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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063849
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/06 20060101AFI20230428BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G01N3/06
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173895
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 信弥
(72)【発明者】
【氏名】荒川 幸次
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AB01
2G061AB05
2G061BA07
2G061BA15
2G061CB01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB06
(57)【要約】
【課題】材料物性の計測の作業効率を向上させる。
【解決手段】計測装置1は、試験片TPの面F1に固定される第1固定部31と、試験片TPの面F1に当接する第1当接部32とを有する第1治具30と、試験片TPの面F1に固定される第2固定部41と、試験片TPの面F1に当接する第2当接部42とを有する第2治具40と、第1当接部32および第2当接部42の少なくとも一方に設けられる変位センサ50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の面に固定される第1固定部と、前記試験片の前記面に当接する第1当接部とを有する第1治具と、
前記試験片の前記面に固定される第2固定部と、前記試験片の前記面に当接する第2当接部とを有する第2治具と、
前記第1当接部および前記第2当接部の少なくとも一方に設けられる変位センサと、
を備える、
計測装置。
【請求項2】
前記第1当接部および前記第2当接部は、前記試験片側に鋭利部を有する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記第1固定部に対して前記試験片の前記面に交差する方向に移動可能に設けられており、
前記第2当接部は、前記第2固定部に対して前記試験片の前記面に交差する方向に移動可能に設けられている、
請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第1当接部および前記第2当接部を前記試験片側にそれぞれ付勢する付勢部材をさらに備える、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記第1固定部は、前記第1当接部に対して前記第2治具側と逆側に位置し、
前記第2固定部は、前記第2当接部に対して前記第1治具側と逆側に位置する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第1固定部および前記第2固定部は、前記試験片に接着される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料または樹脂材料等の各種材料の物性を計測するための計測装置が広く利用されている。このような計測装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、試験片の両端を把持し、試験片に引張荷重を付与し、その際の試験片の変形部位の変位量を検出する引張試験装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-195805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、材料物性の計測では、試験片の変位量の検出に加えて、試験片を撮像し、得られた撮像データを用いて物性を計測する光学的計測も行われる場合がある。ここで、計測装置では、変位センサを試験片に取り付けるために治具が用いられる。従来の計測装置では、試験片の両面が治具によって覆われてしまい、試験片の変位量の検出と光学的計測とを同時に行うことが困難であり、作業効率が低下していた。
【0005】
本開示の目的は、材料物性の計測の作業効率を向上させることが可能な計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の計測装置は、試験片の面に固定される第1固定部と、試験片の面に当接する第1当接部とを有する第1治具と、試験片の面に固定される第2固定部と、試験片の面に当接する第2当接部とを有する第2治具と、第1当接部および第2当接部の少なくとも一方に設けられる変位センサと、を備える。
【0007】
第1当接部および第2当接部は、試験片側に鋭利部を有してもよい。
【0008】
第1当接部は、第1固定部に対して試験片の面に交差する方向に移動可能に設けられており、第2当接部は、第2固定部に対して試験片の面に交差する方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0009】
第1当接部および第2当接部を試験片側にそれぞれ付勢する付勢部材をさらに備えてもよい。
【0010】
第1固定部は、第1当接部に対して第2治具側と逆側に位置し、第2固定部は、第2当接部に対して第1治具側と逆側に位置してもよい。
【0011】
第1固定部および第2固定部は、試験片に接着されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、材料物性の計測の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態に係る計測装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る計測装置の概略構成を示す側面図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る計測装置の第1治具を示す分解斜視図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係る計測装置の設置後の第1治具を示す斜視図である。
図5図5は、第1の変形例に係る計測装置の第1治具を示す分解斜視図である。
図6図6は、第1の変形例に係る計測装置の設置後の第1治具を示す斜視図である。
図7図7は、第2の変形例に係る計測装置の第1治具を示す分解斜視図である。
図8図8は、第2の変形例に係る計測装置の設置後の第1治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る計測装置1の概略構成を示す平面図である。図2は、本実施形態に係る計測装置1の概略構成を示す側面図である。計測装置1は、平板状の試験片TPの物性を計測するための装置である。ただし、試験片TPは、少なくとも一部に面が形成されていればよく、平板状以外の形状を有していてもよい。図1および図2では、矢印によって試験片TPの長手方向D1、幅方向D2および厚み方向D3が示されている。図1では、試験片TPを厚み方向D3に見た様子が示されている。図2では、試験片TPを幅方向D2に見た様子が示されている。試験片TPは、例えば、長手方向D1が鉛直方向に沿った姿勢で設置される。例えば、図1および図2中の上方向が、鉛直上方向である。
【0016】
図1に示すように、試験片TPは、長手方向D1に延在している。試験片TPの幅方向D2の長さである幅は、基本的には略一定である。ただし、試験片TPは、長手方向D1の一部の区間において、幅が他の区間と比べて細くなっている細幅部P1を有する。計測装置1を用いた計測では、試験片TPが長手方向D1に引っ張られ、変形部位である細幅部P1の変位量が検出される。そして、細幅部P1の変位量の検出結果を用いて、試験片TPの各種材料物性が計測される。
【0017】
以下では、計測装置1が引張試験装置である例を説明する。この場合、試験片TPのヤング率、ポアソン比、降伏強さ等が材料物性として計測される。ただし、計測装置1は、細幅部P1の変位量の検出結果を用いて試験片TPの材料物性を計測できる装置であればよく、引張試験装置に限定されない。例えば、計測装置1は、疲労試験装置であってもよい。
【0018】
図1および図2に示すように、計測装置1は、第1把持部10と、第2把持部20と、第1治具30と、第2治具40と、変位センサ50と、カメラ60と、制御装置70とを備える。
【0019】
第1把持部10は、試験片TPの長手方向D1の一端を把持する。第2把持部20は、試験片TPの長手方向D1の他端を把持する。第1把持部10と第2把持部20とは、長手方向D1に相対的に移動可能となっている。例えば、第1把持部10の長手方向D1の位置は固定されており、第2把持部20が長手方向D1に移動可能となっている。試験片TPの両端が第1把持部10および第2把持部20により把持された状態で、第2把持部20が、第1把持部10から離れるように長手方向D1に移動することによって、試験片TPに対して長手方向D1の引張荷重が付与される。なお、第2把持部20が固定されており、第1把持部10が移動可能となっていてもよい。また、第1把持部10と第2把持部20の双方が移動可能となっていてもよい。
【0020】
第1治具30、第2治具40および変位センサ50は、試験片TPの細幅部P1の変位量を検出するために設けられている。細幅部P1の変位量は、変位センサ50によって検出される。第1治具30および第2治具40は、変位センサ50を試験片TPに取り付けるために設けられている。
【0021】
第1治具30および第2治具40は、試験片TPの一方の面F1に固定される。面F1は、試験片TPにおいて長手方向D1および幅方向D2に延材する面のうちの一方である。具体的には、第1治具30および第2治具40は、試験片TPの面F1のうち細幅部P1に含まれる領域に固定される。
【0022】
第1治具30は、第1固定部31と、第1当接部32とを有する。第1固定部31は、試験片TPの面F1に固定される。第1当接部32は、試験片TPの面F1に当接する。つまり、第1当接部32は、試験片TPの面F1に直接的に当たった状態で接している。第1当接部32は、第1固定部31に支持されている。第2治具40は、第2固定部41と、第2当接部42とを有する。第2固定部41は、試験片TPの面F1に固定される。詳細には、第2固定部41は、試験片TPの面F1のうち第1固定部31が固定される位置とは異なる位置に固定される。第2当接部42は、試験片TPの面F1に当接する。つまり、第2当接部42は、試験片TPの面F1に直接的に当たった状態で接している。詳細には、第2当接部42は、試験片TPの面F1のうち第1当接部32が当接する位置とは異なる位置に当接する。第2当接部42は、第2固定部41に支持されている。
【0023】
第1治具30および第2治具40は、長手方向D1に間隔を空けて配置される。図1および図2の例では、第1治具30は、第2治具40に対して第1把持部10側に位置する。第1固定部31は、第1当接部32に対して第2治具40側と逆側に位置する。第2固定部41は、第2当接部42に対して第1治具30側と逆側に位置する。第1当接部32と第2当接部42とは、長手方向D1に互いに対向する。なお、第1治具30および第2治具40の詳細については、後述する。
【0024】
変位センサ50は、例えば、渦電流式の変位センサである。変位センサ50は、センサヘッド51と、渦電流発生部52とを有する。センサヘッド51は、第1治具30の第1当接部32に設けられる。具体的には、センサヘッド51は、第1当接部32のうち第2当接部42側に設けられ、第2当接部42に臨む。渦電流発生部52は、第2治具40の第2当接部42に設けられる。具体的には、渦電流発生部52は、第2当接部42のうち第1当接部32側に設けられ、第1当接部32に臨む。
【0025】
センサヘッド51は、不図示のコイルを有する。センサヘッド51のコイルに高周波電流を流すことにより、高周波磁界を発生させることができる。渦電流発生部52は、金属材料により形成される。渦電流発生部52は、センサヘッド51により発生した磁界内に位置する。ゆえに、渦電流発生部52において、電磁誘導作用によって渦電流が発生する。ここで、センサヘッド51と渦電流発生部52との距離が近いほど、渦電流が大きくなる。渦電流の大きさに応じてセンサヘッド51のコイルのインピーダンスが変化し、発振振幅が変化する。ゆえに、変位センサ50は、センサヘッド51のコイルの発振振幅に基づいてセンサヘッド51と渦電流発生部52との距離を検出できる。よって、変位センサ50は、第1当接部32と第2当接部42との距離を検出できる。変位センサ50は、試験片TPへの引張荷重の付与の前後における当該距離の変化量を、試験片TPの細幅部P1の変位量として検出する。
【0026】
なお、変位センサ50は、第1当接部32と第2当接部42との距離を検出できるものであればよく、上記の例に限定されない。例えば、渦電流発生部52が第1治具30の第1当接部32に設けられ、センサヘッド51が第2治具40の第2当接部42に設けられてもよい。例えば、上記の例から渦電流発生部52が省略され、第2当接部42に生じる渦電流を用いて、センサヘッド51と第2当接部42との距離が検出されてもよい。
【0027】
なお、変位センサ50は、光学式の変位センサであってもよい。この場合、例えば、上記の例のセンサヘッド51および渦電流発生部52が、レーザヘッドおよび反射部にそれぞれ置き換えられる。レーザヘッドから反射部に対してレーザが照射され、反射部で反射したレーザがレーザヘッドに受光される。レーザヘッドにより受光されるレーザの入射角等の受光結果に基づいて、レーザヘッドと反射部との距離が検出される。この例においても、試験片TPへの引張荷重の付与の前後における当該距離の変化量が、試験片TPの細幅部P1の変位量として検出される。なお、反射部が第1治具30の第1当接部32に設けられ、レーザヘッドが第2治具40の第2当接部42に設けられてもよい。また、光学式の変位センサを用いる例において、反射部が省略されてもよい。
【0028】
なお、変位センサ50は、非接触式の変位センサでなくてもよい。例えば、変位センサ50として、第1当接部32と第2当接部42との間に亘って設けられる部材および当該部材に設置される歪ゲージが用いられてもよい。
【0029】
上記のように、変位センサ50は、第1当接部32および第2当接部42の少なくとも一方に設けられる。
【0030】
カメラ60は、試験片TPの変位量の検出結果に基づく物性計測とは異なる物性計測である光学的計測のために設けられている。カメラ60は、試験片TPの他方の面F2を撮像する。具体的には、試験片TPの面F2のうち細幅部P1に含まれる領域を撮像する。
【0031】
制御装置70は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置70は、試験片TPの物性計測に関する各種処理を行う。例えば、制御装置70は、第2把持部20の動作を制御することによって、試験片TPに対して長手方向D1の引張荷重を付与する。そして、制御装置70は、試験片TPの細幅部P1の変位量を変位センサ50から取得する。制御装置70は、変位センサ50から取得した情報に基づいて、試験片TPの各種物性を計測する。このように、試験片TPの変位量の検出結果に基づく物性計測が行われる。
【0032】
また、制御装置70は、カメラ60により撮像された撮像データをカメラ60から取得する。制御装置70は、カメラ60から取得した撮像データに対して各種画像処理を施すことによって、試験片TPの各種物性を計測する。例えば、試験片TPの細幅部P1の表面の各位置における歪みが材料物性として計測される。このように、カメラ60により撮像された撮像データに基づく物性計測である光学的計測が行われる。なお、光学的計測は、例えば、デジタル画像相関法等の手法によって実現され得る。
【0033】
以下、図3および図4を参照して、第1治具30および第2治具40の詳細について説明する。なお、以下では、第1治具30および第2治具40のうち、第1治具30についてのみ説明する。第2治具40の構成については、第1治具30と同様なので、説明を省略する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る計測装置1の第1治具30を示す分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る計測装置1の設置後の第1治具30を示す斜視図である。図3および図4中の上方向は、図1および図2中の上方向と一致する。以下では、図3および図4中の上方向を単に上方向と呼び、図3および図4中の下方向を単に下方向と呼ぶ。
【0035】
図3および図4に示すように、第1治具30は、第1固定部31と、第1当接部32と、ボルト33と、ボルト34とを有する。
【0036】
図3および図4の例では、第1固定部31は、直方体形状を有する。ただし、第1固定部31の形状は、特に限定されず、直方体形状以外であってもよい。第1固定部31は、例えば、金属材料等によって形成される。第1固定部31は、試験片TPに接着される。具体的には、第1固定部31のうち試験片TPの面F1に対向する面と、試験片TPの面F1とが接着剤を介して固定される。ただし、第1固定部31は、試験片TPに対して、ボルト締結または溶接等の接着以外の方法によって固定されてもよい。
【0037】
図3および図4の例では、第1当接部32は、平板形状を有する。第1当接部32は、幅方向D2および厚み方向D3に延在する。ただし、第1当接部32の形状は、特に限定されず、平板形状以外であってもよい。第1当接部32は、例えば、金属材料等によって形成される。第1当接部32は、第1固定部31の上面に設置される。第1当接部32には、例えば、幅方向D2に間隔を空けて2つの貫通孔32a、32bが設けられる。貫通孔32a、32bは、長手方向D1に貫通する。第1固定部31の上面には、幅方向D2に間隔を空けて2つのネジ孔31a、31bが設けられる。ネジ孔31a、31bは、長手方向D1に延在する。
【0038】
2つの貫通孔32a、32bと2つのネジ孔31a、31bとがそれぞれ重なるように第1固定部31の上面に第1当接部32が設置された状態で、ボルト33、34によって第1当接部32が第1固定部31に対して固定される。それにより、第1治具30は、図4に示す状態となる。ボルト33は、第1当接部32の貫通孔32aに挿通され、第1固定部31のネジ孔31aに螺合される。ボルト34は、第1当接部32の貫通孔32bに挿通され、第1固定部31のネジ孔31bに螺合される。このように、第1当接部32が、第1固定部31に対して、ボルト締結によって固定される。
【0039】
ただし、第1当接部32を第1固定部31に固定するための機構は上記の例に限定されない。例えば、第1当接部32は、2つ以上のボルトによって、第1固定部31に対して固定されてもよい。例えば、第1当接部32は、第1固定部31に対して、クランプ機構による把持等のボルト締結以外の方法によって固定されてもよい。
【0040】
第1当接部32は、試験片TP側に鋭利部32cを有する。鋭利部32cは、試験片TP側に向けて尖っている鋭利な部分である。図3および図4の例では、第1当接部32のうち試験片TP側において、第1当接部32の厚みは、試験片TP側に近づくにつれて薄くなっている。第1当接部32のうち試験片TP側の先端部が鋭利部32cに相当する。鋭利部32cは、ナイフエッジである。鋭利部32cは、試験片TPの面F1に線接触する。
【0041】
ここで、第1当接部32は、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能に設けられている。なお、第1当接部32が第1固定部31に対して移動可能な方向は、面F1に交差する方向であればよく、面F1に直交する厚み方向D3に対してある程度傾斜していてもよい。図3および図4の例では、2つの貫通孔32a、32bの厚み方向D3の長さは、幅方向D2の長さよりも長くなっている。例えば、貫通孔32a、32bは、長穴である。ゆえに、ボルト33、34を弛めた状態において、第1固定部31およびボルト33、34に対して第1当接部32を厚み方向D3に移動させることができる。よって、第1当接部32の厚み方向D3の位置を調整した後に、ボルト33、34を締め、第1当接部32を第1固定部31に固定できる。それにより、第1当接部32が試験片TPの面F1に押し当てられた状態が適切に実現される。具体的には、第1当接部32の鋭利部32cが、試験片TPの面F1に押し当てられる。なお、2つのボルト33、34が用いられることによって、第1当接部32に対して平行な略等しい締結力を付与することができるので、第1当接部32を第1固定部31に対して安定的に固定できる。
【0042】
ただし、第1当接部32を、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能にするための機構は、上記の例に限定されない。例えば、貫通孔32a、32bが真円形状を有していても、第1当接部32は、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能となり得る。例えば、第1当接部32を第1固定部31に固定するための機構と別に、第1当接部32を、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能に案内するガイド機構が設けられてもよい。
【0043】
以上説明したように、計測装置1では、第1治具30と、第2治具40と、変位センサ50とを備える。第1治具30は、試験片TPの面F1に固定される第1固定部31と、試験片TPの面F1に当接する第1当接部32とを有する。第2治具40は、試験片TPの面F1に固定される第2固定部41と、試験片TPの面F1に当接する第2当接部42とを有する。変位センサ50は、第1当接部32および第2当接部42の少なくとも一方に設けられる。
【0044】
よって、計測装置1では、第1当接部32および第2当接部42が試験片TPの変形に追従して移動する。例えば、試験片TPに対して長手方向D1の引張荷重が付与され、試験片TPの細幅部P1が長手方向D1に延びるように変形する際に、第1当接部32および第2当接部42は、長手方向D1に相対的に離れるように移動する。ゆえに、変位センサ50によって、試験片TPの細幅部P1の変位量を検出することができる。また、第1固定部31が面F1に固定されることによって、第1当接部32を面F1に当接した状態に保持できる。第2固定部41が面F1に固定されることによって、第2当接部42を面F1に当接した状態に保持できる。
【0045】
ここで、計測装置1では、上記のように、第1治具30および第2治具40が試験片TPの同一の面F1に固定されている。詳細には、第1治具30および第2治具40は、試験片TPの同一の面F1のうち互いに異なる位置に固定されている。ゆえに、試験片TPのうち面F1と逆側の部分である面F2は、第1治具30および第2治具40によって覆われない。それにより、試験片TPの面F2をカメラ60により撮像した場合、面F2の一部に治具が映り込むことが抑制される。したがって、試験片TPの変位量の検出と光学的計測とを同時に行うことが可能となる。よって、材料物性の計測の作業効率を向上させることができる。
【0046】
特に、第1当接部32および第2当接部42は、試験片TP側に鋭利部を有する。例えば、第1当接部32は、試験片TP側に鋭利部32cを有する。この場合、試験片TPの面F1に各当接部の鋭利部が当接する。ゆえに、第1当接部32および第2当接部42が、試験片TPの変形に対して、より追従しやすくなる。例えば、試験片TPの面F1において、機械加工によって形成された微小な凹凸に各当接部の鋭利部が係止される。それにより、第1当接部32および第2当接部42が、試験片TPに対して滑りにくくなるので、試験片TPの変形に対して、より追従しやすくなる。
【0047】
特に、第1当接部32は、第1固定部31に対して面F1に交差する方向に移動可能に設けられており、第2当接部42は、第2固定部41に対して面F1に交差する方向に移動可能に設けられている。例えば、図3および図4の例では、第1当接部32は、第1固定部31に対して厚み方向D3に移動可能に設けられており、第2当接部42は、第2固定部41に対して厚み方向D3に移動可能に設けられている。それにより、第1当接部32および第2当接部42を試験片TPの面F1に適切に当接させることができる。ゆえに、第1当接部32および第2当接部42が試験片TPの変形に追従して移動させることが適切に実現される。
【0048】
特に、第1固定部31は、第1当接部32に対して第2治具40側と逆側に位置し、第2固定部41は、第2当接部42に対して第1治具30側と逆側に位置する。つまり、試験片TPのうち第1当接部32が当接する位置と第2当接部42が当接する位置との間の領域には、第1固定部31および第2固定部41のいずれもが固定されない。ここで、試験片TPの細幅部P1において、第1固定部31または第2固定部41が固定されている部分の変形挙動は、第1固定部31または第2固定部41が固定されていない部分の変形挙動と異なり得る。計測装置1では、試験片TPのうち第1当接部32が当接する位置と第2当接部42が当接する位置との間の領域の変形量が計測される。ゆえに、当該領域に第1固定部31および第2固定部41のいずれもが固定されないことによって、試験片TPの変形量の計測結果に対して治具の固定により与えられる影響が抑制される。
【0049】
特に、第1固定部31および第2治具40は、試験片TPに接着される。それにより、第1固定部31および第2治具40を、試験片TPに対して容易に脱着できる。また、第1固定部31および第2治具40がボルト締結によって試験片TPに固定される場合と比較して、試験片TPに機械加工を行う必要がなく、機械加工による試験片TPの物性の変化が抑制される。また、第1固定部31および第2治具40が溶接によって試験片TPに固定される場合と比較して、試験片TPに熱が入力されることがなく、熱の入力による試験片TPの物性の変化が抑制される。
【0050】
以下、図5から図8を参照して、各種変形例について説明する。
【0051】
図5は、第1の変形例に係る計測装置1Aの第1治具30を示す分解斜視図である。図6は、第1の変形例に係る計測装置1Aの設置後の第1治具30を示す斜視図である。図5よび図6中の上方向は、図1および図2中の上方向と一致する。以下では、図5および図6中の上方向を単に上方向と呼び、図5および図6中の下方向を単に下方向と呼ぶ。なお、以下では、第1治具30および第2治具40のうち、第1治具30についてのみ説明する。第2治具40の構成については、第1治具30と同様なので、説明を省略する。
【0052】
計測装置1Aでは、上述した計測装置1と比較して、取付部材35と付勢部材36、37とが、第1治具30にさらに設けられる点が異なる。取付部材35は、第1当接部32に固定されている。具体的には、取付部材35は、第1当接部32の上面のうち、貫通孔32a、32bに対して試験片TP側と逆側に設けられる。図5および図6の例では、取付部材35は、平板形状を有する。取付部材35は、長手方向D1および幅方向D2に延在する。ただし、取付部材35の形状は特に限定されない。
【0053】
図5および図6の例では、付勢部材36、37は、バネである。付勢部材36、37は、第1当接部32を試験片TP側に付勢するために設けられる。ただし、付勢部材36、37は、第1当接部32を試験片TP側に付勢するものであればよく、バネ以外の部材であってもよい。付勢部材36、37は、幅方向D2に間隔を空けて設けられる。付勢部材36、37の一端は、取付部材35の試験片TP側の面に取り付けられる。付勢部材36、37の他端には、係止部36a、37aがそれぞれ設けられる。係止部36a、37aは、ボルト33、34に係止される部分である。図5および図6の例では、係止部36a、37aは、リング形状を有する。ただし、係止部36a、37aの形状は、この例に限定されない。
【0054】
計測装置1Aでは、上述した計測装置1と同様に、ボルト33は、第1当接部32の貫通孔32aに挿通され、第1固定部31のネジ孔31aに螺合される。ボルト34は、第1当接部32の貫通孔32bに挿通され、第1固定部31のネジ孔31bに螺合される。ここで、図6に示すように、計測装置1Aでは、上述した計測装置1と異なり、ボルト33、34の頭部は、第1当接部32の上面に対して上方に離隔している。
【0055】
ボルト33には、付勢部材36の係止部36aが係止される。例えば、ボルト33が第1固定部31のネジ孔31aに螺合された状態で、ボルト33に対してリング形状の係止部36aが引っ掛けられる。ボルト34には、付勢部材37の係止部37aが係止される。例えば、ボルト34が第1固定部31のネジ孔31bに螺合された状態で、ボルト34に対してリング形状の係止部37aが引っ掛けられる。上述したように、第1当接部32は、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能に設けられている。また、付勢部材36、37の長さは、係止部36a、37aがボルト33、34に係止された状態において、自然長よりも長くなっている。ゆえに、第1当接部32は、付勢部材36、37によって試験片TP側に付勢される。
【0056】
以上説明したように、計測装置1Aでは、第1当接部32および第2当接部42を試験片TP側にそれぞれ付勢する付勢部材がさらに設けられる。例えば、第1当接部32は、付勢部材36、37によって試験片TP側に付勢される。それにより、試験片TPの面F1に各当接部がより確実に押し当てられ、当接する。例えば、第1当接部32の鋭利部32cが、付勢部材36、37による付勢力によって、試験片TPの面F1に押し当てられ、当接する。ゆえに、第1当接部32および第2当接部42が、試験片TPの変形に対して、より追従しやすくなる。
【0057】
図7は、第2の変形例に係る計測装置1Bの第1治具30Bを示す分解斜視図である。図8は、第2の変形例に係る計測装置1Bの設置後の第1治具30Bを示す斜視図である。図7よび図8中の上方向は、図1および図2中の上方向と一致する。以下では、図7および図8中の上方向を単に上方向と呼び、図7および図8中の下方向を単に下方向と呼ぶ。なお、以下では、第1治具30に対する形例である第1治具30Bについてのみ説明する。ただし、第2治具40に対しても第1治具30Bと同様の変形が加えられてもよい。
【0058】
計測装置1Bでは、上述した計測装置1Aと比較して、第1当接部32が第1当接部32Bに置き換えられている点が主に異なる。第1当接部32Bは、2つのニードル38、38を含む。ニードル38は、棒状の部材である。2つのニードル38、38は、幅方向D2に間隔を空けて設けられる。各ニードル38は、厚み方向D3に延在する。ニードル38は、試験片TP側に鋭利部38aを有する。具体的には、ニードル38は、試験片TP側の端部において、先細りする形状を有する。つまり、ニードル38の断面の外径は、試験片TP側の端部において、試験片TPに近づくにつれて小さくなっている。ニードル38のうち試験片TP側の先端部が鋭利部38aに相当する。鋭利部38aは、試験片TPの面F1に点接触する。
【0059】
第1固定部31には、ガイド部材39が固定されている。具体的には、ガイド部材39は、第1固定部31の上面のうち、ネジ孔31a、31bに対して試験片TP側と逆側に設けられる。図7および図8の例では、ガイド部材39は、平板形状を有する。ガイド部材39は、長手方向D1および幅方向D2に延在する。ただし、ガイド部材39の形状は特に限定されない。ガイド部材39には、幅方向D2に間隔を空けて2つの貫通孔39a、39bが設けられる。貫通孔39a、39bは、厚み方向D3に貫通する。
【0060】
計測装置1Bの第1治具30Bには、上述した計測装置1Aと同様に、取付部材35と付勢部材36、37とが設けられている。2つのニードル38、38は、取付部材35の試験片TP側の面に取り付けられる。2つのニードル38、38は、付勢部材36、37と干渉しないような位置に配置されている。なお、2つのニードル38、38と、付勢部材36、37との位置関係は、図7および図8の例に限定されない。
【0061】
計測装置1Bでは、ボルト33は、第1固定部31のネジ孔31aに螺合される。ボルト34は、第1固定部31のネジ孔31bに螺合される。ボルト33、34の頭部は、第1固定部31の上面に対して上方に離隔している。ボルト33には、付勢部材36の係止部36aが係止される。ボルト34には、付勢部材37の係止部37aが係止される。
【0062】
ここで、図8に示すように、計測装置1Bでは、2つのニードル38、38が、ガイド部材39の貫通孔39a、39bにそれぞれ挿通される。それにより、各ニードル38は、第1固定部31に対して試験片TPの厚み方向D3に移動可能に案内される。各ニードル38は、付勢部材36、37によって試験片TP側に付勢される。なお、貫通孔39a、39bの貫通方向が厚み方向D3に対してある程度傾斜しており、各ニードル38が第1固定部31に対して移動可能な方向が厚み方向D3に対して傾斜していてもよい。
【0063】
以上説明したように、計測装置1Bでは、上述した計測装置1Aと比較して、第1当接部32が第1当接部32Bに置き換えられている。この場合においても、第1当接部32Bが、上述した第1当接部32と同様に、試験片TPの一方の面F1に当接するので、上述した計測装置1Aと同様の効果が奏される。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
上記では、第1当接部32および第2当接部42が、試験片TP側に鋭利部を有する例を説明した。ただし、第1当接部32および第2当接部42は、試験片TP側に鋭利部を有しなくてもよい。例えば、第1当接部32および第2当接部42は、試験片TPの面F1に面接触してもよい。
【0066】
上記では、第1当接部32が、第1固定部31に対して面F1に交差する方向に移動可能に設けられており、第2当接部42が、第2固定部41に対して面F1に交差する方向に移動可能に設けられている例を説明した。ただし、各当接部は各固定部に対して移動可能でなくてもよい。例えば、第1治具30において、第1固定部31と、第1当接部32とは同一部材により形成されてもよい。例えば、第2治具40において、第2固定部41と、第2当接部42とは同一部材により形成されてもよい。
【0067】
上記では、第1固定部31が、第1当接部32に対して第2治具40側と逆側に位置し、第2固定部41が、第2当接部42に対して第1治具30側と逆側に位置する例を説明した。ただし、第1固定部31は、第1当接部32に対して第2治具40側に位置してもよい。第2固定部41は、第2当接部42に対して第1治具30側に位置してもよい。
【0068】
本開示は、材料物性の計測の作業効率の向上に資するので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 計測装置
1A 計測装置
1B 計測装置
30 第1治具
30B 第1治具
31 第1固定部
32 第1当接部
32B 第1当接部
32c 鋭利部
36 付勢部材
37 付勢部材
38a 鋭利部
40 第2治具
41 第2固定部
42 第2当接部
50 変位センサ
F1 面
TP 試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8