(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063495
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】カテーテル及びカテーテルの作製方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61M25/00 620
A61M25/00 610
A61M25/00 504
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040896
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2019009657の分割
【原出願日】2019-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】重本 佳孝
(57)【要約】
【課題】
金属線が巻回されているカテーテルに対してX線不透過性マーカーを取り付けた場合であっても外周径が太くなることのないカテーテルを提供する。
【解決手段】
本発明にかかるカテーテル100は、インナーチューブ20の外周に金属線10が間隔をあけて螺旋状又はコイル状に間隔を開けるように巻回されているカテーテルにおいて、巻回されている前記金属線と隣接する金属線との間の隙間にX線不透過マーカー15が巻回されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーチューブの外周に金属線が間隔を開けて螺旋状又はコイル状に巻回されているカテーテルにおいて、
巻回されている前記金属線と隣接する金属線との間の隙間に、前記金属線の断面直径よりも細い直径である1本のX線不透過マーカーが前記金属線の巻回ピッチとほぼ同様のピッチで巻回されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記金属線は、樹脂からなる樹脂線と編組されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記金属線及び前記X線不透過マーカーの外周に樹脂が被覆されていることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のX線不透過マーカーを有するカテーテルを作製する作製方法において、
(1)インナーチューブの外周に金属線を巻回する金属線巻回工程
(2)金属線が巻回されたインナーチューブの任意の位置であって、金属線と金属線との間にX線不透過マーカーの一方側端部をインナーチューブに接着し、X線不透過マーカーを金属線と金属線との隙間に沿って巻回した後、X線不透過マーカーの他方側端部をインナーチューブに接着してX線不透過マーカーをインナーチューブに取り付けるX線不透過マーカー取付工程
(3)樹脂製の被覆チューブを被せた後、熱収縮させて金属線及びX線不透過マーカーを被覆チューブで被覆する樹脂被覆工程
を含むことを特徴とするX線不透過マーカーを有するカテーテルを作製する作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル及びカテーテルの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルには、手術中に身体内に挿入した場合にカテーテルの位置を把握するために、カテーテルの外周にX線不透過性マーカーが取り付けられる。
【0003】
X線不透過マーカーを取り付けたカテーテルとしては、例えば、カテーテルチューブの外周に金属マーカーを装着するとともに、該金属マーカーの両側に外周がテーパーに形成された一対の固定チューブを装着し、前記金属マーカーと前記固定チューブの間並びに前記固定チューブと前記カテーテルチューブの間に、段差が生じないように形成したカテーテルが提案されている(特許文献1)。
【0004】
かかるカテーテルによれば、段差をなくすことにより血管通過性を良くしたカテーテルを提供することができるという効果を有する。
【0005】
しかしながら、カテーテルはたとえ段差がなくても一部に周囲より太い部位が形成されると、カテーテルの進行時や取り出す際に管腔に引っかかってしまいスムースに移動させることができなくなるという問題があった。そのため、一部であっても太い部分を設けることなく一定の太さで形成されたカテーテルが望まれている。
【0006】
一方で、インナーチューブの外周に金属線をコイル状に巻回してなるカテーテルが種々提案されている。こうした金属線が巻回されているカテーテルの外周側にX線不透過性マーカーを取り付けると、どうしてもX線不透過性マーカーを取り付けた部分が他の部位と比較して外周径が大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
また、こうしたインナーチューブの外周に金属線をコイル状に巻回してなるカテーテルは、血管等の管腔内を進行する際の追従性確保のため、柔軟に湾曲可能に形成されているものが多いが、X線不透過マーカーを取り付けると、X線不透過マーカーが取り付けられた部分の湾曲性が悪くなり、管腔追従性が悪くなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、金属線が巻回されているカテーテルに対してX線不透過性マーカーを取り付けた場合であっても外周径が太くなることがなく、かつ湾曲性能の低下を極力抑えることができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0011】
本発明にかかるカテーテルは、
インナーチューブの外周に金属線が間隔を開けて螺旋状又はコイル状に巻回されているカテーテルにおいて、
巻回されている前記金属線と隣接する金属線との間の隙間にX線不透過マーカーが巻回されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明にかかるカテーテルによれば、X線不透過マーカーが螺旋状又は巻回されている金属線と金属線の間のインナーチューブに直接巻回されているので、金属線の外周側にX線不透過マーカーを取り付ける場合と比較してX線不透過マーカーが取り付けられている部分が太くなることを防止することができる。
【0013】
また、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記金属線は、樹脂からなる樹脂線と編組されていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかる構成を採用することによって、樹脂線によって金属線の位置をずれにくくすることができるとともに、金属線と金属線の間にも樹脂線が配置されるので、その外周側に巻回されるX線不透過マーカーも樹脂線と接触することでずれにくくすることができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記X線不透過マーカーは、金属線よりも細い直径であることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することによって、X線不透過マーカーの外周は、金属線の外周より内周側に配置されるので、X線不透過マーカーが取り付けられている部分が太くなることを確実に防止することができる。
【0017】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記X線不透過マーカーは、金属線の間に複数巻回されていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
かかる構成を採用することによって、X線不透過マーカーの占める面積を大きくすることができるため、よりX線によって視認できる部分が大きくなるので、視認性が高くなりカテーテルの挿入位置を認識しやすいカテーテルとすることができる。
【0019】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記金属線及びX線不透過マーカーの外周に樹脂が被覆されていることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
かかる構成を採用することによって、X線不透過マーカー及び金属線の位置が固定されるとともに、X線不透過マーカーが脱落する可能性を低減することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかるX線不透過マーカーを有するカテーテルを作製する作製方法は、
(1)インナーチューブの外周に金属線を巻回する金属線巻回工程
(2)金属線が巻回されたインナーチューブの任意の位置であって、金属線と金属線との間にX線不透過マーカーの一方側端部をインナーチューブに接着し、X線不透過マーカーを金属線と金属線との隙間に沿って巻回した後、X線不透過マーカーの他方側端部をインナーチューブに接着してX線不透過マーカーをインナーチューブに取り付けるX線不透過マーカー取付工程
(3)樹脂製の被覆チューブを被せた後、熱収縮させて金属線及びX線不透過マーカーを被覆チューブで被覆する樹脂被覆工程
を含むことを特徴とする。
【0022】
かかる方法によって、上述したカテーテルを作製することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるカテーテルによれば、X線不透過マーカーを取り付けたカテーテルであっても、X線不透過マーカーを有する部位が太くなることを低減又は防止したカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるカテーテル100及び手元操作部200を有するカテーテル器具110の側面概略図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態にかかるカテーテル100のうち
図1のA-A部を示す拡大側面概略図であり、
図2Bは
図1のB-B断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるカテーテル100の別実施例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるカテーテル100のさらなる別実施例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるカテーテル100のさらなる別実施例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるカテーテルの外周に樹脂を被覆した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかるカテーテル100について、図面に沿って詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかるカテーテル100を使用したカテーテル器具110の側面概略図であり、
図2Aは、
図1のカテーテル100の一部であるA-A部の拡大側面概略図であり、
図2Bは、
図2AのB-B断面図である。
【0027】
第1実施形態にかかるカテーテル100を備えたカテーテル器具110は、
図1に示すように、カテーテル100と、その遠位端に先端部50及び近位端側に手元操作部200とを備えている。先端部50には使用用途に応じて様々な部材が取り付けられる。例えば、血管進行性を向上させるために、柔軟なプラスチック製の先端チップを取り付けたり、血圧を測定するための圧力センサを取り付けたりすることができる。勿論、先端部50の形態については特に限定するものではないし、手元操作部200にどのような形態のものを採用してもよい。先端部50及び手元操作部200以外の構成を追加することは適宜行うことができる。
【0028】
カテーテル100は、
図1に示すように、主として先端部50を手術領域まで移動させるための部材であり細長い線状に形成されている。本実施形態にかかるカテーテル100は、
図2に示すように、インナーチューブ20の外周に金属線10が螺旋状又はコイル状に巻回されている。螺旋状又はコイル状に巻回された金属線10は、カテーテル100の管腔内の追従性を向上させるため柔軟性を確保するように隣接する金属線10の間に間隔αを開けるように巻回されている。隣接する金属線10との間隔αは限定するものではないが、好ましくは、0.5mm~1.5mm程度に設けるとよい。金属線10の太さは、特に限定するものではないが、好適には直径が10μm~100μm程度のものを使用するとよい。また、金属線10は、断面が円形のものに限定するものではなく、平線を使用したものであってもよい。金属線10を構成する金属材料の種類は、特に限定するものではない。好適には、例えば、タングステン、タンタル、コバルト、ロジウム、チタン、それらの合金、ステンレス、ニッケル合金又はモリブデン合金等が使用される。
【0029】
このようにして金属線10が巻回されたカテーテル100には、X線透視下で容易に位置が確認できるように、1又は2以上の任意の位置にX線不透過マーカー15が取り付けられる。X線不透過マーカー15は、X線による造影が可能な素材、例えば、白金、金又はパラジウム等が使用される。勿論これらに限定するものではない。これらX線不透過マーカー15は、通常、カテーテルの外周にバンドのように巻きつけて取り付けられる。しかしながら、金属線の外周に巻きつけると、その部位のみ外周が太くなってしまうという問題がある。カテーテルの一部が太く形成されると、カテーテルを身体に導入するときに太くなった部分が管腔に引っかかったりする虞がある。したがって、できる限り太さが均一に形成されることが望ましいのである。そこで、本発明では、
図2に示すように、取り付けられるX線不透過マーカー15は、金属線10と隣接する金属線との隙間に線状に形成されたものを巻回するようにして取り付けられている。すなわち、巻回された金属線10の隙間に配置されるように金属線10の巻回ピッチとほぼ同様のピッチでインナーチューブ20に直接巻回されている。X線不透過マーカー15の本数は特に限定するものではなく、
図2に示すように複数本並列に設けてもよいし、
図3に示すように1本であってもよい。また、複数本のX線不透過マーカー15を巻回する場合、
図2に示すように金属線10の間に隙間なく複数本のX線不透過マーカー15を巻回してもよいし、
図4に示すように、それぞれのX線不透過マーカー15の間に隙間をあけて配置してもよい。隙間を設けることで、X線不透過マーカー15を巻回した部位においてもカテーテル100の柔軟性を確保することができる。また、X線不透過マーカー15の太さは、金属線10の断面直径と同じ直径を有する同じ太さ又は金属線10の断面直径より短い直径を有する細いものを使用することが好ましい。X線不透過マーカー15を金属線10より細いものを使用することによって、金属線10の外周よりも外側にX線不透過マーカー15が位置することがなく、X線不透過マーカー15が取り付けられた部位のカテーテル100の外周が太くなることを防止することができる。なお、X線不透過マーカー15の断面形状は限定するものではなく、
図2に示す断面円形の他、断面楕円形、断面四角形、平線状のもの等、種々の断面形状のものを使用することができる。
【0030】
また、
図5に示すように、金属線10をインナーチューブ20に螺旋状又はコイル状に巻回する際に、金属線10と樹脂からなる樹脂線30とで編組にしてもよい。樹脂線30と編組にすることによって金属線10の位置ズレを防止することができる。また、X線不透過マーカー15も樹脂線30によって位置ずれしにくくすることができる。樹脂線30は、金属線10及びX線不透過マーカー15よりも細いものを使用することが好ましい。金属線10及びX線不透過マーカー15よりも細い樹脂線30を使用することによって、金属線10及びX線不透過マーカー15の配置を阻害することなく、位置ズレ防止機能を発揮させることができる。
【0031】
こうして金属線10及びX線不透過マーカー15が巻回されたカテーテル100は、
図6に示すように、任意に外層を樹脂で被覆してもよい。樹脂による被覆層40としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、フッ素系樹脂等を用いることができる。被覆は、熱収縮チューブをX線不透過マーカー15が取り付けられた部位の外周面に被せた後、熱を加えて収縮させることで形成することができる。
【0032】
上述したカテーテル100の作製方法について説明する。
(1)金属線巻回工程
インナーチューブ20に金属線10を螺旋状又はコイル状に巻回し、インナーチューブ20の外周側に金属線10が巻回されたカテーテル100を作製する。この際に樹脂線30により編組状にする場合には、金属線10と樹脂線30を同時に編み込みながら巻くことで作製することができる。
【0033】
(2)X線不透過マーカー取付工程
金属線10が巻回されたカテーテル100の任意の位置に、金属線10と隣接する金属線10との隙間にX線不透過マーカー15を巻きつける。X線不透過マーカー15を巻きつける際には、X線不透過マーカー15の端部を接着剤によってインナーチューブ20に接着する。X線不透過マーカー15の一方側端部が接着されたことを確認したら、金属線10の隙間に沿ってX線不透過マーカー15を巻き付けていく。巻きつける回転数は、限定するものではないが、1回転~5回転程度が好ましい。そして巻回が終わったら、最後にX線不透過マーカー15の他方側端部を接着剤によってインナーチューブ20に接着する。
【0034】
(3)X線不透過マーカー固定工程
次の樹脂による被覆層40を設ける前に、任意にX線不透過マーカー15をインナーチューブ20又は金属線10に固定する工程を経ても良い。固定方法としては、隣接する金属線10にレーザー等で溶接する方法、めっきによりX線不透過マーカー15を固定する方法、金属線10と樹脂線30の編組である場合には、熱を与えることにより樹脂線30とX線不透過マーカー15を一体化させて固定する方法等が考えられる。さらに、こうしてX線不透過マーカー15をインナーチューブ20又は金属線10に固定した後、X線不透過マーカー15を固定していた接着剤を、接着剤除去剤を使用して除去しても良い。接着剤を除去することにより、カテーテル使用中に接着剤が溶出する可能性を低減することができる。
【0035】
(4)樹脂被覆工程
こうして、X線不透過マーカー15が接着剤で固定された後、又は(3)X線不透過マーカー固定工程で固定された後、樹脂製の被覆チューブを被せ、熱により被覆チューブを熱収縮させて金属線10及びX線不透過マーカー15が被覆チューブの樹脂によって被覆されたカテーテル100を作製することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲
に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した実施の形態で示すように、カテーテルとして使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…金属線、15…X線不透過マーカー、20…インナーチューブ、30…樹脂線、40…被覆層、50…先端部、100…カテーテル、110…カテーテル器具、200…手元操作部