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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063885
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】連結状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20230428BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20230428BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20230428BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
B60L15/42
H01F38/14
H01F27/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173944
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】南條 洋一
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC02
5H125EE51
5H161AA01
5H161BB11
5H161BB20
5H161CC20
5H161DD01
5H161DD11
5H161FF07
5H161NN07
(57)【要約】
【課題】無接点式電気連結器の連結状態を高精度で検出する。
【解決手段】連結状態検出装置10は、一方の鉄道車両74Aに設置される送信器12と他方の鉄道車両74Bに設置される受信器48とを含み、送信器12は、交流信号発生部14と、交流信号が印加されて励磁される送信コイル20と、送信コイル20を流れる電流に基づいて無接点式電気連結器の連結状態を検出する送信側検出部36とを含み、受信器48は、無接点式電気連結器の連結時に送信コイル20に近接する位置に設けられ、近接すると送信コイル20と磁気結合して電圧を発生する受信コイル50と、受信コイル50で発生した電圧に基づいて無接点式電気連結器の連結状態を検出する受信側検出部54とを含む。これにより、一方及び他方の鉄道車両74A、74Bの双方において、変圧器方式の磁気回路により無接点式電気連結器の連結状態を高精度で検出することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両間の連結に使用される無接点式電気連結器の連結状態を検出するための連結状態検出装置であって、
連結される鉄道車両のうち、少なくとも一方の鉄道車両に設置される送信器と、少なくとも他方の鉄道車両に設置される受信器と、を含み、
前記送信器は、
交流信号を発生する交流信号発生部と、
前記一方の鉄道車両の、前記無接点式電気連結器の連結時に前記他方の鉄道車両に近接する位置に設けられ、前記交流信号が印加されて励磁される送信コイルと、
該送信コイルを流れる電流に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出する送信側検出部と、を含み、
前記受信器は、
前記他方の鉄道車両の、前記無接点式電気連結器の連結時に前記送信コイルに近接する位置に設けられ、前記送信コイルに近接すると前記送信コイルと磁気結合して電圧を発生する受信コイルと、
該受信コイルにおいて発生した電圧に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出する受信側検出部と、を含むことを特徴とする連結状態検出装置。
【請求項2】
前記交流信号発生部は、少なくとも、商用電源周波数と、鉄道車両に搭載されたインバータ装置で使用されている周波数とを、避けた周波数で前記交流信号を発生し、
前記受信器は、前記交流信号の周波数に対応する信号を抽出するバンドパスフィルタを含むことを特徴とする請求項1記載の連結状態検出装置。
【請求項3】
前記交流信号発生部は、900Hz以上の周波数で前記交流信号を発生することを特徴とする請求項2記載の連結状態検出装置。
【請求項4】
前記交流信号発生部は、前記交流信号として、互いに周波数が異なる複数の交流信号からなる信号を発生し、
前記受信器は、前記複数の交流信号の各々の周波数に対応する信号を抽出する複数のバンドパスフィルタを含み、
前記受信側検出部は、前記複数のバンドパスフィルタにより抽出された複数の信号の各々の電圧に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を、前記複数の信号毎に検出することを特徴とする請求項2又は3記載の連結状態検出装置。
【請求項5】
前記受信側検出部は、前記複数の信号毎の検出結果を利用して、当該連結状態検出装置の故障を監視することを特徴とする請求項4記載の連結状態検出装置。
【請求項6】
前記交流信号発生部は、前記一方の鉄道車両に関する情報に基づいて、前記複数の交流信号の周波数及び信号数が設定され、
前記受信側検出部は、前記複数の信号毎の検出結果を利用して、前記一方の鉄道車両に関する情報を取得することを特徴とする請求項4記載の連結状態検出装置。
【請求項7】
前記送信コイル及び前記受信コイルは、U字型ないしコ字型の磁芯を有し、該磁芯の二股部先端側が連結先の鉄道車両へ向けられて設置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の連結状態検出装置。
【請求項8】
前記送信コイルは、第1送信コイル及び第2送信コイルを含み、前記第1送信コイル及び前記第2送信コイルに対して、位相が互いに反転した前記交流信号が印加され、
前記受信コイルは、第1受信コイル及び第2受信コイルを含み、前記無接点式電気連結器の連結時に、前記第1受信コイルが前記第1送信コイルと磁気結合すると共に、前記第2受信コイルが前記第2送信コイルと磁気結合し、
前記受信側検出部は、前記第1受信コイルで発生した電圧と前記第2受信コイルで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算し、該加算した電圧信号に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の連結状態検出装置。
【請求項9】
前記送信器及び前記受信器の双方が、前記一方の鉄道車両及び前記他方の鉄道車両の各々に並列に設置され、
前記無接点式電気連結器の連結時に、前記一方の鉄道車両の前記送信コイルと前記他方の鉄道車両の前記受信コイルとが磁気結合すると共に、前記他方の鉄道車両の前記送信コイルと前記一方の鉄道車両の前記受信コイルとが磁気結合することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の連結状態検出装置。
【請求項10】
前記送信コイルと前記受信コイルとは、前記一方の鉄道車両及び前記他方の鉄道車両の各々において、鉄道車両の長さ方向の連結される側の端部の、正面視で鉄道車両の幅方向中心よりも右側或いは左側の位置のうち、互いに異なる位置に設置されることを特徴とする請求項9記載の連結状態検出装置。
【請求項11】
前記送信器は、前記送信コイルの磁芯の先端近傍を囲うように配置される、強磁性体製のフレームを含むことを特徴とする請求項9又は10記載の連結状態検出装置。
【請求項12】
前記送信コイル及び前記受信コイルの磁芯が、方向性電磁鋼板で形成され、
前記送信コイルは、前記交流信号により励磁されて発生する磁束の方向に、前記方向性電磁鋼板の磁化容易方向が合わせられ、
前記受信コイルは、前記送信コイルと磁気結合して発生する磁束の方向に、前記方向性電磁鋼板の磁化容易方向が合わせられていることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の連結状態検出装置。
【請求項13】
前記送信コイル及び前記受信コイルは、磁気結合時に対面する磁芯の先端の断面積が、磁芯の他部位の断面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項記載の連結状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両間の連結に使用される無接点式電気連結器の連結状態を検出するための連結状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他の鉄道車両(編成)との連結が行われる鉄道車両(編成)には、物理的な連結を行う連結器と共に、車両間の制御伝送などのための電気連結器が設けられている。このような電気連結器のうち、接点式電気連結器は、連結車両間で端子同士を接続して通信することから、端子への水分やゴミの付着を防止するために、非連結時には端子がカバーで覆われる構造のものがある(例えば特許文献1、2参照)。しかしながら、このような構造であっても、カバーの開放時などに水分やゴミが端子へ付着する場合があり、それによって接触不良が発生する虞がある。これに対し、無接点式電気連結器は、端子そのものを廃して接点不良をなくし、光伝送などの無接点方式で車両間の伝送系を連結するものである(例えば特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-225705号公報
【特許文献2】実公平7-30449号公報
【特許文献3】特開2004-34784号公報
【特許文献4】特開2015-196490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した無接点式電気連結器は、車両が物理的に連結していなくとも通信が可能なため、車両が確実に連結されて無接点式電気連結器同士が連結されたことを認識して通信を行う必要があるが、無接点式電気連結器自体で連結を判定することは困難である。すなわち、例えば光伝送方式では、連結先の電気連結器からの光ではなく、太陽光や遠方の他の光を受信して、連結したと誤認してしまうことが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無接点式電気連結器の連結状態を高精度で検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)鉄道車両間の連結に使用される無接点式電気連結器の連結状態を検出するための連結状態検出装置であって、連結される鉄道車両のうち、少なくとも一方の鉄道車両に設置される送信器と、少なくとも他方の鉄道車両に設置される受信器と、を含み、前記送信器は、交流信号を発生する交流信号発生部と、前記一方の鉄道車両の、前記無接点式電気連結器の連結時に前記他方の鉄道車両に近接する位置に設けられ、前記交流信号が印加されて励磁される送信コイルと、該送信コイルを流れる電流に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出する送信側検出部と、を含み、前記受信器は、前記他方の鉄道車両の、前記無接点式電気連結器の連結時に前記送信コイルに近接する位置に設けられ、前記送信コイルに近接すると前記送信コイルと磁気結合して電圧を発生する受信コイルと、該受信コイルにおいて発生した電圧に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出する受信側検出部と、を含む連結状態検出装置。
【0007】
本項に記載の連結状態検出装置は、鉄道車両間の連結に使用される無接点式電気連結器の連結状態を検出するものであって、ここでの鉄道車両間の連結には、車両編成をなす鉄道車両同士の連結も含まれる。具体的に、連結状態検出装置は、送信器及び受信器を含み、送信器は、連結される鉄道車両の少なくとも一方の鉄道車両に設置され、受信器は、連結される鉄道車両の少なくとも他方の鉄道車両に設置される。送信器は、交流信号発生部、送信コイル、及び送信側検出部を含み、受信器は、受信コイル及び受信側検出部を含んでいる。送信器の交流信号発生部は、送信コイルへ印加するための交流信号を発生するものである。送信コイルは、一方の鉄道車両の、一方の鉄道車両と他方の鉄道車両との無接点式電気連結器同士が連結した状態で、他方の鉄道車両に近接する位置に設けられており、交流信号発生部により生成された交流信号が印加されて励磁される。
【0008】
これに対し、受信器の受信コイルは、他方の鉄道車両の、一方の鉄道車両と他方の鉄道車両との無接点式電気連結器同士が連結した状態で、送信コイルに近接する位置に設けられている。このため、送信器の送信コイルは、必然的に、無接点式電気連結器の連結時に受信コイルと近接する位置に設けられることになる。また、受信コイルは、交流信号により励磁されている送信コイルに近接すると、送信コイルと磁気結合して電圧を発生するようになっている。すなわち、送信コイル及び受信コイルは、変圧器のメカニズムが利用されて磁気結合するものである。
【0009】
そして、送信器の送信側検出部は、交流信号の印加によって送信コイルを流れる電流を監視し、その電流に基づいて、無接点式電気連結器の連結状態を検出する。すなわち、無接点式電気連結器が連結して送信コイルと受信コイルとが近接すると、送信コイルに受信コイルが磁気結合して負荷となるため、送信コイルを流れる電流が急激に増大する。また、無接点式電気連結器の連結が解除されて送信コイルと受信コイルとが離間すると、送信コイルに対する受信コイルの磁気結合が解除されて負荷がなくなるため、送信コイルを流れる電流が急激に減少する。このため、送信側検出部は、上述したように増減する送信コイルを流れる電流の大きさを利用して、無接点式電気連結器が連結しているか否かを検出するものである。
【0010】
一方、受信器の受信側検出部は、受信コイルにおいて発生した電圧を監視し、その電圧に基づいて、無接点式電気連結器の連結状態を検出する。すなわち、無接点式電気連結器が連結して送信コイルと受信コイルとが近接すると、送信コイルに受信コイルが磁気結合して、送信コイルの磁気エネルギーを受けた受信コイルに電圧が発生する。また、無接点式電気連結器の連結が解除されて送信コイルと受信コイルとが離間すると、送信コイルに対する受信コイルの磁気結合が解除され、送信コイルの磁気エネルギーが受信コイルに伝達されず、受信コイルで発生していた電圧が急激に減少する。このため、受信側検出部は、上述したように増減する受信コイルで発生する電圧の大きさを利用して、無接点式電気連結器が連結しているか否かを検出するものである。
【0011】
従って、本項に記載の連結状態検出装置は、一方の鉄道車両に設置される送信器と、他方の鉄道車両に設置される受信器との双方において、無接点式電気連結器の連結状態が検出されるものである。しかも、その検出方法には、接触不良が発生することなく、光伝送などと比較して誤認も少ない、送信コイル及び受信コイルを用いた変圧器方式の磁気回路が利用されているため、無接点式電気連結器の連結状態が高精度で検出され、信頼性が向上されるものとなる。更に、変圧器方式の磁器回路は、無接点式電気連結器の連結状態の検出とは別の用途で、様々な鉄道車両に搭載されているため、部品の供給や製造のノウハウなどにおいて有利なものである。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記交流信号発生部は、少なくとも、商用電源周波数と、鉄道車両に搭載されたインバータ装置で使用されている周波数とを、避けた周波数で前記交流信号を発生し、前記受信器は、前記交流信号の周波数に対応する信号を抽出するバンドパスフィルタを含む連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信器の交流信号発生部が交流信号を発生する際に、少なくとも、商用電源周波数と、鉄道車両に搭載された走行制御装置や補助電源装置などのインバータ装置で使用されている周波数とを、避けた周波数で交流信号を発生するものである。これにより、送信コイルは、印加される交流信号と同じ周波数で磁束を発生するものとなり、そのような送信コイルと磁気結合する受信コイルでも、送信コイルに印加される交流信号と同じ周波数で電圧が発生する。
【0013】
これに対応するために、受信器は、交流信号の周波数に対応する信号を抽出するバンドパスフィルタを含み、このバンドパスフィルタによって、受信コイルで発生した電圧から、交流信号と同じ周波数の電圧信号を抽出する。これにより、送信コイルの磁束や受信コイルの電圧に、商用電源やインバータ装置に由来する周波数のノイズが発生したとしても、受信側検出部は、そのような周波数のノイズが除去された、交流信号の周波数と同じ周波数の電圧信号のみを利用して、無接点式電気連結器の連結状態を検出する。このため、設置先の鉄道車両からのみでなく、架線やレールからも影響を受けると考えられる、商用電源やインバータ装置に由来するノイズの影響が排除され、検出精度及び信頼性が向上されるものである。
【0014】
(3)上記(2)項において、前記交流信号発生部は、900Hz以上の周波数で前記交流信号を発生する連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、交流信号発生部が、900Hz以上の周波数で交流信号を発生することで、商用電源周波数と鉄道車両に搭載されたインバータ装置の周波数とを確実に避け、それらの周波数のノイズの影響をより確実に排除するものである。
【0015】
(4)上記(2)(3)項において、前記交流信号発生部は、前記交流信号として、互いに周波数が異なる複数の交流信号からなる信号を発生し、前記受信器は、前記複数の交流信号の各々の周波数に対応する信号を抽出する複数のバンドパスフィルタを含み、前記受信側検出部は、前記複数のバンドパスフィルタにより抽出された複数の信号の各々の電圧に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を、前記複数の信号毎に検出する連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、商用電源周波数や鉄道車両に搭載されたインバータ装置の周波数を避けた、互いに周波数が異なる複数の交流信号からなる信号を、交流信号発生部が交流信号として発生するものである。
【0016】
これに対応するために、受信器は、複数の交流信号の各々の周波数に対応する信号を抽出する複数のバンドパスフィルタを含み、これら複数のバンドパスフィルタによって、受信コイルで発生した電圧から、複数の交流信号の各々と同じ周波数の、複数の電圧信号を抽出する。そして、受信側検出部は、複数のバンドパスフィルタにより抽出された複数の信号の各々の電圧に基づいて、無接点式電気連結器の連結状態を、複数の信号毎に検出する。これにより、受信側検出部は、互いに周波数が異なる複数の信号毎に無接点式電気連結器の連結状態を検出する、仮想的な多重の検出を行うことになるため、信頼性及び安全性が高められるものである。
【0017】
(5)上記(4)項において、前記受信側検出部は、前記複数の信号毎の検出結果を利用して、当該連結状態検出装置の故障を監視する連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、上記(4)項に記載したように複数の信号毎に検出した無接点式電気連結器の連結状態を利用して、受信側検出部が、連結状態検出装置の故障を監視するものである。すなわち、受信側検出部によって複数の信号から検出される連結状態の複数の結果は、通常、全て同じ状態を示すものであるため、受信側検出部は、そのような複数の結果に、他と異なる状態を示す結果が含まれているか否かを監視する。そして、複数の結果が全て同じ状態を示していれば、連結状態検出装置が正常であると判定し、複数の結果に他と異なる状態が含まれていれば、連結状態検出装置に何らかの故障が発生したと判定するものである。このように、無接点式電気連結器の連結状態の検出に加えて、連結状態検出装置自体の故障の監視も行われることで、保守性が高められるものである。
【0018】
(6)上記(4)項において、前記交流信号発生部は、前記一方の鉄道車両に関する情報に基づいて、前記複数の交流信号の周波数及び信号数が設定され、前記受信側検出部は、前記複数の信号毎の検出結果を利用して、前記一方の鉄道車両に関する情報を取得する連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信器の交流信号発生部に対して、送信器が設置された一方の鉄道車両に関する情報、例えば一方の鉄道車両の車両形式や列車編成などの情報に基づいて、複数の交流信号の周波数及び信号数が設定される。これにより、交流信号発生部は、一方の鉄道車両に関する情報を暗に示すこととなる周波数及び信号数の複数の交流信号から、送信コイルへ印加する交流信号を生成する。そして、受信器の受信側検出部は、上記のように生成された交流信号から、送信コイル、受信コイル、及び複数のバンドパスフィルタを介して抽出された、複数の信号を利用して、上記(4)項に記載したように無接点式電気連結器の連結状態を複数の信号毎に検出する。
【0019】
更に、受信側検出部は、複数の信号毎に検出した無接点式電気連結器の連結状態を利用して、連結先の一方の鉄道車両に関する情報を取得する。すなわち、受信側検出部は、検出した複数の結果から、送信器から送信された交流信号の周波数及び信号数を把握し、その周波数と信号数との組み合わせから、連結先の一方の鉄道車両に関する情報を取得する。このため、受信側検出部は、周波数及び信号数の複数の組み合わせパターンと、それらパターンの各々に対応する一方の鉄道車両に関する情報とを、予め把握しているものとする。このように、無接点式電気連結器の連結状態の検出だけでなく、連結先の鉄道車両に関する情報の授受が行われることで、付加価値が高められるものである。
【0020】
(7)上記(1)から(6)項において、前記送信コイル及び前記受信コイルは、U字型ないしコ字型の磁芯を有し、該磁芯の二股部先端側が連結先の鉄道車両へ向けられて設置される連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信コイル及び受信コイルの双方が、二股部を有するU字型ないしコ字型の磁芯を有するものである。更に、送信コイル及び受信コイルは、磁芯の二股部先端側が連結先の鉄道車両へ向けられて設置される。
【0021】
このような形状及び設置状態の送信コイル及び受信コイルは、励磁電圧を発生させるために、二股部以外の部位に巻線を施してコイル部とし、二股部の両先端同士を異なる磁極にする必要がある。これにより、送信コイル及び受信コイルの各々の両磁極部は、架線やレールの延在方向と同じ方向へ向けられると共に、鉄道車両の高さ方向に関して概ね同じ高さ位置に配置されることになる。すると、U字型ないしコ字型の磁芯の両磁極部には、架線やレールからのノイズ磁界による同じ方向の磁束が入ることから、ノイズの磁束がコイル部において打ち消されて電圧として発生しなくなる。従って、送信コイル及び受信コイルは、架線やレールを流れる電流に由来するレール延在方向からのノイズの影響を受けなくなり、これによっても信頼性が向上されるものである。また、磁芯の二股部先端側が、架線やレールの延在方向と同じ連結先の鉄道車両の方向へ向けられればよいため、送信コイル及び受信コイルは、そのような方向へ延びる回転軸での様々な回転角度位置の配置に対応する。従って、設置先の鉄道車両の車種や状況などに応じて、適切な回転角度位置で配置されるものとなる。特に、磁芯の二股部の2つの先端が鉄道車両の幅方向について同じ位置になるような回転角度位置での配置では、鉄道車両の幅方向について省スペース化が図られ、延いては送信器や受信器の小型化に寄与するものとなる。
【0022】
(8)上記(1)から(7)項において、前記送信コイルは、第1送信コイル及び第2送信コイルを含み、前記第1送信コイル及び前記第2送信コイルに対して、位相が互いに反転した前記交流信号が印加され、前記受信コイルは、第1受信コイル及び第2受信コイルを含み、前記無接点式電気連結器の連結時に、前記第1受信コイルが前記第1送信コイルと磁気結合すると共に、前記第2受信コイルが前記第2送信コイルと磁気結合し、前記受信側検出部は、前記第1受信コイルで発生した電圧と前記第2受信コイルで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算し、該加算した電圧信号に基づいて、前記無接点式電気連結器の連結状態を検出する連結状態検出装置。
【0023】
本項に記載の連結状態検出装置は、送信コイル及び受信コイルの各々が、2つのコイルで構成されるものである。すなわち、送信コイルは、第1送信コイル及び第2送信コイルを含んでいる。そして、第1送信コイル及び第2送信コイルの一方に対して、交流信号発生部で生成された交流信号が、そのままの位相で印加されると共に、第1送信コイル及び第2送信コイルの他方に対して、交流信号発生部で生成された交流信号が、位相が反転された状態で印加される。
【0024】
同様に、受信コイルは、第1受信コイル及び第2受信コイルを含んでいる。更に、第1受信コイルは、無接点式電気連結器の連結時に、第1送信コイルに近接して磁気結合するような位置に配置され、第2受信コイルは、無接点式電気連結器の連結時に、第2送信コイルに近接して磁気結合するような位置に配置される。これにより、第1送信コイルと磁気結合する第1受信コイルと、第2送信コイルと磁気結合する第2受信コイルとには、位相が互いに反転した電圧が発生することになる。
【0025】
このため、受信側検出部は、第1受信コイルで発生した電圧と第2受信コイルで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算することで、消失させずにレベルを増大させる。従って、送信コイルから送信される信号については、受信側検出部において問題なく復調され、それを使用して無接点式電気連結器の連結状態の検出が行われるものである。これに対し、各コイルへ影響するノイズは、レール延在方向からのノイズについては、例えば上記(7)項に記載したような構成により打ち消されるため、ここでは枕木延在方向からのノイズについて言及する。
【0026】
枕木延在方向からのノイズは、第1送信コイル及び第2送信コイルに対して同じように影響し、また、第1受信コイル及び第2受信コイルに対しても同じように影響する。このため、第1受信コイルで発生するノイズ起因の電圧と、第2受信コイルで発生するノイズ起因の電圧とには、同じ位相で同じ大きさのノイズ電圧が現れる。すると、受信側検出部は、第1受信コイルで発生した電圧と第2受信コイルで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算することから、第1受信コイルで発生したノイズ電圧と第2受信コイルで発生したノイズ電圧とが相殺され、連結状態の検出に使用する信号に反映されなくなる。これにより、無接点式電気連結器の連結状態を問題なく検出しながらも、レール延在方向からのノイズの影響だけでなく、枕木延在方向からのノイズの影響が排除され、より信頼性が向上されるものである。
【0027】
(9)上記(1)から(8)項において、前記送信器及び前記受信器の双方が、前記一方の鉄道車両及び前記他方の鉄道車両の各々に並列に設置され、前記無接点式電気連結器の連結時に、前記一方の鉄道車両の前記送信コイルと前記他方の鉄道車両の前記受信コイルとが磁気結合すると共に、前記他方の鉄道車両の前記送信コイルと前記一方の鉄道車両の前記受信コイルとが磁気結合する連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、連結される一方の鉄道車両に、送信器及び受信器の双方が並列に設置されると共に、連結される他方の鉄道車両にも、送信器及び受信器の双方が並列に設置されるものである。
【0028】
そして、一方の鉄道車両の送信器の送信コイルと、他方の鉄道車両の受信器の受信コイルとは、無接点式電気連結器の連結時に、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。同様に、他方の鉄道車両の送信器の送信コイルと、一方の鉄道車両の受信器の受信コイルとは、無接点式電気連結器の連結時に、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。これにより、一方の鉄道車両及び他方の鉄道車両の各々で、送信側検出部と受信側検出部との二重系で連結状態の検出が行われるため、互いにリカバリーするものとなり、信頼性及び安全性が高められるものである。
【0029】
(10)上記(9)項において、前記送信コイルと前記受信コイルとは、前記一方の鉄道車両及び前記他方の鉄道車両の各々において、鉄道車両の長さ方向の連結される側の端部の、正面視で鉄道車両の幅方向中心よりも右側或いは左側の位置のうち、互いに異なる位置に設置される連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、一方の鉄道車両及び他方の鉄道車両の各々に設置される送信コイルと受信コイルとが、設置先の鉄道車両の、長さ方向の連結される側の端部の、正面視で鉄道車両の幅方向中心よりも右側或いは左側の位置のうち、互いに異なる位置に設置されるものである。
【0030】
これにより、一方の鉄道車両及び他方の鉄道車両の、連結される側の端部が向かい合った状態では、一方の鉄道車両の送信コイルと他方の鉄道車両の受信コイルとが対向することになり、また、一方の鉄道車両の受信コイルと他方の鉄道車両の送信コイルとが対向することになる。しかも、例えば一方の鉄道車両の長さ方向の両端部の各々に、上記のように送信コイル及び受信コイルが設けられていることで、一方の鉄道車両の何れの端部が連結される場合でも、他方の鉄道車両との上述した各送受信コイルの位置関係は維持されるものである。従って、鉄道車両(編成)の向きが反転されて連結されることがある鉄道路線においても、無接点式電気連結器の連結状態が問題なく高精度で検出されるものである。
【0031】
(11)上記(9)(10)項において、前記送信器は、前記送信コイルの磁芯の先端近傍を囲うように配置される、強磁性体製のフレームを含む連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信コイルの磁芯の先端近傍を囲うように配置される強磁性体製のフレームを、送信器が含むものである。これにより、無接点式電気連結器の非連結状態では、送信コイルから漏れ出た磁束が強磁性体製のフレームに吸い込まれるため、同じ鉄道車両に設置されている受信コイルで送信コイルからの漏れ磁束を受けることが抑制される。従って、同じ鉄道車両の送受信コイル間のクロストークノイズが低減され、無接点式電気連結器の連結状態の誤検出が防止されるものとなる。しかも、強磁性体製のフレームは、クロストークノイズのみではなく、外部からのノイズの影響も低減するものである。
【0032】
(12)上記(9)から(11)項において、前記送信コイル及び前記受信コイルの磁芯が、方向性電磁鋼板で形成され、前記送信コイルは、前記交流信号により励磁されて発生する磁束の方向に、前記方向性電磁鋼板の磁化容易方向が合わせられ、前記受信コイルは、前記送信コイルと磁気結合して発生する磁束の方向に、前記方向性電磁鋼板の磁化容易方向が合わせられている連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信コイル及び受信コイルの磁芯が方向性電磁鋼板で形成されたものであり、これによって、方向性電磁鋼板の圧延方向が磁化容易方向として発現する。このため、磁芯を形成する方向性電磁鋼板の磁化容易方向が、送信コイルでは交流信号の印加により励磁されて発生する磁束の方向に合わせられ、受信コイルでは送信コイルと磁気結合して発生する磁束の方向に合わせられる。
【0033】
これにより、送信コイル及び受信コイルで発生する磁力が強まり、コイル間の磁束の結合度が高くなるため、送信コイルから受信コイルへ電磁信号が円滑に伝達されるものとなる。しかも、鉄道車両や架線などからの、送信コイル及び受信コイルに対するノイズ磁束を、方向性電磁鋼板の磁化容易方向と異なる方向で受けることで、ノイズの影響が低減されるものである。更に、同じ鉄道車両に設置される送信コイルと受信コイルについて、無接点式電気連結器の非連結時に送信コイルからの漏れ磁束が受信コイルへ至る方向は、方向性電磁鋼板の磁化容易方向とは異なるため、これによってもクロストークノイズが低減されるものである。
【0034】
(13)上記(9)から(12)項において、前記送信コイル及び前記受信コイルは、磁気結合時に対面する磁芯の先端の断面積が、磁芯の他部位の断面積よりも大きく形成されている連結状態検出装置。
本項に記載の連結状態検出装置は、送信コイル及び受信コイルの、磁気結合時に対面する磁芯の先端の断面積が、磁芯の他部位の断面積よりも大きく形成されていることで、磁束の受け渡し部位の結合面積が大きくなる。これにより、磁気結合時の結合度が高められると共に、漏れ磁束が低減されるため、クロストークノイズが低減されるものとなる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は上記のような構成であるため、無接点式電気連結器の連結状態を高精度で検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置の基本構成を概略的に示すブロック図である。
図2図1の連結状態検出装置の設置位置を説明するための、鉄道車両の概略的な正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置で利用する周波数を示すための周波数分布イメージ図である。
図4】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置の、2つの周波数を利用する場合の構成を概略的に示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置において、受信器での検出信号を鉄道車両情報の取得に利用する方法を説明するための信号表である。
図6】U字型ないしコ字型の磁芯を有する送信コイルを概略的に示す平面図である。
図7】U字型ないしコ字型の磁芯を有するコイルとレールを流れる電流によるノイズ磁界との関係を示すイメージ図である。
図8】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置において、送信コイル及び受信コイルの各々を2つのコイルで構成する場合の接続イメージ図である。
図9】(a)が図8の送信コイルで交流信号から発生する磁束信号のイメージ図、(b)が(a)の信号を受けて図8の受信コイルで発生する合成後の電圧信号のイメージ図である。
図10】(a)が図8の送信コイルでノイズの影響で発生する磁束信号のイメージ図、(b)が(a)の信号を受けて図8の受信コイルで発生する合成後の電圧信号のイメージ図である。
図11】本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置の、各鉄道車両に送信器及び受信器の双方を設置する場合の構成を概略的に示すブロック図である。
図12図11の連結状態検出装置の設置位置を説明するための、鉄道車両の概略的な正面図である。
図13図11の連結状態検出装置を搭載した鉄道車両編成の平面視での連結イメージ図であり、(a)が先頭車両と後尾車両とが連結される場合、(b)が先頭車両同士が連結される場合である。
図14】クロストークノイズ対策として、送信コイルに設置されるフレームを概略的に示す斜視図である。
図15】クロストークノイズ対策として、送信コイル及び受信コイルが方向性電磁鋼板で形成される場合の磁化容易方向を示す概略図である。
図16図14及び図15と異なるクロストークノイズ対策を説明するための斜視図であり、(a)がコイルの先端の断面積及び磁路長を示し、(b)が磁気結合時のコイル間のギャップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1には、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10の基本構成を示している。連結状態検出装置10は、変圧器のメカニズムを利用して、図2に示すような鉄道車両74間の連結に用いられる連結器70及び無接点式電気連結器72のうち、無接点式電気連結器72の連結状態を検出するためのものである。連結器70は、鉄道車両74間の物理的な連結を行うものであり、無接点式電気連結器72は、光伝送などを利用した無接点方式で、制御伝送などのために鉄道車両74間の電気的な連結を行うものである。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10は、送信器12及び受信器48を含み、送信器12は、連結される少なくとも一方の鉄道車両74Aに設置され、受信器48は、連結される少なくとも他方の鉄道車両74Bに設置される。ここで、車両編成同士が連結される場合は、連結される一方の鉄道車両74Aとは、連結される一方の車両編成74Aを示すものとし、連結される他方の鉄道車両74Bとは、連結される他方の車両編成74Bを示すものとする。なお、連結される一方及び他方の鉄道車両(編成)74A、74Bは、後述する図13にも示されている。
【0039】
本実施形態の送信器12は、交流発生回路16及び送信側増幅回路18を有する交流信号発生部14と、送信コイル20と、電流検知部38及び送信側接点出力部40を有する送信側検出部36とを含んでいる。交流発生回路16は、詳しくは後述するが、予め定められた周波数で、送信コイル20を励磁するための交流信号を発生するものであり、送信側増幅回路18は、交流発生回路16で発生した交流信号の電圧を増幅するものである。電流検知部38は、励磁のために送信コイル20へ印加される電流の大きさを監視するものであり、例えば、送信コイル20へ流れ込む電流の大きさが、予め設定された閾値を超えるか否かを監視し、電流の大きさが閾値を超えた場合に、送信側接点出力部40のフォトカプラスイッチなどの接点を閉じるように構成されている。
【0040】
送信コイル20は、変圧器の1次コイルに相当するものであって、一方の鉄道車両74Aの、例えば図2に示したような無接点式電気連結器72の近傍(上下左右など)に設置されている。より詳しくは、送信コイル20は、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結したときに、他方の鉄道車両74Bに設置された受信器48の、後述する受信コイル50へ近接して磁気結合するような位置に設置されている。また、送信側接点出力部40は、上述したように電流検知部38により接点が閉じられると、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結したことを、一方の鉄道車両74Aの制御系統などへ出力するものである。このようにして、送信器12は、一方の鉄道車両74Aにおいて、他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72の連結状態を検出する。なお、交流信号発生部14及び送信側検出部36は、上述したような機能を満たし得る範囲で、任意の回路構成で任意の位置に設置される。
【0041】
一方、本実施形態の受信器48は、受信コイル50と、受信側増幅回路56、電圧検知部58、及び受信側接点出力部60を備えた受信側検出部54とを含んでいる。受信コイル50は、変圧器の2次コイルに相当するものであって、他方の鉄道車両74Bの、例えば図2に示したような無接点式電気連結器72の近傍(上下左右など)に設置されている。より詳しくは、受信コイル50は、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結したときに、一方の鉄道車両74Aに設置された送信器12の送信コイル20へ近接して磁気結合するような位置に設置されている。
【0042】
受信側増幅回路56は、送信コイル20との磁気結合によって受信コイル50で発生した電圧信号を増幅するものであり、電圧検知部58は、受信コイル50で発生して受信側増幅回路56で増幅された電圧の大きさを監視するものである。例えば、電圧検知部58は、受信側増幅回路56で増幅された電圧の大きさが、予め設定された閾値を超えるか否かを監視し、電圧の大きさが閾値を超えた場合に、受信側接点出力部60のフォトカプラスイッチなどの接点を閉じるように構成されている。そして、受信側接点出力部60は、上述したように電圧検知部58により接点が閉じられると、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結したことを、他方の鉄道車両74Bの制御系統などへ出力するものである。このようにして、受信器48は、他方の鉄道車両74Bにおいて、一方の鉄道車両74Aとの無接点式電気連結器72の連結状態を検出する。なお、受信側検出部54は、上述したような機能を満たし得る範囲で、任意の回路構成で任意の位置に設置される。
【0043】
続いて、図3には、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10において使用する周波数について説明するための周波数分布イメージを示している。すなわち、送信器12の交流信号発生部14(交流発生回路16)では、図3に符号Fで示す山なりの線で囲まれた周波数帯域の交流信号を発生し、その周波数帯域Fが利用されて送信器12及び受信器48間の通信が行われる。図示のように、周波数帯域Fは、商用電源周波数である50Hzや60Hz、鉄道車両74に搭載された補助電源用静止型インバータ装置(SIV)で使用される400Hz、600Hzや800Hz、及び、同じく鉄道車両74に搭載された車両制御装置(VVVF)で使用される100~600Hzなどよりも大きい、概ね900Hz以上の帯域である。
【0044】
更に、交流信号発生部14は、互いに周波数が異なる複数の交流信号を発生し、それら複数の交流信号を重畳させた交流信号を送信コイル20へ印加してもよい。そのような複数の交流信号は、何れの周波数も周波数帯域F内にあり、例えば図3には、周波数帯域F内の3つの網掛けされた周波数が、交流信号発生部14で発生する3つ(複数)の交流信号の周波数をイメージして図示されている。ここで、図4には、交流信号発生部14により互いに周波数が異なる2つの交流信号を発生し、それに対応するように受信器48の受信側検出部54に2つのバンドパスフィルタ64を設けた、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10’の回路構成の一例を示している。なお、受信器48に設けられるバンドパスフィルタ64の数量は、交流信号発生部14により発生する複数の交流信号の信号数に対応したものとなる。
【0045】
上述したように、図4の連結状態検出装置10’は、送信器12の交流発生回路16で互いに周波数が異なる2つの交流信号を発生し、それらを重畳させた状態で送信側増幅回路18において増幅させ、更にその交流信号を送信コイル20へ印加する。電流検知部38では、2つの交流信号が重畳された交流信号について、送信コイル20へ流れ込む電流の大きさを監視し、それによって送信側接点出力部40の接点を駆動する。これに対し、受信器48では、受信コイル50で発生した電圧信号を受信側増幅回路56によって増幅させ、それを2つのバンドパスフィルタ64A、64Bの各々へ入力する。これら2つのバンドパスフィルタ64A、64Bは、交流発生回路16で発生させた2つの交流信号の周波数に対応する信号を抽出するように構成されている。
【0046】
また、受信器48には、2つの電圧検知部58A、58Bが設けられており、それらによってバンドパスフィルタ64A、64Bにより抽出された2つの電圧信号を個別に監視する。すなわち、一方のバンドパスフィルタ64Aによって抽出された電圧信号の電圧の大きさを、一方の電圧検知部58Aにより監視し、他方のバンドパスフィルタ64Bによって抽出された電圧信号の電圧の大きさを、他方の電圧検知部58Bにより監視する。そして、2つの電圧検知部58A、58Bによる監視結果が個別に、受信側接点出力部60の2つの接点に反映されるようになっている。このため、受信器48の受信側検出部54は、無接点式電気連結器72の連結状態を、送信器12の交流信号発生部14により発生させた複数の交流信号の信号数に応じた数だけ検出することになる。
【0047】
そこで、連結状態検出装置10’は、上記のように把握する複数の検出結果を、以下のような2通りの方法で利用してもよい。まず、1つ目の利用方法として、複数の検出結果を利用して連結状態検出装置10’の故障を監視することが挙げられる。例えば、図4に示した構成では、交流信号発生部14により2つの交流信号を発生させ、それに応じて受信側検出部54では無接点式電気連結器72の連結状態を2つ検出するが、その2つの検出結果は通常は一致しており、受信側接点出力部60の2つの接点が同時に開閉されるはずである。このため、2つの接点が双方とも開いている或いは閉じている場合は、連結状態検出装置10’に故障が発生していないと考えられ、2つの接点の一方が開いてもう一方が閉じている場合は、連結状態検出装置10’に何らかの故障が発生していると考えられる。これを利用して、連結状態検出装置10’の故障を監視してもよい。
【0048】
また、2つ目の利用方法として、複数の検出結果の検出に利用される複数の信号の周波数及び信号数の組み合わせを利用して、鉄道車両74の任意の情報を通信することが挙げられる。すなわち、送信器12で発生して送信される複数の交流信号の周波数及び信号数は、受信器48で受信及び抽出されて無接点式電気連結器72の連結状態の検出に使用される複数の電圧信号の周波数及び信号数と一致するため、そのような周波数と信号数との組み合わせに鉄道車両74の情報を紐付けておくことで、鉄道車両74の情報を通信する。このために、送信器12の交流信号発生部14は、受信器48へ送信する複数の交流信号の周波数及び信号数が、送信器12が設置された鉄道車両74の車両形式や列車編成などといった、鉄道車両74の何らかの情報に基づいて設定される。換言すれば、交流信号発生部14で発生する複数の交流信号の周波数及び信号数の組み合わせに対して、設置先の鉄道車両74の何らかの情報が紐付けられる。
【0049】
また、受信器48の受信側検出部54は、複数のバンドパスフィルタ64及び複数の電圧検知部58によって抽出及び検知された複数の電圧信号の周波数と信号数との組み合わせから、送信器12が設置された鉄道車両74の情報を取得するために、周波数と信号数との組み合わせパターン及び各パターンに紐付けられた鉄道車両74の情報が予め設定される。例えば図5には、900Hz、1700Hz、2100Hz、及び3300Hzの4つの周波数と、これらの周波数を有する信号の有無(信号数)とを利用して、情報を通信する場合の信号表を示している。これに対応するために、受信器48には、上記の4つの周波数の信号を抽出するための、4つのバンドパスフィルタ64が設置されるものとする。
【0050】
図5の「周波数」列の各々に記載されている「0」又は「1」は、「1」が受信側検出部54において各周波数の電圧信号が検出された(受信側接点出力部60の接点が閉)ことを示し、「0」が検出されなかった(受信側接点出力部60の接点が開)ことを示している。図5の「パターン」列に記載されている「1」~「16」は、4つの周波数の検出結果の、「0」及び「1」の16通りの組み合わせパターンを、便宜的に各番号で示している。また、図5の「結果」列に記載されている「×」又は「〇」は、「×」が受信側検出部54により無接点式電気連結器72が連結されていないと検出されることを示し、「〇」が受信側検出部54により無接点式電気連結器72が連結されたと検出されることを示している。
【0051】
すなわち、パターン1の場合は、4つの周波数の何れでも信号が検出されないため、無接点式電気連結器72が連結されていないと判定する。また、パターン2~5は、4つの周波数のうち何れか1つの周波数の信号が検出されたものの、ここでは、信頼性や安全性などの観点から、4つの周波数のうち2つ以上の周波数の信号が検出された場合に、無接点式電気連結器72が連結されたと判定するため、結果が「×」となっている。なお、このような場合に、受信器48からエラー信号を出力する構成としてもよい。これに対し、残りのパターン6~16は、何れも4つの周波数のうち2つ以上の周波数の信号が検出されたものであるため、無接点式電気連結器72が連結されたと判定する。そして、これらのパターン6~16は、無接点式電気連結器72が連結されたことを示すだけでなく、上記のような鉄道車両74の情報を示すものとして利用可能である。
【0052】
例えば、図5のパターン8に対して、車両形式が「α」であるという情報が紐付けられている場合、車両形式が「α」の鉄道車両74に設置された送信器12は、周波数が900Hz、1700Hz、及び2100Hzの3つの交流信号を発生して送信する。そして、これらの信号を受信した受信器48は、周波数が900Hz、1700Hz、及び2100Hzの3つの信号を検出し、それによって無接点式電気連結器72が連結されたことを把握すると共に、図5のようなパターンから連結先の鉄道車両74の車両形式が「α」であることを把握する。一方、受信器48は、例えば図5のパターン15に示されるような、周波数が1700Hz、2100Hz、及び3300Hzの3つの信号を検出した場合は、車両形式が「α」ではない別の車両形式の鉄道車両74が連結されたことを把握することになる。このように、無接点式電気連結器72が連結されたことを示す、図5のパターン6~16の一部或いは全てに対して、鉄道車両74の情報が紐付けられて利用されるものである。
【0053】
次に、図6及び図7には、連結状態検出装置10、10’で用いる送信コイル20及び受信コイル50の、主にレール76の延在方向のノイズに対処するための、具体的な形状及び配置例を示している。図6に示すように、送信コイル20及び受信コイル50は、例えば鉄などの強磁性体で形成された、U字型ないしコ字型の磁芯24を有している。このU字型ないしコ字型の磁芯24は、二股部28と、巻線32が巻かれたコイル部30とを含んでいる。このような構成により、例えば送信コイル20は、巻線32を介して電流が印加されると、二股部28の先端28a、28bに互いに異なる磁極が発生するようになっている。
【0054】
そして、送信コイル20及び受信コイル50は、磁芯24の二股部28の先端28a、28bが連結先の鉄道車両74へと向けられて設置される。例えば図7の例において、送信コイル20及び受信コイル50は、二股部28の先端28a、28bが、同じ高さ位置でレール76の延在方向へ向けられている。しかしながら、送信コイル20及び受信コイル50は、二股部28の先端28a、28bが連結先の鉄道車両74へと向けられればよく、レール76の延在方向と平行な回転軸で、図7のような位置から回転された状態で設置されてもよい。そして、そのように回転された何れの回転角度位置で配置されても、二股部28の先端28a、28bは、レール76などからの距離と比較すれば、概ね同じ高さに位置することになる。なお、図7において符号Nで示されるものは、レール76に由来するノイズ磁界をイメージしたものであり、図6において磁芯24の周りに描かれている矢印は、そのようなノイズ磁界Nの影響をイメージしたものである。更に、送信コイル20及び受信コイル50は、設置先の鉄道車両74同士が連結した状態で、後述する図16(b)において確認できるように、二股部28の先端28aと28bとが向かい合うように配置される。
【0055】
続いて、図8には、主に枕木延在方向のノイズに対処するための、連結状態検出装置10、10’で用いる送信コイル20及び受信コイル50の変形例を示している。図示のように、本実施形態では、送信コイル20が第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bからなり、受信コイル50が第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bからなるものである。第1送信コイル20A、第2送信コイル20B、第1受信コイル50A、及び第2受信コイル50Bの各々は、図6に示したようなU字型ないしコ字型の磁芯24を有し、図7に示したように配置される。そして、第1送信コイル20Aと第1受信コイル50Aとは、設置先の鉄道車両74同士が連結したときに、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。同様に、第2送信コイル20Bと第2受信コイル50Bとは、設置先の鉄道車両74同士が連結したときに、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。
【0056】
更に、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bは、例えば図8のように接続された状態で、交流信号発生部14で生成された交流信号が印加されることで、位相が互いに反転した交流信号が印加される。図9(a)には、そのような交流信号の印加によって第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bで発生する、位相が互いに反転したコイル磁束を示している。また、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bは、上記のような交流信号が印加された第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bと磁気結合することで、位相が互いに反転した電圧信号が発生する。このため、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bは、例えば図8のように接続された状態で、受信側検出部54により電圧信号が加算されることで、一方で発生した電圧信号の位相が反転されて加算される。図9(b)には、第1受信コイル50Aで発生した電圧信号と、第2受信コイル50Bで発生して位相が反転された電圧信号とが、加算されて合成された電圧信号が示されている。受信側検出部54は、このように合成された電圧信号を用いて、無接点式電気連結器72の連結状態を検出する。
【0057】
これに対し、図10には、枕木方向からのノイズに起因する信号を示している。すなわち、枕木方向からのノイズは、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bに同じように影響し、同様に、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bにも同じように影響する。図10(a)には、枕木方向からのノイズの影響により、第1送信コイル20Aと第2送信コイル20Bとに、同周波数で同位相の同じ大きさのコイル磁束が発生するイメージを示している。そして、このようなコイル磁束が発生した第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bに対して、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bが磁気結合すると、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bでは、同周波数で同位相の同じ大きさの電圧信号が発生する。そのようなノイズに由来する2つの電圧信号が、図8に示すような接続により、一方の位相が反転されて加算されると、図10(b)に示すように、相殺されて電圧が打ち消されることになる。このため、無接点式電気連結器72の連結状態の検出に用いられる電圧信号には、枕木方向からのノイズの影響による電圧が反映されないことになる。
【0058】
次に、図11は、無接点式電気連結器72の連結状態の検出を二重系で行う場合の、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”の回路構成の一例を示している。図示のように、連結状態検出装置10”は、送信器12及び受信器48の双方が、連結される一方の鉄道車両74A及び他方の鉄道車両74Bの各々に並列に設置される。そして、一方の鉄道車両74Aに設置された送信器12の送信コイル20と、他方の鉄道車両74Bに設置された受信器48の受信コイル50とは、鉄道車両74A、74Bの無接点式電気連結器72の連結時に、互いに近接して磁気結合する位置に設置される。同様に、他方の鉄道車両74Bに設置された送信器12の送信コイル20と、一方の鉄道車両74Aに設置された受信器48の受信コイル50とは、鉄道車両74A、74Bの無接点式電気連結器72の連結時に、互いに近接して磁気結合する位置に設置される。
【0059】
このため、一方の鉄道車両74Aでは、送信器12の送信側検出部36と受信器48の受信側検出部54との双方によって、他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72の連結状態が検出される。同様に、他方の鉄道車両74Bでも、送信器12の送信側検出部36と受信器48の受信側検出部54との双方によって、一方の鉄道車両74Aとの無接点式電気連結器72の連結状態が検出される。なお、図11では、一方の鉄道車両74Aに設置された送信器12及び受信器48を併合して図示し、それらの送信側接点出力部40及び受信側接点出力部60も併合して図示している。また、他方の鉄道車両74Bについても、一方の鉄道車両74Aと同様に一部を併合して図示している。
【0060】
更に、送信器12の送信コイル20と受信器48の受信コイル50とは、一方及び他方の鉄道車両74A、74Bの各々において、鉄道車両74の長さ方向の連結される側の端部の、正面視で鉄道車両74の幅方向中心よりも右側或いは左側の位置のうち、互いに異なる位置に設置される。図12には、鉄道車両74の連結される側の端部において、鉄道車両74の幅方向中心よりも右側である、無接点式電気連結器72の右方に送信器12の送信コイル20が設置され、鉄道車両74の幅方向中心よりも左側である、無接点式電気連結器72の左方に受信器48の受信コイル50が設置された例を図示している。送信コイル20及び受信コイル50は、図12とは逆の位置関係であってもよいが、何れの場合でも、少なくとも連結される鉄道車両74同士では共通の位置関係で設置されるものとする。
【0061】
また、図13には、送信器12(送信コイル20)及び受信器48(受信コイル50)の設置イメージと、鉄道車両編成74A及び74Bが連結されるイメージとを示している。図示のように、一方の鉄道車両編成74Aと他方の鉄道車両編成74Bとは、各々の先頭車両及び後尾車両の連結される側の端部に、図12に示したように送信器12及び受信器48が正面視での左右に分けて設置されている。このため、図13(a)に示すように、一方の鉄道車両編成74Aの先頭車両と他方の鉄道車両編成74Bの後尾車両とが連結される場合は、互いの送信コイル20と受信コイル50とが対向する態様となり、無接点式電気連結器72の連結状態検出のための通信が問題なく行われる。
【0062】
更に、連結状態検出装置10”は、一方の鉄道車両編成74Aと他方の鉄道車両編成74Bとの、何れか一方の前後方向の向きが反転された場合にも対応する。すなわち、例えば図13(b)に示すように、他方の鉄道車両編成74Bの前後方向の向きが反転され、一方及び他方の鉄道車両編成74A、74Bの先頭車両同士が連結される場合であっても、互いの送信コイル20と受信コイル50とが対向する態様となり、無接点式電気連結器72の連結状態検出のための通信が問題なく行われる。この点は、一方の鉄道車両編成74Aの前後方向の向きが図13(a)の状態から反転され、一方及び他方の鉄道車両編成74A、74Bの後尾車両同士が連結される場合であっても同様である。
【0063】
ここで、連結状態検出装置10”は、上述したように同じ鉄道車両74に送信器12と受信器48とが並列に設置されるため、特に無接点式電気連結器72の非連結時に、同じ鉄道車両74に設置された送信コイル20と受信コイル50との間の、漏れ磁束によるクロストークノイズの影響が懸念される。そこで、図14図16を参照して、そのようなクロストークノイズの影響を低減する方法について説明する。まず、図14に示される方法は、例えば鉄などの強磁性体で形成されたフレーム44を、各送信コイル20の磁芯24の先端28a、28b近傍を囲うように配置するものである。こうすることで、無接点式電気連結器72の非連結時に、送信コイル20の磁芯24の先端28a、28bから漏れ出た磁束が、フレーム44に吸い込まれるようになる。
【0064】
一方、図15に示される方法は、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24を、方向性電磁鋼板26で形成するものであって、この方向性電磁鋼板26は、特定の方向に磁化が容易な磁化率の異方性を有するものである。そこで、送信コイル20の磁芯24では、図15に白抜き矢印で図示されるような、巻線32を介した交流信号の印加により発生する磁束の方向に、方向性電磁鋼板26の磁化容易方向を合わせるようにして、方向性電磁鋼板26を用いる。また、受信コイル50の磁芯24では、図15に白抜き矢印で図示されるような、連結先の送信コイル20と磁気結合して発生する磁束の方向に、方向性電磁鋼板26の磁化容易方向を合わせるようにして、方向性電磁鋼板26を用いる。こうすることで、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24を形成する方向性電磁鋼板26の磁化容易方向が、クロストークノイズが侵入する方向とは異なる方向となり、クロストークノイズの低減が図られるものである。
【0065】
他方、図16には2つの方法を示しており、1つ目の方法は、図16(a)に示されるような、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24の先端28a、28bの断面積を、磁芯24の他の部位(二股部28の先端28a、28b以外の部位やコイル部30)の断面積よりも、大きく形成するものである。これによって、無接点式電気連結器72の連結時における、送信コイル20と受信コイル50との磁気結合の強度が高められ、同じ鉄道車両74に設置されたコイル20、50に対する漏れ磁束が低減される。なお、図16(a)では、図示の便宜上、先端28a、28bの断面積が特に大きくは図示されていない。
【0066】
また、2つ目の方法は、図16(a)に示されるような、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24の磁路長L(各コイル20、50の送受信部の磁芯長)を長くする方法である。すなわち、連結される鉄道車両74間の送信コイル20と受信コイル50との間には、無接点式電気連結器72が連結されて磁気結合する状態であっても、図16(b)に示されるようなギャップ長Gのギャップが存在する。そこで、上記のように送信コイル20及び受信コイル50の磁路長Lを長くし、磁路長Lに対するギャップ長Gの割合を小さくすることで、磁気結合の結合度を高めると共にギャップによる漏れ磁束の影響を低減するものである。なお、磁路長Lとギャップ長Gとの比率には、ギャップによる漏れ磁束が低減されるような任意の比率を設定してよい。
【0067】
ここで、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10、10’、10”は、図1図16に示したような構成に限定されるものではない。例えば、図1図4、及び図11のブロック図の構成に限定されるものではなく、設置先の鉄道車両74や無接点式電気連結器72の構成などに応じて、各ブロック図に示された構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよいものである。また、図2及び図12には、送信器12及び受信器48の設置位置の例として、連結されることが多い鉄道車両74の先頭車両又は後尾車両が示されているが、送信器12及び受信器48は、連結される任意の鉄道車両74の任意の端部に設置されてよい。更に、送信コイル20及び受信コイル50は、無接点式電気連結器72の近傍に設けられることが好ましいが、無接点式電気連結器72の連結時に互いに近接して磁気結合するような位置であれば、鉄道車両74の任意の位置に設置されてよい。また、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24は、図6図7などに示したようなU字型ないしコ字型に限定されるものではなく、例えば棒状のI字型といった他の形状であってもよい。
【0068】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10は、図2に示すような、鉄道車両(編成)74間の連結に使用される無接点式電気連結器72の連結状態を検出するものである。具体的に、連結状態検出装置10は、図1に示すように、送信器12及び受信器48を含み、送信器12は、連結される鉄道車両74の少なくとも一方の鉄道車両74Aに設置され、受信器48は、連結される鉄道車両74の少なくとも他方の鉄道車両74Bに設置される。送信器12は、交流信号発生部14、送信コイル20、及び送信側検出部36を含み、受信器48は、受信コイル50及び受信側検出部54を含んでいる。送信器12の交流信号発生部14は、送信コイル20へ印加するための交流信号を発生するものである。送信コイル20は、一方の鉄道車両74Aの、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結した状態で、他方の鉄道車両74Bに近接する位置に設けられており、交流信号発生部14により生成された交流信号が印加されて励磁される。
【0069】
これに対し、受信器48の受信コイル50は、他方の鉄道車両74Bの、一方の鉄道車両74Aと他方の鉄道車両74Bとの無接点式電気連結器72同士が連結した状態で、送信コイル20に近接する位置に設けられている。このため、送信器12の送信コイル20は、必然的に、無接点式電気連結器72の連結時に受信コイル50と近接する位置に設けられることになる。また、受信コイル50は、交流信号により励磁されている送信コイル20に近接すると、送信コイル20と磁気結合して電圧を発生するようになっている。すなわち、送信コイル20及び受信コイル50は、変圧器のメカニズムが利用されて磁気結合するものである。
【0070】
そして、送信器12の送信側検出部36は、交流信号の印加によって送信コイル20を流れる電流を監視し、その電流に基づいて、無接点式電気連結器72の連結状態を検出する。すなわち、無接点式電気連結器72が連結して送信コイル20と受信コイル50とが近接すると、送信コイル20に受信コイル50が磁気結合して負荷となるため、送信コイル20を流れる電流が急激に増大する。また、無接点式電気連結器72の連結が解除されて送信コイル20と受信コイル50とが離間すると、送信コイル20に対する受信コイル50の磁気結合が解除されて負荷がなくなるため、送信コイル20を流れる電流が急激に減少する。このため、送信側検出部36は、上述したように増減する送信コイル20を流れる電流の大きさを利用して、無接点式電気連結器72が連結しているか否かを検出することができる。
【0071】
一方、受信器48の受信側検出部54は、受信コイル50において発生した電圧を監視し、その電圧に基づいて、無接点式電気連結器72の連結状態を検出する。すなわち、無接点式電気連結器72が連結して送信コイル20と受信コイル50とが近接すると、送信コイル20に受信コイル50が磁気結合して、送信コイル20の磁気エネルギーを受けた受信コイル50に電圧が発生する。また、無接点式電気連結器72の連結が解除されて送信コイル20と受信コイル50とが離間すると、送信コイル20に対する受信コイル50の磁気結合が解除され、送信コイル20の磁気エネルギーが受信コイル50に伝達されず、受信コイル50で発生していた電圧が急激に減少する。このため、受信側検出部54は、上述したように増減する受信コイル50で発生する電圧の大きさを利用して、無接点式電気連結器72が連結しているか否かを検出することができる。
【0072】
従って、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10は、一方の鉄道車両74Aに設置される送信器12と、他方の鉄道車両74Bに設置される受信器48との双方において、無接点式電気連結器72の連結状態を検出することができる。しかも、その検出方法には、接触不良が発生することなく、光伝送などと比較して誤認も少ない、送信コイル20及び受信コイル50を用いた変圧器方式の磁気回路を利用しているため、無接点式電気連結器72の連結状態を高精度で検出することができ、信頼性を向上させることが可能となる。更に、変圧器方式の磁器回路は、無接点式電気連結器72の連結状態の検出とは別の用途で、様々な鉄道車両74に搭載されているため、部品の供給や製造のノウハウなどにおいて有利なものである。
【0073】
また、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10は、送信器12の交流信号発生部14が交流信号を発生する際に、少なくとも、商用電源周波数と、鉄道車両74に搭載された走行制御装置や補助電源装置などのインバータ装置で使用されている周波数とを、避けた周波数で交流信号を発生するものである。図3には、そのような周波数帯域のイメージを符号Fの範囲で示しており、例えば、交流信号発生部14は、900Hz以上の周波数で交流信号を発生する。これにより、送信コイル20は、印加される交流信号と同じ周波数で磁束を発生するものとなり、そのような送信コイル20と磁気結合する受信コイル50でも、送信コイル20に印加される交流信号と同じ周波数で電圧が発生する。
【0074】
これに対応するために、受信器48は、交流信号の周波数に対応する信号を抽出するバンドパスフィルタ64(図4参照)を含み、このバンドパスフィルタ64によって、受信コイル50で発生した電圧から、交流信号と同じ周波数の電圧信号を抽出する。これにより、送信コイル20の磁束や受信コイル50の電圧に、商用電源やインバータ装置に由来する周波数のノイズが発生したとしても、受信側検出部54は、そのような周波数のノイズが除去された、交流信号の周波数と同じ周波数の電圧信号のみを利用して、無接点式電気連結器72の連結状態を検出することができる。このため、設置先の鉄道車両74からのみでなく、架線やレール76(図7参照)からも影響を受けると考えられる、商用電源やインバータ装置に由来するノイズの影響を排除することができ、検出精度及び信頼性を向上させることが可能となる。
【0075】
また、図4に示すように、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10’は、商用電源周波数や鉄道車両74に搭載されたインバータ装置の周波数を避けた、互いに周波数が異なる複数の交流信号からなる信号を、交流信号発生部14が交流信号として発生させるものである。これに対応するために、受信器48は、複数の交流信号の各々の周波数に対応する信号を抽出する複数のバンドパスフィルタ64(64A、64B)を含み、これら複数のバンドパスフィルタ64によって、受信コイル50で発生した電圧から、複数の交流信号の各々と同じ周波数の、複数の電圧信号を抽出する。そして、受信側検出部54は、複数のバンドパスフィルタ64により抽出された複数の信号の各々の電圧に基づいて、無接点式電気連結器72の連結状態を、複数の信号毎に検出する。これにより、受信側検出部54は、互いに周波数が異なる複数の信号毎に無接点式電気連結器72の連結状態を検出する、仮想的な多重の検出を行うことができるため、信頼性及び安全性を高めることが可能となる。
【0076】
更に、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10’は、上記のように複数の信号毎に検出した無接点式電気連結器72の連結状態を利用して、受信側検出部54が、連結状態検出装置10’の故障を監視してもよい。すなわち、受信側検出部54によって複数の信号から検出される連結状態の複数の結果は、通常、全て同じ状態を示すものであるため、受信側検出部54は、そのような複数の結果に、他と異なる状態を示す結果が含まれているか否かを監視する。そして、複数の結果が全て同じ状態を示していれば、連結状態検出装置10’が正常であると判定し、複数の結果に他と異なる状態が含まれていれば、連結状態検出装置10’に何らかの故障が発生したと判定することができる。このように、無接点式電気連結器72の連結状態の検出に加えて、連結状態検出装置10’自体の故障の監視も行うことで、保守性を高めることが可能となる。
【0077】
或いは、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10’は、複数の信号毎に検出した無接点式電気連結器72の連結状態を、以下のように利用してもよい。すなわち、まず、送信器12が設置された一方の鉄道車両74Aに関する情報、例えば一方の鉄道車両74Aの車両形式や列車編成などの情報に基づき、送信器12の交流信号発生部14に対して、発生する複数の交流信号の周波数及び信号数を設定する。これにより、交流信号発生部14は、一方の鉄道車両74Aに関する情報を暗に示すこととなる周波数及び信号数の複数の交流信号から、送信コイル20へ印加する交流信号を生成する。そして、受信器48の受信側検出部54は、上記のように生成された交流信号から、送信コイル20、受信コイル50、及び複数のバンドパスフィルタ64を介して抽出された、複数の信号を利用して、無接点式電気連結器72の連結状態を複数の信号毎に検出する。
【0078】
更に、受信側検出部54は、複数の信号毎に検出した無接点式電気連結器72の連結状態を利用して、連結先の一方の鉄道車両74Aに関する情報を取得する。すなわち、受信側検出部54は、検出した複数の結果から、送信器12から送信された交流信号の周波数及び信号数を把握し、その周波数と信号数との組み合わせから、連結先の一方の鉄道車両74Aに関する情報を取得する。このため、受信側検出部54は、例えば図5のような周波数及び信号数の複数の組み合わせパターンと、それらパターンの各々に対応する一方の鉄道車両74Aに関する情報とを、予め把握しているものとする。このように、無接点式電気連結器72の連結状態の検出だけでなく、連結先の鉄道車両74に関する情報の授受を行うことで、付加価値を高めることができる。しかも、連結先の鉄道車両74に関する情報として、車両形式や列車編成を取得することとすれば、車両形式や列車編成に応じた様々な対応を行うことができる。
【0079】
また、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10、10’は、図6に示すように、送信コイル20及び受信コイル50の双方が、二股部28を有するU字型ないしコ字型の磁芯24を有するものである。更に、送信コイル20及び受信コイル50は、図7に示すように、磁芯24の二股部28の先端28a、28b側が連結先の鉄道車両74へ向けられて設置される。このような形状及び設置状態の送信コイル20及び受信コイル50は、励磁電圧を発生させるために、二股部28以外の部位に巻線32を施してコイル部30とし、二股部28の両先端28a、28b同士を異なる磁極にする必要がある。
【0080】
これにより、送信コイル20及び受信コイル50の各々の両磁極部28a、28bは、架線やレール76の延在方向と同じ方向へ向けられると共に、鉄道車両74の高さ方向に関して概ね同じ高さ位置に配置されることになる。すると、U字型ないしコ字型の磁芯24の両磁極部28a、28bには、架線やレール76からのノイズ磁界Nによる同じ方向の磁束が入ることから(図6の磁芯24上の矢印参照)、ノイズの磁束をコイル部30において打ち消して電圧として発生しないようにすることができる。従って、送信コイル20及び受信コイル50は、架線やレール76を流れる電流に由来するレール76延在方向からのノイズの影響を受けなくなり、これによっても信頼性を向上させることが可能となる。また、磁芯24の二股部28の先端28a、28b側が、架線やレール76の延在方向と同じ連結先の鉄道車両74の方向へ向けられればよいため、送信コイル20及び受信コイル50は、そのような方向へ延びる回転軸での様々な回転角度位置の配置に対応する。従って、設置先の鉄道車両74の車種や状況などに応じて、適切な回転角度位置で配置することができる。特に、磁芯24の二股部28の2つの先端28a、28bが鉄道車両74の幅方向について同じ位置になるような回転角度位置(図7の状態から90度回転された位置)での配置では、鉄道車両74の幅方向について省スペース化を図ることができ、延いては送信器12や受信器48の小型化に寄与することも可能となる。
【0081】
更に、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10、10’は、送信コイル20及び受信コイル50の各々が、2つのコイルで構成されてもよい。すなわち、図8に示すように、送信コイル20は、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bを含み、これらの各々がU字型ないしコ字型の磁芯24を有しており、その磁芯24が図7のように配置される。そして、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bの一方に対して、交流信号発生部14で生成された交流信号が、そのままの位相で印加されると共に、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bの他方に対して、交流信号発生部14で生成された交流信号が、位相が反転された状態で印加される(図9(a)参照)。
【0082】
同様に、受信コイル50は、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bを含み、これらの各々がU字型ないしコ字型の磁芯24を有しており、その磁芯24が図7のように配置される。更に、第1受信コイル50Aは、無接点式電気連結器72の連結時に、第1送信コイル20Aに近接して磁気結合するような位置に配置され、第2受信コイル50Bは、無接点式電気連結器72の連結時に、第2送信コイル20Bに近接して磁気結合するような位置に配置される。これにより、第1送信コイル20Aと磁気結合する第1受信コイル50Aと、第2送信コイル20Bと磁気結合する第2受信コイル50Bとには、位相が互いに反転した電圧が発生することになる。
【0083】
このため、受信側検出部54は、第1受信コイル50Aで発生した電圧と第2受信コイル50Bで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算することで、消失させずにレベルを増大させる(図9(b)参照)。従って、送信コイル20から送信される信号については、受信側検出部54において問題なく復調することができ、それを使用して無接点式電気連結器72の連結状態の検出を行うことができる。これに対し、各コイル20,50へ影響するノイズは、レール76延在方向からのノイズについては、上述したようにU字型ないしコ字型の磁芯24によって打ち消すことができるため、ここでは枕木延在方向からのノイズについて言及する。
【0084】
枕木延在方向からのノイズは、第1送信コイル20A及び第2送信コイル20Bに対して同じように影響し(図10(a)参照)、また、第1受信コイル50A及び第2受信コイル50Bに対しても同じように影響する。このため、第1受信コイル50Aで発生するノイズ起因の電圧と、第2受信コイル50Bで発生するノイズ起因の電圧とには、同じ位相で同じ大きさのノイズ電圧が現れる。すると、受信側検出部54は、第1受信コイル50Aで発生した電圧と第2受信コイル50Bで発生した電圧とを、一方の位相を反転させて加算することから、第1受信コイル50Aで発生したノイズ電圧と第2受信コイル50Bで発生したノイズ電圧とを相殺することができ(図10(b)参照)、連結状態の検出に使用する信号に反映されないようにすることができる。これにより、無接点式電気連結器72の連結状態を問題なく検出しながらも、レール76延在方向からのノイズの影響だけでなく、枕木延在方向からのノイズの影響も排除することができ、より信頼性を向上させることが可能となる。なお、このような作用効果は、第1受信コイル50A、第2受信コイル50B、第1受信コイル50A、及び第2受信コイル50Bの各々の磁芯24が、U字型ないしコ字型である場合に限らず、I字型などの他の形状であっても奏することができる。
【0085】
加えて、図11に示すように、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”は、連結される一方の鉄道車両74Aに、送信器12及び受信器48の双方が並列に設置されると共に、連結される他方の鉄道車両74Bにも、送信器12及び受信器48の双方が並列に設置されるものである。そして、一方の鉄道車両74Aの送信器12の送信コイル20と、他方の鉄道車両74Bの受信器48の受信コイル50とは、無接点式電気連結器72の連結時に、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。同様に、他方の鉄道車両74Bの送信器12の送信コイル20と、一方の鉄道車両74Aの受信器48の受信コイル50とは、無接点式電気連結器72の連結時に、互いに近接して磁気結合するような位置に設置される。これにより、一方の鉄道車両74A及び他方の鉄道車両74Bの各々で、送信側検出部36と受信側検出部54との二重系で連結状態の検出を行うことができるため、互いにリカバリーすることができ、信頼性及び安全性を高めることが可能となる。
【0086】
更に、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”は、一方の鉄道車両74A及び他方の鉄道車両74Bの各々に設置される送信コイル20と受信コイル50とが、設置先の鉄道車両74の、長さ方向の連結される側の端部の、正面視で鉄道車両74の幅方向中心よりも右側或いは左側の位置のうち、互いに異なる位置に設置されるものである。例えば図12には、正面視で鉄道車両74の幅方向中心よりも右側に送信コイル20が設置され、鉄道車両74の幅方向中心よりも左側に受信コイル50が設置された例が示されている。
【0087】
これにより、図13(a)に示すように、一方の鉄道車両(編成)74A及び他方の鉄道車両(編成)74Bの、連結される側の端部が向かい合った状態では、一方の鉄道車両74Aの送信コイル20と他方の鉄道車両74Bの受信コイル50とが対向することになり、また、一方の鉄道車両74Aの受信コイル50と他方の鉄道車両74Bの送信コイル20とが対向することになる。しかも、例えば他方の鉄道車両74Bの長さ方向の両端部の各々に、上記のように送信コイル20及び受信コイル50が設けられていることで、図13(b)に示すように、他方の鉄道車両74Bの何れの端部が連結される場合でも、一方の鉄道車両74Aとの上述した各送受信コイル20、50の位置関係を維持することができる。従って、鉄道車両(編成)74の向きが反転されて連結されることがある鉄道路線においても、無接点式電気連結器72の連結状態を問題なく高精度で検出することができる。
【0088】
また、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”は、図14に示すように、送信コイル20の磁芯24の先端近傍を囲うように配置される強磁性体製のフレーム44を、送信器12が含んでいてもよい。これにより、無接点式電気連結器72の非連結状態では、送信コイル20から漏れ出た磁束が強磁性体製のフレーム44に吸い込まれるため、同じ鉄道車両74に設置されている受信コイル50で送信コイル20からの漏れ磁束を受けることを抑制することができる。従って、同じ鉄道車両74の送受信コイル20、50間のクロストークノイズを低減することができ、それに起因する無接点式電気連結器72の連結状態の誤検出を防止することができる。しかも、強磁性体製のフレーム44は、クロストークノイズのみではなく、外部からのノイズの影響も低減することができる。
【0089】
更に、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”は、図15に示すように、送信コイル20及び受信コイル50の磁芯24が方向性電磁鋼板26で形成されてもよく、そうすることで、方向性電磁鋼板26の圧延方向が磁化容易方向として発現する。このため、図15に白抜き矢印で示されるように、磁芯24を形成する方向性電磁鋼板26の磁化容易方向が、送信コイル20では交流信号の印加により励磁されて発生する磁束の方向に合わせられ、受信コイル50では送信コイル20と磁気結合して発生する磁束の方向に合わせられる。
【0090】
これにより、送信コイル20及び受信コイル50で発生する磁力が強まり、コイル20、50間の磁束の結合度を高くすることができるため、送信コイル20から受信コイル50へ電磁信号を円滑に伝達することができる。しかも、鉄道車両74や架線などからの、送信コイル20及び受信コイル50に対するノイズ磁束を、方向性電磁鋼板26の磁化容易方向と異なる方向で受けることで、ノイズの影響を低減することができる。更に、同じ鉄道車両74に設置される送信コイル20と受信コイル50について、無接点式電気連結器72の非連結時に送信コイル20からの漏れ磁束が受信コイル50へ至る方向は、方向性電磁鋼板26の磁化容易方向とは異なるため、これによってもクロストークノイズを低減することが可能となる。
【0091】
また、本発明の実施の形態に係る連結状態検出装置10”は、送信コイル20及び受信コイル50の、磁気結合時に対面する図16に示されるような磁芯24の先端28a、28bの断面積が、磁芯24の他部位の断面積よりも大きく形成されてもよい。これによれば、磁束の受け渡し部位の結合面積が大きくなるため、磁気結合時の結合度を高めることができると共に、漏れ磁束を少なくすることができ、クロストークノイズを低減することができる。更に、送信コイル20及び受信コイル50の磁路長Lを長くして、送信コイル20及び受信コイル50の磁気結合時のギャップ長Gに対する磁路長Lの比率を大きくすることで、送信コイル20及び受信コイル50間のギャップに起因する漏れ磁束を少なくすることができ、これによってもクロストークノイズを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
10、10’、10”:連結状態検出装置、12:送信器、14:交流信号発生部、20:送信コイル、20A:第1送信コイル、20B:第2送信コイル、24:磁芯、26:方向性電磁鋼板、28:二股部、28a、28b:先端、36:送信側検出部、44:フレーム、48:受信器、50:受信コイル、50A:第1受信コイル、50B:第2受信コイル、54:受信側検出部、64(64A、64B):バンドパスフィルタ、72:無接点式電気連結器、74(74A、74B):鉄道車両(編成)
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