(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063840
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の分離工法及び切削分離装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
G21F9/28 551
G21F9/28 511C
G21F9/28 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173882
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴信
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 保志
(72)【発明者】
【氏名】海野 峻行
(72)【発明者】
【氏名】木尾 賢治
(72)【発明者】
【氏名】川又 久仁夫
(72)【発明者】
【氏名】森口 亮
(72)【発明者】
【氏名】中島 一幸
(57)【要約】
【課題】放射性廃棄物から放射性廃棄物でない廃棄物(NR)を効率的に生成する放射性廃棄物の分離工法及び切削分離装置を提供する。
【解決手段】本発明の放射性廃棄物の分離工法は, 表面に汚染部位を有する放射性廃棄物に対して,
放射性廃棄物表面の汚染に触れることで汚染されたフライス、エンドミル等の切削刃が加工物に触れ、加工物が汚染されることを防ぐための切削刃の入刀工程と,
飛散した切削屑が切削後の加工物に触れ,加工物が汚染することを防ぐ分離工程と,
を有することを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に汚染部位を有する放射性廃棄物に対して,
放射性廃棄物表面の汚染に触れることで汚染されたフライス,エンドミル等の切削刃が加工物に触れ,前記加工物が汚染されることを防ぐための前記切削刃の入刀工程と,
飛散した切削屑が切削後の前記加工物に触れ,前記加工物が汚染することを防ぐ分離工程と,
を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性廃棄物の分離工法において,
表面に汚染部位を有する前記放射性廃棄物について汚染面を立てた状態で固定し,汚染面に隣接する面から前記切削刃を入刀する工程と,
前記切削屑と前記加工物が接触しないように,送風により前記切削屑を吹き飛ばしながら分離する工程と,
を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法。
【請求項3】
請求項2に記載の放射性廃棄物の分離工法において,
飛散し落下する前記切削屑と切削後の前記加工物が接触しないように前記切削刃を上方から下方へ動かす分離工程と,
前記切削屑の予期せぬ飛散により,切削後の前記加工物に接触しないようにカバーを備えることを特徴とする放射性廃棄物の分離工法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の放射性廃棄物の分離工法に先立ち,前記放射性廃棄物の表面の汚染が粒子状に飛散することが想定される場合においては,放射性廃棄物表面の汚染を除染する工程を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法。
【請求項5】
放射性廃棄物の汚染部位である面を立てた状態で固定する固定架台と,
前記固定架台に対して進退及び上下に移動して,前記放射性廃棄物の分離処理中に発生した切削屑と加工物が接触しないように切削する切削機と,
を備えたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射性廃棄物の切削分離装置において,
飛散した前記切削屑が前記加工面に接触しないように前記切削機の切削刃の後方からエアを吹き付けて切削処理中に発生した前記切削屑を吹き飛ばす送風部を備えることを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の放射性廃棄物の切削分離装置において,
分離処理中に発生した前記切削屑と前記加工物が接触しないように上端より切削刃を下方へ加工できる機構と,
発生する前記切削屑が加工面に接触しないように前記切削機の切削刃の上方,左右に切削屑カバーを備えることを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置。
【請求項8】
請求項5,請求項6又は請求項7に記載の放射性廃棄物の切削分離装置において,
前記固定架台は取付面に接する前記放射性廃棄物の縁に掛ける爪金具と,前記取付面に升目状に形成して締結手段を介して前記爪金具を前記取付面の任意箇所で固定できる取付溝を有する固定治具を備えたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置。
【請求項9】
請求項5,請求項6,請求項7又は請求項8に記載の放射性廃棄物の切削分離装置において,
前記固定架台は,旋回可能に移動テーブル上に取り付け,
前記移動テーブルは,前記切削機の回転軸を通る垂直平面と直交する方向にスライド移動可能にテーブル架台上に取り付けたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原子力発電所等から発生した放射性廃棄物から汚染または汚染履歴のある部位(以下単に汚染部位)を分離して,放射性廃棄物でない廃棄物(Non Radioactive Waste,以下単にNR)を生成する放射性廃棄物の分離工法及び切削分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長年稼働して老朽化した原子力発電所の廃止措置では,多量の放射性廃棄物が発生する。しかしながら放射性廃棄物は長期管理が必要であり,放射性廃棄物量をいかに減らすかがコストおよび作業低減の鍵となる。
従来,クリアランス制度を活用することにより放射性廃棄物量を減らしてきているが,原子力発電所において発生する放射性廃棄物のほとんどは,表面のみが汚染した金属材料であるため,その表面汚染を分離してNRとすることで放射性廃棄物量を減らすことも考えられる。
【0003】
金属表面の分離方法としては,機械加工方法の一つである切削刃を用いて表面を切削する方法がある。
通常のフライス,エンドミル等の切削刃で切削すると切削屑が発生して加工物の上に溜まっていく。しかしながら,表面が汚染した放射性廃棄物の表面を切削する場合では生じる切削屑が放射性廃棄物であるため,これが加工物の上に溜まることで分離後の汚染のない内部金属が汚染されてしまう。ここで従来の切削屑を除去する方法として特許文献1,2に開示の技術がある。特許文献1に開示の切削バーは切削バーの回転軸に送風ファンを取り付けて,切削バーの回転時に発生する送風が切削屑にあたるようにしている。また特許文献2に開示の装置は,フライスの回転部に攪拌子を設けて切削時に加工物の上に滞留する切削屑に接触させて除去することができる。
【0004】
しかしながら,特許文献1,2に開示の技術は,いずれも切削時に発生する切削屑が一時的に加工物の上に溜まることを前提にして取り除いているため,汚染部位を除去した加工物,すなわちNRを生成できても,ただちに汚染部位と加工物が接触してしまい加工物は汚染されてしまう。
またフライス,エンドミル等の切削刃自体が汚染に触れることで,加工物を汚染させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-199230号公報
【特許文献2】特許第6296006公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は,上記従来技術の問題点に鑑み,放射性廃棄物から汚染部位を分離してNRを効率的に生成する放射性廃棄物の分離工法及び切削分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は,上記課題を解決するための第1の手段として,表面に汚染部位を有する放射性廃棄物に対して,
放射性廃棄物表面の汚染に触れることで汚染されたフライス,エンドミル等の切削刃が加工物に触れ,前記加工物が汚染されることを防ぐための前記切削刃の入刀工程と,
飛散した切削屑が切削後の前記加工物に触れ,前記加工物が汚染することを防ぐ分離工程と,
を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法を提供することにある。
上記第1の手段によれば,放射性廃棄物の表面の汚染部位を切削することにより,放射性廃棄物からNRを効率的に生成でき,放射性廃棄物の減容化を実現できる。
【0008】
本発明は,上記課題を解決するための第2の手段として,第1の手段における分離工法において,
表面に汚染部位を有する前記放射性廃棄物について汚染面を立てた状態で固定し,汚染面に隣接する面から前記切削刃を入刀する工程と,
前記切削屑と前記加工物が接触しないように,送風により前記切削屑を吹き飛ばしながら分離する工程と,
を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法を提供することにある。
上記第2の手段によれば,放射性廃棄物からNRを効率的かつ確実に生成でき,放射性廃棄物の減容化を実現できる。
【0009】
本発明は,上記課題を解決するための第3の手段として,第2の手段における分離工法において,
飛散し落下する前記切削屑と切削後の前記加工物が接触しないように前記切削刃を上方から下方へ動かす分離工程と,
前記切削屑の予期せぬ飛散により,切削後の前記加工物に接触しないようにカバーを備えることを特徴とする放射性廃棄物の分離工法を提供することにある。
上記第3の手段によれば,切削屑の予期せぬランダムな飛散による接触も防止でき,放射性廃棄物からNRを生成する信頼性が向上する。
【0010】
本発明は,上記課題を解決するための第4の手段として,第2又は第3の手段における分離工法に先立ち,放射性廃棄物の表面の汚染が粒子状に飛散することが想定される場合においては,放射性廃棄物表面の汚染を除染する工程を有することを特徴とする放射性廃棄物の分離工法を提供することにある。
上記第4の手段によれば,分離中の振動等により表面の粒子状の汚染が飛散するのを防止でき,放射性廃棄物表面の粒子状の放射性物質による加工物の汚染が想定される場合においても確実にNRを生成できる。
【0011】
本発明は,上記課題を解決するための第5の手段として,
放射性廃棄物の汚染部位である面を立てた状態で固定する固定架台と,
前記固定架台に対して進退及び上下に移動して,前記放射性廃棄物の分離処理中に発生した切削屑と加工物が接触しないように切削する切削機と,
を備えたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば,分離中に発生する切削屑が加工物上に溜まったり,加工物と接触したりすることがなく,放射性廃棄物からNRを効率的に生成できる。
【0012】
本発明は,上記課題を解決するための第6の手段として,第5の手段において,
飛散した前記切削屑が前記加工面に接触しないように前記切削機の切削刃の後方からエアを吹き付けて切削処理中に発生した前記切削屑を吹き飛ばす送風部を備えることを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置を提供することにある。
上記第6の手段によれば,放射性廃棄物からNRを効率的かつ確実に生成でき,放射性廃棄物の減容化を実現できる。
【0013】
本発明は,上記課題を解決するための第7の手段として,第5又は第6の手段において,
分離処理中に発生した前記切削屑と前記加工物が接触しないように上端より切削刃を下方へ加工できる機構と,
発生する前記切削屑が加工面に接触しないように前記切削機の切削刃の上方,左右に切削屑カバーを備えたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置を提供することにある。
上記第7の手段によれば,切削屑の予期せぬ飛散による接触も防止でき,放射性廃棄物からNRを生成する信頼性が向上する。
【0014】
本発明は,上記課題を解決するための第8の手段として,第5,第6又は第7の手段において,前記固定架台は取付面に接する前記放射性廃棄物の縁に掛ける爪金具と,前記取付面に升目状に形成して締結手段を介して前記爪金具を前記取付面の任意箇所で固定できる取付溝を有する固定治具を備えたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置を提供することにある。
上記第8の手段によれば,放射性廃棄物の鋼板が平板又は湾曲していても固定架台の取付面に固定することができる。
【0015】
本発明は,上記課題を解決するための第9の手段として,第5,第6,第7又は第8の手段において,
前記固定架台は,旋回可能に移動テーブル上に取り付け,
前記移動テーブルは,前記切削機の回転軸を通る垂直平面と直交する方向にスライド移動可能にテーブル架台上に取り付けたことを特徴とする放射性廃棄物の切削分離装置を提供することにある。
上記第9の手段によれば,切削機に対して固定架台を旋回することにより放射性廃棄物の湾曲鋼板を曲面に沿って効率的に切削することができる。また切削機の回転軸を通る垂直平面と直交する方向,すなわち放射性廃棄物を横方向に移動させることができ,固定し直すことなく1回の固定作業で切削作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,放射性廃棄物の表面の汚染部位を切削することにより,放射性廃棄物からNRを効率的に生成でき,放射性廃棄物の減容化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の平面図である。
【
図2】本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の正面図である。
【
図3】本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の側面図である。
【
図4】本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の斜視図である。
【
図7】排気筒解体エリアの排気筒吊降ろしの説明図である。
【
図8】排気筒解体エリアの排気筒大切り及び運搬の説明図である。
【
図9】分離エリアの荷受け及び切断の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の放射性廃棄物の分離工法及び切削分離装置の実施形態について,図面を参照しながら,以下詳細に説明する。本発明の放射性廃棄物とは,原子力発電所の排気筒,配管設備などを切断した鋼板である。鋼板は表面に放射能汚染物質が付着した汚染部位を有したものであり,平板,又は曲率(R)を有する湾曲した形状(以下,湾曲鋼板ということあり)がある。また本実施形態では放射性廃棄物を切削分離して汚染部位と分離したものをNR(加工物ということあり)という。
【0019】
[放射性廃棄物の切削分離装置10]
図1は,本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の平面図である(固定架台は省略)。
図2は,本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の正面図である(固定架台は省略)。
図3は,本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の側面図である。
図4は本発明の放射性廃棄物の切削分離装置の斜視図である。
図示のように本発明の放射性廃棄物の切削分離装置10は,放射性廃棄物の鋼板12を立てた状態で固定する固定架台20と,固定架台20に対して進退及び上下移動して,鋼板12を分離処理中に分離した汚染部位と接触しないように切削する切削機50を備えている。
【0020】
(固定架台20側)
固定架台20は,放射性廃棄物の鋼板12又は湾曲鋼板13の表面(汚染部位が付着した主面)が切削刃に対して垂直となるように板を立たせた状態で固定できる架台である。
固定架台20は,架台本体の取付面に固定治具22及び押え治具29を用いて鋼板12又は湾曲鋼板13を固定している。
図5は固定治具の説明図である。固定治具22は,取付溝24と,爪金具26と,締結手段28を有している。
取付溝24は,固定架台の20の両端側に取り付けて,固定架台20の取付面に縦方向及び横方向の升目状に設けた溝である。取付溝24の断面形状は,後述する締結手段26のボルトヘッドが嵌りスライドできるT字形に形成している。
【0021】
爪金具26は,市販のクランプであり,直角三角形状の本体と,本体の両端に設けたスイベルパッドと,本体の直角部に設けたボルト孔と,半円筒座金からなる。本体の一端を取付面上に,他端を鋼板12の縁に引っ掛けるように配置し,ボルト孔には後述する締結手段28のTスロットナットを挿通して固定する。
締結手段28は,スタッドボルト,フランジナット,Tスロットナットからなり,Tスロットナットを取付溝24に嵌めて任意位置まで溝内をスライドできる。スタットボルトは爪金具26のボルト孔に挿通してフランジナットを螺合して爪金具26の一端を鋼板12の縁に引っ掛けた状態で固定できる。
押え治具29は取付面の中心付近に設け,鋼板12の高さ方向に沿ったH形鋼29aと溝形鋼29bからなり,鋼板12及び湾曲鋼板13の中心付近を挟持するように取り付けて切削中に発生する振動を抑制している。なお,押え金具29の挟持箇所を切削する際には抑え金具を取り外して行う。
【0022】
このような固定治具22と抑え治具29を複数組み合わせて,鋼板12又は湾曲鋼板13を固定架台20の取付面に固定できる。
固定架台20は,移動テーブル30上に設けている。移動テーブル30は,平面視で矩形のフレームであり,上面に固定架台20の進退移動部32と旋回部36を設けている。
進退移動部32は,後述する旋回部36を設けるスライダ33と,スライダ33を進退移動するスライドレール34及び駆動モータ35を有している。
旋回部36は,固定架台20を取り付ける扇状の旋回台37と,扇状の要部分に設けた旋回軸(回転軸)38を有している。旋回台37は駆動モータ又は手動により所定角度範囲内で旋回できる。
移動テーブル30はテーブル架台40上に設けている。テーブル架台40は,切削機の回転軸と直交する方向に沿って延出したスライドレール42と,駆動モータ44からなる。移動テーブル30はスライドレール42上に取り付けて,レールに沿って進退移動できる。
【0023】
(切削機50側)
図6は切削機の説明図である。
切削機50は,駆動モータ52と,回転軸に切削刃(フライス又はエンドミル)53を備えた切削機械である。切削機50はフレーム本体60に取り付けている。
切削機50は切削刃の外周沿って両側面及び上面に亘って切削屑カバー51を取り付けている。切削屑カバー51は正面視で扇状に形成されて,切削中に発生する切削屑が両側面及び上面に飛び散ることを防止できる。
切削機50の切削刃の上方にはエアを吹き付ける送風部54を設けている。送風部54は,送風機と吹付けノズルを備え,切削中の切削刃の後方からエアを吹き付けて,発生する切削屑が加工物に付着しないように吹き飛ばしている。
【0024】
フレーム本体60は,固定架台20の取付面と対向する位置に設けた箱型フレームである。フレーム本体は切削機50を上下方向に移動可能な昇降部62と,切削機50を固定架台20に接近又は離間する方向に進退可能な進退移動部64を備えている。昇降部62および進退移動部64は,一例として駆動モータと,スライドレールを用いることができる。
このような構成の放射性廃棄物の切削分離装置10は,切断した放射性廃棄物の鋼板12又は湾曲鋼板13を固定架台20に固定治具22及び抑え治具29を用いて固定する。具体的には鋼板12又は湾曲鋼板13を固定架台20の取付面に立てかけた後,鋼板12の左右,上下の縁に爪金具26のスイベルパッドを引っ掛けて,取付溝24に嵌めた締結手段28のTスロットナットを任意位置まで移動してフランジナットを用いて固定する。
【0025】
湾曲鋼板13の場合,両端と取付面との間に大きな隙間が生じるため,鋼板中心の隙間の少ない箇所から抑え治具29で仮止めしていくと良い。固定架台20をフレーム本体60との間で中心位置となる切削開始位置(原点)まで移動する。切削機50を鋼板12の上端まで移動させて鋼板12に接近させて上方から下方に向けて切削する。このとき
図6に示すように,鋼板12又は湾曲鋼板13と切削刃の接触は,切削刃の側面が汚染部位に接触し,切削刃の先端は鋼板又は湾曲鋼板13の端面から接触し汚染部位よりも深い汚染のない箇所から切削している(本実施形態では切削刃を設定する工程という)。このため,切削中の切削刃により生成したNRが汚染されることを防止して汚染のない状態を保つことができる。切削中に発生する切削屑は,切削屑カバー51により切削刃の上方及び両側面に飛び散ることなく,基本的には重力によって加工物に付着することなく落下する。発生した切削屑が加工物側に飛ぶおそれがあるが,切削刃の後方に設けた送風部54によって発生する切削屑が加工物に付着しないように吹き飛ばすことができる。切削刃が鋼板12の下端まで達した後,鋼板12から切削機50を離間させて上方へ移動させる。この間に,移動テーブルを鋼板の横方向に切削刃の切削長さに応じて移動させる。以上の操作を鋼板12の汚染部位が除去できるまで繰り返し行う。また湾曲鋼板13の場合には,切削刃が湾曲鋼板13の下端まで達した後,湾曲鋼板13から切削機50を離間させて上方へ移動させる。この間に,固定架台20の旋回部36により切削刃の切削長さに応じて所定角度,鋼板を旋回させる。以上の操作を湾曲鋼板13の汚染部位が除去できるまで繰り返し行う。
【0026】
[放射性廃棄物の分離工法]
上記構成による本発明の放射性廃棄物の切削分離装置を用いた分離工法について,以下説明する。
本実施形態の分離工法は,一例として原子力発電所から発生した表面のみが汚染している金属放射性廃棄物(排気筒)を解体する現場に適用した場面について説明する。また作業エリアは,解体エリアと,解体エリアから少し離れたスペースのある分離エリアで行う。
図7は解体エリアの排気筒吊降ろしの説明図である。
図8は排気筒解体エリアの排気筒大切り及び運搬の説明図である。
図9は分離エリアの荷受け及び切断の説明図である。
図10は分離エリアの分離工程の説明図である。
【0027】
(排気筒解体エリア)
排気筒1の除染を行う。本実施形態の除染工程は,放射性廃棄物の付着状況により種々の方法を取ることができる。除染の方法としてはブラスト法,ウォータージェット法等が一般的に知られている。分離工程の前にあらかじめ除染しておくことで,分離時に表面に付着した粒子状の放射性物質が飛散することにより加工物が汚染されることを防ぐことができ,後述する分離工程で汚染部位が除去されたNRが確実に生成できる。
除染は,排気筒の上方から輪切りしてクレーン2で解体エリアに吊降ろす作業(
図7参照)の前後,どちらで行っても構わない。
吊下した排気筒を軸心に沿って複数切断する大切りする一次切断を行う。一次切断した放射性廃棄物3は,トラック4で分離エリアへ運搬する(
図8参照)。
【0028】
(分離エリア)
クレーン2で大切りした放射性廃棄物3を荷受けして,大切りした放射性廃棄物3を切断する(
図9参照)。切断は,表面に汚染部位を有する放射性廃棄物に対して,放射性廃棄物表面の汚染に触れることで汚染されたフライス,エンドミル等の切削刃が加工物に触れ,加工物が汚染されることを防ぐための切削刃の入刀工程と,飛散した切削屑が切削後の加工物に触れ,加工物が汚染することを防ぐ分離工程と,からなる。
具体的には表面に汚染部位を有する放射性廃棄物について汚染面を立てた状態で固定し,汚染面に隣接する面から切削刃を入刀する工程と,切削屑と加工物が接触しないように,送風により切削屑を吹き飛ばしながら分離する工程と,からなる。
また,飛散し落下する切削屑と切削後の加工物が接触しないように切削刃を上方から下方へ動かす分離工程と,切削屑の予期せぬ飛散により,切削後の前記加工物に接触しないようにカバーを備える。
【0029】
放射性廃棄物の切削分離装置10で切断した鋼板12の汚染部位を分離する(
図10参照)。大切りしたのちに切断した放射性廃棄物の鋼板12又は湾曲鋼板13を固定架台20に固定治具22及び抑え治具29を用いて固定する。固定架台20をフレーム本体60との間で中心位置となる切削開始位置(原点)まで移動する。切削機50を鋼板12の上端,換言すると切断した端面まで移動させて鋼板12に接近させて上方から下方に向けて切削する。このとき,鋼板12又は湾曲鋼板13と切削刃の接触は,切削刃の側面が汚染部位に接触し,切削刃の先端は鋼板又は湾曲鋼板13の切断した端面から接触し汚染部位よりも深い汚染のない箇所から切削している。このため,切削中の切削刃により生成したNRが汚染されることを防止して汚染のない状態を保つことができる。切削中に発生する切削屑は,切削屑カバー51により切削刃の上方及び両側面に飛び散ることなく,基本的には重力によって加工物に付着することなく落下する。発生した切削屑が加工物側に飛ぶおそれがあるが,切削刃の後方に設けた送風部54によって発生する切削屑が加工物に付着しないように吹き飛ばすことができる。切削刃が鋼板12の下端まで達した後,鋼板12から切削機50を離間させて上方へ移動させる。この間に,移動テーブルを鋼板の横方向に切削刃の切削長さに応じて移動させる。以上の操作を鋼板12の汚染部位が除去できるまで繰り返し行う。また湾曲鋼板13の場合には,切削刃が湾曲鋼板13の下端まで達した後,湾曲鋼板13から切削機50を離間させて上方へ移動させる。この間に,固定架台20の旋回部36により切削刃の切削長さに応じて所定角度,鋼板を旋回させる。以上の操作を湾曲鋼板13の汚染部位が除去できるまで繰り返し行う。
【0030】
分離工程後,汚染部位とNRを分離して回収する。
なお,表面に汚染部位を有する放射性廃棄物は,事前の線量調査で線量が少ない場合,例えば,分離工程で十分に汚染部位を除去してNRを生成できる場合は,除染工程を省略して,切断して分離工程のみ行うようにしても良い。これにより放射性廃棄物の分離工法のコスト削減,短期化が図れる。
このような本発明によれば,除染工程により放射性廃棄物の線量を低減して,その後の切断工程および分離工程の被ばくを低減できる。また分離工程の切削量を低減でき,放射性廃棄物からNRを効率的に生成でき,放射性廃棄物の減容化を実現できる。
以上,本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら,本発明は,上記実施形態に何ら制限されることなく,本発明の主旨を逸脱しない範囲において,種々の変更が可能である。
また,本発明は,実施形態において示された組み合わせに限定されることなく,種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 排気筒
2 クレーン
3 放射性廃棄物
4 トラック
10 放射性廃棄物の切削分離装置
12 鋼板
13 湾曲鋼板
20 固定架台
22 固定治具
24 取付溝
26 爪金具
28 締結手段
29 抑え金具
29a H形鋼
29b 溝形鋼
30 移動テーブル
32 進退移動部
33 スライダ
34 スライドレール
35 駆動モータ
36 旋回部
37 旋回台
38 旋回軸
40 テーブル架台
42 スライドレール
50 切削機
51 切削屑カバー
52 駆動モータ
54 送風部
60 フレーム本体
62 昇降部
64 進退移動部