子を製造する方法;等に関するものである。
【0009】
本発明において、「非腸溶性高分子」とは、腸溶性高分子以外の水に不溶な高分子をいい、例えば、胃溶性高分子又は水不溶性高分子が挙げられる。胃溶性高分子としては、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例えば、オイドラギット(登録商標)EPO、オイドラギット(登録商標)E100)等のメタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体(例えば、コリコート(登録商標)スマートシール 30D)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(例えば、AEA(登録商標))等の胃溶性ポリビニル誘導体等が挙げられる。
水不溶性高分子としては、例えば、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液(例えば、オイドラギット(登録商標)NE30D)等のアクリル酸エチル-メタクリル酸メチル共重合体、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(例えば、オイドラギット(登録商標)RS100、オイドラギット(登録商標)RSPO、オイドラギット(登録商標)RL、オイドラギット(登録商標)RLPO)、及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS水分散液(例えば、オイドラギット(登録商標)RS30D、オイドラギット(登録商標)RL30D))等のアクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等の水不溶性アクリル酸系共重合体、エチルセルロース(例えば、エトセル(登録商標))、エチルセルロース水分散液(例えば、アクアコート(登録商標))等の水不溶性セルロースエーテル、酢酸ビニル樹脂(例えば、コリコート(登録商標)SR、コリコート(登録商標)SR30D)等が挙げられる。該非腸溶性高分子は、好ましくはエチルセルロース又は胃溶性高分子であり、より好ましくはエチルセルロース、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE又はポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートであり、より好ましくはエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE又はポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートであり、より好ましくはエチルセルロース又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEであり、より好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEである。これらの非腸溶性高分子は、必要に応じて、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
本発明に用いられる非腸溶性高分子を含有するコーティング剤は、上記非腸溶性高分子のほか、必要に応じて、添加剤、水溶性高分子等を含んでいてもよい。水溶性高分子を用いる場合、非腸溶性高分子及び水溶性高分子の合計質量に対する水溶性高分子の質量の割合は20%以下が好ましい。添加剤としては、例えば、可塑剤、滑沢剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ステアリン酸、トリアセチン、クエン酸トリエチル、マクロゴール、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート等が挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、カルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの添加剤及び水溶性高分子は、2つ以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明において、非腸溶性高分子の含量は、例えば、シロドシン100質量部に対して、例えば、80~400質量部、80~300質量部、80~200質量部、100~400質量部、100~300質量部、100~200質量部等を挙げることができ、より好ましくは100~200質量部である。
本発明のマスキング粒子中の非腸溶性高分子の含量は、好ましくは、15~30質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。
本発明において、非腸溶性高分子の含量は、例えば、薬物粒子100質量部に対して、概ね20~50質量部であり、好ましくは20~40質量部であり、より好ましくは30~40質量部である。
本発明において、「平均粒子径」とは、50%粒子径(質量基準メジアン径)を意味する。この50%粒子径は、ふるい分け粒度分布測定機(例えば、ロボットシフターRPS-205型、セイシン企業製)により測定することができる。
本発明のマスキング粒子の平均粒子径は、例えば、概ね300μm以下であり、好ましくは、約100~250μmである。
【0011】
本発明に用いられるシロドシンは、市販のものを使用することもでき、又は文献記載の方法(例えば、特許文献1参照)もしくはそれに準じた方法により製造することもできる。
本発明に用いられる「シロドシンの微粉末」は、凝集した塊がない程度の粒子であればよく、必要に応じて、解砕、粉砕等してもよい。シロドシンの微粉末の平均粒子径は、50μm程度以下のものが好ましく、1~30μm程度のものがより好ましい。
本発明に用いられる「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子」は、シロドシンのほかに、適当な添加剤を使用するのが望ましく、シロドシンと適当な添加剤との混合物、シロドシンと適当な添加剤との造粒物及び適当な添加剤をシロドシンで被覆したもの等が挙げられる。
【0012】
薬物粒子に用いられる添加剤としては、シロドシンと配合変化を起こさない種々の添加剤が用いることができ、例えば、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、酸味剤、発泡剤、香料、着色剤等を適宜用いることができる。崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、クロスポビドン、結晶セルロース等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、トレハロース、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳糖、果糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。結合剤としては、例えば、デンプン類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、デキストリン、ゼラチン、プルラン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。甘味料としては、例えば、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、ステビア、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。酸味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、L-アスパラギン酸、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、L-グルタミン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。香料としては、例えば、ストロベリー、ヨーグルト、バナナ、パイナップル、オレンジ、レモン、メントール、ピーチ、アップル、チョコレート、ココア、バニラ、紅茶、抹茶等が挙げられる。着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号等の食用色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、カラメル色素、酸化チタン等が挙げられる。
【0013】
本発明において薬物粒子に用いられる添加剤としては、賦形剤又は崩壊剤として、例えば、糖又は糖アルコール及びデンプン類等が好ましく、デンプン類がより好ましい。糖又は糖アルコールとしては、例えば、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等が挙げられ、D-マンニトールがより好ましい。デンプン類としては、例えば、トウモロコシデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプンがより好ましい。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が好ましく、タルクがより好ましい。結合剤としては、例えば、デンプン類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、デキストリン、ゼラチン、プルラン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースがより好ましい。これらの添加剤は、必要に応じて、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のマスキング粒子中のシロドシンの含量は、30質量%以下が好ましく、5~25質量%がより好ましく、5~16質量%が更に好ましい。
本発明に用いられる薬物粒子中のシロドシンの含量は、50質量%以下が好ましく、例えば、10~40質量%、10~30質量%、20~27質量%等である。
【0014】
(マスキング粒子の製造方法)
本発明のマスキング粒子は、核顆粒コーティング法、造粒マトリックス法、造粒コーティング法等のマスキング粒子を製造する際に一般的に用いられる方法により、製造することができる。例えば、シロドシンと添加剤を混合又は造粒して得られる薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆することにより製造することもできる。これら一連の製造において、造粒又は被覆する方法として、高速混合撹拌造粒法、転動流動層造粒法、流動層造粒法等が挙げられ、流動層造粒法が好ましい。
具体的には、例えば、核顆粒コーティング法では、市販又は造粒した結晶セルロース、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、白糖等の核粒子を、シロドシンを含有する分散液及び非腸溶性高分子を含有するコーティング剤の溶液又は分散液で順次被覆、又はこれらの混合液で被覆して、マスキング粒子を製造することもできる。
【0015】
また、例えば、造粒マトリックス法では、シロドシンと添加剤(例えば、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、軽質無水ケイ酸等)との混合物を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤の溶液又は分散液を噴霧しながら造粒又は被覆することにより、マスキング粒子を製造することもできる。
また、例えば、造粒コーティング法では、シロドシンと添加剤(例えば、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、軽質無水ケイ酸等)との混合物を、水溶性結合剤の溶液を噴霧しながら造粒した後、得られた造粒物を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤の溶液又は分散液を噴霧しながら被覆することにより、マスキング粒子を製造することもできる。水溶性結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースが好ましい。
上記の方法において、造粒マトリックス法又は造粒コーティング法が好ましく、造粒コーティング法がより好ましい。
【0016】
非腸溶性高分子を溶解又は分散させるために用いられる溶媒は、特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン及び水、又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、エタノール及び水が好ましく、水がより好ましい。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEは水に不溶であるが、酸性(pH5以下)の水に溶解した水溶液として用いるか、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEにラウリル硫酸ナトリウムとステアリン酸、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジブチルから選択される少なくとも1つの可塑剤を任意の割合で混合した水分散液として用いることもできる。
【0017】
本発明のマスキング粒子は、製造時の凝集を防ぐため、さらに適当な添加剤でオーバーコートしてから用いてもよく、本発明のマスキング粒子にはオーバーコートしたものも含まれる。ただし、本明細書において、マスキング粒子の質量には、オーバーコートに用いられる添加剤の質量は含まない。オーバーコートに用いられる添加剤としては、例えば、乳糖、グルコース、蔗糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールが挙げられ、好ましくは、D-マンニトールである。
オーバーコートする方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のマスキング粒子に添加剤(例えば、糖又は糖アルコール)の水溶液を噴霧しながら被覆することにより製造することもできる。オーバーコートに用いられる添加剤の含量は、マスキング粒子100質量部に対して、通常1~20質量部、好ましくは2~15質量部であり、さらに好ましくは5~10質量部である。
【0018】
(経口投与製剤)
本発明のマスキング粒子を用いて種々の剤形の経口投与製剤を製造することができる。本発明の経口投与製剤の剤形としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤等が挙げられる。
【0019】
本発明の経口投与製剤は、本発明のマスキング粒子と口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物を用いて、製剤分野において慣用の方法により製造することができる。
【0020】
例えば、錠剤の場合には、本発明のマスキング粒子を、口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物と共に、直接粉末圧縮法(直打法)、造粒法等の公知の方法又はそれに準じた方法で錠剤化することにより、経口投与製剤を製造することもできる。
具体的には、例えば、直打法では、本発明のマスキング粒子と、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の医薬品添加物を含有する混合物を造粒せずに、混合機を用いて混合した後、打錠して経口投与製剤を製造することもできる。
また、例えば、造粒法では、賦形剤、崩壊剤等の混合物を、水、水とエタノールの混合液又は結合剤もしくは崩壊剤の溶液もしくは懸濁液等を用いて造粒後、本発明のマスキング粒子、滑沢剤等と混合機を用いて混合した後、打錠してもよいし、本発明のマスキング粒子と賦形剤、崩壊剤等の混合物を、水、水とエタノールの混合液又は結合剤もしくは崩壊剤の溶液もしくは懸濁液等を用いて造粒後、さらに滑沢剤を添加して混合機を用いて混合した後、打錠して経口投与製剤を製造することもできる。
【0021】
また、顆粒剤においても、錠剤の造粒方法に準じて流動層造粒を行うか、撹拌造粒を行うことにより製造することもできる。散剤等も錠剤の直打法に準じて医薬品添加物を混合することにより製造することもできる。
【0022】
口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物としては、前記薬物粒子に用いられる添加剤を用いることができるが、崩壊剤としては、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン等が好ましい。賦形剤としては、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等が好ましい。滑沢剤としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸等が好ましい。これらの医薬品添加物は、必要に応じて、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(経口投与製剤の製造例)
以下、本発明の経口投与製剤の製造方法を例示するが、これに限られるものではない。
【0024】
〔製造例1〕
例えば、本発明のマスキング粒子と乳糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース及びクロスポビドンから選択される少なくとも1つの医薬品添加物とを、混合機を用いて混合することにより、散剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0025】
〔製造例2〕
例えば、本発明のマスキング粒子と乳糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、クロスポビドン、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される少なくとも1つの医薬品添加物とを、混合機を用いて混合した後、その混合物を打錠することにより、錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0026】
〔製造例3〕
例えば、乳糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、トウモロコシデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等のデンプン類及び結晶セルロースから選択される少なくとも1つの医薬品添加物を混合し、部分アルファー化デンプン又はクロスポビドンの溶液又は分散液を噴霧しながら造粒することにより、顆粒(1)を製造することもできる。前記混合、造粒工程は、高速混合撹拌造粒法、転動流動層造粒法、流動層造粒法等を用いることができ、好適には流動層造粒法である。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(1)、さらにフマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される少なくとも1つの滑沢剤を、混合機を用いて混合した後、打錠することにより、錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0027】
〔製造例4〕
例えば、乳糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、トウモロコシデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等のデンプン類及び結晶セルロースから選択される少なくとも1つの医薬品添加物を混合し、水又は水とエタノールの混合液を噴霧しながら造粒することにより、顆粒(2)を製造することもできる。前記混合、造粒工程は、高速混合撹拌造粒法、転動流動層造粒法、流動層造粒法等を用いることができ、好適には流動層造粒法である。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(2)、さらにフマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される少なくとも1つの滑沢剤を、混合機を用いて混合した後、打錠することにより錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0028】
〔製造例5〕
例えば、本発明のマスキング粒子及び前記顆粒(1)又は前記顆粒(2)を、混合機を用いて混合し、顆粒剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0029】
〔製造例6〕
例えば、D-マンニトール及び結晶セルロースの混合物を、流動層造粒乾燥機を用いて混合し、これにクロスポビドンの水分散液を噴霧しながら造粒を行った後に、整粒機を用いて整粒し、顆粒(3)を製造することもできる。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(3)及びフマル酸ステアリルナトリウムを、混合機を用いて混合した後、打錠することにより錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0030】
〔製造例7〕
例えば、D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンの混合物を、流動層造粒乾燥機を用いて混合し、これに水を噴霧しながら造粒を行った後に、整粒機を用いて整粒し、顆粒(4)を製造することもできる。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(4)及びフマル酸ステアリルナトリウムを、混合機を用いて混合した後、打錠することにより錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0031】
〔製造例8〕
上記製造例6又は7において、結晶セルロースの代わりにトウモロコシデンプン、クロスポビドンの代わりに部分アルファー化デンプンを用いて、製造例6又は7と同様の方法により、錠剤を製造することもできる。
【0032】
本発明のマスキング粒子又は経口投与製剤を製造する工程において、「造粒」、「被覆」、「混合」、「打錠」は、製剤技術分野における慣用の方法を用いて行えばよい。「造粒」及び「被覆」には、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒法、高速混合攪拌造粒機等を用いることもできる。「混合」には、例えば、V型混合機、ボーレコンテナ等を用いることもできる。「打錠」は、例えば、単発打錠機、ロータリー打錠機等を用いることもできる。打錠圧は、例えば、1~20 kNであり、好適には2~15 kNである。
【0033】
本発明のマスキング粒子及びこれを含有する経口投与製剤は、良好な苦味マスキング効果を示す。苦味マスキング効果は、後述する苦味官能試験により定量的に評価することができる。苦味スコアの平均点が2以下であるものが好ましく、1以下であるものがより好ましい。また、苦味を感じ始めるまでの時間は、30秒以上が好ましく、40秒以上、又は50秒以上のように、より長いほうが好ましい。
【0034】
本発明の経口投与製剤は、消化管内のpHに依存せずに速やかな溶出性を示す。即ち、本発明の経口投与製剤は、日本薬局方溶出試験第1液(pH約1.2)及び第2液(pH約6.8)において、15分後の溶出率が80%以上を示し、好ましくは、日本薬局方溶出試験第1液(pH約1.2)において、15分後の溶出率が85%以上であり、より好ましくは、日本薬局方溶出試験第2液(pH約6.8)においても、15分後の溶出率が85%以上である。溶出性は、後述する溶出試験により定量的に評価することができる。
【0035】
本発明の経口投与製剤は、水なしで服用するために、口腔内において短時間で崩壊するものが好ましい。例えば、後述する口腔内崩壊試験において、平均口腔内崩壊時間が、通常、60秒以内、好ましくは40秒、さらに好ましくは30秒以内となるように調整すればよい。
本発明の経口投与製剤は、製造や輸送の利便性等から、適度な硬度を有するものが好ましい。例えば、後述する硬度試験において、通常、20 N以上、好ましくは30 N以上、さらに好ましくは40 N以上となるように調整すればよい。
口腔内崩壊時間や硬度は、適宜、医薬品添加物の種類や量、製造方法(例えば、造粒方法等)、製造条件(例えば、打錠圧等)等を選択することにより調整することもできる。
【0036】
本発明の経口投与製剤において、単位製剤当たりのシロドシン含量は、通常、2~8 mgであり、好ましくは、2 mg、4 mg又は8 mgである。
本発明の経口投与製剤は、例えば、錠剤の場合、1錠当たりの質量として50~500 mg、50~300 mg、100~250 mg、100~200 mg等を挙げることができ、その際のシロドシン含量としては、0.4~16%を挙げることができる。顆粒剤、散剤等の場合、1回投与量当たりの質量として、200~3000 mg、500~2000 mg、500~1000 mg等を挙げることができ、その際のシロドシン含量としては、0.06~4%を挙げることができる。
【0037】
本発明の経口投与製剤を実際の治療に使用する場合、活性成分の投与量は、患者の性別、年齢、体重、疾患の程度等によって適宜決定されるが、概ね成人1日あたり、1~16mgの範囲で投薬することができる。好ましくは、成人1日あたり、2~8mgを1日1回又は2回に分けて経口投与する。
【発明の効果】
【0038】
本発明のマスキング粒子は、製剤学的に安定であり、シロドシンの極めて強烈な苦味を抑制し、市販のシロドシンの錠剤(ユリーフ(登録商標)錠)と同様の速やかな溶出性を有するので、水なしでも、異物感がなく服用できる経口投与製剤に用いることができる。また本発明の経口投与製剤は、シロドシン特有の苦味を抑制し、市販のシロドシンの錠剤(ユリーフ(登録商標)錠)と同様の速やかな溶出性及び生物学的同等性を有することから、水なしでも異物感がなく服用できるシロドシン含有製剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の内容を以下の試験例、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【実施例0040】
〔試験例1〕
苦味官能試験
健常人男性1~3名において、実施例1~3及び比較例1で調製したマスキング粒子約200 mg又は実施例4~9で調製した錠剤 1 錠をそれぞれ口腔内に含み、苦味を感じた時の苦味を表1に従い点数を付け、平均を求めた。また、錠剤については、錠剤を口腔内に含み、舌で軽く転がしながら錠剤を崩壊させ、苦味を感じ始めるまでの時間も評価した。
【0041】
【0042】
〔試験例2〕
口腔内崩壊試験
健常人男性1~3名において、試験製剤及び実施例4~11で調製した錠剤 1 錠をそれぞれ口腔内に含み、舌で軽く転がしながら錠剤を崩壊させ、口腔内で錠剤が崩壊した時間を測定し、平均を求めた。
【0043】
〔試験例3〕
硬度試験
試験製剤及び実施例5~11で調製した錠剤の硬度を、硬度計(PC-30、岡田精工社製)を用いて測定した。
【0044】
〔試験例4〕
溶出試験方法1
実施例1~3及び比較例1で調製した顆粒剤について、第16改正日本薬局方記載の溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50 rpm、試験液として日本薬局方溶出試験第2液を用いて溶出試験を行い、紫外吸光光度計を用いて15分後における溶出率を求めた。なお、溶出率は、各製剤について試験を2回行い、その平均値を求めた。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:270 nm、350 nm)
【0045】
〔試験例5〕
溶出試験方法2
試験製剤及び実施例4~11で調製した錠剤について、第16改正日本薬局方記載の溶出試験法パドル法に従い、パドル回転数50 rpm、試験液として日本薬局方溶出試験第2液を用いて溶出試験を行い、サンプリング液中のシロドシンを高速液体クロマトグラフ法で定量して溶出率を求めた。なお、溶出率は、各製剤について、無作為に2~3個抽出して試験を行い、その平均値を求めた。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:270 nm)
【0046】
〔試験例6〕
溶出試験方法3
試験製剤について、試験液として日本薬局方溶出試験第1液を用いて、試験例5と同様に溶出試験を行い、溶出率を求めた。その結果、試験製剤の15分後の溶出率は102.1%であった。
【0047】
〔試験例7〕
粒度分布測定
ロボットシフター(RPS-205型、セイシン企業社製)を用いて、ふるい分けにより粒度分布を測定し、50%粒子径(質量基準メジアン径)を求めた。
【0048】
〔試験例8〕
配合変化試験
シロドシンと各種高分子基材を、1:1の質量比率で混合し、温度40℃、相対湿度75%で、4週間保存した後、配合変化を確認した。なお、分解物は液体クロマトグラフ法により定量し、変色については、肉眼観察で変色の程度を確認した。
定量方法
シロドシン20 mgに相当する試料を秤取して試料溶液を調製し、液体クロマトグラフ法により試験を行い、各々のピーク面積を自動積分法により測定して、面積百分率法により分解物(KMD-3241)の含有率(%)を求めた。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:225 nm)
【0049】
【表2】
-:変化なし
+:やや変化あり
++:変化あり
+++:著しい変化あり
【0050】
表2に示すとおり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート AS-MFは分解物の増加が顕著であり不適であった。また、メタクリル酸コポリマーL及び乾燥メタクリル酸コポリマーLDは色調の変化及び分解物の増加が顕著であり不適であった。
【0051】
〔試験例9〕
生物学的同等性試験
(1)試験方法
健康成人男性を対象として、空腹時に、シロドシン4mgを含有する試験製剤を口腔内で崩壊させて水なしで単回経口投与した場合と、シロドシン4mgを含有する市販錠(標準製剤)を水とともに単回経口投与した場合の血漿中シロドシン濃度を測定し、両製剤間の生物学的同等性を検討した。
(2)被験薬
標準製剤は、市販のユリーフ(登録商標)4mg錠を使用した。
試験製剤は、実施例10の方法に準じて表3記載の組成の錠剤を作製した。
【0052】
【表3】
(3)評価項目
生物学的同等性評価項目として、AUC
0-48(被験薬投与後48時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積)及びCmax(最高血漿中濃度)を測定する。後発医薬品ガイドラインの判定基準等に従い、両製剤の生物学的同等性を示すことができる。
(4)結果
試験製剤及び標準製剤のAUC
0-48及びCmax、試験製剤の標準製剤に対する幾何平均値の比及び90%信頼区間を表4に示す。その結果、いずれも後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(平成24年2月29日薬食審査発0229第10号)(後発医薬品ガイドライン)の生物学的同等性の判断基準(log(0.8)~log(1.25))の範囲内であり、標準製剤と生物学的に同等であることが確認された。
なお、試験製剤を水とともに単回経口投与した場合についても、同様に標準製剤と生物学的に同等であることが確認された。
【0053】
【0054】
実施例1
シロドシン100 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)300 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)75 g及びタルク(松村産業社製)25 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)100 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)10 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)15 g及びタルク(松村産業社製)35 gを精製水に添加したコーティング液をスプレーノズルで噴霧し、造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-1)を得た。
D-マンニトール(三菱フードテック社製)948 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)41 g及び部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)11 gを用いて、常法に従い、造粒物(b-1)を得た。
マスキング粒子(a-1)528 mg、造粒物(b-1)3101.8 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)60 mg及び軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製)20 mgを混合し、単位製剤当たりの質量199.5 mg中にシロドシン4 mgを含有する顆粒剤を得た。
【0055】
実施例2
シロドシン33.3 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)366.7 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)75 g及びタルク(松村産業社製)25 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)100 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)10 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)15 g及びタルク(松村産業社製)35 gを精製水に添加したコーティング液をスプレーノズルで噴霧し、造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-2)を得た。
マスキング粒子(a-2)792 mg、造粒物(b-1)1477 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)175 mg、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)37.5 mg及び軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製)12.5 mgを混合し、単位製剤当たりの質量249.4 mg中にシロドシン4 mgを含有する顆粒剤を得た。
【0056】
実施例3
シロドシン100 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)300 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)75 g及びタルク(松村産業社製)25 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへ固形分濃度30%のエチルセルロース水分散液(旭化成ケミカルズ社製)333.3 g及びクエン酸トリエチル(和光純薬工業社製)20 gを精製水に添加したコーティング液をスプレーノズルで噴霧し、造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-3)を得た。
マスキング粒子(a-3)496 mg、造粒物(b-1)3134.0 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)60 mg及び軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製)20 mgを混合し、単位製剤当たりの質量199.5 mg中にシロドシン4 mgを含有する顆粒剤を得た。
【0057】
実施例4
シロドシン120 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)348 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)90 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)12 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)180 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)18 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)27 g及びタルク(松村産業社製)63 gを精製水に添加し、コーティング液を得た。
得られた薬物粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして150質量部を被覆した。得られたコーティング顆粒を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-4)を得た。
D-マンニトール(三菱フードテック社製)948 g及びクロスポビドン(ISP社製)52 gを用いて、常法に従い造粒物(b-2)を得た。
マスキング粒子(a-4)592 mg、造粒物(b-2)3038 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg及びステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)80 mgを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E,岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約5 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量199.5 mgの錠剤を得た。
【0058】
実施例5
シロドシン100 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)300 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)75 g及びタルク(松村産業社製)25 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)75 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)7.5 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)11.25 g、タルク(松村産業社製)26.25 g及び固形分濃度30%のエチルセルロース水分散液(旭化成ケミカルズ社製)250 gを精製水に添加したコーティング液をスプレーノズルで噴霧し、造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-5)を得た。
マスキング粒子(a-5)556 mg、造粒物(b-2)3074 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)60 mg及び軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製)20 mgを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼11×6 mm、打錠圧約7 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量199.5 mgの錠剤を得た。
【0059】
実施例6
シロドシン120 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)348 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)90 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)12 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)180 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)18 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)27 g及びタルク(松村産業社製)63 gを精製水に添加し、コーティング液(c-1)を得た。
また、D-マンニトール(三菱フードテック社製)50 gを精製水に添加し、コーティング液(c-2)を得た。
得られた薬物粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-1)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして150質量部を被覆した。得られたコーティング顆粒を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-2)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られたコーティング顆粒を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-6)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-6)976.8 mg、造粒物(b-1)4468.2 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)420 mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)120 mgを、混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約5 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量199.5 mgの錠剤を得た。
【0060】
実施例7
シロドシン120 g、部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)438 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)12 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)240 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)24 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)36 g及びタルク(松村産業社製)84 gを精製水に添加し、コーティング液(c-3)を得た。
得られた薬物粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-3)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして200質量部を被覆した。得られたコーティング顆粒を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-7)を得た。
マスキング粒子(a-7)984 mg、造粒物(b-1)4461 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)420 mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)120 mgを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約5 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量199.5 mgの錠剤を得た。
【0061】
実施例8
シロドシン120 g、アルファー化デンプン(日澱化学社製)441.6 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)8.4gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
得られた薬物粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-3)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして200質量部を被覆し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-2)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られた顆粒を30号の篩を用いて篩過し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-8)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-8)721.6 mg、造粒物(b-1)2918.4 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)80 mgを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約7 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量200.0 mgの錠剤を得た。
【0062】
実施例9
シロドシン4400 g、部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)16192 g及びタルク(松村産業社製)1100 gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)308 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(ミルマイスト、フロイント産業社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)6825 g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)682.5 g、ステアリン酸(マリンクロット社製)1023.8 g及びタルク(松村産業社製)2388.8 gを精製水に添加し、コーティング液(c-4)を得た。
また、D-マンニトール(三菱フードテック社製)3000 gを精製水に添加し、コーティング液(c-5)を得た。
得られた薬物粒子16250 gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)に入れ、コーティング液(c-4)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして175質量部を被覆し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子にコーティング液(c-5)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られた顆粒を30号の篩を用いて篩過し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-9)を得た。
D-マンニトール(フロイント産業社製)19399 g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製)4095 g及びクロスポビドン(ISP社製)1706 gを用いて、常法に従い造粒物(b-3)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-9)343mg、造粒物(b-3)1477mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)140 mg及びステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)40 mgを、混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約6 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量200.0 mgの錠剤を得た。
【0063】
実施例10
シロドシン4400 g、部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)16192 g及びタルク(松村産業社製)1100 gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)308gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
得られた薬物粒子16250 gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)に入れ、コーティング液(c-4)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして175質量部を被覆し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子にコーティング液(c-5)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られた顆粒を30号の篩を用いて篩過し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-10)を得た。
D-マンニトール(フロイント産業社製)19399 g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製)4095 g及びクロスポビドン(ISP社製)1706 gを用いて、常法に従い造粒物(b-4)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-10)171.5 g、造粒物(b-4)738.5 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)70 g及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)20 gを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、ロータリー打錠機(CLEANPRESS Correct 12HUK、菊水製作所社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約7 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量200.0 mgの錠剤を得た。
【0064】
実施例11
シロドシン120 g、部分アルファー化デンプン(National Starch&Chemical社製)441.6 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)8.4 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0 mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
得られた薬物粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-3)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして200質量部を被覆し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子500 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)に入れ、コーティング液(c-2)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られた顆粒を30号の篩を用いて篩過し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-11)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-11)721.6 mg、造粒物(b-1)2918.4 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)80 mgを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、単発打錠機(N-30E、岡田精工社製)を用い、杵臼8 mm、打錠圧約7 kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4 mgを含有する質量200.0 mgの錠剤を得た。
【0065】
比較例1
シロドシン100 g、D-マンニトール(三菱フードテック社製)300 g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)75 g及びタルク(松村産業社製)25 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへ固形分濃度30%の酢酸ビニル樹脂水分散液(BASF社製)166.7 g、クエン酸トリエチル(和光純薬工業社製)2.5 g、ポリビニルピロリドン(ISP社製)37.5 g及び精製水を混合し、さらにタルク(松村産業社製)25 gを添加、混合したコーティング液をスプレーノズルで噴霧し、造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ0.55 mmにて整粒し、マスキング粒子(a-12)を得た。
マスキング粒子(a-12)492 mg、造粒物(b-1)3138.0 mg、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)280 mg、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)60 mg及び軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製)20 mgを混合し、1錠当りシロドシン4 mgを含有する質量199.5 mgの顆粒剤を得た。
【0066】
試験例1~7で測定したマスキング粒子の平均粒子径及びマスキング粒子を含有する顆粒剤及び錠剤の苦味、苦味を感じ始めるまでの時間、口腔内崩壊時間、硬度及び溶出率の結果を表5に示す。
【0067】
【0068】
単位製剤中に含まれるシロドシン、薬物粒子、非腸溶性高分子及びマスキング粒子の各質量及び単位製剤当たりの総質量を表6に示す。
【0069】
本発明により、極めて苦味の強い薬剤であるシロドシンを、異物感なく、水なしでも服用でき、かつ前立腺肥大症に伴う排尿障害等の治療に有効な血中濃度を再現できる溶出性を備えた、新規な経口投与製剤を提供することができる。
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部である、マスキング粒子。