(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064027
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】半導体製造装置用キャニスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230428BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H01L21/31 F
C23C16/448
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009350
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142539
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522033988
【氏名又は名称】ドゥクサン テコピア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン サン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イル トゥ
(72)【発明者】
【氏名】チョン フェ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン ペ
(72)【発明者】
【氏名】チュン ウォン キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム チャ ヨン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA16
4K030AA18
4K030CA04
4K030CA06
4K030CA17
4K030EA01
4K030KA45
4K030LA15
4K030LA18
5F045AA15
5F045AC15
5F045AC16
5F045EE02
(57)【要約】
【課題】半導体製造装置用キャニスタを提供する。
【解決手段】キャリアガスが注入されるディップチューブの端部に焼結フィルターを備えており、キャニスタ容器の内部に熱伝逹率に優れる多孔性容器を更に備えていることで、キャニスタの内部に充填された前駆物質を円滑に後段の薄膜蒸着設備に供給することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体薄膜蒸着工程に用いられる前駆物質が貯留されて気化される容器と、
前記前駆物質が投入される前駆物質投入口及びキャリアガスが投入されるキャリアガス投入口が設けられ、前記容器を密閉させるカバーと、
前記容器の内部に設けられた多孔性容器と、
前記多孔性容器の内部に設けられ、前記キャリアガス投入口を介して投入されたキャリアガスを前記容器の底まで伝達するディップチューブと、
前記ディップチューブの端部に取り付けられて前記ディップチューブから排出されるキャリアガスを前記容器の内部に拡散させる焼結フィルターと、
を含む半導体製造装置用キャニスタ。
【請求項2】
前記ディップチューブは、折り曲げられた形態であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用キャニスタ。
【請求項3】
前記ディップチューブは、前記多孔性容器の底面を貫通して前記容器の底面上部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用キャニスタ。
【請求項4】
前記多孔性容器は、金属で形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用キャニスタ。
【請求項5】
前記多孔性容器は、前記容器の形状と同一であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用キャニスタ。
【請求項6】
前記多孔性容器の上端が、前記カバーの下部に密着するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用キャニスタに関し、より詳しくは、従来の半導体製造装置用キャニスタに比べて、キャリアガスの拡散速度を向上させ、前駆体物質への熱伝逹効率を向上させることができる半導体製造装置用キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や平板ディスプレイなどの電子素材関連製造工程では、金属薄膜、窒化金属薄膜または酸化金属薄膜のようなセラミックス薄膜及び厚膜を蒸着する時、有機金属化合物または無機金属化合物などのような前駆体(precursor)を利用する原子層蒸着法(ALD;Atomic Layer Deposition)や化学蒸着法(CVD;Chemical Vapor Deposition)などのような工程が使われる。
【0003】
ALDやCVDのような工程では使われる前駆体(化学的供給源)は、目的によって特殊製作された別途のキャニスタに満たされて工程に供給され、液相または固相の前駆体物質は、キャニスタで気化されて蒸着設備の反応チャンバ内に供給される。
【0004】
半導体製造装置用キャニスタは、前駆体が満たされる容器と、容器の上部を覆うカバーと、カバーに設けられた前駆体投入口と、カバーに設けられたキャリアガス投入口と、前記キャリアガス投入口と連結されてキャリアガスを容器の内部に供給する供給管と、供給管を介して排出されたキャリアガスおよび気化された前駆体物質が排出される吐出口とを含む。吐出口はカバーに設けられ、ALD、CVDなどの薄膜蒸着設備と連結される。
【0005】
韓国公開特許第10-2012-0030658号、第10-2014-0133469号などは、半導体製造工程用キャニスタを開示しているが、液体または固体の前駆体がキャニスタ容器の内部で気化された後、キャリアガスと一緒に迅速に排出されにくいだけでなく、キャリアガスに含まれた粒子状不純物も排出されてしまい、後段の蒸着工程に影響を及ぼすことができるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点を解決するために案出されたもので、本発明は、キャリアガスに含まれた不純物を除去するとともに、注入されたキャリアガスがキャニスタの内部全体に均一に広がるように焼結フィルターが端部に設けられたディップチューブ(Dip tube)を含む半導体製造装置用キャニスタを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、キャリアガスの拡散を円滑にするとともに、容器に充填された前駆体に熱を伝達することにより、より効率よく前駆体物質を気化させることができる多孔性容器を具えたキャニスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、半導体薄膜蒸着工程に用いられる前駆物質が貯留されて気化される容器と、前記前駆物質が投入される前駆物質投入口及びキャリアガス投入口が設けられ、前記容器を密閉させるカバーと、前記容器の内部に設けられた多孔性容器と、前記多孔性容器の内部に設けらされ、前記キャリアガス投入口を介して投入されたキャリアガスを前記容器の底まで伝達するディップチューブと、前記ディップチューブの端部に取り付けられて前記ディップチューブから排出されるキャリアガスを前記容器の内部に拡散させる焼結フィルターと、を含む半導体製造装置用キャニスタを提供する。
【0009】
望ましくは、前記ディップチューブは、折り曲げられた形態であってもよく、前記ディップチューブは、前記多孔性容器の底面を貫通して前記容器の底面上部に位置してもよい。
【0010】
前記多孔性容器は、熱伝逹が可能な金属で形成されることができ、前記多孔性容器は、前記容器の形状と同一のものであることが望ましい。
【0011】
また、前記多孔性容器の上端が前記カバーの下部に密着するように具備されることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャリアガスが供給されるディップチューブの端部に焼結フィルターを具備することで、キャリアガスに含まれた不純物を最小化するとともに、注入されたキャリアガスをキャニスタの内部で均一に拡散させることができるキャニスタを提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、多孔性容器を本体容器の内部に設けられることにより、キャリアガスの拡散を円滑にするとともに、容器に充填された前駆体に熱を伝達することにより、より効率よく前駆体物質を気化させることができるキャニスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による半導体製造装置用キャニスタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する説明は、構造的乃至機能的説明のための実施例に過ぎないものであるので、本発明の権利範囲は、本文に説明された実施例によって限定されるものと解釈されてはならない。
【0016】
本発明を説明するにおいて、関連した公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を濁らす恐れがあると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0017】
また、一つの構成要素が他の構成要素「の上に」または「上に」あるとされた場合、これは他の構成要素の「真上」にある場合だけではなく、その中間にまた他の構成要素が介在する場合も含むことができると理解されなければならない。
【0018】
さらに、ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いると言及されたときは、該他の構成要素に直接連結されることもできるが、中間に他の構成要素が介在することもあり得ると理解されなければならない。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いると言及された時は、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されなければならない。
【0019】
単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含むものと解すべき、「含む」または「有する」などの用語は、説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであつて、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0020】
ここで使われるすべての用語は、別段の定義がない限り、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば一般に理解されるものと同一の意味を有する。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において有する意味と一致する意味であると解されるべきであり、本発明において明白に定義しない限りは、理想的または過度に形式的な意味を有するものと解されてはならない。
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明について詳しく説明する。実施例の説明の中で、同一の構成に対しては同じ符号を付してある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による半導体製造装置用キャニスタの平面図であり、
図2は、
図1のA-A線による断面図である。
【0023】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態による半導体製造装置用キャニスタ100は、半導体薄膜蒸着工程に用いられる前駆物質が貯留されて気化される容器110と、前記容器を密閉させるカバー120と、キャニスタ容器110の内部に設けられた多孔性容器130と、キャリアガスが供給されるディップチューブ140などを含む。
【0024】
前記カバー120と容器110は、スクリューまたはピン形態のファスナーのような締結手段121及びガスケット150などで密着連結されることができる。すなわち、容器110とカバー120との間にガスケット150を取り付け、締結手段121を用いて容器110とカバー120を締結する。このようにカバー120と容器110とを密着連結することで、外部に存在する酸素、水分、汚染物質などがキャニスタの内部に流入されることを防止することができる。
【0025】
キャニスタ容器110の内部には、多孔性容器130が設けられる。このような多孔性容器130は、キャニスタ容器110(外部容器)と同一形状であることが望ましい。
【0026】
また、キャニスタ容器110は、外部容器110から離間して設置されることが望ましいが、これはディップチューブ140を介して排出されたキャリアガスが多孔性容器130の内部へ円滑に出入り可能にするためである。
【0027】
このような多孔性容器130は、熱伝導率に優れる金属からなることが望ましく、側面部及び底面部など全面にキャリアガスなどが出入りすることができる孔131が複数個形成される。この時、孔131の大きさ及び個数などは適宜選ばれることができる。
【0028】
多孔性容器130をキャニスタ容器110の内部に設置することで、窒素、アルゴンなどのようなキャリアガスの拡散を円滑にすることができ、充填された前駆物質に熱を均一に十分に伝達することができて気化を促進することができるのみならず、キャリアガスの円滑な拡散によって、気化された前駆物質を吐出口127に円滑に排出することができるという利点がある。
【0029】
前記カバー120には、前駆物質投入口123、キャリアガス投入口125、吐出口127などが設けられることができ、緊急排気口129が更に設けられてもよい。緊急排気口129は、吐出口127の詰まりなどの異常現象発生時にキャニスタ100の内部圧力を制御するために設けられる。
【0030】
前記前駆物質投入口123を介して液体または固体の前駆物質をキャニスタの内部に投入することができる。前駆物質投入口123を介して投入された前駆物質は、キャニスタの内部で気化されて吐出口127に排出される。キャニスタは、容器110の内部に充填された前駆物質が気化できるように適切に加熱される。
【0031】
前記キャリアガス投入口125は、ディップチューブ140と連結される。したがって、キャリアガス投入口125を介して注入された窒素、アルゴンなどのような不活性ガスは、ディップチューブ140を通過してキャニスタの内部に投入される。ディップチューブ140は、キャニスタ容器110の底面までキャリアガスが注入できるように垂直方向に長く形成されるのが望ましい。
【0032】
前記ディップチューブ140の一端は、キャリアガス投入口125と連結され、ディップチューブ140の他端は、容器110の内部に位置する。この時、ディップチューブ140は、端部(キャリアガスが排出される部分)がキャニスタ容器110の底面に近接する程度に長く形成されることが望ましい。例えば、ディップチューブ140に取り付けられた焼結フィルターの端部が容器110の底面と3~10mm、望ましくは、5mm程度離間して長く形成されてもよい。このようにディップチューブ140の端部が容器110の底面に近接するように長く形成されると、注入されたキャリアガスが底面とぶつかった後に反動によって周辺部によく拡散することができる。
【0033】
前記ディップチューブ140の他端が多孔性容器130を貫通して位置することができるように設けられるのが望ましい。すなわち、ディップチューブ140の他端が多孔性容器130の下部底面とキャニスタ容器110の上部底面との間に位置することが望ましい。
【0034】
また、ディップチューブ140は、折り曲げられた形態で形成されることが望ましい。これは、キャリアガスの効率的な拡散のためであり、前述のようにカバー120にはキャリアガス投入口125の以外にも、前駆物質投入口123、吐出口127、緊急排気口129などが設置されなければならないので、キャリアガス投入口125をカバー120の中央に形成することができない。したがって、キャリアガス投入口125に連結されたディップチューブ140を容器110の中央に位置させてキャリアガスの拡散効率を高めるためには、折り曲げられた形態でなければならない。
【0035】
キャリアガスが排出される前記ディップチューブ140の端部には、焼結フィルター141が取り付けられる。焼結フィルター141が設けられることで、キャリアガスに含まれた粒子性不純物を除去することができ、ディップチューブ140から排出されたキャリアガスの方向性を相殺させて、キャニスタの内部全体にキャリアガスを拡散させることができる。
【0036】
焼結フィルター141を通過したキャリアガスは、容器110の内部全体に拡散するが、キャリアガスが多孔性容器130の孔を介して多孔性容器130の内部へ流入する過程で、乱気流が形成され、該乱気流によってキャニスタ100に充填された前駆物質が均一に消耗できるので、吐出口127を介して前駆物質を円滑に排出可能になる。
【0037】
すなわち、気化された前駆物質を吐出口127に円滑に排出すべく、キャリアガスが用いられ、この時、前駆物質と反応が生じないように、窒素、アルゴンなどのような不活性ガスをキャリアガスとして使用することが望ましい。
【0038】
カバー120に設けられた吐出口127を通じて、キャリアガス及び気化された前駆物質が後段のALD、CVDなどの薄膜蒸着設備(図示せず)に供給される。すなわち、吐出口127は、ALD、CVDなどの薄膜蒸着設備と連結される。
【0039】
この時、キャニスタと吐出口127からALDまたはCVDなどの薄膜蒸着設備の工程チャンバまでのラインは、いずれも加熱ジャケット(図示せず)が設置される。加熱ジャケットを設置することで、気化されて注入される前駆物質の再凝縮を防止することができる。加熱ジャケットの温度は、室温で約150℃程度であり、固相または液相の前駆物質の熱特性によって異なることがある。
【0040】
また、吐出口127にフィルター(図示せず)を具えることにより、気化された気相のほかに、液相または固相の前駆物質が後段の薄膜蒸着設備に流入されることを防止することができる。
【0041】
したがって、本発明によれば、ディップチューブ140の端部に焼結フィルター141を具えており、キャニスタ容器110の内部に熱伝逹率に優れる多孔性容器130を更に備えていることで、キャニスタの内部に充填された前駆物質を円滑に後段の薄膜蒸着設備に供給することができるという利点がある。
【0042】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者であれば本発明の要旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。したがって、本明細書に開示された実施例は、本発明を限定するためのものではなく説明するためのものであり、これらの実施例によって本発明の権利範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって解釈されなければならなく、その均等範囲内のすべての技術も、本発明の権利範囲に含むものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0043】
100 キャニスタ
110 容器
120 カバー
121 締結手段
123 前駆物質投入口
125 キャリアガス投入口
127 吐出口
129 緊急排出口
130 多孔性容器
131 孔
140 ディップチューブ
141 焼結フィルター
150 ガスケット