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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063737
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173725
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄大
(72)【発明者】
【氏名】黒須 寛秋
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339HA04
3K339KA07
3K339LA06
3K339LA33
3K339LA34
3K339MA01
3K339MA07
3K339MB05
3K339MC02
3K339MC04
3K339MC05
3K339MC22
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】先行車両が死角となって車両を検出する検出部が対向車両等を検出できない場合においても、対向車両等に対してグレアを防止する。
【解決手段】車両用灯具システムは、自車両41の前方左側及び右側にそれぞれ取り付けられた第1及び第2のヘッドランプと、自車両41の車幅方向中央付近に配設され、自車両41の前方に存在する前方車両を検出する車両検出装置と、検出された前方車両の左右の外縁の位置に基づいて第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する配光制御装置と、を備え、配光制御装置は、前方車両として先行車両42を検出しているとき、車両検出装置から見た先行車両42による死角に対してグレアを与えない遮光領域を形成するよう第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方左側及び右側にそれぞれ取り付けられた第1及び第2のヘッドランプと、
前記自車両の車幅方向中央付近に配設され、前記自車両の前方に存在する前方車両を検出する車両検出装置と、
検出された前記前方車両の左右の外縁の位置に基づいて前記第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する配光制御装置と、
を備え、
前記配光制御装置は、前記前方車両として先行車両を検出しているとき、前記車両検出装置から見た前記先行車両による死角に対してグレアを与えない遮光領域を形成するよう前記第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する、
車両用灯具システム。
【請求項2】
前記配光制御装置は、
前記車両検出装置から前記先行車両の左右の外縁の位置までの検出角度に対して補正を行うことで前記遮光領域の範囲を決定し、
前記遮光領域のうち、前記自車両の前方左側の第1のヘッドランプが形成する第1の遮光領域の右端及び前記自車両の前方右側の第2のヘッドランプが形成する第2の遮光領域の左端は、前記検出角度に対して前記第1及び第2のヘッドランプから前記先行車両の左右の外縁の位置までの角度の差である視差により前記補正を行うことで決定し、
前記第1の遮光領域の左端及び前記第2の遮光領域の右端は、前記死角に別車両が存在することを想定して前記補正を行うことで決定する、
請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記配光制御装置は、
前記車両検出装置から前記先行車両の左右の外縁の位置までの検出角度に対して補正を行うことで前記遮光領域の範囲を決定し、
前記遮光領域のうち、前記自車両の前方右側の第1のヘッドランプが形成する第1の遮光領域の左端及び前記自車両の前方左側の第2のヘッドランプが形成する第2の遮光領域の右端は、前記検出角度に対して前記第1及び第2のヘッドランプから前記先行車両の左右の外縁の位置までの角度の差である視差により前記補正を行うことで決定し、
前記第1の遮光領域の右端及び前記第2の遮光領域の左端は、前記死角に別車両が存在することを想定して前記補正を行うことで決定する、
請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記配光制御装置は、
前記先行車両が前記自車両から所定の距離以上の位置に存在しているとき、前記検出角度に対して前記第1及び第2のヘッドランプから前記先行車両の左右の外縁の位置までの角度の差である視差により前記補正を行うことで前記第1の遮光領域及び前記第2の遮光領域の両端を決定する、
請求項2又は3に記載の車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ADB(Adaptive Driving Beam)配光制御により、対向車両等の前方車両に対するグレアを抑制する技術がある。
【0003】
特許文献1は、ヘッドランプの照射領域の車幅方向内側を、前方車両を検出する検出部とヘッドランプの設置位置の相違により生じる視差角度に基づき補正し、ヘッドランプの照射領域の車幅方向外側を、検出部で検出された角度に基づいて配光制御することにより、遮光領域を広げ、グレアを防止することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-16775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同一車線上に先行車両が存在する場合、当該先行車両が死角となって車両を検出する検出部が対向車両あるいは他の先行車両を検出できないことがある。この場合、上記技術によって配光制御することができず、対向車両等に対してグレアを防止することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、先行車両が死角となって車両を検出する検出部が対向車両等を検出できない場合においても、対向車両等に対してグレアを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用灯具システムは、自車両の前方左側及び右側にそれぞれ取り付けられた第1及び第2のヘッドランプと、前記自車両の車幅方向中央付近に配設され、前記自車両の前方に存在する前方車両を検出する車両検出装置と、検出された前記前方車両の左右の外縁の位置に基づいて前記第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する配光制御装置と、を備え、前記配光制御装置は、前記前方車両として先行車両を検出しているとき、前記車両検出装置から見た前記先行車両による死角に対してグレアを与えない遮光領域を形成するよう前記第1及び第2のヘッドランプの配光を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、先行車両が死角となって車両を検出する検出部が対向車両等を検出できない場合においても、対向車両等に対してグレアを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。
図2】ヘッドランプの配光制御を示す図であり、(a)は、左右のヘッドランプを検出角度で配光制御することを示す図、(b)は、左右のヘッドランプを視差補正角度で配光制御することを示す図、(c)は、左ヘッドランプを視差補正角度で配光制御し、右ヘッドランプを検出角度で配光制御することを示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るヘッドランプの配光制御を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るヘッドランプの配光制御を示す図であり、(a)は、左ヘッドランプの配光制御を示す図、(b)は、右ヘッドランプの配光制御を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る先行車両距離を変化した場合の補正角度の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態にかかる車両用灯具システムについて図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、車両用灯具システム1の構成を示すブロック図である。配光制御システム2は、車両用灯具3による配光状態を制御するための信号(以下「配光信号」という)を生成し、出力する。車両用灯具3は、第1のヘッドランプである左ヘッドランプL-HL及び第2のヘッドランプである右ヘッドランプR-HLを備える。車両用灯具3は、例えば、マトリクスLED(Light Emitting Diode)により構成される。マトリクスLEDから出射する光がレンズを介して車両の前方へ投影されることでハイビーム、ロービーム等が形成される。マトリクス状に複数配列されたLEDについて、配光パターンにしたがって、各LEDの発光を制御することにより、光の照射範囲を制御することができる。なお、車両用灯具3は、マトリクスLED以外に例えば、DMD(Digital Mirror Device)、LCD(Liquid Crystal Display)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等で構成されてもよい。
【0012】
配光制御システム2は、カメラ(撮像装置)21、画像処理装置22、配光制御装置23を含んで構成されている。
【0013】
カメラ21は、自車両の前方を撮像するためのものであり、車両の前端側の車幅の中央の位置、例えばフロントウィンドウの中央上部に取り付けられる。カメラ21は、CMOS(Complementary MOS)、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子で構成される。カメラ21は、自車両の前方に存在する前方車両(先行車又は対向車)を撮像して前方車両を検出する車両検出装置に相当し、その画像データがカメラ21から画像処理装置22へ出力される。
【0014】
画像処理装置22は、カメラ21から入力される画像フレームデータに対して対象車両を認識するための画像処理を実行する。例えば、画像処理装置22は、画像データを2値化し、輪郭検出する等の画像処理を実行することによって、対象車両のランプ(前照灯あるいは尾灯)の位置を検出する。
【0015】
配光制御装置23は、画像処理装置22による画像処理結果を取得し、それに基づいて、車両用灯具3へ供給するための配光信号を生成するものであり、車両角度検出部31、遮光領域決定部32及び配光信号出力部33を含んで構成されている。この配光制御装置23は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムにおいて所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0016】
車両角度検出部31は、画像処理装置22からの画像処理結果に基づいて、自車両の進行方向を基準として対象車両のランプ(前照灯または尾灯)の両端位置の相対的な位置を角度により求める。具体的には、車両角度検出部31は、自車両から見た対象車両の右端の角度及び左端の角度を求める。
【0017】
遮光領域決定部32は、車両角度検出部31によって求められた自車両から見た前方車両の右端の角度及び左端の角度に基づいて、自車両の左ヘッドランプL-HLの遮光領域である第1の遮光領域及び右ヘッドランプR-HL遮光領域である第2の遮光領域を決定し、照射範囲を定めるための配光パラメータを算出する。
【0018】
配光信号出力部33は、遮光領域決定部32によって算出される上記のパラメータに基づいて、車両用灯具3による配光制御に用いるための配光信号を生成し、出力する。この配光信号を受けた車両用灯具3は、配光信号により定まる光の照射範囲を実現するように、各LEDの点消灯を制御する。
【0019】
次に、配光制御について説明する。図2(a)~(c)は、自車両41が走行する車線上において先行する先行車両42が存在するとともに、対向車線上に自車両41及び先行車両42とは別車両である対向車両43が存在する状況における配光制御を示している。自車両41及び先行車両42は、紙面上において、左から右に向かって走行し、対向車両43は、右から左に向かって走行する。自車両41の右側前方には、右ヘッドランプR-HLが設けられ、左側前方には、左ヘッドランプL-HLが設けられている。自車両41の前方中央には、カメラが設置され、カメラは自車両41の前方を撮影する。カメラで撮影された先行車両42の後部の画像から車両角度検出部は、カメラから先行車両42の右端及び左端までの検出角度を求める。対向車両43は、先行車両42の存在により、カメラから検出されない死角の範囲に位置している。自車両41の右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLは、車両角度検出部で求められた先行車両42の右端及び左端までの検出角度に基づいて配光制御される。ヘッドランプR-HL、L-HLは、先行車両42にグレアを与えないように、遮光領域と当該遮光領域の両サイドにそれぞれ照射領域を形成するように配光パターンを制御される。遮光領域の右端は、先行車両42の右端の検出角度に基づいて制御され、遮光領域の左端は、先行車両42の左端の検出角度に基づいて制御される。ここでは、先行車両42の右端の検出角度と右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの遮光領域の右端、すなわち、当該遮光領域と右側照射領域との境界線のみを図示し、遮光領域の右端及び右側照射領域について説明する。
【0020】
図2(a)は、自車両41の右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域を形成する照射角度を車両角度検出部から求めた検出角度と一致、すなわち、右側照射領域の境界線を車両検出部から求めた検出角度に平行となるように配光制御した場合の例を示す。この場合、右ヘッドランプR-HLにおける境界線は、先行車両42より外側に位置し、境界線より先行車両42側は遮光領域とされ、先行車両42に対するグレアを防止することができる。また、右ヘッドランプR-HLにおける境界線は、対向車両43より外側に位置し、境界線より対向車両43側は遮光領域とされ、対向車両43に対するグレアを防止することができる。しかしながら、左ヘッドランプL-HLにおける境界線は、先行車両42上に位置するため、境界線より進行方向右側は照射領域となり、先行車両42に対してグレアを与えてしまう。
【0021】
図2(b)は、カメラから見た先行車両42の右端までの角度とヘッドランプR-HL、L-HLから見た先行車両42の右端までの角度の差である視差を求め、車両検出部から求めた検出角度を視差補正することにより右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLに対して配光制御した場合の例を示す。この場合、右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、先行車両42より外側に位置し、境界線より先行車両42側は遮光領域とされ、先行車両42に対するグレアを防止することができる。また、左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、対向車両43より外側に位置し、境界線より対向車両43側は遮光領域とされ、対向車両43に対するグレアを防止することができる。しかしながら、右ヘッドランプR-HLの右側照射領域の境界線は、対向車両43より内側に位置し、境界線より対向車両43側に右ヘッドランプR-HLの光が照射されることとなり、対向車両43に対してグレアを与えてしまう。
【0022】
図2(c)は、左ヘッドランプL-HLについて車両検出部から求めた検出角度を視差補正することにより配光制御し、右ヘッドランプR-HLについて車両検出部から求めた検出角度を視差補正せず配光制御した場合の例を示す。この場合、右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、ともに先行車両42より外側に位置し、境界線より先行車両42側は遮光領域とされ、先行車両42に対するグレアを防止することができる。また、右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、ともに対向車両43より外側に位置し、境界線より対向車両43側は遮光領域とされ、対向車両43に対するグレアを防止することができる。しかしながら、遮光領域が必要以上に広く形成されてしまうこととなり、例えば、対向車両43の後方において、人44が道路を横断しようとしている場合、道路を横断しようとしている人44が遮光領域に存在することによって、運転者が当該横断しようとしている人44を視認できないことが生じ得る。
【0023】
これに対して、上記不都合を回避するために、本発明による配光制御を図3に基づいて説明する。ここでは、図2と同様に、先行車両42の右端の検出角度と右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの遮光領域の右端、すなわち、当該遮光領域と右側照射領域との境界線のみを図示し、遮光領域の右端及び右側照射領域について説明する。本発明では、左ヘッドランプL-HLについて車両角度検出部から求めた検出角度を視差補正することにより配光制御し、右ヘッドランプR-HLについて死角に存在する対向車両43を想定して車両角度検出部から求めた検出角度に対して補正を行うことにより配光制御する。これにより、右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、ともに先行車両42より外側に位置し、境界線より先行車両42側は遮光領域とされ、先行車両42に対するグレアを防止することができる。また、右ヘッドランプR-HL及び左ヘッドランプL-HLの右側照射領域の境界線は、ともに対向車両43より外側に位置し、境界線より対向車両43側は遮光領域とされ、対向車両43に対するグレアを防止することができる。さらに、右ヘッドランプR-HLについて死角に存在する対向車両43を想定して遮光領域の右端を設定するように車両角度検出部から求めた検出角度に対して補正を行うことにより配光制御する。したがって、遮光領域が必要以上に広く形成されてしまうことなく照射領域を最大にでき、対向車両43の後方において、道路を横断しようとしている人44が存在しても、運転者が当該横断しようとしている人44を視認することができる。
【0024】
次に、上述した配光制御について、さらに具体的に説明する。ここでは、理解を容易にするために、図4(a)と図4(b)に分けて、図4(a)に基づいて左ヘッドランプL-HLの配光制御を説明し、図4(b)に基づいて右ヘッドランプL-HLの配光制御を説明する。
【0025】
図4(a)において、カメラ21から先行車両42の右端までの検出角度をθd、カメラ21から先行車両42までの距離をL1、カメラ21と左ヘッドランプL-HLの車幅方向取付位置差をL2、カメラ21と左ヘッドランプL-HLの前後方向取付位置差をL3、左ヘッドランプL-HLの遮光領域の右端の角度である、視差補正された照射角度をθlcとした場合、照射角度θlcは、以下の式で表される。
【0026】
tanθlc=(L1*tanθd+L2)/(L1-L3)・・・(1)
【0027】
上記式に基づいて照射角度θlcを求めることができ、求められた照射角度θlcにしたがって左ヘッドランプL-HLについて視差補正がなされた配光制御を行うことにより、先行車両42に対するグレアを防止することができる。
【0028】
次に、図4(b)において、カメラ21から先行車両42の右端までの検出角度をθd、カメラ21と右ヘッドランプR-HLの車幅方向取付位置差をL2、カメラ21と右ヘッドランプR-HLの前後方向取付位置差をL3、対向車43の車幅をL4、車線間の幅をL5、死角に存在する対向車両43からカメラ21までの距離の最小値をL6、右ヘッドランプR-HLの遮光領域の右端の角度である、補正された照射角度をθrcとする。死角に存在する想定される対向車両43のうち自車両41に最も近い距離L6にあると想定されるもについて、距離L6は、検出角度θd、対向車両43の車幅L4、車線間の幅L5を用いて以下の式で表される。
【0029】
L6=(L5+L4/2)/tanθd・・・(2)
【0030】
また、照射角度θrcは、以下の式で表される。
【0031】
tanθrc*(L6-L3)=L5+L4/2-L2・・・(3)
【0032】
式(3)のL6を、式(2)に置き換えると、以下のようになる。
【0033】
tanθrc*{(L5+L4/2)/tanθd-L3}=L5+L4/2-L2・・・(4)
【0034】
ここで、対向車両43は死角に存在すると想定されているものであるため、対向車両43の車幅L4を検出することはできない。したがって、対向車両43の車幅L4については、予め固定値を設定しておく。ただし、対向車両43の車幅L4を小型車にあわせてあまり小さな値に設定すると、補正された角度θrcは小さい値に設定されることとなり、遮光領域の範囲が狭くなる。そうすると、より車幅が広い大型車が対向車両43として死角に存在する場合、当該対向車両43にグレアを与えることになってしまう。また、設定車線間の幅L5については、GPS(Global Positioning System)等から情報を取得することにより、求めるようにしてもよく、予め固定値を設定しておいてもよい。
【0035】
上記式にしたがって、先行車両42との距離を変化した場合の右ヘッドランプR-HLについて死角に存在する対向車両43を想定した補正角度の算出結果を図5に示す。図5は、先行車両42との距離L1が10mから80mまでの間の5m毎の検出角度θd、補正角度θrc、補正量θd-θrcが示されている。先行車両42との距離L1が大きくなるにつれて、検出角度θd、補正角度θrc、補正量θd-θrcともに小さくなっていく。例えば、先行車両42との距離L1が20mであるとき、補正量θd-θrcは0.34degであるのに対して、30mの場合は0.24deg、40mの場合は0.18degとなっている。すなわち、先行車両42との距離L1が20mになるまで補正を行う場合、ヘッドランプの解像度を0.34degとすればよいが、補正を30mになるまで行う場合、ヘッドランプの解像度を0.24degまで、補正を40mになるまで行う場合、ヘッドランプの解像度を0.18degまで対応させなければならない。そこで、先行車両42との距離L1について基準値として所定の距離を設定し、先行車両42との距離L1がこの基準値より小さい場合は、死角に存在する対向車両43を想定した補正を行い、先行車両42との距離L1がこの基準値以上である場合は、死角に存在する対向車両43を想定した補正を行わないようにしてもよい。死角に存在する対向車両43を想定した補正を行わない場合、代わりに左ヘッドランプL-HLについて行われるカメラ21と左ヘッドランプL-HLの設置位置差に基づく視差補正を行うようにしてもよい。これによりヘッドランプの解像度の仕様に応じて本発明における補正処理を行うことができる。
【0036】
上記実施の形態において、対向車線に存在する対向車両43に対するグレアを防止することについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、自車両41が走行車線上を走行している場合において、追い越し車線上を走行する先行車両に対して同様に適用することができる。この場合、対向車両43を当該先行車両に置き換えればよい。また、自車両41が追い越し車線上を走行している場合において、走行車線上を走行する先行車両に対しても同様に適用することができる。上記実施の形態においては、左ヘッドランプL-HLが形成する遮光領域の右端について検出角度を視差補正することにより決定し、右ヘッドランプR-HLが形成する遮光領域の右端について死角に対向車両43が存在することを想定して検出角度に対して補正を行うことにより決定した。これに対して、走行車線上を走行する先行車両に対して適用する場合、右ヘッドランプR-HLが形成する遮光領域の左端について検出角度を視差補正することにより決定し、左ヘッドランプR-HLが形成する遮光領域の左端について死角に走行車線上を走行する先行車両が存在することを想定して検出角度に対して補正を行うことにより決定する。さらに、上記実施の形態においては左側走行の例で説明したが、海外等右側走行の場合には上記と同様に左右を反転することにより行うことが可能である。
【0037】
上記実施の形態において、カメラ21により車両を撮像して車両検出を行っていたが、これに代えてあるいはこれに加えて、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波レーダー、ソナー等を用いてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0039】
1…車両用灯具システム、2…配光制御システム、3…車両用灯具、21…カメラ、22…画像処理装置、23…配光制御装置、31…車両角度検出部、32…遮光領域決定部、33…配光信号出力部、41…自車両、42…先行車両、43…対向車両、44…人、L-HL…左ヘッドランプ、R-HL…右ヘッドランプ
図1
図2
図3
図4
図5