(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063884
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】連続焼鈍炉
(51)【国際特許分類】
C21D 9/56 20060101AFI20230428BHJP
C21D 1/74 20060101ALI20230428BHJP
F27B 9/28 20060101ALI20230428BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20230428BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20230428BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20230428BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20230428BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C21D9/56 101B
C21D1/74 R
F27B9/28
F27B9/40
F27B9/04
F27D19/00 Z
F27D21/00 Z
F27D7/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173943
(22)【出願日】2021-10-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】中川 博夫
(72)【発明者】
【氏名】肥田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 素史
【テーマコード(参考)】
4K043
4K050
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043BB05
4K043DA05
4K043EA05
4K043FA08
4K043GA02
4K043GA03
4K050AA02
4K050BA02
4K050CC07
4K050CC10
4K050DA07
4K050EA08
4K056AA09
4K056BA01
4K056CA02
4K056FA10
4K056FA27
4K063AA05
4K063BA02
4K063CA02
4K063DA07
4K063DA33
(57)【要約】
【課題】 連続焼鈍炉の炉内において、水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力が高くなった場合に、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内から排気管を通して安全に排気できるようにする。
【解決手段】 長尺状の処理材1を、水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉内10に導入し、炉内における加熱帯12において加熱させた後、冷却帯13において冷却させて焼鈍させる連続焼鈍炉において、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを液体wが収容された液槽30に導く雰囲気ガス案内管31を設けると共に、液槽内の上部における気体を排気させる排気管32を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、不活性ガス供給管33を通して液槽内の上部に不活性ガスを供給し、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の処理材を、入口シール部を通して水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉内に導入し、前記の処理材を炉内における加熱帯において加熱させ、このように加熱された処理材を冷却帯において冷却させて焼鈍させる連続焼鈍炉において、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを液体が収容された液槽に導く雰囲気ガス案内管を設けると共に、前記の液槽内の上部における気体を排気させる排気管を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させることを特徴とする連続焼鈍炉。
【請求項2】
請求項1に記載の連続焼鈍炉において、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管を設け、前記の不活性ガス供給管に、液槽内の上部への不活性ガスの供給・停止を制御する制御弁を設けると共に、前記の炉内の圧力を検知する圧力検知装置を設け、前記の圧力検知装置により検知された圧力に基づいて前記の制御弁を制御する制御装置を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の制御装置により、前記の制御弁を開けて前記の不活性ガス供給管から液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させることを特徴とする連続焼鈍炉。
【請求項3】
請求項2に記載の連続焼鈍炉において、前記の炉内に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管を設けると共に、前記の第2不活性ガス供給管に、炉内への不活性ガスの供給・停止を制御する第2制御弁を設け、前記の圧力検知装置により炉内の圧力が急激に低下したことが検知されると、前記の制御装置によって、炉内に水素ガスを含む雰囲気ガスを供給するのを停止させると共に、前記の第2制御弁を開けて、前記の第2不活性ガス供給管から炉内に不活性ガスを供給することを特徴とする連続焼鈍炉。
【請求項4】
請求項3に記載の連続焼鈍炉において、前記の第2不活性ガス供給管から不活性ガスが供給された炉内の圧力を前記の圧力検知装置により検知し、圧力検知装置により検知された圧力に基づいて、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の制御装置により、前記の制御弁を開けて前記の不活性ガス供給管から液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させることを特徴とする連続焼鈍炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の処理材を、入口シール部を通して水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉内に導入し、前記の処理材を炉内における加熱帯において加熱させ、このように加熱された処理材を冷却帯において冷却させて焼鈍させる連続焼鈍炉に関するものである。特に、炉内において、水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力が高くなった場合に、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内から排気管を通して排気させるにあたり、水素ガスを含む雰囲気ガスを安全に排気できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷間圧延等により得られたステンレス鋼帯等の長尺状の処理材を連続焼鈍炉に導いて連続して焼鈍させることが行われている。
【0003】
ここで、このような連続焼鈍炉としては、特許文献1等に示されるように、長尺状の処理材を、水素ガスを含む雰囲気ガス(通常、水素ガスと窒素ガスとを主成分とする。)が充填された炉内に入口シール部を通して導入し、この処理材を炉内における加熱帯で加熱させ、このように加熱された処理材を冷却帯において冷却させて焼鈍させるようにしたものが知られている。
【0004】
そして、このような連続焼鈍炉においては、前記の入口シール部等から漏れ出した雰囲気ガスを補充すると共に、処理材を雰囲気ガスに含まれる水素ガスと反応させて処理するために、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内に安定して供給することが行われている。
【0005】
ここで、このように水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内に安定して供給した場合に、炉内における雰囲気ガスの圧力が上昇すると、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内から排気させることが必要になるが、水素ガスを含む雰囲気ガスをそのまま排気管を通して外部に排気させると、雰囲気ガスに含まれる水素ガスが空気と接触して爆発するおそれがある。
【0006】
このため、特許文献1に示される連続焼鈍炉においては、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを精製して炉内で循環させて、排気管を通して外部に排出させる雰囲気ガスの量を減少させるようにし、また外部に排出させる雰囲気ガスを冷却させたり、希釈させたりすることが提案されている。
【0007】
また、従来においては、特許文献2、3に示されるように、液体が収容された液槽内に制御圧力側のパイプを挿入して、液圧によりパイプにおけるガスの圧力を制御するようにし、ガスの圧力が高くなった場合には、液槽に収容された液体内を通して液槽の上部に導かれたガスを、液槽の上部に設けた排気管を通して外部に排気させるようにした水封式安全器が知られている。
【0008】
そして、前記の特許文献1に示される連続焼鈍炉において、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを外部に排出させるにあたり、前記のような水封式安全器を設けることが考えられる。
【0009】
ここで、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを外部に排出させる部分に前記のような水封式安全器を設けた場合、前記のように炉内における雰囲気ガスの圧力が所定圧以上に上昇すると、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽に収容された液体内を通して液槽の上部に導かれ、この水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽の上部に設けられた排気管を通して外部に排気されるようになる。
【0010】
しかし、排気管は外気に開放されているため、前記のように水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽の上部に設けられた排気管を通して外部に排気される前は、外部から空気が排気管を通して液槽の上部に貯まった状態になっており、この状態で、水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽に収容された液体内を通して液槽の上部に導かれると、液槽の上部に貯まった空気と混合されて爆発する危険があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4979836号公報
【特許文献2】実開昭58-151795号公報
【特許文献3】実開昭58-151796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長尺状の処理材を、入口シール部を通して水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉内に導入し、前記の処理材を炉内における加熱帯において加熱させ、このように加熱された処理材を冷却帯において冷却させて焼鈍させる連続焼鈍炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0013】
すなわち、本発明の連続焼鈍炉においては、前記のように炉内において、水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力が高くなった場合に、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内から排気管を通して排気させるにあたり、水素ガスを含む雰囲気ガスを安全に排気できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る連続焼鈍炉においては、前記のような課題を解決するため、長尺状の処理材を、入口シール部を通して水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉内に導入し、前記の処理材を炉内における加熱帯において加熱させ、このように加熱された処理材を冷却帯において冷却させて焼鈍させる連続焼鈍炉において、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを液体が収容された液槽に導く雰囲気ガス案内管を設けると共に、前記の液槽内の上部における気体を排気させる排気管を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させるようにした。
【0015】
そして、本発明に係る連続焼鈍炉のように、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを液体が収容された液槽に導く雰囲気ガス案内管を設けると共に、前記の液槽内の上部における気体を排気させる排気管を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させると、炉内における圧力が高くなって水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽内の上部に導かれても、液槽内の上部における空気が不活性ガスにより排気されているため、水素ガスを含む雰囲気ガスが空気と混合されて爆発するということがなくなる。
【0016】
ここで、本発明に係る連続焼鈍炉において、前記のように炉内から水素ガスを含む雰囲気ガスが雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させるにあたっては、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管を設け、前記の不活性ガス供給管に、液槽内の上部への不活性ガスの供給・停止を制御する制御弁を設けると共に、前記の炉内の圧力を検知する圧力検知装置を設け、前記の圧力検知装置により検知された圧力に基づいて前記の制御弁を制御する制御装置を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の制御装置により、前記の制御弁を開けて前記の不活性ガス供給管から液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させることができる。
【0017】
また、本発明に係る連続焼鈍炉においては、前記の炉内に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管を設けると共に、前記の第2不活性ガス供給管に、炉内への不活性ガスの供給・停止を制御する第2制御弁を設け、前記の圧力検知装置により炉内の圧力が急激に低下したことが検知されると、前記の制御装置によって、炉内に水素ガスを含む雰囲気ガスを供給するのを停止させると共に、前記の制御装置により前記の第2制御弁を開けて、前記の第2不活性ガス供給管から炉内に不活性ガスを供給させるようにすることができる。
【0018】
そして、前記の連続焼鈍炉においては、前記のように第2不活性ガス供給管から不活性ガスが供給された炉内の圧力を前記の圧力検知装置により検知し、圧力検知装置により検知された圧力に基づいて、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の制御装置により、前記の制御弁を開けて前記の不活性ガス供給管から液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させることができる。このようにすると、第2不活性ガス供給管から炉内に不活性ガスが供給されて、炉内の圧力が上昇し、炉内から水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽内の上部に導かれるようになった場合においても、前記のように液槽内の上部における空気が不活性ガスにより排気されているため、水素ガスを含む雰囲気ガスが空気と混合されて爆発するということがなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における連続焼鈍炉のように、炉内における水素ガスを含む雰囲気ガスを液体が収容された液槽に導く雰囲気ガス案内管を設けると共に、前記の液槽内の上部における気体を排気させる排気管を設け、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から前記の雰囲気ガス案内管と前記の液体を通して液槽内の上部に導かれる前に、前記の液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を前記の排気管を通して排気させるようにすると、炉内における圧力が高くなって水素ガスを含む雰囲気ガスが液槽内の上部に導かれても、液槽内の上部における空気が不活性ガスにより排気されているため、水素ガスを含む雰囲気ガスが空気と混合されて爆発するということがなくなる。
【0020】
この結果、本発明の連続焼鈍炉においては、前記のように炉内において、水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力が高くなった場合に、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉内から排気管を通して排気させるにあたり、水素ガスを含む雰囲気ガスを安全に排気できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る連続焼鈍炉を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係る連続焼鈍炉において、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から液槽内の上部に導かれる前に、液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を、排気管を通して排気させる状態を示した概略説明図である。
【
図3】前記の実施形態に係る連続焼鈍炉の変更例において、炉内に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管に第2制御弁を設け、炉内に対する不活性ガスの供給・停止を制御する構成を示した概略説明図である。
【
図4】前記の変更例に係る連続焼鈍炉において、炉内に水素ガスを含む雰囲気ガスを供給するのを停止させて、第2不活性ガス供給管から炉内に不活性ガスを供給すると共に、水素ガスを含む雰囲気ガスが炉内から液槽内の上部に導かれる前に、液槽内の上部に不活性ガスを供給して、液槽内の上部における空気を、排気管を通して排気させる状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る連続焼鈍炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る連続焼鈍炉は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態における連続焼鈍炉においては、
図1及び
図2に示すように、冷間圧延により得られたステンレス鋼帯等の長尺状の処理材1を、入口シール部11を通して水素ガスを含む雰囲気ガス(通常、水素ガスと窒素ガスとを主成分とする。)が充填された炉10内に導くようにしている。
【0024】
ここで、前記の入口シール部11においては、炉10内に充填された前記の雰囲気ガスが外部に流出するのを抑制するために、ロールシール11aを用いている。
【0025】
そして、この炉10においては、前記のように入口シール部11を通して導かれた処理材1を、炉10内における加熱帯12において加熱させるようにしている。
【0026】
次いで、このように加熱帯12において加熱された処理材1を冷却帯13に導いて冷却させ、このように冷却された処理材1をローラ14aが設けられたトップロール室14に導き、この処理材1をトップロール室14からシュート15を通して出口シール部16に導き、この出口シール部16を通して前記の処理材1を炉10内から導出させるようにしている。
【0027】
ここで、前記の出口シール部16においても、炉10内に充填された前記の雰囲気ガスが外部に流出するのを抑制するために、ロールシール16aを用いている。
【0028】
そして、この実施形態の連続焼鈍炉においては、前記の入口シール部11や出口シール部16から漏れ出した雰囲気ガスを補充すると共に、炉10内に導かれた前記の処理材1を、水素ガスを含む雰囲気ガスと反応させて十分に処理するために、炉10内における雰囲気ガスの圧力を検知する圧力検知装置21を設け、この圧力検知装置21によって検知された炉10内における雰囲気ガスの圧力を制御装置22に出力し、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉10内に供給する雰囲気ガス供給管23に設けた雰囲気ガス制御弁23aを、前記の制御装置22によって制御して、炉10内に水素ガスを含む雰囲気ガスを安定して供給するようにしている。
【0029】
ここで、この実施形態の連続焼鈍炉においては、水素ガスを含む雰囲気ガスを前記の雰囲気ガス供給管23を通して前記の加熱帯12に供給させるようにしたが、前記の雰囲気ガスを供給する位置は特に限定されず、前記の冷却帯13に供給させるようにしてもよい。
【0030】
また、この実施形態の連続焼鈍炉においては、炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスを前記の冷却帯13と加熱帯12との間で循環させる雰囲気ガス循環管24の途中に雰囲気ガス精製装置25を設け、この雰囲気ガス精製装置25により炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスを精製するようにしている。
【0031】
そして、この実施形態の連続焼鈍炉においては、炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスを、液体wが収容された密閉式の液槽30(バブラー)に導く雰囲気ガス案内管31を設けると共に、前記の液槽30内の上部における気体を排気させる排気管32を設け、さらに前記の液槽30内の上部(空間)に窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給管33を設けると共に、この不活性ガス供給管33に、不活性ガスを液槽30内の上部に供給するのを制御する制御弁33aを設けている。なお、液体wとしては、水や油などどのようなものであってもよい。
【0032】
ここで、この実施形態の連続焼鈍炉においては、
図1に示すように、長尺状の処理材1を、入口シール部11を通して水素ガスを含む雰囲気ガスが充填された炉10内に導き、前記の処理材1を加熱帯12において加熱させた後、加熱された処理材1を冷却帯13に導いて冷却させ、このように冷却された処理材1を、トップロール室14からシュート15を通して出口シール部16に導き、この出口シール部16を通して炉10内から導出させて処理するようにしている。
【0033】
そして、この実施形態の連続焼鈍炉においては、前記の圧力検知装置21によって検知された炉10内における雰囲気ガスの圧力を前記の制御装置22に出力し、制御装置22によって前記の雰囲気ガス供給管23に設けた雰囲気ガス制御弁23aを開けて、炉10内に水素ガスを含む雰囲気ガスを安定して供給させるようにすると共に、炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスを前記の雰囲気ガス精製装置25により精製して、前記の冷却帯13と加熱帯12との間で循環させるようにしている。なお、図においては、前記の雰囲気ガス制御弁23a及び制御弁33aを開けた場合は白抜きで、閉じた場合は黒塗りで示した。
【0034】
また、この実施形態の連続焼鈍炉においては、前記のように炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力を前記の圧力検知装置21によって検知し、検知された圧力を前記の制御装置22に出力して、この制御装置22によって前記の不活性ガス供給管33に設けられた制御弁33aを制御するようにしている。
【0035】
そして、この実施形態の連続焼鈍炉においては、例えば、長尺状の処理材1を熱容量が少ないもの(厚さを薄くする、材質を変更するなど)に変更した場合、炉10内の温度が安定するまでのしばらくの間などは、炉10内における雰囲気ガスの圧力が高くなり、前記の雰囲気ガス案内管31を通して前記の液槽30に導かれる雰囲気ガスの圧力が高くなると、
図2に示すように、炉10内における雰囲気ガスの圧力上昇を前記の圧力検知装置21により検知して前記の制御装置22に出力し、液槽30に導かれる雰囲気ガスの圧力が、液体wに漬かった雰囲気ガス案内管31の先端部31aにかかっている液圧よりも大きくなり、雰囲気ガスが水泡となって通って液槽30における液体wを通して液槽30内の上部に導かれる前に(圧力上昇が検知されるとただちに)、前記の制御装置22により、不活性ガス供給管33に設けた制御弁33aを開けて、不活性ガス供給管33を通して不活性ガスを液槽30内の上部に供給し、液槽30内の上部に存在する空気を前記の排気管32を通して排気させるようにしている。
【0036】
このとき、圧力検知装置21により検知させる設定値は、雰囲気ガス案内管31の先端部31aにかかっている液圧よりも小さい値に設定される。
【0037】
このようにすると、炉10内から雰囲気ガス案内管31を通して液槽30に導かれた雰囲気ガスが、液槽30における液体wを通して液槽30内の上部に導かれる前に、液槽30内の上部に存在していた空気が、不活性ガス供給管33から液槽30内の上部に供給された不活性ガスにより希釈されながら排気されて、不活性ガスと置換され、液槽30内の上部に導かれた水素ガスを含む雰囲気ガスが、空気と接触して爆発するおそれがなくなり、水素ガスを含む雰囲気ガスを安全に排気できるようになる。
【0038】
次に、前記の実施形態に係る連続焼鈍炉の変更例を
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0039】
この変更例における連続焼鈍炉においては、前記の実施形態に係る連続焼鈍炉に加えて、炉10内に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管41を設けると共に、この第2不活性ガス供給管41に第2制御弁41aを設け、この第2制御弁41aの開閉を、前記の制御装置22によって制御するようにしている。ここで、図においては、前記の雰囲気ガス制御弁23a及び制御弁33aの場合と同様に、前記の第2制御弁41aを開けた場合は白抜きで、閉じた場合は黒塗りで示した。
【0040】
なお、この変更例における連続焼鈍炉においては、前記の第2不活性ガス供給管41から不活性ガスを前記の冷却帯13に供給させるようにしているが、不活性ガスを供給する位置は特に限定されず、不活性ガスを前記の加熱帯12やトップロール室14等に供給させることもできる。
【0041】
ここで、この変更例における連続焼鈍炉において、例えば、前記の炉10に破損等が生じた場合などの異常により、炉10内の圧力が急激に低下したことが前記の圧力検知装置21によって検知されると、
図4に示すように、この圧力検知装置21によって検知された結果を前記の制御装置22に出力し、この制御装置22により、前記の雰囲気ガス供給管23に設けられた雰囲気ガス制御弁23aを閉じて、水素ガスを含む雰囲気ガスを炉10内に供給させないようにすると共に、前記の第2不活性ガス供給管41に設けられた制御弁41aを開け、圧力が低下した炉10内に、前記の第2不活性ガス供給管41を通して不活性ガスを急激に大量に供給(スーパーチャージ)して、炉10内の圧力を補充し、炉10内に外部から空気が入って、炉10内における水素ガスを含む雰囲気ガスと混合して、炉10内で爆発する危険を回避するようにする。
【0042】
そして、このように第2不活性ガス供給管41を通して炉10内に不活性ガスを急激に大量に供給した結果、炉10内における雰囲気ガスの圧力が高くなり、前記の雰囲気ガス案内管31を通して前記の液槽30に導かれる雰囲気ガスの圧力が高くなると、前記の
図2に示す場合と同様に、炉10内における雰囲気ガスの圧力上昇を前記の圧力検知装置21により検知して前記の制御装置22に出力し、液槽30に導かれる雰囲気ガスが液槽30における液体wを通して液槽30内の上部に導かれる前に、前記の制御装置22により、不活性ガス供給管33に設けた制御弁33aを開けて、不活性ガス供給管33を通して不活性ガスを液槽30内の上部に供給し、液槽30内の上部に存在する空気を前記の排気管32を通して排気させるようにする。
【0043】
このようにすると、前記の実施形態の場合と同様に、炉10内から雰囲気ガス案内管31を通して液槽30に導かれた雰囲気ガスが、液槽30における液体wを通して液槽30内の上部に導かれる前に、液槽30内の上部に存在していた空気が、不活性ガス供給管33から液槽30内の上部に供給された不活性ガスにより排気されて、不活性ガスと置換され、液槽30内の上部に導かれた水素ガスを含む雰囲気ガスが、空気と接触して爆発するおそれがなくなり、水素ガスを含む雰囲気ガスを安全に排気できるようになる。
【符号の説明】
【0044】
1 :処理材
10 :炉
11 :入口シール部
11a :ロールシール
12 :加熱帯
13 :冷却帯
14 :トップロール室
14a :ローラ
15 :シュート
16 :出口シール部
16a :ロールシール
21 :圧力検知装置
22 :制御装置
23 :雰囲気ガス供給管
23a :雰囲気ガス制御弁
24 :雰囲気ガス循環管
25 :雰囲気ガス精製装置
30 :液槽
31 :雰囲気ガス案内管
31a :先端部
32 :排気管
33 :不活性ガス供給管
33a :制御弁
41 :第2不活性ガス供給管
41a :第2制御弁
w :液体