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特開2023-63594物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063594
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20230427BHJP
【FI】
F03D80/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043145
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2021196230の分割
【原出願日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021046642
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519303966
【氏名又は名称】LEBO ROBOTICS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519303977
【氏名又は名称】合同会社TAKEI Enterprise
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】浜村 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 真之
(72)【発明者】
【氏名】竹囲 年延
(57)【要約】
【課題】安全かつ簡単に物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法を提供すること
【解決手段】本発明の物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステムは、前記物体の前記少なくとも一部まで移動し、少なくとも1本のロープを前記物体の前記少なくとも一部に保持するように構成されている少なくとも1つのロープ保持装置と、前記物体の前記少なくとも一部のメンテナンスを行うように構成されたメンテナンス装置であって、前記メンテナンス装置は、前記少なくとも1つのロープ保持装置によって保持された前記少なくとも1本のロープ上を前記物体の前記少なくとも一部まで移動し、かつ、前記物体の前記少なくとも一部上を移動するように構成されている、メンテナンス装置とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型風力発電機は、そのナセルが約100mの高さを有する。大型風力発電機のブレードの翼端周速は約100~120m/sであり、ブレードの風を切る方の縁であるリーディングエッジ(前縁)は、毎年約20μm摩耗する。また、大型風力発電機のブレードは雷による被害を受けやすい。そのため、ブレードには、耐雷対策として雷撃電流を地面に流すための受雷部が設けられているが、故障により受雷部が導通不良であると、ブレードは、落雷よる雷撃電流を地面に流すことができずに大破してしまう。従って、大型風力発電機のブレードには、定期的なメンテナンスが必要である。
【0003】
既設の大型風力発電機のブレードのメンテナンスを行う方法として、代表的な3つの方法がある。第1の方法は、大型クレーンを用いてブレードを取り外し、地上に下ろしてからメンテナンスを行う方法である。第2の方法は、大型クレーンの先端にゴンドラを吊り下げ、ゴンドラに乗った作業員がメンテナンスを行う方法である。第3の方法は、作業員がブレード上に張られたロープを伝ってブレード上を移動してメンテナンスを行う方法である。
【0004】
第1の方法および第2の方法は、大型クレーンを用いるため、多くの費用および労力を要する。特に、第1の方法は、ブレードの取り外し工程および取り付け工程のために、莫大な費用および長期の工期が必要である。第2の方法および第3の方法は、作業員が高所で作業を行う必要があり、危険を伴う。
【0005】
特許文献1は、大型クレーンを用いることなく大型風力発電機のブレードのメンテナンスを行う方法を開示している。特許文献1のメンテナンス方法では、依然として作業員が高所で作業を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-7525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全かつ簡単に物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステムであって、
前記物体の前記少なくとも一部まで移動し、少なくとも1本のロープを前記物体の前記少なくとも一部に保持するように構成されている少なくとも1つのロープ保持装置と、
前記物体の前記少なくとも一部のメンテナンスを行うように構成されたメンテナンス装置であって、前記メンテナンス装置は、前記少なくとも1つのロープ保持装置によって保持された前記少なくとも1本のロープ上を前記物体の前記少なくとも一部まで移動し、かつ、前記物体の前記少なくとも一部上を移動するように構成されている、メンテナンス装置と
を備えるシステム。
(項目2)
前記少なくとも1つのロープ保持装置は、前記物体上に設置された前記少なくとも1本のロープ上を前記物体の前記少なくとも一部まで移動するように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記少なくとも1つのロープ保持装置は、少なくとも2本のロープを前記物体の前記少なくとも一部に保持するように構成され、前記少なくとも2本のロープは、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群と、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群とを含み、
前記少なくとも1つのロープ保持装置は、前記物体の前記少なくとも一部の第1の側に前記第1のロープ群を保持し、前記物体の前記少なくとも一部の第2の側に前記第2のロープ群を保持する、項目1または項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記少なくとも1つのロープ保持装置は、1つのロープ保持装置であり、
前記ロープ保持装置は、前記第1のロープ群に係合するように構成され、
前記ロープ保持装置は、前記第2のロープ群が通過する開口部を有する、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記開口部は、前記第2のロープ群が前記開口部内に拘束される第1の状態と、前記第2のロープ群が前記開口部から解放される第2の状態とに遷移可能に構成された部材によって形成されている、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記ロープ保持装置は、通信手段と、制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記通信手段が受信した命令に応答して、前記部材を前記第1の状態から前記第2の状態に遷移させるように構成されている、項目5に記載のシステム。
(項目7)
前記ロープ保持装置の重量は、前記メンテナンス装置の重量よりも軽い、項目1~6のいずれか一項に記載のシステム。
(項目8)
前記ロープ保持装置の重量は、前記少なくとも1本のロープのうちの1本のロープの重量よりも軽い、項目1~7のいずれか一項に記載のシステム。
(項目9)
前記物体は、風車であり、前記物体の前記少なくとも一部は、前記風車のブレードである、項目1~8のいずれか一項に記載のシステム。
(項目10)
物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うための方法であって、
前記物体の前記少なくとも一部まで少なくとも1つのロープ保持装置を移動させることと、
前記少なくとも1つのロープ保持装置によって、前記少なくとも1本のロープを前記物体の前記少なくとも一部に保持することと、
前記少なくとも1つのロープ保持装置によって保持された前記少なくとも1本のロープをメンテナンス装置に接続することと、
前記少なくとも1つのロープ保持装置によって保持された前記少なくとも1本のロープ上を前記物体の前記少なくとも一部まで前記メンテナンス装置を移動させることと、
前記物体の前記少なくとも一部上で前記メンテナンス装置を移動させることと、
前記メンテナンス装置が前記物体の前記少なくとも一部上を移動している間に、前記メンテナンス装置に前記物体の前記少なくとも一部のメンテナンスを行わせることと
を含む方法。
(項目11)
前記物体の前記少なくとも一部まで前記少なくとも1つのロープ保持装置を移動させることは、
前記物体上に前記少なくとも一本のロープを設置することと、
前記少なくとも1本のロープ上を前記物体の前記少なくとも一部まで前記少なくとも1つのロープ保持装置を移動させることと
を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記物体の前記少なくとも一部まで前記少なくとも1つのロープ保持装置を移動させることは、前記少なくとも1つのロープ保持装置の空間位置を制御することを含む、項目10または項目11に記載の方法。
(項目13)
前記少なくとも1本のロープを設置することは、前記物体上に少なくとも2本のロープを設置することを含み、前記少なくとも2本のロープは、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群と、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群とを含み、
前記少なくとも2本のロープを前記物体の前記少なくとも一部に保持することは、前記第1のロープ群が前記物体の前記少なくとも一部の第1の側から延び、前記第2のロープ群が前記物体の前記少なくとも一部の第2の側から延びるように、前記ロープ保持装置を前記物体の前記少なくとも一部上に配置することを含む、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記少なくとも1つのロープ保持装置は、1つのロープ保持装置であり、
前記ロープ保持装置は、前記第1のロープ群に係合し、前記第2のロープ群を拘束し、
前記メンテナンス装置を前記物体の前記少なくとも一部まで移動させた後に、前記ロープ保持装置から前記第2のロープ群を解放することをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記物体は、風車であり、前記物体の前記少なくとも一部は、前記風車のブレードである、項目10~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置であって、前記メンテナンス装置は、
前記物体の少なくとも一部上を移動するための移動手段と、
相互に異なるメンテナンスを行うように構成されている複数のメンテナンス手段であって、前記複数のメンテナンス手段は、搭載部に搭載されている、複数のメンテナンス手段と、
前記複数のメンテナンス手段のうちの少なくとも1つのメンテナンス手段を選択し、前記選択された少なくとも1つのメンテナンス手段によるメンテナンスが実行されるように、前記複数のメンテナンス手段を制御する制御手段と
を備える、メンテナンス装置。
(項目17)
前記搭載部は、軸の周りに回転可能に構成されており、
前記制御手段は、前記軸の周りに前記搭載部を回転させることにより、前記複数のメンテナンス手段の位置を変更する、項目16に記載のメンテナンス装置。
(項目18)
前記搭載部は、所定の方向に並進可能に構成されており、
前記制御手段は、前記搭載部を並進させることにより、前記複数のメンテナンス手段の位置を変更する、項目16または項目17に記載のメンテナンス装置。
(項目19)
前記複数のメンテナンス手段のうちの1つは、材料を塗布するための塗布手段である、項目16~18のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
(項目20)
前記複数のメンテナンス手段のうちの1つは、平坦化手段であり、前記平坦化手段は、前記塗布手段によって塗布された材料を平坦化するためのヘラと、前記物体の少なくとも一部に当接して前記ヘラを前記物体の少なくとも一部から離間するための当接部とを備える、項目19に記載のメンテナンス装置。
(項目21)
前記平坦化手段は、前記ヘラを清掃するための金網をさらに備える、項目20に記載のメンテナンス装置。
(項目22)
前記塗布手段は、材料を吐出するためのコーキングガンを備え、前記コーキングガンは、空気圧の間欠制御および/または電空レギュレータによる制御によって、前記材料の吐出量を調節されるように構成されている、項目19~21のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
(項目23)
前記塗布手段は、シートまたはフィルムを前記物体の少なくとも一部に貼り付けるように構成されている、項目19~22のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
(項目24)
前記複数のメンテナンス手段のうちの1つは、前記物体の少なくとも一部の表面を研削するための研削手段である、項目16~23のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。(項目25)
前記研削手段は、リュータを備える、項目24に記載のメンテナンス装置。
(項目26)
前記リュータは、その回転軸が前記表面に対して垂直となるように、前記表面に押し付けられるように構成されている、項目25に記載のメンテナンス装置。
(項目27)
前記研削手段は、ベルトサンダーを備え、前記ベルトサンダーは、その研削面の移動方向が前記表面が延びる方向に対して傾斜して、前記表面に押し付けられるように構成されている、項目24~26のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
(項目28)
前記複数のメンテナンス手段は、
前記物体の少なくとも一部の表面の研削と、
前記研削された表面の洗浄と、
前記洗浄された表面への材料の塗布と、
前記塗布された材料の少なくとも一部の平坦化と、
前記平坦化された材料の硬化と、
前記硬化させられた材料の研削と、
前記研削された材料の洗浄と、
前記洗浄された材料への塗装と
を行うように構成されている、項目16~27のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全かつ簡単に物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステム、装置、および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1B】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1C】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1D】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1E】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1F】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図1G】風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する図
図2図1Bに破線の円で示される領域の拡大図
図3】ブレード11上に配置されたロープ保持装置200の様子を示す図
図4】ロープ保持装置200が、ロープ20を解放する様子を示す図
図5A】一実施形態におけるメンテナンス装置100’の構成の一例を示す図
図5B】メンテナンス装置100’の実装例を示す図
図5C】ロープ保持装置200の構成の一例を示す図
図6】本発明のシステムを用いて、風車のブレードのメンテナンスを行う方法の手順の一例(手順600)を示すフローチャート
図7】ステップS601における手順の一例を示すフローチャート
図8】ステップS606をメンテナンス装置100’によって行うときのメンテナンス方法の一例を示すフローチャート
図9】ヘラ1241と当接部1242とを備える平坦化手段124が、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)上の凹部に塗布された材料を平坦化する前の様子を示す図
図10A】一実施形態における搭載部140Aの一例を示す図。
図10B】一実施形態における搭載部140Bの一例を示す図。
図10C】一実施形態における搭載部140Cの一例を示す図。
図10D】一実施形態における搭載部140Dの一例を示す図。
図10E】一実施形態における搭載部140Eの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
1.風車のブレードのメンテナンス
図1A図1Gを参照して、本発明のシステムを用いて、風車のブレードのメンテナンスを行う手順を説明する。図1A図1Gの(a)には、風車10の正面が示され、図1A図1Gの(b)には、風車10の右側面が示されている。図1A図1Gの(b)では、メンテナンス対象のブレード11のみを示し、他の2枚のブレード12、13は省略している。図1A図1Gの(a)に示される風車は、図面上時計回りに回転する風車であり、各ブレードの直線状の縁がリーディングエッジ(前縁)となる。
【0014】
本明細書において「風車」とは、風を受けて動力を得る装置のことをいう。風車の一例として、風力発電機が挙げられる。
【0015】
本明細書において「メンテナンス」とは、物体の点検または保守のことをいう。メンテナンスの一例として、物体の表面を撮像すること、物体の受雷部の導通を検査すること、物体の表面を洗浄すること、物体の表面を研削および/または研磨すること、物体の表面に塗料を塗布すること、物体の表面にパテ、接着剤、シーラント等の材料を塗布すること等が挙げられる。
【0016】
本発明のシステムは、メンテナンス装置100と、ロープ保持装置200とを備える。
【0017】
図1Aは、本発明のシステムを風車10のブレード11に取り付ける前の準備段階の様子を示す。
【0018】
ブレード11のメンテナンスは、ブレード11が鉛直方向下向きに延びるようにブレード11を位置付けた状態で行われる。これは、作業員がブレード上に張られたロープを伝ってブレード上を移動してメンテナンスを行う従来の方法におけるブレードの状態と同じ状態であるため、既存の作業現場にも受け入れられやすい。ブレード11は、鉛直方向下向きに延びるように位置付けられると、図1Aの(b)に示されるように、リーディングエッジが垂直に対して約5度傾斜する。
【0019】
装置100を風車10のブレード11に取り付ける前の準備段階において、ロープ20が風車10に設置される。ここで、ロープ20を風車10に設置する態様は問わない。ロープ20は、風車10上の任意の位置に任意の手法で設置されることができる。
【0020】
一例において、ロープ20は、風車10のナセル14に固定される。ナセル14は、発電機やギアボックス等を収納する筐体である。ロープ20は、例えば、ナセル14のハッチに固定されることができる。ロープ20は、例えば、専用の固定具を用いてナセル14に固定されることができる。このとき、ロープ20は、例えば、ドローン等の飛行可能な装置によって風車10のナセル14まで運搬され得る。
【0021】
別の例において、ロープ20は、ブレード11の付根付近に存在するくびれ部に固定される。ロープ20は、例えば、専用の固定具を用いてくびれ部に固定されることができる。固定具は、例えば、機械的な力よってくびれ部に固定されるようにしてもよいし、磁力によってくびれ部に固定されるようにしてもよいし、電気力によってくびれ部に固定されるようにしてもよい。このとき、ロープ20は、例えば、ドローン等の飛行可能な装置によってブレード11のくびれ部まで運搬され得る。
【0022】
別の例において、ロープ20は、ブレード12、13に引っ掛けられる。ロープ20は、例えば、ブレード12、13の周囲を回り、一方の端が地上まで延在して固定され、他方の端がブレード11の方へ延びる。このとき、ロープ20は、ドローン等の飛行可能な装置によってブレード12、13の上方に運搬されて、ブレード12、13に引っ掛けられ得る。
【0023】
別の例において、ロープ20は、風車10のタワーに固定される。ロープ20は、例えば、専用の固定具を用いてタワーに固定されることができる。固定具は、例えば、機械的な力よってタワーに固定されるようにしてもよいし、磁力によってタワーに固定されるようにしてもよいし、電気力によってタワーに固定されるようにしてもよい。このとき、ロープ20は、例えば、ドローン等の飛行可能な装置によってタワーの上部まで運搬され得る。あるいは、ロープ20は、タワーに沿って上昇するロボットを用いてタワーに固定されることができる。
【0024】
以下では、2本のロープ20が風車10のナセル14に固定される例を説明する。2本のロープ20のそれぞれは、風車10のナセル14からハブ15の近傍を通って地面まで延びる。ハブ15は、ブレード11、12、13とナセル14とを回転可能に結合する部材である。
【0025】
図1B図1Dは、ロープ保持装置200を風車10のブレード11上に配置する段階の様子を示す。
【0026】
ロープ保持装置200には、風車10のナセル14から2本のロープ20が延びている。ロープ保持装置200は、2本のロープ20のうちの一方のロープに係合し、他方のロープを解放可能に拘束することができる。ロープ保持装置200は、係合したロープを伝って、上方に移動することが可能である。
【0027】
図2は、図1Bに破線の円で示される領域の拡大図である。図2では、ロープ保持装置200が、2本のロープ20のうちの一方のロープ20に係合し、他方のロープ20を解放可能に拘束する様子が示されている。
【0028】
ロープ20は、ロープ保持装置200の底面側の係合部(不可視)によって係合されている。係合部がロープ20に係合し、ロープ20が延びる方向においてロープ20に力を加えることにより、ロープ保持装置200は、ロープ20に沿って移動することができる。これにより、ロープ保持装置200は、ブレード11付近まで上昇することができる。
【0029】
ロープ保持装置200は、部材250を有している。ロープ保持装置200の本体の第1の取付部241および第2の取付部242から延在している。これにより、ロープ保持装置200の本体と、部材250とによって開口部260が形成されている。ロープ20は、開口部260を通過し、これにより、ロープ20は、ロープ保持装置200の本体と、部材250とによって拘束されている。ロープ保持装置200がロープ20を拘束した状態でブレード11までロープ20に沿って移動することにより、ロープ保持装置200は、2本のロープ20および20を接近させた状態で、ブレード11上に保持することが可能になる。
【0030】
ロープ保持装置200は、ロープ20上を移動し、かつロープ20を解放可能に拘束するための機能を実現可能な最小限の構成を有することができる。これにより、ロープ保持装置200の重量を軽量化することができる。
【0031】
ロープ保持装置200がロープ20に沿って上昇し、図1Cに図示されるように、ブレード11の先端と略同じ高さに到達すると、ロープ保持装置200は、図1Cの(b)において矢印で示される方向に空間位置を制御される。ブレード11の表面上にロープ保持装置200を配置するためである。
【0032】
ロープ保持装置200は、任意の手法によって空間位置を制御されることができる。例えば、2本のロープ20のうちの1本を引っ張ることによって、空間位置を制御されてもよいし、2本のロープ20の両方を引っ張ることによって、空間位置を制御されてもよいし、2本のロープ20とは別の少なくとも1本のロープをロープ保持装置200に接続してその少なくとも1本のロープを引っ張ることによって空間位置を制御されてもよい。これらのロープは、例えば、地上の作業員またはロボットによって引っ張られるようにしてもよいし、水上または水中の作業員またはロボットによって引っ張られるようにしてもよいし、空中の作業員またはロボットによって引っ張られるようにしてもよい。水上もしくは水中の作業員もしくはロボット、または、空中の作業員もしくはロボットによってロープを引っ張ることは、例えば、洋上または沿岸の風車のメンテナンスを行う場合に好ましい。
【0033】
好ましくは、ロープ保持装置200は、2本のロープ20のうちの1本または両方を地上から引っ張ることによって、空間位置を制御される。これにより、追加の設備を必要とすることなく、かつ、地上から安全にロープ保持装置200の空間位置を制御することができるからである。
【0034】
空間位置の制御は、ロープを介した制御に限られない。例えば、ロープを介した制御に代えて、または、ロープを介した制御に加えて、ロープ保持装置200が備え得る位置制御装置を介した制御によって、空間位置が制御されてもよい。位置制御装置は、ロープ保持装置200の位置を制御するために、推進力を発生させることが可能な装置であり得る。例えば、位置制御装置は、ロープ保持装置200に取り付けられるプロペラ、または、ロープ保持装置200に取り付けられるドローン等の飛行可能な装置であり得る。
【0035】
ロープ保持装置200は、上述したように、軽量化されているため、容易に空間位置を制御されることが可能である。
【0036】
なお、上述した例では、ロープ保持装置200がブレード11の先端と略同じ高さに到達した後に、ロープ保持装置200の空間位置を制御することを説明したが、空間位置の制御のタイミングは、これに限定されない。例えば、ロープ保持装置200を上昇させているとき、ロープ保持装置200の空間位置を制御するようにしてもよい。
【0037】
ロープ保持装置200がその空間位置を制御されることにより、図1Dに示されるように、ブレード11上に到達する。これにより、ロープ保持装置200をブレード11上に配置することができる。
【0038】
図3は、ブレード11上に配置されたロープ保持装置200の様子を示す。図3の(a)は、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)を真上から見た図であり、図3の(b)は、図3の(a)に示されるb-b線に沿った断面図である。
【0039】
ロープ保持装置200がロープ20に係合しかつロープ20を拘束しているため、ロープ保持装置200をブレード11上に配置することにより、2本のロープ20および20がブレード11上に保持されることになる。
【0040】
図3に示されるように、2本のロープ20は、ブレード11をリーディングエッジで二分したときの両側に位置する。すなわち、ロープ20は、図3の(a)に示されるリーディングエッジよりも右側に位置し、ロープ20は、図3の(a)に示されるリーディングエッジよりも左側に位置する。これにより、2本のロープは、ブレード11の両側から延びることになる。
【0041】
このとき、2本のロープ20および20のそれぞれは、風車10のナセル14から延びており、有意な長さを有しており、従って、その重量も有意なものである。ロープ保持装置200は、上述したように、軽量化されているため、それぞれのロープよりも軽量であり得る。従って、ブレード11のリーディングエッジを挟んで両側に位置する2本のロープ20および20の重量と、ロープ保持装置200とブレード11との間の摩擦とにより、ロープ保持装置200は、ブレード11上に安定して配置されることができる。
【0042】
図1E図1Fは、メンテナンス装置100を風車10のブレード11上に移動させる段階の様子を示す。
【0043】
メンテナンス装置100は、2本のロープ20に沿って移動するための移動手段を備えている。移動手段は、例えば、ウインチである。メンテナンス装置100は、例えば2つのウインチを備え、2つのウインチの一方に1本のロープが接続され、2つのウインチの他方にもう1本のロープが接続される。ロープ20の一端は、例えば、錘等によって地面に固定される。メンテナンス装置100は、ウインチを用いてロープ20を巻き取ることによって、ロープ20を伝って上昇することができる。
【0044】
ロープ20は、ブレード11上に配置されているロープ保持装置200から垂直に延在しているため、メンテナンス装置100は、その姿勢または空間位置を制御される必要なく、ブレード11まで上昇することができる。また、ロープ保持装置200が2本のロープを近接して保持しているため、メンテナンス装置100が上昇するロープも近接することになる。これにより、メンテナンス装置100は、2本のロープ20を上昇のために有効に活用することができる。例えば、2本またはそれより多くのロープを伝って上昇することにより、1本のロープを伝って上昇する場合に比べて、安全かつ安定して上昇することができる。
【0045】
メンテナンス装置100がロープ20を伝って上昇することにより、図1Fに示されるように、ブレード11上に到達する。これにより、メンテナンス装置100をブレード11上に配置することができる。
【0046】
ブレード11上に到達したメンテナンス装置100は、任意の機構によって、ブレード11に取り付くことができる。メンテナンス装置100は、例えば、機械的な力によってブレード11に取り付くようにしてもよいし、磁力によってブレード11に取り付くようにしてもよいし、電気力によってブレード11に取り付くようにしてもよいし、圧力によってブレード11に取り付くようにしてもよい。機械的な力によってブレード11に取り付くための機構は、例えば、ブレード11を挟持するように付勢される一対のフレームであり得る。圧力によってブレード11に取り付くための機構は、例えば、負圧を発生させてブレード11に吸い付くための機構であり得る。
【0047】
メンテナンス装置100がブレード11に到達すると、ロープ保持装置200は、その役目を終える。ロープ保持装置200は、もはや、ロープ20を拘束する必要がない。従って、ロープ保持装置200は、ロープ20を解放することができる。
【0048】
図4は、ロープ保持装置200が、ロープ20を解放する様子を示す。
【0049】
図4の(a)に示されるように、ロープ保持装置200は、ロープ20に係合しており、ロープ20を開口部260内に拘束している。部材250は、ロープ保持装置200の本体の第1の取付部241および第2の取付部242に取り付けられている。部材250の一端は、第1の取付部241に固定して取り付けられ、部材250の他端は、第2の取付部242に解放可能に取り付けられている。
【0050】
ロープ保持装置200は、図4の(b)に示されるように、第2の取付部242に取り付けられていた部材250の端部を解放することができる。これにより、開口部260は開放され、ロープ20は解放されることができる。
【0051】
ロープ保持装置200は、任意のタイミングで部材250の端部を解放することができる。例えば、ロープ保持装置200は、外部からの命令を受信したことに応答して、部材250の端部を解放することができる。あるいは、例えば、ロープ保持装置200は、メンテナンス装置100がロープ保持装置200の接近または接触を感知したことに応答して、部材250の端部を解放することができる。
【0052】
このようにして、部材250は、ロープ20を拘束する第1の状態から、ロープ20を解放する第2の状態に遷移することができる。
【0053】
メンテナンス装置100がブレード11に到達したとき、ロープ保持装置200は、ロープ20との係合を解除するようにしてもよい。すなわち、ロープ保持装置200は、ロープ保持装置200が依然としてロープ20に接続されているが、ロープ20に力をはたらかせることができない状態にされることができる。これにより、ロープ保持装置200は、メンテナンス装置100の移動に合わせてロープ20を伝って移動することができ、メンテナンス装置100の移動を妨げないようにすることができる。ロープ保持装置200が依然としてロープ20に接続されているので、ロープ保持装置200がブレード11上から落下することもない。
【0054】
図1Gは、メンテナンス装置100がロープ20を伝ってブレード11のリーディングエッジ上を移動している様子を示す。
【0055】
メンテナンス装置100がリーディングエッジに沿って移動するとき、メンテナンス装置100は、ブレード11に取り付いた状態を維持することができる。これにより、メンテナンス装置100は、浮き上がることなく、ブレード11のリーディングエッジ上を移動することができる。また、上述したように、ブレード11のリーディングエッジが垂直に対して約5度傾斜(場合によっては、約1度~約10度傾斜)しているため、メンテナンス装置100に働く重力は、メンテナンス装置100をブレード11のリーディングエッジに押し付けるように作用し、メンテナンス装置100の浮き上がりを阻止する。
【0056】
メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、ブレード11のメンテナンスを行う。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、カメラを用いてリーディングエッジの表面を撮像する。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、プローブを用いて受雷部の導通を検査する。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、洗浄装置を用いてリーディングエッジの表面を洗浄する。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、サンダーを用いてリーディングエッジの表面を研磨する。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、塗料塗布装置を用いてリーディングエッジの表面に塗料を塗布する。例えば、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を移動しながら、電動ガンを用いてリーディングエッジの表面にパテ、接着剤、シーラント等の材料を塗布する。塗布された材料によってブレード11にあいた穴を埋めることができる。穴を埋めることは、穴をふさいでブレード11内に水が入らないようにすること等を目的とし、美観や完成度を要求しなくてもよい。
【0057】
メンテナンス装置100は、ウインチによる巻き取りおよび繰り出しを制御することにより、ブレード11のリーディングエッジ上をロープ20が延びる方向に、例えば、ブレードの先端からブレードの付根に向かう方向およびブレードの付根からブレードの先端に向かう方向に移動することができる。これにより、メンテナンス装置100は、ブレード11のリーディングエッジ上を往復移動しながら、メンテナンスを行うことができる。また、万が一メンテナンス装置100がブレード11から外れてしまっても、メンテナンス装置100のウインチが接続しているロープ20が命綱となり、メンテナンス装置100の転落を防止することができる。
【0058】
上述した例では、1つのメンテナンス装置100を用いて風車のブレードのメンテナンスを行うことを説明したが、複数のメンテナンス装置100を用いて風車のブレードのメンテナンスを行うことも可能である。
【0059】
上述した例では、1つのロープ保持装置200を用いることを説明したが、ロープ保持装置200の数は、1以上の任意の数であり得る。例えば、2つのロープ保持装置200、3つのロープ保持装置200、または、4つ以上のロープ保持装置200を用いることができる。さらに、上述した例では、2本のロープ20を用いることを説明したが、本発明は、これに限定されない。本発明では、少なくとも1本のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行うことができる。
【0060】
例えば、1つのロープ保持装置200および1本のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、上述したロープ保持装置200から部材250が省略され得る。ロープ保持装置200およびメンテナンス装置200は、1本のロープを伝って上昇し、ブレード上を移動することになる。
【0061】
例えば、1つのロープ保持装置200および3本以上のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、3本以上のロープは、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群と、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群に分けられる。第1のロープ群が、上述したロープ20と同様に取り扱われ、第2のロープ群が、上述したロープ20と同様に取り扱われる。例えば、ロープ保持装置200は、第1のロープ群に係合し、ロープ保持装置200の本体および部材250によって形成される開口部を第2のロープ群が通過し、これにより、第2のロープ群を拘束することになる。また、ロープ保持装置200がブレード上に配置された後は、第1のロープ群がブレードの第1の側から延び、第2のロープ群がブレードの第2の側から延びることになる。第1のロープ群に含まれるロープの数と、第2のロープ群に含まれるロープの数との比は任意の値であり得る。
【0062】
例えば、2つのロープ保持装置200および2本のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、2つのロープ保持装置200の各ロープ保持装置200では、部材250が省略され得る。各ロープ保持装置200は、それぞれの1本のロープを伝ってブレード上まで上昇することになる。2つのロープ保持装置200は、例えば、独立してブレードまで移動するようにしてもよいし、同期してブレードまで移動するようにしてもよい。メンテナンス装置は、2つのロープ保持装置200によって保持された2本のロープを伝ってブレードまで上昇し、ブレード上を移動することになる。
例えば、1つのロープ保持装置200および2本のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、1つのロープ保持装置200が2本のロープの両方に係合するようにしてもよい。このとき、ロープ保持装置200が2つの係合部を有し、第1の係合部が第1のロープに係合し、第2の係合部が第2のロープに係合する。第1の係合部および第2の係合部がそれぞれのロープに力を加えることにより、ロープ保持装置200はロープに沿って移動することができる。例えば、2つの係合部は同期してロープ上を移動することができる。ブレード上まで移動した後は、例えば、ロープ保持装置200を第1の係合部を有する第1の部分と第2の係合部を有する第2の部分とに分離することによって、第1のロープおよび第2のロープを離すようにしてもよい。このようなロープ保持装置200は、例えば、左右対称の構造で構築されることができる。
【0063】
例えば、2つのロープ保持装置200および3本以上のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、3本以上のロープは、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群と、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群と、少なくとも1本のロープを含む第3のロープ群とに分けられる。第1のロープ群が、上述したロープ20と同様に取り扱われ、第2のロープ群が、上述したロープ20と同様に取り扱われて、2つのロープ保持装置200のうちの第1のロープ保持装置200に接続される。例えば、第1のロープ保持装置200は、第1のロープ群に係合し、ロープ保持装置200の本体および部材250によって形成される開口部に第2のロープ群を拘束することになる。第3のロープ群は、2つのロープ保持装置200のうちの第2のロープ保持装置200に接続される。例えば、第2のロープ保持装置200は、第3のロープ群に係合することができる。あるいは、第3のロープ群がさらに2つのロープ群に分けられてもよく、第2のロープ保持装置200は、分けられたロープ群のうちの1つに係合し、分けられたロープ群のうちの他の1つを拘束することができる。第1のロープ群に含まれるロープの数と、第2のロープ群に含まれるロープの数と、第3のロープ群に含まれるロープの数との比は任意の値であり得る。
【0064】
例えば、3つ以上のロープ保持装置200および3本以上のロープを用いて風車のブレードのメンテナンスを行う場合、3本以上のロープは少なくとも3つのロープ群に分けられ、3つ以上のロープ保持装置200のそれぞれは、少なくとも1つのロープ群に接続される。当業者は、本開示の範囲から想定される範囲内で、任意の数のロープ保持装置200および任意の数のロープを用いて、風車のブレードのメンテナンスを行うことができることを理解するはずである。
【0065】
図1A図1Gを参照して説明したメンテナンス方法では、メンテナンス装置100をブレード11上に容易に配置することができる。メンテナンス装置100は、ロープ保持装置200によって保持されたロープを辿るだけでブレード11まで到達し、ブレード11上にランディングすることができる。このとき、ブレード11上にランディングする際に、メンテナンス装置100の姿勢を細かく制御する必要がない。メンテナンス装置100は、ロープ保持装置200によって保持されたロープによって、ブレード11上の適切なランディング位置にガイドされることができるからである。これにより、メンテナンス装置100が有するべきランディングのための機構を簡略化または省略することができる。また、ランディングが簡単であることから、ランディングの際の人手を少なくすることができる。さらに、ランディングの際に姿勢を細かく制御する必要がないことから、メンテナンス装置の重量を重くしたとしてもランディングの難易度への影響が小さい。従って。メンテナンス装置に多くの機能を搭載して一度に多くのメンテナンスを行わせるようにすることができる。これは、メンテナンスの効率化につながる。
【0066】
図1A図1Gを参照して説明したメンテナンス方法では、メンテナンス装置100をブレード11まで容易に移動させることができる。例えば、ロープ保持装置200を用いることなくメンテナンス装置100をブレード11まで移動させる場合、図1Bに示されるようなブレード11の先端と略同じ高さまでメンテナンス装置100を移動させた後、または、ブレード11の先端と略同じ高さまでメンテナンス装置100を移動させている間に、メンテナンス装置100の空間位置を制御する必要がある。メンテナンス装置100は、各種メンテナンスを行うための種々の機構を搭載しており、通常、約40~100kgの重量を有する。このような重い装置の空間位置を制御することは容易ではなく、熟練の技が必要な場合がある。これに対して、ロープ保持装置200は軽量であり、その空間位置を制御することが容易である。メンテナンス装置100よりも軽量でありかつ空間位置を制御することが容易なロープ保持装置200を先行してブレード11上に配置し、メンテナンス装置100をロープ保持装置200によって保持されたロープを伝って移動させることにより、熟練の技を必要とすることなく、メンテナンス装置100をブレード11まで容易に移動させることができる。
【0067】
2.風車のブレードのメンテナンスを行うためのシステムの構成
本発明の風車のブレードのメンテナンスを行うためのシステムは、メンテナンス装置100と、ロープ保持装置200とを備える。システムは、任意の数のメンテナンス装置100および任意の数のロープ保持装置200を備えることができる。
【0068】
メンテナンス装置100は、風車のブレードのメンテナンスを行い、かつ、ロープ上をブレードまで移動し、かつ、ブレード上を移動するように構成されている限り、任意の構成を有することができる。
【0069】
メンテナンス装置100は、メンテナンスを行うための任意の手段を備えることができる。メンテナンスを行うための手段は、例えば、撮像手段と、導通検査手段と、洗浄手段と、研磨手段と、研削手段と、塗布手段とのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0070】
撮像手段は、物体の静止画または動画を撮像することが可能な任意のカメラであり得る。
【0071】
導通検査手段は、電導部に電流が流れるか検査することが可能な任意の手段であり得る。例えば、導通検査手段は、風車のブレードに設けられている受雷部に電流が流れるかを検査することが可能なプローブを備える。
【0072】
洗浄手段は、物体を洗浄することが可能な任意の手段であり得る。例えば、洗浄手段は、洗浄液およびウエスを用いて汚れを払拭する機構であってもよい。このような機構を用いて、図1Gに示されるように風車10のブレード11上を移動しながら風車10のブレード11を洗浄する場合、ウエスをブレードに押し付けた状態でメンテナンス装置100がブレード上を移動することによって、洗浄が行われる。
【0073】
研磨手段は、物体を研磨することが可能な任意の手段であり得る。例えば、研磨手段は、サンドペーパー、グラインダ、ディスクグラインダ等を用いて研磨する機構であってもよい。サンドペーパー、グラインダ、または、ディスクグラインダを用いて、図1Gに示されるように風車10のブレード11上を移動しながら風車10のブレード11を研磨する場合、サンドペーパー、または、回転するグラインダをブレードに押し付けた状態でメンテナンス装置100がブレード上を移動することによって、研磨が行われる。
【0074】
研削手段は、物体を研削することが可能な任意の手段であり得る。例えば、研削手段は、リュータ(またはハンドグラインダもしくは精密グラインダ)、ベルトサンダー等を用いて研削する機構であってもよい。例えば、研削手段は、リュータ、または、ベルトサンダーを風車10のブレード11に押し付けることで、ブレード11の表面を研削することができる。
【0075】
塗布手段は、物体に材料を塗布することが可能な任意の手段であり得る。塗布手段が塗布する材料は、例えば、塗料、パテ、接着剤、シーラントを含む。例えば、塗布手段は、塗料を噴射可能な噴射装置であってもよい。このような噴射装置を用いて、図1Gに示されるように風車10のブレード11上を移動しながら風車10のブレード11に塗料を塗布する場合、噴射装置から塗料を噴射させた状態でメンテナンス装置100がブレード上を移動することによって、塗料の塗布が行われる。例えば、塗布手段は、パテ、接着剤、シーラント等を押出可能なコーキングガンであってもよい。このようなコーキングガンを用いて、図1Gに示されるように風車10のブレード11上を移動しながら風車10のブレード11にパテ、接着剤、シーラント等の材料を塗布する場合、材料を塗布すべき部分を撮像手段等を用いてあらかじめ識別し、メンテナンス装置100がブレード11上を移動して材料を塗布すべき部分に到達したときに材料を押出することによって、材料の塗布が行われる。
【0076】
なお、メンテナンスを行うための手段は、撮像手段、導通検査手段、洗浄手段、研磨手段、研削手段、および塗布手段に限定されない。メンテナンス装置100は、上述した手段に代えて、または上述した手段に加えて、メンテナンスを行うための他の手段を備えるようにしてもよい。
【0077】
メンテナンス装置100は、例えば、通信手段を備えることができる。これにより、メンテナンス装置100の外部から信号を受信し、メンテナンス装置100の外部に信号を送信することができる。通信手段は、メンテナンス装置100の外部からの信号を無線で受信してもよいし、有線で受信してもよい。通信手段は、メンテナンス装置100の外部に信号を無線で送信してもよいし、有線で送信してもよい。通信手段は、例えば、メンテナンス装置100の各動作を制御するための信号をメンテナンス装置100の外部(例えば、操作者が使用する操作用端末)から受信することができる。通信手段は、例えば、撮像手段によって得られた画像データをメンテナンス装置100の外部に(例えば、操作者が使用する操作用端末)送信することができる。
【0078】
なお、メンテナンス装置100の外部からの信号に従って、メンテナンス装置100の各動作が制御されることを説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、ブレードのメンテナンスを行うための一連の動作を実現するためのプログラムがメンテナンス装置100のメモリに格納されてもよく、メンテナンス装置100のプロセッサは、そのプログラムを読み出し、実行することにより、メンテナンス装置100を、ブレードのメンテナンスを自動的に行う装置として機能させることができる。
【0079】
メンテナンス装置100は、メンテナンス装置100がロープに沿って移動することを可能にする移動手段を備える。移動手段は、メンテナンス装置100がブレード上を移動することも可能にする。例えば、移動手段は、メンテナンス装置100がロープに沿って移動することを可能にするウインチを備える。例えば、移動手段は、メンテナンス装置100がブレード上を移動することを可能にする車輪を備える。車輪は、非駆動車輪であり得るが、動力源によって駆動される駆動車輪であってもよい。例えば、メンテナンス装置100は、ウインチと非駆動車輪とを用いてブレード上を移動するようにしてもよいし、ウインチ(およびロープ)を利用することなく、駆動車輪を用いてブレード上を移動するようにしてもよい。
【0080】
上述した例では、メンテナンス装置100が、メンテナンスを行うための手段と、通信手段と、メモリと、プロセッサと、移動手段とを備え得る例を説明したが、本発明は、これに限定されない。メンテナンス装置100の構成要素のうちの少なくとも1つがメンテナンス装置100の本体の外部に位置するシステムもまた本発明の範囲内である。例えば、メンテナンス装置100がウインチを備える代わりに、風車のナセル14がウインチを備えてもよい。この場合、風車のナセル14のウインチから延びるロープがメンテナンス装置100に固定され、風車のナセル14のウインチがロープを巻き取るまたは繰り出すことにより、メンテナンス装置100がブレード11までおよびブレード11上を移動するようにしてもよい。
【0081】
図5Aは、メンテナンス装置100の代替実施形態であるメンテナンス装置100’の構成の一例を示す。
【0082】
メンテナンス装置100’は、移動手段110と、複数のメンテナンス手段120と、制御手段130とを備えている。複数のメンテナンス手段120は、搭載部140に搭載されている。
【0083】
移動手段110は、メンテナンス装置100’が風車のブレード上を移動することを可能にするように構成されている。例えば、移動手段110は、メンテナンス装置100’が風車に設置されたロープに沿って移動することを可能にするウインチを備える。メンテナンス装置100’は、例えば、風車に設置されたロープおよびウインチを利用して、風車のブレードまで移動することもできる。例えば、移動手段110は、メンテナンス装置100’がブレード上を移動することを可能にする車輪を備える。車輪は、非駆動車輪であり得るが、動力源によって駆動される駆動車輪であってもよい。例えば、メンテナンス装置100’は、ウインチと非駆動車輪とを用いてブレード上を移動するようにしてもよいし、ウインチ(およびロープ)を利用することなく、駆動車輪を用いてブレード上を移動するようにしてもよい。
【0084】
例えば、ロープは、ウインチを通過してもよいし、ウインチを通過しなくてもよい。ロープがウインチを通過する場合には、ロープは、例えば、風車からメンテナンス装置100’まで、そして、メンテナンス装置100’から地上まで延びることになる。ロープがウインチを通過しない場合、ロープはウインチの一端から進入し、他端から出ず、ロ-プは、メンテナンス装置100’と地面との間には延びない。例えば、ウインチが風車からメンテナンス装置100’まで延びるロープを巻き取ることにより、メンテナンス装置100’は、風車に向かう方向へ移動することができ、ウインチが風車からメンテナンス装置100’まで延びるロープを繰り出すことにより、風車から離れる方向へ移動することができる。
【0085】
なお、移動手段120は、上述したウインチ、車輪に限定されない。メンテナンス装置100’は、上述した手段に代えて、または上述した手段に加えて、メンテナンス装置100’が物体上を移動することを可能にする他の手段を移動手段120として備えるようにしてもよい。
【0086】
複数のメンテナンス手段120は、相互に異なるメンテナンスを行うように構成されている。複数のメンテナンス手段120は、例えば、研削手段121と、洗浄手段122と、塗布手段123と、平坦化手段124と、硬化手段125とを備える。
【0087】
研削手段121は、物体を研削することが可能な任意の手段であり得る。研削手段121は、風車のブレードの表面を研削するように構成されている。例えば、研削手段121は、リュータ(またはハンドグラインダもしくは精密グラインダ)、ベルトサンダー等を用いて研削する機構であり得る。リュータは、例えば、研削体を高速回転させ、高速回転する研削体を物体に押し付けることにより、物体を研削することができる。研削体は、例えば、球体または楕円体であり得る。研削体は回転軸を有しており、回転軸から最も離れる部分(例えば、赤道部分)が最も回転速度が大きく、研削能力が高い。ベルトサンダーは、研削面を有するリング状のサンディングベルトを複数のローラの周りで周回移動させ、周回移動する研削面を物体に押し付けることにより、物体を研削することができる。研削手段121によって研削される物体上の位置は、例えば、後述する搭載部140が備え得る並進機構によって研削手段121を上下左右前後に移動させることによって、調節されることができる。
【0088】
一例において、研削手段121は、リュータを備えている。リュータは、例えば、回転する研削体が物体の表面に押し付けられて物体の表面に沿って移動させられることにより、物体の表面の所望の範囲を研削することができる。リュータは、リュータの研削体の回転軸が物体の表面に対して垂直となるように、または、リュータの研削体の回転軸が物体の表面に対して傾斜するように、または、リュータの研削体の回転軸が物体の表面に対して平行となるように、物体の表面に押し付けられるように構成される。好ましくは、リュータは、リュータの研削体の回転軸が物体の表面に対して垂直となるように、物体の表面に押し付けられるように構成され得る。例えば、リュータは、研削体の回転軸が物体の表面に対して垂直となるようにメンテナンス装置100’に設置され得るか、あるいは、研削体の回転軸が物体の表面に対して垂直となるように制御され得る。例えば、研削体の回転軸は、ブレードのリーディングエッジの表面に対して垂直となり得る。リュータによる研削は、例えば、リュータを物体の表面に押し付ける力またはリュータと物体の表面との相対位置を調節することによって制御され得る。
【0089】
例えば、リュータの研削体の周囲には、防塵カバーが取り付けられることができる。これにより、リュータによる研削で生じた粉体または塵が拡散することを防止することができる。
【0090】
一例において、研削手段121は、ベルトサンダーを備えている。ベルトサンダーは、例えば、周回移動する研削面が物体に押し付けられて物体の表面に沿って移動させられることにより、物体の表面の所望の範囲を研削することができる。ベルトサンダーは、ベルトサンダーの研削面の移動方向が物体の表面が延びる方向に対して傾斜して、物体の表面に押し付けられるように構成される。例えば、ベルトサンダーは、ベルトサンダーの研削面の移動方向が物体の表面が延びる方向に対して傾斜するようにメンテナンス装置100’に設置され得るか、あるいは、ベルトサンダーの研削面の移動方向が物体の表面が延びる方向に対して傾斜するように制御され得る。例えば、ベルトサンダーの研削面の移動方向は、ブレードのリーディングエッジが延びる方向に対して傾斜し得る。これにより、ベルトサンダーによる研削力をうまく逃がすことができ、ベルトサンダーにより過剰な研削を防止することができる。ベルトサンダーによる研削は、例えば、ベルトサンダーを物体の表面に押し付ける力またはベルトサンダーと物体の表面との相対位置を調節することによって制御され得る。
【0091】
洗浄手段122は、物体を洗浄することが可能な任意の手段であり得る。洗浄手段122は、風車のブレードの表面を洗浄するように構成されている。洗浄手段122は、例えば、研削手段121によって研削されたブレードの表面を洗浄することができる。あるいは、洗浄手段122は、例えば、研削手段121によって研削された塗布材料(例えば、パテ)の表面を洗浄することができる。洗浄手段122は、例えば、洗浄液およびウエスを用いて汚れを払拭する機構であってもよいし、イオン噴射機構を用いて静電気を除去する機構であってもよい。洗浄手段122によって洗浄される物体上の位置は、例えば、後述する搭載部140が備え得る並進機構によって洗浄手段122を上下左右前後に移動させることによって、調節されることができる。
【0092】
一例において、洗浄手段122は、例えば、ウエスと、洗浄液をウエスに供給するための洗浄液供給機構とを備え得る。これにより、洗浄液供給機構がウエスに洗浄液を供給し、洗浄液を供給されたウエスが物体上を移動することにより、物体を洗浄することができる。
【0093】
洗浄液は、洗浄力を有する任意の液体であり得、好ましくは、有機溶剤であり、より好ましくは、シンナーである。これにより、ブレード上の油分(例えば、ブレードに衝突した虫等)および粉体(例えば、研削で生じた粉)を取り除くことができる。
【0094】
洗浄液供給機構は、洗浄液を供給できる限り、任意の機構であることができる。好ましくは、揮発性を有する洗浄液の揮発を防止する機構であり得る。より好ましくは、調節された量の洗浄液を供給することが可能な機構であり得る。洗浄液供給機構は、例えば、ペット給水用のノズルに使用されるようなボール式ノズルを有し得る。ボール式ノズルにより、洗浄液の揮発を防止しつつ、かつ少量ずつの洗浄液を供給することが可能になる。
【0095】
塗布手段123は、物体に材料を塗布することが可能な任意の手段であり得る。塗布手段123は、風車のブレードの表面に材料を塗布するように構成されている。塗布手段123は、例えば、研削手段121によって研削され、洗浄手段122によって洗浄されたブレードの表面に材料を塗布することができる。塗布手段123は、例えば、塗布手段123によって塗布された材料(例えば、パテ)上にさらに材料(例えば、塗料)を塗布することができる。塗布手段123が塗布する材料は、例えば、塗料、パテ、接着剤、シーラントを含む。例えば、塗布手段123は、塗料を噴射可能な噴射装置であってもよい。例えば、塗布手段は、パテ、接着剤、シーラント等を吐出可能なコーキングガンであってもよい。塗布手段123によって材料が塗布される物体上の位置は、例えば、後述する搭載部140が備え得る並進機構によって塗布手段123を上下左右前後に移動させることによって、調節されることができる。
【0096】
塗布手段123は、例えば、材料を塗布すべき部分の形状、例えば、研削手段121によって研削された凹形状に基づいて事前に推定された、吐出すべき材料の量を吐出するように構成され得る。吐出すべき材料の量は、例えば、制御手段130によって事前に推定され得る。
【0097】
一例において、塗布手段123は、材料を吐出するためのコーキングガンを備えている。コーキングガンは、例えば、空気圧によって材料の吐出を制御されることができる。このとき、材料の吐出は、空気圧の間欠制御によって調節されることが好ましい。空気圧の間欠制御を利用することで、材料の吐出を遠隔で制御する場合であっても、吐出される材料の量を精密に制御することができるからである。あるいは、材料の吐出は、空気圧の間欠制御に加えて、または、空気圧の間欠制御に代えて、電空レギュレータによる制御によって調節されることが好ましい。電空レギュレータによる制御を利用することで、材料の吐出を遠隔で制御する場合であっても、吐出される材料の量を精密に制御することができるからである。
【0098】
塗布手段123は、上述した材料を吐出する機構に加えて、または、材料を吐出する機構に代えて、塗料を塗布する機構を備え得る。塗布手段123は、例えば、ローラを用いて塗料を塗布することができる。このとき、ローラは、移動手段110としての車輪を利用する、すなわち、ローラを移動手段110と塗布手段123とで併用するようにしてもよいし、移動手段110としての車輪とは別のローラを利用するようにしてもよい。塗布手段123は、例えば、塗料を塗布するために、塗料シートまたは塗料フィルムを物体の一部に貼り付けるように構成され得る。塗料シートは、一定量の液体状またはゲル状の塗料を保持するシートであり、塗料フィルムは、一定量の液体状またはゲル状の塗料を保持するフィルムである。シートおよびフィルムは、例えば、その厚さによって分類され、所定の厚み(例えば、JISで規定されるように、約0.25mm)未満のものがフィルムとして分類され、所定の厚み以上のものがシートとして分類され得る。塗料シートを貼り付け、その後シートをはがすことで、一定量の塗料を塗布することができる。これにより、塗料の過剰な塗布を防止することができる。
【0099】
平坦化手段124は、材料を平坦化することが可能な任意の手段であり得る。平坦化手段124は、塗布手段123によって塗布された材料を平坦化するように構成され得る。平坦化手段124は、例えば、ヘラを備え得る。ヘラは、例えば、鋭角の先端を有し得る。ヘラを材料に接触させて材料上を移動させることにより、材料を平坦に均すことができる。平坦化手段124によって平坦化される材料上の位置は、例えば、後述する搭載部140が備え得る並進機構によって平坦化手段124を上下左右前後に移動させることによって、調節されることができる。
【0100】
平坦化手段124による材料の平坦化は、ブレードの表面と面一になるように材料を平坦化することが理想的である。しかしながら、ブレードの表面と面一になるように平坦化手段124を移動させるためには並進機構による精密な制御が必要であり、平坦化手段124がブレードに接触するリスクもある。そこで、一例では、平坦化手段124は、敢えて、ブレードの表面と面一とはならないように、材料を平坦化し得る。このために、平坦化手段124は、平坦化手段124のヘラをブレードの表面から離間するための手段をさらに備えることができる。
【0101】
平坦化手段124は、例えば、図9に示されるように、ヘラ1241と、ヘラをブレードから離間するための当接部1242とを備えることができる。
【0102】
図9は、ヘラ1241と当接部1242とを備える平坦化手段124が、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)上の凹部に塗布された材料を平坦化する前の様子を示す。当接部1242は、ブレード11に当接することにより、ヘラ1241をブレードから離間するように配置されている。すなわち、当接部1242は、ヘラ1241の先端から距離Gだけ突出するように配置されている。これにより、当接部1242がブレード11に当接することで、大きさGのギャップがヘラ1241とブレード11との間に形成される。当接部1242がブレード11に当接した状態でヘラ1241が材料を平坦化することにより、材料は、ギャップの分だけ盛り上がった状態で平坦化されることになる。このときの平坦化手段124の移動の制御には、精密な制御は必要とされず、かつ、平坦化手段124がブレードに接触するリスクもない。盛り上がった状態で平坦化された材料は、例えば、研削手段121(例えば、ベルトサンダー)によって、ブレードの表面と面一になるまで研削されることができる。
【0103】
一例において、平坦化手段124は、ヘラを清掃するための手段をさらに備える。ヘラを清掃することにより、平坦化作業で余った材料を除去することができる。これは、ある部分のメンテナンスで使用した材料が、別の部分のメンテナンスで使用する材料に混入することを防ぐことができる点で好ましい。材料を塗布すべき部分の形状に基づいて推定された量だけ塗布手段123によって材料が塗布され得るため、ある部分のメンテナンスで使用した材料が、別の部分のメンテナンスで使用する材料に混入すると、材料が余剰になり、適切なメンテナンスができなくなるおそれがあるからである。
【0104】
ヘラを清掃するための手段は、例えば、金網であり得る。材料が付着したヘラを金網の第一の側に擦りつけると、ヘラに付着していた材料は、金網の孔を通過して第1の側の反対の第2の側に移動する。材料が有する粘性および重力により、金網の第2の側に移動した材料は、重力方向に落下するとともに、金網の第1の側には戻ってこない。このように、ヘラを金網に擦りつけるだけでヘラに付着した材料を取り除くことができることは、予想外に得られた効果である。
【0105】
好ましくは、金網の各孔は、約5mm~約25mmの面積を有する孔であり得、より好ましくは、金網の各孔は、約10mmの面積を有する孔であり得る。このとき、材料の粘性は、25℃の室温で、約35,000mPa・s~約45,000mPa・sであり得、好ましくは、約40,000mPa・sであり得る。金網の各孔の形状は任意の形状であり得るが、好ましくは、ひし形であり得る。
【0106】
図5Aを再び参照して、硬化手段125は、硬化性材料を硬化させることが可能な任意の手段であり得る。硬化手段125は、塗布手段123によって塗布された材料および/または平坦化手段124によって平坦化された材料を硬化させるように構成され得る。硬化手段125は、例えば、光硬化性材料を硬化させるための光源であり得る。光源は、例えば、UV光源であり得る。硬化手段125によって硬化される材料上の位置は、例えば、後述する搭載部140が備え得る並進機構によって硬化手段125を上下左右前後に移動させることによって、調節されることができる。
【0107】
上述した複数のメンテナンス手段120のそれぞれは、距離測定機能を有し得る。これにより、測定された物体との距離に基づいて、各メンテナンス手段120と物体との間の相対位置を制御して、物体に対して適切なメンテナンスを行うことができる。距離測定機能は、例えば、接触センサによって達成され得る。例えば、接触センサが物体に接触した位置に基づいて空間を把握することで、各メンテナンス手段120と物体との間の距離を認識することができる。
【0108】
好ましい例では、複数のメンテナンス手段120のうちの1つは、塗布手段123である。これにより、メンテナンスとして、要メンテナンス箇所に材料の塗布を行うことができる。より好ましい例では、複数のメンテナンス手段120のうちの1つは、研削手段121であり、別の1つは、塗布手段123である。これにより、メンテナンスとして、要メンテナンス箇所の研削および研削した部分への材料の塗布を行うことができる。さらに好ましい例では、複数のメンテナンス手段120のうちの1つは、研削手段121であり、別の1つは、洗浄手段122であり、さらに別の1つは、塗布手段123である。これにより、メンテナンスとして、要メンテナンス箇所の研削、研削した部分を洗浄したうえでの材料の塗布を行うことができる。さらに好ましい例では、複数のメンテナンス手段120のうちの1つは、研削手段121であり、別の1つは、洗浄手段122であり、さらに別の1つは、塗布手段123であり、さらに別の1つは、平坦化手段124である。これにより、メンテナンスとして、要メンテナンス箇所の研削、研削した部分を洗浄したうえでの材料の塗布、塗布された材料の平坦化、ならびに平坦化された材料のさらなる研削、洗浄、および塗装を行うことができる。
【0109】
なお、複数のメンテナンス手段120は、上述した手段に限定されない。メンテナンス装置100は、上述した手段に代えて、または上述した手段に加えて、メンテナンスを行うための他の手段を含むようにしてもよい。
【0110】
制御手段130は、メンテナンス装置100’全体の動作を制御する。制御手段130は、例えば、複数のメンテナンス手段120の動作を制御することができる。これにより、物体のメンテナンスを行うための各動作が実行される。制御手段130は、例えば、複数のメンテナンス手段120のうちの少なくとも1つのメンテナンス手段をメンテナンス実施手段150として選択することができる。制御手段130は、例えば、メンテナンス装置100’の現在位置、メンテナンス装置100’が既に行ったメンテナンス、物体の状態等に基づいて、少なくとも1つのメンテナンス手段をメンテナンス実施手段150として選択することができる。制御手段130は、選択された少なくとも1つのメンテナンス手段によるメンテナンスが実行されるように、複数のメンテナンス手段120を制御することができる。
【0111】
制御手段130は、搭載部140の動作を制御することができる。制御手段130は、例えば、搭載部140が備え得る回転機構を制御することにより、搭載部140を回転させることができる。これにより、搭載部140に搭載されている複数のメンテナンス手段120の位置を変更することができる。制御手段130は、例えば、搭載部140が備え得る並進機構を制御することにより、搭載部140を並進させることができる。これにより、搭載部140に搭載されている複数のメンテナンス手段の位置を変更することができる。搭載部140の回転および/または並進は、制御部によってメンテナンス実施手段150として選択された少なくとも1つのメンテナンス手段がメンテナンスを行う前、メンテナンスを行っている最中、メンテナンスを行った後に実行されることができる。
【0112】
制御手段130は、例えば、移動手段110の動作を制御することができる。これにより、メンテナンス装置100’を風車のブレード上で移動させることができる。
【0113】
制御手段130は、メンテナンス装置100’が備え得る通信手段によって受信された制御信号に従って、移動手段110、複数のメンテナンス手段120、および/または搭載部140の動作を制御することができる。あるいは、制御手段130は、メンテナンス装置100’が備え得るメモリに格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムに従って、移動手段110、複数のメンテナンス手段120、および/または搭載部140の動作を制御することができる。すなわち、メンテナンス装置100’は、遠隔制御される装置であってもよいし、自律的に動作する装置であってもよい。
【0114】
制御手段130は、1または複数のプロセッサによって実装され得る。
【0115】
搭載部140は、複数のメンテナンス手段120のうちの少なくとも1つのメンテナンス手段が選択されて、選択された少なくとも1つのメンテナンス手段を用いて物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うことができるように、複数のメンテナンス手段120を搭載している。搭載部140は、例えば、研削手段121と、洗浄手段122と、塗布手段123と、平坦化手段124と、硬化手段125とを搭載しており、制御手段130は、研削手段121と、洗浄手段122と、塗布手段123と、平坦化手段124と、硬化手段125のうちの少なくとも1つの手段をメンテナンス実施手段150として選択し、選択された手段がメンテナンスを実行することになる。
【0116】
例えば、はじめに、制御手段130が、研削手段121をメンテナンス実施手段150として選択し、研削手段121による要メンテナンス箇所の研削が実行されるように研削手段121を制御する。これは、制御手段130が、搭載部140を制御して、研削手段121によるメンテナンスが実行可能なように研削手段121の位置を変更した後に行われ得る。次に、制御手段130が、洗浄手段122をメンテナンス実施手段150として選択し、洗浄手段122による要メンテナンス箇所の洗浄が実行されるように洗浄手段122を制御する。これは、制御手段130が、搭載部140を制御して、洗浄手段122によるメンテナンスが実行可能なように洗浄手段122の位置を変更した後に行われ得る。次に、制御手段130が、塗布手段123をメンテナンス実施手段150として選択し、塗布手段123による要メンテナンス箇所への材料の塗布が実行されるように塗布手段123を制御する。これは、制御手段130が、搭載部140を制御して、塗布手段123によるメンテナンスが実行可能なように塗布手段123の位置を変更した後に行われ得る。次に、制御手段130が、平坦化手段124をメンテナンス実施手段150として選択し、平坦化手段124による要メンテナンス箇所での材料の平坦化が実行されるように平坦化手段124を制御する。これは、制御手段130が、搭載部140を制御して、平坦化手段124によるメンテナンスが実行可能なように平坦化手段124の位置を変更した後に行われ得る。次に、制御手段130が、硬化手段125をメンテナンス実施手段150として選択し、硬化手段125による要メンテナンス箇所での材料の硬化が実行されるように硬化手段125を制御する。これは、制御手段130が、搭載部140を制御して、硬化手段125によるメンテナンスが実行可能なように硬化手段125の位置を変更した後に行われ得る。このように、搭載部140に搭載された複数のメンテナンス手段120のうち、行われるべきメンテナンスのための手段がメンテナンス実施手段150として選択されて、メンテナンスを行うことになる。搭載部140が複数のメンテナンス手段120をまとめて搭載していることにより、メンテナンス装置100’の大きさをコンパクトにすることができる。
【0117】
例えば、搭載部140は、搭載本体と、複数のメンテナンス手段が取り付けられる搭載本体上の取付部とを備え得る。搭載部140はさらに、搭載本体を並進させる並進機構を備え得る。並進機構が搭載本体を所定の方向に並進、例えば、上下方向、左右方向、および/または前後方向に移動させることにより、搭載本体に取り付けられた複数のメンテナンス手段も所定の方向、例えば、上下方向、左右方向、および/または前後方向に移動させられることになる。これにより、複数のメンテナンス手段の位置を変更することができる。複数のメンテナンス手段は、並進機構によって位置を変更されることにより、適切な位置においてブレードのメンテナンスを行うことができる。また、搭載部140に搭載された複数のメンテナンス手段の位置を並進機構によって一括で変更することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0118】
メンテナンス装置100’は、メンテナンス装置100について上述した特徴のうちの少なくとも1つをさらに備えるようにしてもよい。
【0119】
(リボルバー方式)
図10Aは、一実施形態における搭載部140Aの一例を示す。図10Aでは、搭載部140Aに搭載されている複数のメンテナンス手段120は図示を省略されている。図10Aでは、ブレード11の斜視図および断面が描写されている。
【0120】
搭載部140Aは、搭載本体141Aと、取付部142A、143A、144A、145A、146Aを備える。各取付部には、複数のメンテナンス手段120のそれぞれが取り付けられることができる。搭載本体141Aは、ブレードに向き得る頂面と、頂面とは反対の底面と、頂面と底面との間の側面とを有する柱状の形状を有しており、複数のメンテナンス手段120は、側面に取り付けられるようになっている。例えば、複数のメンテナンス手段120は、搭載本体141Aの周囲に取り付けられ得る。図10Aには、5つの取付部が示されているが、取付部の数はこれに限定されない。搭載部140Aは、搭載されるべきメンテナンス手段の数に応じた任意の数の取付部を備えることができる。
【0121】
搭載本体141Aは、軸Cを有しており、搭載本体141Aは、回転機構(図示せず)によって軸C周りに(図10Aに示される湾曲矢印方向に)回転させられ得る。例えば、搭載本体141Aの側面に取り付けられた複数のメンテナンス手段120のうち、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所(例えば、リーディングエッジ(L.E))に接近するように、搭載本体141Aが、軸C周りに回転させられ得る。図10Aに示される例では、取付部142Aがブレード11に最も接近しており、取付部142Aに取り付けられたメンテナンス手段によってメンテナンスが行われることになる。
【0122】
搭載本体141Aは、並進機構(図示せず)によって並進させられることができる。例えば、搭載本体141Aは、並進機構によって、図10Aに示される直線矢印方向に上下左右前後に移動することができ、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)に対して位置決めされ得る。
【0123】
回転機構および並進機構により、行われるメンテナンスのための手段がブレードに接近して適所に位置決めされることができる。また、メンテナンスを行っている最中も、並進機構により、メンテナンス手段の位置が制御され得る。複数のメンテナンス手段に対して共通の回転機構および並進機構を用いて、複数のメンテナンス手段のそれぞれの位置を制御することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0124】
(リボルバー方式2)
図10Bは、一実施形態における搭載部140Bの一例を示す。図10Bでは、搭載部140Bに搭載されている複数のメンテナンス手段120は図示を省略されている。図10Bでは、ブレード11の斜視図および断面が描写されている。
【0125】
搭載部140Bは、搭載本体141Bと、取付部142B、143B、144B、145B、146Bを備える。各取付部には、複数のメンテナンス手段のそれぞれが取り付けられることができる。搭載本体141Bは、ブレードに向き得る頂面と、頂面とは反対の底面と、頂面と底面との間の側面とを有する柱状の形状を有しており、複数のメンテナンス手段120は、頂面に取り付けられるようになっている。例えば、複数のメンテナンス手段120は、搭載本体141Aの周囲に取り付けられ得る。図10Bには、5つの取付部が示されているが、取付部の数はこれに限定されない。搭載部140Bは、搭載されるべきメンテナンス手段の数に応じた任意の数の取付部を備えることができる。
【0126】
搭載本体141Bは、軸Cを有しており、搭載本体141Bは、回転機構(図示せず)によって軸C周りに(図10Bに示される湾曲矢印方向に)回転させられ得る。例えば、搭載本体141Bの頂面に取り付けられた複数のメンテナンス手段120のうち、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するように、搭載本体141Bが、軸C周りに回転させられ得る。取付部142B、143B、144B、145B、146Bはそれぞれ、軸C方向、すなわち、ブレード11に向かって延伸するように構成され得る。これにより、行われるメンテナンスのための手段がブレード11に接近するようにすることができる。
【0127】
搭載本体141Bは、並進機構(図示せず)によって並進させられることができる。例えば、搭載本体141Bは、並進機構によって、図10Bに示される直線矢印方向に上下左右前後に移動することができ、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)に対して位置決めされ得る。
【0128】
回転機構、並進機構、および取付部の延伸により、行われるメンテナンスのための手段がブレード11に接近して適所に位置決めされることができる。また、メンテナンスを行っている最中も、回転機構および/または並進機構により、メンテナンス手段の位置が制御され得る。複数のメンテナンス手段に対して共通の回転機構および並進機構を用いて、複数のメンテナンス手段のそれぞれの位置を制御することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0129】
(スライド方式)
図10Cは、一実施形態における搭載部140Cの一例を示す。図10Cでは、搭載部140Cに搭載されている複数のメンテナンス手段120は図示を省略されている。図10Cでは、ブレード11の斜視図および断面が描写されている。
【0130】
搭載部140Cは、搭載本体141Cと、取付部142C、143C、144C、145C、146Cを備える。各取付部には、複数のメンテナンス手段のそれぞれが取り付けられることができる。搭載本体141Cは、ブレードに向き得る頂面と、頂面とは反対の底面と、頂面と底面との間の側面とを有する立体形状を有しており、複数のメンテナンス手段120は、ブレード11を向いた頂面に取り付けられるようになっている。複数の取付部は、ブレード11のリーディングエッジが延びる方向に並置されている。これにより、複数のメンテナンス手段のそれぞれが、ブレードのリーディングエッジに沿って並置されることになる。図10Cには、5つの取付部が示されているが、取付部の数はこれに限定されない。搭載部140Cは、搭載されるべきメンテナンス手段の数に応じた任意の数の取付部を備えることができる。
【0131】
取付部142C、143C、144C、145C、146Cはそれぞれ、ブレード11に近づく方向(紙面左方向)に、ブレード11に向かって延伸するように構成され得る。これにより、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するようにすることができる。
【0132】
搭載本体141Cは、並進機構(図示せず)によって並進させられることができる。例えば、搭載本体141Cは、並進機構によって、図10Cに示される直線矢印方向に上下左右前後に移動することができ、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)に対して位置決めされ得る。
【0133】
取付部の延伸および並進機構により、行われるメンテナンスのための手段がブレード11に接近して適所に位置決めされることができる。また、メンテナンスを行っている最中も、取付部の延伸および並進機構により、メンテナンス手段の位置が制御され得る。複数のメンテナンス手段に対して共通の並進機構を用いて、複数のメンテナンス手段のそれぞれの位置を制御することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0134】
(スライド方式2)
図10Dは、一実施形態における搭載部140Dの一例を示す。図10Dでは、搭載部140Dに搭載されている複数のメンテナンス手段120は図示を省略されている。図10Dでは、ブレード11の断面が描写されている。
【0135】
搭載部140Dは、搭載本体141Dと、取付部142D、143D、144D、145D、146Dを備える。各取付部には、複数のメンテナンス手段のそれぞれが取り付けられることができる。搭載本体141Dは、ブレードに向き得る頂面と、頂面とは反対の底面と、頂面と底面との間の側面とを有する立体形状を有しており、複数のメンテナンス手段120は、ブレード11を向いた頂面に取り付けられるようになっている。複数の取付部は、ブレード11のリーディングエッジが延びる方向とは垂直に並置されている。これにより、複数のメンテナンス手段のそれぞれが、ブレード11のリーディングエッジが延びる方向とは垂直に並置されることになる。図10Dには、5つの取付部が示されているが、取付部の数はこれに限定されない。搭載部140Dは、搭載されるべきメンテナンス手段の数に応じた任意の数の取付部を備えることができる。
【0136】
取付部142D、143D、144D、145D、146Dはそれぞれ、ブレード11に近づく方向(紙面左方向)に、ブレード11に向かって延伸するように構成され得る。これにより、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するようにすることができる。
【0137】
搭載本体141Dは、並進機構(図示せず)によって並進させられることができる。例えば、搭載本体141Dは、並進機構によって、図10Dに示される直線矢印方向に上下左右前後に移動することができ、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)に対して位置決めされ得る。
【0138】
取付部の延伸および並進機構により、行われるメンテナンスのための手段がブレード11に接近して適所に位置決めされることができる。また、メンテナンスを行っている最中も、取付部の延伸および並進機構により、メンテナンス手段の位置が制御され得る。複数のメンテナンス手段に対して共通の並進機構を用いて、複数のメンテナンス手段のそれぞれの位置を制御することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0139】
(スライド方式3)
図10Eは、一実施形態における搭載部140Eの一例を示す。図10Eでは、搭載部140Eに搭載されている複数のメンテナンス手段120は図示を省略されている。図10Eでは、ブレード11の断面が描写されている。
【0140】
搭載部140Eは、搭載本体141Eと、取付部142E、143E、144E、145E、146Eを備える。各取付部には、複数のメンテナンス手段のそれぞれが取り付けられることができる。搭載本体141Eは、ブレードに向き得る頂面と、頂面とは反対の底面と、頂面と底面との間の側面とを有する湾曲体を有しており、複数のメンテナンス手段120は、頂面に取り付けられるようになっている。複数の取付部は、ブレード11のリーディングエッジが延びる方向とは垂直に、湾曲体の湾曲面に沿って並置されている。これにより、複数のメンテナンス手段のそれぞれが、ブレードの湾曲面に沿って並置されることになる。図10Eには、5つの取付部が示されているが、取付部の数はこれに限定されない。搭載部140Eは、搭載されるべきメンテナンス手段の数に応じた任意の数の取付部を備えることができる。
【0141】
取付部142E、143E、144E、145E、146Eはそれぞれ、ブレード11に近づく方向(紙面左方向)に、ブレード11に向かって延伸するように構成され得る。これにより、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するようにすることができる。
【0142】
搭載本体141Eは、回動機構(図示せず)によってブレード11周りで(図10Eに示される湾曲矢印方向に)回動させられ得る。例えば、搭載本体141Eの頂面に取り付けられた複数のメンテナンス手段120のうち、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するように、搭載本体141Eが、回動させられ得る。取付部142E、143E、144E、145E、146Eはそれぞれ、頂面に対して垂直方向、すなわち、ブレード11に向かって延伸するように構成され得る。これにより、行われるメンテナンスのための手段がブレード11の要メンテナンス箇所に接近するようにすることができる。
【0143】
搭載本体141Eは、並進機構(図示せず)によって並進させられることができる。例えば、搭載本体141Eは、並進機構によって、図10Eに示される直線矢印方向に上下左右前後に移動することができ、ブレード11のリーディングエッジ(L.E)に対して位置決めされ得る。
【0144】
回転機構、並進機構、および取付部の延伸により、行われるメンテナンスのための手段がブレード11に接近して適所に位置決めされることができる。また、メンテナンスを行っている最中も、回転機構、並進機構、および取付部の延伸により、メンテナンス手段の位置が制御され得る。複数のメンテナンス手段に対して共通の回転機構および並進機構を用いて、複数のメンテナンス手段のそれぞれの位置を制御することができるため、複数のメンテナンス手段のそれぞれに位置を制御する機構を設ける必要がない。これにより、メンテナンス装置100’のコンパクト化がさらに促進される。
【0145】
図5Bは、メンテナンス装置100’の実装例を図示する。
【0146】
メンテナンス装置100’は、移動手段110として、車輪を備えている。車輪は、メンテナンス装置100’の前側と後側とに備えられている。車輪により、メンテナンス装置100’は、風車のブレード上を移動することができる。
【0147】
メンテナンス装置100’は、搭載部140として、図10Aを参照して上述したリボルバー方式の搭載部を備えている。搭載部140は、搭載本体141と、取付部142と、回転機構143と、並進機構144とを備えている。
【0148】
回転機構143により、搭載本体141および搭載本体141上の取付部142は軸周りに回転させられ、ひいては、複数のメンテナンス手段120も回転させられる。これにより、複数のメンテナンス手段120のうちの少なくとも1つのメンテナンス手段(メンテナンス実施手段150)が、メンテナンスを行うことができるように、風車のブレードに向けられ得る。
【0149】
並進機構144により、搭載本体141および搭載本体141上の取付部142は上下左右前後に移動させられ、ひいては、複数のメンテナンス手段120も上下左右前後に移動させられる。これにより、複数のメンテナンス手段120のうちの少なくとも1つのメンテナンス手段(メンテナンス実施手段150)が、メンテナンスを行うために、風車のブレードに対する位置を調節され得る。
【0150】
図5Bに図示されていないが、メンテナンス装置100’は、メンテナンス装置100’が風車のブレードにランディングする際にブレードの損傷を防止するためのバンパーを備えることができる。バンパーは、例えば、発泡体(例えば、発泡スチロール)から作製され得る。バンパーは、例えば、メンテナンス装置100’が風車のブレードにランディングする際にブレードをガイドすることが可能な形状を有することもできる。これにより、風車のブレードにランディングする際にメンテナンス装置100’を安定化させることができる。
【0151】
なお、上述したメンテナンス装置100’は、ロープ保持装置200と共に用いられてもよいし、メンテナンス装置100’単独で用いられてもよい。例えば、メンテナンス装置100’を風車のブレード上に配置する手法は、本明細書に開示される手法に限定されず、他の任意の公知の手法または将来公知となり得る手法であり得る。
【0152】
図5Cは、ロープ保持装置200の構成の一例を示す。
【0153】
ロープ保持装置200は、制御ユニット210と、通信ユニット220と、ロープ接続部230と、部材250とを備える。図5Cに示される例では、部材250は省略されている。代わりに、部材250がロープ保持装置200の本体に取り付けられる第1の取付部241および第2の取付部242が示されている。
【0154】
制御ユニット210は、ロープ保持装置200全体の動作を制御するように構成されている。制御ユニット210は、例えば、通信ユニット220によって受信された制御信号に従って、ロープ保持装置200の構成要素を制御することができる。例えば、通信ユニット220によって受信された制御信号に従って、ロープ接続部230を駆動し、接続されたロープを伝って移動することができる。例えば、通信ユニット220によって受信された制御信号に従って、部材250を、開口部を形成する第1の状態から、開口部を開放する第2の状態に遷移させることができる。具体的には、ロープ保持装置200が備え得る解放機構を用いて、第2の取付部242から部材250を解放することができる。
【0155】
制御ユニット210は、例えば、1または複数のプロセッサ等の任意の制御手段によって実装され得る。
【0156】
なお、ロープ保持装置200の外部からの信号に従って、ロープ保持装置200の各構成要素を制御することを説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、ロープ保持装置200の各構成要素の一連の動作を実現するためのプログラムが、ロープ保持装置200が備え得るメモリに格納されてもよく、制御ユニット210は、そのプログラムを読み出し、実行することにより、ロープ保持装置200を、自律的な装置として機能させることができる。
【0157】
通信ユニット220は、ロープ保持装置200の外部から信号を受信することができる。これに加えて、通信ユニット220は、ロープ保持装置200の外部に信号を送信するようにしてもよい。通信ユニット220は、ロープ保持装置200の外部からの信号を無線で受信してもよいし、有線で受信してもよい。通信ユニット220は、ロープ保持装置200の外部に信号を無線で送信してもよいし、有線で送信してもよい。通信ユニット220は、例えば、ロープ保持装置200の各構成要素を制御するための制御信号をロープ保持装置200の外部(例えば、操作者が使用する操作用端末)から受信することができる。通信ユニット220は、例えば、アンテナ等の任意の通信手段によって実装され得る。
【0158】
ロープ接続部230は、ロープに係合する係合部231と、ロープをガイドするガイド部232とを備える。
【0159】
係合部231は、図5Cに示されるように、複数の係合ローラと、複数の係合ローラを駆動する駆動部を備え得る。複数の係合ローラの間にロープが挟持された状態で複数の係合ローラを駆動することにより、ロープを前方または後方に送り出す力をロープに働かせることができる。これにより、ロープ保持装置200は、ロープに沿って移動することができる。係合部231は、同様の機能を達成することができる限り、他の任意の機構によって実装されることができる。
【0160】
ガイド部232は、ロープを係合部231へガイドする任意の機構である。図5Cでは、フックとして示されている。ガイド部232の存在により、係合部231がロープとの係合を解除した場合であっても、ロープ保持装置200は、ロープに接続されたままであることができる。ガイド部232は、同様の機能を達成することができる限り、他の任意の機構によって実装されることができる。
【0161】
部材250は、第1の取付部241および第2の取付部242に取り付けられることにより、ロープ保持装置200の本体と共に開口部を形成可能な任意の部材であり得る。部材250を形成する材料は問わない。例えば、部材250は、硬質の材料で形成されてもよいし、軟質の材料で形成されてもよい。好ましくは、部材250は、耐久性を有するロープ、例えば、登山用のザイルで形成されることができる。部材250の材料は、部材250の形状を保持することができる程度の硬さを有することが好ましい。これにより、部材250は、たるむことでロープに干渉することなく、ロープを拘束することができる。
【0162】
なお、上述した例では、部材250が第2の取付部242から解放されることによって、ロープ保持装置200の本体と共に開口部を形成する第1の状態から開口部が開放される第2の状態に遷移することができることを説明したが、部材250が遷移する態様はこれに限定されない。部材250は、他の任意の態様で、第1の状態から第2の状態に遷移することができる。例えば、部材250は、少なくとも2つの部分に分割可能に構成され得る。部材250が、少なくとも2つの部分に分割されることにより、第1の状態から第2の状態に遷移することができる。
【0163】
このように、ロープ保持装置200は、ロープ上を移動し、かつロープを解放可能に拘束するための機能を実現可能な最小限の構成を有することができる。これにより、ロープ保持装置200の重量を軽量化することができる。ロープ保持装置200は、例えば、約2kg以下の重量を有してもよいし、約1.5kg以下の重量を有してもよいし、約1kg以下の重量を有してもよい。ロープ保持装置200は、必要最低限の構成要素を搭載することにより、その重量を可能な限り軽量化することが好ましい。
【0164】
上述した例では、ロープ保持装置200がロープ上を移動するための構成を有することを説明したが、ロープ保持装置200がブレード上まで移動するための手段は、これに限定されない。ロープ保持装置200は、他の任意の移動手段を用いてブレード上まで移動することができるように構成され得る。例えば、ロープ保持装置200は、飛行機能を備えるように構成されることができ、飛行機能を用いて、ブレード上まで移動することができる。例えば、ロープ保持装置200は、飛行機能を有する飛行装置(例えば、ドローン)に接続されるように構成されることができ、ロープ保持装置200に接続された飛行装置によって、ブレード上まで移動することができる。例えば、ロープ保持装置200は、伸縮可能な構造を有する別の装置(例えば、はしご車)に接続されるように構成されることができ、ロープ保持装置200に接続された別の装置によって、ブレード上まで移動することができる。このように、ロープ保持装置200は、風車に設置されたロープを用いることなく、風車のブレード上まで移動することが可能である。ロープ保持装置200が必要最低限の構成を有し軽量化されているため、飛行または別の装置による移送が容易になっている。風車に設置されたロープを用いることなく風車のブレード上まで移動する場合、ロープ保持装置200は、風車に設置されたロープとは異なるロープを風車のブレード上に保持するようにしてもよいし、風車に設置されたロープを風車のブレード上に保持するようにしてもよい。
【0165】
例えば、ロープ保持装置200の重量は、ブレード上に張られる少なくとも1本のロープよりも軽いことが好ましい。例えば、ブレード上に張られる少なくとも1本のロープは約5kgの重量を有するため、ロープ保持装置200は、約5kg未満の重量、例えば、約2kgの重量を有することが好ましい。
【0166】
ロープ保持装置200の重量は、メンテナンス装置100(またはメンテナンス装置100’)の重量よりも軽い。例えば、ロープ保持装置200の重量とメンテナンス装置100(またはメンテナンス装置100’)の重量との比は、約1:10、約1:20、約1:50、約1:100等であり得る。好ましくは、ロープ保持装置200の重量とメンテナンス装置100(またはメンテナンス装置100’)の重量との比は、約1:20~約1:50であり得る。
【0167】
例えば、ロープ保持装置200のサイズは、小型であることが好ましい。ロープ保持装置200は、例えば、約30000cm未満の体積、約25000cm未満の体積、約20000cm未満の体積、約15000cm未満の体積、約10000cm未満の体積、約5000cm未満の体積、約3000cm未満の体積、約1000cm未満の体積を有し得る。好ましくは、ロープ保持装置200は、約2000cm~約4000cmの体積を有し得る。
【0168】
例えば、ロープ保持装置200のサイズ(体積)とメンテナンス装置100(またはメンテナンス装置100’)のサイズ(体積)との比は、約1:10、約1:20、約1:50、約1:60、約1:100、約1:150、約1:200、約1:220等であり得る。好ましくは、ロープ保持装置200のサイズとメンテナンス装置100(またはメンテナンス装置100’)のサイズとの比は、約1:60~約1:220であり得る。
【0169】
3.風車のブレードのメンテナンスを行う方法
図6は、本発明のシステムを用いて、風車のブレードのメンテナンスを行う方法の手順の一例(手順600)を示す。以下では、メンテナンス装置100を利用する例を説明するが、メンテナンス装置100’も同様に利用されることが理解される。
【0170】
ステップS601は、風車10のブレード11までロープ保持装置200を移動させるステップである。ここで、どのようにしてブレード11までロープ保持装置200を移動させるかは問わない。移動は、ロープ保持装置200による能動的な移動であってもよいし、ロープ保持装置200による受動的な移動であってもよい。
【0171】
一実施形態において、風車に設置されたロープ上を風車のブレード11までロープ保持装置200を移動させることができる。本実施形態では、例えば、図7に示されるステップS6011~S6013を行うことができる。
【0172】
ステップS6011は、風車上に少なくとも1本のロープを設置するステップである。例えば、図1Aに示されるように、ブレード11が鉛直方向下向きに延びるようにブレード11を位置付けた状態で、少なくとも1本のロープ20は、風車10のナセル14に固定され、風車10のナセル14から地面まで延びる。設置される少なくとも1本のロープは、張力をかけられて引っ張られる必要はなく、例えば、重力のみによってナセル14から地面まで延びるようにしてもよい。なお、風車上に少なくとも1本のロープを設置する態様は問わず、風車上の任意の位置に任意の手法で少なくとも1本のロープを設置することができる。
【0173】
ステップS6011は、作業員によって手動で行われてもよいし、ロボットによって自動で行われてもよい。ロボットによって自動で行われる場合は、例えば、ドローン等の飛行可能な装置によって少なくとも1本のロープを風車上に設置するようにしてもよい。
【0174】
ステップS6012は、ステップS6011で設置された少なくとも1本のロープをロープ保持装置200に接続するステップである。例えば、ロープ保持装置200が、係合部231によって少なくとも1本のロープに係合することで、少なくとも1本のロープがロープ保持装置200に接続される。少なくとも2本のロープが利用される場合には、ロープ保持装置200は、係合部231によって少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群に係合し、本体および部材250によって少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群を拘束することができる。
【0175】
ステップS6012は、例えば、作業員によって手動で行われることができる。
【0176】
ステップS6013は、少なくとも1本のロープ上を風車10のブレード11までロープ保持装置200を移動させるステップである。例えば、図1B図1Dに示されるように、少なくとも1本のロープ上をブレード11までロープ保持装置200を移動させる。
【0177】
ステップS6013は、ロープ保持装置200が少なくとも1本のロープ上を移動してブレード11と略同じ高さに到達した後、または、ロープ保持装置200が少なくとも1本のロープ上を移動している間に、ロープ保持装置200の空間位置を制御するステップを伴う。空間位置を制御するステップは、ロープ保持装置200から延びる少なくとも1本のロープを引っ張ることによって行われることができる。空間位置を制御するステップは、作業員によって手動で行われてもよいし、ロボットによって自動で行われてもよい。
【0178】
なお、上述した例では、風車から延びる少なくとも1本のロープを伝ってブレード11までロープ保持装置200を移動させたが、ロープ保持装置200の移動の態様はこれに限定されない。例えば、ロープ保持装置200をあらかじめ風車のナセルまで持ち上げ、風車のナセルからロープを伝わせてブレードまで下ろし、ロープ保持装置200をブレード上に配置してもよい。
【0179】
別の実施形態において、例えば、ロープ保持装置200が備え得る飛行機能によって、ブレード上までロープ保持装置200を移動させることができる。他の実施形態において、例えば、飛行機能を有する飛行装置(例えばドローン)をロープ保持装置200に接続し、その飛行装置によって、ブレード上までロープ保持装置200を移動させることができる。他の実施形態において、例えば、伸縮可能な構造を有する別の装置(例えば、はしご車)をロープ保持装置200に接続し、伸縮可能な構造を有する別の装置によって、ブレード上までロープ保持装置200を移動させることができる。このように、風車に設置されたロープを用いることなく、風車のブレード上までロープ保持装置200を移動させることが可能である。風車に設置されたロープを用いることなく風車のブレード上まで移動する場合、ロープ保持装置200には、風車に設置されたロープが接続されていてもよいし、風車に設置されたロープが接続されず、代わりに、風車に設置されたロープとは別のロープが接続されていてもよいし、そもそもロープが接続されていなくてもよい。
【0180】
ステップS602は、ロープ保持装置200によって少なくとも1本のロープをブレード11上に保持するステップである。ブレード11上に保持される少なくとも1本のロープは、ステップS601においてロープ保持装置200に接続されていた少なくとも1本のロープであってもよいし、それ以外の少なくとも1本のロープであってもよい。
【0181】
例えば、図1B図1Dに示されるように、少なくとも1本のロープ上をブレード11までロープ保持装置200を移動させ、ブレード11上にロープ保持装置200を配置した結果として、ロープ保持装置200に接続されていた少なくとも1本のロープがブレード11上に保持される。すなわち、ロープ保持装置200に接続された少なくとも1本のロープが、ロープ保持装置200によってブレード11上に保持されることになる。少なくとも2本のロープがブレード上に保持される場合、ブレード上に保持された少なくとも2本のロープは、図3に示されるように、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群がブレードの第1の側から延び、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群がブレードの第2の側から延びるようになる。
【0182】
例えば、少なくとも1本のロープが接続されたロープ保持装置200を、風車に設置されたロープを用いることなく風車のブレード上まで移動させ、ブレード11上にロープ保持装置200を配置した結果として、ロープ保持装置200に接続されていた少なくとも1本のロープがブレード11上に保持される。すなわち、ロープ保持装置200に接続された少なくとも1本のロープが、ロープ保持装置200によってブレード11上に保持されることになる。少なくとも2本のロープがブレード上に保持される場合、ブレード上に保持された少なくとも2本のロープは、図3に示されるように、少なくとも1本のロープを含む第1のロープ群がブレードの第1の側から延び、少なくとも1本のロープを含む第2のロープ群がブレードの第2の側から延びるようになる。
【0183】
例えば、ロープ保持装置200をブレード11まで移動させ、ブレード11上にロープ保持装置200を配置した後に、別の装置(例えば、ドローン)によってロープをロープ保持装置200まで運び、ロープ保持装置200に接続する(例えば、引っ掛ける)ことによって、ロープ保持装置200によって、少なくとも1本のロープがブレード11上に保持されるようにしてもよい。
【0184】
ステップ603は、ステップS602でロープ保持装置200によってブレード上に保持された少なくとも1本のロープをメンテナンス装置100に接続するステップである。例えば、メンテナンス装置100のウインチに少なくとも1本のロープを接続することで、少なくとも1本のロープがメンテナンス装置100に接続される。
【0185】
ステップS603は、例えば、作業員によって手動で行われることができる。
【0186】
ロープ保持装置200がブレード上に少なくとも1本のロープを保持している状態で、ステップS604において、ロープ保持装置200によって保持された少なくとも1本のロープ上をブレードまでメンテナンス装置100を移動させる。例えば、図1E図1Fに示されるように、メンテナンス装置100をブレード11まで移動させる。メンテナンス装置100は、ロープ保持装置200によって保持された少なくとも1本のロープを伝って、ブレードまで移動することができる。
【0187】
メンテナンス装置100がブレードまで移動した後、ロープ保持装置200は、図4に示されるように、拘束しているロープを解放するようにしてもよい。さらに、ロープ保持装置200は、係合しているロープを係合解除してもよい。これにより、ロープ保持装置200は、メンテナンス装置100の移動に干渉することなく、メンテナンス装置100と共に移動することができるようになる。
【0188】
ステップS605は、メンテナンス装置100がブレードまで移動した後、ブレード上でメンテナンス装置100を移動させるステップである。ここで、どのようにしてブレード11上でメンテナンス装置100を移動させるかは問わない。
【0189】
例えば、図1Gに示されるように、ステップS6011で設置された少なくとも1本のロープ20を伝ってブレード11上でメンテナンス装置100を移動させることができる。別の例において、メンテナンス装置100が備え得る駆動車輪を利用して、ブレード11上でメンテナンス装置100を移動させることができる。別の例において、メンテナンス装置100がブレード上まで移動した少なくとも1本のロープとは別のロープを利用して、ブレード11上でメンテナンス装置100を移動させることができる。具体例としては、風車に設置されたロープがメンテナンス装置100に予め接続された状態で、ロープ保持装置200が保持する、風車に設置されたロープとは別の少なくとも1本のロープ上をブレード11までメンテナンス装置100を移動させた後に、風車に設置されたロープを利用して、ブレード11上でメンテナンス装置100を移動させることができる。
【0190】
このとき、メンテナンス装置100は、任意の取付手段を介してブレード11にしっかりと取り付くことができる。これにより、メンテナンス装置100は、浮き上がることなく、ブレード11のリーディングエッジ上を移動することができる。また、ブレード11のリーディングエッジが垂直に対して約5度傾斜しているため、メンテナンス装置100に働く重力は、メンテナンス装置100をブレード11のリーディングエッジに押し付けるように作用し、メンテナンス装置100の浮き上がりを阻止する。ステップS605は、例えば、作業員が操作用端末によってメンテナンス装置100に制御信号を送信することに応じて行われてもよいし、ロボットがメンテナンス装置100に制御信号を送信することに応じて行われてもよい。あるいは、メンテナンス装置100が自律的にステップS606を行うようにしてもよい。
【0191】
ステップS605でメンテナンス装置100を移動させるステップは、ブレード上で少なくとも1本のロープが延びる方向のうちの第1の方向にメンテナンス装置100を移動させることと、ブレード上で少なくとも1本のロープが延びる方向のうちの第2の方向にメンテナンス装置100を移動させることとを含んでもよい。例えば、第1の方向は、ブレードの先端からブレードの根元に向かう方向であり、第2の方向は、ブレードの根元からブレードの先端に向かう方向である。メンテナンス装置100は、ウインチによる巻き取りまたは繰り出しを制御することにより、第1の方向または第2の方向に移動することができる。
【0192】
ステップS606は、メンテナンス装置100がブレード上を移動している間に、メンテナンス装置100にブレードのメンテナンスを行わせるステップである。例えば、図1Gに示されるように、メンテナンス装置100がブレード11のリーディングエッジ上を移動している間に、メンテナンス装置100にブレード11のメンテナンスを行わせる。このとき、メンテナンス装置100は、任意の取付手段を介してブレード11にしっかりと取り付いている。これにより、メンテナンス装置100は、浮き上がることなく、洗浄手段、研磨手段等のメンテナンス手段をブレード11のリーディングエッジに押し付けることができる。また、ブレード11のリーディングエッジが垂直に対して約5度傾斜しているため、メンテナンス装置100に働く重力は、メンテナンス装置100をブレード11のリーディングエッジに押し付けるように作用し、メンテナンス装置100の浮き上がりを阻止する。ステップS606は、例えば、作業員が操作用端末によってメンテナンス装置100に制御信号を送信することに応じて行われてもよいし、ロボットがメンテナンス装置100に制御信号を送信することに応じて行われてもよい。あるいは、メンテナンス装置100が自律的にステップS606を行うようにしてもよい。
【0193】
図8は、ステップS606をメンテナンス装置100’によって行うときのメンテナンス方法の一例を示す。図8に示される方法は、例えば、ブレード上の要メンテナンス箇所に対して行われる。メンテナンス装置100’は、例えば、ブレード上を移動し、要メンテナンス箇所に到達したときに、図8に示される各ステップを行うことができる。複数のメンテナンス手段120の各々および搭載部140は、制御手段130によって制御され得る。
【0194】
まず、制御手段130は、ステップS6061で研削が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの研削手段121を選択する。制御手段130は、選択された研削手段121による研削を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、研削手段121がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0195】
ステップS6061では、研削手段121が、風車のブレードの要メンテナンス箇所の表面を研削する。研削手段121は、例えば、リュータを用いて研削を行うことができる。リュータは、搭載部140の並進機構によってブレードの要メンテナンス箇所に対する位置を調節されながら、要メンテナンス箇所の表面を研削することができる。このとき、リュータの研削体の回転軸は、要メンテナンス箇所の表面に対して垂直であることが好ましい。リュータの研削体の回転軸が要メンテナンス箇所の表面に対して垂直である状態で、リュータの研削体が要メンテナンス箇所の表面に押し付けられ、要メンテナンス箇所の表面に沿って移動させられることにより、要メンテナンス箇所の表面の所望の範囲が研削される。
【0196】
ステップS6061での研削が完了すると、制御手段130は、次に、洗浄が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの洗浄手段122を選択する。制御手段130は、選択された洗浄手段122による洗浄を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、洗浄手段122がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0197】
ステップS6062では、洗浄手段122が、ステップS6061で研削された表面を洗浄する。洗浄手段122は、例えば、洗浄液およびウエスを用いて汚れを払拭することができる。
【0198】
ステップS6062での洗浄が完了すると、制御手段130は、次に、材料の塗布が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの塗布手段123を選択する。制御手段130は、選択された塗布手段123による材料の塗布を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、塗布手段123がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0199】
ステップS6063では、塗布手段123が、ステップS6062で洗浄された表面に材料を塗布する。ここで、材料は、研削されてくぼんだ部分を補填するためのパテであり得る。塗布手段123は、例えば、コーキングガンを用いてパテを塗布することができる。
【0200】
ステップS6063での材料の塗布が完了すると、制御手段130は、次に、材料の平坦化が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの平坦化手段124を選択する。制御手段130は、選択された平坦化手段124による材料の平坦化を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、平坦化手段124がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0201】
ステップS6064では、平坦化手段124が、ステップS6063で塗布された材料を平坦化する。平坦化手段124は、例えば、図8に示されるように、ヘラを用いて塗布された材料(パテ)を平坦化することができる。ヘラによる平坦化は、例えば、ブレードの表面と面一とはならないように(例えば、ブレードの表面から盛り上がるように)行われ得る。
【0202】
ステップS6064での材料の塗布が完了すると、制御手段130は、ヘラに付着したパテを清掃するように、平坦化手段130を制御することができる。清掃は、例えば、ヘラを金網に擦りつけることによって行われ得る。
【0203】
ステップS6064での材料の塗布が完了するまたはヘラの清掃が完了すると、制御手段130は、次に材料の硬化が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの硬化手段125を選択する。制御手段130は、選択された硬化手段125による材料の硬化を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、硬化手段125がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにすることができる。
【0204】
ステップS6065では、硬化手段125が、ステップS6064で平坦化された材料を硬化させる。硬化手段125は、例えば、UV光源を用いて、材料にUVを照射することによって材料を硬化させることができる。
【0205】
ステップS6065での材料の硬化が完了すると、制御手段130は、次に、硬化させられた材料の研削が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの研削手段121を選択する。ステップS6064での材料の平坦化後に材料が盛り上がった状態であるため、材料をブレードの表面と面一にするために研削が行われ得る。制御手段130は、選択された研削手段121による材料の研削を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、研削手段121がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにすることができる。
【0206】
ステップS6066では、研削手段121が、ステップS6065で硬化された材料を研削する。研削手段121は、例えば、ベルトサンダーを用いて研削を行うことができる。ベルトサンダーは、搭載部140の並進機構によってブレードの要メンテナンス箇所に対する位置を調節されながら、要メンテナンス箇所の表面を研削することができる。このとき、ベルトサンダーの研削面の移動方向がブレードのリーディングエッジが延びる方向に対して傾斜することが好ましい。これにより、ベルトサンダーによる研削力をうまく逃がすことができ、ベルトサンダーにより過剰な研削を防止することができる。ベルトサンダーの研削面の移動方向がブレードのリーディングエッジが延びる方向に対して傾斜した状態で、ベルトサンダーの研削面が要メンテナンス箇所の表面に押し付けられ、要メンテナンス箇所の表面に沿って移動させられることにより、要メンテナンス箇所の表面の所望の範囲が研削される。
【0207】
ステップS6066での研削が完了すると、制御手段130は、次に、洗浄が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの洗浄手段122を選択する。制御手段130は、選択された洗浄手段122による洗浄を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、洗浄手段122がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0208】
ステップS6067では、洗浄手段122が、ステップS6066で研削された材料を洗浄する。洗浄手段122は、例えば、洗浄液およびウエスを用いて汚れを払拭することができる。
【0209】
ステップS6067での洗浄が完了すると、制御手段130は、次に、塗料の塗布が行われるべきことを認識し、複数のメンテナンス手段120のうちの塗布手段123を選択する。制御手段130は、選択された塗布手段123による塗料の塗布を行うことができるように、搭載部140の回転機構を制御することによって、塗布手段123がブレードの要メンテナンス箇所に向くようにする。
【0210】
ステップS6068では、塗布手段123が、ステップS6067で洗浄された材料に塗料を塗布する。塗布手段123は、例えば、塗料を噴射可能な噴射装置または塗装ローラを用いて塗料を塗布することができる。
【0211】
このようにして、ステップS606では、風車のブレードの要メンテナンス箇所の表面を補修することができる。
【0212】
上述したように、風車のブレードのメンテナンスを行う方法は、各ステップが作業員主導で行われてもよいし、各ステップがロボットによって自動的に行われるようにしてもよい。各ステップをロボットが行うようにすることで、作業員が現場に出る必要がなく、安全に風車のブレードのメンテナンスを行うことが可能になる。
【0213】
なお、本明細書において「移動している間」とは、ある位置から別の位置に向かって移動している期間のことをいい、必ずしも動き続けている必要はない。例えば、メンテナンス装置100がブレードの先端からブレードの付根に向かって移動している期間であって、メンテナンス装置100が前進と停止とを繰り返して移動している期間も、「移動している間」に含まれる。
【0214】
図1図6を参照して説明した例では、風車のブレードのメンテナンスを行うためのシステムおよび方法を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のシステムおよび方法によるメンテナンス対象は、メンテナンスを行う必要がある任意の物体であって、その表面上にロープを保持することができかつ保持されたロープを利用してメンテナンス装置を移動させることが可能な任意の物体の少なくとも一部であり得る。例えば、メンテナンス対象は、そのような物体の全体であってもよいし、一部であってもよい。上述した例では、任意の物体が風車であり、任意の物体の少なくとも一部が風車のブレードである。例えば、任意の物体がビルであり、任意の物体の少なくとも一部がビルの壁面であってもよく、任意の物体が飛行機であり、任意の物体の少なくとも一部が飛行機の主翼であってもよい。例えば、ビルの壁面であれば、雨による汚れを洗浄する必要がある。例えば、飛行機の主翼であれば、翼面を滑らかに保つために点検および洗浄する必要がある。例えば、ビルの屋上または壁面にロープを保持し、メンテナンス装置は、保持されたロープを利用してビルの屋上または壁面まで移動することが可能である。例えば、飛行機の主翼または胴体にロープを保持し、メンテナンス装置は、保持されたロープを利用して主翼または胴体まで移動することが可能である。
【0215】
上述した例では、ロープを利用したメンテナンス装置の移動は、垂直方向の移動(すなわち、上昇および下降)を伴う移動であったが、ロープを利用したメンテナンス装置の移動は、垂直方向の移動を伴わない移動であってもよい。ロープを利用したメンテナンス装置の移動は、水平面内の移動のみを伴う移動も含み得る。水平面内の移動のみを伴う移動であっても、メンテナンス装置よりも軽量でありかつ空間位置を制御することが容易なロープ保持装置を先行してメンテナンス対象上に配置し、メンテナンス装置をロープ保持装置によって保持されたロープを伝ってメンテナンス対象まで移動させるができ、容易なメンテナンスを達成することができるからである。
【0216】
メンテナンス対象の任意の物体は、好ましくは、高所にある物体である。ここで高所とは、地上の作業員の手が届かない高さの場所のことをいう。高所は、例えば、地上から約3m以上の高さの場所であってもよく、地上から約5m以上の高さの場所であってもよく、地上から約10m以上の高さの場所であってもよく、地上から約100m以上の高さの場所であってもよい。高所は、例えば、地上から約3m~約100mの高さの場所であってもよく、地上から約5m~約100mの高さの場所であってもよく、地上から約10m~約100mの高さの場所であってもよい。なお、地上は、屋外の場所であってもよく、屋内の場所であってもよい。
【0217】
また、メンテナンス装置100、100’が任意の物体の少なくとも一部に取り付く面の角度は任意であるが、メンテナンス装置100、100’が任意の物体の少なくとも一部に取り付く面は、垂直に対して傾斜していることが好ましい。メンテナンス装置100、100’が傾斜面に取り付くことにより、取付手段による挟持力に加えて、メンテナンス装置100、100’に働く重力が装置100を物体の少なくとも一部に押し付けるように作用し、メンテナンス装置100、100’が物体の少なくとも一部上でより安定するからである。
【0218】
また、図1図6を参照して説明した例では、物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うための装置を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のシステムは、メンテナンスを行うことを含む任意の目的を達成するための機能を有するロボットであってもよい。例えば、任意の目的は、高所への物資の運搬目的であってもよい。物資を搭載させた装置を高所の物体(例えば、マンションのベランダの外壁等)に取り付けることにより、高所への物資の運搬を容易にすることが可能である。例えば、任意の目的は、物体の装飾目的であってもよい。装飾を施した装置を高所の物体に取り付けることにより、高所の物体を容易に装飾することが可能である。
【0219】
本明細書において、数について特に言及していない要素または英語での「a」または「the」に相当する冠詞が付された要素は、別様に指定されない限り、「少なくとも1つ」の要素を表すことが意図される。
【0220】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明は、安全かつ簡単に物体の少なくとも一部のメンテナンスを行うためのシステムおよび方法を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0222】
10 風車
11、12、13 ブレード
14 ナセル
15 ハブ
20 ロープ
100、100’ メンテナンス装置
110 移動手段
120 複数のメンテナンス手段
130 制御手段
140 搭載部
200 ロープ保持装置
250 部材
260 開口部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4
図5A
図5B
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図6
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図9
図10A
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図10C
図10D
図10E