(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063507
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20230427BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230427BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230427BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230427BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230427BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230427BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230427BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230427BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230427BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M4/66 A
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/587
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041417
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2019567168の分割
【原出願日】2019-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018010350
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018010351
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡子
(72)【発明者】
【氏名】大西 仁志
(57)【要約】
【課題】電解液として特定のイミド塩を含有する非水電解液でありながら、アルミニウムを含む正極集電体の腐食を抑制できる電池用非水電解液を提供する。
【解決手段】アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、式(1)で表される化合物を含む電解質と、式(1)で表される化合物以外のフッ素含有化合物である添加剤Aと、を含有し、式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである電池用非水電解液である。式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、
下記式(1)で表される化合物を含む電解質と、下記式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aと、を含有し、
前記式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである電池用非水電解液。
【化1】
〔式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。〕
【請求項2】
前記式(1)中、前記R1及び前記R2が、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記電解質が、更に、LiPF6を含み、
前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.08~0.9である請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.1~0.9である請求項3に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記添加剤Aが、下記式(A1)で表される化合物、下記式(A2)で表される化合物、及び下記式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【化2】
〔式(A1)中、R
a1は、炭素数1~6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、フッ素原子、又は-OLi基を表す。
式(A2)中、R
a2は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~12の炭化水素基を表す。
式(A3)中、R
a31及びR
a32の一方は、フッ素原子又は-OLi基を表し、R
a31及びR
a32の他方は、-OLi基を表す。〕
【請求項6】
前記Ra1は、炭素数1~6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又はフッ素原子である請求項5に記載の電池用非水電解液。
【請求項7】
前記添加剤Aが、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項5又は請求項6に記載の電池用非水電解液。
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせ、又は、
前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせを含有する請求項5又は請求項6に記載の電池用非水電解液。
【請求項9】
電池用非水電解液の全量に対する前記添加剤Aの含有量が、0.1質量%~10質量%である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項10】
電池用非水電解液の全量に対する前記添加剤Aの含有量が、0.2質量%~10質量%である請求項9に記載の電池用非水電解液。
【請求項11】
アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、
下記式(1)で表される化合物を含む電解質と、
含フッ素カーボネート化合物及び含フッ素エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である含フッ素化合物を含む非水溶媒と、
を含有し、
前記式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである電池用非水電解液。
【化3】
〔式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。〕
【請求項12】
前記式(1)中、前記R1及び前記R2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である請求項11に記載の電池用非水電解液。
【請求項13】
前記電解質が、更に、LiPF6を含み、
前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.1超0.9以下である請求項11又は請求項12に記載の電池用非水電解液。
【請求項14】
前記含フッ素化合物が、下記式(F1)で表される化合物、下記式(F2)で表される化合物、及び下記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【化4】
〔式(F1)中、R
F11は、フッ素原子、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、R
F12~R
F14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F2)中、R
F21は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、R
F22は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F3)中、R
F31は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、R
F32は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。R
F31及びR
F32は、互いに結合し、環を形成していてもよい。〕
【請求項15】
前記含フッ素化合物が、前記式(F2)で表される化合物及び前記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項14に記載の電池用非水電解液。
【請求項16】
前記含フッ素化合物が、前記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項14に記載の電池用非水電解液。
【請求項17】
前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、40質量%以下である請求項11~請求項16のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項18】
前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、10質量%以上である請求項11~請求項17のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項19】
前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、20質量%超である請求項18に記載の電池用非水電解液。
【請求項20】
アルミニウムを含む正極集電体を含む正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
【請求項21】
請求項20に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く試用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウム二次電池は、例えば、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含有する正極および負極、並びに、電解質としてのリチウム塩と、非水溶媒と、を含有する電池用非水電解液を含む。
【0003】
電池用非水電解液において、電解質(リチウム塩)としては、LiPF6が用いられることが多い。
しかし近年では、電解質(リチウム塩)として、LiPF6に加えて、又は、LiPF6に代えて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等の特定のイミド塩を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、安全性を向上できると共に低温でのサイクル特性を向上できる非水電解質電池として、正極および負極を含む電極群と、電解液を含む非水電解質とを備え、電極群は、絶縁層を含み、絶縁層は、セラミックスを含み、電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のイミド塩と共に、炭酸ビニレン等の添加剤を含み、イミド塩の含有量は、電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である非水電解質電池が開示されている。
また、特許文献2には、高温特性を向上させることができる電池として、正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、前記負極は、構成元素としてケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を含む負極活物質を含有し、前記電解液は、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンを含む溶媒と、LiN(CnF2n+1SO2)2(nは1から4の整数である)で表されるイミド塩とを含有する電池が開示されている。
また、特許文献3には、高温環境下における良好な充電保存特性を得ることを目的とし、溶媒としてフッ素化環状炭酸エステルを含み、電解質としてリチウム塩を含む二次電池用非水電解液であって、リチウム塩として構造式(F-O2S-N-SO2-F)Liで表わされるリチウムビスフルオロスルホニルイミドを含有する二次電池用非水電解液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-16456号公報
【特許文献2】特開2006-294375号公報
【特許文献3】特開2010-129449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アルミニウムを含む正極集電体と、電解質としての特定のイミド塩を含有する非水電解液と、を含む電池において、アルミニウムを含む正極集電体の腐食が問題となる場合がある。このアルミニウムを含む正極集電体の腐食の問題は、非水電解液中の特定のイミド塩の濃度が高くなる(例えば0.1mol/L以上となる)につれて顕在化する。
【0006】
また、電解質としての特定のイミド塩を含有する非水電解液と、アルミニウムを含む正極集電体と、を備える電池において、保存により電池抵抗が著しく上昇する場合があることが判明した。保存による電池抵抗の上昇は、非水電解液中の特定のイミド塩の濃度が高くなる(例えば0.1mol/L以上となる)につれてより顕著となる。保存による電池抵抗の上昇の理由の一つとして、アルミニウムを含む正極集電体が特定のイミド塩によって腐食することが考えられる。
【0007】
本開示の第1態様の課題は、電解液として特定のイミド塩を含有する非水電解液でありながら、アルミニウムを含む正極集電体の腐食を抑制できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供することである。
本開示の第2態様の課題は、電解液として特定のイミド塩を含有する非水電解液でありながら、保存による電池抵抗の上昇を抑制できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の課題を解決するための手段には、以下の<1>~<10>と、以下の<20>及び<21>のうち、<1>~<10>を引用する部分と、が含まれる。
第2態様の課題を解決するための手段には、以下の<11>~<19>と、以下の<20>及び<21>のうち、<11>~<19>を引用する部分と、が含まれる。
【0009】
<1> アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、
下記式(1)で表される化合物を含む電解質と、下記式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aと、を含有し、
下記式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである電池用非水電解液。
【0010】
【0011】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。
【0012】
<2> 前記式(1)中、前記R1及び前記R2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である<1>に記載の電池用非水電解液。
<3> 前記電解質が、更に、LiPF6を含み、
前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.08~0.9である<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
<4> 前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.1~0.9である<3>に記載の電池用非水電解液。
【0013】
<5> 前記添加剤Aが、下記式(A1)で表される化合物、下記式(A2)で表される化合物、及び下記式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
【0014】
【0015】
式(A1)中、Ra1は、炭素数1~6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、フッ素原子、又は-OLi基を表す。
式(A2)中、Ra2は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~12の炭化水素基を表す。
式(A3)中、Ra31及びRa32の一方は、フッ素原子又は-OLi基を表し、Ra31及びRa32の他方は、-OLi基を表す。〕
【0016】
<6> 前記Ra1は、炭素数1~6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又はフッ素原子である<5>に記載の電池用非水電解液。
<7> 前記添加剤Aが、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<5>又は<6>に記載の電池用非水電解液。
【0017】
<8> 前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせ、又は、
前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせを含有する<5>又は<6>に記載の電池用非水電解液。
<9> 電池用非水電解液の全量に対する前記添加剤Aの含有量が、0.1質量%~10質量%である<1>~<8>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<10> 電池用非水電解液の全量に対する前記添加剤Aの含有量が、0.2質量%~10質量%である<9>に記載の電池用非水電解液。
【0018】
<11> アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、
下記式(1)で表される化合物を含む電解質と、
含フッ素カーボネート化合物及び含フッ素エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である含フッ素化合物を含む非水溶媒と、
を含有し、
前記式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである電池用非水電解液。
【0019】
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。
【0021】
<12> 前記式(1)中、前記R1及び前記R2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である<11>に記載の電池用非水電解液。
<13> 前記電解質が、更に、LiPF6を含み、
前記式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する前記式(1)で表される化合物のモル数の比が、0.1超0.9以下である<11>又は<12>に記載の電池用非水電解液。
<14> 前記含フッ素化合物が、下記式(F1)で表される化合物、下記式(F2)で表される化合物、及び下記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<11>~<13>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
【0022】
【0023】
式(F1)中、RF11は、フッ素原子、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF12~RF14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F2)中、RF21は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF22は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F3)中、RF31は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF32は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。RF31及びRF32は、互いに結合し、環を形成していてもよい。
【0024】
<15> 前記含フッ素化合物が、前記式(F2)で表される化合物及び前記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<14>に記載の電池用非水電解液。
<16> 前記含フッ素化合物が、前記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<14>に記載の電池用非水電解液。
<17> 前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、40質量%以下である<11>~<16>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<18> 前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、10質量%以上である<11>~<17>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<19> 前記非水溶媒に占める前記含フッ素化合物の割合が、20質量%超である<18>に記載の電池用非水電解液。
【0025】
<20> アルミニウムを含む正極集電体を含む正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
<1>~<19>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<21> <20>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0026】
本開示の第1態様によれば、電解液として特定のイミド塩を含有する非水電解液でありながら、アルミニウムを含む正極集電体の腐食を抑制できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池が提供される。
本開示の第2態様によれば、電解液として特定のイミド塩を含有する非水電解液でありながら、保存による電池抵抗の上昇を抑制できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
【
図3】本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
【
図4】実施例1A、実施例2A、及び比較例1Aにおける、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
【
図5】実施例101A、実施例102A、及び比較例101Aにおける、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
【
図6】実施例1B~3B及び比較例1Bの非水電解液について行った、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
【
図7】実施例101B及び比較例101Bの非水電解液について行った、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0029】
以下、本開示の第1態様及び第2態様について説明する。
【0030】
〔第1態様の電池用非水電解液〕
本開示の第1態様の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、アルミニウムを含む正極集電体を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、式(1)で表される化合物を含む電解質と、式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aと、を含有し、式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである。
【0031】
【0032】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。
【0033】
アルミニウムを含む正極集電体と、電解質として式(1)で表される化合物を含有する非水電解液と、を含む電池において、アルミニウムを含む正極集電体の腐食(以下、「Al腐食」ともいう)が問題となる場合がある。このAl腐食の問題は、非水電解液中の特定のイミド塩の濃度が高くなる(例えば0.1mol/L以上となる)につれて顕在化する。
この点に関し、第1態様の非水電解液は、式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aを含有することにより、電解質として式(1)で表される化合物を含有する非水電解液でありながら、Al腐食を抑制できる。
この理由は、非水電解液が添加剤Aを含有することにより、アルミニウムを含む正極集電体の表面にAlF3を主体とする不動態皮膜が形成されるためと考えられる。
【0034】
第1態様の非水電解液では、上述の、Al腐食を抑制できる効果に付随して、電池性能を向上させる効果(例えば、保存による電池抵抗の上昇を抑制する効果)が期待できる。
【0035】
<式(1)で表される化合物>
第1態様の非水電解液における電解質は、前述の式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する。
式(1)で表される化合物(即ち、式(1)におけるR1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基である化合物)は、式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数3以上のフルオロアルキル基である化合物と比較して、Al腐食を生じさせ易い。
第1態様の非水電解液では、このAl腐食の問題が、非水電解液に添加剤Aを含有させることによって解決される。
【0036】
式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
式(1)におけるR1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である場合には、式(1)で表される化合物によるAl腐食の問題がより顕在化される傾向がある。
従って、式(1)におけるR1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である場合には、添加剤Aの添加によるAl腐食抑制の効果がより顕在化する(即ち、Al腐食の改善幅がより大きくなる)。
【0037】
式(1)で表される化合物としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドが挙げられる。
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(略称LiFSI)は、式(1)においてR1及びR2が両方ともフッ素原子である化合物である。
リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(略称LiTFSI)は、式(1)においてR1及びR2が両方ともトリフルオロメチル基である化合物である。リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと称されることがある。
リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドは、式(1)においてR1及びR2が両方ともペンタフルオロエチル基である化合物である。
【0038】
第1態様の非水電解液において、式(1)で表される化合物の濃度は、0.1mol/L~2.0mol/Lである。
一般的に、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上である場合には、Al腐食の問題がより顕在化される。
しかし、第1態様の非水電解液では、式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aを含有することにより、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上であるにもかかわらず、Al腐食を抑制できる。言い換えれば、第1態様の非水電解液では、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上であることにより、添加剤Aの添加効果が顕在化する(即ち、非水電解液が添加剤Aを含有しない場合に対するAl腐食の改善幅が大きくなる)。
式(1)で表される化合物の濃度は、0.15mol/L以上、0.2mol/L以上、0.3mol/L以上、又は0.4mol/L以上であってもよい。
【0039】
一方、第1態様の非水電解液では、式(1)で表される化合物の濃度が2.0mol/L以下であることにより、式(1)で表される化合物によるAl腐食そのものが軽減される。
式(1)で表される化合物の濃度は、1.5mol/L以下又は1.0mol/L以下であってもよい。
【0040】
<その他の電解質>
第1態様の非水電解液における電解質は、前述の式(1)で表される化合物以外のその他の電解質を少なくとも1種含有してもよい。
その他の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
【0041】
その他の電解質の具体例としては、(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0042】
LiC(SO2R7)(SO2R8)(SO2R9)、LiN(SO2OR10)(SO2OR11)(ここでR7~R11は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数2~8のパーフルオロアルキル基である)、LiN(SO2R12)(SO2R13)(ここでR12及びR13は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数3~8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF6、LiBF4、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiClO4、LiAsF6、LiNSO2[CkF(2k+1)]2(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)が好ましく、LiPF6が特に好ましい。
第1態様の非水電解液における電解質が、その他の電解質として、LiPF6を含む態様は、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。
【0043】
その他の電解質の濃度としては、0.1mol/L~2.0mol/Lが好ましい。
この場合、その他の電解質の濃度は、0.2mol/L以上、0.3mol/L以上、0.4mol/L以上、又は0.5mol/L以上であってもよい。
また、その他の電解質の濃度は、1.5mol/L以下又は1.0mol/L以下であってもよい。
【0044】
その他の電解質がLiPF6である場合、LiPF6の濃度としては、0.1mol/L~2.0mol/Lが好ましい。
この場合、LiPF6の濃度は、0.2mol/L以上、0.3mol/L以上、0.4mol/L以上、又は0.5mol/L以上であってもよい。
また、LiPF6の濃度は、1.5mol/L以下又は1.0mol/L以下であってもよい。
【0045】
第1態様の非水電解液の特に好ましい態様は、電解質が、更に、LiPF6を含み、かつ、式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する式(1)で表される化合物のモル数の比(以下、「モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕」ともいう)が、0.08~0.9である態様である。
一般的には、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.08以上であると、Al腐食がより顕著となる傾向がある。
しかし、第1態様の非水電解液では、添加剤Aを含有することにより、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.08以上である場合であっても、Al腐食を抑制できる。言い換えれば、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.08以上である場合には、添加剤Aの添加効果がより顕在化する(即ち、非水電解液が添加剤Aを含有しない場合に対するAl腐食の改善幅がより大きくなる)。
一方、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.9以下であることは、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。
【0046】
モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕としては、0.1~0.9がより好ましく、0.15~0.8が更に好ましく、0.2~0.8が更に好ましく、0.3~0.7が更に好ましい。
【0047】
<添加剤A>
第1態様の非水電解液は、式(1)で表される化合物以外の含フッ素化合物である添加剤Aを少なくとも1種含有する。
添加剤Aとしては、フッ素原子を含む化合物であればよく、特に限定されない
添加剤Aとしては、分子量1000以下の化合物が好ましく、分子量500以下の化合物がより好ましい。
添加剤Aとしては、Al腐食抑制効果の観点から、後述の式(A1)で表される化合物、後述の式(A2)で表される化合物、及び後述の式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、添加剤Aは、後述の式(A1)で表される化合物及び後述の式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0048】
添加剤Aの含有量は、非水電解液の全量に対して、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~10質量%が更に好ましく、0.2質量%~10質量%が更に好ましく、0.5質量%~5質量%が更に好ましく、0.5質量%~3質量%が更に好ましく、0.6質量%~2質量%が更に好ましく、0.7質量%~1.5質量%が更に好ましい。
【0049】
(式(A1)で表される化合物)
式(A1)で表される化合物は以下のとおりである。
【0050】
【0051】
式(A1)中、Ra1は、炭素数1~6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、フッ素原子、又は-OLi基を表す。
【0052】
式(A1)中、Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、無置換の炭素数1~6の炭化水素基を表す。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であっても環状炭化水素基であってもよい。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0053】
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0054】
Ra1で表される「少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基」としては、前述のR1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」(即ち、無置換の炭素数1~6の炭化水素基)が少なくとも1つのフッ素原子によって置換されている構造の基が挙げられる。
【0055】
Ra1で表される「少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基」としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基等のフルオロアルキル基;2-フルオロエテニル基、2,2-ジフルオロエテニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-プロペニル基、3-フルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基等のフルオロアルケニル基;等が挙げられる。
【0056】
式(A1)中、Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」の構造中の炭化水素基の部分は、前述のRa1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」と同義である。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」としては、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0057】
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等のアルコキシ基;アリルオキシ基、ビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;等が挙げられる。
【0058】
式(A1)中、Ra1で表される「少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基」としては、前述したR1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」(即ち、無置換の炭素数1~6の炭化水素オキシ基)が少なくとも1つのフッ素原子によって置換されている構造の基が挙げられる。
【0059】
式(A1)中、Ra1としては、
炭素数1~6の炭化水素基(即ち、無置換の炭素数1~6の炭化水素基)、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又はフッ素原子が好ましく、
炭素数1~6の炭化水素基、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基がより好ましく、
炭素数1~6の炭化水素基が更に好ましく、
炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0060】
式(A1)で表される化合物としては、
メタンスルホニルフルオリド(略称MSF)、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド、エテンスルホニルフルオリド、1-プロペン-1-スルホニルフルオリド、又は2-プロペン-1-スルホニルフルオリドが好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、又はパーフルオロブタンスルホニルフルオリドがより好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、又はヘキサンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、又はプロパンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリドが特に好ましい。
メタンスルホニルフルオリド(略称MSF)は、式(A1)において、Ra1がメチル基である化合物である。
【0061】
(式(A2)で表される化合物)
式(A2)で表される化合物は以下のとおりである。
【0062】
【0063】
式(A2)中、Ra2は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~12の炭化水素基を表す。
【0064】
Ra2で表される上記炭化水素基は、直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であっても環状炭化水素基であってもよい。
Ra2で表される上記炭化水素基において、少なくとも1つのフッ素原子で置換される炭素数1~12の炭化水素基(即ち、無置換の炭素数1~12の炭化水素基)は、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
Ra2で表される上記炭化水素基は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよいが、パーフルオロ炭化水素基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
Ra2で表される上記炭化水素基の炭素数は、3~10が好ましく、4~10がより好ましく、4又は6が更に好ましく、6が特に好ましい。
式(A2)中、Ra2が炭素数6のパーフルオロアルキル基である化合物は、パーフルオロヘキシルエチレン(略称PFHE)である。
【0065】
Ra2で表される「少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~12の炭化水素基」において、少なくとも1つのフッ素原子で置換される「炭素数1~12の炭化水素基」(即ち、無置換の炭素数1~12の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、オクタメチレン基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0066】
(式(A3)で表される化合物)
式(A3)で表される化合物は以下のとおりである。
【0067】
【0068】
式(A3)中、Ra31及びRa32の一方は、フッ素原子又は-OLi基を表し、Ra31及びRa32の他方は、-OLi基を表す。
【0069】
式(A3)で表される化合物としては、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウム(略称LiDFP)が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウム(略称LiDFP)が特に好ましい。
モノフルオロリン酸リチウムは、式(A3)において、Ra31及びRa32の両方が-OLi基である化合物である。
ジフルオロリン酸リチウム(略称LiDFP)は、式(A3)において、Ra31及びRa32の一方がフッ素原子であり、Ra31及びRa32の他方が-OLi基である化合物である。
【0070】
(その他の含フッ素化合物)
添加剤Aとしては、上述した式(A1)~式(A3)で表される化合物以下のその他の含フッ素化合物も挙げられる。
その他の含フッ素化合物としては、分子量1000以下の化合物が好ましく、分子量500以下の化合物がより好ましい。
その他の含フッ素化合物としては、フッ素原子で置換された芳香族化合物、フッ化アルキルスルホン酸リチウム化合物、フッ素原子を有するカーボネート化合物、フッ素原子を有するオキサラト化合物、等が挙げられる。
フッ素原子で置換された芳香族化合物としては、フルオロトルエン(o-、m-、p-体)、ジフルオロトルエン、トリフルオロトルエン、テトラフルオロトルエン、ペンタフルオロトルエン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o-、m-、p-体)、1-フルオロ-4-t-ブチルベンゼン、2-フルオロビフェニル、フルオロシクロヘキシルベンゼン(例えば、1-フルオロ-2-シクロヘキシルベンゼン、1-フルオロ-3-シクロヘキシルベンゼン、1-フルオロ-4-シクロヘキシルベンゼン)、2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソールなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはフルオロトルエン(o-、m-、p-体)であり、より好ましくは、オルトフルオロトルエンである。
フッ化アルキルスルホン酸リチウム化合物としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウムが挙げられ、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。
フッ素原子を有するカーボネート化合物としては、メチルトリフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、メチル(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネートなどの鎖状カーボネート類;4-フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-トリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、4-フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートである。
フッ素原子を有するオキサラト化合物としては、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、等が挙げられる。
【0071】
第1態様の非水電解液において、Al腐食をより抑制する観点からみた、電解質と添加剤Aとの好ましい組み合わせは、
式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む電解質と、式(A1)で表される化合物及び式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む添加剤Aと、の組み合わせ、又は、
式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む添加剤Aと、の組み合わせ
である。
【0072】
<その他の添加剤>
第1態様の非水電解液は、上記添加剤A以外のその他の添加剤を少なくとも1種含有してもよい。
その他の添加剤としては、非水電解液に含有され得る公知の添加剤が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合又はフッ素原子を有するカーボネート化合物が挙げられる。
【0073】
炭素-炭素不飽和結合又はフッ素原子を有するカーボネート化合物としては、例えば、
ビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジビニルカーボネート等の炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物;
フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等のフッ素原子を有するカーボネート化合物;
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム等のオキサラト化合物;
等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。
炭素-炭素不飽和結合又はフッ素原子を有するカーボネート化合物の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、非水電解液の総量に対して、1質量%~15質量%が好ましく、5質量%~10質量%がより好ましい。
【0074】
その他の添加剤としては、
亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ヘキセン、硫酸ビニレン、3-スルホレン、ジビニルスルホン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等のイオウ系化合物;ビニルボロン酸ジメチル、ビニルボロン酸ジエチル、ビニルボロン酸ジプロピル、ビニルボロン酸ジブチル等のビニルボロン酸化合物;
ジメチルホルムアミド等のアミド類;
メチル-N,N-ジメチルカーバメート等の鎖状カーバメート類;
N-メチルピロリドン等の環状アミド類;
N,N-ジメチルイミダゾリジノン等の環状ウレア類;
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリ(トリメチルシリル)等のホウ酸エステル類;
リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリ(トリメチルシリル)、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;
ビフェニル、フルオロビフェニル、o-ターフェニル、トルエン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2-フルオロアニソール、4-フルオロアニソール等の芳香族炭化水素;
無水マレイン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物等の炭素-炭素不飽和結合を有するカルボン酸無水物;
等も挙げられる。
【0075】
<非水溶媒>
非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0076】
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0077】
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
【0078】
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0079】
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0080】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、あるいはメチルγ-ブチロラクトン、エチルγ-ブチロラクトン、エチルδ-バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。γ-ブチロラクトンが最も好ましい。
【0081】
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0082】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0083】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2-メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0084】
(鎖状の非プロトン性溶媒)
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
【0085】
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。
【0086】
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0087】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0088】
(溶媒の組み合わせ)
第1態様の非水電解液に含有される非水溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類または複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類または複数種類用いても、または環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
【0089】
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0090】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0091】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95~80:20、さらに好ましくは10:90~70:30、特に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0092】
(その他の溶媒)
非水溶媒としては、上記以外のその他の溶媒も挙げられる。
その他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル-N,N-ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N-メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CH2CH2O)aH
HO[CH2CH(CH3)O]bH
CH3O(CH2CH2O)cH
CH3O[CH2CH(CH3)O]dH
CH3O(CH2CH2O)eCH3
CH3O[CH2CH(CH3)O]fCH3
C9H19PhO(CH2CH2O)g[CH(CH3)O]hCH3
(Phはフェニル基)
CH3O[CH2CH(CH3)O]iCO[OCH(CH3)CH2]jOCH3
前記式中、a~fは、5~250の整数、g~jは2~249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0093】
〔第1態様のリチウム二次電池〕
第1態様のリチウム二次電池は、アルミニウム(Al)を含む正極集電体を含む正極と、負極と、第1態様の非水電解液と、を含む。
【0094】
<正極>
第1態様における正極は、Alを含む正極集電体を含む。
正極集電体は、Al以外の元素を含有していてもよい。
正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等を含有していてもよい。
【0095】
正極は、正極活物質を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNiXCo(1-X)O2〔0<X<1〕、α-NaFeO2型結晶構造を有するLi1+αMe1-αO2(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1-α)≦1.6)、LiNixCoyMnzO2〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2等)、LiFePO4、LiMnPO4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0096】
<負極>
負極は、負極活物質及び負極集電体を含んでもよい。
負極における負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状のいずれの形態であってもよい。
【0097】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0098】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0099】
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0100】
<セパレータ>
第1態様のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
第1態様の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0101】
<電池の構成>
第1態様のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0102】
第1態様のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示の第1態様のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1及び
図2は、後述する第2態様のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図及び概略断面図でもある。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、第1態様の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0103】
本開示の第1態様のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示の第1態様のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略断面図である。
図3は、後述する第2態様のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略断面図でもある。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、第1態様の非水電解液を用いる。
【0104】
なお、第1態様のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記第1態様の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、第1態様のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記第1態様の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0105】
第1態様のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【0106】
〔第2態様の電池用非水電解液〕
本開示の第2態様の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、下記式(1)で表される化合物を含む電解質と、含フッ素カーボネート化合物及び含フッ素エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である含フッ素化合物(以下、「特定含フッ素化合物」ともいう)を含む非水溶媒と、を含有し、式(1)で表される化合物の濃度が、0.1mol/L~2.0mol/Lである。
【0107】
【0108】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基を表す。
【0109】
本発明者等の検討により、電解質として式(1)で表される化合物を0.1mol/L以上含有する非水電解液と、アルミニウムを含む正極集電体と、を備える電池において、保存により電池抵抗が著しく上昇する場合があることが判明した。この理由の一つとして、アルミニウムを含む正極集電体が式(1)で表される化合物によって腐食することが考えられる。
保存による電池抵抗の上昇に関し、第2態様の非水電解液によれば、電解質として式(1)で表される化合物を0.1mol/L以上含有する非水電解液でありながら、保存による電池抵抗の上昇が抑制される。かかる効果が奏される理由の一つとして、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことにより、アルミニウムを含む正極集電体の表面にAlF3を主体とする不動態皮膜が形成され、この不動態皮膜により、アルミニウムを含む正極集電体の腐食(以下、単に「Al腐食」ともいう)を抑制できることが考えられる。
【0110】
更に、第2態様の非水電解液によれば、電池容量を向上させることができる。かかる効果が奏される理由も、Al腐食を抑制できるためと考えられる。
【0111】
<電解質>
第2態様の非水電解液における電解質は、前述の式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する。
式(1)で表される化合物(即ち、式(1)におけるR1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基である化合物)は、式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数3以上のフルオロアルキル基である化合物と比較して、Al腐食を生じさせ易く、保存による電池抵抗の上昇を引き起こし易いと考えられる。
第2態様の非水電解液では、これらの問題が、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことによって解決される。
【0112】
式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
式(1)におけるR1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である場合には、式(1)で表される化合物による、保存による電池抵抗の上昇の問題がより顕在化される傾向がある。
従って、R1及びR2が、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である場合には、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことによる効果がより顕在化する(即ち、保存による電池抵抗の上昇の改善幅が大きくなる)。
【0113】
式(1)で表される化合物としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドが挙げられる。
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(略称LiFSI)は、式(1)においてR1及びR2が両方ともフッ素原子である化合物である。
リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(略称LiTFSI)は、式(1)においてR1及びR2が両方ともトリフルオロメチル基である化合物である。リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと称されることがある。
リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドは、式(1)においてR1及びR2が両方ともペンタフルオロエチル基である化合物である。
【0114】
第2態様の非水電解液において、式(1)で表される化合物の濃度は、0.1mol/L~2.0mol/Lである。
一般的には、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上である場合には、保存による電池抵抗の上昇がより顕著となる。
しかし、第2態様の非水電解液では、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことにより、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上であるにもかかわらず、保存による電池抵抗の上昇を抑制できる。言い換えれば、第2態様の非水電解液では、式(1)で表される化合物の濃度が0.1mol/L以上であるが故に、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことによる効果が顕在化される(即ち、保存による電池抵抗の上昇の改善幅が大きくなる)。
式(1)で表される化合物の濃度は、0.15mol/L以上、0.2mol/L以上、0.3mol/L以上、又は0.4mol/L以上であってもよい。
【0115】
一方、第2態様の非水電解液では、式(1)で表される化合物の濃度が2.0mol/L以下であることにより、式(1)で表される化合物によって引き起こされる、保存による電池抵抗の上昇の問題が軽減される。
式(1)で表される化合物の濃度の上限は、1.5mol/L又は1.0mol/Lであってもよい。
【0116】
(その他の電解質)
第2態様の非水電解液における電解質は、前述の式(1)で表される化合物以外のその他の化合物(本明細書中では、「その他の電解質」ともいう)を少なくとも1種含有してもよい。
その他の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
【0117】
その他の電解質の具体例としては、(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0118】
LiC(SO2R7)(SO2R8)(SO2R9)、LiN(SO2OR10)(SO2OR11)(ここでR7~R11は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数2~8のパーフルオロアルキル基である)、LiN(SO2R12)(SO2R13)(ここでR12及びR13は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数3~8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、その他の電解質としては、リチウム塩が望ましく、さらには、LiPF6、LiBF4、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiClO4、LiAsF6、LiNSO2[CkF(2k+1)]2(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)が好ましく、LiPF6が特に好ましい。
第2態様の非水電解液における電解質が、その他の電解質として、LiPF6を含む態様は、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。
【0119】
その他の電解質の濃度としては、0.1mol/L~2.0mol/Lが好ましい。
その他の電解質の濃度の下限は、0.2mol/L、0.3mol/L、0.4mol/L、又は0.5mol/Lであってもよい。
また、その他の電解質の濃度の上限は、1.5mol/L又は1.0mol/Lであってもよい。
【0120】
その他の電解質がLiPF6である場合、LiPF6の濃度としては、0.1mol/L~2.0mol/Lが好ましい。
LiPF6の濃度の下限は、0.2mol/L、0.3mol/L、0.4mol/L、又は0.5mol/Lであってもよい。
また、LiPF6の濃度の上限は、1.5mol/L又は1.0mol/Lであってもよい。
【0121】
第2態様の非水電解液の特に好ましい態様は、電解質が、更に、LiPF6を含み、かつ、式(1)で表される化合物及びLiPF6の総モル数に対する式(1)で表される化合物のモル数の比(以下、「モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕」ともいう)が、0.1超0.9以下である態様である。
一般的には、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.1超であると、保存による電池抵抗の上昇がより顕著となる。
しかし、第2態様の非水電解液では、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことにより、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.1超である場合であっても、保存による電池抵抗の上昇を抑制できる。言い換えれば、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.1超である場合には、非水溶媒が特定含フッ素化合物を含むことによる効果がより顕在化される(即ち、保存による電池抵抗の上昇の改善幅が大きくなる)。
一方、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕が0.9以下であることは、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。
【0122】
モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕としては、0.15~0.8がより好ましく、0.2~0.8が更に好ましく、0.3~0.7が更に好ましい。
【0123】
<非水溶媒>
第2態様の非水電解液は、特定含フッ素化合物(即ち、含フッ素カーボネート化合物及び含フッ素エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種)を含む非水溶媒を含有する。
含フッ素カーボネート化合物としては、含フッ素環状カーボネート化合物及び含フッ素鎖状カーボネート化合物が挙げられる。
含フッ素エーテル化合物としては、含フッ素環状エーテル化合物及び含フッ素鎖状エーテル化合物が挙げられる。
【0124】
保存による電池抵抗上昇をより抑制する観点から、非水溶媒に占める特定含フッ素化合物の割合は、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%超であることが更に好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。
【0125】
(特定含フッ素化合物)
特定含フッ素化合物は、下記式(F1)で表される化合物、下記式(F2)で表される化合物、及び下記式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、下記式(F1)で表される化合物及び下記式(F2)で表される化合物は、含フッ素カーボネート化合物の例であり、下記式(F3)で表される化合物は、含フッ素エーテル化合物の例である。
【0126】
【0127】
式(F1)中、RF11は、フッ素原子、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF12~RF14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F2)中、RF21は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF22は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(F3)中、RF31は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表し、RF32は、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。RF31及びRF32は、互いに結合し、環を形成していてもよい。
【0128】
式(F1)~式(F3)中、炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基を意味する。
【0129】
-式(F1)で表される化合物-
式(F1)中、RF11~RF14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基等のフルオロアルキル基;2-フルオロエテニル基、2,2-ジフルオロエテニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-プロペニル基、3-フルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基等のフルオロアルケニル基;等が挙げられる。
中でも、炭素数1~6のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~3のフルオロアルキル基がより好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基が更に好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0130】
式(F1)中、RF12~RF14で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
中でも、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0131】
式(F1)中、RF11は、フッ素原子であることが好ましい。
式(F1)中、RF12~RF14としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又はメチル基が好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0132】
式(F1)で表される化合物としては、
4-フルオロエチレンカーボネート(略称FEC)、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、又は4-トリフルオロメチルエチレンカーボネートが好ましく、
4-フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、又は4,5-ジフルオロエチレンカーボネートがより好ましく、
4-フルオロエチレンカーボネートが特に好ましい。
【0133】
-式(F2)で表される化合物-
式(F2)中、RF21~RF22で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例は、式(F1)中、RF11~RF14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例と同様である。
式(F2)中、RF21~RF22で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~3のフルオロアルキル基がより好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、又はパーフルオロプロピル基が更に好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基が特に好ましい。
【0134】
式(F2)中、RF22で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(F1)中、RF12~RF14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(F2)中、RF22で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0135】
式(F2)中、RF22としては、炭素数1~6の炭化水素基が好ましい。
【0136】
式(F2)で表される化合物としては、
2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート(略称MFEC)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、パーフルオロエチルメチルカーボネート、又はビス(パーフルオロエチル)カーボネートが好ましく、
2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0137】
-式(F3)で表される化合物-
式(F3)中、RF31~RF32で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例は、式(F1)中、RF11~RF14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例と同様である。
式(F3)中、RF31~RF32で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~3のフルオロアルキル基がより好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、又はパーフルオロプロピル基が更に好ましく、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基又は2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0138】
式(F3)中、RF32で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(F1)中、RF12~RF14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(F3)中、RF32で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(F3)において、RF31及びRF32は、互いに結合し、環を形成していてもよい。この場合の式(F3)で表される化合物は、含フッ素環状エーテル化合物である。含フッ素環状エーテル化合物における環としては、5員環~8員環が好ましい。
【0139】
式(F3)中、RF32としては、炭素数1~6のフッ化炭化水素基が好ましい。
【0140】
式(F3)で表される化合物としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(略称TFETFPE)が特に好ましい。
【0141】
保存による電池抵抗の上昇をより抑制する観点から、特定含フッ素化合物は、式(F2)で表される化合物及び式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
保存による電池抵抗の上昇をより抑制する観点から、特定含フッ素化合物は、式(F3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことも好ましい。
【0142】
(その他の非水溶媒)
第2態様の非水電解液における非水溶媒は、特定含フッ素化合物以外のその他の化合物(本明細書中では、「その他の非水溶媒」ともいう)を少なくとも1種含有してもよい。
この場合、非水溶媒に占める特定含フッ素化合物の割合は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが好ましい。
非水溶媒に占める特定含フッ素化合物の割合は、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%超であることが更に好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。
非水溶媒に占める特定含フッ素化合物の割合は、1質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、20質量%超40質量%以下であることがより好ましく、25質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0143】
その他の非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒の少なくとも一方を用いることが好ましい。
その他の非水溶媒としては、電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合には、環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
また、その他の非水溶媒としては、電池の負荷特性向上、電池の低温特性向上、等の観点から、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒の両方を用いることが更に好ましい。
【0144】
-環状の非プロトン性溶媒-
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート(但し、含フッ素環状カーボネートを除く。以下同じ。)、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒としては、非水電解液の電気化学的安定性の観点から、環状カーボネートが特に好ましい。
【0145】
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
非水溶媒に占める環状の非プロトン性溶媒の割合は、10質量%以上80質量%未満、さらに好ましくは10質量%~70質量%、さらに好ましくは10質量%~50質量%であり、さらに好ましくは20質量%~40質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0146】
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート(略称EC)、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。
これらのうち、誘電率が高い、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましく、エチレンカーボネートがより好ましい。
また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0147】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、あるいはメチルγ-ブチロラクトン、エチルγ-ブチロラクトン、エチルδ-バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。γ-ブチロラクトンが最も好ましい。
【0148】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2-メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0149】
-鎖状の非プロトン性溶媒-
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート(但し、含フッ素鎖状カーボネートを除く。以下同じ。)、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒としては、電解液の電気化学的安定性の観点から、鎖状カーボネートが特に好ましい。
【0150】
鎖状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
非水溶媒に占める鎖状の非プロトン性溶媒の割合は、10質量%以上80質量%未満、さらに好ましくは10質量%~70質量%、さらに好ましくは20質量%~60質量%であり、さらに好ましくは30質量%~50質量%である。
【0151】
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(略称EMC)、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0152】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0153】
-好ましい組み合わせ-
前述のとおり、その他の非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒との組み合わせを用いることが好ましい。
中でも、上記組み合わせの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせを用いることが特に好ましい。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0154】
その他の非水溶媒としては、上記以外のその他の化合物も挙げられる。
その他の化合物としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル-N,N-ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N-メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CH2CH2O)aH
HO[CH2CH(CH3)O]bH
CH3O(CH2CH2O)cH
CH3O[CH2CH(CH3)O]dH
CH3O(CH2CH2O)eCH3
CH3O[CH2CH(CH3)O]fCH3
C9H19PhO(CH2CH2O)g[CH(CH3)O]hCH3
(Phはフェニル基)
CH3O[CH2CH(CH3)O]iCO[OCH(CH3)CH2]jOCH3
前記式中、a~fは、5~250の整数、g~jは2~249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0155】
<添加剤>
第2態様の非水電解液は、添加剤を少なくとも1種含有してもよい。
第2態様の非水電解液が含有し得る添加剤としては、第1態様の非水電解液中の添加剤A、及び、第1態様の非水電解液の説明中において「その他の添加剤」として例示した添加剤が挙げられる。
【0156】
〔第2態様のリチウム二次電池〕
本開示の第2態様のリチウム二次電池は、アルミニウム(Al)を含む正極集電体を含む正極と、負極と、第2態様の非水電解液と、を備える。
【0157】
第2態様のリチウム二次電池は、第1態様の非水電解液を第2態様の非水電解液に変更したこと以外は第1態様のリチウム二次電池と同様である。
従って、第2態様のリチウム二次電池については、第1態様の非水電解液を第2態様の非水電解液と読み替えること以外は、第2態様のリチウム二次電池の項を参照できる。
前述したとおり、
図1及び
図2は、第2態様のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図及び概略断面図でもあり、
図3は、第2態様のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略断面図でもある。
【実施例0158】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量を意味し、「wt%」は、質量%を意味する。
【0159】
以下、第1態様の実施例及び比較例を示す。
【0160】
〔実施例1A〕
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合した中に、式(1)で表される化合物である電解質として、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を、最終的に得られる非水電解液中における濃度が0.6モル/リットルとなるように溶解させ、かつ、その他の電解質として、LiPF6を、最終的に得られる非水電解液中における濃度が0.6モル/リットルとなるように溶解させた。
得られた溶液に対して、添加剤として、式(A1)で表される化合物の具体例であるMSF(メタンスルホニルフルオリド)を、非水電解液全量に対する含有量が1.0質量%となるように添加して、非水電解液を得た。
得られた非水電解液において、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕は、0.5である。
【0161】
<サイクリックボルタンメトリー(CV)(Al腐食の評価)>
上記で得られた非水電解液(1.5mL)に、作用極としてのAl電極と、対極としてのLi電極と、参照極としてのLi電極と、を浸漬し、サイクリックボルタンメトリー(CV)を実施した。
Al電極(作用極)としては、後述するコイン型電池の作製に用いる厚さ20μmの帯状アルミ箔(正極集電体)から切り出した、長さ15mm×幅4mmサイズのAl箔片を用いた。Al電極の非水電解液への浸漬深さ(即ち、浸漬する部分の長さ)は、7.5mmとした。
CVは、電位を2.4Vから5Vに上昇させ、再度2.4Vに戻すまでの操作を1サイクルとし、3サイクル実施した。電位の掃引速度は、10mV/minとした。
CVにおいて観測される酸化電流値に基づき、Al電極の腐食を評価した。観測される酸化電流値が小さいほど、酸化反応が抑制されており、Al電極の腐食が抑制されている。
図4に、CVの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムを示す。
【0162】
<コイン型電池の作製>
上記で調製された非水電解液を用い、以下の手順にて、
図3に示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」とも称する)を作製した。
【0163】
(負極の作製)
アモルファスコート天然黒鉛系黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0164】
(正極の作製)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(90質量部)、アセチレンブラック(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0165】
(コイン型電池の作製)
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に、上述の非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの
図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0166】
<電池抵抗の評価>
得られたコイン型電池について、電池抵抗の評価を行った。
以下、「コンディショニング」とは、コイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.2Vとの間で充放電を三回繰り返すことを指す。
以下、「高温保存」とは、コイン型電池を、恒温槽内で、80℃で48時間保存する操作を意味する。
【0167】
(高温保存前の電池抵抗(DCIR)の測定)
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、25℃にて、コイン型電池の高温保存前のDCIR(Direct current internal resistance;直流抵抗)を測定した。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電を行った。
ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
上記「放電レート0.2CでのCC10s放電」における、電流値(即ち、放電レート0.2Cに相当する電流値)と、電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)と、に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(Ω)とした。
結果を表1に示す。
【0168】
(高温保存後の電池抵抗(DCIR)の測定)
コンディショニング後であってSOCを80%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで高温保存を施す操作を追加したこと以外は前述の高温保存前の電池抵抗の測定と同様にして、高温保存後の電池抵抗(Ω)を測定した。
結果を表1に示す。
ここで、CC-CV充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)を意味する。
【0169】
(高温保存による電池抵抗の上昇率の測定)
下記式により、高温保存による電池抵抗の上昇率を算出した。結果を表1に示す。
高温保存による電池抵抗の上昇率(%)
= 〔(高温保存後の電池抵抗(Ω)-高温保存前の電池抵抗(Ω))/高温保存前の電池抵抗(Ω)〕×100
【0170】
〔実施例2A〕
非水電解液中の添加剤として用いたMSFを、同質量のLiDFP(ジフルオロリン酸リチウム)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を
図4及び表1に示す。
LiDFP(ジフルオロリン酸リチウム)は、式(A3)で表される化合物の具体例である。
【0171】
〔比較例1A〕
非水電解液に、MSFを含有させなかったこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を
図4及び表1に示す。
【0172】
〔実施例101A〕
非水電解液中の電解質として用いたLiTFSIを、同モルのLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)に変更し、かつ、非水電解液中の添加剤として用いたMSFを、同質量のPFHE(パーフルオロヘキシルエチレン)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を
図5及び表1に示す。
【0173】
〔実施例102A〕
非水電解液中の添加剤として用いたPFHEを、同質量のMSFに変更したこと以外は実施例101Aと同様の操作を行った。
結果を
図5及び表1に示す。
【0174】
〔比較例101A〕
非水電解液に、PFHEを含有させなかったこと以外は実施例101Aと同様の操作を行った。
結果を
図5及び表1に示す。
【0175】
図4は、実施例1A(LiTFSI+MSF)、実施例2A(LiTFSI+LiDFP)、及び比較例1A(LiTFSI、添加剤無し)における、CVの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
図4に示されるように、実施例1A及び実施例2Aでは、比較例1Aと比較して、酸化電流値(
図4中、「電流(mA/cm
2)」)が低減されていること、即ち、Al電極の腐食が抑制されていることがわかる。
【0176】
図5は、実施例101A(LiFSI+PFHE)、実施例102A(LiFSI+MSF)、及び比較例101A(LiFSI、添加剤無し)における、CVの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
図5に示されるように、実施例101A及び実施例102Aでは、比較例101Aと比較して、酸化電流値(
図5中、「電流(mA/cm
2)」)が低減されていること、即ち、Al電極の腐食が抑制されていることがわかる。
【0177】
【0178】
表1に示すように、実施例1A及び実施例2Aでは、比較例1Aと比較して、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた。同様に、実施例101A及び実施例102Aでは、比較例101Aと比較して、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた。
実施例1A、実施例2A、実施例101A、及び実施例102Aにおいて、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた理由は、添加剤の添加により、Alを含む正極集電体の腐食が抑制されたためと考えられる。
【0179】
〔実施例201A、実施例202A、及び比較例201A〕
式(1)で表される化合物の濃度及びLiPF6の濃度を、表2に示すように変更したこと以外は、実施例1A、実施例2A、及び比較例1Aと同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
これらの例における非水電解液において、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕は、0.17である。
【0180】
〔実施例301A、実施例302A、及び比較例301A〕
式(1)で表される化合物の濃度及びLiPF6の濃度を、表2に示すように変更したこと以外は、実施例101A、実施例102A、及び比較例101Aと同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
これらの例における非水電解液において、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕は、0.17である。
【0181】
【0182】
表2に示すように、式(1)で表される化合物の濃度が0.2mol/Lである実施例群においても、式(1)で表される化合物の濃度が0.6mol/Lである実施例群(表1)と同様の効果が確認された。
【0183】
以下、第2態様の実施例及び比較例を示す。
【0184】
〔実施例1B〕
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)と4-フルオロエチレンカーボネート(FEC)とを、質量比〔EC:EMC:FEC〕が30:40:30となる割合で混合することにより、非水溶媒を準備した。4-フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、含フッ素カーボネート化合物(詳細には、式(F1)で表される化合物)の具体例である。
【0185】
上記非水溶媒に、式(1)で表される化合物である電解質として、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を、最終的に得られる非水電解液中における濃度が0.6モル/リットルとなるように溶解させ、かつ、その他の電解質として、LiPF6を、最終的に得られる非水電解液中における濃度が0.6モル/リットルとなるように溶解させ、非水電解液を得た。
得られた非水電解液において、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕は、0.5である。
【0186】
<コイン型電池の作製>
上記で調製された非水電解液を用い、以下の手順にて、
図3に示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」とも称する)を作製した。
【0187】
(負極の作製)
アモルファスコート天然黒鉛系黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0188】
(正極の作製)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0189】
(コイン型電池の作製)
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に、上述の非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの
図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0190】
<電池の評価>
得られたコイン型電池について、以下の評価を行った。
以下、「コンディショニング」とは、コイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.2Vとの間で充放電を三回繰り返すことを指す。
以下、「高温保存」とは、コイン型電池を、恒温槽内で、80℃で48時間保存する操作を意味する。
【0191】
(放電容量)
上記で得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池を恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電した後、25℃にて、放電レート0.2Cにて、放電容量(0.2C)を測定した。
結果を表3に示す。
ここで、CC-CV充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)を意味する。
【0192】
(高温保存前の電池抵抗(DCIR)の測定)
上記で得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Chargeの略)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、-20℃にて、コイン型電池の高温保存前の直流抵抗(Direct current internal resistance;DCIR)を測定した。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電を行った。
ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
上記「放電レート0.2CでのCC10s放電」における、電流値(即ち、放電レート0.2Cに相当する電流値)と、電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)と、に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(Ω)とした。
結果を表3に示す。
【0193】
(高温保存後の電池抵抗(DCIR)の測定)
コンディショニング後であってSOCを80%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで高温保存を施す操作を追加したこと以外は前述の高温保存前の電池抵抗の測定と同様にして、高温保存後の電池抵抗(Ω)を測定した。
結果を表3に示す。
【0194】
(高温保存による電池抵抗の上昇率の測定)
下記式により、高温保存による電池抵抗の上昇率を算出した。結果を表3に示す。
高温保存による電池抵抗の上昇率(%)
= 〔(高温保存後の電池抵抗(Ω)-高温保存前の電池抵抗(Ω))/高温保存前の電池抵抗(Ω)〕×100
【0195】
〔実施例2B、実施例3B、比較例1B〕
非水溶媒の混合比を、表3に示すように変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0196】
表3中、MFECは、式(F2)で表される化合物の具体例である、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートを意味する。
表3中、TFPTFPEは、式(F3)で表される化合物の具体例である、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルを意味する。
【0197】
〔実施例101B~実施例103B、比較例101B〕
非水電解液中の電解質として用いたLiTFSIを、同モルのLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)に変更したこと以外は実施例1B~3B及び比較例1Bの各々と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0198】
【0199】
表3に示すように、実施例1B~3Bでは、比較例1Bと比較して、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた。また、実施例1B~3Bでは、比較例1Bと比較して、放電容量も向上されていた。
【0200】
同様に、実施例101B~103Bでは、比較例101Bと比較して、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた。また、実施例101B~103Bでは、比較例101Bと比較して、放電容量も向上されていた。
【0201】
実施例1B~3B及び101B~103Bにおいて、高温保存による電池抵抗の上昇を抑制する効果が得られた理由の一つとして、非水溶媒に含まれる特定含フッ素化合物(FEC、MFEC、又はTFETFPE)により、Alを含む正極集電体の腐食が抑制されたことが考えられる。
以下、この点を検証するために、サイクリックボルタンメトリー(CV)によるAl腐食の評価を行った。
【0202】
〔サイクリックボルタンメトリー(CV)(Al腐食の評価)〕
実施例1B~3B及び101B、並びに、比較例1B及び101Bの各々の非水電解液について、以下に示すサイクリックボルタンメトリー(CV)により、Al腐食の評価を行った。
即ち、各例における非水電解液(1.5mL)に、作用極としてのAl電極と、対極としてのLi電極と、参照極としてのLi電極と、を浸漬し、サイクリックボルタンメトリー(CV)を実施した。
Al電極(作用極)としては、上記コイン型電池の作製に用いた厚さ20μmの帯状アルミ箔(正極集電体)から切り出した、長さ15mm×幅4mmサイズのAl箔片を用いた。Al電極の非水電解液への浸漬深さ(即ち、非水電解液に浸漬する部分の長さ)は、7.5mmとした。
CVは、電位を3Vから5Vに上昇させ、次いで3Vに戻すまでの操作を1サイクルとし、3サイクル実施した。電位の掃引速度は、10mV/minとした。
CVにおいて観測される酸化電流値に基づき、Al電極の腐食を評価した。観測される酸化電流値が小さいほど、酸化反応が抑制されており、Al電極の腐食が抑制されている。
【0203】
図6は、実施例1B~3B及び比較例1Bの各々の非水電解液について行った、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
図6に示されるように、実施例1B~3Bの非水電解液では、比較例1Bの非水電解液と比較して、酸化電流値(
図6中、「電流(mA/cm
2)」)が低減されていた。これにより、実施例1B~3Bの非水電解液によれば、実際に、Al電極の腐食を抑制できることが確認された。
【0204】
図7は、実施例101B及び比較例101Bの各々の非水電解液について行った、サイクリックボルタンメトリーの2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
図7に示されるように、実施例101Bの非水電解液では、比較例101Bの非水電解液と比較して、酸化電流値(
図7中、「電流(mA/cm
2)」)が低減されていた。これにより、実施例101Bの非水電解液によれば、実際に、Al電極の腐食を抑制できることが確認された。
【0205】
〔実施例201B、実施例202B、及び比較例201B〕
式(1)で表される化合物の濃度及びLiPF6の濃度を、表4に示すように変更したこと以外は、実施例101B、実施例102B、及び比較例101Bと同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
これらの例における非水電解液において、モル比〔式(1)で表される化合物/(式(1)で表される化合物+LiPF6)〕は、0.17である。
【0206】
【0207】
表4に示すように、式(1)で表される化合物の濃度が0.2mol/Lである実施例群においても、式(1)で表される化合物の濃度が0.6mol/Lである実施例群(表3)と同様の効果が確認された。
【0208】
2018年1月25日に出願された日本国特許出願2018-010350及び2018年1月25日に出願された日本国特許出願2018-010351の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせ、又は、
前記式(1)で表される化合物としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む前記電解質と、前記式(A1)で表される化合物及び前記式(A2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記添加剤Aと、の組み合わせを含有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。