(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064103
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】セラミド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/164 20060101AFI20230428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
A61K 35/57 20150101ALI20230428BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20230428BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20230428BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230428BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230428BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230428BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230428BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230428BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230428BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230428BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20230428BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230428BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230428BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230428BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20230428BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230428BHJP
【FI】
A61K31/164
A61P43/00 111
A61K35/57
A61K36/06
A61K36/48
A61P17/16
A61P1/00
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/42
A61K8/9789
A61K8/9728
A61K8/98
A23L33/10
C12N15/12 ZNA
C12N15/55
C12N5/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011390
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2021174062の分割
【原出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】517315066
【氏名又は名称】株式会社ジェヌインR&D
(71)【出願人】
【識別番号】591027927
【氏名又は名称】福岡県醤油醸造協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 喜範
(72)【発明者】
【氏名】宮鍋 征克
(72)【発明者】
【氏名】開 忍
(72)【発明者】
【氏名】植木 達朗
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C083
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA93X
4B065BB03
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4B065BB23
4B065BB25
4B065BB28
4B065BB37
4B065BC03
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4B065BC11
4B065BC48
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4B065CA50
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA111
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4C083DD27
4C083DD33
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4C083EE17
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4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA89
4C087ZC41
4C087ZC52
4C088AB61
4C088AC13
4C088CA25
4C088NA05
4C088NA14
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4C088ZA89
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4C206ZA89
4C206ZC41
4C206ZC52
(57)【要約】
【課題】セラミド組成物の新規用途を見いだすこと。
【解決手段】セラミド組成物を含む、サーチュイン遺伝子活性化用組成物であって、
セラミド組成物が、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物からなる群より選択される少なくとも1種の生体抽出セラミド組成物である、
組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド組成物を含む、サーチュイン遺伝子活性化用組成物であって、
セラミド組成物が、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物からなる群より選択される少なくとも1種の生体抽出セラミド組成物である、
組成物。
【請求項2】
セラミド組成物を含む、皮膚バリア用若しくは腸管バリア用、あるいは抗皮膚老化用組成物であって、
セラミド組成物が、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物からなる群より選択される少なくとも1種の生体抽出セラミド組成物である、
組成物。
【請求項3】
皮膚バリア用又は抗皮膚老化用である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
紫外線による皮膚へのダメージをケアするための、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
腸管バリア用である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
腸管のタイトジャンクション強化用である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも、t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hを含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hの合計量が、含有されるフリーセラミド全量の30質量%以上である、
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
セラミド組成物が、O/W型エマルジョン組成物であって、分散油相粒子の体積平均粒子径が10~500nmである、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミド組成物及びその用途等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミドはヒト表皮の細胞間脂質の主成分であることから、機能性化粧品素材等として市場を拡大している。加齢による角質セラミドは徐々に減少することが知られており、このため外用セラミドの補給が健康な肌を保つために重要ではないかと考えられている。また、角質層細胞間脂質として存在するセラミドは遊離型のフリーセラミドであることから、フリーセラミドにも注目が集まっている。
【0003】
これまでに、有用なセラミドを効率的に調製するための研究も行われてきている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-126910号公報
【特許文献2】国際公開第2019/049964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、セラミドの新たな機能を見出すことを目的に検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の生体由来セラミド組成物が、特定の機能を特に効率的に奏し得る可能性を見いだした。またさらに、特定の当該セラミド組成物をナノ化する等、特定の構成を付与することにより、より効率的に特定の機能を奏し得る可能性を見いだした。以上の知見に基づき、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
セラミド組成物を含む、サーチュイン遺伝子活性化用組成物であって、
セラミド組成物が、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物からなる群より選択される少なくとも1種の生体抽出セラミド組成物である、
組成物。
項2.
セラミド組成物を含む、皮膚バリア用若しくは腸管バリア用、あるいは抗皮膚老化用組成物であって、
セラミド組成物が、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物からなる群より選択される少なくとも1種の生体抽出セラミド組成物である、
組成物。
項3.
皮膚バリア用又は抗皮膚老化用である、項2に記載の組成物。
項4.
紫外線による皮膚へのダメージをケアするための、項3に記載の組成物。
項5.
腸管バリア用である、項2に記載の組成物。
項6.
腸管のタイトジャンクション強化用である、項5に記載の組成物。
項7.
少なくとも、t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hを含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
項8.
t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hの合計量が、含有されるフリーセラミド全量の30質量%以上である、
項7に記載の組成物。
項9.
セラミド組成物が、O/W型エマルジョン組成物であって、分散油相粒子の体積平均粒子径が10~500nmである、項1~8のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
サーチュイン遺伝子活性化を効率よく行うことができる組成物(特定のセラミド含有組成物)が提供される。また、当該組成物は、皮膚バリア用若しくは腸管バリア用、あるいは抗皮膚老化用等としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】HaCaT細胞にセラミドを添加し、48時間培養後、SIRT1のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図2】HaCaT細胞にセラミドを添加し、48時間培養後、SIRT3のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図3】HaCaT細胞にセラミドを添加し、48時間培養後、IN Cell Analyzer 2200を用いてミトコンドリア数、面積、膜電位活性を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図4】10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細胞にセラミドを添加し、24時間培養後、IN Cell Analyzer 2200を用いてROSを測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図5】10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細胞にセラミドを添加し、24時間培養後、IN Cell Analyzer 2200を用いてミトコンドリア数、面積、膜電位活性を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図6】HaCaT細胞にセラミドを添加し、48時間培養後、LC-MSを用いてHaCaT細胞内のセラミドの脂肪酸組成を分析した結果を示す。
【
図7】セラミドを24時間処理したCaco-2細胞に上清をHaCaT細胞添加し、48時間培養後、SIRT1のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図8】セラミドを24時間処理したCaco-2細胞に上清をHaCaT細胞添加し、48時間培養後、SIRT3のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; *p<0.05, #p<0.15 Student’s t-test)
【
図9】10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細胞にセラミドで24時間処理したCaco-2細胞の上清を添加し、48時間後、IN Cell Analyzer 2200を用いてミトコンドリア数、面積、膜電位活性を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05,#=0.08 Student’s t-test)
【
図10】10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細胞にセラミドで24時間処理したCaco-2細胞の上清を添加し、48時間後、IN Cell Analyzer 2200を用いてROSを測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, #p<0.15, Student’s t-test)
【
図11】10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細胞にセラミドで24時間処理したCaco-2細胞の上清を添加し、48時間後、IN Cell Analyzer 2200を用いてミトコンドリア数、面積、膜電位活性を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図12】Caco-2細胞にセラミドを添加し、24時間培養後、SIRT1のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図13a】Caco-2細胞にセラミドを添加し、24時間培養後、Claudin-3のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図13b】Caco-2細胞にセラミドを添加し、24時間培養後、ZO-1のmRNA発現量を測定した結果を示す。(n=3; ***p <0.001, **p<0.01, *p<0.05, Student’s t-test)
【
図14a】Caco-2細胞にセラミドを添加し、24時間毎にTER値の測定を行なった結果を示す。
【
図14b】Caco-2細胞にセラミドを添加し、24時間毎にTER値の測定を行なった結果を示す。
【
図15】醤油粕抽出セラミド組成物における各種フリーセラミド種の含有割合(質量%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、特定の生体由来セラミド組成物及びその用途等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本開示に包含されるセラミド組成物は、生体由来セラミド組成物であり、より具体的には、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、又は鶏脚抽出セラミドである。これら生体由来セラミドは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該生体由来セラミドを、本開示のセラミド組成物ということがある。なお、セラミド組成物とは、セラミドを含有する組成物、という意味あいである。
【0012】
本開示のセラミド組成物は、サーチュイン遺伝子を活性化させるために好ましく用いることができる。サーチュイン遺伝子は、抗老化遺伝子などと呼ばれ、その活性化により抗老化効果が奏されると考えられている。本開示のセラミド組成物は、特に哺乳類(中でもヒト)のサーチュイン遺伝子活性化のために好ましく用いることができる。また、サーチュイン遺伝子の中でも、SIRT1遺伝子(NCBI Gene ID:23411)及びSIRT3遺伝子(NCBI Gene ID:23410)遺伝子を活性化させるために好ましく用いることができる。
【0013】
なお、本開示のセラミド組成物をサーチュイン遺伝子活性化に用いる場合は、例えば外用組成物又は経口組成物(例えば経口医薬組成物若しくは食品組成物)として用いることができる。
【0014】
特に限定はされないが、外用組成物として用いる場合は、SIRT1遺伝子活性化のためには、生来由来セラミド組成物の中でも醤油粕抽出セラミド組成物及び/又は鶏脚抽出セラミドを特に好ましく用いることができる。また、SIRT3遺伝子活性化のためには、ナノ化したセラミドを含有する組成物(ナノ化セラミド組成物)であることが好ましい。また、SIRT3遺伝子活性化のためには、生体由来セラミド組成物の中でも鶏脚抽出セラミド組成物を特に好ましく用いることができる。
【0015】
また、特に限定はされないが、経口組成物として用いる場合は、SIRT1遺伝子活性化及び/又はSITR3遺伝子活性化のためには、ナノ化したセラミドを含有する組成物(ナノ化セラミド組成物)であることが好ましい。また、SIRT3遺伝子活性化のためには、生体由来セラミド組成物の中でも麹菌抽出セラミド組成物を特に好ましく用いることができる。
【0016】
また、本開示のセラミド組成物は、皮膚若しくは腸管のバリアのために好ましく用いることができる。また、抗皮膚老化のために好ましく用いることができる。
【0017】
本開示のセラミド組成物を皮膚バリア用又は抗皮膚老化用として用いる場合、特に皮膚に対する紫外線の影響を防ぐ(ダメージをケアする)ために好ましく用いることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、本開示のセラミド組成物を皮膚に適用することにより、紫外線によってダメージを受ける若しくは受けた皮膚の細胞において、細胞修復や活性酸素(ROS)消去に関わることが知られるサーチュイン遺伝子(特にSIRT1遺伝子及びSIRT3遺伝子)の発現を亢進させることが可能となり得るからである。また、本開示のセラミド組成物を皮膚に適用することにより、紫外線によってダメージを受ける若しくは受けた皮膚の細胞において、ミトコンドリア(特に数、面積、若しくは膜電位活性)を回復させることが可能となり得るからである。なお、紫外線でダメージを受ける皮膚のために予防として、又は紫外線でダメージを受けた皮膚のために治療用として、用いることができる。
【0018】
なお、本開示のセラミド組成物を皮膚のために用いる場合(皮膚バリア用又は抗皮膚老化用として用いる場合)には、例えば外用組成物又は経口組成物(例えば経口医薬組成物若しくは食品組成物)として用いることができる。また、本開示のセラミド組成物を皮膚のために用いる場合、SIRT3遺伝子を亢進させ得ることから、美白効果も期待することができる。
【0019】
本開示のセラミド組成物を腸管バリア用として用いる場合、特に腸管のタイトジャンクション強化のために好ましく用いることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、本開示のセラミド組成物を腸管に適用することにより、腸管の細胞のタイトジャンクション遺伝子(特にZO-1遺伝子)の発現を亢進させることが可能となり得るからである。また、タイトジャンクションが強化されることにより、腸管における病原体からの感染防御機能も高められ得る。なお、このような感染防御強化用として用いる場合、感染予防のため若しくは感染後の治療のために用いることができる。
【0020】
なお、タイトジャンクションの密集性と結合性については,経上皮電気抵抗値(Trans Epithelial Electric Resistance;TER)を指標として測定することも可能であり、本開示
のセラミド組成物は、好ましく当該TER値を向上させ得る。
【0021】
なお、本開示のセラミド組成物を腸管に用いる場合(腸管バリア用として用いる場合)には、例えば経口組成物(例えば経口医薬組成物若しくは食品組成物)及び腸投与用組成物として用いることができる。
【0022】
また、本開示のセラミド組成物を腸管タイトジャンクション強化(特にZO-1遺伝子発現亢進)のために用いる場合、ナノ化したセラミドを含有する組成物(ナノ化セラミド組成物)であることが好ましい。また、この場合、生体由来セラミド組成物の中でも醤油粕抽出セラミド組成物及び/又は麹菌抽出セラミド組成物を特に好ましく用いることができる。
【0023】
セラミドはスフィンゴイド塩基のアミノ基(-NH2)に脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)が結合した構造(-NH-CO-)を有する化合物である。セラミドのスフィンゴイド塩基のアルコール性ヒドロキシル基(-OH)に、更に糖及びリン酸などの極性基が結合し、それぞれスフィンゴ糖脂質及びスフィンゴリン脂質となる。ここで、糖が結合したものを特にグリコシルセラミドと呼び、特に糖がグルコースである場合グルコシルセラミドと呼ぶ。セラミドに糖及びリン酸が結合していない場合を特にフリーセラミドと
呼ぶ。本開示のセラミド組成物に含まれるセラミドとしては、フリーセラミドが好適である。
【0024】
フリーセラミドを構成するスフィンゴイド塩基としては、ヒドロキシル基を2又は3個有するものが好ましく、3個有するものがより好ましい。また、当該スフィンゴイド塩基は、炭素数14~22(14、15、16、17、18、19、20、21、又は22)であるものが好ましく、炭素数16~20であるものがより好ましく、炭素数18又は20であるものがさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0又は1有するものが好ましい。より具体的な好ましいスフィンゴイド塩基としては、例えばスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン等が挙げられる。
【0025】
フリーセラミドを構成する脂肪酸としては、炭素数16~30(16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30)の脂肪酸が好ましく、炭素数18~28の脂肪酸がより好ましく、炭素数20~26の脂肪酸がさらに好ましく、炭素数22~26の脂肪酸がよりさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0又は1個有する脂肪酸が好ましく、0個有する脂肪酸(すなわち飽和脂肪酸)がより好ましい。また、ヒドロキシル基を0、1、又は2個有する脂肪酸が好ましく、1又は2個有する脂肪酸がより好ましい。特に制限されないが、ヒドロキシル基を有する場合、α-ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0026】
フリーセラミドにおいて、セラミド骨格の(スフィンゴイド塩基)-(脂肪酸)の組み合わせは、上記のスフィンゴイド塩基及び脂肪酸をどのように組み合わせたものであってもよい。中でも好ましい組み合わせとして、例えば、(ヒドロキシル基を2又は3(特に3)個有するスフィンゴイド塩基)-(ヒドロキシル基を有する(特にα-ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせが挙げられる。当該脂肪酸のヒドロキシル基数は0、1、又は2が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0027】
例えば、フィトスフィンゴシン(P)とヒドロキシル基数1の脂肪酸(A)の組み合わせであるセラミドAP、フィトスフィンゴシン(P)とヒドロキシル基数0脂肪酸(N)の組み合わせであるセラミドNP等が好ましく挙げられる。またさらに、フィトスフィンゴシン(P)とヒドロキシル基数2の脂肪酸(D)の組み合わせであるセラミドDPも好ましく例示できる。なお、セラミドAP、及びセラミドNPは一般に使用される用語であるが、セラミドDPは本明細書中で使用する用語であって、一般に使用される用語ではない。セラミドDPとしては、具体的には例えば、ジヒドロキシリグノセロイルフィトスフィンゴシン等が挙げられる。
【0028】
これらのなかでも、フリーセラミドとして、(i)セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を0又は1個有するスフィンゴイド塩基)-(炭素数22~26、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を0、1、又は2個有する脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド、並びに、(ii)セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数20で、炭素間二重結合を有さないスフィンゴイド塩基)-(炭素数24又は25、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を0、1、又は2個有する脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド、が好ましい。なかでも、より具体的には例えば、t18:0-22:0h、t18:1-22:0h、t18:0-23:0h、t18:1-23:0h、t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、t20:0-24:0h、t18:1-26:0h、t18:0-25:0h、及びt18:0-24:0h2等が好ましい。なお、当該表記について「t18:0-22:0h」を例に挙げて説明すると、この前半部分の「t18:0」がスフィンゴイド塩基についての情報であって、ヒドロキシル基を3個(「t」)有し、炭素数が「18」で、炭素間二重結合を「0」個有する(すなわち、炭素間二重結合を有さない)スフィンゴイド塩基を示している。
また、この後半部分「22:0h」が脂肪酸についての情報であって、炭素数「22」、炭素間二重結合が「0」、ヒドロキシル基を1個有する(「h」)脂肪酸である脂肪酸であることを示している。なお、「h2」はヒドロキシル基を2個有することを示す。なお、「22h:0」のように、「h」を炭素数のすぐ後ろに記載する場合もある。
【0029】
また、本開示のセラミド組成物には、t18:0-22:0h、t18:1-22:0h、t18:0-23:0h、t18:1-23:0h、t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、t20:0-24:0h、t18:1-26:0h、t18:0-25:0h、及びt18:0-24:0h2等が含まれることが好ましく、特にt18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hが含まれることが好ましい。また、少なくともフリーセラミドとしてt18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hが含まれることが好ましい。特に、当該組成物に含まれるフリーセラミド全量に対して、t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hの合計量が30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上となることがより好ましい。60質量%以上、又は70質量%以上であってもよい。
【0030】
本開示のセラミド組成物は、ナノ化して用いる(つまり、ナノ化セラミド組成物として用いる)こともできる。ナノ化セラミド組成物は、例えば、セラミド組成物を高圧処理して得ることができる。高圧処理は超高圧湿式微粒化装置(例えば(株)スギノマシン:スターバースト)により行うことができる。高圧としては、例えば100MPa以上程度が挙げられ、100~300MPa程度が好ましく、120~250MPa程度がより好ましい。
【0031】
本開示のセラミド組成物は、乳化組成物であることが好ましく、特に水相に油相が分散している形態(例えば水中油滴(O/W)エマルジョン)であることが好ましい。この場合、醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、及び鶏脚抽出セラミド組成物から選択される少なくとも1つの生体抽出セラミド以外に、油脂類、非イオン性界面活性剤、リン脂質、蛋白質、多糖類、pH調整剤、増粘剤、香料、天然色素、防腐剤などを含むことが出来る。
【0032】
O/Wエマルジョンの形態である場合、セラミドを含む油滴(すなわち分散粒子)の平均粒径は、500nm以下であることが好ましい。貯蔵経時安定性及び生体利用効率の観点から、分散粒子の平均粒径は、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。分散粒子の平均粒径の下限値としては、特に制限はないが、例えば、1nm以上とすることができ、好ましくは10、20、若しくは50nm以上とすることができる。
【0033】
本開示において、分散粒子の平均粒径とは、動的散乱法を用いて測定される体積平均粒径を意味する。
【0034】
動的光散乱法により平均粒径を測定可能な市販の測定装置としては、粒子径分布測定装置ナノトラックWAVEII(ヴァーダーサイエンティフィック)、ゼータサイザーULTRA(マルバーン)、粒径・分子量測定システムELSZ-2000S(大塚電子)、ナノ粒子解析装置SZ-100V2(堀場製作所)等が挙げられる。
【0035】
本明細書において、分散粒子の体積平均粒径は、例えば動的光散乱方式であるナノトラックWAVEII(ヴァーダーサイエンティフィック)を用いて測定することができ、具体的には、次のように測定できる。本発明のセラミド分散組成物から分取した試料に含まれるセラミドの濃度が0.1質量%になるように純水で希釈し、石英セルを用いて測定す
る。試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を用い、体積平均粒径(Mv)として求める。
【0036】
なお、セラミドを含む分散粒子の平均粒径は、組成物の成分以外に、以下に述べる製造方法における条件、例えば高圧乳化分散条件(パス回数、圧力、温度)、撹拌条件(せん断力、温度)、油相と水相比率等の要因を適宜調整することによっても調整することができる。
【0037】
乳化組成物とする場合、油相成分と水相成分とを混ぜて予備分散処理して、予め粗分散液を得てもよい。そのような手段としては、特に限定されるものではなく、一般的な攪拌装置を用いることができる。攪拌装置としては、例えば、マグネチックスターラー、家庭用ミキサー、パドルミキサー、インペラーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー等が挙げられる。
【0038】
予備分散処理の時間は、特に限定されるものではなく、攪拌装置の種類、分散処理前液の組成等に応じて、適宜設定することができる。
【0039】
分散処理工程は、例えば、予備分散処理にて得られた粗分散液(必要に応じて、さらに水等を混合してもよい)を、超音波分散法を用いた分散処理(以下、超音波分散処理と称する。)又は高圧乳化法を用いた分散処理(以下、高圧乳化処理と称する)することにより行うことができる。
【0040】
分散処理工程では、本発明の生体抽出セラミドを含む粗分散液(必要に応じて、さらに水等を混合してもよい)を、分散処理することで、生体抽出セラミドを含有する分散粒子を含む微粒子セラミド分散組成物を得ることができる。
【0041】
本分散工程における分散処理は、分散粒子の微細化の観点からは高圧乳化処理により行うことが好ましい。
【0042】
高圧乳化処理とは、10MPa以上の剪断力を被分散物に付加する分散処理を意味する。分散粒子の微細化の観点から、被分散物に付加する剪断力は、50若しくは100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましい。上限値は、温度上昇及び耐圧性の観点から例えば300MPa以下であることが好ましい。
【0043】
高圧乳化処理の手段としては、特に限定されるものではなく、一般的な高圧乳化装置を用いることができる。高圧乳化装置としては、スターバーストHJP-25005((株)スギノマシン製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等の高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0044】
高圧乳化処理の際の温度は、30℃~80℃に設定することが好ましく、40℃~70℃に設定することがより好ましい。
【0045】
高圧乳化処理を行う回数は1回でもよいが、液全体の均一性を高めるためには、高圧乳化処理を2回以上行うことが好ましく、2回~5回行うことがより好ましい。また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0046】
上記した予備分散処理工程及び本分散処理工程の他、必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。その他の工程としては、加熱殺菌工程等が挙げられる。
【0047】
またさらに、エマルションを乾燥する工程を経て、粉末化組成物としてもよい。粉末化は、水分が除去されることによる長期間保存性の向上以外にも、携帯性の向上、輸送費の低減などメリットは大きい。このような粉末組成物も本開示のセラミド組成物に好ましく包含される。
【0048】
乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
この乾燥過程における、疎水性粒子の凝集合一を防ぐ目的で、包括剤を共存させてもよい。包括剤としては、水に易溶性の多糖類、オリゴ糖類が好ましい。本発明における糖類包括剤として用いられる糖類とは、糖単位を基本単位として構成された糖類が好ましく、糖単位の平均重合度(糖単位数)としては、復水後の粒径微細化の観点から、一般に60以下であることが好ましく、2~50であることが更に好ましい。このような糖類包括剤としては、疎水性粒子の合一安定化効果の観点から、イヌリン、ラフィノース、スタキオース、ベルパスコース、トレハロースが好ましい。
【0050】
また、本発明では、乾燥手段として、生産効率と品質を両立する観点から噴霧乾燥法が特に好ましい。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状のエマルションが熱風中に数100μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
【0051】
市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD-1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL-8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL-12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB-290(ビュッヒ社)、PJ-MiniMax(パウダリングジャパン(株))、PHARMASD(ニロ社)等が挙げられるがこれに限定されることはない。
【0052】
また、例えば流動層造粒乾燥機MP-01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
【0053】
本開示のセラミド組成物は、上記の通り、外用組成物、経口組成物、腸投与用組成物等として用いることができる。また、医薬分野及び食品分野において好ましく用いることができる。当該組成物は、以下に詳述するように、セラミドのみからなるものでもよいし、セラミド及び他の成分(各種基剤、担体、添加剤等)を含む組成物であってもよい。セラミド含有生体組織抽出物そのものも当該組成物に含まれる。つまり、セラミド含有生体組織抽出物(及び必要に応じてさらに他の成分が配合されたもの)も本開示のセラミド組成物として用い得る。
【0054】
本開示のセラミド組成物を医薬分野(医薬品及び医薬部外品を含む)にて用いる場合、
当該組成物(以下「本開示に係る医薬組成物」と記載することがある)は、各生体抽出セラミドのみからなるものでもよいし、他の成分を配合した医薬組成物でもよい。例えば、本発明に係る医薬組成物においては、有効成分であるセラミドに、必要に応じて薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤(特に乳化剤)、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘稠化剤等)等を配合することができる。このような基材、担体、添加剤等は、例えば医薬品添加物辞典2016(株式会社薬事日報社)に具体的に記載されており、例えばこれに記載されるものを用いることができる。また製剤形態も特に制限されず、常法により有効成分及びその他の成分を混合し、例えば経口組成物としては、錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に調製することができる。例えば、錠剤の製造は打錠法により行い得る。混合した原料をそのまま打錠する直接打錠法、混合した原料を顆粒にしてから打錠する顆粒打錠法、のいずれも用い得る。また例えば、カプセル剤の場合はソフトカプセル及びハードカプセルのいずれであってもよい。また例えば、外用組成物としては、クリーム剤、乳液、ジェル剤等として用いることもできる。また例えば、腸投与用組成物としては、例えばフォーム剤として用いることができる。
【0055】
本発明に係る医薬組成物におけるセラミドの配合量は、抗疲労効果が発揮される限り特に制限されず、対象者に応じて適宜設定できる。好ましくは0.0005~100質量%、より好ましくは0.005~90質量%、さらに好ましくは0.05~80質量%である。なお、下限は10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、又は80質量%程度であってもよい。
【0056】
本開示に係る医薬組成物を投与する対象には、ヒトのみならず、非ヒト哺乳動物も含まれる。疲労を示す哺乳動物が例示でき、特にペット及び家畜として飼育される哺乳動物が好ましい。具体的には、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、リャマ等が例示できる。哺乳動物の場合も、人の場合と同様、本発明に係る医薬組成物を予防的に用いることもできる。
【0057】
本開示に係る医薬組成物の投与時期は特に限定されず、例えば製剤形態、投与対象の年齢、投与対象の症状の程度等を考慮して適宜投与時期を選択することが可能である。
【0058】
本開示に係る医薬組成物の投与量は、投与対象の年齢、投与対象の症状の程度、その他の条件等に応じて適宜選択され得る。特に含まれるセラミド量を基準として、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜設定することができる。なお、1日1回又は複数回(好ましくは2~3回)に分けて投与することができる。哺乳動物の場合も、当該人の場合を参考として適宜投与量を設定できる。
【0059】
本開示のセラミド組成物を食品組成物(例えば飲食品や食品添加物)として用いる場合、当該組成物(以下「本開示に係る食品組成物」と記載することがある)は、セラミド、及び食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、その他飲食品として利用され得る成分・材料等が適宜配合されたものである。例えば、セラミドを含む、疲労改善用若しくは予防用の加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等の食品組成物が例示できる。特に制限はされないが、当該食品組成物に配合されるセラミドが生物(特に動物又は植物)組織から抽出された生体組織抽出セラミドである場合は、例えば当該セラミドが配合された加工食品、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品等であることが好ましい。また、セラミドを例えば粉末状にする等して、飲料類(ジュース等)、菓子類、パン類、スープ類(粉末スープ等を含む)、加工食品等の各種飲食品に含有させたものであってもよい。
【0060】
なお、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメントとして、本発明に係る食品組成物を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(ドリンク剤)等の形態に調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。顆粒、カプセル、錠剤等の形態の、本発明に係る食品組成物は、薬学的及び/又は食品衛生学的に許容される担体等を用いて、常法に従って適宜調製することができる。また、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
【0061】
本開示に係る食品組成物におけるセラミドの配合量は、効果が発揮され得る限り特に制限されない。、好ましくは0.0005~100質量%、より好ましくは0.005~90質量%、さらに好ましくは0.05~80質量%である。なお、下限は10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、又は80質量%程度であってもよい。
【0062】
本開示に係る食品組成物の、摂取量、摂取対象等は、特に限定はされないが、例えば上述した本発明に係る医薬組成物と同様であることが好ましい。
【0063】
なお、病院食とは病院に入院した際に供される食事であり、病人食は病人用の食事であり、介護食とは被介護者用の食事である。
【0064】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0065】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0066】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
セラミド組成物の調製
<醤油粕抽出セラミド組成物>
特開2012-126910号公報に記載の方法を参考に、醤油の搾り粕をエタノール抽出し、溶媒分画して高純度フリーセラミドを精製して、セラミド組成物を得た。
【0067】
より具体的には、次のようにして当該調製を行った。すなわち、常法により製造された醤油の副産物である圧搾粕の乾燥物についてエタノール抽出を行い、得られた抽出物をエタノール及び水を用いて固液分離して固形部を得た。さらに当該固形部をアセトン、エタノール、及び水で洗浄し、乾燥及び粉砕してさらに水、アセトン、及びヘキサンで洗浄したのち、再度エタノール抽出して得られた固形部をセラミド組成物として得た。
【0068】
<麹菌抽出セラミド組成物>
麹菌培養液300リットルから菌体を集菌し乾燥して固形物を得た。当該固形物に2.5倍量のエタノール/水混合液を加えて混合し、40℃で一晩撹拌抽出を行った。抽出液回収後の固形部に1.2倍量のエタノール溶液を加えて混合し、40℃で一晩撹拌抽出を
行った。得られた抽出液を合わせて45℃で減圧蒸留して、濃縮エキスを得た。当該濃縮液エキスをアセトンで洗浄した後、(必要に応じてエタノール、アセトン等によりさらに洗浄して)得られた不要物を麹菌抽出セラミド組成物として用いた。
【0069】
<鶏脚抽出セラミド組成物>
鶏乾燥物に2.5倍量のエタノール/水混合液を加えて混合し、40℃で一晩撹拌抽出を行った。抽出液回収後の固形部に1.2倍量のエタノール溶液を加えて混合し、40℃で一晩撹拌抽出を行った。得られた抽出液を合わせて45℃で減圧蒸留して、濃縮エキスを得た。当該濃縮液エキスをアセトンで洗浄した後、(必要に応じてエタノール、アセトン等によりさらに洗浄して)得られた不要物を鶏脚抽出セラミド組成物として用いた。
【0070】
セラミド組成物のLC-MSによる組成分析
各セラミド組成物をLC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)にて解析し、各セラミド組成物に含まれる各種フリーセラミド種について分析した。
【0071】
醤油粕抽出セラミド組成物における各種フリーセラミド種の含有割合(質量%)について、
図15及び表1に示す。t18:0-24:0h、t18:1-24:0h、及びt20:0-24:0hの3種のフリーセラミド種で、当該セラミド組成物の50質量%以上を占めていた。また、その他にもフリーセラミドが含まれることがわかった。
【0072】
【0073】
また、麹菌抽出セラミド組成物のフリーセラミド分子種を表2に示す。
【0074】
【0075】
セラミドのナノ化
プロピレングリコール(必要に応じてその他ポリオール類を加えてもよい)、乳化剤、及びセラミド組成物を混合し、100~150℃(セラミド融点程度)に加熱し均一にした。これにさらにレシチン水溶液を加えて撹拌混合し、得られた混合液を超高圧湿式微粒化装置((株)スギノマシン:スターバースト)により150MPa下で処理することでセラミドをナノ化した。なお、レシチンは、セラミドに対して、質量比で2~5倍程度用いた。
【0076】
また、得られたナノ化セラミド組成物については、動的光散乱方式であるナノトラックWAVEII(ヴァーダーサイエンティフィック)を用いて、セラミドを含有する粒子径を測定した。具体的には、ナノ化セラミド組成物(乳化物)を、セラミド濃度が0.1質量%になるように純水で希釈し、これを測定サンプルとした。試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を用い、体積平均粒子径(Mv)を求めた。また、ナノ化処理前のセラミド組成物についても同様にセラミド粒子径を測定した。ナノ化処理前のセラミド組成物におけるセラミドの体積平均粒子径は4857nmであり、ナノ化セラミド組成物におけるセラミドの体積平均粒子径は124nmであった。
【0077】
以下、当該醤油粕抽出セラミド組成物をナノ化したものを、ナノ化セラミド組成物として用いた。
【0078】
各セラミド組成物(醤油粕抽出セラミド組成物、麹菌抽出セラミド組成物、鶏脚抽出セラミド組成物、ナノ化セラミド組成物)並びにグルコシルセラミド、合成セラミドをセラミドサンプルして用いた。以下の検討において、セラミドの濃度とは、それぞれのセラミドサンプルの濃度である。また、以下の記載では、「○○抽出セラミド組成物」との記載を「○○セラミド」と略記することがある。例えば醤油粕抽出セラミド組成物を醤油粕セラミドと表記することがある。また、鶏脚をアビアンと表記することがある。なお、グルコシドセラミドとして丸善製薬株式会社製(パインセラ粉末)を、合成セラミドとして高砂香料工業株式会社製(セラミドNG「CERAMIDE TIC-001」)を、NACとして富士フィルム和光製(N-アセチル-L-システイン)を、それぞれ用いた。
【0079】
[検討方法]
<セラミドのHaCaT細胞におけるバリア機能増強評価>
HaCaT細胞培養
ヒト皮膚のモデル細胞として、ヒト表皮角化細胞株HaCaT細胞を用いた。細胞は非働化
した10% Fetal bovine serum(FBS;Life Technologies, CA, USA)添加DMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;Nissui, Tokyo, Japan)を用いて、細胞培養ディッシュ(Greiner bio-one, Tokyo, Japan)にて、37℃、5%CO2存在下で継代培養した。DMEM培
地は、470 mLのMilli-Q水に対してDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)培地「ニッスイ」(2)(日水製薬, Tokyo, Japan) 4.75 g を溶解し、0.2 M L-グルタミン (富
士フィルム和光純薬, Osaka, Japan) 10 mL、5万U/mLペニシリン (Meiji Seika ファルマ, Tokyo, Japan) 1 mL、0.05 mg/mLストレプトマイシン(Meiji Seika ファルマ) 0.5 mL
、10% NaHCO3 (富士フィルム和光純薬) 6 mLを添加し、作製した。
【0080】
IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定
HaCaT細胞を6.0×104 cells/ mLの密度で96 well plateに播種し、24時間前培養を行った。その後、セラミドを終濃度5 μMとなるようにサンプル添加を行った。24時間後、培
地除去後のplateに10 % FBS/DMEMで2.5 μMに希釈したMitoTracker Red (Invitrogen, USA)を100 μL/ well添加し、37℃、5% CO2条件下で30分間インキュベートを行なった。30
分後、MitoTracker Red入りの培地を除去し、10 % FBS/DMEMで200 nMに希釈したMitoTracker Green (Invitrogen)を100 μL/ well添加し、37℃、5% CO2条件下で30分間インキュ
ベートを行なった。その後、1 mg/mLのCellstain Hoechst 33342溶液 (DOJINDO, Kumamoto, Japan)をDMEMで500倍に希釈した溶液を100 μL/ well添加し、37℃、5 % CO2条件下で30分間インキュベートを行なった。その後、希釈Hoechst 33345溶液を96 well plateから除去し、PBS 150 mLを添加してIN Cell Analyzer 2200 (GE Healthcare)を用いて蛍光の
検出を行った。Mito Tracker Red及びMito Tracker Green、Hoechst 33342の蛍光量を測
定することで細胞内のミトコンドリアの活性、数、及び面積を調べた。画像は、IN Cell Investigator High-content image analysis software (GE Healthcare)で解析した。
【0081】
IN Cell Analyzer 2200を用いたROS測定
10 mL dishに播種したサブコンフルエント状態のHaCaT細胞を、UVクロスリンカー(CL-1000 Ultraviolet Crosslinker, UVP, Upland, CA,USA) 内でディッシュのフタを外した状態でUVB10 mJ/cm2により照射を行い、その後はすぐに10% FBS含有DMEM培地10 mLを入れて37℃、5% CO2存在下でインキュベートした。また、無処理の細胞にはUVBを照射せず培地
の交換のみを行った。24時間後にNon-UVBとUVB照射の細胞の培養液を捨て、1×PBSにより洗浄し、トリプシンで細胞を剥がし、96ウェルプレートに3×103cellsになるように播種
した。4時間後セラミド処理し、24時間インキュベートした。その後、HaCaT細胞における細胞内ROSの産生を、BES-H2O2-AC(和光純薬工業)を用いて製造者のプロトコールに従って測定した。96ウェルプレート内の培養液を除去し、細胞を4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH 7.4)で2回洗浄した。CellstainR-Hoechst 33342 solution(Dojindo)を1: 500の比率で1×PBSと混合して細胞にかけた後、
室温で30分遮光静置した。その後、HEPES(pH 7.4)中の5 μM BES-H2O2-ACを1: 1000お
よびHoechst 33342(Dojindo)を1: 400の割合で混合し、細胞と共に37℃で60分間インキュベートし、プロトコールは「HaCaT_eGFP20190627」を使用し、IN Cell Analyzer 2200 (GE Healthcare)にて画像を取得した。画像は IN Cell Analyzer 2200 Workstation(GE Healthcare)にて解析し、ROSの発現量を調べた。
【0082】
UVB誘導性老化細胞におけるセラミドのUV障害回復効果
サブコンフルエント状態の細胞にUVBを10 mJ/cm2照射した細胞を用いて、上記「IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定」と同様の実験を行った。
【0083】
HaCaT細胞のヒト型セラミド合成評価
10 mL dishで培養したサブコンフルエント状態のHaCaT細胞にセラミドを終濃度5 μMとなるようにサンプル添加を行った。48時間後、培地を除去し、1×PBS 5mlで洗浄後、トリプシン1.5 mLを添加してディッシュ全体に浸透させ、除去した。37℃、5% CO2条件下で8
分間インキュベートし、DMEMで細胞をはがし取り、15 mLチューブに細胞を集め、12000 rpmで3分間遠心することで細胞のペレットを集めた。LC-MSを用いてHaCaT細胞に含まれる
セラミドの脂肪酸組成を解析した。
【0084】
<セラミドがCaco-2細胞を介してHaCaT細胞に与える影響評価:腸管におけるバリア機能
の検討>
Caco-2細胞培養
ヒト腸管上皮細胞モデルとして、ヒト結腸癌由来細胞株CaCo-2細胞を用いた。CaCo-2細胞は、10%非働化 Fetal Bovine Serum(FBS)(56℃の恒温槽で35分間加熱することで補体を不活性化したもの)含有DMEM培地を用いて、細胞培養ディッシュ(Greiner bio-one, Tokyo, Japan)にて37℃、5 % CO2存在下で継代培養した。DMEM培地は、470 mLのMilli-Q水に対してDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)培地「ニッスイ」(2)(日水製
薬, Tokyo, Japan) 4.75 gを溶解し、0.2 M L-グルタミン(富士フィルム和光純薬, Osaka, Japan) 10 mL、5万U/mLペニシリン(Meiji Seika ファルマ, Tokyo, Japan) 1 mL、0.05
mg/mLストレプトマイシン(Meiji Seika ファルマ) 0.5 mL、10% NaHCO3 (富士フィルム
和光純薬) 6 mLを添加し、作製した。
【0085】
IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞を1.0×102 cells/mLで24 well plate(Corning, NY, USA)に播種した。24時間後、終濃度5 μMのセラミドを添加し、24時間培養した。6.0×104 cells/mLで96 well
plateに播種し、24時間インキュベートしたHaCaT細胞の培養液を50 μL除去し、そこにCaco-2細胞の培養液を50 μL添加した。その48時間後、上記「IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定」に記載の方法と同様の方法でHaCaT細胞のミトコンドリア
数・面積、ミトコンドリア膜電位活性を測定した。
【0086】
IN Cell Analyzer 2200を用いたROS測定(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞を1.0×102 cells/mL で24 well plate(Corning, NY, USA)に播種した。24
時間後、終濃度5 μMのセラミドを添加し、24時間培養した。6.0×104 cells/mLで96 well plateに播種し、24時間インキュベートしたHaCaT細胞の培養液を50 μL除去し、そこ
にCaco-2細胞の培養液を50 μL添加した。その48時間後、上記「IN Cell Analyzer 2200
を用いたROS測定」に記載の方法と同様の方法でHaCaT細胞のROSを測定した。
【0087】
UVB誘導性老化細胞におけるセラミドのUV障害回復効果(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞を1.0×102 cells/mLで24 well plate(Corning, NY, USA)に播種した。24時間後、終濃度5 μMのセラミドを添加し、24時間培養した。
【0088】
サブコンフルエント状態のHaCaT細胞にUVBを10 mJ/cm2照射し、6.0×104 cells/mLで96 well plateに播種した。24時間後、HaCaT細胞の培養液を50 μL除去し、そこにCaco-2
細胞の培養液を50 μL添加した。48時間後、「UVB誘導性老化細胞におけるセラミドのUV
障害回復効果」に記載の方法と同様の方法でHaCaT細胞のミトコンドリア数・面積、ミト
コンドリア膜電位活性を測定した。
【0089】
Transepithelial Electrical Resistance (TER)測定
24 wellプレートにCell Culture Insert (FALCON)をセットした。Caco-2細胞を2.0 × 105 cells/wellで播種し、48時間後にカルノシンを10 mMとなるように添加した。3日間間隔で添加して、2週間培養を行なった。
【0090】
経上皮電気抵抗値の測定にはMillicell ERS-2(日本ミリポア, 東京)を用いた。実験
前にMillicell ERS-2に電極をセットし、70%エタノール溶液に電極を10分間浸して殺菌
消毒をし、その後電極を乾燥させてDMEM培地に浸した。次に、Cell Culture Insertの内
側と外側にそれぞれ電極を挿入して測定を行った。測定値の計算は以下の式を参考に行なった。
【0091】
TER (Ω・cm2) = (測定値-blank)×(インサート面積)
【0092】
[検討結果]
内在性SIRT1発現量(HaCaT細胞)
HaCaT細胞をセラミドで48時間処理した際の内在性SIRT1発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、グリコシルセラミド、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、アビアンセラミドを添加したHaCaTにおいてSIRT1が増強された(
図1)。
【0093】
内在性SIRT3発現量(HaCaT細胞)
HaCaT細胞をセラミドで48時間処理した際の内在性SIRT3発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、アビアンセラミド、ナノ化セラミド、非ナノ化セラミドを添加したHaCaTにおいてSIRT3が増強された(
図2)。
【0094】
IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定
HaCaT細胞をセラミドで48時間処理した際の1細胞あたりのミトコンドリアの数、面積(Mitotracker Green)及びミトコンドリア膜電位活性(Mitotracker Red)をIN Cell Analyzer
2200を用いて測定した。グリコシルセラミド、合成セラミド、醤油粕セラミド、麹菌セ
ラミド、アビアンセラミド、非ナノ化セラミドはHaCaTのミトコンドリア数を有意に増加
させた。グリコシルセラミド、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、アビアンセラミドがHaCaTのミトコンドリア面積を有意に増加させた(
図3)。
【0095】
IN Cell Analyzer 2200を用いたROS測定
HaCaT細胞に10 mJ/cm
2のUVB照射をしたのちに、セラミドで24時間処理した際のROSレベルをIN Cell Analyzer 2200を用いて測定した。その結果、麹菌セラミドのみがROSを有意に減少させた(
図4)。
【0096】
IN Cell Analyzer 2200によるミトコンドリア活性回復効果
HaCaT細胞に10 mJ/cm
2のUVB照射をしたのちに、セラミドで48時間処理した際の1細胞あたりのミトコンドリアの数・面積(Mitotracker Green)及びミトコンドリア膜電位活性(Mitotracker Red)をIN Cell Analyzer 2200を用いて測定した(
図5)。
【0097】
LC-MSを用いた天然ヒト型セラミドのヒト型セラミド合成評価
サブコンフルのHaCaT細胞をセラミドで48時間処理し、LC-MSを用いてHaCaT細胞の脂肪
酸組成を測定した。その結果、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、アビアンセラミドを添加したHaCaT細胞において、炭素数24の長鎖脂肪酸を持つヒト型セラミドが有意に増加した
(
図6)。
【0098】
内在性SIRT1発現量の検証(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理し、その上清をHaCaT細胞に添加し48時間処理した
際の内在性SIRT1発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、ナノ化セラミドを添加したHaCaTにおいてSIRT1が有意に増強された(
図7)。
【0099】
内在性SIRT3発現量の検証(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理し、その上清をHaCaT細胞に添加し48時間処理した
際の内在性SIRT3発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、麹菌セラミドを添加したHaCaTにおいてSIRT3が有意に増強された(
図8)。
【0100】
IN Cell Analyzer 2200を用いたミトコンドリア活性測定(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理し、その上清をHaCaT細胞に添加し48時間処理した
際の1細胞あたりのミトコンドリアの数・面積(Mitotracker Green)及びミトコンドリア膜電位活性(Mitotracker Red)をIN Cell Analyzer 2200を用いて測定した(
図9)。
【0101】
IN Cell Analyzer 2200を用いたROS測定(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理し、その上清を10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細
胞に添加し24時間処理した際のROSレベルをIN Cell Analyzer 2200を用いて測定した。その結果、麹菌セラミド、ナノ化セラミドがROSを有意に減少させた(
図10)。
【0102】
IN Cell Analyzer 2200によるミトコンドリア活性回復効果(Caco-2細胞→HaCaT細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理し、その上清を10 mJ/cm
2のUVB照射をしたHaCaT細
胞に添加し24時間処理した際の1細胞あたりのミトコンドリアの数・面積(Mitotracker Green)及びミトコンドリア膜電位活(Mitotracker Red)をIN Cell Analyzer 2200を用いて測定した(
図11)。
【0103】
天然ヒト型セラミドのCaCo-2細胞におけるバリア機能増強評価
内在性SIRT1発現量の測定(Caco-2細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理した際の内在性SIRT1発現量を定量RT-PCRで測定し
た。その結果、合成セラミド、アビアンセラミド、ナノ化セラミドを添加したCaco-2においてSIRT1が有意に増強された(
図12)。
【0104】
内在性Claudin3発現量の測定(Caco-2細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理した際の内在性Claudin3発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、グリコシルセラミド、アビアンセラミドを添加したCaco-2においてSIRT3が有意に増強された(
図13a)。
【0105】
内在性ZO-1発現量の測定(Caco-2細胞)
Caco-2細胞をセラミドで24時間処理した際の内在性ZO-1発現量を定量RT-PCRで測定した。その結果、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、ナノ化セラミドを添加したCaco-2においてZO-1が有意に増強された(
図13b)。
【0106】
Transepithelial Electrical Resistance (TER)の検証(Caco-2細胞)
セルインサートに播種したCaco-2細胞にセラミドを添加し、14日間分化誘導を行いな
がら、24時間毎にTER値を測定した。その結果、醤油粕セラミド、麹菌セラミド、アビア
ンセラミド、ナノ化セラミド、非ナノ化セラミドを添加したCaco-2細胞において有意にTER値が上昇した。また、14日間の測定の前半(2~6日目)までは醤油粕セラミドと麹菌セ
ラミドを添加したCaco-2細胞のTER値が特に大きく上昇し、後半(7~144日目)までは醤油粕セラミドとアビアンセラミドを添加したCaco-2細胞のTER値が特に大きく上昇してい
た(
図14a及び14b)。
【0107】
なお、検討に用いたPCRプライマーセット(F及びR:フォワード及びリバース)の配列を以下の表に示す。
【0108】