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<図1>
  • 特開-眼科装置 図1
  • 特開-眼科装置 図2
  • 特開-眼科装置 図3
  • 特開-眼科装置 図4
  • 特開-眼科装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063828
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/117 20060101AFI20230428BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20230428BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61B3/117
A61B3/10
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173863
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 則彦
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA02
4C316AB07
4C316AB16
4C316FB06
4C316FB07
4C316FB12
4C316FB13
4C316FB22
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】眼表面の画像を異なる撮影方式で撮影した場合であっても、眼表面の状態(特性)における測定結果を一致させることが可能な眼科装置を提供する。
【解決手段】被検眼における前眼部に点眼された蛍光染色剤から蛍光を励起させる励起光源と、複数のリングを前記前眼部に投影する投影部と、前記前眼部を撮影する撮影光学系と、前記励起光源によって照明された前記前眼部の画像である第1撮影画像を複数枚撮影し、かつ前記投影部により投影された前記前眼部の画像である第2撮影画像を複数枚撮影するように撮影光学系を制御する撮影制御部と、を備える眼科装置を構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼における前眼部に点眼された蛍光染色剤から蛍光を励起させる励起光源と、
複数のリングを前記前眼部に投影する投影部と、
前記前眼部を撮影する撮影光学系と、
前記励起光源によって照明された前記前眼部の画像である第1撮影画像を複数枚撮影し、かつ前記投影部により投影された前記前眼部の画像である第2撮影画像を複数枚撮影するように前記撮影光学系を制御する撮影制御部と、を備える
眼科装置。
【請求項2】
前記第1撮影画像および前記第2撮影画像は、前記被検眼の同一の瞬きの後の所定期間に撮影された画像である、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記第1撮影画像および前記第2撮影画像は、前記被検眼の別の瞬きの後の所定期間に撮影された画像である、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記撮影制御部は、
前記第1撮影画像の連続撮影を行う第1撮影モードと、前記第2撮影画像の連続撮影を行う第2撮影モードと、前記第1撮影画像の連続撮影と前記第2撮影画像の連続撮影を行う第3撮影モードとのいずれかの選択を受け付け、選択されたモードに対応した撮影を行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記撮影制御部は、
前記第1撮影画像の撮影と、前記第2撮影画像の撮影とを所定の回数毎に交互に切り替えて行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第1撮影画像と、前記第2撮影画像とを分離して表示する表示処理部を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記表示処理部は、連続して撮影された複数の前記第1撮影画像および連続して撮影された複数の前記第2撮影画像のうち少なくとも一方の撮影画像を、時系列に沿って並べて表示する、
請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記表示処理部は、連続して撮影された複数の前記第1撮影画像および連続して撮影された複数の前記第2撮影画像のうち少なくとも一方の撮影画像を、時系列順に動画として再生表示する、
請求項6に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出力された光を被検眼の前眼部に照射して眼表面の画像を撮影する眼科装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された眼科装置では、眼表面の画像を撮影する際に、リング光を被検眼の前眼部に照射して撮影する構成、および、被検眼の前眼部に蛍光色素を点眼して蛍光造影撮影する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-84391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された眼科装置では、リング光を照射して眼表面の画像を撮影する手段と、蛍光造影により眼表面の画像を撮影する手段が記載されているが、これら双方の撮影手段の撮影結果を関連づけることについては記載がない。リング光を照射した場合の撮影と蛍光造影による撮影とのいずれの撮影手段においてもドライアイの症状を把握することができるものの、特許文献1に記載された眼科装置では、異なる撮影手段で眼表面の画像を撮影した場合には、眼表面の状態(特性)に関する測定結果が異なる場合がある。同じ被検眼の眼表面の画像を撮影した場合には、撮影手段が異なったとしても、測定結果は、いずれの撮影手段の場合にも同じになることが好ましい。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、眼表面の画像を異なる撮影方式で撮影した場合に、眼表面の状態(特性)に関する測定結果が一致するか否か検証することが可能な眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、眼科装置は、被検眼における前眼部に点眼された蛍光染色剤から蛍光を励起させる励起光源と、複数のリングを前記前眼部に投影する投影部と、前記前眼部を撮影する撮影光学系と、前記励起光源によって照明された前記前眼部の画像である第1撮影画像を複数枚撮影し、かつ前記投影部により投影された前記前眼部の画像である第2撮影画像を複数枚撮影するように前記撮影光学系を制御する撮影制御部と、を備える。
【0007】
すなわち、眼科装置は、被検眼の前眼部を撮影する際に、蛍光染色剤から蛍光を励起させる撮影と、複数のリングを被検眼における前眼部に投影する撮影とを制御する。これにより、例えば眼表面の画像を撮影する場合に、蛍光染色材から蛍光を励起させて撮影した画像と、リング投影により撮影した画像とで、同じ特性(もしくは同じ事象)の画像を取得することができる。このため、異なる撮影方式によって撮影された画像を比較すると、眼表面の状態に関する測定結果が一致するか否か検証することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における光学系を示す図である。
図2】本実施形態における眼科装置の全体構成を説明するブロック図である。
図3】撮影光学系を模式的に示す図である。
図4】本実施形態の制御の一例を示すフローチャートである。
図5】画像撮影の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序にしたがって本発明の実施の形態について説明する。
(1)眼科装置の構成:
(2)撮影制御処理および表示処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)眼科装置の構成:
本発明の一実施形態にかかる眼科装置1は筐体を備えており、筐体内には、複数の種類の測定に利用される光学系および制御部が備えられている。本実施形態において眼科装置1は、少なくとも眼表面の状態を測定する機能と被検眼の眼表面の画像を表示部に表示する機能とを有している。
【0011】
図1は、光学系を示す図である。図2は制御部を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置1の全体構成を説明するブロック図である。以下においては、図1および図2を用いて本発明の一実施例に係る眼科装置1を説明する。眼科装置1は、図2に示すように、被検眼を測定するための光学系が配置されたヘッド部602と、ヘッド部602における光学系の切り替えなどを制御する制御部600を備えた本体部601とによって構成される。
【0012】
本体部601は、ヘッド部602を本体部601に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に移動させるXYZ駆動制御部630、ヘッド部602の空間位置の調整等を指示するジョイスティック640、撮影された被検眼の画像や眼屈折力の測定結果等を表示する表示部650、測定項目等の指示を受け付けるタッチパネル660、制御部600の制御処理において利用されるメモリ670、固視標部を制御する固視標制御部680を備えている。
【0013】
(光学系の構成)
図1には眼科装置1の光学系を示す。光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108に至る光路上の光学素子等を含むアライメント光学系100を備えている。また、光学系は、光源301,302,300aから2次元撮像素子(CCD)306に至る光路上の光学素子等を含む撮影光学系300を備えている。さらに、光学系は、光源514からリレーレンズ403を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む固視光学系400、および、被検眼の眼屈折力を検出する眼屈折力光学系500を備えている。図1に示すように各光学系はその一部が共有される構成になっている。本実施形態においては、被検眼Eの眼前に配置される見口部に、前眼部の測定のための平面ガラス510,511が配置される。
【0014】
(アライメント光学系100)
アライメント光学系100においては、光源101からの光がホットミラー102で反射され、対物レンズ103を通り、ホットミラー104で反射された後、平面ガラス511,510を通り被検眼Eの角膜に照射される。本実施例では、光源101は赤外光を出力するLEDが採用されている。
【0015】
角膜で反射された光は、主光軸O1に対して対称的に配置されたレンズ105およびプロファイルセンサ107、レンズ106およびプロファイルセンサ108で受光される。なお、本実施形態において、光軸は、光学系を構成するレンズの中心を結ぶ線分であり、各レンズは厚さが光軸に対して回転不変であるように配置される(以下同様)。
【0016】
本実施形態においては、被検眼の3次元方向の位置が適正な位置である場合に、角膜で反射された光がプロファイルセンサ107およびプロファイルセンサ108で検出される位置が予め決められている。本体部601の制御部600は、角膜で反射された光がプロファイルセンサ107およびプロファイルセンサ108で検出される位置が予め決められた位置になるように、XYZ駆動制御部630に指示を行うことで3次元方向にヘッド部602を移動させる。この結果、ヘッド部602およびその内部の光学系が、被検眼に対して3次元方向にアライメントされる。
【0017】
なお、アライメントを実施する手法は種々の手法が採用されてよい。例えば、検者が粗アライメントを行った後に、制御部600がオートアライメント(微調整)を実施する構成等を採用可能である。なお、粗アライメントは、例えば、表示部650に表示された被検眼の画像上で検者が角膜からの反射による輝点を視認し、さらに、ジョイスティック640で輝点を所定の範囲に入るようにヘッド部602を移動させるなどの手法を採用可能である。むろん、アライメント光学系は、図1に示される例に限定されず、例えば、Z方向のアライメントを行う光学系とXY方向のアライメントを行う光学系が別の光学系(一部重複含む)である構成等が採用されてもよい。
【0018】
(固視光学系400)
固視光学系400が利用される場合、光源514からの光はコリメータレンズ513で平行光とされ、固視標512に照射される。そして、固視標512からの光はリレーレンズ403を透過した後、反射ミラー404で反射し、ホットミラー506を透過して、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。この後、光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511、510を透過して、被検眼Eの網膜上で結像する。そのため、固視標512と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視標512に基づいて固視され、眼屈折力測定などの眼特性の測定が可能になる。光源514は被験者(あるいは被検者)が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0019】
眼屈折力を測定する際は、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力する。この結果、固視標制御部680は、固視標と被検眼の網膜位置が略共役になるように固視標部(固視標512、コリメータレンズ513および光源514)を移動制御して被検眼を固視させる。その後、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力し、固視標制御部680が固視標部を所定距離移動して雲霧状態にし、眼屈折力を測定する。そのため、制御部600からの信号により固視標部は光軸に沿って前後に移動可能となっている。
【0020】
(眼屈折力光学系500)
眼屈折力が測定される際には、眼屈折力光学系500が利用される。本実施形態においては眼屈折力光学系500に、投光光学系と受光光学系とが含まれている。眼屈折力光学系500は、光源501からミラー503や平面ガラス511を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む。具体的には、眼屈折力が測定される場合、光源501からの測定光(レフ光)が集光レンズ502で集光し、ミラー503で反射して穴あきミラー504の中心にある穴を通る。そして、測定光は、光軸O2に対して斜めに配置された光学偏向部材としての平行平面ガラス505を透過し、さらにホットミラー506およびダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。
【0021】
なお、光学偏向部材としての平行平面ガラス505は、ガラス面が光軸O2に平行な状態から光軸O2に垂直な軸に対して所定の傾斜角だけ傾斜した向きとなるように設置される。ここで、傾斜角は90度より小さい角度(例えば、45度等)であり、測定光と光軸との変位に応じて決められてよい。本実施形態において、平行平面ガラス505は、光軸O2を中心に回転可能である。
【0022】
ダイクロイックミラー304で反射した測定光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511および平面ガラス510を透過して被検眼Eに照射する。測定光が被検眼Eに達すると、測定光は被検眼Eの眼屈折力に応じて変化し、被検眼Eの眼底で反射する。被検眼Eの眼底からの反射光は、照射時とは逆の経路で、平面ガラス510、平面ガラス511、ホットミラー104および対物レンズ303を透過する。さらに、反射光は、ダイクロイックミラー304およびホットミラー506で反射して光軸O2を通り、平行平面ガラス505を透過した後、穴あきミラー504で反射し、レンズ507を透過する。その後、反射光は、リングレンズ508により、2次元撮像素子(CCD)509でリング状に結像(リング像)する。
【0023】
なお、光源501は、アライメント光(光源101)や測定光(光源301および302)より長波長の赤外光が採用されている。本実施形態では、SLD(スーパールミネッセントダイオード)を採用しているが、これに限定するものではなく、光源101などに採用したLEDやレーザーダイオード(LD)を採用してもよい。
【0024】
本実施形態において、平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔に共役となる位置に配置されている。平行平面ガラス505は、空気より大きい屈折率を有しているため、平行平面ガラス505に入射した光の進行方向は変化し、平行平面ガラス505から出力される光の進行方向も変化する。この結果、平行平面ガラス505からの出力光は、入射光に対して所定距離ずれた位置となり、かつ、入射光の進行方向と平行になる。
【0025】
(光源301,302を利用した撮影を行う際の撮影光学系300)
撮影光学系300は、光源301,302を利用して撮影を行う場合と、後述する光源300aを利用した撮影を行う場合とがある。先ず、光源301,302を利用した撮影を行う撮影光学系300について説明する。本実施形態において、光源301,302は青色の可視光を出力するブルーLEDであり、光源301,302から出力される光の波長域は、例えば450nm~520nmの波長域である。これは、被検眼Eに蛍光色素であるフルオレセインを点眼し、光源301,302を被検眼Eに照射することにより、点眼した蛍光色素を励起させるためである。つまり、本実施形態においては、フルオレセイン染色した被検眼Eの前眼部に光源301,302を照射することで、眼表面を観察することが可能である。なお、フルオレセイン染色された前眼部に光源301,302を照射すると、フルオレセインが励起され緑色(蛍光緑色)に光る。
【0026】
眼表面の状態(特性)を測定する際に光源301,302による撮影光学系300が利用される場合、ヘッド部602の被検眼側に配置された光源301および光源302により被検眼Eの角膜部を含む前眼部領域に光が照射される。この状態で、対物レンズ303、グリーンフィルター307、結像レンズ305および2次元撮像素子306により、被検眼Eの前眼部の画像が取得され、取得された被検眼Eの前眼部の画像が表示部650に表示される。なお、グリーンフィルター307は、フルオレセインが発する緑色を選択的に透過させる(言い換えれば、その他の波長をカットする)フィルターであって、蛍光励起された光が、このグリーンフィルター307を透過することにより、より鮮明な撮影画像を取得することができる。
【0027】
なお、本実施形態において、光源301および光源302は光源101より短波長の光を出力する。このため、ホットミラー104は測定用の光(測定光)は透過し、アライメント用の光(アライメント光、光源101からの光)は反射する。また、ダイクロイックミラー304は、測定光は透過するように反射/透過の波長領域が設定されている。これにより、アライメント光と測定光は適切に分割され、各々の測定を可能にしている。なお、光源301,302が、本実施形態における「励起光源」に相当する。
【0028】
(光源300aを利用した撮影を行う際の撮影光学系300)
ついで、光源300aを利用した撮影を行う際の撮影光学系300について説明する。上述のように、本実施形態にかかる眼科装置1においては、光源300aを利用した眼表面の観察を実行することが可能である。光源300aは、見口部の先端(被検眼E側)に取り付けられており、本実施形態において光源300aは、光軸を中心としたリング状パターンを投影する構成を備えている。本実施形態においてリング状パターンは複数個のリングを有し、各リングの直径が異なる。また、被検眼Eと光源300aとの距離が一定の場合、リングの径が大きくなるほど、当該リングによって測定可能な領域の範囲が広くなる。むろん、光源300aの構成は、種々の構成であってよく、リング状パターンの複数のリングから光を出力する1個の光源を有する構成であってもよいし、複数のリングのそれぞれに対応した複数の光源を有する構成であってもよい。
【0029】
光源300aが点灯されると、被検眼Eや眼表面に多方向から光が照射される。なお、本実施形態において光源300aは、緑色光のLEDである。また、光源300aは、緑色光のLEDに限られず、例えば白色光のLEDであってもよい。すなわち、上述のように、撮影光学系300には、グリーンフィルター307が設けられている。したがって、光源300aが緑色光のLEDの場合には、そのまま緑色の撮影画像が取得できる。一方、光源300aが白色光のLEDの場合には、グリーンフィルター307を透過することにより、緑色の撮影画像が取得できる。なお、フルオレセイン染色した前眼部からは緑色の光が出力され、緑色の光によって観察および撮影が行われる。本実施形態においては、光源300aでリング状に照明された前眼部を観察および撮影する光も緑色である。このため、本実施形態においては、フルオレセイン染色した前眼部とリング状に照明された前眼部との双方が緑色の光で観察され、撮影される。このため、検者は、両者を容易に対比することができる。同じ色での観察および測定が必要なければ、光源300aは緑色でなくてもよいし、グリーンフィルター307が省略されてもよい。
【0030】
本実施形態において、光源300aから出力された光が眼表面に照射されると、対物レンズ303、グリーンフィルター307、結像レンズ305および2次元撮像素子306により、被検眼Eの前眼部の画像が取得される。なお、測定対象の部位が2次元撮像素子306で撮影されるように、光源300aが測定対象の部位を照明することができればよい。また、光源300aによりリング状パターンを投影する構成が、本実施形態における「投影部」に相当する。
【0031】
このように、本実施形態では、眼表面の撮影は、上述の光源301,302からの照射によって被検眼Eに点眼したフルオレセインを励起させる撮影と、光源300aからの照射によって被検眼Eにリング投影をすることによる撮影とを含む。これら光源301,302と光源300aとのそれぞれの点灯・消灯を制御することにより、蛍光を励起させる撮影と、リングを投影させる撮影との両方の撮影を用いて眼表面の撮影ができる。つまり、本実施形態では、複数の撮影モードによって眼表面の撮影が可能である。
【0032】
図3は、光源301,302,300aを含む撮影光学系300を模式的に示す図であって、光源301,302、あるいは、光源300a、および、2次元撮像素子306を制御することにより、被検眼Eの前眼部の画像が取得される。すなわち、制御部600により、光源301,302を点灯させ、光源300aを消灯させることにより、光源301,302から出力された光が眼表面に照射され、眼表面から反射した光が、対物レンズ303、グリーンフィルター307、結像レンズ305を通り、2次元撮像素子306に結像することにより、被検眼Eの前眼部の画像が取得される。一方、制御部600により、光源300aを点灯させ、光源301,302を消灯させることにより、光源300aから出力された光がリング状に眼表面に照射され、眼表面から反射した光が、対物レンズ303、グリーンフィルター307、結像レンズ305を通り、2次元撮像素子306に結像することにより、被検眼Eの前眼部の画像が取得される。
【0033】
なお、蛍光を励起させる光源301,302によって照明された前眼部の画像が、本実施形態における「第1撮影画像」に相当し、光源300aを利用した投影部(すなわちリング撮影)により照明された前眼部の画像が、本実施形態における「第2撮影画像」に相当する。また、上述のように、本実施形態では、複数の撮影モードによって眼表面の撮影が可能である。複数の撮影モードのうち、フルオレセイン染色による蛍光を励起させる撮影が、本実施形態における「第1撮影モード」に相当する。言い換えれば、上述の第1撮影画像の撮影を第1撮影モードによって行う。また、複数の撮影モードのうち、リングを前眼部に投影する撮影が、本実施形態における「第2撮影モード」に相当する。言い換えれば、上述の第2撮影画像の撮影を第2撮影モードによって行う。そして、複数の撮影モードのうち、フルオレセイン染色による蛍光を励起させる撮影とリングを前眼部に投影する撮影との両方を用いた撮影が、本実施形態における「第3撮影モード」に相当する。言い換えれば、上述の第1撮影画像と第2撮影画像との撮影を第3撮影モードによって行う。
【0034】
また、本実施形態において、撮影光学系300で撮影される画像の撮影対象は、被検眼Eの特定の部位である。具体的には、眼表面が撮影対象である。
【0035】
(2)撮影制御処理および表示処理:
つぎに、眼表面の画像を撮影するための撮影制御、および、撮影した画像を表示部650に表示する制御(表示処理)について説明する。撮影制御および画像の表示処理は、制御部600により図示しない制御プログラムを実行することによって実現される。その制御プログラムを実行する制御部600は、撮影制御部600a、表示処理部600bとして機能する。
【0036】
撮影制御部600aは、蛍光染色材(フルオレセイン)から蛍光を励起させる励起光源によって照明する第1撮影画像の撮影と、リング光を前眼部に投影する第2撮影画像の撮影とを制御するプログラムモジュールである。本実施形態において、撮影制御部600aは、上述の第1撮影画像の撮影を行う第1撮影モードと、第2撮影画像の撮影を行う第2撮影モードと、第1撮影画像の撮影と第2撮影画像の撮影とを行う第3撮影モードのいずれかの選択を受け付け、選択されたモードに対応した撮影を行う。また、各モードの撮影を行う際に、制御部600は、リング光の光源300aおよび蛍光励起させる光源301,302のオン・オフの切り替えの制御、ならびに、2次元撮像素子306の制御を行う。表示処理部600bは、撮影制御部600aで撮影した画像をディスプレイなどの表示部650に表示する処理を行うプログラムモジュールである。
【0037】
図4は、画像の撮影制御および画像の表示処理の一例を示すフローチャートである。ここで、図4のフローチャートにおける制御を実行する前提として、一般的な眼表面の撮影について説明する。従来、知られている眼表面の撮影は、フルオレセイン染色による撮影が行われている。しかしながら、フルオレセイン染色による撮影は、被検眼Eに染色液を点眼することになるため、被験者(あるいは被検者)の目の状態や体質等によっては副反応が生じるおそれがあり、染色液の使用を避けたい場合がある。そのような場合、従来では、染色液を要しないリング投影による眼表面の撮影が行われる。一方、リング投影による撮影と、フルオレセイン染色による撮影とでは、フルオレセイン染色による撮影の方が、知見や実績が多く、眼表面の状態(特性)における測定結果の信頼性が高い。しかしながら、フルオレセイン染色による撮影と、リング投影による撮影とを比較すると、同じ特性(もしくは同じ事象)を測定しても、同じ結果にならない場合がある。例えば、フルオレセイン染色による撮影によって得られるBUT(tear film Break-Up Time)と、リング投影によって得られるBUTとが一致しない可能性がある。フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが、一致しないならば、何れか一方の測定結果のみでは測定結果の信頼性が低下する可能性がある。そこで、本実施形態においては、フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが一致するか否か検証することが可能な構成とされている。
【0038】
以下、具体的に図4のフローチャートについて説明する。なお、このフローチャートに示す制御は、例えば被験者(あるいは被検者)が自身の頭部や顎を眼科装置1の既定位置にセットし、検者が眼表面の測定開始を指示すると実行される。
【0039】
制御部600は、先ず、撮影モードを確認する(ステップS1)。具体的には、撮影モードが、いずれの撮影モード(撮影パターン)であるかを確認する。上述のように、本実施形態では、撮影モードとして、フルオレセインを点眼して蛍光を励起させる第1撮影モード、リング光を前眼部に投影する第2撮影モード、および、リング撮影モードと蛍光励起モードとを用いた第3撮影モードを含む。第1撮影モードは、フルオレセインを被検眼Eに点眼することになるので、何らかの副反応が生じる可能性がある。そのため、ドライアイの症状が比較的弱い被験者に対しては、第2撮影モードを用いて眼表面の画像を撮影することが好ましい。
【0040】
したがって、ステップS2では、ステップS1で確認した撮影モードが第2撮影モードであるか否かを判断する。なお、ステップS1とステップS2とは、実質的には同様の内容であるため、ステップS1とステップS2とが同時に実行されてもよく、あるいは、ステップS1を省略してステップS2からこのフローチャートにおける制御を開始してもよい。
【0041】
このステップS2で肯定的に判断された場合、すなわち撮影モードが第2撮影モードであると判断された場合には、XYZ方向におけるアライメントを行う(ステップS3)。すなわち、制御部600は、ヘッド部602をXYZの3次元方向に駆動して被検眼Eに対するアライメント(位置合わせ)を行う。具体的には、制御部600は、XYZ駆動制御部630に指示を行い、ヘッド部602を移動させる。この際、制御部600は、撮影光学系300によって被検眼Eを撮影可能な位置として予め決められた基準位置に向けてヘッド部602が既定量移動するようにXYZ駆動制御部630に指示を行う。ヘッド部602が基準位置に存在する際に、プロファイルセンサ107,108上で角膜からの反射光が受光される位置は予め決められている。したがって、制御部600は、角膜からの反射光が予め決められた位置に向けて移動するように、ヘッド部602を既定量移動させる。
【0042】
ついで、制御部600は、光源300aを点灯させる(ステップS4)。すなわち制御部600は、前眼部の眼表面の画像を撮影するために、言い換えればリング光を前眼部に投影するための光源300aを点灯させる。
【0043】
そして、ステップS4で光源300aを点灯させた後に、制御部600は、眼表面の画像を連続撮影する(ステップS5)。すなわち、制御部600は、光源300aを利用した撮影光学系300におけるレンズの駆動部を制御し、対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を光軸方向に移動させて眼表面を合焦状態にさせ、2次元撮像素子306を制御して撮影を行う。連続撮影は、例えば検者の指示により被験者に、瞼を閉じてから、所定時間、瞼を開いてもらい、その間に眼表面の画像を連続で撮影する。あるいは、被験者に瞼の開閉(すなわち瞬き)を行ってもらい、その間に眼表面の画像を連続で撮影する。本実施形態では、2次元撮像素子306のフレームレートは60fpsであり、つまり、1フレーム分の期間は、1/60秒である。この結果、眼表面の画像が連続で撮影される。
【0044】
なお、合焦状態は、画像が連続撮影される前に実現されていればよい。また、合焦状態を実現するための処理は種々の処理であってよい。例えば、2次元撮像素子306の撮影結果に基づいて位相差検出方式によって実現されてもよいし、レンズの位置を変えながら複数の画像が撮影され、合焦状態の画像が撮影される位置に予めレンズが移動されてもよい。撮影が行われると、制御部600は、2次元撮像素子306から出力された画像をメモリ670に記録する。
【0045】
ついで、制御部600は、ステップS5の撮影画像を表示部650に表示する(ステップS6)。すなわち、制御部600は、表示処理部600bの機能により、表示部650にステップS5で撮影した画像を表示する。表示部650への撮影画像の表示は、時系列に沿って並べて表示する。あるいは、時系列順に動画として再生表示する。すなわち、表示部650への表示は、静止画あるいは動画で表示される。
【0046】
つぎに、撮影モードが第1撮影モードの場合の眼表面の撮影について説明する。具体的には、上述のステップS2で否定的に判断された場合、すなわち撮影モードが第2撮影モードでないと判断された場合に、撮影モードか第1撮影モードか否かを判断する(ステップS10)。
【0047】
このステップS10で、撮影モードか第1撮影モードであることにより肯定的に判断された場合には、制御部600は、XYZ方向におけるアライメントを行う(ステップS20)。すなわち、制御部600は、ヘッド部602をXYZの3次元方向に駆動して被検眼Eに対するアライメント(位置合わせ)を行う。アライメントについての具体的な内容は、ステップS3で説明した第2撮影モードにおけるアライメントと同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0048】
ついで、制御部600は、フルオレセイン(蛍光色素)を励起させるための光源301,302を点灯させる(ステップS30)。すなわち制御部600は、前眼部の眼表面の画像を撮影するために、光源を点灯させる。
【0049】
そして、ステップS30で光源301,302を点灯させた後に、制御部600は、眼表面の画像を連続撮影する(ステップS40)。すなわち、制御部600は、光源301,302を利用した撮影光学系300におけるレンズの駆動部を制御し、対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を光軸方向に移動させて眼表面を合焦状態にさせ、2次元撮像素子306を制御して撮影を行う。連続撮影は、例えば検者の指示により被験者に、瞼を閉じてから、所定時間、瞼を開いてもらい、その間に眼表面の画像を連続で撮影する。あるいは、被験者に瞼の開閉(すなわち瞬き)を行ってもらい、その間に眼表面の画像を連続で撮影する。本実施形態では、2次元撮像素子306のフレームレートは60fpsであり、つまり、1フレーム分の期間は、1/60秒である。この結果、眼表面の画像が連続で撮影される。
【0050】
なお、合焦状態は、画像が連続撮影される前に実現されていればよい。また、合焦状態を実現するための処理は種々の処理であってよい。例えば、2次元撮像素子306の撮影結果に基づいて位相差検出方式によって実現されてもよいし、レンズの位置を変えながら複数の画像が撮影され、合焦状態の画像が撮影される位置に予めレンズが移動されてもよい。撮影が行われると、制御部600は、2次元撮像素子306から出力された画像をメモリ670に記録する。
【0051】
ついで、制御部600は、ステップS40の撮影画像を表示する(ステップS50)。すなわち、制御部600は、表示処理部600bの機能により、表示部650にステップS40で撮影した画像を表示する。表示部650への撮影画像の表示は、時系列に沿って並べて表示する。あるいは、時系列順に動画として再生表示する。すなわち、表示部650への表示は、静止画あるいは動画で表示される。
【0052】
つぎに、撮影モードがリング撮影と蛍光励起による撮影との第3撮影モードの場合における眼表面の撮影について説明する。具体的には、上述のステップS10で否定的に判断された場合、すなわち撮影モードが第1撮影モードでないと判断された場合には、撮影モードは、第1撮影モード、第2撮影モードのいずれでもないため、第3撮影モードとなる。
【0053】
したがって、上述の他のモードと同様、制御部600は、XYZ方向におけるアライメントを行う(ステップS100)。すなわち、制御部600は、ヘッド部602をXYZの3次元方向に駆動して被検眼Eに対するアライメント(位置合わせ)を行う。アライメントについての具体的な内容は、ステップS3で説明した第2撮影モードにおけるアライメントと同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0054】
ついで、制御部600は、第1撮影モードと第2撮影モードとを協調制御する。具体的には、本実施形態においては、所定のフレーム毎に第1撮影モードと第2撮影モードとで交互に眼表面の画像を撮影する。より具体的に説明すると、制御部600は、第2撮影モードにより眼表面の画像を撮影するために、光源300a(すなわちリング光源)を点灯させ(ステップS200)、その眼表面の画像である第2撮影画像を連続撮影する(ステップS300)。すなわち、制御部600は、ステップS300の撮影,および、後述するステップS500の撮影を行う前に、レンズの駆動部を制御し、対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を光軸方向に移動させて眼表面を合焦状態にさせる。合焦状態は、画像が連続撮影される前に実現されていればよい。また、合焦状態を実現するための処理は種々の処理であってよい。例えば、2次元撮像素子306の撮影結果に基づいて位相差検出方式によって実現されてもよいし、レンズの位置を変えながら複数の画像が撮影され、合焦状態の画像が撮影される位置に予めレンズが移動されてもよい。合焦状態が実現されると、制御部600は、2次元撮像素子306を制御して撮影を行う。以上のような光源300aの点灯と撮影とは、60fpsの1フレーム分において実施される。すなわち、制御部600は、ステップS200,S300において、光源300aの点灯と、2次元撮像素子306による撮影とを同期させ、1/60秒の期間で照明の切り替えと撮影とが終了するように、光源300aおよび2次元撮像素子306を制御する。なお、後述するステップS600で否定的に判断された場合に、ステップS200へリターンした場合には、ステップS200の制御内容は、蛍光励起光源である光源301,302を消灯し、光源300aを点灯させることになる。
【0055】
ついで、制御部600は、第1撮影モードによる連続撮影を行うために、光源300aを消灯し、光源301,302(すなわち蛍光励起光源)を点灯させる(ステップS400)。つまり、制御部600は、撮影モードを切り替えるために、光源の切り替え制御を行う。そして、制御部600は、光源の切り替えを行った後に、蛍光励起による眼表面の画像である第1撮影画像を撮影する(ステップS500)。すなわち、制御部600は、2次元撮像素子306を制御して撮影を行う。ここでも、光源301,302の点灯と、撮影とは、60fpsの1フレーム分において実施される。すなわち、制御部600は、ステップS400,S500において、光源301,302の点灯と、2次元撮像素子306による撮影とを同期させ、1/60秒の期間で照明の切り替えと撮影とが終了するように、光源301,302および2次元撮像素子306を制御する。
【0056】
これらの撮影において、第2撮影モードによる撮影および第1撮影モードによる撮影は、被検眼の同一の瞬きの後の所定期間に撮影される。ここでは、瞬きの後の所定期間の画像が得られればよく、例えば被験者が瞼を閉じた状態から瞼を開いた後の所定期間に撮影されてもよいし、所定期間より長い期間に渡って撮影が行われ、瞼を閉じた状態から瞼を開いた後の所定期間に撮影された画像が抽出されてもよい。また、これらの撮影において、目の状態は同一の状態で撮影される。第2撮影モードによる画像と第1撮影モードによる画像との撮影間隔は1フレーム分の期間である。本実施形態において、2次元撮像素子306は、上述のように、60fpsで撮影可能な素子であり、1フレーム分の期間は、1/60秒である。したがって、これらの第2撮影モードによる画像と第1撮影モードによる画像とは、ほぼ同時に撮影されることになる。このため、リング撮影による画像とフルオレセイン染色による撮影画像とに写された被検眼は同じ状態の被検眼であると言える。
【0057】
図5は、リング投影とフルオレセイン染色による撮影を交互に実行した場合の例である。この図5に示す例では、1フレーム毎(すなわち1回毎)に、リング投影による撮影とフルオレセイン染色による撮影とを交互に行っている。なお、この図5に示す例では、1フレーム毎、すなわち1/60秒毎(言い換えれば1:1の比率)でリング投影による撮影とフルオレセイン染色による撮影とを交互に行っているものの、撮影の比率はこれに限られない。例えばリング投影による撮影1回に対してフルオレセイン染色による撮影を2回のように(1:2の比率)、所定の比率で撮影してもよい。つまり、1秒の間で、第2撮影モードと第1撮影モードとにおける撮影を所定の回数毎に交互に切り替えて行ってよい。
【0058】
そして、制御部600は、この第2撮影モードおよび第1撮影モードによる撮影を予め定めた所定時間、繰り返し行う。つまり、ステップS200およびステップS300の群αと、ステップS400およびステップS500の群βとを交互に実行し、所定時間経過するまで前眼部の眼表面の画像の撮影を行う。
【0059】
ついで、制御部600は、所定時間が経過したことにより眼表面の画像の撮影が完了したか否かを判断する(ステップS600)。このステップS600で否定的に判断された場合、すなわち所定時間が経過していないと判断された場合には、ステップS200へ戻り、このステップS600で肯定的に判断されるまでステップS200~S500を繰り返し実行する。
【0060】
一方、ステップS600で肯定的に判断された場合、すなわち所定時間が経過したと判断された場合には、制御部600は、時系列に沿って第2撮影モードで撮影した眼表面の画像、および、時系列に沿って第1撮影モードで撮影した眼表面の画像を、それぞれ取得する(ステップS700)。つまり、制御部600は、時系列に沿って並んだそれぞれの撮影モードで撮影された画像を取得する。
【0061】
ついで、制御部600は、ステップS700で取得した撮影画像を表示部650に表示する(ステップS800)。つまり、制御部600は、表示処理部600bの機能により、第2撮影モードにより撮影した画像と、第1モードにより撮影した画像とをそれぞれ分離して、表示部650に表示する。表示部650に表示される撮影画像は、時系列に沿って静止画を並べて表示する、あるいは、時系列順に動画として再生表示する。
【0062】
つぎに、本実施形態における作用について説明する。上述のように、本実施形態では、被検眼Eの前眼部における眼表面の画像を撮影する際に、複数の撮影モードによって撮影が可能である。具体的には、蛍光励起撮影である第1撮影モード、リング撮影である第2撮影モード、および、リング撮影と蛍光励起撮影との両方で撮影する第3撮影モードにより撮影することができる。特に、第3撮影モードによる撮影、すなわちリング投影による撮影とフルオレセイン染色による撮影とを交互に行うことにより、同一の特性(もしくは同じ事象)を、フルオレセイン染色によって撮影した第1撮影画像と、リング投影によって撮影した第2撮影画像とを比較することができる。したがって、フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが一致するか否か検証することが可能である。
【0063】
フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが一致することが判明した場合、以後、原則として、リング投影によって撮影された第2撮影画像に基づいて診断を行うように運用することができる。この場合であっても、詳細に診断を行いたい場合にフルオレセイン染色されて撮影された第1撮影画像に基づいて診断が行われてよい(以下同様)。
【0064】
一方、フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが一致しない場合、各種の運用を行うことが可能である。例えば、フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とで正確な測定が行われた撮影方式が判明する場合、正確な測定を実施可能な撮影方式を優先する運用を行うことができる。むろん、この場合でも、優先されない撮影方式での測定が行われてもよい(以下同様)。
【0065】
また、フルオレセイン染色によって得られる測定結果と、リング投影によって得られる測定結果とが一致しない条件が特定されてもよい。例えば、被検者によって測定結果が一致する場合と一致しない場合とが存在する場合、測定結果が一致する被検者については、原則として、リング投影によって撮影された第2撮影画像に基づいて診断を行うように運用することができる。測定結果が一致しない場合、正確な測定を実施可能な撮影方式を優先する運用を行うことができる。
【0066】
また、前眼部の症状によって測定結果が一致する場合と一致しない場合とが存在する場合、測定結果が一致する症状の検査を行う際には、原則として、リング投影によって撮影された第2撮影画像に基づいて診断を行うように運用することができる。測定結果が一致しない症状の検査を行う際には、正確な測定を実施可能な撮影方式を優先する運用を行うことができる。いずれにしても、本実施形態においては、眼表面の測定において、正確な測定が可能である。
【0067】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、第1撮影モード、および、第2撮影モードによって被検眼を撮影可能であれば、他にも種々の実施形態を採用することが可能である。例えば、眼科装置は、上述のようにヘッド部と本体部とを備える構成に限定されず、他にも種々の要素を備える眼科装置であってよい。
【0068】
上述の実施形態では、制御部600は、リング投影による撮影とフルオレセイン染色による撮影との第3撮影モードを用いて眼表面の撮影を行う際に、ステップS200およびステップS300の群αの制御を行った後に、ステップS400およびステップS500の群βの制御を行うように構成したものの、この制御の群αと群βとの順序は反対であってもよい。つまり、ステップS400およびステップS500の群βの制御(すなわちフルオレセイン染色による撮影)を実行した後に、ステップS200およびステップS300の群αの制御(すなわちリング投影による撮影)を実行してもよい。
【0069】
また、リング投影による撮影画像とフルオレセイン染色による撮影画像とは、被検眼Eの同一の瞬きの後の所定時間に撮影した画像に限られず、別の瞬きの後の所定時間に撮影した画像であってもよい。リング投影による撮影、および、フルオレセイン染色による撮影は、別の瞬きの後に撮影された場合であっても、極短時間(数秒~十数秒)の間に、これらの撮影が行われた場合、同一の被検者の眼表面の状態(特性)はほぼ変化しないと考えられるためである。つまり、リング投影による撮影とフルオレセイン染色による撮影とが別の瞬きの後に撮影された画像であっても、リング投影による撮影画像に写された被検眼とフルオレセイン染色による撮影画像に写された被検眼とは同じ状態の被検眼であると言い得る。
【0070】
また、第1撮影画像(フルオレセイン染色による撮影画像)と、第2撮影画像(リング投影による撮影画像)とを、所定の回数毎に交互に切り替えて行うとは、1/60秒毎に一枚ずつ第1撮影画像と第2撮影画像とを切り替える他、所定の任意の枚数(例えば二枚、三枚)第1撮影画像を取得し、その後に第2撮影画像を所定の任意の枚数を取得してもよい。言い換えれば、光源301,302と光源300aとの切り替えの制御は、1/60秒毎に限られず、任意のタイミングで行ってもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、撮影制御部600aによって、第1撮影モード、および、第2撮影モード、ならびに、第3撮影モードの撮影を行い、その際に、光源301,302や光源300aを制御するように構成したものの、制御内容毎に制御部を設けてもよい。したがって、例えば光源の点灯および消灯を制御する光源制御部を別途設けてもよい。
【0072】
さらに、第1撮影モード、第2撮影モード、および、第3撮影モードによって被検眼の特定の部位を撮影可能にする手法は、方法の発明としても適用可能である。また、以上のような眼科装置、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の機能を有する装置の一部として実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含んでもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…眼科装置、100…アライメント光学系、101…光源、102…ホットミラー、103…対物レンズ、104…ホットミラー、105…レンズ、106…レンズ、107…プロファイルセンサ、108…プロファイルセンサ、300…撮影光学系、300a…光源、301…光源、302…光源、303…対物レンズ、304…ダイクロイックミラー、305…結像レンズ、306…2次元撮像素子、307…グリーンフィルター、400…固視光学系、403…リレーレンズ、404…反射ミラー、500…眼屈折力光学系、501…光源、502…集光レンズ、503…ミラー、504…ミラー、505…平行平面ガラス、506…ホットミラー、507…レンズ、508…リングレンズ、509…2次元撮像素子、510…平面ガラス、511…平面ガラス、512…固視標、513…コリメータレンズ、514…光源、600…制御部、600a…撮影制御部、600b…表示処理部、601…本体部、602…ヘッド部、630…XYZ駆動制御部、640…ジョイスティック、650…表示部、660…タッチパネル、670…メモリ、680…固視標制御部。
図1
図2
図3
図4
図5