(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063712
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】電子ビーム処理装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/00 20060101AFI20230428BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20230428BHJP
G21K 5/04 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G21K5/00 W
B23K15/00 503
G21K5/04 M
G21K5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173688
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 智
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
【テーマコード(参考)】
4E066
【Fターム(参考)】
4E066BA03
4E066BB04
4E066BB05
(57)【要約】
【課題】電子ビーム源に対して対象物が相対的に位置が変化しない場合であっても、対象物の特定箇所への電子ビームの照射量を向上可能な電子ビーム処理装置を提供する。
【解決手段】電子ビーム処理装置1000は、電子ビーム発生源600と、電子ビームの照射方向を制御する照射制御部700と、透過窓から前記電子ビームを透過させる電子ビーム通過部800と、を備えた電子ビーム処理装置において、電子ビーム通過部800の減圧を保持し、電子ビーム発生源600に対向し、気密を保持しながら回転可能な回転部材(開口部筐体60)を有し、透過窓200は、回転部材に複数設けられ、その形状は線状である。透過窓200は、回転部材の円周方向に配設されるとともに、各透過窓の長手方向が概略径方向に形成されており、照射制御部700は、回転部材を回転させることで透過窓200を移動させながら、電子ビームを透過窓の長手方向にスキャンする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム発生源と、電子ビームの照射方向を制御する照射制御部と、透過窓から前記電子ビームを透過させる電子ビーム通過部と、を備えた電子ビーム処理装置において、
前記電子ビーム通過部の減圧を保持し、前記電子ビーム発生源に対向し、気密を保持しながら回転可能な回転部材を有し、
前記透過窓は、前記回転部材に複数設けられ、その形状は線状である
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビーム処理装置であって、
前記透過窓が曲線状に形成されている
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ビーム処理装置であって、
前記透過窓が直線状に形成されている
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ビーム処理装置であって、
前記回転部材の内部に、隣接する透過窓の間を通して冷却水配管を配設した
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ビーム処理装置であって、
前記透過窓は、前記回転部材の円周方向に配設されるとともに、各透過窓の長手方向が概略径方向に形成されており、
前記照射制御部は、前記回転部材を回転させることで前記透過窓を移動させながら、前記電子ビームを透過窓の長手方向にスキャンする
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【請求項6】
電子ビームを真空中から大気中に引出し、大気中に配設された被処理物に対して照射する照射制御部を有する電子ビーム処理装置であって、
真空中から大気中に電子ビームを透過させるとともに気密を保持する複数の透過窓を備え、
複数の前記透過窓は、気密を保持しながら回転可能な回転部材の円周方向に配設され、かつ、前記透過窓の長手方向が概略径方向に形成されており、
前記照射制御部は、前記回転部材を回転させることで前記透過窓を移動させながら、電子ビームを前記透過窓の長手方向にスキャンする
ことを特徴とする電子ビーム処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム透過窓を備えた電子ビーム処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、粒子線の発生部を備える粒子線照射装置の真空チャンバに取り付けられ、該粒子線を該真空チャンバの内側から外側に透過させる粒子線透過窓であって、前記粒子線が透過する金属薄膜と、該金属薄膜を該真空チャンバに取り付けるために、該金属薄膜を挟持する形態で該金属薄膜に気密接合される2つのフレームと、を備え、該2つのフレームのうちの少なくとも1つのフレームを、前記粒子線の通過領域で多孔構造とした粒子線照射装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の粒子線照射装置においては、粒子線透過窓を前記の構成とすることにより、粒子線透過窓の一部を構成している金属薄膜が、透過窓内外の圧力差や、熱変形によって破損するのを回避することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の粒子線照射装置では、粒子線源に対して相対的に位置が変化しない対象物の特定箇所に粒子線を照射し続ける場合、金属薄膜の特定箇所を粒子線が透過し続けることにより、当該箇所の温度が上昇し、熱変形によって破損に至る恐れがある。そのため、粒子線の対象物の特定箇所への照射量が制限されるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記問題点を解消するべくなされたもので、電子ビーム源に対して対象物が、相対的に位置が変化しない場合であっても、対象物の特定箇所への電子ビームの照射量を向上可能な電子ビーム処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の電子ビーム処理装置は、電子ビーム発生源と、電子ビームの照射方向を制御する照射制御部と、透過窓から前記電子ビームを透過させる電子ビーム通過部と、を備えた電子ビーム処理装置において、前記電子ビーム通過部の減圧を保持し、前記電子ビーム発生源に対向し、気密を保持しながら回転可能な回転部材を有し、前記透過窓は、前記回転部材に複数設けられ、その形状は線状であることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子ビーム源に対して対象物が、相対的に位置が変化しない場合であっても、対象物の特定箇所への電子ビームの照射量を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の上面図である。
【
図3】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の要部断面図(
図2のAA断面図)である。
【
図4】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の下面図である。
【
図5A】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の回転角の時間変化のグラフである。
【
図5B】第1実施形態に係る電子ビーム処理装置の電子ビームの開口部筐体における径方向位置の時間変化のグラフである。
【
図6】第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の下面図である。
【
図7A】第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の回転角の時間変化のグラフである。
【
図7B】第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の電子ビームの開口部筐体における径方向位置の時間変化のグラフである。
【
図8】第3実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の下面図である。
【
図9A】第3実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体の回転角の時間変化のグラフである。
【
図9B】第3実施形態に係る電子ビーム処理装置の電子ビームの開口部筐体における径方向位置の時間変化のグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の電子ビーム照射位置の変形例である。
【
図11】第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の冷却水配管の配設例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1から
図4を参照して、第1実施形態に係る電子ビーム処理装置について説明する。
図1は本実施形態に係る電子ビーム処理装置1000の構成図、
図2は上面図、
図3は開口部筐体60の要部断面図(
図2のAA断面図)、
図4は開口部筐体60の下面図である。
【0012】
図1に示す本実施形態の電子ビーム処理装置1000は、電子ビーム発生源600と、電子ビームの照射方向を制御する照射制御部700と、透過窓200から電子ビームを透過させる電子ビーム通過部800と、を備えている。透過窓200は、金属薄膜で構成されており、例えば、Ti膜、Be膜である。
【0013】
電子ビーム発生源600は、内部を減圧可能な筐体10,11と、筐体の内部に配設され、電子を放出する陰極1と、放出された電子に電界を与え、所定量の電子を図の下方に引出す引出し電極2と、引出された電子を所定のエネルギーまで加速して電子ビーム6として下方に照射する陽極3を備えている。
【0014】
照射制御部700は、電子ビーム発生源600の筐体11と連結され、内部を減圧可能な筐体12と、筐体の内部に配設され、通過する電子ビームの集束、発散を制御するコイル4と、電子ビームの向きを制御する偏向コイル5を備えている。
【0015】
電子ビーム通過部800は、照射制御部700の筐体12と連結される筐体50と、複数の開口部100が周方向に配設された開口部筐体60と、各々の開口部100の下部側に、気密を確保して取付けられた透過窓200(
図3参照)と、を備えている。本実施形態においては、
図4に示した如く、透過窓200は周方向に合わせて24個が配置されている(
図4の太い実線の曲線一本一本が透過窓200である)。また、筐体50に対して開口部筐体60を相対的に回転させるモータ40と、筐体50とモータ40の回転軸の間の気密を保持するシール部71と、筐体50に対して開口部筐体60を回転させる際に、上下方向の相互間隔を維持するベアリング80と、ベアリングの内周に配設され、筐体50と開口部筐体60との間の気密を保持するシール部70を備えている。モータ40は、筐体50に対し、支持部材41によって取付けられている。被処理物500の表面上の直線510に電子ビームを照射する場合、直線510と、回転する透過窓200が交差した場所を電子ビームが透過する様に、偏向コイルを制御すればよい。詳細については、後述する。
【0016】
電子ビーム通過部800の下方には、被処理物500が配設され、線状の透過窓200を透過した電子ビームが照射されることにより、所望の電子ビーム処理、例えば溶接や、表面改質などの処理がなされる。なお、ここでいう線状の意味は、透過窓の幅が電子ビームの直径程度で、長さがそれよりも長い形状のことである。
図2に示すように、被処理物500の表面上の直線510に電子ビームが照射される。
【0017】
次に、本実施形態の電子ビーム処理装置1000の基本動作を説明する。
図5Aは、開口部筐体60の回転角の時間変化のグラフであり、
図5Bは、電子ビームの開口部筐体径方向位置の時間変化グラフである。適宜
図1から
図4を参照して説明する。本実施形態では先ず、
図5Aに示した様に開口部筐体60を一定速度で回転させておく。
図5Aの縦軸の開口部筐体60の回転角は、
図4に示した状態を0°としている。横軸の時間は、1回転、即ち360°回転するのに要する時間で規格化して示しており、開口部筐体60の回転角が0°の時刻を起点0としている。
【0018】
電子ビーム発生源600、照射制御部700及び電子ビーム通過部800の内部は予め、フランジ21、フランジ22に接続された図示されていない排気装置によって、被処理物500の周囲雰囲気よりも減圧されており、電子ビーム6が残留ガスに衝突して散乱するのを抑制している。この状態で陰極1から電子を放出し、引出し電極2によって電子に電界を与え、所定量の電子を
図1の下方に引出したのち、陽極3によって所定のエネルギーまで加速して電子ビーム6として照射制御部700に導入する。
【0019】
照射制御部700に導入した電子ビーム6を、コイル4に流す電流を制御することで、透過窓200の位置でビーム径が最小となる様に集束させる。そして、偏向コイルに流す電流を制御することで電子ビーム6の向きを変えることができる。
【0020】
電子ビーム6の引出し量は、電子ビーム発生源600の引出し電極2に印加する電圧値によって制御することができ、電子ビーム6を照射しない場合は、所定の電圧値以下に設定して引出し量を0にしておく。
【0021】
前記の状態で、被処理物500の表面上の直線510に電子ビームを照射する場合、直線510と、回転する透過窓200が交差した場所を電子ビームが透過する様に、偏向コイルを制御すればよい。本実施形態では、
図5Bに示した如く、電子ビームを径方向にスキャン制御することで、直線510(
図4参照)に対し、左右に往復しながら、ほぼ時間的に連続的に電子ビームを照射することができる。なお、
図4に示された透過窓200の形状は、
図5Bに示した如く、電子ビームのスキャン速度を一定として制御した際に、電子ビームが透過する様に決められたものである。
【0022】
以上に示した如く、本実施形態の電子ビーム処理装置1000では、被処理物の表面上の直線範囲に、ほぼ時間的に連続的に電子ビームを照射できる。一方で、単位時間当たりに1つの透過窓200を透過する電子ビームの量を少なくできることから、電子ビーム透過により透過窓200で発生する単位時間当たりの発熱量を少なくできる。
【0023】
また、
図3に示した如く、透過窓200で発生した熱は分散して開口部筐体60に逃げるので、温度上昇を低減できる。これにより、透過窓が熱変形によって破損するのを防ぎつつ、電子ビームの照射量の向上が可能となる。
【0024】
また、
図4に示した如く、隣接する透過窓200の間は開口部筐体60の厚みを有しており、開口部筐体60の内外の圧力差を保持することが可能となっている。
【0025】
<第2実施形態>
図6及び
図7を参照して、第2実施形態に係る電子ビーム処理装置について説明する。
図6は第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体60の下面図、
図7Aは開口部筐体60の回転角の時間変化のグラフ、
図7Bは電子ビームの開口部筐体60の径方向位置の時間変化のグラフである。
【0026】
本実施形態の電子ビーム処理装置の第1実施形態からの主な構成の変更点は、以下の通りである。
図4に示した透過窓の形状を全て、
図6に示した如く、開口部筐体60の回転方向に凸の、同一の曲線形状にしている。これに伴い、
図5Bに示した電子ビームの開口部筐体径方向位置の時間変化のグラフは、
図7Bに示したものに変更している。
【0027】
本実施形態においては、
図7Aに示した如く、開口部筐体60が一定の回転速度で回転している状態で、
図7Bに示した如く、電子ビームを内径側から外径側の1方向に繰り返しスキャンする制御によって、直線510に対し、右から左に、ほぼ時間的に連続的に電子ビームを照射することができる。なお、
図6に示された透過窓200の形状は、
図7Bに示した如く、電子ビームのスキャン速度を一定として制御した際に、電子ビームが透過する様に決められたものである。なお、透過窓200の形状は、
図6に示したものと鏡面対称形状に、即ち、開口部筐体60の回転方向に凹の形状としてもよく、この場合は、電子ビームを外径側から内径側の1方向に繰り返しスキャンする制御をすればよい。
【0028】
本実施形態の電子ビーム処理装置は、第1実施形態の電子ビーム処理装置のものと同様に、被処理物の表面上の直線範囲に、ほぼ時間的に連続的に電子ビームを照射でき、また、単位時間当たりに1つの透過窓200を透過する電子ビームの量を少なく、電子ビーム透過により透過窓200で発生する単位時間当たりの発熱量を少なくできる。そして、
図3に示した如く、透過窓200で発生した熱は分散して開口部筐体60に逃げるので、温度上昇を低減できる。これにより、透過窓200が熱変形によって破損するのを防ぎつつ、電子ビームの照射量の向上が可能となる。
【0029】
一方で、
図6に示した如く、隣接する透過窓200の間隔を
図4に示した第1実施形態のものと比較して大きくとることができる。これにより、開口部筐体60の機械的強度が大きくなるという効果がある。
【0030】
図11は、第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の冷却水配管の配設例である。第2実施形態は、隣接する透過窓200の間隔を大きくとれることから、
図11に例示した如く、隣接する透過窓200の間を通して冷却水配管90を配設することができ、開口部筐体60の冷却が容易になるという効果がある。
【0031】
以上の電子ビーム処理の説明は、被処理物500の表面上の直線510に電子ビームを照射する場合について説明してきたものである。一方で、本発明の電子ビーム処理装置が被処理物500に対して電子ビームを照射できるのは、1本の直線に限定されない。
【0032】
図10は、第2実施形態に係る電子ビーム処理装置の電子ビーム照射位置の変形例である。
図10は、電子ビーム処理装置において電子ビームを照射可能な複数の直線509、510、511を例示したものである。これらの直線は照射窓が配列されている内径Rinと外径Routの範囲に含まれている。これにより、各直線と、回転する透過窓200が交差した場所を電子ビームが透過する様に偏向コイルを制御することで、各直線に電子ビームを照射することができる。
【0033】
例えば、当初、電子ビームを照射可能な直線509に合わせて照射しながら開口部筐体60を数回回転させ、次に、電子ビームを照射可能な直線510に合わせて照射しながら開口部筐体60を数回回転させ、最後に、電子ビームを照射可能な直線511に合わせて照射しながら開口部筐体60を数回回転させるとよい。
【0034】
<第3実施形態>
図8及び
図9を参照して、第3実施形態に係る電子ビーム処理装置について説明する。
図8は第3実施形態に係る電子ビーム処理装置の開口部筐体60の下面図、
図9Aは開口部筐体60の回転角の時間変化のグラフ、
図9Bは電子ビームの開口部筐体60の径方向位置の時間変化のグラフである。
【0035】
本実施形態の電子ビーム処理装置の第2実施形態からの主な構成の変更点は、以下の通りである。
図6に示した透過窓200の形状を全て、
図8に示した如く、同一の直線形状にしている。これに伴い、
図7Bに示した電子ビームの開口部筐体60の径方向位置の時間変化のグラフは、
図9Bに示したものに変更している。
【0036】
本実施形態においては、
図9Aに示した如く、開口部筐体60が一定の回転速度で回転している状態で、
図9Bに示した如く、電子ビームを内径側から外径側の1方向に繰り返しスキャンする制御によって、直線510に対し、右から左に、ほぼ時間的に連続的に電子ビームを照射することができる。なお、
図9Bに示した電子ビームのスキャン動作は、
図8に示された直線形状の透過窓200を電子ビームが透過する様に決められたものである。そのため、
図9Bに示した如く、電子ビーム径方向位置の時間微分であるスキャン速度が変化している。そのため、1回のスキャン当りで直線510に照射される電子ビームの照射量を均一化するためには、
図1に示した引出し電極2の電圧を制御し、スキャン速度の遅い領域で電子ビーム量を小さく、スキャン速度の速い領域で電子ビーム量を大きくすればよい。
【0037】
本実施形態では、透過窓200が直線形状であることにより、第2実施形態に示した曲線状の透過窓200より、製作が容易であるという効果がある。
【0038】
以上説明した電子ビーム処理装置1000は、電子ビーム発生源600と、電子ビームの照射方向を制御する照射制御部700と、透過窓200から電子ビームを透過させる電子ビーム通過部800と、を備え、電子ビーム通過部800の減圧を保持し、電子ビーム発生源600に対向し、気密を保持しながら回転可能な回転部材(例えば、開口部筐体60)を有し、透過窓200は、回転部材に複数設けられ、その形状は線状であることが特徴である。透過窓200は、曲線状、直線状に形成されている。
【0039】
回転部材の内部に、隣接する透過窓200の間を通して冷却水配管90を配設したことが特徴である。
【0040】
透過窓200は、回転部材の円周方向に配設されるとともに、各透過窓の長手方向が概略径方向に形成されており、照射制御部700は、回転部材を回転させることで透過窓200を移動させながら、電子ビームを透過窓200の長手方向にスキャンすることができる。
【0041】
電子ビームを真空中から大気中に引出し、大気中に配設された被処理物に対して照射する照射制御部700を有する電子ビーム処理装置1000であって、真空中から大気中に電子ビームを透過させるとともに気密を保持する複数の透過窓200を備え、複数の透過窓200は、気密を保持しながら回転可能な回転部材の円周方向に配設され、かつ、透過窓200の長手方向が概略径方向に形成されており、照射制御部700は、回転部材を回転させることで透過窓200を移動させながら、電子ビームを透過窓の長手方向にスキャンすることができる。
【0042】
本実施形態によれば、透過窓200が内外の圧力差や、熱変形によって破損するのを防ぎつつ、電子ビームの照射量の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 陰極
2 引出し電極
3 陽極
4 コイル
5 偏向コイル
6 電子ビーム
10,11,12 筐体
21,22 フランジ
40 モータ
41 支持部材
50 筐体
60 開口部筐体(回転部材)
70,71 シール部
80 ベアリング
90 冷却水配管
100 開口部
200 透過窓
600 電子ビーム発生源
500 被処理物
509,510,511 直線
700 照射制御部
800 電子ビーム通過部
1000 電子ビーム処理装置