(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063695
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】水素製造システム及び、水素製造方法
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20230428BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230428BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230428BHJP
C25B 9/17 20210101ALI20230428BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20230428BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20230428BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20230428BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20230428BHJP
F25J 3/06 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
F25J1/00 C
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/17
C25B9/67
C01B3/02 H
C01B3/56 Z
C01B13/02 Z
F25J3/06
F25J1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173664
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】久枝 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信義
(72)【発明者】
【氏名】長井 千明
【テーマコード(参考)】
4D047
4G042
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
4D047AA07
4D047AB01
4D047AB07
4D047BA08
4D047CA04
4D047DA01
4G042BA39
4G140FA02
4G140FB03
4G140FC08
4G140FE01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC04
4K021BC07
4K021CA09
4K021CA11
4K021CA12
4K021DA03
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】無隔膜型の水電解装置を用いた水素の製造に関し、電力の消費を効果的に削減する。
【解決手段】無隔膜型の電解槽21に供給される水を電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置20と、水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを冷却することにより酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置30と、混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器40と、気液分離器40で分離された水素ガスを冷却することにより液体水素にする第2冷却装置50と、第2冷却装置50で液化された液体水素を貯留するタンク60と、水電解装置20から第1冷却装置30に供給される混合ガス及び、気液分離器40から第2冷却装50置に供給される水素ガスの何れか一方又は両方を、タンク60で発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する予冷装置70,80とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガス及び、前記気液分離器から前記第2冷却装置に供給される水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する予冷装置と、を備える
ことを特徴とする水素製造システム。
【請求項2】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガスを、前記気液分離器で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する予冷装置と、を備える
ことを特徴とする水素製造システム。
【請求項3】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガスを、前記気液分離器で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する第1予冷装置と、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガス及び、前記気液分離器から前記第2冷却装置に供給される水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する第2予冷装置と、を備える
ことを特徴とする水素製造システム。
【請求項4】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガス及び、前記気液分離工程の後、前記第2冷却工程で冷却される前の水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する予冷工程と、を有する
ことを特徴とする水素製造方法。
【請求項5】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガスを、前記気液分離工程で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する予冷工程と、を有する
ことを特徴とする水素製造方法。
【請求項6】
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガスを、前記気液分離工程で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する第1予冷工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガス及び、前記気液分離工程の後、前記第2冷却工程で冷却される前の水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する第2予冷工程と、を有する
ことを特徴とする水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造システム及び、水素製造方法に関し、特に、無隔膜型の水電解装置を用いた水素の製造に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料に代替するクリーンエネルギーとして水素が用いられている。水素を生成する装置としては、水を電気分解(以下、単に電解ともいう)することにより、水素ガスと酸素ガスを生成する水電解装置が知られている。水電解装置を用いた水素の製造は、風力、水力、太陽光、地熱等といった再生可能エネルギー由来の電源を利用すれば、二酸化炭素の排出を実質的に伴わないCO2フリーを実現できることから、近年注目されている。
【0003】
この種の水電解装置としては、電解槽を隔膜によって陽極室と陰極室とに区画し、陽極室にて水を電解することにより酸素ガスを生成するとともに、陰極室にて水を電解することにより水素ガスを生成する隔膜型の水電解装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、電解槽に隔膜を備えない無隔膜型の水電解装置も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-135580号公報
【非特許文献1】CPH2 Clean Power Hydrogen、brochure、第3頁、OUR TECHNOLOGY、[online]、[令和 3年 9月 7日検索]、インターネット<URL:https://www.cph2.com/media/jmxoxkzz/company-brochure-a4-4pp-web-2020-10.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隔膜型の水電解装置では、隔膜の劣化に伴い水素の生成効率が低下するといった課題がある。このため、水素の製造に無隔膜型の水電解装置を用いれば、隔膜の劣化による水素の生成効率の低下を抑えることができ、さらには、装置の寿命を延ばすことができるといった利点もある。
【0006】
一方、無隔膜型の水電解装置では、電解槽から水素ガスと酸素ガスが混合した状態で排出される。このため、混合ガスから水素ガスを分離するには深冷分離を行う必要がある。また、水素は気体の状態では体積が大きいため、貯蔵や輸送の観点からは、水素ガスを冷却して液体水素とすることが望ましい。
【0007】
これら混合ガスや水素ガスの冷却を行う手段としては、電気式の冷却装置を用いる方法、或いは、液体窒素や液体ヘリウムといった低温媒体を用いて冷却する方法がある。しかしながら、電気式の冷却装置を用いる場合は、装置の稼働に電力が必要となり、低温媒体を用いる場合も、低温媒体の製造に電力が必要となり、何れの場合も消費電力が嵩むといった課題がある。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無隔膜型の水電解装置を用いた水素の製造に関し、電力の消費を効果的に削減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の水素製造システムは、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガス及び、前記気液分離器から前記第2冷却装置に供給される水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する予冷装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本開示の他の態様の水素製造システムは、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガスを、前記気液分離器で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する予冷装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本開示の他の態様の水素製造システムは、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却装置と、
前記第1冷却装置で冷却された混合ガスを水素ガスと液体酸素とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却装置と、
前記第2冷却装置で液化された液体水素を貯留するタンクと、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガスを、前記気液分離器で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する第1予冷装置と、
前記水電解装置から前記第1冷却装置に供給される混合ガス及び、前記気液分離器から前記第2冷却装置に供給される水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する第2予冷装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本開示の水素製造方法は、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガス及び、前記気液分離工程の後、前記第2冷却工程で冷却される前の水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する予冷工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本開示の他の態様の水素製造方法は、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガスを、前記気液分離工程で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する予冷工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本開示の他の態様の水素製造方法は、
無隔膜型の電解槽に供給される水を、該電解槽内で電気分解することにより水素ガスと酸素ガスとを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、酸素ガスが液化する所定の第1温度以下に冷却することにより、該混合ガス中の酸素ガスを液体酸素にする第1冷却工程と、
前記第1冷却工程で冷却された混合ガスを液体酸素と水素ガスとに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された水素ガスを、水素ガスが液化する所定の第2温度以下に冷却することにより、該水素ガスを液体水素にする第2冷却工程と、
前記第2冷却工程で液化された液体水素をタンクに貯留する貯留工程と、
前記電解工程の後に前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガスを、前記気液分離工程で分離された液体酸素と熱交換することにより予冷する第1予冷工程と、
前記電解工程の後、前記第1冷却工程で冷却される前の混合ガス及び、前記気液分離工程の後、前記第2冷却工程で冷却される前の水素ガスの何れか一方又は両方を、前記タンクに貯留された前記液体水素の蒸発により発生するボイルオフガスと熱交換することにより予冷する第2予冷工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示の技術によれば、無隔膜型の水電解装置を用いた水素の製造に関し、電力の消費を効果的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態に係る水素製造システムを示す模式的な全体構成図である。
【
図2】第一実施形態に係る水素製造方法を説明するフロー図である。
【
図3】第二実施形態に係る水素製造システムを示す模式的な全体構成図である。
【
図4】第二実施形態に係る水素製造方法を説明するフロー図である。
【
図5】他の実施形態に係る水素製造システムを示す模式的な全体構成図である。
【
図6】他の実施形態に係る水素製造システムを示す模式的な全体構成図である。
【
図7】他の実施形態に係る水素製造システムを示す模式的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る水素製造システム及び、水素製造方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る水素製造システム10を示す模式的な全体構成図である。
図1に示すように、水素製造システム10は、水タンク11、水電解装置20、第1冷却装置30、気液分離器40、第2冷却装置50、水素タンク60、第1予冷装置70、第2予冷装置80を備えている。
【0019】
水タンク11は、水を貯留する。水タンク11は、水供給配管12を介して水電解装置20の電解槽21に接続されている。水供給配管12には、水供給配管12の流路を開閉可能なバルブ13が設けられている。水タンク11は、好ましくは、水電解装置20よりも上方に配置されており、バルブ13を開弁すると、水タンク11内の水が重力によって水供給配管12を流れて電解槽21に供給されるようになっている。なお、水タンク11内の水は、ポンプを用いて電解槽21に供給するように構成してもよい。この場合、ポンプの電源は、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。
【0020】
水電解装置20は、容器状の電解槽21と、電解槽21内に配置された陽極22と、電解槽21内に陽極22と所定間隔をおいて対向配置された陰極23とを備えている。水電解装置20は、陽極22及び陰極23が電解槽21内で隔膜を介さずに対向するいわゆる無隔膜型の水電解装置であって、電源25から陽極22及び、陰極23に電圧を印加すると、陽極22から酸素ガス、陰極23から水素ガスがそれぞれ生成される。本実施形態において、電源25には、好ましくは、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源が用いられる。なお、電源25の種類は、特に限定されず、商用電源を用いてもよい。
【0021】
電解槽21内で生成される水素ガス及び酸素ガスは、互いに混合することにより混合ガスとなる。水素ガス及び酸素ガスの混合ガスは、混合ガス供給配管27を経由して下流側の第1冷却装置30に供給される。混合ガスの第1冷却装置30への供給は、第1冷却装置30を水電解装置20よりも下方に配置することにより、重力で供給するようにしてもよく、或は、ポンプにより圧送してもよい。ポンプを用いる場合、電源は、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。混合ガス供給配管27には、混合ガスを予冷する第1予冷装置70の第1熱交換器72が設けられている。第1予冷装置70の詳細については後述する。
【0022】
第1冷却装置30は、電解槽21から第1熱交換器72を流れて予冷された混合ガスを冷却する。第1冷却装置30は、混合ガスを所定の第1液化温度(酸素ガスが液化する沸点温度:約-183℃)以下に冷却することにより、混合ガス中に含まれる酸素ガスを液化する。第1冷却装置30は、電気式の冷却装置であってもよく、或いは、液体窒素や液体ヘリウムといった低温媒体を用いる冷却装置であってもよい。第1冷却装置30を電気式とする場合、電源は、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。また、第1冷却装置30を低温媒体式とする場合も、低温媒体を製造する装置の電源には、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。なお、これら何れの場合も、商用電源を用いることもできる。
【0023】
第1冷却装置30によって冷却されて液化した液体酸素及び、水素ガスの混合流体は、混合流体供給配管31を経由して気液分離器40に供給される。混合流体の気液分離器40への供給は、気液分離器40を第1冷却装置30よりも下方に配置することにより、重力で供給するようにしてもよく、或は、ポンプにより圧送してもよい。ポンプを用いる場合、電源は、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。
【0024】
気液分離器40は、第1冷却装置30から混合流体供給配管31を流れて供給される混合流体を液体酸素と水素ガスとに分離する。気液分離器40によって混合流体から分離された液体酸素は、液体出口ポート41から第1供給配管71を経由して第1熱交換器72に供給される。また、気液分離器40によって混合流体から分離された水素ガスは、気体出口ポート42から水素ガス供給配管43を経由して第2冷却装置50に供給される。
【0025】
水素ガスの第2冷却装置50への供給は、第2冷却装置50を気液分離器40よりも下方に配置することにより、重力で供給するようにしてもよく、或は、ポンプにより圧送してもよい。ポンプを用いる場合、電源は、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。水素ガス供給配管43には、水素ガスを予冷する第2予冷装置80の第2熱交換器82が設けられている。第2予冷装置80の詳細については後述する。
【0026】
第2冷却装置50は、気液分離器40から第2熱交換器82を流れて予冷された水素ガスを冷却する。第2冷却装置50は、水素ガスを所定の第2液化温度(水素ガスが液化する沸点温度:約-253℃)以下に冷却することにより、水素ガスを輸送や貯蔵に適した液体水素にする。第2冷却装置50は、電気式の冷却装置であってもよく、或いは、液体窒素や液体ヘリウムといった低温媒体を用いる冷却装置であってもよい。第2冷却装置50を電気式とする場合、電源は、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。また、第2冷却装置50を低温媒体式とする場合も、低温媒体を製造する装置の電源には、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。なお、これら何れの場合も、商用電源を用いることもできる。
【0027】
第2冷却装置50によって冷却されて液化した液体水素は、液体水素供給配管51を経由して水素タンク60に供給される。液体水素の水素タンク60への供給は、水素タンク60を第2冷却装置50よりも下方に配置することにより、重力で供給するようにしてもよく、或は、ポンプにより圧送してもよい。ポンプを用いる場合、電源は、再生可能エネルギー由来の電源を用いることが好ましい。
【0028】
水素タンク60は、第2冷却装置50から液体水素供給配管51を経由して供給される液体水素を貯留する。水素タンク60は、設置型のタンクであってもよいし、その他の型式のタンクであってもよい。水素タンク60には、水素タンク60内の液体水素の蒸発により発生するボイルオフガス(BOG:Boil Off Gas)を水素タンク60から排出するBOG排出ポート61が設けられている。BOG排出ポート61には第2供給配管81が接続されており、水素タンク60内で発生したBOGを第2熱交換器82に供給するように構成されている。
【0029】
第1予冷装置70は、電解槽21から混合ガス供給配管27を経由して第1冷却装置30に供給される混合ガス(酸素ガスと水素ガスの混合ガス)を予め冷却する。具体的には、第1予冷装置70は、第1供給配管71と、第1熱交換器72と、第1循環配管73と、第1圧送ポンプ74と、第1排出配管75とを備えている。
【0030】
第1供給配管71は、一端側を気液分離器40の液体出口ポート41に接続されるとともに、他端側を第1熱交換器72の入口ポート72Aに接続されており、気液分離器40にて水素ガスから分離された低温の液体酸素を第1熱交換器72に供給する。第1熱交換器72は、混合ガス供給配管27の外周面を所定の間隔を隔てて囲う筒状に形成されており、混合ガス供給配管27の外周面との間に液体酸素を流通させる第1熱交換流路72Cを区画する。
【0031】
第1熱交換流路72C内を流れる低温の液体酸素と、混合ガス供給配管27内を流れる混合ガスとの間で熱交換が行われることにより、第1冷却装置30に供給される混合ガスを効果的に予冷できるように構成されている。混合ガスが予冷されることで、第1冷却装置30にて混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却するのに消費される電力を確実に削減することが可能になる。
【0032】
第1循環配管73は、一端側を第1熱交換器72の出口ポート72Bに接続されるとともに、他端側を第1供給配管71の所定部位に接続されており、第1熱交換器72にて混合ガスと熱交換された液体酸素を第1供給配管71に再循環させる。第1圧送ポンプ74は、第1供給配管71に設けられており、液体酸素を圧送する。第1圧送ポンプ74の電源は、再生可能エネルギー由来の電源であってもよく、或は、商用電源であってもよい。第1排出配管75は、液体酸素が気化した酸素ガスを大気に放出する。
【0033】
本実施形態において、第1熱交換器72の入口ポート72A及び、出口ポート72Bは、混合ガス供給配管27内の混合ガスの流れ方向に対して、入口ポート72Aが下流側、出口ポート72Bが上流側となるように設けられている。すなわち、第1供給配管71から第1熱交換流路72C内に流入する液体酸素が、第1熱交換流路72C内を混合ガスとは逆方向に流れて第1循環配管73に送られるようになっている。このように、液体酸素と混合ガスの流れ方向を互いに逆向きとすることで、これら液体酸素と混合ガスの熱交換効率の向上が図られるようになる。
【0034】
第2予冷装置80は、気液分離器40から水素ガス供給配管43を経由して第2冷却装置50に供給される水素ガスを予冷する。具体的には、第2予冷装置80は、第2供給配管81と、第2熱交換器82と、第2循環配管83と、第2圧送ポンプ84と、第2排出配管85とを備えている。
【0035】
第2供給配管81は、一端側を水素タンク60のBOG排出ポート61に接続されるとともに、他端側を第2熱交換器82の入口ポート82Aに接続されており、水素タンク60にて発生したBOGを第2熱交換器82に供給する。第2熱交換器82は、水素ガス供給配管43の外周面を所定の間隔を隔てて囲う筒状に形成されており、水素ガス供給配管43の外周面との間にBOGを流通させる第2熱交換流路82Cを区画する。
【0036】
第2熱交換流路82C内を流れる低温のBOGと、水素ガス供給配管43内を流れる水素ガスとの間で熱交換が行われることにより、第2冷却装置50に供給される水素ガスを効果的に予冷できるように構成されている。水素ガスが予冷されることで、第2冷却装置50にて水素ガスを所定の第2液化温度以下に冷却するのに消費される電力を確実に削減することが可能になる。
【0037】
第2循環配管83は、一端側を第2熱交換器82の出口ポート82Bに接続されるとともに、他端側を第2供給配管81の所定部位に接続されており、第2熱交換器82にて水素ガスと熱交換されたBOGを第2供給配管81に再循環させる。第2圧送ポンプ84は、第2供給配管81に設けられており、BOGを圧送する。第2圧送ポンプ84の電源は、再生可能エネルギー由来の電源であってもよく、或は、商用電源であってもよい。第2排出配管85は、余剰のBOGを放出する。第2排出配管85から放出されるBOGは、BOGを吸蔵可能な水素吸蔵合金を備えるタンクなどに貯留してもよい。
【0038】
本実施形態において、第2熱交換器82の入口ポート82A及び、出口ポート82Bは、水素ガス供給配管43内の水素ガスの流れ方向に対して、入口ポート82Aが下流側、出口ポート82Bが上流側となるように設けられている。すなわち、第2供給配管81から第2熱交換流路82C内に流入するBOGが、第2熱交換流路82C内を水素ガスとは逆方向に流れて第2循環配管83に送られるようになっている。このように、BOGと水素ガスの流れ方向を互いに逆向きとすることで、これらBOGと水素ガスの熱交換効率の向上が図られるようになる。
【0039】
次に、
図2に基づいて、第一実施形態に係る水素製造方法のフローを説明する。なお、以下では、各工程のステップを単にSと表記する。
【0040】
電解工程(S100)では、水タンク11から電解槽21に水を供給し、水電解装置20にて水を電気分解することにより、水素ガスと酸素ガスを生成する。この際、水電解装置20の電源25には、好ましくは、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源が用いられる。
【0041】
第1予冷工程(S110)では、水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、第1予冷装置70の第1熱交換器72にて、後述する気液分離工程(S130)で混合流体から分離された低温の液体酸素と熱交換することにより予冷する。予冷された混合ガスは、第1冷却装置30に供給される。
【0042】
第1冷却工程(S120)では、第1冷却装置30にて、混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却することにより、混合ガス中の酸素ガスを液化する。この際、混合ガスは第1予冷工程(S110)で予冷されているため、第1冷却工程(S120)で消費される電力を確実に削減することが可能になる。液体酸素と水素ガスの混合流体は、気液分離器40に供給される。
【0043】
気液分離工程(S130)では、気液分離器40にて、第1冷却工程(S120)で液化された液体酸素と水素ガスとを気液分離する。混合流体から分離された液体酸素は、前述の第1予冷工程(S110)の混合ガスの予冷に利用するために、第1予冷装置70の第1熱交換器72に供給される。一方、混合流体から分離された水素ガスは、第2予冷装置80の第2熱交換器82に供給される。
【0044】
第2予冷工程(S140)では、第2予冷装置80の第2熱交換器82にて、水素ガスを、水素タンク60内の液体水素が蒸発することにより発生するBOGと熱交換することにより予冷する。予冷された水素ガスは、第2冷却装置50に供給される。
【0045】
第2冷却工程(S150)では、第2冷却装置50にて、水素ガスを所定の第2液化温度以下に冷却することにより、水素ガスを液化する。この際、水素ガスは第2予冷工程(S140)で予冷されているため、第2冷却工程(S150)で消費される電力を確実に削減することが可能になる。液化した液体水素は、水素タンク60に供給される。
【0046】
貯留工程(S160)では、水素タンク60に液体水素を貯留する。水素タンク60内の液体水素が蒸発することにより発生するBOGは、前述の第2予冷工程(S140)の水素ガスの予冷に利用するために、第2予冷装置80の第2熱交換器82に供給される。以降、上述の各工程(S100~S160)を繰り返し行うことにより、消費電力を効果的に削減しながら水素を連続的に製造することができる。
【0047】
以上詳述した第一実施形態によれば、無隔膜型の水電解装置20を用いて水を電気分解することにより、水素ガスと酸素ガスを生成し、水素ガスと酸素ガスの混合ガスを第1冷却装置30により深冷分離することにより、混合ガス中の酸素ガスを液化し、液化した液体酸素と水素ガスの混合流体を気液分離器40により水素ガスと液体酸素とに分離する。気液分離器40で分離された低温の液体酸素は、第1予冷装置70の第1熱交換器72に供給され、第1冷却装置30に供給される前の混合ガスと熱交換される。すなわち、第1冷却装置30に供給される混合ガスを、気液分離器40で水素ガスから分離された低温の液体酸素を利用して効果的に予冷できるように構成されている。これにより、第1冷却装置30にて混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却するのに消費される電力を確実に削減することが可能になる。
【0048】
また、気液分離器40で分離された水素ガスは、第2冷却装置50で冷却することにより、輸送や貯蔵に適した液体水素とされ、水素タンク60に貯留される。水素タンク60内で液体水素の蒸発により発生するBOGは、第2予冷装置80の第2熱交換器82に供給され、第2冷却装置50に供給される前の水素ガスと熱交換される。すなわち、第2冷却装置50に供給される水素ガスを、水素タンク60内で発生するBOGを利用して効果的に予冷できるように構成されている。これにより、第2冷却装置50にて水素ガスを所定の第2液化温度以下に冷却するのに消費される電力を確実に削減することが可能になる。
【0049】
また、水電解装置20は、電解槽21に隔膜を備えない無隔膜型の水電解装置を用いるため、隔膜の劣化による水素の生成効率の低下を伴わず、装置の寿命も効果的に延ばすことができる。また、水電解装置20、冷却装置30,50、ポンプ74,84の電源を再生可能エネルギー由来の電源とすることで、水素の製造に二酸化炭素の排出を実質的に伴わないCO2フリーを実現することができる。
【0050】
[第二実施形態]
図3は、第二実施形態に係る水素製造システム10を示す模式的な全体構成図である。第二実施形態の水素製造システム10は、第一実施形態において、第2予冷装置80に第3熱交換器87をさらに設けたものである。
【0051】
具体的には、第二実施形態の第2予冷装置80は、第2供給配管81と、第2熱交換器82と、第3供給配管86と、第3熱交換器87と、第2循環配管83と、第2圧送ポンプ84と、第2排出配管85とを備えている。第一実施形態と同一の構成には、同一の符号を付してあり、それらの機能も同一であるため、以下ではそれらの説明は省略する。
【0052】
第3供給配管86は、一端側を第2熱交換器82の出口ポート82Bに接続されるとともに、他端側を第3熱交換器87の入口ポート87Aに接続されており、第2熱交換器82を流れたBOGを第3熱交換器87に供給する。第3熱交換器87は、混合ガス供給配管27の外周面を所定の間隔を隔てて囲う筒状に形成されており、混合ガス供給配管27の外周面との間にBOGを流通させる第3熱交換流路87Cを区画する。第3熱交換流路87C内を流れる低温のBOGと、混合ガス供給配管27内を流れる混合ガスとの間で熱交換が行われることにより、第1冷却装置30に供給される混合ガスを効果的に予冷できるように構成されている。
【0053】
本実施形態において、第3熱交換器87は、第1熱交換器72よりも下流側の混合ガス供給配管27に設けられている。すなわち、混合ガス供給配管27を流れる混合ガスが、上流側の第1熱交換器72にて液体酸素と熱交換された後に、第3熱交換器87にてBOGと熱交換されることで、第1冷却装置30に供給される混合ガスを2段階で予冷できるように構成されている。混合ガスが2段階で予冷されることで、第1冷却装置30にて混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却するのに消費される電力を大幅に削減することが可能になる。
【0054】
第2循環配管83は、一端側を第3熱交換器87の出口ポート87Bに接続されるとともに、他端側を第2供給配管81の所定部位に接続されており、第3熱交換器87にて混合ガスと熱交換されたBOGを第2供給配管81に再循環させる。第3熱交換器87の入口ポート87A及び、出口ポート87Bは混合ガス供給配管27内の混合ガスの流れ方向に対して、入口ポート87Aが下流側、出口ポート87Bが上流側となるように設けられている。すなわち、第3供給配管86から第3熱交換流路87C内に流入するBOGが、第3熱交換流路87C内を混合ガスとは逆方向に流れて第2循環配管83に送られるようになっている。このように、BOGと混合ガスの流れ方向を互いに逆向きとすることで、これらBOGと混合ガスの熱交換効率の向上が図られるようになる。
【0055】
次に、
図4に基づいて、第二実施形態に係る水素製造方法のフローを説明する。
【0056】
電解工程(S200)では、水タンク11から電解槽21に水を供給し、水電解装置20にて水を電気分解することにより、水素ガスと酸素ガスを生成する。この際、水電解装置20の電源25には、好ましくは、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源が用いられる。
【0057】
第1予冷工程(S210)では、水素ガスと酸素ガスの混合ガスを、第1予冷装置70の第1熱交換器72にて、後述する気液分離工程(S230)で混合流体から分離された低温の液体酸素と熱交換することにより予冷する。
【0058】
第2予冷工程(S215)では、第1予冷工程(S210)で予冷された混合ガスを、第2予冷装置80の第3熱交換器87にて、水素タンク60内の液体水素が蒸発することにより発生するBOGと熱交換することにより予冷する。第1及び第2予冷工程にて2段階で予冷された混合ガスは、第1冷却装置30に供給される。
【0059】
第1冷却工程(S220)では、第1冷却装置30にて、混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却することにより、混合ガス中の酸素ガスを液化する。この際、混合ガスは第1及び第2予冷工程(S210,S215)で予冷されているため、第1冷却工程(S220)で消費される電力を大幅に削減することが可能になる。液体酸素と水素ガスの混合流体は、気液分離器40に供給される。
【0060】
気液分離工程(S230)では、気液分離器40にて、第1冷却工程(S220)で液化された液体酸素と水素ガスとを気液分離する。混合流体から分離された液体酸素は、前述の第1予冷工程(S210)の混合ガスの予冷に利用するために、第1予冷装置70の第1熱交換器72に供給される。一方、混合流体から分離された水素ガスは、第2予冷装置80の第2熱交換器82に供給される。
【0061】
第3予冷工程(S240)では、第2予冷装置80の第2熱交換器82にて、水素ガスを、水素タンク60内の液体水素が蒸発することにより発生するBOGと熱交換することにより予冷する。予冷された水素ガスは、第2冷却装置50に供給される。
【0062】
第2冷却工程(S250)では、第2冷却装置50にて、水素ガスを所定の第2液化温度以下に冷却することにより、水素ガスを液化する。この際、水素ガスは第2予冷工程(S240)で予冷されているため、第2冷却工程で必要とされる電力の消費量を効果的に削減することが可能になる。液化した液体水素は、水素タンク60に供給される。
【0063】
貯留工程(S260)では、水素タンク60に液体水素を貯留する。水素タンク60内の液体水素が蒸発することにより発生するBOGは、前述の第2及び第3予冷工程(S215,S240)の水素ガスの予冷に利用するために、第2予冷装置80の第2熱交換器82及び、第3熱交換器87にそれぞれ供給される。以降、上述の各工程(S200~S260)を繰り返し行うことにより、消費電力を効果的に削減しながら水素を連続的に製造することができる。
【0064】
以上詳述した第二実施形態によれば、無隔膜型の水電解装置20を用いて水を電気分解することにより、水素ガスと酸素ガスを生成し、水素ガスと酸素ガスの混合ガスを第1冷却装置30により深冷分離することにより、混合ガス中の酸素ガスを液化し、液化した液体酸素と水素ガスの混合流体を気液分離器40により水素ガスと液体酸素とに分離する。気液分離器40で分離された水素ガスは、第2冷却装置50により冷却することにより、輸送や貯蔵に適した液体水素とされて水素タンク60に供給される。気液分離器40で分離された低温の液体酸素は、第1予冷装置70の第1熱交換器72に供給され、第1冷却装置30に供給される混合ガスと熱交換される。また、水素タンク60内で液体水素の蒸発により発生するBOGは、第2予冷装置80の第3熱交換器87に供給され、第1冷却装置30に供給される混合ガスと熱交換される。
【0065】
すなわち、気液分離器40で分離された低温の液体酸素及び、水素タンク60内で発生するBOGを利用して、第1冷却装置30に供給される混合ガスを2段階で効果的に予冷できるように構成されている。これにより、第1冷却装置30にて混合ガスを所定の第1液化温度以下に冷却するのに消費される電力を大幅に削減することが可能になる。
【0066】
また、水素タンク60内で発生するBOGは、第2予冷装置80の第2熱交換器82に供給され、第2冷却装置50に供給される水素ガスを、BOGと熱交換することにより効果的に予冷できるように構成されている。これにより、第一実施形態と同様、第2冷却装置50にて水素ガスを所定の第2液化温度以下に冷却するのに消費される電力を確実に削減することが可能になる。
【0067】
また、水電解装置20は、電解槽21に隔膜を備えない無隔膜型の水電解装置を用いるため、第一実施形態と同様、隔膜の劣化による水素の生成効率の低下を伴わず、装置の寿命も効果的に延ばすことができる。また、水電解装置20、冷却装置30,50、ポンプ74,84の電源を再生可能エネルギー由来の電源とすることで、第一実施形態と同様、水素の製造に二酸化炭素の排出を実質的に伴わないCO2フリーを実現することができる。
【0068】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0069】
例えば、
図5に示すように、水素製造システム10は、第二実施形態において、第1予冷装置70を省略して構成してもよい。この場合、水素製造方法は、
図4に示すフローの第1予冷工程(S210)を省略すればよい。この場合も、BOGにより混合ガス及び、水素ガスをそれぞれ予冷することができ、電力の消費量を効果的に削減することが可能になる。
【0070】
また、
図3及び
図5に示す実施形態において、第2予冷装置80は、第2熱交換器82及び第3熱交換器87を直列に配置するものとして説明したが、これら第2熱交換器82及び第3熱交換器87を並列に配置することも可能である。
【0071】
また、第一実施形態に係る水素製造システム10は、
図6に示すように、第1予冷装置70を省略して構成してもよく、或いは、
図7に示すように、第2予冷装置80を省略して構成することもできる。この場合も、混合ガス又は水素ガスの何れか一方を予冷することができ、消費電力の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
10…水素製造システム,11…水タンク,20…水電解装置,21…電解槽,22…陽極,23…陰極,25…電源,27…混合ガス供給配管,30…第1冷却装置,31…混合流体供給配管,40…気液分離器,41…液体出口ポート,42…気体出口ポート,50…第2冷却装置,51…液体水素供給配管,60…水素タンク,61…BOG排出ポート,70…第1予冷装置,71…第1供給配管,72…第1熱交換器,73…第1循環配管,74…第1圧送ポンプ,75…第1排出配管,80…第2予冷装置,81…第2供給配管,82…第2熱交換器,83…第2循環配管,84…第2圧送ポンプ,85…第2排出配管