(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063827
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】太陽光パネル制御装置、船舶用太陽光パネル制御方法及び船舶用太陽光パネル制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02S 10/40 20140101AFI20230428BHJP
H02S 20/32 20140101ALI20230428BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20230428BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20230428BHJP
【FI】
H02S10/40
H02S20/32
B63B35/00 T
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173861
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 直行
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151BA05
5F151JA13
5F151JA14
5F151KA02
5F251BA05
5F251JA13
5F251JA14
5F251KA02
(57)【要約】
【課題】船舶用太陽光パネルの駆動による消費電力量と船舶用太陽光パネルの発電量との収支を効率良く大きくする。
【解決手段】本発明の船舶用太陽光パネル制御装置100は、船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得する基準値取得部107Bと、太陽光パネルの現在の向きにおける第1発電量を取得する発電量取得部107Cと、太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに太陽光パネルを駆動させた際に基準値及び太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出する算出部108と、第1発電量及び第2発電量に基づいて太陽光パネルの向きを制御するパネル制御部110と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得する基準値取得部と、
前記太陽光パネルの現在の向きにおける第1発電量を取得する発電量取得部と、
前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出する算出部と、
前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するパネル制御部と、
を備える、船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項2】
前記第1発電量と前記第2発電量との乖離度合いに基づいて前記所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させるか否かを判断する判断部を備え、
前記パネル制御部は前記駆動させる旨の判断結果に基づいて前記所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させる、
請求項1に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項3】
前記算出部は前記所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させるときに前記太陽光パネルの駆動に必要な電力量である追従消費電力量を推定し、
前記第1発電量と前記第2発電量と前記追従消費電力量との比較に基づいて前記所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させるか否かを判断する判断部を備え、
前記パネル制御部は前記駆動させる旨の判断結果に基づいて前記所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させる、
請求項1又は2に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項4】
前記算出部は前記太陽光パネルを水平に配置したときに得られる前記太陽光パネルの第3発電量と前記太陽光パネルを水平に配置したときに前記太陽光パネルの駆動に必要な電力量である水平消費電力量とを算出し、
前記判断部は、前記第1発電量と前記第2発電量との差分が前記追従消費電力量以下である場合、前記第3発電量と前記水平消費電力量との差分と、前記第1発電量との比較に基づいて前記太陽光パネルの向きを維持する制御及び前記太陽光パネルを水平に配置する制御のいずれを実行するかを判断し、
前記パネル制御部は前記実行する制御の判断結果に基づいて前記太陽光パネルの向きを維持するか又は前記太陽光パネルを水平に配置する、
請求項3に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項5】
前記船舶の出発地点から到着地点までの計画航路であって前記船舶の旋回を開始するために設定される変針点である複数のウェイポイントを有する計画航路を記憶する記憶部と、
前記計画航路において直近に到達したウェイポイントの次のウェイポイントからその次のウェイポイントに向かう際に目標とされる前記船舶の目標船首方位と前記船舶の現在の船首方位とに基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するか否かを判断する判断部と、
を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記太陽光パネルを太陽に向ける制御と、前記太陽光パネルを水平に配置する制御と、前記太陽光パネルの向きを維持する制御とについて、その制御における前記太陽光パネルの発電量と前記太陽光パネルの向きを変更するときの前記太陽光パネルの駆動に必要な消費電力量との差分を算出し、
前記太陽光パネルを太陽に向ける制御と、前記太陽光パネルを水平に配置する制御と、前記太陽光パネルの向きを維持する制御とのうち、前記差分が最も大きい制御を判断する判断部を備え、
前記パネル制御部は前記判断結果に基づいて前記差分が最も大きい制御を実行する、
請求項1に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項7】
前記第1発電量は前記太陽光パネルにおいて実際に得られた発電量であるか又は前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて算出された発電量である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて前記太陽光パネルの現在の向きにおける発電量を算出し、前記算出した現在の向きにおける発電量と前記太陽光パネルの前記現在の向きにおいて実際に得られた発電量との差分を算出し、
前記算出した現在の向きにおける発電量と前記太陽光パネルで実際に得られた発電量との差分に基づいて前記太陽光パネルの劣化度合いを推定する劣化度合い推定部を備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項9】
前記太陽光パネルはその仰角を90度よりも大きく且つその方位を180°よりも大きく変更可能に構成される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項10】
前記太陽光受光装置は水平に配置された日射計又は他の太陽光パネルであり、
前記基準値は前記日射計の測定値であるか又は前記他の太陽光パネルの発電量である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の船舶用太陽光パネル制御装置。
【請求項11】
船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得するステップと、
現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得するステップと、
前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出するステップと、
前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するステップと、
を備える、船舶用太陽光パネル制御方法。
【請求項12】
船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得するステップと、
現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得するステップと、
前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出するステップと、
前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するステップと、
をコンピュータに実行させるための船舶用太陽光パネル制御プログラム。
【請求項13】
太陽光パネルの周囲に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得する基準値取得部と、
現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得する発電量取得部と、
前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出するステップと、
前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するパネル制御部と、
を備える、太陽光パネル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネル制御装置、船舶用太陽光パネル制御方法及び船舶用太陽光パネル制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光パネル制御装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術は、船の帆に複数の太陽電池を設け、帆の適所または船の適所に設けた光量センサと入射角センサとによって、太陽光を検出すると共に太陽光線の入射方向を検出し、これらの検出データに基づいて帆の向きを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光パネルからより多くの電力を得るための技術として、例えば太陽光パネルを太陽に自動的に追従させることが想定される。これにより、太陽光パネルに対する太陽光の入射量を大きくすることができるため、太陽光パネルの発電量を大きくすることができる。
【0005】
ここで、太陽光パネルの発電量は天候の影響を受ける。そのため、太陽光パネルを太陽に追従させる場合、例えば曇天などで太陽光パネルの発電量が低下して太陽光パネルから十分な発電量が得られないにも関わらず太陽光パネルを太陽に向けて駆動させることになる。その結果、この太陽光パネルの駆動による消費電力量と太陽光パネルの発電量との収支を効率良く大きくすることができなかった。
【0006】
上記課題を鑑みて、本発明の目的は、太陽光パネルの駆動による消費電力量と太陽光パネルの発電量との収支を効率良く大きくすることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の船舶用太陽光パネル制御装置は、船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得する基準値取得部と、前記太陽光パネルの現在の向きにおける第1発電量を取得する発電量取得部と、前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出する算出部と、前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するパネル制御部と、を備える。
【0008】
本発明の他の態様の船舶用太陽光パネル制御方法は、船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得するステップと、現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得するステップと、前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出するステップと、前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するステップと、を備える。
【0009】
本発明の他の態様の船舶用太陽光パネル制御プログラムは、船舶に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記船舶に設置された太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得するステップと、現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得するステップと、前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出するステップと、前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するステップと、をコンピュータに実行させるための船舶用太陽光パネル制御プログラムである。
【0010】
本発明の他の態様の太陽光パネル制御装置は、太陽光パネルの周囲に設置された太陽光受光装置の受光結果から前記太陽光パネルの発電量の指標となる基準値を取得する基準値取得部と、現在の向きにおける前記太陽光パネルの第1発電量を取得する発電量取得部と、前記太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される所定の効率以上となる向きに前記太陽光パネルを駆動させた際に前記基準値及び前記太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる第2発電量を算出する算出部と、前記第1発電量及び前記第2発電量に基づいて前記太陽光パネルの向きを制御するパネル制御部と、を備える。
【0011】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、太陽光パネルの駆動による消費電力量と太陽光パネルの発電量との収支を効率良く大きくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の船舶の全体構成を例示する図である。
【
図2】船舶用太陽光パネル装置を例示する図である。
【
図3】第1実施形態の船舶用太陽光パネル制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態の船舶用太陽光パネル制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の船舶用太陽光パネル制御装置の太陽光パネルの発電量の算出処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の変形例の船舶用太陽光パネル制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】船舶の目標船首方位を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態の船舶用太陽光パネル制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
[第1実施形態]
図1を参照する。
図1の船舶50は、船舶用太陽光パネル装置1と、日射計60と、を備える。
図1に示す船舶50においては、
図1の左側が船首50Aであり、
図1の右側が船尾50Bである。日射計60は、船舶用太陽光パネル装置1の周囲に設けられる。日射計60は、船舶50に固定される。本実施形態の日射計60は、その受光面が水平になるように配置される。そのため、日射計60の測定値は、全天から地表の水平面に到達する太陽からの日射量である水平面全天日射量THを表す。本実施形態の日射計60は、太陽光受光装置の一例である。
【0016】
図2は、本実施形態の船舶用太陽光パネル装置1を例示する。
図2に示すように、船舶用太陽光パネル装置1は、基部4と、駆動部6と、連結部8と、太陽光パネル10と、を備える。基部4は、船舶50の甲板2、例えば船首付近の甲板2に設けられた支柱などである。駆動部6は、太陽光パネル10を駆動させる。例えば、駆動部6は、方位角駆動部6Aと仰角駆動部6Bと、を備える。方位角駆動部6Aは、基部4の上端部に設けられる。この方位角駆動部6Aには連結部8が取り付けられる。連結部8は、
図2に一点鎖線で示す垂直な軸線の回りに方位角駆動部6Aによって360度回転可能である。連結部8には、上述した垂直な軸線と直交する水平軸線の回りに回転自在に太陽光パネル10が取り付けられている。太陽光パネル10は、太陽光による光エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電する太陽電池を1又は複数配置して構成される。太陽光パネル10は、連結部8に設けられた例えば仰角駆動部6Bによって水平軸線の回りにほぼ360度回転可能で、例えば甲板2と平行な水平状態をとることができる。太陽光パネル10は、その仰角を90度よりも大きく且つその方位を180°よりも大きく変更可能に構成される。本実施形態の太陽光パネル10は、発電装置の一例である。
【0017】
本実施形態の船舶用太陽光パネル装置1は、太陽光パネル10を太陽に自動的に追従させるように太陽光パネル10の向き(方位及び仰角)を制御可能である。これにより、太陽光パネル10の発電量を効率よく大きくすることができる。しかし、これに限定されず、船舶用太陽光パネル装置1は、太陽光パネル10を太陽に自動的に追従させる機能を有さなくてもよいし、例えば船舶50の周辺の天候が晴天以外の場合には太陽光パネル10を水平に配置するように駆動してもよい。
【0018】
図3を参照する。以下の各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
船舶用太陽光パネル装置1は、パネル制御装置100を備える。パネル制御装置100は、船舶位置出力部101と、船首方位出力部102と、太陽位置出力部103と、パネル方位及び仰角検出部104と、日射量出力部105と、発電量出力部106と、取得部107と、算出部108と、判断部109と、パネル制御部110と、記憶部111と、を備える。本実施形態のパネル制御装置100は、船舶用太陽光パネル制御装置の一例である。
【0020】
船舶位置出力部101は、衛星航法システム、例えばGPS用の衛星から送信される衛星航法システム用信号、例えばGPS信号を受信する例えばGPS受信機(図示せず)の受信信号に基づいて現在位置(例えば、船舶50の緯度及び経度)を出力する。船首方位出力部102は、GPS信号またはジャイロに基づいて船舶50の船首方位を出力する。太陽位置出力部103は、現在の日付及び時刻に基づいて現在の太陽の現在位置を出力する。パネル方位及び仰角検出部104は、太陽光パネル10の現在の向き(方位及び仰角)を検出する。なお、ここでの船首方位は例えば北などの特定の方位を基準としたときの方位を指し、太陽光パネル10の方位は例えば船首方位を基準としたときの方位を指す。
【0021】
日射量出力部105は、日射計60から供給される日射量の測定値を出力する。発電量出力部106は、現在の向きにおける単位時間当たりの太陽光パネル10の発電量(以下、第1発電量という)を出力する。本実施形態の発電量出力部106は、太陽光パネル10で単位時間において実際に得られた発電量を第1発電量として出力する。
【0022】
取得部107は、位置・向き取得部107Aと、基準値取得部107Bと、発電量取得部107Cと、を備える。位置・向き取得部107Aは、船舶50の現在位置、船舶50の現在の船首方位、太陽の現在位置、及び太陽光パネル10の現在の向きを船舶位置出力部101、船首方位出力部102、太陽位置出力部103、及びパネル方位及び仰角検出部104からそれぞれ取得する。基準値取得部107Bは、太陽光パネル10の発電量の指標となる基準値を取得する。本実施形態の基準値取得部107Bは、日射計60の受光結果(日射量の測定値)を基準値として取得する。発電量取得部107Cは、第1発電量を発電量出力部106から取得する。
【0023】
算出部108は、各種算出処理を実行する。例えば、算出部108は、太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させた際に基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて得られる太陽光パネル10の単位時間当たりの発電量(以下、第2発電量という)を算出する。「太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向き」は、太陽光パネルによる発電が現在の太陽の位置と現在の太陽光パネルの向きとに基づいて決定される。本実施形態での「太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向き」は、例えば太陽光パネル10が太陽に正対したときの向きであり、太陽光パネル10を太陽に追従させるように駆動させることにより実現可能である。太陽光パネル10を太陽に正対させた場合、太陽光パネル10による発電が最大効率(例えば効率が100%)となる向きで太陽光パネル10を駆動させることができる。「太陽光パネル10による発電の効率」は、太陽光パネル10の向きが太陽光パネル10を太陽に正対させたときの向きからずれるにつれて低下する。したがって、「太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向き」は、例えば、太陽光パネル10の向きと太陽光パネル10を太陽に正対させたときの向きとのずれが所定範囲内である向きとすることができる。この「所定範囲」は、例えば太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量などから適宜定められる。「太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向き」は、これに限定されず、例えば、太陽光パネル10を水平に配置した時の向きであってもよいし、船首方位、太陽光パネル10の向き、太陽の位置等に基づいて公知の方法を用いて算出した太陽光パネル10による発電の実際の効率が所定の効率以上であるときの向きであってもよい。
【0024】
また、算出部108は、太陽光パネル10を所定の向きに駆動させたときの太陽光パネル10の駆動に必要な消費電力量(以下、消費電力量という)を算出する。
【0025】
判断部109は、太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させるか否かを判断する。
【0026】
パネル制御部110は、方位角駆動部6A及び仰角駆動部6Bに駆動指令を供給することにより、船舶50に設置された太陽光パネル10の向き(方位及び仰角)を制御する。本実施形態では、パネル制御部110は、第1制御~第3制御のうち太陽光パネル10の発電量に対する消費電力量の差分が最大となる制御を実行する。ここで、第1制御は太陽光パネル10の現在の向きを維持する制御であり、第2制御は太陽光パネル10を太陽に追従させる制御であり、第3制御は太陽光パネル10を水平に配置する制御である。第1制御では、太陽光パネル10が現在の向きで維持されるため、消費電力量が必要とされない。第2制御では、太陽光パネル10が太陽に追従するため、最も大きな発電量が得られるが、太陽光パネル10を太陽に追従させるための消費電力量も比較的大きい。第3制御では、太陽光パネル10の受光面が水平に配置されるため、例えば船首方位が頻繁に変化する場合に船舶50がどの方向を向いても効率的に発電できるようにし、かつ太陽光パネルの駆動量が比較的少なくて済むため、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0027】
記憶部111は、各種閾値や太陽光パネル10の制御を実行するための各種プログラム等を記憶している。
【0028】
ところで、船舶50に設置された太陽光パネル10からより多くの電力を得るための技術として、例えば太陽光パネル10を太陽に自動的に追従させることが想定される。これにより、太陽光パネル10が太陽に正対した状態が維持され、太陽光パネル10に入射する日射量を多くすることができるため、太陽光パネル10の発電量を大きくすることができる。
【0029】
ここで、太陽光パネル10の発電量は天候に応じて変化する。例えば、晴天では太陽光が太陽光パネル10に直接到達しやすくなってその日射量が多くなるため、太陽光パネル10の発電量が大きくなる一方で、曇天では太陽光が雲によって散乱されて太陽光パネル10に到達する太陽光の日射量が少なくなる。
【0030】
例えば曇天において太陽光パネル10を太陽に追従させる場合、太陽光パネル10の発電量が低下して太陽光パネル10から十分な発電量が得られないにも関わらず太陽光パネル10を太陽に向けて駆動させる場合が生じる。この場合、例えば太陽光パネル10の発電量が消費電力量以下になるなど、消費電力量と発電量との収支が十分に大きくならない場合があった。
【0031】
特に、船舶50で使用される太陽光パネル10は大型なものも多く、これを駆動する際の消費電力量も大きくなる。そのため、太陽光パネル10の発電量と消費電力量との収支を効率良く大きくする観点から太陽光パネル10の向きを適切に制御することが求められる。
【0032】
上記を踏まえて、
図4を用いて、本実施形態のパネル制御装置の処理S100について説明する。処理S100は、一定の時間間隔毎に実行される。そのため、太陽光パネル10の向きは、一定の時間間隔毎に制御可能である。
【0033】
ステップS101で、取得部107は、各種データを取得する。具体的には、位置・向き取得部107Aは船舶50及び太陽の現在位置、船舶50の現在の船首方位、太陽光パネルの方位及び仰角を取得する。また、基準値取得部107Bは日射量出力部105からの日射量の測定結果を基準値として取得する。また、発電量取得部107Cは発電量出力部106から第1発電量を取得する。取得部107は、取得した各種データを算出部108及びパネル制御部110に供給し、処理S100はステップS102に進む。
【0034】
ステップS102で、算出部108は、基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量等に基づいて、第2制御~第3制御の各々を実行した場合を想定したときの太陽光パネル10の発電量を算出する。
図5を用いて、第2制御~第3制御の各々における発電量の算出処理について説明する。
【0035】
ステップS111で、算出部108は、例えば太陽の現在位置及び現在の日時等に基づいて太陽高度hを算出する。太陽高度hは公知の方法を用いて算出される。
【0036】
ステップS112で、算出部108は、算出した太陽高度hに基づいて、地球の大気圏外から地表の水平面に到達する太陽からの日射量である大気外水平面日射量THOを算出する。大気外水平面日射量THOは太陽高度hから公知の方法を用いて算出される。
【0037】
ステップS113で、算出部108は、以下の式(1)で表される晴天指数ktを算出する。
kt=TH/THO 式(1)
【0038】
ステップS114で、算出部108は、算出した晴天指数ktに基づいて、日射が地球の大気中を透過する過程で大気中の粒子によって散乱され、天空全体から地表の水平面に到達する日射量である水平面天空日射量SHを算出する。本実施形態の算出部108は、水平面天空日射量SHを推定する公知の回帰式であるErbsモデルを用いて基準値として取得した水平面全天日射量THから水平面天空日射量SHを算出する。しかし、Erbsモデルに限定されず、例えばNagataモデルやWatanabeモデルなどの他の公知の手法を用いて水平面天空日射量SHを算出することが可能である。
【0039】
ステップS115で、算出部108は、太陽から太陽に正対する地表の法線面に直接到達する日射量である法線面直達日射量DNを算出する。法線面直達日射量DNは、以下の式(2)の関係から求められる。
TH=DN・sinh+SH 式(2)
【0040】
ステップS116で、算出部108は、第2制御~第3制御の各々において太陽光パネル10に入射する太陽光の日射量を算出する。対象とする斜面を太陽光パネル10の受光面としたとき、この斜面に入射する直達日射量及び天空日射量をそれぞれ斜面直達日射量DT及び斜面天空日射量STとし、地上に到達した太陽光のうち、地表面(太陽光パネル10の前方の地物の表面)で反射してこの斜面に入射する太陽光の日射量を斜面反射日射量RTとすると、太陽光パネル10に入射する太陽光の日射量である斜面全天日射量TTは、以下の式(3)で表される。
TT=DT+ST+RT 式(3)
【0041】
例えば、算出部108は、水平面天空日射量SH、法線面直達日射量DN、現在の太陽光パネル10の方位及び仰角に基づいて、斜面直達日射量DT、斜面天空日射量ST及び斜面反射日射量RTを算出する。斜面直達日射量DT、斜面天空日射量ST及び斜面反射日射量RTは、それぞれ以下の式(4)~式(6)で表される。
DT=DN・cosI 式(4)
ST=SH・F 式(5)
RT=TH・ρ・(1-cosβ)/2 式(6)
【0042】
式(4)中のIは水平面に対する直達日射の入射角[°]であり、式(6)中のβは水平面に対する上記斜面(すなわち、太陽光パネル10の受光面)の傾斜角[°]である。式(5)中のFは斜面天空日射量STの水平面天空日射量SHに対して占める割合を表す関数であり、天空放射輝度分布の取り扱いにより異なる。本実施形態では、関数Fは、例えば、天空の放射輝度分布を一様と仮定した一様分布モデルであるisotropicモデルに基づいて、F=(1+cosβ)/2とする。しかし、これに限定されず、例えばReindlモデルやPerezモデルなどの他の公知の手法を用いて関数Fを算出することが可能である。地物の反射率であるアルベドρは、例えば、「日本建築学会編 建築設計資料集成 1環境,p.78,1978」に記載の反射率を用いることができる。しかし、これに限定されず、アルベドρは他の手法において求められた数値を用いることが可能である。
【0043】
太陽に追従させる第2制御については、太陽光パネル10を太陽に向けたときの太陽光パネル10の向きに基づいて傾斜角βを求めることにより、式(3)から斜面全天日射量TTが算出される。水平に配置する第3制御については、太陽光パネル10を水平に配置したときの向き、すなわちβ=0として、式(3)から斜面全天日射量TTが算出される。
【0044】
ステップS117で、算出部108は、第2制御及び第3制御の各々について算出した斜面全天日射量TTに基づいて、第2制御~第3制御の各々における太陽光パネル10の発電量を算出する。ここでは、第2制御~第3制御の各々について算出した斜面全天日射量TTが所定時間得られた場合を想定して、公知の方法により太陽光パネル10の発電量が算出される。例えば、記憶部111は太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量を事前に記憶しており、算出部108はこの単位日射量当たりの発電量及び算出した斜面全天日射量TTに基づいて、第2制御~第3制御の各々における太陽光パネル10の発電量を算出する。なお、第2制御における太陽光パネル10の発電量は上述の第2発電量に相当する。ステップS117の後、ステップS102は終了して処理S100はステップS103に進む。
【0045】
ステップS103で、算出部108は、第1制御~第3制御の各々を実行した場合を想定したときの太陽光パネル10の消費電力量を算出する。例えば、現在の向きを維持する第1制御については、消費電力量は0となる。太陽に追従させる第2制御については、船舶50及び太陽の現在位置に基づいて、船舶50に対する太陽の方位及び仰角が算出され、現在の船首方位、太陽光パネル10の現在の向き、算出した船舶50に対する太陽の方位及び仰角に基づいて、所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させるときに太陽光パネル10の駆動に必要な電力量である追従消費電力量が算出される。水平に配置する第3制御については、太陽光パネル10の現在の向きに基づいて、太陽光パネル10を現在の向きから水平に配置したときに太陽光パネル10の駆動に必要な電力量である水平消費電力量が算出される。消費電力量は、公知の計算方法を用いて算出される。ステップS103の後、算出部108はステップS102及びS103での算出結果を判断部109に供給し、処理S100はステップS104に進む。
【0046】
ステップS104で、判断部109は、第2発電量に対する第1発電量の差分が追従消費電力量以上であるか否かを判断する。本実施形態の追従消費電力量は、所定の閾値の一例である。追従消費電力量以上である場合(ステップS104のY)、判断部109は第2制御を実行させるための追従制御指令をパネル制御部110に供給し、処理S100はステップS105に進む。追従消費電力量以上ではない場合(ステップS104のN)、処理S100はステップS106に進む。
【0047】
ステップS105で、パネル制御部110は、第2制御を実行する。例えば、パネル制御部110は、船舶50及び太陽の現在位置、船舶50の現在の船首方位、太陽光パネル10の現在の向きに基づいて、太陽光パネル10を太陽に向けるように方位角駆動部6A及び仰角駆動部6Bに駆動指令を供給する。具体的には、パネル制御部110は、船舶50及び太陽の位置と船首方位とに基づいて、太陽光パネル10をそのときの太陽光パネル10の方位及び仰角から何度の方位角及び仰角に回転させればよいかを演算し、その演算された方位角及び仰角を用いて太陽光パネル10を駆動するように方位角駆動部6A及び仰角駆動部6Bに駆動指令を供給する。これにより、太陽光パネル10を太陽に追従させて太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向き(最大効率となる向き)にすることができる。ステップS105の後、処理S100は終了する。
【0048】
ステップS106で、判断部109は、第1発電量が第3発電量と水平消費電力量との差分以上であるか否かを判断する。第1発電量が第3発電量と水平消費電力量との差分以上である場合(ステップS106のY)、判断部109は第1制御指令をパネル制御部110に供給し、処理S100はステップS107に進む。第1発電量が第3発電量と水平消費電力量との差分以上ではない場合(ステップS106のN)、判断部109は第3制御指令をパネル制御部110に供給し、処理S100はステップS108に進む。
【0049】
ステップS107で、パネル制御部110は、第1制御を実行する。ここでは、パネル制御部110は、太陽光パネル10の方位及び仰角を維持する。ステップS107の後、処理S100は終了する。
【0050】
ステップS108で、パネル制御部110は、第3制御を実行する。ここでは、パネル制御部110は、太陽光パネル10の仰角に基づいて太陽光パネル10を水平に配置するように仰角駆動部6Bに駆動指令を供給する。ステップS108の後、処理S100は終了する。
【0051】
このように、本実施形態では、現在の向きにおける太陽光パネル10の第1発電量と、基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて算出された第2発電量とに基づいて、太陽光パネル10の向きが制御される。太陽光パネル10が太陽を向くときの第2発電量が太陽光パネル10の発電量の指標となる基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて算出される。これにより、現在の天候を第2発電量に反映させることができるため、第2発電量をより正確に算出することが可能となる。その結果、太陽光パネル10を太陽に追従させた場合に現在の向きにおける発電量から改善する発電量を精度良く推定することが可能となるため、太陽光パネル10の駆動による消費電力量と太陽光パネル10の発電量との収支を効率良く大きくする制御を実行することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、第1発電量と第2発電量との差分が所定の閾値以上であるか否かに基づいて太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断される。本構成によると、太陽光パネル10の発電量と消費電力量との収支を所定以上確保できるように太陽光パネル10の向きを制御することが可能となる。
【0053】
本実施形態では、第1発電量と第2発電量との差分が追従消費電力量以下であるか否かに基づいて太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断される。本構成によると、例えば曇天などで太陽光パネル10の発電量が低下して太陽光パネル10から十分な発電量が得られないにも関わらず太陽光パネルを太陽に向けて駆動させてしまうことを抑制することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、第1発電量と第2発電量との差分が追従消費電力量以下である場合、第3発電量と水平消費電力量との差分と、第1発電量との比較に基づいて太陽光パネル10の向きを維持する第1制御及び太陽光パネル10を水平に配置する第3制御のいずれを実行するかが判断される。本構成によると、例えば曇天などにより太陽光パネルを太陽に追従させると十分な発電量が得られない場合に、太陽光パネル10の発電量と消費電力量との収支がより大きい手法で太陽光パネル10の向きを制御することが可能となる。
【0055】
(変形例)
以下、実施形態の変形例を説明する。
【0056】
実施形態では、駆動部6は、方位角駆動部6A及び仰角駆動部6Bを含んだが、これに限定されず、方位角駆動部6A及び仰角駆動部6Bの少なくとも一方を含むものであればよい。
【0057】
実施形態では、太陽光パネル10は、基部4と、駆動部6と、連結部8とによって向きを変更可能に構成されたが、これに限定されない。例えば、太陽光パネル10を支持するように甲板2と太陽光パネル10の底部とに上下動可能な複数の駆動部(シリンダーなど)を設け、特定の駆動部を上方又は下方に駆動させて太陽光パネル10を傾けることにより、太陽光パネル10の向きを変更できるような構成であってもよい。
【0058】
実施形態では、太陽光パネル10において実際に得られた発電量を第1発電量としたが、これに限定されない。例えば、第1発電量は、基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて算出された発電量であってもよい。具体的には、例えば、ステップS102において、太陽光パネル10の現在の向きに基づいて傾斜角βを求め、基準値、太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量及び算出した傾斜角βに基づいて現在の向きでの斜面全天日射量TTを算出し、その現在の向きでの斜面全天日射量TTに基づいて第1発電量が算出されてもよい。
【0059】
また、パネル制御装置100は、基準値及び太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量に基づいて算出した現在の向きにおける第1発電量と太陽光パネルの現在の向きにおいて実際に得られた第1発電量との差分に基づいて太陽光パネル10の劣化度合いを推定する劣化度合い推定部112をさらに備えてもよい(
図6参照)。例えば、劣化度合い推定部112は、算出した第1発電量と実際に得られた第1発電量との差分が相対的に大きい場合には、この差分が相対的に小さい場合に比べて、太陽光パネル10の劣化度合いが大きくなるように劣化度合いを推定する。例えば、記憶部111は、算出した現在の向きにおける発電量と太陽光パネルの現在の向きにおいて実際に得られた発電量との差分と太陽光パネル10の劣化度合いとの関係を示すデータテーブルを予め記憶し、劣化度合い推定部112はこのデータテーブルに基づいて太陽光パネル10の劣化度合いを推定することができる。算出した現在の向きにおける発電量が太陽光パネル10の現在の向きにおいて実際に得られた発電量が異なる場合、何らかの原因によって太陽光パネル10が劣化し、太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量が低下していると考えられる。本構成によると、太陽光パネル10の劣化度合いを把握できるため、太陽光パネル10の部品の交換推奨などを提案することが可能となる。
【0060】
実施形態では、太陽光受光装置の一例として日射計60を挙げたが、これに限定されない。例えば、太陽光受光装置は、水平に配置された太陽光パネルであってもよい。この水平に配置された太陽光パネルは、船舶50に固定される。この水平に配置された太陽光パネルは、他の太陽光パネルの一例である。この場合、基準値は、水平に配置された太陽光パネルの発電量であってもよい。太陽光パネルの発電量は日射量が大きくなるにつれて大きくなるため、例えばこの水平に配置された太陽光パネルの単位日射量当たりの発電量を記憶部111において記憶しておくことにより、この発電量から基準となる日射量を換算可能であるためである。
【0061】
実施形態では、第1発電量と第2発電量との差分が追従消費電力量以上であるか否かが判定されたが、これに限定されない。例えば、第1発電量と、第2発電量と追従発電量との差分とが比較されてもよい。第1発電量と第2発電量と追従消費電力量との比較に基づいて太陽光パネルを駆動させるか否かが判断されてもよい。
【0062】
記憶部111は、船舶50の出発地点から到着地点までの計画航路を記憶していてもよい。この計画航路は、船舶50の旋回を開始するために設定される変針点である複数のウェイポイントを有する。この場合、判断部109は、計画航路において直近に到達したウェイポイントWP1の次のウェイポイントWP2からその次のウェイポイントWP3に向かう際に目標とされる船舶50の目標船首方位と船舶50の現在の船首方位とに基づいて(例えば、
図7参照)、太陽光パネル10の向きを制御するか否かを判断してもよい。目標船首方位は、例えば、次のウェイポイントWP2とその次のウェイポイントWP3とを結ぶ直線に沿った方位とすることができる。例えば、判断部109は、現在の船首方位と目標船首方位との差分が所定の基準よりも大きい場合には太陽光パネル10の向きを制御すると判断し、現在の船首方位と目標船首方位との差分が所定の基準以下である場合には太陽光パネル10の向きを制御しないと判断してもよい。
【0063】
実施形態では、船舶用太陽光パネル装置1について述べたが、船舶用に限定されず、本発明は任意の太陽光パネルについて適用可能である。
【0064】
実施形態では、発電量出力部106の出力から第1発電量が取得されたが、これに限定されない。例えば、太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量を記憶部111に記憶しておき、日射量出力部105から取得した日射量と太陽光パネル10の単位日射量当たりの発電量とに基づいて、第1発電量が取得されてもよい。
【0065】
実施形態では、太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きを、太陽光パネル10を太陽に追従させるように駆動することにより太陽光パネル10による発電が最大効率となる向きとしたが、これに限定されない。例えば、最大効率となる向きでは風の影響を強く受けて推進力が得られない場合、最大効率よりも若干小さくても太陽光パネル10に風が当たることで大きい推進力が得られるような向きが所定の効率以上となる向きであってもよい。
【0066】
実施形態では、第1発電量と第2発電量との差分が所定の閾値以上であるか否かに基づいて太陽光パネル10による発電が所定の効率以上となる向きに太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断されたが、これに限定されない。例えば、第1発電量と第2発電量との比や割合等に基づいて太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断されてもよい。したがって、第1発電量と第2発電量との乖離度合い(差分、比率、割合等を含む)に基づいて太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断されてもよい。具体的には、例えば、第1発電量と第2発電量との乖離度合いがその閾値以上であるか否かに基づいて太陽光パネル10を駆動させるか否かが判断されてもよい。
【0067】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0068】
図8を用いて、本実施形態のパネル制御装置の処理S200について説明する。
図8のステップS201~S203については、上述のステップS101~S103と同様であるため、その説明を省略する。
【0069】
ステップS201~S203の後、ステップS204で、算出部108は、第1~第3制御の各々について、その発電量に対する太陽光パネル10の消費電力量の差分を算出する。第1制御については、発電量取得部107Cから供給された第1発電量を用いて消費電力量に対する差分が算出され、第2制御及び第3制御については、ステップS202で算出された発電量を用いて消費電力量に対する差分が算出される。算出部108は、第1制御~第3制御の各々について算出した差分を判断部109に供給する。
【0070】
ステップS205で、判断部109は、第1制御~第3制御の各々について算出した差分に基づいて、第1制御~第3制御のうちのいずれを実行すべきか判断する。例えば、判断部109は、第1制御~第3制御のうちその発電量に対する太陽光パネル10の消費電力量の差分が最大となる制御を判断する。例えば、第1制御、第2制御及び第3制御について算出した差分がそれぞれ2kW、-1kW、1kWである場合、判断部109は、その差分が最大となる制御が第1制御であると判断する。判断部109は、判断結果をパネル制御部110に供給する。
【0071】
ステップS206で、パネル制御部110は、判断結果に基づいて第1制御~第3制御のいずれかを実行する。ステップS206の後、処理S200は終了する。
【0072】
第2実施形態では、第1制御~第3制御のうち、その発電量と消費電力量との差分が最も大きい制御が実行される。本構成によると、発電量と消費電力量との収支の最も大きい制御を用いて太陽光パネルを制御することが可能となる。
【0073】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0074】
1 船舶用太陽光パネル装置、 4 基部、 6 方位角駆動部、 8 連結部、 10 太陽光パネル、 12 仰角駆動部、 50 船舶、 100 パネル制御装置、 101 船舶位置出力部、 102 船首方位出力部、 103 太陽位置出力部、 104 パネル方位及び仰角検出部、 105 日射量出力部、 106 発電量出力部、 107 取得部、 108 算出部、 109 判断部、 110 パネル制御部、 111 記憶部、 112 劣化度合い推定部。