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特開2023-63686固溶体からなる酸化物、固体電解質及びその製造方法、全固体リチウムイオン二次電池、電子機器、並びに、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063686
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】固溶体からなる酸化物、固体電解質及びその製造方法、全固体リチウムイオン二次電池、電子機器、並びに、車両
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20230428BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20230428BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230428BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230428BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C04B35/495
H01B1/08
H01M10/0562
H01M10/052
C01G51/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173652
(22)【出願日】2021-10-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本セラミックス協会2021年年会、令和3年3月8日、令和3年3月23日、https://sites.google.com/ceramic.or.jp/nenkai2021/
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】安原 颯
(72)【発明者】
【氏名】冨山 尚大
(72)【発明者】
【氏名】保科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 敬章
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5G301CA02
5G301CA16
5G301CA18
5G301CA30
5G301CD01
5H029AM12
(57)【要約】
【課題】酸化物系Liイオン伝導体として新たな結晶構造であるコランダム関連構造を有する、固溶体からなる酸化物を提供することである。
【解決手段】本発明の固溶体からなる酸化物は、コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する、固溶体からなる酸化物。
【請求項2】
前記M1及びM2がNb又はTaのいずれかであり、前記AがCo又はMgのいずれかである、請求項1に記載の固溶体からなる酸化物。
【請求項3】
コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する、固体電解質。
【請求項4】
前記M1及びM2がNb又はTaのいずれかであり、前記AがCo又はMgのいずれかである、請求項3に記載の固体電解質。
【請求項5】
イオン伝導率が1×10-5[S/cm]以上である、請求項3又は4のいずれかに記載の固体電解質。
【請求項6】
前記xが、0<x<0.8である、請求項3~5のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記xが、0<x<0.5である、請求項3~6のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項に記載の固体電解質を製造する方法であって、
コランダム関連構造を有するLi(M1)O(M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と、コランダム関連構造を有するA(M2)(AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と用いて、xLi(M1)O・(1-x)A(M2)の組成式で表され、コランダム関連構造を有する固体電解質を製造する、固体電解質の製造方法。
【請求項9】
前駆体として、前記Li(M1)O及び前記A(M2)をそれぞれ、合成する工程と、
前記Li(M1)O及び前記A(M2)の前駆体を所定の比率で湿式混合した後、焼成する焼成工程と、を有する、請求項8に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項10】
正極層と、負極層と、前記正極層及び前記負極層との間に配置する、請求項3~7のいずれか一項に記載の固体電解質を含む固体電解質層と、を備える、全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項10に記載された全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える電子機器。
【請求項12】
請求項10に記載された全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固溶体からなる酸化物、固体電解質及びその製造方法、全固体リチウムイオン二次電池、電子機器、並びに、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体リチウムイオン二次電池の実現に向け、優れたイオン伝導率を有する固体電解質の探索が精力的に行われている。安全性の観点から酸化物の利用が強く望まれており、酸化物系Liイオン伝導体としてペロブスカイト型構造、ガーネット型構造、LISICON型構造を有する材料が既に報告されている(例えば、非特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】R. Murugan et al., Angew. Chem. Int. Ed. 46, 7778-7781 (2007).
【非特許文献2】Y. Inaguma et al., Solid State Commun. 86(10), 689-693 (1993).
【非特許文献3】Z. Liu et al., Solid State Ion. 179, 1714-1716 (2008).
【非特許文献4】M. V. Reddy et al., Adv. Funct. Mater. 17, 2792-2799 (2007).
【非特許文献5】R. H. Chen et al., J. Phys. Condens. Matter 19, 086225 (2007).
【非特許文献6】B. Gadermainer et al., Solid State Ion. 352, 115355 (2020).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既報の材料では、イオン伝導率が低い、界面接合性が低いなどの課題があり、全固体電池実現に向けた種々の課題を解決するに至っていない。そのため、酸化物のみで構成される全固体電池実現には新規固体電解質の開発が必須である。
【0005】
従来、新規固体電解質の探索方法は、既報の固体電解質すなわち、ペロブスカイト型構造、ガーネット型構造、LISICON型構造の固体電解質として知られている物質において一部元素置換して、そのイオン伝導率を評価したり、偶然的に見つかったLiイオン伝導体を調査するというものであった。しかし、既報の酸化物系Liイオン伝導体の結晶構造は上述の通り限定的であり、未だイオン伝導体として報告の無い材料群に優れた特性を発現する材料が眠っている可能性がある。
【0006】
本発明者は、固体電解質としての報告はないが、電極材料としては既に報告があるコランダム型構造に着目した。すなわち、コランダム型構造を有するα-Feは負極材料として報告されており(非特許文献4参照)、結晶構造内をLiイオンが拡散可能であることがわかっている。そこで、コランダム型構造あるいはこれに類似する構造で酸化物系Liイオン伝導体を探索して、コランダム関連構造の酸化物で初めて、ペロブスカイト型構造やガーネット型構造の酸化物系Liイオン伝導体のイオン伝導率に匹敵する材料を見出し、本発明に想到した。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、コランダム関連構造を有し、高いイオン伝導率を示す固溶体からなる酸化物、固体電解質及びその製造方法、全固体リチウムイオン二次電池、電子機器、並びに、車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
本発明の第1態様に係る固溶体からなる酸化物は、コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する。
【0010】
上記態様に係る固溶体からなる酸化物は、前記M1及びM2がNb又はTaのいずれかであり、前記AがCo又はMgのいずれかであってもよい。
【0011】
本発明の第2態様に係る固体電解質は、コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する。
【0012】
上記態様に係る固体電解質は、前記M1及びM2がNb又はTaのいずれかであり、前記AがCo又はMgのいずれかであってもよい。
【0013】
上記態様に係る固体電解質は、イオン伝導率が1×10-5[S/cm]以上であってもよい。
【0014】
上記態様に係る固体電解質は、前記xが、0<x<0.8であってもよい。
【0015】
上記態様に係る固体電解質は、前記xが、0<x<0.5であってもよい。
【0016】
本発明の第3態様に係る固体電解質の製造方法は、上記態様に係る固体電解質を製造する方法であって、コランダム関連構造を有するLi(M1)O(M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と、コランダム関連構造を有するA(M2)(AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と用いて、xLi(M1)O・(1-x)A(M2)の組成式で表され、コランダム関連構造を有する固体電解質を製造する。
【0017】
上記態様に係る固体電解質の製造方法は、前駆体として、前記Li(M1)O及び前記A(M2)をそれぞれ合成する工程と、前記Li(M1)O及び前記A(M2)の前駆体を所定の比率で湿式混合した後、焼成する焼成工程と、を有してもよい。
【0018】
本発明の第3態様に係る全固体リチウムイオン二次電池は、正極層と、負極層と、前記正極層及び前記負極層との間に配置する、上記態様に係る固体電解質を含む固体電解質層と、を備える。
【0019】
本発明の第4態様に係る電子機器は、上記態様に係る全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える。
【0020】
本発明の第5態様に係る車両は、上記態様に係る全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の固溶体からなる酸化物によれば、コランダム関連構造を有し、高いイオン伝導率を示す固溶体からなる酸化物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る固体電解質を固体電解質層に用いた全固体リチウムイオン二次電池の断面模式図である。
図2】本発明に係る全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備えるスマートフォンの主な機能のブロック図である。
図3】本発明に係る全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える電気自動車の駆動システムの概略平面図である。
図4】xLiNbO・(1-x)CoNbで表され、コランダム関連構造を有する実施例1のサンプルのXRDパターンである。
図5】(a)はx=0.4の実施例1のサンプルのXRDパターンの2θが31°~34°の範囲の拡大図であり、(b)はx=0.5の実施例1のサンプルのXRDパターンの2θが31°~34°の範囲の拡大図である。
図6】交流インピーダンス測定法により得られた、実施例1のサンプルのイオン伝導率の組成依存性を示すグラフである。
図7】xLiTaO・(1-x)CoTaで表され、コランダム関連構造を有する実施例2のサンプルのXRDパターンである。
図8】(a)は実施例2のx=0.2の実施例2のサンプルのXRDパターンの2θが31°~34°の範囲の拡大図であり、(b)はx=0.1の実施例2のサンプルのXRDパターンの2θが31°~34°の範囲の拡大図である。
図9】交流インピーダンス測定法により得られた、実施例2のサンプルのイオン伝導率の組成依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した実施形態に係る固溶体からなる酸化物、固体電解質、固体電解質の製造方法、全固体リチウムイオン二次電池、電子機器、及び、車両について詳細に説明する。
【0024】
(固溶体からなる酸化物)
本実施形態に係る固溶体からなる酸化物は、コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有するものである。
【0025】
本発明において「コランダム関連構造」とは、コランダム型構造に類似する構造であり、以下に具体的に説明する。まず、コランダム型構造について説明すると、コランダム型構造はX型構造がもつ代表的な構造である。X型構造において、Xが金属元素(カチオン)、Yが酸素(アニオン)である酸化物の場合、コランダム型構造をとる結晶としては、コランダム(α-Al)、酸化鉄(α-Fe)、酸化クロム(α-Cr)、酸化バナジウム(α-V)、酸化チタン(α-Ti)が知られている。これらのうち、コランダム、ヘマタイト(酸化鉄)及び酸化クロムは最安定構造として知られている。コランダム型構造は、アニオンの六方最密充填構造の中に存在する6配位位置の2/3をカチオンが占め、1/3が空孔となる構造である。
本発明において「コランダム関連構造」は、コランダム型構造の金属サイトに2種類あるいは3種類の金属元素が入る場合である。
本発明において、電極材料としては既に報告があるコランダム型構造のα-FeにLiを入れてしまうとFeが還元されて電子伝導性が上がってしまうことが考えられたので、単にLiを入れるだけではなくて、「コランダム関連構造」まで含めて電気的中性条件を保った状態で、Liを挿入することを考えた。
「コランダム関連構造」において、酸化物に限定すると、カチオンの平均価数が+3である必要がある。さもないと、カチオン:アニオンが2:3の比率が作れない。
単純に+3のカチオンでは例えば、AlやFeがある。
また、+1のカチオンと+5のカチオンの組み合わせでは例えば、LiNbO3、LiTaO3、LiVOがある。なお、LiNbOの室温におけるイオン伝導率は非特許文献5に記載のデータに基づくと、10-11[S/cm]のオーダーであり、また、LiTaOの室温におけるイオン伝導率は非特許文献6に記載のデータに基づくと、10-12[S/cm]のオーダーである。
さらに+2、+2、+5の3種類のカチオンの合計+9価を3個のカチオンで割って平均+3価のカチオンとなる組み合わせでは例えば、CoNb、MgNb、FeNb、NiNb、MnNbがある。
【0026】
本発明に到達するまでの経緯を述べると、初めに扱っていた系は、LiNbOとFeの固溶体であった。この固溶体では電子伝導成分が消し切れなかった。そこで次にLiNbOとAlの固溶体に着手した。しかし、イオン伝導率が著しく低かったので、コランダム型構造からコランダム関連構造まで拡張した。LiNbOを使用し続けている理由は以下の通りである。
コランダム関連構造ではカチオンの平均価数が3価である必要があり、電気的中性を保ちながら伝導イオンであるLiを導入するには平均3価の組成で導入する必要がある。Li導入量をなるべく多くしつつ汎用性のある材料で考えたときに、LiNbOが最も適切な組み合わせであると考えた。
【0027】
本明細書における「固溶体」は、XRDパターンによって確認できるものに限られる。例えば、XRDパターンにおいて、Li(M1)O及びA(M2)のうちの一方の酸化物の結晶構造に帰属されるピークだけを示すものが挙げられる。この場合、ピークが帰属される一方の酸化物をホスト材料とし、他方の酸化物をゲスト材料として固溶体が形成されている。ピークの有無がわかりにくい場合は、そのピークの角度を含む回折角2θの範囲を拡大することによってピークの有無を確認することができる。
また、XRD測定結果から算出可能な格子定数の変化に基づいて固溶体形成を確認することができる。固溶体を形成する場合、基本的に格子定数は連続的に変化する。例えば、組成式:xLiNbO・(1-x)CoNbで表される固溶体からなる酸化物において、CoNbのa軸方向及びc軸方向の格子定数はそれぞれ、5.169Å、14.127Åであるが、LiNbOが固溶してxが大きくなるとa軸方向の格子定数は連続的に収縮してx=0.4では5.160Å程度になり、一方、c軸方向の格子定数は連続的に膨張してx=0.4では14.164Å程度になった。
なお、実施例1で示すように、組成式:xLiNbO・(1-x)CoNbで表される固溶体からなる酸化物がxの広い範囲で固溶体が形成されるのは、LiNbO及びCoNbが同じコランダム関連構造を有するために固溶しやすいためと考えられる。
【0028】
本実施形態に係る固溶体からなる酸化物は、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)において、M1及びM2がNb又はTaのいずれかであってもよい。また、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)において、AがCo又はMgのいずれかであってもよい。
なお、実施例1で示すように、組成式:xLiNbO・(1-x)CoNbで表される固溶体からなる酸化物が非常に高いイオン伝導率を示すことがわかった。イオン伝導という観点において、伝導イオンのイオン性が高く、一方で骨格を形成するようなカチオンのイオン性は低い(すなわち、共有結合性が強い)方が望ましいと考えられる。そのため、AとしてはCoと同様に2価のカチオンについて同様な効果が期待できる。また、M1及びM2としてはNbと同様に5価のカチオンについて同様な効果が期待できる。特に、Taのイオン半径はNbと同程度であり、その観点でもNbと似た傾向は示すことが予想され、実際、実施例2において、組成式:xLiTaO・(1-x)CoTaで表され、コランダム関連構造を有する酸化物では高いイオン伝導率を示した。
【0029】
<用途>
本実施形態に係る固溶体からなる酸化物は、全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質層、電極活物質の界面保護層、伝導度の温度変化を利用するセンサー、電場印加下での分極を記憶させるメモリ素子において固体電解質として利用することができる。また、本実施形態に係る固溶体からなる酸化物は、イオン伝導率が低い場合であっても、各種電極や固体電解質との接合性(界面の安定性)を保つためのベース材料として活用できる。
【0030】
(固体電解質)
本実施形態に係る固体電解質は、コランダム関連構造を有するLi(M1)Oとコランダム関連構造を有するA(M2)とを用いて、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)(式中、0<x<1、AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1及びM2はそれぞれ、Nb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)で表され、コランダム関連構造を有する。
【0031】
本実施形態に係る固体電解質は、固溶体であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る固体電解質は、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)において、M1及びM2がNb又はTaのいずれかであってもよい。また、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)において、AがCo又はMgのいずれかであってもよい。
【0033】
本実施形態に係る固体電解質は、組成式:xLi(M1)O・(1-x)A(M2)において、xが0<x<0.8であってもよく、また、0<x<0.5であってもよい。
【0034】
本実施形態に係る固体電解質は、イオン伝導率が1×10-5[S/cm]以上であることが好ましく、1×10-4[S/cm]以上であることがより好ましく、1×10-3[S/cm]以上であることがさらに好ましい。
【0035】
<用途>
本実施形態に係る固体電解質は全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質層の材料として利用できる。
その他、仮に本実施形態に係る固体電解質が低いイオン伝導率である場合であっても種々活用が可能である。例えば、組成でイオン伝導率を連続的に変化させられることができるため、x組成が異なる領域を形成することによって、イオン伝導パス内にバルブ機能を持たせた領域を形成できる。また、バルブ機能を付加することで、イオン伝導経路の制限・組成が異なる領域からなる分極の記憶・電気化学反応のシャッター等に活用可能である。また、焼成工程以外に、外因的にLiイオンを打ち込むことで低イオン伝導組成から高イオン伝導組成へ変化させることも可能であるため、本実施形態に係る固体電解質を、高イオン伝導組成の固体電解質を得るためのベース材料として活用できる。
【0036】
(固体電解質の製造方法)
本実施形態に係る固体電解質の製造方法は、コランダム関連構造を有するLi(M1)O(M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と、コランダム関連構造を有するA(M2)(AはCo、Mg、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種であり、M1はNb、Ta及びVからなる群から選択される少なくとも一種である)と用いて、xLi(M1)O・(1-x)A(M2)の組成式で表され、コランダム関連構造を有する固体電解質を製造する。
【0037】
本実施形態に係る固体電解質の製造方法は、前駆体としてLi(M1)O及びA(M2)をそれぞれ合成する前駆体合成工程と、Li(M1)O及びA(M2)の前駆体を所定の比率で湿式混合した後、焼成する焼成工程と、を有してもよい。
予め前駆体を合成しておくことは必須ではないが、予め母相とする構造を作っておくことで所望の固溶体形成が進行しやすいことが期待できる。
【0038】
<前駆体合成工程>
Li(M1)Oの前駆体は、焼成、焼結などの加熱によりLi(M1)Oになる材料のことである。A(M2)の前駆体は、焼成、焼結などの加熱によりA(M2)になる材料のことである。
【0039】
Li(M1)Oの前駆体及びA(M2)の前駆体の合成は、固相反応法、ゾルゲル法、共沈法など公知の方法を用いることできる。
Li(M1)Oの前駆体の合成のために固相反応法を用いる場合、原料としては、リチウム化合物塩と金属M1の酸化物の組み合わせなどを用いることができる。例えば、LiNbOの前駆体の作製のためには、LiCOとNbの組み合わせを用いることができる。
(M2)の前駆体の合成のために固相反応法を用いる場合、原料としては、金属Aの酸化物と金属M2の酸化物の組み合わせなどを用いることができる。例えば、CoNbの前駆体の作製のためには、CoとNbの組み合わせを用いることができる。前駆体合成工程で固相反応法を用いる場合、焼成温度は反応温度以上、分解温度以下であればよく、また、焼成時間は通常、1~2時間程度かければ十分に反応しており、それ以降は大きな変化はない。
実施例で示すCoNbについては、焼成温度を1000℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。また、実施例で示すLiNbOについては、焼成温度を900℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。
【0040】
<焼成工程>
前駆体合成工程で得られたLi(M1)Oの前駆体及びA(M2)の前駆体は、任意の割合で混合して焼成し、xLi(M1)O・(1-x)A(M2)の組成式で表され、コランダム関連構造を有する固体電解質を得る。
製造する固体電解質の種類にもよるが、焼成温度は通常、1200℃程度とし、また、焼成時間は通常、2時間程度とするが、これに限定されない。焼成温度は例えば、1100℃~1300℃程度とすることができる。また、焼成時間は例えば、1~2時間程度とすることもできるし、2時間以上とすることもできるが、2時間以降は大きな変化がないのが通常である。
【0041】
(全固体リチウムイオン二次電池)
本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池は、正極層と、負極層と、正極層及び前記負極層との間に配置する、本発明に係る固体電解質を含む固体電解質層と、を備える。
【0042】
図1は、本発明の固体電解質を固体電解質層に用いた全固体リチウムイオン二次電池の断面模式図である。
図1に示す全固体リチウムイオン二次電池10は、正極集電体層1Aと正極活物質層1Bとを含む正極層1と、負極集電体層2Aと負極活物質層2Bとを含む負極層2と、本発明に係る固体電解質を含む固体電解質層3と、を備え、正極層1及び負極層2が固体電解質を含む固体電解質層3を介して交互に積層された構成を有する。
各正極層1はそれぞれ第1外部端子6に接続され、各負極層2はそれぞれ第2外部端子7に接続されている。
正極層及び負極層の積層数に特に制限はない。図1においては正極層及び負極層のそれぞれ二層づつ描いている。
【0043】
<全固体リチウムイオン二次電池の用途>
全固体リチウムイオン二次電池の用途としては、それを駆動用電源や電力貯蔵源などとして用いることが可能な機械、装置などあるいはそれを組み合わせたシステムなどであれば、特に制限はない。
【0044】
(電子機器)
全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える電子機器の例としては、スマートフォン、ノートパソコンなどが挙げられる。
【0045】
図2に、スマートフォンを例とした電子機器の主な機能のブロック図を示す。
図2に主な機能のブロック図を示すスマートフォン20は、本発明の全固体リチウムイオン二次電池を少なくとも1個有するバッテリ21と、制御部22と、表示部23と、操作部24と、通信部25と、アンテナ26とを備える。
【0046】
制御部22はCPU及びメモリとで構成され、実装される各種デバイスの制御を行う。
表示部23は、操作メニュー等の各種情報を表示するものである 操作部24は、スマートフォンの操作を行う入力インターフェースであり、操作部24からの入力は制御部22で処理され、スマートフォンとしての動作が行われる。通信部25は、アンテナ26を介して無線通信を基地局との間で行うものである。
【0047】
(車両)
全固体リチウムイオン二次電池を駆動用電源として備える車両の例としては、電気自動車などが挙げられる。
【0048】
図3に、電気自動車を例とした車両の駆動システムの概略平面図を示す。
電気自動車30は、本発明の全固体リチウムイオン二次電池を少なくとも1個有する電池モジュール31と、インバータ32と、モーター33と、制御部34とを備える。
電気自動車30は、電池モジュール31から、インバータ32を介して、モーター33に電力が供給されて駆動される。減速時にモーター33により回生された電力は電池モジュール31に貯蔵される。制御部34は、アクセルペダルが操作されたときに車輪35の回転方向と同じ方向にトルクを出力するようインバータ32を制御し、ブレーキペダルが操作されたときに車輪の回転方向と反対方向にトルクを出力するようにインバータ32を制御する。
【0049】
図3では電気自動車に適用される例を挙げたが、走行用のモーターとエンジンを備えるハイブリッド車両における走行用の電力を蓄電する蓄電池、あるいは補機駆動用の電力を蓄電する蓄電池にも適用することができる。エンジン車両において補機駆動用の電力を蓄電する蓄電池にも適用することができる。この場合、補機駆動用の電力を蓄電する蓄電池は、エンジンに連結されたオルタネータの発電する電力によって充電される。
【実施例0050】
(実施例1)
LiCO、Nb、Coのそれぞれの粉末を出発原料に用いて、前駆体としてのLiNbOとCoNbを固相反応法により合成した。すなわち、仕込み組成でLiNbOになるようにかつCoNbになるように湿式混合し、焼成を行って、前駆体としてのLiNbOとCoNbを合成した。CoNbについては、焼成温度を1000℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。また、LiNbOについては、焼成温度を900℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。そのLiNbOの前駆体とCoNbの前駆体をそれぞれ十分粉砕した後、各粉末を任意の比率xLiNbO・(1-x)CoNbにて混合した。10mmφの金型を用いて一軸加圧成形した後、1000℃、2時間の条件で焼成した。粉末X線回折により作製したサンプルの結晶構造を評価した。スパッタリングにより作製したサンプルにAu電極を形成し、交流インピーダンス測定法によりイオン伝導率を評価した。
【0051】
<結晶構造>
図4に、x=0、0.1、0.2、0.4、0.5、0.8のときのそれぞれのXRDパターンを示す。それらXRDパターンの下に、LiNbO及びCoNbのそれぞれのXRDパターンを示している。
【0052】
図5(a)及び(b)にそれぞれ、x=0.4、x=0.5のサンプルのXRDパターンについて、2θが31°~34°の範囲について拡大したグラフを示す。図5(b)に示すx=0.5のサンプルのXRDパターンにおいて、図5(a)に示すx=0.4のサンプルのXRDパターンにおいては出ていなかったLiNbOに帰属されるピークが2θ=32.7°近傍(横軸中の点線で示す)に現れている。
また、図4において、x=0.8のサンプルのXRDパターンにおいては、2θ=32.7°近傍のLiNbOに帰属されるピークはより強く現れている。
x=0.5、x=0.8のサンプルでは、XRDパターンにおいて、CoNbに帰属されるピークとLiNbOに帰属されるピークとが共に現れており、CoNbの結晶とLiNbOの結晶とが混在していることがわかった。
これに対して、x=0.1、x=0.2、x=0.4のサンプルでは、XRDパターンにおいて、CoNbに帰属されるピークのみが現れており、CoNbの結晶にLiNbOが固溶していることがわかった。
【0053】
<イオン伝導率>
交流インピーダンス測定法により、得られたサンプルのイオン伝導率を室温で評価した。交流インピーダンス測定は4294Aプレシジョン・インピーダンス・アナライザ(キーサイト・テクノロジー社製)を用い、測定条件は、印加電圧を500mV、測定周波数域を40Hz~110MHzとした。その結果を図6に示す。
図6において、横軸はxLiNbO・(1-x)CoNbにおけるxであり、縦軸はイオン伝導率である。
【0054】
図6から、xLiNbO・(1-x)CoNbにおいて、0<x≦0.48のときにイオン伝導体が1×10-5[S/cm]以上となることがわかった。
また、0<x≦0.3のときにイオン伝導体が1×10-4[S/cm]以上となることがわかった。
また、0<x≦0.2のときにイオン伝導体が7×10-4[S/cm]以上となることがわかった。
【0055】
図6から、x=0.05のときにイオン伝導率が最大であり、1.6×10-3[S/cm]であった。酸化物系Liイオン伝導体として既に報告のあるペロブスカイト型構造の材料の(Li,La)TiOのイオン伝導体は1×10-3[S/cm]であり(非特許文献2)、また、ガーネット型構造の材料LiLaZr12のイオン伝導率は4.7×10-4[S/cm]であった(非特許文献1)。
このように、本発明のコランダム関連構造の組成式xLiNbO・(1-x)CoNbで表される固溶体からなる酸化物系Liイオン伝導体では、酸化物系Liイオン伝導体として既に報告のあるペロブスカイト型構造の材料及びガーネット型構造の材料よりも高いイオン伝導率が得られた。
本発明は、固体電解質としての報告がこれまでなかったコランダム関連構造の材料に新たに、固体電解質としての可能性を開くものである。また、本発明は、新たな固体電解質探索方法として、コランダム関連構造を有する酸化物同士の固相反応によって作製した、新たなコランダム関連構造の固溶体を探索することを提案するものである。
【0056】
(実施例2)
実施例2は、コランダム関連構造を有するLiTaO及びCoTaから得られるものであって、組成式:xLiTaO・(1-x)CoTaで表され、コランダム関連構造を有する酸化物である。
LiCO、Ta、Coのそれぞれの粉末を出発原料に用いて、前駆体としてLiTaOとCoTaを固相反応法により合成した。すなわち、仕込み組成でLiTaOになるようにかつCoTaになるように湿式混合し、焼成を行って、前駆体としてのLiTaOとCoTaを合成した。CoTaについては、焼成温度を1000℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。また、LiTaOについては、焼成温度を900℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。そのLiTaOの前駆体とCoTaの前駆体をそれぞれ十分粉砕した後、各粉末を任意の比率xLiTaO・(1-x)CoTaにて混合した。10mmφの金型を用いて一軸加圧成形した後、1200℃、2時間の条件で焼成した。粉末X線回折により作製したサンプルの結晶構造を評価した。スパッタリングにより作製したサンプルにAu電極を形成し、交流インピーダンス測定法によりイオン伝導率を評価した。
【0057】
<結晶構造>
図7に、x=0、0.05、0.1、0.2、0.3のときのそれぞれのXRDパターンを示す。それらXRDパターンの下に、LiTaO及びCoTaのそれぞれのXRDパターンを示している。
【0058】
図8(a)及び(b)にそれぞれ、x=0.2、x=0.1のサンプルのXRDパターンについて、2θが31°~34°の範囲について拡大したグラフを示す。図8(a)に示すx=0.2のサンプルのXRDパターンにおいて、図8(a)に示すx=0.1のサンプルのXRDパターンにおいては出ていなかったLiTaOに帰属されるピークが2θ=32.7°近傍(横軸中の点線で示す)に現れている。
また、図7において、x=0.3のサンプルのXRDパターンにおいては、2θ=32.7°近傍のLiTaOに帰属されるピークはより強く現れている。
x=0.2、x=0.3のサンプルでは、XRDパターンにおいて、CoTaに帰属されるピークとLiTaOに帰属されるピークとが共に現れており、CoTaの結晶とLiTaOの結晶とが混在していることがわかった。
これに対して、x=0.05、x=0.1のサンプルでは、XRDパターンにおいて、CoTaに帰属されるピークのみが現れており、CoTaの結晶にLiTaOが固溶していることがわかった。
【0059】
<イオン伝導率>
実施例2のサンプルのイオン伝導率について実施例1と同様に評価した結果を図9に示す。図9において、横軸はxLiTaO・(1-x)CoTaにおけるxであり、縦軸はイオン伝導率である。
【0060】
図9から、xLiTaO・(1-x)CoTaにおいて、0<x≦0.3のときにイオン伝導体が1×10-4[S/cm]以上となることがわかった。また、0.05≦x≦0.1のときにはイオン伝導体が5×10-4[S/cm]以上となることがわかった。x=0.05のときにイオン伝導率が最大であり、5.5×10-4[S/cm]であった。
【0061】
(実施例3)
実施例3は、コランダム関連構造を有するLiTaO及びMgNbから得られるものであって、組成式:xLiNbO・(1-x)MgNbで表され、コランダム関連構造を有する酸化物である。
LiCO、Nb、Mgのそれぞれの粉末を出発原料に用いて、前駆体としてのLiNbOとMgNbを固相反応法により合成した。すなわち、仕込み組成でLiNbOになるようにかつMgNbになるように湿式混合し、焼成を行って、前駆体としてのLiNbOとMgNbを合成した。MgNbについては、焼成温度を1100℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。また、LiNbOについては、焼成温度を900℃とし、焼成時間を6時間として前駆体を作製した。そのLiNbOの前駆体とMgNbの前駆体をそれぞれ十分粉砕した後、各粉末を任意の比率xLiNbO・(1-x)MgNbにて混合した。10mmφの金型を用いて一軸加圧成形した後、1100℃、2時間の条件で焼成した。粉末X線回折により作製したサンプルの結晶構造を評価した。スパッタリングにより作製したサンプルにAu電極を形成し、交流インピーダンス測定法によりイオン伝導率を評価した。
【0062】
<結晶構造>
MgNb以外に、MgNb15の相の存在が確認されたものの、x=0.05、0.1、0.15、0.2のサンプルにおいて、MgNbの結晶にLiNbOが固溶していることが確認できた。
【0063】
<イオン伝導率>
x=0.1のサンプルでイオン伝導率は7.2×10-9[S/cm]であった。
【符号の説明】
【0064】
1 正極層
2 負極層
3 固体電解質層
10 全固体リチウムイオン二次電池
20 スマートフォン(電子機器)
21 バッテリ
30 電気自動車(車両)
31 電池モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9