(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063977
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20230428BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230428BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230428BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/24 G
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174132
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】521467881
【氏名又は名称】吉林OLED日本研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
(72)【発明者】
【氏名】古山 晃一
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG02
3K107GG32
3K107GG33
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DB06
4K029EA00
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA06
(57)【要約】
【課題】蒸着マスクを基板に密着させることができ、基板の画素の領域に蒸着材料のパターンを形状精度良く形成することができる蒸着装置を提供する。
【解決手段】蒸着装置1は、磁性材料よりなる蒸着マスク7を保持するマスク保持部2と、基板11が蒸着マスク7と接するように、基板11を配置する基板配置部3と、蒸着マスク7を挟んで、基板11が配置される側と反対側に配置された蒸着源4と、基板11を挟んで、蒸着マスク7が配置される側と反対側に配置され、蒸着マスク7を磁力で吸引することで蒸着マスク7を基板11に密着させる吸引部5と、を有する。吸引部5は、吸引部5の基板11側の磁場の強度が、吸引部5の基板11側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、基板11に沿ってハルバッハ配列された複数の永久磁石PMを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に蒸着材料を蒸着する蒸着装置において、
磁性材料よりなる蒸着マスクを保持するマスク保持部と、
前記基板が、前記マスク保持部に保持されている前記蒸着マスクと接するように、前記基板を配置する基板配置部と、
前記蒸着マスクを挟んで、前記基板が配置される側と反対側に配置され、前記蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、
前記基板を挟んで、前記蒸着マスクが配置される側と反対側に配置され、前記蒸着マスクを磁力で吸引することで前記蒸着マスクを前記基板に密着させる吸引部と、
を有し、
前記吸引部は、前記吸引部の前記基板側の磁場の強度が、前記吸引部の前記基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、前記基板に沿ってハルバッハ配列された複数の永久磁石を含む、蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置において、
前記複数の永久磁石は、前記吸引部の前記基板側の磁場の強度が、前記吸引部の前記基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、前記基板に沿った第1方向にハルバッハ配列され、
前記吸引部は、前記第1方向に配列された複数の永久磁石群を含み、
前記複数の永久磁石群の各々は、前記第1方向に順次配置された、第1永久磁石、第2永久磁石、第3永久磁石及び第4永久磁石を含み、
前記第1永久磁石は、前記基板に垂直な第2方向に沿った第1磁化を有し、
前記第2永久磁石は、前記第1方向に沿った第2磁化を有し、
前記第3永久磁石は、前記第2方向に沿った第3磁化を有し、
前記第4永久磁石は、前記第1方向に沿った第4磁化を有し、
前記第3磁化の磁化方向は、前記第1磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第4磁化の磁化方向は、前記第2磁化の磁化方向と反平行である、蒸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸着装置において、
前記マスク保持部により保持されている前記蒸着マスクは、
前記基板に沿い且つ前記第1方向と交差する第3方向にそれぞれ延在する第1延在部及び第2延在部と、前記第1方向にそれぞれ延在する第3延在部及び第4延在部と、を含み、枠部形状を有する第1枠部と、
それぞれ前記磁性材料よりなり、前記第1方向にそれぞれ延在し、前記第1方向における第1の側の第1端部が前記第1延在部にそれぞれ固定され、前記第1方向における前記第1の側と反対側の第2端部が前記第2延在部にそれぞれ固定され、且つ、前記第3方向に配列された複数の第1マスクシート部と、
を含み、
前記複数の第1マスクシート部の各々は、
前記基板に前記蒸着材料を蒸着するための蒸着用パターンがそれぞれ形成され、前記第1方向に互いに間隔を空けて配列された複数の第1パターン部と、
前記複数の第1パターン部のうち前記第1方向で互いに隣り合う2つの第1パターン部をそれぞれ連結する複数の第1リブ部と、
を含み、
前記複数の第1マスクシート部のいずれかについて、前記複数の第1パターン部のうち前記第1方向で互いに隣り合う2つの第1パターン部の中心間隔を、第1間隔とし、
前記複数の永久磁石群のうち前記第1方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第2間隔としたとき、
前記第2間隔は、前記第1間隔に等しいか、又は、前記第1間隔の整数分の1に等しい、蒸着装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蒸着装置において、
前記マスク保持部により保持されている前記蒸着マスクは、
前記基板に沿い且つ前記第1方向と交差する第4方向にそれぞれ延在する第5延在部及び第6延在部と、前記第1方向にそれぞれ延在する第7延在部及び第8延在部と、を含み、枠部形状を有する第2枠部と、
それぞれ前記磁性材料よりなり、前記第4方向にそれぞれ延在し、前記第4方向における第2の側の第3端部が前記第7延在部にそれぞれ固定され、前記第4方向における前記第2の側と反対側の第4端部が前記第8延在部にそれぞれ固定され、且つ、前記第1方向に配列された複数の第2マスクシート部と、
を含み、
前記複数の第2マスクシート部のうち前記第1方向で互いに隣り合う2つの第2マスクシート部の中心間隔を、第3間隔とし、
前記複数の永久磁石群のうち前記第1方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第4間隔としたとき、
前記第4間隔は、前記第3間隔に等しいか、又は、前記第3間隔の整数分の1に等しい、蒸着装置。
【請求項5】
請求項3に記載の蒸着装置において、
前記複数の永久磁石は、前記吸引部の前記基板側の磁場の強度が、前記吸引部の前記基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、前記第1方向及び前記第3方向にハルバッハ配列され、
前記複数の永久磁石群は、前記第1方向及び前記第3方向に配列され、
前記複数の永久磁石群の各々は、第5永久磁石、第6永久磁石、第7永久磁石、第8永久磁石、第9永久磁石、第10永久磁石、第11永久磁石及び第12永久磁石を含み、
前記第1永久磁石、前記第5永久磁石、前記第7永久磁石及び前記第11永久磁石は、前記第3方向に順次配置され、
前記第3永久磁石、前記第6永久磁石、前記第9永久磁石及び前記第12永久磁石は、前記第3方向に順次配置され、
前記第7永久磁石、前記第8永久磁石、前記第9永久磁石及び前記第10永久磁石は、前記第1方向に順次配置され、
前記第5永久磁石は、前記第3方向に沿った第5磁化を有し、
前記第6永久磁石は、前記第3方向に沿った第6磁化を有し、
前記第7永久磁石は、前記第2方向に沿った第7磁化を有し、
前記第8永久磁石は、前記第1方向に沿った第8磁化を有し、
前記第9永久磁石は、前記第2方向に沿った第9磁化を有し、
前記第10永久磁石は、前記第1方向に沿った第10磁化を有し、
前記第11永久磁石は、前記第3方向に沿った第11磁化を有し、
前記第12永久磁石は、前記第3方向に沿った第12磁化を有し、
前記第6磁化の磁化方向は、前記第5磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第7磁化の磁化方向は、前記第1磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第8磁化の磁化方向は、前記第2磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第9磁化の磁化方向は、前記第3磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第10磁化の磁化方向は、前記第4磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第11磁化の磁化方向は、前記第5磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第12磁化の磁化方向は、前記第6磁化の磁化方向と反平行であり、
前記複数の第1マスクシート部のうち前記第3方向で互いに隣り合う2つの第1マスクシート部の中心間隔を、第5間隔とし、
前記複数の永久磁石群のうち前記第3方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第6間隔としたとき、
前記第6間隔は、前記第5間隔に等しいか、又は、前記第5間隔の整数分の1に等しい、蒸着装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の蒸着装置において、
前記吸引部は、上下方向である前記第2方向に移動可能に設けられ、
前記蒸着装置は、更に、
前記吸引部を前記第2方向に移動させ、前記吸引部と前記基板との間の前記第2方向における第1中心間隔を調整する第1移動部と、
前記蒸着マスク又は前記基板を前記第2方向に移動させ、前記蒸着マスクと前記基板との間の前記第2方向における第2中心間隔を調整する第2移動部と、
前記蒸着マスク又は前記基板を水平面内で移動させ、前記基板に対する前記蒸着マスクの水平面内での第1相対位置を調整する第3移動部と、
前記第1移動部、前記第2移動部及び前記第3移動部の動作を制御する第1制御部と、
を有し、
前記第1制御部は、
前記蒸着マスクが前記基板から離れるように、前記第1移動部により、前記吸引部を前記第2方向に移動させ、前記第1中心間隔を調整し、前記第2移動部により、前記蒸着マスク又は前記基板を前記第2方向に移動させ、前記第2中心間隔を調整し、
前記蒸着マスクが前記基板から離れている状態で、前記第1相対位置が第1範囲内になるように、前記第3移動部により、前記蒸着マスク又は前記基板を水平面内で移動させ、前記第1相対位置を調整し、
前記第1相対位置が前記第1範囲内である状態で、前記蒸着マスクが前記基板に接するように、前記第2移動部により、前記蒸着マスク又は前記基板を前記第2方向に移動させ、前記第2中心間隔を調整し、
前記蒸着マスクが前記基板に接している状態で、前記吸引部が前記蒸着マスクを磁力で吸引することで前記蒸着マスクが前記基板に密着するように、前記第1移動部により、前記吸引部を前記第2方向に移動させ、前記第1中心間隔を調整するように、
前記第1移動部、前記第2移動部及び前記第3移動部の動作を制御する、蒸着装置。
【請求項7】
請求項1に記載の蒸着装置において、
前記吸引部は、前記基板に垂直な第1軸を中心として回転可能に設けられ、
前記蒸着装置は、更に、
前記第1軸を中心として前記吸引部を回転させ、前記吸引部の前記第1軸を中心とした回転角度を調整する回転部と、
前記回転部の動作を制御する第2制御部と、
を有し、
前記吸引部は、前記回転角度が第1角度であるとき、前記基板に沿った第5方向に配列された複数の永久磁石群を含み、
前記複数の永久磁石群の各々は、前記回転角度が前記第1角度であるとき、前記第5方向に順次配置された、第13永久磁石、第14永久磁石、第15永久磁石及び第16永久磁石を含み、
前記第13永久磁石は、前記基板に垂直な第6方向に沿った第13磁化を有し、
前記第14永久磁石は、前記回転角度が前記第1角度であるときに前記第5方向に沿った第14磁化を有し、
前記第15永久磁石は、前記第6方向に沿った第15磁化を有し、
前記第16永久磁石は、前記回転角度が前記第1角度であるときに前記第5方向に沿った第16磁化を有し、
前記第15磁化の磁化方向は、前記第13磁化の磁化方向と反平行であり、
前記第16磁化の磁化方向は、前記第14磁化の磁化方向と反平行であり、
前記マスク保持部により保持されている前記蒸着マスクは、
前記基板に沿い且つ前記第5方向と交差する第7方向にそれぞれ延在する第9延在部及び第10延在部と、前記第5方向にそれぞれ延在する第11延在部及び第12延在部と、を含み、枠部形状を有する第3枠部と、
それぞれ前記磁性材料よりなり、前記第5方向にそれぞれ延在し、前記第5方向における第3の側の第5端部が前記第9延在部にそれぞれ固定され、前記第5方向における前記第3の側と反対側の第6端部が前記第10延在部にそれぞれ固定され、且つ、前記第7方向に配列された複数の第3マスクシート部と、
を含み、
前記複数の第3マスクシート部の各々は、
前記基板に前記蒸着材料を蒸着するための蒸着用パターンがそれぞれ形成され、前記第5方向に互いに間隔を空けて配列された複数の第2パターン部と、
前記複数の第2パターン部のうち前記第5方向で互いに隣り合う2つの第2パターン部をそれぞれ連結する複数の第2リブ部と、
を含み、
前記第2制御部は、
前記複数の第3マスクシート部のいずれかについて、前記複数の第2パターン部のうち前記第5方向で互いに隣り合う2つの第2パターン部の中心間隔を、第7間隔とし、
前記複数の永久磁石群のうち前記回転角度が前記第1角度であるときに前記第5方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群について、前記回転角度が前記第1角度と異なる第2角度であるときの前記2つの永久磁石群の前記第5方向における中心間隔を、第8間隔としたとき、
前記第8間隔と、前記第7間隔又は前記第7間隔の整数分の1と、の差が第2範囲内になるように、前記回転部により、前記第1軸を中心として前記吸引部を回転させ、前記回転角度を調整するように、
前記回転部の動作を制御する、蒸着装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の蒸着装置において、
前記蒸着マスクを有する、蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機エレクトロルミネッセンス(Electro-Luminescence:EL)表示装置等の表示装置が製造される場合には、透明基板等の基板の上に、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)等の駆動素子、平坦化膜及び電極が形成され、形成された電極の上に、画素ごとに対応して有機層が形成される。形成される有機層は水分に弱いため、有機層をエッチングでパターニングすることは、困難である。そのため、基板(被蒸着基板)と蒸着マスクとが互いに重ねて配置された状態で、必要な画素の領域のみに、蒸着マスクの開口を通して有機材料を蒸着することにより、有機層のパターンが形成される。
【0003】
有機層が形成される際に、蒸着マスクが基板にできるだけ近接していないと、画素の領域のみに形状精度良く有機層のパターンが形成されない。画素の領域のみに形状精度良く有機層のパターンが形成されないと、製造された表示装置により表示される表示画像が不鮮明になるおそれがある。そのため、蒸着マスクとして磁性材料よりなる蒸着マスクを使用し、永久磁石又は電磁石と蒸着マスクとの間に基板を介在させることで、蒸着マスクを磁力で吸引し、蒸着マスクを基板に密着させるマグネットチャック即ち吸引部が用いられている。
【0004】
特許第6302150号公報(特許文献1)には、蒸着装置において、磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、マスクホルダーによって保持される蒸着マスクに近接して被蒸着基板を配置すべく、被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、蒸着マスクの被蒸着基板と反対面に蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、基板ホルダーに保持される被蒸着基板の蒸着マスクと反対面に設けられ、蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有する技術が開示されている。
【0005】
また、画素が微細化するのに伴って、基板と蒸着マスクとを精密にアライメント即ち位置合わせすることが望ましい。
【0006】
特開2006-176809号公報(特許文献2)には、基板とマスクのアライメント方法において、マスクの所定位置に設けられた位置検出用のマークを上方に設置した撮影手段で撮影する工程と、基板の所定位置に設けられた位置検出用のマークを撮影手段で撮影する工程と、撮影した画像の処理によって得られるマスク側のマークの位置情報と基板側のマークの位置情報とから、基板とマスクの相対位置を演算する工程と、基板とマスクの相対位置が所定の許容範囲内になるように、基板とマスクとを演算された相対位置に基づいて相対移動させる工程と、相対移動後の基板とマスクとを密着させる工程とを備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6302150号公報
【特許文献2】特開2006-176809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
画素が微細化するのに伴って、例えば100μm程度以下の中心間隔で開口が形成された蒸着マスクが用いられるようになってきている。そのため、例えば10~30μm程度の極薄の厚さを有する蒸着マスクが用いられるようになってきている。
【0009】
しかしながら、蒸着マスクの厚さが極薄になると、単位面積当たりの蒸着マスクを吸引部により磁力で吸引する吸引力が小さくなる。このような場合、蒸着マスクを基板に密着させることができないので、基板の画素の領域に有機層即ち蒸着材料のパターンを形状精度良く形成することができず、製造された表示装置により表示される表示画像が不鮮明になるおそれがある。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、基板に蒸着材料を蒸着する蒸着装置において、極薄の厚さを有する蒸着マスクが用いられる場合でも、単位面積当たりの蒸着マスクを磁力で吸引する吸引力を増加させ、蒸着マスクを基板に密着させることができ、基板の画素の領域に蒸着材料のパターンを形状精度良く形成することができる蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明の一態様としての蒸着装置は、基板に蒸着材料を蒸着する蒸着装置である。当該蒸着装置は、磁性材料よりなる蒸着マスクを保持するマスク保持部と、基板が、マスク保持部に保持されている蒸着マスクと接するように、基板を配置する基板配置部と、蒸着マスクを挟んで、基板が配置される側と反対側に配置され、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、基板を挟んで、蒸着マスクが配置される側と反対側に配置され、蒸着マスクを磁力で吸引することで蒸着マスクを基板に密着させる吸引部と、を有する。吸引部は、吸引部の基板側の磁場の強度が、吸引部の基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、基板に沿ってハルバッハ配列された複数の永久磁石を含む。
【0013】
また、他の一態様として、複数の永久磁石は、吸引部の基板側の磁場の強度が、吸引部の基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、基板に沿った第1方向にハルバッハ配列され、吸引部は、第1方向に配列された複数の永久磁石群を含み、複数の永久磁石群の各々は、第1方向に順次配置された、第1永久磁石、第2永久磁石、第3永久磁石及び第4永久磁石を含んでもよい。第1永久磁石は、基板に垂直な第2方向に沿った第1磁化を有し、第2永久磁石は、第1方向に沿った第2磁化を有し、第3永久磁石は、第2方向に沿った第3磁化を有し、第4永久磁石は、第1方向に沿った第4磁化を有し、第3磁化の磁化方向は、第1磁化の磁化方向と反平行であり、第4磁化の磁化方向は、第2磁化の磁化方向と反平行であってもよい。
【0014】
また、他の一態様として、マスク保持部により保持されている蒸着マスクは、基板に沿い且つ第1方向と交差する第3方向にそれぞれ延在する第1延在部及び第2延在部と、第1方向にそれぞれ延在する第3延在部及び第4延在部と、を含み、枠部形状を有する第1枠部と、それぞれ磁性材料よりなり、第1方向にそれぞれ延在し、第1方向における第1の側の第1端部が第1延在部にそれぞれ固定され、第1方向における第1の側と反対側の第2端部が第2延在部にそれぞれ固定され、且つ、第3方向に配列された複数の第1マスクシート部と、を含んでもよい。複数の第1マスクシート部の各々は、基板に蒸着材料を蒸着するための蒸着用パターンがそれぞれ形成され、第1方向に互いに間隔を空けて配列された複数の第1パターン部と、複数の第1パターン部のうち第1方向で互いに隣り合う2つの第1パターン部をそれぞれ連結する複数の第1リブ部と、を含んでもよい。複数の第1マスクシート部のいずれかについて、複数の第1パターン部のうち第1方向で互いに隣り合う2つの第1パターン部の中心間隔を、第1間隔とし、複数の永久磁石群のうち第1方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第2間隔としたとき、第2間隔は、第1間隔に等しいか、又は、第1間隔の整数分の1に等しくてもよい。
【0015】
また、他の一態様として、マスク保持部により保持されている蒸着マスクは、基板に沿い且つ第1方向と交差する第4方向にそれぞれ延在する第5延在部及び第6延在部と、第1方向にそれぞれ延在する第7延在部及び第8延在部と、を含み、枠部形状を有する第2枠部と、それぞれ磁性材料よりなり、第4方向にそれぞれ延在し、第4方向における第2の側の第3端部が第7延在部にそれぞれ固定され、第4方向における第2の側と反対側の第4端部が第8延在部にそれぞれ固定され、且つ、第1方向に配列された複数の第2マスクシート部と、を含んでもよい。複数の第2マスクシート部のうち第1方向で互いに隣り合う2つの第2マスクシート部の中心間隔を、第3間隔とし、複数の永久磁石群のうち第1方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第4間隔としたとき、第4間隔は、第3間隔に等しいか、又は、第3間隔の整数分の1に等しくてもよい。
【0016】
また、他の一態様として、複数の永久磁石は、吸引部の基板側の磁場の強度が、吸引部の基板側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、第1方向及び第3方向にハルバッハ配列され、複数の永久磁石群は、第1方向及び第3方向に配列され、複数の永久磁石群の各々は、第5永久磁石、第6永久磁石、第7永久磁石、第8永久磁石、第9永久磁石、第10永久磁石、第11永久磁石及び第12永久磁石を含んでもよい。第1永久磁石、第5永久磁石、第7永久磁石及び第11永久磁石は、第3方向に順次配置され、第3永久磁石、第6永久磁石、第9永久磁石及び第12永久磁石は、第3方向に順次配置され、第7永久磁石、第8永久磁石、第9永久磁石及び第10永久磁石は、第1方向に順次配置されていてもよい。第5永久磁石は、第3方向に沿った第5磁化を有し、第6永久磁石は、第3方向に沿った第6磁化を有し、第7永久磁石は、第2方向に沿った第7磁化を有し、第8永久磁石は、第1方向に沿った第8磁化を有し、第9永久磁石は、第2方向に沿った第9磁化を有し、第10永久磁石は、第1方向に沿った第10磁化を有し、第11永久磁石は、第3方向に沿った第11磁化を有し、第12永久磁石は、第3方向に沿った第12磁化を有し、第6磁化の磁化方向は、第5磁化の磁化方向と反平行であり、第7磁化の磁化方向は、第1磁化の磁化方向と反平行であり、第8磁化の磁化方向は、第2磁化の磁化方向と反平行であり、第9磁化の磁化方向は、第3磁化の磁化方向と反平行であり、第10磁化の磁化方向は、第4磁化の磁化方向と反平行であり、第11磁化の磁化方向は、第5磁化の磁化方向と反平行であり、第12磁化の磁化方向は、第6磁化の磁化方向と反平行であってもよい。複数の第1マスクシート部のうち第3方向で互いに隣り合う2つの第1マスクシート部の中心間隔を、第5間隔とし、複数の永久磁石群のうち第3方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群の中心間隔を、第6間隔としたとき、第6間隔は、第5間隔に等しいか、又は、第5間隔の整数分の1に等しくてもよい。
【0017】
また、他の一態様として、吸引部は、上下方向である第2方向に移動可能に設けられていてもよい。当該蒸着装置は、更に、吸引部を第2方向に移動させ、吸引部と基板との間の第2方向における第1中心間隔を調整する第1移動部と、蒸着マスク又は基板を第2方向に移動させ、蒸着マスクと基板との間の第2方向における第2中心間隔を調整する第2移動部と、蒸着マスク又は基板を水平面内で移動させ、基板に対する蒸着マスクの水平面内での第1相対位置を調整する第3移動部と、第1移動部、第2移動部及び第3移動部の動作を制御する第1制御部と、を有してもよい。第1制御部は、蒸着マスクが基板から離れるように、第1移動部により、吸引部を第2方向に移動させ、第1中心間隔を調整し、第2移動部により、蒸着マスク又は基板を第2方向に移動させ、第2中心間隔を調整し、蒸着マスクが基板から離れている状態で、第1相対位置が第1範囲内になるように、第3移動部により、蒸着マスク又は基板を水平面内で移動させ、第1相対位置を調整し、第1相対位置が第1範囲内である状態で、蒸着マスクが基板に接するように、第2移動部により、蒸着マスク又は基板を第2方向に移動させ、第2中心間隔を調整し、蒸着マスクが基板に接している状態で、吸引部が蒸着マスクを磁力で吸引することで蒸着マスクが基板に密着するように、第1移動部により、吸引部を第2方向に移動させ、第1中心間隔を調整するように、第1移動部、第2移動部及び第3移動部の動作を制御してもよい。
【0018】
また、他の一態様として、吸引部は、基板に垂直な第1軸を中心として回転可能に設けられていてもよい。当該蒸着装置は、更に、第1軸を中心として吸引部を回転させ、吸引部の第1軸を中心とした回転角度を調整する回転部と、回転部の動作を制御する第2制御部と、を有してもよい。吸引部は、回転角度が第1角度であるとき、基板に沿った第5方向に配列された複数の永久磁石群を含み、複数の永久磁石群の各々は、回転角度が第1角度であるとき、第5方向に順次配置された、第13永久磁石、第14永久磁石、第15永久磁石及び第16永久磁石を含んでもよい。第13永久磁石は、基板に垂直な第6方向に沿った第13磁化を有し、第14永久磁石は、回転角度が第1角度であるときに第5方向に沿った第14磁化を有し、第15永久磁石は、第6方向に沿った第15磁化を有し、第16永久磁石は、回転角度が第1角度であるときに第5方向に沿った第16磁化を有し、第15磁化の磁化方向は、第13磁化の磁化方向と反平行であり、第16磁化の磁化方向は、第14磁化の磁化方向と反平行であってもよい。マスク保持部により保持されている蒸着マスクは、基板に沿い且つ第5方向と交差する第7方向にそれぞれ延在する第9延在部及び第10延在部と、第5方向にそれぞれ延在する第11延在部及び第12延在部と、を含み、枠部形状を有する第3枠部と、それぞれ磁性材料よりなり、第5方向にそれぞれ延在し、第5方向における第3の側の第5端部が第9延在部にそれぞれ固定され、第5方向における第3の側と反対側の第6端部が第10延在部にそれぞれ固定され、且つ、第7方向に配列された複数の第3マスクシート部と、を含んでもよい。複数の第3マスクシート部の各々は、基板に蒸着材料を蒸着するための蒸着用パターンがそれぞれ形成され、第5方向に互いに間隔を空けて配列された複数の第2パターン部と、複数の第2パターン部のうち第5方向で互いに隣り合う2つの第2パターン部をそれぞれ連結する複数の第2リブ部と、を含んでもよい。第2制御部は、複数の第3マスクシート部のいずれかについて、複数の第2パターン部のうち第5方向で互いに隣り合う2つの第2パターン部の中心間隔を、第7間隔とし、複数の永久磁石群のうち回転角度が第1角度であるときに第5方向で互いに隣り合う2つの永久磁石群について、回転角度が第1角度と異なる第2角度であるときの2つの永久磁石群の第5方向における中心間隔を、第8間隔としたとき、第8間隔と、第7間隔又は第7間隔の整数分の1と、の差が第2範囲内になるように、回転部により、第1軸を中心として吸引部を回転させ、回転角度を調整するように、回転部の動作を制御してもよい。
【0019】
また、他の一態様として、当該蒸着装置は、蒸着マスクを有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様を適用することで、基板に蒸着材料を蒸着する蒸着装置において、極薄の厚さを有する蒸着マスクが用いられる場合でも、単位面積当たりの蒸着マスクを磁力で吸引する吸引力を増加させ、蒸着マスクを基板に密着させることができ、基板の画素の領域に蒸着材料のパターンを形状精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態の蒸着装置を模式的に示す一部断面を含む正面図である。
【
図2】実施の形態の蒸着装置を用いて蒸着材料が蒸着される基板及び蒸着マスクを示す平面図である。
【
図3】実施の形態の蒸着装置を用いて基板に蒸着材料を蒸着するための蒸着マスクを示す平面図である。
【
図4】実施の形態の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。
【
図5】実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。
【
図6】実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。
【
図7】実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態の第1変形例の蒸着装置を用いて蒸着材料を蒸着するための蒸着マスクを示す平面図である。
【
図9】実施の形態の第1変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。
【
図10】実施の形態の第2変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を示す平面図である。
【
図11】実施の形態の第3変形例の蒸着装置を模式的に示す一部断面を含む正面図である。
【
図12】実施の形態の第3変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0024】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0025】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0026】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0027】
(実施の形態)
<蒸着装置>
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態の蒸着装置について説明する。本実施の形態の蒸着装置は、基板に蒸着材料を蒸着する蒸着装置である。
【0028】
図1は、実施の形態の蒸着装置を模式的に示す一部断面を含む正面図である。
図2は、実施の形態の蒸着装置を用いて蒸着材料が蒸着される基板及び蒸着マスクを示す平面図である。
図2は、基板が蒸着マスク(
図2では枠部のみを表示)と重ね合わされた状態を示している。
図3は、実施の形態の蒸着装置を用いて基板に蒸着材料を蒸着するための蒸着マスクを示す平面図である。
図4は、実施の形態の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。なお、
図4では、吸引部に含まれる複数の永久磁石のうち一部の複数の永久磁石のみの配置を示している。
【0029】
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態の蒸着装置1は、マスク保持部2と、基板配置部3と、蒸着源4と、吸引部5と、を有する。マスク保持部2、基板配置部3、蒸着源4及び吸引部5は、蒸着装置1が有する真空チャンバ6の内部に設けられている。また、本実施の形態の蒸着装置1は、減圧下で蒸着する場合等に備え、真空チャンバ6の内部を真空排気する真空排気部(図示は省略)を有してもよい。なお、大気圧下で蒸着する場合には、本実施の形態の蒸着装置は、真空チャンバ6及び真空排気部(図示は省略)を有しなくてもよい。
【0030】
マスク保持部2は、蒸着マスク7を保持する。マスク保持部2として、以下に説明するように、例えば
図1の左右両側の各々において、
図1の紙面に垂直な方向における前後にそれぞれ互いに間隔を空けて配置された、合計4つのマスク台2aを含むものを用いることができる。
【0031】
4つのマスク台2aは、真空チャンバ6の天板6aに昇降可能に取り付けられたシャフト8の下端に、フレーム9及びアーム10を介して固定されている。4つのマスク台2aは、シャフト8の上端に取り付けられた昇降モータM1により、上下方向に移動する。
【0032】
蒸着マスク7は、例えば磁性金属材料等の磁性材料よりなる。磁性金属材料として、例えばインバーを用いることができる。インバーとは、鉄及びニッケルを主成分として含有する合金であり、磁気歪みによる体積変化と通常の格子振動による熱膨張が相殺しあって、ある温度範囲での熱膨張が小さくなるものである。なお、本実施の形態の蒸着装置1は、蒸着工程に応じて互いに異なる個別の蒸着マスク7を用いるものであってもよいが、専用の蒸着マスク7を蒸着装置1の一部として有するものであってもよい。
【0033】
蒸着マスク7は、蒸着材料が蒸着される基板11よりやや大きい所定の寸法を有する。後述するように、蒸着マスク7は、枠部FR1を有する。また、枠部FR1は、4つのマスク台2aによって支持される。枠部FR1には、基板配置部3に含まれ、後述するフック3bを収容する切り欠き部(図示は省略)が設けられている。蒸着マスク7には、例えば基板11の中心に対し対称の位置に、位置検出用のマーク7aが複数個設けられている。なお、基板11にも、位置検出用のマーク11aが複数個設けられている。
【0034】
基板配置部3は、基板11が、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7と接するように、基板11を配置する。基板11として、例えばガラス基板等の透明基板を用いることができる。また、基板配置部3として、以下に説明するように、例えば
図1の左右両側の各々において、
図1の紙面に垂直な方向における前後にそれぞれ互いに間隔を空けて配置された、合計4つのフック部材3aを含むものを用いることができる。
【0035】
4つのフック部材3aの各々は、フック部材3aの下端が内側を向いたフック3bを有する。フック3bはマスク台2aよりも上方に配置されている。4つのフック部材3aの各々は、真空チャンバ6の天板6aよりも下方に配置された支持フレーム12に、ヒンジ機構13を介して取付けられている。支持フレーム12の上端は、天板6a上に設けた姿勢制御装置14に接続されている。ヒンジ機構13は、ヒンジ機構13に取り付けられた軸15によって、天板6aの上方に設置した開閉モータ16の出力軸に接続されている。このような構成により、フック部材3aは、姿勢制御装置14によって前後左右方向(XY方向)及び周方向(θ方向)に移動可能、且つ、開閉モータ16及びヒンジ機構13によって、垂直な閉じた位置から外側に略水平に開いた解除位置までヒンジ機構13を支点として開閉可能に設けられている。4つのフック部材3aは、4つのフック部材3aが閉じた状態で、真空チャンバ6内に搬入された基板11を、
図1の左右両側の各々において、
図1の紙面に垂直な方向におけるそれぞれ前後の位置である4箇所の位置で保持する。これによって、基板11は、基板11に生じる撓みが、平面視において、基板11の中心に対して対称となる位置で保持される。
【0036】
蒸着源4は、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7を挟んで、基板11が配置される側と反対側に配置され、蒸着材料を気化又は昇華させる。蒸着源4として、平面視において、点状形状、線状形状、面状形状等の各種の形状を有する蒸着源4を用いることができる。例えば
図1の左右方向に沿った線状形状を有する、ラインソースと呼ばれる蒸着源4が、
図1の紙面に垂直な方向において前端から後端まで走査即ち移動されることにより、基板11の全面に亘り蒸着材料を蒸着することができる。
【0037】
吸引部5は、基板配置部3に保持されている基板11を挟んで、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が配置される側と反対側に配置されている。吸引部5は、蒸着マスク7を磁力で吸引することで蒸着マスク7を基板11に密着させる。なお、本実施の形態では、下方から上方に向かって、蒸着源4、蒸着マスク7、基板11、吸引部5の順に配置されているが(所謂フェイスダウン配置)、上下反転させ、上方から下方に向かって、蒸着源4、蒸着マスク7、基板11、吸引部5の順に配置されていてもよい(所謂フェイスアップ配置)。また、吸引部5として、以下に説明するように、磁石保持部材5aを含むものを用いることができる。
【0038】
磁石保持部材5aは、シャフト8に貫装させた中心シャフト17の下端に、取付け板18を介して取り付けられている。磁石保持部材5aは、取付け板18に固定された支持板5bと、支持板5bの下面に例えば接着されることで固定された磁石部5cと、磁石部5cの下面に例えば接着されることで固定された支持板5dと、を含む。磁石保持部材5aは、フック部材3aのフック3bよりも上方に配置され、且つ、上下方向においてフック3bと互いに間隔を開けて配置されている。磁石保持部材5aは、中心シャフト17の上端に取り付けられた昇降モータM2により、上下方向に移動する。
【0039】
このような場合、吸引部5は、基板11の表面に垂直な方向(後述する方向DR2)と同方向及び逆方向即ち上下方向に移動可能に設けられており、蒸着装置1は、
図1に示すように、また、後述する
図5乃至
図7を用いて説明するように、移動部21と、移動部22と、移動部23と、制御部24と、を有することになる。また、
図1に示すように、また、後述する
図5乃至
図7を用いて説明するように、移動部21は、昇降モータM2を含み、移動部22は、昇降モータM1及び姿勢制御装置14を含み、移動部23は、姿勢制御装置14を含み、制御部24は、例えばコンピュータを含む。また、基板配置部3も、開閉モータ16を含むことになる。
【0040】
なお、蒸着装置1は、
図1に示すように、また、後述する
図5乃至
図7を用いて説明するように、光源25と、CCD(Charge Coupled Device)カメラ26と、を有することができる。
【0041】
本実施の形態では、吸引部5に含まれる磁石部5cは、磁石部5c即ち吸引部5の基板11側の磁場の強度が、磁石部5c即ち吸引部5の基板11側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、基板11の表面即ち主面に沿った方向DR1にハルバッハ配列された複数の永久磁石PMを含む。
【0042】
これにより、吸引部5の基板11側の磁場の強度を、容易に強くすることができる。そのため、極薄の厚さを有する蒸着マスク7が用いられる場合でも、単位面積当たりの蒸着マスク7を磁力で吸引する吸引力を増加させ、蒸着マスク7を基板11に密着させることができる。従って、基板11の画素の領域に蒸着材料のパターンを形状精度良く形成することができ、製造された表示装置により表示される表示画像が不鮮明になることを、防止又は抑制することができる。なお、複数の永久磁石PMがハルバッハ配列され、磁石部5cの基板11側の磁場の強度が減衰するおそれがないため、複数の永久磁石PMを接着等により容易に支持する観点から、非磁性材料よりなる支持板5dを用いることが望ましい。
【0043】
具体的には、吸引部5に含まれる磁石部5cは、方向DR1に配列された複数の永久磁石群PGを含む。複数の永久磁石群PGの各々は、方向DR1に順次配置された複数の永久磁石PMとして、永久磁石PM1、永久磁石PM2、永久磁石PM3及び永久磁石PM4を含む。
【0044】
永久磁石PM1は、基板11の表面に垂直な方向DR2に沿った磁化MG1を有し、永久磁石PM2は、方向DR1に沿った磁化MG2を有し、永久磁石PM3は、方向DR2に沿った磁化MG3を有し、永久磁石PM4は、方向DR1に沿った磁化MG4を有する。磁化MG3の磁化方向は、磁化MG1の磁化方向と反平行であり、磁化MG4の磁化方向は、磁化MG2の磁化方向と反平行である。なお、
図1及び
図4では、永久磁石PMの磁化の向きを矢印により示している(後述する
図5乃至
図7、
図9乃至
図12においても同様)。
【0045】
また、永久磁石PM1は、方向DR2における基板11側と反対側に配置されたN極と、方向DR2における基板11側に配置されたS極と、を含む。永久磁石PM2は、方向DR1における永久磁石PM3側に配置されたN極と、方向DR1における永久磁石PM1側に配置されたS極と、を含む。永久磁石PM3は、方向DR2における基板11側に配置されたN極と、方向DR2における基板11側と反対側に配置されたS極と、を含む。永久磁石PM4は、方向DR1における永久磁石PM3側に配置されたN極と、方向DR1における永久磁石PM3側と反対側に配置されたS極と、を含む。
【0046】
なお、本実施の形態では、N極を第1極性を有する磁極と定義し、S極を第1極性と反対の第2極性を有する磁極と定義する。しかし、本実施の形態において、全てのN極と全てのS極とを入れ替え、S極を第1極性を有する磁極と定義し、N極を第1極性と反対の第2極性を有する磁極と定義してもよい。
【0047】
このように複数の永久磁石を配置することにより、永久磁石PM1のS極に入る磁力線は、永久磁石PM1と隣り合う永久磁石PM2のN極から出たものではないため、基板11側に大きく広がる。しかし、永久磁石PM1のN極から出た磁力線は、永久磁石PM1と隣り合う永久磁石PM2のS極に入るため、基板11側と反対側にはあまり広がらない。そのため、永久磁石PM1の基板11側の磁場の強度が、永久磁石PM1の基板11側と反対側の磁場の強度よりも強い。
【0048】
また、永久磁石PM3のN極から出た磁力線は、永久磁石PM3と隣り合う永久磁石PM2のN極、及び、永久磁石PM3と隣り合う永久磁石PM4のN極のいずれにも入らないため、基板11側に大きく広がる。しかし、永久磁石PM3のS極に入る磁力線は、永久磁石PM3と隣り合う永久磁石PM2のN極、及び、永久磁石PM3と隣り合う永久磁石PM4のN極、のいずれかから出たものであるため、基板11側と反対側にはあまり広がらない。そのため、永久磁石PM3の基板11側の磁場の強度が、永久磁石PM3の基板11側と反対側の磁場の強度よりも強い。
【0049】
好適には、マスク保持部2により保持されている蒸着マスク7は、枠部FR1と、複数のマスクシート部MS1と、を有する。
【0050】
枠部FR1は、基板11の表面に沿い且つ方向DR1と交差好適には直交する方向DR3にそれぞれ延在する延在部EX1及び延在部EX2と、方向DR1にそれぞれ延在する延在部EX3及び延在部EX4と、を含み、枠部形状を有する。
【0051】
複数のマスクシート部MS1は、それぞれ磁性材料よりなり、方向DR1にそれぞれ延在し、方向DR1における第1の側の端部EP1が延在部EX1にそれぞれ固定され、方向DR1における第1の側と反対側の端部EP2が延在部EX2にそれぞれ固定され、且つ、方向DR3に配列されている。
【0052】
複数のマスクシート部MS1の各々は、複数のパターン部PT1と、複数のリブ部RB1と、を含む。複数のパターン部PT1は、基板11に蒸着材料を蒸着するための複数の貫通孔よりなる蒸着用パターンPDがそれぞれ形成され、方向DR1に互いに間隔を空けて配列されている。複数のリブ部RB1は、複数のパターン部PT1のうち方向DR1で互いに隣り合う2つのパターン部PT1をそれぞれ連結する。パターン部PT1とリブ部RB1とは、方向DR1に沿って交互に配置されている。なお、
図3及び
図4では、蒸着用パターンPDにハッチングを付している(後述する
図8、
図9及び
図12においても同様)。
【0053】
また、複数のマスクシート部MS1の少なくともいずれか、好適には各々について、複数のパターン部PT1のうち方向DR1で互いに隣り合う2つのパターン部PT1の中心間隔を、間隔SP1とする。また、複数の永久磁石群PGのうち方向DR1で互いに隣り合う2つの永久磁石群PGの中心間隔を、間隔SP2とする。このようにしたとき、間隔SP2は、間隔SP1に等しいか、又は、間隔SP1の整数分の1に等しい。
【0054】
これにより、複数のマスクシート部MS1の少なくともいずれか、好適には各々に含まれる複数のパターン部PT1の各々に吸引部5により印加される磁場分布が互いに等しくなり、複数のパターン部PT1の各々が基板11に密着される密着力の分布も互いに等しくなる。そのため、基板11が複数のパターン部PT1の各々にそれぞれ対応した領域に切り離されて複数の表示装置が製造される場合に、製造された複数の表示装置の間で、パターン部PT1に形成された蒸着用パターンPDを通して蒸着材料が蒸着されて形成されたパターンの形状精度のばらつきが小さくなり、製造された複数の表示装置の間の表示特性のばらつきを小さくすることができる。
【0055】
なお、本願明細書において、一方の値が他の値に等しいとは、一方の値と他の値との差が0である場合のみならず、一方の値と他の値との差が、一方の値及び他の値の平均値の5%以下である場合を意味する。
【0056】
次に、
図1及び
図5乃至
図7を参照し、本実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法について説明する。
図5乃至
図7は、実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。
図5乃至
図7は、
図1と同様に、実施の形態の蒸着装置の一部断面を含む正面図を模式的に示している。
【0057】
図1に示すように、また、前述したように、吸引部5は、基板11の表面に垂直な方向である方向DR2と同方向及び逆方向即ち上下方向に移動可能に設けられており、蒸着装置1は、移動部21と、移動部22と、移動部23と、制御部24と、を有する。なお、
図1では、方向DR2は上向きであるが、方向DR2は下向きであってもよい。
【0058】
移動部21は、吸引部5を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、吸引部5と基板11との間の方向DR2における中心間隔CS1(後述する
図6参照)を調整する。移動部22は、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7、又は、蒸着マスク7よりも上方に配置されている基板11を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、蒸着マスク7と基板11との間の方向DR2における中心間隔CS2(後述する
図6参照)を調整する。移動部23は、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7、又は、蒸着マスク7よりも上方に配置されている基板11を水平面内で移動させ、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置を調整する。また、制御部24は、移動部21、移動部22及び移動部23の動作を制御する。移動部21は、昇降モータM2を含み、移動部22は、昇降モータM1及び姿勢制御装置14を含み、移動部23は、姿勢制御装置14を含み、制御部24は、例えばコンピュータを含む。また、基板配置部3も、開閉モータ16を含む。
【0059】
本実施の形態の蒸着装置を用いた蒸着方法では、まず、制御部24は、
図5に示すように、マスク保持部2により、蒸着マスク7を保持するように、マスク保持部2の動作を制御する(ステップS1)。
【0060】
このステップS1では、まず、
図5に示すように、移動部21に含まれる昇降モータM2を作動させて、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が吸引部5に吸引されず、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が基板11から離れるような位置まで、中心シャフト17下端の磁石保持部材5aを上昇させる。
【0061】
このステップS1では、次に、図示は省略するものの、開閉モータ16を作動させて4つのフック部材3aを外側にやや開いた姿勢に位置させる。次いで、図示は省略するものの、搬送装置(図示は省略)によって、蒸着マスク7を真空チャンバ6内に搬入し、4つのフック部材3aよりも内側の上方に配置する。
【0062】
このステップS1では、次に、図示は省略するものの、搬送装置(図示は省略)を下降させることで蒸着マスク7を下降させ、蒸着マスク7の枠部FR1をフック部材3aのフック3bに掛けて、蒸着マスク7をフック部材3aで一旦受け取る。
【0063】
このステップS1では、次に、図示は省略するものの、搬送装置(図示は省略)を真空チャンバ6から退出させた後、
図5に示すように、移動部21に含まれる昇降モータM2を作動させて4つのマスク台2aを上昇させ、蒸着マスク7の枠部FR1の下面をマスク台2aに掛けることで、蒸着マスク7をマスク台2aにより保持する。これによりフック3b上の蒸着マスク7が、マスク台2a上に受け渡される。マスク台2aは、保持している蒸着マスク7の枠部FR1を除く本体部分をパスラインの高さに位置させたところで停止する。
【0064】
次に、制御部24は、
図6及び
図7に示すように、基板配置部3により、基板11が、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7と接するように、基板11を配置する(ステップS2)。
【0065】
このステップS2では、まず、
図6に示すように、移動部22に含まれる昇降モータM1を作動させて、4つのマスク台2aを下降させ、蒸着マスク7を下降させる。続いて搬送装置(図示は省略)によって、基板11をパスラインに沿って真空チャンバ6内に搬入し、4つのフック部材3aの内側の上方に配置する。基板11は、蒸着材料が蒸着される側の表面が、下側に向けられている。
【0066】
このステップS2では、次に、図示は省略するものの、搬送装置(図示は省略)を下降させることで基板11を下降させ、基板11の周縁部の下面をフック部材3aのフック3bに掛けることで、基板11をフック部材3aにより支持する。基板11のフック3bに掛けた部分はほぼパスラインの高さに配置される。フック部材3aに支持されている基板11は、自重で中央部が撓む。基板11が、厚みが薄く且つ大サイズのガラス基板の場合、撓みが大きくなる。しかし、平面視において、基板11は、左右前後の4箇所でフック3bにより保持されているので、基板11の撓みは、基板11の中心に対して対称になる。
【0067】
このステップS2では、次に、
図6に示すように、移動部22に含まれる昇降モータM1を作動させて、4つのマスク台2aを上昇させ、蒸着マスク7を上昇させ、蒸着マスク7を基板11に隙間を開けた位置で正対させる。
【0068】
即ち、このステップS2では、制御部24は、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が、蒸着マスク7上に配置されている基板11から離れるように、移動部21により、吸引部5を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、吸引部5と基板11との間の方向DR2における中心間隔CS1を調整し、移動部22により、蒸着マスク7又は基板11を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、蒸着マスク7と基板11との間の方向DR2における中心間隔CS2を調整するように、移動部21及び移動部22の動作を制御することになる。
【0069】
次に、制御部24は、
図6に示すように、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が、蒸着マスク7上に配置されている基板11から離れている状態で、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置が一定の第1範囲内になるように、移動部23により、蒸着マスク7又は基板11を水平面内で移動させ、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置を調整するように、移動部23の動作を制御する(ステップS3)。なお、ステップS3、並びに、後述するステップS4及びステップS5は、ステップS2の後に行われてもよく、ステップS2に含まれてもよい。
【0070】
このステップS3では、まず、光源25からスポット光を基板11の複数のマーク11a(
図2参照)の近傍に照射し、その光照射下に複数のマーク11aをCCDカメラ26によって上方から撮影する。撮影したマーク11aの画像情報は、制御部24に含まれる演算装置24aに送ってメモリに記憶させる。
【0071】
このステップS3では、次に、蒸着マスク7の複数のマーク7a(
図2参照)を撮影して、位置情報を取得する。このとき基板11が撓み、基板11と蒸着マスク7とが上下方向に離れているので、CCDカメラ26は、蒸着マスク7を撮影するときと基板11を撮影するときとに応じて、焦点を合わせるために上下に移動させる場合がある。
【0072】
演算装置24aは、蒸着マスク7の複数のマーク7a(
図2参照)と基板11の複数のマーク11a(
図2参照)を撮影した画像情報をメモリから呼び出し、画像処理によってマーク7a及びマーク11aの位置を求める。更に、演算装置24aはマーク11aの位置情報から基板11の中心及び基準線を求め、マーク7aの位置情報から蒸着マスク7の中心及び基準線を求める。演算装置24aは、これらの位置情報、並びに、中心及び基準線から、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置を演算する。また、演算装置24aは、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置が予め設定した許容範囲即ち一定の第1範囲内に入るか否かを判断する。演算装置24aは、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置が一定の第1範囲外であるときは、一定の第1範囲内に入らせるのに必要な基板11のXYθ方向の移動量を演算し、移動部23に含まれる姿勢制御装置14に制御命令を出力する。姿勢制御装置14は、フック部材3aにより支持されている基板11をXYθ方向に移動して、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置を一定の第1範囲内とする。
【0073】
次に、制御部24は、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置が一定の第1範囲内である状態で、
図7に示すように、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が、蒸着マスク7上に配置されている基板11に接するように、移動部22により、蒸着マスク7又は基板11を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、中心間隔CS2を調整するように、移動部22の動作を制御する(ステップS4)。
【0074】
このステップS4では、移動部22に含まれる昇降モータM1を作動させて、マスク台2a上の蒸着マスク7を上昇させる。
【0075】
次に、制御部24は、マスク保持部2に保持されている蒸着マスク7が、蒸着マスク7上に配置されている基板11に接している状態で、吸引部5が蒸着マスク7を磁力で吸引することで蒸着マスク7が基板11に密着するように、移動部21により、吸引部5を方向DR2と同方向又は逆方向に移動させ、中心間隔CS1を調整するように、移動部21の動作を制御する(ステップS5)。
【0076】
このステップS5では、移動部21に含まれる昇降モータM2を作動させて、中心シャフト17下端の磁石保持部材5aを下降させ、基板11と蒸着マスク7とを密着させる。更に、開閉モータ16を作動させてフック部材3aを開き、
図1に示すように、フック部材3aによる基板11の支持を解除し、その状態で蒸着源4から蒸発した蒸着材料を、基板11の表面に、蒸着マスク7を通して蒸着する。
【0077】
これにより、蒸着マスク7が基板11から離れている状態で、基板11に対する蒸着マスク7の水平面内での第1相対位置が一定の第1範囲内になるように、第1相対位置を容易に調整した後、蒸着マスク7を基板11に密着させることができる。従って、基板11の画素の領域に蒸着材料のパターンを更に形状精度良く形成することができ、製造された表示装置により表示される表示画像が不鮮明になることを、更に防止又は抑制することができる。
【0078】
<蒸着装置の第1変形例>
次に、実施の形態の蒸着装置の第1変形例について説明する。本第1変形例の蒸着装置は、複数の永久磁石群が、複数のマスクシート部の配列方向に配列され、複数の永久磁石群の各々に含まれる複数の永久磁石が、複数のマスクシート部の配列方向にハルバッハ配列される点で、実施の形態の蒸着装置と異なる。一方、本第1変形例でも、
図1に示す実施の形態と同様に、吸引部5が、方向DR2と同方向及び逆方向に移動可能に設けられ、蒸着装置1が、移動部21と、移動部22と、移動部23と、制御部24と、を有することができる。
【0079】
図8は、実施の形態の第1変形例の蒸着装置を用いて蒸着材料を蒸着するための蒸着マスクを示す平面図である。
図9は、実施の形態の第1変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。なお、
図9では、吸引部に含まれる複数の永久磁石のうち一部の複数の永久磁石のみの配置を示している。
【0080】
本第1変形例の蒸着装置1(
図1参照)では、マスク保持部2(
図1参照)により保持されている蒸着マスク7は、実施の形態の蒸着装置1で
図3を用いて説明した蒸着マスク7と異なり、
図8に示すように、枠部FR2と、複数のマスクシート部MS2と、を有する。
【0081】
枠部FR2は、基板11(
図1参照)の表面に沿い且つ方向DR1と交差好適には直交する方向DR4(
図1に示す方向DR3と同一の方向)にそれぞれ延在する延在部EX5及び延在部EX6と、方向DR1にそれぞれ延在する延在部EX7及び延在部EX8と、を含み、枠部形状を有する。
【0082】
複数のマスクシート部MS2は、それぞれ磁性材料よりなり、方向DR4にそれぞれ延在し、方向DR4における第2の側の端部EP3が延在部EX7にそれぞれ固定され、方向DR4における第2の側と反対側の端部EP4が延在部EX8にそれぞれ固定され、且つ、方向DR1に配列されている。
【0083】
複数のマスクシート部MS2の各々は、複数のパターン部PT2と、複数のリブ部RB2と、を含む。複数のパターン部PT2は、基板11に蒸着材料を蒸着するための複数の貫通孔よりなる蒸着用パターンPDがそれぞれ形成され、方向DR4に互いに間隔を空けて配列されている。複数のリブ部RB2は、複数のパターン部PT2のうち方向DR4で互いに隣り合う2つのパターン部PT2をそれぞれ連結する。パターン部PT2とリブ部RB2とは、方向DR4に沿って交互に配置されている。
【0084】
また、本第1変形例の蒸着装置1(
図1参照)が有する吸引部5(
図1参照)に含まれる磁石部5cでは、実施の形態で
図4を用いて説明した磁石部5cと同様に、
図9に示すように、複数の永久磁石群PGは、方向DR1に配列され、複数の永久磁石群PGの各々に含まれる複数の永久磁石PMが、方向DR1にハルバッハ配列されている。即ち、本第1変形例でも、実施の形態と同様に、複数の永久磁石群PGの各々は、方向DR1に順次配置された、永久磁石PM1、永久磁石PM2、永久磁石PM3及び永久磁石PM4を含むことができる。永久磁石PM1は、基板11(
図1参照)の表面に垂直な方向DR2に沿った磁化MG1を有し、永久磁石PM2は、方向DR1に沿った磁化MG2を有し、永久磁石PM3は、方向DR2に沿った磁化MG3を有し、永久磁石PM4は、方向DR1に沿った磁化MG4を有する。磁化MG3の磁化方向は、磁化MG1の磁化方向と反平行であり、磁化MG4の磁化方向は、磁化MG2の磁化方向と反平行である。
【0085】
一方、本第1変形例の蒸着装置1(
図1参照)では、実施の形態の蒸着装置1(
図1参照)と異なり、方向DR1は、1つのマスクシート部MS2に含まれる複数のパターン部PT2が配列されている方向ではなく、複数のマスクシート部MS2が配列されている方向である。
【0086】
また、複数のマスクシート部MS2のうち方向DR1で互いに隣り合う2つのマスクシート部MS2の中心間隔を、間隔SP3とする。また、複数の永久磁石群PGのうち方向DR1で互いに隣り合う2つの永久磁石群PGの中心間隔を、間隔SP4とする。このようにしたとき、間隔SP4は、間隔SP3に等しいか、又は、間隔SP3の整数分の1に等しい。
【0087】
これにより、複数のマスクシート部MS2の各々に吸引部5(
図1参照)により印加される磁場分布が互いに等しくなり、複数のマスクシート部MS2の各々が基板11(
図1参照)に密着される密着力の分布も互いに等しくなる。そのため、基板11が複数のマスクシート部MS2の各々にそれぞれ対応した領域に切り離されて複数の表示装置が製造される場合に、製造された複数の表示装置の間で、パターン部PT2に形成された蒸着用パターンPDを通して蒸着材料が蒸着されて形成されたパターンの形状精度のばらつきが小さくなり、製造された複数の表示装置の間の表示特性のばらつきを小さくすることができる。
【0088】
<蒸着装置の第2変形例>
次に、実施の形態の蒸着装置の第2変形例について説明する。本第2変形例の蒸着装置は、複数の永久磁石群が、複数のパターン部の配列方向及び複数のマスクシート部の配列方向に2次元配列され、複数の永久磁石群の各々に含まれる複数の永久磁石が、複数のパターン部の配列方向及び複数のマスクシート部の配列方向に2次元にハルバッハ配列される点で、実施の形態の蒸着装置と異なる。一方、本第2変形例でも、
図1に示す実施の形態と同様に、吸引部5が、方向DR2と同方向及び逆方向に移動可能に設けられ、蒸着装置1が、移動部21と、移動部22と、移動部23と、制御部24と、を有することができる。
【0089】
図10は、実施の形態の第2変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を示す平面図である。なお、
図10では、吸引部に含まれる複数の永久磁石のうち一部の複数の永久磁石の配置を示している。
【0090】
本第2変形例でも、実施の形態で
図3を用いて説明した蒸着マスク7と同様に、マスク保持部2(
図1参照)により保持されている蒸着マスク7(
図3参照)は、枠部FR1と、複数のマスクシート部MS1と、を有する。枠部FR1は、基板11の表面に沿い且つ方向DR1と交差好適には直交する方向DR3にそれぞれ延在する延在部EX1及び延在部EX2と、方向DR1にそれぞれ延在する延在部EX3及び延在部EX4と、を含み、枠部形状を有する。また、複数のマスクシート部MS1は、複数のパターン部PT1と、複数のリブ部RB1と、を含む。複数のパターン部PT1と、複数のリブ部RB1とは、方向DR1に沿って交互に配置されている。
【0091】
また、複数の永久磁石群PGの各々は、方向DR1に順次配置された、永久磁石PM1、永久磁石PM2、永久磁石PM3及び永久磁石PM4を含むことができる。永久磁石PM1は、基板11の表面に垂直な方向DR2に沿った磁化MG1を有し、永久磁石PM2は、方向DR1に沿った磁化MG2を有し、永久磁石PM3は、方向DR2に沿った磁化MG3を有し、永久磁石PM4は、方向DR1に沿った磁化MG4を有する。磁化MG3の磁化方向は、磁化MG1の磁化方向と反平行であり、磁化MG4の磁化方向は、磁化MG2の磁化方向と反平行である。
【0092】
一方、本第2変形例の蒸着装置1(
図1参照)が有する吸引部5(
図1参照)に含まれる磁石部5cでは、実施の形態で
図4を用いて説明した磁石部5cと異なり、
図10に示すように、複数の永久磁石PMは、磁石部5c即ち吸引部5の基板11(
図1参照)側の磁場の強度が、磁石部5c即ち吸引部5の基板11側と反対側の磁場の強度よりも強くなるように、方向DR1及び方向DR3において2次元にハルバッハ配列されている。また、磁石部5cでは、複数の永久磁石群PGは、方向DR1及び方向DR3に2次元に配列されている。
【0093】
複数の永久磁石群PGの各々は、複数の永久磁石PMとして、永久磁石PM5、永久磁石PM6、永久磁石PM7、永久磁石PM8、永久磁石PM9、永久磁石PM10、永久磁石PM11及び永久磁石PM12を含む。
【0094】
永久磁石PM1、永久磁石PM5、永久磁石PM7及び永久磁石PM11は、方向DR3に順次配置されている。永久磁石PM3、永久磁石PM6、永久磁石PM9及び永久磁石PM12は、方向DR3に順次配置されている。永久磁石PM7、永久磁石PM8、永久磁石PM9及び永久磁石PM10は、方向DR1に順次配置されている。
【0095】
永久磁石PM5は、方向DR3に沿った磁化MG5を有し、永久磁石PM6は、方向DR3に沿った磁化MG6を有し、永久磁石PM7は、方向DR2に沿った磁化MG7を有し、永久磁石PM8は、方向DR1に沿った磁化MG8を有し、永久磁石PM9は、方向DR2に沿った磁化MG9を有し、永久磁石PM10は、方向DR1に沿った磁化MG10を有し、永久磁石PM11は、方向DR3に沿った磁化MG11を有し、永久磁石PM12は、方向DR3に沿った磁化MG12を有する。
【0096】
磁化MG6の磁化方向は、磁化MG5の磁化方向と反平行であり、磁化MG7の磁化方向は、磁化MG1の磁化方向と反平行であり、磁化MG8の磁化方向は、磁化MG2の磁化方向と反平行であり、磁化MG9の磁化方向は、磁化MG3の磁化方向と反平行であり、磁化MG10の磁化方向は、磁化MG4の磁化方向と反平行であり、磁化MG11の磁化方向は、磁化MG5の磁化方向と反平行であり、磁化MG12の磁化方向は、磁化MG6の磁化方向と反平行である。
【0097】
複数のマスクシート部MS1(
図4参照)のいずれかについて、複数のパターン部PT1(
図4参照)のうち方向DR1で互いに隣り合う2つのパターン部PT1の中心間隔を、前述したように、間隔SP1(
図4参照)とし、複数のマスクシート部MS1のうち方向DR3で互いに隣り合う2つのマスクシート部MS1の中心間隔を、間隔SP5(
図4参照)とする。また、
図10に示すように、複数の永久磁石群PGのうち方向DR1で互いに隣り合う2つの永久磁石群PGの中心間隔を、間隔SP2とし、複数の永久磁石群PGのうち方向DR3で互いに隣り合う2つの永久磁石群PGの中心間隔を、間隔SP6とする。このようにしたとき、間隔SP2は、間隔SP1に等しいか、又は、間隔SP1の整数分の1に等しく、且つ、間隔SP6は、間隔SP5に等しいか、又は、間隔SP5の整数分の1に等しい。
【0098】
これにより、複数のマスクシート部MS1(
図4参照)の少なくともいずれか、好適には各々に含まれる複数のパターン部PT1(
図4参照)の各々に吸引部5(
図1参照)により印加される磁場分布が互いに等しくなり、複数のパターン部PT1の各々が基板11(
図1参照)に密着される密着力の分布も互いに等しくなる。そのため、基板11が複数のパターン部PT1の各々にそれぞれ対応した領域に切り離されて複数の表示装置が製造される場合に、製造された複数の表示装置の間で、パターン部PT1に形成された蒸着用パターンPDを通して蒸着材料が蒸着されて形成されたパターンの形状精度のばらつきが小さくなり、製造された複数の表示装置の間の表示特性のばらつきを小さくすることができる。
【0099】
また、複数のマスクシート部MS1(
図4参照)の各々に吸引部5(
図1参照)により印加される磁場分布が互いに等しくなり、複数のマスクシート部MS1の各々が基板11に密着される密着力の分布も互いに等しくなる。そのため、基板11が複数のマスクシート部MS1の各々にそれぞれ対応した領域に切り離されて複数の表示装置が製造される場合に、製造された複数の表示装置の間で、パターン部PT1に形成された蒸着用パターンPDを通して蒸着材料が蒸着されて形成されたパターンの形状精度のばらつきが小さくなり、製造された複数の表示装置の間の表示特性のばらつきを小さくすることができる。
【0100】
<蒸着装置の第3変形例>
次に、実施の形態の蒸着装置の第3変形例について説明する。本第3変形例の蒸着装置は、吸引部が、基板の表面に垂直な回転軸を中心として回転可能に設けられる点で、実施の形態の蒸着装置と異なる。
【0101】
図11は、実施の形態の第3変形例の蒸着装置を模式的に示す一部断面を含む正面図である。
図12は、実施の形態の第3変形例の蒸着装置が有する吸引部に含まれる永久磁石の配置を蒸着マスクの配置と合わせて示す平面図である。なお、
図12では、吸引部に含まれる複数の永久磁石のうち一部の複数の永久磁石のみの配置を示している。
【0102】
図11及び
図12に示すように、本第3変形例の蒸着装置1aでは、マスク保持部2により保持されている蒸着マスク7は、実施の形態の蒸着装置1で
図3を用いて説明した蒸着マスク7と同様に、枠部FR3と、複数のマスクシート部MS3と、を有する。
【0103】
基板11の表面に沿う方向を方向DR5とし、基板11の表面に垂直な方向を方向DR6とする。このようにしたとき、枠部FR3は、基板11の表面に沿い且つ方向DR5と交差好適には直交する方向DR7にそれぞれ延在する延在部EX9及び延在部EX10と、方向DR5にそれぞれ延在する延在部EX11及び延在部EX12と、を含み、枠部形状を有する。
【0104】
複数のマスクシート部MS3は、それぞれ磁性材料よりなり、方向DR5にそれぞれ延在し、方向DR5における第3の側の端部EP5が延在部EX9にそれぞれ固定され、方向DR5における第3の側と反対側の端部EP6が延在部EX10にそれぞれ固定され、且つ、方向DR7に配列されている。
【0105】
複数のマスクシート部MS3の各々は、複数のパターン部PT3と、複数のリブ部RB3と、を含む。複数のパターン部PT3は、基板11に蒸着材料を蒸着するための複数の貫通孔よりなる蒸着用パターンPDがそれぞれ形成され、方向DR5に互いに間隔を空けて配列されている。複数のリブ部RB3は、複数のパターン部PT3のうち方向DR5で互いに隣り合う2つのパターン部PT3をそれぞれ連結する。パターン部PT3とリブ部RB3とは、方向DR5に沿って交互に配置されている。
【0106】
一方、本第3変形例では、実施の形態と異なり、吸引部5は、基板11の表面に垂直な軸AX1を中心として回転可能に設けられている。また、本第3変形例では、実施の形態と異なり、蒸着装置1aは、更に、回転部27と、制御部28と、を有する。回転部27は、軸AX1を中心として吸引部5を回転させ、吸引部5の軸AX1を中心とした回転角度RAを調整する。制御部28は、例えばコンピュータを含み、回転部27の動作を制御する。
【0107】
吸引部5は、昇降モータM2の上部に回転可能に取り付けられたシャフト29の更に上端に取り付けられた回転モータM3により、軸AX1を中心として回転する。このような場合、回転部27は、回転モータM3を含むことになる。
【0108】
また、本第3変形例では、複数の永久磁石群PGが、方向DR5に配列されるときの吸引部5の回転角度RAを、第1角度RA1(例えば0°)と定義する。即ち、吸引部5の回転角度RAが第1角度RA1であるとき、吸引部5に含まれる磁石部5cは、基板11の表面に沿った方向DR5に配列された複数の永久磁石群PGを含む。また、吸引部5の回転角度RAが第1角度RA1であるとき、複数の永久磁石群PGの各々は、方向DR5に順次配置された複数の永久磁石PMとして、永久磁石PM13、永久磁石PM14、永久磁石PM15及び永久磁石PM16を含む。
【0109】
また、吸引部5の回転角度RAが第1角度RA1であるとき、永久磁石PM13、永久磁石PM14、永久磁石PM15及び永久磁石PM16の磁化の方向は、実施の形態における永久磁石PM1、永久磁石PM2、永久磁石PM3及び永久磁石PM4の磁化の方向と同様である。即ち、永久磁石PM13は、基板11の表面に垂直な方向DR6に沿った磁化MG13を有し、永久磁石PM14は、回転角度RAが第1角度RA1であるときに方向DR5に沿った磁化MG14を有する。また、永久磁石PM15は、方向DR6に沿った磁化MG15を有し、永久磁石PM16は、回転角度RAが第1角度RA1であるときに方向DR5に沿った磁化MG16を有する。磁化MG15の磁化方向は、磁化MG13の磁化方向と反平行であり、磁化MG16の磁化方向は、磁化MG14の磁化方向と反平行である。
【0110】
また、複数のマスクシート部MS3のいずれかについて、複数のパターン部PT3のうち方向DR5で互いに隣り合う2つのパターン部PT3の中心間隔を、間隔SP7とする。また、複数の永久磁石群PGのうち回転角度RAが第1角度RA1であるときに方向DR5で互いに隣り合う2つの永久磁石群PGについて、回転角度RAが第1角度RA1と異なる第2角度RA2であるときの2つの永久磁石群PGの方向DR5における中心間隔を、間隔SP8とする。このようにしたとき、本第3変形例の蒸着装置1aを用いた蒸着方法では、制御部28は、間隔SP8と、間隔SP7又は間隔SP7の整数分の1と、の差が、一定の第2範囲内、好適には0になるように、回転部27により、軸AX1を中心として吸引部5を回転させ、回転角度RAを調整するように、回転部27の動作を制御する(ステップS6)。
【0111】
これにより、吸引部5の回転角度RAが第1角度RA1(図示は省略)であるときに、2つの永久磁石群PGの方向DR5における中心間隔が、間隔SP7及び間隔SP7の整数分の1のいずれに等しくない場合であっても、吸引部5の回転角度RAが第1角度RA1と異なる第2角度RA2であるときに、間隔SP8を、間隔SP7又は間隔SP7の整数分の1に等しくすることができる。そのため、複数のマスクシート部MS3の少なくともいずれか、好適には各々に含まれる複数のパターン部PT3の各々に吸引部5により印加される磁場分布が互いに等しくなり、複数のパターン部PT3の各々が基板11に密着される密着力の分布も互いに等しくなる。従って、基板11が複数のパターン部PT3の各々にそれぞれ対応した領域に切り離されて複数の表示装置が製造される場合に、製造された複数の表示装置の間で、パターン部PT3に形成された蒸着用パターンPDを通して蒸着材料が蒸着されて形成されたパターンの形状精度のばらつきが小さくなり、製造された複数の表示装置の間の表示特性のばらつきを小さくすることができる。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0113】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0114】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1、1a 蒸着装置
2 マスク保持部
2a マスク台
3 基板配置部
3a フック部材
3b フック
4 蒸着源
5 吸引部
5a 磁石保持部材
5b、5d 支持板
5c 磁石部
6 真空チャンバ
6a 天板
7 蒸着マスク
7a、11a マーク
8、29 シャフト
9 フレーム
10 アーム
11 基板
12 支持フレーム
13 ヒンジ機構
14 姿勢制御装置
15、AX1 軸
16 開閉モータ
17 中心シャフト
18 取付け板
21~23 移動部
24、28 制御部
24a 演算装置
25 光源
26 CCDカメラ
27 回転部
CS1、CS2 中心間隔
DR1~DR7 方向
EP1~EP6 端部
EX1、EX10~EX12、EX2~EX9 延在部
FR1~FR3 枠部
M1、M2 昇降モータ
M3 回転モータ
MG1、MG10~MG16、MG2~MG9 磁化
MS1~MS3 マスクシート部
PD 蒸着用パターン
PG 永久磁石群
PM、PM1、PM10~PM16、PM2~PM9 永久磁石
PT1~PT3 パターン部
RA 回転角度
RA1 第1角度
RA2 第2角度
RB1~RB3 リブ部
SP1~SP8 間隔