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特開2023-63388スチレン系樹脂組成物、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063388
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/48 20060101AFI20230427BHJP
   C08J 9/16 20060101ALI20230427BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20230427BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20230427BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20230427BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230427BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20230427BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20230427BHJP
   B29B 9/16 20060101ALI20230427BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B29B7/48
C08J9/16 CET
B29C48/40
B29C48/345
B29C48/88
B29C48/25
B29B9/06
B29B9/12
B29B9/16
B29C44/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036939
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2018016868の分割
【原出願日】2018-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017022088
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沓水 竜太
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 義仁
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率、即ち、高い断熱性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるスチレン系樹脂組成物、および、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】スチレン系樹脂及び炭素を二軸押出機に供給し溶融混練する、スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記二軸押出機において、比エネルギーが0.13kWh/kg以上である、スチレン系樹脂組成物の製造方法により達成できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂及び炭素を二軸押出機に供給し溶融混練する、スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記二軸押出機において、比エネルギーが0.13kWh/kg以上である、スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記炭素の含有量が、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~90重量%である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~2のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上である、請求項4の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物にさらに発泡剤が添加される、発泡性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給、溶融混練する工程、前記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有スチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより切断する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上0.41kwh/kg未満である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給、溶融混練する工程、前記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じてスチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、カッターにより切断してスチレン系樹脂粒子を得る工程、前記スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させて発泡剤を含浸させる工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記比エネルギーが0.16kwh/kg以上0.41kwh/kg未満である、請求項7または8に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記二軸押出機の先端における樹脂温度が160℃以上210℃未満である、請求項7~9のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
前記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
前記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmである、請求項7~11のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項13】
前記炭素が前記スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~8重量%含有される、請求項7~12のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項14】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が15.0%/(mg/ml)以上である、請求項12もしくは13に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項15】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上である、請求項12~14のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項16】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下である、請求項7~15のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項17】
前記熱伝導率が、0.0320(W/mK)以下である、請求項16に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂組成物、および発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。中でも、近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性向上による省エネルギー化が志向されつつあり、スチレン系樹脂発泡成形体の需要拡大が期待されている。
【0003】
ただし、スチレン系樹脂発泡成形体は、断熱材としてはグラスウール等他素材との競合市場にあるゆえ、スチレン系樹脂発泡成形体の製造にあたっては、徹底したコストダウンが求められている。スチレン系樹脂発泡成形体は、発泡倍率が大きくなるほど熱伝導率が大きくなり断熱性が悪化するため、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率をより低くすることが望まれる。熱伝導率がより低いスチレン系樹脂発泡成形体であれば、発泡倍率をより高くした場合にも、発泡倍率の低い従来のスチレン系樹脂発泡成形体と同等の断熱性が得られるため、原料である発泡性スチレン系樹脂粒子の使用量を減らすことができる。従って、スチレン系樹脂発泡成形体を備える断熱材を安価に製造することができる。
【0004】
また、スチレン系樹脂発泡成形体に含有されるブタン又はペンタン等の発泡剤は、熱伝導率の低減効果があるが、このような発泡剤は、時間の経過と共にスチレン系樹脂発泡成形体から逸散して大気(空気)と置換されるため、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率は時間経過と共に大きくなり、従って、時間経過と共に断熱性は悪化することが知られている。
【0005】
そのため、スチレン系樹脂発泡成形体に含有されるブタン又はペンタン等の発泡剤が空気に置換された後も、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率を低く維持することが求められている。
【0006】
上記事情から、スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率をより低くするべく、種々検討がなされており、スチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用する方法が知られている。輻射伝熱抑制剤は、発泡成形体中を伝わる伝熱機構のうち輻射伝熱を抑制することができる物質であって、樹脂、発泡剤、セル構造、及び密度が同一である無添加系の発泡成形体と比較して、熱伝導率を低くすることができる効果を有する。
【0007】
例えば、特許文献1には、35g/L以下の密度を有する発泡体をもたらすことができ、かつ均斉に分布されたグラファイト粉末を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
【0008】
特許文献2には、密度が10~100kg/m3、独立気泡率が60%以上、平均気泡径が20~1000μmであり、グラファイト粉を0.05~9重量%含有し、このグラファイト粉は、アスペクト比が5以上、体積平均粒子径(50%粒子径)が0.1~100μm、比表面積が0.7m2/cm3以上、90%粒子径を10%粒子径で除した値1~20である、スチレン系樹脂発泡成形体が記載されている。
【0009】
特許文献3には、グラファイト粒子を含有したスチレン系樹脂マイクロペレットに、炭素数6~10の芳香族炭化水素の存在下で、スチレン系単量体をシード重合すると同時に発泡剤を投入する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。
【0010】
特許文献4には、ポリスチレン系樹脂、難燃剤、グラファイト、及び揮発性発泡剤を含む樹脂組成物を押出機内で溶融混練し、得られた溶融混練物をダイから加圧された水中に押出し、押出された溶融混練物を切断することにより発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法が提案されている。
【0011】
特許文献5には、平均粒径が50μmを超えるグラファイトを0.1~25質量%含有する発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
【0012】
特許文献6には、スチレン及び必要に応じてスチレンに共重合可能なモノマー化合物をグラファイト粒子の存在下に懸濁水性液中で重合させ、重合前、重合中又は重合後に発泡剤を添加する、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。
【0013】
特許文献7には、グラファイト及びノニオン性界面活性剤の存在下に懸濁水性液中で重合され、DIN52612に準じて10℃で測定した熱伝導率が32mW/m・K未満、及び密度が25g/L未満である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2001-525001号
【特許文献2】特開2005-2268号
【特許文献3】特表2009-536687号
【特許文献4】特開2013-75941号
【特許文献5】特表2002-530450号
【特許文献6】特表2001-522383号
【特許文献7】特表2008-502750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1~7の様に、スチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用する方法によって、低い熱伝導率、即ち高い断熱性能を有するスチレン形樹脂発泡体を得ることができる。
【0016】
グラファイト等の輻射伝熱抑制剤をスチレン系樹脂に含有させる方法としては、大別して、スチレン単量体の重合工程においてグラファイトを含有させる方法と、押出機等の混練設備を用いて予め重合されたスチレン系樹脂とグラファイトを溶融混練する方法がある。これらの製造方法のうち、押出混練設備を用いた溶融混練法は、初期投資額及び製造の簡便性の観点から優れるものの、発泡性及び断熱性などの性能面については、さらなる改善の余地がある。また、スチレン系樹脂発泡体の他素材に対する競争力をより高めるために、製造コストの更なる低減が望まれる。
【0017】
従って、本発明の目的は、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率、即ち、高い断熱性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるスチレン系樹脂組成物、および、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願の発明者らは、前述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、炭素およびスチレン系樹脂との混練を特定の溶融混練条件に制御することによって、得られる溶融混練物の断熱性を向上させられることを見出した。中でも、スチレン系樹脂発泡成形体に使用した場合に、グラファイトを含有しているにもかかわらず、表面美麗性を損なうことなく、高発泡倍率及び高独立気泡率であり、低熱伝導率であり、熱伝導率の経時的な上昇が顕著に抑制され、かつ、断熱性が長期的に高いスチレン系樹脂発泡成形体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は、スチレン系樹脂及び炭素を二軸押出機に供給し溶融混練する、スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記二軸押出機において、比エネルギーが0.13kWh/kg以上である、スチレン系樹脂組成物の製造方法に関する(以下、「本発明におけるスチレン系樹脂組成物の製法」と称することがある。)。
【0020】
本発明におけるスチレン系樹脂組成物の製法において、上記炭素の含有量が、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~90重量%であることが好ましい。
【0021】
本発明のスチレン系樹脂組成物の製法において、上記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭グラファイト、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
本発明におけるスチレン系樹脂組成物の製法において、上記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmであることが好ましい。
【0023】
本発明におけるスチレン系樹脂組成物の製法において、上記スチレン系樹脂組成物中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、上記スチレン系樹脂組成物の製法において、上記スチレン系樹脂組成物にさらに発泡剤を添加させることで発泡性スチレン系樹脂組成物を製造することができる。
【0025】
また、本発明における第一の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給、溶融混練する工程、前記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤を含有するスチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより切断する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上0.41kwh/kg未満である。
【0026】
本発明における第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給し溶融混練する工程、上記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じてスチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、カッターにより切断してスチレン系樹脂粒子を得る工程、上記スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させて発泡剤を含浸させる工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、上記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上である(以下、第一の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法および第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を単に「本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法」と称することがある。)。
【0027】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記比エネルギーが0.16kwh/kg以上0.41kwh/kg未満であることが好ましい。
【0028】
本発明のける発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記二軸押出機の先端における樹脂温度が160℃以上210℃未満であることが好ましい。
【0029】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子において、上記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭グラファイト、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmであることが好ましい。
【0031】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記炭素が上記スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~8重量%含有されることが好ましい。
【0032】
本発明における泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記発泡性スチレン系樹脂粒子の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が15.0%/(mg/ml)以上であることが好ましい。
【0033】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記発泡性スチレン系樹脂粒子中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが好ましい。
【0034】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の製法において、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下であることが好ましく、0.0320(W/mK)以下がより好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、炭素の分散性が良好で、断熱性に優れるスチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂組成物を製造することができる。当該スチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂組成物を用いることにより、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率、即ち断熱性の高いスチレン系樹脂発泡成形体、および、当該発泡成形体を与える発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができる。
【0036】
本発明によれば、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率、即ち断熱性の高いスチレン系樹脂発泡成形体を与えうる発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(スチレン系樹脂) 本発明で用いられるスチレン系樹脂は、スチレン単独重合体(スチレンホモポリマー)のみならず、本発明に係る効果を損なわない範囲で、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体とが共重合されているものであっても良い。ただし、後述する臭素化スチレン・ブタジエン共重合体は除く。
【0038】
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びトリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2)-クロロフェニルマレイミド、N-(4)-ブロモフェニルマレイミド、及びN-(1)-ナフチルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0039】
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、前述のスチレン単独重合体、及び/又は、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体との共重合体に限らず、本発明に係る効果を損なわない範囲で、前述の他の単量体又は誘導体の単独重合体、又はそれらの共重合体とのブレンド物であっても良い。
【0040】
本発明で用いられるスチレン系樹脂には、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、及び/又は、ポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドすることもできる。
【0041】
本発明で用いられるスチレン系樹脂の中では、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性、難燃性、緩衝性のバランスに優れることから、スチレンホモポリマー、スチレン-アクリロニトリル共重合体、又はスチレン-アクリル酸ブチル共重合体が望ましい。
【0042】
本発明におけるスチレン系樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と称する。)は、1~15g/10分のものを用いることが好ましい。MFRがこの範囲にあると、後述する二軸押出機での炭素とスチレン系樹脂との溶融混練時に、炭素の分散に必要な比エネルギーが得られやすくなり、結果として、優れた断熱性能を発揮するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるスチレン系樹脂組成物を得やすい傾向にある。また、発泡性(高倍率、高独気率)、表面美麗性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を得やすい傾向にある。そして、得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、圧縮強度、曲げ強度または曲げたわみ量といった機械的強度や、靱性などの特性のバランスがとれたものとなる。より好ましい範囲は、2~10g/10分である。なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210により測定される値である。
【0043】
(炭素) 本発明においては、輻射伝熱抑制剤として、炭素をスチレン系樹脂に添加することにより、高い断熱性を有するスチレン系樹脂発泡成形体が得られる。ここでいう輻射伝熱抑制剤とは、近赤外又は赤外領域の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質をいう。
【0044】
本発明で用いられる炭素としては、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、膨張黒鉛などが挙げられる。これらの炭素は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、コストに対する輻射伝熱抑制効果の高さから、グラファイトが好ましい。グラファイトとしては、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、又は人造黒鉛等が挙げられ、これらのうち、鱗片状黒鉛が高い輻射抑制効果を発揮することから好ましい。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。
【0045】
本発明のグラファイトは平均粒径が2.5~9.0μmであることが好ましく、3.0~6.0μmがより好ましく、4.0~6.0μmが最も好ましい。本明細書において、グラファイトの平均粒径は、ISO13320:2009,JIS Z8825-1に準拠したMie理論に基づくレーザー回折散乱法により粒度分布を測定・解析し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を平均粒径とする。
【0046】
グラファイトは平均粒径が大きいほど製造コストが低くなる。特に平均粒径が2.5μm以上であるグラファイトは、粉砕のコストを含む製造コストが低いため、非常に安価であり、コストを下げることができる。さらに、グラファイトの平均粒径が2.5μm以上であると、断熱性の良好なスチレン系樹脂発泡成形体を製造することが可能となる。平均粒径が9.0μm以下であると、発泡性スチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際に、セル膜が破れにくくなるため、高発泡化が容易であったり、成形容易性が増加したり、スチレン系樹脂発泡成形体の圧縮強度が増加したりする傾向がある。
【0047】
グラファイトの平均粒径が3.0μm以上であれば、より低い熱伝導率、従ってより高い断熱性を得ることができる。また、グラファイトの平均粒径が6.0μm以下であれば、成形体の表面美麗性に優れ、より低い熱伝導率、従ってより高い断熱性を得ることができる。
【0048】
本発明において、炭素の含有量は特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物100重量%において0.1~90重量%であることが好ましく、2~90重量%がより好ましい。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態としてグラファイトを使用する場合、その含有量は熱伝導率低減効果とスチレン系樹脂組成物中のグラファイトの分散性等のバランスの点から、スチレン系樹脂組成物100重量%において2重量%以上90重量%以下であることが好ましい。グラファイト含有量が2重量%以上では、熱伝導率低減効果が十分となる傾向があり、一方、90重量%以下では、スチレン系樹脂組成物中の炭素の分散性に優れる傾向にある。炭素の分散性が優れることにより、断熱性能が優れる傾向にある。
【0050】
尚、本発明におけるグラファイト含有量は、発泡性スチレン系樹脂粒子や、その予備発泡粒子やその発泡成形体として成形される場合は、本発明で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子中、並びに、スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂組成物及び発泡性スチレン系樹脂粒子より与えうるスチレン系樹脂発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体中のグラファイト含有量が、スチレン系樹脂組成物100重量%において2重量%以上8重量%以下であることが好ましい。グラファイト含有量が2重量%以上では、熱伝導率低減効果が十分となる傾向があり、8重量%以下では、炭素とスチレン系樹脂から、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際に、セル膜が破れにくくなるため、高発泡化が容易であり、発泡倍率の制御が容易になる傾向がある。
【0051】
さらに、グラファイト含有量は、3重量%以上7重量%以下であることがより好ましい。グラファイトの含有量が3重量%以上であることにより、熱伝導率が低くなり従ってより高い断熱性を得ることができる。また、グラファイトの含有量が7重量%以下であることにより、発泡性、成形体の表面美麗性が良好となる。
【0052】
(発泡剤) 本発明においては、スチレン系樹脂組成物にさらに発泡剤を含ませて発泡性スチレン系樹脂組成物にしてもよい。発泡性スチレン系樹脂組成物は、後述の発泡性スチレン系樹脂粒子や発泡成形体に成形したり、押出発泡体に成形することができる。本発明で用いられる発泡剤は、特に限定されないが、発泡性と製品ライフのバランスが良く、実際に使用する際に高倍率化しやすい観点から、炭素数3~6の炭化水素が望ましく、更に望ましくは炭素数4~5の炭化水素である。発泡剤の炭素数が3以上であると揮発性が低くなり、発泡性スチレン系樹脂粒子にした場合に発泡剤が逸散しにくくなるため、実際に使用する際に発泡工程で発泡剤が十分に残り、十分な発泡力を得ることが可能となり、高倍率化が容易となるため好ましい。また、炭素数が6以下であると、発泡剤の沸点が高すぎないため、予備発泡時の加熱で十分な発泡力を得やすく、高発泡化が易しい傾向となる。炭素数3~6の炭化水素としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等の炭化水素が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明における発泡剤の添加量は、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、4~10重量部であることが好ましい。発泡性スチレン系樹脂粒子にした場合に発泡速度と発泡力のバランスがより良く、より安定して高倍率化しやすい、という効果を奏する。発泡剤の添加量が4重量部以上では、発泡に必要な発泡力が十分であるから、高発泡化が容易となり、50倍以上の高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を製造し易くなる傾向がある。また、発泡剤の量が10重量部以下であると、難燃性能が良好となると共に、スチレン系樹脂発泡成形体を製造する際の製造時間(成形サイクル)が短くなるため、製造コストが低くなる傾向となる。なお、発泡剤の添加量は、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、4.5~9重量部であることがより好ましく、5~8.5重量部であることがさらに好ましい。
【0054】
(難燃剤) 本発明のスチレン系樹脂組成物には難燃剤を含有してもよい。本発明で用いられる難燃剤としては、特に限定されず、従来からスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が望ましい。本発明で用いられる臭素系難燃剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル))、又は2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物、テトラブロモシクロオクタン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、又は臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009-516019号公報に開示されている)等が挙げられる。これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
臭素系難燃剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、スチレン系樹脂組成物100重量%において臭素含有量は好ましくは0.8重量%以上であることが好ましく、5.0重量%以下であることがより好ましい。臭素含有量が0.8重量%以上であると、難燃性付与効果が大きくなる傾向にあり、5.0重量%以下であると、得られるスチレン系樹脂発泡成形体の強度が増加しやすい。臭素含有量は、より好ましくは1.0~3.5重量%になるように、スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子配合される。
【0056】
(熱安定剤) 本発明においては、さらに、熱安定剤を併用することによって、製造工程における臭素系難燃剤の分解による難燃性の悪化及びスチレン系樹脂の劣化を抑制することができる。本発明における熱安定剤は、用いられるスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、炭素の種類及び含有量、難燃剤の種類及び含有量等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
【0057】
本発明で用いられる熱安定剤としては、臭素系難燃剤含有混合物の熱重量分析における重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、フェノール系安定剤、又はエポキシ化合物が望ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、これらの熱安定剤は、後述するように耐光性安定剤としても使用できる。(ラジカル発生剤) 本発明においては、ラジカル発生剤をさらに含有することにより、臭素系難燃剤と併用することによって、高い難燃性能を発現することができる。
【0058】
本発明におけるラジカル発生剤は、用いるスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、輻射伝熱抑止剤の種類及び含有量、臭素系難燃剤の種類及び含有量に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明で用いられるラジカル発生剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、又はポリ-1,4-イソプロピルベンゼン等が挙げられる。ラジカル発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
(その他の添加剤) 本発明に係るスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、加工助剤、耐光性安定剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、及び顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上のその他添加剤を含有していてもよい。
【0061】
加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、又は流動パラフィン等が挙げられる。
【0062】
耐光性安定剤としては、前述したヒンダードアミン類、リン系安定剤、エポキシ化合物の他、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、又はベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
【0063】
造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、もしくはタルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、又はメチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、もしくはエチレンビスオレイン酸アマイド等の脂肪酸ビスアマイド等が挙げられる。
【0064】
発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、もしくはキシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、もしくはメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又は酢酸エチル、もしくは酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。
【0065】
なお、帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。
【0066】
これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。(スチレン系樹脂組成物の製造方法) 本発明のスチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂組成物の製造方法(以下、単に「本発明のスチレン系樹脂組成物の製法」と称することがある。)は、スチレン系樹脂及び炭素を二軸押出機に供給し、溶融混練する溶融混練工程において、二軸押出機における比エネルギーを0.13kWh/kg以上に制御する。
【0067】
本発明における、スチレン系樹脂および炭素を二軸押出機に供給する形態は、特に限定されないが、本発明の実効性が高い点から、粉状の炭素をスチレン系樹脂と二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましい。即ち、本発明は、炭素とスチレン系樹脂とを予め混練して作製されたマスターバッチを使用するような、事前の炭素とスチレン系樹脂との混練工程を要することなく、炭素とスチレン系樹脂を直接、二軸押出機に供給し溶融混練しスチレン系樹脂組成物を得ることにより、製造コストに優れ、かつ断熱性能に優れたスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるスチレン系樹脂組成物の製造方法を提供することができる。前記二軸押出機における比エネルギー値を特定範囲に確保することにより、スチレン系樹脂中の炭素の分散状態が良好となり、引いては高い断熱性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体を低コストで得ることができることを見出した。
【0068】
なお、本発明は、炭素とスチレン系樹脂とを予め混練して作製されたマスターバッチを使用することを除外するものではない。
【0069】
本発明で使用される二軸押出機は、公知の二軸押出機を使用できるが、好ましくは同方向噛み合い二軸押出機である。連続的にスチレン系樹脂組成物を得ることができる混練設備のうちの単軸押出機は、二軸押出機と比較すると、炭素の分散性が劣る傾向にある。また、バッチ式のミキサー、ニーダー等の混練機は連続式である押出機と比較すると、炭素の分散性には優れる傾向にあるものの、生産性に乏しい傾向にある。以上のことから、性能・コストを両立するスチレン系樹脂組成物の製造方法としては、連続式の二軸押出機が優れる。
【0070】
(溶融混練工程における各条件) 前記スチレン系樹脂組成物の製造工程におけるポリスチレン系樹脂と炭素との二軸押出機における溶融混練工程の各条件について説明する。
【0071】
(比エネルギー) 二軸押出機における比エネルギーは発泡剤の有無に関わらず0.13kWh/kg以上であり、好ましくは0.16kWh/kg以上である。比エネルギーが高いほど炭素の分散状態が優れる傾向にあり、結果として高い断熱性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるポリスチレン系樹脂組成物を得ることができる。0.13kWh/kg未満であると、炭素のポリスチレン系樹脂中における分散が不十分となり、断熱性能が悪化する傾向にある。一方スチレン系樹脂の分解防止の観点から0.50kWh/kg以下であることが好ましい。
【0072】
なお上記比エネルギーとは、二軸押出機に供給する全原料に対して、二軸押出機で行った仕事を単位押出質量当たりで表した値をいい、モーター効率を加味した二軸押出機電動機消費電力量を押出質量、すなわち、単位時間に押し出される全原料の質量で除して求めることができる。
【0073】
前記比エネルギーを制御する方法としては、二軸押出機のシリンダ設定温度を調整する方法、押出機のシリンダ内径(D)に対するスクリュ長(L)、即ちL/Dを調整する方法、スクリュ構成を調整する方法、スクリュの回転数(N)に対する押出量(Q)、即ちQ/Nを調整する方法、使用するスチレン系樹脂のMFRを調整する方法等が挙げられる。
【0074】
二軸押出機のシリンダ設定温度については、原料フィード部分を除いて、100℃~250℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは100~200℃である。シリンダ設定温度が低い程、ポリスチレン系樹脂の粘度が高くなるため、比エネルギーが上昇する傾向にある。尚、押出機の溶融混練部での設定温度が250℃以下の場合、臭素系難燃剤の分解が起こりにくく、所望の難燃性を得ることが可能となり、所望の難燃性を付与するために難燃剤を過剰に添加する必要がないという効果を奏する。一方、押出機の溶融混練部の設定温度が100℃以上の場合には、押出機の負荷が小さくなって押出が安定となる。
【0075】
押出機のL/Dについては、24以上36以下の範囲が好ましく、より好ましくは26以上32以下、さらに好ましくは28以上32以下である。L/Dが小さいと、押出運転の安定性に劣る傾向にある。L/Dが長すぎると設備コストアップに繋がる傾向にある。
【0076】
スクリュ構成については、炭素をスチレン系樹脂中に分配・分散させるニーディングエレメントを使用することが好ましい。使用するニーディングエレメントの数、厚み、角度等の種類は、比エネルギーに応じて適宜調整できるが、炭素をスチレン系樹脂中に分配・分散させるため、発泡剤を樹脂に含有する前に少なくとも1個以上存在することが好ましい。ニーディングエレメントが存在しないと比エネルギーを前記範囲に調整することが困難となり、結果として炭素をスチレン系樹脂に高度に分散させることが困難となる恐れがある。
【0077】
スクリュ回転数については、炭素、並びに他の添加剤、発泡剤の分散性の観点から100rpm以上が好ましく、押出安定性の観点から500rpm以下が好ましい。
【0078】
Q/Nについては、スクリュ1回転当たりの吐出量であり、押出機の量的効率を表すものであり、この値が小さいほど、比エネルギーが大きくなる。
【0079】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法> 本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、以下の2つの方法が挙げられる。
【0080】
第1の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、スチレン系樹脂、炭素、必要に応じて難燃剤、ラジカル発生剤、安定剤等の添加剤を二軸押出機で溶融混練し、小孔を有するダイスを通じてスチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出した後、カッターで切断することによりスチレン系樹脂粒子を得た後、該スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させると共に、発泡剤を供給して、発泡剤をスチレン系樹脂粒子に含有させることで、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る製造方法である。カッターで切断することによる造粒化は、コールドカット法であっても、ホットカット法であってもどちらでもよい。
【0081】
第2の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、スチレン系樹脂、炭素、必要に応じて、難燃剤、ラジカル発生剤、安定剤等の添加剤を二軸押出機に供給、溶融混練し、発泡剤を前記二軸押出機もしくは、二軸押出機以降の分散設備によって樹脂に溶解、分散させ、押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有スチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより溶融樹脂を切断すると共に加圧循環水により冷却固化する方法である。
【0082】
尚、設備の簡便性から、スチレン系樹脂、炭素、及びその他の難燃剤、ラジカル発生剤、安定剤等の添加剤を供給、溶融混練する二軸押出機に直接発泡剤を圧入し、発泡剤を樹脂に溶解・分散させ、押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより溶融樹脂を切断する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が好ましい。
【0083】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法においては、上記第1および第2発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法における溶融混練工程として、上述のスチレン系樹脂組成物の溶融混練工程を同様に適用できる。また、第1および第2発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法におけるスチレン系樹脂組成物(発泡性粒子用スチレン系樹脂組成物)には、上述のスチレン系樹脂組成物で使用される、スチレン系樹脂や、炭素や、その他成分(発泡剤、添加剤等)等を、特に言及がない限り、同様に使用できる。
【0084】
尚、上記第2の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、即ち、スチレン系樹脂、炭素、必要に応じて、難燃剤、ラジカル発生剤、安定剤等の添加剤を二軸押出機に供給、溶融混練し、発泡剤を前記二軸押出機もしくは、二軸押出機以降の分散設備によって樹脂に溶解、分散させ、押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより溶融樹脂を切断すると共に加圧循環水により冷却固化する方法の場合は、比エネルギーは0.41kWh/kg未満であることが好ましく、更に0.33kWh/kg以下であることが好ましい。比エネルギーが高くなることによって、二軸押出機先端の樹脂温度が高くなる傾向にある。0.33kWh/kgを超え、樹脂温度が高くなると発泡性スチレン系樹脂粒子の形状が歪となり、成形性が悪化する恐れがあり、さらに0.41kWh/kg以上であると、更に樹脂温度が上昇する恐れが生じ、結果としてカッティングが困難となり、炭素の分散性は優れるものの発泡性スチレン系樹脂粒子が得られない恐れがある。
【0085】
(二軸押出機先端の樹脂温度) 本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法における、二軸押出機先端樹脂温度については、難燃剤の分解、及び発泡性スチレン系樹脂粒子の切断時に影響を及ぼすか可能性があることから、二軸押出機先端において160℃以上210℃未満であることが好ましく、更に好ましくは、160℃以上190℃未満である。二軸押出機先端における樹脂温度が210℃を超えると難燃剤の分解の恐れがあり、結果として炭素含数スチレン系樹脂組成物の劣化を誘発し、難燃性能の低下に繋がる恐れがある。
【0086】
更に、上記の第2の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法の場合、二軸押出機とダイス間において樹脂の冷却設備を設けない場合は、二軸押出機先端樹脂温度は、樹脂切断時の溶融樹脂の温度に大きな影響を及ぼす可能性がある。この場合、二軸押出機先端樹脂温度が190℃を超えると、ダイスでの樹脂切断時の樹脂温度が高くなることによって、発泡性スチレン系樹脂粒子の形状が歪となる恐れがあり、さらに210℃を超えるとカッターでの切断時にカッターに樹脂が巻きつきやすくなるため、切断が非常に困難になる恐れがある。
【0087】
(造粒工程の各条件) 第一及び第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法におけるスチレン系樹脂粒子の造粒工程の条件について説明する。
【0088】
ダイスは特に限定されないが、例えば、直径0.3mm~2.0mm、望ましくは0.4mm~1.0mmの小孔を有するものが挙げられる。
【0089】
第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度は、発泡剤を含まない状態での樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg+40℃以上であることが好ましく、Tg+40℃~Tg+110℃であることがより好ましく、Tg+60℃~Tg+90℃であることがさらに好ましい。尚、スチレンホモポリマーの場合、Tgは約100℃であるため、好ましい温度範囲は140~210℃であり、更に好ましい範囲は160℃~190℃である。
【0090】
第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+40℃以上であれば、押出された溶融樹脂の粘度が低くなり、小孔詰まりが発生しにくく、実質小孔開口率の低下が起きないため、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の形状が歪もしくは不揃いとなる事態を避けることができる。一方で、ダイスより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+110℃以下であれば、押出された溶融樹脂が固化し易くなり、回転カッターに巻き付き難くなり、安定的に切断できる。
【0091】
第二の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法における循環加圧冷却水に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイスに接触する回転カッターで切断されて小球化され、加圧循環冷却水中を発泡することなく、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。
【0092】
加圧循環冷却水の条件については、使用するスチレン系樹脂、添加剤、発泡剤、炭素の種類、含有量によって調整すべきであるが、ダイスより押し出される溶融樹脂の発泡が抑制され、安定的にカッターで切断される条件が好ましい。具体的には、スチレンホモポリマーの場合、加圧循環冷却水の温度条件としては、好ましくは45℃~75℃、より好ましくは50~65℃である。圧力条件としては、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の真密度が好ましくは950kg/m3~1050kg/m3、より好ましくは1000~1050kg/m3となる様、圧力を調整する。使用する発泡剤の種類にも依存するが、ブタン、ペンタンを発泡剤として使用する場合、好ましくは0.6~2.0MPa、より好ましくは0.7~1.7MPa、更に好ましくは0.8~1.5MPaである。
【0093】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、上記第1の製法での発泡剤の含浸条件等は、一般的に行なわれる条件と同様でよく、適宜設定すればよい。
【0094】
<スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子> 本発明においては、スチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂粒子中の炭素の分散状態が、二軸押出機で与えられる比エネルギー値によって制御可能であり、炭素の分散状態を良好とすることによって、高い断熱性能が発現できることを見出した。
【0095】
(レーザー散乱強度) 本発明においては、特に平均粒径2.5~9.0μmの炭素を使用した場合、炭素の分散状態をレーザー回折散乱法により測定した単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度によって評価可能であることを見出した。
【0096】
本発明のレーザー散乱強度は、以下のようにして求められる。まず、スチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子を含有しないトルエン溶液に波長632.8nmのHe-Neレーザー光を照射した際の透過光の強度Lbと、本発明のスチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子を所定重量含有するトルエン溶液に波長632.8nmのHe-Neレーザー光を照射した際の透過光の強度Lsとから、レーザー散乱強度Ob(%)を式Ob=(1-Ls/Lb)×100から求める。次に、求めたレーザー散乱強度Obから本発明のスチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を求める。そして、求めた単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を所定重量のスチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子の炭素の含有量(重量%)で割って算出されるレーザー散乱強度が、炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度である。
【0097】
本発明に係るスチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が15.0%/(mg/ml)以上であることが好ましい。このレーザー散乱強度が15.0%/(mg/ml)以上であると、高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。具体的には、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下を示す傾向にある。すなわち、高発泡倍率で低い熱伝導率、従って高い断熱性、を得ることができる。さらに、このレーザー散乱強度が17.5%/(mg/ml)以上であると、さらに高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。具体的には、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0320(W/mK)以下を示す傾向にある。すなわち、高発泡倍率で低い熱伝導率、従って高い断熱性、を得ることができる。
【0098】
本発明に係るスチレン系樹脂組成物または発泡性スチレン系樹脂粒子は、炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上であることが望ましい。このレーザー散乱強度が4.0%/(mg/ml)/重量%以上であると、高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。具体的には、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下を示す傾向にある。すなわち、高発泡倍率で低い熱伝導率、従って高い断熱性、を得ることができる。さらに、このレーザー散乱強度が4.9{%/(mg/ml)}/重量%以上であると、さらに高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。炭素の含有量に対して高い熱伝導率低減効果を得ることが可能となる。具体的には、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0320(W/mK)以下を示す傾向にある。すなわち、高発泡倍率で低い熱伝導率、従って高い断熱性、を得ることができる。
【0099】
(予備発泡樹脂粒子及びその製造方法) 本発明の製法で得られるスチレン系樹脂組成物は、マスターバッチとして発泡性スチレン系樹脂粒子の原料として使用されてもよいし、発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂組成物として、発泡性スチレン系樹脂粒子やスチレン系樹脂発泡成形体に成形されてもよい。また、本発明の製法で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡されたのち型内発泡成形体に使用されうる。
【0100】
本発明の製法で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子は、従来公知の予備発泡工程、例えば、加熱水蒸気によって10~110倍に発泡させて予備発泡樹脂粒子とし、必要に応じて一定時間養生させた後、成形に使用すればよい。得られた予備発泡樹脂粒子は、従来公知の成形機を用い、水蒸気によって成形(例えば型内成形)されてスチレン系樹脂発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
【0101】
本発明の製法で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子は高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体に成形することができ、発泡成形体の発泡倍率は、40倍以上が好ましく、60倍以上がより好ましく、80倍以上が特に好ましい。本発明の製法で得られるスチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂粒子によれば80倍以上のスチレン系樹脂発泡成形体とした場合でも低い熱伝導率を達成できるため、製造コストが安く、より高発泡のスチレン系樹脂発泡成形体としても高性能な断熱性能を発現できる。尚、断熱材については、長期間使用されるため、長期間経過後の断熱性能の維持が重要な課題である。本発明における製造方法によって得られるスチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂粒子で成形されるスチレン系樹脂発泡成形体については、スチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを50℃条件で30日間アニーリングし、さらに23℃条件下にて24時間静置した後においても、低い熱伝導率を達成できる。50℃で30日間アニーリングすることにより、スチレン系樹脂発泡成形体中に含有されるブタン、ペンタン等の炭化水素系発泡剤の含有量は0.5%以下となっており、熱伝導率に与える影響は軽微となり、スチレン系樹脂発泡成形体を常温で長期間使用した場合の熱伝導率を評価することができる。
【0102】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下であることが好ましい。即ち、0.0330(W/mK)以下であれば、長期にわたって非常に低い熱伝導率ひいては高い断熱性を維持することができると言える。より好ましくは0.0320(W/mK)以下である。
【0103】
なお、本明細書において、発泡倍率を「倍」又は「cm3/g」という単位で示すがこれらは互いに同じ意味である。
【0104】
本発明のスチレン系樹脂予備発泡粒子及びそのスチレン系樹脂発泡成形体は、平均セル径が、好ましくは70~300μm、より好ましくは90~250μm、さらに好ましくは100~200μmである。平均セル径が前述の範囲にあることによって、断熱性のより高いスチレン系樹脂発泡成形体となる。平均セル径が70μm以上であると、発泡倍率の高倍化が容易となる傾向にあり、また、300μm以下であると、熱伝導率が増加、即ち断熱性能が悪化するのを避けることができる。
【0105】
(発泡成形体の用途) 本発明の製法で得られるスチレン系樹脂組成物および発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて成形される発泡成形体は、面美麗性に優れるとともに、高発泡倍率及び高独立気泡率であり、低熱伝導率であり、熱伝導率の経時的な上昇が顕著に抑制され、かつ、断熱性が長期的に高い。従って、例えば、建築用断熱材、食品容器箱、保冷箱、緩衝材、農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に好適である。
【0106】
本発明の一実施形態は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。
【実施例0107】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0109】
(スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率の測定) 一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用している。また、長期間後において発泡剤が空気に置き換わった場合の熱伝導率を評価するためにスチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、熱伝導率を測定した。
【0110】
50℃で30日間アニーリングすることにより、スチレン系樹脂発泡成形体中に含有されるブタン、ペンタン等の炭化水素系発泡剤の含有量は0.5%以下となっており、熱伝導率に与える影響は軽微となり、スチレン系樹脂発泡成形体を常温で長期間使用した場合の熱伝導率をほぼ正確に評価することができる。
【0111】
より詳しくは、スチレン系樹脂発泡成形体から、長さ300mm×幅300mm×厚さ25mmのサンプルを切り出した。サンプルを50℃温度下にて30日間静置し、さらに、23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC-074)を用いて、JIS A1412-2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率を測定した。
【0112】
(炭素含有量の測定) スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子又はスチレン系樹脂発泡成形体それぞれ約10mgをサンプルとした。このサンプルを、熱分析システム:EXSTAR6000を備えた熱重量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、TG/DTA 220U)を用いて、下記I~IIIを連続で実施し、IIIにおける重量減少量を炭素重量とし、試験片重量に対するパーセントで表した。I. 200mL/分の窒素気流下で40℃から600℃まで20℃/分で昇温した後600℃で10分保持、II. 200mL/分の窒素気流下で600℃から400℃まで10℃/分で降温した後400℃で5分保持、III.200mL/分の空気気流下で400℃から800℃まで20℃/分で昇温した後800℃で15分保持。
【0113】
(炭素の平均粒径D50(μm)及びレーザー散乱強度(%)の測定) (1)試料溶液調整条件 (a)測定対象が、スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子又はスチレン系樹脂発泡成形体の場合スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体それぞれ500mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させた。
【0114】
(b)測定対象が、混練前の炭素、即ち原材料の炭素自体の場合 炭素20mg及びスチレン系樹脂(PSジャパン(株)製、680)480mgを0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液20mLに溶解・分散させた。
【0115】
尚、上記の溶解・分散とは、樹脂が溶解して、炭素が分散している状態のことをいう。
【0116】
次いで、超音波洗浄器にて、前記の試料溶液に超音波を照射し、炭素の凝集を緩和させた。
【0117】
(2)超音波照射条件 使用装置 :アズワン株式会社製 超音波洗浄器 型番USM 発振周波数:42kHz 照射時間 :10分 温度 :室温。
【0118】
(3)粒径測定条件 測定装置 :マルバーン社製 レーザー回折式粒度分布測定装置 マスターサイザー3000 光源 :632.8nm赤色He-Neレーザー及び470nm青色LED 分散ユニット:湿式分散ユニット Hydro MV 以下の設定で分析を実施し、ISO13320:2009,JIS Z8825-1に準拠したMie理論に基づくレーザー回折・散乱法による測定・解析により、体積分布を求め、サンプル中の炭素のD50粒径を算出した。
【0119】
粒子の種類 :非球形
炭素屈折率 :2.42
炭素吸収率 :1.0
分散媒体 :0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液
分散媒体の屈折率 :1.49 分散ユニット中の攪拌数:2500rpm
解析モデル :汎用、単一モードを維持
測定温度 :室温。
【0120】
(4)測定手順 0.1%(w/w)スパン80トルエン溶液120mLを分散ユニットに注入し、2500rpmで攪拌し、安定化させた。測定セルに試料溶液サンプルが存在せず、分散媒体のみの状態で632.8nm赤色He-Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lbとした。次いで、超音波処理した試料溶液を2mL採取し、分散ユニットに追加した。試料溶液を追加して1分後の632.8nm赤色He-Neレーザー光を照射した際の中央検出器で測定された光の強度を透過光の強度Lsとした。また、同時に粒径(D50)を測定した。得られたLs及びLbより、以下の式で試料溶液のレーザー散乱強度Obを算出した。
【0121】
Ob=(1-Ls/Lb)×100(%)
中央検出器はレーザー光の出力に対して対向した正面に位置する検出部であり、ここで検出される光が散乱に使用されなかった透過光の尺度である。レーザー散乱強度とは、解析装置のレーザーに試料を散乱させた際に失われるレーザー光の量の尺度である。
【0122】
(5)スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出 以下の式にて、スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
【0123】
スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))=レーザー散乱強度(Ob)/{サンプル重量(500mg)/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)}
単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度とは、測定したレーザー散乱強度をトルエン中のサンプル濃度で割った値である。この測定装置は溶液で測定する必要のある装置であるため、トルエン溶液中のサンプル濃度を一定とし、一定のサンプル量における測定値を得ている。
【0124】
(6)スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、スチレン系樹脂組成物、発泡性スチレン系樹脂粒子、又はスチレン系樹脂発泡成形体(以下、「測定対象」と略す。)中に含有される炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
【0125】
測定対象中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=測定対象の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/測定対象の炭素含有量(重量%)
同じ重量の炭素であっても含有される炭素の分散状態によって断熱性を向上できることが本発明の一実施形態の本質である。前記炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を用いることによって本発明の一実施形態を表現することができる。
【0126】
なお、発泡性スチレン系樹脂粒子におけるグラファイト分散状態は、スチレン系樹脂組成物におけるグラファイト分散状態で決まるため、発泡性スチレン系樹脂粒子の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度と、スチレン系樹脂組成物(発泡性スチレン系樹脂組成物)の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度とは実質的に同一である。
【0127】
(7)混練前の炭素とスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度の算出
以下の式にて、混練前の炭素とスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
【0128】
混練前の炭素とスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}=レーザー散乱強度(Ob)/[{炭素重量(20mg)+スチレン系樹脂(480mg)}/トルエン量(20mL)×試料注入量(2mL)/分散ユニット内の全トルエン量(120mL+2mL)]。
【0129】
(8)混練前の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度以下の式にて、混練前の炭素、即ち原材料炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度を算出した。
【0130】
混練前の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度{%/(mg/ml)}/重量%=混練前の炭素とスチレン系樹脂との混合物の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度(%/(mg/ml))/混練前の炭素とスチレン系樹脂との混合物中の炭素含有量(20/500×100=4重量%)。
【0131】
(発泡倍率の測定及び発泡性能、成形性能の評価)
スチレン系樹脂発泡成形体から、熱伝導率の測定の場合と同様に、長さ300mm×幅300mm×厚さ25mmのサンプルを切り出した。サンプルの重量(g)を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、厚さ寸法を測定した。測定された各寸法からサンプルの体積(cm3)を計算し、下記計算式に従って発泡倍率を算出した。
【0132】
発泡倍率(cm3/g)=サンプル体積(cm3)/サンプル重量(g)
なお、前述したように、スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率「倍」は慣習的に「cm3/g」でも表されている。
【0133】
さらに、得られた成形体について80倍のものの表面を観察し、粒子間の空隙が少ないものを表面美麗性が良い、空隙が目立つものを表面美麗性が悪いと判定した。
【0134】
測定した発泡倍率及び成形体表面の美麗性に基づいて、スチレン系樹脂発泡体の発泡・成形性能について評価した。発泡・成形性能の評価は以下の基準とした。
◎:80倍発泡可能で美麗な成形体が得られる。
○:80倍発泡可能であるが、美麗な成形体が得られにくい。
【0135】
(難燃性の評価)
作製された発泡成形体に対して、60℃温度下にて48時間静置し、さらに23℃温度下にて24時間静置した後、JIS K7201に準じて、酸素指数を測定した。
【0136】
(スチレン系樹脂発泡成形体の平均セル径の測定方法)
発泡倍率80倍のスチレン系樹脂発泡成形体をカミソリで切削し、光学顕微鏡で断面を観察した。断面の1000μm×1000μm四方の範囲内に存在するセル数を計測し、下記式(面積平均径)で測定した値を平均セル径とした。各サンプル5個の平均セル径を測定し、その平均を水準の平均セル径とした。
【0137】
平均セル径(μm)=2×[1000μm×1000μm/(セル数×π)]1/2 以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0138】
(スチレン系樹脂)
(A)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680]
(炭素)
(B)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP-40B]
平均粒径D50=5.8μm
炭素(グラファイト)単位溶液濃度当りのレーザー散乱強度=3.7%。
【0139】
(臭素系難燃剤)
(C1)2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR-130、臭素含有量=66重量%]
(C2)臭素化(スチレン-ブタジエン共重合体)[ケムチュラ社製、EMERALD INNOVATION 3000、臭素含有量=65重量%]
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA-57]
(D2)ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP-36]
(D3)3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン[ADDIVANT社製 Ultranox626]
(D4)ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][ADDIVANT社製 ANOX20] (D5)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[ハンツマンジャパン(株)製、ECN-1280,エポキシ当量212~233g/eq.]。
【0140】
(臭素系難燃剤と安定剤の混合物)
(E1)臭素系難燃剤(C1)、安定剤(D1)及び(D2)を、ミキサーで混合し、臭素系難燃剤と安定剤の混合物(E1)を得た。但し、各材料の重量比率は、(C1):(D1):(D2)=100:2.1:3.2、(C1)+(D1)+(D2)=100重量%とした。
【0141】
(E2)臭素系難燃剤(C2)、安定剤(D3)、(D4)及び(D5)を、ミキサーで混合し、臭素系難燃剤と安定剤の混合物(E2)を得た。但し、各材料の重量比率は、(C2):(D3):(D4):(D5)=100:0.5:10:5、(C2)+(D3)+(D4)+(D5)=100重量%とした。
【0142】
(ラジカル発生剤)
(F)ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン[UNITED INITIATORS製、CCPIB]
(発泡剤)
(G1)ノルマルペンタン[エスケイ産業(株)製]
(G2)イソペンタン[エスケイ産業(株)製]
(G3)イソブタン[三井化学(株)製] 以下に実施例比較例で用いた二軸押出機及び予備発泡機及び成形機を示す。
【0143】
(1)二軸押出機:同方向噛み合い二軸押出機(テクノベル(株)製、シリンダ内径D=40mm、L/D=32、モーター容量55kW,モーター効率;0.95)
(2)スクリュデザイン;少なくとも発泡剤圧入前に順送りニーディングエレメントと逆送りニーディングエレメントをそれぞれ1つ以上セッティングした。また、比エネルギーを調整するため、発泡剤圧入前のニーディングディスクエレメントの数の少ない順にスクリュデザイン#3、スクリュデザイン#1、スクリュデザイン#2を設計し、の合計3つのスクリュデザインを評価した。
【0144】
(3)予備発泡機;大開工業株式会社製、BHP-300
(4)成形機;ダイセン工業(株)製、KR-57
(5)成形金型;型内成形用金型(長さ450mm×幅310mm×厚み25mm)。
【0145】
(実施例1)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
スチレン系樹脂(A)、炭素(B)、臭素系難燃剤と安定剤の混合物(E1)をそれぞれフィーダーにて二軸押出機に供給し、二軸押出機の原料フィード部以降のシリンダ設定温度を160℃とし、スクリュデザイン#1の構成にて、スクリュ回転数129rpmで溶融混練した。尚、(A):(B):(E1)=93.5:4.0:2.5の重量比率でトータル供給量を50kg/hrとした。
【0146】
二軸押出機の途中から、前記樹脂組成物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(G1)80重量%とイソペンタン(G2)20重量%の混合物]を4.3重量部、イソブタン(G3)を2.2重量部の割合で圧入した。その後、二軸押出機先端に接続した170℃設定のギアポンプ、ダイバータバルブを経て、ダイバータバルブの下流に取り付けられた直径0.65mm、ランド長3.0mmの小孔を36個有する250℃に設定したダイスから、吐出量53.25kg/hrで、温度65℃及び1.3MPaの加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイスに接触する10枚の刃を有する回転カッターを用いて、1800rpmの条件にて切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。押出機先端での樹脂温度は176℃であり、比エネルギーは0.140kWh/kgであった。
【0147】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ステアリン酸亜鉛0.08重量部をドライブレンドした後、15℃で保管した。
【0148】
[予備発泡粒子の作製] 発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡機に投入し、0.1MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して発泡させ、発泡倍率において発泡倍率80倍の予備発泡粒子を得た。
【0149】
[スチレン系樹脂発泡成形体の作製]
得られた発泡倍率80倍の予備発泡粒子を、発泡スチロール用成形機に取り付けた型内成形用金型内に充填して、0.06MPaの水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を3秒間噴霧して冷却した。スチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.015MPa(ゲージ圧力)なるまでスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、スチレン系樹脂発泡成形体取り出して、直方体状のスチレン系樹脂発泡成形体を得た。発泡倍率は80倍であった。
【0150】
実施例1で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、及び、スチレン系樹脂発泡成形体について、上述の各種測定方法に従って測定・評価した。その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0151】
(実施例2)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュ回転数を162rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0152】
(実施例3)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュ回転数を195rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0153】
(実施例4)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュ回転数を229rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0154】
(実施例5)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュ回転数を292rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0155】
(実施例6)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュデザインを#2に変更し、スクリュ回転数を292rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0156】
(実施例7)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュデザインを#2に変更し、スクリュ回転数を420rpmに変更した以外は実施例1と同様の条件で、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。ただし、ダイスにおけるカッティング不良が頻発し、スチレン系樹脂発泡成形体を作製可能なサンプル量を採取できなかった。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0157】
(実施例8)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュデザインを#3に変更し、スクリュ回転数を195rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0158】
(実施例9)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュデザインを#3に変更し、スクリュ回転数を292rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0159】
(実施例10)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スチレン系樹脂(A)、炭素(B)、臭素系難燃剤と安定剤の混合物(E2)、ラジカル発生剤(F)をそれぞれフィーダーにて二軸押出機に供給し、二軸押出機の原料フィード部以降のシリンダ設定温度を160℃とし、スクリュデザイン#1の構成にて、スクリュ回転数195rpmで溶融混練した。尚、(A):(B):(E2):(F)=93.05:4.0:2.75:0.2の重量比率でトータル供給量を50kg/hrとした。以降の操作は、実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0160】
(比較例1) [発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュ回転数を97rpmに変更した以外は実施例1と同様の処理によりスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。実施例1と同様に評価し、その測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
実施例の結果より、比エネルギーの制御によって、炭素の分散性を向上することができ、高い発泡倍率、及び、低い熱伝導率、即ち、高い断熱性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体を与えうるスチレン系樹脂組成物、および、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供できることが判る。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂及び炭素を二軸押出機に供給し溶融混練する、スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記二軸押出機において、比エネルギーが0.13kWh/kg以上0.33kWh/kg以下である、スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記炭素の含有量が、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~90重量%である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~2のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上である、請求項4の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物にさらに発泡剤が添加される、発泡性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給、溶融混練する工程、前記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じて、循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有スチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、押し出し直後から、ダイスと接する回転カッターにより切断する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上0.33kWh/kg以下である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
スチレン系樹脂、および、炭素を二軸押出機に供給、溶融混練する工程、前記二軸押出機以降に取り付けた小孔を多数有するダイスを通じてスチレン系樹脂組成物の溶融物を押し出し、カッターにより切断してスチレン系樹脂粒子を得る工程、前記スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させて発泡剤を含浸させる工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記二軸押出機の比エネルギーが0.13kwh/kg以上0.33kWh/kg以下である、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記比エネルギーが0.16kwh/kg以上0.33kWh/kg以下である、請求項7または8に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記二軸押出機の先端における樹脂温度が160℃以上210℃未満である、請求項7~9のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
前記炭素が、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、および、膨張黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
前記炭素が、平均粒径2.5~9.0μmである、請求項7~11のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項13】
前記炭素が前記スチレン系樹脂組成物100重量%に対して2~8重量%含有される、請求項7~12のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項14】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子の単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が15.0%/(mg/ml)以上である、請求項12もしくは13に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項15】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子中の炭素単位溶液濃度あたりのレーザー散乱強度が4.0{%/(mg/ml)}/重量%以上である、請求項12~14のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項16】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を50℃温度下で30日間静置し、さらに23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.0330(W/mK)以下である、請求項7~15のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項17】
前記熱伝導率が、0.0320(W/mK)以下である、請求項16に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0156
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0156】
参考例7)
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、スクリュデザインを#2に変更し、スクリュ回転数を420rpmに変更した以外は実施例1と同様の条件で、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。ただし、ダイスにおけるカッティング不良が頻発し、スチレン系樹脂発泡成形体を作製可能なサンプル量を採取できなかった。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0161
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0161】
【表1】