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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063644
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】情報処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230428BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173594
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 将士
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】河村 勉
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA01
5G066AA02
5G066AA03
5G066AA06
5G066AA09
5G066AD04
5G066AE03
5G066AE07
5G066AE09
5G066HA06
5G066HB01
5G066HB03
5G066HB06
5G066LA04
(57)【要約】
【課題】
系統安定性を考慮したオフグリッドエリアを短時間で選定し得る情報処理装置及び方法を提案する。
【解決手段】
複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定装置、及び、当該オフグリッドエリア選定装置において実行されるオフグリッドエリア選定方法であって、開閉器区間ごとの負荷容量及び電源設備に関する各情報、並びに、配電系統の設備情報に基づいて、配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定し、選定したエリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定するようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定する情報処理装置において、
開閉器区間ごとの負荷容量及び電源設備に関する各情報、並びに、前記配電系統の設備情報に基づいて、前記配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定部と、
前記オフグリッドエリア選定部により選定された前記エリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが前記配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定する系統安定性シミュレーション部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記オフグリッドエリア選定部により選定された前記エリアが前記配電系統の前記系統運用制約を遵守できない場合に、当該エリアが前記系統運用制約を遵守するための制約を生成する制約生成部をさらに備え、
前記オフグリッドエリア選定部により選定された前記エリアが前記配電系統の前記運用制約を遵守するまで、前記オフグリッドエリア選定部が、前記制約生成部により生成された前記制約を追加した上で前記配電系統内の前記オフグリッドを構築可能な前記エリアを選定する処理と、前記系統安定性シミュレーション部が当該エリアにおける前記系統安定性をシミュレーションする処理と、前記制約生成部が当該エリアが前記系統運用制約を遵守するための前記制約を生成する処理とを繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記オフグリッドエリア選定部は、
最終的な前記オフグリッドを構築可能な前記エリアの選定結果に加えて、当該エリアにおける系統安定性の推定結果を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記オフグリッドエリア選定部は、
最終的に選定した前記エリアに前記オフグリッドを構築するため、必要な前記開閉器を開閉させるべき旨の指示を前記配電系統を運用する事業者のシステムに送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定装置により実行される情報処理方法であって、
開閉器区間ごとの負荷容量及び電源設備に関する各情報、並びに、前記配電系統の設備情報に基づいて、前記配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定する第1のステップと、
選定した前記エリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが前記配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定する第2のステップと
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
選定した前記エリアが前記配電系統の前記系統運用制約を遵守できない場合に、当該エリアが前記系統運用制約を遵守するための制約を生成する第3のステップをさらに備え、
前記第1のステップで選定する前記エリアが前記配電系統の前記運用制約を遵守するまで、第1~第3のステップを繰り返す
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
最終的な前記オフグリッドを構築可能な前記エリアの選定結果に加えて、当該エリアにおける系統安定性の推定結果を出力する第4のステップを備える
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記第4のステップにおいて、前記オフグリッドエリア選定装置は、
最終的に選定した前記エリアに前記オフグリッドを構築するため、必要な前記開閉器を開閉させるべき旨の指示を前記配電系統を運用する事業者のシステムに送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置及び方法に関し、配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配電系統を構成する系統機器の1つとして、電気の通り道を開け閉めする開閉器がある。開閉器は、一般的に数百m~数kmごとに設置されるため、配電系統全体での設置数は膨大である。そのため配電系統が取り得る系統トポロジ、つまり各開閉器の開閉器状態(開又は閉)の組合せとしては膨大な数が存在する。
【0003】
開閉器は、操作方法に応じて手動開閉器及び遠制開閉器の2種類に分けられる。手動開閉器は人手により開閉を行う開閉器であり、遠制開閉器は配電事業者(例えば電力会社)の配電自動化システムによる遠隔での開閉制御が可能な開閉器である。遠制開閉器は、膨大な数の系統トポロジ候補の中から、遠隔での開閉操作により所望する系統トポロジを瞬時に構築できるという自由度の高さから、近年では別目的への応用が模索されている。その1つがオフグリッド構築である。
【0004】
ここで、「オフグリッド構築」とは、平常時又は緊急時において、配電系統の一部のエリアを開閉器により他の配電系統から切り離し、マイクログリッドとして独立運用するエリアを構築することを指す。オフグリッド化するエリア(以下、これをオフグリッドエリアと呼ぶ)では、周波数などの系統安定性を確保する必要がある。またオフグリッドエリアにおける電源としては、従来の発電機に加えて、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを発電する発電機や、電源車、系統用電池及び電気自動車などが考えられる。
【0005】
平常時にオフグリッドエリアを構築する利点としては、電力の地産地消促進による系統混雑の緩和が挙げられる。加えて、再生可能エネルギー発電比率の高いオフグリッドエリアを構築することで、地域ブランディングやRE100(Renewable Energy 100%)を目指す企業の拠点誘致などの観点で利点がある。
【0006】
また台風接近時や地震発生時などの緊急時にオフグリッドエリアを構築する利点としては、周囲の電力系統が停電していても、オフグリッドエリア単体で電力供給が可能であることによる停電時間の減少、即ち系統のレジリエンスの向上が挙げられる。
【0007】
さらにオフグリッド構築は、配電系統に接続される分散電源(以下、これをDER(Distributed Energy Resources)と呼ぶ)の有効利用策として注目されている。将来的にDERは、配電事業者のDREマネジメントシステム(DERMS:DER Management System)による遠隔指令・制御が可能になると考えられている。DMRMSは、オフグリッドエリア内での系統安定性の維持や、迅速なオフグリッドエリアの構築に寄与する。
【0008】
一方で、上述のように配電系統がとり得る系統トポロジ候補は膨大な数が存在するため、オフグリッドエリアとしてどのような開閉器区間(隣接する開閉器に挟まれる区間)を選定するかの組合せについても膨大な数の候補が存在する。これらの候補の中から周波数などの系統安定性の確保可否などを考慮し、オフグリッド化する開閉器区間の組合せを決定する必要がある。
【0009】
なお、オフグリッドエリアの運用技術の1つとして、特許文献1には、解列後のマイクログリッドの単独運転において、再生可能エネルギーのPCS(Power Conditioning Subsystem)が電池のSoC(State of Charge)とは無関係に制御され、蓄電池が満充電/過放電状態になる可能性があり、長時間の単独運転の妨げになるという課題に対し、蓄電池のSoCに基づきPCSの制御量を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-40428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1には、マイクログリッド単独運転するエリアを選定する仕組みは含まれていない。このため、仮に特許文献1に開示された技術を用いてかかるエリアを選定しようとすると、膨大な数の候補のすべてについて特許文献1に開示されたシミュレーションを実施する必要があり、膨大な計算時間を要する問題があった。
【0012】
またオフグリッドエリアの選定を最適化問題として定式化することも考えられるものの、最適化計算では周波数等の系統安定性を模擬できない。このため、最適化計算のみによるかかるエリアの選定では、例えば周波数を維持できないなどの系統安定性に問題がある候補を除外できず、誤ってそのようなエリアを選定してしまうおそれがあった。
【0013】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、系統安定性を考慮したオフグリッドエリアを短時間で選定し得る情報処理装置及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定する情報処理装置において、開閉器区間ごとの負荷容量及び電源設備に関する各情報、並びに、前記配電系統の設備情報に基づいて、前記配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定部と、前記オフグリッドエリア選定部により選定された前記エリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが前記配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定する系統安定性シミュレーション部とを設けるようにした。
【0015】
また本発明においては、複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定装置において実行される情報処理方法であって、開閉器区間ごとの負荷容量及び電源設備に関する各情報、並びに、前記配電系統の設備情報に基づいて、前記配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定する第1のステップと、選定した前記エリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが前記配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定する第2のステップとを設けるようにした。
【0016】
本発明の情報処理装置及び方法によれば、オフグリッドを構築可能なエリアに対してのみ系統安定性をシミュレーションすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、系統安定性を考慮したオフグリッドエリアを短時間で選定し得る情報処理装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】オフグリッドエリア選定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態によるオフグリッドエリア選定装置の論理構成例を示すブロック図である。
図3】(A)は配電系統構成情報の構成例を示す図表であり、(B)は開閉器構成情報の構成例を示す図表である。
図4】オフグリッドエリアの説明に供する概念図である。
図5】負荷予測情報の構成例を示す図表である。
図6】再生可能エネルギー出力予測情報の構成例を示す図表である。
図7】系統安定性違反量テーブルの構成例を示す図表である。
図8】(A)及び(B)は、系統安定性制約の説明に供するグラフである。
図9】感度情報テーブルの構成例を示す図表である。
図10】オフグリッドエリア選定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11】第2の実施の形態によるオフグリッドエリア選定装置の論理構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0020】
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態によるオフグリッドエリア選定装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるオフグリッドエリア選定装置を示す。このオフグリッドエリア選定装置1は、図示しない配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリア(オフグリッドエリア)を選定する機能が搭載された情報処理装置であり、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、記憶装置4、通信装置5、入力装置6及び表示装置7を備えた汎用のサーバ装置から構成される。
【0021】
CPU2は、オフグリッドエリア選定装置1全体の動作制御を司るプロセッサである。またメモリ3は、例えば揮発性の半導体メモリから構成され、CPU2のワークメモリとして利用される。メモリ3には、オフグリッドエリア選定装置1の起動時又は必要時に記憶装置4から読み出された各種プログラムが一時的に格納される。後述のオフグリッドエリア選定プログラム10、系統安定性シミュレーションプログラム11及び制約生成プログラム12も必要時に記憶装置4から読み出され、このメモリ3に格納されて保持される。
【0022】
記憶装置4は、例えばハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量の不揮発性の記憶装置から構成され、各種プログラムや長期間保存が必要な各種データが格納される。後述の感度情報テーブル14もこの記憶装置4に格納されて保持される。
【0023】
通信装置5は、配電事業者の配電自動化システム15や、DERMSが搭載されたサーバ装置などとネットワーク16を介して通信を行うためのインタフェース装置である。また入力装置6は、キーボードやマウスなどから構成され、オペレータが各種指示や情報を入力するために利用される。さらに表示装置7は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどから構成され、各種GUI(Graphical User Interface)画面や各種情報を表示するために利用される。
【0024】
図2は、本オフグリッドエリア選定装置1の論理構成を示す。この図2に示すように、オフグリッドエリア選定装置1は、オフグリッドエリア選定部20、系統安定性シミュレーション部21及び制約生成部22を備えて構成される。
【0025】
オフグリッドエリア選定部20は、オフグリッドエリア選定装置1のCPU2(図1)がメモリ3(図1)に保持されたオフグリッドエリア選定プログラム10を実行することにより具現化される機能部である。このオフグリッドエリア選定部20は、配電事業者の配電自動化システム15(図1)から負荷容量情報24、再生可能エネルギー容量情報25及び系統設備情報26を取得し、取得したこれらの情報を利用して配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定する。そしてオフグリッドエリア選定部20は、選定結果をオフグリッドエリア選定案27として系統安定性シミュレーション部21及び制約生成部22に出力する。
【0026】
ここで、負荷容量情報24は、配電系統内に数百m~数kmごとに設置された各開閉器の間の区間である開閉器区間ごとの負荷容量、即ち開閉器区間ごとの、その開閉器区間内に存在するすべての負荷の合計容量の最大値である。この「負荷の合計容量の最大値」は、統計的に得られたものであっても、各電力需要家との契約内容に基づくものであってもよい。
【0027】
また再生可能エネルギー容量情報25は、開閉器区間ごとの再生可能エネルギーの容量、即ち開閉器区間ごとの、その開閉器区間内に存在する再生可能エネルギー発電設備などから出力される再生可能エネルギーの合計容量の最大値である。この「再生可能エネルギーの合計容量の最大値」も統計的に得られたものであっても、各再生可能エネルギー事業者との契約に基づくものであってもよい。また「再生可能エネルギーの合計容量の最大値」を、再生可能エネルギー以外を発電する発電施設からの出力や、系統蓄電池や電源車などの分散電源からの出力を含めた合計容量の最大値としてもよい。
【0028】
系統設備情報26は、配電系統の構成を表す情報であり、例えば図3(A)に示すような配電系統構成情報26Aと、図3(B)に示す開閉器構成情報26Bとから構成される。
【0029】
配電系統構成情報26Aは、配電系統を構成する各配電線に関する情報であり、配電線ごとの配電線ID情報26AA、接続バスID(始点)情報26AB、接続バスID(終点)情報26AC、長さ情報26AD、太さ情報26AE及び平行本数情報26AFをそれぞれ含む。
【0030】
「配電線ID情報」は、対応する配電線に付与されたその配電線に固有の識別子(配電線ID)を表す情報であり、「接続バスID(始点)情報」及び「接続バスID(終点)情報」は、それぞれその配電線の始点又は終点となるバスの識別子(接続バスID(始点)、接続バスID(終点))を表す情報である。なお「バス」とは、発電機、負荷又は給電線などの電力システムのいくつかのコンポーネントが接続された垂直線を指す。また「長さ情報」及び「太さ情報」はその配電線の長さ及び太さをそれぞれ表す情報であり、「平行本数情報」は、その配電線を構成する電線の数を表す情報である。
【0031】
また開閉器構成情報26Bは、配電系統に設置された各開閉器に関する情報であり、開閉器ごとの開閉器ID情報26BA、設置位置情報26BB及び開閉器種別情報26BCをそれぞれ含む。「開閉器ID情報」は、対応する開閉器に付与されたその開閉器に固有の識別子(開閉器ID)を表す情報であり、「設置位置情報」は、その開閉器が設置された配電線の識別子を表す情報である。また「開閉器種別情報」は、その開閉器の種別(手動又は遠制)を表す情報である。
【0032】
そしてオフグリッドエリア選定部20は、取得したこれら負荷容量情報24、再生可能エネルギー容量情報25及び系統設備情報26に基づいて、例えば次式
【数1】
で与えられる数理計画問題を解くことにより、配電系統内に(1)式を満たすオフグリッドを構築可能なすべてのエリア(オフグリッドエリア)を選定し、選定結果をオフグリッドエリア選定案27として系統安定性シミュレーション部21及び制約生成部22に出力する。
【0033】
なお(1)式に示す数理計画問題は、「w1×area-w2×y」を最大化する「area」を求める問題であり、areaはオフグリッドエリアの面積(以下、これをオフグリッドエリア面積と呼ぶ)、yは系統安定性違反量の推定値をそれぞれ表し、w1及びw2はそれぞれ重み係数を表す。w2の値はw1よりも十分大きいものとする。
【0034】
ここで、(1)式は、係数安定性違反量の推定値yの最小化と、オフグリッドエリア面積areaを最大化という多目的最適化を行う数理計画問題と捉えることができる。この場合、(1)式の制約条件としては、需給バランス制約などが挙げられる。また(1)式の最適化変数としては、オフグリッドエリア面積areaや、オフグリッド化する開閉器区間の組合せ、及び、各開閉器の状態などが挙げられる。なお系統安定性違反量の推定値yは、図7について後述する系統安定性違反量テーブル34における違反量の推定値であり、最初の演算では予め設定されたダミーの値が用いられる。推定値yの推定精度は、系統安定性制約を追加することで向上させることができる。
【0035】
(1)式の数理計画問題を解くことにより得られた1つのオフグリッドエリアのオフグリッドエリア選定案27の例を図4に示す。図4に示す配電系統では、配電変電所40から3本の配電フィーダ(第1~第3の配電フィーダ)41A~41Cが伸びており、5つの開閉器42A~42Eが設置されている。このうち中央の配電フィーダ(第2の配電フィーダ)41Bには、太陽光発電システム43が接続されたバスがある。点線の枠で囲まれた部分が1つのオフグリッドエリアの構成案、即ちオフグリッドとして他の配電系統から切り離すべき1つのエリアの選定案(オフグリッドエリア選定案27)である。仮にこのオフグリッドエリア選定案27を採用する場合、点線と重なる開閉器42B,42C,42Eを開状態とし、それ以外の開閉器42A,42Dを閉にする操作となる。
【0036】
なお、図4に例示したオフグリッドエリア選定案27では、オフグリッドエリア内に太陽光発電システム43が含まれるが、こうした電源がないエリアをオフグリッドとして運用する場合、電源車や電気自動車などの移動可能な電源を用いることになる。
【0037】
図2の説明に戻って、系統安定性シミュレーション部21は、オフグリッドエリア選定装置1のCPU2(図2)がメモリ3(図1)に保持された系統安定性シミュレーションプログラム11(図1)を実行することにより具現化される機能部である。系統安定性シミュレーション部21は、系統運用制約情報28、負荷予測情報29及び再生可能エネルギー出力予測情報30を配電自動化システム15などの外部システム(図1)から取得する。
【0038】
系統運用制約情報28は、例えば、配電系統を流れる電流・電圧の周波数は49Hz以上51Hz以下、配電系統を流れる電圧は0.93pu以上1.07pu以下といった、配電系統を運用する上で遵守すべき制約(以下、これを系統運用制約と呼ぶ)に関する情報である。
【0039】
また負荷予測情報29は、例えば図5に示すように、各バスにおける所定時間ごとの負荷容量の予測値を表す情報である。さらに再生可能エネルギー出力予測情報30は、例えば図6に示すように、各バスにおける所定時間ごとの再生可能エネルギーの発電量の予測値を表す情報である。図5及び図6では、時間刻みを10分とした場合を例示しているが、これ以外の時間刻みであってもよい。
【0040】
そして系統安定性シミュレーション部21は、取得した系統運用制約情報28、負荷予測情報29及び再生可能エネルギー出力予測情報30と、オフグリッドエリア選定部20から与えられたオフグリッドエリア選定案27とに基づいて、オフグリッドエリア選定部20により選択された1又は複数の各オフグリッドエリアについて、系統安定性に関する各種シミュレーションをそれぞれ実行する。
【0041】
実際上、系統安定性シミュレーション部21は、突入電流シミュレーション部31、周波数シミュレーション部32及び電圧・過負荷シミュレーション部33を備えている。
【0042】
そして突入電流シミュレーション部31は、オフグリッドエリア選定部20により選定されたオフグリッドエリアごとに、そのオフグリッドエリアにおける突入電流に関するシミュレーションをそれぞれ実行する。また周波数シミュレーション部32は、これらのオフグリッドエリアにおける周波数変動に関するシミュレーションをそれぞれ実行し、電圧・過負荷シミュレーション部33は、これらのオフグリッドエリアにおける電圧変動及び過負荷に関するシミュレーションをそれぞれ実行する。
【0043】
そして系統安定性シミュレーション部21は、上述の突入電流シミュレーション部31、周波数シミュレーション部32及び電圧・過負荷シミュレーション部33における各シミュレーションにより、系統運用制約に違反するシミュレーション結果が得られた場合には、そのようなシミュレーション結果が得られたオフグリッドエリアごとにその内容を1つの系統安定性違反量テーブル34にそれぞれ格納して制約生成部22に出力する。
【0044】
図7は、1つのオフグリッドエリアに対する系統安定性違反量テーブル34の構成例を示す。この図7に示すように、系統安定性違反量テーブル34には、系統安定性を判断する際の指標(以下、これを系統安定性指標と呼ぶ)である「周波数」、「突入電流」、「電圧」及び「過負荷」の4つの各項目(系統安定性指標)について、違反量欄34A、発生時刻欄34B及び発生位置欄34Cがそれぞれ設けられる。そして違反量欄34Aには、対応する系統安定性指標の系統運用制約に対する違反量が格納され、発生時刻欄34Bにはその発生時刻が格納され、発生位置欄34Cにはその発生位置がそれぞれ格納される。
【0045】
なお周波数は位置に依らずに一定であるため、周波数違反についての発生位置欄34Cは空欄としてよい。また違反が発生しない系統安定性指標(図7の例では「突入電流」)については、発生時刻及び発生位置のいずれも空欄としてよい。さらに各系統安定性指標において複数の時刻及び又は位置で違反が発生する場合には、違反量、発生時刻及び発生場所をそれぞれ配列又はリストとして定義し、これら配列又はリストに各違反発生時の値を格納するようにしてもよい。
【0046】
制約生成部22は、オフグリッドエリア選定装置1のCPU2(図1)がメモリ3(図1)に保持された制約生成プログラム12(図1)を実行することにより具現化される機能部である。制約生成部22は、オフグリッドエリア選定部20から与えられたオフグリッドエリア選定案27と、系統安定性シミュレーション部21から与えられた系統安定性違反量テーブル34とに基づいて、オフグリッドエリア選定部20が選定したオフグリッドエリアごとに、そのオフグリッドエリアが系統運用制約を遵守し安定するための制約式を系統安定性制約35としてそれぞれ生成する。
【0047】
具体的に、制約生成部22は、次式
【数2】
を満たす制約式を系統安定性制約35として生成する。この(2)式において、x及びyはいずれも最適化変数であり、yは系統安定性違反量の推定値、xはオフグリッドエリア面積である。またa、b及びcはいずれも定数であり、aは感度情報、bは暫定解(オフグリッドエリア選定案27における最適化変数xの値)、cは系統安定性違反量テーブル34における違反量である。
【0048】
系統安定性制約35について、図8(A)及び(B)を参照して説明する。図8(A)に示すように、最適化変数xに対する違反量は点線で示された違反量c及び暫定解bの真の特性式を表す曲線K1に従い変化するが、この真の特性式は不明であるとする。実線で示された線形推定式を表す直線K2は、系統安定性シミュレーション部21におけるシミュレーション結果を接点Pとしたときの、曲線K1の接線と捉えることもできる。このシミュレーション結果は、x軸の値が暫定解b、y軸の値が違反量cと一致する。
【0049】
以上のとき、系統安定性制約35により定義される安定性違反量cの推定値の探索範囲は、直線K2より左上の領域となるが、目的関数で安定性違反量cの推定値は最小化されるため、実際には直線K2の線上のみを探索することになる。また系統安定性制約35を様々な暫定解bにおいて生成することで、曲線K1が非線形であっても図8(B)のような線形特性式の重ね合わせにより真の特性式を精度良く推定することができる。
【0050】
系統安定性制約35を構成するために必要な定数a、b及びcのうち、b及びcの値は、それぞれオフグリッドエリア選定部20及び系統安定性シミュレーション部21から受け取るものとする。一方、感度情報を表すaの値は、条件ごとに事前に計算しておき、テーブル等で保持しておくものとする。
【0051】
事前に設定された感度情報aを保持するためのテーブル(以下、これを感度情報テーブルと呼ぶ)14の構成例を図9に示す。この図9に示すように、感度情報テーブル14は、条件ごとの感度情報aの値が格納される。図9は、条件としてオフグリッドエリアにおいて3台の各電源車の使用/不使用が条件としている場合の例であり、例えば、3台すべての電源車を使用しないという条件(「条件1」)の下では感度情報aの値が「30.0」であり、「電源車1」のみを使用し、「電源車2」及び「電源車3」を使用しないという条件(「条件2」)の下では感度情報aの値が「20.0」となることが示されている。なお図9では、3台の電源車の使用の有無を条件とした場合の例であり、これ以外の条件を用いるようにしてもよい。
【0052】
制約生成部22は、上述のようにして生成した系統安定性制約(制約式)35をオフグリッドエリア選定部20に出力する。そしてオフグリッドエリア選定部20は、この系統安定性制約(制約式)35を制約条件として数理計画に加えた上で上述と同様にしてオフグリッドエリアを再度選定し、選定結果をオフグリッドエリア選定案27として系統安定性シミュレーション部21に出力する。この後、オフグリッドエリア選定部20が選定したオフグリッドエリアが配電系統の系統運用制約を遵守できるまで、系統安定性シミュレーション部21、制約生成部22及びオフグリッドエリア選定部20において同様の処理が繰り返される。
【0053】
このような繰返し処理によってオフグリッドエリア選定装置1が最終的に得る情報は、オフグリッドエリア選定結果36及び系統安定性特性の推定結果37である。ここでの「オフグリッドエリア選定結果」は、オフグリッドエリア選定案27の最終結果、即ち計算終了時におけるオフグリッドエリア選定案27である。また「系統安定性特性の推定結果」は、図8(B)に示す直線K2(線形推定式)であり、オフグリッドエリア選定結果の解としての最適性の根拠や、系統安定性を遵守すると判断した根拠となる。オフグリッドエリア選定部20は、上述のようにして最終的に得たオフグリッドエリア選定結果36及び系統安定性特性の推定結果37を表示装置7(図1)に出力し、これらの情報を表示させる。
【0054】
またオフグリッドエリア選定部20は、表示装置7に表示させたオフグリッドエリア選定結果36及び系統安定性特性の推定結果37について、入力装置6(図1)が操作されてオペレータからその実行命令が入力されると、最終的に選定したオフグリッドエリアにオフグリッドを構築するため、必要な開閉器を開状態となるように操作すべき旨の指示(以下、これを開閉器操作指示と呼ぶ)を配電自動化システム15(図1)に送信する。
【0055】
この結果、配電自動化システム15は、オフグリッドエリア選定部20から与えられた開閉器操作指示に基づいて、当該開閉器操作指示において指定された各開閉器をそれぞれ操作することにより、これらの開閉器の状態を開状態に遷移させる。これによりオフグリッドエリア選定部20により選定された1又は複数のオフグリッドエリアが配電系統内に構築されることになる。
【0056】
図10は、以上のような本実施の形態のオフグリッドエリア選定装置1において実行される一連の処理のうち、配電系統内でオフグリッドエリアを選定するまでの処理(以下、これをオフグリッドエリア選定処理と呼ぶ)の流れを示す。
【0057】
このオフグリッドエリア選定処理は、入力装置6(図1)が所定操作されてオフグリッドエリアの選定指示が入力されると開始される。そして、まず、オフグリッドエリア選定部20が、配電自動化システム15(図1)から配電系統内の負荷容量情報24(図2)、再生可能エネルギー容量情報25(図2)及び系統設備情報26(図2)をそれぞれ取得し、取得したこれらの情報に基づいて(1)式について上述した数理計画問題の解を求め、求めた解をオフグリッドエリア選定案27として系統安定性シミュレーション部21に出力する(S1)。
【0058】
続いて、系統安定性シミュレーション部21が、配電自動化システム15から系統運用制約情報28(図2)、負荷予測情報29(図2)及び再生可能エネルギー出力予測情報30(図2)を取得し、取得したこれらの情報と、オフグリッドエリア選定部20から与えられたオフグリッドエリア選定案27とに基づいて、オフグリッドエリア選定部20が選定した各オフグリッドエリアにおける突入電流、周波数変動、電圧変動及び過負荷に関する各シミュレーションをそれぞれ実行する(S2A~S2C)。
【0059】
また系統安定性シミュレーション部21は、これらのシミュレーションのシミュレーション結果に基づいて、オフグリッドエリア選定部20が選定したオフグリッドエリアが系統運用制約に違反していないか否かをそれぞれ判定する(S3)。
【0060】
そして系統安定性シミュレーション部21は、オフグリッドエリア選定部20が最後に選定した各オフグリッドエリアのいずれもが突入電流、周波数及び電圧・過負荷のいずれのシミュレーションでも系統運用制約を満たしていない場合には(S3:違反有)、オフグリッドエリア選定部20が最後に選定した各オフグリッドエリアに対する系統安定性違反量テーブル34(図7)をそれぞれ必要に応じて生成し、生成した系統安定性違反量テーブル34を制約生成部22に出力する(S4)。
【0061】
また制約生成部22は、系統安定性シミュレーション部21から系統安定性違反量テーブル34が与えられると、この系統安定性違反量テーブル34に基づいて上述の(2)式を満たす系統安定性制約35(図2)を生成し(S5)、生成した系統安定性制約35をオフグリッドエリア選定部20に出力する。そしてオフグリッドエリア選定部20は、制約生成部22から与えられた系統安定性制約35を数理計画に追加した上で(1)式の数理計画問題を再度解き、数理計画問題の解であるオフグリッドエリア選定案27を更新する(S1)。
【0062】
以上のステップS1~ステップS5の処理が、オフグリッドエリア選定部20が選定したオフグリッドエリアのうちの少なくとも1つのオフグリッドエリアについて系統安定性制約に対する系統運用制約に対する制約違反がなくなるまで繰り返される。
【0063】
そして、やがてオフグリッドエリア選定部20により系統運用制約に違反しない少なくとも1つのオフグリッドエリアが選定されると(S3:違反無)、その旨が系統安定性シミュレーション部21から制約生成部22を介してオフグリッドエリア選定部20に通知され、これによりそのオフグリッドエリアが最終的なオフグリッドエリアに決定されて、この後、このオフグリッドエリア選定処理が終了する。
【0064】
(1-2)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のオフグリッドエリア選定装置1では、オフグリッドエリア選定部20が、開閉器区間ごとの負荷容量情報24、再生可能エネルギー容量情報25及び系統設備情報26に基づいて配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定し、系統安定性シミュレーション部21が、オフグリッドエリア選定部20が選定したオフグリッドエリアにおける系統安定性をシミュレーションし、当該エリアが配電系統の系統運用制約を遵守できるか否かを判定する。
【0065】
従って、本オフグリッドエリア選定装置1によれば、オフグリッドを構築可能なエリアに対してのみ系統安定性をシミュレーションすることができ、かくして系統安定性を考慮したオフグリッドエリアを短時間で選定することができる。
【0066】
(2)第2の実施の形態
本実施の形態においては、停電などの非常時にオフグリッドエリアを選定する場合について説明する。ここでは、オフグリッドエリアの電源としては、太陽光発電、系統用蓄電池及び電源車を使用するものとする。
【0067】
図2との対応部分に同一符号を付して示す図3は、第2の実施の形態によるオフグリッドエリア選定装置50の論理構成を示す。オフグリッドエリア選定装置50のハードウェア構成及びソフトウェア構成は第1の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
このオフグリッドエリア選定装置50は、最終的な結果としてオフグリッドエリア選定結果36及び系統安定性特性の推定結果37に加えて、各電源車の配備場所51を提示する点が第1の実施の形態のオフグリッドエリア選定装置1と相違する。
【0069】
実際上、本実施の形態のオフグリッドエリア選定装置50の場合、オフグリッドエリア選定部52は、負荷容量情報24及び再生可能エネルギー容量情報25に加えて、電源車リソース情報53及び停電区間情報54を配電自動化システム15(図1)から取得する。電源車リソース情報53は、各電源車に関する情報であり、各電源車の発電容量と、事前の配備場所との情報を含む。また停電区間情報54は、災害等により停電した開閉器区間を表す情報である。
【0070】
そしてオフグリッドエリア選定部52は、取得したこれらの情報に基づいて(1)式について上述した数理計算問題を解く。この際、(1)式のオフグリッドエリア面積areaを、停電区間情報54として得られた停電が発生している区域内のオフグリッド化するエリアの面積と定義する。また、かかる数理計算問題の制約条件には、数理計画の制約式に加えて、電源車数の上限や、各電源車の発電容量などを含める。さらに数理計算問題の最適化変数として、上述した数理計画の最適化変数x,yに加えて、各電源車の配備場所などを含める。そしてオフグリッドエリア選定部52以外の系統安定性シミュレーション部21及び制約生成部22は、第1の実施の形態のオフグリッドエリア選定装置1と同様の処理を実行する。
【0071】
この結果、本オフグリッドエリア選定装置50では、オフグリッドエリア選定部52が解く数理計算問題の最終的な解として、停電が発生している区域内でオフグリッド化が可能な1又は複数のエリア(オフグリッドエリア)を表すオフグリッドエリア選定結果36と、これらオフグリッドエリアごとの系統安定性特性の推定結果37と、各電源車の配備場所51とが得られ、これらの情報が表示装置7(図1)に表示される。
【0072】
以上のように本実施の形態のオフグリッドエリア選定装置50によれば、停電などの非常時におけるオフグリッドエリアを選定することができるため、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、停電時間を減少させて配電系統のレジリエンスを向上させ得るという効果をも得ることができる。
【0073】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、本発明によるオフグリッドエリア選定装置を1つのサーバ装置により構築するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、オフグリッドエリア選定装置の機能を分散型コンピューティングシステムを構成する複数のコンピュータ装置に分散して配置するようにしてもよい。
【0074】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、系統安定性シミュレーション部21に突入電流シミュレーション部31、周波数シミュレーション部32及び電圧・過負荷シミュレーション部33を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、系統安定性シミュレーション部21に、これ以外の系統安定性に関するシミュレーションを行う機能部を設けるようにしてもよい。
【0075】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、開閉器区間ごとの電源設備に関する情報として、開閉器区間ごとの、その開閉器区間内に存在する再生可能エネルギー発電設備などから出力される再生可能エネルギーに関する情報(再生可能エネルギー容量情報25)を取得するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、再生可能エネルギー以外であってもオフグリッドエリアの電源となり得る独立した電源設備の情報を取得してオフグリッドエリアの選定に利用するようにしてもよい。
【0076】
さらに上述の第2の実施の形態においては、停電などの非常時にオフグリッドエリアを選定する機能のみがオフグリッドエリア選定装置50に搭載されている場合について述べたが、本発明はこれに限らず、上述した第2の実施の形態の機能に加えて、第1の実施の形態のオフグリッドエリア選定装置1の機能をすべて第2の実施の形態のオフグリッドエリア選定装置50に搭載するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、複数の開閉器が配置された配電系統内のオフグリッドを構築可能なエリアを選定するオフグリッドエリア選定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,50……オフグリッドエリア選定装置、2……CPU、6……入力装置、7……表示装置、14……感度情報テーブル、15……配電自動化システム、20,52……オフグリッドエリア選定部、21……系統安定性シミュレーション部、22……制約生成部、24……負荷容量情報、25……再生可能エネルギー容量情報、26……系統設備情報、27……オフグリッドエリア選定案、28……系統運用制約情報、29……負荷予測情報、30……再生可能エネルギー出力予測情報、31……突入電流シミュレーション部、32……周波数シミュレーション部、33……電圧・過負荷シミュレーション部、34……系統安定性違反量テーブル、35……系統安定性制約、36……オフグリッドエリア選定結果、37……推定結果、38……開閉器、51……配備場所。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11