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  • 特開-肉様乾燥食品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063889
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】肉様乾燥食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20230428BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20230428BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230428BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/14
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173950
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】390000664
【氏名又は名称】日本ジフィー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 嵯千
(72)【発明者】
【氏名】津山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 拓己
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AD36
4B042AE02
4B042AK10
4B042AK20
4B042AP07
4B042AP17
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】長期保存が可能な、植物性蛋白を主成分とする調味済み肉様乾燥食品の製造方法を提供する。
【解決手段】植物性蛋白を主原料とする肉様の粒状物を準備する工程と(S1)、前記粒状物に調味料を用いて味付けする味付け工程と(S2)、味付けされた前記粒状物を乾燥する乾燥工程と(S4)を有する肉様乾燥食品の製造方法。好ましくは、前記味付け工程と前記乾燥工程の間に、前記粒状物を圧延する圧延工程(S3)をさらに有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性蛋白を主原料とする肉様の粒状物を準備する工程と、
前記粒状物に調味料を用いて味付けする味付け工程と、
味付けされた前記粒状物を乾燥する乾燥工程と、
を有する肉様乾燥食品の製造方法。
【請求項2】
前記味付け工程と前記乾燥工程の間に、前記粒状物を圧延する圧延工程をさらに有する、
請求項1に記載の肉様乾燥食品の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程が凍結乾燥工程である、
請求項1または2に記載の肉様乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
前記肉様乾燥食品は、湯戻し後に食されることを目的とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の肉様乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
前記肉様乾燥食品は、湯戻し後に食される食品の具材として用いられる、
請求項4に記載の肉様乾燥食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性蛋白を主成分とする、味付けされた肉様乾燥食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆蛋白等の植物性蛋白を主原料とする肉様食品が知られている。例えば、特許文献1には、植物性蛋白を主原料とし、二軸型エクストルーダーを用いてエクストルージョンクッキング処理を行うことにより、強い繊維状の組織をもち、肉に近い食感を有する肉様蛋白食品を製造することが記載されている。また、特許文献2には、外観形状と食感が薄切り肉に近似した、薄切り肉代用品として使用可能な組織状植物性蛋白素材が記載されている。これらの肉様蛋白食品や組織状植物性蛋白素材は、用途に合わせて各種調味料で味付けされて(2次味付け)、料理に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-098686号公報
【特許文献2】国際公開第2014/156948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の植物性蛋白を主原料とする肉様食品は、料理の材料として調味されて用いられるものは多いが、長期保存が可能な調味済み食品として用いられるものはなかった。例えば、植物性蛋白を主原料とする肉様食品で、即席麺の具材として使用可能なものはなかった。
【0005】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、植物性蛋白を用いて、長期保存が可能な調味済み肉様乾燥食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の肉様乾燥食品の製造方法は、植物性蛋白を主原料とする肉様の粒状物を準備する工程と、前記粒状物に調味料を含浸させる味付け工程と、味付けされた前記粒状物を乾燥する乾燥工程とを有する。ここで、肉様とは、外観、食味および食感が、動物の肉のようであることをいう。この方法により、長期保存が可能な、植物性蛋白を主成分とする調味済み肉様乾燥食品を製造することができる。
【0007】
好ましくは、上記肉様乾燥食品の製造方法は、前記味付け工程と前記乾燥工程の間に、前記粒状物を圧延する圧延工程をさらに有する。
【0008】
好ましくは、前記乾燥工程が凍結乾燥工程である。
【0009】
好ましくは、前記肉様乾燥食品は、湯戻し後に食されることを目的とする。さらに好ましくは、前記肉様乾燥食品は、湯戻し後に食される食品の具材として用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の肉様乾燥食品の製造方法によれば、植物性蛋白を用いて、長期保存が可能な調味済み肉様乾燥食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の肉様乾燥食品の製造方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の肉様乾燥食品の製造方法の一実施形態を図1の工程フローに沿って説明する。なお、以下において、肉様乾燥食品について食感、風味等をいうときは、肉様乾燥食品を湯戻し等で復元したものを食したときの食感、風味等を意味する。
【0013】
(S1)まず、植物性蛋白を主原料とする肉様の粒状物(以下、単に「粒状物」ということがある)を準備する。
【0014】
植物性蛋白は植物由来の蛋白質であり、その原料は特に限定されない。植物性蛋白の例としては、大豆、えんどう豆、あずき等の豆類、小麦、とうもろこし、米等の穀類などに由来する蛋白質が挙げられる。植物性蛋白は、好ましくは、大豆の種実またはその脱脂物を主原料とする。加熱によって強い弾性のゲルを形成できるからである。粒状物中の植物性蛋白の割合は他の成分より多く、無水状態で好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0015】
粒状物は、食感の改善や風味付け等のために、植物性蛋白以外の原料を含んでいてもよい。植物性蛋白以外の原料としては、例えば、食用油脂、食塩、澱粉、乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料、調味料が挙げられる。粒状物は、好ましくは動物性蛋白を含まない。
【0016】
粒状物は、1軸または2軸以上のエクストルーダー、好ましくは、2軸以上のエクストルーダーを用いたエクストルージョンクッキングによって製造されたものを準備する。2軸以上のエクストルーダーによって、強い繊維状の組織を持ち、肉に近い食感を有する肉様乾燥食品が得られるからである。
【0017】
粒状物の形状は特に限定されず、粒状の他、例えばフレーク状に成形されたものも含む。粒状物の大きさは、肉様乾燥食品に肉のような弾力ある食感が感じられる程度に大きいことが好ましい。粒状物は、好ましくは公称目開きが2.8mm、より好ましくは公称目開きが4mm、さらに好ましくは公称目開きが5.6mmの篩を通過しないものの重量の割合が80%以上であることが好ましい。一方、粒状物が大きすぎると、肉様乾燥食品と本来の肉との風味の違いが目立ってくるので、粒状物は、好ましくは公称目開きが63mmの篩を通過するものを用いる。
【0018】
植物性蛋白を主原料とする肉様の粒状物は、主原料と添加物の種類、形状、大きさなどが異なる種々のものが市販されているので、用途に応じて適当なものを選択して準備することができる。
【0019】
(S2)粒状物に調味料を用いて味付けする。
【0020】
好ましくは、粒状物に調味料を含浸させて、粒状物を味付けする。例えば、調味液に粒状物を浸漬することによって、粒状物に調味料を含浸させることができる。また、繊維状の組織を持つ粒状植物性蛋白には調味液が浸透しやすいという特性を有するので、粒状物表面に調味液をスプレーなどで塗布することによっても、粒状物に調味料を含浸させることができる。
【0021】
具体的には、例えば、用途に応じて各種の調味料を水に溶いて鍋等に入れて温めながら、粒状物をその中に投入することで、調味料を含浸させる。粒状物は、好ましくは濃い目に味付けする。植物性蛋白特有の臭いを嫌う人が少なからずいるので、植物性蛋白臭を消すためである。この点から、調味液のBRIX値は、調味液をすべて粒状物に含浸させる場合、好ましくは10以上とする。一方、調味液のBRIX値は、調味液をすべて粒状物に含浸させる場合、好ましくは70以下とする。BRIX値がこれより大きいと味付けが濃すぎるからである。
【0022】
また、本味付け工程(S2)において、調味料を含浸させた粒状物に、風味付けのために動物性の油脂を絡めてもよい。調味料の配合や味付けの手順の具体例は、実施例で後述する。
【0023】
また、本味付け工程(S2)において、調味料とともに着色料を用いることで、肉様乾燥食品に目的とする肉に似た色調を与えることができる。
【0024】
(S3)味付けされた粒状物を圧延する。例えば、高温に熱したロールや板で粒状物を押さえつけることによって、粒状物を圧延する。
【0025】
圧延処理は、省略することも可能であるが、粒状物を加熱しながら圧延することによって、肉様乾燥食品を噛んだときに、より弾力のある、肉に近い食感が得られる。また、強い繊維状の組織を持つ粒状植物性蛋白には、調味液が浸透しやすい一方で食するときに味抜けしやすいという問題があるが、粒状物を加熱しながら圧延することによって、粒状物の表層の調味料が硬くなり、肉様乾燥食品を食するときに味抜けが抑制される。
【0026】
圧延処理の温度と圧力は、所望の食感等に応じて決めることができる。圧延処理の温度は、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上とする。圧延処理の温度が低すぎると、押圧を解除したときに粒状物が元の形状に戻り、十分な弾力性向上や味抜け抑制効果が得られない。また、粒状物の表面が適度に焦げることで、喫食時に好ましい風味が感じられる。一方、圧延処理の温度は、好ましくは300℃以下とする。温度が高すぎると、喫食時に好ましくない風味を感じるほどに、粒状物の表面が焦げるからである。
【0027】
圧延処理の押圧力は、圧延による所望の効果を得るには、粒状物の厚さを圧延前の80%以下に減じる力、または粒状物1個に対して50N以上の力で押圧することが好ましい。通常は、粒状物の厚さが圧延前の、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下となるように、粒状物を扁平に圧延する。粒状物の組織の密度が特に高い場合や、粒状物の外周を規制した状態で圧延する場合、例えば粒状物を型枠に入れて圧延する場合などで、80%以下の厚さに圧延するのが難しい場合は、粒状物1個に対して、好ましくは50N、より好ましくは100N以上の力をかけて圧延する。粒状物の厚さの変化が小さくても、十分に大きな力で押して、粒状物の組織を密にすることで所望の効果が得られる。一方、押圧力の上限は特に限定されないが、圧延に用いる装置等の制限から、押圧力は、粒状物の厚さを圧延前の20%に減じる力以下であり、かつ粒状物1個に対して10000N以下の力であることが好ましい。圧延処理の時間は、例えば、5秒~1分とすることができる。
【0028】
(S4)粒状物を乾燥する。
【0029】
粒状物を乾燥する方法は、特に限定されず、種々公知の方法で行うことができる。例えば、凍結乾燥、熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥などの方法で行うことができる。乾燥処理は公知の条件で行うことができる。例えば、熱風乾燥では、80~120℃の熱風を利用して乾燥を行うことができる。粒状物は、乾燥後の水分量が、好ましくは10質量%以下となるように乾燥する。肉様乾燥食品を長期保存可能とするためである。
【0030】
粒状物は、好ましくは、凍結乾燥によって乾燥する。凍結乾燥では食品に高い温度をかけないため、調味済粒状物の含む香りや風味を損なわず、植物性蛋白臭が目立たないからである。凍結乾燥の方法は、例えば、粒状物をトレイ等に入れて加熱殺菌し、庫内温度が-20~-30℃の冷凍庫中で予備凍結し、真空凍結乾燥機で凍結乾燥する。これにより、材料中の水分、アルコール分および揮発成分が除去される。
【0031】
完成した肉様乾燥食品は、そのまま食することができる。例えば、肉様乾燥食品を干し肉様のおつまみ食品とすることができる。
【0032】
あるいは、完成した肉様乾燥食品は、湯戻しによって復元して食することができる。また、肉様乾燥食品は、湯戻し後に食される食品の具材として用いることもできる。例えば、肉様乾燥食品をラーメン、スープ、焼きそばなどの即席食品の具材として用いることができる。
【0033】
本実施形態の肉様乾燥食品の製造方法によって、様々な動物肉様の乾燥食品を製造することができる。ここで、動物とは、植物と対置される生物群をいう。動物肉には、牛、豚、馬、羊、山羊等の家畜、猪、鹿等の野生獣、鯨等の海洋哺乳類など各種哺乳類の肉;鰐、亀等の爬虫類;蛙等の両生類;鶏等の家禽、野鳥などの鳥類;魚、エビ等の魚介類の肉がすべて含まれる。
【実施例0034】
本実施形態の肉様乾燥食品の製造方法を、実施例によってさらに詳細に説明する。
【0035】
次の方法によって、実施例1および実施例2の豚肉風乾燥食品を製造した。肉様粒状物(粒状植物性蛋白。不二製油株式会社、ニューフジニック)1000重量部に対して、表1に示す調味液を調製した。調味液のBRIX値は約30であった。調味液を鍋に入れて85℃に温め、粒状物を調味液に投入して5分間かき混ぜて、すべての調味液を粒状物に吸い切らせて、粒状物を味付けした。味付けされた粒状物を、実施例2では圧延した。圧延処理は、粒状物約10個をフッ素系樹脂フィルムで挟んで、約190℃に熱したアイロンを、約1000Nの力で約15秒間押し付けて行った。圧延処理によって粒状物の厚さは約1/2に減じた。実施例1では味付けされた粒状物を、実施例2では味付けされ、圧延された粒状物を、トレイに充填して75℃の蒸気で20分間加熱殺菌した。トレイを庫内温度が-25℃の冷凍庫に入れて一晩予備凍結した後、22時間真空乾燥した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1および実施例2の豚肉風乾燥食品を熱湯で戻して食したところ、いずれの食品でも、植物性蛋白特有の臭いは抑えられていた。実施例2では、噛んだ時の弾力が強く、より豚肉に近い食感が得られた。また、実施例2では、噛み続けたときにも豚肉様の風味が長く続き、味抜けが抑制されていることが確認できた。
【0038】
次の方法によって、実施例3および実施例4のカルビ風乾燥食品を製造した。肉様粒状物(フレーク状植物性蛋白。不二製油株式会社、アペックス)1000重量部に対して、表2に示す調味液を調製した。調味液のBRIX値は約30であった。調味液を鍋に入れて85℃に温め、粒状物を調味液に投入して5分間かき混ぜて、すべての調味液を粒状物に吸い切らせた後、表2に示すオイルを鍋に入れて粒状物に絡めた。味付けされた粒状物を、実施例4では、実施例2と同じ方法で圧延した。圧延処理によって粒状物の厚さは約2/3に減じた。実施例3では味付けされた粒状物を、実施例4では味付けされ、圧延された粒状物を、以後実施例1および実施例2と同様に、トレイに充填して75℃の蒸気で20分間加熱殺菌した。トレイを庫内温度が-25℃の冷凍庫に入れて一晩予備凍結した後、22時間真空乾燥した。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例3および実施例4のカルビ風乾燥食品を熱湯で戻して食したところ、いずれの食品でも、植物性蛋白特有の臭いは少なく、カルビ様の濃厚な脂の風味が感じられた。実施例4では、噛んだ時の弾力が強く、よりカルビ肉に近い食感が得られた。また、実施例4では、噛み続けたときにもカルビ肉様の風味が長く続き、味抜けが抑制されていることが確認できた。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内で、その他種々の態様で実施可能である。
図1