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  • 特開-ポリウレタン系ホットメルト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064035
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ポリウレタン系ホットメルト
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20230428BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C08G18/65 011
C08G18/66 040
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073373
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】110139408
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】張 振偉
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF16
4J034DF20
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034QB12
4J034RA03
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、イソシアネート成分と、ポリオール成分と、鎖延長剤成分との反応で形成される、ポリウレタン系ホットメルトを提供する。
【解決手段】前記ポリオール成分は、数平均分子量が650~1,500である第1のポリオール、及び数平均分子量が1,500~3,000である第2のポリオールを含む。前記鎖延長剤成分は、第1の鎖延長剤と、エーテル基又は炭化水素基を有する二価アルコールである第2の鎖延長剤と、を含む。前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤:第2の鎖延長剤)は、9:1~4:1である。前記ポリウレタン系ホットメルトの成形温度は、100℃~150℃であり、総領域における第1の融点が含まれた領域は、総領域の20%~40%を占め。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分と、ポリオール成分と、鎖延長剤成分との反応で形成される、ポリウレタン系ホットメルトであって、
前記ポリオール成分は、数平均分子量が650~1,500である第1のポリオール、及び数平均分子量が1,500~3,000である第2のポリオールを含み、
前記鎖延長剤成分は、第1の鎖延長剤及び第2の鎖延長剤を含み、
前記第1の鎖延長剤は、1,4-ブタンジオール及びエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有し、且つ炭素数が8未満である二価アルコールであり、
前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤:第2の鎖延長剤)は、9:1~4:1であり、
前記ポリウレタン系ホットメルトは、前記イソシアネート成分及び前記鎖延長剤成分で構成されたハードセグメントと、前記ポリオール成分で構成されたソフトセグメントと、を有し、前記ハードセグメントの重量%を前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントの重量%の総合で割る値を、ハードセグメント比とし、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ハードセグメント比は、25%~45%であり、
前記ポリウレタン系ホットメルトが示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry,DSC)で測定された結果には、2つのピークを有し、
2つの前記ピークのそれぞれは、第1の融点及び第2の融点であり、前記第1の融点は、90℃~111.69℃であり、前記第2の融点は、111.69℃~150℃であり、
総領域における前記第1の融点が含まれた領域は、総領域の20%~40%を占め、
前記総領域は、分析結果におけるDSC曲線及びベースラインで囲まれた領域であり、前記ベースラインは、前記第1の融点の下限値と前記第2の融点の上限値とを繋いだ直線であり、
前記ポリウレタン系ホットメルトの成形温度は、100℃~150℃である、ことを特徴とするポリウレタン系ホットメルト。
【請求項2】
前記第2の鎖延長剤は、ジエチレングリコール、ジプロパンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項3】
前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記イソシアネート成分の含有量は、27wt%~30wt%であり、前記ポリオール成分の含有量は、66wt%~70wt%であり、前記鎖延長剤成分の含有量は、3wt%~4wt%である、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項4】
110℃~120℃の温度で測定された、前記ポリウレタン系ホットメルトのレオロジー粘度(rheological viscosity)は、2,000Pa・s(パスカル秒)~5,000Pa・sである、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項5】
前記第1のポリオールの重量%と前記第2のポリオールの重量%との比(第1のポリオールの重量%:第2のポリオールの重量%)は、9:1~1.5:1である、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項6】
前記第1のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第2のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項7】
前記成形温度は、110℃~130℃である、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項8】
前記ポリウレタン系ホットメルトがゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)で分析された結果には、1つのピークのみ有する、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項9】
高耐熱抗酸化剤、紫外線吸収剤及び耐加水分解剤を更に含み、前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記高耐熱抗酸化剤の含有量は、0.1wt%~1wt%であり、前記紫外線吸収剤の含有量は、0.1wt%~0.8wt%であり、前記耐加水分解剤の含有量は、0.2wt%~2wt%である、請求項1に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【請求項10】
前記高耐熱抗酸化剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン及びβ-(4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル)プロピオン酸n-オクタデシルエステルからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記紫外線吸収剤は、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピリジル)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記耐加水分解剤は、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及びビス(4-フェノキシ-2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載のポリウレタン系ホットメルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン系ホットメルトに関し、特に、低成形温度及び低結晶化度を有するポリウレタン系ホットメルトに関する。
【背景技術】
【0002】
靴の素材に応用する、従来のポリウレタン系ホットメルトは通常、高結晶化度を有する。それによって、高接着性を与えて、靴の素材に応用することができる。しかし、従来の高結晶化度を有するポリウレタン系ホットメルトは、比較的に高い成形温度(例えば、150℃を超える)を有するため、従来のポリウレタン系ホットメルトを靴の素材に応用する際に、成形温度が高すぎて靴の素材が変形や模様消しなどを起こす。
【0003】
故に、低成形温度を有するポリウレタン系ホットメルトを提供することにより、上述した欠点を克服することは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、比較的に低い成形温度を有するポリウレタン系ホットメルトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、イソシアネート成分と、ポリオール成分と、鎖延長剤成分との反応で形成される、ポリウレタン系ホットメルトを提供する。なかでも、前記ポリオール成分は、数平均分子量が650~1,500である第1のポリオール、及び数平均分子量が1,500~3,000である第2のポリオールを含む。なかでも、前記鎖延長剤成分は、第1の鎖延長剤及び第2の鎖延長剤を含む。なかでも、前記第1の鎖延長剤は、1,4-ブタンジオール及びエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つである。なかでも、前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有し、且つ炭素数が8未満である二価アルコールである。なかでも、前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤:第2の鎖延長剤)は、9:1~4:1である。なかでも、前記ポリウレタン系ホットメルトは、前記イソシアネート成分及び前記鎖延長剤成分で構成されたハードセグメント及び前記ポリオール成分で構成されたソフトセグメントを有する。なかでも、前記ハードセグメントの重量%を前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントの重量%の総合で割る値を、ハードセグメント比とし、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ハードセグメント比は、25%~45%である。なかでも、前記ポリウレタン系ホットメルトが示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry,DSC)で測定された結果には、2つのピークを有し、2つの前記ピークのそれぞれは、第1の融点及び第2の融点であり、前記第1の融点は、90℃~111.69℃であり、前記第2の融点は、111.69℃~150℃である。なかでも、総領域における前記第1の融点が含まれた領域は、総領域の20%~40%を占め、前記総領域は、分析結果におけるDSC曲線及びベースラインで囲まれた領域であり、前記ベースラインは、前記第1の融点の下限値と前記第2の融点の上限値とを繋いだ直線である。なかでも、前記ポリウレタン系ホットメルトの成形温度は、100℃~150℃である。
【0006】
好ましくは、前記第2の鎖延長剤は、ジエチレングリコール、ジプロパンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0007】
好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記イソシアネート成分の含有量は、27wt%~30wt%であり、前記ポリオール成分の含有量は、66wt%~70wt%であり、前記鎖延長剤成分の含有量は、3wt%~4wt%である。
【0008】
好ましくは、110℃~120℃の温度で測定された、前記ポリウレタン系ホットメルトのレオロジー粘度は、2,000Pa・s(パスカル秒)~5,000Pa・sである。
【0009】
好ましくは、前記第1のポリオールの重量%と前記第2のポリオールの重量%との比(第1のポリオールの重量%:第2のポリオールの重量%)は、9:1~1.5:1である。
【0010】
好ましくは、前記第1のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第2のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記成形温度は、110℃~130℃である。
【0012】
好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトがゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)で分析された結果には、1つのピークのみ有する。
【0013】
好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトは、高耐熱抗酸化剤、紫外線吸収剤及び耐加水分解剤を更に含み、なかでも、前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記高耐熱抗酸化剤の含有量は、0.1wt%~1wt%であり、前記紫外線吸収剤の含有量は、0.1wt%~0.8wt%であり、前記耐加水分解剤の含有量は、0.2wt%~2wt%である。
【0014】
好ましくは、前記高耐熱抗酸化剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン及びβ-(4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル)プロピオン酸n-オクタデシルエステルからなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記紫外線吸収剤は、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピリジル)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記耐加水分解剤は、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及びビス(4-フェノキシ-2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドからなる群から選択される少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリウレタン系ホットメルトは、「前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有する二価アルコールである」、「前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤:第2の鎖延長剤)は、9:1~4:1である」、及び「前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ハードセグメント比は、25%~45%である」といった技術特徴により、前記ポリウレタン系ホットメルトが比較的に低い成形温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るポリウレタン系ホットメルトがゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)で分析された結果を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るポリウレタン系ホットメルトが示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry,DSC)で分析された結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0018】
以下、所定の具体的な実施態様によって「ポリウレタン系ホットメルト」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0019】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0020】
本発明の実施形態は、ポリウレタン系ホットメルトを提供する。前記ポリウレタン系ホットメルトは、靴の素材に適用すると共に、低い成形温度、比較的に低い結晶化度及び優れた接着性を有する。具体的に説明すると、前記ポリウレタン系ホットメルトの成形温度は、100℃~150℃であり、前記ポリウレタン系ホットメルトの結晶化度は、20%~50%である。好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトの成形温度は、110℃~130℃であり、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記結晶化度は、25%~45%である。
【0021】
前記ポリウレタン系ホットメルトは、イソシアネート成分と、ポリオール成分と、鎖延長剤成分との反応で形成される。前記ポリウレタン系ホットメルトの総重を100wt%として、前記イソシアネート成分の含有量は、27wt%~30wtであり、前記ポリオール成分の含有量は、66wt%~70wt%であり、前記鎖延長剤成分の含有量は、3wt%~4wt%である。本実施形態において、前記イソシアネート成分は、メチレンジフェニルジイソシアネート(Methylene diphenyl diisocyanate,MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4’-methylene dicyclohexyl diisocyanate,H12MDI)及びイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate,IPDI)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0022】
前記ポリオール成分は、数平均分子量が650~1,500である第1のポリオール、及び数平均分子量が1,500~3,000である第2のポリオールを含む。換言すると、前記第2のポリオールの数平均分子量は、前記第1のポリオールの数平均分子量の1倍~4.5倍である。好ましくは、前記第1のポリオールの数平均分子量は、900~1,200であり、且つ前記第2のポリオールの数平均分子量は、1,800~2,700である。
【0023】
本実施形態のポリオール成分において、前記第1のポリオールの重量%は、前記第2のポリオールの重量%を超えると共に、前記第1のポリオールの重量%と前記第2のポリオールの重量%との比(第1のポリオールの重量%:第2のポリオールの重量%)は、9:1~1.5:1であるが、本発明はこれに制限されるものではない。好ましくは、前記第1のポリオールの重量%と前記第2のポリオールの重量%との比は、7:1~3.5:1である。換言すると、本実施形態の前記ポリオール成分において、前記第1のポリオールの含有量は、60wt%~90wt%であり、前記第2のポリオールの含有量は、10wt%~40wt%である。
【0024】
本実施形態において、前記第1のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第2のポリオールは、アジピン酸-ブタンジオール、アジピン酸-ブタンジオール-エチレングリコール、及びアジピン酸-コハク酸-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。換言すると、前記第1のポリオール及び前記第2のポリオールは、同様の化合物群から選択されてもよいが、前記第1のポリオールの数平均分子量及び重合度は、前記第2のポリオールの数平均分子量及び重合度に相違する。
【0025】
前記鎖延長剤成分は、第1の鎖延長剤及び第2の鎖延長剤を含む。前記第1の鎖延長剤は、1,4-ブタンジオール及びエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第2の鎖延長剤は、エーテル基(-O-)又は炭化水素基を有する二価アルコールである。本実施形態において、前記第2の鎖延長剤は、ジエチレングリコール、ジプロパンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
換言すると、前記第1の鎖延長剤は、対称構造を有し、且つ炭素数が8未満の二価アルコールであり、また、前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有し、且つ炭素数が8未満の二価アルコールである。好ましくは、前記第1の鎖延長剤は、対称構造を有し、且つ炭素数が4未満の二価アルコールであり、また、前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有し、且つ炭素数が6未満の二価アルコールである。即ち、前記第1の鎖延長剤及び前記第2の鎖延長剤に含まれた炭素鎖の長さは比較的に短く、炭素数が8を超える他の鎖延長剤は、本願の実施形態における第1の鎖延長剤及び前記第2の鎖延長剤に適用しない。
【0027】
本実施形態の前記鎖延長剤成分において、前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤の重量%:前記第2の鎖延長剤の重量%)は、9:1~4:1である。好ましくは、前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比は、7.5:1~5.5:1であるが、本発明はこれに制限されるものではない。換言すると、本実施形態の前記鎖延長剤成分において、前記第1の鎖延長剤の含有量は、80wt%~99wt%であり、また、前記第2の鎖延長剤の含有量は、1wt%~20wt%である。
【0028】
前記ポリウレタン系ホットメルトは、前記イソシアネート成分及び前記鎖延長剤成分で構成されたハードセグメント、及び前記ポリオール成分で構成されたソフトセグメントを有する。前記ハードセグメントの重量%を前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントの重量%の総合で割る値を、ハードセグメント比とする。即ち、ハードセグメント比=ハードセグメントの重量%/(ハードセグメントの重量%+ソフトセグメントの重量%)。
【0029】
前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ハードセグメント比は、25%~45%であり、30%~40%であることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。換言すると、前記ソフトセグメントの重量%を前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントの重量%の総合で割る値を、ソフトセグメント比とする。また、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ソフトセグメント比は、55%~75%であり、60%~70%であることが好ましい。
【0030】
特筆すべきことは、前記第1の鎖延長剤は主に、前記ポリウレタン系ホットメルトの基本物性(例えば、強度及び硬度)に与える役割を果たせる。また、前記第2の鎖延長剤は主に、前記ポリウレタン系ホットメルトの融点及び結晶化度を調整する役割を果たせる。具体的に説明すると、前記ポリウレタン系ホットメルトは、少量でエーテル基(-O-)又は炭化水素基を有し且つ分子量の比較的低い前記第2の鎖延長剤を含むため、前記第2の鎖延長剤は、結晶速度を効果的に向上し、結晶の困難さを低減することができる。また、前記第2の鎖延長剤が前記ハートハードセグメントを形成するため、前記第2の鎖延長剤の含有量は高すぎるとはいけない。一方、前記第2の鎖延長剤の含有量が高すぎると、ハードセグメント比が向上して、前記ポリウレタン系ホットメルトの前記成形温度が効果的に低減されない恐れがある。
【0031】
また、本発明の前記ポリウレタン系ホットメルトにおいて、前記ハードセグメント比が比較的に低く、前記ソフトセグメント比が比較的に高いため、本発明の前記ポリウレタン系ホットメルトは、優れた接着強度を有する。
【0032】
図1に示すように、図1は、本発明の実施形態に係るポリウレタン系ホットメルトがゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)で分析された結果を示す図である。前記ポリウレタン系ホットメルトがゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)で分析された結果には、1つのピークのみを有する。即ち、本実施形態における前記ポリウレタン系ホットメルトの分子量分布は、比較的に均一である。また、本実施形態において、110℃~120℃の温度で測定された、前記ポリウレタン系ホットメルトのレオロジー粘度は、2,000Pa・s~5,000Pa・sであり、2,500Pa・s~4,500Pa・sであることが好ましい。また、110℃での粘度と120℃での粘度との変化量(即ち、減少率)は、30%~33%である。換言すると、前記ポリウレタン系ホットメルトの120℃での粘度は、前記ポリウレタン系ホットメルトの110℃での粘度の0.6倍~0.67倍である。即ち、100℃~140℃の温度条件において、本発明の前記ポリウレタン系ホットメルトのレオロジー粘度は変わりにくい。
【0033】
図2に示すように、図2は、本発明の実施形態に係るポリウレタン系ホットメルトが示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry, DSC)で分析された結果を示す図である。前記ポリウレタン系ホットメルトが示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry, DSC)で分析された結果には、2つのピークを有する。2つの前記ピークのそれぞれは、第1の融点及び第2の融点であり、前記第1の融点は、90℃~111.69℃であり、前記第2の融点は、111.69℃~150℃であるが、本発明はこれに制限されるものではない。総領域における前記第1の融点が含まれた領域は、総領域の20%~40%を占め、前記第2の融点にある領域は、総領域の60%~80%を占める。前記総領域とは、分析結果におけるDSC曲線及びベースラインで囲まれた領域で形成された領域である。前記ベースラインは、前記第1の融点の下限値(即ち、DSC曲線の温度が90℃の座標点である)と前記第2の融点の上限値(即ち、DSC曲線の温度が150℃の座標点である)とを繋いだ直線である。好ましくは、総領域における前記第1の融点が含まれた領域は、総領域の30%~35%を占め、総領域における前記第2の融点が含まれた領域は、総領域の65%~70%を占める。換言すると、示差走査熱量測定で分析された結果には、前記第1の融点が含まれた領域と前記第2の融点が含まれた領域との比(第1の融点が含まれた領域:第2の融点が含まれた領域)は、1:1.5~1:4である。
【0034】
他の実施形態において、前記ポリウレタン系ホットメルトの特性を向上するため、前記ポリウレタン系ホットメルトは、高耐熱抗酸化剤、紫外線吸収剤及び耐加水分解剤を更に含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記高耐熱抗酸化剤の含有量は、0.1wt%~1wt%であり、前記紫外線吸収剤の含有量は、0.1wt%~0.8wt%であり、前記耐加水分解剤の含有量は、0.2wt%~2wt%である。好ましくは、前記ポリウレタン系ホットメルトの総重量を100wt%として、前記高耐熱抗酸化剤の含有量は、0.3wt%~0.8wt%であり、前記紫外線吸収剤の含有量は、0.3wt%~0.6wt%であり、前記耐加水分解剤の含有量は、0.6wt%~1.6wt%である。
【0035】
本実施形態において、前記高耐熱抗酸化剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン及びβ-(4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル)プロピオン酸n-オクタデシルエステルからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記紫外線吸収剤は、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピリジル)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記耐加水分解剤は、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及びビス(4-フェノキシ-2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドからなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例0036】
[実験データの測定]
以下、実施例1~5及び比較例1~3を参照して本発明を詳しく説明するが、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。実施例1~5及び比較例1~3の相違点は、以下にて説明する。実施例1において、前記ハードセグメント比を32%にした。実施例2において、前記ハードセグメント比を30%にした。実施例3において、前記ハードセグメント比を34%にした。実施例4及び5での第1のポリオールの含有量は、実施例1~3での第1のポリオールの含有量を超える。比較例1において、前記第2のポリオールを添加しなかった。比較例3において、前記第1のポリオールを添加しなかったと共に、第2の鎖延長剤を添加しなかった。
【0037】
実施例1~5及び比較例1~3に係る前記ポリウレタン系ホットメルトの各成分の配合比、成形条件、接着性、及びレオロジー粘度の変化量について、下表1に示すとおりである。また、測定方法について、以下にて説明する。
【0038】
成形条件:ラミネートを行った、厚さが0.2~0.3mmであるTPUテープを基材として、前記ポリウレタン系ホットメルトを2つの基材で挟まって、110℃~140℃の温度、10kg/cm~50kg/cmの圧力、及び20秒~50秒との成形条件でホットプレスを行う。上述した成形条件は、基材の種類及びホットメルトの厚さによって対応的に調製することが可能である。
【0039】
接着性テスト:長さ10cm、幅3cmであるサンプルを、200MM/minの引張速度で測定を行う。
【0040】
レオロジー粘度の変化量テスト:動的粘弾性計で測定された110℃での粘度及び120℃での粘度を測定し、2つの粘度を比較して粘度の減少率を求める。
【0041】
【表1】
【表2】
【0042】
[測定結果の検討]
実施例1~5に係るポリウレタン系ホットメルトにおいて、異なる数平均分子量を有する前記第1のポリオール及び前記第2のポリオールを用いると共に、少量の前記第2の鎖延長剤を添加した。よって、比較例1~3に比べて、実施例1~5に係る前記ポリウレタン系ホットメルトは、比較的に高い接着性及び比較的に低いレオロジー粘度の変化量(即ち、減少率)を有する。また、実施例1~5に係る前記ポリウレタン系ホットメルトは、靴の素材に応用することは好適である。
【0043】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリウレタン系ホットメルトは、「前記第2の鎖延長剤は、エーテル基又は炭化水素基を有する二価アルコールである」、「前記第1の鎖延長剤の重量%と前記第2の鎖延長剤の重量%との比(第1の鎖延長剤:第2の鎖延長剤)は、9:1~4:1である」、及び「前記ポリウレタン系ホットメルトの前記ハードセグメント比は、25%~45%である」といった技術特徴により、前記ポリウレタン系ホットメルトが比較的に低い成形温度を有する。
【0044】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
図1
図2