(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063396
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】混注装置、混注方法、混注制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037794
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2021171732の分割
【原出願日】2014-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2013194548
(32)【優先日】2013-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014039249
(32)【優先日】2014-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014064597
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小濱 章臣
(72)【発明者】
【氏名】藁科 政利
(72)【発明者】
【氏名】日野 文貴
(72)【発明者】
【氏名】次井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大矢 翔
(57)【要約】
【課題】混注装置における混注処理の適否を鑑査するために適した画像を撮影することのできる混注装置及び混注方法を提供すること。
【解決手段】調製データに基づいて薬品容器10から注射器11で薬品を吸引すると共に、注射器11から輸液容器10に薬品を注入する混注装置であって、薬品容器10及び注射器11のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能な第1駆動手段及び注射器11を操作可能な第2駆動手段を制御して注射器11により薬品容器10から薬品を吸引した後、薬品が吸引された後の薬品容器10及び薬品を吸引した状態の注射器11を第1駆動手段を制御して撮影範囲内に移動させ、撮影範囲内に移動された薬品容器10及び注射器11を一度に撮影する。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製データに基づいて薬品容器から注射器で薬品を吸引すると共に前記注射器から輸液
容器に前記薬品を注入する混注装置であって、
前記注射器を操作可能な駆動手段と、
前記駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から薬品を吸引する吸引制御手段と、
前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つが載置されるトレイが有する記録媒体から識別情報を読み取るトレイ読取手段と、
前記トレイ読取手段により読み取られた前記識別情報に予め対応付けられた前記調製データの内容と前記トレイに収容された前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つの内容とを照合する照合手段と、
を備える混注装置。
【請求項2】
前記照合手段による照合の内容は、器材の数、前記シリンジの種類、前記注射針の種類、又は前記薬品容器に対応する薬品情報である、
請求項1に記載の混注装置。
【請求項3】
調製データに基づいて薬品容器から注射器で薬品を吸引すると共に前記注射器から輸液
容器に前記薬品を注入する混注装置であり、前記注射器を操作可能な駆動手段と、前記駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から薬品を吸引する吸引制御手段と、前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つが載置されるトレイが有する記録媒体から識別情報を読み取るトレイ読取手段とを備える混注装置を制御する制御部に、
前記トレイ読取手段により読み取られた前記識別情報に予め対応付けられた前記調製データの内容と前記トレイに収容された前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つの内容とを照合する照合ステップを実行させるための混注プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品容器に収容された抗がん剤などの薬品を輸液容器に注入する混注処理を実行する混注装置及び混注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプル又はバイアル瓶などの薬品容器に収容された抗がん剤などの薬品を注射器で吸引し、その薬品を輸液が収容された輸液容器に注入する混注処理を実行する混注装置が知られている。
【0003】
また、この種の混注装置では、混注処理の過程を記録するために、実際に薬品容器から薬品を抜き取った後の注射器が撮影されることがある(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に開示された混注装置では、一又は複数のカメラを使用して注射器の複数箇所が撮影され、その撮影された複数箇所の画像を繋ぎ合わせて注射器の画像が作成される。なお、このとき作成される画像には薬品容器の側面画像も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、混注処理が調製データに従って適切に行われたか否かを画像で鑑査するという観点では、前述したように複数箇所の画像を画像処理によって繋ぎ合わせた信憑性の低い画像を用いることは好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、混注装置における混注処理の適否を鑑査するために適した画像を撮影することのできる混注装置及び混注方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る混注装置は、調製データに基づいて薬品容器から注射器で薬品を吸引すると共に前記注射器から輸液容器に前記薬品を注入する。そして、前記混注装置は、第1駆動手段、第2駆動手段、吸引制御手段、移動制御手段、及び吸引時撮影手段を備える。前記第1駆動手段は、前記薬品容器及び前記注射器のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能である。前記第2駆動手段は、前記注射器を操作可能である。前記吸引制御手段は、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から薬品を吸引する。前記移動制御手段は、前記第1駆動手段を制御して、前記吸引制御手段により前記薬品が吸引された後の前記薬品容器及び前記薬品を吸引した状態の前記注射器を撮影範囲内に移動させる。前記吸引時撮影手段は、前記移動制御手段により前記撮影範囲内に移動された前記薬品容器及び前記注射器を一度に撮影する。
【0008】
また、本発明に係る混注方法は、調製データに基づいて薬品容器から注射器で薬品を吸引すると共に前記注射器から輸液容器に前記薬品を注入する混注装置で実行される。そして、前記混注方法では、前記薬品容器及び前記注射器のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能な第1駆動手段及び前記注射器を操作可能な第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から薬品を吸引した後、前記第1駆動手段を制御して、前記薬品が吸引された後の前記薬品容器及び前記薬品を吸引した状態の前記注射器を撮影範囲内に移動させ、前記撮影範囲内に移動された前記薬品容器及び前記注射器を一度に撮影する。
【0009】
本発明によれば、前記薬品容器及び前記注射器が一度に撮影された信憑性の高い画像を用いて前記混注装置における混注処理の過程の適否を鑑査することが可能となる。
【0010】
具体的に、前記第1駆動手段が、多関節構造を有する第1ロボットアーム及び第2ロボットアームを含むことが考えられる。これにより、前記薬品容器及び前記注射器を任意の姿勢にして前記球印字撮影手段によって撮影することが可能である。
【0011】
また、前記移動制御手段が、前記薬品容器及び前記注射器を前記薬品容器の薬品名の文字及び前記注射器の目盛りの文字の向きを揃えて前記撮影範囲内に配置することが考えられる。これにより、ユーザーが前記薬品容器の薬品名の文字及び前記注射器の目盛りの文字を見やすくなりユーザビリティが向上する。
【0012】
さらに、前記移動制御手段が、前記薬品容器の薬品名の文字及び前記注射器の目盛りの文字の上下方向と前記撮影範囲における上下方向とを揃えて前記薬品容器及び前記注射器を前記撮影範囲内に配置することが考えられる。これにより、ユーザーが前記薬品容器の薬品名の文字及び前記注射器の目盛りの文字をさらに見やすくなりユーザビリティが向上する。
【0013】
また、前記移動制御手段が、前記薬品容器及び前記注射器を前記注射器の長手方向に垂直な方向に並べた状態で前記撮影範囲内に配置することが考えられる。これにより、前記撮影範囲の長尺化が防止される。
【0014】
ところで、前記移動制御手段が、前記注射器により前記薬品容器から前記薬品が吸引されてから前記吸引時撮影手段により前記薬品容器及び前記注射器が撮影されるまでの間、前記第1駆動手段による前記薬品容器及び前記注射器の保持状態を継続させることが考えられる。これにより、前記吸引時撮影手段による撮影画像における前記注射器内の薬品が前記薬品容器内の薬品であることの信憑性が高まる。
【0015】
また、前記混注装置が、前記吸引時撮影手段により撮影された画像を鑑査画像として表示する鑑査画像表示手段を更に備えることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記混注装置において前記鑑査画像を見て混注処理の鑑査を行うことができる。
【0016】
ここで、前記鑑査画像表示手段が、前記調製データに含まれる薬品名及び薬品容量を前記鑑査画像と共に表示させることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記調製データに含まれる薬品名及び薬品容量を前記鑑査画像と共に一画面で確認することができる。
【0017】
特に、前記混注装置が、前記注射器により前記薬品容器から前記輸液容器に注入された前記薬品の重量を取得する薬品重量取得手段を更に備え、前記鑑査画像表示手段が、前記薬品重量取得手段により取得された前記薬品の重量、及び前記薬品の重量について予め設定された許容範囲を前記鑑査画像と共に表示させることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記鑑査画像表示手段による表示画面を参照して重量による鑑査を容易に行うことができる。
【0018】
このとき、前記薬品重量取得手段は、前記薬品容器から薬品を吸引した後の前記注射器の重量と前記注射器から前記輸液容器に薬品が注入された後の前記注射器の重量との差分を前記薬品の重量として算出することが考えられる。これにより、前記注射器の固体誤差などの影響を排除して、実際に前記輸液容器内に注入された薬品の重量によって混注処理の鑑査を行うことができる。
【0019】
また、前記混注装置が、前記薬品重量取得手段により取得された前記薬品の重量と前記調製データに含まれる薬品容量に対応する前記薬品の重量との差分が予め設定された許容範囲内であるか否かを判断する重量鑑査手段を更に備え、前記鑑査画像表示手段が、前記重量鑑査手段の判断結果を前記鑑査画像と共に表示させることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記判断結果の表示を参照することにより一目で重量による混注処理の鑑査結果を把握することができる。
【0020】
ここで、前記許容範囲は、前記注射器の規格容量ごとに予め設定された範囲であることが考えられる。これにより、前記注射器の規格容量ごとに適した許容範囲に基づいて混注処理の鑑査を行うことができる。
【0021】
また、前記混注装置が、前記吸引制御手段により前記調製データに基づいて前記薬品容器に収容されている薬品の全量が前記注射器により吸引される全量採取処理が実行される場合に、前記薬品容器の口部を鉛直上方向に向けた状態、又は前記薬品容器の口部を鉛直上方向に対して予め定められた角度だけ傾斜させた状態で前記薬品容器の底面又は側面を撮影する全量採取時撮影手段を更に備えることが考えられる。これにより、前記薬品容器内に薬品が残存しているか否かを前記全量採取時撮影手段による撮影画像に基づいて容易に判断することができる。
【0022】
さらに、前記混注装置が、前記薬品容器の薬品名の文字が前記撮影範囲に収まるように前記第1駆動手段により保持される前記薬品容器の周方向の位置を調整する容器位置調整手段を備えることが考えられる。例えば、前記混注装置が、前記薬品容器を周方向に回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段により回転される前記薬品容器から薬品情報を読み取る容器読取手段と、を更に備えることが考えられる。そして、前記容器位置調整手段は、前記容器読取手段により前記薬品情報が読み取られた後、前記薬品容器ごとに予め設定された回転量だけ前記回転駆動手段により前記薬品容器を回転させて停止させる。これにより、前記吸引時撮影手段による撮影画像において、前記薬品容器の薬品名の文字を確実に把握することができる。
【0023】
また、前記混注装置が、前記注射器の目盛りの文字が前記撮影範囲に収まるように前記第1駆動手段により保持される前記注射器の周方向の位置を調整する注射器位置調整手段を備えることが考えられる。例えば、前記注射器位置調整手段が、予め定められた載置位置に載置された前記注射器の周方向の向きを検出する向き検出手段と、前記第1駆動手段により前記注射器が前記撮影範囲内に移動されたときに前記注射器の目盛りの文字が前記撮影範囲に収まるように、前記向き検出手段の検出結果に基づいて前記第1駆動手段により前記注射器を回転させる注射器回転手段と、を含むことが考えられる。これにより、前記吸引時撮影手段による撮影画像において、前記注射器の目盛りの文字を確実に把握することができる。
【0024】
また、前記混注装置が、トレイ読取手段、照合手段、及び排出制御手段を備えることが考えられる。前記トレイ読取手段は、前記混注装置に装填される前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つが装填される際に前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つが載置されるトレイが有する記録媒体から識別情報を読み取る。前記照合手段は、前記トレイ読取手段により読み取られた前記識別情報に予め対応付けられた前記調製データの内容と前記混注装置に装填された前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、及び前記輸液容器の少なくとも1つの内容とを照合する。前記排出制御手段は、前記照合手段による照合結果が一致しない前記薬品容器、前記注射器のシリンジ、前記注射器の注射針、又は前記輸液容器を、前記トレイと共に予め定められた排出口から取出可能にする。これにより、ユーザーは、前記トレイを取り出して正しい前記薬品容器、前記注射器、又は前記輸液容器を載置して前記トレイを再装填することができる。
【0025】
特に、前記混注装置は、前記排出制御手段により前記トレイが取出可能になった後、次に前記混注装置に装填された前記トレイから前記トレイ読取手段により読み取られた前記識別情報と前記排出制御手段により取出可能になった前記トレイから前記トレイ読取手段により読み取られた前記識別情報とが一致していない場合にその旨を報知する報知手段を更に備えることが考えられる。これにより、前記トレイの再装填時に、前記トレイが他のトレイに変わっているか否かが判断されるため、前記トレイの再装填時に誤ったトレイが装填されることが防止され、例えば別の患者に対応する薬剤として処理されることが防止される。
【0026】
また、前記混注装置が、載置時撮影手段、干渉判断手段、及び離間手段を備えることが考えられる。前記載置時撮影手段は、予め定められた器材載置部に載置された前記薬品容器及び前記注射器を含む器材を前記器材載置部の上方から撮影する。前記干渉判断手段は、前記載置時撮影手段による撮影結果に基づいて前記器材載置部に載置されている前記器材の中に片側のみが他の前記器材と干渉する器材が存在するか否かを判断する。前記離間手段は、前記干渉判断手段により片側のみが他の前記器材と干渉する前記器材が存在すると判断された場合に、前記器材を把持する前記第1駆動手段の把持部を閉じた状態で、干渉する二つの前記器材の間に挿入する。これにより、前記器材載置部において前記器材が干渉している場合でもその干渉を解消して前記器材を取り込むことが可能になる。
【0027】
さらに、前記混注装置は、前記載置時撮影手段による撮影結果において両側に予め定められた間隙が形成されている前記器材を、前記載置時撮影手段による撮影結果において片側又は両側に前記間隙が形成されていない前記器材よりも優先的に取り込む取込制御手段を更に備えることが考えられる。これにより、前者の前記器材を先に取り込むことで形成されるスペースを利用して後者の前記器材の干渉を解消することができる。
【0028】
前記取込制御手段が、前記器材載置部に載置された全ての器材が、片側又は両側が前記器材載置部の構成要素と干渉する器材、或いは両側が他の器材と干渉する器材に該当する場合に、前記器材載置部からの前記器材の取込を中止することが考えられる。これにより、前記把持部による前記器材の干渉の解消を図ることなく前記器材の取込を中止させ、前記把持部による前記器材の破損などを防止することができる。
【0029】
ところで、前記吸引制御手段が、前記薬品容器がアンプルである場合は、前記注射器の針先を下方に向けて前記アンプルから薬品を吸引し、前記注射器の針先を上方に向けた後、前記注射器の注射針をシリンジフィルター付きの注射針に交換して前記注射器内の空気を所定量だけ押し出すことが考えられる。これにより、前記注射器内に空気を残すことなく薬品を吸引することができ、前記シリンジフィルターが浸水した後に空気を通さないために生じる前記注射器の破損などが防止される。
【0030】
ここで、前記吸引制御手段が、前記アンプルから前記薬品を予め設定された余剰量だけ余分に抜き取り、前記注射器内の空気を所定量だけ押し出した後に前記注射器の針先を下方に向けて余分な薬品を排出することが考えられる。これにより、前記注射器の注射針及びシリンジフィルターなどの容積誤差などの影響を排除し、前記注射器により前記薬品容器から前記輸液容器に注入される薬品量の誤差を抑制することができる。
【0031】
ところで、前記混注装置が、前記注射器から前記輸液容器に注入される薬品の注入量が前記輸液容器に対応して予め定められた注入可能量よりも多い場合に、前記輸液容器から空気を抜く注入制御手段を更に備えることが考えられる。具体的に、前記注入制御手段は、前記注射器により薬品が吸引される前に前記注射器により前記輸液容器の空気を抜く処理を実行することが考えられる。また、前記注入制御手段は、前記注射器により薬品が吸引され、前記注射器から前記輸液容器に前記薬品を注入した後に続けて前記注射器により前記輸液容器の空気を抜く処理を実行することも考えられる。これにより、前記輸液容器が陽圧になることを防止できる。
【0032】
また、本発明に係る混注装置は、注射器で輸液容器から輸液を吸引して薬品容器に注入可能である。そして、前記混注装置は、第1ロボットアーム、第2ロボットアーム、秤量装置、第1制御手段、第2制御手段、第3制御手段、及び輸液重量取得手段を備える。前記第1ロボットアームは、前記薬品容器を保持して移動させることが可能である。前記第2ロボットアームは、前記注射器を保持して移動させることが可能であって前記注射器の操作が可能である。前記秤量装置は、前記第1ロボットアームの可動範囲内又は前記第1ロボットアームに配置されている。前記第1制御手段は、前記第1ロボットアームを制御して前記薬品容器を前記秤量装置で秤量する第1秤量工程と前記第2ロボットアームを制御して前記注射器で前記輸液容器から輸液を吸引する第1輸液吸引工程とを並行して実行する。前記第2制御手段は、前記第1秤量工程及び前記第1輸液吸引工程の終了後に、前記第1ロボットアーム及び前記第2ロボットアームを制御して前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する注入工程を実行する。前記第3制御手段は、前記注入工程の終了後に前記第1ロボットアームを制御して前記薬品容器を前記秤量装置で秤量する第2秤量工程を実行する。前記輸液重量取得手段は、前記第1秤量工程による秤量結果と前記第2秤量工程による秤量結果との差分を前記薬品容器に注入された輸液の重量として取得する。
【0033】
このように構成された前記混注装置によれば、混注処理の所要時間を短縮しつつ、前記薬品容器に注入された輸液の重量を測定することが可能となる。特に、前記混注装置によれば、秤量対象となる前記第1ロボットアームで前記薬品容器及び前記注射器などの器材を保持した状態で秤量することができる。従って、例えば前記器材を前記秤量装置にセットするための作業工程、及び秤量後に前記秤量装置にセットされている前記器材を再度保持するための作業工程などを省略することができ、前記混注処理における所要時間を大幅に短縮することが可能である。
【0034】
ここで、前記第3制御手段は、一の前記薬品容器について実行される前記第2秤量工程と前記第2ロボットアームを制御して前記注射器で他の前記薬品容器に注入する輸液を前記輸液容器から吸引する第2輸液吸引工程とを並行して実行することが考えられる。これにより、複数の前記薬品容器を用いて混注処理が実行される場合に、前記混注処理の所要時間をより短縮することができる。
【0035】
また、前記第1制御手段が、一の前記薬品容器についての前記第2秤量工程及び他の前記薬品容器についての前記第1秤量工程を前記第2輸液吸引工程と並行して実行することが考えられる。これにより、複数の前記薬品容器を用いて混注処理が実行される場合に、前記混注処理の所要時間をより短縮することができる。
【0036】
さらに、前記混注装置が、前記薬品容器を攪拌可能な攪拌装置を備える構成では、前記第3制御手段が、前記第2秤量工程及び前記第2秤量工程の終了後に前記第1ロボットアームを制御して前記薬品容器を前記攪拌装置で攪拌させる攪拌工程を前記第2輸液吸引工程と並行して実行することが考えられる。これにより、複数の前記薬品容器を用いて混注処理が実行される場合に、前記混注処理の所要時間をより短縮することができる。
【0037】
前記攪拌装置が、予め定められた複数の前記薬品容器を同時に攪拌可能である場合には、前記第2制御手段が、前記攪拌装置が使用可能であることを条件に前記注入工程を開始することが考えられる。これにより、前記薬品容器に輸液が注入された後、長時間放置されて前記薬品容器内の薬品が凝固することに起因する溶解不良などが抑制される。
【0038】
また、前記混注装置が、前記輸液重量取得手段によって取得された前記輸液の重量に基づいて、前記注射器で前記薬品容器から吸引する薬液量を設定する吸引量設定手段を更に備えることが考えられる。これにより、実際に前記薬品容器に注入された前記輸液の重量に応じて前記薬液量が設定されるため、前記注射器により余分な吸引を行う必要がなくなる。
【0039】
また、前記混注装置が、前記薬品容器のゴム栓に前記注射器の注射針を複数回挿通する場合に前記ゴム栓への前記注射針の挿通位置をその都度異なる位置に変更する第4制御手段を更に備えることが考えられる。これにより、前記注射器の注射針が前記薬品容器のゴム栓における同一箇所又は近傍箇所に複数回挿通される場合に比べてコアリングの発生が抑制され、前記薬品容器からの液漏れが抑制される。
【0040】
また、複数の前記挿通位置が、前記ゴム栓において半径方向に離間する複数の位置を含むことが考えられる。これにより、前記薬品容器の周方向の回転位置に関係なく前記ゴム栓における挿通位置をその都度異なる位置に設定することができる。
【0041】
一方、前記混注装置が、回転駆動手段、容器読取手段、及び容器位置調整手段を備えることが考えられる。前記回転駆動手段は、前記薬品容器を周方向に回転させることが可能である。前記容器読取手段は、前記回転駆動手段により回転される前記薬品容器から薬品情報を読み取ることが可能である。前記容器位置調整手段は、前記容器読取手段により前記薬品情報が読み取られた時点で前記回転駆動手段による前記薬品容器の回転を停止させ、又は、前記容器読取手段により前記薬品情報が読み取られた後、前記薬品容器ごとに予め設定された回転量だけ前記回転駆動手段により前記薬品容器を回転させて停止させる。この場合、前記第4制御手段は、前記容器位置調整手段により回転が停止されるときの前記薬品容器の回転停止位置に基づいて、前記ゴム栓に前記注射針を挿通する度に異なる前記挿通位置を設定することが考えられる。これにより、前記ゴム栓における挿通位置をその都度異なる位置に設定することができる。
【0042】
また、前記混注装置が、回転駆動手段、容器読取手段、及び容器位置調整手段を備える構成の他の例として下記の構成が考えられる。具体的に、前記回転駆動手段は、前記薬品容器を周方向に回転させることが可能である。前記容器読取手段は、前記回転駆動手段により回転される前記薬品容器から薬品情報を読み取ることが可能である。前記容器位置調整手段は、前記容器読取手段により前記薬品情報が読み取られた時点で前記回転駆動手段による前記薬品容器の回転を停止させ、又は、前記容器読取手段により前記薬品情報が読み取られた後、前記薬品容器ごとに予め設定された回転量だけ前記回転駆動手段により前記薬品容器を回転させて停止させる。そして、前記第4制御手段が、前記ゴム栓に前記注射針を挿通する度に、前記容器位置調整手段による前記薬品容器の回転停止位置を変化させることが考えられる。この場合にも、前記ゴム栓における挿通位置をその都度異なる位置に設定することができる。
【0043】
また、本発明は、注射器で輸液容器から輸液を吸引して薬品容器に注入可能な混注方法であって、(1)前記薬品容器を保持して移動させることが可能な第1ロボットアームを制御して前記薬品容器を前記第1ロボットアームの可動範囲内又は前記第1ロボットアームに配置された秤量装置で秤量する第1秤量工程と、前記注射器を保持して移動させることが可能であって前記注射器の操作が可能な第2ロボットアームを制御して前記注射器で前記輸液容器から輸液を吸引する第1輸液吸引工程とを並行して実行するステップと、(2)前記第1秤量工程及び前記第1輸液吸引工程の終了後に、前記第1ロボットアーム及び前記第2ロボットアームを制御して前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する注入工程を実行するステップと、(3)前記注入工程の終了後に前記第1ロボットアームを制御して前記薬品容器を前記秤量装置で秤量する第2秤量工程を実行するステップと、(4)前記第1秤量工程による秤量結果と前記第2秤量工程による秤量結果との差分を前記薬品容器に注入された輸液の重量として取得するステップとを備える混注方法として捉えてもよい。
【0044】
また、本発明は、注射器で輸液容器から輸液を吸引して薬品容器に注入可能な混注装置である。また、前記混注装置は、第1ロボットアーム、第2ロボットアーム、第5制御手段、及び撮影制御手段を備える。前記第1ロボットアームは、前記薬品容器を保持して移動させることが可能である。前記第2ロボットアームは、前記注射器を保持して移動させることが可能であって前記注射器の操作が可能である。前記第5制御手段は、前記第1ロボットアーム及び前記第2ロボットアームを制御し、前記注射器で輸液を前記薬品容器に注入する注入工程及び前記注射器で前記薬品容器から輸液を吸引する吸引工程を実行する。前記撮影制御手段は、前記吸引工程において前記薬品容器から輸液を吸引した後、前記注射器の注射針が前記薬品容器に挿通されたままの状態で前記注射器の目盛りを撮影可能でる。これにより、前記注射器から余分な空気を排出する工程、及び前記注射器で再度余分な空気を吸引する工程を実行する必要がないため、前記注射器の目盛りを撮影するための処理によって生じる前記混注処理の遅延が抑制される。
【0045】
具体的に、前記吸引工程は、前記薬品容器のゴム栓が下方に向けられると共に前記注射器の注射針が上方に向けられた状態において前記注射器で前記薬品容器から輸液を吸引し、前記注射器の注射針が前記薬品容器内に挿通されたままの状態で前記注射器及び前記薬品容器の上下位置を反転させた後、前記注射器で予め定められた量の空気を吸引してから前記注射器の注射針を前記薬品容器から引き抜く工程であることが考えられる。また、前記撮影手段は、前記薬品容器内に挿通された状態で前記注射器及び前記薬品容器の上下位置を反転させた後、前記注射器で予め定められた量の空気を吸引する前に前記注射器の目盛りを撮影することが考えられる。
【0046】
さらに、本発明は、注射器で輸液容器から輸液を吸引して薬品容器に注入可能な混注方法であって、前記薬品容器を保持して移動させることが可能な第1ロボットアームと前記注射器を保持して移動させることが可能であって前記注射器の操作が可能な第2ロボットアームとを制御して、前記注射器で輸液を前記薬品容器に注入する注入工程及び前記注射器で前記薬品容器から輸液を吸引する吸引工程を実行し、前記吸引工程において前記薬品容器から輸液を吸引した後、前記注射器の注射針が前記薬品容器から抜かれる前の状態で前記注射器の目盛りを撮影する方法として捉えてもよい。
【0047】
また、本発明は、第2駆動手段、挟持部、第6制御手段、及び第7制御手段を備える混注装置である。前記第2駆動手段は、注射器のプランジャを操作可能である。前記挟持部は、前記注射器のシリンジを前記プランジャの操作方向に垂直な方向で挟持する。前記第6制御手段は、薬品容器の開口部が上方に向けられ、前記注射器の先端が下方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させる。前記第7制御手段は、前記第1置換工程において前記第2駆動手段が前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量の少なくとも1つを前記第1置換工程の実行済回数に応じて変化させる。これにより、前記混注装置では、例えば前記プランジャを引く力が前記挟持部による前記シリンジの把持力を超えないように前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量を調節することが可能となる。
【0048】
より具体的に、前記第7制御手段が、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って前記プランジャの引き始めの加速度を段階的に大きくすることが考えられる。これにより、前記シリンジの位置ずれを防止しつつ、前記注入工程の所要時間を短縮することができ、前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0049】
また、前記第7制御手段が、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って前記プランジャを引く量を段階的に増加させることが考えられる。これにより、前記シリンジの位置ずれを防止しつつ、1回の前記第1置換工程における吸引量を増加させることができるため、前記第1置換工程の繰り返し回数を減らすことができ、前記注入工程の所要時間及び前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0050】
さらに、前記第7制御手段が、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って前記プランジャを引く速度を段階的に速くすることが考えられる。この場合にも、前記シリンジの位置ずれを防止しつつ、前記注入工程の所要時間を短縮することができ、前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0051】
なお、本発明は、薬品容器の開口部が上方に向けられ、注射器の先端が下方に向けられると共に、前記注射器のシリンジが前記注射器のプランジャの操作方向に垂直な方向で挟持する挟持部によって挟持された状態で、前記注射器のプランジャを操作可能な第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させるステップと、前記第1置換工程において前記第2駆動手段が前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量の少なくとも1つを前記第1置換工程の実行済回数に応じて変化させるステップとを備える混注方法として捉えることも可能である。
【0052】
また、本発明は、第2駆動手段、挟持部、第6制御手段、及び第8制御手段を備える混注装置である。前記第2駆動手段は、注射器のプランジャを操作可能である。前記挟持部は、前記注射器のシリンジを前記プランジャの操作方向に垂直な方向で挟持する。前記第6制御手段は、薬品容器の開口部が上方に向けられ、前記注射器の先端が下方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させる。前記第8制御手段は、前記第1置換工程において前記第2駆動手段が前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量の少なくとも1つを、前記プランジャを引くときの前記シリンジ内の空気の膨張率に応じて変化させる。このように構成された前記混注装置においても、例えば前記プランジャを引く力が前記挟持部による前記シリンジの把持力を超えないように前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量を調節することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は、薬品容器の開口部が上方に向けられ、注射器の先端が下方に向けられると共に、前記注射器のシリンジが前記注射器のプランジャの操作方向に垂直な方向で挟持する挟持部によって挟持された状態で、前記注射器のプランジャを操作可能な第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させるステップと、前記第1置換工程において前記第2駆動手段が前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量の少なくとも1つを前記シリンジ内の空気の膨張率に応じて変化させるステップとを備える混注方法として捉えることも可能である。これにより、前記混注装置では、例えば前記プランジャを引く力が前記挟持部による前記シリンジの把持力を超えないように前記プランジャを引く速度、前記プランジャの引き始めの加速度、又は前記プランジャを引く量を調節することが可能となる。
【0054】
また、本発明は、キャップ着脱手段、第2駆動手段、第3駆動手段、第6制御手段、及び第9制御手段を備える混注装置である。前記キャップ着脱手段は、注射器の注射針のキャップを取り外すために用いられ、前記注射器から取り外された前記キャップを保持可能である。前記第2駆動手段は、前記注射器を操作可能である。前記第3駆動手段は、前記注射器及び前記キャップ着脱手段のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能である。前記第6制御手段は、薬品容器の開口部が上方に向けられ、前記注射器の先端が下方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させる。前記第9制御手段は、前記第6制御手段により前記注射器内の輸液が前記薬品容器に注入された後、前記第3駆動手段を制御して、前記キャップ着脱手段で保持されている前記キャップに前記注射器の注射針を挿入すると共に、前記第2駆動手段を制御して前記注射器内に存在する空気を排出させる。これにより、前記注射針が前記キャップに挿入された状態で前記空気の排出が実行されるため、仮に前記薬液が前記注射針から飛散するとしてもその飛散を前記キャップ内に収めることができる。
【0055】
また、本発明は、注射器の注射針のキャップを取り外すために用いられ、前記注射器から取り外された前記キャップを保持可能なキャップ着脱手段と、前記注射器を操作可能な第2駆動手段と、前記注射器及び前記キャップ着脱手段のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能な第3駆動手段とを備える混注装置において実行される混注方法であって、薬品容器の開口部が上方に向けられ、前記注射器の先端が下方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器内の輸液を前記薬品容器に注入する第2置換工程とを交互に実行させるステップと、前記ステップにより前記注射器内の輸液が前記薬品容器に注入された後、前記第3駆動手段を制御して、前記キャップ着脱手段で保持されている前記キャップに前記注射器の注射針を挿入すると共に、前記第2駆動手段を制御して前記注射器内に存在する空気を排出させるステップとを備える混注方法として捉えることも可能である。これにより、前記注射針が前記キャップに挿入された状態で前記空気の排出が実行されるため、仮に前記薬液が前記注射針から飛散するとしてもその飛散を前記キャップ内に収めることができる。
【0056】
また、本発明は、第1駆動手段、第2駆動手段、第10制御手段、及び第11制御手段を備える混注装置である。前記第1駆動手段は、注射器及び薬品容器のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能である。前記第2駆動手段は、前記注射器を操作可能である。前記第10制御手段は、前記薬品容器の開口部が下方に向けられ、前記注射器の注射針の先端が上方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から輸液を吸引する吸引工程を実行させる。前記第11制御手段は、前記第1駆動手段を制御して前記吸引工程において前記薬品容器内の輸液量が減少するに従って前記注射器の注射針の前記薬品容器への挿入量を段階的に減少させる。これにより、前記注射針を前記薬品容器内に確実に貫通させると共に、前記薬品容器内の薬液を最後まで吸引することが可能になる。
【0057】
また、本発明は、注射器及び薬品容器のいずれか一方又は両方を任意の位置に移動させることが可能な第1駆動手段と、前記注射器を操作可能な第2駆動手段とを備える混注装置において実行される混注方法であって、前記薬品容器の開口部が下方に向けられ、前記注射器の注射針の先端が上方に向けられた状態で、前記第2駆動手段を制御して前記注射器により前記薬品容器から輸液を吸引する吸引工程を実行させるステップと、前記第1駆動手段を制御して前記吸引工程において前記薬品容器内の輸液量が減少するに従って前記注射器の注射針の前記薬品容器への挿入量を段階的に減少させるステップとを備える混注方法として捉えることも可能である。これにより、前記注射針を前記薬品容器内に確実に貫通させると共に、前記薬品容器内の薬液を最後まで吸引することが可能になる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、混注装置における混注処理の適否を鑑査するために適した画像を撮影することのできる混注装置及び混注方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る混注装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る混注装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る混注装置の主扉を開けた状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る混注装置の主扉及び前壁の一部を取り外した状態の正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用されるトレイを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る混注装置を下方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る混注装置の第1ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る混注装置の第2ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部を示す平面模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部の機構を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る混注装置のアンプルカッターを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る混注装置の攪拌装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る混注装置の薬品読取部を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る混注装置の針曲り検知部を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る混注装置の注射針着脱装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る混注装置の注射針着脱装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態に係る混注装置の針挿入確認カメラの撮影画像の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される注射器位置調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される容器位置調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される鑑査制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態に係る混注装置における薬品容器及び注射器の位置関係の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態に係る混注装置における薬品容器及び注射器の位置関係の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明の実施形態に係る混注装置における薬品容器及び注射器の位置関係の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される鑑査制御処理における撮影結果の一例を示す図である。
【
図25】
図25は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される鑑査制御処理において表示される鑑査画面の一例を示す図である。
【
図26】
図26は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される鑑査制御処理において表示される鑑査画面の一例を示す図である。
【
図27】
図27は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される注射器の規格容量と許容範囲との関係を定めた対応情報の一例を示す図である。
【
図28】
図28は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行されるトレイ照合処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図29】
図29は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される器材取込処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される器材取込処理における動作例を示す図である。
【
図31】
図31は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される器材取込処理における動作例を示す図である。
【
図32】
図32は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される器材取込処理における動作例を示す図である。
【
図33】
図33は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される注入制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される輸液情報の一例を示す図である。
【
図35】
図35は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される注入制御処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図36】
図36は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行されるアンプル使用時の混注処理における薬品の抜取動作の手順を説明するための図である。
【
図37】
図37は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行されるアンプル使用時の混注処理における薬品の抜取動作の手順を説明するための図である。
【
図38】
図38は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される溶媒量調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図39】
図39は、本発明の他の実施形態に係る混注装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図40】
図40は、本発明の他の実施形態に係る混注装置の主扉及び前壁の一部を取り外した状態の正面図である。
【
図41】
図41は、本発明の他の実施形態に係る混注装置で実行される第1ロボットアーム制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図42】
図42は、本発明の他の実施形態に係る混注装置で実行される第2ロボットアーム制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図43】
図43は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における第1ロボットアーム及び第2ロボットアームの動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図44】
図44は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における第1ロボットアーム及び第2ロボットアームの動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図45】
図45は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における注入工程の状態及び吸引工程の状態を示す図である。
【
図46】
図46は、本発明の他の実施形態に係る混注装置で実行される第2ロボットアーム制御処理の他の例を説明するためのフローチャートである。
【
図47】
図47は、本発明の他の実施形態に係る混注装置で撮影される注射器の画像の一例を示す図である。
【
図48】
図48は、本発明の他の実施形態に係る混注装置で撮影される注射器及び薬品容器の画像の一例を示す図である。
【
図49】
図49は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における薬品容器のゴム栓の挿通位置の一例を示す図である。
【
図50】
図50は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における混注動作を説明するためのフローチャートである。
【
図51】
図51は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における混注動作を説明するためのフローチャートである。
【
図52】
図52は、本発明の他の実施形態に係る混注装置におけるプランジャの位置合わせ工程を説明するための図である。
【
図53】
図53は、本発明の他の実施形態に係る混注装置におけるキャップの位置合わせ工程を説明するための図である。
【
図54】
図54は、本発明の他の実施形態に係る混注装置におけるキャップの位置合わせ工程を説明するための図である。
【
図55】
図55は、本発明の他の実施形態に係る混注装置におけるキャップ外し工程を説明するための図である。
【
図56】
図56は、本発明の他の実施形態に係る混注装置におけるキャップ外し工程を説明するための図である。
【
図57】
図57は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における攪拌動作の他の例を説明するための図である。
【
図58】
図58は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における注入工程を説明するための図である。
【
図59】
図59は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における吸引工程を説明するための図である。
【
図60】
図60は、本発明の他の実施形態に係る混注装置における吸引工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0061】
[第1の実施形態]
まず、
図1~
図38を参照しつつ、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0062】
[混注装置1]
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る混注装置1は、混注制御装置100、薬品装填部200、及び混注処理部300を備える。そして、前記混注装置1では、前記混注制御装置100により前記混注処理部300の動作が制御されることによって、調製データに示された抗がん剤などの薬品を既定量の前記薬品が収容された一又は複数の薬品容器から輸液容器に注入する混注処理が実行される。
【0063】
[混注制御装置100]
まず、
図1を参照しつつ前記混注制御装置100の概略構成について説明する。前記混注制御装置100は、通信可能に接続された第1制御部400及び第2制御部500を備える。前記第1制御部400は、前記薬品装填部200側に設けられ、前記第2制御部500は、前記混注処理部300側に設けられている。
【0064】
なお、本実施形態で説明する前記第1制御部400及び前記第2制御部500各々の処理分担は一例に過ぎず、前記混注処理の各処理手順は前記第1制御部400及び前記第2制御部500のいずれかによって実行されればよい。また、前記混注制御装置100が、一つの制御部又は三つ以上の制御部を有することも他の実施形態として考えられる。さらに、前記第1制御部400及び前記第2制御部500で実行される処理の一部又は全部が、ASIC又はDSPなどの電子回路により実行されてもよい。
【0065】
また、前記第1制御部400は、前記混注装置1に調製データを入力する電子カルテシステム又は調剤管理システムなどの上位システム600との間で通信可能である。前記調製データは、処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである。例えば、前記処方データには、処方箋交付年月日、患者ID、患者名、患者生年月日、薬品情報(薬品コード、薬品名、用量など)、剤形情報(内服、外用など)、用法情報(1日3回毎食後など)、診療種別(外来、入院など)、診療科、病棟、及び病室などが含まれる。また、前記調製データには、患者情報、医師情報、薬品情報、薬品の処方量、薬品容器の種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル瓶、又は粉薬入りバイアル瓶など)、調製内容情報(混注処理に使用する薬品容器、注射器、注射針の種類や本数等)、及び調製手順情報(作業内容、溶解薬、溶媒、溶解薬量、溶媒量、抜取量)、調製日、処方箋区分、投薬日、診療科、病棟、調製時間などが含まれる。
【0066】
前記第1制御部400は、CPU401、ROM402、RAM403、データ記憶部404、及び操作部405などを備えるパーソナルコンピュータである。前記第1制御部400には、前記薬品装填部200に設けられた後述のディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205などの各種の電気部品が接続されている。
【0067】
前記CPU401は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM402は、前記CPU401により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM403は、前記CPU401による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0068】
前記データ記憶部404は、前記CPU401によって実行される各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。具体的に、前記データ記憶部404には、前記上位システム600から入力される前記調製データが記憶される。
【0069】
ここで、前記第1制御部400は、前記上位システム600から入力された前記調製データと共に前記調製データごとに対応する後述のトレイ101の識別情報を記憶する。例えば、前記調製データと前記トレイ101との対応付けは、前記第1制御部400によって行われる。また、前記調製データと前記トレイ101との対応関係を示す情報が前記調製データと共に前記混注装置1に入力されることも考えられる。
【0070】
また、前記データ記憶部404には、例えば薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスターなどの各種データベースが記憶されている。例えば、前記薬品マスターには、薬品コード、薬品名、JANコード(又はRSS)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤、外用薬など)、比重、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項、薬品容器の種別(アンプル、バイアル瓶)、薬品容器単位の薬品の収容量(既定量)、及び薬品容器の重量などの情報が含まれる。
【0071】
さらに、前記データ記憶部404には、前記CPU401に各種の処理を実行させるための混注制御プログラムが予め記憶されている。なお、前記混注制御プログラムは、前記第1制御部400が備える不図示の読取装置によって、例えばCD、DVD、BD、フラッシュメモリなどの記録媒体から読み取られて前記データ記憶部404にインストールされてもよい。
【0072】
前記操作部405は、前記第1制御部400における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作手段を含む。
【0073】
前記第2制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、データ記憶部504、操作部505などを備えるパーソナルコンピュータである。前記第2制御部500には、前記混注処理部300に設けられた後述の第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、トレイ搬送部110、タッチパネルモニタ14、ICリーダ101c、ICリーダ15a、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42などの各種の電気部品が接続されている。
【0074】
前記CPU501は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM502は、前記CPU501により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM503は、前記CPU501による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0075】
前記データ記憶部504は、前記CPU501によって実行される各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。具体的に、前記データ記憶部504には、前記CPU501に後述の混注処理などを実行させるための混注制御プログラムが予め記憶されている。なお、前記混注制御プログラムは、前記第2制御部500が備える不図示の読取装置によって、例えばCD、DVD、BD、フラッシュメモリなどの記録媒体から読み取られて前記データ記憶部504にインストールされてもよい。
【0076】
なお、本発明は、前記混注制御装置100において前記CPU401及び前記CPU501に各種の処理を実行させるための前記混注制御プログラム又は前記混注制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明として捉えてもよい。また、本発明は、前記混注装置1において前記混注処理の各処理手順を実行する混注方法の発明として捉えてもよい。
【0077】
前記操作部505は、前記第2制御部500における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作手段を含む。
【0078】
[薬品装填部200]
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、前記薬品装填部200の概略構成について説明する。
【0079】
図2及び
図3に示すように、前記薬品装填部200は、扉201、作業テーブル202、ディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205を備えるクリーンベンチである。なお、
図3に示すように、前記薬品装填部200と前記混注処理部300とは、前記混注処理部300の側面に形成されたトレイ挿入口114により連通されている。
【0080】
前記ディスプレイ203は、前記第1制御部400からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示手段である。具体的に、前記ディスプレイ203には、前記混注装置1における混注対象の候補となる調製データなどが表示される。また、前記バーコードリーダ204は、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードを読み取って、前記バーコードの内容を前記第1制御部400に入力する。前記空気清浄装置205は、前記薬品装填部200内に所定のフィルターを通じて空気を供給する。
【0081】
前記扉201は、前記薬品装填部200の前面に設けられており、垂直方向に開閉可能である。ユーザーは、
図2に示すように、前記扉201を少し開いて手を前記薬品装填部200内に入れた状態で、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行う。具体的に、前記作業テーブル202上に載置されているトレイ101には、
図5に示すように、前記混注装置1で実行される混注処理で使用する薬品容器10、注射器11、及び輸液バッグ12(輸液容器の一例)などが収容される。前記準備作業には、例えば前記トレイ101の所定の位置に前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記輸液バッグ12を載置させ、前記トレイ101を前記混注処理部300に装填する装填作業が含まれる。以下では、前記薬品容器10がアンプルである場合には、前記薬品容器10をアンプル10Aと称し、前記薬品容器10がバイアル瓶である場合には、前記薬品容器10をバイアル瓶10Bと称する。
【0082】
図5に示すように、前記トレイ101は、患者名及び施用などが文字表示される電子ペーパー101aと、各種の情報が読み書き可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグのようなICタグ101b(記録媒体の一例)とを有する。前記ICタグ101bには、前記トレイ101を識別するための識別情報が記憶されている。
【0083】
また、前記トレイ101は、前記薬品容器10及び前記注射器11(シリンジ11a、注射針11c)が載置される器材載置部102(
図9参照)と、前記輸液バッグ12を保持する輸液バッグ保持部103(
図5参照)とを有する。前記器材載置部102及び前記輸液バッグ保持部103は前記トレイ101に対して個別に着脱可能である。
【0084】
前記器材載置部102には、
図5に示すように、前記アンプル10Aを傾斜した状態で支持する支持部102Aが設けられている。そして、前記アンプル10Aは、前記支持部102Aで斜めに立てられた状態でセットされる。これにより、前記アンプル10Aの首部に薬品が溜まらない。また、前記アンプル10Aの他、前記注射器11の注射針11cなども前記支持部102Aに斜めに立てられた状態でセットされる。
【0085】
前記注射針11cには、シリンジフィルター付きの注射針も含まれる。具体的に、前記アンプル10Aを使用する場合は、前記アンプル10Aの首が折られたときの破片が前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入されること、又は前記破片が前記注射器11に流入することを防止するためにシリンジフィルター付きの注射針が使用される。前記シリンジフィルターは、一般にコマ型フィルターとも称されるフィルターであり、薬品以外の異物の通過を防止する機能を有する。例えば、一般には日本ポール社製のシリンジフィルターが知られている。
【0086】
一方、前記バイアル瓶10B及び前記注射器11は、
図5及び
図9に示すように、前記器材載置部102に寝かせた状態でセットされる。なお、このとき前記注射器11は、シリンジ11a及び注射針11cが分離した状態である。もちろん、ここで説明する前記器材載置部102内の配置形態は例示であり、これに限定されるものではない。
【0087】
また、前記輸液バッグ保持部103には、
図5に示すように、前記輸液バッグ12の混注口(首部)を固定するためのチャック部140が設けられている。前記準備作業では、ユーザーが前記輸液バッグ12を前記チャック部140で保持させた状態で前記輸液バッグ保持部103にセットする。また、前記輸液バッグ保持部103には、前記輸液バッグ保持部103を昇降させる際に使用される係合穴部103aが設けられている。
【0088】
そして、前記トレイ101は、ユーザーにより前記薬品容器10、前記注射器11及び前記輸液バッグ12がセットされた後、前記トレイ挿入口114を通じて前記混注処理部300に供給される。なお、前記薬品装填部200が、自動的に前記トレイ101を前記混注処理部300に搬入させるベルトコンベアなどの搬入機構を備えることも考えられる。
【0089】
[混注処理部300]
続いて、前記混注処理部300の概略構成について説明する。
【0090】
図2~4に示すように、前記混注処理部300の前面には、主扉301、注射器取出扉302、ゴミ収容室扉13、タッチパネルモニタ14、及びトレイ排出口15などが設けられている。
【0091】
前記主扉301は、例えば前記混注処理部300に設けられた混注処理室104内の清掃などの際に、前記混注処理室104内にアクセスするために開閉される。また、前記混注装置1では、薬品が注入された前記輸液バッグ12を払い出す他に、薬品が充填された状態で前記注射器11を払い出すことも可能である。前記注射器取出扉302は、前記混注処理室104から前記注射器11を取り出す際に開閉される。
【0092】
前記ゴミ収容室扉13は、前記混注処理室104における混注処理で使用された後の前記薬品容器10及び前記注射器11などの廃棄物が収容されるゴミ収容室13aから前記廃棄物を除去するために開閉される。また、前記トレイ排出口15は、前記混注処理室104における混注処理により薬品が混注された後の前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を取り出すために開閉される。
【0093】
前記タッチパネルモニタ14は、前記第2制御部500からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示手段である。前記タッチパネルモニタ14には、例えば後述の各種カメラによって撮影される画像又は映像が表示可能である。
【0094】
[混注処理室104]
図3及び
図4に示すように、前記混注処理室104には、第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、アンプルカッター31、攪拌装置32、載置棚33、回転用載置部33A、薬品読取部34、秤量計35、針曲り検知部36、混注連通口37、針挿入確認透明窓38、及びゴミ蓋132aなどが設けられている。さらに、
図6に示すように、前記混注処理室104の天井側には、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42、注射針着脱装置43、針挿入確認カメラ44、殺菌灯45などが設けられている。
【0095】
[第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22]
前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、多関節構造を有する駆動部であり、前記混注処理室104の天井側に基端部を固定して垂下状に設けられている。前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の間接はそれぞれ5~8軸程度である。そして、前記混注装置1では、双腕型の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により混注処理における各作業工程が実行される。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の各間接に設けられた駆動モーターを個別に駆動させ、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に前記混注処理における各作業を実行させる。なお、前記混注処理部300は、前記混注処理を実行することができる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であってもよい。
【0096】
図6に示すように、前記第1ロボットアーム21は、前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を保持することが可能な保持部25を備え、前記保持部25を予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。前記第2ロボットアーム22は、前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を保持することが可能であり、前記注射器11による薬品の吸引及び注入の操作を実行することのできる保持部26を備える。ここに、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が第1駆動手段の一例であり、前記保持部26が第2駆動手段の一例である。また、前記第2ロボットアーム22は、前記薬品容器10及び前記注射器11などを予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。
【0097】
図7に示すように、前記第1ロボットアーム21の前記保持部25は、一対の把持爪25a、モーター251、前記モーター251によって回転される2本のねじシャフト252、253、前記ねじシャフト252、253に螺合されたナットブロック254、255を備える。前記一対の把持爪25aは、前記ナットブロック254、255にそれぞれ固定されている。そして、前記ねじシャフト252、253の回転によって前記ナットブロック254、255が移動し、前記一対の把持爪25aが相互に近接及び離間して前記保持部25を保持及び解放する。
【0098】
また、前記一対の把持爪25aは、前記バイアル瓶10Bの保持に適した凹部を有すると共に、先端側には前記アンプル10Aの保持に適した凹部を有する把持部である。
図7では、前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bの両方が保持されている様子を示しているが、実際には一つの前記アンプル10A又は前記バイアル瓶10Bを保持する。
【0099】
また、前記保持部25は、前記一対の把持爪25aによってキャップ付きの注射針又は前記注射器11を保持することも可能である。ところで、前記第2制御部500は、前記保持部25の前記一対の把持爪25aで前記注射器11を保持した際の前記モーター251の駆動量に応じて、前記注射器11の直径を測定することが可能である。従って、前記第2制御部500は、前記注射器11が前記調製データの調製内容情報で指定された注射器であるかどうかを判断することができる。
【0100】
図8に示すように、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26は、注射器保持部261、プランジャ保持部262及び移動部263を備える。前記注射器保持部261は、前記注射器11のシリンジ11aを保持する一対の把持爪261aを備えている。前記一対の把持爪261aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記シリンジ11aを保持及び解放する把持部である。また、前記一対の把持爪261aにおいては、互いに対向する対向面に、前記把持爪261aの上端面から前記対向面へ向けて下り傾斜する傾斜部261bが形成されている。
【0101】
前記プランジャ保持部262は、前記注射器11のプランジャ11bの鍔部を保持する一対の把持爪262aを備えている。前記一対の把持爪262aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記プランジャ11bの鍔部を保持及び解放する把持部である。前記把持爪262a各々の上面には把持爪262bが固定されている。前記把持爪262b各々は、前記一対の把持爪262aを近接及び離間させることで近接及び離間し、前記注射器11だけではなく前記薬品容器10などの他の器材を把持する把持部である。なお、前記一対の把持爪262aの対向側の上面には前記プランジャ11bの鍔部が入り込むための凹部が形成されている。また、前記一対の把持爪262bの先端は前記一対の把持爪262aよりも前方に突出しており、前記一対の把持爪262bによる前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bなどの器材の把持が容易である。なお、前記把持爪262bは前記把持爪261aに設けられていてもよい。
【0102】
前記移動部263は、前記プランジャ保持部262を前記注射器11のプランジャ11bの移動方向に移動させることが可能である。前記移動部263は、例えば、モーター、前記モーターによって回転されるねじシャフト、前記ねじシャフトに螺合されたナットブロック、ガイド等の駆動機構により前記プランジャ11bを移動させる。前記プランジャ保持部262は、前記ナットブロックに固定されており、前記ナットブロックの移動によって移動する。
【0103】
[トレイ搬送部110]
また、前記混注処理部300には、
図6における右側端部の前記トレイ挿入口114から供給される前記トレイ101を、左側端部のトレイ搬送終端部110aまで搬送するトレイ搬送部110が設けられている。
【0104】
ここに、
図9は、前記トレイ搬送部110における前記トレイ101の搬送経路の一例を示す平面模式図である。なお、前記トレイ搬送部110内は前記混注処理室104内よりも陽圧に設定されている。
図9に示すように、前記トレイ搬送部110は、前記トレイ101を、前記混注処理室104の下方であって前記ゴミ蓋132aの下に位置する前記ゴミ収容室13aの後方側を通過させて搬送するように設けられている。これにより、前記混注装置1の正面側から前記ゴミ収容室13aにアクセスすることができる。
図9では、前記トレイ搬送部110の搬送経路を示すために、前記トレイ搬送部110内を移動する前記トレイ101を二点鎖線で示しており、前記トレイ搬送部110内に同時に複数の前記トレイ101が存在するわけではない。
【0105】
前記トレイ搬送部110には、前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部10に設けられた前記ICタグ101bから情報を読み取り可能なICリーダ101c及びICリーダ15aが設けられている。例えば、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aは、RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダである。前記ICリーダ101cは、前記トレイ挿入口114から前記トレイ101が装填されるトレイ搬送開始部110bに設けられており、前記ICリーダ15aは、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から排出される前記トレイ搬送終端部110aに設けられている。ここに、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aがトレイ読取手段の一例である。
【0106】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から前記トレイ搬送開始部110bに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ101cにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送終端部110aに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ15aにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。そして、前記第2制御部500は、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aによる読取結果に応じて前記トレイ101の適否などを判断する後述のトレイ照合処理(
図28参照)を実行する。
【0107】
また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114を通って前記トレイ搬送部110内の所定位置に達したことを、例えばセンサの出力に基づいて判断すると、前記トレイ搬送部110及び前記混注処理室104を連通及び遮蔽させるシャッター111を水平方向にスライドさせる。前記シャッター111が開けられると、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出される。
図9では、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出された状態が示されている。
【0108】
前記トレイ搬送部110には、
図10に示されているように、前記トレイ挿入口114を通って前記トレイ搬送部110内に移動された前記トレイ101における前記器材載置部102を昇降させるトレイ昇降部112が設けられている。前記トレイ昇降部112は、例えば昇降可能に設けられた4本のシャフト112aの上下方向の駆動により、前記器材載置部102を下から上方に持ち上げる。
【0109】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ昇降部112によって前記器材載置部102を上昇させた後、前記トレイ確認カメラ41による撮影を行う。前記トレイ確認カメラ41は、予め定められた前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10及び前記注射器11等を上方から撮影する。ここに、前記トレイ確認カメラ41が載置時撮影手段の一例である。前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41の撮影画像を用いて画像認識処理を実行し、前記調製データで示されている数の前記薬品容器10及び前記注射器11(シリンジ11a及び注射針11c)などが前記器材載置部102上に存在しているかどうか等の判断を行う。
【0110】
また、
図10に示すように、前記混注処理室104の左側空間に位置する前記トレイ搬送終端部110aには、前記輸液バッグ保持部103を昇降させるバッグ昇降部113が設けられている。前記第2制御部500は、前記トレイ101を前記バッグ昇降部113の前まで搬送させた後、前記バッグ昇降部113のフック部113aを前記係合穴部103aに下から引っかける。そして、前記第2制御部500は、前記フック部113aが形成された円弧ギア部113bをモーター113cで回転駆動させることにより、前記輸液バッグ保持部103を上昇させ、前記輸液バッグ12の混注口を前記混注連通口37に位置させる。また、前記第2制御部500は、前記モーター113cを制御することにより、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ保持部103を傾斜させ、前記輸液バッグ12の混注口を上向き又は下向きにすることができる。
【0111】
また、
図6に示すように、前記トレイ搬送終端部110aの上方には、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12を照明するドーム型ライト120及び輸液用カメラ121が設けられている。前記輸液用カメラ121は、前記ドーム型ライト120内の中心部に設けられ、前記輸液バッグ12の表面に付されているバーコードを読み取る。これにより、前記第2制御部500では、前記輸液用カメラ121により読み取られた前記バーコードの情報に従って前記輸液バッグ12の適否を判断することが可能である。
【0112】
[アンプルカッター31]
図11に示すように、前記アンプルカッター31には、ヤスリ部31a、屑トレイ31b、頭部差し込み部31c、駆動ボックス31f、屑ボックス31g、及び把持部31hが設けられている。
【0113】
前記ヤスリ部31aは、前記アンプル10Aの首にノッチ加工をするための部材であり、前記屑トレイ31bには前記ヤスリ部31aにおけるノッチ加工で生じる屑が落下する。具体的に、前記混注装置1では、前記第1ロボットアーム21が前記アンプル10Aを保持し、前記アンプル10Aの首を前記ヤスリ部31aに当てた状態で摺動することにより前記アンプル10Aの首にノッチ加工が施される。
【0114】
前記頭部差し込み部31cは、前記ノッチ加工が施された前記アンプル10Aの頭部が下方から差し込まれる孔31dと、前記孔31dから上方に突出された前記アンプル10Aの頭部の側方に位置するプッシャー31eとを有する。一方、前記駆動ボックス31fは、内部に設けられたカム及び前記カムを駆動する駆動モーターを有しており、前記駆動モーターにより前記カムが駆動されると、前記カムによって前記プッシャー31eが前記アンプル10Aの頭部に近接及び離間する方向に往復動作する。
【0115】
そして、前記混注装置1では、前記第1ロボットアーム21が前記把持爪25aにより前記アンプル10Aを保持し、前記アンプル10Aの頭部を前記孔31dに下から差し込んで首部より上の頭部を上方に突出させる。その後、前記第2制御部500により、前記駆動ボックス31fの前記駆動モーターが駆動されて前記プッシャー31eが前記アンプル10Aの頭部を押す方向に移動されると、前記プッシャー31eにより前記頭部が押されて折れられる。このとき、前記プッシャー31eで折られた頭部は前記屑ボックス31g内に落ちる。なお、前記把持部31hは、前記アンプルカッター31を摺動可能に支持するレール31i(
図4参照)に沿って前記アンプルカッター31を摺動させる際にユーザーが把持するために用いられる。
【0116】
[撹拌装置32]
前記攪拌装置32は、前記バイアル瓶10Bに粉薬(散薬)などの溶解が必要な薬品が収容されている場合に、前記バイアル瓶10B内に輸液又は薬品などを注入して前記薬品を溶解させ、混合薬品を生成するときに使用される。具体的に、前記攪拌装置32には、
図12に示すように、ローラー32a、押さえ部32b、回動支持部32c、支持台32d、水平揺動機構32e、支持部32f、及び駆動モーター32gなどが設けられている。
【0117】
二つの前記ローラー32aは、所定の間隔だけ離間して対向配置されている。一方の前記ローラー32aは回動自在に支持され、他方の前記ローラー32aは前記駆動モーター32gに連結されている。なお、前記ローラー32a各々は軸方向に長尺状であり、前記攪拌装置32では、前記ローラー32aの軸方向の両端に載置される二つの前記バイアル瓶10Bを同時に攪拌することが可能である。
【0118】
また、前記押さえ部32bは、前記ローラー32aに載置された前記バイアル瓶10Bを上から押さえるために用いられ、前記薬品容器10の回転に伴って回転する従動ローラーである。前記回動支持部32cは、不図示の駆動モーターによって前記押さえ部32bを前記薬品容器10に対して接触又は離間する方向に回動させる。
【0119】
前記支持台32dは、前記ローラー32a、前記押さえ部32b、及び前記回動支持部32cなどを支持する。前記水平揺動機構32eは、例えばクランク機構を有しており、前記支持台32dを前記ローラー32aの軸方向に揺動させることが可能である。
【0120】
前記支持部32fは、前記ローラー32aの軸方向の両端部に前記バイアル瓶10Bの首が嵌められるU字状の切り欠きを有する。前記ローラー32aに前記バイアル瓶10Bが載置される場合は、前記薬品容器10の首が前記切り欠きに係合される。これにより、前記支持台32dが前記水平揺動機構32eによって前記ローラー32aの軸方向に揺動される場合に、前記薬品容器10が前記ローラー32aの軸方向の揺動に追随して揺動し、前記薬品容器10内の薬品が水平方向に攪拌される。
【0121】
一方、二つの前記ローラー32aの間に、前記バイアル瓶10Bが載置され、前記駆動モーター32gが駆動されると、前記駆動モーター32gに連結された前記ローラー32aにより前記薬品容器10が回転され、前記薬品容器10内の薬品が攪拌される。なお、このとき他方の前記ローラー32aは、前記薬品容器10の回転により前記他方のローラー32aと同方向に回転する。また、前記ローラー32aの少なくとも一方が偏心駆動されるものであれば、前記ローラー32aに載置された前記バイアル瓶10Bを縦方向(上下方向)にも攪拌することが可能である。
【0122】
[載置棚33]
図4に示すように、前記載置棚33は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記薬品容器10及び前記注射器11などを仮置きするために用いられる。前記載置棚33は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の双方がアクセス可能な位置に設けられている。前記載置棚33において、前記バイアル瓶10Bは予め定められた位置に立てた状態で載置される。一方、前記載置棚33には、前記アンプル10Aを傾斜した状態で保持するための傾斜保持部が設けられており、前記アンプル10Aは、前記傾斜保持部に傾斜した状態で載置される。また、前記載置棚33には、前記注射器11の首部が嵌る予め定められた所定径の首保持穴が形成されており、前記注射器11は、注射針11cが付けられていないシリンジのみの状態で首部を下向きにして仮置きされる。
【0123】
[回転用載置部33A]
図示しないが、回転用載置部33Aは、前記注射器11を周方向に回転させるための作業に用いられ、前記第1ロボットアーム21がアクセス可能な位置に設けられている。例えば、前記回転用載置部33Aは、前記載置棚33と同様に、前記注射器11の首部が嵌る予め定められた所定径の首保持穴が形成されており、前記注射器11は、注射針11cが付けられていないシリンジのみの状態で首部を下向きにして載置される。そして、前記第1ロボットアーム21は、前記注射器11を前記回転用載置部33Aに載置した後、前記注射器11を周方向に180度回転させることが可能である。例えば、前記第1ロボットアーム21は、下記(a)、(b)を繰り返し実行することにより前記注射器11を周方向に180度まで徐々に回転させる。(a)前記注射器11を把持して周方向における一の方向に所定量回転させた後、前記注射器11を離して前記第1ロボットアーム21の角度を周方向における他の方向に所定量移動する。(b)前記注射器11を再度把持し、前記注射器11を周方向における一の方向に所定回転させる。
【0124】
[薬品読取部34]
前記薬品読取部34は、前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bなどの前記薬品容器10に貼付されたラベルに記載され、収容された薬品の薬品情報を示すバーコードを読み取る。具体的に、前記薬品読取部34は、
図13に示すように、二つのローラー34a(回転駆動手段の一例)、及びバーコードリーダ34b(容器読取手段の一例)を備える。前記ローラー34aは、所定の間隔だけ離間して対向配置されている。一方の前記ローラー34aは回動自在に支持され、他方の前記ローラー34aは不図示の駆動モーターに連結されている。二つの前記ローラー34aは、前記駆動モーターによって駆動されることにより、前記ローラー34aの間に載置された前記薬品容器10を周方向に回転させる。これにより、前記薬品容器10を周方向に1回転させることができるため、前記薬品容器10に貼付されたラベルの全域を前記バーコードリーダ34bに向けることができる。そして、前記バーコードリーダ34bは、前記ローラー34aにより回転される前記薬品容器10のラベルからバーコードを読み取る。
【0125】
[秤量計35]
前記秤量計35は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記注射器11の重量を測定するために用いられ、前記秤量計35による測定結果は前記第2制御部500に入力される。なお、前記秤量計35は、前記第2ロボットアーム22の可動範囲内に配置されており、前記第2ロボットアーム22により載置された前記注射器11の重量を測定する。
【0126】
[針曲り検知部36]
図14に示すように、前記針曲り検知部36には、前記注射器11の前記注射針11cを挿入して移動させることが可能な長穴36aが形成されている。また、前記針曲り検知部36は、前記長穴36aを挟んで光線を照射及び受光し、互いの光線が非平行となるように配置された第1光センサ361及び第2光センサ362を備える。前記第1光センサ361と第2光センサ362による検知結果は前記第2制御部500に入力される。
【0127】
そして、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11に装着されている前記注射針11cが前記長穴36aに挿入されて上下方向に移動される。このとき、前記第1光センサ361及び前記第2光センサ362各々の光線が前記注射針11cによって遮られると、前記第1光センサ361と第2光センサ362はオフする。これにより、前記第2制御部500では、前記光線を遮るときの前記注射針11cの位置情報を用いて前記注射針11cの曲りを検知することが可能である。なお、前記注射針11cをカメラで撮影し、この撮影した画像に対する画像認識で針曲りを検知することも他の実施形態として考えられる。そして、前記注射針11cに曲りが生じている場合、前記第2制御部500は、前記注射針11cの曲り量に基づいて、前記第2ロボットアーム22により前記注射針11cで前記輸液バッグ12の混注口を穿刺する際の針先位置又は方向などを補正する。
【0128】
[混注連通口37]
前記混注連通口37は、
図3に示すように、前記混注処理室104の側壁における外側に突出するドーム状箇所に形成されており、且つ前記ドーム状箇所には上下方向に前記輸液バッグ12の混注口を通すための切欠きが形成されている。そのため、前記輸液バッグ保持部103が上昇すると、前記輸液バッグ12の混注口が前記混注処理室104内に位置することになる。
【0129】
[針挿入確認透明窓38]
前記針挿入確認透明窓38は、前記トレイ搬送終端部110aの前記輸液バッグ12を前記混注処理部300から視認可能な窓であり、前記注射器11の注射針11cが前記輸液バッグ12に挿入された状態を確認するための画像撮影時に使用される。
【0130】
[注射器確認カメラ42]
また、前記注射器確認カメラ42は、
図6に示すように、前記混注処理部300の天井部に配置されている。そして、前記注射器確認カメラ42は、前記注射器11に吸引された薬品の有無及び量などを確認するために前記注射器11を撮影するために用いられる。前記注射器確認カメラ42は、予め固定された撮影範囲R1内の画像を撮影するものであってもよいが、前記第2制御部500によって制御されることにより前記撮影範囲R1の位置及びサイズを任意に変更可能なものであってもよい。また、後述するように、前記混注装置1では、前記注射器確認カメラ42により、前記注射器11及び前記薬品容器10が一度に撮影され、信憑性の高い鑑査画像が提供される。前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42による前記撮影画像を、例えば前記混注装置1で実行される混注処理の適否を画像で鑑査するために、前記データ記憶部404、前記データ記憶部504、又は前記混注装置1の外部に設けられたハードディスク等の記憶部に記録させる。そして、前記第2制御部500は、ユーザーによる前記鑑査の際に、前記注射器確認カメラ42による撮影画像を前記タッチパネルモニタ14又は前記ディスプレイ203などの表示装置に表示させる。
【0131】
[注射針着脱装置43]
前記注射針着脱装置43は、
図15及び
図16に示すように、切り込み部が形成されたチャック部43aの穴部43bにキャップ付きの注射針11cの針先が上向きで差し込まれる。モーター43cが駆動されると、図示しないカム機構によって前記チャック部43aの穴部43bが拡がって前記キャップ付きの注射針11cを差し込むことができる。前記モーター43cの駆動が停止されると、バネ43dによって前記キャップ付き注射針11cの保持状態が維持される。針回しモーター43eが駆動されると、ギア43f及びギア43gが回転し、前記チャック部43aが回転して、前記キャップ付き注射針11cが回転される。前記注射針11cでは、キャップが前記注射針11cに装着された状態で周方向に回転したときに接触するリブが前記キャップ及び前記注射針11c各々に設けられている。そのため、前記注射針11cは、前記チャック部43aによって前記注射針11cのキャップが回転されたときに前記キャップと共に回転し、前記シリンジ11aに対して着脱される。具体的に、前記注射針着脱装置43では、前記アンプル10Aを使用する際のシリンジフィルター付きの注射針11cへの付け替えを自動で行うことが可能である。また、前記注射針着脱装置43は、前記キャップ付きの注射針11cの針先が上に向くので、前記注射針11cが外された前記シリンジ11aの先端開口は上向きとなり、前記シリンジ11aの首部開口からの液垂れを防止することができる。
【0132】
[針挿入確認カメラ44]
また、前記針挿入確認カメラ44は、前記混注処理室104外に位置する前記輸液バッグ12と、前記混注処理室104内の前記注射器11を1つの画像内に収まるように撮影する。前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12の混注口を前記注射針11cで穿刺した際に、前記針挿入確認カメラ44によって前記針挿入確認透明窓38の方向を撮影する。そして、前記針挿入確認カメラ44による撮影画像は、例えば前記タッチパネルモニタ14に表示される。ここに、
図17は、前記針挿入確認カメラ44による撮影画像の一例である。これにより、ユーザーは、前記注射針11cの先端側が前記輸液バッグ12内に位置しているか否かを前記撮影画像によって確認することができる。なお、前記撮影画像は、例えば最終鑑査のために前記混注装置1の内部又は外部に設けられたハードディスク等の記憶部に保存される。そして、前記撮影画像が表示されている前記タッチパネルモニタ14で、ユーザーによりOKボタンが操作されて適切に混注処理が終了したと判断されると、前記輸液バッグ12が前記バッグ昇降部113によって降下され、前記トレイ101に戻される。
【0133】
[殺菌灯45]
前記殺菌灯45は、例えば前記混注処理の開始の3時間前から点灯される。
図6に示すように、二つの前記殺菌灯45のうち1つは前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の間の位置に設けられている。そのため、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に遮られる殺菌光の量は少なくなり、前記混注処理室14内を満遍なく殺菌することができる。また、前記混注処理部300には、前記混注処理室104内の空気を当該混注処理室104の側壁の下部に形成されたスリット104b(
図3、
図4参照)から吸引して前記混注処理室104の上方に設けられた不図示の排気ファンから排出する排気システムが設けられている。また、前記混注処理室104の天井部に形成された吸気口から外気を清浄にして前記混注処理室104等に導く給気システムも設けられている。
【0134】
[混注処理]
次に、前記混注装置1において前記混注処理部300が実行する混注処理の手順の一例について説明する。前記混注処理では、以下に説明するように、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22などを制御することにより、前記調製データに基づいて一又は複数の前記薬品容器10から前記注射器11で薬品を吸引すると共に前記注射器11から前記輸液バッグ12に前記薬品を注入する。ここに、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射器11により前記薬品容器10から薬品を吸引するための処理を実行するときの前記第2制御部500が吸引制御手段の一例である。
【0135】
[アンプル10Aを使用する混注処理]
まず、前記アンプル10Aに収容された薬品を前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理の基本動作について説明する。
【0136】
前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送部110に供給されると、前記ICリーダ101cによって前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、当該混注処理の前記調製データに予め対応付けられた識別情報に一致する場合、前記シャッター111を開く。その後、前記第2制御部500は、前記トレイ101の前記器材載置部102を、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0137】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102を前記トレイ確認カメラ41により撮影する。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理によって、前記器材載置部102に載置された前記アンプル10A及び前記注射器11などの器材の位置や向きを把握する。特に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102から前記アンプル10A又は前記注射器11を取り出す度に、前記トレイ確認カメラ41で前記器材載置部102を撮影し、その撮影画像から最新の前記アンプル10A及び前記注射器11の位置や向きを把握する。
【0138】
続いて、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記混注処理室104内に露出された前記器材載置部102に載置された前記注射器11を前記載置棚33に仮置きする。また、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記アンプル10Aを前記薬品読取部34にセットする。そして、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34により、前記アンプル10Aに収容された薬品の種類などの情報を読み取る。
【0139】
また、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、1本目の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットし、2本目の前記注射針11cを前記載置棚33に仮置きする。ここで、1本目の前記注射針11cは、シリンジフィルターなしの注射針であり、2本目の前記注射針11cは、シリンジフィルター付きの注射針である。なお、前記器材載置部102に載置されている前記注射針11cにはキャップが付けられており、前記キャップは前記注射針着脱装置43で着脱される。
【0140】
そして、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の全ての器材を取り出すと、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により前記器材載置部102を下降させて前記トレイ101に戻す。なお、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の器材が全て取り出されたか否かを前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理により確認する。
【0141】
その後、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記トレイ搬送部110により前記トレイ101を前記トレイ搬送終端部110aに搬送させる。次に、前記第2制御部500は、前記トレイ搬送部110の前記バッグ昇降部113により前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103で保持されている前記輸液バッグ12の混注口を前記混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
【0142】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記薬品読取部34にセットされた前記アンプル10Aを前記載置台33に移動させる。次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置台33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出する。
【0143】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置台33から前記アンプル10Aを取り出し、前記アンプルカッター31を用いて前記アンプル10Aの頭部を折る。そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記アンプル10Aと前記注射器11とを接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記アンプル10A内に挿入する。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記プランジャ11bを操作して前記アンプル10Aから前記調製データにより予め定められた量の薬品を前記注射器11で吸引する。
【0144】
このとき、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記アンプル10A及び前記注射器11の姿勢を徐々に斜めにする。例えば、前記アンプル10Aの口部が鉛直上方向、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられた状態で、前記アンプル10Aからある程度の薬品を吸い上げ、その後、前記アンプル10Aを、鉛直方向を基準に10度程度傾斜させて前記口部の側(首部)に薬品を移動させた状態を形成させる。これにより、前記注射器11の前記注射針11cの先端を前記アンプル10Aの底に着けないで薬品を極力残さずに吸い上げることが可能になる。
【0145】
その後、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22のいずれか一方又は両方を制御して、前記薬品が吸引された後の前記アンプル10A及び前記薬品を吸引した状態の前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内に移動させる。ここに、係る移動処理を実行するときの前記第2制御部500が移動制御手段の一例である。そして、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42により前記アンプル10A及び前記注射器11を一度に撮影し、その撮影画像を鑑査画像として前記データ記憶部504に記録する。ここに、前記注射器確認カメラ42が吸引時撮影手段の一例である。例えば、前記注射器確認カメラ42は、予め定められた前記撮影範囲R1を撮影するものである。一方、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により移動された後の前記アンプル10A及び前記注射器11が一度に撮影可能になるように前記注射器確認カメラ42の前記撮影範囲R1を変更可能であることも考えられる。
【0146】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の前記注射針11cを交換する。具体的に、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射針11cに前記キャップを装着させる。そして、前記第2制御部500は、前記注射針着脱装置43により前記キャップを回転させて、前記注射器11から前記注射針11cを取り外す。なお、前記注射針11cの取り外しは、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22による前記キャップの回転動作によって行われてもよい。
【0147】
そして、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21により前記注射針着脱装置43が掴んでいる前記注射針11cを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。その後、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置台33から前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットさせる。そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11に前記注射針11cを装着させる。この場合も、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出する。このように、前記混注装置1では、前記アンプル10Aから薬品を吸引するときと、前記輸液バッグ12に輸液を注入するときとで前記注射針11cが交換され、前記アンプル10Aの破片が前記輸液バッグ12に混入することが防止される。
【0148】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の混合薬を前記輸液バッグ12に注入する。一方、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21により前記アンプル10Aを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11の前記注射針11cに前記キャップを装着させた後、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。
【0149】
その後、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42などによって撮影された各種の画像を前記データ記憶部504から読み出して前記タッチパネルモニタ14に表示させる。これにより、ユーザーは、前記タッチパネルモニタ14を見ながら前記混注処理の適否について鑑査を行うことができる。
【0150】
[バイアル瓶10Bを使用する混注処理]
続いて、前記バイアル瓶10Bに収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品である場合に、その薬品を輸液と混合してから前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理の基本動作について説明する。
【0151】
前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送部110に供給されると、前記ICリーダ101cによって前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、当該混注処理の前記調製データに予め対応付けられた識別情報に一致する場合、前記シャッター111を開く。その後、前記第2制御部500は、前記トレイ101の前記器材載置部102を、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0152】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102を前記トレイ確認カメラ41により撮影する。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理によって、前記器材載置部102に載置された前記バイアル瓶10B及び前記注射器11などの器材の位置や向きを把握する。特に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102から前記バイアル瓶10B又は前記注射器11を取り出す度に、前記トレイ確認カメラ41で前記器材載置部102を撮影し、その撮影画像から最新の前記バイアル瓶10B及び前記注射器11の位置や向きを把握する。
【0153】
続いて、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記混注処理室104内に露出された前記器材載置部102に載置された前記注射器11を前記載置棚33に仮置きする。また、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記バイアル瓶10Bを前記薬品読取部34にセットする。そして、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34により、前記バイアル瓶10Bに収容された薬品の種類などの情報を読み取る。
【0154】
そして、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の全ての器材を取り出すと、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により前記器材載置部102を下降させて前記トレイ101に戻す。なお、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の器材が全て取り出されたか否かを前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理により確認する。
【0155】
その後、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記トレイ搬送部110により前記トレイ101を前記トレイ搬送終端部110aに搬送させる。次に、前記第2制御部500は、前記トレイ搬送部110の前記バッグ昇降部113により前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103で保持されている前記輸液バッグ12の混注口を前記混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
【0156】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記薬品読取部34にセットされた前記バイアル瓶10Bを前記載置台33に移動させる。一方、この移動処理と並行して、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記注射器11の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットする。
【0157】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置台33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出する。
【0158】
続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記輸液バッグ12から前記調製データで示された溶解量の輸液を吸引する。一方、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置台33に載置されている前記バイアル瓶10Bを取り出す。
【0159】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記バイアル瓶10Bと前記注射器11とをそれぞれ接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺する。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記注射器11内の前記輸液を前記バイアル瓶10B内に注入する。これにより、前記バイアル瓶10B内の薬品が前記輸液で溶解される。このとき、前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bの姿勢は、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられ、前記バイアル瓶10Bの口部が鉛直上方向に向けられた状態である。
【0160】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記輸液が注入された前記バイアル瓶10Bを前記攪拌装置32にセットする。これにより、前記攪拌装置32では、前記バイアル瓶10B内の薬品及び輸液が攪拌される。前記攪拌装置32による攪拌が終了すると、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記攪拌装置32から前記バイアル瓶10Bを取り出す。
【0161】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記ロボットアーム22により、前記バイアル瓶10Bと前記注射器11とをそれぞれ接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺する。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記バイアル瓶10B内の混合薬を前記注射器11で吸引する。このとき、前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bの姿勢は、前記バイアル瓶10Bの口部が鉛直下方向に向けられ、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直上方向に向けられた状態である。
【0162】
その後、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22のいずれか一方又は両方を制御して、前記薬品が吸引された後の前記バイアル瓶10B及び前記薬品を吸引した状態の前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内に移動させる。ここに、係る移動処理を実行するときの前記第2制御部500が移動制御手段の一例である。そして、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42により前記バイアル瓶10B及び前記注射器11を一度に撮影し、その撮影画像を鑑査画像として前記データ記憶部504に記録する。ここに、前記注射器確認カメラ42が吸引時撮影手段の一例である。例えば、前記注射器確認カメラ42は、予め定められた前記撮影範囲R1を撮影するものである。一方、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により移動された後の前記バイアル瓶10B及び前記注射器11が一度に撮影可能になるように前記注射器確認カメラ42の前記撮影範囲R1を変更可能であることも考えられる。
【0163】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の混合薬を前記輸液バッグ12に注入する。一方、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21により前記バイアル瓶10Bを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11の前記注射針11cに前記キャップを装着させた後、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。
【0164】
その後、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42などによって撮影された各種の画像を前記データ記憶部504から読み出して前記タッチパネルモニタ14に表示させる。これにより、ユーザーは、前記タッチパネルモニタ14を見ながら前記混注処理の適否について鑑査を行うことができる。
【0165】
なお、前記バイアル瓶10Bに収容された薬品が溶解の必要のない薬液のような薬品であることも考えられる。この場合の前記混注処理は、前記輸液バッグ12から前記輸液を吸引して前記バイアル瓶10Bに注入して攪拌する工程が実行されない点を除いて、前記バイアル瓶10Bに収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品である場合の前記混注処理と同様であるため説明を省略する。
【0166】
[第2制御部500の各種の処理]
以下では、前記第2制御部500が前記混注処理において実行する各種の処理の詳細について説明する。具体的に、前記第2制御部500は、下記の注射器位置調整処理、容器位置調整処理、鑑査制御処理、トレイ照合処理、器材取込処理、及び注入制御処理などを実行する。なお、前記第2制御部500は、前記混注処理において下記で説明する各種の処理を略並行して実行可能である。
【0167】
[注射器位置調整処理]
前記第2制御部500は、前記混注処理において、前記混注処理の適否を鑑査する際に参照される鑑査画像の撮影時に前記注射器11の目盛りの文字が前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に収まるように、前記第2ロボットアーム22により保持される前記注射器11の周方向の位置を調整する注射器位置調整処理を実行する。前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41により前記器材載置部102の画像が撮影されたときに前記注射器位置調整処理を開始する。なお、前記注射器位置調整処理を実行するときの前記第2制御部500が注射器位置調整手段の一例である。ここに、
図18は、前記注射器位置調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0168】
<ステップS1>
まず、ステップS1において、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づいて、予め定められた載置位置である前記器材載置部102に載置された前記注射器11のシリンジ11aの向きを判別する。ここに、前記ステップS1を実行するときの前記第2制御部500が向き検出手段の一例である。具体的に、前記シリンジ11aの端部にはフランジが設けられており、前記器材載置部102に載置された前記シリンジ11aは、前記目盛りの文字が上向き又は下向きのいずれかの状態となる。そのため、前記第2制御部500は、前記注射器11が、前記注射器11のシリンジ11aに付された目盛りの文字が上向き(前記トレイ確認カメラ41側に目盛りの文字が向いている状態)又は下向き(前記トレイ確認カメラ41側に対して周方向に180°回転した状態)のいずれの状態で前記器材載置部102に載置されているかを判断する。
【0169】
ここで、前記撮影画像に基づく画像認識手法は特に限定しないが、例えば前記第2制御部500は、前記調製データに示された規格サイズに一致する前記注射器11を画像マッチングにより特定する。そして、前記第2制御部500は、前記注射器11の画像についてOCR(光学文字認識)を利用して前記シリンジ11aに目盛りを示す文字「1」、「2」、・・・などが存在する場合に前記注射器11の目盛りの文字が上向きであると判別する。なお、前記注射器11の目盛りの文字が下向きである場合には、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に前記目盛りを示す文字を反転させた反転文字画像が含まれるため、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に前記反転文字画像が存在する場合に前記注射器11の目盛りの文字が下向きであると判別することも考えられる。
【0170】
ところで、前記混注装置1において、前記器材載置部102に載置された前記注射器11は、前記第1ロボットアーム21によって取り出されて前記載置棚33に載置された後、前記第1ロボットアーム21から前記第2ロボットアーム22に引き渡される。このとき、前記注射器11は、前記第1ロボットアーム21と前記第2ロボットアーム22とが正対した状態で前記第1ロボットアーム21から前記第2ロボットアーム22に引き渡される。そのため、前記第1ロボットアーム21で把持されている状態と前記第2ロボットアーム22で把持されている状態とでは、前記注射器11の表裏面が入れ替わることになる。以下、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11が前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内に移動されたときに、前記注射器11の目盛りの文字が前記撮影範囲R1内に収まる場合の前記器材載置部102における前記注射器11の状態を第1特定状態と称する。具体的に、前記混注装置1では、前記器材載置部102において前記注射器11の目盛りの文字が上向きである状態が前記第1特定状態である。なお、前記器材載置部102において前記注射器11が前記第1特定状態である場合には、前記注射器11が前記第1ロボットアーム21に保持されたときに、前記注射器11の目盛りの文字が前記保持部25側に向くことになるため、この状態では、前記注射器11の目盛りの文字を前記注射器確認カメラ42で撮影することはできない。これに対し、前記第1ロボットアーム21から前記第2ロボットアーム22に前記注射器11が引き渡されると、前記注射器11の目盛りの文字が前記保持部26の反対側に向けられることになるため、前記注射器11の目盛りの文字を前記注射器確認カメラ42で撮影することが可能になる。
【0171】
<ステップS2~S3>
ステップS2において、前記第2制御部500は、前記器材載置部102内の前記注射器11が前記第1特定状態であるか否かに応じて処理を分岐する。具体的に、前記注射器11が前記第1特定状態でない場合は(S2:No)、処理がステップS3に移行し、前記第2制御部500は、前記注射器11の回転操作が必要である旨を示す回転フラグをONにする。なお、前記回転フラグは、前記第2制御部500の前記RAM503に設けられたフラグレジスタである。一方、前記注射器11が前記第1特定状態である場合は(S2:Yes)、処理がステップS4に移行する。
【0172】
<ステップS4>
ステップS4において、前記第2制御部500は、前記注射器11を前記第2ロボットアーム22に移動するタイミングの到来を待ち受ける(S4:No)。そして、前記注射器11を前記第2ロボットアーム22に移動するタイミングが到来すると(S4:Yes)、処理がステップS5に移行する。なお、前記混注装置1では、前記注射器11が前記第1ロボットアーム21によって前記載置棚33に一時的に載置されるため、前記ステップS4では、前記第1ロボットアーム21により前記載置棚33から前記第2ロボットアーム22に引き渡すタイミングの到来が監視される。
【0173】
<ステップS5>
ステップS5において、前記第2制御部500は、前記回転フラグがONであるか否かを判断する。ここで、前記回転フラグがONであれば(S5:Yes)、処理はステップ6に移行し、前記回転フラグがOFFであれば(S5:No)、処理はステップS7に移行する。
【0174】
<ステップS6>
ステップS6において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前述したように前記回転用載置部33Aを使用して前記注射器11を周方向に180度回転させる。ここに、前記ステップS6を実行するときの前記第2制御部500が注射器回転手段の一例である。これにより、前記注射器11の向きは、前記器材載置部102において前記注射器11が前記第1特定状態で載置されていた場合と同じ向きになる。従って、前記混注装置1では、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の前記撮影範囲R1内に移動させたときに、前記注射器11の目盛りの文字を前記撮影範囲R1内に収めることができる。なお、前記第2ロボットアーム22を用いて前記注射器11が回転可能な構成も他の実施形態として考えられる。
【0175】
<ステップS7>
その後、ステップS7において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11を前記第1ロボットアーム21から前記第2ロボットアーム22に移動させる。
【0176】
[容器位置調整処理]
前記第2制御部500は、前記混注処理において、前記混注処理の適否を鑑査する際に参照される鑑査画像の撮影時に前記薬品容器10の薬品名の文字が前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に収まるように前記薬品容器10の周方向の位置を調整する容器位置調整処理を実行する。なお、前記容器位置調整処理を実行するときの前記第2制御部500が容器位置調整手段の一例である。ここに、
図19は、前記容器位置調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0177】
<ステップS11>
まず、ステップS11において、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34により前記薬品容器10のバーコードから薬品情報が読み取られるまで処理を待機させる(S11:No)。そして、前記薬品読取部34により前記薬品容器10から薬品情報が読み取られたと判断すると(S11:Yes)、処理はステップS12に移行する。
【0178】
<ステップS12>
ステップS12において、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34の前記ローラー34aの駆動モーターを停止させることにより、前記薬品容器10の回転を停止させる。
【0179】
<ステップS13>
ステップS13において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10に対応する特定回転量を読み出す。具体的に、前記第2制御部500の前記データ記憶部504には、前記薬品容器10の前記バーコードが読み取られてから前記薬品容器10が予め定められた第2特定状態になるまでの特定回転量の情報が前記薬品容器10ごとに記憶されている。前記第2特定状態は、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10が前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内に移動されたときに、前記薬品容器10の薬品名が前記撮影範囲R1内に収まる場合の前記薬品読取部34における前記薬品容器10の状態である。具体的に、本実施形態では、前記第2特定状態は、前記薬品容器10の薬品名が下方に向けられた状態(前記薬品読取部34の前記ローラー34a側に薬品名が向いた状態)である。これにより、前記第1ロボットアーム21で前記薬品容器10が掴まれた場合に、前記薬品容器10の薬品名が前記保持部25反対側を向くため、前記薬品名を前記注射器確認カメラ42で撮影することが可能になる。なお、前記第2特定状態は、前記薬品容器10の薬品名の全てが前記撮影範囲R1内に収まる状態だけでなく、例えば前記薬品容器10の薬品名を識別可能な程度に前記薬品名の一部が前記撮影範囲R1内に収まる状態が含まれることも他の実施形態として考えられる。
【0180】
ここで、前記特定回転量の情報は、前記薬品読取部34の前記ローラー34aの駆動モーター(不図示)の駆動量又は駆動時間などであって、前記薬品容器10の周方向における前記バーコードの位置及び前記薬品名の文字の位置の離間距離と前記ローラー34aの回転速度とに基づいて予め設定される。なお、前記バーコードの位置と前記薬品名の文字の位置との離間距離が前記薬品容器10ごとに対応して予め前記薬品マスターに登録されており、前記第2制御部500が前記距離に基づいて前記薬品読取部34における前記薬品容器10の特定回転量をその都度算出することも考えられる。また、前記特定回転量は、前記データ記憶部404の前記薬品マスターに記憶されている情報であり、前記第2制御部500が前記第1制御部400から前記薬品容器10に対応する前記特定回転量の情報を取得することも考えられる。
【0181】
<ステップS14>
その後、ステップS14において、前記第2制御部500は、前記ローラー34aの駆動モーター(不図示)を制御することにより、前記ローラー34aにより前記薬品容器10を前記特定回転量だけ回転させて停止させる。これにより、前記薬品容器10は、前記バーコードリーダ34bにより前記薬品容器10の薬品情報が読み取られた後、前記特定回転量だけ回転して前記第2特定状態で停止することになる。なお、前記ステップS12を省略することにより前記ローラー34aによる前記薬品容器10の回転を停止させることなく、前記ステップS13~S14を実行することも他の実施形態として考えられる。
【0182】
このように、前記混注装置1では、前記薬品読取部34において前記薬品容器10が常に前記第2特定状態になる。従って、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10が前記撮影範囲R1内に移動されたときに、前記薬品容器10の薬品名の文字が前記撮影範囲R1内に収まることになる。なお、ここでは前記薬品容器10の薬品名を前記撮影範囲R1内に収める場合について説明するが、薬品名に代えて前記薬品容器10のバーコード又は前記薬品容器10の薬品コードなどの他の情報が前記撮影範囲R1内に収まるように前記薬品容器10の周方向の位置を調整してもよい。
【0183】
[鑑査制御処理]
前記第2制御部500は、前記混注処理において、前記混注処理のユーザーによる画像鑑査を実現するために下記の鑑査制御処理を実行する。なお、前記鑑査制御処理を実行するときの前記第2制御部500が移動制御手段の一例である。ここに、
図20は、前記鑑査制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0184】
<ステップS21>
まず、ステップS21において、前記第2制御部500は、前記注射器11により前記薬品容器10内の薬品の吸引終了を待ち受ける(S21:No)。ここで、前記注射器11による薬品の吸引が終了したと判断されると(S21:Yes)、処理はステップS22に移行する。
【0185】
<ステップS22>
ステップS22において、前記第2制御部500は、前記注射器11により前記薬品容器10から薬品が吸引された後の前記薬品容器10及び前記薬品を吸引した状態の前記注射器11を、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の一方又は両方を制御することにより、前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内に移動させる。このとき、前記第2制御部500は、前記注射器11により前記薬品容器10から前記薬品が吸引されてから前記注射器確認カメラ42により前記薬品容器10及び前記注射器11が撮影されるまでの間、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22による前記薬品容器10及び前記注射器11の保持状態を継続させる。即ち、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により保持した前記薬品容器10及び前記注射器11を一度も離すことなく前記撮影範囲R1内に移動させる。これにより、前記注射器確認カメラ42による撮影画像における前記注射器11内の薬品が前記薬品容器10内の薬品であることの信憑性が高まる。
【0186】
ここで、前記注射器11は、前記注射器位置調整処理(
図18参照)において、前記第1ロボットアーム21により前記撮影範囲R1内に移動されたときに前記注射器11の目盛りの文字が前記撮影範囲R1内に収まる状態に調整されている。同じく、前記薬品容器10は、前記容器位置調整処理(
図19参照)において、前記第1ロボットアーム21により前記撮影範囲R1内に移動されたときに前記薬品容器10の薬品名の文字が前記撮影範囲R1内に収まる状態に調整されている。
【0187】
また、前記第2制御部500は、前記ステップS22において、前記薬品容器10及び前記注射器11を前記薬品容器10の薬品名の文字及び前記注射器11の目盛りの文字の向きが揃うように前記撮影範囲R1内に配置する。特に、前記第2制御部500は、前記薬品容器10の薬品名の文字及び前記注射器11の目盛りの文字の上下方向と前記撮影範囲R1における上下方向とが揃うように前記薬品容器10及び前記注射器11を前記撮影範囲R1内に配置する。
【0188】
ここに、
図21は、前記薬品容器10及び前記注射器11の位置関係の一例を示す図である。
【0189】
図21に示すように、前記注射器11により前記薬品容器10から薬品が吸引されるとき、前記注射器11は、前記注射針11cが上方に向けられた状態であり、前記薬品容器10は口部が下方に向けられた状態である。なお、
図21は、前記薬品容器10が前記バイアル瓶10Bである場合の位置関係を示す図であり、前記薬品容器10が前記アンプル10Aである場合には
図21における前記薬品容器10及び前記注射器11の位置関係が反転する。
【0190】
そして、前記注射器11による前記薬品容器10からの薬品の吸引が終了すると、前記ステップS22により、前記薬品容器10及び前記注射器11は、
図22に示すように、前記注射器確認カメラ42の撮影領域R1内に収まる位置に移動する。また、前記ステップS22において前記第2制御部500により移動された前記薬品容器10及び前記注射器11では、
図22に示すように、前記薬品容器10の薬品名の文字及び前記注射器11の目盛りの文字の向きが揃えられている。特に、前記注射器11の目盛りの文字及び前記薬品容器10の薬品名の文字の上下方向と前記撮影範囲R1における上下方向とが揃えられている。また、
図22に示すように、前記第2制御部500は、前記薬品容器10及び前記注射器11を前記注射器11の長手方向に垂直な方向に並べた状態で前記撮影範囲R1内に配置する。これにより、前記撮影領域R1の長尺化を防止することができる。もちろん、
図23に示すように、前記薬品容器10及び前記注射器11を前記注射器11の長手方向に並べることも他の実施形態として考えられる。
【0191】
<ステップS23>
次に、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42を制御することにより、前記注射器確認カメラ42により前記撮影範囲R1を撮影する。即ち、前記第2制御部500は、前記撮影範囲R1内に収まっている前記薬品容器10及び前記注射器11を一度に撮影する。これにより、前記注射器11を複数回撮影して合成する場合に比べて前記注射器11の鑑査画像として信憑性の高い画像を得ることができる。また、前記薬品容器10と前記注射器11とが同時に撮影されるため、前記薬品容器10と前記注射器11とを個別に撮影する場合に比べて、前記薬品容器10と前記注射器11との対応関係の信憑性も確保される。
【0192】
<ステップS24>
そして、前記第2制御部500は、前記ステップS23で撮影された前記注射器確認カメラ42による撮影画像を鑑査画像として前記データ記憶部504に記録する。なお、前記第2制御部500は、前記混注装置1に通信網を介して接続される他のサーバー装置などに前記鑑査画像を記憶させてもよい。
【0193】
<ステップS25>
次に、前記第2制御部500は、前記混注処理における調整対象の前記調製データで示された前記薬品容器10の薬品に対応する採取方法が全量採取であるか否かを判断する。前記全量採取は、前記薬品容器10内の薬品を全て採取する場合の採取方法である。他に、前記採取方法には、前記薬品容器10内の薬品を前記調製データに示された所定量だけ採取する端数採取がある。なお、前記薬品ごとの採取方法は、前記薬品マスターなどに予め登録されている。ここで、前記採取方法が全量採取であると判断されると(S25:Yes)、処理はステップS26に移行し、前記採取方法が全量採取でないと判断されると(S26:No)、処理はステップS27に移行する。
【0194】
なお、前記薬品容器10が、溶解が必要な薬品が収容された前記バイアル瓶10Bである場合には、前記バイアル瓶10Bに前記輸液バッグ12内の輸液が注入されて溶解された後、その全量を抜き取る全量採取又はその一部を抜き取る端数採取が行われる。一方、前記薬品容器10が、溶解が不要な薬品が収容された前記バイアル瓶10B又は前記アンプル10Aである場合には、前記バイアル瓶10B又は前記アンプル10Aから前記調製データで示された薬品容量の薬品だけが抜き取られる端数採取が行われる。
【0195】
<ステップS26>
ステップS26において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記注射器確認カメラ42を制御し、前記薬品容器10の底部を撮影する。ここに、前記注射器確認カメラ42が全量採取時撮影手段の一例である。なお、前記混注装置1が、前記注射器確認カメラ42とは別に前記混注処理室104の下面に設けられ、前記薬品容器10の底部を撮影する容器撮影カメラ(全量採取時撮影手段)を備えることも考えられる。
【0196】
ここに、
図24(A)及び
図24(B)は、前記ステップS26における撮影結果の一例を示す図である。具体的に、前記第2制御部500は、
図24(A)に示すように、前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内において、前記薬品容器10の口部を鉛直上方向に対して予め設定された角度だけ傾斜する状態に移行させ、前記注射器確認カメラ42により前記薬品容器10の側面を撮影することが考えられる。これにより、前記注射器確認カメラ42による撮影画像を参照すれば、前記薬品容器10内に薬品が残存している場合に、前記薬品容器10の下端部に薬品が残存する状態を確認することが可能である。なお、前記第2制御部500は、
図24(A)に示す状態で前記薬品容器10の底面を前記容器撮影カメラにより撮影することも考えられる。
【0197】
また、前記第2制御部500は、
図24(B)に示すように、前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1内において、前記薬品容器10を底面が前記撮影範囲R1内に収まる状態に移行させ、前記注射器確認カメラ42により前記薬品容器10の底面を撮影することが考えられる。これにより、前記薬品容器10内に薬品が残存している場合に、前記薬品容器10に薬品が残存する状態が撮影される。従って、前記注射器確認カメラ42による撮影画像を参照すれば、前記薬品容器10内に薬品が残存している場合に、前記薬品容器10の底面に薬品が残存する状態を確認することが可能である。また、前記撮影画像を参照することにより、前記薬品容器10内に溶解していない粉薬が残っていないことを確認することも可能である。
【0198】
なお、前記第2制御部500が、前記薬品容器10の底部の撮影画像に基づく画像処理を実行することにより前記薬品容器10内に薬品が残っているか否かを自動的に判断し、判断結果を報知することも考えられる。例えば、前記第2制御部500は、前記撮影画像内において前記薬品容器10の底部に薬品が残っている場合に現れる液表面の水平線の有無に応じて、薬品が残っているか否かを判断することが可能である。
【0199】
<ステップS27>
ステップS27において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22及び前記秤量計35を制御することにより、前記注射器11の重量を前記秤量計35によって測定する。ここで測定された前記注射器11の重量は吸引後重量として前記第2制御部500の前記RAM503に記憶される。
【0200】
<ステップS28>
その後、ステップS28において、前記第2制御部500は、前記混注処理における前記注射器11から前記輸液バッグ12への薬品の注入工程の終了を待ち受ける(S28:No)。そして、前記第2制御部500は、前記注射器11から前記輸液バッグ12への薬品の注入工程が終了すると(S28:Yes)、処理をステップS29に移行させる。
【0201】
<ステップS29>
ステップS29において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22及び前記秤量計35を制御することにより、前記注射器11の重量を前記秤量計35によって測定する。ここで測定された前記注射器11の重量は注入後重量として前記第2制御部500の前記RAM503に記憶される。
【0202】
<ステップS30>
そして、ステップS30において、前記第2制御部500は、前記ステップS27で測定された前記吸引後重量と前記ステップS29で測定された前記注入後重量との差分を算出することにより、実際に前記輸液バッグ12に注入された薬品の重量を取得する。ここで算出された前記薬品の重量は実重量として前記第2制御部500の前記RAM503に記憶される。なお、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が薬品重量取得手段の一例である。また、前記第2制御部500が、前記薬品容器10から薬品を吸引する前の前記注射器11の重量と前記薬品容器10から薬品を吸引した後の前記注射器11の重量との差分を前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に注入された薬品の重量として取得することも考えられる。
【0203】
<ステップS31>
その後、ステップS31において、前記第2制御部500は、前記混注処理の鑑査の開始タイミングを待ち受ける(S31:No)。そして、前記混注処理の鑑査の開始タイミングが到来すると(S31:Yes)、処理がステップS32に移行する。なお、前記混注処理の鑑査の開始タイミングは、例えば前記混注処理が終了してから前記輸液バッグ12が払い出される前のタイミングである。また、前記混注処理の鑑査の開始タイミングは、複数の前記混注処理が実行された後、前記タッチパネルモニタ14に対して鑑査対象の前記混注処理(調製データ)の選択操作が行われたタイミングであってもよい。
【0204】
<ステップS32>
ステップS32において、前記第2制御部500は、前記混注処理の画像鑑査を行うための鑑査画面D1を前記タッチパネルモニタ14に表示させる。ここに、
図25及び
図26は、前記鑑査画面D1の一例を示す図である。
図25及び
図26に示すように、前記鑑査画面D1には、鑑査に用いる情報が表示される表示領域R11~R13が含まれる。なお、前記鑑査画面D1には、鑑査される複数の画像を順に表示させるための操作部R14、鑑査の承認、否認、中断などの操作を行うための操作部R15なども表示されている。
【0205】
前記表示領域R11には、前記調製データに示された薬品名「メソトレキセート200mg」、薬品容量「8mL」、及び注射器名称「○△□10mlシリンジ」が表示される。また、前記表示領域R11には、実際の前記第2ロボットアーム22の前記移動部263による前記プランジャ11bの操作量に応じて算出された前記注射器11の目盛りの数値「8.0mL」も表示される。
【0206】
前記表示領域R12には、前記鑑査制御処理(
図20参照)における前記ステップS23で前記注射器確認カメラ42により撮影された画像などが鑑査画像として表示される。ここに、前記鑑査画面D1に前記鑑査画像を表示させるときの前記第2制御部500が鑑査画像表示手段の一例である。このように、前記表示領域R12の鑑査画像と前記表示領域R11の情報とが共に一画面に表示されることにより、鑑査者は、前記表示領域R11に表示された前記薬品名と前記表示領域R12に表示された前記鑑査画像内の前記薬品容器10の薬品名の文字とを容易に照合することができる。
【0207】
また、前記第2制御部500は、前記混注処理における薬品の採取方法が全量採取である場合には、前記操作部R14の操作に応じて、前記ステップS26で撮影された前記薬品容器10の底面の画像(
図24参照)を鑑査画像として前記表示領域R12に表示させる。これにより、鑑査者は、前記表示領域R12に表示された前記薬品容器10の底面の画像を参照することにより、前記薬品容器10内に薬品が残っているか否かを判断することができる。
【0208】
前記表示領域R13には、目標容量、目標重量、実重量、及び重量鑑査結果が表示される。具体的に、
図25に示す前記表示領域R13には、目標容量「8.0mL」、目標重量「7.7~8.3g」、実重量「8.12g」、及び重量鑑査結果「○」が表示されている。また、
図26に示す前記表示領域R12には、目標容量「8.0mL」、目標重量「7.7~8.3g」、実重量「8.34g」、及び重量鑑査結果「×」が表示されている。
【0209】
前記目標容量は、前記調製データに含まれる薬品容量であって、前記第2ロボットアーム22による前記プランジャ11bの操作量の制御指標として用いられる値である。前記目標重量は、前記目標容量と前記薬品の比重とに基づいて算出される前記薬品の重量に対する許容範囲を示す値である。なお、前記目標重量に代えて、前記目標容量に対応する前記薬品の重量(例えば8.0g)とその重量に対応する許容誤差の範囲(例えば±3%など)とが表示されることも考えられる。前記実重量は、前記ステップS30で算出された前記薬品の重量であって、前記輸液バッグ12に実際に注入された薬品の重量を示す値である。
【0210】
このように、前記表示領域R12の鑑査画像と前記表示領域R13の情報とが共に一画面に表示されることにより、鑑査者は、前記表示領域R13に表示された前記目標容量と前記表示領域R12に表示された前記鑑査画像内の前記注射器11の目盛りの文字とを容易に照合することができる。特に、前記鑑査画像では、前記薬品容器10の薬品名の文字と前記注射器11の目盛りの文字との向きが揃っているため、鑑査者が見やすい画面が実現される。また、前記薬品容器10の薬品名の文字及び前記注射器11の目盛りの文字の上下方向が前記撮影範囲R1の上下方向と揃っているため、鑑査者が、前記薬品容器10の薬品名の文字及び前記注射器11の目盛りの文字を容易且つ確実に確認することができ、例えば鑑査ミスも防止される。
【0211】
また、鑑査者は、前記混注処理により前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に混注された薬品の重量である前記実重量が前記目標重量の範囲内であるか否かを、前記薬品名と共に前記鑑査画面D1の一画面で確認することができる。さらに、前記第2制御部500は、前記混注処理により前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に混注された薬品の重量である前記実重量が前記目標重量の範囲内であるか否かを判断し、その判断結果を「○」又は「×」で前記表示領域R12に表示させる。これにより、鑑査者は前記表示領域R12と共に表示される前記表示領域R13を参照することによって重量鑑査結果を一目で把握することができる。ここに、係る判断処理を実行するときの前記第2制御部500が重量鑑査手段の一例である。また、前記表示領域R12の背景は前記鑑査結果が適正を示す「○」である場合は青色、前記鑑査結果が不適正を示す「×」である場合は赤色に変化することも考えられる。
【0212】
ところで、前記第2制御部500は、前記薬品の目標容量(mL)から前記薬品の目標重量(g)を算出する際に前記薬品の比重を考慮する。具体的に、前記薬品各々の比重は、前記第1制御部400の前記データ記憶部404の前記薬品マスターなどに予め記憶されており、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から前記薬品各々の比重の情報を取得する。
【0213】
ここで、前記薬品容器10に収容されている薬品が溶解の必要のない液剤などの薬品である場合には、前記薬品容器10内に収容されている薬品の比重に基づいて前記目標重量を算出することが可能である。これに対し、前記薬品容器10に収容されている薬品が溶解の必要のある粉薬などの薬品である場合には、前記薬品容器10内に収容されている薬品の比重だけでなく、前記薬品を溶解する溶媒の比重を考慮して前記目標重量を算出する必要がある。そのため、前記第2制御部500では、前記薬品マスターに記憶される各薬品ごとの比重に加えて、溶解の必要のある薬品と前記薬品の溶解に使用される溶媒との組み合わせごとに対応する予め設定された比重が前記データ記憶部504に記憶されている。より具体的に、前記薬品容器10の薬品に対して溶解に使用される溶媒量は前記薬品容器10に収容される薬品の種類ごとに予め指定されている。そのため、前記薬品と前記溶媒との各組み合わせに対応する比重は、前記薬品を前記薬品の溶解に使用される前記溶媒量として指定された量の前記溶媒で溶解した場合に対応する比重である。これにより、前記混注装置1では、前記バイアル瓶10Bに収容されている粉薬などの溶解が必要な薬品を輸液で溶解して前記輸液バッグ12に注入する際にも、前記輸液バッグ12に注入された薬品量を重量で鑑査することができる。
【0214】
一方、前記許容範囲は、例えば前記混注処理で使用される前記注射器11の規格容量に応じて予め設定された範囲である。ここに、
図27は、前記注射器11の規格容量と前記許容範囲との関係を定めた対応情報の一例を示す図である。
図27に示すように、前記対応情報では、前記注射器11の規格容量ごとに前記許容範囲が定められている。例えば、前記注射器11の規格容量が「5ml以上10ml」未満である場合、前記許容範囲は、「±3%」であり、その値は「±0.15ml」である。また、即ち、前記許容範囲は、前記薬品の注入量に応じて定まるのではなく、前記注射器11の規格容量に応じて定められる。なお、
図27には、厚生労働省で規定された前記許容範囲を参考として示しており、前記混注装置1で使用される前記許容範囲は、前記厚生労働省の規定範囲よりも小さい範囲に定められている。
【0215】
そして、前記第2制御部500は、前記薬品の比重に基づいて前記許容範囲の値を重量に変換する。具体的に、
図27に示す前記対応情報では、前記混注処理で使用する前記注射器11の規格容量が「10ml」であるため、前記許容範囲が、「±3%」の「±0.3ml」である。ここで、前記混注処理で使用される薬品の比重を「1」とすると、前記許容範囲である「±0.3ml」の重量換算値は「±0.3g」となる。そのため、
図25及び
図26に示すように、前記表示領域R13では、前記重量換算値に基づいて算出された前記目標重量の値として、「7.7~8.3g」が表示されている。なお、前記薬品の比重が「1.1」である場合、前記重量換算値は、「±0.33g」となる。また、前記目標容量に対応する前記許容範囲の値である「7.7~8.3ml」が前記表示領域R13に表示されることも他の実施形態として考えられる。
【0216】
[トレイ照合処理]
前記第2制御部500は、前記混注処理において、前記トレイ101及び前記トレイ101に載置される器材の適否を判断するトレイ照合処理を実行する。前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から装填されたことを不図示のセンサによって検出した場合に前記トレイ照合処理を開始する。なお、前記トレイ照合処理を実行するときの前記第2制御部500が照合手段の一例である。ここに、
図28は、前記トレイ照合処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0217】
<ステップS41>
まず、ステップS41において、前記第2制御部500は、前記トレイ挿入口114から装填された前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記ICリーダ101cによって識別情報が読み取られたか否かを判断する。ここで、前記識別情報が読み取られたと判断されると(S41:Yes)、処理はステップS42に移行し、前記識別情報が読み取られなかったと判断されると(S41:No)、処理はステップS411に移行する。
【0218】
<ステップS42>
ステップS42において、前記第2制御部500は、前記ステップS41で読み取られた前記トレイ101の識別情報に予め対応付けられた前記調製データが存在するか否かを判断する。ここで、前記トレイ101の識別情報に対応する前記調製データが存在すると判断された場合(S42:Yes)、処理はステップS43に移行し、前記トレイ101の識別情報に対応する前記調製データが存在しないと判断された場合(S42:No)、処理は前記ステップS411に移行する。
【0219】
<ステップS411>
ステップS411において、前記第2制御部500は、前記トレイ挿入口114から前記トレイ101を取り出すことをユーザーに促すエラー表示を前記タッチパネルモニタ14に表示させる。例えば、前記エラー表示では、「トレイ挿入口からトレイを取り出してください。」のようなメッセージが表示される。このように、前記トレイ101から前記識別情報が読み取れない場合(S41:No)、又は前記識別情報が前記調製データに対応付けられていない場合(S42:No)、前記第2制御部500は、前記トレイ101を使用する前記混注処理を中止する。なお、前記ステップS411の時点で前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から離れた位置に既に搬送される構成では、前記ステップS411において、前記第2制御部500が、前記トレイ101を前記トレイ挿入口114に戻す処理を実行する。
【0220】
<ステップS43>
ステップS43において、前記第2制御部500は、前記器材載置部102に載置された器材が全て正常に取り込まれたか否かを判断する。具体的に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10、前記注射器11のシリンジ11a、及び前記注射器11の注射針11cなどの器材を前記調製データの内容と照合しつつ前記第1ロボットアーム21によって取り込む。ここで、前記器材載置部102から取り込んだ前記器材の全ての照合結果が一致であった場合に、前記器材が全て正常に取り込まれたと判断する。そして、前記器材載置部102に載置された器材が全て正常に取り込まれたと判断されると(S43:Yes)、処理はステップS44に移行し、前記器材載置部102に載置された器材が正常に取り込まれなかったと判断されると(S43:No)、処理はステップS431に移行する。
【0221】
具体的に、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41で撮影された撮影画像に基づいて特定される器材の数と前記調製データで示された器材の数とを照合する。また、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づいて特定される前記シリンジ11aの種類と、前記調製データに含まれる前記シリンジ11aの種類とを照合する。さらに、前記第2制御部500は、前記針曲り検知部36で検出される前記注射針11cの径に基づいて前記注射針11cの種類と前記調製データに含まれる前記注射針11cの種類とを照合する。また、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34で前記バーコードリーダ34bによって読み取られる薬品情報と前記調製データに含まれる薬品情報とを照合する。そして、前記第2制御部500は、前記照合結果が一致しない場合に、前記器材載置部102に載置された器材が正常に取り出されなかったと判断する。
【0222】
なお、前記ステップS43において、前記薬品容器10、前記シリンジ11a、及び前記注射針11cなどの器材の適否を判断する際、前記器材の種類が完全に一致しない場合でもその器材の使用を許容することが考えられる。例えば、前記シリンジ11aのサイズが前記調製データで示されたサイズよりも大きい場合には、そのシリンジ11aの使用を許容することが考えられる。これにより、前記器材の種類が異なる場合であっても、前記代替情報に登録されている器材である場合には、その器材を使用して混注処理を実行することが可能となる。
【0223】
より具体的には、前記薬品容器10、前記シリンジ11a、及び前記注射針11cごとに予め代替可能な器材の種類が代替情報として前記データ記憶部504に登録されており、前記第2制御部500が、前記代替情報に基づいて前記器材の適否を判断することが考えられる。この場合、前記代替情報では、前記薬品容器10、前記シリンジ11a、及び前記注射針11cの組み合わせを考慮し、各組み合わせの条件の下で代替可能な器材が予め登録されていることが考えられる。即ち、前記薬品容器10、前記シリンジ11a、及び前記注射針11cなどの器材が予め設定された複数の許容パターンのいずれかに該当する場合に前記器材の使用が許容される。
【0224】
<ステップS431>
ステップS431において、前記第2制御部500は、前記ステップS43で照合結果が一致しなかった器材を前記トレイ101と共に前記トレイ挿入口114から取出可能な状態にする。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が排出制御手段の一例である。具体的に、前記第2制御部500は、前記器材を前記器材載置部102に戻した後、前記器材載置部102を前記昇降部112により降下させて前記トレイ101に戻す。これにより、前記器材は、前記トレイ101と共に前記トレイ挿入口114から取出可能になる。また、ステップS431において、前記第2制御部500は、前記ステップS43で照合結果が一致しなかった器材は、前記トレイ101と共に前記トレイ排出口115から取出可能な状態にしてもよい。
【0225】
なお、前記第2制御部500は、前記薬品容器10の照合結果が一致しなかった場合には、前記薬品容器10を前記第1ロボットアーム21によって保持した状態で、前記主扉301又は前記注射器取出扉302の近傍などのように、ユーザーにより取出可能な位置まで搬送させることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記主扉301又は前記注射器取出扉302を開けて、前記第1ロボットアーム21の前記保持部25で保持された前記薬品容器10を取り出すことが可能である。また、前記第2制御部500は、前記薬品容器10を予め定められた返却用の載置部(不図示)に移動させることも考えられる。
【0226】
<ステップS432>
そして、ステップS432において、前記第2制御部500は、前記トレイ挿入口114から前記トレイ101を取り出すことをユーザーに促すエラー表示を前記タッチパネルモニタ14に表示させる。例えば、前記エラー表示では、「トレイ挿入口からトレイを取り出して、正しい器材を装填してください。」のようなメッセージが表示される。さらに、前記エラー表示には、前記器材載置部102に載置されているべき器材のリストが含まれることが望ましい。例えば、前記第2制御部500は、前記調製データに含まれる器材のリストを表示させると共に、照合結果が一致しなかった器材を識別可能に表示することが考えられる。これにより、ユーザーは、前記器材載置部102に載置するべき器材を容易に把握することができ、ユーザーの作業効率を高めることができる。
【0227】
<ステップS433>
その後、ステップS433において、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から装填されたか否かを不図示のセンサによる検出結果に応じて判断する。ここで、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から装填されたと判断されると(S433:Yes)、処理はステップS434に移行し、前記トレイ101が前記トレイ挿入口114から装填されたと判断されるまでの間は(S433:Yes)、処理は前記ステップS433で待機する。なお、前記タッチパネルモニタ14に対して前記混注処理をキャンセルするための操作が行われた場合、前記第2制御部500は、前記トレイ照合処理を終了する。
【0228】
<ステップS434>
そして、ステップS434において、前記第2制御部500は、前記ステップS41と同様に、前記トレイ挿入口114から装填された前記トレイ101の前記ICタグ101bから識別情報が前記ICリーダ101cによって読み取られたか否かを判断する。ここで、前記識別情報が読み取られたと判断されると(S433:Yes)、処理はステップS435に移行し、前記識別情報が読み取られなかったと判断されると(S433:No)、処理はステップS436に移行する。
【0229】
<ステップS435>
また、ステップS435において、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、現在の処理対象の調製データに割り当てられている前記トレイ101の識別情報と一致するか否かを判断する。即ち、前記ステップS41で読み取られた前記識別情報と前記ステップS434で読み取られた前記識別情報とが一致するか否かが判断される。これにより、前記ステップS431により前記トレイ101が取出可能になった後、次に前記混注装置1に装填された前記トレイ101から前記ICリーダ101cによって読み取られた前記識別情報と前記ステップS431により前記トレイ101が取出可能になった前記トレイ101から前記ICリーダ101cによって読み取られた前記識別情報とが一致するか否かが判断されることになる。ここで、前記トレイ101の識別情報が一致すると判断された場合(S435:Yes)、前記混注処理が再開されて処理がステップS43に移行する。一方、前記トレイ101の識別情報が一致しないと判断された場合(S435:No)、処理は前記ステップS436に移行する。
【0230】
<ステップS436>
ステップS436において、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、現在の処理対象の調製データに割り当てられている前記トレイ101の識別情報と一致しない旨のエラーを前記タッチパネルモニタ14に表示させて報知する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が報知手段の一例である。例えば、前記エラーの表示には、「トレイが違います。トレイ挿入口からトレイを取り出して、正しいトレイを装填してください。」のようなメッセージも表示される。その後、処理は前記ステップS433に移行する。
【0231】
<ステップS44>
一方、前記器材載置部102に載置された器材が全て正常に取り出されたと判断された場合(S43:Yes)、続くステップS44において、前記第2制御部500は、前記トレイ101を前記トレイ搬送終端部110aに移動させる。
【0232】
<ステップS45>
ステップS45において、前記第2制御部500は、前記調製データと前記輸液用カメラ121により読み取られる前記輸液バッグ12のバーコードの情報とを照合する。
【0233】
<ステップS46>
そして、ステップS46において、前記第2制御部500は、前記ステップS45における照合結果に応じて処理を分岐する。ここで、前記輸液バッグ12が前記調製データと一致したと判断されると(S46:Yes)、当該トレイ照合処理は終了する。一方、前記輸液バッグ12が前記調製データと一致しないと判断されると(S46:No)、処理はステップS47に移行する。
【0234】
<ステップS47>
ステップS47において、前記第2制御部500は、前記ステップS46で照合結果が一致しなかった前記輸液バッグ12を前記トレイ101と共に前記トレイ排出口15から取出可能な状態にする。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が排出制御手段の一例である。具体的に、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ保持部103を前記バッグ昇降部113により降下させて前記トレイ101に戻す。これにより、前記輸液バッグ12は、前記トレイ101と共に前記トレイ排出口15から取出可能になる。なお、前記トレイ搬送終端部110aと前記トレイ排出口15との間が離れている場合は、前記第2制御部500は、前記ステップS47において、前記トレイ101を前記トレイ排出口15に搬送する処理を実行する。
【0235】
<ステップS48>
そして、ステップS48において、前記第2制御部500は、前記トレイ排出口15から前記トレイ101を取り出すことをユーザーに促すエラー表示を前記タッチパネルモニタ14に表示させる。例えば、前記エラー表示では、「トレイが違います。トレイ排出口からトレイを取り出して、正しい輸液バッグを装填し、トレイ排出口から入れてください。」のようなメッセージが表示される。これにより、ユーザーは、前記トレイ101に正しい前記輸液バッグ12を載置して前記トレイ101を前記トレイ排出口15から再装填する。
【0236】
<ステップS49>
その後、ステップS49において、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から再装填されたか否かを不図示のセンサによる検出結果に応じて判断する。ここで、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から再装填されたと判断されると(S49:Yes)、処理はステップS50に移行し、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から再装填されるまでの間は(S49:Yes)、処理は前記ステップS49で待機する。なお、前記タッチパネルモニタ14に対して前記混注処理をキャンセルするための操作が行われた場合、前記第2制御部500は、前記トレイ照合処理を終了する。
【0237】
<ステップS50>
次に、ステップS50において、前記第2制御部500は、前記トレイ排出口15から装填された前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記ICリーダ15aによって識別情報が読み取られたか否かを判断する。ここで、前記識別情報が読み取られたと判断されると(S50:Yes)、処理はステップS51に移行し、前記識別情報が読み取られなかったと判断されると(S50:No)、処理はステップS52に移行する。
【0238】
<ステップS51>
また、ステップS51において、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、現在の処理対象の調製データに割り当てられている前記トレイ101の識別情報と一致するか否かを判断する。即ち、前記ステップS41で読み取られた前記識別情報と前記ステップS50で読み取られた前記識別情報とが一致するか否かが判断される。これにより、前記ステップS431により前記トレイ101が取出可能になった後、次に前記混注装置1に装填された前記トレイ101から前記ICリーダ101cによって読み取られた前記識別情報と前記ステップS431により前記トレイ101が取出可能になった前記トレイ101から前記ICリーダ101cによって読み取られた前記識別情報とが一致するか否かが判断されることになる。ここで、前記トレイ101の識別情報が一致すると判断された場合は(S51:Yes)、前記混注処理が再開されて処理が前記ステップS45に移行する。一方、前記トレイ101の識別情報が一致しないと判断された場合(S51:No)、処理はステップS52に移行する。
【0239】
<ステップS52>
ステップS52において、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、現在の処理対象の調製データに割り当てられている前記トレイ101の識別情報と一致しない旨のエラーを前記タッチパネルモニタ14に表示させて報知する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が報知手段の一例である。例えば、前記エラーの表示には、「トレイが違います。トレイ排出口からトレイを取り出して、正しいトレイを装填してください。」のようなメッセージが表示される。その後、処理は前記ステップS49に移行する。なお、前記ステップS52の時点で前記トレイ101が前記トレイ排出口15から離れた位置に搬送されている構成では、前記ステップS52において、前記第2制御部500が、前記トレイ101を前記トレイ排出口15に戻す処理を実行する。
【0240】
以上説明したように、前記トレイ照合処理では、前記トレイ101に載置されている前記器材又は前記輸液バッグ12が誤っている場合に、前記トレイ101に正しい前記器材又は前記輸液バッグ12を載置して装填することにより前記混注処理を継続することが可能である。さらに、前記トレイ101の再装填時には、前記トレイ101が他のトレイに変わっているか否かが判断されるため、前記トレイ101の再装填時に誤ったトレイが装填されることが防止され、例えば別の患者に対応する薬剤として処理されることが防止される。
【0241】
[器材取込処理]
ところで、前記第1ロボットアーム21の前記把持爪25aにより、前記トレイ101の前記器材載置部102から各種の器材が取り込まれる際、前記器材載置部102において前記器材が他の器材に干渉していることがある。そこで、前記第2制御部500は、このような場合でも前記器材を取込可能とするために下記の器材取込処理を実行する。具体的に、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影結果に基づいて特定される前記薬品容器10又は前記注射器11の状態について予め設定された優先条件に応じて、前記薬品容器10又は前記注射器11を前記器材載置部102から前記第1ロボットアーム21によって順に取り込む。なお、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41により前記器材載置部102の画像が撮影された場合に前記器材取込処理を開始する。ここに、前記器材取込処理を実行するときの前記第2制御部500が取込制御手段の一例である。
【0242】
図29は、前記器材取込処理の手順の一例を示すフローチャートである。また、
図30~
図32は、前記器材取込処理における動作例を示す図であって、
図30(A)、
図31(A)、及び
図32(A)は前記器材載置部102内の器材の状態を側面から見た模式図、
図30(B)、
図31(B)、及び
図32(B)は前記器材載置部102内の器材の状態を上方から見た模式図である。
【0243】
<ステップS61>
まず、ステップS61において、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づいて、前記器材載置部102に載置された器材の中に、他の器材又は前記器材載置部102の側壁又は前記支持部102Aなどの構成要素(側面など)に干渉しない器材が存在するか否かを判断する。そして、干渉のない器材が存在すると判断された場合(S61:Yes)、処理はステップS62に移行する。なお、干渉のない器材が存在しないと判断された場合(S61:No)、処理はステップS64に移行する。
【0244】
なお、前記干渉とは、前記器材が、他の器材又は前記器材載置部102の構成要素との間に予め定められた間隙を有していない状態である。具体的に、前記間隙は、少なくとも前記第1ロボットアーム21の前記把持爪25aが挿入可能な幅である。ここで、前記第2制御部500は、前記器材載置部102に載置された器材各々の位置を、前記調製データに含まれる前記薬品容器10、前記シリンジ11a、及び前記注射針11cの情報に基づいて特定する。例えば、前記第2制御部500は、前記器材ごとに予め登録された画像と前記撮影画像との画像マッチングにより前記器材各々の位置を特定する。
【0245】
<ステップS62>
ステップS62において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記ステップS61で干渉なしと判断された前記器材を取り込む。例えば、
図30に示す例では、複数の前記バイアル瓶10Bのうち最も右側のバイアル瓶10Bには両側に十分な間隙があるため、当該バイアル瓶10Bが優先して前記第1ロボットアーム21によって取り込まれる。
【0246】
<ステップS63>
ステップS63において、前記第2制御部500は、前記ステップS62で前記器材が取り込まれた後の前記器材載置部102を前記トレイ確認カメラ41によって撮影する。
【0247】
<ステップS64>
その後、ステップS64において、前記第2制御部500は、前記ステップS63により前記トレイ確認カメラ41によって撮影された画像に基づいて、前記器材載置部102内に器材が残っているか否かを判断する。例えば、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づいて前記器材載置部102内の器材の有無を判断する。ここで、前記器材載置部102内に器材が残っていると判断された場合は(S64:Yes)、処理はステップS61に戻される。一方、前記器材載置部102内に器材が残っていないと判断された場合は(S64:No)、当該器材取込処理は終了する。
【0248】
<ステップS611>
一方、ステップS611において、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41により撮影された撮影画像に基づいて、前記器材載置部102に載置された器材の中に、片側のみが他の器材と干渉している器材が存在するか否かを判断する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が干渉判断手段の一例である。ここで、片側のみが他の器材と干渉している器材が存在すると判断された場合(S611:Yes)、処理はステップS612に移行する。なお、片側のみが他の器材と干渉している器材が存在しないと判断された場合(S611:No)、処理はステップS613に移行する。
【0249】
<ステップS612>
ステップS612において、前記第2制御部500は、前記ステップS611で前記器材載置部102に載置された器材のうち片側のみが他の器材と干渉していると判断された二つの器材の干渉を解消するための処理を実行する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が離間手段の一例である。
【0250】
具体的に、前記第2制御部500は、前記器材を把持する前記第1ロボットアーム21の把持爪25aを閉じた状態で、干渉する二つの前記器材の間に挿入させる。これにより、前記器材が前記把持爪25aに接触して移動することにより前記二つの器材が離間する。なお、本実施形態では、前記第1ロボットアーム21を用いているが、前記器材載置部102の位置によっては、前記第2ロボットアーム22を用いて当該処理が実行されることも他の実施形態として考えられる。
【0251】
ここに、
図31には、複数の前記バイアル瓶10Bのうち片側のみが他の前記バイアル瓶10Bと干渉している前記バイアル瓶10Bが存在する状態が示されている。この場合、前記ステップS612において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21の把持爪25aを閉じた状態で、二つの前記バイアル瓶10Bの間に挿入することにより前記バイアル瓶10Bを離反する方向に移動させる。これにより、
図32に示すように、接触していた二つの前記バイアル瓶10Bが離間するため、その後、前記ステップS62において前記バイアル瓶10Bを取り込むことが可能になる。
【0252】
ところで、前記把持爪25aには、前記器材を把持する面に前記器材の滑りを防止するための滑り止め部25bと、前記器材を把持する面の外側の面に前記器材を移動させる際に接触する傾斜部25cとが設けられている。前記滑り止め部25bは、例えば高摩擦係数(高抵抗)を有する表面形状を有する。また、前記滑り止め部25bは、高摩擦係数を有するシートが貼付されたものであってもよい。一方、前記傾斜部25cは、前記把持爪25aが前記器材に向けて降下して前記器材に接触したときに前記器材に与える負荷を抑制しつつ前記器材を移動させるために形成されている。このように、前記混注装置1では、前記把持爪25aが閉じた状態で前記二つの器材の間に挿入されるため、前記滑り止め部25bと前記器材との摺擦が防止され、前記薬品容器10のラベルの剥離又は前記器材の破損などが防止される。また、前記把持爪25は前記傾斜部25cにより先端が鋭角であるため、前記器材の径が小さい場合でも前記器材を載置面との間で挟むことなく前記器材各々の間に挿入可能である。
【0253】
なお、前記把持爪25aを前記二つの器材の間に挿入する際の降下量は、前記器材のいずれか一方の上端から前記器材の径に応じて予め設定される。例えば、前記降下量は、二つの前記器材のうち径が大きい方の器材の径の1/2であることが考えられる。これにより、前記器材を離間させることができると共に、前記器材に対して不要な圧力が作用することが防止される。また、前記第2制御部500が、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づいて、前記二つの器材のうち離反する方向のスペースが広い器材を特定し、その特定された器材に先に前記把持爪25aが接触するように前記二つの器材の中央からずれた位置に前記把持爪25aを降下させることも考えられる。
【0254】
また、当該器材取込処理では、片側のみが他の器材と干渉する器材を離間対象とする場合を例に挙げて説明するが、片側のみが前記器材載置部102の構成要素と干渉する器材を離間対象とすることも他の実施形態として考えられる。例えば、前記第2制御部500は、片側のみが前記器材載置部102の構成要素と干渉する器材が存在する場合であって、その器材と前記器材載置部102の構成要素との間隙が予め定められた閾値以上である場合に前記器材と前記器材載置部102の構成要素との間に前記把持爪25aを挿入することが考えられる。なお、前記閾値は、例えば前記把持爪25aが前記器材を圧迫せずに前記器材を前記構成要素から離間可能な値として前記器材の径ごとに対応して予め設定される。
【0255】
<ステップS613>
一方、ステップS613において、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41により撮影された撮影画像に基づいて、前記器材載置部102からの器材の取込を中止するための中止条件が充足しているか否かを判断する。具体的に、前記中止条件は、前記器材載置部102に載置された全ての器材が、片側又は両側が前記器材載置部102の構成要素と干渉する器材、或いは両側が他の器材と干渉する器材に該当することである。ここで、前記中止条件が充足していると判断された場合(S613:Yes)、処理はステップS614に移行し、前記中止条件が充足していないと判断された場合(S613:No)、処理は前記ステップS61に戻る。なお、前記中止条件には、前記器材取込処理が開始されてから予め設定された中止時間が経過したことも含まれ、前記中止時間が経過した場合にも処理がステップS614に移行する。また、前記ステップS613を省略し、前記ステップS611において片側のみが前記器材に干渉する器材が存在しないと判断された場合に(S611:No)、処理がステップS614に移行することも他の実施形態として考えられる。
【0256】
<ステップS614>
ステップS614において、前記第2制御部500は、前記タッチパネルモニタ14にエラーを表示させると共に、前記器材載置部102からの器材の取込を中止する。前記エラー表示には、前記器材載置部102内の器材を正常に取り込むことができない旨のメッセージ、及び前記トレイ挿入口114から前記器材載置部102を取り出すことをユーザーに促すメッセージが含まれる。また、このとき前記第2制御部500は、前記器材載置部102を前記トレイ昇降部112によって前記トレイ101に戻し、前記トレイ101を前記トレイ挿入口114から取り出し可能な状態にする。例えば、
図32に示す前記器材載置部102では、前記バイアル瓶10Bのうち一つの前記バイアル瓶10Bが前記器材載置部102の側壁に接触している状態である。そのため、前記器材載置部102の側壁に接触する前記バイアル瓶10Bは取り込まれることなく前記トレイ101と共に前記トレイ挿入口114から排出される。これにより、ユーザーは、前記トレイ101の前記器材載置部102に載置された前記器材の干渉を解消してから前記トレイ101を前記トレイ挿入口114から再装填することができる。
【0257】
以上説明したように、前記器材取込処理によれば、他の器材に干渉する器材を離間させてから取り込むことが可能である。特に、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影結果において両側に予め定められた間隙が形成されている前記器材を、前記トレイ確認カメラ41による撮影結果において片側又は両側に前記間隙が形成されていない前記器材よりも優先的に取り込む。従って、前記混注装置1では、他の器材に干渉していない器材が先に取り込まれることにより前記器材載置部102に形成されたスペースを利用して器材を離間させることが可能である。
【0258】
[注入制御処理]
前記混注装置1では、前記混注処理において、前記注射器11から前記輸液バッグ12内に薬品が注入されるが、前記輸液バッグ12に予め設定された注入可能量を超える量の薬品が注入されると、前記輸液バッグ12内が陽圧になって前記輸液バッグ12から薬品が噴き出すおそれがある。そのため、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記混注処理において前記輸液バッグ12内が陽圧にならないように前記輸液バッグ12内の空気量を調整する注入制御処理を実行する。なお、前記注入制御処理を実行するときの前記第2制御部500が注入制御手段の一例である。ここに、
図33は、前記注入制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0259】
<ステップS71>
まず、ステップS71において、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12に対応する注入可能量を特定する。例えば、前記データ記憶部404に記憶されている前記薬品マスターには、前記輸液バッグ12ごとに、容量、形状、満量、エアー抜き無しの注入可能量、及びエアー抜き有りの注入可能量などの輸液情報が記憶されている。そして、前記第2制御部500は、前記輸液情報に基づいて前記輸液バッグ12に対応するエアー抜き無しの注入可能量及びエアー抜き有りの注入可能量を特定する。前記注入可能量は、前記輸液バッグ12内が陽圧にならない注入量として予め設定された値である。
【0260】
ここに、
図34は、前記輸液情報の一例を示す図である。
図34に示す例では、前記輸液バッグ12の種類が「生理食塩水A」である場合は、既に収容されている溶媒の容量が「100mL」、満量(最大容量)が「157mL」であり、エアー抜き無しの注入可能量が「0mL」、エアー抜き有りの注入可能量が「57mL」である。また、前記輸液バッグ12の種類が「生理食塩水B」である場合は、既に収容されている溶媒の容量が「250mL」、満量(最大容量)が「425mL」であり、エアー抜き無しの注入可能量が「117.6mL」、エアー抜き有りの注入可能量が「175mL」である。なお、前記輸液情報に示されているように、前記輸液バッグ12の形状が「生理食塩水A」のように伸縮性の低い「プラスチックボトル」である場合には、前記輸液バッグ12の形状が「生理食塩水B」のように伸縮性の高い「ソフトバッグ」である場合に比べて、エアー抜き無しの注入可能量及びエアー抜き有りの注入可能量が少ない。
【0261】
<ステップS72>
ステップS72において、前記第2制御部500は、前記調製データに基づいて、前記注射器11から前記輸液バッグ12への薬品の注入量が、前記ステップS71で特定された前記輸液バッグ12のエアー抜き無しの注入可能量を超えるか否かを判断する。ここで、前記注入量がエラー抜き無しの注入可能量を超えると判断されると(S72:Yes)、処理はステップS73に移行し、前記注入量がエラー抜き無しの注入可能量を超えないと判断されると(S72:YeNo)、処理はステップS75に移行する。
【0262】
<ステップS73>
ステップS73において、前記第2制御部500は、前記調製データに基づいて、前記注射器11から前記輸液バッグ12への薬品の注入量が、前記ステップS71で特定された前記輸液バッグ12のエアー抜き有りの注入可能量を超えるか否かを判断する。ここで、前記注入量がエラー抜き無しの注入可能量を超えないと判断されると(S73:YeNo)、処理はステップS74に移行する。一方、前記注入量がエラー抜き有りの注入可能量を超えると判断されると(S73:Yes)、前記第2制御部500は、エラー表示などを行った後、当該注入制御処理を終了させる。
【0263】
なお、前記混注処理において、前記薬品容器10内の薬品を前記輸液バッグ12内の輸液で溶解する場合には、前記輸液バッグ12から輸液が抜き取られ、その輸液により溶解された薬品が前記輸液バッグ12に戻されることになる。そのため、前記第2制御部500は、前記ステップS72及び前記ステップS73では、前記輸液バッグ12から抜き取られる輸液の量を考慮して前記注入可能量を超えるか否かを判断することが考えられる。例えば、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12から抜き取られる輸液の量を前記注入可能量から引いた値を前記注入可能量として前記判断を行うことが考えられる。これにより、例えば不要なエアー抜き処理(S74)が防止される。
【0264】
<ステップS74>
ステップS74において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11により薬品が吸引される前に、前記注射器11を用いて前記輸液バッグ12から空気を抜き取る。具体的に、前記第2制御部500は、前記モーター113cを制御することにより、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ保持部103を傾斜させ、前記輸液バッグ12の混注口を上向きにする。これにより、前記輸液バッグ12の混注口に空気を集めることができる。そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cを前記輸液バッグ12に挿入して、前記注射器11のプランジャ11bを引くことにより前記輸液バッグ12内の空気を抜く。なお、ここで抜き取られる空気の量は、例えば前記混注処理において前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入される薬品量の容積に相当する量である。また、ここで抜き取られる空気の量が予め設定された一定量であることも考えられる。
【0265】
<ステップS75>
ステップS75において、前記第2制御部500は、前記混注処理における前記注射器11を用いた前記薬品容器10からの薬品の吸引工程の終了を待ち受ける(S75:No)。そして、前記注射器11を用いた前記薬品容器10からの薬品の吸引工程が終了すると(S75:Yes)、処理はステップS76に移行する。
【0266】
<ステップS76>
ステップS76において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品を注入する。このとき、前記注射器11から注入される薬品量が、前記輸液バッグ12のエアー抜き無しの混注可能量を超えている場合であっても、前記ステップS74により事前に空気が抜き取られている。従って、前記輸液バッグ12内が陽圧になることが防止され、前記輸液バッグ12からの薬品の噴き出しが防止される。
【0267】
[注入制御処理の他の例]
また、前記第2制御部500が、前記注入制御処理(
図33参照)に代えて
図35に示す注入制御処理を実行することも考えられる。具体的に、
図35に示す前記注入制御処理では、前記ステップS74に代えて、下記のステップS81~S83が実行されることにより、前記注射器11により薬品が吸引され、前記注射器11から前記輸液バッグ12に前記薬品を注入した後に続けて前記注射器11による前記輸液バッグ12からの空気の抜き取りが実行される。
【0268】
<ステップS81>
ステップS81において、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12からの空気の抜き取りが必要である旨を示す抜き取りフラグをONにする。即ち、この時点では、前記輸液バッグ12からの空気の抜き取りが実行されない。なお、前記抜き取りフラグは、前記第2制御部500の前記RAM503に設けられたフラグレジスタである。
【0269】
<ステップS82>
そして、前記注射器11による薬品の吸引が終了し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品が注入された後、続くステップS82において、前記第2制御部500は、前記抜き取りフラグがONであるか否かを判断する。ここで、前記抜き取りフラグがONであれば(S82:Yes)、処理はステップ83に移行し、前記抜き取りフラグがOFFであれば(S82:No)、当該注入制御処理は終了する。
【0270】
<ステップS83>
ステップS83において、前記第2制御部500は、前記注射器11の注射針11cを前記輸液バッグ12に挿通したままの状態で続けて前記輸液バッグ12から空気を抜き取る。このように、前記注射器11から前記輸液バッグ12の薬品の注入時に空気が抜き取られるため、事前に前記輸液バッグ12から空気を抜き取る場合に比べて、前記注射器11の注射針11cの前記輸液バッグ12への挿通回数を減らすことができる。なお、当該注入制御処理が実行される場合、前記針挿入確認カメラ44による撮影タイミングは、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品を注入した後、前記空気の抜き取りを開始するまでの間であることが考えられる。これにより、前記注射器11のプランジャ11bが最後まで押し込まれた状態を前記針挿入確認カメラ44で撮影することができる。
【0271】
このように、前記混注装置1では、前記注入制御処理が実行されることにより、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入される薬品の注入量が前記輸液バッグ12に対応して予め定められたエアー抜き無しの注入可能量よりも多い場合に、前記輸液バッグ12から空気が抜かれる。従って、前記輸液バッグ12が陽圧にならず、前記輸液バッグ12からの薬品の噴き出しを防止することができる。
【0272】
[混注装置1が備える他の機能]
以下、前記混注装置1が備える他の機能について説明する。当該他の機能は、前記混注制御装置100において前記第1制御部400又は前記第2制御部500によって各種の処理が実行されることにより具現される。
【0273】
[アンプル10A使用時の薬品抜取機能]
前記混注装置1では、前記アンプル10Aを使用する際に、前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cが使用されることについては前述した。このとき、前記シリンジフィルターには、浸水する前は空気を通過させるが、浸水することにより空気を通過させない特性を有するものがある。そのため、シリンジフィルター付きの前記注射針11cを用いて前記注射器11内の薬品を前記輸液バッグ12に注入する際には、前記注射器11内に空気が存在しないことが重要である。例えば、前記注射器11内に空気が存在する場合には、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11のプランジャ11bを押し込む際に前記注射器11が破損するおそれがある。
【0274】
そこで、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記注射針着脱装置43、前記第1ロボットアーム21、及び前記第2ロボットアーム22などを制御することにより、下記の手順で前記アンプル10Aからの薬品の抜取動作を実行させる。これにより、前記注射器11内に空気を残さずに前記注射器11によって前記アンプル10Aから薬品が吸引される。ここに、
図36及び
図37は、前記アンプル10A使用時の混注処理における薬品の抜取動作の手順を説明するための図である。なお、前記注射針11cの針曲り検知などの説明は省略する。
【0275】
<手順S101>
まず、手順S101では、
図36(A)に示すように、前記注射針着脱装置43及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11に前記シリンジフィルターなしの注射針11cを装着させる。このとき、前記シリンジ11a内には空気が存在しないが、前記シリンジ11aから前記注射針11cの先端までの間には空気が存在する。
【0276】
<手順S102>
次に、手順S102では、
図36(B)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cの針先を下方に向けて前記アンプル10Aに挿入した後、前記注射器11のプランジャ11bを引いて前記アンプル10Aから薬品を吸引する。このとき、前記シリンジ11a内には、前記シリンジ11aから前記注射針11cの先端までの間に存在していた空気が流入することになる。このとき前記シリンジ11aに吸引される初期空気量をαとする。ここで、前記第2制御部500は、前記調製データに基づいて前記アンプル10Aから採取するべき薬品の容量をLnとしたとき、前記容量Lnに対して補正量Sだけ多く前記プランジャ11bを引く。このとき、前記注射器11のシリンジ11aの目盛りは、前記容量Ln+前記補正量Sとなる。
【0277】
ここで、前記補正量Sには、前記初期空気量α、調整用余剰量β、及びフィルター補正量γが含まれている。また、前記注射器11(シリンジ11a及び注射針11c)内には、前記容量Ln+前記補正量S-前記初期空気量αに相当する量の薬品が収容されていることになる。前記調整用余剰量βは、前記注射針11c内の容量よりも多い値であって、後述の手順S109において前記シリンジ11a内の薬品量を調整するために使用する量として予め設定された値である。前記フィルター補正量γは、前記注射器11に装着されるシリンジフィルター付きの前記注射針11c内の容量に相当する値であって、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品を注入した後に前記注射針11c内に残る薬品量として予め設定された値である。なお、複数の前記アンプル10Aから薬品を抜き取る場合には、1本の前記アンプル10Aからの薬品の抜き取り終了時に噴き出し防止用に所定量Cだけ空気が引き込まれ、前記シリンジ11aの目盛りには、前記所定量Cが更に加算されることになる。
【0278】
<手順S103>
手順S103では、
図36(C)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を上方に移動させ、前記注射針11cが前記アンプル10Aの液面から浮いた状態で、予め定められた一定量c1だけ前記プランジャ11bを引く。これにより、前記注射器11からの液漏れが防止される。このとき、前記注射器11のシリンジ11aの目盛りは、前記容量Ln+前記補正量S+前記一定量c1となる。
【0279】
<手順S104>
手順S104では、
図37(A)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cの先端を上方に向け、予め定められた一定量c2だけ前記プランジャ11bを引く。なお、前記一定量c2は、少なくとも前記注射針11c内の薬品を全て前記シリンジ11a内に取り込むことが可能な量である。これにより、前記注射器11の注射針11c内の薬品が前記シリンジ11a内に取り込まれ、前記注射器11から空気を抜く際の薬品の噴き出しが防止される。このとき、前記注射器11のシリンジ11aの目盛りは、前記容量Ln+前記補正量S+前記一定量c1+前記一定量c2となる。
【0280】
<手順S105>
手順S105では、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を水平方向に平行な回転軸を中心に一回又は複数回だけ回転させた後、前記注射器11の前記注射針11cの針先を上方に向ける。これにより、前記注射器11内に気泡として存在する空気が前記注射器11内で上方に集められる。なお、前記注射器11を揺動させ、又は前記注射器11に加振することにより、前記注射器11内の空気を上方に集めることも考えられる。
【0281】
<手順S106>
そして、前記手順S106では、
図37(B)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cの先端を上方に向けた状態で、前記一定量c1及び前記一定量c2に相当する量だけ前記プランジャ11bを押し込む。これにより、前記シリンジ11a内から前記一定量c1及び前記一定量c2の空気が抜ける。前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cに交換した後は、前記シリンジフィルターを通過させて空気を抜く必要があるため、前記プランジャ11bの押し込み速度を遅くする必要がある。そこで、手順S105において、前記注射針11cを前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cに交換する前に前記シリンジ11aの空気を抜いておくことにより作業時間を短縮することができる。このとき、前記注射器11のシリンジ11aの目盛りは、前記容量Ln+前記補正量Sとなる。
【0282】
<手順S107>
次に、手順S107では、
図37(C)に示すように、前記注射針着脱装置43及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の前記注射針11cを前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cに交換する。このとき、前記注射針11cにはキャップが被せられた状態である。なお、前記シリンジフィルター付きの前記注射針11cには、
図37(C)に示すように、シリンジフィルター11dが含まれており、前記注射針11c全体の容量は、前記注射針11cの針部分の容量に前記シリンジフィルター11dの容量を加えた値となる。
【0283】
<手順S108>
そして、手順S108では、
図37(D)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cの先端を上方に向けた状態で、前記初期空気量αよりも多く前記補正量Sよりも少ない量だけ前記プランジャ11bを押し込んで所定量fの空気を押し出す。これにより、前記シリンジ11a内から少なくとも前記初期空気量αの空気が抜けて前記注射針11cの一部まで薬品が到達することになる。このとき、前記注射器11のシリンジ11aの目盛りは、前記容量Ln+前記補正量S-前記所定量fとなる。なお、このとき、前記第2ロボットアーム22は、前記注射針着脱装置43により前記注射針11cのキャップを取り外す。また、前記注射針11cのキャップは後述の手順S109で外されてもよい。
【0284】
<手順S109>
その後、手順S109では、
図37(E)に示すように、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の注射針11cの先端を下方に向けて、前記アンプル10A内の空間に挿入した後、前記シリンジ11aの目盛りが前記容量Lnに相当する位置になるまで前記プランジャ11bを押し込むことにより、前記注射器11内の余分な薬品を排出する。なお、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の前記移動部263の位置に応じて前記シリンジ11aの目盛りを特定することが可能である。
【0285】
このような手順により前記注射器11で前記アンプル10Aから薬品が抜き取られると、前記注射器11のシリンジ11a内には、前記容量Lnに相当する薬品が収容されると共に、前記注射針11c内に薬品が充満した状態となる。従って、前記注射器11のシリンジ11a内には空気が残らないため、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品を注入する際の前記シリンジフィルター11dの破損が防止される。
【0286】
また、前記注射器11には、前記シリンジ11a内に加えて前記注射針11c内にも薬品が充満しているため、前記注射器11から前記輸液バッグ12に薬品を注入する際には、前記注射器11の前記注射針11c内に薬品が残るが、前記シリンジ11a内に収容されていた前記容量Lnの薬品が前記輸液バッグ12に注入されることになる。特に、前述の手順では、前記容量Lnに対して前記調整用余剰量βの薬品を吸引してから最後に不要な量の薬品を排出するため、前記シリンジ11a、前記注射針11c、及び前記シリンジフィルター11dなどの容積誤差の影響を排除することができる。これにより、例えば前記注射器11により前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に注入される薬品量の誤差が抑制される。なお、前記手順S109の後、前記シリンジ11aからの液漏れを防ぐために前記注射針11cの容量の範囲内で前記プランジャ11bを引くことも他の実施形態として考えられる。
【0287】
[溶媒量調整機能]
前記混注装置1では、前記薬品容器10の薬品が前記輸液バッグ12内に注入されて払い出される場合について説明した。一方、前述したように、前記混注装置1では、前記薬品容器10内の薬剤を前記注射器11で吸引した状態で前記注射器11を払い出すことも可能である。このとき、前記薬品容器10の薬品を前記薬品容器10の容量を超える溶媒で希釈した状態で払い出す必要があることも考えられる。そこで、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記薬品容器10内の薬品を前記注射器11で吸引した後、前記輸液バッグ12から溶媒をさらに吸引することのできる溶媒量調整機能を有することが考えられる。なお、このような溶媒量の調整作業は一般にメスアップとも称される。
【0288】
ここに、
図38は、前記第2制御部500が実行する注射器払出処理の一例を示すフローチャートである。前記注射器払出処理は、前記調製データの発行操作時に実行される。
図38に示すように、前記第2制御部500は、前記調製データに基づいて、前記薬品容器10に収容された薬品を前記注射器11に充填した状態で払い出す必要があるか否かを判断する。前記注射器11で払い出すと判断すると(S91:Yes)、処理をステップS92に移行させる。
【0289】
そして、前記ステップS92において、前記第2制御部500は、溶媒量が前記薬品容器10の容量以上である否かを判断し、溶媒量が前記薬品容器10の容量以上でない場合は(S92:No)、ステップS94において前記注射器11により前記薬品容器10内の薬品を吸引する通常処理を実行する。なお、前記通常処理において前記薬品容器10内で薬品の溶解又は希釈が必要な場合には、前記注射器11で前記輸液バッグ12から抜き取った溶媒を前記薬品容器10に注入する処理が実行された後に、前記注射器11で前記薬品容器10内の薬品が吸引される。
【0290】
一方、前記第2制御部500は、溶媒量が前記薬品容器10の容量以上である場合は(S92:Yes)、ステップS93において溶媒量調整処理を実行する。前記溶媒量調整処理では、前記通常処理と同様に前記注射器11で前記薬品容器10内の薬品を吸引するが、その後、前記注射器11で前記輸液バッグ12内の溶媒を更に吸引することにより前記注射器11内の溶媒量を調整する。
【0291】
[遮光薬処理機能]
ところで、前記混注装置1における調製対象の薬品には、遮光が必要となる抗がん剤(例えばダカルバシン)などの薬品(以下「遮光薬」と称する)も含まれる。この場合、前記遮光薬が収容される前記薬品容器10として遮光性を有する遮光容器が使用されるが、前記混注装置1において前記注射器11を用いて前記遮光容器から前記輸液バッグ12に注入されるまでの間は前記遮光薬が光にさらされてしまうという問題が生じる。
【0292】
また、薬品師などが手作業で調製作業を行う場合には、前記遮光薬を前記輸液バッグ12に注入した後で、遮光性を有する遮光袋に前記輸液バッグ12を格納するが、前記混注装置1を利用する場合も同様に、前記混注装置1から取り出した前記輸液バッグ12を手作業で遮光袋に格納することになる。そのため、前記混注装置1では、前記注射器11から前記輸液バッグ12内に注入された後も、前記輸液バッグ12が前記遮光袋に収容されるまでの間は、前記輸液バッグ12内の前記遮光薬が光にさらされるという問題が生じる。そこで、前記混注装置1は、前記遮光薬が調製対象である場合における混注処理において前記遮光薬が光にさらされる時間を極力抑制することのできる遮光薬処理機能を有する。
【0293】
具体的に、前記混注装置1では、前記データ記憶部404に記憶されている前記薬品マスターに、薬品各々が前記遮光薬であるか否かを示す情報が含まれている。これにより、前記第1制御部400及び前記第2制御部500は、前記調製データに含まれる調製対象の薬品が前記遮光薬であるか否かを判断することが可能である。
【0294】
そして、前記混注装置1では、前記調製データに含まれる前記遮光薬の混注処理が実行される場合、前記第1制御部400は、前記第2制御部500に対して前記混注処理の対象が前記遮光薬である旨を通知する。これにより、前記第2制御部500は、前記遮光薬がセットされた前記トレイ101が前記混注処理室104内に搬送される前に、前記混注処理室104内の照明器材(不図示)を消灯させる。これにより、前記混注処理室104内で前記遮光薬の混注処理が実行される際に前記遮光薬にあたる光が抑制される。
【0295】
但し、前記混注装置1では、前記混注処理室104内において、前記混注処理の画像鑑査を行うために前記遮光容器(薬剤容器10)、前記注射器11、及び前記輸液バッグ12などの状態を撮影するため照明が必要になる。これに対し、前記第2制御部500は、前記混注処理室104内の照明器材(不図示)を鑑査画像の撮影時にのみ一時的に点灯させる。これにより、前記遮光薬への光の照射を抑制しつつ、前記遮光薬の前記混注処理の画像鑑査を行うことが可能になる。
【0296】
また、ユーザーは、前記トレイ101に前記輸液バッグ12をセットする際、前記輸液バッグ12を予め前記遮光袋に収容し、前記輸液バッグ12の混注口のみを露出させた状態で前記トレイ101にセットすることが考えられる。これにより、前記輸液バッグ12内に注入された後の前記遮光薬にあたる光を抑制することができる。但し、この場合には、前記トレイ搬送終端部110aの前記輸液用カメラ121により前記輸液バッグ12の表面に付されているバーコードなどの情報を読み取ることができない。そのため、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12の前記バーコードによる照合機能をオフにすることが考えられる。また、前記遮光袋の外側に前記輸液バッグ12の前記バーコードと同様の情報を添付することも考えられる。なお、前記第2制御部500は、前記調製データに含まれる前記遮光薬の混注処理が実行される場合には、前記ドーム型ライト120を消灯させる。これにより、前記トレイ搬送終端部110aにおいて前記遮光薬にあたる光がより抑制される。
【0297】
一方、ユーザーが、通常通り前記輸液バッグ12を前記遮光袋に収容せずに前記トレイ101にセットすることも考えられる。この場合、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12に前記遮光薬が注入される前に、前記ドーム型ライト120を点灯させて前記輸液用カメラ121で前記輸液バッグ12のバーコードを撮影した後、前記ドーム型ライト120を消灯させることが考えられる。これにより、前記輸液バッグ12に注入された後の前記遮光薬に対する光の照射を抑制することができる。
【0298】
[第2の実施形態]
前述したように、前記混注装置1において、前記薬品容器10を用いた前記混注処理では、前記注射器11により前記薬品容器10から吸引されて前記輸液バッグ12に注入された薬品の重量が、前記注射器11の重量に基づいて測定される。具体的には、前記第2制御部500が、前記薬品容器10から薬品を吸引した後の前記注射器11の重量と前記輸液バッグ12に薬品を注入した後の前記注射器11の重量との差分を、前記注射器11により前記薬品容器10から吸引されて前記輸液バッグ12に注入された薬品の重量として算出する。なお、前記第2制御部500が、前記薬品容器10から薬品を吸引する前の前記注射器11の重量と前記薬品容器10から薬品を吸引した後の前記注射器11の重量との差分を、前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に注入された薬品の重量として算出することも考えられる。
【0299】
また、前記薬品容器10として前記バイアル瓶10Bを用いる前記混注処理では、前記注射器11により前記輸液バッグ12から吸引されて前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量が測定されることもある。具体的には、前記輸液バッグ12から輸液を吸引した後の前記注射器11を前記秤量計35で秤量すると共に、前記バイアル瓶10Bに輸液を注入した後の前記注射器11を前記秤量計35で秤量すれば、その差分から前記注射器11により前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量が算出可能である。なお、前記注射器11により前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量は、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量の証拠、前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入量の適否判断、又は前記バイアル瓶10Bに収容されていた粉薬(散薬)を輸液で溶解したときの濃度の算出などに用いられる。
【0300】
ところで、前記混注装置1(
図4参照)では、前記秤量計35が、前記バイアル瓶10Bの移動が可能な前記第1ロボットアーム21の可動範囲内ではなく、前記注射器11の移動及び操作が可能な前記第2ロボットアーム22の可動範囲内に配置されている。そのため、前記注射器11の重量を前記秤量計35で秤量する工程が前記第2ロボットアーム22によって実行されることになる。また、この点は、仮に前記バイアル瓶10Bの重量を前記秤量計35で秤量することを考えた場合にも同様である。
【0301】
しかしながら、前記混注処理において、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を秤量する工程の他に、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液を吸引するなどのように前記注射器11に関する各種の工程を直列的に実行する。そのため、前記第2ロボットアーム22を用いて前記注射器11を秤量する工程は、前記混注処理の所要時間が長くなる要因になるおそれがある。
【0302】
これに対し、本実施形態では、前記混注処理の所要時間を短縮しつつ、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量を測定することが可能となる構成について説明する。
【0303】
以下、
図39~
図44を参照しつつ、本実施形態に係る混注装置1Aについて説明する。なお、前記混注装置1Aについて、前記混注装置1と同様の構成については同じ名称及び符号を用いており、その説明を省略する。なお、本発明の各種の実施形態において説明する前記混注装置1及び前記混注装置1Aの構成要素又は処理手順は任意に組み合わせ可能である。
【0304】
[混注装置1Aの構成]
前記混注装置1Aは、
図39及び
図40に示すように、前記混注装置1が備える構成要素に加えて秤量計39(秤量装置の一例)を備える。前記秤量計39は、前記第1ロボットアーム21の可動範囲内であって、前記載置棚33が設けられた前記混注装置1Aの背面近傍の位置に設けられている。これにより、前記秤量計39は、前記第1ロボットアーム21で搬送される前記バイアル瓶10B又は前記注射器11などの器材を秤量することが可能である。なお、前記秤量計39による秤量結果は前記第2制御部500に入力される。
【0305】
また、前記秤量計39の配置は、前記第1ロボットアーム21の可動範囲内であり、少なくとも前記第1ロボットアーム21で搬送される前記バイアル瓶10Bの重量が測定可能な位置であれば、
図40に示した前記載置棚33の近傍の位置に限らない。例えば、前記秤量計39が、前記載置棚33内に設けられていること、前記攪拌装置32又は前記薬品読取部34等の近傍に設けられていることも考えられる。また、前記秤量計39は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に共通する可動範囲内に配置されてもよい。
【0306】
さらに、前記秤量計39に代えて前記第1ロボットアーム21に秤量装置が配置されることも他の実施形態として考えられる。具体的に、前記第1ロボットアーム21に、前記保持部25で保持している前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を秤量可能な秤量装置が内蔵されている構成が考えられる。これにより、秤量対象となる前記第1ロボットアーム21で前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を保持した状態で秤量することができる。従って、例えば前記器材を前記秤量計39にセットするための作業工程、及び秤量後に前記秤量計39にセットされている前記器材を再度保持するための作業工程などを省略することができ、前記混注処理における所要時間を大幅に短縮することが可能である。
【0307】
なお、前記混注装置1Aは、二つの前記秤量計35及び前記秤量計39を備えているため、前記第2ロボットアーム22を用いて搬送される前記注射器11などの部材の前記秤量計35による秤量と、前記第1ロボットアーム21を用いて搬送される前記バイアル瓶10Bなどの部材の前記秤量計39による秤量とを並行して実行することも可能である。一方、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に共通する可動範囲内に1つの秤量装置が設けられており、その1つの秤量装置が前記バイアル瓶10B及び前記注射器11の秤量に兼用されることも他の実施形態として考えられる。
【0308】
[混注装置1Aにおける混注処理]
次に、
図41及び
図42を参照しつつ、前記バイアル瓶10Bを用いて実行される混注処理において前記第2制御部500が実行する第1ロボットアーム制御処理及び第2ロボットアーム制御処理を説明する。この場合の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の動作については、後段で
図43及び
図44を参照しつつ説明する。なお、前記混注装置1Aで前記アンプル10Aを用いて実行される前記混注処理は前記混注装置1と同様であるため説明を省略する。また、前記第2制御部500は、前記混注処理に伴って、前述の注射器位置調整処理(
図18参照)、容器位置調整処理(
図19)、鑑査制御処理(
図20参照)、トレイ照合処理(
図28参照)、器材取込処理(
図29参照)、注入制御処理(
図33又は
図35参照)、及び溶媒量調整処理(
図38参照)なども実行可能である。
【0309】
前記第2制御部500は、前記トレイ搬送部110に供給された前記トレイ101から前記バイアル瓶10B及び前記注射器11などの器材を取り込んだ後、前記第1ロボットアーム制御処理及び前記第2ロボットアーム制御処理を開始する。ここで、前記第1ロボットアーム制御処理及び前記第2ロボットアーム制御処理は前記第2制御部500によって並行して実行される。ここに、前記第2制御部500の前記CPU501には、一又は複数のプロセッサーが含まれており、前記第2制御部500は、複数の処理を一又は複数のプロセッサーを用いて並列処理することが可能である。なお、前記第2制御部500が実行する並列処理には、一のプロセッサーを用いて各種の処理を順に切り替えながら略並行して実行すること、及び複数のプロセッサーが各種の処理を分担して同時に実行することが含まれる。
【0310】
[第1ロボットアーム制御処理]
まず、
図41を参照しつつ、前記第2制御部500が実行する前記第1ロボットアーム制御処理の一例について説明する。
【0311】
<ステップS1001>
ステップS1001において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39まで移動させ、輸液注入前の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量する第1秤量工程を実行する。即ち、前記混注装置1Aでは、前記第2ロボットアーム22を用いることなく、前記第1ロボットアーム21を用いて前記バイアル瓶10Bの重量が測定される。このとき、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記ステップS1001の第1秤量工程を、後述のステップS2001(
図42参照)の第1輸液吸引工程と並行して実行する。
【0312】
<ステップS1002>
次に、ステップS1002において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32が使用可能であるか否かを判断する。具体的に、前記攪拌装置32は、前述したように二つの前記支持部32fを備えており、同時に二つの前記バイアル瓶10Bを攪拌することが可能である。以下、前記支持部32fのうち一方の前記支持部32fを第1攪拌部32f1と称し、他方の前記支持部32fを第2攪拌部32f2と称する。なお、前記攪拌装置32は、三つ以上の前記バイアル瓶10Bを同時に攪拌可能な構成であってもよい。
【0313】
そして、前記ステップS1002では、前記第2制御部500が、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2の両方に前記バイアル瓶10Bがセットされている場合に、前記攪拌装置32が使用可能でないと判断する。また、前記第2制御部500は、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2の少なくとも一方には前記バイアル瓶10Bがセットされていない場合に、前記攪拌装置32が使用可能であると判断する。
【0314】
例えば、前記RAM503に、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2の使用の有無を示す第1攪拌フラグ及び第2攪拌フラグが設けられている。そして、前記第2制御部500が、後述のステップS1008又はステップS1071で前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bをセットする際に第1攪拌フラグ又は第2攪拌フラグを1に設定する。また、前記第1攪拌フラグ及び前記第2攪拌フラグの初期値は0であり、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2から前記バイアル瓶10Bが取り出される際に前記第2制御部500によってリセットされる。これにより、前記第2制御部500は、前記第1攪拌フラグ及び前記第2攪拌フラグの値を参照することにより、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2の使用の可否を判断することが可能である。
【0315】
ここで、前記攪拌装置32が使用可能であると判断された場合(S1002のYes側)、処理はステップS1003に移行し、前記攪拌装置32が使用可能でないと判断された場合(S1002のNo側)、処理はステップS1010に移行する。
【0316】
<ステップS1003>
ステップS1003において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御し、後述のステップS2003(
図42参照)で制御される前記第2ロボットアーム22と共に動作させることにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bに輸液を注入する注入工程を実行する。これにより、前記バイアル瓶10B内に収容されていた薬品が輸液で溶解される。以下、前記バイアル瓶10B内で薬品が溶解した輸液を薬液と称する。
【0317】
このように、前記混注装置1Aでは、前記攪拌装置32が使用可能でない場合には、前記ステップS1003における前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入工程が実行されずに、処理が前記ステップS1002で待機する。一方、前記攪拌装置32が使用可能であることを条件に前記ステップS1003が実行される。即ち、前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入した後、前記攪拌装置32による攪拌が開始可能な状況でなければ、前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入が実行されない。従って、前記バイアル瓶10Bに輸液が注入された後、長時間放置されて前記バイアル瓶10B内の薬品が凝固することに起因する溶解不良などが抑制される。
【0318】
<ステップS1004>
ステップS1004において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39まで移動させ、輸液注入後の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量する第2秤量工程を実行する。この場合も、前記ステップS1001と同様に、前記第2ロボットアーム22を用いることなく、前記第1ロボットアーム21を用いて前記バイアル瓶10Bの重量が測定される。
【0319】
<ステップS1005>
ステップS1005において、前記第2制御部500は、前記ステップS1001の秤量結果である前記バイアル瓶10Bの重量と前記ステップS1004の秤量結果である前記バイアル瓶10Bの重量との差分を算出する。これにより、前記第2制御部500は、前記差分値を前記注射器11から前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量として取得する。ここに、前記ステップS1005を実行するときの前記第2制御部500が輸液重量取得手段の一例である。このように、前記混注装置1Aでは、輸液注入前後の前記バイアル瓶10Bの重量から前記バイアル瓶10Bへの輸液の重量を測定することができる。従って、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量を取得するために前記第2ロボットアーム22を用いて前記注射器11の重量を測定する必要はない。
【0320】
そして、前記混注装置1Aでは、前記輸液バッグ12に収容されている輸液の種類ごとの比重が前記データ記憶部504の前記薬品マスターに記憶されている。そのため、前記第2制御部500は、前記薬品マスターと、前記輸液バッグ12の輸液の種類と、前記ステップS1005で取得された輸液の重量とに基づいて、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液量を算出することが可能である。これにより、例えば、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液量を前記バイアル瓶10Bから吸引する薬液量として設定することも可能である。
【0321】
<ステップS1006>
ステップS1006において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の駆動を停止させる。なお、前記攪拌装置32が既に停止している場合には、そのまま処理がステップS1007に移行する。また、前記攪拌装置32が、複数の前記バイアル瓶10Bの攪拌の有無を個別に制御可能な構成である場合には、前記攪拌装置32の駆動を停止させる必要はない。
【0322】
<ステップS1007>
ステップS1007において、前記第2制御部500は、前記第1攪拌部32f1が使用可能であるか否かを判断する。ここで、前記第1攪拌部32f1が使用可能であると判断されると(S1007のYes側)、処理はステップS1008に移行し、前記第1攪拌部32f1が使用可能でないと判断されると(S1007のNo側)、処理はステップS1071に移行する。
【0323】
<ステップS1008、S1071>
ステップS1008において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記秤量計39で重量が測定された後の前記バイアル瓶10Bを前記第1攪拌部32f1にセットして前記バイアル瓶10Bを攪拌する攪拌工程を実行する。また、ステップS1071において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記秤量計39で重量が測定された後の前記バイアル瓶10Bを前記第2攪拌部32f2にセットして前記バイアル瓶10Bを攪拌する攪拌工程を実行する。
【0324】
<ステップS1009>
そして、ステップS1009において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の駆動を開始させる。これにより、前記攪拌装置32で前記バイアル瓶10Bに収容されている輸液及び薬品が攪拌されて十分に混合された輸液が生成される。なお、既に前記攪拌装置32が駆動している場合には、そのまま処理がステップS1010に移行する。
【0325】
<ステップS1010>
ステップS1010において、前記第2制御部500は、前記第1攪拌部32f1の攪拌が終了したか否かを判断する。具体的に、前記第2制御部500は、前記ステップS1008において前記バイアル瓶10Bを前記第1攪拌部32f1にセットしてから前記攪拌装置32の駆動を開始したときに前記第1攪拌部32f1における攪拌時間の計時を開始する。同様に、前記第2制御部500は、前記ステップS1071において前記バイアル瓶10Bを前記第2攪拌部32f2にセットしてから前記攪拌装置32の駆動を開始したときに前記第2攪拌部32f2における攪拌時間の計時を開始する。そして、前記第2制御部500は、前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に対応する計時時間が予め設定された攪拌時間に達した場合に前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2における攪拌が終了したと判断する。なお、前記攪拌時間は、前記バイアル瓶10Bに収容された薬品種別及び薬品量などに応じて予め設定される。なお、前記攪拌装置32の駆動が停止されている間は、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2の攪拌時間の計時も一時停止する。
【0326】
ここで、前記第1攪拌部32f1の攪拌が終了したと判断されると(S1010のYes側)、処理はステップS1011に移行し、前記第1攪拌部32f1の攪拌が終了していないと判断されると(S1010のNo側)、処理はステップS1013に移行する。
【0327】
<ステップS1011~S1012>
ステップS1011において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の駆動を停止させる。そして、ステップS1012において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記攪拌装置32の前記第1攪拌部32f1から前記バイアル瓶10Bを取り出し、前記第1ロボットアーム21を後述のステップS2041(
図42参照)で制御される前記第2ロボットアーム22と共に動作させることにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。
【0328】
<ステップS1013>
一方、ステップS1013において、前記第2制御部500は、前記第2攪拌部32f2の攪拌が終了したか否かを判断する。ここで、前記第2攪拌部32f2の攪拌が終了したと判断されると(S1013のYes側)、処理はステップS1014に移行し、前記第2攪拌部32f2の攪拌が終了していないと判断されると(S1013のNo側)、処理はステップS1016に移行する。
【0329】
<ステップS1014~S1015>
ステップS1014において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の駆動を停止させる。そして、ステップS1015において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して、前記攪拌装置32の前記第2攪拌部32f2から前記バイアル瓶10Bを取り出し、前記第1ロボットアーム21を後述のステップS2031(
図42参照)で制御される前記第2ロボットアーム22と共に動作させることにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。
【0330】
<ステップS1016>
その後、ステップS1016において、前記第2制御部500は、続いて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在するか否かを前記調製データに基づいて判断する。例えば、前記ステップS1016では、一の前記調製データに基づいて複数の前記バイアル瓶10Bを用いた調製作業を実行する場合、又は前記バイアル瓶10Bを用いる複数の前記調製データの調製作業を連続して実行する場合などに、続いて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在すると判断する。
【0331】
ここで、続いて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在すると判断された場合(S1016のYes側)、処理は前記ステップS1001に戻り、続いて使用する他の前記バイアル瓶10Bについて同様の処理が実行される。また、続いて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在しないと判断された場合は(S1016のNo側)、処理はステップS1017に移行する。
【0332】
<ステップS1017>
ステップS1017において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存しているか否かを判断する。ここで、前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存していると判断されると(S1017のYes側)、処理は前記ステップS1009に移行して前記攪拌装置32による残りの前記バイアル瓶10Bの攪拌が再開される。なお、前記攪拌装置32が既に駆動している場合には、そのまま処理が前記ステップS1010に移行する。一方、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存していないと判断されると(S1017のNo側)、当該第1ロボットアーム制御処理は終了する。
【0333】
[第2ロボットアーム制御処理]
次に、
図42を参照しつつ、前記第2制御部500が実行する前記第2ロボットアーム制御処理の一例について説明する。
【0334】
<ステップS2001>
ステップS2001において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11で前記輸液バッグ12から前記調製データに基づく必要量の輸液を吸引する第1輸液吸引工程を実行する。ここで、前記混注装置1Aでは、前記ステップS1001(
図41参照)において前記第1ロボットアーム21を用いて前記バイアル瓶10Bの重量が測定される。これにより、前記第2ロボットアーム22は、前記第1ロボットアーム21が前記バイアル瓶10Bの秤量を行っている間に、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液を吸引することが可能である。即ち、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記ステップS2001の第1輸液吸引工程を、前記ステップS1001の第1秤量工程(
図41参照:ステップS1001)と並行して実行する。
【0335】
<ステップS2002>
次に、ステップS2002において、前記第2制御部500は、前記ステップS1002(
図41参照)と同様に、前記攪拌装置32が使用可能であるか否かを判断する。ここで、前記攪拌装置32が使用可能であると判断された場合(S2002のYes側)、処理はステップS2003に移行し、前記攪拌装置32が使用可能でないと判断された場合(S2002のNo側)、処理はステップS2004に移行する。
【0336】
<ステップS2003>
ステップS2003において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御し、前記ステップS1003(
図41参照)で制御される前記第1ロボットアーム21と共に動作させることにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bに輸液を注入する注入工程を実行する。このように、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液が吸引された後、前記攪拌装置32が使用可能でない場合には(S2002のNo側)、前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入工程が実行されずに、処理が前記ステップS2002で待機する。即ち、前記攪拌装置32が使用可能であることを条件に前記ステップS2003が実行される。
【0337】
<ステップS2004>
ステップS2004において、前記第2制御部500は、前記ステップS1010及び前記ステップS1013(
図41参照)と同様に、前記攪拌装置32の前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2のいずれかにおける前記バイアル瓶10Bの攪拌が終了したか否かを判断する。ここで、前記攪拌装置32における前記バイアル瓶10Bの攪拌が終了したと判断されると(S2004のYes側)、処理はステップS2041に移行し、前記攪拌装置32における前記バイアル瓶10Bの攪拌が終了していないと判断されると(S2004のNo側)、処理はステップS2005に移行する。
【0338】
<ステップS2005>
ステップS2005において、前記第2制御部500は、前記ステップS1016(
図41参照)と同様に、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在するか否かを前記調製データに基づいて判断する。ここで、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在すると判断された場合(S2005のYes側)、処理は前記ステップS2001に戻り、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bについて同様の処理が実行される。また、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在しないと判断された場合は(S2005のNo側)、処理はステップ前記S2004に移行する。
【0339】
<ステップS2041>
ステップS2041において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御し、前記ステップS1012又は前記ステップS1015(
図41参照)で制御される前記第1ロボットアーム21と共に動作させることにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。なお、前記第2制御部500は、前記ステップS1005で取得された前記輸液の重量に基づいて、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから吸引する薬液量を設定することが考えられる。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が吸引量設定手段の一例である。
【0340】
<ステップS2042>
そして、ステップS2042において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記ステップS2041で吸引された前記注射器11内の薬液を前記輸液バッグ12に注入するバッグ注入工程を実行する。
【0341】
<ステップS2043>
その後、ステップS2043において、前記第2制御部500は、前記ステップS2005と同様に、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在するか否かを前記調製データに基づいて判断する。ここで、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在すると判断された場合(S2043のYes側)、処理は前記ステップS2003に戻り、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bについて同様の処理が実行される。また、続けて使用する他の前記バイアル瓶10Bが存在しないと判断された場合は(S2043のNo側)、処理がステップS2044に移行する。
【0342】
<ステップS2044>
ステップS2044において、前記第2制御部500は、前記攪拌装置32の前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存しているか否かを判断する。ここで、前記第1攪拌部32f1又は前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存していると判断されると(S2044のYes側)、処理は前記ステップS2004に移行する。一方、前記第1攪拌部32f1及び前記第2攪拌部32f2に前記バイアル瓶10Bが残存していないと判断されると(S2044のNo側)、当該第2ロボットアーム制御処理は終了する。
【0343】
[混注動作における第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22の動作]
続いて、
図43及び
図44を参照しつつ、前記第1ロボットアーム制御処理及び前記第2ロボットアーム制御処理が実行された場合の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の動作の概略を時系列に従って説明する。なお、
図43及び
図44における上下方向は時系列を示す。
【0344】
[バイアル瓶10Bが一つである場合の混注処理]
まず、
図43を参照しつつ、一つの前記バイアル瓶10Bを用いる前記混注処理が実行される場合の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の動作例について説明する。
【0345】
<ステップS3001、S3002>
まず、ステップS3001では、前記第1ロボットアーム21が、輸液が注入される前の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量し、ステップS3002では、前記第2ロボットアーム22が、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液を吸引する。前記ステップS3001及び前記ステップS3002の動作は、前記第2制御部500が、前記第1秤量工程(
図41参照:ステップS1001)と前記第1輸液吸引工程(
図42参照:ステップS2001)とを並行して実行することにより並行して行われる。
【0346】
従って、前記混注装置1Aでは、前記第1秤量工程及び前記第1輸液吸引工程が並行して実行されることにより、前記混注処理が効率的に進行するため、前記混注処理の所要時間を短縮することができる。ここに、前記第1秤量工程及び前記第1輸液吸引工程を並行して実行するときの前記第2制御部500が第1制御手段の一例である。
【0347】
<ステップS3003>
次に、ステップS3003では、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が共に動作することにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bに輸液が注入される。前記ステップS3003の動作は、前記第2制御部500が、前記注入工程(ステップS1003、ステップS2003)を実行することによって実行される。ここに、前記注入工程を実行するときの前記第2制御部500が第2制御手段の一例である。
【0348】
<ステップS3004>
そして、ステップS3004では、前記第1ロボットアーム21が、輸液が注入された後の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量する。前記ステップS3004の動作は、前記第2制御部500が、前記第2秤量工程(ステップS1004)を実行することによって実行される。ここに、前記第2秤量工程を実行するときの前記第2制御部500が第2制御手段の一例である。
【0349】
<ステップS3005>
続いて、ステップS3005では、前記第1ロボットアーム21が、前記バイアル瓶10Bを前記攪拌装置32まで移動させて前記攪拌装置32で前記バイアル瓶10Bを攪拌させる。前記ステップS3005の動作は、前記第2制御部500が、前記攪拌工程(ステップS1008、S1071)を実行することによって実行される。
【0350】
<ステップS3006>
その後、ステップS3006では、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が共に動作することにより、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引される。
【0351】
<ステップS3007>
そして、ステップS3007では、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから吸引された薬液が前記輸液バッグ12に注入される。前記ステップS3007の動作は、前記第2制御部500が、前記バッグ注入工程(ステップS2042)を実行することによって実行される。
【0352】
[バイアル瓶10Bが二つである場合の混注処理]
次に、
図44を参照しつつ、二つの前記バイアル瓶10Bを用いる前記混注処理が実行される場合の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の動作例について説明する。なお、
図43で説明した前記混注処理と同様の処理について同じ符号を付しており、その説明を省略する。
【0353】
<ステップS4001>
前記混注処理で二つの前記バイアル瓶10Bが使用される場合には、前記ステップS3005の実行後に、前記第1ロボットアーム21が、輸液が注入される前の2本目の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量する(S4001)。前記ステップS4001の動作は、前記第2制御部500が、2本目の前記バイアル瓶10Bに対応する前記第1秤量工程(
図41参照:ステップS1001)を実行することにより実行される。
【0354】
<ステップS4002>
一方、前記混注処理で二つの前記バイアル瓶10Bが使用される場合には、前記ステップS3003の実行後に、前記第2ロボットアーム22が、前記注射器11で2本目の前記バイアル瓶10Bに対応する輸液を前記輸液バッグ12から吸引する(S4002)前記ステップS4002の動作は、前記第2制御部500が、前記ステップS2001を実行することによって実行される。ここに、前記ステップS2001を実行することにより、2本目の前記バイアル瓶10Bに対応する輸液を前記輸液バッグ12から吸引する工程が第2輸液吸引工程の一例であり、前記第2輸液吸引工程を実行するときの前記第2制御部500が第3制御手段の一例である。
【0355】
ここで、2本目の前記第1輸液吸引工程(S4002)は、1本目の前記第2秤量工程(S3004)、1本目の前記攪拌工程(S3005)、及び2本目の前記第1秤量工程(S4001)は並行して実行される。従って、前記混注処理がさらに効率的に進行するため、複数の前記バイアル瓶10Bを用いる前記混注処理の所要時間を短縮することができる。
【0356】
<ステップS4003>
その後、ステップS4003では、前記ステップS3003と同様にして、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が共に動作することにより、前記注射器11で2本目の前記バイアル瓶10Bに輸液が注入される。
【0357】
<ステップS4004、S4005>
また、ステップS4004、S4005では、前記ステップS3004、S3005と同様に、前記第1ロボットアーム21が、輸液が注入された後の2本目の前記バイアル瓶10Bを前記秤量計39で秤量し、その2本目の前記バイアル瓶10Bを前記攪拌装置32まで移動させて前記攪拌装置32で前記バイアル瓶10Bを攪拌させる。
【0358】
<ステップS4006>
そして、ステップS4006では、前記ステップS3006と同様に、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が共に動作することにより、前記注射器11で2本目の前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引される。
【0359】
<ステップS4007>
また、ステップS4007では、前記ステップS3007と同様に、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11で2本目の前記バイアル瓶10Bから吸引された薬液が前記輸液バッグ12に注入される。
【0360】
以上説明したように、本実施形態に係る前記混注装置1Aでは、前記第2ロボットアーム22が前記輸液バッグ12から輸液を吸引しているときに待機状態となる前記第1ロボットアーム21を用いて前記バイアル瓶10Bを秤量し、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量を算出している。従って、前記混注装置1Aでは、前記第2ロボットアーム22が前記注射器11又は前記バイアル瓶10Bの重量を測定する工程を担う場合に比べて前記混注処理の所要時間を短縮しつつ、前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量を取得することが可能である。
【0361】
[第3の実施形態]
ところで、複数の前記バイアル瓶10Bを用いて前記混注処理を実行する場合、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で前記バイアル瓶10B各々に輸液を注入する際に前記バイアル瓶10Bごとに対応する輸液の必要量がその都度前記輸液バッグ12から吸引されることが考えられる。しかしながら、このような手法では、前記バイアル瓶10Bの数と同じ回数だけ前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液の吸引を行う必要があるため前記混注処理の所要時間が長くなるという問題が生じる。
【0362】
これに対し、前記混注装置1Aにおいて、前記注射器11で複数の前記バイアル瓶10Bに対応する輸液の必要量が纏めて前記輸液バッグ12から吸引され、その後に、前記注射器11から前記バイアル瓶10B各々に必要量の輸液が分配される手法も考えられる。この場合には、前記バイアル瓶10Bの数よりも少ない回数だけ前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液の吸引を行えばよいため前記混注処理の所要時間が短縮される。また、その後、複数の前記バイアル瓶10B内の薬液は、前記注射器11によって順に吸引され、前記輸液バッグ12に注入される。以下、本実施形態では、粉薬などの薬品が収容された2本の前記バイアル瓶10Bであるバイアル瓶10B1及びバイアル瓶10B2を用いて前記混注処理が実行される場合を例に挙げて説明する。また、ここでは前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2の薬品の全量が前記混注処理で使用される場合について説明する。なお、前記バイアル瓶10Bの数は2本に限らない。
【0363】
ここで、
図45を参照しつつ、前記注射器11から2本の前記バイアル瓶10B1、10B2に輸液を分配する手法について説明する。具体的に、ここでは前記注射器11で前記輸液バッグ12から10mlの輸液が吸引され、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1、10B2各々に予め定められた5mlの輸液を分配して注入する場合について説明する。
【0364】
まず、
図45(A)に示すように、前記注射器11で前記輸液バッグ12から10mlの輸液が吸引された状態で、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1に5mlの輸液が注入される。次に、
図45(B)に示すように、前記注射器11に5mlの輸液が残っている状態で、前記注射器11から前記バイアル瓶10B2にその5mlの輸液が注入される。なお、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1、10B2に輸液を注入する際は、
図45(A)、(B)に示すように、前記注射器11の注射針11cが下方に向けられ、前記バイアル瓶10B1、10B2のゴム栓10Cが上方に向けられた状態である。
【0365】
そして、前記バイアル瓶10B1の攪拌が終了すると、
図45(C)に示すように、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1から5mlの薬液が吸引される。その後、前記バイアル瓶10B2の攪拌が終了すると、
図45(D)に示すように、前記注射器11で前記バイアル瓶10B2からも5mlの薬液が吸引される。なお、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1、10B2に輸液を注入する際は、
図45(C)、(D)に示すように、前記注射器11の注射針11cが上方に向けられ、前記バイアル瓶10B1、10B2のゴム栓10Cが下方に向けられた状態である。
【0366】
ところで、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1、10B2にそのまま輸液を注入すると、前記バイアル瓶10B1、10B2内が陽圧になって、前記バイアル瓶10B1、10B2から薬液が漏れやすくなる。そのため、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10B1、10B2のゴム栓10Cに挿通された後、前記注射器11のプランジャ11bが操作されて前記バイアル瓶10B1、10B2から所定量の空気が吸引され、前記バイアル瓶10B1、10B2内が負圧にされる。そして、前記注射器11のプランジャ11bが操作されて前記注射器11から前記バイアル瓶10B1、10B2に輸液が注入される。このような一連の注入処理が1回又は複数回実行されることにより前記バイアル瓶10B1に対応する必要量の輸液が前記バイアル瓶10B1、10B2に注入される。
【0367】
但し、このような注入処理が実行される場合には、前記バイアル瓶10B1内の気圧変化などに起因して、前記注射器11から前記バイアル瓶10B1への輸液の注入量にバラツキが生じことがある。例えば、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2に注入する輸液量の理論値が5mlであるのに対し、実際に前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2に注入される輸液量が4.75ml及び5.25mlになることが考えられる。
【0368】
そのため、この種の注入処理が実行される場合には、前記バイアル瓶10B1から薬液が吸引される際に、前記バイアル瓶10B1に注入した輸液量の理論値よりも少し多い量の吸引操作が行われる。これにより、前記バイアル瓶10B1に実際に注入される輸液量にバラツキが生じている場合であっても前記バイアル瓶10B1内の輸液を全量採取することができる。例えば、5mlに対して予め設定された10%の余分量を含む5.5mlだけ吸引することが考えられる。
【0369】
しかしながら、本来の輸液量に対して余分な量の吸引操作が行われると、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から薬液を吸引した後に前記注射器11内に余分な空気(ここでは1mlの空気)が含まれることになる。そのため、前記注射器11の目盛りを参照しても前記注射器内の正確な薬液量が把握しづらくなる。
【0370】
特に、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から必要量の薬液を吸引したことを示すために前記注射器11の目盛りの画像が証拠として撮影されることがある。この場合には、前記注射器11の目盛りが撮影される前に、前記注射器11から余分な空気を排出する工程が必要になる。このとき、前記注射器11から余分な空気を排出するためには、前記注射器11の注射針11cを上方に向けた状態で前記注射器11から薬液が漏れ出さないように前記プランジャ11bをゆっくり操作する必要がある。そのため、前記注射器11から余分な空気を排出する工程により前記混注処理の所要時間が長くなるという問題がある。
【0371】
さらに、前記注射器11としては、前記混注処理で必要となる吸引量に応じて予め選択されたサイズ(容量)の注射器が使用される。しかしながら、前述したように、前記注射器11が余分な吸引を行う構成では、その余分な吸引を行うことを考慮して前記注射器11のサイズを選択する必要が生じる。特に、前記注射器11による余分な吸引量のためだけに、前記注射器11のサイズを無駄に一段階大きいサイズにする必要が生じるおそれがある。しかしながら、前記注射器11は、サイズが大きくなるほど固体誤差が大きくなる傾向にあるため、できるだけ小さなサイズであることが望ましい。
【0372】
これに対し、本実施形態に係る前記混注装置1Aでは、前記第2制御部500によって、前記第2ロボットアーム制御処理(
図42参照)に代えて、
図46に示す第2ロボットアーム制御処理が実行される。これにより、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で複数の前記バイアル瓶10Bに輸液が分配された後、複数の前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引される場合の前記混注処理の所要時間を短縮しつつ、極力小さなサイズの前記注射器11が使用可能となる。
【0373】
[第2ロボットアーム制御処理]
以下、
図46を参照しつつ、本実施形態に係る前記混注装置1Aにおいて前記第2制御部500が実行する前記第2ロボットアーム制御処理の一例について説明する。なお、
図42に示した前記第2ロボットアーム制御処理と同様の処理手順には同じ符号を付しており、その説明を省略する。
【0374】
<ステップS5001>
まず、前記第2ロボットアーム制御処理では、ステップS5001において、前記第2制御部500が、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11で複数の前記バイアル瓶10Bに注入する輸液の合計量を前記輸液バッグ12から吸引する。
【0375】
前述の例では、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1、10B2に注入する合計10mlの輸液が前記輸液バッグ12から吸引される。そして、続く前記ステップS2003では、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1に5mlの輸液が注入され、前記ステップS1005では、前記バイアル瓶10B1に注入された輸液の重量が取得される。また、前記バイアル瓶10B1への輸液の注入が終了すると、前記バイアル瓶10B2についても同様に前記ステップS2003において、前記注射器11で5mlの輸液が注入される。そして、前記ステップS1005では、前記バイアル瓶10B2に注入された輸液の重量が取得される。なお、前記ステップS1005で取得される前記バイアル瓶10B1、10B2の輸液の重量は前記RAM503又は前記データ記憶部504などに記憶される。
【0376】
<ステップS5002>
その後、前記ステップS2004において、前記バイアル瓶10Bの攪拌が終了すると、(S2004のYes側)、処理がステップS5002に移行する。ステップS5002において、前記第2制御部500は、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。具体的に、前記ステップS5002において、前記第2制御部500は、前記ステップS1005(
図41参照)で算出される輸液の重量、即ち前記バイアル瓶10Bに注入された輸液の重量に基づいて、前記バイアル瓶10Bから吸引する薬液量を設定し、その薬液量を前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから吸引する。
【0377】
<ステップS5003>
そして、前記混注装置1Aでは、前記バイアル瓶10B各々について同様の処理が実行されることにより、前記注射器11によって前記バイアル瓶10B各々に収容されている薬液が吸引されると(S2044のYes側)、処理がステップS5003に移行する。ステップS5003において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11内の薬液を前記輸液バッグ12に注入する。このとき、前記注射器11内に吸引された薬液は、前記バイアル瓶10B各々から前記バイアル瓶10Bごとの秤量結果に応じて誤差なく吸引されたものである。
【0378】
そのため、前記注射器11内には余分な空気が含まれておらず、前記注射器11から余分な空気を排出する必要がない。従って、前記混注処理の所要時間を短縮しつつ前記注射器11の目盛りを予め定められた必要量に一致させることができる。また、前記注射器11内には空気が存在しないため、前記注射器11内の輸液量が必要量に一致した状態を、前記鑑査制御処理(
図20参照)などで撮影される前記注射器11の目盛りによって確認することができる。さらに、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で余分な吸引を行う必要がないため、前述したように余分な吸引を行う場合に比べて、前記注射器11のサイズとして精度の高い小さなサイズを使用することが可能である。
【0379】
また、前記混注装置1Aで実行される前記混注処理では、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2のうち前記バイアル瓶10B1からは薬品の全量が採取され、前記バイアル瓶10B2からは薬品の一部のみが採取されることが考えられる。この場合、前記バイアル瓶10B1からは薬品の全量を採取するため、前記バイアル瓶10B1内に注入する輸液量は、前記バイアル瓶10B1の薬品を使用する際に必要な予め定められた規定量以上であればよい。一方、前記バイアル瓶10B2からは薬品の一部のみを採取することになるため、前記バイアル瓶10B2に注入する輸液量と前記バイアル瓶10B2から採取する薬液量とを高い精度で管理して必要量の薬品を採取する必要がある。
【0380】
一方、本実施形態では、前記ステップS5003において、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から連続して薬液が吸引され、その薬液が前記輸液バッグ12に注入される。このような構成では、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から個別に薬液を吸引して前記輸液バッグ12に注入する場合に比べて前記輸液バッグ12への前記注射器11の注射針11cの挿通回数が減り、前記混注処理の所要時間も短縮される。
【0381】
しかしながら、この場合には、前記注射器11で前記バイアル瓶10B1から薬液が吸引された後、そのまま連続して前記注射器11で前記バイアル瓶10B2から薬液を吸引する過程で、前記バイアル瓶10B1から吸引された前記注射器11の薬液が前記バイアル瓶10B2内に流入するおそれがある。そのため、前記バイアル瓶10B1内の薬液の濃度と前記バイアル瓶10B2内の薬液の濃度とが異なる場合には、前記注射器10により前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から予め定められた合計量の薬液が吸引された場合であってもその薬液内に必要な薬品量が含まれないおそれがある。
【0382】
即ち、前記混注装置1Aでは、前記バイアル瓶10B1から薬品の全量を採取すればよいため、通常は、前記バイアル瓶10B1に予め定められている規定量以上の輸液が注入され、その規定量以上の輸液を十分に吸引できるように前記注射器11が操作されることが考えられる。特に、人が前記バイアル瓶10B1から一部の薬品だけを採取する作業を行う場合には、前記バイアル瓶10B1に予め定められた量の輸液を注入するために前記注射器10を慎重に操作する手間が必要となるが、前記バイアル瓶10B1から薬品の全量を採取する場合には、前記注射器10を操作する手間を軽減するため、前記規定量に対してある程度余分な輸液を含む輸液を前記バイアル瓶10B1に注入し、前記バイアル瓶10B1内の薬液の全量を採取することが一般的であった。そのため、前記混注装置1Aにおいても、人が前記バイアル瓶10B1から薬品の全量を採取する場合と同様に、前記バイアル瓶10B1に余分な輸液を注入することが考えられる。
【0383】
これに対し、前記混注装置1Aでは、前記第2制御部500によって前記第2ロボットアーム22が制御されることによって、人が作業を行う場合に比べて高い精度で容易に前記注射器10による吸引量及び注入量が制御可能である。そこで、前記混注装置1Aでは、前記第2制御部500が、前記バイアル瓶10B1から薬品の全量を採取する場合であっても、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2内の薬液の濃度と同じになるように、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2に注入する輸液量を設定することが考えられる。これにより、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2のそれぞれで生成される薬液の濃度が同じになるため、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2のいずれから先に前記注射器10で薬液が吸引される場合であっても、前記注射器10で必要な薬品量が含まれる薬液を正確に吸引することができる。
【0384】
例えば、前記バイアル瓶10B1に1g、前記バイアル瓶10B1に200mgの薬品が収容されている場合であって、前記バイアル瓶10B1を使用する際の輸液の規定量が25ml以上、前記バイアル瓶10B2を使用する際の輸液の規定量が5ml以上である場合を考える。また、前記注射器10で吸引するべき薬液に含まれているべき薬品の必要量は1.1gであるとする。この場合、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11で30mlの輸液を前記輸液バッグ12から吸引した後、前記バイアル瓶10B1に25mlの輸液を注入し、前記バイアル瓶10B2に5mlの輸液を注入する。これにより、前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2の薬液の濃度が同じになる。そのため、前記第2制御部500は、前記注射器10により前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2から順不同で合計27.5mlの薬液を吸引することにより必要量である1.1gの薬品を採取し、前記輸液バッグ12に注入することが可能となる。
【0385】
[第4の実施形態]
ところで、前記混注装置1Aでは、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引した後、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bから抜かれた状態で、前記注射器11の目盛りが撮影されることが考えられる。例えば、前記注射器11の目盛りの撮影は、前記鑑査制御処理(
図20参照)の前記ステップS23などで行われる。なお、前記ステップS23では、前記バイアル瓶10B及び前記注射器11が一度に撮影される場合について説明したが、これに限らず、
図47に示すように、前記注射器11のみを撮影することも考えられる。また、前記注射器11で複数の前記バイアル瓶10Bから連続して薬液が吸引される場合には、個々の前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引される毎に、或いは、全ての前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引された後に前記注射器11が撮影される。
【0386】
ここで、前記注射器11の目盛りを撮影する際に、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bから抜く場合には、前記注射器11の注射針11cから薬液が漏れないように、前記注射器11のプランジャ11bを少し引いて空気を吸引する必要がある。しかしながら、前記注射器11のプランジャ11bを少し引いて前記注射器11内に余分な空気が存在する状態では、前記注射器11の目盛りが予め定められた必要量と一致しない。そのため、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bから抜いた後、前記注射器11を撮影する前に前記注射器11のプランジャ11bを少し押して余分な空気を抜く必要がある。このとき前記注射器11のプランジャ11bを押す工程は、前記注射器11の注射針11cから薬液が漏れないようにゆっくり行う必要があるため時間を要する。さらに、前記注射器11の目盛りの撮影後には、前記注射器11を移動させる際に前記注射器11の注射針11cから薬液が漏れないように、前記注射器11のプランジャ11bを再度少し引いた状態に戻す必要もある。そのため、前記注射器11の目盛りを撮影するための処理によって前記混注処理の所要時間が長くなるという問題が生じる。
【0387】
そこで、本実施形態に係る前記混注装置1Aでは、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bに挿通されたままの状態で、前記注射器確認カメラ42により前記注射器11の目盛りを撮影する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が撮影制御手段の一例である。
【0388】
具体的に、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1において前記注射器11による前記バイアル瓶10Bからの薬液の吸引を実行することが考えられる。また、前記第2制御部500が、他の領域で前記注射器11による前記バイアル瓶10Bからの薬液の吸引を実行した後に前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に前記バイアル瓶10B及び前記注射器11を移動させることも考えられる。
【0389】
ここに、
図48は、前記注射器確認カメラ42で撮影された画像の一例を示す図である。具体的に、前記第2制御部500は、
図48に示すように、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11の注射針11cが下方に向けられ、前記バイアル瓶10Bのゴム栓11Cが上方に向けられた状態で前記注射器確認カメラ42により前記注射器11の目盛りを撮影する。即ち、まず前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cが上方に向けられると共に前記注射器11の注射針11cが下方に向けられた状態において前記注射器11で輸液を前記バイアル瓶10Bに注入する注入工程を実行する。そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cが下方に向けられると共に前記注射器11の注射針11cが上方に向けられた状態において前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから輸液を吸引する吸引工程を実行する。ここに係る注入工程及び吸引工程を実行するときの前記第2制御部500が第5制御手段の一例である。その後、前記第2制御部500は、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10B内に挿通されたままの状態で前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bの上下位置を反転させてから前記注射器11を撮影する。そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11で液漏れを防止するための余分な空気の吸引を行った後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の一方又は両方を制御して、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bから引き抜く。
【0390】
このように、本実施形態に係る前記混注装置1Aでは前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bから抜かれずに前記バイアル瓶10Bに挿通されたままの状態で前記注射器11の撮影が行われる。従って、前述したように前記注射器11から余分な空気を排出する工程、及び前記注射器11で再度余分な空気を吸引する工程を実行する必要がないため、前記注射器11の目盛りを撮影するための処理によって生じる前記混注処理の遅延を抑制することができる。
【0391】
なお、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射器11の注射針11cが上方に向けられ、前記バイアル瓶10Bのゴム栓11Cが下方に向けられた状態前記注射器確認カメラ42により前記注射器11の目盛りを撮影することも他の実施形態として考えられる。即ち、前記第2制御部500が、前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引した後、そのままの状態で前記注射器11を撮影することが考えられる。
【0392】
この場合、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記ロボットアーム22を制御して、前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bを回転させることにより、前記注射器11の注射針11cが下方に向けられ、前記バイアル瓶10Bのゴム栓11Cが上方に向けられる。そして、前記第2制御部500は、前記注射器11で液漏れを防止するための余分な空気の吸引を行った後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の一方又は両方を制御して、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bから抜き取る。
【0393】
[第5の実施形態]
ところで、前記混注装置1Aでは、例えば前記注射器11から前記バイアル瓶10Bに輸液を注入する場合、及び前記注射器11で前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する場合など、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに複数回挿通されることがある。このとき、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cにおける同一箇所又は近傍箇所に挿通されると、前記ゴム栓10Cの一部が削り取られる所謂コアリングと称される問題が生じ、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cから薬液が漏れやすくなる。
【0394】
これに対し、本実施形態では、前記第2制御部500が、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに複数回挿通する場合に、前記ゴム栓10Cへの前記注射針11cの挿通位置をその都度異なる位置に変更する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が第4制御手段の一例である。より具体的に、前記第2制御部500は、前記ゴム栓10Cの中心及びその中心から半径方向に離間する一又は複数の離間位置を挿通位置として設定する。なお、前記ゴム栓10Cに前記注射針11cが複数回挿通される場合、その複数の挿通位置は、前記ゴム栓10Cの中心を含む必要はなく、前記ゴム栓10において半径方向に離間する複数の位置を含むものであればよい。
【0395】
ここに、
図49(A)及び
図49(B)は、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cの平面図であって、前記ゴム栓10Cにおける挿通位置の一例を示す図である。
図49(A)に示す例では、前記第2制御500が、1回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される際に、前記ゴム栓10Cの中心位置P1を挿通位置として設定する。その後、前記第2制御500は、2回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される際に、前記ゴム栓10Cの中心位置P1から半径方向外側に予め定められた距離d11だけ離間する離間位置P2を挿通位置として設定する。さらに、前記第2制御500は、3回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される場合には、前記離間位置P2から更に半径方向外側に前記距離d11だけ離間する離間位置P3を挿通位置として設定する。これにより、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bの周方向の回転位置に関係なく前記ゴム栓10Cにおける挿通位置をその都度異なる位置に設定することができる。
【0396】
また、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bの周方向の回転停止位置を検出し、前記ゴム栓10Cにおいて同一円上の異なる位置を複数の挿通位置として設定することが考えられる。より具体的に、前記第2制御部500は、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに挿通する際に、前記注射器位置調整処理(
図18参照)と同様の処理を実行することにより、前記バイアル瓶10Bの姿勢を周方向の回転停止位置が特定可能な姿勢に調整する。
【0397】
例えば、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34を用いて、前記バイアル瓶10Bのバーコードから薬品情報が読み取られるまで前記バイアル瓶10Bを回転させる。そして、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bのバーコードが読み取られると、その時点で前記薬品読取部34の前記ローラー34aの駆動モーターを停止させて前記バイアル瓶10Bの回転を停止させる。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が容器位置調整手段の一例である。これにより、前記バイアル瓶10Bは、前記バーコードが読み取られる予め定められた姿勢で停止することになる。
【0398】
そのため、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bが停止する予め定められた姿勢に基づいて前記第2ロボットアーム22で保持されたときの前記バイアル瓶10Bの周方向の回転停止位置を特定可能である。そこで、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10Bの周方向の回転停止位置に基づいて前記挿通位置各々を設定することが考えられる。なお、前記第2制御部500が、前記容器位置調整処理(
図19参照)と同様に、前記バイアル瓶10Bのバーコードが読み取られた後、予め定められた特定回転量だけ回転させて停止させることにより予め定められた姿勢で前記バイアル瓶10Bを停止させることも考えられる。
【0399】
図49(B)に示す例では、前記第2制御500が、1回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される際に、前記ゴム栓10Cの位置P11を挿通位置として設定する。その後、前記第2制御500は、2回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される際には、前記ゴム栓10Cの前記位置P11から前記ゴム栓10Cの外周円と同心円Q1の円周方向に離間する位置P12を挿通位置として設定する。さらに、前記第2制御500は、3回目に前記注射器11の注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿通される場合には、前記位置P2から更に前記同心円Q1の円周方向に離間する位置P3を挿通位置として設定する。これにより、前記第2制御部500は、前記ゴム栓10Cにおける挿通位置をその都度異なる位置に設定することができる。
【0400】
このように、本実施形態に係る前記混注装置1Aでは、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに前記注射器11の注射針11cが複数回挿通される場合でも、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cにおいて所定量離間する挿通位置に挿通させることが可能である。従って、前記混注装置1Aでは、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cにおける同一箇所又は近傍箇所に挿通される場合に比べてコアリングの発生が抑制され、前記バイアル瓶10Bからの液漏れが抑制される。
【0401】
また、前記第2制御部500が、前記薬品読取部34により前記バイアル瓶10Bのバーコードが読み取られてから前記薬品読取部34の前記ローラー34aの駆動モーターを停止させるまでの時間を、前記ゴム栓10Cに前記注射針11cを挿通する度に変更し、前記ゴム栓10Cに前記注射針11cを挿通する度に前記バイアル瓶10Bの回転停止位置を変化させることが考えられる。このような構成によっても、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに前記注射器11の注射針11cが複数回挿通される場合に、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cにおいて所定量離間する挿通位置に挿通させることが可能である。
【0402】
[第6の実施形態]
前記混注装置1Aでは、前記トレイ搬送終端部110a(
図9参照)において、前記バッグ昇降部113により、前記輸液バッグ12の混注口が前記混注連通口37に位置するように前記輸液バッグ保持部103が移動される。このとき、前記バッグ昇降部113が、前記輸液バッグ保持部103を前記バッグ昇降部113によって上方向に移動可能であると共に、前記混注連通口37に向けて水平方向にも移動可能な構成が考えられる。もちろん、前記輸液バッグ保持部103をスライド移動させることが可能な機構が前記バッグ昇降部113とは別に設けられることも考えられる。
【0403】
ところで、前記輸液バッグ保持部103では、前記輸液バッグ12の混注口が前記チャック部140(
図5参照)によって固定される。しかしながら、前記輸液バッグ12が前記チャック部140で正常な位置に固定されないおそれもある。この場合には、例えば前記輸液バッグ12が他の構成要素に干渉するおそれ、又は前記注射器11による前記輸液バッグ12への輸液の注入が正常に行われないおそれがある。そこで、前記混注装置1Aは、前記輸液バッグ保持部103における前記輸液バッグ12の固定位置が正常であるか否かを判断するための構成を備えることが考えられる。以下、このような構成の一例について説明する。
【0404】
具体的に、本実施形態に係る前記混注装置1Aは、前記輸液バッグ保持部103が移動する際に、前記輸液バッグ保持部103で保持された前記輸液バッグ12の混注口が予め定められた位置に到達したことを検出するための光学式センサなどの混注口検知手段を備える。また、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ保持部103の移動開始から前記混注口検知手段により前記輸液バッグ12の混注口が検出されるまでの所要時間が予め設定された許容範囲内であるか否かを判断する。そして、前記第2制御部500は、前記所要時間が前記許容範囲内でないと判断した場合に前記輸液バッグ12が前記チャック部140で正常な位置に固定されていないと判断し、前記輸液バッグ保持部103の移動を停止させる。
【0405】
より詳細に、前記混注装置1Aでは、前記データ記憶部404に記憶されている前記薬品マスターの輸液情報に、前記輸液バッグ12ごとに対応してする前記許容範囲が記憶されている。前記許容範囲は、前記輸液バッグ12が前記輸液バッグ保持部103に正常に固定されている場合に、前記輸液バッグ保持部103の移動開始から前記混注口検知手段により前記輸液バッグ12の混注口が検出されるまでの所要時間として予め設定されている。そして、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12の種別に対応する前記許容範囲を前記輸液情報から読み出し、前記所要時間が前記許容範囲内であるか否かによって前記輸液バッグ12が前記輸液バッグ保持部103に正常に固定されているか否かを判断する。これにより、前記混注装置1Aでは、例えば前記輸液バッグ12の他の構成要素への干渉のおそれが抑制され、前記注射器11による前記輸液バッグ12への輸液の注入を正常に行うことができる。
【0406】
[第7の実施形態]
本実施形態では、前記混注装置1Aにおいて、前記第2制御部500によって前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が制御されることにより実行される混注動作の他の例について説明する。ここに、
図50及び
図51は、前記混注動作のフローを説明するための図であり、左側が前記第1ロボットアーム21の動作、右側が第2ロボットアーム22の動作を示す。また、
図50及び
図51では、時間経過に伴って下方向に処理が進行する。
【0407】
特に、ここでは2本の前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2に同一種類の粉薬が収容されており、その2本の前記バイアル瓶10B1及び前記バイアル瓶10B2の粉薬を輸液で溶解してから前記輸液バッグ12に注入する際の混注動作について説明する。また、前記バイアル瓶10B1については全量を採取する全量採取が行われ、前記バイアル瓶10B2については一部を採取する端数採取が行われるものとする。
【0408】
ところで、前記混注装置1Aでは、前記シリンジ11aと前記注射針11cとが個別に前記トレイ101にセットされており、前記混注動作中に、前記注射針着脱装置43を用いて前記シリンジ11aに前記注射針11cが装着されることが考えられる。なお、前記注射針着脱装置43は、前記注射器11の注射針11cのキャップ11eを取り外すためにも用いられ、前記注射器11から取り外された前記キャップ11eを保持可能である。なお、前記注射針着脱装置43がキャップ着脱手段の一例である。
【0409】
一方、前記混注装置1A内で前記シリンジ11aに前記注射針11cが装着される場合には、前記シリンジ11a及び前記注射針11cの接合部が前記混注装置1A内に装填される前に汚染するおそれがある。例えば、接合前の前記シリンジ11a及び前記注射針11cが薬剤師等により前記トレイ101にセットされる際に、前記シリンジ11aの接合部又は前記注射針11cの接合部が前記トレイ101などに接触することによって前記接合部に塵埃などが付着するおそれがある。また、前記混注装置1A内で前記シリンジ11a及び前記注射針11cが接合される場合には、前記混注動作中に前記注射針11cを前記シリンジ11aに装着するための作業時間も必要になる。そのため、前記シリンジ11aに前記注射針11cが予め装着された状態で前記注射器11が前記トレイ101にセットされることも考えられる。これにより、前記シリンジ11a及び前記注射針11cの接合部の汚染が防止され、前記混注動作中に前記注射針11cを前記シリンジ11aに装着するための作業も必要ない。本実施形態では、前記注射針11cが前記シリンジ11aに装着された状態で前記注射器11がセットされた前記トレイ101が前記混注装置1Aに装填される場合の混注動作について説明する。
【0410】
<ステップS6001~S6002、S7001>
まず、前記第1ロボットアーム21は、前記トレイ101から前記注射器11を取り出す(S6001)。そして、前記第1ロボットアーム21は、前記注射器11を前記第2ロボットアーム22に渡し(S6002)、前記第2ロボットアーム22は、前記第1ロボットアーム21から前記注射器11を受け取る(S7001)。
【0411】
<ステップS7002>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11の前記プランジャ11bの位置合わせを行うと共に、前記プランジャ11bを前記プランジャ保持部262の把持爪262aによって把持する(S7002)。具体的に、前記トレイ101にセットされている前記注射器11では、前記プランジャ11bが完全に押し込まれていないことも考えられる。例えば、前記注射器11では、前記プランジャ11bの先端のゴムが前記シリンジ11aの先端に圧接されていると、前記プランジャ11bのゴムが劣化するおそれがある。そのため、前記プランジャ11bのゴムの劣化を避けるべく、使用開始前は前記プランジャ11bが前記シリンジ11aに最後まで押し込まれていない状態であることが考えられる。
【0412】
そこで、前記混注装置1Aでは、前記ステップS7002において、前記第2ロボットアーム22が、前記プランジャ11bを前記シリンジ11aの先端側に最後まで押し込むための動作を実行する。具体的には、前記第2ロボットアーム22が前記注射器保持部261の前記把持爪261aを用いて前記注射器11の前記シリンジ11aを保持した状態で、前記プランジャ保持部262の前記移動部263を用いて前記プランジャ11bの位置調整を行うことが考えられる。これにより、前記第2ロボットアーム22が本来的に行う前記注射器11のシリンジ11aを保持する動作を活かすことができ、隙間解消の動作時間の短縮が図られる。
【0413】
このとき、前記隙間の解消動作は、前記把持爪262aによって前記プランジャ11bの鍔部11dが把持された状態で行われることが考えられる。しかしながら、前記混注装置1Aにおいて、一対の前記把持爪262aは、
図52(A)に示すように、前記把持爪262aと前記把持爪262bとの間に形成されている凹部で前記プランジャ11bの鍔部11dを挟持する。そのため、前記プランジャ11bと前記シリンジ11aとの位置関係が予め定められた位置関係になければ、前記プランジャ11bの鍔部11dが前記凹部に嵌合せず、前記把持爪262aで前記プランジャ11bの鍔部11dを把持することができないおそれがある。
【0414】
そこで、前記隙間の解消動作は、
図52(B)に示すように、一対の前記把持爪262aを閉じた状態で、一対の前記把持爪262aを前記プランジャ11bの鍔部11dに押し当て、前記プランジャ11bを前記シリンジ11aに押し込むことによって行われることが考えられる。なお、前記第2制御部500は、例えば前記移動部263を駆動するモーターに生じるトルクが所定の値となった場合に、前記注射器11の前記プランジャ11bが前記シリンジ11aに完全に押し込まれたと判断することができる。
【0415】
これにより、前記プランジャ11bの初期位置が、一対の前記把持爪262aが前記プランジャ11bの鍔部11dを把持可能な位置からずれている場合であっても、前記隙間を解消して、
図52(A)に示すように、一対の前記把持爪262aによって前記プランジャ11bの鍔部11dを掴むことが可能になる。また、前記隙間に起因して輸液又は液薬を吸引する開始点位置(原点位置)がずれることが防止され、正確な吸引動作を実行することが可能になる。
【0416】
<ステップS7003>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11の前記注射針11cに装着されているキャップ11eの位置合わせ工程を実行する(S7003)。ここで、
図53及び
図54を参照しつつ、前記注射針11cのキャップ11eの位置合わせ工程について説明する。
【0417】
前述したように、前記混注装置1Aでは、前記トレイ101が装填される前に、前記シリンジ11aに前記注射針11cが装着されて前記注射器11が組み立てられている。このとき、
図52(A)に示すように、前記注射針11cでは、前記注射針11cの針基11fにキャップ11eが装着されており、前記注射針11cは、前記キャップ11eと一体的に回転可能である。なお、前記キャップ11eは、前記針基11fの外周面に嵌合されることによって前記注射針11cに装着されており、例えば前記キャップ11eと前記針基11fとの接触箇所は3箇所又は4箇所である。そして、前記注射針11cは、前記キャップ11eが回されて前記針基11fが回転することにより、前記針基11fが前記シリンジ11aの先端に螺合される。
【0418】
しかしながら、前記注射針11cが前記シリンジ11aに装着された状態で、前記キャップ11eが前記シリンジ11aの中心に対して傾斜し、前記キャップ11eの先端の中心位置が前記シリンジ11aの中心からずれているおそれがある。一方、前記混注装置1Aでは、前記第2制御部500が、前記シリンジ11aを把持する前記把持爪261aの中心と前記注射針着脱装置43の開口中心とを一致させた状態で前記キャップ11eを前記注射針着脱装置43の開口に挿入させる。そのため、前記キャップ11eの先端の中心位置が前記シリンジ11aの中心からずれている状態で、前記キャップ11eが前記注射針着脱装置43に挿入されると、前記キャップ11eが前記注射針着脱装置43の開口縁部に接触するおそれがある。これに対し、前記混注装置1Aでは、下記の構成及び動作により前記キャップ11eの位置合わせ工程が実行される。
【0419】
まず、前記混注装置1Aでは、
図53及び
図54に示すように、前記キャップ11eの位置合わせ工程に用いられるキャップ補正部431が前記注射針着脱装置43に並設されている。
図54(A)に示すように、前記キャップ補正部431は、開口部4311、基準部4312、及びテーパー部4313を有し、中心P5を軸とする有底円筒状の部材である。
【0420】
前記開口部4311には、前記注射器11の前記キャップ11eの外径よりも大きい径の円形の開口が形成されている。前記基準部4312には、前記キャップ11eの位置合わせの基準として用いられる円柱状の空間が形成されている。なお、前記基準部4312は、前記キャップ11eの外径と同じ内径又は前記キャップ11eの外径より若干大きい内径を有する。前記テーパー部4313は、前記基準部4312から前記開口部4311に向けて徐々に拡開するすり鉢状に形成されている。
【0421】
そして、前記混注装置1Aでは、
図54(A)に示すように、前記第2制御部500が、前記把持爪261a及び前記把持爪262aの中心P4と前記キャップ補正部431の中心P5とが一致するように前記第2ロボットアーム22の位置を調整する。そして、
図54(B)に示すように、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射器11の前記キャップ11eを前記キャップ補正部431に挿入させる。例えば、前記第2制御部500は、前記キャップ11eの先端が前記基準部4312に挿入されるまでの移動量として予め定められた移動量だけ前記第2ロボットアーム22を移動させる。なお、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を駆動するモーターに生じるトルクが所定の値となった場合に、前記キャップ11eの先端が前記基準部4312に挿入されたと判断することも考えられる。
【0422】
また、前記第2制御部500は、前記キャップ11eが前記キャップ補正部431に挿入された後、前記キャップ11eの前記キャップ補正部431への挿入途中、又は前記キャップ11eが前記キャップ補正部431に挿入される前に、前記把持爪261aによる前記シリンジ11aの把持力を緩めて前記シリンジ11aに自由度を与える。なお、前記把持爪262bによる前記プランジャ11bの鍔部11dの把持状態は維持されるため、前記シリンジ11aが落下することはない。また、前記シリンジ11aの脱落が防止可能な範囲で前記把持爪261a及び前記把持爪262aによる把持力が共に緩められることも考えられる。
【0423】
ここで、前記キャップ11eの先端の中心位置が前記中心P4及び前記中心P5と一致している場合には、前記キャップ11eが前記テーパー部4313に触れることなく前記基準部4312に挿入される。一方、前記注射針11c、及び前記シリンジ11aの装着状態のずれなどによって前記キャップ11eの先端の中心位置が前記中心P4及び前記中心P5と一致していない場合には、前記キャップ11eの先端が前記テーパー部4313に接触しながら前記基準部4312まで挿入されることになる。従って、前記キャップ11e、前記注射針11c、及び前記シリンジ11aの装着状態のずれなどが矯正され、前記キャップ11eの先端の中心位置が前記中心P4及び前記中心P5と一致することになる。
【0424】
そして、前記第2制御部500は、前記キャップ11eが前記キャップ補正部431に挿入され、前記キャップ11e、前記注射針11c、及び前記シリンジ11aの装着状態のずれなどが矯正された状態で前記把持爪261aにより前記シリンジ11aを再度把持させる。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して前記キャップ11eを前記キャップ補正部431から離脱させる。
【0425】
<ステップS7004~S7005>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記キャップ11eを前記注射針着脱装置43に挿入して前記注射器11から前記キャップ11eを取り外すと共に(S7004)、前記注射器11を持ち直す(S7005)。
【0426】
ここで、前記混注装置1Aにおいて、前記注射針着脱装置43は、
図55(A)に示すように、前記キャップ11eが挿通される円形状の開口が形成された開口部432と、前記キャップ11eの先端が押し当てられる円形状の凹部を有する押し当て部433と、前記キャップ11eを把持可能な一対の把持部434とを備える。前記注射針着脱装置43では、前記開口部432の開口の中心及び前記押し当て部433の凹部の中心が中心P6上に位置する。なお、前記押し当て部433及び一対の前記把持部434は、不図示の回転機構により前記中心P6を軸に回転可能に支持されている。
【0427】
そして、前記混注装置1Aでは、
図55(A)に示すように、前記第2制御部500が、前記把持爪261a及び前記把持爪262aの中心P4と前記注射針着脱装置43の中心P6とが一致するように前記第2ロボットアーム22の位置を調整する。そして、
図55(B)に示すように、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射器11の前記キャップ11eを前記注射針着脱装置43に挿入させる。例えば、前記第2制御部500は、前記キャップ11eの先端が前記押し当て部433に挿入されるまでの移動量として予め定められた移動量だけ前記第2ロボットアーム22を移動させる。なお、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を駆動するモーターに生じるトルクが所定の値となった場合に、前記キャップ11eの先端が前記押し当て部433に挿入されたと判断することも考えられる。
【0428】
ここで、前記混注動作では、前記ステップS7003において、前記注射器11の前記キャップ11eの位置合わせが行われているため、前記キャップ11eの先端の中心位置が前記中心P4と一致している。従って、前記キャップ11eの先端は、前記開口部432の開口縁部に接触することなく前記押し当て部433に正常に挿入される。そして、前記第2制御部500は、一対の前記把持部434を駆動させて前記キャップ11eを把持させる。このとき、前記第2制御部500は、前記把持爪261aの把持力を緩めて前記シリンジ11aに自由度を与えた後、前記把持爪261aで前記シリンジ11aを再度把持させることにより前記注射器11を持ち直す。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22によって前記注射器11を前記注射針着脱装置43から離間させることにより、前記シリンジ11aから前記キャップ11eを取り外す。その後、前記注射針着脱装置43では、前記把持部434により前記キャップ11eが継続して保持される。
【0429】
なお、本実施形態では、前記混注装置1Aにおいて、前記注射針着脱装置43と前記キャップ補正部431とが個別に設けられる場合について説明するが、前記注射針着脱装置43が前記キャップ補正部431を兼ねる構成も他の実施形態として考えられる。具体的には、前記注射針着脱装置43の前記開口部432の開口縁部に前記テーパー部4313と同様のテーパー部が形成されており、前記開口部432に挿通される前記キャップ11eが前記テーパー部によって前記押し当て部433に導かれる構成が考えられる。これにより、前記混注動作の所要時間が短縮される。
【0430】
ところで、前記キャップ11eが前記注射針着脱装置43に挿入され、前記キャップ11eの先端が前記押し当て部433に挿入されている場合であっても、前記キャップ11eの後端の中心P7が、前記注射針着脱装置43の中心P6と一致していないことも考えられる。そこで、前記ステップS7004及びS7005が実行される際に、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21を用いて、前記キャップ11eの後端の中心P7を前記注射針着脱装置43の中心P6(
図55(A)参照)に一致させる位置合わせを実行することが考えられる。
【0431】
具体的に、
図56(A)に示すように、前記キャップ11eが前記押し当て部433に挿入された後、前記第2制御部500は、前記把持爪261aによる前記シリンジ11aの把持力を緩めて前記シリンジ11aに自由度を与える。なお、前記把持爪262bによる前記プランジャ11bの鍔部11dの把持状態は維持されるため、前記シリンジ11aが落下することはない。また、前記シリンジ11aの脱落が防止可能な範囲で前記把持爪261a及び前記把持爪262aによる把持力が共に緩められることも考えられる。
【0432】
そして、
図56(B)に示すように、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21の前記把持爪25aを用いて、前記注射針着脱装置43の前記開口部432から突出している前記キャップ11eの長手方向の後端部を把持する。このとき、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21の把持爪25aの中心を前記注射針着脱装置43の中心P6と一致させる。これにより、前記注射針着脱43の前記押し当て部433で支持された前記キャップ11eの後端の中心P7が前記注射針着脱装置43の中心P6に合わせられる。
【0433】
次に、前記第2制御部500は、
図56(C)に示すように、前記注射針着脱装置43の前記把持部434によって前記キャップ11eの長手方向の中央部を把持する。そして、前記第2制御部500は、
図56(D)に示すように、前記第2ロボットアーム22の把持爪261aにより前記シリンジ11aを再度把持させる。なお、この2つの手順は同時又は逆順に行われてもよい。その後、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21の把持爪25aによる前記キャップ11eの把持を解除すると共に、前記第2ロボットアーム22を移動させて前記注射器11を前記注射針着脱装置43から離間させて前記キャップ11eを前記注射器11から取り外す。
【0434】
このように、前記キャップ11eの後端の中心P7と前記注射針着脱装置43の中心P6とが一致することにより、その後、前記第2制御部500は、前記シリンジ11eの注射針11cを前記キャップ11eに再度挿入させる際に、前記注射針11cを前記キャップ11eに正しく挿入させることが可能である。具体的に、前記第2制御部500は、前記針曲り検知部36による検知結果に従って認識可能な前記注射針11cの先端が前記キャップ11eの中心P7に位置するように前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射針11cを前記キャップ11eに挿入する。これにより、例えば前記注射針11cが前記キャップ11eの開口縁部に接触することが防止される。
【0435】
なお、前記ステップS7002~S7005の処理は、前記注射器11ごとに行われることが考えられ、例えば異なる種類の粉薬が収容された前記バイアル瓶10Bから薬液が採取される場合には、前記バイアル瓶10Bごとについての混注動作時に実行される。また、前記バイアル瓶10B内に収容されている薬品が液体である場合にも同様に前記ステップS7002~S7005の処理が実行される。その他、ここで説明する混注動作における各種の処理工程は、前記バイアル瓶10B内に収容されている薬品が液体である場合の混注動作でも必要に応じて実行可能である。
【0436】
<ステップS6003~S6005>
一方、前記第1ロボットアーム21は、前記トレイ101から1本目の前記バイアル瓶10B1を取り出し(S6003)、前記バイアル瓶10B1を前記薬品読取部34にセットする(S6004)。これにより、前記薬品読取部34で前記バイアル瓶10B1の薬品の種類が読み取られる。その後、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B1を前記載置棚33に載置させる(S6005)。
【0437】
<ステップS6006~S6008>
続いて、前記第1ロボットアーム21は、前記トレイ101から2本目の前記バイアル瓶10B2を取り出し(S6006)、前記バイアル瓶10B2を前記薬品読取部34にセットする(S6007)。これにより、前記薬品読取部34で前記バイアル瓶10B2の薬品の種類が読み取られる。その後、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記秤量計39にセットする(S6008)。これにより、前記バイアル瓶10B2の重量が前記秤量計39で秤量される。なお、前記秤量計39による秤量が行われるとき、その後の前記第1ロボットアーム21の動作は、前記秤量計39の秤量値が安定し、その秤量値が予め定められた値の範囲内であることが確認された後に進行し、以下同様である。もちろん、前記秤量計39による秤量中に、前記秤量計39による秤量対象に関係なく前記第1ロボットアーム21で実行可能な動作がある場合には、その動作が行われてもよい。
【0438】
<ステップS7006~S7008>
また、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させて(S7006)、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させた後、前記注射器11を用いて前記輸液バッグ12から必要量の輸液を採取する(S7007)。このとき、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液が吸引される際には、前記注射器11の前記注射針11cの先端が水平より上向きになり、前記輸液バッグ12の注入口が水平より下向きになるように姿勢が制御される。一方、前記輸液バッグ12から必要量の輸液が採取された後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射針11cの先端を前記輸液バッグ12内の空気層に移動させ、所定量の空気を前記注射器11によって吸引してから前記注射針11cを前記輸液バッグ12から引き抜く。例えば、前記第2制御部500が、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ12の混注口が水平より上向きになるように前記輸液バッグ保持部103を傾斜させると共に、前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射器11の前記注射針11cの先端を水平より下向きになるように前記輸液バッグ12及び前記注射器11の姿勢を制御する。これにより、前記注射針11cの先端を前記輸液バッグ12内の空気層に位置させることが可能である。そして、この状態で前記プランジャ11bが引かれて前記注射器11の注射針11c内の輸液が前記シリンジ11a内に引き込まれると、前記注射針11c内が気体層になるため、例えば前記注射針11cが前記輸液バッグ12から引き抜かれる際における前記注射針11cからの輸液の滴下が防止される。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記針曲り検知部36に再度移動させて(S7008)、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる。
【0439】
<ステップS7009~S7010>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記シリンジ11aの目盛りを前記ステップS7007で採取した前記必要量に合わせるための動作を行う(S7009)。具体的に、前記第2ロボットアーム22は、前記シリンジ11aの前記注射針11cの先端を鉛直上方向に向けた状態で所定量の空気を吸引した後、一旦前記注射針11cの先端を鉛直下方向に向けて前記シリンジ11a内の気泡を1つに纏める。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記シリンジ11aの前記注射針11cを前記注射針着脱装置43で保持されている前記キャップ11eに挿入し、その状態で前記プランジャ11bを所定量だけ押し込んで前記シリンジ11a内の空気を排出する。これにより、前記シリンジ11aでは、前記プランジャ11bのゴムの先端が示す目盛りの位置が前記前記ステップS7007で採取された前記必要量に合わせられる。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲に移動させる(S7010)。このとき、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42によって前記注射器11を撮影させる。このように、前記ステップS7009では、前記輸液バッグ12から前記注射針11cが抜かれる際に前記注射針11cからの輸液の滴下を防止する目的で前記シリンジ11a内に吸引されていた空気が排出される。従って、前記注射針11cが前記輸液バッグ12から抜かれる際には輸液の滴下を防止することができ、且つ、前記注射器11が撮影される際には前記プランジャ11bのゴムの先端が示す目盛りの位置を輸液の必要量に相当する目盛りに一致させた状態を画像で記録することができる。
【0440】
<ステップS6009、S7011>
その後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10B2に前記注射器11の輸液を注入する注入工程を実行する(S6009、S7011)。なお、前記注入工程では、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10B2の開口部を上方に向けると共に前記注射器11の先端を下方に向ける。このとき、前記第2制御部500は、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10B2のゴム栓10Cに穿刺する。続いて、前記第2制御部500は、前記保持部26を制御して前記注射器11により前記バイアル瓶10B2から空気を吸引する第1置換工程と前記注射器11内の輸液を前記バイアル瓶10B2に注入する第2置換工程とを交互に実行させる。ここに、前記注入工程を実行するための処理を実行するときの前記第2制御部500が第6制御手段の一例である。
【0441】
<ステップS6010~S6011>
ところで、前記バイアル瓶10B2内に輸液が注入された後、しばらく放置されると前記バイアル瓶10B2内の粉薬が凝固する所謂スタッキング現象が生じ、その後の攪拌工程が行われた場合でも粉薬が溶解しにくくなることがある。そのため、前記混注動作では、前記第1ロボットアーム21が、前記バイアル瓶10B2内への輸液注入後に、前記バイアル瓶10B2を揺動させる動作を実行する(S6010)。例えば、前記第1ロボットアーム21は、前記第1ロボットアーム21が有する所定の回転軸の軸回りに前記バイアル瓶10B2を所定角度の範囲で回動させることが考えられる。これにより、前記バイアル瓶10B2への輸液注入直後の粉薬の凝固が抑制される。なお、前記バイアル瓶10B2の揺動動作は、前記バイアル瓶10B2内の粉薬の輸液への溶解が促されればその態様はこれに限らない。
【0442】
その後、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記秤量計39にセットする(S6011)。このとき、前記バイアル瓶10B2の重量が前記秤量計39によって秤量される。そして、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記秤量計39から取り出して前記攪拌装置32にセットする(S6012)。これにより、前記攪拌装置32による前記バイアル瓶10B2の攪拌が開始される。
【0443】
また、前記第1ロボットアーム21が、前記ステップS6010における揺動動作を前記ステップS6011及び前記ステップS6012のいずれか一方又は両方の動作と並行して実行することが考えられる。即ち、前記第1ロボットアーム21は、前記ステップS7010における前記バイアル瓶10B2の揺動動作を、前記ステップS7011における前記バイアル瓶10B2の前記秤量計39への移動中、又は前記ステップS7012における前記バイアル瓶10B2の前記攪拌装置32への移動中などに行うことが考えられる。これにより、前記混注動作の所要時間を遅延させることなく前記バイアル瓶10B2内の薬液を攪拌することが可能である。
【0444】
さらに、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品の種類に応じて、前記ステップS7010における揺動動作の実行の有無を切り替えることも考えられる。なお、前記薬品の種類と前記揺動動作の実行の有無との関係は前記薬品マスターなどに予め登録されていることが考えられる。具体的に、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品が泡立ちやすい薬品である場合に、前記揺動動作を実行しないこと、又は前記揺動動作を緩やかに行うことが考えられる。また、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品が、輸液を徐々に浸透させる必要がある薬品である場合にも、前記揺動動作を実行しないこと、又は前記揺動動作を緩やかに行うことが考えられる。
【0445】
<ステップS6013~S6014>
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記載置棚33から前記バイアル瓶10B1を取り出し(S6013)、前記バイアル瓶10B1を前記秤量計39にセットする(S6014)。このとき、前記バイアル瓶10B1の重量が前記秤量計39によって秤量される。
【0446】
<ステップS7012~S7013>
また、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記針曲り検知部36に再度移動させて(S7012)、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記シリンジ11aのエアー抜き動作を行う(S7013)。前記エアー抜き動作は、前記ステップS6009及び前記ステップS7011における前記第1置換工程で前記バイアル瓶10B2から吸引されて前記シリンジ11a内に残存している空気を排出するための動作である。なお、前記シリンジ11aのエアー抜き動作が、前記輸液バッグ12から輸液を採取する際に前記輸液バッグ12内で行われることも考えられるが、前記輸液バッグ12内に空気が排出されると、前記輸液バッグ12内が陽圧になることがある。そのため、前記混注装置1Aでは、前記ステップS7013において前記シリンジ11aのエアー抜き動作が行われる。
【0447】
具体的に、前記エアー抜き動作において、前記第2ロボットアーム22は、まず前記シリンジ11aの前記注射針11cを前記注射針着脱装置43で保持されている前記キャップ11eに挿入する。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記保持部26により前記プランジャ11bを所定量だけ引いて、前記注射針11c内などに残存しているおそれのある薬液を前記シリンジ11a内に引き込む。このとき、前記注射器11cの針先に薬液の膜が形成されている場合にもその薬液が前記シリンジ11a内に引き込まれる。続いて、前記第2ロボットアーム22は、前記保持部26により前記プランジャ11bを押し込んで、前記シリンジ11a内の空気を排出する。ここで、前記第2ロボットアーム22による前記プランジャ11bの押し込み量は、前記ステップS6009及び前記ステップS7011における前記第1置換工程で前記バイアル瓶10B2から吸引されて前記シリンジ11a内に残存している空気と、前記プランジャ11bの押し込み前に引かれた前記所定量の空気とが排出される量である。これにより、前記シリンジ11aに薬液が残っている場合であってもその薬液が針先よりも手前で止まるため外部に飛散しない。なお、前記エアー抜き動作における前記プランジャ11bの押し込み量は前述した量に限らず、後述のステップS7014における輸液採取に問題がない範囲で前記シリンジ11a内に空気が残存する量であってもよい。
【0448】
また、前記エアー抜き動作は、前記注射針11cが前記キャップ11eに挿入された状態で実行されるため、仮に前記薬液が前記注射針11cから飛散するとしてもその飛散を前記キャップ11e内に収めることができる。即ち、前記混注装置1Aでは、前記注射針11cの取り扱い時の危険回避のために前記注射針11cに装着されている前記キャップ11eが、前記注射器11の前記シリンジ11aから不要な空気を抜くための前記エアー抜き動作における薬液の飛散防止にも兼用される。ここに、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記注射針着脱装置43で保持されている前記キャップ11eに前記注射器11の注射針11cを挿入すると共に、前記保持部26を制御して、前記注射器11内に存在する空気を排出させるための処理を実行するときの前記第2制御部500が第9制御手段の一例である。
【0449】
なお、ここでは、前記第2ロボットアーム22が第3駆動手段の一例であって、前記第2ロボットアーム22で前記注射器11が移動され、前記注射針11cが前記キャップ11eに挿入される場合を例に挙げて説明した。一方、前記混注装置1Aが、前記注射針着脱装置43を任意の位置に移動可能な着脱装置駆動部を第3駆動手段の一例として備える構成も考えられる。この場合、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22及び前記着脱装置駆動部のいずれか一方又は両方を制御して前記注射器11の注射針11cと前記キャップ11eとを相対的に移動させて前記注射針11cを前記キャップ11eに装着させることが考えられる。
【0450】
<ステップS7014~S7017>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記ステップS7007~S7008と同様に、前記注射器11を用いて前記輸液バッグ12から必要量の輸液を採取し(S7014)、前記注射器11を前記針曲り検知部36に再度移動させて前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる(S7015)。また、前記第2ロボットアーム22は、前記ステップS7009~S7010と同様に、前記注射器11の目盛りを合わせた後(S7016)、前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲に移動させる(S7017)。このとき、前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42によって前記注射器11を撮影させる。
【0451】
<ステップS6015、S7018>
その後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10B1に前記注射器11の輸液を注入する注入工程を実行する(S6015、S7018)。なお、前記注入工程では、前記ステップS6009、S7011と同様に、前記バイアル瓶10B1の開口部が上方に向けられると共に前記注射器11の先端が下方に向けられた後、前記バイアル瓶10B1からの空気の吸引と前記バイアル瓶10Bへの輸液の注入とが交互に実行される。
【0452】
<ステップS6016~S6018>
続いて、前記第1ロボットアーム21は、前記ステップS6010と同様に前記バイアル瓶10B1を揺動させて攪拌し(S6016)、前記バイアル瓶10B1を前記秤量計39にセットする(S6017)。その後、前記第1ロボットアーム21は、前記秤量計39から前記攪拌装置32に移動させる(S6018)。なお、この場合にも、前述したように、前記第1ロボットアーム21が、前記ステップS6016における揺動動作を前記ステップS6017及び前記ステップS6018のいずれか一方又は両方の動作と並行して実行することが考えられる。
【0453】
<ステップS6019~S6020>
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記攪拌装置32から取り出し(S6019)、前記バイアル瓶10B2内の薬液の攪拌状態を検査者に確認させるための攪拌確認動作を実行する(S6020)。
【0454】
具体的に、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を予め定められた姿勢で前記主扉301の近くまで持って行くことにより、検査者に前記バイアル瓶10B2内の薬液の攪拌状態を見せるための動作を行う。特に、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2の底面が傾斜した状態の前記バイアル瓶10B2の瓶底を、前記主扉301の外側から検査者が視認することができる姿勢で停止させる。これにより、検査者が前記バイアル瓶10B2内の攪拌状態を確認しやすくなる。なお、前記主扉301の外側から検査者が確認可能な前記バイアル瓶10B2の姿勢は、例えば
図24(A)又は
図24(B)と同様の状態である。また、前記バイアル瓶10B2の姿勢は、
図24(A)の状態を
図24(A)における右方向から見た状態が前記主扉301の外側から検査者が確認可能な姿勢であってもよい。
【0455】
また、このとき前記第2制御部500は、前記タッチパネルモニタ14に再攪拌操作キー、姿勢変動キー、及び確認キーなどを表示させる。前記再攪拌操作キーは、前記バイアル瓶10B2の追加の攪拌動作を実行させるための操作キーである。そして、前記第2制御部500は、前記再攪拌操作キーが操作された場合には、前記第1ロボットアーム21を用いて前記バイアル瓶10B2を前記攪拌装置32に再度セットし、前記攪拌装置32に前記バイアル瓶10B2の攪拌動作を予め設定された追加攪拌時間の間だけ実行させる。その後、前記第2制御部500は、再度前記ステップS6019~S6020を実行する。
【0456】
また、前記姿勢変動キーは、前記バイアル瓶10B2の姿勢を変動させるための操作キーである。そして、前記第2制御部500は、前記姿勢変動キーが操作された場合は、前記第1ロボットアーム21を用いて、検査者から見える前記バイアル瓶10B2の姿勢を予め定められた一又は複数の姿勢に変化させる。これにより、検査者が前記バイアル瓶10B2内の薬液の攪拌状態を異なる角度から視認することができる。例えば、前記姿勢変動キーの操作に応じて、前記第1ロボットアーム21によって前記バイアル瓶10B2が揺動されること、前記第1ロボットアーム21が有する所定の回転軸を中心に前記バイアル瓶10B2が回動されることが考えられる。
【0457】
また、前記確認キーは、前記バイアル瓶10B2内の薬液の攪拌状態に問題がないことを検査者が確認した場合に操作される操作キーである。そして、前記第2制御部500は、前記確認キーが操作された場合に、前記第1ロボットアーム21の動作を次の動作に移行させる。
【0458】
<ステップS6021>
その後、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記薬品読取部34にセットする(S6021)。これにより、前記薬品読取部34で前記バイアル瓶10B2の薬品のバーコードが読み取られて、前記バイアル瓶10B2の周方向の位置が検出又は調整される。ここで検出又は調整された前記バイアル瓶10B2の周方向の位置関係は、例えば前記バイアル瓶10B2への前記注射器11の注射針11cの穿刺位置の決定時、又は、後述の前記バイアル瓶10B2の写真撮影時の姿勢の決定時に用いられる。
【0459】
<ステップS7019~S7020>
一方、前記第2ロボットアーム22は、前記ステップS7012~S7013と同様に、前記注射器11を前記針曲り検知部36に再度移動させて、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させた後(S7019)、前記シリンジ11aのエアー抜き動作を行う(S7020)。
【0460】
<ステップS6022、S7021>
その後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10B2に収容されている薬液を吸引する吸引工程として、前記バイアル瓶10B2内の薬液のうち予め定められた所定量の薬液を採取する端数採取を実行する(S6022、S7022)。なお、前記吸引工程では、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10B2の開口部が上方に向けられると共に前記注射器11の先端が下方に向けられた状態で、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10B2に穿刺される。次に、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10B2の開口部が下方に向けられると共に前記注射器11の先端が上方に向けられる。そして、前記第2制御部500は、前記保持部26を制御して前記注射器11による前記バイアル瓶10B2からの薬液の吸引と前記注射器11から前記バイアル瓶10B2への空気の注入とを交互に実行させる。
【0461】
<ステップS6023、S7022>
そして、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記端数採取が終了すると、前記バイアル瓶10B2に前記注射器11の注射針11cが穿刺された状態のまま前記バイアル瓶10B2及び前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に移動させ(S6023、S7022)、前記バイアル瓶10B2及び前記注射器11の写真を撮影させる。なお、前記写真の撮影後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10B2から引き抜く。
【0462】
<ステップS6024>
そして、前記第2制御部500によって前記ゴミ蓋132aが開かれ、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B2を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する(S6024)。
【0463】
<ステップS6025~S6027>
続いて、前記第1ロボットアーム21は、前記ステップS6019~S6021と同様に、前記バイアル瓶10B1を前記攪拌装置32から取り出し(S6025)、前記バイアル瓶10B1の攪拌状態を確認するための攪拌確認動作を実行した後(S6026)、前記バイアル瓶10B1を前記薬品読取部34にセットする(S6027)。
【0464】
<ステップS7023~S7027>
一方、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記秤量計35にセットして前記秤量計35で前記注射器11の重量が秤量された後(S7023)、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させて(S7024)、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11内の薬液を前記輸液バッグ12内に注入する注入工程を実行する(S7025)。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記秤量計35に再度セットして前記秤量計35で前記注射器11の重量が秤量された後(S7026)、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させて前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる(S7027)。
【0465】
<ステップS6028、S7028>
次に、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10B1に収容されている薬液を吸引する吸引工程として、前記バイアル瓶10B1内の薬液を全量採取する全量採取を実行する(S6028、S7028)。なお、前記吸引工程では、前記ステップS6022、S7021と同様に、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が制御されて前記バイアル瓶10B1の開口部が下方に向けられると共に前記注射器11の先端が上方に向けられた後、前記バイアル瓶10B1からの薬液の吸引と前記バイアル瓶10B1への空気の注入とが交互に実行される。
【0466】
<ステップS6029、S7029>
そして、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記端数採取が終了すると、前記バイアル瓶10B1に前記注射器11の注射針11cが穿刺された状態のまま前記バイアル瓶10B1及び前記注射器11を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に移動させ(S6029、S7029)、前記バイアル瓶10B1及び前記注射器11の写真を撮影させる。なお、前記写真の撮影後、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10B1から引き抜く。
【0467】
<ステップS6030~S6031>
そして、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B1の瓶底を撮影するため、前記バイアル瓶10B1を前記注射器確認カメラ42の撮影範囲R1に移動させ、前記バイアル瓶10B1の瓶底の写真を撮影させる。そして、前記第2制御部500によって前記ゴミ蓋132aが開かれ、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10B1を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する(S6031)。
【0468】
<ステップS7030~S7034>
一方、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記秤量計35にセットして前記秤量計35で前記注射器11の重量が秤量された後(S7030)、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させて(S7031)、前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11内の薬液を前記輸液バッグ12内に注入する注入工程を実行する(S7032)。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記秤量計35に再度セットして前記秤量計35で前記注射器11の重量が秤量された後(S7033)、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させて前記注射器11の前記注射針11cの針曲り状態を検知させる(S7034)。
【0469】
<ステップS7035~S7036>
次に、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11の前記注射針11cに前記キャップ11eを装着させる(S7035)。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記第2制御部500によって前記ゴミ蓋132aが開かれ、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する(S7036)。
【0470】
以上説明したように、前記混注装置1Aでは、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22によって各種の動作が並列して実行されることにより、前記混注動作が効率的に実行され、前記混注動作が迅速に実行される。
【0471】
[第8の実施形態]
本実施形態では、前記混注装置1又は前記混注装置1Aにおける前記バイアル瓶10Bの攪拌動作の他の例について説明する。具体的に、前述の実施形態では、前記混注装置1又は前記混注装置1Aにおいて、前記攪拌装置32によって前記バイアル瓶10B内の薬品及び輸液が攪拌される場合について説明した。この場合、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bに穿刺されて前記バイアル瓶10Bに輸液が注入される注入工程が実行された後、前記バイアル瓶10B内の薬品及び輸液が攪拌され、前記注射器11の注射針11cが前記バイアル瓶10Bに再度穿刺されて前記バイアル瓶10Bから薬液が吸引される吸引工程が実行される。そのため、前記注入工程及び前記吸引工程で前記注射針11cが前記バイアル瓶10Bに穿刺される工程が個別に実行され、前記混注動作の所要時間が長くなる。
【0472】
これに対し、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて、前記バイアル瓶10B内の薬液を攪拌することが考えられる。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて、前記注射器11の注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺して前記輸液を前記バイアル瓶10Bに注入する注入工程を実行する。そして、前記第2制御部500は、前記注射針11cが前記バイアル瓶10Bに穿刺された状態のまま前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて前記バイアル瓶10Bを揺動させる攪拌工程を実行する。例えば、前記攪拌工程では、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の上下方向の直線運動、及び前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の所定の回動軸を中心とする回転運動などにより前記バイアル瓶10Bが揺動される。その後、前記第2制御部500は、そのままの状態で前記注射器11により前記バイアル瓶10Bの薬液を吸引する吸引工程を実行する。これにより、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺する回数が減少し、前記バイアル瓶10Bを前記攪拌装置32に移動させる手間も省略されるため、前記混注動作の所要時間を短縮することが可能である。
【0473】
また、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品の種類に応じて、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いる前記攪拌工程の実行の有無を切り替えることも考えられる。なお、前記薬品の種類と前記攪拌動作の実行の有無との関係は前記薬品マスターなどに予め登録されていることが考えられる。具体的には、前記第2制御部500が、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品が溶解しやすい薬品である場合に、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22による前記攪拌動作を実行させることが考えられる。一方、前記バイアル瓶10B2内に収容されている薬品が溶解しにくい薬品である場合には、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22による前記攪拌動作を実行させることなく、又は前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22による前記攪拌動作を実行させた後、前記前記攪拌装置32を用いた攪拌動作を実行させる。
【0474】
ところで、前記注射器11を支持する注射器支持部が固定されており、前記バイアル瓶10Bを支持する薬品支持部のみが移動可能な構成では、前記注射器支持部の回転中心を基準に前記薬品支持部を移動させることになり、その動作に必要な空間が大きくなる。これに対し、前記混注装置1又は前記混注装置1Aは、前記バイアル瓶10Bを移動させる前記第1ロボットアーム21及び前記注射器11を移動させる前記第2ロボットアーム22が共に任意に移動可能な多関節構造を有する。そのため、前記第2制御部500は、
図57に示すように、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて、前記保持部25及び前記保持部26の両端の距離H1の中心R20が回転中心となるように、前記保持部25及び前記保持部26の位置を移動させて前記バイアル瓶10Bを回動させることが可能である。
【0475】
例えば、
図57における左側の姿勢から右側の姿勢に変化する際、前記第2制御部500は、前記保持部25及び前記保持部26の両端の距離H1を一定に維持しつつ、前記保持部25を徐々に上方向に移動させると共に前記保持部26を徐々に下方向に移動させながら前記保持部25及び前記保持部26を前記中心R20を回転中心として回転させる。なお、
図57における右側の姿勢から左側の姿勢に変化する際にも、同じく前記第2制御部500が、前記保持部25及び前記保持部26の両端の距離H1を一定に維持しつつ、前記保持部25を徐々に下方向に移動させると共に前記保持部26を徐々に上方向に移動させながら前記保持部25及び前記保持部26を前記中心R20を回転中心として回転させる。これにより、前記バイアル瓶10Bを攪拌するために必要な動作空間を小さくすることができる。即ち、前記保持部25及び前記保持部26の両端の距離H1の中心R20を回転中心として回動が行われるため、例えば前記保持部25の本来の回転中心R21及び前記保持部26の本来の回転中心R22いずれ一方を基準に回動中心を定めて他方を移動させる場合に比べて動作空間が小さくなる。
【0476】
[第9の実施形態]
本実施形態では、前記混注装置1又は前記混注装置1Aにおいて実行され、前記注射器11を用いて前記バイアル瓶10Bに輸液を注入する注入工程の他の例について説明する。具体的に、前記混注装置1又は前記混注装置1Aでは、
図58(A)に示すように、前記バイアル瓶10Bの開口部が上方に向けられた状態で、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに前記注射針11cが穿刺された後、前記注射器11による前記バイアル瓶10Bへの輸液M1の注入が行われる。なお、前記バイアル瓶10B内の空気A1の初期の気圧は大気圧であるとする。
【0477】
ここで、前記注射器11から前記バイアル瓶10Bに輸液M1を注入する際には、前記バイアル瓶10B内が陽圧になって、前記バイアル瓶10Bから薬液が漏れやすくなる。そのため、前記注射器11から前記バイアル瓶10Bに輸液M1を注入する注入工程において、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して前記バイアル瓶10Bの開口部を上方に向けると共に前記注射器11の先端を下方に向けた後、前記注射器11により前記バイアル瓶10Bから空気A1を吸引する第1置換工程と前記注射器11内の輸液M1を前記バイアル瓶10Bに注入する第2置換工程とを交互に実行させることがある。ここに、前記注入工程を実行するための処理を実行するときの前記第2制御部500が第6制御手段の一例である。
【0478】
しかしながら、このように前記バイアル瓶10Bの空気A1と前記注射器11の輸液M1とを置換しながら行われる前記注入工程には時間がかかる。特に、前記注入工程の開始時に、
図58(A)に示すように、前記シリンジ11a内に輸液M1のみが存在し、前記シリンジ11a内において前記プランジャ11bと前記輸液M1との間に空気が存在しない場合には、前記プランジャ11bを引き始める際に必要な力Fs0は、大気圧P0と前記シリンジ11aの断面積S0との積になる。また、前記注入工程の開始時に、前記シリンジ11a内に存在する空気が少ない場合にも、前記シリンジ11a内に存在する空気が多い場合に比べて、前記プランジャ11bを引いてその空気を膨張させるために必要な力が大きくなる。具体的に、体積と圧力の積が一定であるというボイルの法則によれば、前記シリンジ11a内に空気が存在する場合、前記プランジャ11bが引かれて前記シリンジ11a内の空気が膨張してその体積が大きくなるほど、前記シリンジ11a内の気圧が低くなって大気圧との差が大きくなるため、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0が大きくなる。
【0479】
一方、前記混注装置1Aでは、
図8に示すように、前記把持爪261aによって前記注射器11の前記シリンジ11aが挟持されている。ここで、前記把持爪261aによる前記シリンジ11aの挟持方向は、前記移動部263による前記注射器11の前記プランジャ11bの操作方向(押し込み方向及び引き出し方向)に垂直である。即ち、前記シリンジ11aは、前記把持爪261aで挟持されることにより前記シリンジ11aと前記把持爪261aとの間の静止摩擦力によって前記プランジャ11bの操作方向の移動が規制された状態となる。このような構成では、例えば前記把持爪261aによって各種のサイズの前記シリンジ11aを把持することが可能であるが、前記プランジャ11bを引く力が大きくなれば、前記把持爪261aにより把持された前記シリンジ11aが前記プランジャ11bの引き方向に移動するおそれがある。
【0480】
そのため、前記注入工程では、前記プランジャ11bを引く力が前記保持部26による前記シリンジ11aの把持力を超えて前記シリンジ11aの位置がずれないように、前記第1置換工程において前記プランジャ11bを引く速度を遅くすることが考えられる。また、前記第1置換工程において前記プランジャ11bの引き始めの加速度を小さくすること、又は前記プランジャ11bを引く量が少なくすることも考えられる。しかしながら、前記注入工程において、前記シリンジ11aの輸液M1と前記バイアル瓶10Bの空気A1とを置換する作業が繰り返し実行される場合に、前記プランジャ11bを引く速度が遅い場合、前記プランジャ11bの引き始めの加速度が小さい場合、又は前記プランジャ11bを引く量が少ない場合には、前記注入工程の所要時間が長くなる。
【0481】
これに対し、前記注入工程において前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0は、大気圧と前記シリンジ11a内の気圧との差に応じて変化する。例えば、前述したように、前記シリンジ11a内に輸液M1のみが存在し、空気が存在しない場合には、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0が最大値(P0×S0)になる。そして、前記シリンジ11a内の気圧が高いほど、大気圧との差が小さくなり、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0は小さくなる。なお、前記シリンジ11a内の空気の物質量が変化しない場合には、即ち前記シリンジ11aに外部から空気が流入しない場合には、前記シリンジ11a内の空気層の体積が増加して気圧が低くなるほど、大気圧との差が大きくなり、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0は大きくなる。この点、前記混注装置1Aでは、前記第1置換工程及び前記第2置換工程が繰り返し実行されることにより、前記シリンジ11a内には空気が徐々に流入することになる。そのため、前記プランジャ11bの引き始めに前記注射針11cから空気が流入しないと考えた場合には、前記第1置換工程の実行済回数が増加するほど前記プランジャ11bを一定量引いたときの空気の膨張率が小さくなって気圧の低下量も少なくなるため、前記プランジャ11bを引くために必要な力は減少する。
【0482】
そこで、前記注入工程では、前記第2制御部500が、前記注射器11により前記バイアル瓶10Bから空気A1を吸引する前記第1置換工程において前記保持部26の移動部263によって前記プランジャ11bを引く速度、前記プランジャ11bの引き始めの加速度、又は前記プランジャ11bを引く量の少なくとも1つを前記第1置換工程の実行済回数に応じて変化させることが考えられる。なお、前記プランジャ11bを引く速度、前記プランジャ11bの引き始めの加速度、及び前記プランジャ11bを引く量のうち複数の項目が同時に変更されることも考えられる。ここに、これらの処理を実行するときの前記第2制御部500が第7制御手段の一例である。
【0483】
例えば、前記移動部263の駆動手段としてステッピングモーターが用いられる構成では、前記第2制御部500が、前記ステッピングモーターに入力される駆動パルスを制御することによって、前記第1置換工程における前記プランジャ11bを引く速度、前記プランジャ11bの引き始めの加速度、又は前記プランジャ11bを引く量を変化させることが考えられる。また、前記移動部263を移動させる駆動手段としてDCモーターが用いられる構成では、前記第2制御部500が、前記DCモーターに入力される駆動電圧を制御することによって前記第1置換工程における前記プランジャ11bを引く速度、又は前記プランジャ11bの引き始めの加速度を変化させ、前記DCモーターの駆動時間を制御することによって前記プランジャ11bを引く量を変化させることが考えられる。なお、前記移動部263の加速度、速度、及び移動量などを変化させるための前記移動部263の駆動手段の制御手法はこれらに限らず、従来周知の各種技術を用いることが可能である。
【0484】
より具体的に、前記第2制御部500は、前記第1置換工程及び前記第2置換工程を交互に繰り返し実行する際に、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って、前記プランジャ11bを引く力が前記把持爪261aによる前記シリンジ11aの把持力を超えて作用しないように、前記プランジャ11bの引き始めの加速度を段階的に大きくすることが考えられる。これにより、前記シリンジ11aの位置ずれを防止しつつ、前記注入工程の所要時間を短縮することができ、前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0485】
同様に、前記第2制御部500は、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って前記プランジャ11bを引く量を段階的に増加させることも考えられる。これにより、前記シリンジ11aの位置ずれを防止しつつ、1回の前記第1置換工程における吸引量を増加させることができるため、前記第1置換工程の繰り返し回数を減らすことができ、前記注入工程の所要時間及び前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0486】
同じく、前記第2制御部500は、前記第1置換工程の実行済回数が増加するに従って前記プランジャ11bを引く速度を段階的に速くすることも考えられる。例えば、前記第2制御部500が、前記プランジャ11bを引くときの目標速度を段階的に速くすることが考えられる。この場合にも、前記シリンジ11aの位置ずれを防止しつつ、前記注入工程の所要時間を短縮することができ、前記混注動作の所要時間を短縮することができる。
【0487】
例えば、前記注入工程において、前記第2制御部500は、
図58(A)に示すように、最初に前記プランジャ11bを引く際には、前記把持爪261aによる前記シリンジ11aの把持力(摩擦力)よりも大きな力が前記シリンジ11aに作用しないように、前記移動部263を制御して、予め設定された第1速度を目標速度として予め設定された第1加速度で前記プランジャ11bを引き始め、予め設定された第1吸引量だけ前記プランジャ11bを引く。そして、
図58(B)に示すように、前記バイアル瓶10Bから前記シリンジ11a内に空気A1が流入した後、前記第2制御部500は、前記プランジャ11bを所定量だけ押し込んで前記シリンジ11a内の輸液M1を前記バイアル瓶10Bに注入する。即ち、前記シリンジ11aと前記バイアル瓶10Bとの間で前記空気A1及び前記輸液M1が置換される。
【0488】
その後、
図58(C)に示すように、前記第2制御部500は、次に前記プランジャ11bを引く際には、前記移動部263を制御して、前記第1加速度よりも大きい予め設定された第2加速度で前記プランジャ11bを前記第1吸引量よりも多い予め設定された第2吸引量だけ引く。なお、このとき前記プランジャ11bを引く速度は、前記第1速度よりも速い第2速度であってもよい。その後、3回目以降の前記第1置換工程では、前記第2制御部500が、前記第2加速度と同じ加速度又は前記第2加速度よりも大きい加速度で前記プランジャ11bを引くことが考えられる。同じく、3回目以降の前記第1置換工程では、前記第2制御部500が、前記第2吸引量と同じ量又は前記第2吸引量よりも多い吸引量だけ前記プランジャ11bを引くことが考えられる。さらに、3回目以降の前記第1置換工程では、前記第2制御部500が、前記プランジャ11bを引く速度が前記第2速度と同じ速度又は前記第2速度よりも速い速度であることが考えられる。
【0489】
例えば、前記第2加速度、前記第2吸引量、又は前記第2速度は、例えば前記プランジャ11bを引くために必要になる力Fs0を算出する下記(1)式のような演算式を用いて、前記保持部26の前記移動部263によって前記プランジャ11bが引かれる力が前記保持部26の前記把持爪261aによって前記シリンジ11aが挟持される把持力によって生じる前記シリンジ11aの前記プランジャ11bの移動方向への静止摩擦力を超えて前記シリンジ11aの位置がずれない範囲で予め設定される。また、前記第2制御部500が、下記(1)式を用いて前記第2加速度、前記第2吸引量、又は前記第2速度をその都度算出することも考えられる。
【0490】
Fs0=P0(1-Vs0/Vs1)×S0 ・・・(1)
【0491】
ここに、前記(1)式は、前記シリンジ11a内の空気の気圧が大気圧P0である場合に、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0を表している。なお、Vs0は、前記プランジャ11bを引く前の前記シリンジ11a内の空気の体積、Vs1は、前記プランジャ11bを引いた後の前記シリンジ11a内の空気の体積である。即ち、前記シリンジ11a内の空気の膨張率は「Vs1/Vs0」となり、前記膨張率が大きくなるほど前記シリンジ11a内の気圧が低くなる。また、S0は、前記シリンジ11aの断面積であって前記シリンジ11aの規格によって既知である。例えば、前記プランジャ11bを引くことにより、前記シリンジ11a内の空気が膨張して体積が2倍になった場合、前記シリンジ11a内の気圧はP0×1/2となり、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0は、P0×1/2×S0になる。また、前記プランジャ11bを引くことにより、前記シリンジ11a内の空気が膨張して体積が3倍になった場合、前記シリンジ11a内の気圧はP0×1/3となり、前記プランジャ11bを引くために必要な力Fs0は、P0×2/3×S0になる。
【0492】
なお、ここでは説明の便宜上、前記プランジャ11bを引く前の前記シリンジ11a内の空気の気圧が大気圧P0であって、前記プランジャ11bを引くときに前記シリンジ11a内に空気が流入しない場合を想定して前記力Fs0を算出する場合を例に挙げて説明した。即ち、ここでは安全性を考慮して前記プランジャ11bを引くときに必要な最大の力が前記シリンジ11aを挟持する力を超えないように前記プランジャ11bの引き始めの加速度、前記プランジャ11bを引く速度、又は前記プランジャ11bを引く量などが設定される場合を例に挙げて説明した。一方、実際には、前記プランジャ1bが引かれる際には、前記バイアル瓶10Bから前記シリンジ11a内に空気が流入することになる。そのため、前記バイアル瓶10Bから前記シリンジ11a内に吸引される空気の気圧を考慮して、前記プランジャ11bを引くときに必要な力が前記シリンジ11aを挟持する力を超えないように前記プランジャ11bの引き始めの加速度、前記プランジャ11bを引く速度、又は前記プランジャ11bを引く量などが設定されてもよい。例えば、前記(1)式に基づいて算出される前記力Fs0に対して予め設定された1未満の係数を乗じて前記プランジャ11bを引くために必要な力が算出されることが考えられる。もちろん、前記第2制御部500が、前記バイアル瓶10B内の空気量などを考慮して厳密に前記プランジャ11bを引くために必要な力を算出し、その力の大きさに応じて、前記プランジャ11bの引き始めの加速度、前記プランジャ11bを引く速度、及び前記プランジャ11bを引く量などを設定することも考えられる。
【0493】
ところで、本実施形態では、前記第1置換工程の実行済回数が増加することにより前記シリンジ11a内の空気の膨張率が低くなると仮定し、前記第1置換工程の実行済回数に応じて前記プランジャ11bの引き始めの加速度、前記プランジャ11bを引く速度、及び前記プランジャ11bを引く量などを変化させる場合を例に挙げて説明いた。一方、前記第2制御部500が、前記第1置換工程において前記移動部263が前記プランジャ11bを引く速度、前記プランジャ11bの引き始めの加速度、又は前記プランジャ11bを引く量の少なくとも1つを、前記プランジャ11bを引くときの前記シリンジ11a内の空気の膨張率(前記プランジャ11bを引いた後の前記シリンジ11a内の空気の体積Vs1/前記プランジャ11bを引く前の前記シリンジ11a内の空気の体積Vs0)に応じて変化させることも考えられる。より具体的に、前記プランジャ11bを引くときの前記シリンジ11a内の空気の膨張率が低くなるに従って、前記第1置換工程において前記移動部263が前記プランジャ11bを引く速度を段階的に速くすること、前記プランジャ11bの引き始めの加速度を段階的に大きくすること、又は前記プランジャ11bを引く量を多くすることの少なくとも1つが実行されることが考えられる。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が第8制御手段の一例である。
【0494】
[第10の実施形態]
本実施形態では、
図59(A)~
図59(E)を参照しつつ、前記混注装置1又は前記混注装置1Aにおいて実行され、前記注射器11を用いて前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する吸引工程の他の例について説明する。なお、
図59(A)~
図59(E)では図示の簡略化のため、前記注射器11については前記注射針11cのみを示し、前記シリンジ11a及び前記プランジャ11bの図示を省略する。
【0495】
前記混注装置1又は前記混注装置1Aにおける前記吸引工程では、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10Bの開口部を上方に向けた状態で、前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cに前記注射針11cを穿刺する。そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して、前記バイアル瓶10Bの開口部を下方に向けると共に、前記注射器11の前記注射針11cの先端を上方に向けた後、前記保持部26を制御して前記注射器11により前記バイアル瓶10Bから薬液の吸引する吸引工程を実行させる。ここに、前記吸引工程を実行するための処理を実行するときの前記第2制御部500が第10制御手段の一例である。
【0496】
このとき、前記注射器11を用いて前記バイアル瓶10B内の薬液を全量採取する全量採取が行われる場合には、前記バイアル瓶10Bから残さず薬液を吸引する必要がある。そのため、前記注射針11cの前記ゴム栓10Cへの挿入量が少なく、前記注射針11cの先端が前記ゴム栓10Cにできるだけ近い位置になるように、前記注射針11cと前記ゴム栓10Cとの相対的な位置が制御される必要がある。
【0497】
しかしながら、前記バイアル瓶10Bは、例えば製造時に生じる個体誤差などにより大きさが異なるおそれがある。そのため、前記注射針11cと前記ゴム栓10Cとの相対的な位置を予め定められた位置関係になるように設定したとしても、前記注射針11cの前記ゴム栓10Cへの挿入量が変化するおそれがある。例えば、前記注射器11の前記注射針11cの先端の前記バイアル瓶10Bのゴム栓10Cへの挿入の深さが深ければ、前記注射針11cの先端が前記ゴム栓10Cから離れるため、前記バイアル瓶10B内の薬液を残さず吸引することができない。一方、前記注射針11cの先端が前記ゴム栓10Cに穿刺される際の深さが浅ければ、
図59(A)に示すように、前記ゴム栓10Cの撓みによって前記注射針11cが前記ゴム栓10Cを貫通しないおそれもある。
【0498】
そこで、前記第2制御部500は、前記吸引工程において前記バイアル瓶10B内の輸液量が減少するに従って前記注射針11cの前記ゴム栓10Cへの挿入量を減少させることが考えられる。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が第11制御手段の一例である。これにより、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cに確実に貫通させると共に、前記バイアル瓶10B内の薬液を最後まで吸引することが可能になる。
【0499】
具体的に、前記吸引工程において、前記第2制御部500は、
図59(B)に示すように、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bの前記ゴム栓10Cに穿刺する際には、前記注射針11cの先端を予め定められた深さP81の位置まで前記ゴム栓10Cに穿刺する。前記深さP81は、前記ゴム栓10Cの撓みを考慮しても前記注射針11cが前記ゴム栓10Cを確実に貫通する深さとして予め設定される。そして、前記第2制御部500は、
図59(C)に示すように、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御して前記バイアル瓶10B及び前記注射器11の上下位置を反転させた後、前記保持部26を制御して、前記深さP81に応じて予め設定された吸引量だけ前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。なお、前記吸引量は、前記バイアル瓶10Bから吸引される薬液量と同じ値であってもよい。また、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10B内の薬液残量が、前記深さP81に応じて予め設定された所定残量になるまで前記薬液を吸引することも考えられる。
【0500】
次に、前記第2制御部500は、
図59(D)に示すように、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bの前記ゴム栓10Cから所定量(例えば0.2mm程度)だけ引き抜いて、前記注射針11cの先端を予め定められた深さP82の位置まで移動させる。そして、前記第2制御部500は、前記保持部26を制御して、前記深さP82に応じて予め設定された吸引量だけ前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引する。また、前記第2制御部500は、前記バイアル瓶10B内の薬液残量が、前記深さP82に応じて予め設定された所定残量になるまで前記薬液を吸引することも考えられる。
【0501】
さらに、前記第2制御部500は、
図59(E)に示すように、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bの前記ゴム栓10Cから所定量(例えば0.2っm程度)だけ引き抜いて、前記注射針11cの先端を予め定められた深さP83の位置まで移動させる。そして、前記第2制御部500は、前記保持部26を制御して、前記深さP83に応じて予め設定された吸引量だけ前記バイアル瓶10Bから薬液を吸引し、前記バイアル瓶10B内の薬液を全量採取する。
【0502】
このように、前記第2制御部500は、前記吸引工程の途中で前記注射針11cの前記ゴム栓10Cへの挿入の深さを段階的に浅くしながら前記バイアル瓶10B内の薬液を前記注射器11で吸引する。これにより、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cに穿刺する際には前記注射針11cを前記ゴム栓10Cに確実に貫通させることができると共に、前記バイアル瓶10Bから薬液を残さず吸引することが可能である。なお、前記注射針11cの前記ゴム栓10Cへの挿入の深さを変化させる回数はここで説明した2回に限らず、1回又は3回以上であってもよい。
【0503】
特に、本実施形態で説明した前記吸引工程では、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cに貫通するように十分に挿入された後、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cから引き抜かれる動作が行われる。そのため、
図60(A)に示すように、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cに挿入される際に前記ゴム栓10Cが前記バイアル瓶10Bの内側に向けて撓むが、前記ゴム栓10Cは、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cから徐々に引き抜かれる際に前記バイアル瓶10Bの外側に向けて撓むことになる。そのため、
図60(B)に示すように、前記注射針11cを前記深さP83のように前記バイアル瓶10Bの開口近くまで前記注射針11cを引き抜いても前記注射針11cが前記ゴム栓10Cから抜けることがなく、前記注射針11cで前記バイアル瓶10内の薬液を全量採取することが可能である。
【0504】
[第11の実施形態]
ところで、前記混注装置1又は前記混注装置1Aでは、前記混注処理室104内の温度が低すぎると前記バイアル瓶10B内の粉薬が未溶解になるおそれがあり、温度が高すぎると薬液が気化するおそれがある。そのため、前記混注装置1又は前記混注装置1Aでは、前記混注処理室104内の温度を測定する温度計が設けられており、前記温度計による測定結果が前記第2制御部500に入力されることが考えられる。なお、前記混注処理室104内において、前記温度計は、前記バイアル瓶10Bを攪拌する前記攪拌装置32の近傍に設けられていることが考えられる。
【0505】
そして、前記第2制御部500は、前記温度計による測定結果に基づいて、前記混注動作の開始を制限し、前記混注動作の実行の可否を報知する機能を備えることが考えられる。具体的に、前記第2制御部50は、前記温度計による測定結果が予め設定された温度範囲外である場合に、前記混注動作の開始を制限し、前記タッチパネルモニタ14に前記温度範囲外である旨を表示させる。なお、前記温度範囲は、例えば15℃以上30℃以下、又は、18℃以上25℃以下などであることが考えられる。これにより、前記温度範囲外である場合に前記混注動作の開始が制限されるため、例えば粉薬が溶解しにくい状態又は前記薬液が気化するおそれがある状態で前記混注動作が実行されることが防止される。また、前記混注動作の実行中に前記温度計の測定結果が前記温度範囲外に達した場合、前記第2制御部500は、前記混注動作を中止することも考えられるが、前記混注動作を継続すると共に、前記温度計の測定結果が前記温度範囲外に達した旨の履歴を前記データ記憶部504に記憶させることが考えられる。
【符号の説明】
【0506】
1:混注装置
10:薬品容器
11:注射器
11a:シリンジ
11b:プランジャ
11c:注射針
11d:シリンジフィルター
12:輸液バッグ
13:ゴミ収容室扉
15a:ICリーダ
21:第1ロボットアーム
22:第2ロボットアーム
25:保持部
26:保持部
31:アンプルカッター
32:攪拌装置
33:載置棚
33A:回転用載置部
34:薬品読取部
35:秤量計
36:針曲り検知部
37:混注連通口
38:針挿入確認透明窓
39:秤量計
41:トレイ確認カメラ
42:注射器確認カメラ
43:注射針着脱装置
44:針挿入確認カメラ
45:殺菌灯
100:混注制御装置
101:トレイ
101a:電子ペーパー
101b:ICタグ
101c:ICリーダ
104:混注処理室
110:トレイ搬送部
121:輸液用カメラ
200:薬品装填部
300:混注処理部
400:第1制御部
401:CPU
402:ROM
403:RAM
404:データ記憶部
500:第2制御部
501:CPU
502:ROM
503:RAM
504:データ記憶部
600:上位システム