(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063929
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】献立調製システム、コンピュータプログラム、及び献立調製方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174029
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐原 義章
(72)【発明者】
【氏名】北山 聖治
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV04
3C707EV23
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS09
3C707KT01
3C707KT06
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】ロボットアームを用いた献立調製システムであって献立調製に対する適応力の高いシステムを提供する。
【解決手段】献立調製システム1は、読取部と、制御部とを備える。読取部51,59は、トレー5と共に供給される食札7に担持された献立情報を読み取るように構成される。食札は、トレーとは独立した部材で構成される。献立情報は、トレーに調製すべき献立を指定する情報である。制御部11,51は、読取部により読み取られた献立情報に基づき、ロボットアーム20を制御するように構成される。具体的には、制御部は、献立情報に基づきロボットアームを制御して、ロボットアームに、献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレーにセットさせるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーと共に供給される前記トレーとは独立した部材で構成される食札に担持された献立情報であって、前記トレーに調製すべき献立を指定する献立情報を読み取るように構成される読取部と、
前記読取部により読み取られた前記献立情報に基づき、ロボットアームを制御して、前記ロボットアームに、前記献立に対応する料理が盛り付けられた食器を前記トレーにセットさせるように構成される制御部と、
を備える献立調製システム。
【請求項2】
前記読取部は、カメラを用いて前記食札に担持される前記献立情報を光学的に読み取る請求項1記載の献立調製システム。
【請求項3】
前記食札は、前記食札を見る人が前記献立を識別可能な文字情報として前記献立情報を担持するシートであって、前記文字情報が印刷されたシートである請求項2記載の献立調製システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記献立情報に基づき、盛り付けられた料理の異なる複数種類の食器の中から、前記トレーにセットすべき1種類以上の食器である対象食器を判別し、
前記対象食器が前記トレーにセットされるように、前記ロボットアームを制御する
請求項1~請求項3のいずれか一項記載の献立調製システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記献立情報が主食及び1以上の副食を含む複数の種目を備える献立を指定する環境で、前記種目毎に、対応する種目に属する料理が盛り付けられた食器であって、前記献立に対応する前記トレーにセットすべき1種類以上の食器である対象種目食器を判別し、
前記対象食器は、前記種目毎の前記対象種目食器を含み、
前記制御部は、前記種目毎に、対応する種目の前記対象種目食器が前記トレーにセットされるように、前記ロボットアームを制御する請求項4記載の献立調製システム。
【請求項6】
前記トレーは、複数の領域を有し、
前記献立情報は、前記領域毎にセットすべき料理を指定し、
前記制御部は、前記献立情報に基づき、前記領域毎にセットすべき1種類以上の食器である対象領域食器を判別し、
前記対象食器は、前記領域毎の前記対象領域食器を含み、
前記制御部は、前記領域毎に、対応する領域に関して判別された前記対象領域食器がセットされるように、前記ロボットアームを制御する請求項4記載の献立調製システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記対象食器の外観を、カメラを用いて光学的に判別し、前記ロボットアームが、前記複数種類の食器の中から、前記対象食器を取り出すように、前記ロボットアームを制御する請求項4~請求項6のいずれか一項記載の献立調製システム。
【請求項8】
前記複数種類の食器は、種類毎に、個別の場所に用意され、
前記個別の場所としての、複数の場所のそれぞれには、用意された食器の種類を識別可能な識別情報が付されており、
前記制御部は、前記識別情報を光学的に読み取ることに基づいて、前記対象食器が用意された場所を判別して、前記ロボットアームが、前記複数種類の食器の中から、前記対象食器を取り出すように、前記ロボットアームを制御する請求項4~請求項6のいずれか一項記載の献立調製システム。
【請求項9】
前記個別の場所は、個別の運搬皿であり、前記運搬皿に前記識別情報が付されている請求項8記載の献立調製システム。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項記載の献立調製システムにおける前記読取部と、前記制御部として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
コンピュータにより実行される献立調製方法であって、
トレーと共に供給される前記トレーとは独立した部材で構成される食札に担持された献立情報であって前記トレーに調製すべき献立を指定する献立情報を、読取装置を用いて読み取ることと、
読み取った前記献立情報に基づき、ロボットアームに、前記献立に対応する料理が盛り付けられた食器を前記トレーにセットさせるように、前記ロボットアームを制御することと、
を含む献立調製方法。
【請求項12】
請求項11記載の献立調製方法であって、
前記制御することは、
前記献立情報に基づき、盛り付けられた料理の異なる複数種類の食器の中から、前記トレーにセットすべき1種類以上の食器である対象食器を判別することと、
前記対象食器が前記トレーにセットされるように、前記ロボットアームを制御することと、
を含む献立調製方法。
【請求項13】
献立調製方法であって、
トレーとは独立した部材として、前記トレーに調製すべき献立を指定する献立情報を担持する食札を用意することと、
前記食札を前記トレーと共に、作業エリアに供給することと、
コンピュータが、前記トレーと共に前記作業エリアに供給される前記食札に担持された前記献立情報を、前記作業エリアに設置された読取装置を用いて読み取ることと、
前記コンピュータが、読み取った前記献立情報に基づき、前記作業エリアに設置されたロボットアームに、前記献立に対応する料理が盛り付けられた食器を前記トレーにセットさせるように、前記ロボットアームを制御することと、
を含む献立調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、献立調製システム、コンピュータプログラム、及び献立調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宿泊を伴う施設、特に病院及び高齢者施設では、利用者に個別の食事を提供することが行われている。各利用者には個別の献立が設定され、設定された献立が調製されたトレーが提供される。献立に対応する料理が盛り付けられた1つ又は複数の食器がトレーに置かれることで、対応する献立がトレーに調製される。
【0003】
下記特許文献1には、ロボットアームを利用してトレーに献立に対応する食器をセットするシステムが開示されている。このシステムでは、食器のそれぞれに食器情報を含む二次元コードが施される。トレーのそれぞれには、献立に対応するセットすべき食器に関する二次元コードが施される。
【0004】
システムは、食器に施された二次元コード及びトレーに施された二次元コードに基づき、ロボットアームを制御して、トレーに、献立に対応する食器をセットして、トレーに対応する献立を調製する。
【0005】
下記特許文献2には、ロボットアームを用いて食器をピッキングする食器洗浄システムが開示されている。このシステムでは、ピッキングの自動化のために、食器に文字を用いたマークが付される。マークがカメラを用いて認識され、認識されたマークに基づいてロボットアームが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-15538号公報
【特許文献2】特開2018-126272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、病院及び高齢者施設では、各利用者に対し、朝、昼、及び夜の一日三食の食事提供が行われる。各利用者には、利用者の健康を考慮した日毎に異なる献立を提供する必要がある。このように病院及び高齢者施設では、多数の利用者に対して、毎日三食の多種多様な食事を提供することが求められる。
【0008】
ここで、二次元コード等の識別符号を各トレー及び食器に施す従来手法では、多種多様な食事提供に合わせて、異なる識別符号が施された多種のトレー及び食器を予め用意する必要があり、システムの構築コスト及び管理コストが非常に高い。少数の献立に対しても、対応する識別符号を施したトレー及び食器を用意する必要がある。
【0009】
そこで、本開示の一側面によれば、ロボットアームを用いた献立調製システムであって、献立調製に対する適応力の高いシステムを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面によれば、献立調製システムが提供される。献立調製システムは、読取部と、制御部とを備える。読取部は、トレーと共に供給される食札に担持された献立情報を読み取るように構成される。食札は、トレーとは独立した部材で構成される。献立情報は、トレーに調製すべき献立を指定する情報である。
【0011】
制御部は、読取部により読み取られた献立情報に基づき、ロボットアームを制御するように構成される。制御部は、献立情報に基づきロボットアームを制御して、ロボットアームに、献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレーにセットさせるように構成される。
【0012】
このシステムによれば、献立を指定する食札がトレーとは別体であるため、献立毎に、対応する二次元コード等の識別符号を施したトレーを用意する必要がない。この他、例えば朝食で利用されたトレーが回収され、昼食や夕食で再利用される場合であって、トレーに前回とは異なる献立を調製する必要があるとき、トレーと共に供給する食札を変更すれば、変更した食札に対応する献立を容易にトレーに調製することが可能である。
【0013】
従って、本開示の一側面によれば、トレー及び食器を変更せず低コストで構築できるとともに、多種の献立調製に対する適応力の高いシステムを提供することができる。
【0014】
本開示の一側面によれば、読取部は、カメラを用いて食札に担持される献立情報を光学的に読み取るように構成されてもよい。カメラを用いれば、食札の向きや配置に関する制約をあまり受けずに、食札に担持される献立情報を食札から離れた位置から読み取ることができる。
【0015】
本開示の一側面によれば、食札は、食札を見る人が献立を識別可能な文字情報として献立情報を担持する構成にされてもよい。
【0016】
人が献立を識別可能な文字情報を食札が担持する場合には、献立情報を目視により確認することができるため、人による作業を容易に行うことができる。即ち、配膳までに人による作業が介在する際の人による作業性を、仮に食札が献立情報を二次元コードのみで担持する場合よりも向上させることができる。
【0017】
仮に献立情報が二次元コードのみで食札に担持される場合には、人による作業を組み込むことが困難であり、例え作業を行うにしても、作業者は、献立を把握すべきとき、二次元コードをリーダで読み取るなどの作業をする必要がある。ロボットアームを用いた献立調製が、トラブルや他の理由で一時的又は部分的に行うことができない場合には、人がロボットアームに代わって食器をトレーに手作業でセットする場面があり得る。献立調製されたトレーを利用者に運搬する際に、運搬者が献立を確認する場面が生じ得る。文字情報を担持する食札は、こうした場面での人による作業性を向上させることができる。すなわち、食札に文字情報を担持することで、ロボットアームだけでなく、人による作業も作業工程に容易に組み込むことができ、人と協働したシステムを構築することができる。
【0018】
本開示の一側面によれば、食札は、文字情報が印刷されたシートであってもよい。こうしたシートを食札として利用すれば、異なる献立を指定する多種の食札を比較的簡単に準備することができる。
【0019】
本開示の一側面によれば、制御部は、献立情報に基づき、盛り付けられた料理の異なる複数種類の食器の中から、トレーにセットすべき1種類以上の食器である対象食器を判別してもよい。制御部は、対象食器がトレーにセットされるように、ロボットアームを制御してもよい。
【0020】
本開示の一側面によれば、制御部は、献立情報が主食及び1以上の副食を含む複数の種目を備える献立を指定する環境で、種目毎に、対応する種目に属する料理が盛り付けられた食器であって、献立に対応するトレーにセットすべき1種類以上の食器である対象種目食器を判別してもよい。上述の対象食器は、種目毎の対象種目食器を含み得る。制御部は、種目毎に、対応する種目の対象種目食器がトレーにセットされるように、ロボットアームを制御し得る。
【0021】
本開示の一側面によれば、トレーは、複数の領域を有してもよい。献立情報は、領域毎にセットすべき料理を指定し得る。制御部は、献立情報に基づき、領域毎にセットすべき1種類以上の食器である対象領域食器を判別してもよい。上述の対象食器は、領域毎の対象領域食器を含み得る。制御部は、領域毎に、対応する領域に関して判別された対象領域食器がセットされるように、ロボットアームを制御し得る。
【0022】
本開示の一側面によれば、制御部は、対象食器の外観を、カメラを用いて光学的に判別し、ロボットアームが、複数種類の食器の中から、対象食器を取り出すように、ロボットアームを制御してもよい。この場合には、食器を個別に識別するための二次元コードなどを食器に施す必要はなく、食器を光学的に識別できるので、本システムをより低コストで構築することができる。
【0023】
また、こうした制御手法によれば、複数種類の食器群を、種類毎に区分けして規則正しく種類毎に並べるようにロボットアームの作業エリアに配置しなくても、食器群の中から、適切に対象食器を取り出すようにロボットアームを制御することができる。
【0024】
本開示の一側面によれば、複数種類の食器は、種類毎に、個別の場所に用意されてもよい。個別の場所としての、複数の場所のそれぞれには、用意された食器の種類を識別可能な識別情報が付されていてもよい。
【0025】
制御部は、識別情報を光学的に読み取ることに基づいて、対象食器が用意された場所を判別し、ロボットアームが、複数種類の食器の中から、対象食器を取り出すように、ロボットアームを制御してもよい。
【0026】
こうした制御手法によれば、複雑な画像解析なしで高精度に対象食器を取り出すことができ、制御部の処理負荷を抑えることができる。
【0027】
本開示の一側面によれば、個別の場所は、個別の運搬皿であり得る。運搬皿に識別情報が付され得る。こうした手法によれば、食器の種類の判別のために必要な準備が簡単である。
【0028】
本開示の一側面によれば、コンピュータプログラムであって、上述した献立調製システムにおける読取部及び制御部の少なくとも一部としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムが提供されてもよい。
【0029】
本開示の一側面によれば、献立調製方法が提供されてもよい。献立調製方法は、コンピュータにより実行され得る。献立調製方法は、トレーと共に供給されるトレーとは独立した部材で構成される食札に担持された献立情報であってトレーに調製すべき献立を指定する献立情報を、読取装置を用いて読み取ることを含み得る。
【0030】
献立調製方法は、読み取った献立情報に基づき、ロボットアームに、献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレーにセットさせるように、ロボットアームを制御することを含み得る。
【0031】
本開示の一側面によれば、制御することは、献立情報に基づき、盛り付けられた料理の異なる複数種類の食器の中から、トレーにセットすべき1種類以上の食器である対象食器を判別することと、対象食器がトレーにセットされるように、ロボットアームを制御することと、を含み得る。
【0032】
本開示の一側面によれば、別の献立調製方法が提供されてもよい。別の献立調製方法は、トレーとは独立した部材として、トレーに調製すべき献立を指定する献立情報を担持する食札を用意することを含み得る。
【0033】
この方法は更に、食札をトレーと共に、作業エリアに供給することを含み得る。この方法は更に、コンピュータが、トレーと共に作業エリアに供給される食札に担持された献立情報を、作業エリアに設置された読取装置を用いて読み取ることを含み得る。この方法は更に、コンピュータが、読み取った献立情報に基づき、作業エリアに設置されたロボットアームに、献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレーにセットさせるように、ロボットアームを制御することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図3】献立調製システムの電気的構成を表すブロック図である。
【
図4】システム稼働前後の手続きに関する説明図である。
【
図5】
図5Aは献立管理データベースの構成を表す図であり、
図5Bは献立選択リストの構成を表す図である。
【
図7】管理システムのプロセッサが実行する主制御処理を表すフローチャートである。
【
図8】供給システムのコントローラが実行する供給制御処理を表すフローチャートである。
【
図10】載置台における食器の配置に関する説明図である。
【
図11】
図11Aは、位置判別処理の第一例を表すフローチャートであり、
図11Bは、位置判別処理の第二例を表すフローチャートである。
【
図12】トレーにおける食器の配置に関する説明図である。
【
図13】ロボットアーム先端に設けられたハンドの拡大斜視図である。
【
図14】ハンドによる食器の挟持態様を説明する図である。
【
図15】献立調製システムの第一変形例の構成を表す図である。
【
図16】献立調製システムの第二変形例の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の献立調製システム1は、ベルトコンベヤ3を通じて供給されるトレー5に、食札7が指定する献立を調製するように構成される。食札7は、トレー5とは独立した部材で構成される。食札7は、トレー5に載置される。献立調製システム1は、ベルトコンベヤ3に加えて、複数の供給システム10と、管理システム50と、報知装置70と、を備える。
【0036】
献立は、多くの場合、主食と一以上の副食とを含む二以上の種目から構成される。以下では、これらの種目のことを献立種目と表現する。主食の例には、米飯、パン、及び麺類が含まれる。副食の例には、主菜、副菜、及び汁物が含まれる。主菜及び副菜の例には、温かい総菜である温菜、及び、冷たい総菜である冷菜が含まれる。
【0037】
主食は、一つの献立種目であり、副食に該当する主菜、副菜、及び、汁物のそれぞれもまた、一つの献立種目である。献立が、主菜及び副菜として、温菜及び/又は冷菜の二以上の総菜を含む場合、各総菜もまた、一つの献立種目である。献立には、果物やヨーグルトを例に含むデザートも含まれ得る。デザートもまた、一つの献立種目である。
【0038】
ベルトコンベヤ3には、主食、主菜、副菜、及び汁物等の献立種目の最大数に応じた数の供給システム10が併設される。供給システム10は、献立を構成する献立種目毎に設けられる。
【0039】
各供給システム10は、担当する献立種目に属する料理が盛り付けられた食器であって、食札7によって指定された献立に対応する料理が盛り付けられた食器を、供給対象食器として載置台9から取り出し、ベルトコンベヤ3の上流から供給されるトレー5にセットするように構成される。
【0040】
具体的には、各供給システム10は、担当する献立種目に属する料理が盛り付けられた複数種類の食器であって、同じ献立種目の異なる料理が盛り付けられた複数種類の食器の中から供給対象食器を判別し、供給対象食器をトレー5にセットするように構成される。
【0041】
図2に示すように各供給システム10は、載置台9に載置された食器D1,D2を挟持可能なハンド21を先端に有するロボットアーム20を備える。載置台9に載置された食器D1,D2を含む食器群の中から、供給対象食器に該当する一つの食器が、ロボットアーム20により載置台9から取り出され、ベルトコンベヤ3上のトレー5にセットされる。本実施形態において使用される食器は、限定されないが、基本的にすべて蓋付き食器である。
【0042】
供給システム10は、
図3に示すように、コントローラ11と、通信インタフェース13と、食器用カメラ15とをロボットアーム20に加えて備える。コントローラ11は、管理システム50からの指令に従って、ロボットアーム20を制御し、食器用カメラ15を用いて判別した載置台9上の供給対象食器をトレー5にセットするように構成される。
【0043】
コントローラ11は、プロセッサ11Aと、メモリ11Bと、ストレージ11Cと、を備える。プロセッサ11Aは、ストレージ11Cに記憶されたコンピュータプログラムに従う処理を実行して、ロボットアーム20を制御する。メモリ11Bは、プロセッサ11Aによる処理実行時に作業用メモリとして使用される。
【0044】
通信インタフェース13は、管理システム50と通信可能に構成される。供給システム10は、通信インタフェース13を通じて、有線又は無線により管理システム50と通信可能に接続される。
【0045】
食器用カメラ15は、載置台9に載置された食器群を撮影可能な位置に配置される。食器用カメラ15は、コントローラ11に有線又は無線接続され、載置台9の撮影画像を含む映像データを、コントローラ11に提供する。
【0046】
管理システム50は、プロセッサ51と、メモリ52と、ストレージ53と、通信インタフェース55と、ユーザインタフェース57と、食札用カメラ59とを備える。管理システム50は、食札用カメラ59を通じて撮影された食札7に担持された献立情報を読み取り、読み取った献立情報に基づき、食札7が載置されたトレー5に、食札7にて指定された献立が調製されるように、各供給システム10に対して指令入力する。
【0047】
報知装置70は、手作業が必要なトレー5が到達することを作業者に報知するために設けられる。ロボットアーム20による献立調製を補助できるように、ベルトコンベヤ3に隣接して、作業者の作業スペースURが確保されており、報知装置70は、この作業スペースURに隣接して設置される。
【0048】
報知装置70は、管理システム50により制御される。報知装置70は、例えばスピーカを備えることでき、スピーカからの音声出力により、トレー5に対する食器のセットを作業者に指示することができる。報知装置70は、例えばディスプレイを備えることができ、音声と共に又は音声に代えて、ディスプレイからの表示出力により、作業者に対する指示を実現するように構成され得る。
【0049】
作業者は、報知装置70からの指示に基づいて、食札7により指定された献立に対応する食器をトレー5にセットすることができる。作業者の手作業が介在した献立調製は、例えば、非常に少ない特別食を準備するために、あるいは、ロボットアーム20で取り扱うことのできない食器をトレー5にセットするために、行われ得る。このとき献立情報が文字情報であるため、作業者は、目視による献立確認を必要に応じてすることができ、必要な作業をより正確に実行することができる。
【0050】
管理システム50は、報知装置70の他に、受注システム80及びプリンタ90と通信インタフェース55を介して接続されており、受注システム80からの受注データを管理し、更には、提供すべき食事毎の食札7を、プリンタ90を通じて印刷出力するように構成される。
【0051】
プリンタ90は、シートに対する印刷処理によりシートに献立情報が印刷された食札7を生成するように構成される。シートは、例えば紙である。シートは、例えば裏面に糊を有したシールであってもよい。
【0052】
図4に示すように、献立調製システム1を用いた献立調製に際しては、まず受注(S1)に応じて、管理システム50の献立管理データベースに、用意すべき食事毎の献立管理データが登録される(S2)。献立管理データベースの例は、
図5Aに簡易的に示される。
【0053】
献立管理データベースは、献立管理データの一群から構成され、管理システム50のストレージ53に記憶される。一つの献立管理データは、一つのトレー5に対して調製すべき献立を記述するデータである。献立管理データは、用意すべき食事の数、換言すれば献立を調製すべきトレーの数だけ登録される。
【0054】
献立管理データは、食事の提供施設名と、配膳先に対応する利用者の氏名と、利用者の管理番号と、食事の提供日時と、献立名と、献立内訳と、を記述する。献立内訳は、献立を構成する献立種目毎の料理名を記述する。具体的には、主食としてのごはんと、副食としての汁物、主菜、及び、副菜(具体的には冷菜)と、デザートのそれぞれについて、対応する料理名を記述する。
【0055】
食事の提供日時は、食事の提供年月日と提供時間帯との組合せで定義される。提供時間帯は、朝、昼、及び夜の中から選択される。各利用者の献立は、献立選択リストから献立種目毎に一つの料理を選択して作成される。献立選択リストは、献立種目毎に選択可能な料理の一群を記述する。献立選択リストは、食事の提供日時毎に用意される。
【0056】
献立選択リストは、例えば
図5Bに示すように、献立種目「ごはん」に関して、中盛ごはん、小盛ごはん、大盛ごはん、全粥、及び五分粥を、選択可能な「ごはん」料理の一群として記述する。
【0057】
献立選択リストは、更に、各「ごはん」料理に対して、その料理が盛り付けられる食器の種類を記述する。
図5Bによれば、中盛ごはんが盛り付けられる食器の種類は「飯椀A」であり、小盛ごはんが盛り付けられる食器の種類は「飯椀B」である。
【0058】
献立選択リストは、献立種目「汁物」に関して、例えば通常汁、減塩汁、なめこ汁、及び野菜スープを、選択可能な「汁物」料理の一群として記述すると共に、各「汁物」料理に対して、その料理が盛り付けられる食器の種類を記述する。
図5Bによれば、通常汁が盛り付けられる食器の種類は「汁椀A」であり、減塩汁が盛り付けられる食器の種類は「汁椀B」である。
【0059】
献立選択リストは、献立種目「主菜」に関して、例えばハンバーク、鮭塩焼き、キノコ菜、及び鯖煮付けを、選択可能な「主菜」料理の一群として記述すると共に、各「主菜」料理に対して、その料理が盛り付けられる食器の種類を記述する。
図5Bによれば、ハンバーグが盛り付けられる食器の種類は「主菜皿A」であり、鮭塩焼きが盛り付けられる食器の種類は「主菜皿B」である。
【0060】
ある提供日時の食事を用意するために、献立調製システム1を稼働させる場合、対応する提供日時の献立選択リストにリストアップされた料理が盛り付けられた食器の一群が用意される(S3)。用意された食器の一群が、調理室から献立調製システム1が設置された部屋に運搬され、各供給システム10の載置台9に、対応する献立種目の食器群が配置される(S4)。
【0061】
ある提供日時の食事を用意するために、献立管理データベースに登録された食事の提供日時が合致する献立管理データの一群を用いて、食札7の一群が用意される(S6)。一つの献立管理データに対して、一つの食札7が用意される。
【0062】
管理システム50のプロセッサ51は、ユーザインタフェース57を介して入力されるユーザからの指令に従って、指定された提供日時の献立管理データの一群を、献立管理データベースから抽出し、献立管理データ毎に、献立管理データが示す内容を献立情報として記述した食札7をプリンタ90に印刷出力させるように、プリンタ90を制御する。これにより、食札7の一群が用意される。
【0063】
図6には、食札7の例が示される。
図6から理解できるように、食札7は、食札7を見る人が献立を識別可能な文字情報として献立情報を担持する。食札7に担持される献立情報は、トレー5に調製すべき献立を指定する。具体的に、献立情報は、配膳先の利用者の氏名、管理番号、食事の提供日時、献立名、献立内訳(献立種目)、及び、食事の提供施設を表す文字情報を含む。
【0064】
食札7の一群が用意された後(S6)、更には料理が盛り付けられた食器群が各供給システム10の載置台9にセットされた後(S4)、献立調製システム1は稼働される(S8)。稼働開始後、各供給システム10の作業エリアでもあるベルトコンベヤ3には、トレー5が順次載置される(S9)。各トレー5には、ベルトコンベヤ3への載置の際に、あるいは事前に、一つの食札7がセットされる。食札7は、トレー5内の所定位置に載置される。利用者へトレー5を配膳する際の食札の目視を容易にするために、食札は、その文字情報がトレー5の外側へ向くように、すなわち文字がトレー5をもつ人に正しい向きで表示されるように載置される。
【0065】
献立調製システム1の機能により、各トレー5には、ベルトコンベヤ3で搬送される過程で、食札7を通じて指定された献立に対応する献立種目毎の食器がセットされ、これにより、各トレー5には、食札7にて指定された献立が調製される。
【0066】
管理システム50のプロセッサ51は、献立調製システム1の稼働に合わせて、ユーザから入力される実行指令に基づき、
図7に示す主制御処理を繰返し実行する。主制御処理において、プロセッサ51は、食札用カメラ59からの映像データに基づき、ベルトコンベヤ3によって上流から食札用カメラ59の撮影領域に移動してきたトレー5を検知し(S110)、映像データに写るトレー5内の食札7を識別する(S120)。
【0067】
食札用カメラ59は、
図1に示すように、ベルトコンベヤ3に併設される複数の供給システム10のうち、ベルトコンベヤ3の最上流に位置する供給システム10よりも上流に配置される。食札用カメラ59は、ベルトコンベヤ3によって搬送されるトレー5を、ベルトコンベヤ3の上から撮影可能に配置される。
【0068】
食札7の識別は、映像データの解析によって行われる。プロセッサ51は、例えば食札7の形状及び色、更には食札7が担持する文字情報に基づき、映像データに写る食札7を識別することができる。プロセッサ51は、食札用カメラ59を通じて、食札7の献立情報や、その他の多様な情報を取得することができる。例えば、食札用カメラ59は、トレー5のサイズや位置、向きを識別したり、トレー5内の食札7の位置や向きを識別したり、これら情報から後述する食器をセットする領域を識別したりするために使用される。プロセッサ51は、さらにトレー5の位置を認識した時点を、各供給システム10までの移動時間または移動距離を算出する起点として利用することができる。
【0069】
プロセッサ51は、映像データから抽出した食札7の画像データを、テキストデータに変換することにより、食札7が担持する献立情報を、文字情報として読み取る。このようにして食札7は、食札用カメラ59を用いて光学的に読み取られる。ここでは、食札7が担持する利用者の氏名が文字情報として読み取られてもよいし、食札7が担持する管理番号が文字情報として読み取られてもよい。
【0070】
その後、プロセッサ51は、ストレージ53が記憶する献立管理データベースの中から、読み取った文字情報の内容に一致する献立管理データを探索する。プロセッサ51は、当該一致する献立管理データ及び献立選択リストに基づき、食札7が置かれたトレー5に調製すべき献立に対応する料理が盛り付けられた食器の種類を判別する。具体的には、プロセッサ51は、献立種目毎に、トレー5に置くべき食器の種類である対象種目食器を判別する(S130)。
【0071】
別例として、プロセッサ51は、献立管理データを参照せずに、食札7に担持された文字情報に基づいて、トレー5に調製すべき献立を識別し、献立選択リストを参照して、調製すべき献立に対応する料理が盛り付けられた食器の種類を判別することができる(S130)。
【0072】
その後、プロセッサ51は、献立種目毎に、対応する献立種目の食器の供給を担当する各供給システム10に対して、ピッキング食器情報を送信する(S140)。ピッキング食器情報は、トレー5にセットすべき食器の種類、すなわち対象種目食器を説明する情報である。ピッキング食器情報には、対象種目食器をセットすべきトレー5の識別番号、トレー5が食札用カメラ59の位置から当該供給システム10に到達するまでの移動距離又は移動時間の情報を含ませることができる。
【0073】
プロセッサ51は、献立調製システム1の稼働開始後から、S110でトレー5を検知する度に、トレー5に対して識別番号、例えば通し番号を発行することができる。
【0074】
プロセッサ51は、食札用カメラ59より下流では献立調製が完了するまでトレー5がベルトコンベヤ3の動きに連動して移動することを前提に、各供給システム10に対して、各供給システム10の前方エリアに到達するトレー5の識別番号を、トレー搬送情報として定期的に送信することができる。供給システム10の前方エリアに位置するトレー5は、食札用カメラ59の撮影領域からの移動距離又は移動時間から算出され、ロボットアーム20により食器をセットする対象のトレー5として認識される。
【0075】
各供給システム10のコントローラ11は、献立調製システム1の稼働に伴い、管理システム50から入力される実行指令に基づき、
図8に示す供給制御処理を繰返し実行する。
【0076】
供給制御処理を開始すると、コントローラ11は、供給システム10の前方エリアに新たなトレー5が供給されるまで待機する(S210)。コントローラ11は、管理システム50からのトレー搬送情報に基づいて、供給システム10の前方エリアに新たなトレー5が供給されたかを判断することができる。
【0077】
新たなトレー5が供給されたと判断すると、コントローラ11は、供給されたトレー5に対してセットすべき食器の種類を、管理システム50から提供された当該トレー5に関するピッキング食器情報に基づき判別する(S220)。
【0078】
コントローラ11は、本供給制御処理とは別に、管理システム50から送信されてきたピッキング食器情報をメモリ11Bに一時記憶する処理を実行することができる。コントローラ11は、トレー搬送情報から前方エリアに供給されたトレー5の識別番号を判別し、トレー5の識別番号と一致する識別番号を記すピッキング食器情報が対象種目食器として記す食器の種類を、トレー5に対してセットすべき供給対象食器として判別することができる(S220)。
【0079】
その後、コントローラ11は、食器用カメラ15による載置台9を撮影した映像データに基づき、供給対象食器の載置台9上の位置を判別する(S230)。
【0080】
この判別のために、供給システム10のストレージ11Cには、予め
図9に示す食器データベースが格納される。食器データベースは、供給システム10が担当する献立種目で使用される複数種類の食器について、種類毎に、対応する種類の食器の特徴を説明する詳細データを記憶する。
【0081】
詳細データは、例えば、対応する種類の食器の識別コードを記述するデータである。この例によれば、各供給システム10の載置台9には、
図10に示すように、食器の種類別に、対応する種類の食器の識別コードがラベリングされたシートパン91が載置される。シートパン91は、食器の運搬皿である。
【0082】
一つのシートパン91に載置される食器群は、同一の料理が盛り付けられた同一種類の食器の一群である。同一の料理が盛り付けられた同一種類の食器の一群は、対応する識別コードがラベリングされたシートパン91に載置された状態で、調理室から搬送されて載置台9に置かれる。
【0083】
ラベリングは例えば、識別ラベル93として識別コードが印刷されたシートがシートパン91に置かれることで、あるいは、識別ラベル93として識別コードが印刷されたシールがシートパン91に貼りつけられることで、実現され得る。
【0084】
この例によれば、コントローラ11は、載置台9の映像データに基づき、各シートパン91の識別コードを読み取ることで、各シートパン91に載置された食器の種類を判別することができ、供給対象食器の載置台9上の位置を判別することができる。
【0085】
具体的に、コントローラ11は、S230において
図11Aに示す位置判別処理を実行することができる。
図11Aに示す位置判別処理を開始すると、コントローラ11は、食器データベースを参照し、供給対象食器の識別コードを判別する(S231)。その後、コントローラ11は、食器用カメラ15からの映像データに対する映像解析により、光学的に、供給対象食器の識別コードが記された識別ラベル93を含むシートパン91である対象シートパンを判別する(S232)。
【0086】
コントローラ11は、対象シートパンに載置された一つの食器の載置台9上の位置を、供給対象食器の位置であると判別する(S233)。このようにコントローラ11は、S230の処理を実行することができる。
【0087】
別例によれば、食器データベースにおける食器の種類毎の詳細データは、識別コードに代えて、又は加えて、対応する種類の食器の外観の特徴を説明する特徴データを有し得る。特徴データは、対応する種類の食器のサイズ、形状、色、及び模様の少なくとも一つの特徴を説明したデータであり得る。特徴データは、食器の外観を撮影した画像データであってもよい。
【0088】
この場合、コントローラ11は、S230において
図11Bに示す位置判別処理を実行することができる。
図11Bに示す位置判別処理を開始すると、コントローラ11は、食器データベースを参照し、供給対象食器の特徴データを読み出す(S235)。その後、コントローラ11は、特徴データが示す特徴と外観の特徴が一致する食器を、食器用カメラ15から入力される映像データに基づき、載置台9の映像の中で探索する(S236)。このようにしてコントローラ11は、食器の外観を、食器用カメラ15を用いて光学的に判別する。
【0089】
コントローラ11は、載置台9の映像内で、探索により見つかった特徴データが示す特徴と外観の特徴が一致する食器を、供給対象食器と判別して、載置台9における供給対象食器の位置を判別する(S237)。このようにコントローラ11は、S230の処理を実行することができる。
【0090】
コントローラ11は、S230での処理を終了すると、供給対象食器の位置判別に成功したかを判断する(S240)。位置判別に失敗した場合(S240でNo)、コントローラ11は、供給対象食器が、手作業によってトレー5に供給されるべき食器であることを知らせるメッセージを、管理システム50に送信し(S245)、対応するトレー5についての供給制御処理を終了する。
【0091】
一方、コントローラ11は、供給対象食器の位置判別に成功した場合(S240でYes)、ロボットアーム20に、上記判別した位置に存在する供給対象食器を載置台9から取り出させるように、ロボットアーム20を制御する(S250)。更に、取り出された供給対象食器を、供給システム10の前方エリアにあるトレー5の所定領域にセットするように、ロボットアーム20を制御する(S260)。
【0092】
供給対象食器をセットすべきトレー5内の位置は、献立種目毎に予め決められている。一例によれば、トレー5には、飯椀D11、汁椀D12、主菜皿D13、冷菜皿D14、及びデザート小皿D15をセットすべき領域R11,R12,R13,R21,R22が
図12に示すように定められる。
【0093】
トレー5は、例えば、温かい料理を載置するための第一の区画R1と、冷たい料理を載置するための第二の区画R2を有する。第一の区画R1に、飯椀D11、汁椀D12、及び主菜皿D13をセットすべき領域R11,R12,R13が定められ、第二の区画R2に、冷菜皿D14及びデザート小皿D15を設置すべき領域R21,R22が定められ得る。
【0094】
S250において、コントローラ11は、トレー5内の、自己が担当する献立種目の食器に対応する領域に、供給対象食器がセットされるようにロボットアーム20を制御する。ベルトコンベヤ3によって順に搬送されるトレー5のロボットアーム20に対する相対位置は、トレー5に対して供給対象食器をセットするためのロボットアーム20の制御が行われるときには同じである。
【0095】
従って、コントローラ11は、ロボットアーム20にて挟持した供給対象食器を、ベルトコンベヤ3上の所定領域にセットするように、ロボットアーム20を制御することにより、トレー5の所定領域に適切に供給対象食器をセットすることができる。
【0096】
別例として、供給システム10は、供給対象食器をセットすべき対象のトレー5を、ベルトコンベヤ3の上方から撮影するトレー撮影用カメラを備えていてもよい。この場合、コントローラ11は、S260において、トレー撮影用カメラからの映像データに基づき、供給対象食器をセットすべきトレー5の位置を正確に認識して、ロボットアーム20を制御することができる。
【0097】
トレー撮影用カメラが各供給システム10に設けられる場合、コントローラ11は、管理システム50からのトレー搬送情報なしに、新たなトレー5が供給されたこと、及び、トレー5の識別番号(通し番号)を判別可能である。
【0098】
このようにコントローラ11は、トレー毎に、S220-S260の処理を実行して、トレー5内の食札7で指定された献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレー5にセットすることができる。
【0099】
すなわち、本実施形態の献立調製システム1では、各供給システム10が、ベルトコンベヤ3によるトレー5の搬送動作に併せて、ロボットアーム20を制御して、トレー5に、担当する献立種目の料理が盛り付けられた食器であって、食札7で指定された献立に対応する料理が盛り付けられた食器をセットすることで、トレー5に食札7で指定された献立が調製される。各供給システム10では、1種類以上の食器がトレー5に載置され得る。
【0100】
この他、管理システム50のプロセッサ51は、供給システム10から受信した上述のメッセージに基づき、ロボットアーム20の制御では、食札7に対応する献立調製が完了しないトレー5を判別し、該当するトレー5に関して、作業者による手作業を通じて献立調製が完了するように、報知装置70を制御する処理を実行する。
【0101】
すなわち、プロセッサ51は、献立調製に作業者が必要なトレー5に関しては、トレー5が作業者の作業スペースURの前まで、ベルトコンベヤ3により搬送されると、献立調製のためにトレー5に不足する食器をセットするように、報知装置70を通じて、音声により作業者に指令する。
【0102】
作業者は、報知装置70からの音声に基づき、更には、食札7の文字情報から認識される献立に基づき、トレー5に載置すべき食器を認識して、トレー5に対応する食器をセットすることができる。これにより、必要に応じて作業者の支援を受けながら、献立調製システム1は、各トレー5に対して食札7で指定された献立を調製することができる。
【0103】
この他、ロボットアーム20の先端に設けられたハンド21の具体的構成を、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13及び
図14に示されるハンド21は、特に、食器として飯椀及び汁椀の取り扱いに適したハンド21である。椀物を取り扱わないロボットアーム20には別の形状のハンド21が取り付けられてもよい。
【0104】
図から理解できるように、ハンド21は、挟持部210と、押当部230と、を備える。挟持部210は、左右の指構成部211,212を備える。挟持部210は、左右の指構成部211,212の間の距離を変更可能であるように、指構成部211,212を横方向に変位可能に支持する。
【0105】
各指構成部211,212は、他方の指構成部212,211と対向する面に、横方向に延びた二本の指部215を備える。指部215は、ハンド21により食器が挟持される際に、食器の湾曲した側面下部であって、法線が斜め下を向く側面下部と接触する。
【0106】
挟持部210は、食器を挟持する際、左右の指構成部211,212で食器を挟んで食器を横方向から押圧する。このとき、食器の側面下部は、指部215の先端で強く押し当てられる。この押し当てによって、食器は、下に落ちないように指部215に支持される。
【0107】
押当部230は、左右の指構成部211,212に挟まれた空間の上方に設けられ、挟持部210により挟持された食器の上面と接触し、食器の上面を押圧する。蓋付き食器の場合は、蓋の上面を押圧する。押当部230は、具体的に、ロボットアーム20の基部に接続される付勢機構231と、付勢機構231に接続された下部構成体233と、を備える。
【0108】
挟持部210により食器が挟持される際、下部構成体233の下面は、食器の上面と接触して食器の上面を押圧する。挟持部210に挟持される食器の上面が下部構成体233を上に押し上げようとする力を受けて、付勢機構231は、食器を下に押圧する。
【0109】
付勢機構231は、挟持部210に挟持される食器の上面が下部構成体233を上に押し上げようとするときに生じる弾性変形により、食器を上から下に押圧する弾性力を生成し、下部構成体233と指構成部211,212との間で食器を上下に挟持するように構成される。
【0110】
このように構成されるハンド21によれば、蓋付き食器が有する蓋を押さえつつ当該食器を左右及び上下に挟持することができ、食器内の料理が零れて食器が汚れるのを抑えながら食器をトレー5まで運ぶことができる。従って、このハンド21は、ロボットアーム20を用いた蓋付き食器のトレー5への搬送に、非常に優れている。
【0111】
以上に説明した本実施形態の献立調製システム1は、トレー5と共に供給される食札7に担持された献立情報を、食札用カメラ59を用いて光学的に読み取るように構成される。食札7は、トレー5とは独立した部材で構成される。
【0112】
献立調製システム1は、読み取られた献立情報に基づき、献立種目毎のロボットアーム20を制御するように構成される。献立調製システム1は、ロボットアーム20を制御して、ロボットアーム20に、献立に対応する料理が盛り付けられた食器をトレー5にセットさせるように構成される。
【0113】
献立を指定する食札7がトレー5とは別体である場合には、献立毎に、従来のような二次元コードを施したトレーを用意する必要がない。トレー5と共に供給する食札7を変更したとき、変更した食札7に対応する献立がトレー5に調製される。従って、本実施形態によれば、トレー及び食器を変更せず本システムを低コストで構築できるとともに、多種の献立調製に対する適応力の高い献立調製システム1を提供することができる。
【0114】
更に言えば、本実施形態の食札7は、食札7を見る人が献立を識別可能な文字情報として献立情報を担持する。人が献立を識別可能な文字情報を食札7が担持する場合には、配膳までに人による作業が介在する際の人による作業性を、仮に食札7が献立情報を二次元コードのみで担持する場合よりも向上させることができる。
【0115】
仮に献立情報が二次元コードのみで食札7に担持される場合には、作業者は、献立を把握すべきとき、二次元コードをリーダで読み取る必要がある。トラブルや特別食の調製のために、人が目視で献立を確認し、ロボットアーム20に代わって食器をトレー5に手作業でセットする場面がある。献立調製されたトレー5を利用者に運搬する際に、運搬者が献立を確認する場面がある。文字情報を担持する食札7は、こうした場面での人による作業性を向上させることができる。
【0116】
本実施形態では、食札7が印刷シートで構成されることも有意義である。こうした印刷シートを食札7として利用すれば、異なる献立を指定する多種の食札7を簡単に準備することができる。
【0117】
本実施形態の献立調製システム1は、一例として
図11Bに示すように、供給対象食器の外観を、食器用カメラ15を用いて光学的に判別し、ロボットアーム20が、複数種類の食器の中から、供給対象食器を取り出すように、ロボットアーム20を制御する。
【0118】
こうした制御手法によれば、複数種類の食器群を、シートパン91を用いて種類毎に区分けなくても、食器群の中から、適切に供給対象食器を取り出すようにロボットアーム20を制御することができる。
【0119】
本実施形態の献立調製システム1は、一例として
図11Aに示すように、複数種類の食器が、種類毎に、個別のシートパン91に用意される。シートパン91のそれぞれには、用意された食器の種類を識別可能な識別コードが記述された識別ラベル93が付される。
【0120】
献立調製システム1は、識別コードを光学的に読み取ることに基づいて、供給対象食器が用意されたシートパン91を判別し、ロボットアーム20が、複数種類の食器の中から、供給対象食器を取り出すように、ロボットアーム20を制御する。
【0121】
こうした制御手法によれば、複雑な映像解析なしで高精度に食器の種類を判別することができ、コントローラ11の処理負荷を抑えることができる。特に本実施形態では、運搬皿であるシートパン91に識別ラベル93を設けるため、食器の種類の判別及び供給対象食器のピッキングのために必要な準備が簡単である。
【0122】
本実施形態では、料理を盛り付ける食器として蓋付き食器を使用する。蓋付き食器によれば、盛り付けられた料理の衛生面に役立つだけでなく、トレー5への献立調製の過程における異物混入を防止することができる。
【0123】
更に、本実施形態では、ロボットアーム20の先端に設けられるハンド21が、蓋付き食器が有する蓋を押さえつつ、蓋付き食器を挟持して持ち運び可能に構成される。従って、トレー5に食器を設置する際の揺れによって、食器の内容物が外に漏れ出たりするのを抑制することもできる。
【0124】
本開示が、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができることは言うまでもない。
図15に示す献立調製システム1Aは、上述した献立調製システム1の第一変形例である。
【0125】
この献立調製システム1Aは、供給システム10A毎に、供給システム10Aの上流側で隣接配置されるカメラC1であって、ベルトコンベヤ3上のトレー5を撮影するカメラC1を備える。
【0126】
第一変形例の供給システム10Aは、上述した実施形態の供給システム10に対応する。各供給システム10Aは、自己に接続されたカメラC1を用いて、トレー5に置かれた食札7を読み取り、更には、トレー5の外縁を映像解析により識別し、ベルトコンベヤ3におけるトレー5の向きを判別することができる。
【0127】
供給システム10Aは更に、担当する献立種目の食器であって、食札7にて指定される献立に対応する料理が盛り付けられた食器を、トレー5にセットするように、ロボットアーム20を制御することができる。
【0128】
すなわち、管理システム50が有する機能の少なくとも一部は、供給システム10Aに搭載されてもよい。複数の供給システム10Aは、互いに協働しながら、トレー5に対して献立に対応する食器の一群をセットすることができる。特に、供給システム10毎にトレー5を撮影するためのカメラC1を設けることによれば、食器をトレー5にセットする直前で食札情報やトレー5の位置及び向きを確認できるため、トレー5の向きによらず、適切に食器をトレー5内に配置することができる。
【0129】
第一変形例の献立調製システム1Aは、管理システム50を用いずに機能するように構成されてもよい。つまり、各供給システム10Aのコントローラ11は、自己が担当する献立選択リスト及び食器データベースを備えることができる。コントローラ11は、トレー5が到達すると、自己に接続されたカメラC1で食札7の献立情報を光学的に読み取り、読み取られた献立種目の情報から該当する食器の種類を判定し、載置台9の食器をトレー5内に配置するように構成されてもよい。このとき食札7には、献立情報が、文字情報として、又は二次元コードとして、又はこれらの両者で担持され得る。このように各供給システム10Aを構成することで、各供給システム10A内で食札7の読み取りから食器のセットまで完結することができる。この例では、従前のシステムから、ロボットによる献立調整システムへの移行を容易に行うことができる。
【0130】
図16に示す献立調製システム1Bは、上述した献立調製システム1の第二変形例である。この献立調製システム1Bによれば、作業者の作業スペースURは、ベルトコンベヤ3の最下流ではなく、複数の供給システム10Bに挟まれたベルトコンベヤ3の中間地点に設けられる。第二変形例の供給システム10Bは、上述した実施形態の供給システム10に対応する。
【0131】
この場合、作業者の作業スペースURを境界して区切られるベルトコンベヤ3の上流部と下流部とのそれぞれに、食札用カメラ59として機能するカメラC2,C3が設けられ得る。作業者の作業スペースURより下流部に位置する供給システム10Bは、カメラC3により撮影されるトレー5及び食札7に基づいて、トレー5に置かれた食札7を読み取り、更にはトレー5の向きを判別することができる。こうした構成によれば、作業者による作業でトレー5が移動したりトレー5の向きが変化したりしても、適切に、トレー5に対する献立調製を行うことができる。
【0132】
この他、食札7が文字情報に加えて二次元コードを備えることで、システムが効率良く食札の献立情報を読み取る例も考えられる。上記実施形態の献立調製システム1は、ベルトコンベヤ3に沿って配置された複数のロボットアーム20を用いて、トレー5に、複数種類の食器を食札7が指定する献立に応じてセットする。しかしながら、一つの献立を調製するのに要するロボットアームの数は、能力やシステムに合わせて決定され得る。例えば一台のロボットアーム20がトレー5に献立に対応するすべての食器をセットするように、献立調製システム1は構成されてもよい。また、複数の供給システム10及び管理システム50は、一つのシステムに統合されてもよい。
【0133】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0134】
1,1A,1B…献立調製システム、3…ベルトコンベヤ、5…トレー、7…食札、9…載置台、10,10A,10B…供給システム、11…コントローラ、11A…プロセッサ、11B…メモリ、11C…ストレージ、13…通信インタフェース、15…食器用カメラ、20…ロボットアーム、21…ハンド、50…管理システム、51…プロセッサ、52…メモリ、53…ストレージ、55…通信インタフェース、57…ユーザインタフェース、59…食札用カメラ、70…報知装置、90…プリンタ、91…シートパン、93…識別ラベル、210…挟持部、211,212…指構成部、215…指部、230…押当部、231…付勢機構、233…下部構成体、C1,C2,C3…カメラ。