(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064014
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20230428BHJP
【FI】
H04J99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174200
(22)【出願日】2021-10-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業における委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】太田 真衣
(72)【発明者】
【氏名】安達 宏一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威生
(72)【発明者】
【氏名】田久 修
(57)【要約】
【課題】 フレーム同期を必要としないパケット型インデックス変調方式による通信を可能にする通信システム等を提供する。
【解決手段】 通信システム1において、送信機3と受信機5は、パケット型インデックス変調方式を用いて通信を行う。送信機3は、受信機5に対して、c-1番目のパケット及びc番目のパケットを送信する。受信機5は、差動型PLIM伝送データ受信処理部27と、受信制御部29と、受信部25を備える。受信機5において、受信部25がc-1番目及びc番目のパケットを受信すると、受信制御部29は、受信したc-1番目のパケット及びc番目のパケットのそれぞれの周波数チャネルインデックス^k
c-1及び^k
c並びに受信時刻^t
c-1及び^t
cを取得して、差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、周波数チャネルインデックス^k
c-1及び^k
c並びに受信時刻^t
c-1及び^t
cからPLIM伝送データを復調する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット型インデックス変調方式を用いる通信システムであって、
送信機と受信機を備え、
前記受信機は、差動型PLIM伝送データ受信処理部と、受信制御部と、受信部を備え、
前記送信機は、前記受信機に対して、c-1番目のパケット及びc番目のパケットを、PLIM伝送データを変調して送信し、
前記受信機において、前記受信部がc-1番目及びc番目のパケットを受信すると、
前記受信制御部は、受信したc-1番目のパケット及びc番目のパケットのそれぞれの周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcを取得し、
前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcからPLIM伝送データを復調する、通信システム。
【請求項2】
前記送信機は、差動型PLIM伝送データ送信処理部と、送信制御部と、送信部を備え、
前記送信機において、前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、
c-1番目のパケットを送信するときに使用した周波数チャネルインデックスkc-1及びPLIM伝送データの一部を利用して、c番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcを決定し、
c-1番目のパケットを送信するときに使用した時間スロットインデックスqc-1及びPLIM伝送データの残りを利用して、c番目のパケットの時間スロットインデックスqcを決定する、
請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、
周波数チャネルインデックスkc-1とPLIM伝送データの一部の加算を利用してc番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcを決定し、
時間インデックスqc-1とPLIM伝送データの残りの部分の加算を利用してc番目のパケットの時間スロットインデックスqcを決定し、
前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kcと^kc-1の差分及び受信時刻^tcと^tc-1の差分からPLIM伝送データを復調する、請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
c番目のパケットのPLIM伝送データD
cは、一部であるD
α,cと、残りであるD
β,cの組み合わせであり、
前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、式(eq1)により、
PLIM伝送データの一部D
α,cとc-1番目のパケットの周波数チャネルインデックスk
c-1の加算に対してフレームFの周波数チャネル数Kの剰余演算を行ってc番目のパケットの周波数チャネルインデックスk
cを決定し、
PLIM伝送データの残りであるD
β,cとc-1番目のパケットの時間スロットインデックスq
c-1の加算に対して時間スロット数Qの剰余演算を行ってc番目のパケットの時間スロットインデックスq
cを決定し、
前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、式(eq2)により、
c番目のパケットの周波数チャネルインデックス^k
cからc-1番目のパケットの周波数チャネルインデックス^k
c-1を減算した値に対して、負でない場合には周波数チャネル数Kの剰余演算を行って、負の場合には周波数チャネル数Kを加算後周波数チャネル数Kの剰余演算を行って、c番目のパケットの受信PLIMデータの一部である^D
α,cを決定し、
c番目の受信パケットの時刻^t
cからc-1番目のパケットの受信時間^t
c-1を減算した値を時間スロット長T
slotで除算したものに対してフレームFの時間スロット数Qの剰余演算を行って時間スロットインデックス^q
cを算出することでc番目のパケットのPLIM伝送データの残りである^D
β,cを決定する、請求項1から3のいずれかに記載の通信システム。
【数1】
【請求項5】
前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、c番目のパケットを送信するタイミングについて、直前のパケットを送信した時刻から当該直前のパケットの時間フレームが経過するまで待ち、さらにc番目のパケットの時間スロットインデックス分の時間を待って送信する、請求項1から4のいずれかに記載の通信システム。
【請求項6】
パケット型インデックス変調方式を用いる通信システムにおける通信方法であって、
前記通信システムは、送信機と受信機を備え、
前記受信機は、差動型PLIM伝送データ受信処理部と、受信制御部と、受信部を備え、
前記送信機が、前記受信機に対して、c-1番目のパケット及びc番目のパケットを、PLIM伝送データを変調して送信する送信ステップと、
前記受信機において、前記受信部がc-1番目及びc番目のパケットを受信する受信ステップを含み、
前記受信ステップにおいて、
前記受信制御部は、受信したc-1番目のパケット及びc番目のパケットのそれぞれの周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時間^tc-1及び^tcを取得し、
前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcからPLIM伝送データを復調する、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信方法に関し、特に、パケット型インデックス変調方式を用いる通信システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、IoT(Internet of Things)に注目が集まっている。IoTは、莫大な端末数によりネットワークが構成され、周期的な通信とイベント検知型の通信が存在する。また、IoTは、電池駆動でメンテナンスフリーが望ましい。そのため、低電力、広域通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)の適用が期待されている。
【0003】
LPWAでは、Duty Cycle(DC)を特徴とする。DCは、1つの送信機が通信により周波数チャネルを占有できる時間割合である。例えばDC=1%の場合、通信時間が1秒であれば、100秒間のうち99秒の待機時間が必要となる。
【0004】
DCにより、通信に利用する時間に対し、絶対に通信できない時間が存在する。周波数チャネルが空いていたとしても、自由に通信できない。そこで、DCを活かした変調方式として、パケット型インデックス変調方式(PLIM:Packet-Level Index Modulation)が提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
図6は、PLIMの一例を示す(非特許文献1参照)。
図6(a)は、用語を説明するための図である。時間は、複数の時間スロットTS(Time Slot)に分けられている。パケットは、インデックス(IDX)により指定された周波数チャネルと時間スロットを利用して送信される。1つのパケットを送信したり受信したりする際に使用することができる周波数チャネルと時間スロットの組み合わせの全体をフレームFという。
【0006】
図6(b)にあるように、PLIMでは伝送ビットを表すインデックスに対応する周波数チャネルと時間スロットを用いてパケットを送信する。具体的には、パケット番号cに対して、PLIM伝送ビット(D
c)の上位ビットを周波数インデックス(k
c)で、下位ビットを時間スロットインデックス(q
c)へと割り当てるものとする。このように、パケット番号cのパケットのPLIM伝送ビットにより、パケット番号cのパケットの周波数インデックスk
cと時間スロットインデックスq
cが決定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K. Adachi, et al., “Packet-Level Index Modulation for LoRaWAN,” IEEE Access, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PLIMの利点は、従来のパケットによる伝送容量に加え、DCを満たしつつインデックス変調により伝送量を増加できることである。
【0009】
しかしながら、PLIMでは、時間スロットインデックスを検出するために送受信機間でフレーム同期が必要である。
【0010】
一般的に送信機となる端末は安価であることが予想され、発振器の精度が低い。そのため、クロックドリフトにより生じるフレーム同期ずれによる時間スロットインデックスの検出誤りが発生する。
【0011】
よって、本発明は、フレーム同期を必要としないパケット型インデックス変調方式による通信を可能にする通信システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の第1の側面は、パケット型インデックス変調方式を用いる通信システムであって、送信機と受信機を備え、前記受信機は、差動型PLIM伝送データ受信処理部と、受信制御部と、受信部を備え、前記送信機は、前記受信機に対して、c-1番目のパケット及びc番目のパケットを、PLIM伝送データを変調して送信し、前記受信機において、前記受信部がc-1番目及びc番目のパケットを受信すると、前記受信制御部は、受信したc-1番目のパケット及びc番目のパケットのそれぞれの周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcを取得し、前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに、受信時刻^tc-1及び^tcから算出した時間スロットインデックス^qcに基づきPLIM伝送データを復調する。ここで、「^kc」は、「kc」の上に「^」を付したものを意味する。他の「^」に関する記載も同様である。
【0013】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の通信システムであって、前記送信機は、差動型PLIM伝送データ送信処理部と、送信制御部と、送信部を備え、前記送信機において、前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、c-1番目のパケットを送信するときに使用した周波数チャネルインデックスkc-1及びPLIM伝送データの一部を利用して、c番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcを決定し、c-1番目のパケットを送信するときに使用した時間スロットインデックスqc-1及びPLIM伝送データの残りを利用して、c番目のパケットの時間スロットインデックスqcを決定する。
【0014】
本願発明の第3の側面は、第2の側面の通信システムであって、前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、周波数チャネルインデックスkc-1とPLIM伝送データの一部の加算を利用してc番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcを決定し、時間スロットインデックスqc-1とPLIM伝送データの残りの加算を利用してc番目のパケットの時間スロットインデックスqcを決定し、前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kcと^kc-1の差分及び受信時間^tcと^tc-1の差分から時間スロットインデックス^qcを算出し、PLIM伝送データを復調する。
【0015】
本願発明の第4の側面は、第1から第3のいずれかの側面の通信システムであって、c番目のパケットのPLIM伝送データDcは、一部であるDα,cと、残りであるDβ,cの組み合わせであり、前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、式(eq1)により、PLIM伝送データの一部Dα,cとc-1番目のパケットの周波数チャネルインデックスkc-1の加算に対して周波数チャネル数Kの剰余演算を行ってc番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcを決定し、PLIM伝送データの残りであるDβ,cとc-1番目のパケットの時間スロットインデックスqc-1の加算に対してフレームFの時間スロット数Qの剰余演算を行ってc番目のパケットの時間スロットインデックスqcを決定し、前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、式(eq2)により、c番目の受信パケットの周波数チャネルインデックス^kcからc-1番目の受信パケットの周波数チャネルインデックス^kc-1を減算した値に対して負でない場合には周波数チャネル数Kの剰余演算を行って、負の場合には周波数チャネル数Kを加算後に周波数チャネル数Kの剰余演算を行ってc番目のパケットのPLIM伝送データの一部である^Dα,cを決定し、c番目のパケットの受信時間^tcからc-1番目のパケットの受信時間^tc-1を減算した値を時間スロット長Tslotで除算したものに対してフレームFの時間スロット数Qの剰余演算を行って時間スロットインデックス^qcを算出することでc番目のパケットのPLIM伝送データの残りである^Dβ,cを受信時刻から直接決定することができる。
【0016】
【0017】
本願発明の第5の側面は、第1から第4のいずれかの側面の通信システムであって、前記差動型PLIM伝送データ送信処理部は、c番目のパケットを送信するタイミングについて、直前のパケットを送信した時刻から当該直前のパケットの時間フレームが経過するまで待ち、さらにc番目のパケットの時間スロットインデックス分の時間を待って送信する。
【0018】
本願発明の第6の側面は、パケット型インデックス変調方式を用いる通信システムにおける通信方法であって、前記通信システムは、送信機と受信機を備え、前記受信機は、差動型PLIM伝送データ受信処理部と、受信制御部と、受信部を備え、前記送信機が、前記受信機に対して、c-1番目のパケット及びc番目のパケットを、PLIM伝送データを変調して送信する送信ステップと、前記受信機において、前記受信部がc-1番目及びc番目のパケットを受信する受信ステップを含み、前記受信ステップにおいて、前記受信制御部は、受信したc-1番目のパケット及びc番目のパケットのそれぞれの周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcを取得し、前記差動型PLIM伝送データ受信処理部は、周波数チャネルインデックス^kc-1及び^kc並びに受信時刻^tc-1及び^tcからPLIM伝送データを復調する。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の各側面によれば、受信機は、c-1番目とc番目のパケットに関する情報を利用して差動的に動作して、c番目のフレームのPLIM伝送データを、c-1番目とc番目のパケットの周波数チャネルインデックスと受信時間スロットインデックスから復調することにより、フレーム同期を必要とせずに復調処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】送信機3の送信処理部11の動作の一例を示すフロー図である。
【
図3】受信制御部29の動作の一例を示すフロー図である。
【
図4】差動型PLIM伝送データ受信処理部27の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0022】
図1は、本願発明の実施の形態に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
通信システム1は、送信機3と、受信機5を備える。
【0024】
送信機3は、送信処理部11と、送信情報記憶部13と、送信部15を備える。
【0025】
送信処理部11は、例えばプロセッサであり、プログラムの制御によって動作する。送信処理部11は、差動型PLIM伝送データ送信処理部17と、送信制御部19を備える。差動型PLIM伝送データ送信処理部17は、送信するパケットのインデックスを、伝送するPLIM伝送データと直前のパケットでのインデックスとを利用して生成する。送信制御部19は、送信部15に対して、生成されたインデックスを用いてパケットを送信させる。
【0026】
送信情報記憶部13は、例えばメモリなどの記憶装置である。送信するパケットに関する情報などのデータベースを記憶する。
【0027】
送信部15は、例えばアンテナなどの無線通信を実現する通信装置である。
【0028】
受信機5は、受信処理部21と、受信情報記憶部23と、受信部25を備える。
【0029】
受信処理部21は、例えばプロセッサであり、プログラムの制御によって動作する。受信処理部21は、差動型PLIM伝送データ受信処理部27と、受信制御部29を備える。受信制御部29は、受信部25が受信したパケットの情報を取得する。差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、直前のパケットの周波数チャネルインデックスと時間スロットインデックスを利用して、受信したパケットのPLIM伝送データを復調する。
【0030】
受信情報記憶部23は、例えばメモリなどの記憶装置である。受信したパケットに関する情報などのデータベースを記憶する。
【0031】
受信部25は、例えばアンテナなどの無線通信を実現する通信装置である。
【0032】
なお、送信機3において、送信処理部11、送信情報記憶部13及び送信部15が、それぞれ、受信処理部21、受信情報記憶部23及び受信部25と同様に動作し、受信機5において、受信処理部21、受信情報記憶部23及び受信部25が、それぞれ、送信処理部11、送信情報記憶部13及び送信部15と同様に動作することによって、送受信を実現することができる。
【0033】
図2は、送信機3の送信処理部11の動作の一例を示すフロー図である。送信機3は、ノード番号がmとする。
【0034】
送信処理部11は、初期化処理を行う(ステップSTA1)。例えば、パケットカウンタcを0に設定する。
【0035】
送信処理部11は、最初のパケットを生成する(ステップSTA2)。
【0036】
差動型PLIM伝送データ送信処理部17は、初期インデックスを設定する。初期インデックスは、周波数チャネルインデックスk0と時間スロットインデックスq0を含む。
【0037】
送信制御部19は、初期インデックスで最初のパケットを送信する(ステップSTA3)。
【0038】
送信処理部11は、送信情報記憶部13に対して、最初のパケットを0番目として、この0番目のパケットに対応して、初期インデックス(k0,q0)を記憶させる。
【0039】
送信処理部11は、cを1増加する(ステップSTA4)。
【0040】
送信処理部11は、c番目のパケットを生成する(ステップSTA5)。パケットのヘッダには、パケットカウンタcと、ノード番号mの情報を含める。
【0041】
差動型PLIM伝送データ送信処理部17は、c-1番目のパケットを送信した周波数チャネルインデックスkc-1と時間スロットインデックスqc-1の情報を取得する(ステップSTA6)。
【0042】
差動型PLIM伝送データ送信処理部17は、PLIM伝送データに基づいて、c番目のパケットの周波数チャネルインデックスkcと時間スロットインデックスqcを決定する(ステップSTA7)。
【0043】
送信制御部19は、送信部15に対して、c番目のパケットを、c番目のフレームの周波数チャネルインデックスkcと時間スロットインデックスqcで送信させる(ステップSTA8)。
【0044】
送信処理部11は、次のパケットがあるか否かを判断する(ステップSTA9)。次のパケットがあるならば、ステップSTA4に戻る。次のパケットがないならば、次のフレームでのパケット送信を回避し(ステップSTA10)、フレーム時間を待機し(ステップSTA11)、ネットワーク内に通信相手(受信機5)がいるか否かを判断して(ステップSTA12)、いないならば処理を終了し、いるならばステップSTA9に戻る。
【0045】
ステップSTA7及びステップSTA8の処理について、具体的に説明する。
【0046】
Kは周波数チャネル数であり、QはフレームFの時間スロット数である。
【0047】
c番目のパケットのインデックスは、周波数チャネルインデックスkcと、時間インデックスqcを含む。
【0048】
フレーム長をTframe,mとし、c番目のパケットのフレームの番号をTframe,m,cとする。
【0049】
c番目のパケットの伝送データ(D-PLIMデータ)Dcの上位ビットをDα,c、下位ビットをDβ,cとする。
【0050】
初期インデックスは、例えば、k0=0、q0=0としたり、ランダムに決定したりする。
【0051】
差動型PLIM伝送データ送信処理部17は、次の式に従って、c番目のパケットの差動化インデックス(D-IX)を決定する(ステップSTA7参照)。
【0052】
【0053】
送信制御部19は、決定された差動化インデックスを用いて、c-1番目のパケット送信からQ-qc-1+qc個の時間スロット分待機した後に、周波数チャネルkcを用いてc番目のパケットを送信する(ステップSTA8参照)。
【0054】
図3及び
図4は、受信機5の受信処理部21の動作の一例を示すフロー図である。
【0055】
図3は、受信制御部29の動作の一例を示すフロー図である。
【0056】
受信制御部29は、受信部25に対して、Kチャネルすべてで待機させる(ステップSTB1)。受信制御部29は、パケットを受信したか否かを判断する(ステップSTB2)。パケットを受信するまで待機し、受信したならばステップSTB3に進む。
【0057】
ステップSTB3において、受信制御部29は、受信したパケットを復調する。
【0058】
受信制御部29は、受信したパケットのヘッダから、パケット番号cと、ノード番号mの情報を取得する(ステップSTB4)。
【0059】
受信制御部29は、パケットを受信した周波数から周波数チャネル番号^kcを取得し、受信時刻^tcを取得する(ステップSTB5)。受信制御部29は、受信情報記憶部23に対して、ノード番号mと、パケット番号c、周波数チャネル番号^kc及び受信時刻^tcを紐づけて記憶させる。
【0060】
受信制御部29は、ネットワーク内に通信相手がいるか否かを判断する(ステップSTB6)。通信相手がいるならばステップSTB1に戻る。通信相手がいないならば処理を終了する。
【0061】
図4は、差動型PLIM伝送データ受信処理部27の動作の一例を示すフロー図である。
【0062】
差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、受信制御部29によってパケットを受信したときの処理が行われたか否かを判断する(ステップSTC1)。パケットの受信処理が行われるまで待機し、受信処理が行われたならばステップSTC2に進む。
【0063】
ステップSTC2において、差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、受信したパケットのパケット番号cが0であり、最初のパケットであるか否かを判断する(ステップSTC3)。最初のパケットであるならば、最初のパケットとしてPLIM伝送データを復調してデータベースに出力してステップSTC1に戻る。最初のパケットでないならばステップSTC4に進む。
【0064】
ステップSTC4において、差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、ノード番号mのc-1番目のパケットを受信しているか否かを判断する。受信していないならば、ステップSTC1に戻る。ノード番号mのc-1番目のパケットを受信しているならば、ステップSTC5に進む。
【0065】
ステップSTC5において、差動型PLIM伝送データ受信処理部27は、ノード番号mのc-1番目のパケットの周波数チャネルインデックス^kc-1及び受信時刻^tc-1を取得する。受信時刻^tcと^tc-1から時間スロットインデックス^qcを算出して、PLIM伝送データを復調し(ステップSTC6)、受信情報記憶部23に記憶させる(ステップSTC7)。そして、ステップSTC1に戻る。
【0066】
ステップSTC6の処理について、具体的に説明する。
【0067】
対象パケットのパケット番号をc(c>0)とし、周波数チャネルインデックスを^kc、受信時刻を^tcとする。c-1番目のパケットの周波数チャネルインデックスを^kc-1とし、受信時刻を^tc-1とする。
【0068】
このとき、受信したPLIM伝送データ^Dcを、次の式で推定する。ここで、^Dα,cは上位ビットであり、^Dβ,cは下位ビットである。ただし、(^kc-^kc-1)<0の場合には剰余演算(mod)を行う前にKを加算する。ここで、Tslotは、任意の時間スロット長である。
【0069】
【0070】
パケットロスにより前のパケットを受信できていなかった場合には、次のc+1番目の受信パケットまで待機し、連続パケットが受信できた時のみPLIM伝送データを復調する。
【0071】
図5は、
図2、
図3及び
図4の動作を具体的に説明するための例である。周波数チャネル数Kは4であり、時間スロット数Qは4である。CH
0~CH
3は、それぞれ、周波数チャネルインデックス0~3に対応するチャネルである。
【0072】
【0073】
最初のパケットPs0は、PLIM伝送データD0=0000であり、初期インデックスである周波数チャネルインデックスk0=0、時間スロットインデックスq0=0にて送信する。
【0074】
次のパケットPs1は、PLIM伝送データD1=0101(2進数表記)である。周波数チャネルインデックスk1は、直前のパケットPs0の周波数チャネルインデックスk0=0と上位データDα,1=01(2進数表記。10進数では1)を加算してK=4の剰余演算を行い、1と決定する。時間スロットインデックスq1は、直前のパケットPs0の周波数チャネルインデックスq0=0と下位データDβ,1=01(2進数表記。10進数では1)を加算してQ=4の剰余演算を行い、1と決定する。Ps1は、周波数チャネルk1=1を用いて、直前のパケットPs0の送信から時間スロット5個分の時間が経過した後に送信される。すなわち、直前のパケットPs0の送信からフレームが終了するまで時間スロットQ-q0=4個分の時間を待ち、さらに時間スロットq1=1個分の時間を待って送信する。
【0075】
次のパケットPs2は、PLIM伝送データD2=1100(2進数表記)である。周波数チャネルインデックスk2は、直前のパケットPs1の周波数チャネルインデックスk1=1と上位データDα,2=11(2進数表記。10進数では3)を加算してK=4の剰余演算を行い、0と決定する。時間スロットインデックスq2は、直前のパケットPs1の時間スロットインデックスq1=1と下位データDβ,2=00(2進数表記。10進数では0)を加算してQ=4の剰余演算を行い、1と決定する。Ps2は、周波数チャネルインデックスk2=0により、直前のパケットPs1の送信から4時間スロット後とする。すなわち、直前のパケットPs1の送信からフレームが終了するまで時間スロットQ-q1=3個分の時間を待ち、さらに時間スロットq2=1個分の時間を待って送信する。
【0076】
次のパケットPs3は、PLIM伝送データD3=1011(2進数表記)である。周波数チャネルインデックスk3は、直前のパケットPs2の周波数チャネルインデックスk2=0と上位データDα,3=10(2進数表記。10進数では2)を加算してK=4の剰余演算を行い、2と決定する。時間スロットインデックスq3は、直前のパケットPs2の時間スロットインデックスq2=1と下位データDβ,3=11(2進数表記。10進数では3)を加算してQ=4の剰余演算を行い、0と決定する。Ps3は、周波数チャネルインデックスk3=2(2進数表記では10)により、直前のパケットPs2の送信から3時間スロット後とする。すなわち、直前のパケットPs2の送信からフレームが終了するまで時間スロットQ-q2=3個分の時間を待ち、時間スロットq3=0であるために直ちに送信する。
【0077】
図5(b)は、受信機5における復調例である。ここでは、T
slot=1としているが、その限りではない。
【0078】
最初のパケットPr0は、カウンタ番号c=0であり、初期インデックスである周波数チャネルインデックス^k0=0、時刻^t0=0にて受信されている。
【0079】
次のパケットPr1は、カウンタ番号c=1であり、周波数チャネルインデックス^k1=1(2進数表記で01)、時刻^t1=5にて受信されている。
【0080】
上位データ^Dα,1は、次のように求める。受信パケットの周波数チャネルインデックス^k1=1から直前のパケットの周波数チャネルインデックス^k0=0を減算すると1である。これは正であるから、これにK=4の剰余演算を行い、上位データ^Dα,1を1(2進数表記で01)と決定する。
【0081】
下位データ^Dβ,1は、次のように求める。受信パケットの時刻^t1=5から直前のパケットの受信時刻^t0=0を減算すると5である。これをTslot=1で除算した後にQ=4の剰余演算を行い、下位データ^Dβ,1を1(2進数表記で01)と決定する。
【0082】
次のパケットPr2は、カウンタ番号c=2であり、周波数チャネルインデックス^k2=0(2進数表記で00)、時刻^t2=9にて受信されている。
【0083】
上位データ^Dα,2は、次のように求める。受信パケットの周波数チャネルインデックス^k2=0から直前のパケットの周波数チャネルインデックス^k1=1を減算すると-1である。これは負であるから、これにK=4を加えて3とする。これにK=4の剰余演算を行い、上位データ^Dα,2を3(2進数表記で11)と決定する。
【0084】
下位データ^Dβ,2は、次のように求める。受信パケットの時刻^t2=9から直前のパケットの受信時刻^t1=5を減算すると4である。これをTslot=1で除算した後にQ=4の剰余演算を行い、下位データ^Dβ,2を0(2進数表記で00)と決定する。
【0085】
次のパケットPr3は、カウンタ番号c=3であり、周波数チャネルインデックス^k3=2(2進数表記で10)、時刻^t3=12にて受信されている。
【0086】
上位データ^Dα,3は、次のように求める。受信パケットの周波数チャネルインデックス^k3=2から直前のパケットの周波数チャネルインデックス^k2=0を減算すると2である。これは正であるから、これにK=4の剰余演算を行い、上位データ^Dα,3を2(2進数表記で10)と決定する。
【0087】
下位データ^Dβ,3は、次のように求める。受信パケットの時刻^t3=12から直前のパケットの受信時刻^t2=9を減算すると3である。これをTslot=1で除算した後にQ=4の剰余演算を行い、下位データ^Dβ,3を3(2進数表記で11)と決定する。
【0088】
本願発明の差動型によるPLIM伝送データの送受信によれば、パケットは、直前のパケットとの関係で変調及び復調が行われる。そのため、フレーム同期を必要とせず、送受信機間でのクロックドリフトによるフレーム同期のずれによる時間スロットインデックスの誤検出を抑制することができる。
1 通信システム、3 送信機、5 受信機、11 送信処理部、13 送信情報記憶部、15 送信部、17 データ送信処理部、19 送信制御部、21 受信処理部、23 受信情報記憶部、25 受信部、27 データ受信処理部、29 受信制御部