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特開2023-63870位置決め構造、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063870
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】位置決め構造、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173923
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】久保田 禅
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA07
2C056HA11
2C056HA37
(57)【要約】
【課題】液体噴射記録装置のヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めする。
【解決手段】位置決め構造100は、キャリッジ29に設けられた位置決めピン40と、インクジェットヘッド5に設けられた位置調整機構60と、を備え、位置調整機構60は、位置決めピン40に当接する当接部材80と、当接部材80を設置面29aの垂直方向と交差した斜め方向に延びる変位軸O2に沿って変位させる変位機構90と、を備え、位置決めピン40の当接部41が、設置面29aと交差した第1交差軸O1を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当接部材80の当接部81が、設置面29aの垂直方向に延びる垂直軸(第1交差軸O1)及び変位軸O2を含む仮想平面に対して交差し、且つ、第1交差軸O1に対して平行でない第2交差軸O3を中心軸とする曲面状に形成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射記録装置のヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを位置決めする位置決め構造であって、
前記ヘッド設置部及び前記液体噴射ヘッドの一方に設けられた凸部と、
前記ヘッド設置部及び前記液体噴射ヘッドの他方に設けられ、前記凸部に対し、前記ヘッド設置部の設置面に沿う方向の位置を調整する位置調整機構と、を備え、
前記位置調整機構は、
前記凸部に当接する当接部材と、
前記当接部材を前記設置面の垂直方向と交差した斜め方向に延びる変位軸に沿って変位させる変位機構と、を備え、
前記凸部及び前記当接部材の互いの当接部の一方が、前記設置面と交差した第1交差軸を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当該当接部の他方が、前記設置面の垂直方向に延びる垂直軸及び前記変位軸を含む仮想平面に対して交差し、且つ、前記第1交差軸に対して平行でない第2交差軸を中心軸とする曲面状に形成されている、ことを特徴とする位置決め構造。
【請求項2】
前記当接部の一方は、前記第1交差軸を中心軸とする第1円筒面を含み、
前記当接部の他方は、前記第2交差軸を中心軸とする第2円筒面を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め構造。
【請求項3】
前記凸部の前記当接部は、前記設置面の垂直方向に延びる前記第1円筒面を含み、
前記当接部材の前記当接部は、前記設置面に平行に延びる前記第2円筒面を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の位置決め構造。
【請求項4】
前記変位機構は、前記斜め方向に延びて前記当接部材をガイドするガイド部を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【請求項5】
前記当接部材は、前記変位軸と直交する方向で前記ガイド部を挟み込む挟持部を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の位置決め構造。
【請求項6】
前記変位機構は、
前記変位軸に沿って延びていると共に、前記当接部材をねじ送りするボルトと、
前記ガイド部の一端部に設けられ、前記ボルトの頭部を支持すると共に、前記ボルトの軸部が挿通する第1挿通孔が形成された第1支持部と、
前記第1支持部と前記当接部材との間に配置された圧縮バネと、を有する、ことを特徴とする請求項4または5に記載の位置決め構造。
【請求項7】
前記変位機構は、前記ガイド部の他端部に設けられ、前記ボルトの軸部が挿通する第2挿通孔が形成された第2支持部を有する、ことを特徴とする請求項6に記載の位置決め構造。
【請求項8】
前記位置調整機構は、前記当接部材が配置される側と逆側から前記凸部に対して前記設置面に沿う方向に予圧をかける予圧機構を備える、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の位置決め構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決め構造の前記位置調整機構及び前記凸部のいずれか一方を備える、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決め構造を備える、ことを特徴とする液体噴射記録装置。
【請求項11】
液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが設置されるキャリッジと、
前記キャリッジに対して前記液体噴射ヘッドを位置決めする、請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決め構造を備える、ことを特徴とする液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置決め構造、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、液滴を吐出する複数のノズルが配列された複数のヘッド(液体噴射ヘッド)を、アレイベース部材(ヘッド設置部)に配列したヘッドユニットが開示されている。このヘッドユニットは、ヘッドを保持するプレート部材の端部に、傾斜部材の傾斜面を当接させると共に、ボルトによって当該傾斜部材を上下動させることで、アレイベース部材に対するヘッドの位置を微調整する位置決め構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-14972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記位置決め構造では、傾斜部材の傾斜面をプレート部材の端部に当接させるため、傾斜部材とプレート部材とが線接触している。しかしながら、両部材には加工精度等に起因する微小な凹凸が存在するため、両部材は厳密には多点接触している。この多点接触の状態は、個々の接触点における誤差が累積し易いため、ヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めすることが困難になる虞がある。
【0005】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、液体噴射記録装置のヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一態様に係る位置決め構造は、液体噴射記録装置のヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを位置決めする位置決め構造であって、前記ヘッド設置部及び前記液体噴射ヘッドの一方に設けられた凸部と、前記ヘッド設置部及び前記液体噴射ヘッドの他方に設けられ、前記凸部に対し、前記ヘッド設置部の設置面に沿う方向の位置を調整する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記凸部に当接する当接部材と、前記当接部材を前記設置面の垂直方向と交差した斜め方向に延びる変位軸に沿って変位させる変位機構と、を備え、前記凸部及び前記当接部材の互いの当接部の一方が、前記設置面と交差した第1交差軸を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当該当接部の他方が、前記設置面の垂直方向に延びる垂直軸及び前記変位軸を含む仮想平面に対して交差し、且つ、前記第1交差軸に対して平行でない第2交差軸を中心軸とする曲面状に形成されている。
【0007】
本態様に係る位置決め構造によれば、当接部材が変位機構によって設置面の垂直方向と交差した斜め方向に変位すると、当接部材に当接する凸部が設置面に沿う方向に押し込まれ、液体噴射ヘッドがヘッド設置部に対して変位する。ここで、当接部の一方が、設置面と交差した第1交差軸を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当該当接部の他方が、設置面の垂直方向に延びる垂直軸及び変位軸を含む仮想平面に対して交差し、且つ、第1交差軸に対して平行でない第2交差軸を中心軸とする曲面状に形成され、当接部の互いの曲面形状の中心軸がねじれの位置関係となるため、凸部及び当接部材が1点で当接する。凸部及び当接部材が1点で当接することにより、凸部と当接部材との多点当接による誤差を回避することができ、ヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めするこができる。
【0008】
(2)(1)の態様の位置決め構造において、前記当接部の一方は、前記第1交差軸を中心軸とする第1円筒面を含み、前記当接部の他方は、前記第2交差軸を中心軸とする第2円筒面を含んでもよい。
【0009】
この場合には、凸部及び当接部材の当接部の一方が、第1交差軸を中心軸とする第1円筒面を有し、当接部の他方が、第2交差軸を中心軸とする第2円筒面を有し、両者の中心軸(第1交差軸及び第2交差軸)が互いに交差しているため、凸部と当接部材とを常に安定して1点で当接させることができる。
【0010】
(3)(2)の態様の位置決め構造において、前記凸部の前記当接部は、前記設置面の垂直方向に延びる前記第1円筒面を含み、前記当接部材の前記当接部は、前記設置面に平行に延びる前記第2円筒面を含んでもよい。
【0011】
この場合には、凸部の当接部が、設置面の垂直方向に延びる第1円筒面を含み、当接部材の当接部が設置面に平行に延びる第2円筒面を含むため、凸部と当接部材とが常に安定して1点で当接すると共に、凸部に対して1点で当接する当接部材が、凸部に対し設置面に沿う方向にズレることを防止できる。
【0012】
(4)(1)から(3)のいずれかの態様の位置決め構造において、前記変位機構は、前記斜め方向に延びて前記当接部材をガイドするガイド部を有してもよい。
【0013】
この場合には、当接部材をガイド部に沿って斜め方向に精度よく変位させることができる。
【0014】
(5)(4)の態様の位置決め構造において、前記当接部材は、前記変位軸と直交する方向で前記ガイド部を挟み込む挟持部を有してもよい。
【0015】
この場合には、当接部材に設けられた挟持部でガイド部を挟み込むことで、当接部材が変位軸を中心に回動してしまうことを防止できる。
【0016】
(6)(4)または(5)の態様の位置決め構造において、前記変位機構は、前記変位軸に沿って延びていると共に、前記当接部材をねじ送りするボルトと、前記ガイド部の一端部に設けられ、前記ボルトの頭部を支持すると共に、前記ボルトの軸部が挿通する第1挿通孔が形成された第1支持部と、前記第1支持部と前記当接部材との間に配置された圧縮バネと、を有してもよい。
【0017】
この場合には、変位軸となるボルトを回転させると、挟持部を有し、ガイド部に対する回動が規制された当接部材がねじ送りされる。このとき、第1支持部と当接部材との隙間が広がるが、この隙間を埋めるように圧縮バネが伸長するため、ボルトの頭部が第1支持部から浮くことを防止することができる。
【0018】
(7)(6)の態様の位置決め構造において、前記変位機構は、前記ガイド部の他端部に設けられ、前記ボルトの軸部が挿通する第2挿通孔が形成された第2支持部を有してもよい。
【0019】
この場合には、第2支持部の第2挿通孔にボルトの軸部を挿通することで、ボルトの両端を第1支持部及び第2支持部で軸支できるため、ボルトの軸ブレを抑制し、当接部材を高精度で変位させることができる。
【0020】
(8)(1)から(7)のいずれかの態様の位置決め構造において、前記位置調整機構は、前記当接部材が配置される側と逆側から前記凸部に対して前記設置面に沿う方向に予圧をかける予圧機構を備えてもよい。
【0021】
この場合には、予圧機構によって凸部に対して予圧をかけ、凸部に当接する当接部材を予圧かける方向に変位させることで、ベース部材を当接部材の変位に追従して移動させることができる。この予圧機構によって、凸部を挟んだ両側に当接部材及び変位機構を設ける必要がなくなるため、位置調整機構の構造の簡単化、軽量化、省スペース化をすることができる。
【0022】
(9)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、(1)から(8)のいずれかの態様の位置決め構造の前記位置調整機構及び前記凸部のいずれか一方を備える。
【0023】
本態様に係る液体噴射ヘッドによれば、高精度な印字ができる液体噴射ヘッドが得られる。
【0024】
(10)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、(1)から(8)のいずれかの態様の位置決め構造を備える。
本態様に係る液体噴射記録装置によれば、高精度な印字ができる液体噴射記録装置が得られる。
【0025】
(11)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが設置されるキャリッジと、前記キャリッジに対して前記液体噴射ヘッドを位置決めする、(1)から(8)のいずれかの態様の位置決め構造を備える。
【0026】
本態様に係る液体噴射記録装置によれば、液体噴射記録装置のキャリッジに対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めし、高精度な印字ができる。
【発明の効果】
【0027】
上記本開示の一態様によれば、液体噴射記録装置のヘッド設置部に対して液体噴射ヘッドを精度よく位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】一実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】一実施形態に係るキャリッジに設置されたインクジェットヘッドの配置を示す平面図である。
図4】一実施形態に係るインクジェットヘッドの位置決め構造の斜視図である。
図5】一実施形態に係るインクジェットヘッドの位置決め構造の分解斜視図である。
図6】一実施形態に係るインクジェットヘッドの位置決め構造の平面図である。
図7】一実施形態に係る第1位置調整ユニットの斜視図である。
図8】一実施形態に係る第2位置調整ユニットの斜視図である。
図9図6に示す矢視IX-IX断面図である。
図10】一実施形態に係る当接部の曲面形状を説明する概念図である。
図11】一実施形態に係るインクジェットヘッドの位置決め後の工程を示す説明図である。
図12】一実施形態に係る位置決め構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0031】
以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0032】
[プリンタ1]
図1は、一実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1(液体噴射記録装置)は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド5(液体噴射ヘッド)と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0033】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。X方向は、被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)である。Y方向は、走査機構7の走査方向(主走査方向)である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)である。なお、X方向は、インクジェットヘッド5の印字幅方向である。
【0034】
また、以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0035】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。インクタンク4は、複数設けられ、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。
【0036】
インクジェットヘッド5は、複数設けられ、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0037】
図2は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0038】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
【0039】
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環している。
【0040】
図1に示すように、走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29(ヘッド設置部)と、キャリッジ29を移動させる駆動装置と、を備えている。駆動装置は、例えば、モータ、プーリー、ベルト等から構成されている。
【0041】
<インクジェットヘッド5>
インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。本実施形態のインクジェットヘッド5は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子から形成されたアクチュエータプレートを含むヘッドチップからインクを吐出する電気機械変換式のインクジェットヘッドである。
【0042】
このインクジェットヘッド5において、インクを吐出させるには、アクチュエータプレートに形成された吐出チャネルの駆動壁の電極間に電圧を印加して、駆動壁を厚み滑り変形させる。これにより、吐出チャネル内の容積が変化することで、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。なお、液体の吐出方式としては、上記の電気機械変換式に限らず、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などであっても構わない。
【0043】
帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0044】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用できる。
【0045】
図3は、一実施形態に係るキャリッジ29に設置されたインクジェットヘッド5の配置を示す平面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ29の設置面29aに複数設置されている。インクジェットヘッド5は、平面視でX方向に延びる略長方形状を有し、そのX方向の一方側(+X側)には、上述したインク供給管21が接続される入口ポート5aが設けられ、そのX方向の他方側(-X側)には、上述したインク排出管22が接続される出口ポート5bが設けられている。
【0046】
インクジェットヘッド5は、X方向に長辺が延び、Y方向に短辺が延びる向きでキャリッジ29の設置面29aに設置されている。インクジェットヘッド5は、設置面29aにおいて、X方向に所定のピッチで設置されている。各インクジェットヘッド5の上面には、図示しない接続コネクタが設けられ、プリンタ1と図示しないケーブルを介して電気的に接続されている。
【0047】
キャリッジ29には、インクジェットヘッド5の下端部が挿入される挿入孔29bが形成されている。挿入孔29bは、平面視で、X方向に延びる矩形の長孔であり、キャリッジ29の設置面29aを厚み方向(Z方向)に貫通している。挿入孔29bは、インクジェットヘッド5の下端部よりも一回り大きく形成されており、インクジェットヘッド5の位置調整のクリアランスを確保している。インクジェットヘッド5のそれぞれは、以下説明する位置決め構造100によって、X方向の位置、Y方向の位置、及びX-Y平面上の回転角度を調整され、キャリッジ29に固定されている。
【0048】
<位置決め構造100>
図4は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5の位置決め構造100の斜視図である。図5は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5の位置決め構造100の分解斜視図である。図6は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5の位置決め構造100の平面図である。
これらの図に示すように、インクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体5A(噴射部)と、ヘッド本体5Aを支持し、キャリッジ29の設置面29aに設置されるベース部材30と、を備えている。
【0049】
ヘッド本体5Aは、図5に示すように、矩形の箱形状を有し、その下面にインクを噴射する不図示のノズル列を備えている。ベース部材30は、ヘッド本体5Aの下端部に接続されている。ベース部材30は、キャリッジ29の設置面29aに載置されるプレート部31と、ヘッド本体5Aの下端部を囲うベース部32と、を備えている。
【0050】
ベース部32は、上側が開口する矩形の箱形状を有している。ベース部32の底面には、ヘッド本体5Aのノズル列を露出させる図示しない長孔が形成されている。プレート部31は、ベース部32の上部開口縁からX方向両側に延びる板形状を有している。プレート部31は、キャリッジ29の設置面29aにばね座金101aを介して取り付けられたネジ部材101によって固定されている。キャリッジ29の設置面29aには、ネジ部材101が螺着する固定孔29dが設けられている。
【0051】
ベース部材30のプレート部31には、位置決めピン40(凸部)が配置される第1貫通部33と、ネジ部材101が配置される第2貫通部34と、が形成されている。第1貫通部33は、X方向に延びる長孔形状を有すると共に、位置決めピン40に対して一回り大きく形成されている。また、第2貫通部34は、X方向に延びる長孔形状を有すると共に、ネジ部材101の軸部に対して一回り大きく形成されている。
【0052】
これらの隙間によって、ベース部材30は、キャリッジ29の設置面29aに沿う方向(X-Y平面方向)の固定位置を調整できるようになっている。また、プレート部31における第1貫通部33と第2貫通部34との間には、後述する位置調整ユニット50を固定する固定孔35が複数形成されている。固定孔35の内壁面には、位置調整ユニット50を固定するネジ部材102が螺着する雌ネジが形成されている。
【0053】
位置決め構造100は、キャリッジ29に設けられた位置決めピン40と、インクジェットヘッド5に設けられ、位置決めピン40に対し、ベース部材30のキャリッジ29の設置面29aに沿う方向の位置を調整する位置調整ユニット50と、を備えている。位置決め構造100は、位置決めピン40として、X方向において、ヘッド本体5Aを挟んで配置された第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bを備えている。
【0054】
第1位置決めピン40Aは、ヘッド本体5Aの+X側に配置されている。第2位置決めピン40Bは、ヘッド本体5Aの-X側に配置されている。また、位置決め構造100は、位置調整ユニット50として、第1位置決めピン40Aに対して、ベース部材30の位置を調整する第1位置調整ユニット50Aと、第2位置決めピン40Bに対して、ベース部材30の位置を調整する第2位置調整ユニット50Bと、を備えている。
【0055】
<位置調整ユニット50>
図7は、一実施形態に係る第1位置調整ユニット50Aの斜視図である。図8は、一実施形態に係る第2位置調整ユニット50Bの斜視図である。図9は、図6に示す矢視IX-IX断面図である。
図7に示すように、第1位置調整ユニット50Aは、フレーム部材51と、フレーム部材51に支持されたX方向とY方向の2つの位置調整機構60と、を備えている。以下の説明では、先ず、Y方向の位置調整機構60(以下、第2位置調整機構60Bという)に基づき、位置調整機構60の基本構造について説明する。
【0056】
第2位置調整機構60Bは、上述したキャリッジ29の設置面29aに設けられた位置決めピン40に対し、ベース部材30の設置面29aに沿うY方向の位置を調整する。第2位置調整機構60Bは、位置決めピン40に対して設置面29aに沿うY方向に予圧をかける予圧機構70と、予圧機構70が予圧をかけるY方向において、予圧機構70が配置される側(-Y側)と逆側(+Y側)から位置決めピン40に当接する当接部材80と、予圧機構70が予圧をかけるY方向において、当接部材80を変位させる変位機構90と、を備えている。
【0057】
予圧機構70は、図9に示すように、2枚の板バネ71,72を備えている。板バネ71は、クランク状に屈曲し、その先端部が位置決めピン40の-Y側に当接している。板バネ72は、L字状に屈曲し、板バネ71の背面側に重なることで、予圧機構70の付勢力を調整している。なお、板バネ72は、板バネ71に複数枚重ねてもよい。また、板バネ71の付勢力で十分であれば、板バネ72は設けなくてもよい。
【0058】
板バネ71,72は、図7に示すように、ネジ部材103によってフレーム部材51の底部52に固定されている。ネジ部材103の近傍には、板バネ71,72及びフレーム部材51の底部52をZ方向に貫通する第3貫通部52aが複数形成されている。第3貫通部52aには、図9に示すように、第2位置調整ユニット50Bを固定するネジ部材102が配置されている。ネジ部材102は、ベース部材30のプレート部31に形成された固定孔35に螺着している。つまり、第2位置調整ユニット50B(2つの位置調整機構60)は、ネジ部材102によって、ベース部材30に対し着脱可能に取り付けられている。
【0059】
変位機構90は、位置決めピン40の+Y側に当接する当接部材80を、設置面29aの垂直方向(Z方向)と交差した斜め方向に延びる変位軸O2に沿って変位させる。フレーム部材51は、変位機構90が取り付けられる取付部53を備えている。取付部53は、底部52に対して直角に屈曲すると共に、高さ方向(Z方向)の略中間位置から、さらに底部52側(位置決めピン40側)に変位軸O2と同じ角度で屈曲している。取付部53には、変位機構90のガイド部91の下端部との干渉を避ける開口部54が形成されている。ガイド部91の背面側は、ネジ部材104を介して取付部53に固定されている。
【0060】
ガイド部91は、変位軸O2に沿って斜め方向に延びて当接部材80をガイドする軌道部材である。ガイド部91は、当接部材80の背面側(+Y側)に当接する傾斜面を有している。当接部材80は、変位軸O2と直交する方向(X方向)でガイド部91を挟み込む挟持部82を有している。つまり、当接部材80は、ガイド部91の傾斜面及び両側面の3面に対して摺動しながら、ガイド部91に沿って斜め方向に変位できるようになっている。
【0061】
変位機構90は、上述したガイド部91と、ボルト92と、圧縮バネ93と、第1支持部94と、第2支持部95と、を備えている。ボルト92には、当接部材80がねじ送り可能に螺合している。ボルト92は、変位軸O2に沿って延びると共に、変位軸O2回りの回転によって当接部材80をねじ送りする。第1支持部94は、ガイド部91の上端部(一端部)に設けられ、ボルト92の頭部を支持している。第1支持部94には、ボルト92の軸部が挿通する第1挿通孔94aが形成されている。第1挿通孔94aは、ボルト92の軸部におけるネジが形成されていない部分(ネック部分)を軸支している。
【0062】
圧縮バネ93は、例えば、ボルト92の周囲に配置されたコイルバネであり、第1支持部94と当接部材80との間に介在している。圧縮バネ93は、ボルト92のねじ送りによって変動する、当接部材80と第1支持部94との隙間を埋めるように伸縮する。第2支持部95は、ガイド部91の下端部(他端部)に設けられている。第2支持部95には、ボルト92の軸部が挿通する第2挿通孔95aが形成されている。第2挿通孔95aは、ボルト92の軸部におけるネジが形成されていない先端部分を軸支している。上述したガイド部91、第1支持部94、及び第2支持部95は、一体的に形成され、全体で略C字形状を有している。
【0063】
位置決めピン40は、キャリッジ29の設置面29aに対し垂直に立設している。位置決めピン40は、当接部41と、面取り部42(図7参照)と、ネジ部43(図9参照)と、を備えている。ネジ部43は、位置決めピン40の下端部に設けられ、キャリッジ29の設置面29aに形成された固定孔29cに螺着している。面取り部42は、図7に示すように、位置決めピン40の周面の一部を少なくとも2面平行に面取りしたもので、位置決めピン40をねじ回し可能とするものである。つまり、位置決めピン40は、キャリッジ29に対し着脱可能に取り付けられている。なお、面取り部42は、4面取りや6面取りしたものであっても構わない。
【0064】
図7に示すように、位置決めピン40は、当接部材80に当接する曲面状の当接部41を有している。また、当接部材80は、位置決めピン40に当接する曲面状の当接部81を有している。以下、図10を参照して、位置決めピン40及び当接部材80の互いの当接部41,81の曲面形状の関係ついて説明する。
【0065】
図10は、一実施形態に係る当接部41,81の曲面形状を説明する概念図である。
図10に示すように、位置決めピン40の当接部41は、設置面29aと交差した第1交差軸O1を中心軸とする曲面状に形成されている。本実施形態の第1交差軸O1は、設置面29aに対して垂直(直角)に交差しているが、設置面29aに対して斜めに交差していても構わない。
【0066】
本実施形態の当接部41は、第1交差軸O1を中心軸とする第1円筒面を含んでいる。なお、「第1円筒面」とは、第1交差軸O1に対して一定の半径で形成された面を言う。また、「第1円筒面を含む」とは、少なくとも当接部材80に当接する部分が第1円筒面であればよく、当該当接する部分以外には、平面(例えば図7に示す面取り部42)等があってもよい。
【0067】
対して、当接部材80の当接部81は、第1交差軸O1に対して平行でない第2交差軸O3を中心軸とする曲面状に形成されている。第2交差軸O3は、設置面29aの垂直方向に延びる垂直軸O4(本実施形態では第1交差軸O1であってもよい)及び当接部材80の変位軸O2を含む仮想平面110に対して交差している。本実施形態の第2交差軸O3は、設置面29aに平行に延び、仮想平面110に垂直(直角)に交差しているが、仮想平面110に対して斜めに交差していても構わない。
【0068】
本実施形態の当接部81は、第2交差軸O3を中心軸とする第2円筒面を含んでいる。なお、「第2円筒面」とは、第2交差軸O3に対して一定の半径で形成された面を言う。また、「第2円筒面を含む」とは、少なくとも位置決めピン40に当接する部分が第2円筒面であればよく、当該当接する部分以外には、平面(例えば図7に示す当接部81の上下の平行面及び左右の傾斜面)等があってもよい。
【0069】
ところで、仮に位置決めピン40をブロック状の凸部とし、当接部材80の当接部81を傾斜面として、凸部の角部に傾斜面を当接させる場合、角部と傾斜面は線接触する。しかしながら、角部と傾斜面には加工精度等に起因する微小な凹凸が存在するため、角部と傾斜面は厳密には多点で当接している。この多点当接の状態は、個々の当接点における誤差が累積し易いため、キャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を精度よく位置決めすることが困難になる虞がある。
対して、上記構成によれば、当接部41,81の互いの曲面形状の中心軸(第1交差軸O1及び第2交差軸O3)がねじれの位置関係となるため、位置決めピン40及び当接部材80が1点で当接する。位置決めピン40及び当接部材80が1点で当接することにより、位置決めピン40と当接部材80との多点当接による誤差を回避することができ、キャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を精度よく位置決めすることができる。また、変位軸O2が、設置面29aに対して交差した斜め方向に延びていることで、ボルト92の一回転当たりの当接部材80の設置面29aに沿う方向の変位量が少なくなり、当接部材80を高精度で微小変位させることができる。
【0070】
以上が位置調整機構60の基本構造である。
図8に示す第2位置調整ユニット50Bにも、第1位置調整ユニット50AのY方向の位置調整機構60(第2位置調整機構60B)と同じ構成が設けられている。なお、X方向の位置調整機構(第1位置調整機構60A)は、第1位置調整ユニット50Aと第2位置調整ユニット50Bに構成が分かれて設けられている。詳しくは後述するが、図7に示す第1位置調整ユニット50Aには、第1位置調整機構60Aの当接部材80及び変位機構90が設けられ、図8に示す第2位置調整ユニット50Bには、第1位置調整機構60Aの予圧機構70が設けられている。第1位置調整機構60Aの予圧機構70は、一枚の板バネ70Aから構成され、フレーム部材51の-X側に立設する側壁部56に、ネジ部材105を介して固定されている。
【0071】
<位置決め構造100の配置>
図6に示すように、位置決め構造100は、ベース部材30の設置面29aに沿うX方向(第1方向)の位置を調整する第1位置調整機構60Aと、ベース部材30に対し、X方向に間隔をあけて配置され、ベース部材30の設置面29aに沿うX方向と直交するY方向(第2方向)の位置をそれぞれ調整する一対の第2位置調整機構60Bと、を備えている。
【0072】
また、位置決め構造100は、X方向において、ヘッド本体5Aを挟んで配置された第1位置決めピン40A(第1凸部)及び第2位置決めピン40B(第2凸部)を備えている。一対の第2位置調整機構60Bの一方(第1位置調整ユニット50A側の第2位置調整機構60B)は、第1位置決めピン40Aに対して、ベース部材30のY方向の位置を調整する。また、一対の第2位置調整機構60Bの他方(第2位置調整ユニット50B側の第2位置調整機構60B)は、第2位置決めピン40Bに対して、ベース部材30のY方向の位置を調整する。
【0073】
第1位置調整機構60Aの予圧機構70(板バネ70A)は、第2位置調整ユニット50B側に設けられ、第2位置決めピン40Bに対してX方向に予圧をかける。また、第1位置調整機構60Aの当接部材80及び変位機構90は、第1位置調整ユニット50A側に設けられ、当接部材80は、X方向において、予圧機構70(板バネ70A)が配置される側(-X側)と逆側(+)から第1位置決めピン40Aに当接すると共に、X方向において変位する。
【0074】
各位置調整機構60は、ベース部材30に支持されると共に、位置調整機構60の少なくとも一部が、設置面29aを垂直方向(Z方向)から視た平面視で、ベース部材30の外形の内側に配置されている。なお、「ベース部材30の外形の内側」とは、設置面29aを垂直方向(Z方向)から視た平面視で、ベース部材30の最外形を形成するプレート部31の外形輪郭の内側を言う。
【0075】
また、各位置決めピン40も、ベース部材30の外形の内側に配置されている。すなわち、図5に示すように、ベース部材30のプレート部31には、ベース部材30の外形の内側に、位置決めピン40を配置する第1貫通部33が形成されている。つまり、位置決めピン40は、ベース部材30を貫通して配置され、また、ベース部材30は位置調整機構60を支持しているため、位置決め構造100の大部分がインクジェットヘッド5のフットプリント内に重ねて配置されている。
【0076】
ベース部材30のプレート部31には、予圧機構70が予圧をかける方向において、予圧機構70が位置決めピン40から反力を受ける側に突出した押付部36,37(ダボ)が設けられている。押付部36は、第2位置調整機構60Bの予圧機構70が予圧をかけるY方向において、予圧機構70が位置決めピン40から反力を受ける側(-Y側)に突設されている。また、押付部37は、第1位置調整機構60Aの予圧機構70が予圧をかけるX方向において、予圧機構70が位置決めピン40から反力を受ける側(-X側)に突設されている。
【0077】
一方、キャリッジ29には、押付部36,37が押し付けられる受け部36A,37Aが設けられている。受け部36A,37Aは、押付部36,37が押し付けられた状態で、キャリッジ29に対してインクジェットヘッド5をおおよそ位置決めするものである。なお、押付部36,37が受け部36A,37Aに押し付けられた状態でインクジェットヘッド5の位置決めが完了できればよいが、押付部36,37や受け部36A,37Aを高精度で加工しなければならずコストがかかるため、殆どの場合、インクジェットヘッド5の微調整が必要となる。このため、上述した位置決め構造100を用いてインクジェットヘッド5の設置面29aに沿う方向の位置を調整する必要がある。
【0078】
<インクジェットヘッド5の位置決め方法>
例えば、図6に示すインクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し+X側に平行移動させる場合、第1位置調整機構60Aの変位機構90のボルト92を回し、変位機構90に対して当接部材80を-X側に変位させる。そうすると、変位機構90が固定されたベース部材30が、第1位置決めピン40Aから反力を受け、予圧機構70の付勢に抗してキャリッジ29の設置面29aに沿って+X側に平行移動する。以上により、インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し+X側に平行移動させることができる。
【0079】
インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し-X側に平行移動させる場合、第1位置調整機構60Aの変位機構90のボルト92を回し、変位機構90に対して当接部材80を+X側に変位させる。そうすると、変位機構90が固定されたベース部材30が、第2位置決めピン40Bから予圧機構70の付勢力による反力を受け、キャリッジ29の設置面29aに沿って-X側に平行移動する。以上により、インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し-X側に平行移動させることができる。
【0080】
インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し+Y側に平行移動させる場合、一対の第2位置調整機構60Bのそれぞれの変位機構90のボルト92を回し、変位機構90に対して当接部材80を-Y側に変位させる。そうすると、変位機構90が固定されたベース部材30が、位置決めピン40のそれぞれから反力を受け、予圧機構70の付勢に抗してキャリッジ29の設置面29aに沿って+Y側に平行移動する。以上により、インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し+Y側に平行移動させることができる。
【0081】
インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し-Y側に平行移動させる場合、一対の第2位置調整機構60Bのそれぞれの変位機構90のボルト92を回し、変位機構90に対して当接部材80を+Y側に変位させる。そうすると、変位機構90が固定されたベース部材30が、それぞれの位置決めピン40から予圧機構70の付勢による反力を受け、キャリッジ29の設置面29aに沿って-Y側に平行移動する。以上により、インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対し-Y側に平行移動させることができる。
【0082】
インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対しX-Y平面上で回転させる場合、一対の第2位置調整機構60Bのそれぞれの変位機構90のボルト92を回し、それぞれの当接部材80のY方向における変位量(調整量)を異ならせる。そうすると、変位機構90が固定されたベース部材30が、位置決めピン40のそれぞれから異なる反力を受け、キャリッジ29の設置面29aに沿って回転する。以上により、インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対しX-Y平面上で回転させることができる。
【0083】
インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対して位置決めする手順としては、先ず、ネジ部材101とベース部材30との間に介在するばね座金101aを、ネジ部材101によってある程度締め付け、ばね座金101aの付勢力によってインクジェットヘッド5をキャリッジ29に対して仮止めした状態とする(仮止め工程)。次に、一対の第2位置調整機構60Bを用いてインクジェットヘッド5の回転角度を調整し、次に、第1位置調整機構60A及び一対の第2位置調整機構60Bを用いてインクジェットヘッド5をX方向及びY方向に平行移動させる。インクジェットヘッド5をキャリッジ29に対して位置決めが完了したら、ネジ部材101を締め付け、ベース部材30をキャリッジ29に固定する。以上により、インクジェットヘッド5のキャリッジ29に対する設置が完了する。
なお、インクジェットヘッド5のY方向の位置決めについては、インクの吐出タイミングで調整できる。したがって、インクジェットヘッド5のY方向の位置決めが必要なければ、インクジェットヘッド5の回転と、インクジェットヘッド5のX方向の平行移動の2ステップで位置決めが完了する。インクジェットヘッド5のY方向の位置決めが必要であれば、インクジェットヘッド5の回転と、インクジェットヘッド5のY方向の平行移動と、インクジェットヘッド5のX方向の平行移動の3ステップで位置決めが完了する。
【0084】
図11は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5の位置決め後の工程を示す説明図である。
インクジェットヘッド5のキャリッジ29に対する位置決めが完了したら、図11に示すように、位置決め構造100を取り外してもよい。具体的には、図9に示すネジ部材102を取り外し、ベース部材30から位置調整ユニット50を取り外す。次に、面取り部42が設けられた位置決めピン40をドライバービット等の工具でねじ回しし、キャリッジ29から位置決めピン40を取り外す。最後に、位置決めピン40が固定されていた固定孔29cにもう1本のネジ部材101を螺着させ、ベース部材30をキャリッジ29に固定する。ここで取り外した位置決め構造100は、他のインクジェットヘッド5の位置決めに流用することができる。
【0085】
上述した位置決め構造100は、以下に示す変形例も採用できる。なお、以下の説明において、上述した構成と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0086】
図12は、一実施形態に係る位置決め構造100の変形例を示す断面図である。
図12に示す位置決め構造100は、インクジェットヘッド5のベース部材30側に位置決めピン40が設けられ、キャリッジ29側に位置調整機構60(位置調整ユニット50)が設けられている点で、上述した位置決め構造100と異なる。
【0087】
図12に示すベース部材30は、キャリッジ29の下方を向く設置面29eに対してばね座金101aを介して取り付けられたネジ部材101によって固定されている。キャリッジ29には、ベース部材30に設けられた位置決めピン40がZ方向に貫通して配置される第4貫通部29gと、第4貫通部29gの-Z側に連通し、位置決めピン40のフランジ部44及びネジ部材106との干渉を避ける溝部29hが設けられている。
【0088】
位置決めピン40は、下端部にフランジ部44を有し、このフランジ部44がネジ部材106を介してベース部材30の上面に固定されている。ベース部材30には、ネジ部材106が螺着する固定孔38が形成されている。キャリッジ29の設置面29a(上面)には、位置調整ユニット50を固定する固定孔29fが形成されている。位置調整ユニット50は、固定孔29fに螺着するネジ部材102によって、キャリッジ29の設置面29aに着脱可能に取り付けられている。
上記構成においても当接部材80を変位軸O2に沿って変位させることで、ベース部材30の設置面29aに沿う方向の位置を調整することができる。
【0089】
上述した本実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0090】
本実施形態のインクジェットヘッド5は、図6に示すように、インクを噴射するヘッド本体5Aと、ヘッド本体5Aを支持し、キャリッジ29の設置面29aに設置されるベース部材30と、設置面29aに設けられた位置決めピン40に対し、ベース部材30の設置面29aに沿う方向の位置を調整する位置調整機構60と、を備え、位置調整機構60は、ベース部材30に支持されると共に、位置調整機構60の少なくとも一部が、設置面29aを垂直方向から視た平面視で、ベース部材30の外形の内側に配置されている。
【0091】
この構成によれば、キャリッジ29の設置面29aに設けられた位置決めピン40に対し、インクジェットヘッド5を位置決めする位置調整機構60が、ヘッド本体5Aと共にベース部材30に支持されると共に、その少なくとも一部が、設置面29aを垂直方向から視た平面視で、ベース部材30の外形の内側に配置されているため、インクジェットヘッド5のフットプリント内にかかるように位置調整機構60を配置でき、インクジェットヘッド5の設置に必要な面積を小さくすることができる。これにより、インクジェットヘッド5の印字幅方向(X方向)の長さを抑え、複数のインクジェットヘッド5を設置するときに必要なキャリッジ29の印字幅方向(X方向)の長さを短くできる。
【0092】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、ベース部材30は、図5に示すように、ベース部材30の外形の内側に、位置決めピン40が配置される第1貫通部33を有する。この構成によれば、ベース部材30に第1貫通部33を設けることで、位置決めピン40をインクジェットヘッド5のフットプリント内に配置でき、インクジェットヘッド5の設置に必要な面積をより小さくすることができる。
【0093】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、位置調整機構60は、図9に示すように、位置決めピン40に対して設置面29aに沿う方向に予圧をかける予圧機構70と、予圧機構70が予圧をかける方向において、予圧機構70が配置される側と逆側から位置決めピン40に当接する当接部材80と、予圧機構70が予圧をかける方向において、当接部材80を変位させる変位機構90と、を備える。この構成によれば、予圧機構70によって位置決めピン40に対して予圧をかけ、位置決めピン40に当接する当接部材80を予圧かける方向に変位させることで、ベース部材30を当接部材80の変位に追従して移動させることができる。予圧機構70によって、位置決めピン40を挟んだ両側に当接部材80及び変位機構90を設ける必要がなくなるため、位置調整機構60の構造の簡単化、軽量化、省スペース化をすることができる。
【0094】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、位置調整機構60(位置調整ユニット50)は、ベース部材30に対して着脱可能に取り付けられている。この構成によれば、インクジェットヘッド5の位置決め及び設置が完了したら、ベース部材30から位置調整機構60(位置調整ユニット50)を取り外し、他のインクジェットヘッド5の位置決めに使い回すことができるため、コストダウンに寄与できる。
【0095】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、位置調整機構60は、図6に示すように、ベース部材30の設置面29aに沿うX方向(第1方向)の位置を調整する第1位置調整機構60Aと、ベース部材30に対し、X方向に間隔をあけて配置され、ベース部材30の設置面29aに沿うX方向と直交するY方向(第2方向)の位置をそれぞれ調整する一対の第2位置調整機構60Bと、を含んでいる。この構成によれば、第1位置調整機構60A及び第2位置調整機構60Bによって、ベース部材30の設置面29aに沿うX方向及びY方向の位置を調整できる。また、一対の第2位置調整機構60BのY方向の位置の調整量を異ならせることによって、ベース部材30の回転角度を調整できる。
【0096】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、位置決めピン40は、X方向において、ヘッド本体5Aを挟んで配置された第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bを含み、一対の第2位置調整機構60Bの一方(第1位置調整ユニット50A側の第2位置調整機構60B)は、第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bの一方(第1位置決めピン40A)に対して、ベース部材30のY方向の位置を調整し、一対の第2位置調整機構60Bの他方(第2位置調整ユニット50B側の第2位置調整機構60B)は、第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bの他方(第2位置決めピン40B)に対して、ベース部材30のY方向の位置を調整する。この構成によれば、第1位置調整機構60A、一対の第2位置調整機構60Bの3つの位置調整機構60のそれぞれに対応するように3つの位置決めピン40を設けずに、2つの位置決めピン40によってインクジェットヘッド5を位置決めすることができるため、インクジェットヘッド5のフットプリント内に配置される位置決めピン40の数を少なくし、インクジェットヘッド5の設置に必要な面積をより小さくすることができる。
【0097】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、第1位置調整機構60Aは、第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bの一方(第2位置決めピン40B)に対してX方向に予圧をかける予圧機構70と、X方向において、予圧機構70が配置される側と逆側から第1位置決めピン40A及び第2位置決めピン40Bの他方(第1位置決めピン40A)に当接する当接部材80と、X方向において、当接部材80を変位させる変位機構90と、を備える。この構成によれば、当接部材80及び変位機構90に対して、予圧機構70を、ヘッド本体5Aを挟んだ逆側に配置することで、ヘッド本体5Aの片側に、予圧機構70、当接部材80及び変位機構90の全てを配置する場合よりも、ベース部材30の印字幅方向(X方向)の長さを抑えることができる。これによりインクジェットヘッド5の設置スペースの自由度を確保することができる。
【0098】
また、本実施形態のインクジェットヘッド5において、ベース部材30の外形には、予圧機構70が予圧をかける方向において、予圧機構70が位置決めピン40から反力を受ける側に突出した押付部36,37が設けられている。この構成によれば、押付部36,37の精度が高ければ、予圧機構70が位置決めピン40から受ける反力により押付部36,37をキャリッジ29に押し付けてインクジェットヘッド5を簡単に位置決めできる。また、押付部36,37の精度に不足があった場合は、押付部36,37の押し付け方向と反対側に当接部材80を変位させてインクジェットヘッド5の位置を調整することで、インクジェットヘッド5を位置決めできる。
【0099】
本実施形態に係るプリンタ1は、上述したインクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド5の設置対象物としてキャリッジ29と、を備える。このプリンタ1によれば、インクジェットヘッド5の設置に必要な面積を小さくし、コンパクトで高精度な印字ができるプリンタ1が得られる。
【0100】
また、本実施形態のプリンタ1において、位置決めピン40は、キャリッジ29に対し着脱可能に取り付けられている。この構成によれば、インクジェットヘッド5の位置決め及び設置が完了したら、キャリッジ29から位置決めピン40を取り外し、他のインクジェットヘッド5の位置決めに使用できるため、位置決めピン40の使い回しが可能になり、コストダウンに寄与できる。また、位置決めピン40を取り外した箇所を利用して、ベース部材30をキャリッジ29に固定することができる。
【0101】
本実施形態の変形例に係るプリンタ1は、図12に示すように、インクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド5が設置されるキャリッジ29と、を備え、インクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体5Aと、ヘッド本体5Aを支持し、キャリッジ29の設置面29eに設置されるベース部材30と、ベース部材30からキャリッジ29に向かって突出する位置決めピン40と、を備え、キャリッジ29は、位置決めピン40に対し、ベース部材30の設置面29eに沿う方向の位置を調整する位置調整機構60を備え、位置調整機構60の少なくとも一部は、設置面29aを垂直方向から視た平面視で、ベース部材30の外形の内側に配置されている。
【0102】
このプリンタ1によれば、インクジェットヘッド5に位置決めピン40が設けられ、キャリッジ29に位置調整機構60が設けられ、位置調整機構60の少なくとも一部が、設置面29eを垂直方向から視た平面視で、インクジェットヘッド5のベース部材30の外形の内側に配置されているため、インクジェットヘッド5のフットプリント内にかかるように位置調整機構60を配置でき、インクジェットヘッド5の設置に必要な面積を小さくすることができる。これにより、インクジェットヘッド5の印字幅方向の長さを抑え、複数のインクジェットヘッド5を設置するときに必要なキャリッジ29の印字幅方向の長さを短くできる。
【0103】
また、上述した本実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0104】
本実施形態の位置決め構造100は、プリンタ1のキャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を位置決めする位置決め構造100であって、キャリッジ29及びインクジェットヘッド5の一方に設けられた位置決めピン40と、キャリッジ29及びインクジェットヘッド5の他方に設けられ、位置決めピン40に対し、キャリッジ29の設置面29aに沿う方向の位置を調整する位置調整機構60と、を備え、位置調整機構60は、位置決めピン40に当接する当接部材80と、当接部材80を設置面29aの垂直方向と交差した斜め方向に延びる変位軸O2に沿って変位させる変位機構90と、を備え、位置決めピン40及び当接部材80の互いの当接部41,81の一方が、設置面29aと交差した第1交差軸O1を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当該当接部41,81の他方が、設置面29aの垂直方向に延びる垂直軸O4(第1交差軸O1)及び変位軸O2を含む仮想平面110(図10参照)に対して交差し、且つ、第1交差軸O1に対して平行でない第2交差軸O3を中心軸とする曲面状に形成されている。
【0105】
この構成によれば、当接部材80が変位機構90によって設置面29aの垂直方向と交差した斜め方向に変位すると、当接部材80に当接する位置決めピン40が設置面29aに沿う方向に押し込まれ、インクジェットヘッド5がキャリッジ29に対して変位する。ここで、当接部41,81の一方が、設置面29aと交差した第1交差軸O1を中心軸とする曲面状に形成されると共に、当該当接部41,81の他方が、設置面29aの垂直方向に延びる垂直軸及び変位軸O2を含む仮想平面110に対して交差し、且つ、第1交差軸O1に対して平行でない第2交差軸O3を中心軸とする曲面状に形成され、当接部41,81の互いの曲面形状の中心軸がねじれの位置関係となるため、位置決めピン40及び当接部材80が1点で当接する。位置決めピン40及び当接部材80が1点で当接することにより、位置決めピン40と当接部材80との多点当接による誤差を回避することができ、キャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を精度よく位置決めするこができる。
【0106】
また、本実施形態の位置決め構造100において、当接部41,81の一方(当接部41)は、第1交差軸O1を中心軸とする第1円筒面を含み、当接部41,81の他方(当接部81)は、第2交差軸O3を中心軸とする第2円筒面を含む。この構成によれば、位置決めピン40の当接部41の一方が、第1交差軸O1を中心軸とする第1円筒面を有し、当接部材80の当接部81が、第2交差軸O3を中心軸とする第2円筒面を有し、両者の中心軸(第1交差軸O1及び第2交差軸O3)が互いに交差しているため、位置決めピン40と当接部材80とを常に安定して1点で当接させることができる。
【0107】
また、本実施形態の位置決め構造100において、位置決めピン40の当接部41は、設置面29aの垂直方向に延びる第1円筒面を含み、当接部材80の当接部81は、設置面29aに平行に延びる第2円筒面を含む。この構成によれば、位置決めピン40の当接部41が、設置面29aの垂直方向に延びる第1円筒面を含み、当接部材80の当接部81が設置面29aに平行に延びる第2円筒面を含むため、位置決めピン40と当接部材80とが常に安定して1点で当接すると共に、位置決めピン40に対して1点で当接する当接部材80が、位置決めピン40に対し設置面29aに沿う方向(X-Y平面方向)にズレることを防止できる。
【0108】
また、本実施形態の位置決め構造100において、変位機構90は、変位軸O2に沿って斜め方向に延びて当接部材80をガイドするガイド部91を有する。この構成によれば、当接部材80をガイド部91に沿って斜め方向に精度よく変位させることができる。
【0109】
また、本実施形態の位置決め構造100において、当接部材80は、変位軸O2と直交する方向でガイド部91を挟み込む挟持部82を有する。この構成によれば、当接部材80に設けられた挟持部82でガイド部91を挟み込むことで、当接部材80が変位軸O2を中心に回動してしまうことを防止できる。
【0110】
また、本実施形態の位置決め構造100において、変位機構90は、変位軸O2に沿って延びていると共に、当接部材80をねじ送りするボルト92と、ガイド部91の一端部に設けられ、ボルト92の頭部を支持すると共に、ボルト92の軸部が挿通する第1挿通孔94aが形成された第1支持部94と、第1支持部94と当接部材80との間に配置された圧縮バネ93と、を有する。この構成によれば、変位軸O2となるボルト92を回転させると、挟持部82を有し、ガイド部91に対する回動が規制された当接部材80がねじ送りされる。このとき、第1支持部94と当接部材80との隙間が広がるが、この隙間を埋めるように圧縮バネ93が伸長するため、ボルト92の頭部が第1支持部94から浮くことを防止することができる。
【0111】
また、本実施形態の位置決め構造100において、変位機構90は、ガイド部91の他端部に設けられ、ボルト92の軸部が挿通する第2挿通孔95aが形成された第2支持部95を有する。この構成によれば、第2支持部95の第2挿通孔95aにボルト92の軸部を挿通することで、ボルト92の両端を第1支持部及び第2支持部95で軸支できるため、ボルト92の軸ブレを抑制し、当接部材80を高精度で変位させることができる。
【0112】
また、本実施形態の位置決め構造100において、位置調整機構60は、当接部材80が配置される側と逆側から位置決めピン40に対して設置面29aに沿う方向に予圧をかける予圧機構70を備える。この構成によれば、予圧機構70によって位置決めピン40に対して予圧をかけ、位置決めピン40に当接する当接部材80を予圧かける方向に変位させることで、ベース部材30を当接部材80の変位に追従して移動させることができる。この予圧機構70によって、位置決めピン40を挟んだ両側に当接部材80及び変位機構90を設ける必要がなくなるため、位置調整機構60の構造の簡単化、軽量化、省スペース化をすることができる。
【0113】
本実施形態に係るインクジェットヘッド5は、上述した位置決め構造100の位置調整機構60及び位置決めピン40のいずれか一方を備える。このインクジェットヘッド5によれば、高精度な印字ができるインクジェットヘッド5が得られる。
【0114】
本実施形態に係るプリンタ1は、上述した位置決め構造100を備える。このプリンタ1によれば、高精度な印字ができる。
【0115】
本実施形態に係るプリンタ1は、インクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド5が設置されるキャリッジ29と、キャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を位置決めする、上述した位置決め構造100を備える。このプリンタ1によれば、プリンタ1のキャリッジ29に対してインクジェットヘッド5を精度よく位置決めし、高精度な印字ができる。
【0116】
以上、本開示の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本開示の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本開示は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0117】
例えば、上述した実施形態では、位置決め構造100の凸部として、着脱可能な位置決めピン40を例示したが、この構成に限定されない。位置決め構造100の凸部は、インクジェットヘッド5またはキャリッジ29に一体的に設けられていて着脱不能であってもよい。
【0118】
また、例えば、上述した実施形態では、第1位置調整機構60Aの一部及び第2位置調整機構60Bをユニット化した位置調整ユニット50を例示したが、この構成に限定されない。第1位置調整機構60A及び第2位置調整機構60Bは、個別にインクジェットヘッド5またはキャリッジ29に対して取り付けられていてもよい。
【0119】
また、例えば、上述した実施形態では、位置決めピン40の当接部41及び当接部材80の当接部81が互いに円筒面を含む形態について例示したが、この構成に限定されない。当接部41,81は、互いに一点で接触であれば、どのような曲面状であってもよい。つまり、「曲面状」とは、中心軸から一定の半径で形成された断面が真円の曲面のみならず、例えば、断面が楕円の曲面や、二次関数等で規定できる曲面等であってもよい。
【0120】
また、例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、第1方向がX方向に一致し、第2方向がY方向に一致する構成について説明したが、この構成に限られない。第1方向及び第2方向は、X方向及びY方向とは別に定めてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 … プリンタ(液体噴射記録装置)
5 … インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
5A … ヘッド本体(噴射部)
29 … キャリッジ(ヘッド設置部)
29a … 設置面
29e … 設置面
30 … ベース部材
33 … 第1貫通部(貫通部)
36 … 押付部
37 … 押付部
40 … 位置決めピン(凸部)
40A … 第1位置決めピン(第1凸部)
40B … 第2位置決めピン(第2凸部)
41 … 当接部
60 … 位置調整機構
60A … 第1位置調整機構
60B … 第2位置調整機構
70 … 予圧機構
80 … 当接部材
81 … 当接部
82 … 挟持部
90 … 変位機構
91 … ガイド部
92 … ボルト
93 … 圧縮バネ
94 … 第1支持部
94a … 第1挿通孔
95 … 第2支持部
95a … 第2挿通孔
100 … 位置決め構造
110 … 仮想平面
O1 … 第1交差軸
O2 … 変位軸
O3 … 第2交差軸
O4 … 垂直軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12