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特開2023-63689故障判定システム、故障判定プログラム及び故障判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063689
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】故障判定システム、故障判定プログラム及び故障判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20230428BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H02S50/00
G05B23/02 302W
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173656
(22)【出願日】2021-10-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102739
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514257022
【氏名又は名称】NTTビジネスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 海人
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福原 進也
(72)【発明者】
【氏名】大澤 理絵
【テーマコード(参考)】
3C223
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB03
3C223FF04
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH02
5F151KA08
5F251KA08
(57)【要約】
【課題】太陽光発電サイトにおける故障を好適に判定する。
【解決手段】故障判定システムは、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成部と、モデル生成部によって生成された学習済モデルを用いて故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定部と、複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出部とを備え、モデル生成部は、類似データ抽出部によって出力された類似データを用いて学習済モデルを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電サイトにおける故障を判定する故障判定システムであって、
故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部によって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定部と、
複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出部と
を備え、
前記モデル生成部は、
前記類似データ抽出部によって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定システム。
【請求項2】
前記類似データ抽出部によって出力された前記類似データから一部のデータを除外するデータ除外部
を更に備え、
前記モデル生成部は、
前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の故障判定システム。
【請求項3】
前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データに基づいて故障時における発電データを想定した擬似データを作成する擬似データ作成部
を更に備え、
前記モデル生成部は、
前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データと、前記擬似データ作成部によって作成された前記擬似データとを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする請求項2に記載の故障判定システム。
【請求項4】
前記故障判定部は、
前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果として、第1の期間を判定期間の単位とした第1判定結果と、前記第1の期間よりも長い第2の期間を判定期間の単位とした第2判定結果とを出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の故障判定システム。
【請求項5】
太陽光発電サイトにおける故障を判定するための故障判定プログラムであって、
コンピュータに、
故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成手順と、
前記モデル生成手順によって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定手順と、
複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出手順と
を実行させ、
前記モデル生成手順は、
前記類似データ抽出手順によって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定プログラム。
【請求項6】
太陽光発電サイトにおける故障を判定する故障判定方法であって、
故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成ステップと、
前記モデル生成ステップによって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定ステップと、
複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出ステップと
を含み、
前記モデル生成ステップは、
前記類似データ抽出ステップによって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障判定システム、故障判定プログラム及び故障判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電サイトに日射計や温度計等を設置し、日射計や温度計等の計測データに基づいて、太陽光発電パネルの異常を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-47030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、夫々の太陽光発電サイトに日射計や温度計等を設置しなければならず、また、計測データが不足しているため、新規に建設された太陽光発電サイトについては異常の検出が難しいといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、太陽光発電サイトにおける故障を好適に判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、太陽光発電サイトにおける故障を判定する故障判定システムであって、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成部と、前記モデル生成部によって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定部と、複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出部とを備え、前記モデル生成部は、前記類似データ抽出部によって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定システムである。
【0007】
また、本発明の他の態様は、太陽光発電サイトにおける故障を判定するための故障判定プログラムであって、コンピュータに、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成手順と、前記モデル生成手順によって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定手順と、複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出手順とを実行させ、前記モデル生成手順は、前記類似データ抽出手順によって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定プログラムである。
【0008】
また、本発明の他の態様は、太陽光発電サイトにおける故障を判定する故障判定方法であって、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データを入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデルを生成するモデル生成ステップと、前記モデル生成ステップによって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定ステップと、複数の太陽光発電サイトの発電実績データのなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出ステップとを含み、前記モデル生成ステップは、前記類似データ抽出ステップによって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る故障判定システム1の構成を説明する説明図である。
図2】モデル生成装置10の機能等を説明する説明図である。
図3】蓄積済データについて説明する説明図である。
図4】クレンジング・正規化部11による処理後のデータについて説明する説明図である。
図5】類似データ抽出部12の確率分布推定処理について説明する説明図である。
図6】類似データ抽出部12の発電量データ間距離推定処理について説明する説明図である。
図7】類似データについて説明する説明図である。
図8】対象外判定モデル推定部13の処理について説明する説明図である。
図9】対象外データ除外部14の除外判定スコア算出処理について説明する説明図である。
図10】故障判定モデル300について説明する説明図である。
図11】故障判定装置20の機能等を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(故障判定システム1の構成)
図1は、実施形態に係る故障判定システム1の構成を説明する説明図である。故障判定システム1は、太陽光発電サイト(以下、サイト)における故障(例えば、太陽光発電パネル、若しくは、太陽光発電パネルを構成する発電セルにおける故障)について判定するシステムである。故障判定システム1は、図1に示すように、モデル生成装置10と故障判定装置20とを含む。
【0011】
モデル生成装置10は、複数のサイトの発電実績データ(以下、「蓄積済データ」とも称する)に基づいて、故障判定装置20における故障判定に用いられる対象外判定モデル200(後述)、故障判定モデル300(後述)及び最大値補正パラメータ400(後述)を出力する。故障判定装置20は、夫々のサイトの故障判定用の判定対象データと、モデル生成装置10から出力された対象外判定モデル200、故障判定モデル300及び最大値補正パラメータ400とを用いて、夫々のサイトについて故障判定結果を出力する。
【0012】
故障判定システム1では、対象外判定モデル200、故障判定モデル300及び最大値補正パラメータ400は、サイト別年月別に作成される。
【0013】
つまり、モデル生成装置10は、サイト別年月別に、対象外判定モデル200、故障判定モデル300及び最大値補正パラメータ400を出力する。例えば、モデル生成装置10は、蓄積済データ(サイトA、サイトB、サイトC、…、発電実績データを含む)に基づいて、サイトAの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200、サイトAの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300及びサイトAの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400を出力する。また例えば、モデル生成装置10は、蓄積済データに基づいて、サイトBの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200、サイトBの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300及びサイトBの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400を出力する。
【0014】
また、故障判定装置20は、サイト別年月別に、故障判定結果を出力する。例えば、故障判定装置20は、サイトAの2021年9月の故障判定用の判定対象データ(サイトA(2021年8月)の発電実績データ)と、サイトAの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200と、サイトAの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300と、サイトAの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400とを用いて、サイトAの2021年9月の故障判定結果を出力する。また例えば、故障判定装置20は、サイトBの2021年9月の故障判定用の判定対象データ(サイトB(2021年8月)の発電実績データ)と、サイトBの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200と、サイトBの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300と、サイトBの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400とを用いて、サイトBの2021年9月の故障判定結果を出力する。
【0015】
なお、図1に示した故障判定システム1の機器構成は一例である。例えば、モデル生成装置10は、図1に示したように1台の装置として構成されてもよいし、2台以上の装置から構成されていてもよい。同様に、故障判定装置20は、図1に示したように1台の装置として構成されてもよいし、2台以上の装置から構成されていてもよい。あるいは、モデル生成装置10と故障判定装置20とは、同一の装置であってもよい。つまり、故障判定システム1は、1台以上の装置(例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ等)から構成されていればよい。なお、以下では、故障判定システム1は、図1に示したように、1台のモデル生成装置10と他の1台の故障判定装置20とから構成されているものとして説明する。また、モデル生成装置10による一連の処理を学習フェーズと称し、故障判定装置20による一連の処理を判定フェーズと称する場合がある。
【0016】
(学習フェーズ)
図2は、モデル生成装置10の機能等を説明する説明図である。モデル生成装置10は、図2に示すように、クレンジング・正規化部11、類似データ抽出部12、対象外判定モデル推定部13、対象外データ除外部14、疑似故障データ生成部15、故障判定モデル生成部16、最大値補正パラメータ推定部17を備える。なお、説明の便宜上、図2では、上記各部(クレンジング・正規化部11、類似データ抽出部12等)に加え、入出力されるもの(類似データ、対象外判定モデル200等)も示している。なお、図2では、パーソナルコンピュータが備える、一般的な構成(表示部、入出力部、記憶部、通信部等)は省略している。
【0017】
クレンジング・正規化部11は、クレンジング処理と正規化処理とを実行する。クレンジング処理は、蓄積済データ(サイト別年月別の複数の発電実績データの夫々)から、学習済モデル(故障判定モデル300)の生成に不要なデータや正確な学習済モデルの生成の妨げになる異常なデータを除去(クレンジング)する処理である。不要なデータとは、学習済モデルの生成において利用しない部分(時間)のデータである。学習済モデルの生成において利用する部分(開始時間、終了時間)は分析者(操作者)がデータの傾向に合わせて設定してもよい。異常なデータとは、例えば、一定期間に亘って発電量が変化していない部分のデータである。上記部分を特定するための閾値(例えば、一定期間の長さに係る閾値)は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。異常なデータを含むサイト別年月別の発電実績データは、全体として除去される(サイト別年月別の単位で除去される)。
【0018】
正規化処理は、サイト別年月別の複数の発電実績データの夫々について、発電量の最大値を1に正規化(変換)する処理である。サイト毎にパネル容量が異なるため、パネル容量の違いによる影響を受けないように、正規化処理によって、スケーリング(発電量の最大値を揃えるように補正)する。具体的には、正規化処理は、サイト別年月別の発電実績データの夫々について(つまり各サイトの月毎)に、月内の各日の発電量を当該月の発電量の最大値で割る処理である。
【0019】
図3は、蓄積済データについて説明する説明図である。図3(A)は、蓄積済データ(サイトAの発電実績データ、サイトBの発電実績データ、…)を模式的に示したものである。図3(A)では、サイトA(2021年5月)の発電実績データ、サイトA(2021年6月)の発電実績データ、…といった具合に蓄積済データをサイト別年月別に示している(図4(A)等においても同様である)。夫々の発電実績データは、月内各日の30分単位の発電量を含む。例えば、サイトA(2021年5月)の発電実績データは、図3(B)に示すように、2021年5月1日~2021年5月31日の31日間の30分単位の発電量を含む。なお、図3(B)では、説明の便宜上、発電量を模式的(棒グラフ)で示している(図4(B)等においても同様である)。
【0020】
図4は、クレンジング・正規化部11による処理後のデータ(「蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)」)について説明する説明図である。図4(A)は、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を示している。図4(A)に示すように、クレンジング・正規化部11による処理後には、クレンジング処理によって一部の発電実績データが除去され、クレンジング処理によって除去されなかった発電実績データについて月内各日の設定時間(7時~18時)内の30分単位の発電量が月の最大値が1になるように補正されている。例えば、図4(A)に示した例では、サイトB(2021年6月)の発電実績データが除去され、除去されなかった発電実績データについて月内各日の設定時間(7時~18時)内の30分単位の発電量が月の最大値が1になるように補正されている。図4(B)は、サイトA(2021年5月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を示しているが、2021年5月内各日の設定時間内の30分単位の発電量が月の最大値(2021年5月30日の14時の発電量)が1となるように補正されている。
【0021】
類似データ抽出部12は、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)のなかから故障判定対象のサイトのデータと類似しているデータを抽出する。例えば、故障判定対象のサイトの発電実績データが不足する場合(例えば、新設サイトを故障判定対象のサイトとする場合)であっても、他サイトの発電実績データを用いて合理的に故障判定を実施するために、類似データ抽出部12では、故障判定対象のサイトと発電量の変化傾向が類似している他サイトの発電実績データを抽出する。長期間にわたって発電実績データを取得し続けたサイトでは、学習済データ作成用のサンプルとして過去のデータが十分に存在するため故障判定は可能であるが、設置してから日の浅いサイトでは、過去データが十分に存在しないため故障判定は基本的には困難である。類似データ抽出部12は、設置してから日の浅いサイトの故障判定を合理的に実施するために、設置してから日の浅いサイトと似た特徴を有する他サイトのデータを設置してから日の浅いサイトのサンプルとして抽出する。
【0022】
類似データ抽出部12は、確率分布推定処理と発電量データ間距離推定処理と類似データ作成処理とを実行する。確率分布推定処理は、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)の月内各日の時間別の発電量の確率分布を推定する処理である。具体的には、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)から日数分の時間毎(30分単位)の発電量を切り出し、切り出された発電量に対してカーネル密度を実施する。例えば、ガウシアンカーネルを利用してもよい。また、バンド幅は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。
【0023】
図5は、類似データ抽出部12の確率分布推定処理について説明する説明図である。図5(A)は、類似データ抽出部12の確率分布推定処理の処理後のデータを示している。図5(A)に示すように、処理後には、月内の7~18時の30分単位の発電量(月の最大値が1になるように補正済)の確率分布が推定されている。図5(B)は、サイトA(2021年5月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)について推定された30分単位の夫々の発電量の確率分布を示している。
【0024】
発電量データ間距離推定処理は、ある蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)と、他の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)との距離を推定する処理である。具体的には、ある蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)Aについて推定された時間別(t1、t2、…)の確率分布(At1、At2、…)と、他の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)Bについて推定された時間別(t1、t2、…)の確率分布(Bt1、Bt2、…)とにおける、同時間同士の確率分布から時間毎のカルバックライブラー擬距離(At1とBt1のカルバックライブラー擬距離、At2とBt2のカルバックライブラー擬距離、…)を推定し、時間毎のカルバックライブラー擬距離のうち最も遠い(大きい)値を、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)Aと他の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)Bとの距離と定義する。
【0025】
図6は、類似データ抽出部12の発電量データ間距離推定処理について説明する説明図である。図6(A)は、サイトX(〇年△月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)について推定された7時の確率分布と、サイトY(◎年□月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)について推定された7時の確率分布とのカルバックライブラー擬距離(K1)を示している。図6(B)は、サイトX(〇年△月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)とサイトY(◎年□月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)との距離を示している。なお、X=Yかつ〇=◎かつ△=□でなければ、X=YであってもよいしX≠Yであってもよいし、〇=◎であってもよいし〇≠◎であってもよいし、△=□であってもよいし△≠□であってもよい。
【0026】
類似データ作成処理は、蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を距離に基づいて(距離が近い順に)、集積する処理である。基準となる蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ。基準データ(後述))を含む、集積された蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を類似データとして定義する。何個のデータを集積するかは分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。なお、類似データは、サイト別年月別に、作成(集積)される。例えば、上述したように、サイトAの2021年9月の故障判定に関連し、サイトAの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200、サイトAの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300及びサイトAの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400が出力され、サイトBの2021年9月の故障判定に関連し、サイトBの2021年9月の故障判定用の対象外判定モデル200、サイトBの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300及びサイトBの2021年9月の故障判定用の最大値補正パラメータ400が出力されるが、同様に、類似データ作成処理において、サイトAの2021年9月の故障判定に関連し、サイトAの2021年9月の故障判定用の類似データが作成され、サイトBの2021年9月の故障判定に関連し、サイトBの2021年9月の故障判定用の類似データが作成される。
【0027】
なお、あるサイトのある月の故障判定(月単位の故障判定)においては、同該サイトの前月の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が基準データとなる。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定においては、サイトAの2021年8月の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が基準データとなり、サイトBの2021年9月の故障判定においては、サイトBの2021年8月の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が基準データとなる。
【0028】
図7は、類似データについて説明する説明図である。なお、類似データ作成処理において、サイトAの2021年9月の故障判定に関連し(つまりサイトAの2021年8月の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が基準データである場合において)、基準データであるサイトA(2021年8月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)、サイトB(2021年8月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)、サイトA(2020年8月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)、サイトD(2020年7月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が類似データとして定義されたものとする。上記の場合、類似データは、図7に示したように、サイトA(2021年8月)、サイトB(2021年8月)、サイトA(2020年8月)、サイトD(2020年7月)の夫々の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)から構成される。
【0029】
対象外判定モデル推定部13は、類似データに基づいて対象外判定モデル200を出力する。対象外判定モデル200は、当該モデル生成装置10の後段(対象外データ除外部14(後述))や、故障判定装置20(対象外データ除外部22(後述))において用いられる。サイトの異常を高精度に判定するために、発電セルの故障によるわずかな変動を認識する必要があり、ノイズとなる季節変動や天候の影響を類似データから除外することが極めて重要である。パネル故障判定の難しさは、パネルの発電量が天候によって大きく変動し、故障による発電量低下との区別を難しくしているためである。雨天や曇天など発電量の少ない発電データを、学習用非故障データ(後述)として学習してしまうと、故障判定能力が低下する虞がある。そこで一定期間のなかで計測した発電電力の最大値に近いデータを選択するなど、降雨や曇天時の発電データを取り除く処理を行う。またPCS(パワーコンディショナ)の過積載によって発電量が一定時間変化しないなどの場合も考えられる。これらデータは故障判定モデル300(学習済モデル)の作成には適さないため除外する必要がある。
【0030】
対象外判定モデル推定部13は、発電量の確率分布に基づいて、上述したような故障判定モデル300の作成に適さないデータを類似データから除外するためのモデルとして対象外判定モデル200を作成する。対象外判定モデル推定部13によって生成される対象外判定モデル200は、対象外データ除外部14(後述)や対象外データ除外部22(後述)において利用される。
【0031】
なお、対象外判定モデル推定部13による対象外判定モデル200の作成や、対象外データ除外部14(後述)による対象外判定モデル200の利用は、サイトに日射量計が設置されていないことを前提にしており、日射量計が設置されている場合には、例えば、日射量が各月、時間ごとに晴天時の日射量を想定した閾値を用いて、日射量が閾値以下の場合は晴天でないと判断し、故障判定モデル300の作成に適さないデータを類似データから除外してもよい。
【0032】
対象外判定モデル推定部13は、確率分布推定処理と対象外判定モデル推定処理とを実行する。対象外判定モデル推定部13の確率分布推定処理は、類似データとして定義された蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)の類似データ内各日の時間別の発電量の確率分布を推定する処理である。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定に関連して定義された類似データが、サイトA(2021年8月)、サイトB(2021年8月)、サイトA(2020年8月)、サイトD(2020年7月)の夫々の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)である場合、確率分布推定処理では、サイトAの2021年8月1日~同年8月31日、サイトBの2021年8月1日~同年8月31日、サイトAの2020年8月1日~同年8月31日、サイトDの2020年7月1日~同年7月31日の全94日における時間別(7時、7時半、…、17時半)の発電量の確率分布を推定する。
【0033】
また、確率分布推定処理では、確率分布の利用候補を準備する。利用候補として準備する確率分布は、例えば、(1)ガンマ分布(設定値:なし)、(2)混合正規分布(設定値:混合数)、(3)混合ガンマ分布(設定値:混合数)であってもよい。利用候補や設定値の数や種類は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。つまり、利用候補として準備する確率分布は、上記(1)~(3)に限定しない。また、混合正規分布や混合ガンマ分布等の設定値を含む確率分布を利用候補として準備する場合、設定値の数や種類も適宜設定してもよい。
【0034】
確率分布推定処理では、準備した利用候補毎に、入力されたデータに基づいてパラメータを推定し、推定された確率分布の利用候補に対して情報量規準AICを計算し、最も当て嵌りがよいものを推定(採用)する。
【0035】
対象外判定モデル推定処理は、前段の確率分布推定処理の結果に基づいて対象外判定モデル200を推定(作成)する処理である。具体的には、対象外判定モデル推定処理は、ある類似データに基づいて確率分布推定処理によって推定された時間別の発電量の確率分布の集合を当該類似データ用の対象外判定モデル200として推定する。
【0036】
図8は、対象外判定モデル推定部13の処理について説明する説明図である。対象外判定モデル推定部13では、図8に示したように、確率分布推定処理として、類似データの時間別(7時、7時半、…、17時半)の発電量の確率分布を推定し、対象外判定モデル推定処理として、上記時間別の発電量の確率分布の集合を当該類似データ用の対象外判定モデル200として推定する。なお、図8に示した例では、例えば、類似データ(7時)の確率分布としてガンマ分布が推定され、類似データ(7時半)の確率分布として混合正規分布(混合数2)が推定され、…、類似データ(17時半)の確率分布として混合ガンマ分布(混合数2)が推定されている。
【0037】
対象外判定モデル推定部13が生成した対象外判定モデル200は、当該モデル生成装置10(対象外データ除外部14)で利用されるほか、故障判定装置20(対象外データ除外部22(後述))で利用されるため外部に出力される。
【0038】
対象外データ除外部14は、対象外判定モデル200を用いて、故障判定モデル300の作成に適さないデータを類似データから除外する。対象外データ除外部14は、除外判定スコア算出処理と対象外データ除外処理とを実行する。除外判定スコア算出処理は、類似データとして定義された蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)の各日の各時間の発電量を、対象外判定モデル200の対応する時間の確率分布に当てはめることで夫々の尤度を算出し、夫々の日時のスコアとする処理である。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定に関連して定義された類似データが、サイトA(2021年8月)、サイトB(2021年8月)、サイトA(2020年8月)、サイトD(2020年7月)の夫々の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)である場合、除外判定スコア算出処理では、サイトAの2021年8月1日~同年8月31日、サイトBの2021年8月1日~同年8月31日、サイトAの2020年8月1日~同年8月31日、サイトDの2020年7月1日~同年7月31日の全94日における各時間(7時、7時半、…、17時半)の発電量を、対象外判定モデル200の対応する時間の確率分布に当てはめることで夫々の尤度を算出し、夫々の日時のスコアとする。
【0039】
対象外データ除外処理は、除外判定スコア算出処理にて算出した日時毎のスコア(尤度)を参照し、類似データからスコアの低い日にち分を除外する処理である。具体的には、対象外データ除外処理では、夫々の日にちに含まれる時間毎のスコアのうち最も小さい値を夫々の日にちのスコアとし、スコアが閾値を超えている日にちは除外せず、スコアが閾値を超えていない日にちは除外する。閾値は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。対象外データ除外処理の処理後の類似データ(除外しなかった日から構成される類似データ)は、「学習用非故障データ」として出力される。
【0040】
図9は、対象外データ除外部14について説明する説明図である。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定に関連して抽出された類似データが、サイトA(2021年8月)、サイトB(2021年8月)、サイトA(2020年8月)、サイトD(2020年7月)の夫々の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)である場合、対象外データ除外部14では、除外判定スコア算出処理として、図9(A)に示すように、夫々の日時のスコア(尤度)を算出する。また、対象外データ除外部14では、対象外データ除外処理として、図9(B)に示すように、夫々の日にちに含まれる時間毎のスコアのうち最も小さい値を夫々の日にちのスコアとし、スコアが閾値を超えている日にちは除外せず、スコアが閾値を超えていない日にちは除外し、図9(C)に示すように、除外しなかった日から構成される類似データを学習用非故障データとして出力する。
【0041】
疑似故障データ生成部15は、学習用非故障データから疑似的な故障データを作成する。一般に、学習済モデルの作成には、非故障時の発電実績データと故障時の発電実績データとを必要とするが、実際のサイトでは故障時の発電実績データが蓄積されているケースは稀である。そこで、疑似故障データ生成部15では、非故障時の発電実績データを用いて疑似的に故障時のデータを作成する。
【0042】
疑似故障データ生成部15は、疑似故障データ作成処理を実行する。疑似故障データ作成処理は、学習用非故障データの発電量を所定の割合で低下させて学習用疑似故障データを作成する処理である。判定対象としている部分故障では発電量の低下が継続的に発生するため、疑似故障データ作成処理では、非故障時のデータである学習用非故障データ内の発電量を一律低下させて学習用疑似故障データを作成する。低下率は、分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。なお、過積載が発生している場合、最大値のデータは低下させなくてもよい。
【0043】
疑似故障データ作成処理では、低下率が異なる複数の学習用疑似故障データを作成してもよい。つまり、学習用非故障データ内の発電量に夫々の低下率を乗算し、夫々の低下率に対応する学習用疑似故障データを作成してもよい。
【0044】
故障判定モデル生成部16は、学習用非故障データと学習用疑似故障データとを用いて学習済モデルである故障判定モデル300を生成する。故障判定モデル生成部16は、確率分布推定処理と故障判定モデル推定処理とを実行する。故障判定モデル生成部16の確率分布推定処理は、学習用非故障データ(又は学習用疑似故障データ)内各日の低下率別時間別の発電量の確率分布を推定する処理である。なお、前段の疑似故障データ生成部15(疑似故障データ作成処理)では、低下率10%の学習用疑似故障データ(学習用非故障データ内の発電量を一律10%低下させた学習用疑似故障データ)、低下率20%の学習用疑似故障データ(学習用非故障データ内の発電量を一律20%低下させた学習用疑似故障データ)、低下率30%の学習用疑似故障データ(学習用非故障データ内の発電量を一律30%低下させた学習用疑似故障データ)を作成したものとする。
【0045】
故障判定モデル生成部16の確率分布推定処理では、確率分布の利用候補(下記)に対する当て嵌め易さから、低下率毎の入力データの正負を入れ替え、最小値が0となるように変換する。低下率毎の入力データとは、学習用非故障データ及び学習用非故障データであり、具体的には、低下率0%の入力データ(学習用非故障データ)、低下率10%の入力データ(学習用非故障データ内の発電量を一律10%低下させた学習用疑似故障データ)、低下率20%の入力データ(学習用非故障データ内の発電量を一律20%低下させた学習用疑似故障データ)、低下率30%の入力データ(学習用非故障データ内の発電量を一律30%低下させた学習用疑似故障データ)である。
【0046】
また、故障判定モデル生成部16の確率分布推定処理では、確率分布の利用候補を準備する。利用候補として準備する確率分布は、例えば、(1)正規分布、(2)対数正規分布、(3)ガンマ分布であってもよい。利用候補の数や種類は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。つまり、利用候補として準備する確率分布は、上記(1)~(3)に限定しない。
【0047】
故障判定モデル生成部16の確率分布推定処理では、準備した利用候補毎に、変換後のデータに基づいてパラメータを推定し、推定された確率分布の利用候補に対して情報量規準AICを計算し、最も当て嵌りがよいものを推定(採用)する。
【0048】
故障判定モデル推定処理は、前段の確率分布推定処理の結果に基づいて故障判定モデル300を推定(作成)する処理である。具体的には、故障判定モデル推定処理は、低下率毎の夫々の入力データに基づいて確率分布推定処理によって推定された時間別の発電量の確率分布の集合を当該サイトの当該年月の故障判定用の故障判定モデル300として推定する。なお、故障判定モデル300に含まれる低下率毎の時間別の確率分布の集合を故障判定サブモデルと称する。換言すれば、故障判定モデル推定処理は、ある低下率の入力データに基づいて確率分布推定処理によって推定された時間別の発電量の確率分布の集合を当該サイトの当該年月の故障判定用の当該低下率に係る故障判定サブモデルとして推定し、低下率毎に夫々推定された故障判定サブモデルの集合を当該サイトの当該年月の故障判定用の故障判定モデル300と称してもよい。
【0049】
図10は、故障判定モデル300について説明する説明図である。故障判定モデル生成部16は、例えば、図10に示したような、サイトA(2021年9月)用の故障判定モデル300を生成する。図10に示すように、故障判定モデル300は、低下率毎の故障判定サブモデルを含み、夫々の故障判定サブモデルは、各時間の発電量の確率分布を含む。
【0050】
故障判定モデル生成部16が生成した故障判定モデル300は、故障判定装置20(週単位故障判定部23(後述))で利用されるため外部に出力される。
【0051】
最大値補正パラメータ推定部17は、判定フェーズにおいて利用されるパラメータ(最大値補正パラメータ400)を推定する。最大値補正パラメータ推定部17は、グループ化処理と最大値補正パラメータ推定処理とを実行する。グループ化処理は、蓄積済データをサイト別年別にグループ化する処理である。具体的には、グループ化処理では、サイト別年別を一単位として、単位内(同一サイトの同一年内)の各月の電力量の最大値の変化の傾向(例えば、1月の電力量(最大値)から2月の電力量(最大値)の変化率、2月の電力量(最大値)から3月の電力量(最大値)の変化率、…、11月の電力量(最大値)から12月の電力量(最大値)の変化率)を元に、1以上の単位からなる複数のグループに分類する。例えば、グループ化処理では、サイトAの2018年の各月の電力量の最大値の変化、サイトAの2019年の各月の電力量の最大値の変化、サイトAの2020年の各月の電力量の最大値の変化、サイトBの2018年の各月の電力量の最大値の変化、…、サイトDの2019年の各月の電力量の最大値の変化、サイトDの2020年の各月の電力量の最大値の変化の傾向を元に、〇個の単位(サイトAの2018年、サイトAの2020年、サイトBの2018年、…)からなる第1グループ、△個の単位(サイトAの2019年、サイトBの2019年、サイトDの2018年、…)からなる第2グループ、…、といった具合に複数のグループに分類する。なお、グループの分類に際し、k点平均法を用いてもよい。設定するグループ数kは分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。
【0052】
最大値補正パラメータ推定処理は、グループ化処理において分類した各グループにおける、各月の電力量の最大値の変化の傾向を最大値補正パラメータ400として推定、出力する処理である。例えば、第1グループが、サイトAの2018年、サイトAの2020年、サイトBの2018年からなる場合、最大値補正パラメータ推定処理では、当該第1グループの最大値補正パラメータ400として、当該グループにおける1月の電力量(最大値)から2月の電力量(最大値)の変化率、当該グループにおける2月の電力量(最大値)から3月の電力量(最大値)の変化率、…、当該グループにおける11月の電力量(最大値)から12月の電力量(最大値)の変化率を推定し、出力する。他のグループについても同様である。出力する内容(変化率)は、各グループの月毎の重心であってもよい。
【0053】
(判定フェーズ)
図11は、故障判定装置20の機能等を説明する説明図である。故障判定装置20は、図11に示すように、クレンジング・正規化部21、対象外データ除外部22、週単位故障判定部23、月単位故障判定部24を備える。なお、説明の便宜上、図11では、上記各部(クレンジング・正規化部21、対象外データ除外部22等)に加え、入出力されるもの(最大値補正パラメータ400、対象外判定モデル200等)も示している。なお、図11では、パーソナルコンピュータが備える、一般的な構成(表示部、入出力部、記憶部、通信部等)は省略している。
【0054】
クレンジング・正規化部21は、クレンジング処理と正規化処理とを実行する。クレンジング・正規化部21のクレンジング処理は、学習フェーズにおけるクレンジング・正規化部11におけるクレンジング処理と処理内容は同様であるが、処理対象が異なる。つまり、図2に示すようにモデル生成装置10は蓄積済データを入力するためクレンジング・正規化部11におけるクレンジング処理の処理対象は蓄積済データであるのに対し、図11に示すように故障判定装置20は基準データ(故障判定の対象サイトの前月の蓄積済データ)を判定対象データとして入力するためクレンジング・正規化部21におけるクレンジング処理の処理対象は判定対象データ(基準データ)である。
【0055】
クレンジング・正規化部21の正規化処理は、学習フェーズにおけるクレンジング・正規化部11における正規化処理と同様、発電量をスケーリング(発電量の最大値を揃えるように補正する処理)であるが、処理対象及び処理内容が異なる。つまり、クレンジング・正規化部11における正規化処理は、蓄積済データ(クレンジング処理後)について月内の各日の発電量を当該月の発電量の最大値で割る処理であるのに対し、クレンジング・正規化部21における正規化処理は、判定対象データの発電量を最大値補正パラメータ400に基づいて算出した算出値で割る処理である。
【0056】
具体的には、クレンジング・正規化部21の正規化処理では、モデル生成装置10から出力された最大値補正パラメータ(グループ毎の最大値補正パラメータ)を入力し、故障判定の対象サイトの過去の各月の電力量の最大値の変化の傾向が、どのグループ(どのグループの最大値補正パラメータ)に属するかを決定し、決定したグループの最大値補正パラメータから判定対象データの発電量の最大値を算出(予測)し、判定対象データの発電量を当該算出値で割るようにしている。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定においては、サイトA(2021年8月)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)が判定対象データ(基準データ)となるが、サイトA(2021年8月)を判定対象データとする場合、サイトA(2021年5月)、サイトA(2021年6月)、サイトA(2021年7月)の3つに注目し、「サイトA(2021年5月)の電力量(最大値)からサイトA(2021年6月)の電力量(最大値)の変化率」と「サイトA(2021年6月)の電力量(最大値)からサイトA(2021年7月)の電力量(最大値)の変化率」とに基づいて、一のグループ(5月の電力量(最大値)から6月の電力量(最大値)の変化率、6月の電力量(最大値)から7月の電力量(最大値)の変化率が近しいグループ。例えば、グループ1)を決定する。そして、決定したグループ1の当月への変化率(7月の電力量(最大値)から8月の電力量(最大値)の変化率)を当月の発電量の最大値(判定対象データにおける計算上の発電量の最大値)を算出(予測)し、判定対象データの発電量を当該算出値で割るようにしている。判定フェーズにおける基準データの電力量の最大値が故障によって目減りしている場合、目減りしている最大値を用いてスケーリングを実施すると後段の故障判定に影響を与える虞があるため、判定フェーズでは上述したような算出値を用いてスケーリングを実施する。
【0057】
対象外データ除外部22は、モデル生成装置10から出力された対象外判定モデル200を用いて、故障判定に適さないデータを判定対象データ(クレンジング・正規化済データ)から除外する。対象外データ除外部22は、除外判定スコア算出処理と対象外データ除外処理とを実行する。対象外データ除外部22の除外判定スコア算出処理は、学習フェーズにおける対象外データ除外部14における除外判定スコア算出処理と処理内容は同様であるが、処理対象が異なる。つまり、対象外データ除外部14における除外判定スコア算出処理の処理対象は類似データであるのに対し、対象外データ除外部22における除外判定スコア算出処理の処理対象は判定対象データ(クレンジング・正規化済データ)である。つまり、対象外データ除外部22における除外判定スコア算出処理では、判定対象データ(クレンジング・正規化済データ)の発電量を、対象外判定モデル200(当該判定対象データに対応する対象外判定モデル200)の対応する時間の確率分布に当てはめることで夫々の尤度を算出し、夫々の日時のスコアとする。
【0058】
対象外データ除外部22の対象外データ除外処理についても、学習フェーズにおける対象外データ除外部14における対象外データ除外処理と処理内容は同様であるが、処理対象が異なる。つまり、対象外データ除外部14における対象外データ除外処理は、対象外データ除外部14の除外判定スコア算出処理にて算出した日時毎のスコア(尤度)を参照し、類似データからスコアの低い日にち分を除外する処理であるのに対し、対象外データ除外部22の対象外データ除外処理は、対象外データ除外部22の除外判定スコア算出処理にて算出した日時毎のスコア(尤度)を参照し、判定対象データ(クレンジング・正規化済データ)からスコアの低い日にち分を除外する処理である。具体的には、対象外データ除外部22における対象外データ除外処理では、判定対象データ(クレンジング・正規化済データ)の夫々の日にちに含まれる時間毎のスコアのうち最も小さい値を夫々の日にちのスコアとし、スコアが閾値を超えている日にちは除外せず、スコアが閾値を超えていない日にちは除外する。閾値は分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。
【0059】
週単位故障判定部23は、判定対象データ(対象外排除済)に対し、モデル生成装置10から出力された故障判定モデル300(当該判定対象データに対応する故障判定モデル300)を適用し、週単位の故障を判定する。週単位故障判定部23は、週単位故障判定スコア算出処理と週単位故障判定処理とを実行する。
【0060】
週単位故障判定スコア算出処理は、故障判定モデル300(当該判定対象データに対応する故障判定モデル300)に含まれる故障判定サブモデルを用いて、低下率毎の週単位故障判定スコアを算出する処理である。具体例を用いて説明する。例えば、サイトAの2021年9月の故障判定の基準データ(サイトA(2021年8月)の蓄積済データ)に基づく判定対象データ(対象外排除済)から第1週目のデータ(最大7日分のデータ)を切り出し、サイトAの2021年9月の故障判定用の故障判定モデル300に含まれる低下率0%の故障判定サブモデルに第1週目のデータに含まれる夫々の日の各時間(7時、7時半、…、17時半)の発電量を当て嵌め、夫々の尤度(各時間について日数分の尤度)を算出する。そして、夫々のスコアを全て合算(積算)し、第1週目の低下率0%の週単位故障判定スコアとする。第1週目の他の低下率(低下率10%、低下率20%、低下率30%)の週単位故障判定スコアについても同様である。例えば、上記故障判定モデル300に含まれる低下率10%の故障判定サブモデルに第1週目のデータに含まれる夫々の日の各時間の発電量を当て嵌め、夫々の尤度を算出し、夫々のスコアを全て合算し、第1週目の低下率10%の週単位故障判定スコアとする。また、他の週の低下率毎の週単位故障判定スコアについても同様である。例えば、上記判定対象データ(対象外排除済)から第2週目のデータ(最大7日分のデータ)を切り出し、上記故障判定モデル300に含まれる低下率0%の故障判定サブモデルに第2週目のデータに含まれる夫々の日の各時間の発電量を当て嵌め、夫々の尤度を算出し、夫々のスコアを全て合算し、第2週目の低下率0%の週単位故障判定スコアとする。
【0061】
週単位故障判定処理は、週単位の故障判定結果を出力する処理である。例えば、週単位故障判定処理では、週単位の故障判定結果として、下記のように、低下率毎の週単位故障判定スコア等を出力(表示、印刷、送信)してもよい。なお、下記は、出力のイメージであり、数字は一例である。
週単位故障判定スコア(低下率0%):210(70%)
週単位故障判定スコア(低下率10%):60(20%)
週単位故障判定スコア(低下率20%):27(9%)
週単位故障判定スコア(低下率30%):3(1%)
なお、週単位故障判定処理では、週単位の故障判定結果として、最も週単位故障判定スコアが高い低下率(上記例では、「低下率0%」)を出力してもよい。
【0062】
なお、週単位故障判定部23の処理において、第1週目が7日未満である場合には、第1週目と第2週目を合わせて第1週目としてもよい。また、第5週目が7日未満である場合には、第4週目と第5週目を合わせて第4週目としてもよい。
【0063】
月単位故障判定部24は、週単位故障判定部23によって出力される週単位故障判定スコアを用いて、月単位の故障を判定する。月単位故障判定部24は、月単位故障判定スコア算出処理と月単位故障判定処理とを実行する。
【0064】
月単位故障判定スコア算出処理は、週単位故障判定部23によって出力される週単位故障判定スコアを集計し、月単位故障判定スコアを算出する処理である。例えば、月単位故障判定スコア算出処理では、月内の複数の週単位故障判定スコアを低下率毎に平均値(重み付き平均)を算出し、低下率毎の月単位故障判定スコアとしてもよい。重み付き平均の重みは、夫々の週単位故障判定スコアの算出の基礎となったデータ数(日数)に基づくものであってもよい。また、月単位故障判定スコア算出処理では、上述の低下率毎の月単位故障判定スコアを統合(例えば、低下率に応じた係数を付して合算)し、1つの月単位故障判定スコアとしてもよい。
【0065】
月単位故障判定処理は、月単位の故障判定結果を出力する処理である。例えば、月単位故障判定処理では、低下率毎の月単位故障判定スコア(又は1つの月単位故障判定スコア)と閾値との比較した結果を、月単位の故障判定結果として出力する。一例として、月単位故障判定処理では、低下率30%の月単位故障判定スコアが閾値(低下率30%の月単位故障判定スコアとの比較用の閾値)を超えているか否かを判断し、閾値を超えている場合には故障の虞がある旨を出力してもよい。また、上記に代えて又は加えて、月単位故障判定処理では、低下率0%の月単位故障判定スコアが閾値(低下率0%の月単位故障判定スコアとの比較用の閾値)を超えているか否かを判断し、閾値を超えていない場合には故障の虞がある旨を出力してもよい。また、月単位故障判定処理では、上記「1つの月単位故障判定スコア」が閾値(1つの月単位故障判定スコアとの比較用の閾値)を超えているか否かを判断し、閾値を超えている場合には故障の虞がある旨を出力してもよい。なお、複数の閾値を設定し、各閾値との大小関係に応じた異なる評価を出力してもよい。上述したような閾値は、分析者がデータの傾向に合わせて設定してもよい。
【0066】
なお、月単位の故障判定では、同該サイトの前月の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を基準データとすると説明したが、週単位の故障判定では、同該サイトの前週(又は、当月の前週迄)の蓄積済データ(クレンジング・正規化済データ)を基準データとしてもよい。例えば、2021年9月の2週目にサイトA(2021年9月)の第1週目の蓄積済データに基づく判定対象データ(対象外排除済)を用いて週単位の故障判定結果を出力し、2021年9月の3週目にサイトA(2021年9月)の第2週目(又は、第1週目及び第2週目)の蓄積済データに基づく判定対象データ(対象外排除済)を用いて週単位の故障判定結果を出力し、2021年9月の4週目にサイトA(2021年9月)の第3週目(又は、第1週目~第3週目)の蓄積済データに基づく判定対象データ(対象外排除済)を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよい。
【0067】
サイトAの2021年9月の第2週目に週単位の故障判定結果を出力するときには、前月の蓄積済データ(サイトA(2021年8月)の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、前週の蓄積済データ(サイトA(2021年9月)の第1週目の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、過去1カ月の蓄積済データ(例えば、出力日前日から遡って1カ月分のサイトAの蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよい。サイトAの2021年9月の第3週目に週単位の故障判定結果を出力するときには、前月の蓄積済データ(サイトA(2021年8月)の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、前週の蓄積済データ(サイトA(2021年9月)の第2週目の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、当月の前週迄の蓄積済データ(サイトA(2021年9月)の第1週目及び第2週目の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、過去1カ月の蓄積済データから得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよい。サイトAの2021年9月の第4週目に週単位の故障判定結果を出力するときには、前月の蓄積済データ(サイトA(2021年8月)の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、前週の蓄積済データ(サイトA(2021年9月)の第3週目の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、当月の前週迄の蓄積済データ(サイトA(2021年9月)の第1週目~第3週目の蓄積済データ)から得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよいし、過去1カ月の蓄積済データから得られる類似データに基づいて故障判定モデル300を生成し、当該故障判定モデル300を用いて週単位の故障判定結果を出力してもよい。
【0068】
以上、実施形態について説明したが、実施形態によれば、サイトにおける故障を好適に判定することができる。
【0069】
以下、実施形態に関連して背景等について補足する。太陽光発電パネルは、故障が少なく長寿命であるとされ、耐用年数は10年以上とされるが、実際は、発電セルの故障により10年で十数パーセントの発電量の低下が起きるとされるため、太陽光発電パネルの発電量を定常的にモニタリングすることが必要とされる。しかしながら、発電量は、太陽の位置とパネルとの相対角度(すなわち季節や時間)や、天候による日射量や、日射量や気温の違いによるパネル温度によって、大きな変動を受けるため、発電量データを単にモニタリングしただけでは、発電量データのなかから発電セルの故障に起因する発電量の減少が含まれているかを判定することは難しい。例えば、従来のリモート監視技術では、パワーコンディショナーなどの発電量データを対象に異常を通知するための任意の閾値を設定することができるが、先の変動の影響を受けずに設定するには、大幅な発電量の低下を想定した設定が必要となり、発電セルの故障によるわずかな発電量の低下を判定することはできない。
【0070】
また、人手による定期点検においては、目視できる完全な断線などが起こっていなければ、電流や電圧の計測からは、先の変動の影響を受け、計測した電流や電圧が正常か異常の範囲にあるか判定することは難しい。そこで、発電量データに、周囲の日射量や気温などの環境データを加えて判定する手法や、太陽光発電パネルの直接的なストリング値の計測データを対象とする手法や、近隣の複数のサイトの発電量データから正常な発電量を推定し判定する手法が数多く考案されているが、サイトに計測装置などを設置して環境データやストリング値の収集が必要になることや、近隣に複数箇所のサイトが存在して発電量データの収集が必要になるため、サイトへの導入コストが問題になっている。
【0071】
更に、新設された発電サイト(例えば、設置して半年以下)の場合、発電量データが十分に蓄積されていないため、故障判定が困難である。
【0072】
本発明の実施形態は、少なくとも下記(構成1)~(構成4)を含む。
【0073】
(構成1)太陽光発電サイトにおける故障を判定する故障判定システム(例えば、故障判定システム1)であって、故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データ(例えば、判定対象データ(対象外除外済))を入力とし前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する学習済モデル(例えば、故障判定モデル300)を生成するモデル生成部(例えば、故障判定モデル生成部16)と、前記モデル生成部によって生成された前記学習済モデルを用いて前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果を出力する故障判定部(例えば、週単位故障判定部23、月単位故障判定部24)と、複数の太陽光発電サイトの発電実績データ(例えば、蓄積済データ)のなかから前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと発電量の変化傾向が類似する他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データを抽出し、前記故障判定対象の太陽光発電サイトの発電実績データと前記他の1以上の太陽光発電サイトの発電実績データとを類似データとして出力する類似データ抽出部(例えば、類似データ抽出部12)とを備え、前記モデル生成部は、前記類似データ抽出部によって出力された前記類似データを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする故障判定システム。
【0074】
構成1によれば、発電サイトへの測定機器を設置しなくても、故障判定が可能である。また、構成1によれば、新設された発電サイトについても故障判定が可能である。なお、図1において説明したように、故障判定システム1は、1台以上の装置から構成されていればよい。
【0075】
(構成2)前記類似データ抽出部によって出力された前記類似データから一部のデータを除外するデータ除外部(例えば、対象外データ除外部14)を更に備え、前記モデル生成部は、前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データ(例えば、学習用非故障データ)を用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする構成1に記載の故障判定システム。
【0076】
構成2によれば、より正確に故障判定が可能である。
【0077】
(構成3)前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データに基づいて故障時における発電データを想定した擬似データ(例えば、学習用疑似故障データ)を作成する擬似データ作成部(例えば、疑似故障データ生成部15)を更に備え、前記モデル生成部は、前記データ除外部によって一部のデータが除外された前記類似データと、前記擬似データ作成部によって作成された前記擬似データとを用いて前記学習済モデルを生成することを特徴とする構成2に記載の故障判定システム。
【0078】
構成3によれば、故障時のデータを入手せずとも、故障判定が可能である。つまり、故障が全く観測されていない場合でも適用可能である。特に、新設された発電サイトについては、故障時のデータの入手が非常に困難であるため、有効である。
【0079】
(構成4)前記故障判定部は、前記故障判定対象の太陽光発電サイトにおける故障の判定結果として、第1の期間を判定期間の単位とした第1判定結果(例えば、週単位の故障判定結果)と、前記第1の期間よりも長い第2の期間を判定期間の単位とした第2判定結果(例えば、月単位の故障判定結果)とを出力することを特徴とする構成1乃至構成3の何れかに記載の故障判定システム。
【0080】
構成4によれば、故障の早期検出と故障判定の精度向上の両面に着目した好適な故障判定が可能である。つまり、週単位の故障判定結果は、故障の早期検出に寄与し、月単位の故障判定結果は、故障判定の精度向上に寄与する。また、故障タイミングや発電量の低下率を詳細に把握できるため、発電量の売電損失額の算出等に用いることもできる。
【0081】
以上、実施形態について説明したが、上記実施形態は、一例であって具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0082】
例えば、上記実施形態では、30分単位の発電量としているが、一例であって、30分未満の時間を単位としてもよいし、30分を超える時間を単位としてもよい。また、上記実施形態では、週単位、月単位に故障について2段階で評価している(故障判定結果を出力している)が、一例であって、評価の単位や段階数はこれに限定されない。
【0083】
なお、以上に説明した故障判定システム1、モデル生成装置10、故障判定装置20を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…故障判定システム
10…モデル生成装置
11…クレンジング・正規化部
12…類似データ抽出部
13…対象外判定モデル推定部
14…対象外データ除外部
15…疑似故障データ生成部
16…故障判定モデル生成部
17…最大値補正パラメータ推定部
20…故障判定装置
21…クレンジング・正規化部
22…対象外データ除外部
23…週単位故障判定部
24…月単位故障判定部
200…対象外判定モデル
300…故障判定モデル
400…最大値補正パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11