(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063826
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】電線皮剥工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20230428BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230428BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H02G1/12 026
H02G1/12 021
B26D3/00 603Z
B26B27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173860
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
【テーマコード(参考)】
3C061
5G353
【Fターム(参考)】
3C061AA26
3C061EE22
5G353AA02
5G353AA14
5G353AC03
5G353CA01
5G353DA03
5G353DA06
5G353DA08
5G353EA04
5G353EA08
(57)【要約】
【課題】芯線表面傷防止ピンが破損するのを回避できる電線皮剥工具を提供する。
【解決手段】開閉機構110と、開閉機構110に対して開閉および回転する回転機構200と、回転機構200に取り付けられて共に開閉および回転する皮剥機構300とで電線皮剥工具を構成する。皮剥機構300の皮剥機構本体302を、第1本体部材310と第2本体部材312とを組み合わせて構成する。切削機構は、第2本体部材312に取り付ける。第1本体部材310には、第2本体部材312に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材400と、芯線表面傷防止部材400を電線Lの反対側から支持する支持部材410とを設ける。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉機構と、
前記開閉機構に対して開閉および回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に開閉および回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記皮剥機構は、皮剥機構本体と、切削機構とを備えており、
前記皮剥機構本体は、第1本体部材と第2本体部材とを組み合わせることによって構成されており、
前記切削機構は、前記第2本体部材に取り付けられており、
前記第1本体部材には、前記第2本体部材に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材と、前記芯線表面傷防止部材を電線の反対側から支持する支持部材とが設けられている
電線皮剥工具。
【請求項2】
前記芯線表面傷防止部材と、前記支持部材とは、それぞれ前記第1本体部材から着脱可能である
請求項1に記載の電線皮剥工具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記芯線表面傷防止部材を支持する支持部と、前記第1本体部材に接続する接続部とを有している
請求項1または2に記載の電線皮剥工具。
【請求項4】
前記支持部材は、L字状の部材である
請求項1または2に記載の電線皮剥工具。
【請求項5】
前記支持部材の前記支持部は、前記芯線表面傷防止部材の外形状に沿った形状となっている
請求項3に記載の電線皮剥工具。
【請求項6】
前記芯線表面傷防止部材は、前記電線の絶縁被覆と干渉する
請求項1または2に記載の電線皮剥工具。
【請求項7】
前記芯線表面傷防止部材は、前記電線の芯線よりも軟質の材料で形成されている
請求項1または2に記載の電線皮剥工具。
【請求項8】
前記芯線表面傷防止部材の前記電線に当接する先端形状は、前記電線の長手方向に直交する断面における中心に最も近い位置で前記電線に当接する角部を有している
請求項1または2に記載の電線皮剥工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の中間部における一定長の絶縁被覆を剥離除去するために用いられる電線皮剥工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電設備の工事を行うにあたり、部分的な停電を行うためにバイパス工事や接地工事が行われることがある。その際、バイパスや接地の経路を形成するために電線の中間部における絶縁被覆を剥ぎ取り、導体である芯線を露出させて、そこにバイパス器具や接地器具を接続する作業を活線状態のままで実施することが求められる。
【0003】
このような求めに応じるため、作業者が電線等に直接触れることなく、電線の中間部で絶縁被覆を螺旋状に切削して剥ぎ取ることのできる電線皮剥工具が開発されている(例えば、特許文献1)。そして、所定の工事が終了した後は、芯線が露出した箇所にプラスチック製の絶縁カバーを装着することで復旧が図られる。
【0004】
特許文献1に開示された電線皮剥工具には、絶縁被覆を剥ぎ取った際の芯線に傷が付くのを防止するために、当該芯線を支持する導線(芯線)表面傷防止ピンが設けられている。
【0005】
この導線(芯線)表面傷防止ピンは剥ぎ取り刃なしコマ側から伸縮自在に突設されており、導線(芯線)表面傷防止ピンが伸びきったときに、当該導線(芯線)表面傷防止ピンの先端部が嵌入する係止穴が反対側のコマ(剥ぎ取り刃付きコマ)に穿設されている。
【0006】
これにより、電線皮剥工具を用いて絶縁被覆を剥ぎ取り始める際、最初の一周目は、導線(電線)表面傷防止ピンが剥ぎ取り刃なしコマ側に引っ込んでいることにより電線に対して邪魔にならず、二周目以降は導線(芯線)表面傷防止ピンが伸びて係止穴に嵌まることにより、絶縁被覆が剥ぎ取られた芯線を当該導線(芯線)表面傷防止ピンが当接支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された電線皮剥工具では、導線(芯線)表面傷防止ピンが伸びて問題なく係止穴に嵌まるのであればよいが、係止穴に嵌まるまでの間に導線(芯線)等に押されてしまうことによって導線(芯線)表面傷防止ピンの先端部が係止穴に嵌まることができず、そのまま芯線等に押され続けることによって導線(芯線)表面傷防止ピンが破損するおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導線(芯線)表面傷防止ピンに相当する部材が破損するのを回避できる電線皮剥工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面によれば、
開閉機構と、
前記開閉機構に対して開閉および回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に開閉および回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記皮剥機構は、皮剥機構本体と、切削機構とを備えており、
前記皮剥機構本体は、第1本体部材と第2本体部材とを組み合わせることによって構成されており、
前記切削機構は、前記第2本体部材に取り付けられており、
前記第1本体部材には、前記第2本体部材に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材と、前記芯線表面傷防止部材を電線の反対側から支持する支持部材とが設けられている
電線皮剥工具が提供される。
【0011】
好適には、
前記芯線表面傷防止部材と、前記支持部材とは、それぞれ前記第1本体部材から着脱可能である。
【0012】
好適には、
前記支持部材は、前記芯線表面傷防止部材を支持する支持部と、前記第1本体部材に接続する接続部とを有している。
【0013】
好適には、
前記支持部材は、L字状の部材である。
【0014】
好適には、
前記支持部材の前記支持部は、前記芯線表面傷防止部材の外形状に沿った形状となっている。
【0015】
好適には、
前記芯線表面傷防止部材は、前記電線の絶縁被覆と干渉する。
【0016】
好適には、
前記芯線表面傷防止部材は、前記電線の芯線よりも軟質の材料で形成されている。
【0017】
好適には、
前記芯線表面傷防止部材の前記電線に当接する先端形状は、前記電線の長手方向に直交する断面における中心に最も近い位置で前記電線に当接する角部を有している
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、皮剥機構本体を構成する第1本体部材には、第2本体部材に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材が設けられており、さらに、この芯線表面傷防止部材を電線の反対側から支持する支持部材も設けられている。
【0019】
このように、本発明に係る電線皮剥工具における芯線表面傷防止部材は、当該芯線表面傷防止部材が設けられているのと同じ第1本体部材に接続された支持部材によって支持されているので、芯線表面傷防止部材が伸縮している最中に芯線等に押されてしまっても、支持部材が芯線表面傷防止部材の伸縮方向を保持し続けるので、当該芯線表面傷防止部材が破損するのを回避できる電線皮剥工具を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明が適用された電線皮剥工具100を示す斜視図である。
【
図2】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の正面図である。
【
図3】基準状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図4】基準状態から開方向に少し回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図5】基準状態から開方向にさらに回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図6】基準状態から閉方向に少し回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図7】基準状態から閉方向にさらに回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図8】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の右側面図である。
【
図9】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の左側面図である。
【
図10】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の平面図である。
【
図11】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の分解斜視図である。
【
図12】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300を開いた状態を示す斜視図である。
【
図13】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300を開いた状態を示す斜視図である。
【
図14】セットした電線Lと、芯線表面傷防止部材400との位置関係を示す、
図13のA-A矢視図である。
【
図15】芯線表面傷防止部材400の先端形状のバリエーションを示す図である。
【
図16】本発明が適用された電線皮剥工具100に電線Lをセットした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(電線皮剥工具100の構成)
本実施形態に係る電線皮剥工具100は、大略、開閉機構110と、回転機構200と、皮剥機構300とで構成されている。なお、
図1は、電線皮剥工具100から皮剥機構300が取り外された状態を示す斜視図であり、
図2は、皮剥機構300を示す正面図である。
【0022】
なお、本明細書全体を通して、電線Lの内部にある通電部材を芯線Sといい、当該芯線Sの外側を覆う絶縁部材を絶縁被覆Hという。さらに、絶縁被覆Hによって覆われた芯線Sの全体を被覆電線Lあるいは単に電線Lという。
【0023】
先ず、開閉機構110および回転機構200は、既に公知のものであることから、これらについては簡単に動作の説明を行う。もちろん、以下に説明する開閉機構110および回転機構200は一例であり、電線Lの絶縁被覆Hを剥ぐ動作をできるものであれば、どのような開閉機構110および回転機構200を用いてもよい。
【0024】
図3は、基準状態にある開閉機構110および回転機構200を示している。この状態から、操作棒を用いて開閉機構110の操作棒接続部材125を順方向に回すと回転機構200が反時計回りに回転する。開閉機構110の操作棒接続部材125を逆方向に回すと回転機構200が時計回りに回転する。
【0025】
最初に、操作棒接続部材125を逆方向に回していき、回転機構200を開いた状態にするまでの動作について説明する。
図3に示す状態から操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、ロック本体222における外向突設部228が開閉部材122のフック部132に係合する。引き続き操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、回転機構200が時計回りに回転し、
図4に示すように、このロック本体222が取り付けられたガイド部材204の第1ガイド部材218、およびこれに固定された回転力受け部材202の第1受け部材210における各一方端が、組み合わされる第2ガイド部材220、第2受け部材212から離間していき、回転機構200および皮剥機構300が開いた状態となる。さらに操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、
図5に示すように、さらに離間の度合いが増して、回転機構200が完全に開いた状態となる。この状態で、電線Lを電線皮剥工具100の内側から出し入れすることができる。
【0026】
次に、操作棒接続部材125を順方向に回していき、回転機構200を閉じる動作について説明する。
図3に示す基準状態から操作棒接続部材125を順方向に回していくと、ガイド部材204が図中反時計回りに回転していき、
図6に示すように、開閉ロック機構208を構成するロック本体222の外向突設部228の外面が開閉機構110の保持部材118に突設されたロック本体押圧部材128に当接する。操作棒接続部材125を順方向にさらに回していくと、ロック本体押圧部材128に押されたロック本体222のフック部226がさらに内側(中心側)に向けて回動することとなり、当該フック部226が確実にロック本体係合部材224と係合するようになる。
【0027】
さらに操作棒接続部材125を順方向に回していくと、
図7に示すように、フック部226が確実にロック本体係合部材224と係合した状態のままで回転機構200が回転する。
【0028】
次に、
図2、
図8から
図13を用いて皮剥機構300について説明する。本実施形態に係る皮剥機構300は、大略、皮剥機構本体302と、切削機構304とを備えている。
【0029】
皮剥機構本体302は、略円筒状の部材であり、断面が円弧状に形成された第1本体部材310と第2本体部材312とを組み合わせることによって構成されており、かつ、芯線表面傷防止部材400と、支持部材410と、電線支持部材420と、電線ガイド430とを有している。
【0030】
第1本体部材310は、上述したように断面が略円弧状に形成されており、一方端部の外径に比べて他方端部の外径が小さく設定されている。なお、このように外径が小さく設定された他方端部が、回転機構200の正面側中央部に挿入される「回転機構挿入端部314」である。
【0031】
また、第1本体部材310の外側表面における回転機構挿入端部314を臨む端縁には、一対の回転機構取付突部316が突設されている。さらに、これら一対の回転機構取付突部316からは、回転機構挿入端部314が延びる方向に沿って挿入孔挿通突部318が突設されている。
【0032】
さらに、第1本体部材310における第2本体部材312に向かう面には、当該第2本体部材312に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材400が設けられている。
【0033】
この芯線表面傷防止部材400は、略円柱状の部材であり、第2本体部材312に向けて伸びる方向に付勢されている。本実施形態では、芯線表面傷防止部材400としてプランジャーが使用されている。
【0034】
また、
図14に示すように、皮剥機構300に対して直線状にした電線Lをセットしたときにおいて、芯線表面傷防止部材400の外周面が当該電線Lの芯線Sに接触するように設定されている。つまり、芯線表面傷防止部材400は、電線Lの絶縁被覆Hと干渉する位置にある。
【0035】
これにより、皮剥ぎを実施する前の電線Lを皮剥機構300にセットしたとき、芯線表面傷防止部材400は電線Lの絶縁被覆Hに押されるようにして、上記付勢力に反して、第1本体部材310内に収容されるようにして縮められる。
【0036】
なお、芯線表面傷防止部材400は、電線Lの芯線Sよりも軟質の材料で形成するのが好適である。これにより、芯線Sに傷が付くのをより高い確率で回避できるからである。
【0037】
また、芯線表面傷防止部材400の電線Lに当接する先端形状は、電線Lの断面中心に最も近い位置で電線に当接する角部402を有するようにするのが好適である。例えば、
図15の(a)や(b)に示すような先端形状が考えられる。
【0038】
図2、
図8から
図13に戻り、第1本体部材310には、伸びてきた芯線表面傷防止部材400を電線Lの反対側から支持する支持部材410が着脱可能に取り付けられている。
【0039】
この支持部材410は、芯線表面傷防止部材400を支持する支持部412と、第1本体部材310に接続する接続部414とを有している。本実施形態では、支持部材410は、略L字状の部材であり、支持部412は、芯線表面傷防止部材400の外形状に沿った形状(つまり、円弧状の凹形状)となっている。
【0040】
なお、
図10に示す本実施形態では、芯線表面傷防止部材(プランジャ)400が摺動するシリンダ404の先端位置(芯線表面傷防止部材(プランジャ)400の根元)と支持部材410との間に隙間Xが存在するが、この隙間Xをゼロに、つまり、シリンダ404の先端位置と支持部材410とが接するようにすることにより、芯線表面傷防止部材(プランジャ)400の伸び出した位置の管理が容易になる。
【0041】
また、シリンダ404の外表面にはネジが形成されており、第1本体部材310に対して、芯線表面傷防止部材(プランジャ)400およびシリンダ404が着脱可能になっている。
【0042】
第2本体部材312も基本的に第1本体部材310と同様の構成となっており、回転機構挿入端部314、回転機構取付突部316、および、挿入孔挿通突部318が形成されている。なお、第2本体部材312の回転機構取付突部316における挿入孔挿通突部318が突設されたのとは反対側の端面に切削機構304が取り付けられている。
【0043】
本実施形態では、挿入孔挿通突部318は丸棒状に形成されており、その先端部に周溝320が形成されている。さらに、挿入孔挿通突部318の先端をテーパー状に面取りしておくのが好適である。
【0044】
電線支持部材420は、
図14に示すように、電線Lが延びる方向に沿って、芯線表面傷防止部材400から見て切削機構304における切削刃330とは反対側に配置された部材であり、皮剥開始時において電線Lの表面(絶縁被覆Hの表面)に当接するようになっている。本実施形態では、電線支持部材420は、第1本体部材310の先端面に取り付けられている。
【0045】
このような電線支持部材420を設けることにより、電線皮剥工具100に電線Lをセットした皮剥開始時に当該電線Lが不所望に曲がった状態となり、皮剥の初期段階において切削刃330が絶縁被覆Hにおける所定の深さまで入らず芯線Sが露出しない不具合や、逆に切削刃330が絶縁被覆Hに対して深く入りすぎて芯線Sまで傷つけるという不具合を回避できる。
【0046】
図2、
図8から
図13に戻り、電線ガイド430は、電線Lが芯線表面傷防止部材400の伸縮方向に沿って皮剥機構300にセットされるように電線Lをガイドする部位であり、本実施形態では、第1電線支持部材432と第2電線支持部材434とを有している。これら第1電線支持部材432および第2電線支持部材434は、電線Lが延びる方向に沿って、芯線表面傷防止部材400の両側にそれぞれ配置するのが好適である。
【0047】
第1電線支持部材432は、上述した電線支持部材420の側面部に相当する。
【0048】
本実施形態に係る第2電線支持部材434は、第1本体部材310における電線支持部材420(第1電線支持部材432)が取り付けられたのとは反対側の後端部において、芯線表面傷防止部材400のように第2本体部材312に向かう略円柱状の部材である。
【0049】
このような第1電線支持部材432および第2電線支持部材434を設けることにより、電線Lを皮剥機構300にセットする際、電線Lの周側面を第1電線支持部材432および第2電線支持部材434に当接させつつ所定の位置にスライドさせていくことにより、電線Lをスムーズにガイドすることができる。
【0050】
切削機構304は、上述のように第2本体部材312の回転機構取付突部316における挿入孔挿通突部318が突設されたのとは反対側の端面に取り付けられている。皮剥機構300全体が電線Lを中心として回転することにより、切削機構304が電線Lの周囲を回りながら絶縁被覆Hを切削して剥ぎ取っていく役割を有している。
【0051】
本実施形態に係る切削機構304は、大略、切削刃330と、切削刃台部材332と、被覆屑落下防止部材336と、切削刃回動中心ボルト338と、カラー340と、付勢部材342と、留めボルト344とを備えている。
【0052】
切削刃330は、電線Lの絶縁被覆Hを切削して剥ぎ取っていく部材である。本実施形態に係る切削刃330の長手方向略中央部には、切削刃回動中心ボルト338が挿通されるボルト挿通孔346が形成されている。
【0053】
切削刃台部材332は、皮剥機構本体302に対して切削刃330を適正な位置に保持するための部材である。本実施形態に係る切削刃台部材332は、略短冊状に形成された切削刃台部材本体部348と、この切削刃台部材本体部348から直交する向きに突設された台部350とを有している。切削刃330は、その側面が切削刃台部材本体部348に接するとともに、その底面が台部350に接するようになっている。また、切削刃台部材本体部348における、切削刃330のボルト挿通孔346に対応する位置には、同じく切削刃回動中心ボルト338が挿通される第2ボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0054】
被覆屑落下防止部材336は、電線皮剥工具100による作業が進んで行くにつれて伸びてくる電線Lの被覆屑が不所望に飛び散ってしまったり落下したりするのを防止する役割を有する部材である。本実施形態に係る被覆屑落下防止部材336は、ベース部354と、被覆屑保持部356とを有している。
【0055】
ベース部354は、切削刃330の外側に被せられる略板状材であり、その略中央部には、切削刃回動中心ボルト338が挿通される第3ボルト挿通孔358が形成されている。
【0056】
また、ベース部354は、留めボルト344によって皮剥機構本体302の第2本体部材312に直接固定されている。
【0057】
被覆屑保持部356は、切削刃330によって剥ぎ取られた絶縁被覆H(被覆屑)を引っかけて保持するようにして、この絶縁被覆Hが電線皮剥工具100から不所望に落下しないようにする役割を有している。本実施形態に係る被覆屑保持部356は、切削刃330から離間する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の板状部360と、この板状部360における切削刃330から見て遠い側の端から略直交する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の被覆屑係止部362とを有している。また、板状部360の幅と、被覆屑係止部362の幅とは、ほぼ同じ寸法になっている。
【0058】
切削刃回動中心ボルト338は、切削機構304を皮剥機構本体302に取り付けるための部材である。切削刃回動中心ボルト338の先端部を被覆屑落下防止部材336における第3ボルト挿通孔358、カラー340、付勢部材342、切削刃330におけるボルト挿通孔346、および、切削刃台部材332における第2ボルト挿通孔(図示せず)の順に挿通していき、最後に、皮剥機構本体302における第2本体部材312に形成された切削刃回動中心ボルト受け穴364に挿設・螺合することにより、切削機構304を皮剥機構本体302に取り付けられるようになっている。
【0059】
上述のように、被覆屑落下防止部材336は、そのベース部354が留めボルト344によって皮剥機構本体302に固定されている。このため、被覆屑落下防止部材336と皮剥機構本体302との間で、切削刃回動中心ボルト338を中心として、切削刃330が回動自在に保持されている。
【0060】
カラー340は、切削刃330と被覆屑落下防止部材336との間にクリアランスを設けて、当該間に配設される付勢部材342の配置スペースを確保するための円筒状部材である。
【0061】
付勢部材342は、被覆屑落下防止部材336と皮剥機構本体302との間において回動自在に保持されている切削刃330が所定の方向に回動するように付勢するための部材であり、本実施形態では巻きバネが使用されている。もちろん、切削刃330を所定の方向に付勢できれば、巻きバネに限定されることはない。
【0062】
付勢部材342が切削刃330を回動付勢する方向は、切削刃330における電線Lを切削する端が電線Lの中心に向かう方向である。このように付勢することで、切削刃330における電線Lを切削する端が切削を進めていくにつれて当該電線Lの中心に進んでいき、絶縁被覆Hを剥ぎ取っていけるようになっている。なお、切削刃330における電線Lを切削する端が芯線Sに到達するところまで進むと、切削刃台部材332における切削刃台部材本体部348の先端が芯線Sあるいは絶縁被覆Hに接触することにより、切削刃330がそれ以上進んで芯線Sに触れてしまうのを規制するようになっている。
【0063】
本実施形態に係る切削機構304によれば、電線Lの絶縁被覆Hを切削刃330で切削していくことによって螺旋状に伸びて発生していく被覆屑が被覆屑保持部356に進み、被覆屑保持部356の板状部360に巻き付いていく。さらに絶縁被覆Hの切削を進めていくと、被覆屑は被覆屑保持部356の被覆屑係止部362に達し、さらに被覆屑保持部356を越えて伸びていく。
【0064】
このように被覆屑が被覆屑係止部362を越えて伸びていくと、当該被覆屑はその一部分で必ず被覆屑係止部362に係合している状態を保つことになる。このため、絶縁被覆Hの剥ぎ取り作業中や、作業終了時に被覆屑が電線Lから離れたとき、被覆屑が不所望に電線皮剥工具100から離れていくことがなくなる。
【0065】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の動作)
次に上述した電線皮剥工具100の動作について簡単に説明する。開閉機構110および回転機構200は上述のように回転動作するので、当該回転機構200に皮剥機構300を取り付けて操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、回転機構200および皮剥機構300が開いた状態となる。
【0066】
この状態で電線Lを皮剥機構300にセットし、然る後、操作棒接続部材125を順方向に回していくと、
図16に示すように、回転機構200および皮剥機構300が閉じた状態となる。
【0067】
この状態からさらに操作棒接続部材125を順方向に回していくと皮剥機構300による電線Lの皮剥ぎ作業が進んでいく。
【0068】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の特徴)
上述した実施形態に係る電線皮剥工具100によれば、皮剥機構本体302を構成する第1本体部材310に第2本体部材312に向けて伸縮する芯線表面傷防止部材400が設けられており、この芯線表面傷防止部材400を電線Lの反対側から支持する支持部材410が第1本体部材310に接続する接続部414を有している。
【0069】
このように、本実施形態に係る電線皮剥工具100における芯線表面傷防止部材400は、当該芯線表面傷防止部材400が設けられているのと同じ第1本体部材310に接続された支持部材410によって支持されているので、芯線表面傷防止部材400が伸縮している最中に芯線S等に押されてしまっても、支持部材410が芯線表面傷防止部材400の伸縮方向を保持し続けるので、当該芯線表面傷防止部材400が破損するのを回避できる電線皮剥工具100を提供できる。
【0070】
また、皮剥機構本体302には、電線Lが延びる方向に沿って、芯線表面傷防止部材400から見て切削機構304における切削刃330とは反対側に配置された電線支持部材420が設けられている。
【0071】
このような電線支持部材420を設けることにより、電線皮剥工具100に電線Lをセットした皮剥開始時に当該電線Lが不所望に曲がった状態となり、皮剥の初期段階において切削刃330が絶縁被覆Hにおける所定の深さまで入らず芯線Sが露出しない不具合や、逆に切削刃330が絶縁被覆Hに対して深く入りすぎて芯線Sまで傷つけるという不具合を回避できる。
【0072】
さらに、皮剥機構本体302には、電線Lが芯線表面傷防止部材400の伸縮方向に沿って皮剥機構300にセットされるように電線Lをガイドする電線ガイド430が設けられている。
【0073】
これにより、電線Lを皮剥機構300にセットする際、芯線表面傷防止部材400の伸縮および電線Lのガイドをスムーズに行うことができる。
【0074】
また、芯線表面傷防止部材400の電線Lに当接する先端形状は、電線Lの断面中心に最も近い位置で電線Lに当接する角部402を有している。
【0075】
これにより、電線Lを皮剥機構300にセットする際、電線Lに押された芯線表面傷防止部材400の先端が芯線表面傷防止部材400の伸縮方向から逸れて曲げられる力を極小化できるので、電線Lを皮剥機構300にセットする際、芯線表面傷防止部材400の伸縮および電線Lのガイドをスムーズに行うことができる。
【0076】
また、支持部材410の支持部412は、芯線表面傷防止部材400の外形状に沿った形状となっているので、支持部材410が芯線表面傷防止部材400の表面を傷つけることなく、より確実に芯線表面傷防止部材400を支持できる。
【0077】
また、芯線表面傷防止部材400を電線Lの芯線Sよりも軟質の材料で形成することにより、芯線Sに傷が付くのをより高い確率で回避できる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
100…電線皮剥工具
110…開閉機構、118…保持部材、122…開閉部材、125…操作棒接続部材、128…ロック本体押圧部材、132…フック部
200…回転機構、202…回転力受け部材、204…ガイド部材、208…開閉ロック機構、210…第1受け部材、212…第2受け部材、218…第1ガイド部材、220…第2ガイド部材、222…ロック本体、224…ロック本体係合部材、226…フック部、228…外向突設部
300…皮剥機構、302…皮剥機構本体、304…切削機構、310…第1本体部材、312…第2本体部材、314…回転機構挿入端部、316…回転機構取付突部、318…挿入孔挿通突部、320…周溝
330…切削刃、332…切削刃台部材、336…被覆屑落下防止部材、338…切削刃回動中心ボルト、340…カラー、342…付勢部材、344…留めボルト、346…ボルト挿通孔、348…切削刃台部材本体部、350…台部、354…ベース部、356…被覆屑保持部、358…第3ボルト挿通孔、360…板状部、362…被覆屑係止部、364…切削刃回動中心ボルト受け穴
400…芯線表面傷防止部材、402…角部、404…シリンダ
410…支持部材、412…支持部、414…接続部
420…電線支持部材
430…電線ガイド、432…第1電線支持部材、434…第2電線支持部材
L…電線(被覆電線)、S…芯線、H…絶縁被覆、X…隙間