(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064050
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】医療デバイスシステムと、医療デバイスシステムの作動方法及び作動用コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20230428BHJP
A61B 90/50 20160101ALI20230428BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20230428BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20230428BHJP
A61B 17/22 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
A61B34/37
A61B90/50
B25J3/00 Z
B25J9/10 A
A61B17/22
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148682
(22)【出願日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】17/452,138
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510292504
【氏名又は名称】コリンダス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス コッテンステット
(72)【発明者】
【氏名】パー バーグマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ リー
【テーマコード(参考)】
3C707
4C160
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707HS27
3C707HT04
3C707JS03
3C707JT04
3C707JU03
3C707JU12
3C707KS01
3C707KS17
3C707KS39
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT17
3C707KT18
3C707LU05
3C707MS22
3C707MS23
4C160MM34
4C160MM36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロボット制御医療デバイスとコントローラとを含むロボット制御医療デバイスシステムが提供される。
【解決手段】ロボット制御医療デバイスシステムはロボット制御医療デバイスとコントローラとを含む。コントローラは、1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なく、ロボット制御医療デバイスシステムの様々なステップ応答に関し実質的に一定のオーバーシュートを維持するように、ロボット制御医療デバイスの動作を制御するように構成される。1つ以上の制御信号はネットワークを介し受信される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット制御医療デバイスシステムであって、
ロボット制御医療デバイスと、コントローラと、を含み、
前記コントローラは、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、前記ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なく当該ロボット制御医療デバイスシステムの様々なステップ応答で実質的に一定のオーバーシュートを維持するように構成される、ロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項2】
前記遅延は、命令遅延又は画像フィードバック遅延の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように構成される、請求項1に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項4】
前記遅延は、少なくとも部分的に前記ネットワークでの伝送遅延に基づく、請求項1に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項5】
前記ロボット制御医療デバイスの動作に、直線動作又は回転動作の少なくともいずれかが含まれる、請求項1に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、実質的に一定のオーバーシュートを維持するように構成される、請求項1に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限するように構成される、請求項6に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項8】
前記速度は、直線動作又は回転動作の速度である、請求項6に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項9】
ロボット制御医療デバイス及びコントローラを含むロボット制御医療デバイスシステムの作動方法であって、
ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、前記ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なく当該ロボット制御医療デバイスシステムの様々なステップ応答で実質的に一定のオーバーシュートを維持することを含む、作動方法。
【請求項10】
前記遅延は、命令遅延又は画像フィードバック遅延の少なくともいずれかを含む、請求項9に記載の作動方法。
【請求項11】
前記制御は、前記ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように前記ロボット制御医療デバイスの動作を制御する、請求項9に記載の作動方法。
【請求項12】
前記遅延は、少なくとも部分的に前記ネットワークでの伝送遅延に基づく、請求項9に記載の作動方法。
【請求項13】
前記ロボット制御医療デバイスの動作に、直線動作又は回転動作の少なくともいずれかが含まれる、請求項9に記載の作動方法。
【請求項14】
前記制御は、前記ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、実質的に一定のオーバーシュートを維持することを含む、請求項9に記載の作動方法。
【請求項15】
前記速度の制御は、前記ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限することを含む、請求項14に記載の作動方法。
【請求項16】
前記速度は、直線動作又は回転動作の速度である、請求項14に記載の作動方法。
【請求項17】
ロボット制御医療デバイスシステムであって、
ロボット制御医療デバイスと、コントローラと、を含み、
前記コントローラは、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、前記ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なく前記ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように構成され、
前記遅延が、最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある、ロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記遅延が前記無効化閾値よりも大きい場合に前記ロボット制御医療デバイスの作動を無効にするように構成される、請求項17に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記遅延が前記最大許容遅延閾値と前記無効化閾値との間にある場合に前記ロボット制御医療デバイスの速度を制限して実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように構成される、請求項17に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【請求項20】
前記ロボット制御医療デバイスの速度は、前記遅延が前記最大許容遅延閾値より小さい場合には制限されない、請求項19に記載のロボット制御医療デバイスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つ以上の実施の例が、ロボット制御医療デバイスシステム、ロボット制御インターベンション処置で使用されるデバイスのためのリモート通信手段及びリモート制御システム、それらの作動方法及び/又は作動用の非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル(及び他の細長い医療デバイス)が、(神経インターベンション手術としても知られる)神経血管インターベンション(NVI)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)及び末梢血管インターベンション(PVI)を含む様々な脈管系疾患の診断と治療に関する低侵襲医療処置に使用され得る。ロボット制御カテーテル処置システムは、このようなカテーテル処置を医師が実施する際の補助に使用される。
【発明の概要】
【0003】
少なくとも一つの例の態様により、ロボット制御医療デバイスとコントローラとを含むロボット制御医療デバイスシステムが提供される。そのコントローラは、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答のそれぞれで実質的に一定のオーバーシュートを維持するように構成される。
【0004】
少なくとも一つの例の態様により、ロボット制御医療デバイスシステムが提供される。このシステムは、ロボット制御医療デバイスと制御手段とを含む。その制御手段は、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答のそれぞれで実質的に一定のオーバーシュート(行き過ぎ量)を維持する。
【0005】
一つ以上の例の態様によると、前記遅延は、命令遅延又は画像フィードバック遅延の少なくともいずれかを含み得る。
【0006】
コントローラは、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル(超過移動)距離を維持するように構成することができる。
【0007】
前記遅延は、少なくとも部分的には、ネットワークでの伝送遅延に起因する可能性がある。
【0008】
ロボット制御医療デバイスの動作として、直線動作又は回転動作の少なくともいずれかが含まれる。
【0009】
コントローラは、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、実質的に一定のオーバーシュートを維持するように構成することができる。
【0010】
コントローラは、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限するように構成することができる。
【0011】
前記速度は、直線動作又は回転動作の速度であり得る。
【0012】
制御手段は、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持する手段を含むことができる。
【0013】
制御手段は、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、実質的に一定のオーバーシュートを維持する手段を含むことができる。
【0014】
制御手段は、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限する手段を含むことができる。
【0015】
少なくとも一つの例の態様により、ロボット制御医療デバイス及びコントローラを含むロボット制御医療デバイスシステムの作動方法が提供される。この方法は、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答のそれぞれで実質的に一定のオーバーシュートを維持することを含む。
【0016】
少なくとも一つの例の態様により、コンピュータ可読命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。そのコンピュータ可読命令は、ロボット制御医療デバイスシステムのコントローラ及び/又は1つ以上のプロセッサによって実行されると、該ロボット制御医療デバイスシステムに、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答のそれぞれで実質的に一定のオーバーシュートを維持することを含む方法を、実行させる。
【0017】
一つ以上の例の態様によると、前記遅延は、命令遅延又は画像フィードバック遅延の少なくともいずれかを含み得る。
【0018】
ロボット制御医療デバイスの動作を制御することは、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持することであり得る。
【0019】
前記遅延は、少なくとも部分的には、ネットワークでの伝送遅延に起因する可能性がある。
【0020】
ロボット制御医療デバイスの動作として、直線動作又は回転動作の少なくともいずれかが含まれる。
【0021】
ロボット制御医療デバイスの動作を制御することは、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、実質的に一定のオーバーシュートを維持することを含み得る。
【0022】
ロボット制御医療デバイスの速度を制御することは、ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限することを含み得る。
【0023】
前記速度は、直線動作又は回転動作の速度であり得る。
【0024】
少なくとも一つの別の例の態様により、ロボット制御医療デバイスとコントローラとを含むロボット制御医療デバイスシステムが提供される。そのコントローラは、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように構成される。前記遅延は、最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある。
【0025】
少なくとも一つの別の例の態様により、ロボット制御医療デバイスと制御手段とを含むロボット制御医療デバイスシステムが提供される。その制御手段は、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持する。前記遅延は、最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある。
【0026】
一つ以上の例の態様によると、コントローラは、前記遅延が無効化閾値よりも大きい場合にロボット制御医療デバイスの作動を無効にするように構成することができる。
【0027】
制御手段は、前記遅延が無効化閾値よりも大きい場合にロボット制御医療デバイスの作動を無効にする手段を含むことができる。
【0028】
コントローラは、前記遅延が最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある場合にロボット制御医療デバイスの速度を制限して実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持するように構成することができる。
【0029】
制御手段は、前記遅延が最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある場合にロボット制御医療デバイスの速度を制限して実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持する手段を含むことができる。
【0030】
ロボット制御医療デバイスの速度は、前記遅延が最大許容遅延閾値より小さい場合には制限しないことが可能である。
【0031】
少なくとも一つの別の例の態様により、ロボット制御医療デバイスとコントローラとを含むロボット制御医療デバイスシステムの作動方法が提供される。この方法は、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持することを含む。前記遅延は、最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある。
【0032】
少なくとも一つの例の態様により、コンピュータ可読命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。そのコンピュータ可読命令は、ロボット制御医療デバイスシステムのコントローラ及び/又は1つ以上のプロセッサによって実行されると、該ロボット制御医療デバイスシステムに、ネットワークを介し受信される1つ以上の制御信号に応答して、ロボット制御医療デバイスの動作を制御し、ロボット制御医療デバイスの制御に関連する遅延の変動に関係なくロボット制御医療デバイスの実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持することを含む方法を、実行させる。前記遅延は、最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある。
【0033】
一つ以上の例の態様によると、前記方法は、前記遅延が無効化閾値よりも大きい場合にロボット制御医療デバイスの作動を無効にすることをさらに含み得る。
【0034】
前記方法は、前記遅延が最大許容遅延閾値と無効化閾値との間にある場合にロボット制御医療デバイスの速度を制限して実質的に一定の最大オーバートラベル距離を維持することをさらに含み得る。
【0035】
ロボット制御医療デバイスの速度は、前記遅延が最大許容遅延閾値より小さい場合には制限しないことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
例示する実施形態は、以降の詳細な説明及び図面からより深く理解することができる。図中、同様の要素は、同様の参照符号で表される。図面は、例示の目的でのみ提供されており、したがって開示範囲を制限するものではない。
【0037】
【
図1】実施例に係るカテーテル処置システムの斜視図。
【
図2】実施例に係るカテーテル処置システムの概略ブロック図。
【
図3】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムの通信手段及び制御システムのブロック図。
【
図4】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムの通信手段及び制御システムのブロック図。
【
図5】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムの作動を制御する方法の例示。
【
図6】実施例に係る、制御センターでのグラフィカルユーザインタフェースの例。
【
図7】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムでのグラフィカルユーザインタフェースの例。
【
図8】実施例に係る、ローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステムでのデータ及び画像の表示例。
【
図9】実施例に係る、血行動態データを有するリモートサイトの制御センターでの表示例。
【
図10】実施例に係る、リモートサイトの制御センターでの表示例。
【
図11】実施例に係る、制御センター又はロボット制御医療デバイスシステムのいずれもロボット制御医療デバイスを制御していないときのユーザインタフェースの例。
【
図12】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムがロボット制御医療デバイスを制御しているときのユーザインタフェースの例。
【
図13】実施例に係る、制御センターがロボット制御医療デバイスを制御しているときのユーザインタフェースの例。
【
図14】実施例に係る、リモートサイトの制御センターでの表示例。
【
図15】実施例に係る、リモートサイトの制御センターでの表示例。
【
図16】実施例に係る、複数の制御センター及び複数のロボット制御医療デバイスシステムの多対多構成のブロック図。
【
図17】実施例に係る方法を例示するフローチャート。
【
図18】実施例に係る別の方法を例示するフローチャート。
【
図19】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答を例示するグラフ。
【
図20】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムでのグラフィカルユーザインタフェースの各表示例。
【
図21】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムでのグラフィカルユーザインタフェースの他の表示例。
【
図22】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムに関する減衰利得対合計遅延時間を例示するグラフ。
【
図23】
図23A~
図23Cは、実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムに関する二次元ステップ応答グラフの例。
【
図24】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムに関するステップ応答対合計遅延を例示するグラフの別の例。
【
図25】実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムに関するパーセントオーバーシュート対合計遅延を例示するグラフの別の例。
【0038】
上記の図面は、特定の実施形態において利用される方法、構造及び/又は材料の概略的な特徴を説明すること、及び、以下に記述する説明を補足すること、を意図していることに注意すべきである。ただし、これらの図面は、一定の尺度ではないし、いずれかの実施形態の正確な構造の又は機能の特性を厳密に反映してはいない場合もあり、実施例によって包含される値や特性の範囲を画定する又は限定するものとして解釈すべきではない。各図面において類似又は同一の参照符号を用いることは、類似又は同一の要素又は特徴の存在を示すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施例のいくつかを示している図面を参照して、様々な実施例を、以下により詳しく説明する。
【0040】
実施形態の例を詳細にここに開示する。しかしながら、ここに開示する具体的な構造及び機能の詳細は、単に、実施例を説明する目的のために表したに過ぎない。すなわち、実施例は、多くの代替形態で実施可能であり、ここに説明する形態のみに限定されると解釈されるべきではない。
【0041】
したがって、実施例は様々な変更と代替形態の可能性をもつが、図面において一例として形態を示し、ここに詳細に説明する。しかしながら、開示する具体的な形態に実施例を限定する意図はないことを理解すべきである。さらに言えば、実施例は、ここに開示する範囲に入る全ての変更、等価、及び代替に及ぶものである。同様の参照符号は、図面の記述全体を通して同様の要素を指す。
【0042】
カテーテル(及び他の細長い医療デバイス)は、(神経インターベンション手術としても知られる)神経血管インターベンション(NVI)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、及び/又は末梢血管インターベンション(PVI)を含む様々な脈管系疾患の診断及び治療のための低侵襲性医療処置に使用され得る。これらの処置は、通常、脈管系を通してガイドワイヤをナビゲートし、該ガイドワイヤを利用して作業カテーテルを進め、治療を行うことを含む。カテーテル処置は、標準的な経皮的手法を使用して、シース又はガイドカテーテルにより、動脈又は静脈など適切な血管内へのアクセスを得ることから始まる。このシース又はガイドカテーテルは、診断用ガイドワイヤを利用して、NVIの場合は内頸動脈、PCIの場合は冠状動脈口、又はPVIの場合は浅大腿動脈など、一次位置まで進められる。次いで、脈管構造に適したガイドワイヤを、シース又はガイドカテーテルを通して、脈管構造内の標的位置までナビゲートする。曲がりくねった解剖学的構造のようなある種の状況では、ガイドワイヤを通して支持カテーテル又はマイクロカテーテルを挿入し、ガイドワイヤのナビゲーションを補助する。医師又は操作者は、撮像システム(例えば、蛍光透視装置)を使用して、造影剤注入でシネを取得し、例えば病変である標的位置へガイドワイヤ又はカテーテルをナビゲートするためのロードマップとして使用する固定フレームを選択することができる。
【0043】
造影画像は、医師がガイドワイヤ又はカテーテルデバイスを送り込んでいる間に得ることもでき、この場合、医師は、デバイスが標的位置への正しい経路に沿って移動していることを確認できる。X線透視法を用いて解剖学的構造を観察しながら、医師は、ガイドワイヤ又はカテーテルの近位端を操作して、遠位端を病変に向かう適切な血管に入れ、側枝に進まないようにする。
【0044】
ロボット制御カテーテル処置システムは、例えばNVI、PCI、及びPVIなどのカテーテル処置を実行するときに医師を補助するべく使用できる。NVIカテーテル処置の例には、動脈瘤のコイル塞栓形成、動静脈奇形の液体塞栓形成、及び急性虚血性脳卒中の状況における大血管閉塞の機械的血栓除去が含まれる。
【0045】
NVIにおいて、医師は、ロボット制御システムを使用して、神経血管ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを操作し病変アクセスを得ることで、正常な血流を回復する治療を行う。アクセスはシース又はガイドカテーテルによって可能になるが、より遠位の領域の場合や、マイクロカテーテル及びガイドワイヤに適切なサポートを提供するために、中間カテーテルを必要とすることもある。ガイドワイヤの遠位端は、病変や治療の種類に応じて、病変の中へ又は病変の先までナビゲートされる。
【0046】
動脈瘤の治療の場合、マイクロカテーテルを病変の中に進め、ガイドワイヤを抜去し、マイクロカテーテルを通して動脈瘤内に数本のコイルを展開し、動脈瘤の塞栓に用いる。
【0047】
動静脈奇形の治療の場合、液体塞栓をマイクロカテーテルを介して奇形に注入する。
【0048】
血管閉塞を治療するための機械的血栓除去は、吸引か、ステントリトリーバーの使用のいずれかによって達成することができる。吸引は、マイクロカテーテルを通して直接行うか、又は、より大きな口径の吸引カテーテルを用いて行う。吸引カテーテルを病変に配置してから陰圧をかけ、該カテーテルを通して血餅を除去する。あるいは、血餅は、マイクロカテーテルを通してステントリトリーバーを配置することによって除去することができる。ステントリトリーバーで血餅を絡め取ってから、ステントリトリーバーとマイクロカテーテルをガイドカテーテルに引っ込めて血餅を回収する。
【0049】
PCIにおいて、医師は、ロボット制御システムを使用して、冠動脈ガイドワイヤを操作し病変アクセスを得ることで、治療を施して正常な血流を回復させる。アクセスは、ガイドカテーテルを冠動脈口に着座させることによって可能になる。ガイドワイヤの遠位先端が病変の先へ(を越えて)ナビゲートされ、複雑な解剖学的構造の場合は、ガイドワイヤの適切な支持を得るべくマイクロカテーテルを用いることができる。病変にステント又はバルーンを送り込んで留置することにより血流を回復させる。病変は、ステント留置の前に、病変の前拡張のためのバルーンを送り込むか、又は、例えばレーザー又は回転式アテローム切除カテーテルとガイドワイヤを通したバルーンを用いてアテローム切除を実行するか、のいずれかにより、準備を必要とする場合もある。診断撮像及び生理学的測定を、撮像カテーテル又はFFR測定を用いることにより、適切な治療を決定するために実施してもよい。
【0050】
PVIにおいて、医師は、ロボット制御システムを使用して、NVIと同様の技術で治療を行い血流を回復させる。ガイドワイヤの遠位先端は病変の先までナビゲートされ、マイクロカテーテルを使用して、複雑な解剖学的構造の場合にガイドワイヤに適切な支持を提供することができる。病変にステント又はバルーンを送り込んで留置することにより血流を回復させる。PCIの場合と同様に、病変の準備や診断撮像を行うこともある。
【0051】
一例において、医療処置のために使用されるロボット制御システムの操作者は、患者及びロボット制御システムと同じ部屋又は隣の部屋に位置する。別の例では、操作者は、離れた場所(例えば、別の建物、別の都市など)に居てロボット制御システムを操作し、医療処置を施す。リモートの操作者がロボット制御医療処置システムを制御し操作することを可能にするシステムは、例えば小さなコミュニティに居る患者に、現地ではかなわないであろう医療専門家へのアクセスを提供する。さらに、緊急医療処置を必要とする患者に対しては、地元の病院でリモートの専門医から治療を提供でき、インターベンション処置を施すまでの時間を減らすことができる。例えば、大血管閉塞(LVO)による急性虚血性脳卒中の患者を治療したり、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の患者を治療するためのインターベンション処置を、より迅速に行うことができる。
【0052】
図1は、実施例に係るカテーテル処置システムの斜視図である。
【0053】
図1を参照すると、カテーテル処置システム100は、例えば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、神経血管インターベンション処置(例えば、大血管閉塞(LVO)を治療するため)、ST上昇型心筋梗塞に対するPCI、末梢血管インターベンション処置などの経皮的インターベンション処置を含む、カテーテルベースの医療処置を行うために使用され得る。
【0054】
カテーテルベース医療処置には、患者の疾患の診断を補助するために1つ以上のカテーテル(又は他の細長い医療デバイス)が使用される診断用カテーテル処置も含まれ得る。例えば、カテーテルベース診断処置の少なくとも1つの実施例において、カテーテルを通して1つ以上の冠動脈に造影剤を注入し、患者の心臓の画像を撮影する。
【0055】
カテーテルベース医療処置は、カテーテル(又は他の細長い医療デバイス)が疾患の治療に使用されるカテーテルベース治療処置(例えば、血管形成術、ステント留置、末梢血管疾患の処置など)も含み得る。
【0056】
当分野で通常の知識を有する者であれば、ある種の特殊な経皮的インターベンションデバイス又はコンポーネント(例えば、ガイドワイヤのタイプ、カテーテルのタイプなど)が、実施される処置のタイプに基づいて選択され得ることを認識するのは当然である。カテーテル処置システム100は、少しの調節でいくつものカテーテルベース医療処置を行うことができ、処置で使用される特殊な経皮的インターベンションデバイスに対応する。具体的には、ここに開示するカテーテル処置システム100の実施例は主に冠動脈疾患の診断及び/又は治療に関して説明されるが、カテーテル処置システム100は、カテーテルベースの処置を利用した診断及び/又は治療に適したあらゆる種類の疾患又は状態を診断及び/又は治療するために使用され得る。
【0057】
カテーテル処置システム100は、ラボユニット106とワークステーション116を含む。ベッドサイドシステム110として示すロボット制御カテーテルシステムは、患者102に隣接するラボユニット106内に位置する。患者102は、テーブル108に寝かされている。概して、ベッドサイドシステム110は、ユーザが、ワークステーション116にある制御機器などの様々な制御機器を操作することによってロボット制御システムを介しカテーテルベース医療処置を実行できるように、適切な経皮的インターベンションデバイス又は他のコンポーネント(例えば、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、バルーンカテーテルやステントデリバリシステムなどの作業カテーテル、造影剤、医薬、診断カテーテルなど)を装備し得る。ベッドサイドシステム110は、ここに説明する機能を有するベッドサイドシステム110を提供するためのコンポーネントをいくつも及び/又はそのあらゆる組み合せを含むことができる。
【0058】
ベッドサイドシステム110は、数ある要素の中でも特に、ロボット制御アーム112によって支持される駆動アセンブリ111を含む。駆動アセンブリ111は、ロボット制御駆動装置113に搭載されたカセット114を含み、カテーテル又はガイドワイヤなどの細長い医療デバイス115を駆動するために使用される。例えば、駆動アセンブリ111は、患者102の動脈内に着座させたガイドカテーテルにガイドワイヤを自動的に入れるために使用することができる。
【0059】
ベッドサイドシステム110は、ワークステーション116と通信し、ワークステーション116のユーザ入力によって生成される信号をベッドサイドシステム110に送信して、ベッドサイドシステム110の様々な機能を制御することを可能にしている。ベッドサイドシステム110はまた、ワークステーション116にフィードバック信号(例えば、操作条件、警告信号、エラーコードなど)を提供することもできる。ベッドサイドシステム110は、通信リンク140(
図2に示す)を介してワークステーション116に接続され得る。通信リンク140は、無線接続、ケーブル接続、又はワークステーション116とベッドサイドシステム110との間の通信を可能にする他のあらゆる手段とすることができる。
【0060】
ワークステーション116は、カテーテル処置システム100の様々なコンポーネント又はシステムを作動させるにユーザ入力を受信するように構成されたユーザインタフェース126を含む。ユーザインタフェース126は、ユーザがベッドサイドシステム110を制御してカテーテルベース医療処置を実行することを可能にする制御機器118を含む。例えば、制御機器118は、ベッドサイドシステム110に装備し得る種々の経皮的インターベンションデバイス(例えば、細長い医療デバイス)を使用してベッドサイドシステム110に種々のタスクを実行させるように構成される(例えば、ガイドワイヤを前進、後退、又は回転させる、作業カテーテルを前進、後退、又は回転させる、ガイドカテーテルを前進、後退、又は回転させ、カテーテルに配置したバルーンを膨張、又は収縮させる、ステントを留置及び/又は展開する、カテーテルに造影剤を注入する、カテーテルに医薬を注入する、又は、カテーテルベース医療処置の一部として実行され得る他のあらゆる機能を実行するなど)。駆動アセンブリ111は、経皮的インターベンションデバイスを含むベッドサイドシステム110の各コンポーネントの動作(例えば、軸方向及び回転方向の動作)を生じさせるための種々の駆動機構を含む。
【0061】
一実施例において、制御機器118は、タッチスクリーン124、1つ以上のジョイスティック128及びボタン130,132を含む。ジョイスティック128は、様々なコンポーネントや例えばガイドワイヤ、ガイドカテーテル又は作業カテーテルなどの経皮的インターベンションデバイスを前進、後退、又は回転させるように構成できる。ボタン130,132は、例えば、緊急停止ボタン及び倍率ボタンを含み得る。緊急停止ボタンが押されるとリレーがトリガされて、ベッドサイドシステム110への電力供給が遮断される。
【0062】
倍率ボタンは、制御機器118の操作に応答して、関連するコンポーネントを動作させる速度を増減するように作用する。一実施例において、制御機器118は、タッチスクリーン124に表示される1つ以上のコントローラ又はアイコン(図示せず)を含み、これらを利用して、カテーテル処置システム100のコンポーネントを作動させることができる。
【0063】
制御機器118はまた、バルーン及び/又はステントの膨張又は収縮を行うように構成されたバルーン又はステントコントローラを含むこともできる。コントローラの各々は、当該制御を割り当てた特定のコンポーネントを制御するために構成可能な1つ以上のボタン、ジョイスティック、タッチスクリーンなどを含み得る。さらに、タッチスクリーン124は、制御機器118の様々な部分に関する又はカテーテル処置システム100の様々なコンポーネントに関係する1つ以上のアイコン(図示せず)を表示することができる。
【0064】
ユーザインタフェース126は、第1のモニタ(又はディスプレイ)120と、第2のモニタ(又はディスプレイ)122と、を含む。他の実施例では、ユーザインタフェース126は、1つのディスプレイ又は2つより多いディスプレイを含むことができる。第1のモニタ120及び第2のモニタ122は、ワークステーション116の所に居るユーザに情報や患者固有のデータを表示できるように構成される。例えば、第1のモニタ120及び第2のモニタ122は、画像データ(例えば、X線画像、MRI画像、CT画像、超音波画像など)、血行動態データ(例えば、血圧、心拍数など)、患者カルテ情報(例えば、病歴、年齢、体重など)を表示するように構成される。さらに、第1のモニタ120及び第2のモニタ122は、処置に特有の情報(例えば、処置の時間、カテーテル又はガイドワイヤの位置、投入する薬剤又は造影剤の容量など)を表示するようにも構成される。第1のモニタ120及び第2のモニタ122は、ガイドカテーテルの位置に関する情報を表示するようにも構成される。加えて、第1のモニタ120及び第2のモニタ122は、コントローラ134(
図2に示される)に関連する機能を提供する情報を表示するように構成されもする。別の実施例において、ユーザインタフェース126は、ここに説明するディスプレイコンポーネント及び/又はタッチスクリーンコンポーネントの1つ以上を表示するのに十分な大きさの単一スクリーンを含む。
【0065】
カテーテル処置システム100はまた、ラボユニット106内に位置する撮像システム104を含む。撮像システム104は、カテーテルベース医療処置と併用可能な各種の医療撮像システム(例えば、非デジタルX線、デジタルX線、CT、MRI、超音波など)であり得る。一実施例では、撮像システム104は、ワークステーション116と通信するデジタルX線撮像デバイスである。一実施例では、撮像システム104は、患者102に対して様々な角度の位置で画像を得る(例えば、矢状断像、尾側像、前後像など)ために、撮像システム104が患者102の周りを部分的に又は全周にわたり回転できるようにするCアーム(図示せず)を含むことができる。
【0066】
撮像システム104は、特定の処置中に患者102の適切な領域のX線画像を撮影するように構成されてもよい。例えば、撮像システム104は、心臓の状態を診断するために心臓の1つ以上のX線画像を撮影するように構成されてもよい。
【0067】
撮像システム104は、また、処置中にガイドワイヤ、ガイドカテーテル、ステントなどを適切に位置決めできるようワークステーション116のユーザを補助するために、カテーテルベース医療処置中に1つ以上のX線画像を撮影する(例えば、リアルタイム画像)ように構成されてもよい。その1つ以上の画像は、第1のモニタ120及び/又は第2のモニタ122に表示することができる。具体的に言えば、画像は、例えば、ユーザがガイドカテーテルを適切な位置に正確に移動させられるように、第1のモニタ120及び/又は第2のモニタ122に表示され得る。
【0068】
図2を参照すると、実施例に係るカテーテル処置システム100のブロック図が示されている。カテーテル処置システム100は、コントローラ134を含む。コントローラ134は、ワークステーション116(
図1に示す)の一部であってもよい。コントローラ134は、概して、ここに説明する様々な機能を有するカテーテル処置システム100を提供するのに適した電子制御ユニットであり得る。例えば、コントローラ134は、組み込みシステム、専用回路、ここに説明する機能をプログラムした汎用システムなどである。コントローラ134は、1つ以上のベッドサイドシステム110、制御機器118、モニタ120及び122、撮像システム104、及び患者センサ136(例えば、心電図(「ECG」)デバイス、脳波図(「EEG」)デバイス、血圧モニタ、体温モニタ、心拍モニタ、呼吸モニタなど)と通信している。一実施例では、コントローラ134は、造影剤注入システム152及び血管内超音波(IVUS)システム154とも通信する。コントローラ134は、例えば、OCTシステム、FFRシステム、又は吸引ポンプなどの他の医療システム156とも通信し得る。一実施例では、コントローラ134は、ユーザと制御機器118との相互作用に基づいて、及び/又は、コントロール134がアクセス可能な情報に基づいて、カテーテル処置システム100を用いて医療処置を行うことができるように、制御信号を生成するように構成されている。加えて、コントローラ134は、病院ネットワーク(病院データ管理システム)142や、1つ以上の他の出力デバイス138(例えば、プリンタ、ディスクドライブ、CD/DVDライタなど)とも通信可能である。
【0069】
カテーテル処置システム100の様々なコンポーネント間の通信は、通信リンク140を介して達成される。通信リンク140は、専用有線又は無線接続とし得る。通信リンク140は、ネットワーク上の通信も表し得る。カテーテル処置システム100は、明示はしていない各種の他のシステム及び/又はデバイスを含むように接続又は構成されてもよい。例えば、カテーテル装置システム100は、画像処理エンジン、データストレージ及びアーカイブシステム、自動バルーン及び/又はステント膨張システム、医薬注入システム、医薬追跡及び/又は記録システム、ユーザログ、暗号化システム、カテーテル処置システム100のアクセス又は使用を制限するシステムなどを含むことができる。
【0070】
上述したように、コントローラ134は、ベッドサイドシステム110と通信し、ベッドサイドシステム110に制御信号を提供して、経皮例インターベンションデバイス(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)を駆動するために使用されるモータ及び駆動機構の動作を制御する。ベッドサイドシステム110は、例えば、ガイドワイヤの前進及び/又は後退を提供するガイドワイヤ軸方向駆動機構、作業カテーテルの前進及び/又は後退を提供する作業カテーテル軸方向駆動機構、及び、ガイドワイヤをその長軸の周りに回転させるように構成されるガイドワイヤ回転方向駆動機構を含む。一実施例では、駆動アセンブリ114(
図1に示す)にこれら各種の駆動機構が収容されている。
【0071】
図1及び
図2に関して上述したカテーテル処置システムの例などのロボット制御医療デバイスシステムは、リモート制御され得る。
【0072】
図3は、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムの通信手段及び制御システムの概略図である。通信手段及び制御システム10は、リモートサイト(又は離れた場所)にある制御センター12と、ローカルサイト(又は現場)にあるロボット制御医療デバイスシステム14とを含む。ここで言うローカルサイトは、ロボット制御医療デバイスシステム及び患者(又は被験者)の場所であり、リモートサイトは、操作者(例えば、医師)及びロボット制御医療デバイスシステムをリモート制御するために使用される制御センターの場所である。制御センター12とロボット制御医療デバイスシステム14は、例えばインターネットなどのネットワーク16を介して通信する。一実施例では、リモートサイトとローカルサイトとは互いに離れており、例えば、同じ建物内の別々の部屋、同じ都市内の別々の建物、別々の都市、又は、リモートサイトがローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム又は患者への物理的アクセスを有していない他の別々の場所である。制御センター12及びロボット制御医療デバイスシステム14は、ネットワーク16を介して通信(例えば、データ、画像、命令、及び制御信号)する。
【0073】
リモートサイトの操作者は、制御センター12を使用して、ローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム14を制御し、作動させ、医療処置を実施する。一実施例において、複数の制御センター12が、ネットワーク16を介して1つのロボット制御医療デバイスシステム14と通信し、その各制御センター12は、別々の場所からロボット制御医療デバイスシステム14を制御するために使用される。別の実施例では、複数の制御センター12がネットワーク16を介して複数のロボット制御医療デバイスシステム14と通信し、この場合の制御センター12の各々は、ロボット制御医療デバイスシステム14の各々を制御するために使用される。
【0074】
ロボット制御医療デバイスシステム14は、例えば、ロボット制御されて処置を実施するカテーテル処置システム又は他の医療デバイスシステムである。一実施例では、ネットワーク16は、例えば、仮想プライベートネットワーク(VPN)のようなセキュアネットワークである。制御センター12は、例えば、ユーザインタフェースを備えたワークステーションを含むことができる。一実施例では、制御センター12は、ロボット制御医療デバイスシステム14に提供されるユーザインタフェースに類似したユーザインタフェースを含む。例えば、ロボット制御医療デバイスシステム14が、
図1及び
図2に関連して上述したシステムのようなカテーテル処置システムである場合、制御センター12は、ワークステーション116、ユーザインタフェース126、及びカテーテル処置システム100の制御機器118と同様のユーザインタフェース及び制御機器を有するワークステーションを含むことができる。別の実施例では、制御センター12は、リモートサイトのロボット制御医療デバイスシステムの一部であるワークステーション又はユーザインタフェースを含む。制御センター12は、操作者がリモートサイトからロボット制御医療デバイスシステム14の各コンポーネントを作動させることができるように構成される。データ、画像、命令及び制御信号などの情報が制御センター12からネットワーク16を通しロボット制御医療デバイスシステム14へ伝送され、データ、画像などの情報がロボット制御医療デバイスシステム14からネットワーク16を通し制御センター12へ伝送される。
【0075】
図4は、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムの通信手段及び制御システムのブロック図である。通信手段及び制御システム200は、リモートサイトの制御センター202と、ローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム204と、を含む。制御センター202とロボット制御医療デバイスシステム204は、ネットワーク206を通して通信する。ネットワークには、NTP(Network Time Protocol)プールを含む場合と同プールと通信する場合とがある。一実施例では、ネットワーク206は、制御センター202におけるリモートファイアウォール208と、ロボット制御医療デバイスシステム204におけるローカルファイアウォール210と、を用いて確立されたセキュアネットワークである。例えば、ネットワーク206はVPNであり得る。ネットワーク206は、データ、画像、命令及び制御信号を送受信するように構成されている。
図4に示すシステム200では、1つの制御センター202と1つのロボット制御医療デバイスシステム204とが示されている。一実施例において、複数の制御センター202がネットワーク206を介して1つのロボット制御医療デバイスシステム204と通信し、その各制御センター202は、別々の場所からロボット制御医療デバイスシステム204のロボット制御システム245を使用して1つ以上の医療デバイス246を制御するために使用され得る。ロボット制御システム245は、例えば、ロボット制御アーム、ロボット制御駆動装置、及び/又は医療デバイスを駆動するために使用することができる他のロボット制御装置である。ロボット制御医療デバイスシステムがカテーテルシステムである実施例では、ロボット制御システム245は、
図1に関して上述したロボット制御アーム112及び駆動アセンブリ111であってよい。別の実施例において、複数の制御センター202が、ネットワーク206を介して複数のロボット制御医療デバイスシステム204と通信し、この場合、制御センター202の各々は、ロボット制御医療デバイスシステム204の各々において、ロボット制御システム245を用いて1つ以上の医療デバイス246を制御するために使用される。
【0076】
さらに、制御センター202は、ファイアウォール208と接続されて通信するリモート命令及び制御モジュール212とリモートコントローラ216とを含む。一実施例では、リモートファイアウォール208、リモート命令及び制御モジュール212、及びリモートコントローラ216は、個別のハードウェア(例えば、コンピューターシステム)に実装される。別の実施例では、リモートファイアウォール208、リモート命令及び制御モジュール212、及びリモートコントローラ216は、1つのコンピュータシステムにおける個別のソフトウェアコンポーネント又は論理サブシステムコンポーネントとして実装される。一実施例では、リモート命令及び制御モジュール212及びリモートコントローラ216は、1つの又は分散型コンピュータシステムの単一コンポーネント(ソフトウェア及び/又はハードウェア)又は論理サブシステムコンポーネントにおいて実装することができる。リモート命令及び制御モジュール212及びリモートコントローラ216は、一括してコントローラ又はリモートコントローラとも呼び得る。ソフトウェアコンポーネント又は論理サブシステムコンポーネントは、例えば、マイクロカーネル、バーチャルマシン、又はリアルタイム拡張を伴う周知のオペレーティングシステムを使用して達成される。別の実施例では、リモートコントローラ216及びリモートファイアウォール208は、リモート命令及び制御モジュール212で実行されるソフトウェアプログラムとして実装されてもよい。リモート命令及び制御モジュール212は、制御センターの制御コンソール236から命令及び制御信号を受信する。制御コンソール236は、リモートサイトのロボット制御医療デバイスシステム204と他のシステム及びデバイスとを作動させるために、リモートサイトの操作者からユーザ入力を受信するように構成されている。例えば、制御コンソール236は、タッチスクリーン、1つ以上のジョイスティック及びボタンなどのディスプレイ及び制御機器を含むことができる。制御センター202の第1のディスプレイ240は、リモート命令及び制御モジュール212に接続され、ロボット制御医療デバイスシステム204から受信されるデータ及び画像を表示するために使用される。リモート命令及び制御モジュール212は、ロボット制御医療デバイスシステム204から受信した画像を解凍するように構成されてもよい。
【0077】
リモート命令及び制御モジュール212はまた、例えば、リモート基準クロック220のような時間同期基準クロックに接続され、リモート基準クロック220から時間情報を受信する。リモート基準クロック220は、例えば、グランドマスタークロックである。詳しく後述するが、時間情報は、リモートサイトとローカルサイトとの間の信号及びデータ(例えば、命令及び制御信号、及び画像)の伝送における遅延を計算するために使用することができる。リモート基準クロック220は、アンテナ232に接続され、例えば、サテライトベースの時間源や外部ネットワークなどの外部時間源から時間情報を受信し、リモート命令及び制御モジュール212にタイムスタンプ情報を提供する。一実施例では、時間情報は、全地球測位システム(GPS)から提供される。別の実施例では、時間情報は、サテライトタイム&ロケーション(STL)システムから提供される。リモートスイッチ224が、リモート基準クロック220に接続される。一実施例では、リモート基準クロック220、リモートスイッチ224、及びリモート命令及び制御モジュール212は、精密時間プロトコル(Precision Time Protocol:PTP)ネットワークを使用する。リモート命令及び制御モジュール212は、リモート基準クロック220からのタイムスタンプ情報を使用して、制御コンソール236から受信される命令及び制御信号にタイムスタンプを付与する。タイムスタンプされた命令及び制御信号は、ネットワーク206を介して、ロボット制御医療デバイスシステム204内のローカル命令及び制御モジュール214に送信される。ローカル命令及び制御モジュール214は、例えば、ネットワーク206越しの命令及び制御信号をロボット制御医療デバイスシステム204のロボット制御システム245に提供し、医療デバイス246の作動を制御するように構成される。リモート基準クロック220からの情報に基づいてリモート命令及び制御モジュール212により命令及び制御信号に付与されるタイムスタンプは、医療デバイス246を使用して実施される医療処置の間、ネットワーク206を通した命令及び制御信号の伝送における遅延を監視し制御するために使用される。ローカル命令及び制御モジュール214は、
図5に関して以下で詳述するように、タイムスタンプに基づいて、制御センター202からの命令及び制御信号の受信における遅延を測定し、その遅延量に基づいて適切なアクションを行うように構成されている。
【0078】
ローカル命令及び制御モジュール214及びローカルコントローラ218は、ローカルファイアウォール210と接続されて通信する。一実施例では、ローカルファイアウォール210、ローカル命令及び制御モジュール214、及びローカルコントローラ218は、個別のハードウェア(例えば、コンピューターシステム)に実装される。別の実施例では、ローカルファイアウォール210、ローカル命令及び制御モジュール214、及びローカルコントローラ218は、1つのコンピュータシステムにおいて個別のソフトウェアコンポーネント又は論理サブシステムコンポーネントとして実装される。一実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214及びローカルコントローラ218は、1つの又は分散型コンピュータシステムの単一コンポーネント(ソフトウェア及び/又はハードウェア)又は論理サブシステムコンポーネントにおいて実装することができる。ローカル命令及び制御モジュール214及びローカルコントローラ218は、一括してコントローラ又はローカルコントローラとも呼び得る。ソフトウェアコンポーネント又は論理サブシステムコンポーネントは、例えば、マイクロカーネル、仮想マシン、又はリアルタイム拡張を伴う周知のオペレーティングシステムを使用して達成され得る。別の実施例では、ローカルコントローラ218及びローカルファイアウォール210は、ローカル命令及び制御モジュール214で実行されるソフトウェアプログラムとして実装可能である。ローカル命令及び制御モジュール214は、また、ロボット制御医療デバイスシステムの制御コンソール238から命令及び制御信号を受信する。制御コンソール238は、ローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム204の作動のために、ローカルサイトの操作者からユーザ入力を受信するように構成されている。例えば、制御コンソール238は、タッチスクリーン、1つ以上のジョイスティック及びボタンなどのディスプレイ及び制御機器を含み得る。ディスプレイ241は、ローカル命令及び制御モジュール214に接続され、データ及び画像を表示するために使用される。ローカル命令及び制御モジュール214は、撮像システム248からの画像及び患者センサ250からの血行動態データも受信する。ロボット制御医療デバイスシステム204が
図2及び
図3に関して上述したようなカテーテル処置システムである実施例の場合、ローカルコントローラ218は、ディスプレイ120,122又はタッチスクリーン124に接続され得る。撮像システム248からの画像は、第1のビデオキャプチャ及びスケーリングデバイス242を用いてキャプチャ及びスケーリングされ、そして、血行動態データは、第2のビデオキャプチャ及びスケーリングデバイス244を用いてキャプチャ及びスケーリングされ得る。ローカル命令及び制御モジュール214は、制御センター202へ送信する前に画像データを圧縮するように構成可能であり、ローカルコントローラ218は、制御センター202へ送信する前に血行動態データを圧縮するように構成可能である。他の実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214は、血管内超音波(IVUS)システム254と接続され、該システムからデータを受信する。IVUSシステム254からのデータは、制御センター202に送信される。
【0079】
ローカル命令及び制御モジュール214は、例えば、ローカル基準クロック226のような時間同期基準クロックにも接続され、ローカル基準クロック226から時間情報を受信する。ローカル基準クロックは、例えば、グランドマスタークロックである。時間情報は、リモートサイトとローカルサイトとの間の信号及びデータ(例えば、命令及び制御信号、及び画像)の伝送における遅延を計算するために使用される。ローカル基準クロック226は、アンテナ234に接続され、例えば、サテライトベース時間源などの外部時間源から時間情報を受信し、ローカル命令及び制御モジュール214にタイムスタンプ情報を提供する。一実施例では、時間情報は、全地球測位システム(GPS)から提供される。別の実施例では、時間情報は、サテライトタイム&ロケーション(STL)システムから提供される。ローカルスイッチ230がローカル基準クロック226と接続される。一実施例において、ローカル基準クロック226、ローカルスイッチ230、及びローカル命令及び制御モジュール214は、精密時間プロトコル(PTP)ネットワークを使用する。ローカル命令及び制御モジュール214は、ローカル基準クロック226からのタイムスタンプ情報を使用して、第1のビデオキャプチャ及びスケーリングデバイス242から受信される画像データにタイムスタンプを付与する。他の実施例では、ローカルコントローラ218は、ローカル基準クロック226からのタイムスタンプ情報を使用して、第2のビデオキャプチャ及びスケーリングデバイス244から受信される血行動態データにタイムスタンプを付与する。タイムスタンプされた画像及び血行動態データは、ネットワーク206を介して、制御センター202内のリモート命令及び制御モジュール212に送信される。
【0080】
図4に図示はしたが、他の実施例では、第2のビデオキャプチャ及びスケーリングデバイス244及び患者センサ250は、省略してもよい。
【0081】
リモート命令及び制御モジュール212は、画像を制御センター202のディスプレイ240に、血行動態データを制御センター202のディスプレイ240又は別のディスプレイに提供するように構成されている。ローカル基準クロック226からの情報に基づいてローカル命令及び制御モジュール214により画像及び血行動態データに提供されるタイムスタンプは、制御センター202を使用しロボット制御システム245及び1つ以上の医療デバイス246を制御して実施される医療処置の間、ネットワーク206を通した画像及び血行動態データの伝送における遅延を監視し制御するために使用される。システム200の各コンポーネントを、又は制御センター202とロボット制御医療デバイスシステム204との間で交わされるシステムの制御を、画像及び/又は血行動態データの伝送における遅延に基づいて一時停止又は中止させることができる。
【0082】
上述のように、制御センター202は、精密時間プロトコルを使用可能なリモート基準クロック220を含み、ロボット制御医療デバイスシステム204は、精密時間プロトコルを使用可能なローカル基準クロック226を含む。リモート基準クロック220及びローカル基準クロック226は、例えば、GPS又はSTLのようなサテライトベースの時間源など、共通の外部時間源と通信して時間情報を受信する。少なくともこの実施例は、制御センター202とロボット制御医療デバイスシステム204が、ネットワーク206(例えば、インターネット)上のセキュアトンネルを通して通信し、安全で確実な作動を保証できるように、命令の遅延及び往復遅延を計算することを可能にする。各サイトは、時間同期のために専用の基準クロック(例えば、それぞれの基準クロック220,226)と隔離されたイーサネット(登録商標)ネットワークを使用する。NTP又はPTPのいずれかがこの実施例において同期のために使用される。隔離されたネットワークを通して各サイトで専用の基準クロックを使用することにより、インターネットからアクセス可能にされる時間参照を狙ったネットワーク攻撃の攻撃対象領域(アタックサーフェイス)が縮小及び/又は排除される。このような脆弱性には、GMCを利用不能にするサービス妨害(DoS)や、命令及び制御モジュールを攻撃者の制御下におくスタックオーバーフローが含まれる(これらに限定されるわけではない)。
図16に関してさらに後述するように、一実施例において、ファイアウォールを用いて、比較的高いレベルのセキュリティと通信に対する少ない(例えば、最小限の)遅延の影響に関し、非公開保持キーをもった2つのノード間の専用ハードウエアによるIPSec暗号化トンネルを確立することができる。
【0083】
別の実施例において、制御センター202とロボット制御医療デバイスシステム204は、それら自身の基準クロックを含んでいなくてもよい。すなわち、制御センター202及びロボット制御医療デバイスシステム204は、時間情報を受信するために単一ネットワークグランドマスタークロックと通信するNTP及びNTPプールを利用するように構成される。上述のように、時間情報は、命令及び制御信号と他のデータ(例えば、画像及び血行動態データ)のためのタイムスタンプを生成するために使用され得る。少なくとも一つの実施例において、命令及び制御信号の合計の伝送遅延を測定するために、タイムスタンプが共通の時間源(例えば、GPS又はSTL)によって提供される。別の実施例では、命令及び制御信号の合計の伝送遅延を測定するために、タイムスタンプが単一の時間源(例えば、ネットワークグランドマスタークロック又は内部クロック)によって提供される。この実施例では、「リモート」サイトからのタイムスタンプが使用され、したがって、タイムスタンプが「ローカル」サイトからの画像伝送で戻ってきたときに、往復の命令及び制御信号と画像の遅延が計算されることになる。
【0084】
上述したように、制御センター202は、リモートサイトの操作者が使用し、ローカルサイトにあるロボット制御医療デバイスシステム204及び他のシステム及びデバイスを作動させ制御する。一実施例では、制御センター202は、ネットワーク206を介して、撮像システム248又は造影剤注入システム252に命令及び制御信号を提供する。例えば、制御センター202は、撮像システム248による画像キャプチャを制御するために使用される。別の実施例では、制御センター202は、造影剤注入システム252による造影剤注入を制御するために使用される。一実施例では、制御センター202は、吸引ポンプの起動やステントリトリーバーの展開を制御するために使用される。
【0085】
制御センター202は、テレプレゼンスモジュール260を含み、ロボット制御医療デバイスシステム204は、テレプレゼンスモジュール262を含む。各テレプレゼンスモジュール260,262は、リモートサイトの操作者と、ローカルサイトのユーザ又はローカルスタッフとの間で音声及び映像通信(例えば、テレプレゼンス、テレビ会議)を提供するように構成されている。少なくとも一つの実施例において、
図4に示されるように、テレプレゼンスモジュール260,262は独立(スタンドアローン)モジュールであり、それぞれリモートファイアウォール208及びローカルファイアウォール210に接続される。少なくとも一つの他の実施例において、テレプレゼンスモジュール260,262の要素は、それぞれ、リモートコントローラ216又はローカルコントローラ218で実行されるソフトウェアプログラムである。テレプレゼンスモジュール260,262は、例えば、ビデオカメラ、モニタ、スピーカー、及びマイクロホンを含み得る。一実施例では、リモートサイトのテレプレゼンスモジュール260とローカルサイトのテレプレゼンスモジュール262との間でビデオ会議を確立することができ、その結果、制御センター202を利用するリモートサイトの操作者が、ローカルサイトのロボット制御システム245を使用して医療デバイス246を操作することができるように、処置が実施される処置室と機器を見て、ローカルサイトで処置をサポートする職員(例えば、技術者、医師などの)と音声及び映像を利用して交信することができる。一実施例では、音声及び映像通信は、コンピュータネットワーク(例えば、クラウドネットワーク)を通したセキュア通信を確立する専用の音声及び映像通信システムを使用して、リモートサイトのテレプレゼンスモジュール260とローカルサイトのテレプレゼンスモジュール262との間で確立される。例えば、リモートサイトのテレプレゼンスモジュール260は、暗号化フォーマット(例えば、SRTP/AES-128)でリモートサイトから音声(例えば、会話)及び映像を送信し、ローカルサイトのテレプレゼンスモジュール262から音声(例えば、会話)及び映像を受信して復号するように構成される。ローカルサイトのテレプレゼンスモジュール262は、暗号化フォーマット(例えば、SRTP/AES-128)でローカルサイトから音声(例えば、会話)と映像を送信し、リモートサイトのテレプレゼンスモジュール260から音声(例えば、会話)と映像を受信し復号するように構成される。テレプレゼンスモジュール260とテレプレゼンスモジュール262との間の信号伝送及びルーティングは、クラウドネットワークを使用して確立され得る。少なくとも一つの実施例では、暗号化された音声及び映像データは、さらに暗号化を加えることなく(例えば、音声及び映像データがホワイトリスト化される)、リモートファイアウォール208とローカルファイアウォール210との間で伝送される。
【0086】
図5は、実施例に係る、ロボット制御医療デバイスシステムの作動を制御する方法を例示する。
【0087】
図4及び
図5を参照すると、ブロック302で、命令及び制御信号が、例えば、リモートサイトの制御センター202からローカルサイトのローカル命令及び制御モジュール214によって受信される。
【0088】
ブロック304において、命令及び制御信号の受信における遅延が、例えば、ローカル命令及び制御モジュール214によって、タイムスタンプ情報に基づいて測定される。
【0089】
ブロック306で、その遅延が閾値と比較される。一実施例では、閾値は、例えば、ユーザに知覚可能であるかに基づいた所定の(あるいは、好ましい又は予め決定された)値である。一例では、閾値は250msである。以下で詳述する別の実施例では、ロボット制御医療デバイスシステムの少なくとも1つのパラメータ、例えば、ロボット制御医療デバイスシステムにより実施されている処置、患者の解剖学的構造、医療デバイスの種類、及び医療デバイスの位置に基づいて、ブロック316で閾値を決定することができる。
【0090】
ブロック308において遅延が閾値よりも大きい場合、ブロック314で補正処理を行うことができる。少なくとも一つの実施例において、医療デバイス246及びロボット制御医療デバイスシステム204の他のコンポーネントを一時停止又は停止させることができる。一時停止の一例では、遅延が閾値を越えた後に遅延が閾値を下回るように進む場合、遅延が閾値を越えるように進み出したときにデバイス又はコンポーネントを一時停止し、その後に再始動させることができる。別の例では、遅延が大きすぎる場合、作動を再開するのに十分な程度まで遅延が低くなるまで、デバイス又はコンポーネントの動作を一時停止させる。別の実施例では、ロボット制御医療デバイスシステムのコンポーネントの速さ又は速度(例えば、前進、後退、又は回転の)を減速することができる。ネットワーク接続が失われているか、又は、ネットワーク206の速さが所定の(あるいは、好ましい又は予め決められた)レートを下回るまで遅くなっている場合、制御センター202は、ロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御をロボット制御医療デバイスシステム204へ戻すことができる。また、緊急時にローカルサイトのユーザが処置を止めることができるように、緊急停止を提供することもできる。一実施例では、閾値は、閾値の範囲をもつ。制御センター202がロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権をもっていて、命令及び制御信号の遅延が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値よりも小さい場合、制御センター202の制御コンソール236(例えば、ジョイスティック)は無効にされるが、制御コンソール236は、ロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御を維持する。制御センター202がロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権をもっていて、命令及び制御信号の遅延が第2の閾値よりも大きくなる場合は、制御センター202が無効にされ得る。
【0091】
ブロック308において、制御センター202がロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権をもっているときに、命令及び制御信号の遅延が閾値に到達しなければ、ブロック310で、制御センター202の制御コンソール236を使用して、ロボット制御システム245及び医療デバイス246を含むロボット制御医療デバイスシステム204を制御し作動させることができる。
【0092】
ブロック312において、医療デバイス246の速度は、制御センター202によって制御されている場合、命令及び制御信号の遅延に基づいて調節される。制御センター202がロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権をもっていて、命令及び制御信号の遅延(t
delay)が規定の閾値量(t
predetermined)より小さく且つゼロより大きい場合、制御コンソール236(例えば、ジョイスティック)から受信される命令及び制御信号による命令速度(v
command)は、遅延が閾値量に向かって増大するのに合わせてデバイス246の速度(v
device)が低下するようにスケーリング(増減)される。この実施例では、デバイスの速度は、以下に示す式(1)で与えられる。
(1)
【0093】
例えば、遅延t
delayが閾値t
predeterminedの半分に等しい場合、デバイスの速度v
deviceは、命令速度v
commandの半分にされ得る。遅延t
delayが増大するにつれてデバイス246を減速することは、システムの安定性を確保し、例えば、デバイスを過度に前進させたり後退させたりすることのないようにデバイス制御に関するリスクを軽減するのに役立つ。遅延t
delayが閾値量t
predeterminedより大きい場合(ブロック308)、デバイスの速度v
deviceはゼロとされ、デバイス246の動作は停止する(ブロック314)。別の実施例では、デバイスの速度v
deviceは、合計ネットワーク遅延に基づいて調節され得る。合計ネットワーク遅延は、命令及び制御信号の遅延t
delayと、ロボット制御医療デバイスシステム204から受信された画像の遅延t
imagedelayと、を含む。この例では、デバイスの速度v
deviceは、以下に示す式(2)で与えられる。
(2)
【0094】
合計ネットワーク遅延ttotal=(tdelay+timagedelay)に基づいてデバイスの命令速度vcommandをスケーリングすると、デバイスの位置制御に対して安定した作動とロバストな性能を保証することができる。上記の、命令速度をスケーリングする一つ以上の実施例は、どのような合計遅延に対しても安定性を保証するために調整され得る。遅延が不明の場合、遅延が大きすぎると不安定性が生じることがある。
【0095】
一定の合計遅延の下での開ループシステムの周波数応答は、以下に示す式(3)で与えられる。
(3)
【0096】
ナイキスト安定判別法に基づいて、直結比例フィードバックに関し保証すべき安定度のために、合計ネットワーク遅延は次の制約を満たさなければならない:t
total≦(π/2)秒。閾値t
predetermined=π/2で上記式(2)のスケーリングを用いると、以下に示す式(4)によって与えられる周波数応答が生じる。
(4)
【0097】
他の実施例では、閾値tpredeterminedに関し他の最適値を計算し、式(2)のスケーリングにおいて使用することができる。式(4)から、ゲインマージンが直結比例フィードバックに対して現時点で無限であれば、比例直結フィードバックに対して安定性が保証される。他の方法も、安定性を保証するフィードバック遅延の知識をもって同様の方法で用いることができる。速度命令を用いてデバイスの位置を制御する場合と同様に、フィードバック遅延の知識を用いず安定性を保証するために波変数を使用するアプローチの例が、「Design of Networked Control Systems Using Passivity」,N. Kottenstette, J. F. Hall, X. Koutsoukos, J. Sztipanovits and P. Antsaklis, IEEE Transactions on Control Systems Technology, vol. 21, no. 3, pp. 649-665, May 2013(当該論文の全体がここに援用される)に記載されている。
【0098】
上述のように、ブロック316において、遅延閾値は、例えば、ロボット制御医療デバイスシステムによって実施されている処置を含む、ロボット制御医療デバイスシステム204の少なくとも1つのパラメータに基づいて決定される。例えば、ロボット制御医療デバイスシステム204は、細長い医療デバイス(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーンカテーテル、マイクロカテーテルなど)の動作、操作を制御するカテーテル処置システムである。許容可能な遅延の量は、カテーテル処置システムの様々なパラメータに依存して変化し得る。遅延閾値の値は、例えば、実施される処置のタイプ、患者の解剖学的構造、細長い医療デバイスのタイプ(例えば、カテーテル、バルーンカテーテル、ガイドカテーテル、ガイドワイヤ、マイクロカテーテルなど)、細長い医療デバイスの位置、細長い医療デバイス(例えば、機器の先端又は遠位端)と標的位置との間の距離、又は細長い医療デバイスが行う動作のタイプ(例えば、前進、回転、後退など)に基づく。例えば、細長い医療デバイス(例えば、細長い医療デバイスの先端)が標的位置からかなり離れている場合、細長い医療デバイスを後退させている場合、又は、細長い医療デバイスがワイヤ(例えば、マイクロカテーテル又はバルーンカテーテル)又はガイドワイヤに従い移動するデバイスである場合には、より大きい遅延が許容され得る。
【0099】
少なくとも一つの実施例において、リモートコントローラ216(
図4に示される)及びローカルコントローラ218(
図4に示される)は、それぞれ同様のグラフィカルユーザインタフェースを生成し表示する。
【0100】
図6は、実施例に係る制御センターのグラフィカルユーザインタフェースを示す一例である。
図7は、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムのグラフィカルユーザインタフェースを示す別の例である。
【0101】
図6及び
図7において、グラフィカルユーザインタフェース460,462は、一例のカテーテル処置システムの制御用である。制御センター用のグラフィカルユーザインタフェース460及びロボット制御医療デバイスシステム用のグラフィカルユーザインタフェース462は、例えば、同じ測定値、速度、保存された設定、及び制御コンソールのどの制御機器がアクティブサイト(例えば、リモートサイトの制御センター又はローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステムのいずれか)で操作されているか、を示すように構成されている。各グラフィカルユーザインタフェース460,462は、ロボット制御医療デバイスシステムから制御コンソールへの伝送画像の遅延464,466(image delay)と、制御センターからロボット制御医療デバイスシステムへの命令信号及び制御信号の遅延468,470(command delay)を表示する。
【0102】
図4に関して上述したように、制御センター202のディスプレイ240を使用して、ネットワーク206を通してロボット制御医療デバイスシステム204から受信されるデータ及び画像を表示することができる。
【0103】
図8は、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムのデータ及び画像の表示例を示している。
【0104】
図8を参照すると、ディスプレイ500は、例えば、血行動態データ502、参照画像506、及び処置を実施するロボット制御医療デバイスの作動に関係したライブ画像508など、ロボット制御医療デバイスシステム204で取得されるデータ及び画像の表示を含む。具体的に、
図8に示した実施例においてデータ及び画像は、カテーテル処置に関するものである。ロボット制御医療デバイスシステム204は、リモートサイトの制御センター202へ伝送するディスプレイ500の対象のセクション又は領域を選択するように構成されてもよい。
【0105】
したがって、例えば、血行動態データ502と参照画像506とライブ画像508とを別々に伝送できるように、ディスプレイ500をトリミングすることができる。選択した対象のセクション又は領域は、伝送する所望の情報をキャプチャするどのような形状にもされ得る。ディスプレイ500をトリミングすると、画像及びデータを送信するのに必要な帯域幅を減らせる可能性がある。
【0106】
図9は、実施例に係る、血行動態データを含む選択対象領域の入った、リモートサイトにある制御センターの表示例を示す。
【0107】
図9において、ディスプレイ600は、ロボット制御医療デバイスシステム204から受信された血行動態データを含んでいる。
【0108】
別の実施例では、リモートコントローラ216及びディスプレイ240は、操作者が、
図10に示すように、ライブ画像データ(例えば、カテーテル処置のための透視画像データ)の所定の(あるいは、好ましい又は予め決められた)時間(例えば、10秒間)までを選択的に循環バッファできるように構成されてもよい。例えば、ユーザは、キャプチャを開始し、予め決められた時間の再生のために循環バッファを生成する制御を始動させることができる。
図10に示した実施例の場合、ディスプレイ700に表示された再生画像702(playback)が、ライブ画像704(live image)と同じ縮尺となるようにスケーリングされている。再生画像702は、1秒間に所定の(あるいは、好ましい又は予め決められた)フレーム数のリアルタイムである。少なくとも一つの実施例において、操作者が再生画像702を一時停止し、コマ送りし、コマ戻しすることを可能にする制御が提供される。
【0109】
再生画像は、例えば、ロードマップの生成を容易にし、事態の進行を捕らえるために、使用され得る。
【0110】
別の実施例では、リモートサイトにおける(例えば、
図4に示されるディスプレイ240で)画像の表示は、
図14に示されるように、画像遅延時間と命令及び制御信号遅延時間を表示するように構成されてもよい。
【0111】
図14において、ディスプレイ1100は、再生画像1102及びライブ画像1104を含む。ライブ画像の表示は、ロボット制御医療デバイスシステムから制御コンソールへの伝送画像の遅延1106(image delay)の表示と、制御センターからロボット制御医療デバイスシステムへの命令及び制御信号の遅延1108(command delay)とを含んでいる。別の実施例では、リモートサイトにおける(例えば、
図4に示されるディスプレイ240で)画像の表示は、
図15に示されるように、合計遅延を表示するように構成されてもよい。合計遅延は、画像遅延時間と命令及び制御信号遅延時間との合計である。別の例では、合計遅延は、ディスプレイ240で、ドロップダウンオーバーレイとして表示されてもよい。
【0112】
図15において、ディスプレイ1200は、再生画像1202とライブ画像1204とを含み、そのライブ画像は、合計遅延、及びローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム204に付随した撮像システムによって取得された画像に関するフレームレートなどの、処置に関する追加のライブ情報を含み得る。少なくとも一つの実施例において、画像が取得された後に、再生画像1202を対象領域へスクロールすることができる。ライブ画像1204の表示は、合計遅延1206(total delay)とフレームレート1208(frame rate)の表示を含む。フレームレート1208は、毎秒の受信フレーム数を単位として計算し得る。合計遅延1206及びフレームレート1208は、リアルタイムで更新し及び/又はこれらの値のビューアでの知覚を向上させるために適切な帯域幅へフィルタリングすることができる。
【0113】
図4に関して上述したように、通信手段及び制御システム200は、リモートサイトの操作者(例えば、医師)が、ローカルサイトのロボット制御医療デバイスシステム204を制御し作動させることができるように構成されている。システム200はまた、ロボット制御医療デバイスシステム204を制御し作動させることをローカルサイトの操作者が行えるようにも構成されている。制御センター202又はロボット制御医療デバイスシステム204のどちらがロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権を有するかを管理するために、制御管理プロセスが提供される。制御管理プロセスは、例えば、リモートサイトとローカルサイトとの間のデッドロックを防止するように構成される。少なくとも一つの実施例において、制御トークンが、制御センター202又はロボット制御医療デバイスシステム204のどちらが処置を実施する作動制御権をもつのかを決定するために使用される。制御トークンは、ソフトウェアで実装された仮想トークンである。制御トークンを保有するシステム(例えば、制御センター202又はロボット制御医療デバイスシステム204のいずれか)に、ロボット制御医療デバイスシステム204のロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御権が与えられ、そして、他方のシステムは無効とされ、ロボット制御システム245及び医療デバイス246の制御から外される。第1の状態において、制御トークンは「フリー」であり、制御センター202又はロボット制御医療デバイスシステム204のいずれかによって利用可能である。
【0114】
実施例に係る
図11は、制御センター又はロボット制御医療デバイスシステムのいずれもロボット制御医療デバイスを制御していない場合のユーザインタフェースの例を示す。グラフィカルユーザインタフェース802,804は、一例のカテーテル処置システム(例えば、
図2及び
図3に示されるカテーテル処置システム100)の制御に関し示されている。制御トークンが「フリー」の場合、ロボット制御医療デバイスシステムは制御トークンを保有しておらず(Without Token)、該ロボット制御医療デバイスシステムは、例えば、ロボット制御医療デバイスシステムのグラフィカルユーザインタフェース802にある「Enable All」のボタンを操作することによって制御トークンを取得し、制御権を得ることができる。制御センターも制御トークンを保有しておらず(Without Token)、例えば、制御センターのグラフィカルユーザインタフェース804にあるロボット制御医療デバイスシステムに対する「RCL Disabled」ボタンを操作することによって制御権を取ることが可能になる。少なくとも一つの実施例では、グラフィカルユーザインタフェース804の「Enable All」ボタンは、例えば、ボタンのテキスト及び背景がグレー表示されるなど、制御センターが制御権をもっていないことを示す背景又は色で示される。
【0115】
第2の状態において、制御トークンは、ロボット制御医療デバイスシステム204により保有されている。
【0116】
実施例に係る
図12は、ロボット制御医療デバイスシステムがロボット制御医療デバイスを制御している場合のユーザインタフェースの例を示している。グラフィカルユーザインタフェース902,904は、一例のカテーテル処置システム(例えば、
図2及び
図3に示されるカテーテル処置システム100)の制御に関し示されている。制御トークンがロボット制御医療デバイスシステムにより取得された場合、該ロボット制御医療デバイスシステムに制御権が与えられ、ロボット制御医療デバイスを作動させるために使用され得る。
【0117】
図12において、ロボット制御医療デバイスシステムが制御トークンを保有して制御権を取得した場合、ロボット制御医療デバイスシステムのグラフィカルユーザインタフェース902において(With Token)、「Enable All」ボタンが無効にされると共に「Disable All」に変更される。操作者は、その「Disable All」ボタンを操作することにより、制御トークンを「フリー」に戻すことができる。制御センターのグラフィカルユーザインタフェース904では(Without Token)、ロボット制御医療デバイスシステムの「Disabled」ボタンが無効にされる。一実施例では、グラフィカルユーザインタフェース904において「Enable All」ボタン及び「RCL Enabled」ボタンが、例えば、ボタンのテキスト及び背景がグレー表示されるなど、制御センターが制御権をもたないことを示す背景又は色で表示される。
【0118】
第3の状態において、制御トークンは制御センター202が取得している。実施例に係る
図13は、制御センターがロボット制御医療デバイスを制御している場合のユーザインタフェースの例を示す。グラフィカルユーザインタフェース1002,1004は、一例のカテーテル処置システム(例えば、
図2及び
図3に示されるカテーテル処置システム100)の制御に関し示されている。制御センターが制御トークンを保有している場合、制御センターに制御権が与えられ、ロボット制御医療デバイスを作動させるべく使用され得る。
【0119】
図13において、制御センターが制御トークンを保有して制御権を取得している場合、制御センターのグラフィカルユーザインタフェース1004において(With Token)、「Enable All」ボタンが有効にされる。さらに、制御センターのグラフィカルユーザインタフェース1004において、「RCL Disabled」が有効にされる。一実施例では、グラフィカルユーザインタフェース1004の「RCL Disabled」ボタンは、制御センターが制御権を有することを示すハイライト、背景、又は色で表示される。例えば、グラフィカルユーザインタフェース1004は、「RCL Disabled」に下線を付した状態で表示される。別の実施例では、「RCL Disabled」ボタンが緑色などの色付きで表示される。ロボット制御医療デバイスシステムのグラフィカルユーザインタフェース1002では(Without Token)、「Enable All」ボタンが無効になり、ロボット制御医療デバイスシステムが制御権を得ることはできなくなる。一実施例では、グラフィカルユーザインタフェース1002の「Enable All」ボタンは、例えば、ボタンの文字及び背景がグレー表示されるなど、ロボット制御医療デバイスシステムが制御権をもっていないことを示す背景又は色で表示される。
【0120】
一実施例において、制御センター又はロボット制御医療デバイスシステムのどちらかが制御トークンを保有する場合の第2及び第3の状態では、制御トークンをもたないサイトが、要求トークン又は強制要求トークンを保有することができる。要求トークン又は強制要求トークンは、ソフトウェアで実装された仮想トークンである。要求トークン及び強制要求トークンは、制御権を要求するために、又は、制御権の変更を強制するために、使用され得る。例えば、制御センターが制御トークンを有する場合、ロボット制御医療デバイスシステムは、制御センターへ要求トークンを送って、制御トークンを「フリー」にすることを要求し、ロボット制御医療デバイスシステムが制御トークンを得られるようにすることができる。制御センターは、要求トークンの受信に応答して、例えば、制御トークンを「フリー」にするか、制御トークンを維持することを選択するか、又は、制御トークンを一時中止して維持することができる。別の例では、制御センターが制御トークンを有する場合に、ロボット制御医療デバイスシステムが強制要求トークンを制御センターへ送って、制御トークンを「フリー」にすることを要求し、ロボット制御医療デバイスシステムが制御トークンを得られるようにすることができる。強制要求トークンに応答する制御センターは、例えば、制御トークンを「フリー」にするか、制御トークンを維持することを選択するか、又は、制御トークンを一時中止して手放すことができる。
【0121】
図3及び
図4に関して上述したように、複数の制御センター202がネットワーク206を介して複数のロボット制御医療デバイスシステム204と通信する(例えば、多対多構成)ことも可能である。
【0122】
図16は、実施例に係る複数の制御センター及び複数のロボット制御医療デバイスシステムの多対多構成のブロック図である。
【0123】
図16において、第1の制御センター1302、第2の制御センター1304、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306、及び第2のロボット制御医療デバイスシステム1308が、ネットワーク1350を介して通信する。一実施例では、各サイト(すなわち、第1の制御センター1302、第2の制御センター1304、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306、及び第2のロボット制御医療デバイスシステム1308)は、別々の場所にあるか、互いに離れて位置している。第1の制御センター1302は第1のリモートサイトにあり、第2の制御センター1304は第2のリモートサイトにあり、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306は第1のローカルサイトにあり、第2のロボット制御医療デバイスシステム1308は第2のローカルサイトにある。第1の制御センター1302は、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306又は第2のロボット制御医療デバイスシステム1308のいずれかを制御するために使用され得る。第2の制御センター1304は、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306又は第2のロボット制御医療デバイスシステム1308のいずれかを制御するために使用され得る。
【0124】
第1の制御センター1302は、第1のリモートファイアウォール1310を含み、第2の制御センター1304は、第2のリモートファイアウォール1312を含み、第1のロボット制御医療デバイスシステム1306は、第1のローカルファイアウォール1314を含み、第2のロボット制御医療デバイスシステム1308は、第2のローカルファイアウォール1316を含む。第1のリモートファイアウォール1310は第1のリモートコントローラ1318に接続され、第2のリモートファイアウォール1312は第2のリモートコントローラ1320に接続され、第1のローカルファイアウォール1314は第1のローカルコントローラ1322に接続され、第2のローカルファイアウォール1316は第2のローカルコントローラ1324に接続される。第1のリモートファイアウォール1310は、LANポート1334及びWANポート1336を含む。第2のリモートファイアウォール1312は、LANポート1332及びWANポート1330を含む。第1のローカルファイアウォール1314は、LANポート1340及びWANポート1338を含む。第2のローカルファイアウォール1316は、LANポート1326及びWANポート1328を含む。
【0125】
各ファイアウォール1310,1312,1314,1316は、他のサイトとセキュア接続を確立し、その他のサイトとのセキュア接続を解除するように構成されている。好ましくは、セキュア接続を確立し、セキュア接続を解除する制御及び管理は、各ファイアウォールによって自動的に処理され、各サイトの他のハードウェア及びソフトウェア機能とは別個に保持される。少なくとも一つの実施例では、コマンドラインインタフェース(CLI)及びセキュアシェル(SSH)プロトコルが、2つのサイト間のセキュア接続を確立するために使用される。この実施例では、各ファイアウォール1310,1312,1314,1316が固有の静的IPアドレスを有する。以下の説明は、第2の制御センター1304と第2のロボット制御医療デバイスシステム1308との間のセキュア接続を確立することについて述べるが、ここに説明する方法は、多対多構成におけるあらゆるサイトの組み合わせの間に接続を確立し、そして解除するために使用され得る。少なくとも一つの実施例において、中央集中化アプローチが用いられる。中央集中化アプローチでは、第2の制御センター1304のWANポート1330及び第2のロボット制御医療デバイスシステム1308のWANポート1328が、SSHログインのために開かれている。この構成において、両サイト(例えば、第2の制御センター1304及び第2のロボット制御医療デバイスシステム1308)は、そのローカルファイアウォールのLANポート及び他方のサイトのWANポートを介してトンネルを生成することができる。例えば、第2のロボット制御医療デバイスシステム1308の第2のローカルコントローラ1324は、第2のローカルファイアウォール1316のローカルLANポート1326でSSHを可能にすることができ、第2のローカルコントローラ1324は、第2の制御センター1304の第2のリモートファイアウォール1312のWANポート1330でSSHを可能にしてトンネルを確立することができる。別の中央集中化アプローチの例では、第2の制御センター1304の第2のリモートコントローラ1320が、第2のロボット制御医療デバイスシステム1308の第2のローカルファイアウォール1316のWANポート1328でSSHを可能にすることができ、第2の制御センター1304の第2のリモートコントローラ1320が、第2のリモートファイアウォール1312のローカルLANポート1332でSSHを可能にすることができる。
【0126】
別の実施例では、分散化アプローチが使用される。分散化アプローチの場合、第2の制御センター1304のWANポート1330及び第2のロボット制御医療デバイスシステム1308のWANポート1328は、SSHログインを可能にしない。この実施例では、各サイトは、WANポートが強化セキュリティのためにSSHログインを閉鎖したままにできるように、それぞれのローカルファイアウォールのLANポートを利用して対応するトンネル接続を立ち上げる。例えば、第2のローカルコントローラ1324は、LANポート1326でSSHを可能にし、第2のリモートコントローラ1320は、LANポート1332でSSHを可能にする。
【0127】
別の実施例では、物理的に直接の配線がパッチパネルでサイト(又はノード)の全ての間に使用されるパッチパネルダイレクトルーティングを用いて、セキュア接続が確立される。特定のサイトに接続する必要がある場合、接続されているポートが切り替わることがある。
【0128】
一実施例では、全てのサイト(又はノード)に2つの静的IPアドレスを使用することによって、セキュア接続が確立される。同じ2つの静的IPアドレスが、サイトの全てのルータでリザーブされる。サイトは、使用されているときにシステムに(ユーザーによって)接続され、使用されていないときにイーサネットポートから(ユーザーによって)外されるだけである。
【0129】
別の実施例では、全てのサイト(又はノード)に対して同じ静的IPアドレスを使用して、セキュア接続が確立される。静的IPアドレスとイーサネットポートマッピングは、ルータで手動で再構成できる。
【0130】
別の実施例では、2つのファイアウォール間に確立されたセキュアトンネルが、例えばIPSecトンネルのようなセキュア仮想プライベートネットワークである。IPSecトンネルを確立するために、一例において、第1の制御センター1302と第1のロボット制御医療デバイスシステム1306が、共有キーを有する。第1のロボット制御医療デバイスシステム1306の第1のローカルファイアウォール1314は、第1の制御センター1302の第1のリモートファイアウォール1310を指すトンネルを立ち上げる。次に、第1のリモートファイアウォール1310が、第1のローカルファイアウォール1314を指すトンネルを立ち上げる。この例では、どちらのサイトも、SSHログインを許可するためにそのWANポートを開くことはない。別の例では、IPSecトンネルを確立するために、第1のローカルファイアウォール1314がSSHログオンを可能にする。第1のリモートファイアウォール1310は、SSHを使用して第1のローカルファイアウォール1314にログオンする。次に、第1のリモートファイアウォール1310は、第1のリモートファイアウォール1310を指すように第1のローカルファイアウォール1314のトンエルエンドを立ち上げる。第1のリモートファイアウォール1310は、そのトンネルを第1のローカルファイアウォール1314に向ける。第1のリモートファイアウォール1310は、次に、両方のサイトのキーを決定することができる。一実施例では、全てのローカル及びリモートサイトがそれらのネットワーク位置を認識するような事前ネットワークトポロジマップがある。
【0131】
別の実施例では、多対多構成における複数システム及び接続の管理が、クラウドコンピューティングを使用して行われる。例えば、クラウドベースインフラストラクチャ管理ソリューションを使用して、各サイト(又はノード)のファイアウォールを管理できる。各ファイアウォール(例えば、
図16に示す第1のリモートファイアウォール1310、第2のリモートファイアウォール1312、第1のローカルファイアウォール1314、及び第2のローカルファイアウォール1316)は、インターネット及び管理のために使用されるクラウドに接続される。クラウドベースの管理により、いずれかのサイトの操作者、又は各サイトから離れた場所の操作者が、ファイアウォールを監視し管理することができる。
【0132】
一つ以上の実施例により、システムの安定性を維持すると共に、例えば、制御信号(動作命令を含む)及び画像の伝送における遅延及び/又はジッタによって引き起こされるロボット制御医療デバイスの一定の最大オーバートラベルを制限し及び/又は維持するように構成された、リモート医療デバイスシステム、方法、及び/又は非一時的コンピュータ可読記憶媒体も提供される。オーバートラベル(ここではオーバートラベル距離ともいう)は、患者におけるロボット制御医療デバイスの実際の(又は予定の)位置と、リモート制御センターにおけるロボット制御医療デバイスのユーザ知覚(又は表示された)位置との間の距離(違い)を意味する。
【0133】
オーバートラベルは、画像フィードバック及び/又はロボット制御医療デバイスへの速度(動作)命令(例えば、直線及び/又は回転)が遅延する状況において、ロボット制御医療デバイスの予定位置でループをユーザが閉じる結果であり得る。
【0134】
一つ以上の実施例により、例えば、制御センターとロボット制御医療デバイスシステムとの間の制御信号及び画像の伝送における遅延及び/又はジッタに起因する合計遅延とは無関係に、ステップ応答の一定又は実質的に一定のパーセントオーバーシュートを維持するように構成されたロボット制御医療デバイスシステム、方法、及び/又は非一時的コンピュータ可読記憶媒体も提供される。
【0135】
以下で説明する実施例によると、ロボット制御医療デバイスシステムは、細長い医療デバイス(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーンカテーテル、マイクロカテーテルなど)の動き、作動を制御するカテーテル処置システムであり得る。すなわち、ロボット制御医療デバイスは、1つ以上の細長い医療デバイスで、それらの各々が直線動作及び/又は回転動作するものであり得る。直線動作と回転動作は、別々に、並行して、又は同時に行われ得る。分かりやすくするために、ロボット制御医療デバイスに関して実施例で説明する。
【0136】
別々に説明するが、ここで説明される実施例の態様は組み合わせてもよい。
【0137】
図4に示される通信手段及び制御システム200に戻って、実施例によれば、ローカル命令及び制御モジュール214は、例えば軸方向(直線方向)又は回転方向の要求速度(速度命令又は命令速度)を、速度制御関数G(T
delay)を適用することによって、減衰させ、医療デバイス246の動作を制御することができる。一実施例では、速度制御関数G(T
delay)は、0と1の間(0<G(T
delay)≦1)の数値をとる合計遅延T
delayの非線形関数であり得る。他の例では、速度制御関数G(T
delay)は0と2の間(0<G(T
delay)≦2)の数値をとり得る。ただし、実施例がこれらの例に限定されるべきではない。
【0138】
速度制御関数G(Tdelay)は、リスク軽減の観点から最大オーバートラベルを制限することに基づいて決定され得る。
【0139】
合計遅延Tdelayは、以下の式(5)で与えられる、命令遅延Tcommandと画像フィードバック遅延Timageの合計である。
(5)
Tdelay=Tcommand+Timage
【0140】
少なくともこの実施例では、命令遅延Tcommandは、制御センター202からロボット制御医療デバイスシステム204への命令及び制御信号の伝送における遅延又はレイテンシを指す。上述したように、一実施例において、ローカル命令及び制御モジュール214は、リモート命令及び制御モジュール212からの命令及び制御信号に提供されたタイムスタンプに基づいて命令遅延Tcommandを測定することができる。例えば、命令遅延Tcommandは、制御センター202においてユーザが命令を発した時間とロボット制御医療デバイスシステム204で命令を受信した時間との差分として計算することができる。
【0141】
画像フィードバック遅延Timageは、ロボット制御医療デバイスシステム204から制御センター202へ、リモートユーザに表示(例えば、ディスプレイ240で及び/又はメモリに記憶)するために送られる画像及び/又は血行動態データの伝送に関する遅延又はレイテンシを指す。画像フィードバック遅延Timageは、画像及び/又は血行動態データを含み得るが、簡潔にするために、画像データに関して実施例を説明する。
【0142】
一例において、画像フィードバック遅延Timageは、リモート命令及び制御モジュール212で計算され、合計遅延Tdelayを計算するためにローカル命令及び制御モジュール214へ信号が送られる。別の実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214が、上述したように又は各種の適切な方法で(例えば、伝送時間情報及びローカル命令及び制御モジュール214での受信確認(アクノレッジ)情報に基づいて)、画像データの往復遅延を測定することができる。別のより具体的な例では、画像フィードバック遅延Timageは、画像フレームがキャプチャされた時間(Tpatientside)(例えば、タイムスタンプを介して示される)と、キャプチャされた画像フレームが制御センター202で受信された時間(Tcontrolside)との間の差として計算される。
【0143】
少なくとも一つの他の実施例において、合計遅延Tdelayは、次のように計算される。
【0144】
ローカル命令及び制御モジュール214は、画像フレームキャプチャ時間Tfを記録する。これは、画像フレームが患者側でキャプチャされた時間を示す(例えば、タイムスタンプを介して)。次いで、ローカル命令及び制御モジュール214は、キャプチャされた画像フレームと共に画像フレームキャプチャ時間Tfを制御センター202に送る。そして、制御センター202は、完全な画像フレームパッケージの受領までローカル命令及び制御モジュール214へ、(例えば、次回又はさらにその後の)命令パッケージフレーム(命令及び制御信号又は配信を含む)の一部として画像フレームキャプチャ時間Tf含める。次に、ローカル命令及び制御モジュール214は、命令パッケージフレーム(画像フレームキャプチャ時間Tfを含む)が受信された命令受信時間Tcと時間Tfとの差分として合計遅延Tdelayを計算する(すなわち、Tdelay=Tc-Tf)。
【0145】
命令遅延Tcommand又は画像フィードバック遅延Timageの1つ以上は、制御センター202とロボット制御医療デバイスシステム204との間のネットワーク遅延及び/又はジッタの結果であり得る。
【0146】
少なくとも一つの実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214は、制御センター202から受信された命令及び制御信号に含まれている命令速度vcommandに速度制御関数G(Tdelay)を適用して、ロボット制御医療デバイス246を動作させるデバイス速度vdeviceを得る。したがって、ローカル命令及び制御モジュール214は、命令速度vcommand及び速度制御関数G(Tdelay)に基づいて、時点tでロボット制御医療デバイス246を動作させるデバイス速度vdevice(t)を取得又は設定することができる。少なくとも一つの実施例において、1未満の値をとる場合の速度制御関数G(Tdelay)の適用は、ロボット制御医療デバイス246の一定又は実質的に一定の最大オーバートラベルを制限及び/又は維持する必要があるときに、命令速度vcommandを減衰及び/又は減少させる。
【0147】
例えば、ジョイスティックを用いて速度命令を送る場合、ユーザは[-vmax,vmax]の範囲の直線速度及び/又は回転速度を命令する。非補償遅延制御の下では、場合によって、速度制御関数G(Tdelay)=1であると仮定される。一実施例において、ガイドワイヤの直線動作(前進又は後退)に関する最大命令速度vmaxは、「ノーマル」モードで約12mm/s、「ターボ」モードで約60mm/sである。回転動作の場合は、一例において、最大命令速度vmaxが毎秒約360度である。
【0148】
別の例では、ガイドカテーテルの直線動作(前進又は後退)に関する最大命令速度vmaxは、約24mm/秒である。回転動作の場合は、一例において、最大命令速度vmaxは1秒あたりの回転数(例えば、毎秒約0.5回転など)の単位である。
【0149】
ここで説明する速度制御関数G(Tdelay)は、速度調節関数、速度制約関数、又は速度減衰関数とも呼び得る。
【0150】
速度制御関数G(Tdelay)について、実施例に従い以下に詳述する。
【0151】
ナイキスト安定判別法が、既知の(例えば、算出した)命令遅延Tcommand及び画像フィードバック遅延Timageの下でナイキスト安定性を維持するために使用される。この判別法において、ループ内のユーザ(例えば、制御センター202で命令を提供するユーザ)が、時点tにおいて、ロボット制御医療デバイス246を動作させるための命令速度vcommand(t)を提供していると仮定する。このときの命令速度vcommand(t)は、予定デバイス位置rdesired(t)と、制御センター202のユーザへのロボット制御医療デバイス246の遅れたフィードバック位置xdevice(t-Timage)とにある差に比例する。この例における遅れたフィードバック位置xdevice(t-Timage)は、時点(t-Timage)におけるロボット制御医療デバイス246の位置である。
【0152】
ローカル命令及び制御モジュール214は、速度制御関数G(Tdelay)∈[0,∞]を適用することによって、制御センター202からの遅延した命令速度vcommand(t-Tdelay)を減衰させる。ここで、Tdelay=(Timage+Tcommand)である。これにより、時点tにおけるロボット制御医療デバイス246の速度vdevice(すなわち、vdevice(t))が、以下に示す式(6)によって与えられる。
(6)
vdevice(t)=G(Tdelay)(rdesired(t-Tcommand)-xdevice(t-(Timage+Tcommand)))
=G(Tdelay)vcommand(t-Tdelay)
【0153】
式(6)において、rdesired(t-Tcommand)は、ロボット制御医療デバイス246の時点(t-Tcommand)における予定の位置であり、xdevice(t-(Timage+Tcommand))は、時点(t-(Timage+Tcommand))=(t-Tdelay)におけるロボット制御医療デバイス246の位置である。したがって、時点tにおけるロボット制御医療デバイス246の速度vdevice(t)は、速度制御関数G(Tdelay)、予定の(又は想定の)デバイス位置rdesired(t-Tcommand)、及び時点(t-(Timage+Tcommand))における実際のデバイス位置xdevice(t-(Timage+Tcommand))に基づいて測定される。時点tにおけるロボット制御医療デバイス246のデバイス速度vdevice(t)は、速度制御関数G(Tdelay)と、ローカル命令及び制御モジュール214で受信される遅延した命令速度vcommand(t-Tdelay)とに基づいて決定されることで特徴付けられもする。後述するように、一実施例では、許容遅延閾値tacceptable以上の合計遅延Tdelayに対して、時点tにおけるロボット制御医療デバイス246のデバイス速度vdevice(t)は、0と1の間の値をとる速度制御関数G(Tdelay)に基づいて、遅延した命令速度vcommandを減衰(あるいは、調節)することによって決定される。一方、合計遅延Tdelayが許容遅延閾値tacceptable未満の場合、速度制御関数G(Tdelay)は1の値をとり、遅延した命令速度vcommand(t-Tdelay)は減衰されない。
【0154】
一つ以上の実施例によるロボット制御医療デバイスシステムでは、合計遅延T
delayに関して、以下に式(7)で示すように、フォワードループ伝達関数H(s)を利用して、システムのナイキスト安定性を判別することができる。
(7)
【0155】
ロボット制御医療デバイスシステムには不安定極がまったく含まれていないので、以下に示す式(8)が安定性に必要かつ十分な条件である。
(8)
【0156】
結果として、次の関数は、本システムのナイキスト安定性を満たす。
【0157】
上述の関数はここで説明するが、他の関数も制約を満たす可能性がある。例えば、固定位相マージンφが望まれる場合(例えば、固定フィードバック遅延で相対的に又は実質的に一定のステップ応答を保証するために)、速度制御関数G(T
delay)は、以下に示す式(9)によって与えられる。
(9)
【0158】
この場合、φ=π/4及びG(Tdelay)=π/(4Tdelay)であるように、45度の一定の位相マージンを選んでもよい。
【0159】
一実施例によると、速度制御関数G(T
delay)は、1より大きい値をとることができる。このような場合には、パフォーマンスが満足されるように、速度制御関数G(T
delay)に他の制約を加えることもできる。この追加の制約は、ユーザによって追加及び/又は選択され得る。一実施例では、追加の制約は、速度制御関数G(T
delay)が、所定の時点における合計遅延T
delayに従って違う値に設定される(及び命令速度の減衰が異なる)ように、合計遅延T
delayに基づく。速度制御関数G(T
delay)に追加の制約を加えた例を式(10)に示す。
(10)
【0160】
この例では、速度制御関数G(Tdelay)の上限を、低めの遅延の定数(例えば、0≦Tdelay<(π/8)Sの場合の2又は1)に下げることが、例えば、G(Tdelay)が1であるときにシステム性能が満足に感じられるというように、実用上有用である。
【0161】
式(10)は、位相マージンが特定されることを説明し、遅延選択に対応する、比較的簡単な例であり、区分的連続関数が結果として生じる。一例において、遅延がπ/8である場合にゲインが2である。式(10)は全体的な安定性に基づいており、上記の式(9)で区切られる。
【0162】
式(10)における制約は、それぞれT
delay={0,0.5,1.0,1.5}で速度制御関数G(T
delay)={2,π/2,π/4,π/6}の場合に、
図19に示すステップ応答を提供する。
図19はまた、公称ゲイン(例えば、速度制御関数G(T
delay)の値)が1.5秒の合計遅延(T
delay=1.5s)の場合に1.0のままであるときのステップ応答も示している。
【0163】
図19に示されるように、減衰がなければ、ロボット制御医療デバイスシステムは、G(T
delay)=1の直結フィードバックで、最大合計遅延に達するにつれてほぼ不安定である。しかしながら、これも
図19に示されるように、速度制御関数G(T
delay)が一定の位相マージンを保つので、オーバーシュートは、ステップ応答設定時間の増加で(ステップ応答設定時間の変化とは関係なく)一定に維持される。
【0164】
一つ以上の実施例によれば、速度制御関数G(T
delay)は、さらに、式(11)に示されるように、システムに注入されるエネルギーを制限しながら、システムの好ましい安定性と好ましい位相マージンに関する性能制約の両方を満たすように、制約される。
(11)
【0165】
式(11)に示す例では、速度制御関数G(Tdelay)は、許容遅延閾値tacceptable以上であるが最大遅延閾値tdisableよりは小さい合計遅延Tdelay(tacceptable≦Tdelay<tdisable)に応じて命令速度vcommandが減衰されるように、許容遅延閾値tacceptableによってさらに制約される。ここで説明されるこの条件は、「中間レイテンシ条件」と呼び得る。
【0166】
最大遅延閾値tdisable(無効又は最大レイテンシ閾値とも呼ぶ)は、ユーザからの命令(例えば、動作命令)が有効化され得る最長時間であり得る。例えば、最大遅延閾値tdisableは、約1.0秒(1000ミリ秒)である。ただし、実施例がこの例に限定されるべきではない。ここで説明する場合、合計遅延Tdelayが最大遅延閾値tdisable以上である状態を「高レイテンシ条件」と呼び得る。
【0167】
別の例では、以下の式(12)に示されるように、デバイス速度v
device(t)が、ユーザがロボット制御医療デバイス246をゼロ動作(無動作)に戻そうとした場合に、0より大きいオーバートラベル(x
overtravel>0)に関して最大の距離変化のみが生じるように、さらに制約される。
(12)
【0168】
この場合、速度制御関数G(Tdelay)の値は、さらに、合計遅延Tdelayと最大命令速度vmaxとの積に対する最大オーバートラベル距離xmax_overtravelの比率に基づいており、tacceptableとtdisableとの間の合計遅延Tdelayの場合に、速度制御関数G(Tdelay)の値が最小の1,(π-2φ)/2Tdelay及びxmax_overtravel/Tdelayvmaxであることにより、ユーザがロボット制御医療デバイス246を停止させる(ゼロ動作に戻す)ときに最大オーバートラベル距離のみが発生するようにデバイス速度vdeviceをさらに制約する。最大オーバートラベル距離はユーザにより選択可能である。
【0169】
最大オーバートラベル距離x
max_overtravelが許容遅延閾値t
acceptableと最大命令速度v
maxに基づいている場合(x
max_overtravel=t
acceptablev
max)、速度制御関数G(T
delay) が、t
acceptable≦T
delay<t
disablesの場合に最小値の1,(π-2φ)/2T
delay,t
acceptable/T
delayであるように、式(12) を以下の式(13) のように書き直すことができる。
(13)
【0170】
一例では、ロボット制御医療デバイスがガイドワイヤであり、直線又は軸方向動作の場合、tacceptable=400ms及びvmax=12mm/s(ノーマルモード)であり、最大オーバートラベル距離xmax_overtravel=tacceptablevmax=4.8mmである。tacceptable=400ms及びvmax=60mm/s(ターボモード)で、最大オーバートラベル距離xmax_overtravel=tacceptablevmax=24mmである。
【0171】
ロボット制御医療デバイスがガイドワイヤである場合の回転動作に関して、tacceptable=400ms、vmax=360度/sで、最大オーバートラベル距離xmax_overtravel=tacceptablevmax=144度である。
【0172】
一実施例では、ロボット制御医療デバイスがガイドカテーテルであり、直線又は軸方向動作の場合、tacceptable=400ms及びvmax=24mm/sで、最大オーバートラベル距離xmax_overtravel=tacceptablevmax=9.6mmである。
【0173】
ロボット制御医療デバイスがガイドカテーテルである場合の回転動作に関しては、tacceptable=400ms及びvmax=0.5回転/sで、最大オーバートラベル距離xmax_overtravel=tacceptablevmax=0.2回転である。
【0174】
一つ以上の実施例によれば、安定性判別を用いて、安定性を保証するために必要かつ十分な条件が提供されている。これらの条件で、速度制御関数G(Tdelay)の値が1.0より大きくなる場合がある。
【0175】
実施例を利用することによって、システムの安定性をなお維持しながら追加エネルギーを導入することができる。
【0176】
加えて、システムに追加エネルギーを導入することなく、また、ユーザがロボット制御医療デバイスの動作を中断(停止)すべきである最大可能オーバートラベルを許すことなく、システムの安定性を満足するために知覚可能な遅延に基づいて堅固な距離制約を利用することができる。
【0177】
上述した速度制御関数に基づいて、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムの作動を制御する方法を、
図17及び
図18に示すフローチャートと共に説明する。
【0178】
例示を目的として、
図17及び
図18に示される実施例は、
図1~
図4に示されるシステム及びコンポーネントに関して説明される。さらに言えば、場合によって、カテーテル処置システム(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーンカテーテル、マイクロカテーテルなどの細長い医療デバイスの動き、作動を制御するカテーテル処置システム)であるロボット制御医療デバイスシステムに関して実施例を説明する。しかしながら、実施例は、この例に限定されるべきではない。さらに、少なくともいくつかの例で、ロボット制御医療デバイスの直線(又は軸方向)速度(前進又は後退)に関して実施例が説明される。しかしながら、実施例が角スピード又は回転スピード及び/又は角速度又は回転速度に同様に適用可能であることは理解されるべきである。
【0179】
さらに、
図17及び/又は
図18に示される実施例は、ロボット制御医療デバイスシステム204のローカル命令及び制御モジュール214で行われるオペレーションに関して主に説明されるが、実施例はこの例に限定されるべきではない。そうではなく、実施例は、リモート命令及び制御モジュール212などの他のコンポーネントで実施されたり、制御センター202及び/又はロボット制御医療デバイスシステム204の各要素/コンポーネントに分散させることができる。例えば、
図17及び/又は
図18に示される実施例は、
図17及び/又は
図18に示される機能/作動の1つ以上を実行するロボット制御医療デバイスシステム204に関して同様に説明され得ることを理解すべきである。別の例では、
図17及び/又は
図18に示される実施例は、
図17及び/又は
図18に示される1つ以上の機能/作動を実行するように構成されたプロセッサ又はコントローラに関して説明され得る。この場合、当該プロセッサは、ロボット制御医療デバイスシステムに
図17及び/又は
図18に示される機能/作動の1つ以上を実行させるためにコンピュータ可読命令を実行するように構成される。
【0180】
例示を目的として、
図17及び
図18は、それぞれ、実施例に係る方法の反復を示している(例えば、停止命令までに受信される命令及び制御信号に対する応答において)。ただし、実施例は、この例に限定されるべきではない。
図17及び/又は
図18に示す方法は、ロボット制御医療デバイスシステムの作動に応じて設定されるだけ反復的及び/又は定期的に実行され得ることを理解すべきである。
【0181】
実施例に係る
図17は、ロボット制御医療デバイスシステムの作動を制御する方法を示すフローチャートである。
【0182】
図17を参照すると、S1702において、ローカル命令及び制御モジュール214は、制御センター202から命令及び制御信号を受信する。少なくとも一つの実施例において、命令及び制御信号は、動作命令(前進、後退、回転など)及び動作に関する要求速度(命令速度v
command)を含む。命令及び制御信号は、上述した信号と類似、同じ、又は実質的に同じである。
【0183】
S1704で、ローカル命令及び制御モジュール214は、命令及び制御信号の受信に応じて、合計遅延Tdelayを計算する。上述したように、ローカル命令及び制御モジュール214は、命令遅延Tcommand及び画像フィードバック遅延Timageの合計として、合計遅延Tdelayを計算する。
【0184】
S1706において、ローカル命令及び制御モジュール214は、合計遅延Tdelayが最大遅延閾値tdisableより大きいか(あるいは、それ以上であるか)を判断する。一例では、ローカル命令及び制御モジュール214は、合計遅延Tdelayを最大遅延閾値tdisableと比較することによって、合計遅延Tdelayが最大遅延閾値tdisableより大きいかどうかを判断する。
【0185】
ローカル命令及び制御モジュール214が、合計遅延Tdelayは最大遅延閾値tdisable以下である(あるいは、未満である)と判断した場合(N)、S1714において、ローカル命令及び制御モジュール214は、一つ以上の実施例に係る速度減衰でロボット制御医療デバイスシステム204を作動させる。一例では、命令速度vcommandは、合計遅延Tdelayに基づいて(選択的に)減衰される。
【0186】
少なくともいくつかの実施例によれば、ローカル命令及び制御モジュール214は、制御センター202から受信した命令及び制御信号に含まれる命令速度vcommandに上述した1つ以上の速度制御関数G(Tdelay)を適用して、命令及び制御信号に応じてロボット制御医療デバイス246を動作させるデバイス速度vdeviceを得ることにより、速度減衰(必要に応じて)でロボット制御医療デバイスシステム204を作動させる。一実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214は、上記の式(9)又は式(10)によって与えられる速度制御関数G(Tdelay)を適用することができる。
【0187】
図17を参照すると、ロボット制御医療デバイス246の動作中、S1718において、ローカル命令及び制御モジュール214で停止命令が受信された場合(Y)、S1720において、ローカル命令及び制御モジュール214は、ロボット制御医療デバイス246の動作を停止する。その後、プロセスの反復は終了する。
【0188】
一実施例では、上述同様に、停止命令は、ユーザがロボット制御医療デバイス246の動作をもはや要求していない(ジョイスチックが静止位置)というリモート命令及び制御モジュール212からの指示であってよい。別の例では、停止命令は緊急停止である。
【0189】
S1718に戻ると、ローカル命令及び制御モジュール214が停止命令を受信しなかった場合(N)、プロセスはS1704に戻り、ここで合計遅延Tdelayが再計算され、ここに説明するプロセスが続行される。
【0190】
図17のS1706で、合計遅延T
delayが最大遅延閾値t
disableを上回る(又はそれ以上)場合(Y)、S1710において、ローカル命令及び制御モジュール214は、ロボット制御医療デバイスシステム204のリモート作動を無効にする。次いでプロセスはステップS1718に進み、ここに説明するとおり継続する。
【0191】
一実施例では、S1710において、ローカル命令及び制御モジュール214は、医療デバイス246のリモート制御(及び可能ならその動作)とロボット制御医療デバイスシステム204の他のコンポーネントの(例えば、一時的に)一時停止又は停止を行う。
【0192】
ロボット制御医療デバイス204のリモート作動の無効化は一時的であり、リモート作動は、その間に停止命令が受信されていなければ、合計遅延Tdelayが最大遅延閾値tdisableを下回ることで再有効化(又は再開)できる。
【0193】
一実施例によれば、ロボット制御医療デバイスシステム204のリモート作動を無効にしているときに、ロボット制御医療デバイスシステム204の制御権が、ローカル制御コンソール238又はベッドサイドシステムに(例えば、上述のようにトークンの受け渡しを通じて)転送されることがある。この場合、ローカル命令及び制御モジュール214は、制御センター202に制御権を転送することによって、ロボット制御医療デバイスシステム204のリモート作動を再度可能にすることができる。
【0194】
図17に示す実施例では、速度制御関数G(T
delay)を命令速度v
commandに適用して、許容遅延閾値、これを越えるとパフォーマンスに影響するとしてユーザが遅延を認識する閾値、を特定せずに、デバイス速度v
deviceを決定する。しかし、他の実施例によれば、速度制御関数G(T
delay)は、システムに注入されるエネルギーの制限も行いつつ、好ましいシステム安定性及び所定の位相マージンに関する性能制約の両方を満足するように、許容遅延閾値t
acceptableを考慮することによって、さらに制約することができる。このような実施例について、
図18を参照して詳述する。
【0195】
実施例に係る
図18は、ロボット制御医療デバイスシステムの作動を制御する方法を示すフローチャートである。
【0196】
図18に示した実施例は、
図17に示した実施例と同様である。ただし、この方法は(例えば、上記の式(11)、式(12)、又は式(13)によって与えられる速度制御関数G(T
delay)の手法によって)、システムに注入されるエネルギーの制限も行いつつ、好ましいシステム安定性及び所定の位相マージンに関する性能制約の両方を満たすために、許容遅延閾値t
acceptableを考慮することによって、さらに制約される。簡潔にするために、
図17とは異なる
図18の部分のみを詳細に説明する。
【0197】
図18を参照すると、S1702において、ローカル命令及び制御モジュール214は、ローカルサイトにおいて、制御センター202から命令及び制御信号を受信する。
【0198】
S1704において、ローカル命令及び制御モジュール214は、
図17を参照して上述した同じ又は実質的に同じ方法で、命令及び制御信号の受信に応じて合計遅延T
delayを計算する。
【0199】
S1706において、
図17に示された実施例と同じ又は実質的に同じ方法で、ローカル命令及び制御モジュール214は、合計遅延T
delayが最大遅延閾値t
disableより大きい(あるいは、それ以上)かを判断する。
【0200】
この実施例では、ローカル命令及び制御モジュール214がS1706で合計遅延Tdelayは最大遅延閾値tdisable以下である(あるいは、それ未満)と判断した場合(N)、S1708で、ローカル命令及び制御モジュール214は、合計遅延Tdelayが許容遅延閾値tacceptable以上であるか否かを判断する。
【0201】
合計遅延Tdelayが許容遅延閾値tacceptableより小さい場合(N)、S1716において、ローカル命令及び制御モジュール214は、速度減衰なしでロボット制御医療デバイスシステムを作動させる(例えば、式(11)、式(12)、又は式(13)によって与えられるように、G(Tdelay)=1,0≦Tdelay<Tacceptables)。この場合、ローカル命令及び制御モジュール214は、命令及び制御信号において示された命令速度(vdevice=vcommand)でロボット制御医療デバイス246を動作させる。
【0202】
ステップS1718において、ローカル命令及び制御モジュール214が停止命令を受信した場合(Y)、次のS1720において、ローカル命令及び制御モジュール214は、ロボット制御医療デバイス246の動作を停止させる。その後、プロセスの反復は終了する。
【0203】
S1718に戻り、ローカル命令及び制御モジュール214が停止命令を受信しなかった場合(N)、プロセスはS1704に戻り、合計遅延Tdelayを再計算し、ここに説明するように続行する。
【0204】
S1708で、合計遅延Tdelayが許容遅延閾値tacceptable以上である(tacceptable≦Tdelay<tdisable)場合(Y)、S1714で、ローカル命令及び制御モジュール214は、一つ以上の実施例に従って、速度減衰でロボット制御医療デバイスシステム204を作動させる。次いで、本プロセスはS1718に進み、ここに説明するように継続する。
【0205】
一例では、S1714において、ローカル命令及び制御モジュール214は、式(11)に示す、G(Tdelay)=min{1,(π-2φ)/(2Tdelay)}を、S1702で制御センター202から受信した命令及び制御信号に含まれる命令速度vcommandに適用して、命令及び制御信号に応じてロボット制御医療デバイス246を動作させるデバイス速度vdeviceを得ることにより、ロボット制御医療デバイスシステム204を速度減衰で作動させる。
【0206】
別の例では、ローカル命令及び制御モジュール214は、式(12)によって与えられるG(Tdelay)=min{1,(π-2φ)/(2Tdelay),xmax_overtravel/(Tdelayvmax)}、又は、式(13)によって与えられるG(Tdelay)=min{1,(π-2φ)/(2Tdelay),tacceptable/Tdelay}を適用して、合計遅延Tdelayの変動とは無関係に、ロボット制御医療デバイスシステム204に関するステップ応答の実質的に一定の最大オーバートラベル及び/又はパーセントオーバーシュートを維持することによって、S1714でロボット制御医療デバイス246のデバイス速度vdeviceを決定し又は制御する。
【0207】
図18のS1706に戻ると、合計遅延T
delayが最大遅延閾値t
disableより大きい(又はそれ以上)である場合(Y)、S1710において、ローカル命令及び制御モジュール214は、
図17に関して上述した同じ又は実質的に同じ方法で、ロボット制御医療デバイスシステム204のリモート作動を無効にする。そしてプロセスはステップS1718に進み、ここに説明するように継続する。
【0208】
図20及び
図21は、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムのユーザインタフェースディスプレイの例を示している。
【0209】
図20及び
図21において、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイは、一例のカテーテル処置システムの制御のためである。
【0210】
図示のように、制御センターの(及び同様にロボット制御医療デバイスシステムの)グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000は、例えば、同じ測定値、速度、保存された設定、及び制御コンソールのどの制御機器がアクティブサイト(すなわち、一方のリモートサイトの制御センター)で操作されているか、を示す。
図20及び
図21には示されていないが、上述と同じ又は実質的に同じ方法で、各グラフィカルユーザインタフェースディスプレイは、ロボット制御医療デバイスシステム204から制御センター202へ伝送された画像及び合計遅延T
delayも表示することができる。
【0211】
図20を参照すると、レイテンシ条件が存在しない場合(例えば、T
delay<t
acceptable)、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000が制御センター202に(例えば、ディスプレイ240に又は制御コンソール236に)表示される。この場合、全ての駆動制御機器(デバイス、ガイドワイヤ、ガイドカテーテルなど)が、制御センター202においてユーザに利用可能である。グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000は、特に、上述した「Disable All」ボタンを含む。
【0212】
ロボット制御医療デバイス246の駆動制御機器には、ロボット制御医療デバイス246の前進又は後退の速さ(vcommand)を制御するための直線速度制御器20202が含まれる。一例では、直線速度制御器20202は、離散制御器(個別制御器)であり、この制御器により、ロボット制御医療デバイス246は、ボタンを押すごとに1mm移動する。しかしながら、実施例がこの例に限定されるべきではない。
【0213】
ガイドワイヤの駆動制御機器には、ガイドワイヤの前進又は後退を制御するための直線速度制御器20203と、ガイドワイヤの回転スピード及び回転方向を制御するための回転速度制御器20204とが含まれる。一例では、直線速度制御器20203は、離散制御器であり、この制御器によって、ガイドワイヤは、ボタンを押すごとに1mm移動する。同様に、回転速度制御器20204は、離散制御器であり、この制御器によって、ガイドワイヤは、ボタンを押すごとに225度回転する。しかしながら、実施例がこの例に限定されるべきではない。
【0214】
ガイドカテーテルの駆動制御機器には、直線速度制御器20206(例えば、前方及び後方に1mm移動させる離散制御器)と、位置メーター表示20208とが含まれる。
【0215】
図20を参照すると、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000は、直前のリセット値と比較した現在の相対測定位置(本例では125.8)と、最新の保存測定値(本例では34.7)も含む。
【0216】
高レイテンシ条件の発生(例えば、
図17及び/又は
図18のS1706におけるT
delay≧t
disable)に応じて、制御センター202でユーザに高レイテンシ(High Latency)ポップアップ2002が表示される。高レイテンシポップアップ2002は、ユーザインタフェースディスプレイ2000にオーバレイ表示され、現行のネットワークレイテンシが最大遅延閾値t
disable(本例で1秒)を超えたためにリモートコンソール制御機器が無効にされたことを表す。少なくとも一つの実施例によれば、高レイテンシポップアップ2002は、
図17及び/又は
図18のS1710におけるロボット制御医療デバイス246の動作停止及びリモートコンソ-ル制御機器の無効化を伴う。
【0217】
ユーザが高レイテンシ条件を確認すると(例えば、高レイテンシポップアップ2002において「OK」ボタンをクリックするか押すことによって)、高レイテンシポップアップ2002はクリアされる。
【0218】
高レイテンシポップアップ2002をクリアした後、高レイテンシ条件が完全に解消するまで(例えば、合計遅延Tdelayが最大遅延閾値tdisableを下回るまで)、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2004がユーザに表示される。図示のように、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2004は、コンソール制御機器が無効であることを示し、高レイテンシ条件インジケータ20040を含むこともできる。一旦解消すると、ロボット制御医療デバイスシステム204は、(例えば、手動で「ENABLE ALL」ボタンを押すことで)リモート制御機器を有効にすることができ、制御センター202のユーザは、ロボット制御医療デバイスシステム204を操作し続けることができる。
【0219】
一つ以上の実施例によると、高レイテンシポップアップ2002は、高レイテンシ条件の最初の(例えば、1番目の)発生に応答して立ち上がるが、その後は立ち上がらない。後続の高レイテンシ条件に応答するグラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000は、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2004に直接変わり、高レイテンシ条件とリモート制御機器の無効化を知らせる。
【0220】
ローカル制御コンソール238では、高レイテンシ条件の発生に応答して、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2006が、患者サイドのローカルユーザに表示される。図示のように、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2006は、リモートコンソール制御機器が無効にされたことを知らせる。
【0221】
図21を参照すると、中間レイテンシ(Medium Latency)条件(例えば、t
acceptable≦T
delay<t
disable)の発生に応じて、中間レイテンシポップアップ2100が制御コンソール236でユーザに表示される。この場合、中間レイテンシポップアップ2100は、中間レイテンシ条件発生中で、制御器(例えば、ジョイスティック)の感度が調節されていること及び/又はスケーリングされていること(例えば、速度制御関数の適用で命令速度を減衰させることを通して)を示す。ユーザが「OK」ボタンをクリックすることによって中間レイテンシ条件を認識すると、中間レイテンシポップアップ2100はクリアされ、制御センター202のユーザは、リモート制御用コンソール236からロボット制御医療デバイスシステム204を制御し続けることができる。
【0222】
中間レイテンシポップアップ2100をクリアした後、中間レイテンシ条件が完全に解消するまで(例えば、合計遅延T
delayが許容遅延閾値t
acceptableを下回るまで)、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2102がユーザに表示される。グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2102は、
図20に示すグラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2000と類似しているが、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2102は、中間レイテンシ条件が存在していることを知らせる中間レイテンシインジケータ21020をさらに含む点が異なる。解消後は、中間レイテンシインジケータ21020はクリアされる。
【0223】
図20に示した実施例と同様に、中間レイテンシポップアップ2100は、中間レイテンシ条件の最初の(例えば、1番目の)発生に応答して立ち上がるが、その後は立ち上がらない。後続の中間レイテンシ条件に応答して、中間レイテンシインジケータ21020を含むグラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2102がユーザに表示される。
【0224】
図21を参照すると、中間レイテンシ条件に応じて、グラフィカルユーザインタフェースディスプレイ2104が、ローカル制御コンソール238(患者サイド)でローカルユーザに表示される。ユーザインタフェース2104は、リモートコンソール制御機器が有効ではあるが、ジョイスティック感度が調節されている及び/又はスケーリングされていることを知らせる。
【0225】
図22~
図25は、実施例の様々な態様を例示するグラフである。
【0226】
実施例に係る
図22は、ロボット制御医療デバイスシステムのゲイン(利得)プロファイルの例を示すグラフである。この例では、G
2として印した式(11)、G
4として印した式(13)で与えられる速度制御関数G(T
delay)のゲインプロファイルを示す。
【0227】
図22に示すように、式(11)で与えられる速度制御関数G(T
delay)に関して、G
2として示してあり、合計遅延T
delayが約433ms(t
acceptable=433ms)に達するのに応じて命令速度の減衰又はスケーリングが開始される。式(13)で与えられる速度制御関数G(T
delay)に関して、G
4として示してあり、合計遅延T
delayが約400ms(t
acceptable=400ms)に達するのに応じて命令速度の減衰又はスケーリングが開始される。図示のように、いずれの場合も、速度のスケーリング又は減衰は非線形である。
【0228】
図23A~
図23Cは、T
delayの別々の値におけるロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答の例を示すグラフである。
【0229】
より詳細に
図23Aは、G
2として印す、式(11)によって与えられた速度制御関数G(T
delay)を適用するときの、T
delayの様々な値におけるロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答の例を示す。
【0230】
図23Bは、G
4として印す、式(13)によって与えられた速度制御関数G(T
delay)を適用するときの、T
delayの様々な値におけるロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答の例を示す。
【0231】
実施例(補償又は減衰なし)に係る
図23Cは、速度制御関数G(T
delay)を適用しない、T
delayの様々な値におけるロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答の例を示す。
【0232】
図23A及び
図23Bと
図23Cとの比較で分かるように、実施例に係る速度制御関数の適用は、合計遅延の増加でシステム安定性を維持する。
【0233】
実施例に係る
図24は、ロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答対合計遅延T
delayの応答時間の例を示すグラフである。この例では、G
2として印した式(11)及びG
4として印した式(13)で与えられる速度制御関数G(T
delay)の適用に対するステップ応答を、補償又は減衰なしのステップ応答を示すグラフ(G=1)と共に示している。図示のように、実施例に係るロボット制御医療デバイスシステムのステップ応答時間(t
response)は、実施例に係る速度制御関数の適用で、約400ms以上のT
delayに対して安定を示し、線形の増加を示す。
【0234】
図25は、合計遅延T
delayに対するステップ応答のオーバーシュートの例を示すグラフである。図示のように、補償のない又は減衰のないシステム(G=1)の場合、合計遅延T
delayが約400ms(t
acceptable=400ms)を超えた後は、合計遅延T
delayが継続的に増加すると、同時にパーセントオーバーシュート(Percent Overshoot)も増加する。この例では、その増加が非線形である。対照的に、G
2で示す式(11)及びG
4で示す式(13)によって与えられる速度制御関数G(T
delay)を利用することによって、パーセントオーバーシュートは、実質的に一定であるか(G
4の場合)又はわずかに増加し(G
2の場合)、したがって、合計遅延T
delayが約400ms(t
acceptable=400ms)を超えた後でも実質的に一定のままである。
【0235】
速度制御アルゴリズム(速度減衰アルゴリズムとも言う)が適用されるまでに、許容遅延(例えば、約400ms)の定義なしで一つ以上の実施例を利用することができる。
【0236】
実施例により、一定の又は実質的に一定の位相マージンを達成し(異なるステップ応答に対して一定の又は実質的に一定のオーバーシュートをもたらす)、安全のために最大オーバートラベルによるゲインをさらに制約するメカニズムが提供される。
【0237】
一つ以上の実施例によると、ゲインGは、制御システムの安定性の観点ではなくて、最大オーバートラベルを制限すること(例えば、リスク軽減の観点から)に基づいて計算される。一つ以上の実施例は、速度制御アルゴリズムを適用することができる場合(例えば、約400msから約1sの間)も定義する。
【0238】
第1、第2、などの用語を、種々の要素を説明するためにここで使用しているが、これらの要素がその用語によって制限されるべきではない。このような用語は、ある要素と他の要素を区別するためにのみ使用されている。例えば、開示範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と称することもでき、同様に、第2の要素を第1の要素と称することもできる。ここで使用されている用語「及び/又は」は、関連して列挙された項目の1つ以上のあらゆる組み合せを含む。
【0239】
要素が別の要素に「接続」されている、又は、「連結」されている、と言及してある場合、これは、別の要素に直接、接続又は連結されているか、又は、間に介在する要素が存在し得る。対照的に、要素が別の要素と「直接連結」又は「直接結合」されると言及してある場合、介在要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用する他の言葉も、同様の様式で解釈すべきである(例えば、「間」に対する「間で直接」、「隣接」に対する「直接接する」など)。
【0240】
ここで使用している用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的とし、限定することを意図するものではない。ここで使用している、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が別であることを明確に示してない限り、複数形をも含むことを意図する。さらに、「comprises」「comprising」(から成る/含む)及び又は「includes」「including」(含む)は、ここで使用してある場合、記述された特徴、整数、ステップ/過程、操作/作動、要素、及び/又はコンポーネント/構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ/過程、操作/作動、要素、及び/又はコンポーネント/構成要素の存在又は追加を妨げないと理解される。
【0241】
また、いくつかの代替実施例では、言及した機能/作用が図中に示した順番から外れて生じる場合もあることも当然である。例えば、連続して示された2つの図は、実際には実質的に同時に実行されることもあれば、関係する機能/作用に応じて逆の順序で実行されることもある。
【0242】
具体的な詳細が後続の説明で提供され、実施例の十分な理解を提供している。しかし、実施例がその具体的な詳細でなくとも実施され得ることは、当業者には自明のことである。例えば、システムは、不必要な詳細で実施例を不明瞭にしないようにブロック図で示されている。他の事例では、実施例を不明瞭にすることを避けるために、周知のプロセス、構造及び技術は、不要な詳細を外して示している。
【0243】
ここで説明してある実施例は、作用及び作動の象徴的表現に言及して(例えば、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、ブロック線図などの形で)説明してあり、それらは、ルーチン、プログラム、対象、コンポーネント、データ構造などを含むプログラムモジュール又は機能プロセスとして実装され、特定のタスクを実行し又は特定のアブストラクトデータタイプを実装し、既存のロボット制御医療デバイスシステムの既存のハードウエアを使用して実装され、例えば、米国特許出願公開2021/0220064及び/又は国際公開WO2019/222641において開示されている。これら先行技術文献の全内容はここに援用されて組み込まれる。これら既存のハードウエアは、限定されないが、1つ以上のプロセッサ、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、1つ以上のコントローラ、1つ以上の演算装置(ALU)、1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、1つ以上のマイクロコンピュータ、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1つ以上のシステムオンチップ (SoC)、1つ以上のプログラマブルロジックユニット(PLU)、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、あるいは、決められた方式で命令に応答し実行することの可能な他の1つ以上のデバイスなどの、処理又は制御回路である。
【0244】
フローチャートは、連続プロセスとしてオペレーションを説明するが、オペレーションの多くは並行して、同時に、又はいっせいに行われ得る。また、オペレーションの順番は再配列してもよい。プロセスは、そのオペレーションが完了したときに終了する場合もあるが、図に含まれていない追加のステップをもっていることもある。プロセスは、方法、機能、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに相当することもある。プロセスが機能に相当する場合、その終了は、機能の呼び出し又はメイン機能への、機能のリターンに対応することもある。
【0245】
ここに開示してある用語「記憶媒体」、「コンピュータ可読記憶媒体」、又は「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」は、データを保存する1つ以上のデバイスを表し、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気RAM、コアメモリ、磁気ディスクストレージメディア、光ストレージメディア、フラッシュメモリデバイス、及び/又は情報を保存する他の有形機械可読媒体が含まれる。用語「コンピュータ可読媒体」は、限定するわけではないが、携帯型又は固定型ストレージデバイス、光ストレージデバイス、及び命令及び/又はデータを保存し、保有し又は運搬することが可能な様々な他の媒体を含む。
【0246】
さらに、実施例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらのあらゆる組み合せによって実施することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア又はマイクロコードで実施される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコード又はコードセグメントは、コンピュータ可読記憶媒体のような機械又はコンピュータ可読媒体に記憶される。ソフトウェアで実装されると、1つ以上のプロセッサが必要なタスクを実行する。例えば、上述の一つ以上の実施例によれば、少なくとも1つのメモリがコンピュータプログラムコードを含むか又は記憶し、この少なくとも1つのメモリとコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサで、ロボット制御医療デバイスシステムに必要なタスクを実行させるように構成される。加えて、プロセッサ、メモリ、及びコンピュータプログラムコードとして符号化された一例のアルゴリズムは、ここに説明するオペレーションの遂行を提供又は引き起こすための手段として機能する。
【0247】
コンピュータプログラムコードのコードセグメントは、プロシージャ、ファンクション、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、又は、命令、データ構造又はプログラム文の組み合せを表す。コードセグメントは、情報、データ、アーギュメント、パラメータ、又はメモリコンテンツを伝達及び/又は受信することによって、別のコードセグメント又はハードウエア回路とつながる。情報、アーギュメント、パラメータ、データなどは、メモリシェアリング、メッセージパッシング、トークンパッシング、ネットワークトランスミッションなどを含む適切な技術を介して、受け渡され、転送され、又は送信される。
【0248】
ここで使用されている用語「including/含む」及び/又は「having/有する」は、「comprising」(すなわち、オープン言語)として定義される。ここで使用されている用語「coupled/連結」は、connected/接続として定義され、直接である必要はなく、機械的である必要もない。「indicating/示す/表す/知らせる」(例えば、「indicates」及び「indication」)という言葉に由来する用語は、示されている対象/情報を連絡又は参照するために利用可能な様々な技術を全て包含することを意図している。示されている対象/情報を連絡又は参照するために利用可能な技術の全てではないがいくつかの例は、示されている対象/情報の搬送(伝達)、示されている対象/情報の識別子の搬送(伝達)、示されている対象/情報を生成するために使用される情報の搬送(伝達)、示されている対象/情報のある部分又は割合の搬送(伝達)、示されている対象/情報の何らかの由来の搬送(伝達)、及び、示されている対象/情報を表すある記号の搬送(伝達)を含む。
【0249】
実施例によると、ロボット制御医療デバイスシステムの1つ以上の要素(例えば、ローカル及び/又はリモート命令及び制御モジュール)などは、ハードウエア、ファームウェア、ハードウエア実行ソフトウェア、又はそれらの組み合せである(又は含む)。そのようなハードウェアは、限定されないが、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のCPU、1つ以上のコントローラ、1つ以上のALU、1つ以上のDSP、1つ以上のマイクロコンピュータ、1つ以上のFPGA、1つ以上のSoC、1つ以上のPLU、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のASIC、又は規定の方法で命令に応答し実行することが可能な他の1つ以上のデバイスなどの、処理又は制御回路を含む。
【0250】
本発明の具体的な実施形態に関して、利点、他の優位点、及び問題の解決策を説明してきた。しかし、利点、優位点、問題の解決策、及びそのような利点、優位点、又は解決策を引き出す又はそれらにつながるあらゆる要素、又はそのような利点、優位点、又は解決策をより顕著にする要素は、あらゆる請求項の重要な、必要な、又は本質的な特徴又は要素として解釈してはならない。
【0251】
実施形態の詳細は、その実施例を添付図面に説示してあり、全体において同様の要素を同様の参照符号で示してある。この点に関して、実施例は異なる形態を有することもあり、ここに記述した説明に限定されると解釈すべきではない。すなわち、実施例は、図面を参照することによって、本説明に係る実施例を明らかにするために、単に記載するだけである。様々な実施例の態様は、請求項において特定される。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
前記速度の制御は、前記ロボット制御医療デバイスの速度を制御し、前記ロボット制御医療デバイスの最大オーバートラベル距離を制限することを含む、請求項14に記載の作動方法。
【外国語明細書】