(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063907
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】骨固定用プレートシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/80 20060101AFI20230428BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173981
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】521278829
【氏名又は名称】湘南メディカルテクニック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良平
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL29
4C160LL34
4C160LL57
4C160LL58
(57)【要約】
【課題】半月板の修復を短時間で行うことができ、しかも、半月板の修復状態を比較的長期にわたり維持することができる骨固定用プレートシステムを提供する。
【解決手段】脛骨Kに当接させるプレート部材1と、プレート部材1を介して脛骨Kに螺入することによりプレート部材1を脛骨Kに固定するスクリュー2とを備える。プレート部材1は、半月板Hの下部に向かって突出して半月板Hから脛骨Kに至る組織を押す突出部4を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨に当接させるプレート部材と、該プレート部材を介して脛骨に螺入することにより該プレート部材を脛骨に固定するスクリューとを備える骨固定用プレートシステムにおいて、
前記プレート部材は、半月板の下部に向かって突出して半月板から脛骨に至る組織を押す突出部を備えることを特徴とする骨固定用プレートシステム。
【請求項2】
前記突出部は、半月板から脛骨に至る組織に刺入すべく先端鋭利に形成されていることを特徴とする請求項1記載の骨固定用プレートシステム。
【請求項3】
前記突出部は、半月板から脛骨に至る組織に当接すべく先端非鋭利に形成されていることを特徴とする請求項1記載の骨固定用プレートシステム。
【請求項4】
前記プレート部材が、脛骨近位骨切り術等により形成された切り込みを跨いで脛骨に当接されるものであるとき、
前記プレート部材を介して脛骨に螺入される前記スクリューは、前記切り込みの面に対して交差して脛骨に螺入され、前記プレート部材の先端部を圧迫固定することを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の骨固定用プレートシステム。
【請求項5】
前記プレート部材は、前記スクリューが挿通し螺合する螺合孔部を備え、
前記スクリューは、骨に螺入する第1ネジ部と、前記プレート部材の螺合孔部に螺合する第2ネジ部とを備え、
前記第1ネジ部のネジピッチは、前記第2ネジ部のネジピッチより大きいことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の骨固定用プレートシステム。
【請求項6】
前記プレート部材は、隣接して互いに連通する2つの孔を有する連通螺合孔部を備え、
前記連通螺合孔部は、2つの孔が夫々異なる方向に前記スクリューの挿通を案内するように形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の骨固定用プレートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半月板の動きを規制する骨固定用プレートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半月板は、膝関節の中で大腿骨と脛骨の関節面に挟まれ、体重や剪断力など膝関節にかかる様々なストレスを逃がすクッションのような役目を果たしている。半月板の中には細胞はなく、繊維状の構造物から成る。そのため、半月板は、加齢に伴う劣化等によって断裂することがあり、一度断裂すると自己修復が極めて難しい。
【0003】
そこで、半月板の修復の方法として、例えば、縫合糸によって断裂した部分を縫合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記以外の半月板の修復の方法としては、半月板の後根修復や半月板セントラリゼーションが挙げられる。
【0005】
半月板の後根修復は、断裂した半月板の後根の本来の位置近傍に穴を形成し、半月板の断端に人工靭帯を縫い込んで当該穴に引き込んで固定する方法である。
【0006】
半月板セントラリゼーションは、脛骨の内側または外側の辺縁にアンカー(特殊な糸でできている)を所定間隔を存して複数打ち込み、損傷して内方または外方へずれた半月板を膝の中央部へ引き戻すことにより、クッションの役割を回復させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の方法によると、何れも、関節鏡(内視鏡)を使って狭い空間の中で行うため、施術に長い時間を要する不都合がある。また、縫合糸に延びが生じる等によって、半月板の修復状態を維持できない不都合がある。
【0009】
上記従来の不都合に鑑み、本発明は、半月板の修復を短時間で行うことができ、しかも、半月板の修復状態を比較的長期にわたり維持することができる骨固定用プレートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、脛骨に当接させるプレート部材と、該プレート部材を介して脛骨に螺入することにより該プレート部材を脛骨に固定するスクリューとを備える骨固定用プレートシステムにおいて、前記プレート部材は、半月板の下部に向かって突出して半月板から脛骨に至る組織を押す突出部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、プレート部材をスクリューにより脛骨に固定するだけで、プレート部材に設けた突出部が半月板から脛骨に至る組織を押圧して半月板を元の位置に固定することができる。これにより、短時間で半月板の修復が行え、しかも、比較的長期にわたって半月板の固定状態を維持することができる。
【0012】
また、本発明において、前記突出部の一態様としては、半月板から脛骨に至る組織に刺入すべく先端鋭利に形成されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、突出部の先端が半月板から脛骨に至る組織に刺入して突出部と半月板との位置ずれが確実に防止されるので、半月板を確実に固定することができる。
【0014】
また、本発明において、前記突出部の他の態様としては、半月板から脛骨に至る組織に当接すべく先端非鋭利に形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、突出部の先端が半月板から脛骨に至る組織への当接開始時には半月板の移動が許容されて、半月板を最も好ましい姿勢とすることができ、突出部の先端の半月板への圧接度が最大となったときに確実に半月板を固定することができる。
【0016】
また、本発明において、前記プレート部材が、脛骨近位骨切り術等により形成された切り込みを跨いで脛骨に当接されるものであるとき、前記プレート部材を介して脛骨に螺入される前記スクリューは、前記切り込みの面に対して交差して脛骨に螺入され、前記プレート部材の先端部を圧迫固定することを特徴とする。
【0017】
これによれば、脛骨の切り込み部分を、最も好ましい状態で強固に固定することができる。
【0018】
また、本発明において、前記プレート部材は、前記スクリューが挿通し螺合する螺合孔部を備え、前記スクリューは、骨に螺入する第1ネジ部と、前記プレート部材の螺合孔部に螺合する第2ネジ部とを備え、前記第1ネジ部のネジピッチは、前記第2ネジ部のネジピッチより大きいことを特徴とする。
【0019】
これによれば、スクリューをプレート部材に螺合させるときのスクリューの回転角度が比較的小さくても、当該スクリューの骨への螺入量を大きくすることができ、プレート部材と骨とを十分に圧接させることができる。
【0020】
また、本発明において、前記プレート部材は、隣接して互いに連通する2つの孔を有する連通螺合孔部を備え、前記連通螺合孔部は、2つの孔が夫々異なる方向に前記スクリューの挿通を案内するように形成されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、スクリューを挿通する連通螺合孔部の2つの孔の何れか一方を選択することができ、当該選択により容易にスクリューを好ましい方向に螺入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の骨固定用プレートシステムの使用状態を示す説明図。
【
図7】プレート部材の他の取り付け例を示す説明図。
【
図9】
図9Aは
図8の螺合孔部の一方を用いたスクリューの螺入姿勢を模式的に示す説明図、
図9Bは
図8の螺合孔部の一方を用いたスクリューの螺入姿勢を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る骨固定用プレートシステムは、
図1に示すように、プレート部材1と複数のスクリュー2とによって構成され、脛骨Kの高位側面に固定して用いられる。
【0024】
プレート部材1は、変形膝関節症の脛骨近位骨切り術において、骨切り後の脛骨Kの高位内側面に固定される板状の部材であり、全体としては略T字形状に形成されている。なお、本実施形態においては、脛骨Kの高位内側面にプレート部材1を固定した例を示したが、脛骨近位骨切り術は外側から行われる場合もあり、この場合には、脛骨Kの高位外側面にプレート部材1を固定する。
【0025】
図2に示すように、プレート部材1には、スクリュー2が挿通可能に形成された複数の螺合孔部3が形成されている。また、プレート部材1の上端部には、突出部4が設けられている。
【0026】
スクリュー2は、周知のように複数種類存在するが、螺入する位置に応じて適宜選択して用いられ、例えば、
図3Aに示す第1のスクリュー2Aや、
図3Bに示す第2のスクリュー2Bを使用することができる。
【0027】
第1のスクリュー2Aは、
図3Aに示すように、外周面に第1ネジ部5が形成された小径の本体部6と、外周面に第2ネジ部7が形成された大径の頭部8とを備え、第1ネジ部5のネジピッチ5Pと第2ネジ部7のネジピッチ7Pとは同じ寸法に形成されている。
【0028】
第2のスクリュー2Bは、
図3Bに示すように、外周面に第1ネジ部9が形成された小径の本体部10と、外周面に第2ネジ部11が形成された大径の頭部12とを備え、第1ネジ部9のネジピッチ9Pは、第2ネジ部11のネジピッチ11Pより大きい寸法に形成されている。
【0029】
第1のスクリュー2Aと第2のスクリュー2Bとの何れにおいても、本体部6、10は骨に螺入し、頭部8、12はプレート部材1の螺合孔部3に螺合する。
【0030】
第1のスクリュー2Aを用いた場合、第1のスクリュー2Aの回転角度に応じて、骨に対する本体部6の螺入深さとプレート部材1に対する頭部8の螺入深さとが同じ度合いになる。
【0031】
一方、第2のスクリュー2Bを用いた場合には、第2のスクリュー2Bを回転操作したとき、プレート部材1に対する頭部12の螺入深さよりも、骨に対する本体部10の螺入深さが深くなる。これにより、第2のスクリュー2Bの回転数を少なくして骨への本体部10の螺入が迅速に行われると共に、骨に対するプレート部材1の圧接度を高くすることができる。
【0032】
更に、第1のスクリュー2Aの第2ネジ部7のネジピッチ7Pと、第2のスクリュー2Bの第1ネジ部9のネジピッチ9Pとを同じ寸法に形成しておくことにより、プレート部材1の螺合孔部3のネジピッチを共通として、第1のスクリュー2Aと第2のスクリュー2Bとを選択、交換自在とすることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、
図3A及び
図3Bに示すように、第1のスクリュー2Aと第2のスクリュー2Bとの何れも、本体部6、10の略全長にわたり第1ネジ部5,9が形成されているものを用いたが、これに限らず、図示しないが、本体部6、10の先端側半部に第1ネジ部を設けたハーフスレッドと呼ばれるタイプのスクリューを、必要に応じて採用することができる。
【0034】
プレート部材1の突出部4は、
図1に示すように、プレート部材1を脛骨Kに固定したときに、半月板Hの下部に向かって突出する形状に形成されている。
【0035】
プレート部材1に突出部4を設けたことにより、プレート部材1を脛骨Kに固定する際に、同時に、突出部4が半月板Hから脛骨Kに至る組織を押圧して半月板Hを元の位置に固定することができる。これにより、短時間で半月板Hの修復が行え、しかも、比較的長期にわたって半月板Hの固定状態を維持することができる。
【0036】
突出部4は、
図2及び
図4に示すように、先端鋭利な複数の突起13によって構成されていてもよく、また、
図5に示すように、先端非鋭利な複数の突起14によって構成されていてもよい。或いは、
図6に示すように、連続する突条15によって突出部4が構成されていてもよい。
【0037】
また、
図7に示すように、スクリュー2を、骨の切り込みの面Kaに対して交差して脛骨Kに螺入してもよい。プレート部材1は、脛骨近位骨切り術において、骨切り後に切り込みを跨ぐようにして脛骨Kの高位内側面(または外側面)に当接させるが、骨の切り込み面Kaに対して交差するスクリュー2により、プレート部材1を脛骨Kに強固に圧迫固定することができる。
【0038】
これにより、骨切り後の切り込みを介して脛骨Kを互いに圧迫させて密着度を増すことができ、同時に、半月板Hから脛骨Kに至る組織を強く圧迫ぢた状態を形成することができる。
【0039】
また、
図8に示すように、2つの連通する孔を有する連通螺合孔部16をプレート部材1に設けてもよい。連通螺合孔部15は、2つの孔16a,16bが夫々異なる方向にスクリュー2の挿通を案内するように形成されている。
【0040】
即ち、
図9aに示すように、連通螺合孔部16の一方の孔16aにスクリュー2を挿通させて螺合させると、当該スクリュー2は斜め下方に向かって骨に螺入され、
図9bに示すように、連通螺合孔部16の他方の孔16bにスクリュー2を挿通させて螺合させると、当該スクリュー2は斜め上方に向かって骨に螺入される。
【0041】
なお、
図8に示すように、連通螺合孔部16の2つの孔16a,16bには両方とも雌ネジ(図示省略)が形成されているが、これに限るものではなく、使用するスクリューに合わせて、2つの孔16a,16bの何れか一方または両方にネジ山を備えていなくてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の骨固定用プレートシステムによれば、
図1を参照して明らかなように、プレート部材1に突出部4を設けたことにより、プレート部材1を脛骨Kに固定するだけで、突出部4が半月板Hから脛骨Kに至る組織を押圧して半月板Hを元の位置に固定することができる。よって、短時間で半月板Hの修復が行え、しかも、比較的長期にわたって半月板Hの固定状態を維持することができ、更には、半月板Hの移動を規制して半月板Hの逸脱を予防することもできる。
【0043】
なお、本実施形態においては、縦長の形状のプレート部材1を挙げて説明したが、これ以外に、
図10に示すように、短尺形状のプレート部材17を採用し、例えば、1本のスクリュー2でプレート部材17を固定してもよい。これによっても、プレート部材1Bに設けた突出部4によって半月板Hから脛骨Kに至る組織を押圧することができる。
【符号の説明】
【0044】
K…脛骨、H…半月板、Ka…切り込みの面、1,17…プレート部材、2…スクリュー、2A…第1のスクリュー(スクリュー)、2B…第2のスクリュー(スクリュー)、3…螺合孔部、4…突出部、5…第1ネジ部、7…第2ネジ部、16…連通螺合孔部、16a,16b…孔。