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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063482
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】表示方法および検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040460
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2021030969の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】益田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(57)【要約】
【課題】有形成分の分析を詳細に行い得る表示方法および検体分析装置を提供する。
【解決手段】有形成分を含む検体を測定した結果を表示する方法は、有形成分から少なくとも3つのパラメータの測定値を取得するステップと、3つのパラメータを軸311-313とし、有形成分をドットで示す3次元分散図310を含む画面300を表示するステップと、画面300の3次元分散図310とは異なる領域に、3次元分散図310に対応するサーフェスプロット図371~373を表示するステップと、を含む。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有形成分を含む検体を測定した結果を表示する方法であって、
前記有形成分から少なくとも3つのパラメータの測定値を取得するステップと、
前記3つのパラメータを軸とし、前記有形成分をドットで示す3次元分散図を含む画面を表示するステップと、
前記画面の前記3次元分散図とは異なる領域に、前記3次元分散図に対応するサーフェスプロット図を表示するステップと、
を含む、
表示方法。
【請求項2】
前記測定値又は有形成分の形態学的特徴を反映した波形データに基づいて、前記有形成分を分類するステップをさらに含む、
請求項1に記載の表示方法。
【請求項3】
前記3次元分散図に対する操作に応じて前記3次元分散図のビュー角度を変更するステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の表示方法。
【請求項4】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップは、前記ドットを種類ごとに色分けして表示する、
請求項2に記載の表示方法。
【請求項5】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップは、4以上の複数の前記パラメータから前記3次元分散図の3軸を選択する、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項6】
前記3次元分散図で使われる3軸は色分けされており、
各軸の色と各軸に設定されるパラメータ名とが表示される、
請求項1ないし5の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項7】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップは、前記3次元分散図の表示条件を、検体の測定モードごとに設定する、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項8】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップは、前記3次元分散図の表示条件を、前記測定値を取得するステップで使用する測定チャンネルごとに設定する、
請求項1ないし7何れか一項に記載の表示方法。
【請求項9】
前記サーフェスプロット図を表示するステップは、前記3次元分散図の3軸として使用した前記3つのパラメータのうち2つを、前記サーフェスプロット図の前記パラメータとして設定する、
請求項1ないし8の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項10】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップは、前記3次元分散図の軸として使用する前記パラメータの設定を受け付け、
前記サーフェスプロット図を表示するステップは、受け付けた前記パラメータに基づいて、前記サーフェスプロット図の前記パラメータを変更する、
請求項9に記載の表示方法。
【請求項11】
前記3次元分散図を含む画面を表示するステップおよび前記サーフェスプロット図を表示するステップは、ユーザの操作に応じて、前記3次元分散図上の前記ドットのうち特定のドット、および前記特定のドットに対応する前記サーフェスプロット図上のドットをそれぞれ非表示にする又は表示形式を変更して表示する、
請求項1ないし10の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項12】
前記3次元分散図と前記サーフェスプロット図とで使われる軸は色分けされており、前記3次元分散図と前記サーフェスプロット図とにおいて、同じパラメータの軸には共通の色が付される、
請求項1ないし11の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項13】
前記3次元分散図に、前記有形成分の集団に対応する参照領域を重ねて表示するステップをさらに含む、
請求項1ないし12の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項14】
前記3次元分散図を、検体切替え操作により、他の検体の前記3次元分散図に切替えるステップをさらに含む、
請求項1ないし13の何れか一項に記載の表示方法。
【請求項15】
前記他の検体の前記3次元分散図に切替えるステップは、前記他の検体の前記3次元分散図を、切替え前の表示条件を維持して表示させる、
請求項14に記載の表示方法。
【請求項16】
有形成分を含む検体を分析する検体分析装置であって、
前記有形成分から検出信号を取得する検出部と、
前記検出信号から少なくとも3つのパラメータの測定値を取得する信号処理部と、
前記3つのパラメータを軸とし、前記有形成分をドットで示す3次元分散図を含む画面を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、前記画面の前記3次元分散図とは異なる領域に、前記3次元分散図に対応するサーフェスプロット図をさらに表示する、
検体分析装置。
【請求項17】
前記測定値に基づいて、前記有形成分を分類する制御部を備える、
請求項16に記載の検体分析装置。
【請求項18】
前記表示部は、ユーザの操作に応じて、前記3次元分散図上の前記ドットのうち特定のドット、および前記特定のドットに対応する前記サーフェスプロット図上のドットをそれぞれ非表示にする又は表示形式を変更して表示する、
請求項16または17に記載の検体分析装置。
【請求項19】
前記3次元分散図と前記サーフェスプロット図とで使われる軸は色分けされており、前記3次元分散図と前記サーフェスプロット図とにおいて、同じパラメータの軸には共通の色が付される、
請求項16ないし18の何れか一項に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示方法および検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメトリーにより、有形成分を含む検体を有形成分ごとに分類して分析する分析装置が知られている。以下の特許文献1には、分類された有形成分を3次元分散図により画面上に表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-106059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分類された有形成分に対応するドットを3次元分散図に表示する上記特許文献1の3次元分散図では、異なる種類の有形成分に対応するドットの集団が重なることがあり、所望の有形成分の分布を視認することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、有形成分の分析を詳細に行い得る表示方法および検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による表示方法は、図3、7(b)、14に示すように、有形成分から少なくとも3つのパラメータの測定値を取得するステップ(S14)と、3つのパラメータを軸(311~313)とし、有形成分をドットで示す3次元分散図(310)を含む画面(300)を表示するステップ(S1741)と、画面の3次元分散図(310)とは異なる領域に、3次元分散図(310)に対応するサーフェスプロット図を表示するステップと、を含む。
【0007】
本発明による表示方法によれば、ユーザは、3次元分散図とともに、サーフェスプロット図を参照して、有形成分を詳細に分析できる。
【0008】
本発明による検体分析装置(1)は、図1、14に示すように、有形成分から検出信号を取得する検出部(14)と、検出信号から少なくとも3つのパラメータの測定値を取得する信号処理部(15)と、3つのパラメータを軸(311~313)とし、有形成分をドットで示す3次元分散図(310)を含む画面(300)を表示する表示部(23)と、を備え、表示部(23)は、画面の3次元分散図(310)とは異なる領域に、3次元分散図(310)に対応するサーフェスプロット図(371~373)をさらに表示する。
【0009】
本発明による検体分析装置によれば、ユーザは、3次元分散図とともに、サーフェスプロット図を参照して、有形成分を詳細に分析できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有形成分の分析を詳細に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る、検体分析装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係る、検出部の構成を模式的に示す平面図である。
図3図3は、実施形態1に係る、検体分析装置の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態1に係る、有形成分の分類の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態1に係る、制御部により分類された有形成分ごとの種類を示す分類と、有形成分ごとに取得された測定値とを記憶したデータベースの構成を模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態1に係る、分類ごとの表示/非表示の有無を記憶したテーブルを模式的に示す図である。
図7図7(a)は、実施形態1に係る、図3におけるS17の詳細な処理を示すフローチャートである。図7(b)は、実施形態1に係る、図7(a)におけるS174の詳細な処理を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態1に係る、図7(b)におけるS1741の詳細な処理を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態1に係る、表示部に表示される画面を模式的に示す図である。
図10図10は、実施形態1に係る、表示部に表示される画面を模式的に示す図である。
図11図11は、実施形態1に係る、表示部に表示される画面を模式的に示す図である。
図12図12は、実施形態1に係る、表示部に表示される3次元分散図を含む画面の構成を模式的に示す図である。
図13図13(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、参照領域の表示がオフの状態とオンの状態の場合の3次元分散図を示す図である。
図14図14は、実施形態1に係る、表示切替ボタンの操作によりサーフェスプロット図が表示された状態の画面の構成を模式的に示す図である。
図15図15は、実施形態1に係る、測定チャンネルに応じて3次元分散図に設定可能な軸のパラメータと、3次元分散図の3つの軸に初期設定されるパラメータとを示す図である。
図16図16(a)~(d)は、それぞれ、実施形態1の表示例1に係る、3次元分散図を示す図である。
図17図17は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図18図18は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図19図19は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図20図20は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図21図21は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図22図22は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図23図23は、実施形態1の表示例2に係る、3次元分散図を含む画面を模式的に示す図である。
図24図24(a)は、実施形態1の表示例3に係る、2次元分散図を示す図である。図24(b)は、実施形態1の表示例3に係る、3次元分散図を示す図である。
図25図25(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の表示例4に係る、3次元分散図を示す図である。
図26図26(a)、(c)は、それぞれ、実施形態1の表示例5に係る、2次元分散図を示す図である。図26(b)、(d)は、実施形態1の表示例5に係る、3次元分散図を示す図である。
図27図27(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、3次元分散図の直方体形状の面の色について説明する図である。
図28図28(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の変形例1に係る、3次元分散図を示す図である。
図29図29(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の変形例2-1に係る、3次元分散図を示す図である。
図30図30(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の変形例2-2に係る、3次元分散図を示す図である。
図31図31(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2の表示例に係る、2次元分散図を模式的に示す図である。
図32図32は、実施形態2の表示例に係る、2次元分散図を模式的に示す図である。
図33図33(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2の表示例に係る、3次元分散図を模式的に示す図である。
図34図34(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2の表示例に係る、3次元分散図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は、有形成分を含む検体を分析した結果を表示する表示方法、および有形成分を含む検体を分析する検体分析装置に本発明を適用したものである。
【0013】
<実施形態1>
図1は、検体分析装置1の構成を示すブロック図である。
【0014】
実施形態1の検体分析装置1は、血液および体液を検体として分析する装置である。検体分析装置1は、測定ユニット10と情報処理ユニット20を備える。
【0015】
測定ユニット10は、測定制御部11と、記憶部12と、試料調製部13と、検出部14と、信号処理部15と、を備える。
【0016】
測定制御部11は、たとえば、CPUにより構成される。測定制御部11は、測定ユニット10の各部が出力する信号を受信し、測定ユニット10の各部を制御する。測定制御部11は、情報処理ユニット20と通信を行う。記憶部12は、たとえば、ROM、RAM、ハードディスクなどにより構成される。測定制御部11は、検出部14からの信号を記憶部12に記憶させ、記憶部12に記憶されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。
【0017】
試料調製部13は、容器から検体を吸引し、吸引した検体に試薬を混合して、各種の測定試料を調製する。検体分析装置1で対象となる検体は、測定モードが全血モード(WB)、低値白血球モード(LW)および希釈モード(PD)の場合、全血であり、測定モードが体液モード(BF)の場合、体液(脳脊髄液、腹水、胸水、滑液、腹膜透析排液等)である。試料調製部13は、検体に対して所定の試薬を混合することにより、WNR測定試料、WDF測定試料、WPC測定試料、RET測定試料、およびPLT-F測定試料を調製する。WNR測定試料は全白血球数および有核赤血球数を測定するための試料である。WDF測定試料は白血球を分類計数するための試料である。WPC測定試料は異常細胞を成熟白血球と区別して検出するための試料である。RET測定試料は、網赤血球数を測定するための試料である。PLT-F測定試料は、血小板を光学的に測定するための試料である。
【0018】
検出部14は、試料調製部13で調製された各測定試料を測定し、検出信号を出力する光学式検出部である。検出部14は、測定試料が流れるフローセルに光を照射し、測定試料中の有形成分から生じた前方散乱光、側方散乱光、および側方蛍光を受光して、各光に基づく検出信号を出力する。
【0019】
検出部14は、図2に示すように、フローセルD1、シースフロー系D2、ビームスポット形成系D3、前方散乱光受光系D4、側方散乱光受光系D5、および蛍光受光系D6を有している。
【0020】
シースフロー系D2は、フローセルD1内に測定試料をシース液に包まれた状態で送り込み、フローセルD1中に液流を発生させるように構成されている。ビームスポット形成系D3は、光源D31から照射された光が、コリメータレンズD32とコンデンサレンズD33とを通って、フローセルD1に照射されるよう構成されている。これにより、フローセルD1内を通過する液流に含まれる測定試料中の有形成分にレーザ光が照射される。また、ビームスポット形成系D3は、ビームストッパD34も備えている。光源D31は、たとえば半導体レーザ光源である。
【0021】
前方散乱光受光系D4は、前方散乱光を前方集光レンズD41によって集光し、遮光板D42に形成されたピンホールを通った光を第1光学検出器であるフォトダイオードD43で受光するように構成されている。フォトダイオードD43は、受光した前方散乱光の強度に応じた波形状のアナログ検出信号を出力する。側方散乱光受光系D5は、側方散乱光を側方集光レンズD51にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラーD52で反射させ、第2光学検出器であるフォトダイオードD53で受光するよう構成されている。フォトダイオードD53は、受光した側方散乱光の強度に応じた波形状のアナログ検出信号を出力する。
【0022】
蛍光受光系D6は、側方に生じた光のうちダイクロイックミラーD52を透過した光(蛍光)をさらに分光フィルタD61に通し、第3光学検出器であるアバランシェフォトダイオードD62で受光するよう構成されている。アバランシェフォトダイオードD62は、受光した蛍光の強度に応じた波形状のアナログ検出信号を出力する。
【0023】
なお、検出部14は、上述した前方散乱光および側方散乱光に基づく検出信号以外にも、光の散乱に基づく他の検出信号を出力してもよい。上述した前方散乱光および側方散乱光に基づく検出信号では、前方散乱光および側方散乱光等の散乱方向によって定義される検出信号が含まれている。前方散乱光とは、光を粒子に照射した場合に、照射光の進行方向に対して前方に散乱した光をいう。側方散乱光とは、光を粒子に照射した場合に、照射光の進行方向に対して側方に散乱した光をいう。側方とは、前方散乱光として検出する光の散乱角度と異なる角度であればよい。たとえば、照射光の光軸に対して0°~10°の角度で生じる光を検出される前方散乱光とした場合に、光軸に対して10°以上の任意の角度範囲で生じる光を側方散乱光として検出してもよい。図2の例では、側方散乱光は光軸に対して約80°~100°の方向に生じた光を側方散乱光として検出している。側方散乱光は、たとえば低角度散乱光と高角度散乱光のように、角度に応じて異なる複数の種類を含んでもよい。光散乱に基づく他の検出信号としては、軸方向光損失がある。軸方向光損失とは、粒子がレーザを横切ったときの光散乱による受光部側の受光量の減少を定量化した検出信号である。
【0024】
検出部14で行われる各測定試料に基づく測定は、「測定チャンネル」と呼ばれる。より詳細には、WNR測定試料に基づく測定チャンネルは「WNRチャンネル」と呼ばれ、WDF測定試料に基づく測定チャンネルは「WDFチャンネル」と呼ばれ、WPC測定試料に基づく測定チャンネルは「WPCチャンネル」と呼ばれ、RET測定試料に基づく測定チャンネルは「RETチャンネル」と呼ばれ、PLT-F測定試料に基づく測定チャンネルは「PLT-Fチャンネル」と呼ばれる。
【0025】
図1に戻り、信号処理部15は、検出部14から出力されたアナログの検出信号をA/D変換処理して測定値を生成する回路により構成される。測定制御部11は、信号処理部15で生成された測定値を記憶部12に記憶する。1つの検体の測定が終わると、測定制御部11は、記憶部12に記憶した測定値を情報処理ユニット20に送信する。
【0026】
情報処理ユニット20は、制御部21と、記憶部22と、表示部23と、入力部24と、を備える。
【0027】
制御部21は、たとえば、CPUにより構成される。制御部21は、情報処理ユニット20の各部が出力する信号を受信して、情報処理ユニット20の各部を制御するとともに、測定ユニット10と通信を行って、測定制御部11を介して測定ユニット10の各部を制御する。制御部21は、測定ユニット10から受信した測定値を記憶部22に記憶する。
【0028】
また、制御部21は、記憶部22に記憶された制御プログラムに従って所定の制御を行う。制御プログラムによる機能は、測定値を用いて有形成分の分析および計数を行うものである。
【0029】
制御部21は、測定値を用いて、有形成分を複数の種類に分類し、血球数などの測定項目についての結果値を取得する。
【0030】
表示部23は、たとえば、液晶ディスプレイにより構成される。表示部23は、制御部21からの信号に応じて、各種の画面を表示する。
【0031】
入力部24は、キーボードおよびマウスにより構成される。ユーザは、入力部24のマウスを操作して、表示部23に表示された画面に対してクリックやダブルクリックなどの操作を行って、制御部21に対して指示を入力する。なお、表示部23および入力部24は、タッチパネル式のディスプレイにより構成されてもよい。この場合、ユーザは、クリックやダブルクリックに代えて、タッチパネル式のディスプレイの表示面に対してタップやダブルタップを行う。
【0032】
図3は、検体分析装置1の処理を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS11において、制御部21は、検体の測定指示を受け付けると、測定制御部11に測定開始信号を送信する。
【0034】
ステップS12において、測定制御部11は、制御部21から測定開始信号を受信すると(S12:YES)、処理をステップS13に進める。
【0035】
ステップS13において、測定制御部11は、検体を容器から吸引し、吸引した検体に基づいて、WNR測定試料、WDF測定試料、WPC測定試料、RET測定試料、およびPLT-F測定試料を調製するように試料調製部13を制御する。なお、測定試料は、検体の測定オーダに基づいて選択的に調製される。ステップS14において、測定制御部11は、検出部14によりWNR測定試料、WDF測定試料、WPC測定試料、RET測定試料、およびPLT-F測定試料を測定する。
【0036】
信号処理部15は、各測定で得られた検出信号に基づいて測定値を生成する。具体的には、信号処理部15は、測定試料ごとに、検出部14の各光の検出信号に基づいて、有形成分ごとに複数のパラメータの測定値を取得する。パラメータの測定値は、たとえば、波形のピーク値として取得される前方散乱光強度(FSC)、側方散乱光強度(SSC)、および側方蛍光強度(SFL)を含み、波形の幅として取得される前方散乱光の幅(FSCW)を含み、SFLを広範囲に拡張したSFL_EXTを含み、FSCをログ表示に変換したFSC_LOGを含む。SFL_EXTは、たとえば、第3光学検出器であるアバランシェフォトダイオードD62から出力されるアナログ検出信号を信号処理部15がデジタル信号に変換するときに、通常の側方蛍光強度(SFL)を取得するために用いる帯域幅よりも広い帯域幅を用いることで取得することができる。測定制御部11は、有形成分ごとに取得した複数のパラメータの測定値を、制御部21に送信する。
【0037】
なお、パラメータの測定値は、上記のような測定値に限らない。たとえば、パラメータの測定値は、波形の幅として取得される側方散乱光の幅(SSCW)および側方蛍光の幅(SFLW)を含んでもよく、波形の面積として取得される前方散乱光の面積(FSCA)、側方散乱光の面積(SSCA)、および側方蛍光の面積(SFLA)を含んでもよく、FSCおよびSSCを広範囲に拡張した測定値や、SSCおよびSFLをログ表示に変換した測定値を含んでもよい。
【0038】
ステップS15において、制御部21は、測定制御部11から測定値を受信すると(S15:YES)、処理をステップS16に進める。
【0039】
ステップS16において、制御部21は、測定値に基づいて、有形成分の分類を行う。具体的には、図4を用いてステップS16の処理を詳細に説明する。
【0040】
図4に示すように、ステップS161において、制御部21は、信号処理部15から取得した複数のパラメータの測定値に基づいて有形成分(粒子)を複数の種類に分類する。複数のパラメータを用いて粒子を複数の種類に分類する方法としては、複数のパラメータを軸とする多次元の座標空間に粒子をプロットし、少なくともいくつかの粒子を複数の種類に対応する複数の集団に分類し、各集団の重心位置と粒子との距離に基づいて各集団に対する各粒子の帰属度を求め、帰属度に基づいて粒子を再分類することで複数の粒子を複数の種類に分類する方法が採用できる。このような分類方法は、たとえば米国特許第5,555,198号に記載されている。米国特許第5,555,198号は、本明細書に参照としてここに組み込まれる。ステップS162において、制御部21は、図5に示すデータベースに、ステップS161で分類した各有形成分(粒子)に対応する分類を入力する。
【0041】
たとえば、制御部21は、WNRチャンネルに関する測定値に基づいて、有核赤血球、好塩基球、好塩基球以外の白血球、およびデブリスなどを分類および計数する。制御部21は、WDFチャンネルに関する測定値に基づいて、リンパ球、単球、好酸球、好中球と好塩基球、幼若顆粒球、およびデブリスなどを分類および計数する。制御部21は、WPCチャンネルに関する測定値に基づいて、幼若細胞、異常細胞、および成熟白血球などを分類および計数する。制御部21は、RETチャンネルに関する測定値に基づいて、網赤血球、成熟赤血球、および血小板などを分類および計数する。制御部21は、PLT-Fチャンネルに関する測定値に基づいて、血小板、一部の赤血球、一部の白血球、およびデブリスなどを分類および計数する。
【0042】
制御部21は、測定制御部11から受信した測定値に加えて、有形成分(粒子)の分類結果、測定項目の結果値、検体の情報、および測定の日時などを、測定データ(データセット)として記憶部22に記憶する。
【0043】
図5は、制御部21により分類された有形成分(粒子)ごとの種類を示す分類と、有形成分ごとに取得された測定値とを記憶したデータベースの構成を模式的に示す図である。
【0044】
情報処理ユニット20の記憶部22には、検体の検体番号および測定チャンネルごとに、図5に示すような分類および測定値がデータベースとして記憶される。粒子番号は、検出された有形成分(粒子)を識別可能な番号である。
【0045】
分類は、有形成分(粒子)ごとの種類(リンパ球、単球、好酸球、好中球、好塩基球、幼若顆粒球、幼若細胞、異常細胞、成熟白血球、有核赤血球、網赤血球、成熟赤血球、血小板、デブリス、未分類など)に対応する番号である。たとえば、分類の値0、1、2、3、4、5は、それぞれ、好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、単球(MONO)、好酸球(EO)、幼若顆粒球(IG)、デブリス(Debris)に対応する。
【0046】
FSC、SSC、SFL、FSCWなどは、各パラメータの測定値である。制御部21は、複数のパラメータの測定値に基づいて有形成分(粒子)を複数の種類に分類する。分類は、分類した有形成分(粒子)の種類を示す値である。制御部21は、図5に示すような有形成分(粒子)ごとの種類を示す分類および測定値を記憶部22に記憶する。そして、制御部21は、後述するように、2次元分散図や3次元分散図において、各有形成分(粒子)のパラメータの測定値に対応する座標に有形成分(粒子)の種類に応じたドットを描画する。
【0047】
また、制御部21は、後述する3次元分散図310内の有形成分(粒子)に対応するドットの表示/非表示の設定に応じて、図6に示すドットの表示/非表示に関する値を、分類と対応付けて記憶部22に記憶する。図6の例では、表示/非表示に関する値「1」が、有形成分(粒子)の表示に対応する値であり、表示/非表示に関する値「0」が、有形成分(粒子)の非表示に対応する値である。
【0048】
図3に戻り、ステップS17において、制御部21は、入力部24を介して受け付けたユーザの指示に応じて、2次元分散図、3次元分散図、粒度分布図、およびサーフェスプロット図などを、表示部23に表示する。
【0049】
図7(a)を用いてステップS17の処理を詳細に説明する。以下の説明では、全血モード(WB)の検体が選択され、WDFチャンネルに関する3次元分散図310が表示される場合が例示されている。
【0050】
ステップS171において、制御部21は、ステップS14で取得した測定値およびステップS16で取得した測定項目の結果値に基づいて、図9に示す検体番号、日付、時刻、測定モード、項目(測定項目)、データ(結果値)などを含む画面100を表示部23に表示する。ステップS172において、制御部21は、入力部24を介したユーザの操作(たとえば、測定データ表示領域110の対象検体の行をダブルクリックする操作)に応じて、全血モード(WB)の検体の選択を受け付ける。
【0051】
ステップS173において、制御部21は、選択を受け付けた全血モード(WB)の検体に対応する2次元分散図231図10参照)を表示部23に表示する。ステップS174において、制御部21は、入力部24を介したユーザの操作(たとえば、2次元分散図231をダブルクリックする操作)に応じて、3次元分散図310図12参照)を表示部23に表示する。
【0052】
図7(b)を用いてステップS174の処理を詳細に説明する。
【0053】
ステップS1741において、制御部21は、入力部24を介したユーザの操作に応じて、3次元分散図310図12参照)を表示部23に表示する。ステップS1742において、制御部21は、入力部24を介したユーザの操作(たとえば、種類選択領域330および領域選択領域340に対する操作)に応じて、3次元分散図310上で非表示に設定する有形成分(粒子)に対応する特定のドットの指定を受け付ける。制御部21は、受け付けた非表示の指定に基づいて、図6に示すテーブルを更新する。
【0054】
ステップS1743において、制御部21は、指定を受け付けた有形成分(粒子)に対応する特定のドットを3次元分散図310上で非表示にするように表示部23の画面の表示制御を行う。ステップS1743では、図6に示す分類と対応付けて記憶部22に記憶されたドットの表示/非表示に関する値を読み出し、ドットの表示/非表示に関する値が「1」である有形成分(粒子)に対応するドットを表示すると共に、ドットの表示/非表示に関する値が「0」である有形成分(粒子)に対応するドットを非表示にする。
【0055】
図8を用いてステップS1741の処理を詳細に説明する。
【0056】
ステップS17411において、制御部21は、表示対象の有形成分について、表示対象のパラメータの測定値の読み出しを行う。なお、ステップS17411において、表示対象の有形成分は、対象となる検体および測定チャンネルに関して、光学検出器から測定値を取得した全ての有形成分であり、表示対象のパラメータには、後述する3次元分散図に有形成分に対応するドットを描画する際に必要な座標(XYZ座標空間)に対応するパラメータが初期設定として設定されている。ステップS17412において、制御部21は、表示対象の有形成分の座標(XYZ座標空間)を決定し、各座標における度数を計数する。
【0057】
ステップS17413において、制御部21は、度数が1以上の座標について最も度数の多い有形成分の種類に応じた色のドットを3次元分散図上に描画する。
【0058】
ステップS17413の処理について、図5を参照して説明する。粒子番号1、3、4は、FSC、SSC、SFLの値が同じであるため、FSC-SSC-SFLを軸とする3次元座標空間では同一の座標にプロットされる。粒子番号1と3は、分類の値「0」であり、粒子番号4は分類の値「1」である。この場合、上記の座標における分類の値0の有形成分の度数は2であり、分類の値1の有形成分の度数は1である。この場合、最も度数の多い有形成分である分類の値0に応じた色のドットが描画される。なお、同一座標に同一度数の2種類以上の有形成分がプロットされた場合には、優劣を決めるさらなる他のパラメータが用いられてドットの色が決定される。たとえば、競合する2種類以上の有形成分のうち、各有形成分のドットの集団の重心座標に最も近い有形成分に、対応するドットの集団の色を採用してもよい。
【0059】
また、図9以降で説明するように、制御部21は、ユーザからの入力部24を介した指示の受け付け、および、受け付けた指示に応じた画面の表示制御を行う。
【0060】
次に、図3のステップS17で表示部23に表示される画面について説明する。
【0061】
図9は、表示部23に表示される画面100を模式的に示す図である。
【0062】
制御部21は、メニュー画面でユーザにより画面100を表示する操作を受け付けると、記憶部22に記憶した測定データに基づいて、表示部23に画面100を表示する。
【0063】
画面100は、測定データ表示領域110と測定項目表示領域120を備える。
【0064】
測定データ表示領域110は、検体番号、日付、時刻、および測定モードなどを項目として含む。ユーザは、上下方向および左右方向に表示領域をスクロールさせるボタンおよびバーを操作することにより、測定データ表示領域110に他の検体および他の項目を表示させることができる。また、ユーザは、フィルタ条件を設定することにより、測定データ表示領域110の並び順の変更や、条件を満たす検体の表示などを行うことができる。
【0065】
測定項目表示領域120は、項目(測定項目)、データ(結果値)、および単位を項目として含む。ユーザは、上下方向に表示領域をスクロールさせるボタンおよびバーを操作することにより、測定項目表示領域120に他の測定項目を表示させることができる。
【0066】
ユーザが測定データ表示領域110の横方向に延びる行をクリックすると、操作が行われた行が図9に示すように異なる色で表示され、選択された検体についての測定項目の結果値が、測定項目表示領域120に表示される。また、ユーザが測定データ表示領域110の行をダブルクリックすると、操作が行われた行の検体についての結果値等を一覧で参照するための画面200が表示部23に表示される。
【0067】
図10、11は、表示部23に表示される画面200を模式的に示す図である。
【0068】
図10の画面200は、図9において全血モード(WB)の検体に対してダブルクリックが行われた場合に表示される画面であり、図11の画面200は、図9において体液モード(BF)の検体に対してダブルクリックが行われた場合に表示される画面である。なお、低値白血球モード(LW)と希釈モード(PD)の場合に表示される画面は、図10の画面200とほぼ同様であるため説明を省略する。
【0069】
図10に示すように、全血モード(WB)の画面200は、検体情報領域210と、測定項目表示領域220と、グラフ表示領域230と、を備える。
【0070】
検体情報領域210は、画面200に表示している検体の検体番号と、検体の測定モードとを表示する。図10に示す例では、測定モードは全血モード(WB)であるため、測定項目表示領域220とグラフ表示領域230は、全血モードに合わせた表示内容となっている。
【0071】
測定項目表示領域220は、画面200に表示されている検体の測定項目の結果値を表示する。グラフ表示領域230は、2次元分散図231~235と、粒度分布図241、242と、を表示する。2次元分散図231~235は、それぞれ、WDFチャンネル、WNRチャンネル、WPCチャンネル、RETチャンネル、およびPLT-Fチャンネルに関する有形成分に対応するドットが測定値に基づいて表示される。なお、2次元分散図231~235上のドットの色は、有形成分の種類ごとに異なっている。粒度分布図241、242は、それぞれ、赤血球および血小板に関する測定値に基づいて表示される。
【0072】
図11に示すように、体液モード(BF)の画面200は、図10と同様、検体情報領域210と、測定項目表示領域220と、グラフ表示領域230と、を備える。
【0073】
検体情報領域210は、画面200に表示している検体の検体番号と、検体の測定モードとを表示する。図11に示す例では、測定モードは体液モード(BF)であるため、測定項目表示領域220とグラフ表示領域230は、体液モードに合わせた表示内容となっている。
【0074】
測定項目表示領域220は、画面200に表示されている検体の測定項目の結果値を表示する。グラフ表示領域230は、2次元分散図236、237と、粒度分布図243と、を表示する。2次元分散図236は、図10の2次元分散図231と同様、WDFチャンネルに関する有形成分に対応するドットが測定値に基づいて表示される。2次元分散図237は、2次元分散図236と同様、WDFチャンネルに関する図であるが、2次元分散図236とは縦軸(SFL)の縮尺が異なっている。具体的には、2次元分散図237の縦軸の上限値は、2次元分散図236の縦軸の上限値よりも大きい。2次元分散図237の縦軸は、SFL_EXTである。なお、2次元分散図236、237上のドットの色は、有形成分の種類ごとに異なっている。粒度分布図243は、赤血球に関する測定値に基づいて表示される。
【0075】
ここで、図10、11に示す2次元分散図231~237に対して、ユーザがダブルクリックすると、操作が行われた2次元分散図に対応する3次元分散図を表示する画面300が、表示部23に表示される。
【0076】
図12は、表示部23に表示される3次元分散図を含む画面300の構成を模式的に示す図である。
【0077】
図12には、WDFチャンネルに対応する2次元分散図231がダブルクリックされた場合に表示される画面300が例示されている。
【0078】
画面300は、測定チャンネル表示領域301と、測定モード表示領域302と、表示切替ボタン303と、閉じるボタン304と、3次元分散図310と、2次元分散図321~323と、種類選択領域330と、領域選択領域340と、軸選択領域350と、検体送りボタン361、362と、を備える。
【0079】
測定チャンネル表示領域301は、画面300に表示されている情報が、どの測定チャンネルの情報であるかを示している。測定モード表示領域302は、画面300に表示されている情報が、どの測定モードの情報であるかを示している。図12に示す例では、測定チャンネルがWDFチャンネルであり、測定モードが全血モード(WB)である状態が示されている。
【0080】
3次元分散図310は、画面300が表示されるときにダブルクリックで指定された2次元分散図に対応する3次元分散図である。具体的には、元となる2次元分散図の2軸のパラメータ(WDFチャンネルの場合はSSCとSFL)にさらに他のパラメータを加えた3次元分散図310が表示される。3次元分散図310上のドットには、図5に示した有形成分(粒子)に対応するドットの種類を示す分類の値に基づいて、ドットの種類ごとに互いに異なる色が付されている。ユーザが3次元分散図310の表示領域に対してドラッグ操作を行うと、3次元分散図310のビュー角度がドラッグ操作に応じて変更される。なお、図12に示す3次元分散図310のビュー角度は、初期設定(デフォルト)のビュー角度である。
【0081】
3次元分散図310には、参照領域を表示させるためのチェックボックス310aが設けられている。
【0082】
図13(a)、(b)は、それぞれ、参照領域の表示がオフの状態とオンの状態の場合の3次元分散図310を示す図である。
【0083】
図13(a)に示すように、参照領域の表示がオフの場合、3次元分散図310には、有形成分に対応するドットのみが表示される。これに対し、ユーザがチェックボックス310aに対してチェックを入れると、図13(b)に示すように、3次元分散図310のドットの分布に重ねて、各ドットの集団の分布を示す参照領域が表示される。図13(b)に示す例では、参照領域314a~314dは、それぞれ、好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、単球(MONO)、および好酸球(EO)の参照領域である。
【0084】
参照領域314a~314dには、それぞれ対応するドットの集団に付された色よりも僅かに薄い色が付される。これにより、参照領域314a~314dが表示された場合でも、ユーザは、3次元分散図310上のドットを把握しながら、参照領域314a~314dがどのドットの集団に対応するかを把握できる。
【0085】
3次元分散図310に表示される参照領域は、健常人の場合のドットの集団の分布領域である。言い換えれば、参照領域は、各有形成分の典型的な分布領域(統計的に通常分布する領域)であり、健常人との違いを客観的に判断するための領域である。
【0086】
なお、参照領域の設定は、ユーザにより変更されてもよい。たとえば、参照領域は、画面300に表示中の検体を採取した被検者の、所定日数前または所定回数前の検体に基づくドットの集団の分布領域に設定されてもよい。この場合の参照領域は、被検者の検体に含まれる各有形成分の時系列の変化を、客観的に判断するための領域である。
【0087】
図12に戻り、2次元分散図321~323は、3次元分散図310の3軸のパラメータのうち2つのパラメータを軸とする2次元分散図である。2次元分散図321~323は、互いに2軸のパラメータの組み合わせが異なっている。2次元分散図321~323は、画面300の右端に位置するサブ領域305に配置されている。
【0088】
表示切替ボタン303は、2次元分散図321~323を、それぞれサーフェスプロット図371~373(図14参照)に切り替えるためのボタンである。ユーザが表示切替ボタン303をクリックすると、サブ領域305において、2次元分散図321~323に代えて、それぞれサーフェスプロット図371~373が表示される。
【0089】
図14は、表示切替ボタン303の操作によりサーフェスプロット図371~373が表示された状態の画面300の構成を模式的に示す図である。
【0090】
サーフェスプロット図371~373において、底面(色の付いた面)は、3次元分散図310の3軸のパラメータのうち2つのパラメータを軸とする面であり、高さ方向は頻度(個数)を示す。2次元分散図321~323では、同じ測定値の有形成分に対応するドットが同じ座標に描画されるため、ドットの密度を把握しにくい。これに対し、サーフェスプロット図371~373では、同じ座標にどの程度のドットがプロットされているかが頻度(個数)で把握できるため、ドットの密度を把握しやすくなる。
【0091】
図12に戻り、種類選択領域330には、画面300に表示された検体の測定チャンネルで分類される有形成分の種類の一覧が表示されており、各種類名にチェックボックスが設けられている。WDFチャンネルの場合、図12に示すように、種類選択領域330には、好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、単球(MONO)、好酸球(EO)、幼若顆粒球(IG)、デブリス(Debris)、および未分類(Unclassified)が表示される。このとき、3次元分散図310内のドットが分類されなかったドットの種類については、種類名およびチェックボックスが、種類選択領域330内の破線の囲みで示すように、チェック操作できないようにグレー表示される。初期設定では、全てのドットの種類のチェックボックスがチェックされている。
【0092】
ユーザが種類選択領域330内のチェックボックスのチェックをオフにすることで、該当する種類のドットが、3次元分散図310、2次元分散図321~323、およびサーフェスプロット図371~373において非表示に設定される。他方、ユーザが種類選択領域330内のチェックボックスのチェックをオンにすることで、該当する種類のドットが、3次元分散図310、2次元分散図321~323、およびサーフェスプロット図371~373において表示される。
【0093】
なお、種類選択領域330内のチェックボックスの操作に応じて、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373のドットの表示が連動しなくてもよい。
【0094】
領域選択領域340には、四角形選択および自由選択をそれぞれ設定できる2つのアイコン341と、選択範囲の表示または非表示を選択できるチェックボックス342と、が表示されている。ユーザが2つのアイコン341のいずれかを選択する操作を行うと、3次元分散図310においてドットを選択する際の画面上における囲み形状が、選択したアイコン341に応じて決定される。
【0095】
ユーザは、領域選択領域340で囲み形状を決定した後、3次元分散図310の3軸からなる立方体において、非表示に設定したいドットを囲む。これにより、立方体内のドットのうち、囲まれた領域内に存在する全てのドットが選択される。そして、ユーザは、チェックボックス342のチェックを外す。これにより、3次元分散図310上で囲み形状により選択されたドットが、3次元分散図310、2次元分散図321~323、およびサーフェスプロット図371~373において非表示に設定される。また、ユーザがチェックボックス342のチェックをオンにすることにより、非表示にされたドットが再度表示状態となる。
【0096】
なお、領域選択領域340の操作に応じて、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373のドットの表示が連動しなくてもよい。
【0097】
軸選択領域350は、3次元分散図310の3つの軸のパラメータを選択可能なプルダウンメニュー351~353と、プルダウンメニュー351~353に対応してそれぞれ配置されたラベル351a~353aと、を備える。プルダウンメニュー351~353は、測定チャンネルに応じたパラメータを選択可能に構成される。画面300が新たに表示される場合、3次元分散図310の3つの軸のパラメータは自動で初期設定され、プルダウンメニュー351~353の初期値も自動で設定される。
【0098】
図15は、測定チャンネルに応じて3次元分散図310に設定可能な軸のパラメータと、3次元分散図310の3つの軸に初期設定されるパラメータとを示す図である。
【0099】
WNRチャンネルの場合、設定可能なパラメータは、SFL、FSC、SSC、FSCWであり、X軸、Y軸、Z軸に初期設定されるパラメータは、それぞれ、SFL、FSC、SSCである。WDFチャンネルの場合、設定可能なパラメータは、SSC、SFL、FSC、FSCW、SFL_EXTであり、X軸、Y軸、Z軸に初期設定されるパラメータは、それぞれ、SSC、SFL、FSCである。なお、WDFチャンネルでは、体液モード(BF)の場合のみSFL_EXTが軸として設定可能である。WPCチャンネルの場合、設定可能なパラメータは、SSC、SFL、FSC、FSCWであり、X軸、Y軸、Z軸に初期設定されるパラメータは、それぞれ、SSC、SFL、FSCである。
【0100】
RETチャンネルの場合、設定可能なパラメータは、SFL、FSC、SSC、FSCW、SFL_EXT、FSC_LOGであり、X軸、Y軸、Z軸に初期設定されるパラメータは、それぞれ、SFL、FSC、SSCである。PLT-Fチャンネルの場合、設定可能なパラメータは、SFL、FSC、SSC、FSCWであり、X軸、Y軸、Z軸に初期設定されるパラメータは、それぞれ、SFL、FSC、SSCである。
【0101】
図12の場合、WDFチャンネルに関する画面300が新たに表示された状態であるため、図15に示す初期設定に従って各軸のパラメータが設定されている。
【0102】
図12に戻り、ユーザが軸選択領域350のプルダウンメニュー351~353を操作して3次元分散図310の軸311~313のパラメータを変更すると、画面300に表示されている2次元分散図321~323の2つの軸またはサーフェスプロット図371~373の2つの軸が、プルダウンメニュー351~353のパラメータに合わせて変更される。
【0103】
また、3次元分散図310の軸311~313は、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に対応している。軸311~313は、それぞれ、プルダウンメニュー351~353に表示されたパラメータである。ここで、軸311~313は、それぞれ、青色、緑色、赤色であり、ラベル351a、352a、353a内の文字色は、それぞれ、青色、緑色、赤色であり、ラベル351a、352a、353a内の文字列は、それぞれ、「青」、「緑」、「赤」を含む。これにより、ユーザは、プルダウンメニュー351~353で選択されたパラメータに対応する軸が、3次元分散図310のどの軸に対応するかを直感的に把握できる。
【0104】
また、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373で使われる軸も色分けされており、3次元分散図310と、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373とにおいて、同じパラメータの軸には共通の色が付されている。
【0105】
検体送りボタン361、362は、それぞれ、前の検体および次の検体に送るためのボタンである。ユーザが検体送りボタン361、362をクリックすると、画面300で表示されている検体が、それぞれ、図9の画面100の並び順において前の検体および次の検体に送られ、送られた検体についての情報が画面300に表示される。なお、図9の画面100において、あらかじめフィルタ条件の設定により検体の並び順が変更されたあと、画面300の検体送りボタン361、362が操作されると、画面100において変更された並び順に基づいて、画面300に表示される検体が、前の検体または次の検体に送られる。
【0106】
閉じるボタン304は、画面300を閉じるためのボタンである。ユーザが閉じるボタン304をクリックすると、画面300が閉じられ、画面300を開く操作を行った画面(たとえば、図10、11の画面200)が、表示部23に表示される。
【0107】
閉じるボタン304が操作されると、画面300の表示条件(種類選択領域330の選択状態、領域選択領域340の選択状態および表示状態、軸選択領域350の3つのパラメータの選択状態、3次元分散図310のビュー角度、ならびに、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373の何れかの表示状態)は全てリセットされる。次に画面300が表示される場合、画面300は初期設定の表示条件で表示される。具体的には、種類選択領域330の全てのチェックボックスがオンにされ、領域選択領域340の選択領域は解除状態とされ、軸選択領域350の3つの軸のパラメータは図15に示す初期値に設定され、3次元分散図310のビュー角度が初期設定に設定され、サブ領域305には2次元分散図321~323が表示される。
【0108】
なお、閉じるボタン304が操作されない限り、検体送りボタン361、362が操作されたとしても、同じ測定チャンネルかつ同じ測定モードであれば、画面300の表示状態は維持される。表示状態の維持については、追って表示例2を参照して説明する。
【0109】
次に、図16(a)~図26(d)を参照して、画面300および3次元分散図310の表示例1~5について説明する。
【0110】
図16(a)~(d)は、表示例1における3次元分散図310を示す図である。表示例1では、測定モードは全血モード(WB)であり、測定チャンネルはWPCチャンネルである。
【0111】
図16(a)に示すように、ビュー角度がデフォルトである場合、幼若細胞および異常細胞のドット群315aが、手前側に大きく広がる白血球のドット群315bの後ろに隠れているため、ユーザは、幼若細胞および異常細胞の分布を確認しにくい。また、同じ座標に互いに異なる種類のドットが複数存在する場合、その座標において数の多い方の種類のドットのみが表示されるため、数の少ない方の種類のドットを確認できない。図16(a)に示す例では、ドット群315bの数が多いため、同じ位置にあるドット群315aの表示が行われていない可能性がある。
【0112】
これに対し、ユーザは、図12の種類選択領域330内のチェックボックスを操作して白血球のドット群315bを非表示にすることにより、図16(b)に示すように、白血球のドット群315bの後ろに隠れていた幼若細胞および異常細胞のドット群315aを確認できる。また、ユーザは、白血球と同じ座標にあるために表示されていなかった幼若細胞および異常細胞のドット群315bを確認できる。
【0113】
また、ユーザは、図16(b)の状態から、3次元分散図310のビュー角度を変更することにより、図16(c)に示すように、幼若細胞および異常細胞のドット群315aの分布をより見やすく設定できる。
【0114】
また、ユーザは、図16(c)の状態から、図12の種類選択領域330内のチェックボックスを操作して白血球のドット群315bを再度表示させることにより、図16(d)に示すように、幼若細胞および異常細胞のドット群315aと白血球のドット群315bとの位置関係を把握できる。
【0115】
図17~23は、表示例2における画面300を模式的に示す図である。
【0116】
ユーザが図10の2次元分散図231をダブルクリックすると、図17に示すように、画面300は初期設定の表示条件で表示される。図17において、測定モードは全血モード(WB)であり、測定チャンネルはWDFチャンネルである。この状態から、ユーザは、3次元分散図310の表示領域に対してドラッグ操作を行うことにより、図18に示すようにビュー角度を変更することができる。
【0117】
続いて、図18の画面300において、ユーザが検体送りボタン361、362をクリックすると、図9の測定データ表示領域110の並び順に応じて、図19に示すように、画面300に表示される検体が変更される。このとき、遷移前の図18の画面300の測定モードおよび測定チャンネルと、遷移後の図19の画面300の測定モードおよび測定チャンネルとが同じであれば、画面300の表示条件が維持される。
【0118】
より詳細には、遷移前の検体の測定モードと遷移後の測定モードが同じであり、かつ、遷移後の検体について、遷移前の図18の画面300で表示された測定チャンネルと同じ測定チャンネルの測定データが存在する場合、遷移後の図19に示す画面300の表示条件が、遷移前の図18に示す画面300の表示条件と同じに設定される。これにより、同一の測定条件(測定モードと測定チャンネルの両方が同じ状態)の検体について、ユーザは、同一の表示条件で3次元分散図310を確認できる。
【0119】
続いて、図19に示す画面300において、ユーザが検体送りボタン361、362をクリックすると、図20に示すように画面300に表示される検体が変更される。図20において、測定モードは体液モード(BF)であり、測定チャンネルはWDFチャンネルである。したがって、遷移前の図19の画面300と比較して測定モードが異なっているため、体液モード(BF)およびWDFチャンネルの場合の表示条件(図20では初期設定の表示条件)で画面300が表示される。この状態から、ユーザは、3次元分散図310の表示領域に対してドラッグ操作を行うことにより、図21に示すようにビュー角度を変更することができる。
【0120】
続いて、図21の画面300において、ユーザが検体送りボタン361、362をクリックして、再度図19に示した検体を画面300に表示させると、図22に示すように、図19の場合と同様の表示条件で画面300が表示される。すなわち、全血モード(WB)およびWDFチャンネルの場合の表示条件は、図19の画面300の表示条件として保持されている。このため、図22に示すように、再度同じ測定モードおよび測定チャンネルで表示が行われる場合には、同じ表示条件で画面300が表示される。
【0121】
続いて、図22の画面300において、ユーザが検体送りボタン361、362をクリックすると、図23に示すように画面300に表示される検体が変更される。図23において、測定モードは全血モード(WB)であり、測定チャンネルはWNRチャンネルである。したがって、遷移前の図22の画面300と比較して測定チャンネルが異なっているため、全血モード(WB)およびWNRチャンネルの場合の表示条件(図23では初期設定の表示条件)で画面300が表示される。
【0122】
図24(a)、(b)は、表示例3における2次元分散図231および3次元分散図310を示す図である。
【0123】
図24(a)は、図10の画面200におけるWDFチャンネルの2次元分散図231である。この場合、2次元分散図231の縦軸(SFL)の上限の領域A11に、蛋白量の多い抗体産生細胞に対応するドットが分布することがある。このように、軸方向の端にドットが密集する場合、ユーザは、この領域にどの程度のドットが分布しているかを把握しにくい。
【0124】
これに対し、ユーザは、2次元分散図231をダブルクリックすることにより画面300を表示させて、さらに図24(b)に示すように3次元分散図310のビュー角度を調整する。これにより、ユーザは、軸方向の端に密集するドットをより詳細に把握できる。すなわち、ユーザは、図24(b)に示す3次元分散図310を参照して、領域A11に対応する領域A12内のドットの分布を確認することで、縦軸(SFL)の上限に向かってどのようにドットが分布しているかを把握し、領域A12にどの程度のドットが分布しているかを把握できる。
【0125】
図25(a)、(b)は、表示例4における3次元分散図310を示す図である。
【0126】
図25(a)は、WNRチャンネルの3次元分散図310である。図25(a)に示す例では、白血球のドット群316aが、手前側に大きく広がる不明粒子のドット群316bの後ろに隠れている。また、白血球のドットと不明粒子のドットとが同じ座標に存在する場合、ユーザは、3次元分散図310のビュー角度を変更しても、白血球のドットを確認することはできない。
【0127】
これに対し、ユーザは、画面300の種類選択領域330内のチェックボックス(図12参照)を操作して、図25(b)に示すように、不明粒子の集団(ドット群)を非表示にできる。これにより、不明粒子のドットと重なっていた領域A2近傍の白血球のドット群316aを詳細に確認できる。
【0128】
なお、図25(a)のようにドット群316a、316bが分布する場合、ユーザは、他の手順により、領域A2近傍の白血球のドット群316aを確認できる。すなわち、ユーザは、種類選択領域330内のチェックボックスを操作して、白血球を非表示とした状態で、画面300の領域選択領域340のアイコン341(図12参照)を操作して、四角形選択または自由選択により、領域A2近傍を囲んで選択する。続いて、ユーザは、画面300の領域選択領域340のチェックボックス342のチェックを外すことで、領域A2近傍に表示されている不明粒子のドットを非表示にする。そして、ユーザは、種類選択領域330内のチェックボックスを操作して、再び白血球のドット群316aを表示させる。これにより、不明粒子のドット群316bと重なっていた領域A2近傍の白血球のドット群316aを詳細に確認できる。
【0129】
図26(a)~(d)は、表示例5における2次元分散図236、237および3次元分散図310を示す図である。
【0130】
図11を参照して説明したように、体液モード(BF)のWDFチャンネルでは、SFLに関するパラメータとして、通常のスケールのSFLと、広範囲に拡張されたスケールのSFL_EXTとがある。
【0131】
図26(a)は、図11に示す画面200の2次元分散図236である。2次元分散図236では、縦軸は通常のスケールのSFLである。ユーザが2次元分散図236をダブルクリックすると、図26(b)に示す3次元分散図310が表示される。このとき、3次元分散図310の縦軸は、2次元分散図236と同じ縮尺のSFLとなる。
【0132】
図26(c)は、図11に示す画面200の2次元分散図237である。2次元分散図237では、縦軸は広範囲に拡張されたスケールのSFL_EXTである。ユーザが2次元分散図237をダブルクリックすると、図26(d)に示す3次元分散図310が表示される。このとき、3次元分散図310は、2次元分散図237と同じ縮尺のSFL_EXTとなる。
【0133】
図26(b)の3次元分散図310の場合、ユーザは、縦軸(SFL)の上限に張り付いているドット群の形状、すなわち、領域A31付近においてドット群がどのように連なっているかを適正に把握できない。しかしながら、図26(d)の3次元分散図310の場合、領域A32が領域A31に対応する。したがって、図26(d)の3次元分散図310によれば、ユーザは、領域A32付近におけるドット群の形状を適正に把握することができる。
【0134】
次に、図27(a)、(b)を参照して、3次元分散図310の直方体形状の面の色について説明する。図27(a)、(b)は、それぞれ、図16(c)、(b)と同様の図である。
【0135】
図27(a)に示すように、3次元分散図310には、X軸、Y軸、Z軸にそれぞれ対応する軸311~313が設けられている。軸311~313が1点で交わる点が原点317である。ここで、直方体形状の6つの面のうち、3つの面318a、318b、318cの内側には、それぞれ異なる色が付されている。面318aは、軸311と軸313とにより形成される面である。面318bは、軸311と軸312とにより形成される面に平行で原点317を通らない面である。面318cは、軸312と軸313とにより形成される面に平行で原点317を通らない面である。
【0136】
このように、3次元分散図310の6面のうち、面318a、318b、318cに色が付されることにより、ユーザは、3次元分散図310がどのようなビュー角度で表示されているかを把握しやくなる。また、6面のうち3面のみに色が付されるため、3次元分散図310の表示が煩雑になることを回避できる。
【0137】
なお、3次元分散図310のビュー角度によっては、面318a、318b、318cの内側面ではなく外側面が表示される場合がある。たとえば、図27(b)に示すビュー角度の場合、面318cの外側面が表示されている。このように面318a、318b、318cのうち外側面が表示されている面については、透明(透過表示)とされる。これにより、面318a、318b、318cの色が重なって表示されることがないため、3次元分散図310の表示が煩雑になることを回避できる。
【0138】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0139】
ステップS14において、有形成分から少なくとも3つのパラメータの測定値が取得される。ステップS1741において、3つのパラメータを軸311~313とし、有形成分をドットで示す3次元分散図310を含む画面300が表示される。ステップS1743において、ユーザの操作に応じて、3次元分散図310上のドットのうち特定のドットが非表示にされる。
【0140】
この処理によれば、ユーザは、所望の有形成分の分析に不要なドットを、3次元分散図310において非表示とすることができる。これにより、ユーザが望む有形成分のドットを3次元分散図310上において見やすく表示でき、3次元分散図310における有形成分の分布の視認性を向上させることができる。また、ユーザは、測定項目表示領域120に表示されている各測定項目に対応するデータ(測定値)のバリデーションにおいて、3次元分散図310を用いて、幼若細胞や異常細胞の有無、各有形成分に対応するドット群の位置関係や分布を正確に把握することができるため、有形成分の分析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0141】
ステップS16において、測定値に基づいて、図5の分類の値に示すように、有形成分が複数の種類に分類される。ステップS1742において、分類された有形成分の種類の選択が、種類選択領域330を介して受け付けられる。ステップS1743において、選択を受け付けた有形成分の種類ごとに特定のドットが非表示にされる。こうすると、有形成分の種類ごとに3次元分散図310上のドットを非表示にすることができる。これにより、たとえば、互いに異なる種類のドットが3次元分散図310上で重なる場合に、一方の種類のドット群を非表示とすることで、他方の種類のドット群を把握しやすくなる。よって、ユーザは、所望の有形成分の種類に対する分析を円滑かつ正確に進めることができる。
【0142】
ステップS174において、特定のドットを非表示にした状態で、3次元分散図310に対する操作に応じて3次元分散図310のビュー角度が変更される。こうすると、ユーザは、3次元分散図310のビュー角度を変更して、ドットの分布を詳細に把握することができる。
【0143】
ステップS174において、3次元分散図310上のドットが種類ごとに色分けして表示される。こうすると、各種類に対応するドットを視覚的かつ容易に把握できる。
【0144】
ドットが非表示に設定された場合、種類選択領域330または領域選択領域340を介して、3次元分散図310上に表示させるドットの選択が受け付けられる。これにより、いったん非表示に設定されたドットを、再度表示させることができる。
【0145】
ステップS1742において、種類選択領域330または領域選択領域340を介して、3次元分散図310上に非表示にさせる特定のドットの選択が受け付けられる。これにより、ユーザは、所望のドットをより見やすくでき、当該ドットの分析を円滑かつ正確に進めることができる。
【0146】
ステップS173において、測定チャンネルが互いに異なる複数の2次元分散図231~237が表示される。図10、11の2次元分散図231~237の何れかが、2次元分散図に対して操作が行われることにより選択される。ステップS174において表示される3次元分散図310は、選択された2次元分散図231~237の測定チャンネルに対応する3次元分散図310である。こうすると、ユーザは、所定の測定チャンネルの2次元分散図231~237を参照中に、当該測定チャンネルの3次元分散図310を円滑に参照することができる。
【0147】
ステップS174において、選択された2次元分散図231~237で使われる軸と同じ縮尺の軸を用いて3次元分散図310が表示される。たとえば、図26(a)、(b)に示すように、3次元分散図310の縦軸と2次元分散図236の縦軸とは、同じ縮尺の軸(通常のスケールのSFL)であり、図26(c)、(d)に示すように、3次元分散図310の縦軸と2次元分散図237の縦軸とは、同じ縮尺の軸(広範囲に拡張されたスケールのSFL_EXT)である。こうすると、ユーザは、2次元分散図231~237と同様にして、3次元分散図310を用いた有形成分の分析を行うことができる。
【0148】
ステップS174において、軸選択領域350を介して、4以上の複数のパラメータから3次元分散図310の3軸が選択される。こうすると、ユーザは、複数のパラメータから任意のパラメータを3軸とする3次元分散図310を表示させることができる。これにより、ユーザは、3次元分散図310を用いた有形成分の分析をさらに詳細に行うことができる。
【0149】
3次元分散図310で使われる3軸は色分けされており、軸選択領域350には、各軸の色と各軸に設定されるパラメータ名とが表示される。こうすると、3次元分散図310のビュー角度が変化したとしても、ユーザは、3次元分散図310の各軸が、どのパラメータに対応するかを円滑に把握できる。
【0150】
ステップS174において、3次元分散図310の表示条件(ドットの表示状態、軸のパラメータ、およびビュー角度)は、検体の測定モードごとに設定される。たとえば、図19の画面300において検体送りボタン361、362が操作され、図20の画面300に示すように他の検体が表示された場合、図19の測定モードと図20の測定モードが互いに異なるため、図20の画面300において表示条件が初期設定される。こうすると、ユーザは、検体の測定モードごとに3次元分散図310を、あらかじめ設定された最適な表示条件で表示させることができる。これにより、ユーザは、3次元分散図310を用いた有形成分の分析を円滑に開始できる。
【0151】
ステップS174において、3次元分散図310の表示条件(ドットの表示状態、軸のパラメータ、およびビュー角度)は、測定値を取得するステップS14で使用する測定チャンネルごとに設定される。たとえば、図22の画面300において検体送りボタン361、362が操作され、図23の画面300に示すように他の検体が表示された場合、図22図23の測定チャンネルが互いに異なるため、図23の画面300において表示条件が初期設定される。こうすると、ユーザは、測定チャンネルごとに3次元分散図310を、あらかじめ設定された最適な表示条件で表示させることができる。これにより、ユーザは、3次元分散図310を用いた有形成分の分析を円滑に開始できる。
【0152】
ステップS174において、画面300の3次元分散図310とは異なる領域(サブ領域305)に、3次元分散図310に対応する2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373が表示される。こうすると、ユーザは、3次元分散図310とともに、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373を参照して、有形成分をさらに詳細に分析できる。
【0153】
ステップS174において、3次元分散図310の3軸として使用した3つのパラメータのうち2つが、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373のパラメータに設定される。こうすると、1つの画面300において、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373が、3次元分散図310と関連した図になるため、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373を用いた有形成分の分析を円滑に行うことができる。
【0154】
ステップS174において、軸選択領域350を介して、3次元分散図310の軸として使用するパラメータの設定が受け付けられ、受け付けられパラメータに基づいて、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373のパラメータが変更される。こうすると、ユーザが3次元分散図310の軸のパラメータを変更した場合に、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373のパラメータが、3次元分散図310のパラメータに合わせて変更される。これにより、ユーザは、同じパラメータで、3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とを対照できるため、各図の比較作業を円滑に行うことができる。
【0155】
ステップS174において、特定のドットを非表示にする指定を受け付けるステップと連動して、非表示される特定のドットに対応する2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373上のドットが非表示にされる。こうすると、3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とから、同じドットが消去されるため、ユーザは、3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とを用いて、有形成分を円滑に分析できる。
【0156】
3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とで使われる軸は色分けされており、3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とにおいて、同じパラメータの軸には共通の色が付される。こうすると、3次元分散図310と、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373とにおいて、ユーザは、軸を区別して把握できるとともに、各パラメータに基づく分析を円滑に行うことができる。
【0157】
3次元分散図310に、有形成分の集団に対応する参照領域が重ねて表示される。図13(b)に示す例では、有形成分の集団にそれぞれ対応して、参照領域314a~314dが表示される。こうすると、ユーザは、参照領域と、3次元分散図310上のドットの分布とを比較することにより、有形成分をさらに詳細に分析できる。
【0158】
具体的には、参照領域が、健常人との違いを客観的に判断するための領域である場合、ユーザは、参照領域と当該検体の各有形成分の分布とを比較することで、当該検体の各有形成分の分布状態を相対的に把握しやすくなる。これにより、当該検体の有形成分に基づく病理診断を円滑に進めることができる。また、参照領域が、被検者の検体に含まれる各有形成分の時系列の変化を客観的に判断するための領域である場合、ユーザは、検体に含まれる有形成分の分布状態がどのように変化したかを把握することにより、被検者の病状の変化を判断し、投薬方針などを決めることができる。
【0159】
3次元分散図310が、検体送りボタン361、362に対する操作により、他の検体の3次元分散図310に切替えられる。こうすると、ユーザは、一の検体の3次元分散図310と他の検体の3次元分散図310とを容易に比較することができるため、一方または両方の検体に関する有形成分をさらに詳細に分析できる。
【0160】
他の検体の3次元分散図310が、切替え前の表示条件が維持されて表示される。たとえば、図18の画面300において検体送りボタン361、362が操作され、図19の画面300に示すように他の検体が表示された場合、図18図19の測定モードおよび測定チャンネルが一致するため、図19の画面300は、図18の画面300の表示条件が維持されて表示される。こうすると、ユーザは、一の検体の3次元分散図310と他の検体の3次元分散図310とを、同じ表示条件で表示させることができるため、両方の3次元分散図310を円滑に比較できる。
【0161】
図16(a)~図26(d)に示したように、ユーザは、画面300に表示される3次元分散図310を参照することにより、有形成分の集団ごとの分布形状を確認することができる。このように分布形状を確認できると、検体を採取した被検者の状態の判断に分布形状を役立てることができる。
【0162】
ステップS14において、有形成分から測定値が取得される。ステップS16において、測定値に基づく少なくとも3つのパラメータと、有形成分の属性(図5の分類の値)と、を含む測定データ(データセット)が取得される。ステップS1741において、測定データ(データセット)に基づき、有形成分をドットで示す3次元分散図310を含む画面300が表示される。ステップS1743において、有形成分の属性に基づいて、3次元分散図310上のドットが表示の有無を変更して表示される。
【0163】
この処理によれば、所定の有形成分の分析に不要なドットが、3次元分散図310において表示の有無を変更して表示される。これにより、所定の有形成分のドットを3次元分散図310上において見やすく表示でき、3次元分散図310における有形成分の分布の視認性を向上させることができる。また、ユーザは、測定項目表示領域120に表示されている各測定項目に対応するデータ(測定値)のバリデーションにおいて、3次元分散図310を用いて、幼若細胞や異常細胞の有無、各有形成分に対応するドット群の位置関係や分布を正確に把握することができるため、有形成分の分析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0164】
<変形例1:ドット指定の方法に関する変形例>
上記実施形態1では、表示/非表示を切り替えるドット群を指定するために、有形成分の種類を指定する例と、特定の座標にあるドットを範囲指定する例を説明した。これに対し、表示/非表示を切り替えるドット群の指定として、別の方法を採用できる。
【0165】
図28(a)、(b)は、変形例1に係る3次元分散図310を模式的に示す図である。
【0166】
変形例1では、表示密度を変更する対象の有形成分の種類を受け付けるためのプルダウンメニュー401と、非表示とするドットの表示密度を変更するためのスライダーバー402(以下、バーという)と、が3次元分散図310とともに表示される。変形例1では、表示されているバーを操作することでドットの密度を変更することができ、密度の変更によって表示されるドットの数を0~1の範囲内で連続的に変更することができる。図28(a)では、変更対象の有形成分の種類が「A」に設定されている。また、密度が1.0に設定されており、対象の有形成分のドットが100%表示されている。ユーザがバーを操作して密度を0.3に変更すると、図28(b)のように、対象の有形成分の70%が非表示とされ、残りの30%のみが表示される。つまり図28(a)、(b)に示す例によれば、ユーザは特定の有形成分や特定のドットを指定する代わりに、密度を指定することでドットの表示/非表示を切り替えることができる。
【0167】
密度の指定に応じたドットの表示は、たとえば、密度に応じた係数を各ドットの度数に乗じることで実現できる。たとえば図28(a)において、種類Aに分類された有形成分(以下、「有形成分A」という)に対する密度を0.3に変更すると、各座標における有形成分Aの度数に係数0.3を乗じた値で度数が再計算される。座標1では有形成分Aの度数が20から6に減り、同一座標における種類Bに分類された有形成分(以下、「有形成分B」という)の度数である10を下回るため、座標1のドットの色が有形成分Aの色から有形成分Bの色に変わる。また、座標2では有形成分Aの度数が0.9となり1未満になるためドットが消える。密度に応じた係数をドットの度数に乗じると、全てのドットの度数を一律に変更することができる。
【0168】
こうして、図28(a)に示すように有形成分Aによって確認できなかった有形成分Bのドットが、図28(b)に示すように確認可能な状態となる。
【0169】
ドットの度数を一律に変更するのではなく、ドットの度数に応じた閾値を変更することで表示/非表示を切り替えてもよい。たとえば、図28(a)、(b)のバーによって指定された密度に応じて、ドットの度数をスコアとするパーセンタイルを閾値として指定してもよい。この場合、たとえば、密度0.3が指定されているとき、ドットの度数が小さい方から順に70パーセンタイルのドットを非表示にする。表示変更のための閾値は、パーセンタイルでもよいし、座標に対する度数の絶対値でもよいし、最大度数に対する相対値であってもよい。
【0170】
以上、変形例1によれば、表示されるドットの密度を変更することができる。たとえば、第1の有形成分のドットが濃くて第2の有形成分のドットが隠れてしまう場合にも、第1有形成分のドットの密度を下げることで、第2の有形成分の分布を視認しやすくすることができる。
【0171】
<変形例2:ドットの表示形式を変更する例>
(2-1:透明度)
上記実施形態では、ドットの表示/非表示を切り替える例を示したが、以下の変形例2-1のようにドットの表示形式を変更してもよい。
【0172】
図29(a)、(b)は、変形例2-1に係る、3次元分散図310を模式的に示す図である。
【0173】
変形例2-1では、透明度を変更するためのスライダーバー403(以下、バーという)が、3次元分散図310とともに表示される。変形例2-1では、表示されているバーを操作することでドットの透明度を0~100%の範囲内で連続的に変更することができる。図29(a)では、透明度が0%に設定されており、対象の有形成分のドットはデフォルトの状態で表示されている。ユーザがバーを操作して透明度を50%に変更すると、図29(b)のように、対象の有形成分のドットが50%の透明度で表示される。これにより、図29(b)のように、有形成分Aの背後に隠れていた有形成分Bのドットが浮かび上がる。
【0174】
透明度を変更できるようにするすることで、3次元分散図310上で同じ位置に重なって分布している他の有形成分のドット群を透して、所望のドット群を観察することができる。重複している他の有形成分を完全に非表示にする場合に比べて、有形成分の分布を比較観察しやすい点で有利である。また、透明度を連続的に変更できることで、ユーザが所望する濃さでドットを表示することができる。分散図の観察においては、特定の集団の分布のみを観察するだけでなく、他の集団との分布のバランスを観察することも多い。たとえば、リンパ球の集団の分布の広がりが単球の集団の分布に及ぼす影響を観察することがあり、このような場合にも有用である。
【0175】
なお、図29(a)、(b)の例において、透明度の変更に応じて、図28(a)、(b)を用いて説明したように各ドットの度数が変更されてもよい。透明度に応じて各ドットの度数を変更すると、背後に隠れている(つまり表示画面の奥行方向にある)別の集団をより確実に観察できるだけでなく、2種類以上の集団が競合する座標における少数派の集団のドットの色が、透明度が下がることに応じて浮かび上がるため、隠れているドット群の分布の視認性が向上する。
【0176】
この場合、再計算後のドットの度数が1未満になっても、一律にドットを非表示にしないようにすることが好ましい。たとえば、有形成分Aの透明度を50%にした結果、ある座標における有形成分Aのドットの度数が1未満になった場合でも、同じ座標に1以上の度数の他の有形成分がプロットされていない限り、有形成分Aのドットの表示が残ることが好ましい。このようにすれば、透明度を下げても、有形成分の外延が視認可能な状態が維持されるため、異なる種類の集団の分布の広がりを対比するうえで有用である。
【0177】
(2-2:表示順位の指定)
ドットの表示形式の変更は、上記変形例2-1に限らず、以下の変形例2-2のように行われてもよい。
【0178】
図30(a)、(b)は、変形例2-2に係る、3次元分散図310および表示順変更領域410を模式的に示す図である。
【0179】
変形例2-2では、ドットの表示順を変更するための表示順変更領域410が、3次元分散図310とともに画面300に表示される。表示順変更領域410は、3次元分散図310上に表示される有形成分の複数の種類と、表示順位と、表示順位を変更するためのキーと、表示順位の指定を行うか否かのチェックボックスと、を含む。表示順変更領域410には、複数の有形成分の種類がリスト形式で表示される。
【0180】
ユーザは、表示順変更領域410の中から一つの有形成分を選択することができる。図30(a)の例では、表示順位2位の「異常細胞」が選択されている。ユーザは、有形成分の一つの種類を選択した状態で、キーを操作することにより、表示順位を変更することができる。図30(b)の例は、「異常細胞」を表示順位2位から1位に変更した状態を示している。さらに、ユーザは、表示順位を指定する場合にはチェックボックスをクリックしてチェックを入れることができる。デフォルトではチェックは外れており、この場合、表示順位の指定はない。
【0181】
表示順位の指定がない状態では、上記実施形態の説明において述べたように、各座標における有形成分の度数に応じた色のドットが描画される。つまり、同じ座標に複数種類の有形成分がプロットされている場合、度数の多い種類の有形成分の色のドットが表示され、度数の少ない種類の有形成分の色のドットは表示されない。
【0182】
表示順位が変更されてチェックボックスにチェックが付されると、変更後の順位に応じて、3次元分散図310上のドットの表示の優先順位が変更される。具体的には、異なる種類の有形成分がプロットされた同じ座標において、度数に関わらず表示順位の高い種類の有形成分の色のドットが優先的に描画される。図30(b)では、異常細胞は白血球よりも表示の優先順位が高いため、白血球と異常細胞の両方がプロットされた座標については、異常細胞の色のドットが描画され、白血球の色が消える。
【0183】
表示順位の変更によれば、異なる種類の有形成分のドット群が重複していても、所望の種類の有形成分のドット群を観察することができる。さらに、他の種類の有形成分のドットは非表示にされないため、他の種類の有形成分との対比観察が可能である。
【0184】
なお、変形例2-2において、変形例1のような密度の変更や、変形例2-1のような透明度の変更を付加的に行えるようにしてもよい。
【0185】
また、上記変形例1、2においても、3次元分散図310において特定のドットの表示形式が変更されることに連動して、3次元分散図310で表示形式が変更されたドットに対応する、2次元分散図321~323またはサーフェスプロット図371~373上のドットが、表示形式を変更して表示されてもよい。
【0186】
<実施形態2>
実施形態2の検体分析装置1は、尿を検体として分析する装置である。実施形態2の検体分析装置1は、実施形態1の検体分析装置1とほぼ同様の構成を有するが、実施形態1の検体分析装置1と比較して、以下の点が異なっている。
【0187】
実施形態2では、試料調製部13は、尿検体に対して所定の試薬を混合することにより、赤血球を溶血させないSF測定試料と、赤血球を溶血させたCR測定試料と、を調製する。尿検体中の有形成分は、脂肪粒子、脂肪細胞、赤血球、白血球、精子、真菌、トリコモナス、上皮細胞、細菌、円柱、粘液糸、結晶などを含む。尿検体は、排泄された尿の他に、原尿、尿管中の尿、膀胱内の尿、尿道中の尿など、生体内から採取された尿を含む。
【0188】
検出部14(光学式検出部)は、偏光解消側方散乱光を受光可能な構成を有する。検出部14は、フローサイトメトリー法に基づいて、SF測定試料およびCR測定試料を測定する。検出部14は、フローセルD1に流れる各測定試料に光を照射し、測定試料中の有形成分から生じた前方散乱光、側方散乱光、偏光解消側方散乱光、および側方蛍光を受光して、受光した各光の強度に応じた波形状の検出信号を出力する。SF測定試料に基づく測定チャンネルは「SFチャンネル」と呼ばれ、CR測定試料に基づく測定チャンネルは「CRチャンネル」と呼ばれる。
【0189】
信号処理部15は、検出部14の各光の検出信号に基づいて、有形成分ごとに複数のパラメータの測定値を取得する。パラメータの測定値は、たとえば、波形のピーク値として取得される前方散乱光強度(FSC)、偏光解消側方散乱光強度(DSS)、側方蛍光強度(SFL)、および高感度に検出された側方蛍光強度(SFLH)を含む。
【0190】
制御部21は、検出部14に基づく測定値を用いて、有形成分を複数の種類に分類し、各測定項目についての結果値を取得する。制御部21は、SFチャンネルに関する測定値に基づいて、赤血球、円柱および結晶などを分類および計数する。制御部21は、図5、6と同様にして、有形成分ごとの分類および測定値と、分類の値に対応した表示/非表示に関する値とを、記憶部22に記憶する。
【0191】
次に、実施形態2に係る、画面を表示するステップS17で表示部23に表示される画面の表示例について説明する。
【0192】
図31(a)、(b)は、それぞれ、図10と同様の画面200において、グラフ表示領域230に表示される2次元分散図238、239を模式的に示す図である。2次元分散図238、239は、いずれもSFチャンネルに関する有形成分ごとの分類および測定値に基づいて表示される。2次元分散図238において、横軸はSFLHであり、縦軸はFSCである。2次元分散図239において、横軸はDSSであり、縦軸はFSCである。2次元分散図238、239では、分類された種類ごとのドット群が互いに異なる色で表示されている。
【0193】
図31(a)、(b)および以下に示す図32図34(b)では、各集団に対して、便宜上、3次元分散図または2次元分散図において有形成分の種類名のラベルが付されている。なお、このような種類名の文字列を含むラベルは、実施形態1、2の3次元分散図、2次元分散図、およびサーフェスプロット図に付されてもよい。これにより、ユーザは、種類ごとに色分けされたドット群が、どのような種類名かを円滑に把握できる。
【0194】
ここで、ユーザは、2次元分散図239を参照することにより、赤血球(RBC)および結晶(X’TAL)の分布をある程度は把握できる。しかしながら、実際には、図32に示すように、赤血球(RBC)および結晶(X’TAL)に対して、白血球(WBC)、細菌(BACT)、および上皮細胞(EC)が重なって分布することがある。この場合、赤血球(RBC)および結晶(X’TAL)の分布を正確に把握することは困難になる。これに対し、実施形態2では、画面300に3軸からなる3次元分散図310が表示されるため、3次元分散図310上で、赤血球および結晶を他の有形成分から分離して確認できる。
【0195】
図33(a)、(b)は、それぞれ、図12と同様の画面300に表示される3次元分散図310を模式的に示す図である。図33(a)、(b)に示す3次元分散図310において、軸311はDSSであり、軸312はFSCであり、軸313はSFLである。図33(a)、(b)に示す3次元分散図310は、図31(a)の2次元分散図238または図31(b)の2次元分散図239に基づいて表示される。3次元分散図310では、分類された種類ごとのドット群が互いに異なる色で表示されている。
【0196】
図33(a)において、白血球(WBC)、細菌(BACT)、および上皮細胞(EC)のSFLの測定値は、赤血球(RBC)と結晶(X’TAL)のSFLの測定値に比べて数段大きい。したがって、図33(a)の3次元分散図310において、赤血球(RBC)および結晶(X’TAL)と、白血球(WBC)、細菌(BACT)、および上皮細胞(EC)とは、軸313(SFL)の方向に分離して分布する。よって、ユーザは、ビュー角度を変更することにより、赤血球および結晶を他の有形成分から分離して確認できる。
【0197】
また、図33(a)に示す3次元分散図310が表示されている場合、ユーザは、画面300の種類選択領域330を操作して、図33(b)に示すように、白血球(WBC)、細菌(BACT)、および上皮細胞(EC)のドット群を非表示にできる。これにより、ユーザが望む赤血球(RBC)および結晶(X’TAL)のドット群を、3次元分散図310上において、より見やすく表示できる。
【0198】
図34(a)、(b)は、それぞれ、図12と同様の画面300に表示される3次元分散図310を模式的に示す図である。図34(a)、(b)に示す3次元分散図310において、軸311はSFLであり、軸312はDSSであり、軸313はFSCである。
【0199】
図33(a)の画面300において、ユーザが白血球(WBC)、細菌(BACT)、および上皮細胞(EC)のドット群を非表示にする操作を行うと、画面300は、たとえば、図34(a)に示す状態となる。図34(a)では、結晶(X’TAL)のドット群が、赤血球(RBC)および円柱(CAST)のドット群と重なっている。この状態から、ユーザが結晶(X’TAL)のドット群を非表示にする操作を行うと、画面300は、図34(b)に示す状態となる。これにより、ユーザが望む赤血球(RBC)および円柱(CAST)のドット群を、より見やすく表示できる。
【0200】
<その他の変更例>
上記実施形態では、図12、14に示したように、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373は、画面300の右端に位置するサブ領域305に表示された。しかしながら、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373が表示されるサブ領域は、表示部23において画面300と同時に表示される領域であればよく、画面300と同時に表示される他の画面内のサブ領域でもよい。
【0201】
また、上記実施形態において、3次元分散図310の軸311~313に、パラメータ名を示すラベルが表示されてもよい。また、2次元分散図321~323およびサーフェスプロット図371~373の各軸に、パラメータ名を示すラベルが表示されてもよい。これにより、ユーザは、各軸がどのようなパラメータ名の軸かを円滑に把握できる。
【0202】
また、上記実施形態において、2次元分散図231~237を介したユーザからの所定の操作が行われた後に3次元分散図310を表示する例を示したが、2次元分散図231~237を介さずに、ユーザからの所定の操作が行われた後に3次元分散図310を含む画面300を表示してもよい。
【0203】
また、上記実施形態において、3次元分散図310に設定される3つのパラメータは、必ずしも検出部14からの検出信号の波形のピーク値や幅などの測定値でなくてもよい。たとえば、3つのパラメータのうち、1つのパラメータが、他の2つのパラメータの測定値に対する演算により取得された値であってもよく、2つのパラメータが、他の1つのパラメータの測定値に対する演算により取得された値であってもよい。また、3つのパラメータのうち、1以上のパラメータが、検出部14からの検出信号に対する演算や解析により取得された値であってもよい。
【0204】
また、上記実施形態では、有形成分から得られた複数のパラメータの測定値に基づいて有形成分を分類する形態を例示したが、分類方法はこれに限られない。有形成分の形態学的特徴を反映した波形データを深層学習アルゴリズムによって解析することで、有形成分の種類を同定してもよい。たとえば、フローセルD1を流れる有形成分から生じた光(散乱光および蛍光)に対応する波形状のアナログ検出信号を個々の有形成分について取得し、アナログ検出信号を所定レート(たとえば10ナノ秒間隔で1024ポイント)でサンプリングすることで、個々の有形成分の形態学的特徴を反映したデジタルな波形データを取得することができる。このように取得された波形データを、分類が既知である有形成分の波形データを教師データとして訓練されたニューラルネットワーク構造の深層学習アルゴリズムに入力することで、波形データに対応する有形成分の分類を決定することができる。このような分類方法は、たとえば、国際公開第2020/196074号に開示されている。国際公開第2020/196074号およびこれに基づく公開公報は、本明細書において参照としてここに組み込まれる。
【0205】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0206】
1 検体分析装置
14 検出部
15 信号処理部
21 制御部
22 記憶部
23 表示部
24 入力部
231~237 2次元分散図
300 画面
310 3次元分散図
311~313 軸
314a~314d 参照領域
321~323 2次元分散図
381~383 サーフェスプロット図
D1 フローセル
図1
図2
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