(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063679
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】データ処理方法、データ処理システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230428BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G01N30/86 E
G01N30/74 E
G01N30/86 Q
G01N30/86 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173643
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 顕
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ ジオヴァンニ ヴェッキエッティ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数成分を含有する試料の三次元クロマトグラムのシミュレーションデータを所望の分離度で取得する。
【解決手段】複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備するデータ準備ステップと、複数成分の試料濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを決定するパラメータ決定ステップと、複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、パラメータ決定ステップで決定したパラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、データ調整ステップで調整した複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理方法であって、
前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備するデータ準備ステップと、
前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを決定するパラメータ決定ステップと、
前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、
前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を備えているデータ処理方法。
【請求項2】
前記データ調整ステップにおいて、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータ及び/又はスペクトルデータに所定のノイズを付与する、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理システムであって、
前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶されたデータを用いて演算処理を行なう演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、
前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを、ユーザによって入力された情報に基づいて決定するパラメータ決定ステップと、
前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、
前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を実行するように構成されている、データ処理システム。
【請求項4】
前記演算処理部は、前記データ調整ステップにおいて、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータ及び/又はスペクトルデータに所定のノイズを付与するように構成されている、請求項3に記載のデータ処理システム。
【請求項5】
コンピュータに導入されることによって前記コンピュータを請求項3又は4に記載のデータ処理システムとして機能させるように構成されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理方法、データ処理システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオードアレイ(PDA)検出器等のマルチチャネル型検出器を用いた液体クロマトグラフ(以下、LC-PDAと称する)では、分析カラムから溶出する試料の吸光スペクトルを連続的に取得することによって、時間、波長、及び信号強度(吸光度)の3つの次元を有する3次元クロマトグラムデータを得ることができる。
【0003】
液体クロマトグラフを用いて試料中の目的成分の定量を行なう場合、目的成分の吸光度が最も大きい波長を用いてクロマトグラムを作成し、そのクロマトグラム上で目的成分のピークの面積値を求めて定量を行なうことが一般的である。しかし、試料に目的成分以外の不純物が含まれることがあり、クロマトグラム上でその不純物のピークが目的成分のピークと重なる場合がある。そのような場合、複数のピークが重なったままでは目的成分や不純物のピーク面積値を求めることができず定量結果が得られないため、クロマトグラム上でピークが重なっている複数の成分を互いに分離する必要がある。
【0004】
互いに重なった複数成分のピークを分離するための手法として、EMG(Exponential Modified Gaussian)関数等のモデル関数(ピークモデル)を実際のクロマトグラムの波形に当てはめることによって各成分のそれぞれのクロマトグラムを推定する手法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主成分の濃度に対して数百分の1~数千分の1の濃度の不純物が試料に混在し、それらの成分のピークが互いに重なっている場合、上記のようなモデル関数を用いたピーク分離手法では、低濃度成分(不純物)のピーク面積値が当該低濃度成分の実際の成分ピークとそれを模擬しているモデル関数との誤差に埋もれてしまい、低濃度成分の正しいピークの形状や大きさを正確に割り出すことができない。
【0007】
ところで、複数成分を含有する試料の分析を、各成分ピークが所望の分離度で他の成分から分離されるような分析条件で行ないたいという要求がある。しかし、上記のように、非常に濃度差の大きい複数成分のピークが互いに重なっている場合、モデル関数を用いたピーク分離手法では、低濃度成分のピークの形状や大きさを正確に推定することができないため、実際に分析を行なって得られた分析データ中の各成分ピークの分離度が所望の分離度となっているのか否かを検証することが難しい。
【0008】
本発明者らは、試料に含まれる複数成分のそれぞれの濃度とそれらの成分のピークの分離度に応じて、どのような三次元クロマトグラムデータが得られるのかを正確に予め知ることができれば、実際に得られた分析データが所望の分離度をもったデータであるのかを検証することが可能になると考えた。
【0009】
したがって、本発明は、複数成分を所望の濃度で含有する試料についての三次元クロマトグラムのシミュレーションデータを所望の分離度で取得することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るデータ処理方法は、複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理方法であって、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備するデータ準備ステップと、前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを決定するパラメータ決定ステップと、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を備えている。
【0011】
本発明に係るデータ処理システムは、複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理システムであって、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶されたデータを用いて演算処理を行なう演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを、ユーザによって入力された情報に基づいて決定するパラメータ決定ステップと、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るデータ処理方法では、複数成分のそれぞれの濃度と分離度を含むパラメータによって複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータを調整し、調整したクロマトグラムデータ群とスペクトルデータ群との行列積を計算することによって、3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを取得するので、複数成分を所望の濃度で含む試料について所望の分離度が得られるように分析したときの3次元クロマトグラムのシミュレーションデータが得られる。
【0013】
本発明に係るデータ処理方法では、複数成分のクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備しておき、複数成分のそれぞれの濃度と分離度を含むパラメータを決定するだけで、決定したパラメータに応じた3次元クロマトグラムのシミュレーションデータが取得される。したがって、複数成分を所望の濃度で含む試料について所望の分離度が得られるように分析したときの3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】データ処理方法の概念を説明するための図である。
【
図2】データ処理システムの一実施例を示す概略構成図である。
【
図3】同実施例において実行されるデータ処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】同実施例のデータ処理の検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るデータ処理方法及びデータ処理システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
まず、この実施例におけるデータ処理の概念について、
図1を用いて説明する。
【0017】
図1は、2つの成分A,Bを含む試料をLC-PDAによって分析した場合に得られるであろう3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するための概念を示している。
【0018】
目的のシミュレーションデータを取得するためには、成分AのクロマトグラムデータC(A)及びスペクトルデータS(A)、成分BのクロマトグラムデータC(B)及びスペクトルデータS(B)をそれぞれ準備する必要がある。成分A,BのそれぞれのクロマトグラムデータC(A),C(B)とスペクトルデータS(A),S(B)は、成分A、Bを別々にLC-PDAによって分析するか、若しくは、成分A、Bを含有する試料を成分A、Bのピークが互いに完全に分離されるような分析条件で分析し、それによって得られた3次元クロマトグラムデータから、成分A、Bのそれぞれのクロマトグラム情報とスペクトル情報を読み取ることができる波長、保持時間をそれぞれ切り出すことによって作成することができる。
【0019】
準備した成分A、BのクロマトグラムデータC(A),C(B)からなるクロマトグラムデータ群の行列を
とし、スペクトルデータS(A),S(B)からなるスペクトルデータ群の行列を
とし、成分A、BについてLC-PDAにより分析して得られる3次元クロマトグラムデータの行列を
とすると次式が成立する。
ここで、Tは行列の転置である。したがって、成分A、Bを含む試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータは、クロマトグラムデータ群の行列
とスペクトルデータ群の行列
の行列積
を計算することによって求めることができる。
【0020】
ここで、上記行列積を計算する前に、試料に含まれる各成分A、Bの濃度が所望の値になるようにそれぞれのクロマトグラムデータにおけるピーク面積を調整し、かつ、成分A、Bの互いのピークの分離度が所望の値となるようにそれぞれのクロマトグラムデータにおけるピークの位置を調整することができる。そして、調整したデータを用いて上記行列積の計算を実行すれば、成分A、Bを所望の濃度で含む試料について成分A、Bのピークが互いに所望の分離度で分離されるような分析条件で分析されたと想定したときの3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを得ることができる。
【0021】
次に、上記データ処理を実行するためのデータ処理システムの一実施例について、
図2を用いて説明する。
【0022】
データ処理システム2は、データ記憶部4、及び演算処理部6を備えている。データ処理システム2は、CPU(中央演算装置)と、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどのデータ記憶デバイスと、を備えたパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置に所定のコンピュータプログラムが導入されることによって構築することができる。データ記憶部4は、データ記憶デバイスの一部の記憶領域によって実現される機能であり、演算処理部6は、CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能である。
【0023】
データ記憶部4は、3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成したい試料に含まれる複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを記憶する。データ記憶部4に記憶される複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータは、上述のように、LC-PDAで取得された3次元クロマトグラムデータから切り出されたものであってもよいし、データ処理システム2とネットワーク接続されたデータベースから読み出されたものであってもよい。また、データ処理システム2が、LC-PDAによって取得された3次元クロマトグラムデータから複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを切り出す機能を備えていてもよい。
【0024】
演算処理部6は、データ記憶部4に記憶されているデータを用いて、3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するように構成されている。シミュレーションデータの作成に際し、演算処理部6は、キーボードやマウスなどの入力装置8を介してユーザにより入力された情報に基づいて、試料に含まれる複数成分のそれぞれの濃度、それらの成分のピークの互いに分離度といったパラメータを決定し、そのパラメータに基づいて複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積やピーク位置を調整する。すなわちクロマトグラムデータの行列群Cの各値を変更、または値の位置を調整する。そして、演算処理部6は、調整したクロマトグラムのデータ群からなる行列とスペクトルのデータ群からなる行列の行列積を計算することにより、複数成分がそれぞれユーザによって指定された濃度で含まれる試料について、それらの成分のピークがユーザによって指定された分離度で分離された状態の3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する。
【0025】
すなわち、3次元クロマトグラムのシミュレーションデータは、
図3に示す手順によって作成される。
【0026】
まず、試料に含まれる複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備する(データ記憶部4に記憶させる)(ステップ101)。試料における各成分の濃度、各成分の互いに分離度といったパラメータをユーザに入力させて決定する(ステップ102)。パラメータが決定されると、決定されたパラメータに応じたピーク面積、ピーク位置となるように各成分のクロマトグラムデータを演算処理部6に調整させる(ステップ103)。
【0027】
次に、ユーザが所望する場合、若しくは必ず、演算処理部6に、所定のノイズを各データに付与させる(ステップ104)。ノイズは、調整後のクロマトグラムデータ、及び/又はスペクトルデータに付与することができる。付与するノイズとしては、ランダムに生成されるもののほか、LCの分析流路にブランク液を流したときに測定されたノイズ成分、などが挙げられる。付与するノイズの種類をユーザが選択できるようになっていてもよい。
【0028】
その後、調整後のクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群の行列とスペクトルデータからなるスペクトルデータ群の行列の行列積を演算処理部6に計算させ(ステップ105)、さらに、その計算結果を用いて3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを演算処理部6に作成させる(ステップ106)。
【0029】
図4は、互いの濃度比が100:0.05である2つの成分を含む試料について作成したシミュレーションデータの検証結果を示すある波長でのクロマトグラムである。この検証では、2つの成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを用いて作成したシミュレーションデータ(実施例)と、モデル関数(ガウシアン)によって模擬した2つの成分のそれぞれのクロマトグラムを合成して作成したクロマトグラムのシミュレーションデータ(比較例)とを、実際に試料をLC-PDAによって分析して得られたクロマトグラムデータ(測定データ)と比較した。
【0030】
この検証結果では、モデル関数を用いて再現した比較例のデータは、2つの成分が重なっているピークの両端部分において測定データからずれていることがわかる。一方で、実施例のデータは、ピークの全体にわたって測定データと一致していることがわかる。したがって、上記実施例のデータ処理により、非常に濃度差の大きい複数成分を含む試料についての3次元クロマトグラムの高精度なシミュレーションデータが作成可能である。
【0031】
なお、以上において説明した実施例は本発明の実施形態の一例に過ぎない。本発明に係るデータ処理方法、データ処理システム及びコンピュータプログラムの実施形態は以下のとおりである。
【0032】
本発明に係るデータ処理方法の一実施形態は、複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理方法であって、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを準備するデータ準備ステップと、前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを決定するパラメータ決定ステップと、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を備えている。
【0033】
上記一実施形態では、前記データ調整ステップにおいて、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータ及び/又はスペクトルデータに所定のノイズを付与することができる。これにより、実際の測定データにより近いシミュレーションデータを取得することができる。
【0034】
本発明に係るデータ処理システムの一実施形態は、複数成分を含有する試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成するデータ処理システムであって、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータとスペクトルデータを記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶されたデータを用いて演算処理を行なう演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、前記複数成分の前記試料における濃度の互いの比率、及び、クロマトグラム上での前記複数成分のピークの互いの分離度を含むパラメータを、ユーザによって入力された情報に基づいて決定するパラメータ決定ステップと、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータのピーク面積及びピーク位置を、前記パラメータ決定ステップで決定した前記パラメータに基づいて調整するデータ調整ステップと、前記複数成分のそれぞれのスペクトルデータからなるスペクトルデータ群と、前記データ調整ステップで調整した前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータからなるクロマトグラムデータ群との行列積を計算し、その計算結果に基づいて前記試料についての3次元クロマトグラムのシミュレーションデータを作成する行列積ステップと、を実行するように構成されている。
【0035】
上記一実施形態では、前記演算処理部が、前記データ調整ステップにおいて、前記複数成分のそれぞれのクロマトグラムデータ及び/又はスペクトルデータに所定のノイズを付与するように構成されていてもよい。これにより、実際の測定データにより近いシミュレーションデータを取得することができる。
【0036】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに導入されることによって前記コンピュータを上述のデータ処理システムとして機能させるように構成されている。
【符号の説明】
【0037】
2 データ処理システム
4 データ記憶部
6 演算処理部
8 入力装置