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特開2023-63747金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造及びその形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063747
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/61 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
E04B1/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173736
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 勝英
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA53
2E125AA57
2E125AE01
2E125AE16
2E125AG20
2E125BB01
2E125BB29
2E125BC03
2E125BC06
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA76
(57)【要約】
【課題】壁又は床の木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材を簡易にかつ強固に接合する。
【解決手段】金属接合板12を用いた木質構造材10と外壁部材11、内壁部材又は床部材の接合構造であって、金属接合板12は平板部20と複数の爪部21を有し、爪部21は平面視略矢印形状であり三角形状部21aと矩形部21bとを有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出する第1の突出部21c、21dとされ、第1の突出部21c、21dが接合面に突き刺したとき引き抜きが困難となる第1の抵抗面(「返し」ともいう。)を備えるとともに、矩形部21bに突き刺し方向に略垂直方向に突出する第2の突出部21e、21fが設けられ、第2の突出部21e、21fに接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の抵抗面(「返し」ともいう。)が備える接合構造により、前記課題を解決できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属接合板を用いた壁又は床の木質構造材とセメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造(以下、「金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造」という。)であって、
前記金属接合板が、板状の平板部と、前記平板部から突出された複数の爪部とを有し、
前記爪部は、平面視略矢印形状であり、三角形状部と矩形部とを有しており、
前記三角形状部の底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出する第1の突出部とされ、前記第1の突出部が接合面に突き刺したとき引き抜きが困難となる第1の抵抗面(「返し」ともいう。)を備えるとともに、前記矩形部に突き刺し方向に略垂直方向に突出する第2の突出部が設けられ、前記第2の突出部に接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の抵抗面(「返し」ともいう。)が備えられており、
前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して前記木質構造材に前記金属接合板を接合し、前記平板部の他方の面側に突出された下向き爪部を突き刺して前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合するか、又は、前記平板部の他方の面側に突出された下向き爪部を突き刺して前記木質構造材に前記金属接合板を接合し、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項2】
前記セメント加工材料がモルタル又はコンクリートである、請求項1に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項3】
前記平板部が平面視四角形状又は平面視円形状である、請求項1又は2に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項4】
前記平面視略矢印形状の方向が前記平板部の一方の辺に平行となるように、かつ、前記方向の列において隣接する前記平面視略矢印形状の向きが逆となるように切り込まれている、請求項3に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項5】
前記平面視略矢印形状の方向が円の中心から放射状となり、前記平面視略矢印形状が同心円上に並ぶように、かつ、前記矢印形状が同心円上で等間隔となるように切り込まれている、請求項3に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項6】
前記上向き爪部は、前記平板部に切り込んで形成した平面視略矢印形状の部分を、前記平板部の一方の面から垂直に突出するように折り曲げてなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項7】
前記下向き爪部は、前記平板部に切り込んで形成した平面視略矢印形状の部分を、前記平板部の他方の面から垂直に突出するように折り曲げてなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項8】
前記下向き爪部は、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を、前記木質構造材の接合面に突き刺したとき、前記平板部の他方の面側に突出される飛び出し爪部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項9】
前記下向き爪部は、前記平板部の各辺に備えられ、板状であり、平面視略三角形状の先端部分を複数横に並べて配置した波型爪部と、前記波型爪部と前記平板部を結ぶ連結部を有し、前記連結部には側面視くの字状の屈曲部が設けられ、前記屈曲部を打ち叩くと、前記平板部の他方の面側に前記波型爪部が突出される叩き出し爪部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属接合板を用いた木質構造材、内壁部材と外壁部材又は床部材の接合構造。
【請求項10】
請求項8に記載の飛び出し爪部を備えた金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法であって、
前記木質構造材の接合面に、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して、前記木質構造材に前記金属接合板を接合するとともに、前記平板部の他方の面側に飛び出し爪部を突出させる工程と、
前記外壁部材、内壁部材又は床部材の接合面に、前記平板部の他方の面から突出された飛び出し爪部を突き刺して、前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合する工程と、を有することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の叩き出し爪部を備えた金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法であって、
前記叩き出し爪部の前記屈曲部を打ち叩いて、前記平板部の他方の面側に前記波型爪部を突出させるとともに、前記木質構造材の接合面に前記波型爪部を突き刺して、前記木質構造材に前記金属接合板を接合させる工程と、
前記外壁部材、内壁部材又は床部材の接合面に、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して、前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合する工程と、を有することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱、梁、壁、床などの木質構造材に、外壁部材や内壁部材や床部材が接合されて、住宅などの構造物が作られている。この外壁部材や内壁部材や床部材として、モルタルやコンクリートなどのセメント加工材料が用いられている。セメント加工材料は、灰色の粉末状素材であるセメントに、水などを加えて加工して使用する建築材料である。初期状態では流動体であるが経時的に固化する。セメント加工材料を外壁部材や内壁部材や床部材として用いた場合、木質構造材に強固に接合できず、滑落する場合があった。
【0003】
そのため、コーチボルトを用いて、木質構造材に外壁部材や内壁部材や床部材を固着して、滑落防止が図られた。しかし、この場合、複数のコーチボルトを取り付けなくてはならないため、手間がかかるとともに、コストがかかるという課題が発生した。また、接合が十分ではなかった。
【0004】
一方、木材と木材を確実につなぎとめ、耐久性、精度、安定感にすぐれた木質トラスを形成する部材として、ギャングネイル(GANG-NAIL)が使われている。ギャングネイルは、米国で生まれた木材緊結金物(ネイルプレート)であり、溶融亜鉛めっき鋼板や普通鋼板等が使用されている。
例えば、複数の木製部材を、針機能部を備えた接合部品により接合して、大断面の木質構造材に加工することが行われている。(特許文献1参照。)
また、複数の木質部材を、目荒らし部を備えた鋼製部材で接合して、木-鋼ハイブリッド構造を形成することも提案されている。(特許文献2参照。)
【0005】
そこで、このような接合部品を利用して、木質構造材に対してセメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材を簡易にかつ強固に接合できるのではないかと着想し、種々の接合部品を検討し、本願発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-193505号公報
【特許文献2】特開2018-204397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の主たる目的は、壁又は床の木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材を簡易にかつ強固に接合することにある。従たる目的は、コストを下げることと施工性の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段として、以下の態様を含む。
<第1の態様>
金属接合板を用いた壁又は床の木質構造材とセメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造(以下、「金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造」という。)であって、
前記金属接合板が、板状の平板部と、前記平板部から突出された複数の爪部とを有し、
前記爪部は、平面視略矢印形状であり、三角形状部と矩形部とを有しており、
前記三角形状部の底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出する第1の突出部とされ、前記第1の突出部が接合面に突き刺したとき引き抜きが困難となる第1の抵抗面(「返し」ともいう。)を備えるとともに、前記矩形部に突き刺し方向に略垂直方向に突出する第2の突出部が設けられ、前記第2の突出部に接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の抵抗面(「返し」ともいう。)が備えられており、
前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して前記木質構造材に前記金属接合板を接合し、前記平板部の他方の面側に突出された下向き爪部を突き刺して前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合するか、又は、前記平板部の他方の面側に突出された下向き爪部を突き刺して前記木質構造材に前記金属接合板を接合し、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0009】
<第2の態様>
前記セメント加工材料がモルタル又はコンクリートである、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0010】
<第3の態様>
前記平板部が平面視四角形状又は平面視円形状である、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0011】
<第4の態様>
前記平面視略矢印形状の方向が前記平板部の一方の辺に平行となるように、かつ、前記方向の列において隣接する前記平面視略矢印形状の向きが逆となるように切り込まれている、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0012】
<第5の態様>
前記平面視略矢印形状の方向が円の中心から放射状となり、前記平面視略矢印形状が同心円上に並ぶように、かつ、前記矢印形状が同心円上で等間隔となるように切り込まれている、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0013】
<第6の態様>
前記上向き爪部は、前記平板部に切り込んで形成した平面視略矢印形状の部分を、前記平板部の一方の面から垂直に突出するように折り曲げてなる、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0014】
<第7の態様>
前記下向き爪部は、前記平板部に切り込んで形成した平面視略矢印形状の部分を、前記平板部の他方の面から垂直に突出するように折り曲げてなる、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0015】
<第8の態様>
前記下向き爪部は、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を、前記木質構造材の接合面に突き刺したとき、前記平板部の他方の面側に突出される飛び出し爪部である、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0016】
<第9の態様>
前記下向き爪部は、前記平板部の各辺に備えられ、板状であり、平面視略三角形状の先端部分を複数横に並べて配置した波型爪部と、前記波型爪部と前記平板部を結ぶ連結部を有し、前記連結部には側面視くの字状の屈曲部が設けられ、前記屈曲部を打ち叩くと、前記平板部の他方の面側に前記波型爪部が突出される叩き出し爪部である、先に記載の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造。
【0017】
<第10の態様>
先に記載の飛び出し爪部を備えた金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法であって、
前記木質構造材の接合面に、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して、前記木質構造材に前記金属接合板を接合するとともに、前記平板部の他方の面側に飛び出し爪部を突出させる工程と、
前記外壁部材、内壁部材又は床部材の接合面に、前記平板部の他方の面から突出された飛び出し爪部を突き刺して、前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合する工程と、を有することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法。
【0018】
<第11の態様>
先に記載の叩き出し爪部を備えた金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法であって、
前記叩き出し爪部の前記屈曲部を打ち叩いて、前記平板部の他方の面側に前記波型爪部を突出させるとともに、前記木質構造材の接合面に前記波型爪部を突き刺して、前記木質構造材に前記金属接合板を接合させる工程と、
前記外壁部材、内壁部材又は床部材の接合面に、前記平板部の一方の面から突出された上向き爪部を突き刺して、前記外壁部材、内壁部材又は床部材に前記金属接合板を接合する工程と、を有することを特徴とする金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造の形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、壁又は床の木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材を簡易にかつ強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
図2】壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す図であって、A-A線矢視断面図である。
図3】壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す拡大断面図である。
図4】金属接合板の一例(第1の金属接合板)を示す平面図である。
図5】金属接合板の一例を示す正面図である。
図6】金属接合板の一例を示す側面図である。
図7】金属接合板の爪部の一例を示す側面図である。
図8】壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の別の一例を示す斜視図である。
図9】床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
図10】床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す断面図である。
図11】床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
図12】床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す断面図である。
図13】金属接合板の別の一例(第2の金属接合板)を示す斜視図である。
図14】金属接合板の別の一例を示す平面図である。
図15】金属接合板の別の一例を示す正面図である。
図16】金属接合板の更に別の一例(第3の金属接合板)を示す斜視図である。
図17】金属接合板の更に別の一例を示す平面図である。
図18】金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。
図19】金属接合板の更に別の一例を示す側面図である。
図20】金属接合板の更に別の一例(第4の金属接合板)を示す平面図である。
図21】金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。
図22】金属接合板の更に別の一例を示す左側面図である。
図23】金属接合板の更に別の一例(第5の金属接合板)を示す平面図である。
図24】金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。
図25】金属接合板の更に別の一例を示す左側面図である。
図26】金属接合板の一例(第6の金属接合板)を示す写真である。
図27】金属接合板の別の一例(第7の金属接合板)を示す写真である。
図28】参考形態1を示す図であって、本発明の接合構造とは別の接合構造に本発明の金属接合板を用いた場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
(木質構造材に対する外壁部材の接合構造)
図1は、壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す斜視図である。図2は、壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す図であって、A-A線矢視断面図である。図1、2の左側は外側であり、右側は内側である。
【0022】
(木質構造材)
木質構造材10として、4層の板材のCLT(Cross Laminated Timber)からなる壁構造材が用いられている。
板材は、例えば木材又は集成材からなる板状部材であり、集成材としては、複数の平面視略長方形状のひき板(ラミナ)が、長辺を互いに接触接合されてなる配向板が含まれる。板材は、配向板であることが好ましく、板材の配向の向きは互いに直交するように積層接着されてなることが好ましい。これにより、強度をより高められる。板材の厚さが1cm以上3.6cm以下であることが好ましい。1cm未満では、十分な強度が得られず、3.6cm超では、嵩張り過ぎて取り扱いが困難となることがある。板材が難燃薬剤注入木材であることが好ましい。これにより、耐火性をより高められる。なお、木質構造材としてはCLTに限らなくて、面材として用いるもの(例えば製材を並べて接着して一体化したものや、OSB材、MDF材等)であればよい。
【0023】
(取付荷重受けファスナー)
木質構造材10には取付荷重受けファスナー23が取り付けられている。これにより、取り扱い容易に設置できる。
取付荷重受けファスナー23は、建築物の躯体側に設けた、例えば鉄骨梁や柱に固定したカーテンウォールの支持ファスナーに係止、溶接、ボルト連結などにより連結され、カーテンウォール外壁が構築される。
【0024】
(セメント加工材料)
外壁部材11は、セメント加工材料からなる。セメント加工材料は、モルタル又はコンクリートであることが好ましい。これにより、耐候性を上げることができるとともに、外観の見た目を向上させることができる。
セメントは灰色粉末状の素材であり、モルタルは、セメントに水と砂を加えて加工した材料であり、コンクリートは、セメントに水と砂と砂利を加えて加工した材料である。
難燃・耐火を考慮して、外壁部材11として、例えば繊維補強モルタルあるいは鉄筋等で補強されたモルタルを用いることが好ましい。これにより、耐久性を確保しながら難燃・耐火性を向上できる。ここで、難燃又は耐火性材料としては、建築基準法施行令第107条に適合するものが望ましい。繊維補強モルタルの繊維としては、ガラス繊維(GRC)、炭素繊維(CFRC)、ポリプロピレン樹脂繊維、鋼繊維(SFRC)、ステンレス繊維などを挙げることができる。
【0025】
(塗布防水)
また、外壁部材11は、塗布防水がされている。これにより、防水性を上げることができる。
塗布防水処理としては、各種撥水材の塗布、アスファルト防水、シート防水、塗膜防水等の防水材によるもの、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、無機系等の塗料を塗布したものなどを使用できる。なお、セメント加工材料で十分に防水性能が確保できる場合には、塗布防水を省略できる。
【0026】
(内装材)
木質構造材の内側には、内装材24が貼り付けられている。
【0027】
(金属接合板)
金属接合板12により、壁の木質構造材10に対して、外壁部材11が接合されている。
図4は、金属接合板の一例(第1の金属接合板)を示す平面図である。図5は、金属接合板の一例を示す正面図である。図6は、金属接合板の一例を示す側面図である。図7は、金属接合板の爪部の一例を示す側面図である。
金属接合板12は、壁又は床からなる木質構造材10に対して、セメント加工材料からなる外壁部材11を接合する際に用いられる。金属接合板12により、木質構造材10に対して外壁部材11の固定・一体化がなされる。これにより、取り扱いし易くできる。
【0028】
金属接合板12は、平板部20と、平板部20に設けられた複数の爪部21を有している。図3では、平面視矩形状の板に、縦6列かける横4列の24個の爪部が設けられているが、板の形状、爪部の数、配列はこれに限られるものではない。
爪部21は板状であり、平板部20が切りかけられ、いずれかの面に立ち上げて設けられ、一方の面に立ち上げられた爪部を上向き爪部と呼び、他方の面に立ち上げられた爪部を下向き爪部と呼ぶ。立ち上げられた開口部分は開口部22とされている。
図7に示すように、爪部21の平面視形状は、平板部20側から外側に伸びる矩形部21bに三角形状部21aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部21c、21dとされるとともに、矩形部21bで第1の突出部21c、21dより平板部20側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部21e、21fが設けられている。
矩形部21bの突き刺し方向に異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面21h、21i及び第2の抵抗面21j、21k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
特に、この2重の返しを有する構造は、初期状態では流動体であるが経時的に固化する材料に突き刺したときでも接合を強固にできる。
これにより、壁の木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材を簡易にかつ強固に接合することができ、外壁部材の剥落を防止できる。
なお、矩形部21bの突き刺し方向に異なる位置に設けられる突出部の数は2個以上であればよく、3個や4個としてもよい。同一形状の突出部であれば、数が多い方が接合を強固にできる。
【0029】
図1、2では、木質構造材10の外面側の4隅近傍を含み、かつ、格子状に金属接合板12を取り付けて、外壁部材11と木質構造材10の一体化を図っているが、金属接合板12の数、打ち込み位置はこれに限られるものではない。
【0030】
図3は、壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示す拡大断面図である。
図3に示すように、木質構造材に対する外壁部材の接合構造は、木質構造材10の接合面10aに、平板部20の一方の面20aから突出された複数の爪部21を突き刺して、木質構造材10に金属接合板12を接合し、外壁部材11の接合面11aに、平板部20の他方の面20bから突出された複数の爪部21を突き刺して、外壁部材11に金属接合板12を接合した構造である。
【0031】
なお、本実施形態では、壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の一例を示したが、壁の木質構造材に対する内壁部材の接合構造としてもよい。
【0032】
(実施形態2)
図8は、壁の木質構造材に対する外壁部材の接合構造の別の一例を示す斜視図である。
外側に、化粧材17が貼り付けられているほかは、実施形態1に示す構造と同一である。
化粧材17の材料としては木材を用いることができる。
この構成により外観の見た目をさらに向上させることができる。
また、図8内で化粧材17(木質仕上げ材)を外壁部材11(コンクリート等の表面壁材)と一体化する際にも、金属接合板12(ギャングネイル)を使って一体化できる。
また、コンクリートを芯材(構造的な力を負う材料)として、表面に木仕上げ材をくっつける際にも、金属接合板12(ギャングネイル)を使って留めることができる。
更に、庇などをコンクリート材とし、表面に木材の仕上げ材をくっつける際に、金属接合板12(ギャングネイル)を使ってセットして、コンクリートを打設して作ることができる。
【0033】
(実施形態3)
図9は、床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す斜視図である。図10は、床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す断面図である。
床の木質構造材30としてCLTが用いられており、その上面にRCスラブからなる床部材31が形成されている。
床部材31はセメント加工材料からなる。床部材31の内部には、複数の鉄筋33が張り廻られている。鉄筋33は、奥から手前に伸びる鉄筋と、左から右に伸びる横列鉄筋とを有する。それぞれ一定間隔で複数配置され、平面視格子状となる配置を形成している。
床の木質構造材に対する床部材の接合構造は、床の木質構造材30の接合面10aに、平板部20の一方の面20aから突出された複数の爪部21を突き刺して、木質構造材30に金属接合板12を接合し、床部材31の接合面31aに、平板部20の他方の面20bから突出された複数の爪部21を突き刺して、床部材31に金属接合板12を接合した構造である。
これにより、固定・一体化でき、剛性を高め、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
なお、床部材31は、大梁36に頭付きスタッド38で固定し、床の木質構造材30をCLT受けアングル37で固定する。また、CLTは小梁35に頭付きスタッド38で固定する。なお、木質構造材30としてCLTでなくても面材として用いる材料(例えば製材を並べて接着して一体化したものや、OSB材、MDF材等)であればよい。
【0034】
(実施形態4)
図11は、床の木質構造材に対する床部材の接合構造の一例を示す斜視図である。図12は、床の木質構造材(に対する床部材の接合構造の一例を示す断面図である。
床の木質構造材40としてCLTが用いられており、その上面にRCスラブからなる床部材41が形成されている。
床部材41はセメント加工材料からなる。床部材41の内部には、複数の鉄筋ワイヤー43が張り廻られている。鉄筋ワイヤー43は、奥から手前に伸びるワイヤーと、左から右に伸びる横列ワイヤーとを有する。それぞれ一定間隔で複数配置され、平面視格子状となる配置を形成している。
床の木質構造材に対する床部材の接合構造は、床の木質構造材40の接合面40aに、平板部20の一方の面20aから突出された複数の爪部21を突き刺して、木質構造材40に金属接合板12を接合し、床部材41の接合面41aに、平板部20の他方の面20bから突出された複数の爪部21を突き刺して、床部材41に金属接合板12を接合した構造である。
これにより、剛性一体化でき、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
なお、床の木質構造材40は、CLTでなくても面材として用いる材料(合板等)であればよく、木質構造材40を複数の製材又は集成材45で保持固定する。また、床部材41は、床の木質構造材40上に保持固定する。
【0035】
(実施形態5)
図13は、金属接合板の別の一例(第2の金属接合板)を示す斜視図である。図14は、金属接合板の別の一例を示す平面図である。図15は、金属接合板の別の一例を示す正面図である。
金属接合板52は、平板部60と、平板部60に設けられた複数の爪部21を有している。図13、14では、平面視円形状の板に、中心から等間隔にずらされた放射状に爪部21が設けられている。中心に近い位置の一段目と、遠い位置の2段目に爪部21が形成され、一段目は等間隔8方向に形成され、二段目は等間隔16方向に形成されている。また、隣り合うものが逆方向に突出するように形成されている。しかし、板の形状、爪部の数、配列はこれに限られるものではない。
【0036】
爪部21は板状であり、平板部60が切りかけられ、いずれかの面に立ち上げて設けられる。立ち上げられた開口部分は開口部22とされている。
図7に示すように、爪部21の平面視形状は、平板部側から外側に伸びる矩形部21bに三角形状部21aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部21c、21dとされるとともに、矩形部21bで第1の突出部21c、21dより平板部20側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部21e、21fが設けられている。
矩形部21bの突き刺し方向の異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面21h、21i及び第2の抵抗面21j、21k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
特に、この2重の返しを有する構造は、初期状態では流動体であるが経時的に固化する材料に突き刺したときでも接合を強固にできる。
これにより、木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材を簡易にかつ強固に接合することができ、外壁部材の剥落、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
なお、矩形部21bの突き刺し方向の異なる位置に設けられる突出部の数は2個以上であればよく、3個や4個としてもよい。同一形状の突出部であれば、数が多い方が接合を強固にできる。
【0037】
(実施形態6)
図16は、金属接合板の更に別の一例(第3の金属接合板)を示す斜視図である。図17は、金属接合板の更に別の一例を示す平面図である。図18は、金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。図19は、金属接合板の更に別の一例を示す側面図である。
金属接合板72は、平板部80と、平板部80に設けられた複数の爪部21、81を有している。平面視矩形状の板に、縦4列、横3列の爪部21が設けられ、縦2列、横4列の爪部81が設けられている。横4列の爪部81は、縦方向で、横3列の爪部21を挟んでいる。また、縦2列の爪部81は、横方向で、縦4列の爪部21の左から第1列と第2列の間、及び、第3列と第4列の間に配置されている。しかし、板の形状、爪部の数、配列はこれに限られるものではない。
【0038】
爪部21は板状であり、平板部80が切りかけられ、一方の面に立ち上げて設けられ、上向き爪部である。立ち上げられた開口部分は開口部22とされている。
図7に示すように、爪部21の平面視形状は、平板部側から外側に伸びる矩形部21bに三角形状部21aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部21c、21dとされるとともに、矩形部21bで第1の突出部21c、21dより平板部20側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部21e、21fが設けられている。
矩形部21bの突き刺し方向に異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面21h、21i及び第2の抵抗面21j、21k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
【0039】
また、爪部81も板状であり、平板部80が切りかけられ、一方の面に立ち上げて設けられる。しかし、爪部81は、矩形部81bが屈曲部81gで側面視くの字状に折り曲げられている。この構造により、平板部80の一方の面の爪部21を木質構造材に突き刺したとき、爪部81は平板部80の他方の面に押し出され、外壁部材又は床部材に突き刺し可能となる。爪部21を突き刺したとき、接合面により押圧され他方の面側に三角形状部81aが突出するので、飛び出し爪部であり、下向き爪部である。立ち上げられた開口部分は開口部82とされている。この構成は、爪部21を突き刺さなければ、飛び出し爪部が他方の面側に突出しないので、一方の面側だけに注意して取り扱えばよく、取り扱いを容易にできる。
爪部81の平面視形状は、平板部側から外側に伸びる連結部81bに三角形状部81aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部81c、81dとされるとともに、矩形部81bで第1の突出部81c、81dより平板部80側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部81e、81fが設けられている。
矩形部81bの突き刺し方向の異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面81h、81i及び第2の抵抗面81j、81k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
特に、この2重の返しを有する構造は、初期状態では流動体であるが経時的に固化する材料に突き刺したときでも接合を強固にできる。
これにより、木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材を簡易にかつ強固に接合することができ、外壁部材の剥落、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
なお、矩形部81bの突き刺し方向の異なる位置に設けられる突出部の数は2個以上であればよく、3個や4個としてもよい。同一形状の突出部であれば、数が多い方が接合を強固にできる。
【0040】
(実施形態7)
図20は、金属接合板の更に別の一例(第4の金属接合板)を示す斜視図である。図21は、金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。図22は、金属接合板の更に別の一例を示す左側面図である。
金属接合板92は、平板部100と、平板部100に設けられた複数の爪部21、101を有している。平面視矩形状の板に、縦4列、横4列の爪部21と、各辺にそれぞれ2つの爪部101が設けられている。爪部21の最右列は右から左へ向く矢印方向とされ、その左列は上から下、下から上の矢印方向が繰り返されている。また、更に、その左及びその左列では、このパターンが繰り返される配置とされている。
しかし、板の形状、爪部の数、配列はこれに限られるものではない。
【0041】
爪部21は板状であり、平板部100が切りかけられ、一方の面に立ち上げて設けられる。立ち上げられた開口部分は開口部22とされている。
図7に示すように、爪部21の平面視形状は、平板部側から外側に伸びる矩形部21bの先端部に三角形状部21aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部21c、21dとされるとともに、矩形部21bで第1の突出部21c、21dより平板部20側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部21e、21fが設けられている。
矩形部21bの突き刺し方向に異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面21h、21i及び第2の抵抗面21j、21k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
特に、この2重の返しを有する構造は、初期状態では流動体であるが経時的に固化する材料に突き刺したときでも接合を強固にできる。
【0042】
また、爪部101は、板状であり、平面視略三角形状の先端部分を複数横に並べて配置した波型爪部101aと、波型爪部101aと平板部100を結ぶ矩形部101bを有し、矩形部101bには側面視くの字状の屈曲部101gが設けられ、折れ曲がり方向から屈曲部101gを打ち叩くと、平板部100の他方の面側に波型爪部101aが突出される叩き出し爪部であり、下向き爪部である。この構造により、屈曲部101gを打ち叩くと、平板部100の他方の面側に波型爪部101aが突出され、外壁部材又は床部材に突き刺し可能となる。この構成は、屈曲部101gを打ち叩かなければ、波型爪部101aが他方の面側に突出しないので、一方の面側だけに注意して取り扱えばよく、取り扱いを容易にできる。
これにより、木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材を簡易にかつ強固に接合することができ、外壁部材の剥落、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
【0043】
なお、爪部101は、側面に設けられている。これにより、爪部21が邪魔にならずに、爪部101を打ち込むことができる。
【0044】
(実施形態8)
図23は、金属接合板の更に別の一例(第5の金属接合板)を示す斜視図である。図24は、金属接合板の更に別の一例を示す正面図である。図25は、金属接合板の更に別の一例を示す左側面図である。
金属接合板112は、平板部120と、平板部120に設けられた複数の爪部21、121を有している。爪部21の矢印の向きのパターンが相違し、各辺に設けた爪部121の数が4とされた他は第4の金属接合板と同一の構成とされている。爪部121は、爪部101と同一の構成である。
【0045】
爪部21は板状であり、平板部120が切りかけられ、一方の面に立ち上げて設けられる。立ち上げられた開口部分は開口部22とされている。
図7に示すように、爪部21の平面視形状は、平板部側から外側に伸びる矩形部21bの先端部に三角形状部21aが設けられてなる矢印形状を有し、三角形状部21aの底辺側の2つの頂点が突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、引き抜きが困難となる第1の突出部21c、21dとされるとともに、矩形部21bで第1の突出部21c、21dより平板部20側に、突き刺し方向に略垂直方向に突出して、接合面に突き刺したとき、より引き抜きが困難となる第2の突出部21e、21fが設けられている。
矩形部21bの突き刺し方向に異なる位置で突出部が設けられることにより、引き抜きが困難となる第1の抵抗面21h、21i及び第2の抵抗面21j、21k(「返し」ともいう。)が突き刺し方向で2重とされることになり、接合を強固にすることができる。
特に、この2重の返しを有する構造は、初期状態では流動体であるが経時的に固化する材料に突き刺したときでも接合を強固にできる。
【0046】
また、爪部121は、板状であり、平面視略三角形状の先端部分を複数横に並べて配置した波型爪部121aと、波型爪部121aと平板部120を結ぶ矩形部121bを有し、矩形部121bには側面視くの字状の屈曲部121gが設けられ、折れ曲がり方向から屈曲部121gを打ち叩くと、平板部120の他方の面側に波型爪部121aが突出される叩き出し爪部であり、下向き爪部である。この構造により、屈曲部121gを打ち叩くと、平板部120の他方の面側に波型爪部121aが突出され、外壁部材又は床部材に突き刺し可能となる。この構成は、屈曲部121gを打ち叩かなければ、波型爪部121aが他方の面側に突出しないので、一方の面側だけに注意して取り扱えばよく、取り扱いを容易にできる。
これにより、木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材を簡易にかつ強固に接合することができ、外壁部材の剥落、床の木質構造材から床部材のずれを防止できる。
【0047】
なお、爪部121は、側面に設けられている。これにより、爪部21が邪魔にならずに、爪部121を打ち込むことができる。
【0048】
(参考形態1)
図28は、参考形態1を示す図であって、本発明の接合構造とは別の接合構造に本発明の金属接合板を用いた場合の一例を示す図である。
まず、一本の梁(木材)130の一面に、2枚の金属接合板12を離間して配置する。
次に、前記一面に重ねて、もう一本の梁(木材)130を置く。
次に、二本の梁(木材)を、開き止めボルトで止めて、重ね梁を作成する。
この構造は、金属接合板12を用いない場合より重ね梁の安定性を高くでき、梁(木材)と梁(木材)の接合構造においても、本発明の金属接合板は効果的に使用できる。
【実施例0049】
(実施例1~7,比較例1)
表1に示す実施例1~7の金属接合板を形成し、比較例1のコーチボルトを用意した。
次に、試験用の木質構造材と外壁部材を用いて接合構造を形成した。
次に、各接合構造の加速耐久実験を行い、剥がれが生じるか否かで、構造安定性を評価した。実施例1~7の金属接合板を用いた接合構造は、コーチボルトを用いた比較例に対し、剥がれが生じず、高い構造安定性を示した。
なお、図26は、金属接合板の一例(第6の金属接合板)を示す写真、図27は、金属接合板の別の一例(第7の金属接合板)を示す写真である。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の金属接合板を用いた木質構造材と外壁部材、内壁部材又は床部材の接合構造は、壁又は床の木質構造材に対して、セメント加工材料からなる外壁部材、内壁部材又は床部材を簡易にかつ強固に接合することができる構造に関し、建築産業分野において活用が期待できる。
【符号の説明】
【0052】
10…木質構造材、10a…接合面、
11…外壁部材、11a…接合面、
12…金属接合板(第1の金属接合板)、
20…平板部、20a…一方の面、20b…他方の面、
21…爪部(上向き爪部、下向き爪部)、21a…三角形状部、21b…矩形部、21c、21d…第1の突出部、21e、21f…第2の突出部、21h、21i…第1の抵抗面、21j、21k…第2の抵抗面、22…開口部、
23…取付荷重受けファスナー、24…内装材、
30…木質構造材、30a…接合面、
31…床部材、31a…接合面、
33…鉄筋、35…小梁、36…大梁、37…CLT受けアングル、38…頭付きスタッド、
40…木質構造材、40a…接合面、
41…床部材、41a…接合面、
43…鉄筋、45…製材又は集成材、
52…金属接合板(第2の金属接合板)、
60…平板部、
72…金属接合板(第3の金属接合板)、
80…平板部、
81…飛び出し爪部(下向き爪部)、81a…三角形状部、81b…矩形部、81c、81d…第1の突出部、81e、81f…第2の突出部、81g…屈曲部、81h、81i…第1の抵抗面、81j、81k…第2の抵抗面、82…開口部、
92…金属接合板(第4の金属接合板)、
100…平板部、
101…叩き出し爪部(下向き爪部)、101a…波型爪部、101b…矩形部、101g…屈曲部、
112…金属接合板(第5の金属接合板)、
120…平板部、
121…叩き出し爪部(下向き爪部)、121a…波型爪部、121b…矩形部、121g…屈曲部、
130…梁(木材)、131…開き止めボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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図28