(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063726
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】シートの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20230428BHJP
B60N 2/015 20060101ALI20230428BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230428BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/015
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173704
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 直輝
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD02
3B087DA02
3B087DA03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車両の車室内のホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有するシートの取付構造における車両衝突時のホイールハウスの変形を抑制する。
【解決手段】シート20の取付構造は、バス10の車室12内のホイールハウス15に対応する中央シートレッグ30を有する。中央シートレッグ30は、ホイールハウス15の車両後方において車室の床部13に固定される下側フランジ部32と、ホイールハウス15の周壁部16の後側部16c及び上側部16bに対向する内側フランジ部33と、を有する。ホイールハウス15には、周壁部16を部分的に補強する補強部材40が固定される。補強部材40は、車両衝突時に中央シートレッグ30の内側フランジ部33と当接可能な位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内のホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有する、シートの取付構造であって、
前記ホイールハウス用シートレッグは、前記ホイールハウスの車両後方において前記車室の床部に固定される固定部と、前記ホイールハウスの周壁部の後側部及び/又は上側部に対向する対向部と、を有しており、
前記ホイールハウスには、前記周壁部を部分的に補強する補強部材が固定されており、
前記補強部材は、前記車両の衝突時に前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部と当接可能な位置に配置されている、シートの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシートの取付構造であって、
前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部は、前記ホイールハウスの前記周壁部の後側部及び上側部に対向されており、
前記補強部材は、前記車両の衝突時に前記ホイールハウスの前記周壁部の前記上側部に対して該上側部に対向する前記対向部の前端部と当接可能な位置に配置されている、シートの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシートの取付構造であって、
前記補強部材は、前記ホイールハウスの前記周壁部側から該ホイールハウスの立壁部側に跨るようにして該立壁部に固定された延在部を有する、シートの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のシートの取付構造であって、
前記補強部材の前記延在部の先端部は、前記車室の前記床部に近接又は当接する位置に配置されている、シートの取付構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のシートの取付構造であって、
前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部と前記補強部材との間には、該ホイールハウス用シートレッグの車両前方への移動を阻止する移動阻止手段を備えている、シートの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの取付構造に関する。詳しくは、主としてバス等の車両におけるシートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたシートの取付構造では、車両の車室内のホイールハウスの立壁部に沿って車両前後方向に延びる閉断面構造の補強部材が設けられており、その補強部材にシートの室内側のシートレッグが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造によると、閉断面構造の補強部材により質量が増加するため、改善の余地がある。
【0005】
また、バス等においては、二人掛けシート(W席)の中央部に、車両の車室内のホイールハウスに対応する中央シートレッグを設けた取付構造がある。中央シートレッグは、ホイールハウスの車両後方において車室の床部に固定される固定部と、ホイールハウスの周壁部の上側部に対向する対向部と、を有する。この取付構造によると、特許文献1と比べて、質量の増加が抑制されるものの、車両の衝突時(主として車両前突時)に中央シートレッグが固定部を支点として前のめり方向へ傾くと、対向部がホイールハウスの周壁部に押し付けられることによって、ホイールハウスに陥没状の変形が生じるおそれがある。なお、本明細書では、「車両の衝突時」を「車両衝突時」ともいう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、車両の車室内のホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有するシートの取付構造における車両衝突時のホイールハウスの変形を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のシートの取付構造により解決することができる。
【0008】
第1の発明は、車両の車室内のホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有する、シートの取付構造であって、前記ホイールハウス用シートレッグは、前記ホイールハウスの車両後方において前記車室の床部に固定される固定部と、前記ホイールハウスの周壁部の後側部及び/又は上側部に対向する対向部と、を有しており、前記ホイールハウスには、前記周壁部を部分的に補強する補強部材が固定されており、前記補強部材は、前記車両の衝突時に前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部と当接可能な位置に配置されている、シートの取付構造である。
【0009】
第1の発明によると、ホイールハウスに固定された補強部材により周壁部が部分的に補強される。また、車両衝突時(主として車両前突時)において、シートのホイールハウス用シートレッグが固定部を支点として前のめり方向へ傾こうとした際には、ホイールハウス用シートレッグの対向部が補強部材に当接することによって支持される。よって、ホイールハウス用シートレッグの対向部がホイールハウスの周壁部に押し付けられることによって生じるホイールハウスの変形を抑制することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部は、前記ホイールハウスの前記周壁部の後側部及び上側部に対向されており、前記補強部材は、前記車両の衝突時に前記ホイールハウスの前記周壁部の前記上側部に対して該上側部に対向する前記対向部の前端部と当接可能な位置に配置されている、シートの取付構造である。
【0011】
第2の発明によると、車両衝突時(主として車両前突時)において、シートのホイールハウス用シートレッグが固定部を支点として前のめり方向へ傾こうとした際、ホイールハウス用シートレッグの対向部の前端部が補強部材によって支持される。このため、ホイールハウス用シートレッグの対向部の前端部より後方の部分を補強部材によって支持する場合と比べて、補強部材に作用する力のモーメントが小さく、ホイールハウスの変形抑制効果が向上する。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記補強部材は、前記ホイールハウスの前記周壁部側から該ホイールハウスの立壁部側に跨るようにして該立壁部に固定された延在部を有する、シートの取付構造である。
【0013】
第3の発明によると、補強部材の延在部により、ホイールハウスの立壁部を補強しつつ補強部材の支持剛性を向上することができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記補強部材の前記延在部の先端部は、前記車室の前記床部に近接又は当接する位置に配置されている、シートの取付構造である。
【0015】
第4の発明によると、車両衝突時の衝突荷重が補強部材の延在部を介して車室の床部に伝達されやすくなることにより、ホイールハウスの立壁部の変形を抑制することができる。
【0016】
第5の発明は、第1~4のいずれか1つの発明において、前記ホイールハウス用シートレッグの前記対向部と前記補強部材との間には、該ホイールハウス用シートレッグの車両前方への移動を阻止する移動阻止手段を備えている、シートの取付構造である。
【0017】
第5の発明によると、ホイールハウス用シートレッグの対向部と補強部材との間に備えた移動阻止手段により、車両衝突時(主として車両前突時)におけるホイールハウス用シートレッグの車両前方への移動を阻止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシートの取付構造によれば、車両の車室内のホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有するシートの取付構造における車両衝突時のホイールハウスの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1にかかるシートを示す斜視図である。
【
図2】中央シートレッグの周辺部を示す側面図である。
【
図5】実施形態2にかかる移動阻止手段を示す側面図である。
【
図6】実施形態3にかかる移動阻止手段を一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0021】
[実施形態1]
本実施形態は、車両であるバスにおける二人掛けシート列のうちの、車体の左側のリヤホイールハウスに対応するホイールハウス用シートレッグを有する二人掛けシート(以下、「シート」という)の取付構造に適用したものである。
図1はシートを示す斜視図である。図中の方位は、車両の乗員から見た方向を基準としている。すなわち、矢印Frは車両前方、矢印Rhは車両右方、矢印Upは車両上方をそれぞれ示している。
【0022】
(バスの車室の概要)
図1に示すように、バス10は、箱型の車体11を有する。車体11内に車室12が形成されている。車室12は、床部13と側壁部14(
図1は左側の側壁部14の一部を示す)とを有する。床部13の側部(左側部)にはリヤホイールハウス(以下、「ホイールハウス」という)15が形成されている。ホイールハウス15は、図示しないダブルタイヤの上部を所定の間隔を隔てて覆うように形成されている。
【0023】
ホイールハウス15は、車室12側に張り出す半六角筒状の周壁部16と、周壁部16の通路側(右側)の開口面を閉塞する立壁部17と、を有する。周壁部16は、前側部16aと上側部16bと後側部16cとを有する。周壁部16の通路側(右側)とは反対側(左側)の端縁部は、車体11の側壁部14に接続されている。周壁部16及び立壁部17の下縁部は床部13に接続されている。
【0024】
(シートの概要)
図1に示すように、シート20は、ホイールハウス15の後側に隣接する床部13上に対して前向きの姿勢で設置されている。シート20は、二人掛けのシートクッション21と、左右一対のシートバック22と、を有する。
【0025】
シートクッション21には、矩形枠形状のクッションフレーム24(
図2参照)が内蔵されている。クッションフレーム24の通路側の側部(右側部)には、下方へ突出する側部シートレッグ25が結合されている。側部シートレッグ25は略四角形板状に形成されている。側部シートレッグ25は、板厚方向を車両左右方向に向けた状態で、床部13に対して複数個(例えば前後2個)のボルト26等による締結手段を介して固定されている。また、クッションフレーム24の通路側とは反対側の側部(左側部)は、車室12の側壁部14に対して、図示しないブラケット及びボルト等による取付手段により固定されている。また、クッションフレーム24の車両左右方向の中央部には、下方へ突出する中央シートレッグ30が結合されている。
図2は中央シートレッグの周辺部を示す側面図である。
【0026】
図2に示すように、中央シートレッグ30は略逆L字形板状に形成されている。中央シートレッグ30は、板厚方向を車両左右方向に向けた状態で、かつ、L字形状の凹型の内側部を車両前方に向けた状態で、ホイールハウス15の車両後方近くの床部13に固定されている。中央シートレッグ30は、ホイールハウス15の右端部近傍に対応する位置に配置されている(
図1参照)。中央シートレッグ30は本明細書でいう「ホイールハウス用シートレッグ」に相当する。
【0027】
中央シートレッグ30のL字形状の凹型の内側部は、下端から前方斜め上方に向かって延びる直線状の斜縁部30aと、前端から後方に向かって少し下がるように延びる直線状の水平縁部30bと、斜縁部30aの上端と水平縁部30bの後端とをなだらかに接続する凹型円弧状の接続縁部30cと、を有する。
【0028】
中央シートレッグ30は、板厚方向一方(例えば右方)に突出するフランジ部を有する。そのフランジ部のうち、中央シートレッグ30の下縁部に沿う部分を下側フランジ部32といい、中央シートレッグ30の内側部(斜縁部30a、水平縁部30b及び接続縁部30c)に沿う部分を内側フランジ部33という(
図1参照)。また、中央シートレッグ30の上下方向に延在する前縁部に沿う部分を前側フランジ部34という。また、内側フランジ部33の凹型の内側面により、斜縁部30a、水平縁部30b及び接続縁部30cが形成されている。
【0029】
下側フランジ部32は、床部13に対して1個のボルト35等による締結手段を介して固定されている。下側フランジ部32は本明細書でいう「固定部」に相当する。
【0030】
ホイールハウス15の周壁部16の後部と中央シートレッグ30の内側フランジ部33とは、所定の隙間S1を隔てて対向されている。周壁部16の上側部16bと内側フランジ部33の水平縁部30bとは略平行状をなしている。周壁部16の後側部16cと内側フランジ部33の斜縁部30aとは略平行状をなしている。隙間S1は、車両振動によるホイールハウス15と中央シートレッグ30との干渉を防止するために設定されている。隙間S1は、例えば5mm前後の隙間である。ここでいう周壁部16の後部には、上側部16b上に設置される補強部材40の一部(詳しくは主板部41)が含まれる。内側フランジ部33は本明細書でいう「対向部」に相当する。
【0031】
(補強部材40)
図3は補強部材の周辺部を示す正面図、
図4は
図3のIV-IV線矢視断面図である。
図3に示すように、ホイールハウス15には、周壁部16の上側部16bを部分的に補強する補強部材40が固定されている。補強部材40は、金属製の帯状板材をプレス成形することにより形成されている。
【0032】
補強部材40は、逆L字状に形成されており、ホイールハウス15の周壁部16の上側部16bに重なる主板部41と、ホイールハウス15の周壁部16側から立壁部17側に跨るようにして立壁部17に重なる延在板部42とを有する。主板部41の先端部は、車体11の側壁部14の近傍に延びている(
図1参照)。また、延在板部42の先端部は、車体11の床部13の近傍に延びている(
図2参照)。延在板部42は本明細書でいう「延在部」に相当する。
【0033】
図1に示すように、補強部材40は、外周部を形成する環状の基板部40aと、基板部40a内を一段高くするように形成された断面逆台形形状のビード部40bと、を有する(
図4参照)。ビード部40bは、補強部材40の車両前後方向の中央部よりもやや後方寄りに配置されている。
【0034】
ビード部40bの短手方向(車両前後方向)の中央部には、長手方向(短手方向に交差する方向)に延在する直線状の半段低い凹溝部40cが形成されている(
図4参照)。凹溝部40cの両端部は、ビード部40bの長手方向の両端部近くに延びている。凹溝部40cを有するビード部40bによって補強部材40の剛性が高められている。
【0035】
補強部材40の基板部40aは、ホイールハウス15の上側部16b及び立壁部17に対してスポット溶接により結合されている。スポット溶接の溶接点に符号、45を付す。溶接点45は、周方向に所定の間隔を隔てて配置されている。補強部材40の前部における溶接点45は前後2列で配置されている。
【0036】
補強部材40の主板部41(詳しくはビード部40b)は、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aと対向しかつ当接可能な位置に配置されている。中央シートレッグ30の前端部すなわち内側フランジ部33の前端部33aと補強部材40の主板部41(詳しくはビード部40bの上面)とは、隙間S1を隔てて平行状に対向されている(
図3参照)。
【0037】
(実施形態1の作用・効果)
本実施形態によると、ホイールハウス15に固定された補強部材40により周壁部16(補強部材40の主板部41が重なる部分)が部分的に補強される。また、車両衝突時(主として車両前突時)において、シート20の中央シートレッグ30が下側フランジ部32(詳しくはボルト35の締結部)を支点として前のめり方向(
図2中、矢印Y1参照)へ傾こうとした際には、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aが補強部材40の主板部41のビード部40bに当接することによって支持される(
図4中、二点鎖線33a参照)。よって、中央シートレッグ30の内側フランジ部33がホイールハウス15の周壁部16の上側部16bに押し付けられることによって生じるホイールハウス15の変形を抑制することができる。
【0038】
ここで、補強部材40によるホイールハウス15の変形抑制効果について説明する。仮に補強部材40が設定されていない場合において、車両衝突時(主として車両前突時)にシート20が前のめり方向へ傾くと、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aがホイールハウス15の上側部16bに直に押し付けられることにより、ホイールハウス15の周壁部16に陥没状の変形をきたす不具合を生じる。これに対し、本実施形態によると、ホイールハウス15の周壁部16の上側部16b上に中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aを支持可能な補強部材40が設定されていることにより、車両衝突時(主として車両前突時)に生じるシート20の前のめり方向への傾きが抑制され、よってホイールハウス15の変形が抑制される。
【0039】
また、シート20の前のめり方向への傾きの抑制により、シート20に着座した乗員の傷害値を軽減することができる。
【0040】
また、補強部材40は、ホイールハウス15に重なるように取り付けられる板状に形成されているため、特許文献1の閉断面構造の補強部材40と比べて、質量の増加を抑制することができる。
【0041】
また、補強部材40をホイールハウス15の車室12側に設定したことにより、車輪側に補強部材を設定する場合と比べ、補強部材40を大型化することで、ホイールハウス15の剛性の向上及び補強面積の増大を図ることが可能である。
【0042】
また、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aをホイールハウス15に締結することも考えられる。しかし、シート20のシートクッション21とホイールハウス15との間のスペースが狭いことから、ホイールハウス15に対する中央シートレッグ30の締結が困難であり、また、シート20に着座する乗員の足元のスペースの狭小化を招くという不具合がある。しかし、本実施形態によると、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aをホイールハウス15に締結しないため、前記した不具合を解消することができる。
【0043】
また、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aを補強部材40によって支持するものであるから、内側フランジ部33の前端部33aより後方の部分(斜縁部30aに対応する部分)を補強部材によって支持する場合と比べて、補強部材40に作用する力のモーメントが小さく、ホイールハウス15の変形抑制効果が向上する。
【0044】
また、補強部材40の延在板部42により、ホイールハウス15の立壁部17を補強しつつ補強部材40の支持剛性を向上することができる。
【0045】
また、補強部材40の延在板部42の先端部は、車室12の床部13に近接する位置に配置されている。したがって、車両衝突時(主として車両前突時)に床部13に対して延在板部42の先端部が当接することで、車両衝突時の衝突荷重が補強部材40の延在板部42を介して車室12の床部13に伝達されやすくなることにより、ホイールハウス15の立壁部17の変形を抑制することができる。なお、補強部材40の延在板部42の先端部は、車室12の床部13に予め当接する位置に配置してもよい。
【0046】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態は、中央シートレッグ30と補強部材40との間に、車両衝突時(主として車両前突時)における中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止するための移動阻止手段を設けたものである。
図5は移動阻止手段を示す側面図である。
【0047】
図5に示すように、補強部材40の主板部41上には、中央シートレッグ30の前側フランジ部34に対向する立壁状の突起部51が突出されている。中央シートレッグ30の前側フランジ部34と突起部51とは車両前後方向に対向する。前側フランジ部34と突起部51との間には、車両振動による干渉を防止するための、例えば5mm前後の隙間S2が設定されている。前側フランジ部34と突起部51とにより移動阻止手段50が構成されている。この移動阻止手段50を「第1移動阻止手段50」という。
【0048】
中央シートレッグ30の内側フランジ部33(詳しくは、接続縁部30cに対応する部分)には、凸部61が突出されている。また、補強部材40の主板部41には、凸部61に対向する凹部62が形成されている。凸部61と凹部62とは、車両前後方向に対向する。凸部61と凹部62との間には、車両振動による干渉を防止するための、例えば5mm前後の隙間S3が設定されている。凸部61と凹部62と、により移動阻止手段60が構成されている。この移動阻止手段60を「第2移動阻止手段60」という。
【0049】
ところで、車両衝突時(主として車両前突時)において、中央シートレッグ30が車両前方(
図5中、矢印Y2参照)に向けて移動する場合がある。
【0050】
このような場合、本実施形態によると、第1移動阻止手段50の前側フランジ部34と補強部材40の突起部51とが相互に当接する(
図5中、二点鎖線34参照)。これにより、中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止することができる。ひいては、補強部材40を乗り越えるような中央シートレッグ30の移動を防止することができる。
【0051】
また、第2移動阻止手段60の凸部61と補強部材40の凹部62とが相互に当接する(
図5中、二点鎖線61参照)。これにより、中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止することができる。
【0052】
また、第1移動阻止手段50と第2移動阻止手段60との協働により、中央シートレッグ30の車両前方への移動を効果的に阻止することができる。なお、第1移動阻止手段50及び第2移動阻止手段60のうちの一方は省略してもよい。
【0053】
また、車両衝突時(主として車両前突時)において、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aが補強部材40の主板部41に当接したまま、中央シートレッグ30が車両前方への移動する場合もある。このような場合においても、第1移動阻止手段50及び第2移動阻止手段60により、中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止することができる。
【0054】
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態は、移動阻止手段の変更例である。
図6は移動阻止手段を一部破断して示す側面図である。
【0055】
図6に示すように、補強部材40の主板部41のビード部40bには、ストッパーピン71が固定されている。詳しくは、ビード部40bにはピン孔48が形成されている。ストッパーピン71の丸棒状のピン部71aが、ビード部40bの裏側(下側)からピン孔48にビード部40bを貫通するように挿入されている。ストッパーピン71の頭部71bが、ビード部40bに溶接により固定されている。
【0056】
中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aには円形の係合孔72が形成されている。係合孔72に、ストッパーピン71のピン部71aが挿入すなわち係合されている。係合孔72の内周面とピン部71aの外周面との間には、車両振動による干渉を防止するための、例えば5mm前後の隙間S4が設定されている。中央シートレッグ30の係合孔72を有する前端部33aと、補強部材40のストッパーピン71と、により、移動阻止手段70が構成されている。
【0057】
本実施形態によると、車両衝突時(主として車両前突時)に中央シートレッグ30が車両前方(
図6中、矢印Y2参照)に向けて移動しようとした際には、移動阻止手段70の前端部33a(詳しくは、係合孔72の内周面の後端部)とストッパーピン71のピン部71aとが相互に当接する。これにより、中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止することができる。ひいては、補強部材40を乗り越えるような中央シートレッグ30の移動を防止することができる。
【0058】
また、車両衝突時(主として車両前突時)において、中央シートレッグ30の内側フランジ部33の前端部33aが補強部材40の主板部41に当接したまま、中央シートレッグ30が車両前方への移動する場合においても、移動阻止手段70により、中央シートレッグ30の車両前方への移動を阻止することができる。
【0059】
[他の実施形態]
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、左側のリヤホイールハウス15に限らず、右側のリヤホイールハウス、あるいは、左側及び/又は右側のフロントホイールハウス上に支持されるシートに適用してもよい。また、実施形態では二人掛けシート20に適用したものを例示したが、一人掛けあるいは数人掛けのシートに適用してもよい。また、実施形態ではダブルタイヤを覆うホイールハウス15に適用したものを例示したが、シングルタイヤを覆うホイールハウスに適用してもよい。また、ホイールハウス15の周壁部16は、半六角筒状に限らず、半円筒状でもよい。
【0060】
また、実施形態では、補強部材40の主板部41をホイールハウス15の周壁部16の上側部16bに配置したが、補強部材40の主板部41をホイールハウス15の周壁部16の後側部16cに配置してもよい。この場合においても、補強部材40に延在板部42を設定してもよい。
【0061】
また、中央シートレッグ30の対向部は、ホイールハウス15の周壁部16の上側部16b及び後側部16cに対向するものに限らず、上側部16b及び後側部16cの位置の一方のみに対向するものでもよい。
【0062】
また、補強部材40の主板部41及び延在板部42の長さ、大きさ、形状等は変更してもよい。また、補強部材40の延在板部42は省略してもよい。また、補強部材40のビード部40bの凹溝部40cは、本数を増やしてもよいし、省略してもよい。また、補強部材40のビード部40bを省略してもよい。また、補強部材40のビード部40bの外形形状、断面形状を変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 バス(車両)
12 車室
13 床部
15 ホイールハウス
16 周壁部
16a 前側部
16b 上側部
16c 後側部
17 立壁部
30 中央シートレッグ(ホイールハウス用シートレッグ)
32 下側フランジ部(固定部)
33 内側フランジ部(対向部)
33a 前端部
40 補強部材
42 延在板部(延在部)
50 第1移動阻止手段(移動阻止手段)
60 第2移動阻止手段(移動阻止手段)
70 移動阻止手段