(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006386
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20230111BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H05K1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108960
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚吾
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338BB13
5E338BB75
5E338CD02
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】電子部品の厚さを補うための作業性に優れる電子部品装置の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】第1の面および第2の面を有する平板状の接続部材を準備するステップと、前記第1の面から前記接続部材に溝を形成するステップと、前記接続部材の第1の面に電子部品を搭載するステップと、前記電子部品を搭載させた状態で、前記接続部材の前記第2の面から少なくとも前記溝に到達するよう前記接続部材を所定厚さまで薄くするステップと、を有する電子部品装置の製造方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有する平板状の接続板を準備するステップと、
前記第1の面から前記接続板に溝を形成するステップと、
前記接続板の第1の面に電子部品を接合するステップと、
前記電子部品の接合後、前記溝を露出させた状態で、前記接続板の前記第2の面から少なくとも前記溝に到達するよう前記接続板を所定厚さまで薄くするステップと、を有することを特徴とする電子部品装置の製造方法。
【請求項2】
前記接続板は銅(Cu)を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
前記電子部品を接合するステップでは、複数の前記電子部品が前記第1の面に接合され、前記接続板を薄くするステップでは、前記接続板が前記電子部品ごとに前記溝に沿って分離されることを特徴とする請求項1記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
接続板の片面側に溝を形成するステップと、
前記片面に電子部品を接合するステップと、
前記電子部品の接合後、前記溝が露出した状態で、前記接続板が少なくとも前記溝に沿って分割されるまで、前記片面の裏面側から前記接続板を薄くするステップと、を備えることを特徴とする電子部品装置の製造方法。
【請求項5】
前記溝は、切削によって形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
前記前記電子部品を接合するステップは前記溝を形成するステップの後に行われることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項7】
前記薄くするステップにおいて、接続板がエッチングによって薄くされることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項8】
前記接続板を薄くする前に、前記電子部品の表面に保護手段を設けることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項9】
接続部材上の前記電子部品および前記電子部品より厚い他の電子部品を第1の基板上に搭載し、
前記電子部品および前記他の電子部品と第2の基板とを接合し、前記電子部品および前記他の電子部品を前記第1の基板と前記第2の基板との間に位置させ、
前記接続部材は、前記接続板が前記溝に沿って分割されて形成されたことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項10】
前記各基板と前記各電子部品とは、搭載または接合されることによって、それぞれビアを介して電気的または熱的に接続することを特徴とする請求項2~9のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項11】
前記他の電子部品を、前記接続部材とは異なる厚さを有する他の接続部材を介して前記第1の基板に搭載することを特徴とする請求項9または10に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項12】
前記電子部品および前記他の電子部品の少なくとも1つは縦型の半導体装置を含むことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項13】
前記電子部品はスイッチング素子であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項14】
接続部材と、
前記接続部材と接合する電子部品と、を備え、
前記接続部材は、
接続板の片面側から前記接続板に溝が形成され、
前記片面に電子部品が接合された後、前記溝が露出した状態で、前記接続板が少なくとも前記溝に沿って分割されるまで、前記片面の裏面側から前記接続板を薄くされて形成されたことを特徴とする電子部品装置。
【請求項15】
請求項14記載の電子部品装置を用いた電力変換装置。
【請求項16】
請求項14記載の電子部品装置を用いた制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子などの電子部品を備える電子部品装置の製造方法に関する。また、本発明は、半導体素子などの電子部品を備える電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を搭載した回路基板を積層することで電子部品装置を三次元的に高密度実装する、いわゆる電子部品内蔵モジュール化技術が知られている。モジュール化された電子部品装置としては、能動部品(CMOSやサイリスタ、オペアンプなどの)や受動部品(抵抗やコイル、コンデンサなどの)などを搭載したものが知られているが、特に、電子部品として半導体素子を搭載した半導体装置が挙げられる。
【0003】
また、近年注目されている、電力変換機能を有するパワー半導体装置においては、高速なスイッチング特性が求められるなどモジュールの高機能化へのニーズが高い。そして、多種類の半導体素子を内蔵しつつより高密度実装が可能なモジュール化技術が求められる。例えば、ショットキー・バリア・ダイオード(SBD)、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラ・トランジスタ、またはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体素子を高密度に内蔵してモジュール化することが求められている。このようなパワー半導体装置のモジュール化にあたっては、一般的な電子部品装置や半導体装置よりも高い信頼性が求められる。
【0004】
モジュール化された半導体装置として、例えば、特許文献1に開示された構造の半導体装置が知られている。特許文献1に開示された半導体装置は、基板12上にメモリチップ10やロジックチップ11などの半導体素子が搭載され、これらがポリイミド絶縁膜13で被覆されるとともに、ビア14を介してAI配線層15との電気的接続がなされている。
【0005】
特許文献2には、コア部材21の上面高さ位置Laと電子部品25の上面高さ位置Lbとの高さの差dを所望値にする高さ寸法調整部材30が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3735986号
【特許文献2】特開2003-347741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、モジュールに搭載する電子部品の厚さを補うことを検討した。このためには、例えば、特許文献2に記載される高さ寸法調整部材を用いることが考えられる。当該高さ寸法調整部材は、独立した部材であるか銅(Cu)などのめっきを成長したものである。しかしながら、独立した部材である場合には、所定の厚さであって、その他の外形寸法が電子部品程度である高さ寸法調整部材を予め用意し、当該部材を電子部品とは別に基板等に搭載するか、あるいは、電子部品と接合して基板等に搭載するといった作業が必要であった。一方、めっきを成長したものである場合には、モジュール内の電子部品を搭載する箇所に、高さ寸法調整部材が所定の厚さとなるようにめっきする作業が必要であった。この場合、めっき膜の厚みによっては応力による膜剥がれが生じてしまうため、接合部分が電気的・機械的に不安定となり、電子部品の信頼性に影響を及ぼすおそれがあった。
【0008】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、電子部品の厚さを補うための作業性に優れる電子部品装置の製造方法および電子部品の厚さが補われた電子部品装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下に示す電子部品装置の製造方法および電子部品装置が、上記した従来の課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明に係る電子部品装置の製造方法は、第1の面および第2の面を有する平板状の接続板を準備するステップと、前記第1の面から前記接続板に溝を形成するステップと、前記接続板の第1の面に電子部品を接合するステップと、前記電子部品の接合後、前記溝を露出させた状態で、前記接続板の前記第2の面から少なくとも前記溝に到達するよう前記接続板を所定厚さまで薄くするステップと、を有する電子部品装置の製造方法である。
【0011】
また、本発明に係る電子部品装置の製造方法は、接続板の片面側に溝を形成するステップと、前記片面に電子部品を接合するステップと、前記電子部品の接合後、前記溝が露出した状態で、前記接続板が少なくとも前記溝に沿って分割されるまで、前記片面の裏面側から前記接続板を薄くするステップと、を備える。
【0012】
また、本発明に係る電子部品装置は、第1の基板と、第1の基板上に配された板状の接続部材と、前記接続部材と接合されており、前記第1の基板と電気的に接続された電子部品と、前記電子部品と電気的に接続された第2の基板と、を備える。前記第1の基板の内面と前記電子部品の下面、および前記第2の基板の内面と前記電子部品の上面は、それぞれ対向している。前記接続部材は、接続板の片面側から前記接続板に溝が形成され、前記片面に電子部品が接合された後、前記溝が露出した状態で、前記接続板が少なくとも前記溝に沿って分割されるまで、前記片面の裏面側から前記接続板を薄くされて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成された本発明によれば、接続板の第2の面を薄くする条件を変更することで、形成された接続部材を所定厚さに調整できる。したがって、電子部品の厚さにかかわらず、電子部品と接続部材とのトータルの厚さを任意の厚さに調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子部品装置の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を具体的に説明するための断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を具体的に説明するための断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を具体的に説明するための断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を具体的に説明するための断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法を具体的に説明するための断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る電子部品装置の製造方法で製造された接続部材の断面写真である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電子部品装置を採用した制御システムの一例を示すブロック構成図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る電子部品装置を採用した制御システムの一例を示す回路図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る電子部品装置を採用した制御システムの他の例を示すブロック構成図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る電子部品装置を採用した制御システムの他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、以下に例示する電子部品装置および電子部品装置の製造方法において、本発明の目的を阻害しない限り、適宜変更され、さらに変形、省略されてもよい。なお、同一構成要素には同一符号を付すことで、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明に係る電子部品装置の実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る電子部品装置110は、下部配線基板(第1の基板)1、上部配線基板(第2の基板)2と、これら下部配線基板1および上部配線基板2の間に配置され、下部配線基板1および上部配線基板2と電気的に接続された半導体素子(電子部品、他の電子部品)3および半導体素子(電子部品、他の電子部品)4を備えている。また、電子部品装置110は、ビア8,10,9,11と、回路基板6と、接続部材5と、充填剤12と、スルーホール13と、を備える。
【0017】
半導体素子4は、下部配線基板(第1の基板)1と接続部材5を介して電気的および熱的に接続されている。なお、下部配線基板(第1の基板)1と上部配線基板(第2の基板)2は、
図1中の座標軸で示されるy方向(紙面における上下方向)に物理的に離れており、かつ、各内面がx方向(紙面における左右方向)およびz方向(紙面における鉛直方向)に沿って拡がっており、対向するように配置されている。すなわち、下部配線基板1の内面と上部配線基板3の内面は、平行である。
【0018】
本実施形態においては、電子部品を所定位置に載置することで電気的な接続を行うための、電気回路が形成された回路基板6上に、電子部品である半導体素子3,4が載置される。そして、前述のとおり、半導体素子4と回路基板6との間には、接続部材5が介在している。
【0019】
半導体素子3としては、半導体部品であるSBD(Schottky Barrier Diode)やPiNダイオードなどが選択され、半導体素子4としては、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子などが選択されるが、これらに限定されるものではない。また、半導体素子4がIGBTやMOSFETの場合には、回路基板6上にはさらにゲートドライバ(図示せず)が配置されていてもよい。ゲートドライバは、半導体素子4に設けられたゲート電極のスイッチング動作を制御するための駆動回路を内蔵したICで構成される。なお、半導体素子3と半導体素子4とは、厚さ(y方向の長さ)が異なる同一の種類(SBDやMOSFETなど)の半導体素子が選択されてもよい。
【0020】
本発明の実施形態では、半導体素子3,4は縦型素子である。そして、半導体素子3,4は、半導体材料からなる素子本体3a,4aと、素子本体3a,4aの下側面に設けられる第1の電極3b,4bと、素子本体3a,4aの上側面に設けられる第2の電極3c,4cとから構成されている。
【0021】
第1の電極3b,4bおよび第2の電極3c,4cは、それぞれ単数もしくは複数の電極から構成されていてもよい。例えば、半導体素子4がIGBTの場合には、第1の電極4bもしくは第2の電極4cの一方がゲート電極とエミッタ電極から構成され、半導体素子4がMOSFETの場合には、第1の電極4bもしくは第2の電極4cの一方がゲート電極とソース電極から構成されていてもよい。これら第1および第2の電極3b,3c,4b,4cは、いずれも、エッチングやスパッタリング等の方法により、表面に金属膜等が積層された状態の電極であっても良い。第1および第2の電極3b,3c,4b,4cの厚みは、表面に金属膜等が積層された状態を含めて、任意に設定することができる。第1の電極3b,4bおよび第2の電極3c,4cは、さらに、銅(Cu)を主成分とする金属からなる薄板や、銅合金の薄板(EFTEC等のリードフレーム材料)から形成され、面内方向に単数もしくは複数並設された状態に製作される薄板を有していてもよい。また、前記薄板は、銅とモリブデン(Mo)との積層薄板(CMCやCPC)や、メッシュ状のモリブデン中に銅を流し込んで一体化したPCM30などの材料からなる複合板で構成されていてもよい。
【0022】
回路基板6は、半導体素子3,4が上面に搭載される。回路基板6の材料は、例えば、銅(Cu)を含む金属板である。回路基板6は、半導体素子3の直下と半導体素子4の直下とでy方向における位置が同じである。なお、回路基板6は、連続する1つの部材であってもよく、分離した複数の部材であってもよい。回路基板6は、連続する1つの部材である場合、x方向における半導体素子3と半導体素子4との間に貫通孔が設けられる。回路基板6と半導体素子3,4は、電気的に接続している。
【0023】
回路基板6は、例えば半導体素子3の直下において、下面が複数のビア8の上端と接合されることで、ビア8を介して下部配線基板1と電気的に接続されている。これにより、半導体素子3は、下部配線基板1と電気的に接続されている。なお、ビア8のx方向およびz方向における位置は、半導体素子3の直下でなくともよい。また、半導体素子3は、第2の電極3cの上面が複数のビア9の下端と接合されることで、ビア9を介して上部配線基板2と電気的に接続されている。
【0024】
回路基板6は、例えば半導体素子4の直下において、下面が複数のビア10の上端と接合されることで、ビア10を介して下部配線基板1と電気的に接続されている。これにより、半導体素子4は、下部配線基板1と電気的に接続されている。また、半導体素子4の第2の電極4cは、上面が複数のビア11の下端と接合されることで、複数のビア11を介して上部配線基板2と電気的に接続されている。
【0025】
また、下部配線基板1と上部配線基板2とは、下部配線基板1から上部配線基板2まで
図1中y方向に延設されたスルーホール13で接続されている。スルーホール13は、例えば、中空の円柱形状に形成される。スルーホール13の内周面13aには、銅(Cu)などを主成分とする導電材料がめっき加工されている。スルーホール13の当該めっきと、下部配線基板1および上部配線基板2とがそれぞれ接合されることで、スルーホール13は、下部配線基板1と上部配線基板2とを電気的に接続している。
【0026】
回路基板6と下部配線基板1とは、ビア8,10を介してy方向に電気的に接続されている。ビア8,10の上端は、回路基板6の下面と接合される。ビア8,10の下端は、下部配線基板1と接合されている。ビア8,10が下部配線基板1から上方へ突出するy方向の寸法は、例えば、それぞれ同じである。また、第2の電極3c,4cと上部配線基板2とは、ビア9,11を介してy方向に電気的に接続されている。ビア9,11の下端は、電極3c,4cの上面と接合されている。ビア9,11の上端は、上部配線基板2と接合されている。ビア9,11が上部配線基板2から下方へ突出するy方向の寸法は、例えば、同じである。また、ビア8,10の上述の突出する寸法と、ビア9,11の上述の突出する寸法とは、同じとされもよい。ビア8,9,10,11が各配線基板1,2から突出する寸法が同じであるとき、半導体素子3の素子本体3aのy方向の中央を電子部品装置110のy方向における中央近傍に位置させることができる。これによって、素子本体3aから生じる熱を下部配線基板1と上部配線基板2とから均等に放出させることができる。
【0027】
本発明の実施形態においては、下部配線基板1、上部配線基板2、およびこれら配線基板1,2により形成されたモジュールの空間12に充填された電気絶縁材料がそれぞれ設けられた状態から、下部配線基板1の下側および上部配線基板2の上側から半導体素子3,4に向けて、
図1中y方向に沿ってドリルによる穴あけ加工を行う。続いて、形成された円錐状の穴の表面および内部に銅(Cu)などの導電材料をめっき加工することでビア8,9,10,11が形成される。したがって、回路基板6と下部配線基板1は、ビア8,10を介して
図1中y方向に電気的に接続され、また第2の電極3c,4cと上部配線基板2は、ビア9,11を介して
図1中y方向に電気的に接続される。本発明の実施形態においては、ビア8,9,10,11およびこれらに接続する下部配線基板1、上部配線基板2は、銅(Cu)などの電気伝導性および熱伝導性に優れた材料を主成分として形成されている。また、本発明の実施形態においては、形成されたビア8,9の長さ(
図1中y方向の寸法)は同じであり、またビア10,11の長さ(
図1中y方向の寸法)は同じであることが望ましいが、形成された全てのビア8,9,10,11の長さが同じであるのが最も望ましい。
【0028】
下部配線基板1の下側には、電子部品装置の制御系統との信号の授受を行うための、図示しない電気回路が形成されている。上部配線基板2の上側には、セラミック(例えば酸化アルミニウム、酸化シリコン、窒化シリコン)やRCC(Resin Coated Copper)などの電気絶縁性を有する材料を含む層を介して、図示しない放熱フィンなどの放熱機構が取り付けられる。また、電子部品装置110の内部で半導体素子3,4や接続部材5の周囲に形成された空間12には、エポキシ樹脂やプリプレグなどの電気絶縁材料が充填されている。この電気絶縁材料には、ガラス繊維または炭素繊維などを混ぜることで強度的に異方性を持たせたものであってもよい。
【0029】
接続部材5は、半導体素子4とビア10および下部配線基板1とを電気的に接続する。また、接続部材5は、半導体素子4とビア10および下部配線基板1とを熱的にも接続する。 接続部材5は、電気伝導率が比較的高い材料が好ましく、それに加えて、熱伝導率の比較的高い材料であることが好ましい。本発明の実施形態においては、接続部材5は、例えば、銅(Cu)を主成分とした部材から構成することが好ましい。また、本発明の実施形態においては、半導体素子4の厚さと接続部材5の厚さとの合計(
図1における上下方向の寸法)は、半導体素子3の厚さとほぼ同じであり、この条件を満たすように、後述する製造プロセスによって、板状の接続部材5の厚さが調整される。
【0030】
例えば、接続部材5と半導体素子4との間には接着層(不図示)が設けられている。当該接着層は、接続部材5と半導体素子4とを接合している。当該接着層の材料としては、例えば、銀(Ag)焼結材、銅焼結材、はんだ、銀ペースト、AuGe系合金などが挙げられる。なお、接続部材5と第1の電極4bとは、対向する表面同士を直接接合(例えば拡散接合)により接続することも可能であり、その場合には当該接着層は不要である。当該接着層の厚さは、回路基板6や接続部材5などと比較して極めて薄いため、接続部材5の厚さの設定において考慮されなくともよいが、予め接着層の厚さが見積もられて、接続部材5の厚さの設定において考慮されてもよい。なお、同様の接着層は、回路基板6と半導体素子3との接合において用いられてもよい。
【0031】
以上のように構成された本発明の実施形態に係る電子部品装置110の動作等について詳しく説明する。なお、以下の電子部品装置110の動作等は、一例であり、これに限られるものではない。
【0032】
まず、図示しないゲートドライバが制御信号(スイッチング信号)を出力すると、半導体素子4が動作してスイッチング制御が行われる。これによって、半導体素子4からは所望のパルス波形が生成され、第1の電極4bもしくは第2の電極4cから駆動信号として出力される。この駆動信号は、図示しない制御対象に与えられる。例えば半導体素子4がMOSFETの場合、MOSFETのゲート電極Gに対して、図示しないゲートドライバから制御信号を供給することでMOSFET4のスイッチング制御が行われる。また、この場合には、半導体素子3は、例えばSBDであり、MOSFETのソース電極Sの電流をドレイン電極Dに還流するための高耐圧還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)として機能する。
【0033】
また、半導体素子3,4が動作する際、電子部品装置110の下部配線基板1に電気信号や処理信号が集められ、下部配線基板1の下方に設けられた電気回路を介して制御系統に送られる。つまり、制御系統に送られる電気信号や処理信号は、下部配線基板1を経由して授受がなされる。そのため、半導体素子3,4の第2の電極3c,4cから入出力される電気信号も、上部配線基板2およびスルーホール13を経由して、下部配線基板1につながるループで導通する。このように、下部配線基板1と上部配線基板2は、スルーホール13を介して、半導体素子3,4の電気的な導通を行っている。
【0034】
また、ビア8,9,10,11およびスルーホール13の内周面13aを介して、モジュール内の熱、すなわち半導体素子3,4からの発熱が下部配線基板1の下部もしくは上部配線基板2の上部に放熱される。本発明の実施形態においては、上述のとおり、半導体素子4の第2の電極4cが複数の電極から構成され、かつ上部配線基板2の上側には図示しない放熱フィンなどの放熱機構が取り付けられることで、モジュール上方からの放熱が効果的に行われるよう構成されている。
【0035】
続いて、上述した接続部材5の厚さを調整するための具体的な製造方法に関して、
図2に示されるフローチャートと、
図3乃至
図7に示される断面図を参照して詳しく説明する。
【0036】
本発明の実施形態に係る電子部品装置100の製造方法は、第1の面14aおよび第2の面14bを有する平板状の銅板14(接続板の一例)を準備するステップ(S1)と、第1の面14aから銅板14に溝Gを形成するステップ(S2)と、銅板14の第1の面14aに半導体素子4(電子部品)を搭載するステップ(S3)と、半導体素子4の接合後、銅板14に形成した溝Gを露出させた状態で、銅板14の第2の面14bから少なくとも溝Gに到達するよう銅板14を所定厚さまで薄くするステップ(S6)と、を少なくとも含むものである。
【0037】
また、ステップS2は、銅板14の片面側である第1の面14a側に溝Gを形成するステップということができる。ステップS3は、第1の面14aに半導体素子4を接合するステップということができる。ステップS6は、溝Gが露出した状態で、銅板14が少なくとも溝Gに沿って分割されるまで、第1の面14aの裏面である第2の面14b側から銅板14を薄くするステップということができる。
【0038】
まず
図3に示すように、接続部材5の材料である平板状の銅板(接続部材)14を準備し、後述する各種加工のための所定位置に配置する(S1)。ここで銅板14は、厚さ方向(
図3中y方向)および幅方向(
図3中x方向)の寸法が、最終的に製作される板状の接続部材5の同寸法より大きいものが用いられる。銅板14の厚さは、例えば100μm~300μmのものが選定される。
【0039】
続いて、溝Gが形成される。例えば、溝Gの形成においては、x方向に沿って平行に延びる複数の溝とz方向に沿って平行に延びる複数の溝とがそれぞれ形成される。x方向に沿って延びる複数の溝とz方向に沿って延びる複数の溝とは、第1の面14a側から見たとき、それぞれ直交しており、格子状となる。
図4に示すように、溝Gのうちz方向に沿って平行に延びる溝は、位置決めされた銅板14の第1の面14a側から厚さ方向(
図4中y方向)に沿って銅板14にダイシングソー15が押し付けられ、ダイシングソー15が
図4の紙面と直交する方向(
図4中z方向)に移動させられることにより形成される。また、溝Gのうちx方向に沿って平行に延びる溝(不図示)は、銅板14の第1の面14a側から厚さ方向に沿って銅板14にダイシングソー15が押し付けられ、ダイシングソー15がx方向に移動させられることにより形成される。
【0040】
ダイシングソー15は、銅板14が位置決めされているため、銅板14の所定位置に押し付けられる。これによって、銅板14の所定位置に、ダイシング(切削加工)によって、例えば等間隔に、複数本の溝Gが形成される(S2)。形成する溝Gの深さ(y方向の長さ)は、製作すべき接続部材5の厚さに応じて決定される。形成される溝Gの深さは、接続部材5の厚さ以上とされる。形成する溝Gの数は、製作すべき接続部材5の個数に応じて決定される。また、さらに、溝Gの間隔は、次ステップで銅板14に接合される半導体素子4の外形寸法に応じて決定される。例えば、溝Gのx方向の間隔は、半導体素子4の下面(すなわち電極4bの下面)のx方向の寸法より若干大きく形成される。例えば、溝Gのz方向の間隔は、半導体素子4の下面(すなわち電極4bの下面)のz方向の寸法より若干大きく形成される。この場合、溝Gによって矩形に分割された第1の面14aの各領域は、電極4bの下面の面積より一回り大きい面積を有する。
【0041】
続いて、
図5に示すように、あらかじめ製作された半導体素子4を、ダイボンディング(ダイアタッチ、チップボンディングともいう)などによって、鋼板14の表面(第1の面)に形成された各溝Gの間の凸面上に接合する(S3)。すなわち、半導体素子4は、溝Gによって矩形に区画された第1の面14aの各領域に接合される。ここでは説明の都合上、3個の半導体素子4が接合された状態を示しているが、接合される半導体素子4の数は特に限定されない。より多くの半導体素子4を接合することで、一連のステップS1~S8でされる接続部材5の数を増やすことが可能となる。また、ダイボンディングにあたっては、上述したように、半導体素子4と接続部材5とを接着層を用いて接合することが可能である。なお、半導体素子4と接続部材5を直接接合(例えば拡散接合)により接続する場合には接着層は不要である。
【0042】
なお、あらかじめステップS2で溝Gを形成しておくことによって、これら溝Gの位置(
図5の紙面上方から見た溝Gの位置)をセンシングしながら、半導体素子4を銅板14上の正確な位置(
図5の紙面上方から見た鋼板14上のx-z面内での位置)に接合することが可能となる。したがって、ステップS3で半導体素子4の接合プロセスを行う前に、ステップS2のダイシングを行っておくことで、半導体素子4の位置決めをより正確に行うことができ、ダイボンディング時の電気的接続の不良等が低減され、電子部品装置の品質が向上する。
【0043】
続いて、
図6に示すように、ステップS4では、半導体素子4が搭載された状態の銅板14を、表面(第1の面14a)と裏面(第2の面14b)の上下が入れ替わるように反転させる(S4)。これにより、銅板14の表面が
図6中の紙面下側に位置し、銅板14の裏面が
図6中の紙面上側に位置する。
【0044】
そして、半導体素子4の表面(第2の電極4cに相当)に保護テープ(保護手段)16などの保護部材を押し付けることで、保護テープ16を装着する(S5)。保護テープ16としては、粘弾性材料からなる接着面を備えたものが用いられ、着脱が容易で、取り外す際に半導体素子4の表面に接着剤などの残留物を残さないものが好ましい。保護テープ16は、ステップS6において電極4cの表面を保護するために用いられる。特にステップS6でエッチング剤を使用する場合において、保護テープ16は、半導体素子4の表面がエッチング剤等により腐食するなどといった、不要な化学反応を生じさせることを防止でき、半導体素子4の品質を維持することができる。本発明の実施形態においては、この段階で、半導体素子4は作業環境中に露出した状態でよく、半導体素子4や銅板14の周囲を樹脂等で被覆するといった工程は不要である。
【0045】
続いて、
図7に示すように、溝Gが第1の面14a側に露出した状態で、銅板14の裏面(第2の面14b)をエッチング処理する(S6)。溝Gが露出した状態とは、溝Gが埋められていない状態を指す。ここで使用されるエッチング剤は、銅板14の組成や、エッチング量(表面からエッチングした厚さ)、エッチング時間などを考慮して適宜選定される。
【0046】
ステップS6でのエッチングにより、銅板14の厚さが裏面から減少し、少なくともステップS2で形成された溝Gに到達するよう銅板14の除去を行い、さらにエッチング処理を進めて、銅板14が所定の厚さTとなった状態でエッチング処理を終了する。ここで、厚さTとは接続部材5に求められる厚さに相当する。したがって、銅板14が厚さTとされることで、所望の厚さTの接続部材5となる。ステップS6において、銅板14は、第2の面14b側の一部が取り除かれる。銅板14は、溝Gとy方向において重なる一部が取り除かれることによって、溝Gが銅板14をy方向に貫通することとなる。これにより、銅板14は、溝Gに沿って分割される。言い換えると、銅板14は、溝Gに沿って分離する。銅板14が分割されて形成された接続部材5は、上面視矩形のチップ状または直方体形状である。
【0047】
ステップS6の終了後には、銅板14と一体化した複数の半導体素子4が、溝Gによってそれぞれ分離されて個片化された状態となる。
【0048】
各半導体素子4から保護テープ16の除去を行い(S7)、その後、一体化された半導体素子4と接続部材5のうちの1つを、例えば接続部材5を介して電気的に接続されるように、回路基板6上に搭載する(S8)。
【0049】
そして、接続部材5に搭載された半導体素子4を下部配線基板1と上部配線基板2の間に配置し、半導体素子4を下部配線基板1と上部配線基板2にそれぞれ接続することで、モジュール化された電子部品装置110が構成される。
【0050】
なお、ステップS3で、半導体素子4を銅板14の第1の面14aに複数接合しておくことで、ステップS6後に、半導体素子4と接続部材5とが一体化した状態となっているため、その後の電子部品装置の製造がスムーズに行われる。すなわち、作業者は、接合部材5と半導体素子4とを一つずつ接合することなく、一体化された接続部材5と半導体素子4とを回路基板6に搭載し、電子部品装置110に内蔵させることができる。
【0051】
本発明では、上述のように複数の半導体素子(電子部品)4を個片化と接続部材5(銅板14)の最終的な厚さ調整を1つの工程(ステップS6)で行うので、工業的有利に電子部品装置を製造することができる。また、本発明では、モジュールの製造プロセスの簡略化を図ることができる。本発明では、搭載される半導体素子の数や厚さに左右されることなく、一定長さのビアによって電気的接続を図ることができる。そして、このような共通仕様化によって、モジュールの品質が安定し、電子部品装置の量産が容易となる。本発明の実施形態においては、上述のように、エッチングによって接続部材5の厚さを任意に調整することが可能となるため、同時に搭載する半導体素子3、4との厚さの差を容易に調整でき、ビアの長さを一定にすることが容易になる。上述のプロセスを採用することにより、接続部材の厚さを数μm単位で管理することも可能となることから、電子部品同士の厚さの差が極小であったとしても対応できる。モジュールに内蔵される半導体素子3と同一の基板上に実装される他の半導体素子4との厚さの差を補うことができ、これら半導体素子3、4の上面の厚さ方向における位置(
図1におけるy方向の位置)を揃えることができるため、これら半導体素子3、4と電気的に接続するビア9、11のy方向に沿った長さを同じにすることができる。
【0052】
特に、厚さの異なる複数の電子部品装置をモジュール内に搭載する場合にも、本発明を採用することで、当該厚さの違いに起因する電気的不具合等のリスクを極力抑制することができ、電子部品の厚さにかかわらずモジュールの品質を安定させることが可能となる。
【0053】
銅板14の厚さは、特定の厚さでなくともよく厚さTより厚ければよいため、量産された銅板を採用することができる。これにより、銅板14のコストを抑制することができる。
【0054】
図8は、上記の製造方法によって製作された接続部材5の端部付近の拡大写真である。同図からも明らかなように、所望の厚さTとなった接続部材5の端部を観察すると、エッチング処理S6が施されて形成された接続部材5の片面についてはエッジが除去され、断面が曲線を描くような状態に製作された。一方、ダイシング処理S2の影響を受けた接続部材5の表面(第1の面と同じ面)については、そのエッジ部分に、
図8の紙面下方向に向かって凸となるバリが形成されていることが判明した。これは、これは、ダイシング処理時においてダイシングソーによって切断できずに接続部材のエッジ部分に残留してしまった切削残しが原因と推測される。
【0055】
すなわち、ステップS2、ステップS3およびステップS6を含む電子部品装置の製造方法によっては、ダイシングによって銅板14を切り分けたものではないため、接続部材5の下面(半導体素子4が接合された面の裏面)から突出するような変形が生じないことが判った。これは、当該処理面の平面性が保たれることを意味する。すなわち、
図1において接続部材5と回路基板6とを接続する場合に、回路基板6に向かってバリ等の突起が形成されないことを意味する。そして、基板等と当接する面が平らに形成されることで、接続部材5と回路基板6との間に空間を生じさせないようにして当接面での正確な面接触が図られることとなる。これは、接続部材5と回路基板6とを面接触で位置合わせした後にレーザ光によってビアを形成する際、レーザ光の焦点を当該当接面に正確に結ばせるため非常に有利である。一方、ダイシングによって銅板14を切り分けた場合には、当接面を平滑化する工程が別途必要となる。本発明にかかる電子部品装置の製造方法によれば、上述のバリ等の突起が形成されないため、接続部材5を回路基板6とそのまま位置合わせすることができる。そして、ビアが正確に形成されることで安定した電気的接続が可能となることにより、モジュールの性能が長期間にわたり安定化することとなり、電子部品装置としての信頼性が飛躍的に向上する。
【0056】
なお、ステップS6はエッチングに限定されるものではない。例えば、上記エッチングに代えて、銅板14の裏面(
図7の紙面上方から見た鋼板14のx-z面、すなわち第2の面14b)をサンドブラスト加工やフライス加工することで、銅板14を所定厚さTとすることも可能である。このような加工であっても、銅板14を第2の面14b側から薄くすることができる。なお、ステップS6をエッチングを用いて行うことにより、銅板14の厚さの調整をより精度よく行うことができる。
【0057】
図1に示した本発明の実施形態は、半導体素子(他の電子部品)3には接続部材が接続されず、半導体素子(電子部品)4のみに接続部材5が接続されることで半導体素子3との厚さを調整するものであった。一方、上述の製造方法によって、半導体素子3と半導体素子4の両方に、それぞれ異なる厚さの接続部材を接続することで、両者の厚さを調整することも可能である。特に、モジュールの機能向上が進むことで、必要となる半導体素子の数や種類が増え、より多くの半導体素子がモジュール内に搭載されることが予想される。そのような場合には、モジュール内に搭載される複数の半導体素子の厚さの違いを調整するために、それぞれ個別の厚さの接続部材が接続しなければならず、そのような場合に本発明は極めて有効である。
【0058】
本発明の実施形態に係る電子部品装置は、パワー半導体の半導体材料として広く知られている炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)などが用いられた半導体素子を含む場合に有用である。特に、バンドギャップの高いコランダム構造の酸化ガリウム(α-Ga2O3)や、βガリア構造の酸化ガリウム(β-Ga2O3)が用いられた半導体素子を含む場合に極めて有用であり、半導体装置の高密度化のみならず信頼性向上にも貢献する。また、本実施形態にかかる半導体装置によれば、信頼性を低下させることなく、異なる寸法の半導体素子を内蔵することができる。そのため、部品内蔵基板モジュールにおける設計の自由度を従来よりも広げることができる。
【0059】
なお、上述した本発明に係る複数の実施形態を組合わせたり、一部の構成要素を他の実施形態に適用することももちろん可能であり、そのようなものも本発明の実施形態に属する。本発明の実施形態に係る電子部品としては、半導体素子だけでなく、半導体素子以外の能動部品(CMOSやサイリスタ、オペアンプなどの)や受動部品(抵抗やコイル、コンデンサなどの)なども含まれる。また、本発明の実施態様においては、第1の半導体素子3および第2の半導体素子4に加えて、さらに他の半導体素子がさらに内蔵された構成であってもよい。また、上述した能動部品や受動部品が、半導体装置と共に内蔵された構成であってもよい。これら電子部品に接続部材を適宜接続することで、電子部品の厚さが調整される。本発明の実施態様においては、上記した半導体装置をサブモジュールとして上で、これらサブモジュールを複数組み合わせてモジュールを形成して使用してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、電子部品装置110がモジュールであったが、電子部品装置は、半導体素子4と接続部材5とが一体化されたものであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、接続板の一例として銅板14が用いられたが、銅板14に代えて、材料が金や銀、その他の金属、これらの組み合わせからなる板、セラミック材料からなる板あるいは珪素(Si)を主成分とする板が用いられてもよい。
【0062】
また、
図4~
図7に示される溝Gは、縦断面の形状がコの字状であったが、これに限られずU字状であってもよくV字状であってもよい。また、溝Gは、エッチングやレーザ照射によって形成されてもよい。
【0063】
また、溝G同士の間隔は、均等でなくともよい。溝G同士の間隔を変更することで、同時に異なる外形寸法の接続部材を形成することができる。
【0064】
上述した本発明の実施形態に係る電子部品装置は、上記した機能を発揮させるべく、インバータやコンバータなどの電力変換装置に適用することができる。
図9は、本発明の実施形態に係る電子部品装置を用いた制御システムの一例を示すブロック構成図、
図10は同制御システムの回路図であり、特に電気自動車(Electric Vehicle)への搭載に適した制御システムである。
【0065】
図9に示すように、制御システム500はバッテリー(電源)501、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504、モータ(駆動対象)505、駆動制御部506を有し、これらは電気自動車に搭載されてなる。バッテリー501は例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの蓄電池からなり、給電ステーションでの充電あるいは減速時の回生エネルギーなどにより電力を貯蔵するとともに、電気自動車の走行系や電装系の動作に必要となる直流電圧を出力することができる。昇圧コンバータ502は例えばチョッパ回路を搭載した電圧変換装置であり、バッテリー501から供給される例えば200Vの直流電圧を、チョッパ回路のスイッチング動作により例えば650Vに昇圧して、モータなどの走行系に出力することができる。降圧コンバータ503も同様にチョッパ回路を搭載した電圧変換装置であるが、バッテリー501から供給される例えば200Vの直流電圧を、例えば12V程度に降圧することで、パワーウインドーやパワーステアリング、あるいは車載の電気機器などを含む電装系に出力することができる。
【0066】
インバータ504は、昇圧コンバータ502から供給される直流電圧をスイッチング動作により三相の交流電圧に変換してモータ505に出力する。モータ505は電気自動車の走行系を構成する三相交流モータであり、インバータ504から出力される三相の交流電圧によって回転駆動され、その回転駆動力を図示しないトランスミッション等を介して電気自動車の車輪に伝達する。
【0067】
一方、図示しない各種センサを用いて、走行中の電気自動車から車輪の回転数やトルク、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル量)などの実測値が計測され、これらの計測信号が駆動制御部506に入力される。また同時に、インバータ504の出力電圧値も駆動制御部506に入力される。駆動制御部506はCPU(Central Processing Unit)などの演算部やメモリなどのデータ保存部を備えたコントローラの機能を有するもので、入力された計測信号を用いて制御信号を生成してインバータ504にフィードバック信号として出力することで、スイッチング素子によるスイッチング動作を制御する。これによって、インバータ504がモータ505に与える交流電圧が瞬時に補正されることで、電気自動車の運転制御を正確に実行させることができ、電気自動車の安全・快適な動作が実現する。なお、駆動制御部506からのフィードバック信号を昇圧コンバータ502に与えることで、インバータ504への出力電圧を制御することも可能である。
【0068】
図10は、
図9における降圧コンバータ503を除いた回路構成、すなわちモータ505を駆動するための構成のみを示した回路構成である。同図に示されるように、本発明の実施形態に係る半導体装置は、例えばショットキーバリアダイオードとして昇圧コンバータ502およびインバータ504に採用されることでスイッチング制御に供される。昇圧コンバータ502においてはチョッパ回路に組み込まれてチョッパ制御を行い、またインバータ504においてはIGBTを含むスイッチング回路に組み込まれてスイッチング制御を行う。なお、バッテリー501の出力にインダクタ(コイルなど)を介在させることで電流の安定化を図り、またバッテリー501、昇圧コンバータ502、インバータ504のそれぞれの間にキャパシタ(電解コンデンサなど)を介在させることで電圧の安定化を図っている。
【0069】
また、
図10中に点線で示すように、駆動制御部506内にはCPU(Central Processing Unit)からなる演算部507と不揮発性メモリからなる記憶部508が設けられている。駆動制御部506に入力された信号は演算部507に与えられ、プログラムされた演算を必要に応じて行うことで各半導体素子に対するフィードバック信号を生成する。また記憶部508は、演算部507による演算結果を一時的に保持したり、駆動制御に必要な物理定数や関数などをテーブルの形で蓄積して演算部507に適宜出力する。演算部507や記憶部508は公知の構成を採用することができ、その処理能力等も任意に選定できる。
【0070】
図9や
図10に示されるように、制御システム500においては、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504のスイッチング動作にはダイオードやスイッチング素子であるサイリスタ、パワートランジスタ、IGBT、MOSFET等が用いられる。これらの半導体素子に酸化ガリウム(Ga
2O
3)、特にコランダム型酸化ガリウム(α-Ga
2O
3)をその材料として用いることでスイッチング特性が大幅に向上する。さらに、本発明の実施形態に係る電子部品装置を適用することで、極めて良好なスイッチング特性が期待できるとともに、制御システム500の一層の小型化やコスト低減が実現可能となる。すなわち、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504のそれぞれが本発明による効果を期待できるものとなり、これらのいずれか一つ、もしくは任意の二つ以上の組合せ、あるいは駆動制御部506も含めた形態のいずれにおいても本発明の効果を期待することができる。
【0071】
なお、上述の制御システム500は本発明の実施形態に係る電子部品装置を電気自動車の制御システムに適用できるだけではなく、直流電源からの電力を昇圧・降圧したり、直流から交流へ電力変換するといったあらゆる用途の制御システムに適用することが可能である。また、バッテリーとして太陽電池などの電源を用いることも可能である。
【0072】
図11は、本発明の実施形態に係る部品電子装置を採用した制御システムの他の例を示すブロック構成図、
図12は同制御システムの回路図であり、交流電源からの電力で動作するインフラ機器や家電機器等への搭載に適した制御システムである。
【0073】
図11に示すように、制御システム600は、外部の例えば三相交流電源(電源)601から供給される電力を入力するもので、AC/DCコンバータ602、インバータ604、モータ(駆動対象)605、駆動制御部606を有し、これらは様々な機器(後述する)に搭載することができる。三相交流電源601は、例えば電力会社の発電施設(火力発電所、水力発電所、地熱発電所、原子力発電所など)であり、その出力は変電所を介して降圧されながら交流電圧として供給される。また、例えば自家発電機等の形態でビル内や近隣施設内に設置されて電力ケーブルで供給される。AC/DCコンバータ602は交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換装置であり、三相交流電源601から供給される100Vや200Vの交流電圧を所定の直流電圧に変換する。具体的には、電圧変換により3.3Vや5V、あるいは12Vといった、一般的に用いられる所望の直流電圧に変換される。駆動対象がモータである場合には12Vへの変換が行われる。なお、三相交流電源に代えて単相交流電源を採用することも可能であり、その場合にはAC/DCコンバータを単相入力のものとすれば同様のシステム構成とすることができる。
【0074】
インバータ604は、AC/DCコンバータ602から供給される直流電圧をスイッチング動作により三相の交流電圧に変換してモータ605に出力する。モータ604は、制御対象によりその形態が異なるが、制御対象が電車の場合には車輪を、工場設備の場合にはポンプや各種動力源を、家電機器の場合にはコンプレッサなどを駆動するための三相交流モータであり、インバータ604から出力される三相の交流電圧によって回転駆動され、その回転駆動力を図示しない駆動対象に伝達する。
【0075】
なお、例えば家電機器においてはAC/DCコンバータ602から出力される直流電圧をそのまま供給することが可能な駆動対象も多く(例えばパソコン、LED照明機器、映像機器、音響機器など)、その場合には制御システム600にインバータ604は不要となり、
図11中に示すように、AC/DCコンバータ602から駆動対象に直流電圧を供給する。この場合、例えばパソコンなどには3.3Vの直流電圧が、LED照明機器などには5Vの直流電圧が供給される。
【0076】
一方、図示しない各種センサを用いて、駆動対象の回転数やトルク、あるいは駆動対象の周辺環境の温度や流量などといった実測値が計測され、これらの計測信号が駆動制御部606に入力される。また同時に、インバータ604の出力電圧値も駆動制御部606に入力される。これらの計測信号をもとに、駆動制御部606はインバータ604にフィードバック信号を与え、スイッチング素子によるスイッチング動作を制御する。これによって、インバータ604がモータ605に与える交流電圧が瞬時に補正されることで、駆動対象の運転制御を正確に実行させることができ、駆動対象の安定した動作が実現する。また、上述のように、駆動対象が直流電圧で駆動可能な場合には、インバータへのフィードバックに代えてAC/DCコンバータ602をフィードバック制御することも可能である。
【0077】
図12は、
図11の回路構成を示したものである。同図に示されるように、本発明の実施形態に係る電子部品装置は、例えばショットキーバリアダイオードとしてAC/DCコンバータ602およびインバータ604に採用されることでスイッチング制御に供される。AC/DCコンバータ602は、例えばショットキーバリアダイオードをブリッジ状に回路構成したものが用いられ、入力電圧の負電圧分を正電圧に変換整流することで直流変換を行う。またインバータ604においてはIGBTにおけるスイッチング回路に組み込まれてスイッチング制御を行う。なお、AC/DCコンバータ602とインバータ604の間にキャパシタ(電解コンデンサなど)を介在させることで電圧の安定化を図っている。
【0078】
また、
図12中に点線で示すように、駆動制御部606内にはCPUからなる演算部607と不揮発性メモリからなる記憶部608が設けられている。駆動制御部606に入力された信号は演算部607に与えられ、プログラムされた演算を必要に応じて行うことで各半導体素子に対するフィードバック信号を生成する。また記憶部608は、演算部607による演算結果を一時的に保持したり、駆動制御に必要な物理定数や関数などをテーブルの形で蓄積して演算部607に適宜出力する。演算部607や記憶部608は公知の構成を採用することができ、その処理能力等も任意に選定できる。
【0079】
このような制御システム600においても、
図9や
図10に示した制御システム500と同様に、AC/DCコンバータ602やインバータ604の整流動作やスイッチング動作にはダイオードやスイッチング素子であるサイリスタ、パワートランジスタ、IGBT、MOSFET等が用いられる。これら半導体素子に酸化ガリウム(Ga
2O
3)、特にコランダム型酸化ガリウム(α-Ga
2O
3)をその材料として用いることでスイッチング特性が向上する。さらに、本発明の実施形態に係る電子部品装置を適用することで、極めて良好なスイッチング特性が期待できるとともに、制御システム600の一層の小型化やコスト低減が実現可能となる。すなわち、AC/DCコンバータ602、インバータ604のそれぞれが本発明による効果を期待できるものとなり、これらのいずれか一つ、もしくは組合せ、あるいは駆動制御部606も含めた形態のいずれにおいても本発明の効果を期待することができる。
【0080】
なお、
図11および
図12では駆動対象としてモータ605を例示したが、駆動対象は必ずしも機械的に動作するものに限られず、交流電圧を必要とする多くの機器を対象とすることができる。制御システム600においては、交流電源から電力を入力して駆動対象を駆動する限りにおいては適用が可能であり、インフラ機器(例えばビルや工場等の電力設備、通信設備、交通管制機器、上下水処理設備、システム機器、省力機器、電車など)や家電機器(例えば、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、LED照明機器、映像機器、音響機器など)といった機器を対象とした駆動制御のために搭載することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 下部配線基板(第1の基板)
2 上部配線基板(第2の基板)
3 半導体素子(他の電子部品)
4 半導体素子(電子部品)
3a,3b 素子本体
3b,3c,4b,4c 電極
5 接続部材
6 回路基板
8,9,10,11 ビア
13 スルーホール
14 銅板(接続部材)
16 保護テープ(保護手段)
110 半導体装置(電子部品装置)
500 制御システム
501 バッテリー(電源)
502 昇圧コンバータ
503 降圧コンバータ
504 インバータ
505 モータ(駆動対象)
506 駆動制御部
507 演算部
508 記憶部
600 制御システム
601 三相交流電源(電源)
602 AC/DCコンバータ
604 インバータ
605 モータ(駆動対象)
606 駆動制御部
607 演算部
608 記憶部