(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063969
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174110
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一義
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB37
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC37
2C056EC77
2C056EC79
2C056FA15
(57)【要約】
【課題】 機械精度誤差を高額な部品等を用いることなく確実に補正し、高度の画像記録精度を実現することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】 被記録媒体が載置されるテーブルと、被記録媒体に対して記録剤を吐出する記録ヘッドと、被記録媒体に画像データに応じた記録を行うためにテーブルと記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、移動手段に対してテーブルと記録ヘッドとを所定の移動量の相対的な移動をさせるよう指令する制御手段と、移動手段による移動における、制御手段により所定の移動量と実際の移動量との誤差に係る情報を取得する取得手段と、取得手段により取得された誤差に係る情報に応じて画像データを補正する補正手段とを有し、補正手段は、画像データを、各々がテーブルの複数の位置の各々に対応する複数のブロックに分割し、複数のブロックの各々を、誤差に係る情報に応じて移動させることにより前記画像データを補正する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された被記録媒体に対して記録剤を吐出する記録ヘッドと、
前記被記録媒体に対して画像データに応じた記録を行うために、前記テーブルと前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段に対して、前記テーブルと前記記録ヘッドとを、所定の移動量に応じた相対的な移動をさせるよう指令するための制御手段と、
前記制御手段により前記移動手段に対して指令された前記所定の移動量と、前記制御手段による指令に応じた前記移動手段による前記テーブルと前記記録ヘッドとの実際の相対的な移動量との誤差に係る情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記誤差に係る情報に応じて前記画像データを補正する第1の補正手段と、
を有し、
前記第1の補正手段は、前記画像データを、各々が前記テーブルの前記複数の位置の各々に対応する複数のブロックに分割し、前記複数のブロックの各々を、対応する前記記録ヘッドの相対的な前記複数の位置各々の誤差に応じて移動させることにより前記画像データを補正することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記テーブルと前記記録ヘッドとを第1の方向へ相対的に移動させるための手段と、前記テーブルと前記記録ヘッドとを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対的に移動させるための手段とを含んでおり、前記誤差に係る情報は、前記第1の方向及び前記第2の方向の前記誤差に係る情報を含むことを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1の補正手段は、前記誤差に係る情報を格納するための格納手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記格納手段は前記記録装置の温度別の前記誤差に係る情報を複数格納し、前記第1の補正手段は、前記格納手段に格納された複数の前記誤差に係る情報から、前記記録装置の温度に応じた前記誤差に係る情報を選択し、選択された前記誤差に係る情報に応じて前記ブロックを移動させることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記格納手段に格納された温度別の前記誤差に係る情報を2個以上用いて、前記格納手段に格納されていない温度に応じた前記誤差に係る情報を、さらに算出することを特徴とする、請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1の補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記第1の補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された第1の規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第1の規定量が1画素であることを特徴とする、請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記被記録媒体の形状にかかわる形状情報を取得する形状情報取得手段と、前記形状情報に応じて前記画像データを補正する第2の補正手段とをさらに有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記被記録媒体は、前記画像データが記録される被記録領域と、前記被記録領域に対し所定の位置関係で前記被記録領域の外周領域に配置された複数のアライメントマークを有し、
前記形状情報取得手段は、前記テーブルに載置された前記被記録媒体上の前記複数のアライメントマークの位置情報に基づいて前記形状情報を取得することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記第2の補正手段は、前記画像データを複数のブロックに分割し、前記複数のブロックを前記形状情報に応じて移動させることにより前記画像データを補正することを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記第1の補正手段において分割される前記ブロックの大きさと、前記第2の補正手段において分割される前記ブロックの大きさが等しく、かつ前記第1の補正手段と第2の補正手段において分割される前記ブロックの境界が互いに異なることを特徴とする、請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記第1の補正手段または前記第2の補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
前記第2の補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された第2の規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記規定量が1画素であることを特徴とする、請求項14に記載の記録装置。
【請求項16】
被記録媒体が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された被記録媒体に対して記録剤を吐出する記録ヘッドと、
前記被記録媒体に対して画像データに応じた記録を行うために、前記テーブルと前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段に対して、前記テーブルと前記記録ヘッドとを、所定の移動量に応じた相対的な移動をさせるよう指令するための制御手段と、
前記制御手段により前記移動手段に対して指令された前記所定の移動量と、前記制御手段による指令に応じた前記移動手段による前記テーブルと前記記録ヘッドとの実際の相対的な移動量との誤差に係る情報を格納する格納手段と、
前記被記録媒体の形状にかかわる形状情報を取得する形状情報取得手段と、
前記画像データを、各々が前記テーブルの前記複数の位置の各々に対応する複数のブロックに分割し、前記複数のブロックの各々を移動させることにより前記画像データを補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段は、前記複数のブロック各々に対して、前記格納手段に格納された前記誤差に係る情報と、前記形状取得手段により取得された前記形状情報とに応じた移動量の移動を実行させることを特徴とする記録装置。
【請求項17】
前記移動手段は、前記テーブルと前記記録ヘッドとを第1の方向へ相対的に移動させるための手段と、前記テーブルと前記記録ヘッドとを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対的に移動させるための手段とを含んでおり、前記情報は、前記第1の方向及び前記第2の方向の誤差に係る情報を含むことを特徴とする、請求項16に記載の記録装置。
【請求項18】
前記格納手段は前記記録装置の温度別の前記誤差に係る情報を複数格納し、前記補正手段は、前記格納手段に格納された複数の前記誤差に係る情報から、前記記録装置の温度に応じた前記誤差に係る情報を選択し、選択された前記誤差に係る情報に応じて前記ブロックを移動させることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の記録装置。
【請求項19】
前記格納手段に格納された温度別の前記誤差に係る情報を2個以上用いて、前記格納手段に格納されていない温度に応じた前記誤差に係る情報を、さらに算出することを特徴とする、請求項18に記載の記録装置。
【請求項20】
前記被記録媒体は、前記画像データが記録される被記録領域と、前記被記録領域に対し所定の位置関係で、前記被記録領域の外周領域に配置された複数のアライメントマークを有し、
前記形状情報取得手段は、前記テーブルに載置された前記被記録媒体上の前記複数のアライメントマークの位置情報に基づいて、前記形状情報を取得することを特徴とする、請求項16から請求項19のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項21】
前記補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする、請求項16から請求項20のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項22】
前記補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする、請求項16から請求項21のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項23】
前記規定量が1画素であることを特徴とする、請求項22に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被記録媒体に対して画像を記録する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に対して直接画像を記録する画像記録装置として、インクを吐出するノズルが所定の方向に複数配列されたノズル列を有するインクジェットヘッドを走査させながら被記録媒体に対してインクを吐出して画像の記録を実施するインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
インクジェット記録装置は、写真画像等の視覚的に閲覧される用途の印刷物の画像記録に使用されるのみならず、機能性材料等の特殊なインクの付与に用いられる場合もあり、特にかかる場合には、インクの液滴を被記録媒体表面上の意図する位置に確実に着弾させるような、従来よりも高度な画像記録精度が要求される場合がある。近年、インクジェット記録装置の画像記録の記録精度の向上に関する技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-204421号公報
【特許文献2】特開2021-21782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1には、基板に対する描画装置において、ベクターデータからラスターデータに変換した回路パターンを描画するための描画データを複数のメッシュ領域に分割し、基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいてメッシュ領域を基板の形状に応じて再配置することで、基板のそり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形に応じた描画データを簡易に生成することのできる描画装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、基板に対する描画装置において、ステージ上の基準位置からの基板の周方向のずれである複数の区分傾斜角に応じた画像のランレングスデータを、複数の初期描画データとして予め記憶し、基板のステージ上での実際の傾斜角に応じて初期描画データの一つを選択し、選択した初期描画データに対してマトリクス状に配置された複数の描画ブロックを設定し、実際の傾斜角と区分傾斜角との差に応じて描画ブロックを移動させることで、迅速に描画データを生成し、ステージ上に傾いて載置された基板に対して、迅速かつ精度よく描画を行う描画装置が提案されている。
【0007】
ところで、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッド、被記録媒体を載置するテーブル、インクジェットヘッド等を搭載するキャリッジ、キャリッジやテーブルを駆動させる各種駆動ユニットなど、様々な部材により構成される。そのため、インクジェット記録装置を構成する部材自体の製造精度の不良や、各部材の組付精度の不良や、これらに限られない複合的な要因に基づく機械精度誤差によって、インクジェットヘッドから吐出されたインク滴が、被記録媒体表面において、画像データの意図した位置に着弾しないという着弾精度不良が発生しうることで、記録品質の劣化が発生しうる。
【0008】
かかる機械精度誤差を、高精度な部材の選定や、組付精度の向上等の方法により解決するのでは、部品価格の上昇や組立作業工数の増大を招来し、インクジェット記録装置の製造コスト増大につながる。また、インクジェット記録装置においては、上記の通り、用途によっては、従来よりも高度な画像記録精度が要求されるため、これらの方法では要求される画像記録精度を満足することができない場合もある。
【0009】
さらに、上記の機械精度誤差は、インクジェット記録装置自体の画像記録精度の不良として、被記録媒体の歪みや載置状態にかかわらず発生するものであるから、特許文献1や特許文献2に開示される、被記録媒体自体のそり歪み等の形状の誤差や、ステージ上における載置の傾き応じた描画データの補正では解決できない場合もあり、また、機械精度誤差は、これらの文献に開示される方法により生成された描画データを用いた記録の精度の低下をも生じさせ得る。
【0010】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決し、機械精度誤差を高額な部品等を用いることなく確実に補正し、高度の画像記録精度を実現することが可能な記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0012】
すなわち、本発明においては、
被記録媒体が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された被記録媒体に対して記録剤を吐出する記録ヘッドと、
前記被記録媒体に対して画像データに応じた記録を行うために、前記テーブルと前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段に対して、前記テーブルと前記記録ヘッドとを、所定の移動量に応じた相対的な移動をさせるよう指令するための制御手段と、
前記制御手段により前記移動手段に対して指令された前記所定の移動量と、前記制御手段による指令に応じた前記移動手段による前記テーブルと前記記録ヘッドとの実際の相対的な移動量との誤差に係る情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記誤差に係る情報に応じて前記画像データを補正する第1の補正手段と、
を有し、
前記第1の補正手段は、前記画像データを、各々が前記テーブルの前記複数の位置の各々に対応する複数のブロックに分割し、前記複数のブロックの各々を、対応する前記記録ヘッドの相対的な前記複数の位置各々の誤差に応じて移動させることにより前記画像データを補正することを特徴とする記録装置であることを特徴とする。
【0013】
また、前記移動手段は、前記テーブルと前記記録ヘッドとを第1の方向へ相対的に移動させるための手段と、前記テーブルと前記記録ヘッドとを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対的に移動させるための手段とを含んでおり、前記誤差に係る情報は、前記第1の方向及び前記第2の方向の前記誤差に係る情報を含むことを特徴とする。
【0014】
また、前記第1の補正手段は、前記誤差に係る情報を格納するための格納手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記格納手段は前記記録装置の温度別の前記誤差に係る情報を複数格納し、前記第1の補正手段は、前記格納手段に格納された複数の前記誤差に係る情報から、前記記録装置の温度に応じた前記誤差に係る情報を選択し、選択された前記誤差に係る情報に応じて前記ブロックを移動させることを特徴とする。
【0016】
また、前記格納手段に格納された温度別の前記誤差に係る情報を2個以上用いて、前記格納手段に格納されていない温度に応じた前記誤差に係る情報を、さらに算出することを特徴とする。
【0017】
また、前記第1の補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする。
【0018】
また、前記第1の補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された第1の規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする。
【0019】
また、前記第1の規定量が1画素であることを特徴とする。
【0020】
また、前記被記録媒体の形状にかかわる形状情報を取得する形状情報取得手段と、前記形状情報に応じて前記画像データを補正する第2の補正手段とをさらに有することを特徴とする。
【0021】
また、前記被記録媒体は、前記画像データが記録される被記録領域と、前記被記録領域に対し所定の位置関係で前記被記録領域の外周領域に配置された複数のアライメントマークを有し、
前記形状情報取得手段は、前記テーブルに載置された前記被記録媒体上の前記複数のアライメントマークの位置情報に基づいて前記形状情報を取得することを特徴とする。
【0022】
また、前記第2の補正手段は、前記画像データを複数のブロックに分割し、前記複数のブロックを前記形状情報に応じて移動させることにより前記画像データを補正することを特徴とする。
【0023】
また、前記第1の補正手段において分割される前記ブロックの大きさと、前記第2の補正手段において分割される前記ブロックの大きさが等しく、かつ前記第1の補正手段と第2の補正手段において分割される前記ブロックの境界が互いに異なることを特徴とする。
【0024】
また、前記第1の補正手段または前記第2の補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする。
【0025】
また、前記第2の補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された第2の規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする。
【0026】
また、前記規定量が1画素であることを特徴とする。
【0027】
さらに、被記録媒体が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された被記録媒体に対して記録剤を吐出する記録ヘッドと、
前記被記録媒体に対して画像データに応じた記録を行うために、前記テーブルと前記記録ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段に対して、前記テーブルと前記記録ヘッドとを、所定の移動量に応じた相対的な移動をさせるよう指令するための制御手段と、
前記制御手段により前記移動手段に対して指令された前記所定の移動量と、前記制御手段による指令に応じた前記移動手段による前記テーブルと前記記録ヘッドとの実際の相対的な移動量との誤差に係る情報を格納する格納手段と、
前記被記録媒体の形状にかかわる形状情報を取得する形状情報取得手段と、
前記画像データを、各々が前記テーブルの前記複数の位置の各々に対応する複数のブロックに分割し、前記複数のブロックの各々を移動させることにより前記画像データを補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段は、前記複数のブロック各々に対して、前記格納手段に格納された前記誤差に係る情報と、前記形状取得手段により取得された前記形状情報とに応じた移動量の移動を実行させることを特徴とする記録装置と構成することもできる。
【0028】
また、前記移動手段は、前記テーブルと前記記録ヘッドとを第1の方向へ相対的に移動させるための手段と、前記テーブルと前記記録ヘッドとを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対的に移動させるための手段とを含んでおり、前記情報は、前記第1の方向及び前記第2の方向の誤差に係る情報を含むことを特徴とする。
【0029】
また、前記格納手段は前記記録装置の温度別の前記誤差に係る情報を複数格納し、前記補正手段は、前記格納手段に格納された複数の前記誤差に係る情報から、前記記録装置の温度に応じた前記誤差に係る情報を選択し、選択された前記誤差に係る情報に応じて前記ブロックを移動させることを特徴とする。
【0030】
また、前記格納手段に格納された温度別の前記誤差に係る情報を2個以上用いて、前記格納手段に格納されていない温度に応じた前記誤差に係る情報を、さらに算出することを特徴とする。
【0031】
また、前記被記録媒体は、前記画像データが記録される被記録領域と、前記被記録領域に対し所定の位置関係で、前記被記録領域の外周領域に配置された複数のアライメントマークを有し、
前記形状情報取得手段は、前記テーブルに載置された前記被記録媒体上の前記複数のアライメントマークの位置情報に基づいて、前記形状情報を取得することを特徴とする。
【0032】
また、前記補正手段において、前記ブロックを移動させた時に、隣接する前記ブロックとの間で画素が重なる領域が発生するときは、前記重なる領域の画像データを論理和処理することを特徴とする。
【0033】
また、前記補正手段において、前記ブロックの移動量があらかじめ規定された規定量超となる場合は、前記ブロックをさらに分割することを特徴とする。
【0034】
また、前記規定量が1画素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、上記の構成とすることで、上記課題を解決し、安価かつ高度の画像記録精度を実現した記録装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】インクジェット記録装置の構成例を示す概要図である。
【
図2】テーブルのY方向への理想的な移動軌道と実際の移動軌道例とを示す模式図である。
【
図3】拡大縮小を実施した際に発生する現象例を示す模式図である。
【
図4】ブロック補正処理の一例を説明する模式図である。
【
図5】市松模様の画像データを拡大のためにX方向上流から下流へ1画素移動させた例を示す模式図である。
【
図6】
図5の画像を印刷した際の拡大部分における拡大前後のインクドットの形成状況を示す模式図である。
【
図7】市松模様の画像データを縮小のためにX方向下流から上流へ1画素移動させた例を示す模式図である。
【
図8】
図7の画像を印刷した際の拡大部分における拡大前後のインクドットの形成状況を示す模式図である。
【
図10】カメラを用いたガラススケールの読み取り状況を示した模式図である。
【
図11】テーブル平面状におけるリニアエンコーダ座標と基準マークとのズレの発生状況の全体像を示す模式図である。
【
図12】カメラでガラススケールを測定して取得した、X方向の所定の列における基準位置座標におけるリニアエンコーダ座標と、算出された補正値との一部を記載した一覧表である。
【
図13】補正値に応じた画像データの変形例を示す模式図である。
【
図14】テーブルに仮想のブロックを配置してブロック補正処理を実施する態様とテーブル内ブロック補正データの作成状況例を説明する概念図である。
【
図15】第一の実施形態について説明をするフローチャートである。
【
図16】インクジェット記録装置の温度状況に応じたテーブル内ブロック補正データの切り替えとブロック補正処理について説明する概念図である。
【
図17】被記録媒体のプリント配線基板の一例を示す模式図である。
【
図18】カメラを用いたプリント配線基板のアライメントマークの読み取り状況を示した模式図である。
【
図19】画像データ内のアライメントマークを4頂点とする四角形を被記録媒体たるプリント配線基板のアライメントマークを4頂点とする四角形に変換する状況を説明する概要図である。
【
図20】上記の計算の結果算定された移動画素数各々をブロックごとにブロックの並びに応じて配列した一覧表である。
【
図21】第二の実施形態における第一の例の全体像を説明するチャート図である。
【
図22】第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理においてブロックのサイズを統一したうえで所定の位相を設定した状況を示す模式図である。
【
図23】一つのブロックが1画素超移動しないように1画素超の移動が必要となるブロックをさらに分割した状況を示す模式図である。
【
図24】第二の実施形態における第一の例の流れを示すフローチャートである。
【
図25】第二の実施形態における第二の例の全体像を説明するチャート図である。
【
図26】第二の実施形態における第二の例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、
図1から
図16までを参照し、本発明にかかる第一の実施形態を説明する。
【0038】
図1は本実施形態において使用されるインクジェット記録装置の構成例を示す概要図である。
【0039】
キャリッジ2には複数のノズルがノズル列方向に並ぶノズル面を有するインクジェットヘッド1、これを制御する制御基板3、インクジェットヘッド1にインクを供給するサブタンク4、被記録媒体7などを撮像するカメラ5とカメラ用照明6などが搭載されていて、X軸駆動ユニット8の駆動により、紙面左右方向(X方向)に移動する。
【0040】
サブタンク4には、下方のインクジェットヘッド1に供給するためのインクが設定された所定の液量供給されている。図示されていない液面センサーの信号によりポンプ11を作動させ、メインタンク10からサブタンク4にインクを供給することで、サブタンク4内のインクが設定した液量になるようほぼ一定の液面を保持している。
【0041】
また、サブタンク4内の気体部分は、インクジェットヘッド1のノズルからインクが漏出することなく安定して吐出動作できるよう、負圧ポンプ9により負圧となるよう制御されている。図示されていない負圧センサーの測定値を負圧ポンプ9にフィードバックすることで常に一定の負圧値がサブタンク内気体部分に印加される。また、三方弁17を切替えて、正圧ポンプ18から、1気圧以上の気体を、サブタンク4内に印加し正圧にすることでインクを強制的に排出することもできる。
【0042】
制御パソコン12はインターフェースボード13を介しキャリッジ2に搭載される制御基板3に接続されており、制御パソコン12から印刷データや印刷条件を設定することができる。また、制御パソコン12には、後述のテーブル内ブロック補正データなど必要な情報を各種格納することができるメモリ等の格納手段51が搭載されている。また、制御パソコン12は、CPUの動作等により実現される選択手段55を有しており、例えば格納手段51に格納された複数のテーブル内ブロック補正データから、適宜のものを選択することができる。
【0043】
被記録媒体7は、インクジェットヘッド1のノズル面と被記録媒体7の表面との間に所定の距離(1mmから3mm程度が好ましいがこれに限られるものではない)を空けてテーブル14に吸着されて載置される。テーブル14はY軸駆動ユニット15の駆動により、上記のX方向と略直交する方向である
図1の紙面手前、奥方向(Y方向)に移動させることができる。また、X軸駆動ユニット8を支えるための図示されていない門型架台やY軸駆動ユニット15などは全て、頑丈で平面精度が高いベース板16の上に固定されている。
【0044】
X軸駆動ユニット8の駆動によりインクジェットヘッド1をX方向に所定距離移動させ、インクジェットヘッド1のX方向の位置を固定した状態で、Y軸駆動ユニット15の駆動により、テーブル14をY方向に移動させながらインクジェットヘッド1のノズルから被記録媒体7に対してインクを吐出することで印刷を行う。さらに、X軸駆動ユニット8の駆動によりインクジェットヘッド1をX方向に所定距離移動させ、インクジェットヘッド1のX方向の位置を固定した状態で、Y軸駆動ユニット15の駆動により、テーブル14をY方向に移動させながらインクジェットヘッド1のノズルから被記録媒体7に対してインクを吐出することで、更なる印刷を行う。
そして、かかるインクジェットヘッド1のX方向への移動と、テーブル14のY方向への移動とを交互に繰り返すことをもって、テーブル14の全面に渡り載置される被記録媒体7の表面に対して、そのX方向とY方向との全面に印刷することができる。
【0045】
X軸駆動ユニット8やY軸駆動ユニット15には、リニアモーターやボールネジ等の直動可能な駆動手段が適用され、さらに、その直線軸上における機械的な位置を検出するための位置検出手段が適用される。本実施形態において、かかる位置検出手段には種々のものを適用しうるが、例えばリニアエンコーダが使用されうる。
【0046】
リニアエンコーダとは、直線方向の位置を検出し、位置情報として出力する装置のことであり、直線エンコーダ、位置決めエンコーダ、リニアスケールとも呼称される。リニアエンコーダは、通常、物差しとなるスケール(目盛)と、位置情報を検出するヘッド(検出器)とにより構成される。また、リニアエンコーダには、目盛の検出に光の反射を用いる光学式と、磁気を用いる磁気式があり、さらに、絶対的な位置の測定を行うアブソリュート式と、相対的な位置の測定を行うインクリメント式とがある。本実施形態においては、位置検出手段がリニアエンコーダであるか否かについて、さらにリニアエンコーダが適用される場合においても、光学式、磁気式、その他の手段であるかについて、またアブソリュート式、インクリメント式、その他の手段であるかについては、いずれも制限はなく、各々適宜の方式を採用しうる。
【0047】
温度センサー19はインクジェット記録装置内部の温度を測定して、図示しないケーブルを介して制御パソコン12に測定した温度データを転送することができる。
図1に例示されるインクジェット記録装置においては温度センサー19が1か所配置される例が示されるが、温度センサー19を複数設置し、複数個所の温度を測定してもよい。
【0048】
図2は、テーブル14のY方向への理想的な移動軌道と実際の移動軌道例とを示す模式図である。上記の通り、テーブル14は、Y軸駆動ユニット15の駆動により、Y方向へ移動する。ここで、インク滴の被記録媒体7表面への印刷を、高精度な着弾精度で実施するために、テーブル14は、本来は点線20で示される理想的な直線上を移動する必要がある。しかし、実際には、テーブル14の移動には、機械精度誤差の影響を受け、例えば太線21に示されるように蛇行した移動軌道によって移動してしまう移動精度不良が発生しうる。
図2の例では、テーブル14はY方向の上流から下流に、位置22、位置23、位置24と移動するにつれて、太線21の移動軌道をたどり、僅かに傾きを持ちながら移動している。
【0049】
かかる機械精度誤差による移動精度不良は、インクジェット記録装置を構成する部品各々の製造精度や組立精度等の影響を受けて発生しうる。例えば、テーブル14とY軸駆動ユニット15との組立精度、Y軸駆動ユニット15自体の直動精度、Y軸駆動ユニット15とベース板16との組立精度等による影響が想定される。さらに、Y軸駆動ユニット15を構成する上記のリニアエンコーダ自体の絶対位置精度の誤差やリニアエンコーダのY軸駆動ユニット15への張り付け精度の影響を受けることで発生する、制御パソコン12により指示した移動量とY軸駆動ユニット15の移動量との誤差による影響も想定される。
【0050】
かかる機械精度誤差による移動精度不良は、当然ながらX軸駆動ユニット8の駆動によるインクジェットヘッド1のX方向への移動においても発生しうる。例えば、インクジェットヘッド1とキャリッジ2とX軸駆動ユニット8との組立精度、X軸駆動ユニット8自体の直動精度、との組立精度等による影響が想定される。さらに、X軸駆動ユニット8を構成する上記のリニアエンコーダ自体の絶対位置精度の誤差やリニアエンコーダのX軸駆動ユニット8への張り付け精度の影響を受けることで発生する、制御パソコン12により指示した移動量とY軸駆動ユニット15の移動量との誤差による影響も想定される。
【0051】
かかる機械精度誤差による移動精度不良により、インクジェットヘッド1から吐出されたインク滴が、被記録媒体7表面において意図した位置に着弾しないという着弾精度不良が発生し、記録品質の劣化が発生する。しかし、機械精度誤差の改善のためにより高精度な部品の選定の実施や、組立精度向上のための精度出しの実施等の機械精度自体の改善手段によっては、部品価格の上昇や組立作業工数の増大を招来してしまう。
【0052】
そこで、第一の実施形態においては、インクジェットヘッド1とテーブル14との相対的な位置のズレ係る情報を取得し、取得されたかかる情報に応じて、画像記録に用いる画像データを、後述するブロック補正処理を実施することにより変形させることで、機械精度誤差による移動精度不良の状態に応じてインクの着弾位置を調整し、もって記録品質の劣化を改善している。以下、かかる第一の実施形態における補正処理について詳述する。
【0053】
まず、第一の実施形態の説明の前提として、画像データのブロック分割とブロック移動からなるブロック補正処理について説明する。
【0054】
前提として、ブロック補正処理を用いる趣旨を説明する。機械精度誤差の補正のために、単純に印刷画像データを変形させるという手法をとる場合、画像処理の性質上、印刷画像データの拡大縮小の要素があることから、縮小で1画素線が消滅する現象や、拡大で1画素線が2画素線になるという現象が発生しうる。
図3は拡大縮小を実施した際に発生する現象例を示す模式図である。
図3に示されるように、縮小で1画素線が消滅する現象や、拡大で1画素線が2画素線になるという現象が発生しうる。これらの現象は拡大縮小に際して必ず発生するものではなく、拡大縮小の倍率により一定の確率で発生しうる。例えば、1000×1000画素の画像データにおいて99%に縮小すると100画素に1画素、合計10画素分の画像を削除する必要があり、この時、
図3(a)のように1画素線が消滅する可能性が発生する。また101%に拡大すると100画素に1画素、合計10画素分の画像を増やす必要があり通常は隣の画素の繰返しになるので、
図3(b)のように1画素線が2画素線になる可能性が発生する。かかる現象が発生することで、本来印刷を実施すべき部分に印刷されない現象や、印刷するべきでない位置に印刷が実施される現象が発生する。そこで、印刷画像データをブロックに分割し、ブロックを機械精度誤差に応じて移動させるという手法をとることで、印刷画像データの拡大縮小にかかる上記の問題を回避して画像の変形を実現できる。
【0055】
図4は、ブロック補正処理の一例を説明する模式図である。
図4においては、説明の便宜のため、100画素×100画素の画像データ44を50×50画素の4つのブロック47に分割し、右下(X方向及びY方向の最下流)のブロック47を移動させる簡略化した例を用いている。各々のブロック47には、ブロック47の基準原点として代表点76が指定されている。代表点は各ブロック47の左上、中央、左下、その他の位置など、所定の位置に一つ指定されていればよいが、本例では、ブロック47各々の左上(X方向、Y方向の最上流)に指定している。ブロック47各々の移動は、ブロック47各々の代表点76の移動量を設定し、代表点76各々の移動に応じてブロック47各々全体を移動させることで行う。
【0056】
図4(a)は4つのブロックが各々移動なく隣接して配置されているブロック補正処理実施前の状態を示す。
図4(b)では、右下のブロック47をX方向下流の拡大方向に1画素移動させている。これにより、画像データ全体としては101×100画素の画像データに変形したことと等価の画像データ変形を実現したことになる。また、
図4(c)では、右下のブロック47をX方向下流の拡大方向に1画素移動させ、Y方向上流の縮小方向に1画素移動させている。これにより、画像データ全体としては、
図4(b)と同様に101×100画素の画像データに変形したことと等価の画像データ変形を実現したことになる。左上のブロック47を基準に考えると、右上、左下、右下の3つのブロック47が上下左右1画素ずつ移動することができる。
【0057】
ここで、本実施形態においてブロック補正処理を実施するにあたっては、ブロック47各々の移動量を1画素以内に納めることで、ブロック補正処理により発生する印刷画質の劣化を回避することができる。以下、この点について説明する。
【0058】
まず、ブロック補正処理において、ブロック47を1画素拡大方向に移動した際に、当該ブロック47と隣接する他のブロック47との間隔が1画素分離れることになる。
【0059】
図5は市松模様の画像データを拡大のためにX方向上流から下流へ1画素移動させた例を示す模式図である。この例では、X方向上流から下流へ1画素移動させたことで、横方向(X方向)の長さが16画素から17画素に増えて拡大されている。
【0060】
図6は
図5の画像を印刷した際の拡大部分における拡大前後のインクドットの形成状況を示す模式図である。なお、
図6では画像データの解像度が2880dpiである例を用いる。インクドット48とインクドット49とが拡大方向に相対的に1画素移動する場合、2880dpiの画像データであるとすると画像データの1画素の間隔は約8.8μmであり、拡大方向に1画素分移動するとその間隔は2倍の17.6μmとなる。この時、印刷後の1画素のインク滴サイズは被記録媒体上でぬれ広がり、インクドット48とインクドット49は各々直径50μm程度となる。よって、画像データの隣接する画素を1画素拡大方向に移動させた結果、インクドット48とインクドット49が拡大方向に8.8μm移動したとしても、インクドット48とインクドット49とはなお重なり合っており、白スジが発生することは無い。
【0061】
また、ブロック47を1画素縮小方向に移動した際に、当該ブロック47と隣接する他のブロック47とが、1画素分重なりあうことになる。
【0062】
図7は市松模様の画像データを縮小のためにX方向下流から上流へ1画素移動させた例を示す模式図である。この例では、X方向下流から上流へ1画素移動させたことで、横方向(X方向)の長さが16画素から15画素に減って縮小されている。縮小方向に移動させたことで、縮小部分のラインが重なることになる。本例のように画像データが市松模様である場合は、重なった部分の画像データを論理和処理するので濃度100%のベタ画像になる。
【0063】
図8は
図7の画像を印刷した際の拡大部分における拡大前後のインクドットの形成状況を示す模式図である。なお、
図8でも画像データの解像度が2880dpiである例を用いる。上記の通り、2880dpiの画像データであるとすると画像データの1画素の間隔は約8.8μmである。そして縮小方向に1画素分移動するとその間隔は約0μmとなる。そして、印刷後の1画素のインク滴サイズは被記録媒体上でぬれ広がり、直径50μm程度となる。このように、インクドット48とインクドット49は縮小前も縮小後も各々重なり合っていることには変わりなく、印刷物全体としては、記録品質にほとんど影響なく、黒スジのような現象は発生しない。
【0064】
このように、ブロック補正処理において、ブロック47の移動量を1画素以内に納めることで、ブロック補正による印刷画質の劣化を回避することができる。ブロック47の移動量を1画素以内に納めるためには種々の方法が想定されるが、ブロック47の移動量が1画素超になるブロック47が存在する場合には、全てのブロック47の大きさをさらに小さくなるように設定することで、ブロック47各々の移動量は1画素以内に納めることができる。また、移動させる処理を実施する必要のあるブロック47の数を最小限としてブロック47の全体的な移動量を最小限にすることで、処理速度向上を図る観点からは、ブロック47の移動量が1画素以内となる最大の大きさとすることもできる。
【0065】
また、ブロック補正処理において、ブロック47の移動量を1画素以内に納める他の方法についても説明する。
図23は、一つのブロックが1画素超移動しないように1画素超の移動が必要となるブロックをさらに分割した状況を示す模式図である。
図23の例では、移動量が1画素超となるブロック47があった場合には、当該移動量が1画素超となるブロック47のみをさらに分割し、分割したブロック47各々を1画素ずつ移動させている。この方法によっても、ブロック47の移動量を1画素以内に納めることができる。
【0066】
以上が、第一の実施形態の前提となるブロック補正処理の概要となる。
【0067】
次に、テーブル14とインクジェットヘッド1とがX方向とY方向とに相対的に移動した際のテーブル14とインクジェットヘッド1との相対的な位置のズレに係る情報を取得する方法について説明する。
【0068】
図1に示すインクジェット記録装置において、X軸駆動ユニット8やY軸駆動ユニット15の駆動ユニットとして、上記の通り、リニアモーターやボールネジが使用され、その位置検出手段としてリニアエンコーダが使用されうる。リニアエンコーダからは、直線方向の位置を検出して、位置情報として出力される。ところが、
図2で説明した通り、テーブル14の非直線的な移動やリニアエンコーダの取付け精度などの機械精度誤差の問題で、テーブル14とインクジェットヘッド1とに要求される相対的な位置精度が実現できない場合がある。そして、機械精度誤差により、テーブル14とインクジェットヘッド1との相対的な位置に関しては、リニアエンコーダから出力される位置情報と、実際の位置が異なる場合がある。
【0069】
このように、インクジェット記録装置においては、インクジェット記録装置を構成する部品各々の製造精度や組立精度等の影響を受けて機械精度誤差が発生しうることから、かかる機械精度誤差をブロック補正処理により改善する前提として、実際のテーブル14とインクジェットヘッド1との相対的な位置のズレに係る情報を取得する必要がある。そこで、以下、相対的な位置のズレに係る情報を取得する方法について説明する。
【0070】
テーブル14とインクジェットヘッド1との相対的な位置のズレに係る情報を取得するために、各種基準位置情報生成手段が適用される。基準位置情報生成手段によって生成された基準位置の情報である基準位置座標と、X軸駆動ユニット8とY軸駆動ユニット15のリニアエンコーダから取得される位置情報であるリニアエンコーダ座標との差異に基づき、相対的な位置のズレに係る情報を取得する。
【0071】
基準位置情報生成手段としては、X方向と、Y方向との平面上の基準位置を測定することができる手段が適用される。例えば、レーザー測長機、各種平面スケールなど、種々のものが適用されうるが、温度変化や物理的衝撃等による形状変化が小さい手段が好ましい。温度変化や物理的衝撃等による形状変化が小さい特徴を有する基準位置情報生成手段の一つとして、熱膨張係数が小さく、周囲温度による精度誤差の小さいガラススケールが想定される。
【0072】
また、レーザー測長機を用いる場合であれば、例えば、レーザー測長機から取得される位置情報を基準とし、キャリッジ2におけるY方向の複数点について、リニアエンコーダから取得されるX方向の位置情報と、レーザー測長機を用いて取得された複数点各々の位置情報を対照してレーザー測長機から取得される真なる位置情報とリニアエンコーダから取得される位置情報とのずれを確認し、さらに、テーブル14におけるX方向の複数点について、リニアエンコーダから取得されるY方向の位置情報と、レーザー測長機を用いて取得された複数点各々の位置情報を対照してレーザー測長機から取得される真なる位置情報とリニアエンコーダから取得される位置情報とのずれを確認することで、X方向と、Y方向における相対的な位置のズレに係る情報を取得することができる。
【0073】
本実施形態においては、基準位置測定手段としてガラススケールを用いる。また、
図1に示すように、カメラ5はインクジェットヘッド1に対して所定の位置関係でインクジェットヘッド1が搭載されたキャリッジ2に搭載されており、インクジェットヘッド1の位置はこのカメラ5の位置に応じて求められる。またテーブル14の位置情報は、テーブル14に載置されたガラススケールの基準マークに基づいて求められる。
【0074】
図9はガラススケールの一例を示す模式図である。ガラススケール25外表面には、10mmの間隔を空けて、直径0.5mm径を有する基準マーク26が配置されている。本例で使用されるガラススケールの精度は+-1μm程度であることが好ましい。10mm+-1μmの精度で複数の基準マーク26各々がX方向とY方向に並んでいることになる。
図9に示すガラススケール25の例ではX方向に8個、Y方向に8個の基準マーク26が各々配置されているので70mm×70mmサイズの基準を持っている。ガラススケール25のサイズや精度は用途に応じて種々適用できる。
【0075】
そして、ガラススケール25をテーブル14に載置し、カメラ5を用いてガラススケール25の基準マーク26を読み取る。以下、基準マークの読み取りについて説明する。
【0076】
図10はカメラを用いたガラススケールの読み取り状況を示した模式図である。
図10(a)、はカメラ5の撮像フレームの模式図である。外側のカメラフレーム27はカメラ5の視野全体を示しており、例えば1280画素×1024画素の画素数で1画素あたりの分解能が5μmの場合、X方向の視野は1280画素×5μm=6.4mmとなり、Y方向の視野は1024画素×5μm=5.12mmとなる。点線の交点である交点28はカメラフレーム27の中心を示している。基準の位置である基準マーク26を撮像し、基準マーク26と交点28とのズレ量を測定することで、カメラ5が搭載されているキャリッジ2に搭載されているインクジェットヘッド1と、テーブル14との相対的な位置のズレに係る情報を取得する。
【0077】
図10(b)は基準マーク26の撮像状況の一例であり、直径0.5mmの基準マーク26をカメラフレーム27の中心である交点28で撮像されている様子を示している。基準マーク26が
図10(b)のように撮像されているということは、
図10(b)で撮像した基準マーク26の位置においては、インクジェットヘッド1と、テーブル14との相対的な位置のズレは発生していないということになる。
【0078】
また、
図10(c)も基準マーク26の撮像状況の一例であり、この例では、ガラススケールの基準マーク26がカメラフレームの交点28からX方向、Y方向に、X座標補正値31とY座標補正値32に相当する量ずれて撮像されている様子を示している。
図10(c)のように撮像されているということは、
図10(c)で撮像した基準マーク26の位置においては、相対的な位置のズレが発生しているということになり補正が必要になるということを示している。図中のX座標補正値31とY座標補正値32はカメラによる撮像であるため、画素数により取得される。カメラ5の1画素当たりの分解能が、上記の例のように5μmである場合、X座標補正値31×5μm、Y座標補正値32×5μmの値が各々のズレ量になる。カメラ分解能が5μm/画素としても、後述の通り、基準位置座標は、基準マーク26の重心で測定するので5μmより細かな分解能により測定することができる。
【0079】
上記の基準マーク26の撮像により取得された、相対的な位置のズレの発生状況の全体像について説明する。
図11は、テーブル平面状におけるリニアエンコーダ座標と基準マークとのズレの発生状況の全体像を示す模式図である。
図11(a)には
図9で例示したガラススケール25の基準マーク26と、基準マーク26各々に対応するリニアエンコーダ座標52各々が示されている。ガラススケール25に基準マーク26が10mm間隔で配置されているとすると、リニアエンコーダから取得される位置情報に従い、キャリッジ2を、X軸駆動ユニット8とY軸駆動ユニット15を10mmずつ移動させれば、本来であればリニアエンコーダ座標52と基準マーク26から取得される基準位置座標とは一致するはずである。しかし、上記の複合的な要因により発生する機械精度誤差により、実際は、リニアエンコーダ座標52とこれに本来対応する基準位置座標とは、場所によって異なるズレ量が発生している。
【0080】
図11(b)は、ある基準マーク26とこれに対応するリニアエンコーダ座標52とを拡大した図である。基準マーク26にかかる点線の交点は、基準マーク26の中心であり基準位置座標を示す。そして、リニアエンコーダ座標52との差が、上記のX座標補正値31とY座標補正値32になる。
【0081】
以上の過程で取得される座標情報の数値例について説明する。
図12は、カメラでガラススケールを測定して取得した、X方向の所定の列における基準位置座標におけるリニアエンコーダ座標と、算出された補正値との一部を記載した一覧表である。数値の単位はμmである。リニアエンコーダ座標はリニアエンコーダから取得される位置情報を示す。基準位置座標はガラススケール25の基準マーク26から取得される基準となる位置情報を示し、リニアエンコーダの位置情報に基づき10mm間隔でカメラ5をX方向に移動させ、その時のガラススケール25の基準マーク26の中心値(重心)をアライメントカメラにて測定した値である。X方向に隣接するブロックの数値が
図12の表の行ごとに記録されている。
【0082】
図12の表に示す「リニアエンコーダ座標」の列は10mmステップでX方向に移動したリニアエンコーダの位置情報に基づくX、Y座標であり、「基準位置座標」の列はアライメントカメラの撮像画像から計算したガラススケール25の基準マーク26の位置情報に基づくX、Y座標である。
図9に例示したガラススケール25を用いる場合、X方向とY方向に8個×8個の基準マーク26があるので、合計64点の基準マーク26に対応する基準位置座標の情報がカメラ5を介してXY座標として取り込まれることになる。リニアエンコーダ座標の位置情報と、基準位置座標の位置情報との差が、補正すべき「相対的な位置のズレ」の一例であり、この値の例が
図12の表の「補正値」の列に示されている。
図12の表の1行目のリニアエンコーダ座標であれば、X座標の誤差は6364-6423=-59μm、Y座標の誤差は47479-47471=8μmとなる。2880dpiの画像データを印刷する必要がある場合1画素の間隔は約8.8μmであり、X座標は、59/8.8=6.7画素となり、この位置は累積で約7画素のズレがあることになる。またY座標は、8/8.8=0.9画素となり、この位置は累積で約1画素のズレがあることになる。また補正値43に示すようにXY座標とも隣接するブロックでは1画素以内の差になっている。
【0083】
なお、本実施形態が適用されるインクジェット記録装置においては、特に解像度の高い印刷においてより顕著な効果を奏する。例えば、インクジェット記録装置によって、被記録媒体7表面の単位記録領域に対しインクジェットヘッド1による複数回の記録動作を実施することで形成されたインクドット各々の間にさらにインクドットを形成しノズルの間隔を補完する画像記録を行うマルチパス印刷を実施した場合、使用するインクジェットヘッド1の解像度が600dpiであれば2400dpiの印刷解像度を実現でき、使用するインクジェットヘッド1の解像度が360dpiであれば2880dpiの印刷解像度を実現できる。そこで、以下の説明においては、2400dpiまたは2880dpiの解像度を例に説明する。
【0084】
以上の過程を経て、ブロック補正処理の前提となる、テーブル14全体に対して、ガラススケール25の基準マーク26が配置されている間隔で、基準位置座標の位置情報の値を真とした、機械精度誤差による相対的な位置のズレに応じた補正すべき数値である補正値を算出できる。取得された補正値に基づき、印刷対象となる画像データ全体に対してブロック補正処理を実施し、相対的な位置のズレに応じて画像データを変形して、機械精度誤差に対する補正を行う。
【0085】
まず、機械精度誤差に対するブロック補正処理の概要について説明する。
図13は、補正値に応じた画像データの変形例を示す模式図である。変形後の画像形状45は、画像データ44を、装置の機械精度に合わせて変形処理された変換後の印刷画像データの外形を示し、変換後の画像データ46は、外側の点線により示されている。内側のブロック47は移動後の状態を示し、変形後の画像形状に敷きつめられた形になるがここではその一部を図示している。画像ブロックが隣との移動量を所定の値、例えば1画素以内という条件を維持しながら、上下左右に移動して全体として機械精度歪みにほぼ合った画像データ46に変換される。
【0086】
また、実際の装置の機械精度誤差は変形後の画像データの形状とは逆の形に反転している。なお、変形後の画像形状45は、説明の便宜のため、図示するような変形形状で示しているが、機械精度誤差が500mm長で100μm以下であれば、実際の変形は僅かなものになる。変形後の画像形状45と変換後の画像データ46との間は、実際には印刷されないので空白データが配置される。
【0087】
このように処理することにより、前述のような縮小で1画素線が消滅するとか、拡大で1画素線が2画素線になるという問題が回避できるとともに、全体を一括で線形処理せず、ブロックごとに補正を異にできるので
図13に示すような非線形な歪みに対しても補正が可能となる。
【0088】
図14は、テーブルに仮想のブロックを配置してブロック補正処理を実施する態様とテーブル内ブロック補正データの作成状況例を説明する概念図である。機械精度誤差を補正するために、テーブル14上において、基準マーク26各々の基準位置座標に対応するブロック47として
図14において点線格子で示すように仮想ブロックを設定し、仮想ブロック各々の所定の位置に、上記の通り代表点76を設定し、この代表点76に対して、上記の方法により取得された補正値を適用して、代表点76の移動に応じて代表点76を含む仮想ブロック全体を補正値分移動させることで、ブロック補正処理を実施し、もってリニアエンコーダ座標52と基準位置座標との上記のずれを解消し、リニアエンコーダにより取得されたリニアエンコーダ座標52の位置情報通りに精度よくインクジェットヘッド1とテーブル14とが相対移動したときと等価の状態が実現される。このために、印刷前に予めテーブル内ブロック補正データを作成し、制御パソコン12の格納手段51に格納し、これを印刷時に参照することで、毎回の印刷動作各々において機械精度誤差を補正した状態での印刷が可能となる。
【0089】
図14(a)はテーブル14全体を仮想的なブロックにて区切り、点線にて分割して仮想ブロックを配置した様子を示している。例えば、テーブルの左上の原点からX方向Y方向に10mm間隔で、仮想ブロックを並べて設定する。
図14(a)の仮想ブロックを配置したテーブル14の左上部分を拡大して、上述した各ブロックにおける補正値を表したものが
図14(b)及び
図14(c)に示す表となる。単位はμmである。
図14(b)はX方向の補正値であり、
図14(c)はY方向の補正値である。このようにして、テーブル全面を例えば10mm間隔のブロックに区切り、それぞれのブロックにXY方向の補正値を記録したものがテーブル内ブロック補正データである。
【0090】
ブロック補正処理においては、画像データを変形するため、補正値は画素に変換する必要がある。補正値は、測定された補正値と、印刷解像度に応じて、所定の閾値を設定することで変換することが想定される。例えば、2880dpi、画素分解能8.8μmの画像において、ズレ量が0から4.4μmであればテーブル内ブロック補正データにおいてはブロック移動を行わないブロックとして0画素の移動とし、ズレが4.5から13.2μmであれば1画素の移動とし、ズレ量が13.3から22μmであれば2画素の移動とし、ズレ量が22.1から30.8μmであれば3画素の移動、というように設定することが想定される。
【0091】
以上の閾値設定例によれば、例えば
図14(b)の1行目に左から移動する画素数は0、0、1、1、1、1、1となる。2行目は、0、0、0、1、1、1、1となり、3行目は、0、0、0、1、1、1、1となり、と同様に閾値に応じて何画素移動させるか設定される。なお、7行目の場合、-1、-1、-1、0、0、0、0となるが、このように-がある場合は移動方向が反対になる。
【0092】
以上のように、
図14(b)および(c)のテーブル内ブロック補正データをテーブル14とインクジェットヘッド1との相対的な位置のズレに係る情報として格納手段51に格納して、上記の通り、印刷前に参照することで、印刷する画像に対してブロック分割、移動そして合成をすることができる。
なお、テーブル内ブロック補正データとして、画素数に変換した後の値を格納手段51に格納してもよい。
【0093】
以上にて説明した第一の実施形態におけるブロック補正処理の工程を、フローチャートを用いて説明する。
図15は第一の実施形態について説明をするフローチャートである。
図15(a)は印刷動作実行前に実施される工程であり、
図15(b)は、印刷動作各々において実施される工程である。このブロック補正処理は、
図15のフローに対応したプログラムが格納された制御パソコン12により実施される。
【0094】
まず、
図15(a)のフローチャートを説明する。フロー101において、ガラススケール25がテーブル14に載置され、次に、フロー102において、制御パソコン12の処理により、カメラ5を用いてテーブル14上のガラススケール25に配置される基準マーク26を撮像し、取得された画像データに基づいて中心座標を算出し、基準マーク26の座標位置を測定する。フロー103において、リニアエンコーダから出力された座標位置データと、これに対応する基準マーク26の位置座標データとの差を制御パソコン12の処理により算出する。そして、フロー104において、制御パソコン12の処理によりテーブル14上において、基準マーク26各々に対応する仮想ブロックを設定し、この仮想ブロックに対して、フロー103の方法により取得された補正値を適用するための、上記のテーブル内ブロック補正データを作成する。そして、フロー105において、制御パソコン12の処理によりテーブル内ブロック補正データを格納手段51に格納する。以上の工程が印刷動作実行前に実施される工程である。なお、以上の工程は、インクジェット記録装置の製造前に実施することもできるし、製造後の印刷品質の状況に応じて適宜実施することもできる。
【0095】
次に、
図15(b)のフローチャートを説明する。まず、フロー106において、制御パソコン12の処理によりテーブル内ブロック補正データを記憶手段から取得する。次に、フロー107にて、制御パソコン12の処理により印刷画像データをブロック分割し、印刷開始位置の座標とテーブル内ブロック補正データと印刷解像度から各ブロックの移動量を画素単位で算出する。フロー107の工程では、制御パソコン12の処理によりμmの単位にて記録されたテーブル内ブロック補正データを印刷画像に合わせた画素単位に変更するとともに、さらにテーブル14上のどの位置座標に被記録媒体が載置されたかの情報を反映させ、画像データのブロック補正を行うこともできる。
そして、フロー108にて、フロー107において算出された移動量に従って制御パソコン12の処理により各ブロックを移動させ、フロー109にて、移動したブロックを合成して画像データを生成する。
【0096】
以上の工程を経てブロック補正処理が印刷画像データに対して実施され、機械精度誤差を補正することができる。
【0097】
ところで、上記の機械精度誤差は、インクジェット記録装置を構成する部材各々の温度状況に応じて変動が生じうる。すなわち、
図1のインクジェット記録装置の例であれば、X軸駆動ユニット8、Y軸駆動ユニット15、各駆動ユニットに搭載されるリニアエンコーダ、X軸駆動ユニット8が組付けられた門型架台、テーブル14、ベース板16等の部材は、アルミニウムや鉄など複数の材料により構成され、材料各々の熱膨張率が異なる。また、ネジの締め付け強度等、各部材の組付け状況によっても、温度変化による機械精度誤差の発生状況が異なることが想定される。そこで、予め、インクジェット記録装置の温度状況に応じた複数のテーブル内ブロック補正データを取得しておき、インクジェット記録装置の温度状況に応じて、対応するテーブル内ブロック補正データを参照し、ブロック補正処理を実施することができる。
【0098】
図16は、インクジェット記録装置の温度状況に応じたテーブル内ブロック補正データの切り替えとブロック補正処理について説明する概念図である。
図16の例では例えば、温度が4℃ごとのテーブル内ブロック補正データを、
図15で説明した工程により予め用意し、格納手段51に格納する。そして、インクジェット記録装置に搭載された温度センサー19から取得される温度情報に応じて、制御パソコン12によって、選択手段55を介し、記録手段に格納される各温度のテーブル内ブロック補正データから、取得された温度情報により近いテーブル内ブロック補正データを選択して参照し、ブロック補正処理に用いている。
【0099】
より細かい温度変化に応じたテーブル内ブロック補正データを選択する必要がある場合は、さらに細かい温度ごとのテーブル内ブロック補正データを格納することもできるし、隣接する2つの温度に応じたテーブル内ブロック補正データを用いて線形補完により、間の温度に応じたテーブル内ブロック補正データを生成することもできる。例えば、
図16の例で、21℃のテーブル内ブロック補正表を作りたい場合は、一例としては20℃のテーブルの各要素(A)と24℃のテーブルの各要素(B)で(A*3+B*1)/4の線形補完で求めることができる。
【0100】
さらに、
図17から
図26を用いて、本発明にかかる第二の実施形態について説明をする。
【0101】
第二の実施形態として、被記録媒体の形状誤差に応じた画像データのブロック補正処理を適用する第一のブロック補正処理と、さらに第二のブロック補正処理として第一の実施形態におけるブロック補正処理を適用する例を説明する。
【0102】
第二の実施形態を適用するに好適な一例として、被記録媒体が、既に銅パターンが形成されているプリント配線基板であり、インクジェット記録装置において絶縁体であるレジスト材料を、プリント配線基板の製造後工程として付与する場合が想定される。このような場合、プリント配線基板自体の形状、露光装置などで形成された銅パターン等には、若干の形成精度誤差が発生しうることから、プリント配線基板に配置されたアライメントマークなどを用いて、後工程の段階で、レジスト材料を付与すべき位置を調整する必要が想定される。
【0103】
図17は、被記録媒体のプリント配線基板の一例を示す模式図である。プリント基板53には、銅や銀などの導電体で配線が形成された領域である配線パターン部58を有し、さらに配線パターン部58の外周には、X方向とY方向の2方向に異なる配置関係により複数のアライメントマーク54(
図17の例では4か所)が配置されている。
図1のインクジェット記録装置を用いてレジスト材を付与する場合であれば、カメラ5で配置されているアライメントマーク54を撮像し、各々の中心座標を算出し、画像データにあるアライメントマークの位置とカメラで撮像したアライメントマークの座標位置に差がある場合は画像データをカメラ5で撮像したアライメントマークの座標位置に合わせて変形する必要がある。この工程を経ることで、プリント配線基板53に発生している精度誤差に応じて変形した画像データに基づき精度誤差なく意図する位置にレジスト材を付与することができる。
【0104】
以下、プリント配線基板53の、アライメントマーク54の読み取りについて説明する。
【0105】
図18はカメラを用いたプリント配線基板のアライメントマークの読み取り状況を示した模式図である。
図18(a)はカメラ5の撮像フレームの模式図である。
図10の説明と同様に、外側のカメラフレーム27はカメラ5の視野全体を示しており、例えば1280画素×1024画素の画素数で1画素あたりの分解能が5μmの場合、X方向の視野は1280画素×5μm=6.4mmとなり、Y方向の視野は1024画素×5μm=5.12mmとなる。点線の交点である交点28はカメラフレーム27の中心を示している。配置されているアライメントマーク54について、アライメントマーク54と交点28とのズレ量を各々測定することで、プリント配線基板53の形状精度誤差を測定することができる。
【0106】
なお、アライメントマーク54はプリント配線基板53のテーブル14における載置位置に応じてカメラ5により読み取られる。そこで、被記録媒体7の一種であるプリント配線基板53の、テーブル14上における載置位置のずれ、傾きなどの、被記録媒体17のテーブル14上における載置位置座標の情報は、プリント配線基板53のアライメントマーク54を読み取りによって、併せて把握される。ここで把握された被記録媒体17のテーブル14上における載置位置座標の情報に応じた、テーブル内ブロック補正データのテーブル14上の座標に対応するデータを用いて、第二の実施形態における第二のブロック補正処理が実施されることになる。
【0107】
図18(b)はアライメントマーク54の撮像状況の一例であり、直径0.5mmのアライメントマーク54をカメラフレーム27の中心である交点28で撮像されている様子を示している。アライメントマーク54が
図18(b)のように撮像されているということは、
図18(b)のアライメントマーク54の位置においては、精度誤差は生じていないということになる。
【0108】
また、
図18(c)もアライメントマーク54の撮像状況の一例であり、この例では、アライメントマーク54がカメラフレームの交点28からX方向、Y方向に、X座標補正値31とY座標補正値32に相当する量ずれて撮像されている様子を示している。
図18(c)のように撮像されているということは、
図18(c)のアライメントマーク54の位置においては、精度誤差が発生しているということになり補正が必要になるということを示している。図中のX座標補正値31とY座標補正値32 はカメラによる撮像であるため、画素数により取得される。カメラ5の1画素当たりの分解能が、上記の例のように5μmである場合、X座標補正値31×5μm、Y座標補正値32×5μmの値が各々のズレ量になる。カメラ分解能が5μm/画素としても、アライメントマーク54の座標は重心で測定するので5μmより細かな分解能により測定することができる。ここで取得された補正値を用いて、画像データを変形することになる。
【0109】
まず、第二の実施形態の説明の前提として、
図18において説明した方法により取得されたアライメントマークに基づく補正値を用いて、プリント配線基板53の精度誤差に応じて画像データを変形する変形処理例について説明する。
【0110】
この説明において、画像データ上のアライメントマークの座標を(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)とし、カメラ5で算出したプリント配線基板53のアライメントマークの座標を(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)とする。ここでは、(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)の形状が(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)になるような変形処理を画像データに対して実施することになる。
【0111】
このような(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)の四点座標により形成される四角形から、(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)の四点座標により形成される四角形への変形処理は座標の単純な平行移動、回転、XY方向への変倍ではなく、任意四角形から他の任意四角形への変換である任意四角形変換係数になる。そこで例えば、(Xi、Yi)の(xi、yi)への変換は下記の式を使うことで、任意四角形への変換のための任意四角形変換係数が算出される。
xi=A*Xi*Yi+B*Xi+C*Yi+D
yi=E*Xi*Yi+F*Xi+G*Yi+H
ここでBはxiの主たる係数でありX方向の変倍率を示す。AとCはYに影響する係数であり歪みを表現するために使う。Dは平行移動を表す係数になる。E、F、G、Hも同様でGはyiの主たる係数でありY方向の変倍率を示す。EとFはXに影響する係数であり歪みを表現するために使う。Hは平行移動を表す係数になる。ここで合計8本の式が存在するので、8個の変数を求めることができる。
式1;
x1=A*X1*Y1+B*X1+C*Y1+D
x2=A*X2*Y2+B*X2+C*Y2+D
x3=A*X3*Y3+B*X3+C*Y3+D
x4=A*X4*Y4+B*X4+C*Y4+D
y1=E*X1*Y1+F*X1+G*Y1+H
y2=E*X2*Y2+F*X2+G*Y2+H
y3=E*X3*Y3+F*X3+G*Y3+H
y4=E*X4*Y4+F*X4+G*Y4+H
この式により算出されたA、B、C、D、E、F、G、Hの数値を用いて任意の点(Xi、Yi)を(xi、yi)へ変換することができる。
【0112】
ところで、上記の変形処理例にも、第一の実施形態において説明した課題と同様の課題が存在する。すなわち、この処理には性質上画像データの拡大縮小の要素があることから、縮小で1画素線が消滅する現象や、拡大で1画素線が2画素線になるという現象が発生しうる。
図3は拡大縮小を実施した際に発生する現象例を示す模式図である。
図3に示されるように、縮小で1画素線が消滅する現象や、拡大で1画素線が2画素線になるという現象が発生しうる。これらの現象は拡大縮小に際して必ず発生するものではなく、拡大縮小の倍率により一定の確率で発生しうる。例えば、1000×1000画素の画像データにおいて99%に縮小すると100画素に1画素、合計10画素分の画像を削除する必要があり、この時、
図3上のように1画素線が消滅する可能性が発生する。また101%に縮小すると100画素に1画素、合計10画素分の画像を増やす必要があり通常は隣の画素の繰返しになるので、
図3下のように1画素線が2画素線になる可能性が発生する。かかる現象が発生することで、本来印刷を実施すべき部分に印刷されない現象や、印刷するべきでない位置に印刷が実施される現象が発生する。このような現象が発生すると、プリント配線基板53のような高精度の印刷を要求される被記録媒体に対して印刷を実施する必要がある場合、印刷品質に特に大きな影響が生じうる。
【0113】
そこで、第二の実施形態においては、被記録媒体の形状の精度誤差に応じた画像データの変形処理に際しても、ブロック補正処理を実施することが有効となる。
【0114】
図19は、画像データ内のアライメントマークを4頂点とする四角形を被記録媒体たるプリント配線基板のアライメントマークを4頂点とする四角形に変換する状況を説明する概要図である。説明の便宜のため、画像データ44内のアライメントマークの4頂点の座標を(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)とし、プリント配線基板53のアライメントマークの4頂点を(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)とする。また、画像データ44は縦横P画素の正方形とし、ブロックサイズも縦横L画素とする。
【0115】
画像データ44は通常は矩形であり、プリント基板の銅箔に合わせた場合、矩形の画像データは、形状誤差に対するブロック補正の変形後の画像形状60になると仮定し、その時の印刷画像データは形状誤差に対するブロック補正の変形後の画像データ形状61になる。またこの例では画像データ44は縦横20個の合計400個のブロック47に分割されているとする。
上記の通り、ここで隣接するブロック47との最大移動距離を1画素以内とすると、Y方向とX方向とも最大の拡大サイズはP+19画素、最小の縮小サイズはP-19画素となる。この最大拡大サイズP+19画素でも画像形状60の画像データを生成できない場合は、ブロック47の分割数を20よりも多くする必要がある。
【0116】
ここで、説明の便宜のため、画像データ44内のアライメントマークの4頂点の座標である(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)と、プリント配線基板53のアライメントマーク54の4頂点の座標である(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)とを下記のように仮定する。
条件1;
(X1,Y1)=(0,0)、(X2,Y2)=(200,000、0)、
(X3,Y3)=(200,000、200,000)、(X4,Y4)=(0、200,000)
(x1,y1)=(0,0)、(x2,y2)=(199,900、-100)、
(x3,y3)=200,100、200,100)、(x4,y4)=(-100,199,900)
単位はμmとする。即ち左上の原点は一致していて、右上の隅はXYとも変形後に100μmマイナスに位置し、右下の隅はXYとも変形後に100μmプラスに位置し、左下の隅はXYとも変形後に100μmマイナスに位置している。P=200mmであり、4点の座標のズレ量は最大で100μmなので
図19に示すような視覚上明らかな程度に大きな変形は生じないが、説明の便宜上視覚的に変形が明らかなように表示している。なお、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の数値は実際には画像データから取得することが可能であり、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)は
図18での説明の通りカメラ5で撮像されたアライメントマーク54を測定することで生成される。
【0117】
次に前述の変換係数A、B、C、D、E、F、G、Hを求める。
条件1;を式1;に代入し、変換係数A、B、C、Dを求める。
0=A*0*0+B*0+C*0+D
199900=A*200000*0+B*200000+C*0+D
200100=A*200000*200000+B*200000+C*200000+D
-100=A*0*200000+B*0+C*200000+D
4本の連立方程式を解くとA=7.5E―09、B=0.9995、C=―0.0005、D=0となる。
ここでBはxiの主たる係数でありX方向の変倍率を示し0.9995とほぼ1に近い値になる。AとCはYに影響する係数であり歪みを表現するために使う。歪みが小さいのでA=7.5E―09、C=―0.0005とかなり小さな値になる。Dは平行移動を表す係数になるがここでは平行移動していないので0となる。
【0118】
さらに、条件1;を式1;に代入し、変換係数E、F、G、Hを求める。
0=E*0*0+F*0+G*0+H
―100=E*200000*0+F*200000+G*0+H
200100=E*200000*200000+F*200000+G*200000+H
199900=E*0*200000+F*0+G*200000+H
同様に4本の連立方程式を解くとE=7.5E―09、F=-0.0005、G=0.9995、H=0となる。
【0119】
上記で求めた、A、B、C、D、E、F、G、Hを使って59画像データの全画素(Xi、Yi)を60変形後の形状(xi,yi)に変換することができる。
xi=A*Xi*Yi+B*Xi+C*Yi+D
yi=E*Yi*Yi+F*Yi+G*Yi+H
この式では、変換後のμm単位の位置が算出されるので、その値を画素解像度、例えば2400dpiの場合は10.58μm、2880dpiの場合は8.8μmで割れば移動すべき画素数が算出される。
【0120】
図20は、上記の計算の結果算定された移動画素数各々をブロックごとにブロックの並びに応じて配列した一覧表である。なお、ブロック内に表示される数値の単位は画素である。
図20の例では変形後の画像データが正方形でX方向とY方向の変形が結果的に対称になった例でありX方向、Y方向とも同じテーブルになったが、X方向とY方向の変形が対称とならない場合、X方向とY方向とでテーブルが異なる場合もある。
【0121】
例えば画像データのX方向10番目、Y方向10番目のブロック左上の座標X=90000,Y=90000であり、上の式で計算するとx=89,970、y=89,970となる。距離に直すとXYとも89,970―90000=-28μmであり、2400dpiの解像度とすると1画素は約10.58μmであり、-28/10.58=2.65画素となり四捨五入すると3画素マイナス方向に移動という結果になる。
図20の例では、ブロックの移動量は、最大8画素、最小―9画素の移動になっている。これはブロックの代表値を左上の原点方向に指定した影響であり、
図19の端部で最大±100μmのズレであることを考えれば妥当な値である。また、隣接する上下左右のブロック間の数値の差は1以下であり、隣接ブロックとは最大1画素の移動であることが理解できる。同じ値が隣接する場合は、同じ量移動しているので同じ値が隣接するブロック間で距離の差は無いということになる。
【0122】
以上の過程を経て、被記録媒体の形状誤差に応じた画像データのブロック補正処理を実現することができる。例えば、銅パターンが形成されているプリント配線基板に対して、インクジェット記録装置において絶縁体であるレジスト材料を、プリント配線基板の製造後工程として付与する場合でプリント配線基板毎に若干の精度誤差があるとしても、アライメントマークに応じて画像データに対してブロック補正処理を実施することで、1画素線が消滅する現象や、1画素線が2画素線になる現象を回避しつつ、銅パターンに対して精度よくレジスト材料を付与する印刷が可能になる。
【0123】
そして、上記の被記録媒体の形状誤差に応じた画像データのブロック補正処理を実施したうえで、さらに第一の実施形態で説明した機械精度誤差に応じたブロック補正処理を実施することで、更なる高精度の印刷を実現できる。
【0124】
上記のような第二の実施形態における処理の流れを、
図21を用いて説明する。
図21は、第二の実施形態における第一の例における処理の流れの全体像を説明するチャート図である。これらの処理は制御パソコン12が対応するプログラムに従って実行する。
チャート62において印刷対象として指定された印刷画像データに対して、チャート65において測定されたアライメントマークに基づく被記録媒体の形状誤差に応じた補正値に基づき、チャート63において1回目のブロック補正処理を行い、被記録媒体の形状に応じて補正した1回目の補正後印刷画像データを生成する。さらにチャート67において機械精度誤差に応じて取得されたテーブル内ブロック補正データ及びチャート66においてテーブル14上における被記録媒体7の載置位置座標を参照して、被記録媒体7の載置位置座標に応じたテーブル内ブロック補正データを用いて、チャート64において1回目の補正後印刷画像データに対してさらに第一の実施形態で説明した機械精度誤差に応じた2回目のブロック補正処理を行い、2回目の補正後印刷画像データを生成する。なお、被記録媒体の形状に応じて補正した1回目の補正後印刷画像データの生成と、機械精度誤差に応じて補正した2回目の補正後印刷画像データの生成との順番はどちらが先でもよく、最終的に、被記録媒体の形状誤差と機械精度誤差との両方を補正した印刷画像データを生成できる。
【0125】
このとき、第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理とが重なって実施されることで、ブロックの移動量が2倍になる可能性がある。
【0126】
第二の実施形態における第一の例においては、第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理において設定されるブロックのサイズを統一し、第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理において設定されるブロックの境界が重ならないようにずらして設定して所定の位相を持つようにすることで、1つのブロックの移動量が1画素超とならないようにしている。
図22は、第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理においてブロックのサイズを統一したうえで所定の位相を設定した状況を示す模式図である。
図22の例では第一のブロック補正処理及び第二のブロック補正処理において、ブロックの移動量が1画素超とならないようなサイズに統一したうえで、第一のブロック補正処理の開始原点位置たる原点73と、第二のブロック補正処理の開始原点位置たる原点74とを、1つのブロックの範囲内で移動させ、これにより、第一のブロック補正処理のブロック全体と、第二のブロック補正処理のブロック全体とを移動させることで異なる位相を設定し、図に示すように第一の位相68と実線で示す第二の位相69の2通りの位相とを設定する。第一のブロック補正処理では第一の位相68でブロック補正処理を行い、第二のブロック補正処理では第二の位相69でブロック補正処理を行うことで、第一のブロック補正処理によるブロックの移動と、第二のブロック補正処理によるブロックの移動は異なる位置で実行されるので、第一のブロック補正処理と第二のブロック補正処理において、ブロックの移動が同じ境界(ブロック)で実行されることがなくなり、一つのブロックが1画素超移動することを回避できる。
【0127】
また、第一のブロック補正処理によるブロックの移動と、第二のブロック補正処理によって、1画素超の移動量となるブロック47が発生する場合、
図23を参照して説明したように、移動量が1画素超となるブロック47をさらに分割し、分割したブロック各々を1画素ずつ移動させる方法をとることもできる。
【0128】
第二の実施形態の第一の例を、フローチャートを用い、被記録媒体がプリント配線基板53である例を用いて改めて説明する。
図24は、第二の実施形態における第一の例の流れを示すフローチャートである。同フローチャートに記載された各処理はフローに対応したプログラムが格納された制御パソコン12による処理が実施される。フロー121にて、プリント配線基板53をテーブル14に載置する。次にフロー122にて、カメラ5を用いて、プリント配線基板53に配置されたアライメントマーク54をカメラ5で撮像し制御パソコン12の処理により中心座標を算出する。これは
図18で説明した処理に対応する。次に、フロー123にて、制御パソコン12の処理により画像データのアライメントマーク位置座標データと、フロー122にて取得したプリント配線基板53のアライメントマーク54の座標データの差から任意四角形変換係数を算出する。これは、
図19で説明した内容に対応する。次にフロー124にて、制御パソコン12の処理により画像データをブロック分割し、各ブロックの代表点に対し任意四角形変換係数を使い変換する。これも
図19で説明した内容に対応する。次にフロー125にて、制御パソコン12の処理により上記変換前後の差と印刷解像度から各ブロックの移動量を算出する。これは
図20で説明した内容に対応する。次にフロー126にて、制御パソコン12の処理により上記移動量に従って各ブロックを移動する。次にフロー127にて、制御パソコン12の処理により移動したブロックを合成して画像データを再生成する。さらにフロー128にて、記録装置内の温度を測定する。次にフロー129にて、制御パソコン12の処理によりフロー128にて測定した温度から対応するテーブル内ブロック補正データを選択し記録手段から参照する。次にフロー130にて、制御パソコン12の処理により画像データを異なる位相でブロック分割し、印刷開始位置とテーブル内ブロック補正表から、被記録媒体7の載置位置座標に応じたテーブル内ブロック補正データを用いて各ブロックの移動量を算出する。これは
図20の説明に対応する。そして、フロー131にて、制御パソコン12の処理により上記移動量に従って各ブロックを移動する。最後にフロー132にて、制御パソコン12の処理により移動したブロックを合成して画像データを再度生成する。
【0129】
また、第二の実施形態においては、第二の例として、予め、アライメントマークに基づく被記録媒体の形状誤差に応じた補正値と、テーブル内ブロック補正データの参照と、被記録媒体の載置座標の参照とを実施して、ブロック移動量全体を参照したうえで、最終的なブロック移動量を算出しておき、最終的なブロック移動量に基づいて、一回のブロック補正処理によって、被記録媒体の形状誤差と機械精度誤差との両方を補正した印刷画像データを生成することも可能である。
【0130】
図25は、第二の実施形態における第二の例の全体像を説明するチャート図である。
図25の例では、チャート65において測定されたアライメントマークに基づく被記録媒体の形状誤差に応じた補正値に基づき、チャート70にてブロック移動量(1)を算出する。さらにチャート66において機械精度誤差に応じて取得されたテーブル内ブロック補正データを参照したうえで、チャート67においてテーブル14上における被記録媒体の載置座標を参照して、被記録媒体7の載置位置座標に応じたテーブル内ブロック補正データを用いて、チャート71にてブロック移動量(2)を算出する。さらに、チャート72において、ブロック移動量(1)とブロック移動量(2)を合計して、最終的なブロック移動量を算出する。そして、チャート62において制御パソコン12からの指令により印刷対象として指定された印刷画像データに対して、チャート72において算出された最終的なブロック移動量をチャート63において印刷画像データに適用することで、被記録媒体の形状誤差と機械精度誤差との両方を補正した印刷画像データを生成する。
図21の例と同様に、チャート70と、チャート71との順番は前後してもよく、最終的に、被記録媒体の形状誤差と機械精度誤差との両方を補正した印刷画像データを生成できる。
【0131】
なお、第二の実施形態における第二の例においても、ブロック47の移動量を1画素以内に納めることが、ブロック補正による印刷画質の劣化を回避のために有効である。ブロック47の移動量を1画素以内に納めるためには種々の方法が想定される。上記のように、ブロック47の移動量が1画素超になるブロック47が存在する場合には、全てのブロック47の大きさをさらに小さくなるように設定することで、ブロック47各々の移動量は1画素以内に納めることができる。この場合も、移動させるブロック47の量を最小限とし、処理速度向上を図る観点からは、ブロック47の移動量が1画素以内となる最大の大きさとすることもできる。ブロック47の移動量を1画素以内に納める他の方法として、上記の
図23で説明した通り、移動量が1画素超となるブロック47があった場合には、当該移動量が1画素超となるブロック47のみをさらに分割し、分割したブロック47各々を1画素ずつ移動させる方法によることもできる。
【0132】
第二の実施形態の第二の例を、フローチャートを用い、被記録媒体がプリント配線基板53である例を用いて改めて説明する。
図26は、第二の実施形態における第二の例の流れを示すフローチャートである。同フローチャートに記載された各処理は、フローに対応したプログラムが格納された制御パソコン12による処理が実施される。フロー121にて、プリント配線基板53をテーブル14に載置する。次にフロー122にて、カメラ5を用いて、プリント配線基板53に配置されたアライメントマーク54をカメラ5で撮像し制御パソコン12の処理により中心座標を算出する。これは
図18で説明した処理に対応する。次に、フロー123にて制御パソコン12の処理により、画像データのアライメントマーク位置座標データと、フロー122にて取得したプリント配線基板53のアライメントマーク54の座標データの差から任意四角形変換係数を算出する。これは、
図19で説明した内容に対応する。次にフロー124にて、制御パソコン12の処理により画像データをブロック分割し、各ブロックの代表点に対し任意四角形変換係数を使い変換する。これも
図19で説明した内容に対応する。次にフロー125にて、制御パソコン12の処理により上記変換前後の差と印刷解像度からブロック移動量(1)を算出する。これは
図20で説明した内容に対応する。以上までは、第一の例と同様である。次にフロー128にて、記録装置内の温度を測定する。次にフロー129にて、制御パソコン12の処理によりフロー128にて測定した温度から対応するテーブル内ブロック補正データを選択し記録手段から参照する。被記録媒体7の載置位置座標に応じたテーブル内ブロック補正データを参照した数値をブロック移動量(2)とする。次に、フロー130にて、制御パソコン12の処理によりブロック移動量(1)とブロック移動量(2)を合成して、ブロック各々の最終的な移動量を算出する。そして、フロー131にて、制御パソコン12の処理によりフロー130で算出した移動量に従って各ブロックを移動する。最後にフロー132にて制御パソコン12の処理により、移動したブロックを合成して画像データを生成する。
【0133】
以上の過程を経て印刷動作を実施することで、さらに高精度の印刷を実現することができた。
【符号の説明】
【0134】
1 インクジェットヘッド
2 キャリッジ
3 制御基板
4 サブタンク
5 カメラ
6 カメラ用照明
7 被記録媒体
8 X軸駆動ユニット
9 負圧ポンプ
10 メインタンク
11 ポンプ
12 制御パソコン
13 インターフェースボード
14 テーブル
15 Y軸駆動ユニット
17 三方弁
18 正圧ポンプ
19 温度センサー
25 ガラススケール
26 基準マーク
27 カメラフレーム
31 X座標補正値
32 Y座標補正値
44 画像データ
45 変形後の画像形状
46 変換後の画像データ
47 ブロック
51 格納手段
52 リニアエンコーダ座標
53 プリント配線基板
54 アライメントマーク
55 選択手段
60 画像形状
61 画像データ形状
76 代表点