(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064041
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】樹脂材料及び金属基板
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230428BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230428BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C08F290/06
H05K1/03 610Q
B32B15/08 U
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113723
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】110139407
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】魏 千凱
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
(72)【発明者】
【氏名】黄 威儒
【テーマコード(参考)】
4F100
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
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4J127CB351
4J127CC291
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4J127FA03
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】難燃性、剥離強度及び誘電特性を同時に成り立たる樹脂材料及びそれを用いた金属基板を提供する。
【解決手段】樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~40重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、架橋剤10重量%~30重量%とを含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物及び前記樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む樹脂材料であって、前記樹脂組成物は、
液体ゴム10重量%~40重量%と、
分子末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、
架橋剤10重量%~30重量%とを含むことを特徴とする、樹脂材料。
【請求項2】
前記第1のポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molである、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記第1のポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記第1のポリフェニレンエーテルにおける前記ビスマレイミド基の平均数量は、1~2である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にメタクリレート基を有する第2のポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有する第3のポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記液体ゴムの分子量は、2000g/mol~6000g/molである、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項7】
前記液体ゴムを合成する原料は、ブタジエンモノマーを含み、前記ブタジエンモノマーの総量を100mol%(モル%)として、30mol%~90mol%の前記ブタジエンモノマーは、重合後にビニール基を含む側鎖を有する、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項8】
前記液体ゴムを合成する原料は、スチレンモノマーを含み、前記液体ゴムの総量を100mol%として、前記スチレンモノマーの前記液体ゴムでの含有量は、10mol%~50mol%である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項9】
前記樹脂組成物100重量部に対して、前記無機フィラーの添加量は、20重量部~150重量部である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項10】
前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項11】
前記無機フィラーは、二酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、二酸化チタン及び酸化アルミニウムの中の少なくとも1つである、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項12】
前記無機フィラーの純度は、99.8%以上である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項13】
前記無機フィラーの平均粒子径は、0.3μm~3μmであると共に、前記無機フィラーの最大粒子径は、10μm未満である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項14】
メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを有するシロキサンカップリング剤を更に含む、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項15】
前記樹脂組成物の総重を100重量部として、前記シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である、請求項14に記載の樹脂材料。
【請求項16】
樹脂材料で製造された基材層と、前記基材層に設置された金属層とを備える、金属基板であって、前記樹脂材料は、樹脂組成物及び前記樹脂組成物に分散する無機フィラーを含み、 前記樹脂組成物は、
液体ゴム10重量%~40重量%と、
分子末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、
架橋剤10重量%~30重量%とを含むことを特徴とする、金属基板。
【請求項17】
前記樹脂材料の10GHZでの誘電正接は、0.0016以下である、請求項16に記載の金属基板。
【請求項18】
前記樹脂材料の10GHZでの比誘電率は、3.0以下である、請求項16に記載の金属基板。
【請求項19】
前記樹脂材料のガラス転移温度は、150℃~250℃である、請求項16に記載の金属基板。
【請求項20】
剥離強度は、6.0lb/in~7.5lb/inである、請求項16に記載の金属基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料及び金属基板に関し、特に、低誘電樹脂材料及び金属基板に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th generation wireless system,5G)の開発に伴い、5G無線通信規格を満たすために、高周波伝送が現在の開発の主流となっている。したがって、業界は、高周波伝送に適した樹脂材料の開発を進行させ、28GHz~60GHzの周波数範囲での応用を求める。
【0003】
高周波伝送に応用するために、樹脂材料は通常、低い比誘電率(dielectric constant,Dk)と低い誘電正接(dielectric dissipation factor,Df)の特性を持っている。本明細書において、樹脂材料の比誘電率と誘電正接とを合わせて、誘電特性と称す。具体的に、10GHzの周波数で、3.0以下の比誘電率及び0.0016以下の誘電正接を有する。
【0004】
現在市販の高誘電ゴム樹脂材料は、特定の比率の液体ゴムを添加することによって、樹脂材料の誘電特性を低減させるが、液体ゴムの添加量は、高すぎてはいけない。液体ゴムの含有量が高すぎると、樹脂材料のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が低くなると共に、樹脂材料と金属層との剥離強度が低下となる。
【0005】
故に、成分の改良により、樹脂材料の難燃性、剥離強度及び誘電特性を同時に成り立たることによって、上述した欠点を克服することは、本事業にとって重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、樹脂材料及び金属基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、樹脂組成物と樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む、樹脂材料を提供する。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~40重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、架橋剤10重量%~30重量%とを含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含む。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molである。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルにおけるビスマレイミド基の平均数量は、1~2である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にメタクリレート基を有する第2のポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有する第3のポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムの分子量は、2000g/mol~6000g/molである。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムを合成する原料は、ブタジエンモノマーを含み、ブタジエンモノマーの総量を100mol%(モル%)として、30mol%~90mol%のブタジエンモノマーは、重合後にビニール基を含む側鎖を有する。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムを合成する原料は、スチレンモノマーを含み、液体ゴムの総量を100mol%として、スチレンモノマーの液体ゴムでの含有量は、10~50mol%である。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの添加量は、20重量部~150重量部である。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、無機フィラーは、表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含む。
【0017】
一つの実施形態において、無機フィラーは、二酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、二酸化チタン及び酸化アルミニウムの中の少なくとも1つである。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、前記無機フィラーの純度は、99.8%以上である。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、無機フィラーの平均粒子径は、0.3μm~3μmであると共に、無機フィラーの最大粒子径は、10μm未満である。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、樹脂材料は、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを有するシロキサンカップリング剤を更に含む。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、樹脂組成物の総重を100重量部として、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である。
【0022】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、金属基板を提供する。金属基板は、樹脂材料で製造された基材層と、前記基材層に設けられた金属層とを備える。樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~40重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、架橋剤10重量%~30重量%とを含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含む。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、樹脂材料の10GHzでの誘電正接は、0.0016以下である。
【0024】
本発明の一つの実施形態において、樹脂材料の10GHzでの比誘電率は、3.0以下である。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、樹脂材料のガラス転移温度は、150℃~250℃である。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、金属基板の剥離強度は、6.0lb/in~7.5lb/inである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有利な効果として、本発明の有利な効果として、本発明に係る樹脂材料及び金属基板は、「ポリフェニレンエーテル樹脂は、末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含む。」といった技術特徴により、樹脂材料に良好な誘電特性、耐熱性を与えると共に、金属層との接着力が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。しかし、詳細な説明は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0029】
以下、所定の具体的な実施態様によって「樹脂材料及び金属基板」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0030】
[樹脂材料]
本発明において、特定のポリフェニレンエーテル樹脂を使用することにより、従来の過量の液体ゴムを添加することによる耐熱性が不良となる問題を解決できる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂を添加した後でも、樹脂材料の誘電特性が不良(高比誘電率及び高誘電正接)となる問題を起こさない。換言すると、樹脂材料に本発明の特定のポリフェニレンエーテル樹脂を添加することによって、良好な難燃性、剥離強度及び誘電特性を同時になり立てることができる。
【0031】
具体的に説明すると、本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に均一に分散する無機フィラーを含む。以下にて、樹脂材料及び無機フィラーの特性について詳しく説明する。
【0032】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~40重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、架橋剤10重量%~30重量%とを含む。
【0033】
上述した特定の成分及び含有量を有する樹脂組成物によって、本発明に係る樹脂材料は、耐熱性及び誘電特性が良好な金属基板の製造として用いられると共に、金属基板は、高周波伝送の分野に適用する。また、本発明に係る樹脂材料は、金属層との接着力が良好である。なお、本発明に係る樹脂材料及び金属基板の特性の測定については後述する。
【0034】
本発明の樹脂材料は液体ゴムを含む。液体ゴムは、高い溶解性という特徴を有するため、各成分の間の相容性を向上させると共に、液体ゴムは、反応性官能基を有するため、樹脂材料を硬化した後の架橋度を向上させることができる。
【0035】
本発明の液体ゴムの分子量は、2000g/mol~6000g/molである場合に、樹脂組成物の流動性が上昇し、樹脂材料の充填性を更に向上させることができる。液体ゴムの分子量は、2200g/mol~5500g/molであることが好ましく、2500g/mol~4000g/molであることがより好ましい。
【0036】
樹脂組成物の総重量を100重量%に対して、液体ゴムの樹脂組成物での含有量は、10重量%~40重量%であってもよい。一つの実施形態において、樹脂組成物の総重量を100重量%として、液体ゴムの含有量は、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%であってもよい。
【0037】
一つの実施形態において、液体ゴムは、液体ジエン系ゴムを含む。好ましくは、液体ジエン系ゴムは、高い比率でビニール基を含む側鎖を有する。特に、高い比率で1,2-ビニール基側鎖を含む液体ジエン系ゴムである。
【0038】
液体ゴムが少なくとも1つのビニール基を含む不飽和側鎖(若しくは、ビニール基)を有する場合に、架橋した樹脂組成物の架橋密度及び耐熱性が向上する。具体的に説明すると、液体ゴムを合成するための材料は、ブタジエンモノマーを含む。液体ゴムは、ブタジエンモノマーのみで合成されてもよく、ブタジエンモノマーと他のモノマーで合成されてもよい。簡単に言えば、液体ゴムは、ブタジエンホモポリマー又はブタジエン共重合体であってもよく、好ましくは、ブタジエンホモポリマーである。
【0039】
液体ゴムを合成するための材料がブタジエンモノマーを含む場合に、ブタジエンモノマーの総量を100mol%として、30mol%~90mol%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。一つの実施形態において、ブタジエンモノマーの総量を100mol%として、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、または80mol%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。好ましくは、45mol%~75mol%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。
【0040】
一つの実施形態において、液体ゴムは、ブタジエンモノマー及びスチレンモノマーで合成される。液体ゴムの総量を100mol%として、スチレンモノマーの液体ゴムでの含有量は、10mol%~50mol%である。スチレンモノマーの液体ゴムでの含有量が10mol%~50mol%であると、液晶と類似する配列構造を達成することが容易となり、液体ゴムの耐熱性及び相容性を向上することができる。
【0041】
本発明に係るポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを少なくとも含む。第1のポリフェニレンエーテルがポリフェニレンエーテルの主鎖構造を有するため、樹脂材料の誘電特性及びガラス転移温度を向上することができる。第1のポリフェニレンエーテルにおけるビスマレイミド基は、不飽和結合を提供することで、架橋反応の進行が有利となって、樹脂材料の剥離強度を向上する効果を果たせる。
【0042】
よって、第1のポリフェニレンエーテルの添加によって、樹脂材料の誘電特性、ガラス転移温度及び剥離強度が共に改良される。また、第1のポリフェニレンエーテルを添加した後に、液体ゴムの添加量を少々減少させることができる。
【0043】
一つの実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molであり、好ましくは、1500g/mol~4500g/molであり、より好ましくは、1500g/mol~3500g/molである。
【0044】
一つの好ましい実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルの平均数量は1~2であると共に、第1のポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である。
【0045】
第1のポリフェニレンエーテル以外に、ポリフェニレンエーテル樹脂は、他の種類のポリフェニレンエーテルを含んでもよい。例えば、分子末端が水酸基で変性されたポリフェニレンエーテル、分子末端がメタクリレート基で変性されたポリフェニレンエーテル、分子末端がスチレン基で変性されたポリフェニレンエーテル、分子末端がエポキシ基で変性されたポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
一つの実施例において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にメタクリレート基を有する第2のポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有する第3のポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0047】
一つの好ましい実施形態において、第2のポリフェニレンエーテルの添加重量は、第1のポリフェニレンエーテルの添加重量の1倍~2倍であり、第3のポリフェニレンエーテルの添加重量は、第1のポリフェニレンエーテルの添加重量の0.20倍~1.6倍である。
【0048】
説明すべきことは、本発明の第1のポリフェニレンエーテルは、従来の樹脂材料におけるビスマレイミド樹脂の代わりとして用いられる。即ち、本発明に係る樹脂材料は、ビスマレイミド樹脂を含まなくてもよい。このように、本発明に係る樹脂材料に含まれた成分の種類が少なく、樹脂材料全体の相容性は比較向上させ、液体ゴムの添加量を適切に減少させることができる。
【0049】
樹脂組成物の総重を100重量%として、ポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂組成物での含有量は、20重量%~50重量%であり、一つの実施形態において、樹脂組成物の総重を100重量%として、ポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂組成物での含有量は、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%または45重量%であってもよい。
【0050】
本発明の架橋剤は、ポリフェニレンエーテル樹脂と液体ゴムとの架橋度を向上させることができる。本実施形態において、架橋剤は、アリル基(allyl group)を含んでもよい。例えば、架橋剤は、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate,TAC)、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate,TAIC)、フタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリアリルトリメリテート(triallyl trimellitate)又はそれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0051】
一つの実施形態において、樹脂組成物の総重を100重量%として、架橋剤の含有量は、10重量%~30重量%である。樹脂組成物の総重を100重量%として、架橋剤の含有量は、15重量%、20重量%または25重量%であってもよい。
【0052】
[無機フィラー]
無機フィラーの添加により、樹脂材料の粘度を低減させ、且つ樹脂材料の比誘電率を低減させることができる。一部の種類の無機フィラーは、樹脂材料の熱導電性を向上させることもあるが、上述した説明は概に説明したものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0053】
本発明において、無機フィラーは、二酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。一つの好ましい実施形態において、無機フィラーは、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、二酸化チタンとを同時に含み、また、二酸化チタンは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム又はそれらの組み合わせで置換されてもよい。二酸化ケイ素は、溶融シリカ又は結晶シリカであってもよい。好ましくは、二酸化ケイ素は溶融シリカである。
【0054】
一つの好ましい実施形態において、無機フィラーは、表面処理を行うことにより、無機フィラーの表面にメタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含む。このように、無機フィラーと液体ゴムとを反応することが可能となり、それによって、樹脂組成物が良好な相容性を有し、金属基板の耐熱性に悪影響を与えない。
【0055】
特筆すべきことは、無機フィラーは、単一又は複数の成分で混合されてなるものであってもよい。また、全ての無機フィラーが表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含むか、若しくは、一部の無機フィラーが表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含んでもよい。例えば、無機フィラーは、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む時に、一つの実施形態において、二酸化ケイ素が表面処理を行うことによりメタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含むが、酸化アルミニウムが表面処理を行われていない。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0056】
無機フィラーの外観は、球状である。無機フィラーの平均粒子径(D50)は、0.3μm~3μmであると共に、無機フィラーの最大粒子径(D99)は、10μm未満であることによって、無機フィラーを樹脂組成物に均一に分散することにとって有利である。一つの実施形態において、無機フィラーの純度は、99.8%以上である。
【0057】
無機フィラーの添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの添加量は、20重量部~150重量部であり、30重量部~120重量部であることが好ましく、40重量部~100重量部であることはより好ましい。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0058】
[シロキサンカップリング剤]
樹脂材料は、シロキサンカップリング剤を更に含んでもよい。シロキサンカップリング剤の添加は、繊維布、樹脂組成物及び無機フィラーの間の反応性及び相容性を向上させ、金属基板の剥離強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0059】
一つの好ましい実施形態において、シロキサンカップリング剤は、メタクリレート基及びビニール基の中の少なくとも1つを含む。シロキサンカップリング剤の分子量は、100g/mol~500g/molであり、110g/mol~250g/molであることが好ましく、120g/mol~200g/molであることがより好ましい。
【0060】
樹脂組成物の総重を100重量部として、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部であり、好ましくは、0.5重量部~3重量部である。
【0061】
[触媒]
樹脂材料は、触媒を更に含んでもよい。触媒は、樹脂材料の硬化を促進させて高周波基板を形成する、という役割を果たせる。樹脂組成物の総重を100重量部として、触媒の含有量は、0.25重量部~1.5重量部である。
【0062】
例えば、触媒として、イミダゾール系化合物であってもよく、例えば、トリフェニルイミダゾール(triphenylimidazole)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-ethyl-4-methylimidazole,2E4MZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1-Benzyl-2-phenylimidazole,1B2PZ)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(1-cyanoethyl-2-phenylimidazole,2PZ-CN)または2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール(2,3-dihydro-1H-pyrrole[1,2-a]benzimidazole,TBZ)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0063】
[特性の測定]
本発明に係る樹脂材料が高周波基板材料として用いることを証明するために、本発明では、液体ゴム10重量%~40重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~50重量%と、架橋剤10重量%~30重量%とで混合された樹脂組成物に、無機フィラーを添加することによって、実施例1~4に係る樹脂材料を形成した。また、前記範囲に含まれない樹脂組成物を調製して、比較例1~3に係る樹脂材料として用いた。実施例1~4及び比較例1~3に係る樹脂材料の成分比は、表1に示すとおりである。実施例1~4及び比較例1~3に係る樹脂材料のガラス転移温度、比誘電率及び誘電正接は、表2に示すとおりである。
【0064】
次に、ガラス繊維布を、実施例1~4及び比較例1~3に係る樹脂材料に浸漬させて、含浸、乾燥及び成形との工程を行った後に、プリプレグ(prepreg)を得た。プリプレグは、その後の加工処理を行い、プリプレグに金属層が設置された後に、実施例1~4及び比較例1~3に係る金属基板を製造した。実施例1~4及び比較例1~3における金属基板の剥離強度及び耐熱性については、表2に示すとおりである。
【0065】
表1に示すように、ポリブタジエンの分子量は1200であると共に、ポリブタジエンAは85mol%の1,2-ビニール基側鎖を含んだ。ブタジエン-スチレン共重合体の分子量は8600であったと共に、ブタジエン-スチレン共重合体は、17mol%~27mol%のスチレンモノマーを含み、40mol%の1,2-ビニール基側鎖を含んだ。
【0066】
表2における、樹脂材料/金属基板を評価する方法は、以下の通りである。
(1)ガラス転移温度:動的機械分析装置(Dynamic Mechanical Analyzer,DMA)を用いて樹脂材料のガラス転移温度を測定する。
(2)比誘電率(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E4991A)を用いて、樹脂材料の10GHzの周波数での比誘電率を測定する。
(3)誘電正接(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E4991A)を用いて、樹脂材料の10GHzの周波数での誘電正接を測定する。
(4)剥離強度:試験方法IPC-TM-650-2.4.8に基づいて、金属基板の剥離強度を測定する。
(5)耐熱性:圧力鍋において温度120℃、圧力2atmで金属基板を120分加熱して、288℃のはんだ付け炉に浸し、基板がポップコーンするまでにかかる時間を記録する。ポップコーンするまでにかかる時間は10分間を超えると、「OK」を示す。ポップコーンするまでにかかる時間は10分間より少ないと、「NG」を示す。
【0067】
【0068】
【0069】
表1、表2によれば、第1のポリフェニレンエーテルを添加した後に、本願発明の樹脂材料は、良好な誘電特性、耐熱性及び剥離強度を有する。具体的に説明すると、本発明の樹脂材料の比誘電率(10GHz)は、3.0以下である。樹脂材料の誘電正接(10GHz)は、0.0016以下である。樹脂材料のガラス転移温度は、210℃~230℃である。樹脂材料の剥離強度は、6.5lb/in~7.0lb/inである。
【0070】
実施例1~4及び比較例1、2の結果によれば、本発明の第1のポリフェニレンエーテル(分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル樹脂)を用いれば、金属基板の剥離強度が5.0lb/in(更に6.5lb/inを超える場合もある)を超えることに達成できる。よって、本発明の樹脂材料は、ビスマレイミド樹脂を含まなくてもよい。
【0071】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明の有利な効果として、本発明に係る樹脂材料及び金属基板は、「ポリフェニレンエーテル樹脂は、末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテルを含む。」といった技術特徴により、樹脂材料に良好な誘電特性、耐熱性を与えると共に、金属層との接着力が良好となる。
【0072】
更に説明すると、本発明に係る樹脂材料及び金属基板は、「第1のポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molである」といった技術特徴により、樹脂組成物の流動性を向上することができる。
【0073】
更に説明すると、本発明に係る樹脂材料及び金属基板は、「第1のポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である」といった技術特徴により、樹脂材料と金属層との接着力が良好となる。
【0074】
更に説明すると、本発明に係る樹脂材料及び金属基板は、「ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にメタクリレート基を有する第2のポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有する第3のポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを更に含む」といった技術特徴により、樹脂組成物の相容性を向上する効果を果たせる。
【0075】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。