(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064064
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】貴金属回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20230428BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164818
(22)【出願日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021173875
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】唐鎌 智也
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA41
4K001BA19
4K001DB35
(57)【要約】
【課題】貴金属が低濃度で溶解している溶液から簡易かつ低コスト、高効率に貴金属を回収することが可能な貴金属回収方法を提供する。
【解決手段】貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域である20~100kHzの超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させる
ことを特徴とする貴金属回収方法。
【請求項2】
金を含む複数の貴金属の貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させて貴金属を回収し、
前記活性炭の金の吸着量が他の貴金属の吸着量に比して10倍以上である
ことを特徴とする貴金属回収方法。
【請求項3】
前記超音波の周波数が20~100kHzである請求項1又は2に記載の貴金属回収方法。
【請求項4】
前記貴金属が金である請求項1に記載の貴金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属は、宝飾品用途の他、電子機器基盤等の工業的に広く使用される。特に、近年では、市場の拡大や投機の対象となる等、価格が高騰し、電子機器基盤等の精密機械の生産コストの増大が問題となっている。また、環境負荷の観点からも資源のリサイクルが要請されていることから、貴金属の回収、再資源化が望まれている。
【0003】
従来から、貴金属の回収は課題として認識されていて、様々な回収方法が提案されている。例えば、塩酸酸性Sn含有貴金属触媒回収液から一定の物性を有する活性炭の吸着により貴金属を回収する方法(特許文献1,2参照)等が提案されている。
【0004】
他にも、燃料電池の電極を構成する触媒層から触媒である貴金属を回収する方法であって、触媒層を構成する貴金属および貴金属を担持する炭素粉の混合体を極性溶媒および塩基性化合物とを含む電着液の中に入れて炭素粉をイオン化し、電気泳動により炭素粉を電極上に析出させて分離し、炭素粉が分離した電着液から貴金属を回収することを特徴とする触媒層からの貴金属回収方法(特許文献3参照)等があり、燃料電池の触媒等から貴金属を剥離させて該貴金属を析出させて回収する方法も提案されている。
【0005】
このように、貴金属の回収方法には様々な方法が提案されているが、いずれも還元剤を用いたり、複雑な工程を経る必要がある等、コストが増大してしまったり、回収効率が良好でない等、工業的に不利な点も多く問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6151691号公報
【特許文献2】特許第6247088号公報
【特許文献3】特許第4501706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、特に、貴金属が低濃度で溶解している溶液から効率的に貴金属を回収することが可能な貴金属回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させることを特徴とする貴金属回収方法に係る。
【0009】
第2の発明は、金を含む複数の貴金属の貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させて貴金属を回収し、前記活性炭の金の吸着量が他の貴金属の吸着量に比して10倍以上であることを特徴とする貴金属回収方法に係る。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記超音波の周波数が20~100kHzである貴金属回収方法に係る。
【0011】
第4の発明は、第1の発明において、前記貴金属が金である貴金属回収方法に係る。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る貴金属回収方法によると、貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させるため、特に貴金属が低濃度で溶解している溶液から効率的に貴金属を回収することができる。
【0013】
第2の発明に係る貴金属回収方法によると、金を含む複数の貴金属の貴金属塩と活性炭の混合液に前記貴金属塩の貴金属が析出しない周波数域の超音波を照射し、前記超音波の照射下において前記活性炭に前記貴金属塩の貴金属を吸着させて貴金属を回収し、前記活性炭の金の吸着量が他の貴金属の吸着量に比して10倍以上であるため、特に種々の貴金属が低濃度で溶解している溶液から選択的かつ効率的に金の回収をすることができる。
【0014】
第3の発明に係る貴金属回収方法によると、第1又は2の発明において、前記超音波の周波数が20~100kHzであるため、貴金属が水溶液中へ析出するのではなく、活性炭の表面及び細孔へ貴金属が吸着されるため、貴金属の回収が容易である。
【0015】
第4の発明に係る貴金属回収方法によると、第1の発明において、前記貴金属が金であるため、費用対効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の貴金属回収方法は、特に貴金属が低濃度で溶解している溶液からの貴金属の回収方法に関する。このため、貴金属の回収に際し、低コストであり高効率であることが求められる。本発明の貴金属回収方法は、貴金属塩と活性炭の混合液に、低周波域の超音波を照射することによる。
【0017】
前述の背景技術にて述べたように、既存の貴金属の回収方法では超音波が利用されることがある。これは超音波の性質を利用するものであって、具体的には、高周波域(200kHz~2.4MHz)の超音波を、貴金属を含有する水溶液に照射することにより、金属イオンが還元され、金属ナノ粒子として析出するという化学的作用によるものである。
【0018】
一方で、低周波域(20~100kHz)の超音波を貴金属を含有する水溶液に照射すると、貴金属の析出は生じない。低周波域の超音波によれば、かえって凝集物を解し、分散させる物理作用が生じる。
【0019】
本発明は、貴金属塩と活性炭の混合液に低周波域の超音波を照射することによって、該混合液中の活性炭の凝集を解して分散させることによって、表面積を増加させて活性炭による貴金属の吸着の促進を図るものである。
【0020】
貴金属の析出による回収は、液中に貴金属のナノ粒子が生じたりすることにより、回収時の濾過工程によっても回収しきれない量の貴金属が残存してしまい、回収効率が頭打ちになる懸念がある。よって、本発明において照射される超音波は、液中に貴金属の析出が生ずることなく、活性炭の分散が促される低周波域である。周波数は、物理的な分散作用が生じる周波域が選択され、特には20~100kHzが良好である。
【0021】
超音波の照射時間は、後述の実施例で述べるように、10分以上が好ましい。10分間の超音波照射で、十分に高効率な貴金属回収を行うことができるため、低コストかつ高効率での回収を達し、経済的に優れる。
【0022】
回収対象の貴金属は、特に限定されず、金の他には、プラチナ、パラジウム、銀等、様々な金属を対象とすることができる。特に、これら複数の貴金属が混在する場合にあっては、金が優先的に活性炭に吸着されることから、金の選択的回収を行うことができる。金の選択的回収は、金の吸着量が他の貴金属の吸着量に比して、10倍以上、好ましくは20倍以上、さらに好ましくは30倍以上であるとよいと考えられる。
【実施例0023】
[使用活性炭]
貴金属回収試験に用いられる活性炭は、以下のものを使用した。下記の活性炭はHi-speed Vibrating Sample Mill(株式会社シー・エム・ティ製、「TI-100」)を用い、平均粒径15~35μmとなるよう粉砕調製した。各活性炭のヨウ素吸着性能(mg/g)、メチレンブルー吸着性能(mL/g)、pH、強熱残分(%)、平均粒径(μm)、BET比表面積(m2/g)、細孔容積(mL/g)、平均細孔直径(nm)は表1に示した。
・活性炭1:塩化亜鉛活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤Y」)
・活性炭2:木質活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤K」)
・活性炭3:ヤシ殻活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤CA」)
・活性炭4:石炭系活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤GB」)
・活性炭5:高比表面積ヤシ殻活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤CI」)
・活性炭6:微細孔ヤシ殻活性炭(フタムラ化学株式会社製、「太閤CN」)
【0024】
ヨウ素吸着力(mg/g)、メチレンブルー吸着性能(mL/g)及びpHの測定は、JIS K 1474(2014)に準拠して測定した。
【0025】
強熱残分(%)は、JIS K 1474(2014)に準拠して測定した。
【0026】
平均粒径(μm)は、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、「SALD3000S」)を使用して測定し、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%における粒径とした。
【0027】
BET比表面積(m2/g)は、マイクロトラック・ベル株式会社製、自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP-miniII」を使用して77Kにおける窒素吸着等温線を測定し、BET法により求めた。
【0028】
細孔容積(mL/g)は、マイクロトラック・ベル株式会社製、自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP-miniII」を使用して77Kにおける窒素吸着等温線を測定し、DH法、MP法により細孔分布を解析し求めた。
【0029】
〔平均細孔直径〕
平均細孔直径(nm)は、細孔の形状を円筒形と仮定し、細孔容積(cm3/g)及び比表面積(m2/g)の値を用いて数式(i)より求めた。
【0030】
【0031】
【0032】
[貴金属回収試験1]
<試験例1>
試験例1は、超純水50mlを三角フラスコに入れ、活性炭1を10mg加え、金イオン濃度が100mg/Lとなるよう塩化金酸(III)溶液(「テトラクロロ金(III)酸四水和物」(富士フィルム和光純薬株式会社製)を超純水に溶かし、40mM(金イオン濃度8000mg/L)に調整した)を加えて15分静置する。28kHzの波長の超音波を300Wの出力で10分間と25分間それぞれ照射した。その後、0.2μmフィルターで濾過し、ファーネス原子吸光(Thermo Fisher Scientific社製、「iCE3500 Double Beam Dual Atomiser AA Spectrometer」)を用いて濾液中の金イオン濃度を測定した。
【0033】
<試験例2>
試験例2は、使用活性炭を活性炭2とした以外は試験例1と同様とした。
【0034】
<試験例3>
試験例3は、使用活性炭を活性炭3とした以外は試験例1と同様とした。
【0035】
<試験例4>
試験例4は、使用活性炭を活性炭4とした以外は試験例1と同様とした。
【0036】
<試験例5>
試験例5は、使用活性炭を活性炭5とした以外は試験例1と同様とした。
【0037】
<試験例6>
試験例6は、使用活性炭を活性炭6とした以外は試験例1と同様とした。
【0038】
<比較例1>
比較例1は、超音波を照射しなかった以外は試験例1と同様とした。
【0039】
<比較例2>
比較例2は、超音波を照射しなかった以外は試験例2と同様とした。
【0040】
<比較例3>
比較例3は、超音波を照射しなかった以外は試験例3と同様とした。
【0041】
<比較例4>
比較例4は、超音波を照射しなかった以外は試験例4と同様とした。
【0042】
<比較例5>
比較例5は、超音波を照射しなかった以外は試験例5と同様とした。
【0043】
<比較例6>
比較例6は、超音波を照射しなかった以外は試験例6と同様とした。
【0044】
<比較例7>
比較例7は、活性炭を加えなかった以外は試験例1と同様とした。
【0045】
<比較例8>
比較例8は、超音波の波長を950kHzとした以外は比較例7と同様とした。
【0046】
試験例1~6及び比較例1~8について、処理水濃度(C)(mg/L)、被吸着物質残存割合(C/C0)、被吸着物質減少率(%)、活性炭単位吸着量(mg/g)を測定、算出した。それぞれの試験条件と、結果を表2~6に示す。
【0047】
処理水濃度(C)(mg/L)は、試験例、比較例で記した濾液中の金イオン濃度である。
【0048】
被吸着物質残存割合(C/C0)は、処理水濃度(C)を試験例、比較例で記した金イオン濃度100mg/L(C0)で除した値である。
【0049】
被吸着物質減少率(%)は、(C0-C)/C×100により算出した。
【0050】
活性炭単位吸着量(mg/g)は、被吸着物質減少量(C0-C)(mg/L)を活性炭量0.2(g/L)で除した値である。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
[結果と考察1]
表2及び表3に示されるように、活性炭が混合され、かつ低周波域の超音波が照射された試験例1~6にあっては、10分間の短い照射時間であっても、被吸着物質の減少率は80%以上となった。つまり、被吸着物質である金が活性炭に吸着されて溶液中の残存金イオンが減少した。さらに25分間の照射時間とすると、減少率は90%以上となり、混合液中のほとんどの金イオンが活性炭に吸着されたこととなる。また、活性炭の物性に依存することなく、いずれの活性炭を用いても高効率な貴金属の回収が可能であることが示された。
【0057】
比較例1~6は試験例1~6に対応し、超音波が照射されない例であって、活性炭の吸着性能による金イオンの回収を行う対比として行った。比較例1~6は、おおよそ30~60%の金イオン減少率を示し、一定の回収が可能であることは示された。また、活性炭を加えずに超音波を照射した例である比較例7,8にあっては、低周波域の超音波照射を行った比較例7にあっては、金イオン濃度の減少はみられず、高周波域の超音波照射を行った比較例8にあっては、金イオン濃度は減少した。これにより、高周波域の超音波を照射することによって、金が液中に析出することが示され、試験例1~6の金イオンの減少が液中への金の析出によるものではなく、活性炭に金が吸着されたことが示される。
【0058】
試験例1~6の貴金属回収方法によれば、溶液中の貴金属イオンは、活性炭により吸着されたことから、液中への析出による貴金属回収方法よりも、回収が容易となる。析出による回収方法は、溶液中にナノ粒子として貴金属が析出することが多く、フィルターによる回収が難しかったり、時間がかかってしまったりしてコストが増大する。本発明の回収方法によれば、短時間であっても高効率で活性炭に貴金属が吸着され、かつ該活性炭をフィルターにより濾過、回収して焼却することによって、簡易かつ高効率な貴金属の回収が達成される。
【0059】
特に、本発明の貴金属回収方法は、貴金属イオンの濃度が低い溶液に用いられることを想定していることから、高効率かつ低コストの実現が要求される。試験例1~6にあっては、短時間の超音波照射によっても、良好な回収率を示すとともに、活性炭の回収によって貴金属そのものも容易に回収することができ、還元等の工程も要しないため、高効率かつ低コストの実現に至ったということができる。
【0060】
[貴金属回収試験2]
<試験例7>
次に、貴金属回収試験2として、回収対象の貴金属を白金として試験を行った。試験例7は、貴金属塩に塩化白金酸(IV)(「ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物」(富士フィルム和光純薬株式会社製))を用いた以外は、試験例1と同様とし、上記ファーネス原子吸光を用いて濾液中の白金イオン濃度を測定した。
【0061】
<比較例9>
比較例9は、超音波を照射しなかった以外は試験例7と同様とした。
【0062】
試験例7及び比較例9について、処理水濃度(C)(mg/L)、被吸着物質残存割合(C/C0)、被吸着物質減少率(%)、活性炭単位吸着量(mg/g)を測定、算出した。それぞれの試験条件と、結果を表7に示す。
【0063】
【0064】
[結果と考察2]
表7に示される通り、低周波域の超音波が照射された試験例7と、超音波が照射されていない比較例9とを比較すると、超音波照射が10分間の例と、25分間の例のいずれも被吸着物質である白金イオンの減少率が向上されることが示された。これにより、金イオン以外の貴金属イオンである白金イオンの効率的な回収が可能であることが示された。
【0065】
[貴金属回収試験3]
<試験例8>
次に、貴金属回収試験3として、回収対象の貴金属をパラジウムとして試験を行った。試験例8は、貴金属塩を塩化パラジウム(II)とし、塩化パラジウム(II)溶液(「塩化パラジウム(II)ナトリウム」(関東化学株式会社製)を超純水に溶かし、40mM(パラジウムイオン濃度4260mg/L)に調整した)をパラジウムイオン濃度が50mg/Lとなるよう超純水に加えた以外は、試験例1と同様とし、上記ファーネス原子吸光を用いて濾液中のパラジウムイオン濃度を測定した。
【0066】
<比較例10>
比較例10は、超音波を照射しなかった以外は試験例8と同様とした。
【0067】
試験例8及び比較例10について、処理水濃度(C)(mg/L)、被吸着物質残存割合(C/C0)、被吸着物質減少率(%)、活性炭単位吸着量(mg/g)を測定、算出した。それぞれの試験条件と、結果を表8に示す。
【0068】
【0069】
[結果と考察3]
表8に示される通り、低周波域の超音波が照射された試験例8と、超音波が照射されていない比較例10とを比較すると、超音波照射が10分間の例と、25分間の例のいずれも被吸着物質であるパラジウムイオンの減少率が向上されることが示された。上記した貴金属回収試験2と結果もあわせて鑑みれば、金イオン以外の貴金属イオンに対しても本発明の貴金属回収方法が有効であることが示されたといえる。
【0070】
[貴金属回収試験4]
<試験例9>
次に、貴金属回収試験4として、複数の貴金属塩が存在する溶液中における貴金属回収試験を行った。試験例9は、金イオン濃度が100mg/L、白金イオン濃度が100mg/L、パラジウムイオン濃度が50mg/Lとなるよう前掲の塩化金酸(III)溶液、塩化白金酸(IV)溶液、塩化パラジウム溶液をそれぞれ加えた以外は、試作例1と同様とし、上記ファーネス原子吸光を用いて濾液中の金イオン濃度、白金イオン濃度、パラジウムイオン濃度をそれぞれ測定した。
【0071】
試験例9について、処理水濃度(C)(mg/L)、被吸着物質ごとの残存割合(C/C0)、被吸着物質ごとの減少率(%)、被吸着物質ごとの活性炭単位吸着量(mg/g)を測定、算出した。それぞれの試験条件と、結果を表9に示す。
【0072】
【0073】
[結果と考察4]
表9に示される通り、白金イオンやパラジウムイオンと比較して、金イオンの減少量が大幅に大きいことが理解される。金を含む複数の貴金属の貴金属塩が存在する溶液において、本発明では金を選択的、優先的に活性炭に吸着させることが可能であることが示された。また、回収効率も良好であることから、低コストかつ高効率な金の選択的回収を実現することができた。
本発明の貴金属回収方法は、貴金属塩と活性炭の混合液に該貴金属が析出しない周波数域における超音波を照射することによって、活性炭が混合液中に分散されて実行表面積を増加させることにより、効率よく貴金属を吸着することができるため、簡易かつ低コスト、高効率を達成することができる従来にない貴金属回収方法である。また、抽出に有機溶媒や添加剤を使用しない水によるクリーンな貴金属回収技術である。さらには、金を含む複数の貴金属存在下においては、金を選択的に回収することができる有意な貴金属回収方法である。