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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064013
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】角速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20230428BHJP
【FI】
G01C19/5776
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174194
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 員史
(72)【発明者】
【氏名】前川 佑樹
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB08
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD11
(57)【要約】
【課題】オフセット補正を高精度に行うことができる角速度センサを提供する。
【解決手段】角速度センサ1は、角速度検出素子11と、制御回路100と、を備える。角速度検出素子11は、角速度信号を出力する。制御回路100は、角速度平均部111と、判定処理部130と、オフセット量演算部141と、角速度補正部142と、を有する。角速度平均部111は、角速度信号を時間平均して角速度平均信号を生成する。判定処理部130は、角速度が印加されている印加状態か否かを判定する。オフセット量演算部141は、角速度平均信号に対するオフセット補正量を、角速度補正信号として出力する。角速度補正部142は、角速度補正信号を角速度平均信号に印加する。オフセット量演算部141は、印加状態でない期間である第2期間における角速度信号に基づいて、印加状態である期間である第1期間における角速度補正信号を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出軸周りの角速度を検出して角速度信号を出力する角速度検出素子と、
前記角速度信号を処理する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記角速度信号を時間平均して角速度平均信号を生成する角速度平均部と、
前記角速度検出素子に前記角速度が印加されている印加状態か否かを判定する判定処理部と、
前記角速度平均信号に対するオフセット補正量を算出して、角速度補正信号として出力するオフセット量演算部と、
前記角速度補正信号を前記角速度平均信号に印加して、補正後角速度信号を出力する角速度補正部と、
を有し、
前記オフセット量演算部は、前記印加状態でないと前記判定処理部で判定した期間である第2期間における前記角速度信号に基づいて、前記印加状態であると前記判定処理部が判定した期間である第1期間における前記角速度補正信号を算出する、
角速度センサ。
【請求項2】
前記オフセット量演算部は、
前記第2期間において前記角速度検出素子から出力された前記角速度信号を時間平均し、
時間平均した後の信号を、前記第1期間の前記角速度補正信号として出力する、
請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項3】
前記オフセット量演算部は、
前記第2期間において前記角速度平均部で生成された前記角速度平均信号を時間平均し、
時間平均した後の信号を、前記第1期間の前記オフセット補正量として算出する、
請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項4】
前記判定処理部は、
前記角速度信号の時間当たりの変化量である角速度変化量を算出する角速度変化量演算部と、
前記角速度変化量に基づいて前記印加状態であるか否かを判定する印加状態判定部と、を含み、
前記印加状態判定部は、
前記角速度変化量が変化量閾値以下であれば、前記印加状態でないと判定し、
前記角速度変化量が前記変化量閾値を超えていれば、前記印加状態であると判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の角速度センサ。
【請求項5】
前記判定処理部は、
前記角速度信号の時間平均である角速度平均値を算出する角速度平均値演算部と、
前記角速度平均値に基づいて前記印加状態であるか否かを判定する印加状態判定部と、を含み、
前記印加状態判定部は、
前記角速度平均値が平均値閾値以下であれば、前記印加状態でないと判定し、
前記角速度平均値が前記平均値閾値を超えていれば、前記印加状態であると判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の角速度センサ。
【請求項6】
前記判定処理部は、
前記角速度信号の時間当たりの変化量である角速度変化量を算出する角速度変化量演算部と、
前記角速度信号の時間平均である角速度平均値を算出する角速度平均値演算部と、
前記角速度変化量と前記角速度平均値とに基づいて前記印加状態であるか否かを判定する印加状態判定部と、を含み、
前記印加状態判定部は、
前記角速度変化量が変化量閾値以下であり、かつ、前記角速度平均値が平均値閾値以下であれば、前記印加状態でないと判定し、
前記角速度変化量が前記変化量閾値を超えているか、又は、前記角速度平均値が前記平均値閾値を超えていれば、前記印加状態であると判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の角速度センサ。
【請求項7】
前記判定処理部は、前記角速度検出素子に衝撃が印加された衝撃印加状態か否かを更に判定し、
前記角速度平均部は、
前記判定処理部が前記衝撃印加状態でないと判定している第3期間において、第5期間における前記角速度信号の平均を前記角速度平均信号として出力し、
前記判定処理部が前記衝撃印加状態と判定している第4期間において、前記第5期間より長い第6期間における前記角速度信号の平均を前記角速度平均信号として出力する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の角速度センサ。
【請求項8】
前記角速度平均部は、
前記第5期間における前記角速度信号の平均を算出する第1平均回路と、
前記第6期間における前記角速度信号の平均を算出する第2平均回路と、
選択部と、を含み、
前記選択部は、
前記第4期間において、前記角速度平均信号を出力する回路として前記第1平均回路を選択し、
前記第3期間において、前記角速度平均信号を出力する回路として前記第2平均回路を選択する、
請求項7に記載の角速度センサ。
【請求項9】
前記角速度平均部は、平均回路を更に含み、
前記平均回路は、
前記第4期間において、前記第5期間における前記角速度信号の平均を前記角速度平均信号として出力し、
前記第3期間において、前記第6期間における前記角速度信号の平均を前記角速度平均信号として出力する、
請求項7に記載の角速度センサ。
【請求項10】
前記判定処理部は、前記衝撃印加状態であるか否かを判定する衝撃判定部を更に含み、
前記衝撃判定部は、前記衝撃印加状態でないときに前記角速度信号の値が第1角速度閾値を超えた場合に、前記衝撃印加状態であると判定する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の角速度センサ。
【請求項11】
前記衝撃判定部は、前記衝撃印加状態であると判定した後、前記角速度信号の値と、前記角速度信号の値の時間平均と、のうち少なくとも一方が、所定期間継続して第2角速度閾値以下である場合に、前記衝撃印加状態でないと判定し、それ以外の場合に前記衝撃印加状態が継続していると判定する、
請求項10に記載の角速度センサ。
【請求項12】
前記衝撃判定部は、前記衝撃印加状態であると判定した後、前記角速度信号の値の時間平均が第2角速度閾値以下である場合に、前記衝撃印加状態でないと判定し、それ以外の場合に前記衝撃印加状態が継続していると判定する、
請求項10に記載の角速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、角速度センサに関し、特に、角速度を計測する角速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、角速度を計測する角速度センサにおいて、オフセット(バイアス)の補正が行われている。従来のオフセット補正は、例えば、特許文献1に開示されているように、静的オフセット量と、動的オフセット量と、遷移オフセット量とを用いる方法がある。特許文献1において、静的オフセット量は静止中におけるセンサ出力の平均である静的平均である。特許文献1において、動的オフセット量は移動中におけるセンサ出力の平均である動的平均である。特許文献1において、遷移オフセット量は動的平均と静的平均とから算出される。特許文献1に開示の角速度センサは、移動中には動的オフセット量を、静止中には静止オフセット量又は遷移オフセット量をそれぞれ用いてオフセット補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-512328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、角速度センサの経年変化等により、角速度センサのオフセット量が変化する場合がある。したがって、従来の角速度センサにおけるオフセット補正の補正量の算出手法では、オフセット補正の精度が十分に高くない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、オフセット補正を高精度に行うことができる角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る角速度センサは、角速度検出素子と、制御回路と、を備える。前記角速度検出素子は、検出軸周りの角速度を検出して角速度信号を出力する。前記制御回路は、前記角速度信号を処理する。前記制御回路は、角速度平均部と、判定処理部と、オフセット量演算部と、角速度補正部と、を有する。前記角速度平均部は、前記角速度信号を時間平均して角速度平均信号を生成する。前記判定処理部は、前記角速度検出素子に前記角速度が印加されている印加状態か否かを判定する。前記オフセット量演算部は、前記角速度平均信号に対するオフセット補正量を算出して、角速度補正信号として出力する。前記角速度補正部は、前記角速度補正信号を前記角速度平均信号に印加して、補正後角速度信号を出力する。前記オフセット量演算部は、前記印加状態でないと前記判定処理部で判定した期間である第2期間における前記角速度信号に基づいて、前記印加状態であると前記判定処理部が判定した期間である第1期間における前記角速度補正信号を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る角速度センサによれば、角速度センサが印加状態でない状態の角速度信号を用いてオフセット補正を行うことで、角速度情報を高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る角速度センサの論理構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、同上の角速度センサにおける判定処理部の論理構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、同上の角速度センサにおける制御回路の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の制御回路の印加状態における動作を示すフローチャートである。
図5図5は、同上の制御回路の印加状態でない状態における動作を示すフローチャートである。
図6図6Aは、角速度信号とオフセット量との各々の時系列変化を示すグラフである。図6Bは、図6Aにおける角速度が0付近の領域の拡大図である。
図7図7は、変形例1に係る角速度センサにおける判定処理部の論理構成を示す機能ブロック図である
図8図8は、実施形態2に係る角速度センサの論理構成を示す機能ブロック図である。
図9図9は、同上の角速度センサにおける判定処理部の論理構成を示す機能ブロック図である。
図10図10Aは、同上の角速度センサにおける角速度平均部の論理構成を示す機能ブロック図である。図10Bは、変形例2に係る角速度センサにおける角速度平均部の論理構成を示す機能ブロック図である。
図11図11は、角速度信号と角速度平均信号との各々の時系列変化を示すグラフである。
図12図12は、他の変形例1に係る角速度センサの論理構成を示す機能ブロック図である。
図13図13は、他の変形例2に係る角速度センサの論理構成を示す機能ブロック図である。
図14図14は、他の変形例4に係る判定処理部の論理構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、図面を用いて本開示に係る角速度センサ1について説明する。
【0010】
(1)角速度センサ
図1は、実施形態1に係る角速度センサ1の論理構成を示すブロック図である。実施形態1に係る角速度センサ1は、角速度検出素子11と、制御回路100とを備える。
【0011】
(2)角速度検出素子
角速度検出素子11は、1軸のジャイロセンサである。角速度検出素子11は、検出軸周りの角速度を検出する。角速度検出素子11は、例えば、いわゆる、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ジャイロセンサである。角速度検出素子11は、例えば、振動電極と、検出電極とを備える。振動電極は、検出軸に直交する第1方向に振動する。検出電極は、検出軸と第1方向とのいずれにも直交する第2方向における振動電極の移動を、静電容量を用いて検出する。なお、角速度検出素子11の構造は上述の構造に限られず、検出軸周りの角速度を検出可能なものであれば、任意の構造であってよい。
【0012】
角速度検出素子11は、角速度を示す角速度信号ωrを制御回路100に出力する。角速度信号ωrは、例えば、電圧値として出力される。角速度信号ωrの絶対値は、角速度信号ωrの振幅の絶対値であり、角速度の大きさを示す。また、角速度信号ωrの符号は、回転方向を示す。角速度の単位は、例えば、deg/sec(以下、「dps」と称する)である。なお、角速度の単位は、rad/secなど、角速度を示す他の単位でもよい。
【0013】
(3)制御回路
(3.1)制御回路の概要
制御回路100は、角速度検出素子11から、角速度信号ωrを取得する。そして、制御回路100は、角速度信号ωrの補正を行う。
【0014】
図1に示すように、制御回路100は、角速度平均部111と、判定処理部130と、オフセット量演算部141と、角速度補正部142とを備える。
【0015】
制御回路100は、例えば、単一のASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。なお、制御回路100は単一のASICに限られず、1以上のICを含む回路であってもよく、又は、マイクロコンピュータであってもよい。
【0016】
(3.2)角速度平均部
角速度平均部111は、角速度信号ωrの時間平均処理を行う。
【0017】
角速度平均部111は、単位時間当たりの角速度信号ωrの平均値を繰り返し出力する。単位時間は、例えば、100msである。すなわち、角速度平均部111は、100ms当たりの角速度信号ωrの平均値を、100ms毎に算出し、角速度平均信号ω0として出力する。
【0018】
(3.3)判定処理部
判定処理部130は、角速度センサ1に角速度が印加されているか否かを判定する回路である。
【0019】
図2は、判定処理部130のブロック図である。判定処理部130は、図2に示すように、角速度変化量演算部131と、印加状態判定部132とを備える。
【0020】
(3.3.1)角速度変化量演算部
角速度変化量演算部131は、角速度センサ1に角速度が印加されているか否かを示す角速度パラメータを算出する。角速度パラメータは、例えば、角速度信号ωrの時間変化量である。角速度信号ωrの時間変化量とは、角速度信号ωrの単位時間当たりの変化量を単位時間で除算した値である。例えば、単位時間が3msである場合、角速度変化量演算部131は、3ms毎に、角速度信号ωrを取得する。角速度変化量演算部131は、例えば、角速度信号ωrの、3ms前の角速度信号ωrに対する変化量を3msで除算し、角速度信号ωrの時間変化量として保持する。例えば、角速度信号ωrの単位がdpsである場合、角速度信号ωrの時間変化量の単位は、例えば、dps/sである。角速度変化量演算部131は、例えば、角速度信号ωrの時間変化量の絶対値を、角速度パラメータとして算出する。
【0021】
(3.3.2)印加状態判定部
印加状態判定部132は角速度センサ1に角速度が印加されているか否かを判定する。
【0022】
具体的には、印加状態判定部132は、角速度パラメータに基づいて、角速度センサ1に角速度が印加されているか否かを判定する。以下、角速度センサ1の角速度検出素子11に角速度が印加されている状態を「印加状態」という。
【0023】
印加状態判定部132は、角速度パラメータが変化量閾値を超えている状態を、印加状態と判定する。言い換えると、印加状態判定部132は、角速度パラメータが変化量閾値以下である状態を、印加状態でないと判定する。変化量閾値は、例えば、0.01dps/sである。
【0024】
印加状態判定部132は、所定の周期で、角速度センサ1が印加状態であるか否かの判定を繰り返し行う。所定の周期は、例えば、3msである。また、印加状態判定部132は、所定の周期で、判定結果を印加状態信号St1として出力する。印加状態信号St1は、角速度センサ1が印加状態であるか、印加状態でないかを示す信号である。
【0025】
以下、角速度センサ1が印加状態であると印加状態判定部132が判定している期間を、第1期間という。また、角速度センサ1が印加状態でないと印加状態判定部132が判定している期間を第2期間という。例えば、角速度センサ1が角速度の印加がない状態にあるとき、印加状態判定部132は、角速度センサ1が印加状態でないと判定する。この角速度センサ1が印加状態でない期間が第2期間である。また、その後、角速度センサ1に角速度が印加されると、印加状態判定部132は、角速度センサ1が印加状態にあると判定する。すなわち、角速度センサ1に印加される角速度が0でなくなったときに、第2期間が終了し第1期間が開始される。また、その後、角速度センサ1に印加されている角速度が0となると、印加状態判定部132は、角速度センサ1が印加状態にないと判定する。すなわち、角速度センサ1に印加される角速度が0になったとき、第1期間が終了し第2期間が開始される。
【0026】
(3.4)オフセット量演算部
オフセット量演算部141は、判定処理部130が出力する印加状態信号St1に基づき、角速度平均信号ω0をオフセット補正するための角速度補正信号ωcを出力する。角速度補正信号ωcは、角速度平均信号ω0に対するオフセット量を示す。
【0027】
オフセット量演算部141は、角速度検出素子11から角速度信号ωrを取得する。また、オフセット量演算部141は、角速度平均部111から角速度平均信号ω0を取得する。
【0028】
オフセット量演算部141は、印加状態信号St1が印加状態でないと示している場合、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして出力する。角速度センサ1が印加状態でないと判定処理部130が判定している場合、角速度センサ1に角速度が印加されていない。したがって、角速度平均信号ω0をそのまま角速度補正信号ωcとして使用する。これにより、角速度平均信号ω0が角速度平均信号ω0によりオフセット補正され、オフセット補正後の角速度が0となる。
【0029】
また、オフセット量演算部141は、第2期間において、角速度信号ωrの時間平均を算出し、印加時オフセット量ωdとして保持する。そして、オフセット量演算部141は、印加状態信号St1の示す内容が印加状態でない状態から印加状態に変化すると、開始された第1期間において、直前の第2期間に算出した印加時オフセット量ωdを角速度補正信号ωcとして出力する。すなわち、角速度センサ1が印加状態であると判定処理部130が判定すると、オフセット量演算部141は、直前の第2期間における角速度信号ωrの平均をオフセット量とする角速度補正信号ωcを出力する。
【0030】
オフセット量演算部141は、例えば、第2期間中の角速度信号ωrを保持する。そして、オフセット量演算部141は、印加状態信号St1の示す内容が印加状態でない状態から印加状態に変化すると、保持していた第2期間における角速度信号ωrの時間平均を算出して角速度補正信号ωcとする。
【0031】
なお、オフセット量演算部141は、印加状態信号St1の示す内容が印加状態から印加状態でない状態に変化すると、保持していた印加時オフセット量ωdを初期化し、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして出力する。そして、新たな第2期間における、角速度信号ωrの時間平均を印加時オフセット量ωdとして保持する。この処理により、温度変化等の環境変化によるオフセット量の変動、経年変化等によるオフセット量の変動、等が生じても、第1期間における角速度補正信号ωcは、直前の第2期間における角速度信号ωrに基づいて出力される。したがって、オフセット量演算部141が常に適切な角速度補正信号ωcを出力することができる。
【0032】
(3.5)角速度補正部
角速度補正部142は、角速度平均部111が出力する角速度平均信号ω0にオフセット量演算部141が出力する角速度補正信号ωcを印加して、補正後角速度信号ωaを生成する。
【0033】
角速度補正部142は、角速度平均信号ω0から角速度補正信号ωcを減算処理して補正後角速度信号ωaを生成する。
【0034】
(4)動作
図3は、実施形態1に係る制御回路100の動作を示すフローチャートである。
【0035】
制御回路100の判定処理部130は、角速度センサ1が印加状態にあるか否かの判定を行う(ステップS1)。判定処理部130は、上述した通り、角速度の時間変化量が変化量閾値を超えていれば、角速度センサ1が印加状態であると判定する。また、判定処理部130は、角速度の時間変化量が変化量閾値以下である場合は、角速度センサ1が印加状態でないと判定する。
【0036】
角速度センサ1が印加状態であると判定処理部130が判定した場合(ステップS1の「Yes」)、制御回路100は以下の通り、印加状態動作であるステップS2を実行する。図4は、角速度センサ1が印加状態である場合の制御回路100の動作を示すフローチャートである。
【0037】
制御回路100の角速度平均部111は、角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrに時間平均処理を行って角速度平均信号ω0を出力する(ステップS11)。角速度平均部111は、角速度信号ωrの時間平均を、角速度平均信号ω0として算出する。
【0038】
制御回路100のオフセット量演算部141は、直前の第2期間に生成して保持している印加時オフセット量ωdを角速度補正信号ωcとして出力する。(ステップS12)。印加時オフセット量ωdの生成及び保持の処理については後述する。
【0039】
制御回路100の角速度補正部142は、角速度平均信号ω0に対して角速度補正信号ωcを印加し、補正後角速度信号ωaを出力する(ステップS13)。
【0040】
以上の動作により、ステップS2を終了する。
【0041】
図3に戻って説明を続ける。次に、制御回路100の判定処理部130は、角速度センサ1が印加状態であるか否かの判定を再度行う(ステップS4)。詳細はステップS1と同一であるので省略する。角速度センサ1が印加状態であると判定処理部130が判定した場合(ステップS4の「Yes」)は、第1期間が継続しているとして、制御回路100はステップS2を再度実施する。一方、角速度センサ1が印加状態でないと判定処理部130が判定した場合(ステップS4の「No」)、第1期間が終了し第2期間が開始されたとして、制御回路100は印加時オフセット量ωdを初期化する(ステップS5)。制御回路100はステップS5の後、印加状態でないときの動作であるステップS3を開始する。
【0042】
以下、印加状態でないときの制御回路100の動作であるステップS3について説明する。図5は、角速度センサ1が印加状態でない場合の制御回路100の動作を示すフローチャートである。
【0043】
制御回路100の角速度平均部111は、角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrに時間平均処理を行って角速度平均信号ω0を出力する(ステップS11)。
【0044】
制御回路100のオフセット量演算部141は、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして出力する。(ステップS21)。
【0045】
制御回路100のオフセット量演算部141は、角速度信号ωrの第2期間における平均を算出し、印加時オフセット量ωdとして保持する(ステップS22)。例えば、オフセット量演算部141は、第2期間における角速度信号ωrを全てバッファメモリに保持し、時間平均を算出して印加時オフセット量ωdとして保持する。オフセット量演算部141は、例えば、角速度検出素子11から角速度信号ωrが出力されるたびに、角速度信号ωrをバッファメモリに追加保持する。また、オフセット量演算部141は、第2期間が開始されてから現在までの、角速度信号ωrの時間平均を再計算して印加時オフセット量ωdを更新して保持する。
【0046】
又は、ステップS22におけるオフセット量演算部141の動作は、以下の通りであってもよい。オフセット量演算部141は、例えば、第2期間の時間長と、第2期間が開始されてからの角速度信号ωrの時間平均である印加時オフセット量ωdとを保持する。オフセット量演算部141は、角速度検出素子11から角速度信号ωrが出力されるたびに、第2期間の時間長と、印加時オフセット量ωdと、角速度信号ωrとに基づいて、第2期間の時間長と、印加時オフセット量ωdとを最新の値に更新する。
【0047】
又は、ステップS22におけるオフセット量演算部141の動作は、以下の通りであってもよい。オフセット量演算部141は、第2期間において、現在時刻から遡って所定の時間長における角速度信号ωrの時間平均を算出して印加時オフセット量ωdとして保持する。所定の時間長は、例えば、3秒間である。この場合、オフセット量演算部141は、第2期間において、例えば、角速度検出素子11から角速度信号ωrが出力されるたびに、最新3秒間における角速度信号ωrの時間平均を算出して印加時オフセット量ωdを更新して保持する。
【0048】
制御回路100の角速度補正部142は、角速度平均信号ω0に対して角速度補正信号ωcを印加し、補正後角速度信号ωaを出力する(ステップS13)。
【0049】
以上の動作により、ステップS3を終了する。
【0050】
図3に戻って説明を続ける。次に、制御回路100の判定処理部130は、角速度センサ1が印加状態にあるか否かの判定を再度行う(ステップS6)。詳細はステップS1と同一であるので省略する。角速度センサ1が印加状態でないと判定処理部130が判定した場合(ステップS6の「No」)は、第2期間が継続しているとして、制御回路100はステップS3を再度実施する。一方、角速度センサ1が印加状態であると判定処理部130が判定した場合(ステップS6の「Yes」)は、制御回路100は、ステップS2を最初から開始する。
【0051】
(5)オフセット補正例
図6Aは、角速度信号ωrとオフセット量との各々の時系列変化を示すグラフである。図6Bは、図6の領域200の縦軸を拡大して示した部分グラフである。図6A及び図6Bにおいて、角速度信号ωrをデータ201で示し、オフセット量をデータ202で示す。
【0052】
図6Bに示すように、第2期間P2a、P2b、P2cの各々では、角速度信号ωrは0ではなく、±0.2dps程度の範囲で値が変動している。第2期間においては角速度センサ1に角速度は印加されていないので、第2期間における角速度信号ωrは、熱等の環境要因に起因するノイズと、経年変化等により生じた角速度信号ωrの0のズレによる誤差とを含む。
【0053】
実施形態1に係る角速度センサ1では、角速度信号ωrではなく、その時間平均である角速度平均信号ω0を用いて、角速度センサ1の姿勢を算出する。これにより、ノイズは時間平均処理によって均され小さくなる。しかしながら、角速度信号ωrの0のズレは、時間平均処理を行っても小さくならない。そこで、実施形態1に係る角速度センサ1では、第2期間P2a、P2b、P2cの各々において、角速度平均信号ω0をオフセット量として用いる。これにより、第2期間P2a、P2b、P2cの各々において、補正後角速度信号ωaが常に0となる。したがって、第2期間P2aにおいて、補正後角速度信号ωaを第2期間P2aで積分した値が0となる。すなわち、第2期間P2aにおける、角速度センサ1の角度変化が0となる。同様に、第2期間P2b、P2cの各々においても、角速度センサ1の角度変化が0となる。つまり、角速度センサ1が回転していないときに、誤差の累積による、計算上の姿勢の回転を抑止できる。
【0054】
また、角速度センサ1では、第1期間P1aにおいて、直前の第2期間である第2期間P2aにおける角速度信号ωrの時間平均を、オフセット量とする。第1期間P1aは第2期間P2aと時間軸上で連続しているため、ノイズと角速度信号ωrの0のズレによる誤差とが角速度信号ωrに及ぼす影響は、第1期間P1aと第2期間P2aとで同程度である。したがって、角速度センサ1では、第1期間P1aの角速度平均信号ω0を第2期間P2aにおける角速度信号ωrの時間平均でオフセット補正することにより、ノイズと誤差とを、高精度で取り除くことができる。
【0055】
また、角速度センサ1では、第1期間P1bにおいて、直前の第2期間である第2期間P2bにおける角速度信号ωrの時間平均を、オフセット量とする。第1期間P1bは第2期間P2bと時間軸上で連続しているため、ノイズと角速度信号ωrの0のズレによる誤差とが角速度信号ωrに及ぼす影響は、第1期間P1bと第2期間P2bとで同程度である。したがって、角速度センサ1では、第1期間P1bの角速度平均信号ω0を第2期間P2bにおける角速度信号ωrの時間平均でオフセット補正することにより、ノイズと誤差とを高精度で取り除くことができる。また、角速度センサ1では、第1期間P1bにおけるオフセット量の算出において、第2期間P2aにおける角速度信号ωrを用いない。したがって、例えば、第2期間P2aと第2期間P2bとの間で、誤差の平均値が同一でない場合であっても、第1期間P1bにおける誤差に最も近いと考えられる第2期間P2bにおける誤差を用いて、第1期間P1bにおけるオフセット補正を行うことができる。すなわち、角速度信号ωrの誤差の平均値が経時変化する場合においても、角速度センサ1が、最近の第2期間における角速度信号ωrの時間平均を用いてオフセット補正することで、誤差を高精度に取り除くことができる。
【0056】
なお、実施形態1では、第1期間P1bにおいて、直前の第2期間である第2期間P2bにおける角速度信号ωrの時間平均を、オフセット量としている。しかしながら、例えば、第1期間P1bのオフセット量として、直前の第2期間である第2期間P2bの一部の期間P2Bにおける角速度信号ωrの時間平均を用いてもよい。期間P2Bは、例えば、第2期間P2bの開始時刻から500msの期間と、第2期間P2bの終了時刻から遡って500msの期間とを除く期間である。第2期間の開示時刻付近と終了時刻付近とでは、角速度センサ1が印加状態でないと判定処理部130が判定していても、角速度センサ1に角速度が印加されている場合があり得る。したがって、第2期間の開始時刻付近と終了時刻付近を角速度信号ωrの時間平均の算出対象から除くことにより、オフセット量の精度をより向上させることができる。
【0057】
又は、例えば、第1期間P1bのオフセット量として、直前の第2期間である第2期間P2bの一部の期間における角速度信号ωrの時間平均を用いてもよい。第2期間P2bの一部の期間とは、例えば、第2期間P2bの終了時刻から遡って3秒の期間である。このような手法によっても、第1期間P1bのオフセット量は、直前の第2期間である第2期間P2bの一部の期間における角速度信号ωrに基づくため、第1期間P1bにおいて角速度信号ωrの誤差を高精度に取り除くことができる。
【0058】
(6)効果
実施形態1に係る角速度センサ1は、第2期間において角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrに基づいて、第1期間における角速度平均信号ω0をオフセット補正する。第2期間において角速度センサ1に印加される角速度は0であるから、第2期間における角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrの平均値は、ノイズと角速度信号ωrの0のズレに起因する誤差との平均である。したがって、第2期間における角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrの時間平均をオフセット量とすることにより、ノイズと誤差とを高精度に角速度平均信号ω0から除くことができる。すなわち、実施形態1に係る角速度センサ1では、補正後角速度信号ωaの精度を向上させることができる。
【0059】
また、実施形態1に係る角速度センサ1では、第1期間におけるオフセット量を算出するためのデータとして、第1期間における角速度信号ωrを使用しない。この構成により、角速度センサ1に印加された角速度はオフセット量に反映されない。したがって、補正後角速度信号ωaの精度を高めることができる。
【0060】
また、実施形態1に係る角速度センサ1では、角速度信号ωrの時間変化に基づいて、角速度センサ1に角速度が印加される印加状態であるか否かを判定処理部130が判定する。したがって、角速度センサ1に印加される角速度に変化が生じたか否かに基づいて、角速度センサ1に角速度が印加されたか否かを精度よく判定することができる。
【0061】
また、実施形態1に係る角速度センサ1では、角速度センサ1が印加状態でないときに、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして使用する。すなわち、角速度センサ1に角速度が印加されていないときに、補正後角速度信号ωaが0となる。したがって、第1期間における計算上の角速度センサ1の回転移動量は、必然的に0となる。すなわち、第1期間において、角速度信号ωrと角速度センサ1に印加される角速度との誤差の蓄積による角速度センサ1の姿勢の誤差を抑止できる。
【0062】
(変形例1)
変形例1に係る角速度センサ1は、角速度センサ1が印加状態であるか否かを判定する方法が異なる点で、実施形態1に係る角速度センサ1と異なる。
【0063】
変形例1に係る角速度センサ1は、判定処理部130に替えて判定処理部130aを備える。図7は、判定処理部130aの機能ブロック図である。図7に示すように、判定処理部130aは、角速度平均値演算部133と、印加状態判定部132aとを備える。
【0064】
角速度平均値演算部133は、角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrに対して時間平均処理を行い、角速度平均値ω1を算出する。角速度平均値演算部133は、角速度信号ωrの時間平均値を、角速度平均値ω1として算出する。
【0065】
印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1を用いて、角速度センサ1が印加状態であるか否かを判定する。印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1に対応する平均値閾値を予め保持している。印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1を、平均値閾値と比較する。そして、印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1が平均値閾値より大きい場合、角速度センサ1が印加状態であると判定する。言い換えると、印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1が、平均値閾値以下であれば、角速度センサ1が印加状態でないと判定する。平均値閾値は、例えば、0.01dpsである。なお、上記閾値は1つの例であり、閾値は角速度センサ1の用途に応じて任意に定めてよい。
【0066】
変形例1に係る角速度センサ1によっても、実施形態1に係る角速度センサ1と同様の効果を奏する。すなわち、変形例1に係る角速度センサ1によっても、角速度信号ωrを高精度にオフセット補正することができる。
【0067】
(実施形態2)
実施形態2に係る角速度センサ1bは、判定処理部130bにおいて角速度センサ1bに衝撃が印加された衝撃印加状態であるか否かを更に判定する点と、衝撃印加状態であるか否かで角速度平均部111bの処理が異なる点で、実施形態1に係る角速度センサ1と異なる。
【0068】
(1)構成
(1.1)制御回路
図8は、実施形態2に係る角速度センサ1bの機能ブロック図である。角速度センサ1bは、制御回路100に替えて制御回路100bを備える。制御回路100bは、角速度平均部111bと、判定処理部130bと、を備える点で制御回路100と異なる。残余の構成は実施形態1に係る角速度センサ1と同様であるので説明を省略する。
【0069】
(1.2)判定処理部
判定処理部130bは、図9に示すように、角速度変化量演算部131と、印加状態判定部132と、衝撃判定部134とを備える。
【0070】
衝撃判定部134は、角速度センサ1bに衝撃が印加された衝撃印加状態か否かを判定する。衝撃印加状態とは、角速度センサ1bに衝撃が印加されたことにより、衝撃に起因するノイズが角速度信号ωrに加わった状態を指す。衝撃判定部134は、角速度センサ1bが衝撃印加状態でないときに、角速度信号ωrに基づいて角速度センサ1bが衝撃印加状態であるか否かを判定する。衝撃判定部134は、第1角速度閾値を予め保持している。そして、衝撃判定部134は、角速度信号ωrの大きさを、第1角速度閾値と比較する。衝撃判定部134は、角速度信号ωrの大きさが、第1角速度閾値より大きい場合に、衝撃印加状態であると判定する。言い換えると、角速度センサ1bが衝撃印加状態でないときに、角速度信号ωrの大きさが第1角速度閾値以下であれば、衝撃判定部134は、角速度センサ1bが継続して衝撃印加状態でないと判定する。第1角速度閾値は、例えば、1dpsである。なお、上記閾値は1つの例であり、閾値は角速度センサ1bの用途に応じて任意に定めてよい。
【0071】
また、衝撃判定部134は、角速度センサ1bが衝撃印加状態であるときに、角速度信号ωrに基づいて、衝撃印加状態でない状態に角速度センサ1bが遷移したか否かを判定する。衝撃判定部134は、第2角速度閾値を予め保持している。そして衝撃判定部134は、角速度信号ωrの大きさが、第2角速度閾値を所定時間継続して下回った場合に、衝撃印加状態でない状態に遷移したと判定する。言い換えると、角速度センサ1bが衝撃印加状態であるときに、角速度信号ωrの大きさが第2角速度閾値を上回っていれば、衝撃判定部134は、角速度センサ1bが継続して衝撃印加状態であると判定する。また、角速度センサ1bが衝撃印加状態であるときに、角速度信号ωrの大きさが第2角速度閾値を下回った後、所定時間が経過する前に角速度信号ωrの大きさが第2角速度閾値を超えると、衝撃判定部134は、角速度センサ1bが継続して衝撃印加状態であると判定する。角速度閾値は、例えば、0.01dpsである。所定時間は、例えば、100msである。なお、上記閾値は1つの例であり、閾値は角速度センサ1bの用途に応じて任意に定めてよい。
【0072】
衝撃判定部134は、角速度センサ1bが衝撃印加状態であるか否かを示す衝撃状態信号St2を出力する。
【0073】
以下、角速度センサ1bが衝撃印加状態であると衝撃判定部134が判定した時刻から、角速度センサ1bが衝撃印加状態でない状態に遷移したと衝撃判定部134が判定する時刻までの期間を、第3期間という。また、第3期間以外の各々の連続期間を、第4期間という。すなわち、角速度センサ1bに衝撃が印加されず、衝撃によるノイズが発生していない期間が第4期間である。また、角速度センサ1bに衝撃が印加されてから、衝撃によるノイズが消失するまでの期間が第3期間である。また、角速度センサ1bに衝撃が印加された後であって、かつ、衝撃によるノイズが消失した後の期間は、第4期間である。
【0074】
(1.3)角速度平均部
図10Aは、角速度平均部111bの構成を示す機能ブロック図である。
【0075】
角速度平均部111bは、第1平均回路121と、第2平均回路122と、選択部123とを備える。
【0076】
第1平均回路121は、第5期間における角速度信号ωrの時間平均処理を行う。第2平均回路122は、第6期間における角速度信号ωrの時間平均処理を行う。第6期間は第5期間よりも長い。第5期間は、例えば、100msである。第6期間は、例えば、1sである。すなわち、第1平均回路121は、100ms毎に、角速度信号ωrの100ms平均を出力する。第2平均回路122は、1s毎に、角速度信号ωrの1s平均を出力する。なお、第6期間は、例えば、500ms、又は、2sであってもよい。
【0077】
選択部123は、第1平均回路121の出力と第2平均回路122の出力とのうちいずれか一方を角速度平均信号ω0として選択する。選択部123は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態でないと示していれば、第1平均回路121の出力を角速度平均信号ω0として選択する。すなわち、角速度センサ1bが衝撃印加状態でない場合、角速度平均信号ω0は、角速度信号ωrの第5期間における平均である。一方、選択部123は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態を示していれば、第2平均回路122の出力を角速度平均信号ω0として選択する。すなわち、角速度センサ1bが衝撃印加状態である場合、角速度平均信号ω0は、角速度信号ωrの第6期間における平均である。
【0078】
(2)角速度平均処理
以下、角速度平均処理について詳細に説明する。
【0079】
図11は、角速度信号ωrと、角速度の長期間平均信号ω2との時系列変化を示すグラフである。長期間平均信号ω2は、角速度信号ωrの第6期間における平均である。すなわち、長期間平均信号ω2は、第2平均回路122の出力である。図11では、角速度信号ωrをデータ221で示す。また、図11では、角速度信号ωrの第6期間における平均を、長期間平均信号ω2として、データ222で示す。
【0080】
角速度センサ1bに衝撃が印加された場合、角速度信号ωrにおいて衝撃に起因する大きなノイズが混入する場合がある。例えば、角速度検出素子11の検出軸に対して直交する向きの衝撃が角速度検出素子11に印加された場合、衝撃によって角速度検出素子11に角速度が印加された場合と同様の変位が、衝撃によって角速度検出素子11の内部に生じる場合がある。このような場合、衝撃に起因するノイズが一時的に角速度信号ωrに混入する。
【0081】
図11に示すように、衝撃によるノイズの影響は、衝撃が印加されてから数秒程度続く。衝撃判定部134は、角速度センサ1bに衝撃が印加された時刻t1において、衝撃印加状態を検出する。また、衝撃判定部134は、角速度信号ωrにおいて衝撃によるノイズが十分に弱くなった時刻t2において、衝撃印加状態でないと検出する。時刻t1と時刻t2との間の期間が第3期間P3である。時刻t1より前の期間が第4期間P4aである。また、時刻t2より後の期間が第4期間P4bである。図11に示すように、第3期間P3では、角速度信号ωrに大きなノイズが発生する。
【0082】
第3期間P3における角速度信号ωrのノイズは、角速度信号ωrを時間平均して角速度平均信号ω0を生成するときに、平均化するための期間を長期間化することで小さくすることができる。図11のデータ222に示すように、第6期間における角速度平均信号ω0を用いると、ノイズが均されることで、その影響が小さくなる。しかしながら、角速度平均信号ω0を算出するための期間を常に長期間化すると、角速度信号ωrの短期的な変化が検知しづらくなり、また、角速度信号ωrと角速度平均信号ω0との平均時差が大きくなって、角速度センサ1bの応答性が低下する。そこで、角速度センサ1bでは、衝撃印加状態において、角速度平均信号ω0を生成するための期間を長くし、それ以外の場合に、角速度平均信号ω0を生成するための期間を短くする。
【0083】
(3)効果
実施形態2に係る角速度センサ1bによれば、角速度センサ1bに衝撃が印加された衝撃印加状態において、角速度平均信号ω0を算出するために角速度信号ωrを平均処理する期間を、衝撃印加状態でない場合よりも長くする。したがって、角速度センサ1bへの衝撃の印加によって、角速度検出素子11の出力する角速度信号ωrにノイズが発生しても、角速度平均信号ω0に対するノイズの影響を小さくすることができる。また、角速度センサ1bでは、衝撃印加状態でないときには、角速度平均信号ω0を算出するために角速度信号ωrを平均処理する期間を、衝撃印加状態よりも短くする。したがって、角速度センサ1bでは、衝撃印加状態でない場合に、角速度センサ1bの応答性を向上することができる。
【0084】
また、実施形態2に係る角速度センサ1bによれば、衝撃印加状態でない場合にも、第2平均回路122で、衝撃印加状態において用いる角速度平均信号ω0を算出する。したがって、角速度センサ1bに衝撃が印加されたときに、角速度平均部111bは、選択部123が選択する平均回路を変更することで、速やかに角速度平均信号ω0を算出するための平均期間を変更できる。
【0085】
(変形例2)
変形例2に係る角速度センサ1bは、角速度平均部111cが選択部を有さず、単一の平均回路を備える点で、実施形態2に係る角速度センサ1bと異なる。
【0086】
変形例2に係る角速度平均部111cは、図10Bに示すように、単一の平均回路124を備える。平均回路124は、少なくとも2種類の期間に対して、角速度信号ωrの時間平均を算出する。平均回路124は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態でないと示している場合に、第5期間における角速度信号ωrの時間平均を算出する。
【0087】
また、平均回路124は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態を示している場合に、第6期間における角速度信号ωrの時間平均を算出する。
【0088】
平均回路124は、例えば、角速度検出素子11が出力する角速度信号ωrを保持するバッファを備える。平均回路124は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態を示している場合に、第6期間に出力された角速度信号ωrがバッファに保持されると、角速度信号ωrの第6期間の時間平均を算出して出力し、バッファをクリアする。平均回路124は、衝撃状態信号St2が衝撃印加状態でないと示している場合に、第5期間に出力された角速度信号ωrがバッファに保持されると、角速度信号ωrの第5期間の時間平均を算出して出力し、バッファをクリアする。
【0089】
変形例2に係る角速度センサ1bは、衝撃印加状態において、角速度平均信号ω0を算出するために角速度信号ωrを平均処理する対象期間を、衝撃印加状態でない場合よりも長くする。したがって、角速度センサ1bへの衝撃の印加によって、角速度検出素子11の出力する角速度信号ωrにノイズが発生しても、角速度平均信号ω0に対するノイズの影響を小さくすることができる。
【0090】
また、変形例2に係る角速度センサ1bでは、角速度平均部111cは、衝撃印加状態であるか否かに係わらず同一の平均回路124で角速度平均信号ω0を算出する。したがって、変形例2に係る角速度平均部111cを、実施形態2の角速度平均部111bより小規模な回路で実現することができる。
【0091】
(実施形態に係る他の変形例)
(他の変形例1)
実施形態1~3及び各変形例では、オフセット量演算部141は、第2期間における角速度信号ωrの平均値を印加時オフセット量ωdとして算出し、第1期間において、印加時オフセット量ωdを角速度補正信号ωcとして出力する。
【0092】
しかしながら、例えば、印加時オフセット量ωdを、第2期間における角速度平均信号ω0を用いて算出してもよい。
【0093】
図12は、他の変形例1に係る角速度センサ1dの機能ブロック図である。角速度センサ1dの制御回路100dは、オフセット量演算部141dを備える点で、実施形態1に係る制御回路100と異なる。
【0094】
オフセット量演算部141dは、印加状態信号St1が印加状態でないと示している第2期間において、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして出力する。そして、オフセット量演算部141dは、角速度平均信号ω0の第2期間における時間平均を算出し、印加時オフセット量ωdとして保持する。そして、印加状態信号St1が印加状態を示すと、オフセット量演算部141dは、印加時オフセット量ωdを角速度補正信号ωcとして出力する。
【0095】
上記のような構成によっても、第2期間における角速度平均信号ω0の平均値である印加時オフセット量ωdを第1期間におけるオフセット量として用いるため、角速度平均信号ω0を高精度にオフセット補正することができる。
【0096】
(他の変形例2)
実施形態1~3及び各変形例では、オフセット量演算部141は、印加状態信号St1が印加状態でないと示していると、角速度平均信号ω0を角速度補正信号ωcとして出力する。
【0097】
しかしながら、例えば、印加状態信号St1が印加状態でないと示している場合に、オフセット量演算部141eは、角速度信号ωrに基づいて角速度補正信号ωcを生成し出力してもよい。
【0098】
図13は、他の変形例2に係る角速度センサ1eの機能ブロック図である。角速度センサ1eの制御回路100eは、オフセット量演算部141eを備える点で、実施形態1に係る制御回路100と異なる。
【0099】
オフセット量演算部141eは、印加状態信号St1が印加状態でないと示している第2期間において、角速度信号ωrの第2期間における時間平均を印加時オフセット量ωdとして保持する。そして、印加状態信号St1が印加状態を示している場合、オフセット量演算部141eは、印加時オフセット量ωdを角速度補正信号ωcとして出力する。
【0100】
また、オフセット量演算部141eは、印加状態信号St1が印加状態でないと示していれば、角速度信号ωrを角速度補正信号ωcとして出力する。又は、例えば、オフセット量演算部141eは、印加状態信号St1が印加状態でないと示していれば、角速度信号ωrの短時間平均を角速度補正信号ωcとして出力する。角速度信号ωrの短時間平均は、例えば、角速度信号ωrの100ms当たりの平均である。
【0101】
上記のような構成によっても、第2期間におけるオフセット量が第2期間における角速度信号ωrに基づいて算出されるため、第2期間において、角速度平均信号ω0を高精度にオフセット補正することができる。
【0102】
(他の変形例3)
実施形態1において、角速度変化量演算部131は、角速度信号ωrの時間変化量を角速度パラメータとして算出する。また、印加状態判定部132は、角速度パラメータが変化量閾値を超えている状態を、角速度センサ1が印加状態であると判定する。
【0103】
また、変形例1において、角速度平均値演算部133は、角速度信号ωrの時間平均値を角速度平均値ω1として算出する。また、印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1を、平均値閾値と比較する。そして、印加状態判定部132aは、角速度平均値ω1が平均値閾値より大きい場合に、角速度センサ1が印加状態であると判定する。
【0104】
しかしながら、印加状態の判定方法は、上記の例に限定されない。
【0105】
例えば、印加状態の判定方法は、以下の通りでもよい。角速度変化量演算部131は、角速度信号ωrの時間変化量の二乗を角速度パラメータとして算出する。印加状態判定部132は、角速度パラメータが、対応する閾値を超えている状態を、角速度センサ1が印加状態であると判定する。言い換えると、印加状態判定部132は、角速度パラメータが、対応する閾値以下である状態を、角速度センサ1が印加状態でないと判定する。閾値は、例えば、0.0001(dps/s)である。
【0106】
なお、印加状態の判定方法は、上記の判定方法のうち、いずれか2つ以上を組み合わせてもよい。
【0107】
例えば、判定処理部130は、角速度平均値演算部133を更に備える。そして、印加状態判定部132は、角速度パラメータが対応する閾値以下であり、かつ、角速度平均値ω1が平均値閾値以下である場合に、印加状態でないと判定する。言い換えると、印加状態判定部132は、角速度パラメータが対応する閾値を超える場合と、角速度平均値ω1が平均値閾値より大きい場合とを、いずれも、印加状態であると判定する。又は、例えば、印加状態判定部132は、角速度パラメータが対応する閾値を超え、かつ、角速度平均値ω1が平均値閾値より大きい場合に、印加状態であると判定してもよい。言い換えると、印加状態判定部132は、角速度パラメータが対応する閾値以下である場合と、角速度平均値ω1が平均値閾値以下である場合とを、いずれも、印加状態でないと判定する。
【0108】
また、例えば、判定処理部130は、角速度平均値ω1と印加時オフセット量ωdとの差が閾値を超えている場合に、角速度センサ1に角速度が印加していると判定してもよい。言い換えると、判定処理部130は、角速度平均値ω1と印加時オフセット量ωdとの差が閾値以下である場合に、角速度センサ1に角速度が印加していないと判定する。
【0109】
(他の変形例4)
実施形態2では、衝撃判定部134は、衝撃印加状態において、角速度信号ωrが、第2角速度閾値を所定時間継続して下回った場合に、衝撃印加状態でない状態に遷移したと判定する。
【0110】
しかしながら、衝撃判定部134は、他の判定基準により、衝撃印加状態から衝撃印加状態でない状態に遷移したと判定してもよい。
【0111】
例えば、判定処理部130fは、図14に示すように、角速度平均値演算部133と衝撃判定部134fとを更に備える。衝撃判定部134fは、角速度平均値ω1を、第2角速度閾値と比較する。そして、衝撃判定部134fは、角速度平均値ω1が、第2角速度閾値を所定時間継続して下回った場合に、衝撃印加状態でない状態に遷移したと判定する。言い換えると、衝撃判定部134fは、衝撃印加状態において、角速度平均値ω1が第2角速度閾値を上回っている場合、衝撃印加状態が継続していると判定する。また、衝撃判定部134fは、衝撃印加状態において、角速度平均値ω1が第2角速度閾値を下回った後、所定時間が経過する前に、角速度平均値ω1が第2角速度閾値を上回った場合、衝撃印加状態が継続していると判定する。なお、第2角速度閾値は、実施形態2における第2角速度閾値と異なっていてもよい。
【0112】
または、例えば、衝撃判定部134fは、角速度平均値ω1が、対応する閾値を下回った場合に、衝撃印加状態でない状態に遷移したと判定する。言い換えると、衝撃判定部134fは、衝撃印加状態において、角速度平均値ω1が第2角速度閾値を上回っている場合、衝撃印加状態が継続していると判定する。なお、角速度平均値ω1に対応する閾値は、実施形態2における第2角速度閾値と異なっていてもよい。
【0113】
(まとめ)
第1の態様に係る角速度センサ(1;1b;1d;1e)は、角速度検出素子(11)と、制御回路(100;100b;100d;100e)と、を備える。角速度検出素子(11)は、検出軸周りの角速度を検出して角速度信号(ωr)を出力する。制御回路(100;100b;100d;100e)は、角速度信号(ωr)を処理する。制御回路(100;100b;100d;100e)は、角速度平均部(111;111b;111c)と、判定処理部(130;130a;130b;130f)と、オフセット量演算部(141;141d;141e)と、角速度補正部(142)とを有する。角速度平均部(111;111b;111c)は、角速度信号(ωr)を時間平均して角速度平均信号(ω0)を生成する。判定処理部(130;130a;130b;130f)は、角速度検出素子(11)に角速度が印加されている印加状態か否かを判定する。オフセット量演算部(141;141d;141e)は、角速度平均信号(ω0)に対するオフセット補正量を算出して、角速度補正信号(ωc)として出力する。角速度補正部(142)は、角速度補正信号(ωc)を角速度平均信号(ω0)に印加して、補正後角速度信号(ωa)を出力する。オフセット量演算部(141;141d;141e)は、印加状態でないと判定処理部(130;130a;130b;130f)で判定した期間である第2期間における角速度信号(ωr)に基づいて、印加状態であると判定処理部(130;130a;130b;130f)が判定した期間である第1期間における角速度補正信号(ωc)を算出する。
【0114】
第1の態様に係る角速度センサ(1;1b;1d;1e)によれば、角速度センサ(1;1b;1d;1e)に角速度が印加されない第2期間における角速度信号(ωr)に基づいて、角速度平均信号(ω0)が補正される。したがって、角速度補正信号(ωc)の精度を高めることができる。
【0115】
第2の態様に係る角速度センサ(1:1b:1e)では、第1の態様において、オフセット量演算部(141;141e)は、第2期間において角速度検出素子(11)から出力された角速度信号(ωr)を時間平均し、時間平均した後の信号を、第1期間の角速度補正信号(ωc)として出力する。
【0116】
第2の態様に係る角速度センサ(1;1b;1e)によれば、角速度検出素子(11)から出力された角速度信号(ωr)を用いて角速度補正信号(ωc)を算出する。したがって、角速度補正信号(ωc)の精度を高めることができる。
【0117】
第3の態様に係る角速度センサ(1d)では、第1の態様において、オフセット量演算部(141d)は、第2期間において角速度平均部(111;111b;111c)で生成された角速度平均信号(ω0)を時間平均し、時間平均した後の信号を、第1期間のオフセット補正量(ωc)として算出する。
【0118】
第3の態様に係る角速度センサ(1d)によれば、角速度平均部(111;111b;111c)で生成された角速度平均信号(ω0)を用いて角速度補正信号(ωc)を算出する。したがって、オフセット量演算部(141d)における演算量を低減できる。
【0119】
第4の態様に係る角速度センサ(1;1b;1d;1e)では、第1~第3の態様のいずれかにおいて、判定処理部(130;130b;130f)は、角速度変化量演算部(131)と、印加状態判定部(132)と、を含む。角速度変化量演算部(131)は、角速度信号(ωr)の時間当たりの変化量である角速度変化量を算出する。印加状態判定部(132)は、角速度変化量に基づいて印加状態であるか否かを判定する。印加状態判定部(132)は、角速度変化量が変化量閾値以下であれば、印加状態でないと判定し、角速度変化量が変化量閾値を超えていれば、印加状態であると判定する。
【0120】
第4の態様に係る角速度センサ(1;1b;1d;1e)によれば、角速度信号(ωr)の時間変化に基づいて、角速度センサ(1;1b;1d;1e)に角速度が印加されているか否かを精度よく判定することができる。
【0121】
第5の態様に係る角速度センサ(1)では、第1~第3の態様のいずれかにおいて、判定処理部(130a)は、角速度平均値演算部(133)と、印加状態判定部(132a)と、を含む。角速度平均値演算部(133)は、角速度信号(ωr)の時間平均である角速度平均値(ω1)を算出する。印加状態判定部(132a)は、角速度平均値(ω1)に基づいて印加状態であるか否かを判定する。印加状態判定部(132a)は、角速度平均値(ω1)が平均値閾値以下であれば、印加状態でないと判定し、角速度平均値(ω1)が平均値閾値を超えていれば、印加状態であると判定する。
【0122】
第5の態様に係る角速度センサ(1)によれば、角速度信号(ωr)の時間平均に基づいて、角速度センサ(1)に角速度が印加されているか否かを精度よく判定することができる。
【0123】
第6の態様に係る角速度センサ(1)では、第1~第3の態様のいずれかにおいて、判定処理部(130)は、角速度変化量演算部(131)と、角速度平均値演算部(133)と、印加状態判定部(132)と、を含む。角速度変化量演算部(131)は、角速度信号(ωr)の時間当たりの変化量である角速度変化量を算出する。角速度平均値演算部(133)は、角速度信号(ωr)の時間平均である角速度平均値(ω1)を算出する。印加状態判定部(132)は、角速度変化量と、角速度平均値(ω1)に基づいて印加状態であるか否かを判定する。印加状態判定部(132)は、角速度変化量が変化量閾値以下であり、かつ、角速度平均値(ω1)が平均値閾値以下であれば、印加状態でないと判定し、角速度変化量が変化量閾値を超えているか、又は、角速度平均値(ω1)が平均値閾値を超えていれば、前記印加状態であると判定する。
【0124】
第6の態様に係る角速度センサ(1)によれば、角速度信号(ωr)の時間変化と時間平均とに基づいて、角速度センサ(1)に角速度が印加されているか否かを精度よく判定することができる。
【0125】
第7の態様に係る角速度センサ(1b)では、第1~第6の態様のいずれかにおいて、判定処理部(130b;130f)は、角速度検出素子(11)に衝撃が印加された衝撃印加状態か否かを更に判定する。角速度平均部(111b)は、判定処理部(130b;130f)が衝撃印加状態でないと判定している第3期間において、第5期間における角速度信号(ωr)の平均を角速度平均信号(ω0)として出力し、判定処理部(130b;130f)が衝撃印加状態と判定している第4期間において、第5期間より長い第6期間における角速度信号(ωr)の平均を角速度平均信号(ω0)として出力する。
【0126】
第7の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、角速度センサ(1b)に衝撃が印加された第3期間において、角速度平均信号(ω0)を算出するための期間を、第4期間における角速度平均信号(ω0)を算出するための期間よりも長くする。したがって、衝撃に起因する角速度信号(ωr)のノイズを均し、その影響を小さくすることができる。
【0127】
第8の態様に係る角速度センサ(1b)では、第7の態様において、角速度平均部(111b)は、第1平均回路(121)と、第2平均回路(122)と、選択部(123)と、を含む。第1平均回路(121)は、第5期間における角速度信号(ωr)の平均を算出する。第2平均回路(122)は、第6期間における角速度信号(ωr)の平均を算出する。選択部(123)は、第4期間において、角速度平均信号(ω0)を出力する回路として第1平均回路(121)を選択し、第3期間において、角速度平均信号(ω0)を出力する回路として第2平均回路(122)を選択する。
【0128】
第8の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、衝撃印加状態であるか否かにかかわらず、衝撃印加状態であるときの角速度平均信号(ω0)と、衝撃印加状態でないときの角速度平均信号(ω0)と、の両方を算出する。したがって、角速度センサ(1b)に衝撃が印加された際に、衝撃印加状態であるときの角速度平均信号(ω0)を速やかに用いることができる。
【0129】
第9の態様に係る角速度センサ(1b)では、第7の態様において、角速度平均部(111c)は、平均回路(124)を更に含む。平均回路(124)は、第4期間において、第5期間における角速度信号(ωr)の平均を角速度平均信号(ω0)として出力し、第3期間において、第6期間における角速度信号(ωr)の平均を角速度平均信号(ω0)として出力する。
【0130】
第9の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、角速度平均部(111c)は、衝撃印加状態であるか否かに係わらず同一の平均回路(124)で角速度平均信号(ω0)を算出する。したがって、角速度平均部(111c)を小規模な回路で実現できる。
【0131】
第10の態様に係る角速度センサ(1b)では、第7~第9のいずれかの態様において、判定処理部(130b)は、衝撃判定部(134;134f)を更に含む。衝撃判定部(134)は、衝撃印加状態であるか否かを判定する。衝撃判定部(134;134f)は、衝撃印加状態でないときに角速度信号(ωr)の値が第1角速度閾値を超えた場合に、衝撃印加状態であると判定する。
【0132】
第10の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、角速度信号(ωr)の値に基づいて、角速度センサ(1b)に衝撃が印加されたか否かを高精度に判定できる。
【0133】
第11の態様に係る角速度センサ(1b)では、第10の態様において、衝撃判定部(134;134f)は、衝撃印加状態であると判定した後、角速度信号(ωr)の値と、角速度信号(ωr)の値の時間平均(ω1)と、のうち少なくとも一方が、所定期間継続して第2角速度閾値以下である場合に、衝撃印加状態でないと判定し、それ以外の場合に衝撃印加状態が継続していると判定する。
【0134】
第11の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、角速度信号(ωr)と角速度信号(ωr)の値の時間平均(ω1)との少なくとも一方が十分に小さい状態を所定時間継続したときに、衝撃印加状態でないと判定する。したがって、角速度信号(ωr)に対する衝撃の影響が十分に小さくなってから、衝撃印加状態における処理を終了することができる。
【0135】
第12の態様に係る角速度センサ(1b)では、第10の態様において、衝撃判定部(134f)は、衝撃印加状態であると判定した後、角速度信号(ωr)の値の時間平均(ω1)が第2角速度閾値以下である場合に、衝撃印加状態でないと判定し、それ以外の場合に衝撃印加状態が継続していると判定する。
【0136】
第12の態様に係る角速度センサ(1b)によれば、角速度信号(ωr)の値の時間平均(ω1)が十分に小さい状態となったときに、衝撃印加状態でないと判定する。したがって、角速度信号(ωr)に対する衝撃の影響が十分に小さくなってから、衝撃印加状態における処理を終了することができる。
【符号の説明】
【0137】
1、1b、1d、1e 角速度センサ
11 角速度検出素子
100、100b、100d、100e 制御回路
111、111b、111c 角速度平均部
121 第1平均回路
122 第2平均回路
123 選択部
124 平均回路
130、130a、130b、130f 判定処理部
131 角速度変化量演算部
132、132a 印加状態判定部
133 角速度平均値演算部
134、134f 衝撃判定部
141、141d、141e オフセット量演算部
142 角速度補正部
ωr 角速度信号
ω0 角速度平均信号
ωc 角速度補正信号
ωa 補正後角速度信号
ω1 角速度平均値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14